説明

とりわけ粒子線治療設備用のガス噴射システムおよびガス噴射システムを動作させるための方法

【課題】イオン源に流入させる種々のガスをできる限り迅速に切り替えることができるようにする。
【解決手段】とりわけ粒子線治療設備用の、ガス噴射システムであって、イオン源にガスを導き入れる第1の導管と、分離された2つのガス流のための第2および第3の導管と、多方切替弁とを有する。第2および第3の導管はそれぞれ多方切替弁の入口に開口しており、第1の導管は多方切替弁の出口に接続されており、多方切替弁は一方または他方の入口が出口と選択的に接続されるように形成されており、これにより第2または第3の導管は流体技術的に第1の導管と接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ粒子線治療設備用のガス噴射システム、および、同ガス噴射システムを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ癌の粒子線治療においては、例えば陽子や炭素イオンのような重イオンから成る粒子線を発生させる。粒子線は加速器内で発生させられ、治療室へと導かれ、そこで出射窓を通して入射する。ある特定の実施形態では、加速器からの粒子線を交互に異なる治療室へと差し向けるようにしてもよい。治療を受ける患者は放射線室内で例えば検査台の上に置かれ、場合によっては固定される。
【0003】
粒子線を発生させるために、加速器は例えば電子サイクロトン共鳴イオン源(ECRイオン源)などのイオン源を内蔵している。イオン源の中では、特定のエネルギー分布をもつ自由イオンの指向性運動が生じる。なお、特定の腫瘍の治療には、陽子や炭素イオンのような正の電荷をもつイオンが理想的である。その理由は、正の電荷をもつイオンは加速器のおかげで高いエネルギーをもつことができるからであり、もう1つには、このエネルギーを体組織中に非常に精確に放出するからである。イオン源内で発生した粒子は50MeV/u超でシンクロトロンリング内を円軌道で周回する。これにより、前もって決められた正確なエネルギー、集束および強度をもつパルス状の粒子線が治療用に供給される。
【0004】
粒子を発生させるために、イオン源にガスが導き入れられる。なお、このガスはイオン化されなければならない。一定の粒子線のためには、引き込まれたガスの非常に正確で一様なガス流が必要である。治療によって異なるガス、例えば炭素イオンや水素など、を交互にイオン源の中に導き入れることができるように、イオン源内へ開口している導管がガス流ごとに設けられている。新しい粒子線を発生させるためにガス流を切り替える際、例えばまず現在の作動ガスのガス導管を閉じ、システムを洗浄してはじめて、別のガス流をイオン源に流入させる。
【0005】
しかし、非常に正確に所望のガス流を生成することは難しく、したがってまた時間コストがかかる。流量は選ばれたガス種に依存し、一般には1sccm(標準立方センチメートル/分)未満であり、スパッタイオン源における二酸化炭素の場合には例えば0.002sccmである。また、ECRイオン源では、例えば、およそ0.3sccmである。
【0006】
ガス導管内に圧力を、したがってまたガス流を発生させるために、今日では、温度制御されたニードル弁が使用されている。しかし、このニードル弁を介して所望の低い流量を正確に実現するのは困難である。その上、流量の離散的な測定が所望の速度では不可能なため、流量の実現は発生した粒子線の測定によって行われ、ニードル弁の逐次的調節は試行錯誤で行われる。さらに、弁は温度に非常に敏感である。したがって、周囲温度の変動が流量の揺れを生じさせてしまう。こうした理由から、周囲温度は2°C以内で安定に保たれなければならない。さらには、例えば導管内に配置された弁などの部品を交換した後には、システムのパラメータを新たに設定しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、イオン源に流入させる種々のガスをできる限り迅速に切り替えることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明に従い、とりわけ粒子線治療設備用のガス噴射システムであって、イオン源にガスを導き入れる第1の導管と、分離された2つのガス流のための第2および第3の導管と、多方切替弁とを有しており、第2および第3の導管はそれぞれ多方切替弁の入口に開口しており、第1の導管は多方切替弁の出口に接続されており、多方切替弁は一方または他方の入口が出口と選択的に接続されるように形成されており、これにより第2または第3の導管は流体技術的に第1の導管と接続されることを特徴とするガス噴射システムにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の位置に多方切替弁を備えた、粒子線治療設備用のガス噴射システムを示す。
【図2】第2の位置に多方切替弁を備えた、図1によるガス噴射システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
このガス噴射システムの重要な利点は、第2および第3の導管が接続された多方切替弁のおかげで、これら導管の間の特に迅速な切り替えが行われることにより、ガス流が第2または第3の導管から交互に第1の導管ないしイオン源に導き入れられるという点にある。この種の弁における切替の時間は1秒未満であり、5秒未満後には第1の導管の中のガス流は安定している。したがって、数秒以内に新しい一定のガス流を生じさせることができ、作動ガスを変えたときにシステムを洗浄しなくても、粒子線中のイオンの種類を変えることができる。
【0011】
ここで、切替弁とは、2つのガス流を混合せずに、交互に一方または他方の入口を流体技術的に出口に接続する弁のことである。それゆえ、謂わば、ガス流のディジタルスイッチングが行われる。
【0012】
多方切替弁を使用するさらに別の利点は、異なるガス流を交互にイオン源に導き入れるただ1つの導管さえあればよいので、所要スペースが少なくなるという点にある。
【0013】
有利な実施形態によれば、多方切替弁は第2の出口を有しており、第1の導管と流体技術的に連通しない導管がこの第2の出口に接続されている。したがって、イオン源に導き入れられないガスも特に連続的に多方切替弁から流出するので、安定したガス流が生じる。
【0014】
有利には、第2の出口にはポンプ、特に真空ポンプが接続されている。このことは、イオン源へのガス供給のための第1の導管と多方切替弁を介して流体技術的に連通していない導管がポンプと接続されていることによって、この導管内のガスが連続的にシステムから吸い出されるということを意味している。ここで、真空ポンプは排気されるイオン源をシミュレートする。したがって、このガス流が粒子線の発生に直接使用されない場合でも、ガス流の流れパラメータは粒子線治療設備の動作中に変化しない。安定したガス流が第2および第3の導管の中に生じたならば、これらのガス流の1つをイオン源に流入させない場合でも、これらのガス流を遮断しないことが好ましい。ガス流は例えば30分以上供給されなければ遮断される。このために、多方切替弁の各導管にはオンオフ弁が付加的に取り付けられている。粒子線治療設備の動作中、ガス流は連続的にイオン源の方向に流れるか、またはガス噴射システムから流れ出す。このガス流は数標準マイクロリットル/分の領域の非常に小さなガス流なので、ガス損失は非常に小さい。
【0015】
有利には、多方切替弁は2位置4方弁である。このことは、弁が2つの入口および2つの出口を有しており、弁を通って2つのガス流が並行して2つの異なる方向に流れることができるということを意味している。弁の切替の際、各入口はそれぞれ別の出口に接続されるので、弁からのガス流の方向は変化しない。
【0016】
2つだけより多くのガス流をイオン源に導き入れることができるように、有利には、多方切替弁の入口の1つに流体技術的に接続された多位置弁が付加的に設けられている。多位置弁は多方切替弁に前置されている。入口側には、第2および第3の導管ならびに少なくとも1つの別の導管が接続されている。それゆえ、多方切替弁の入口の1つを通して複数のガス流を交互に多方切替弁に導き入れることができる。
【0017】
好ましくは、第2および第3の導管は体積流を生じさせるために少なくとも部分的に毛管から、とりわけガラス毛管から形成されている。イオン源の中が真空であるため、システム内のガスがイオン源に達する。通常、ガスは数barの、例えば2barの圧力のガスタンクから供給される。それゆえ、所望の流量を生じさせるために、正確で信頼性の高い一定の圧力低減、例えば約2barからほぼ0barへの圧力低減が必要である。これを達成し、できるだけ変動の少ない、最小限度にしか環境影響に依存しないガス体積流を生じさせるために、毛管が設けられている。長さおよび内径などの毛管の特性は、所望の圧力降下が毛管に沿って生じるように、高圧側(2bar)と低圧側(0bar)の圧力を考慮して選択されている。ここで、ガス流は高圧側とイオン源内の真空との間の一定の圧力差のおかげで一定に保たれている。
【0018】
ガラス毛管は一般に、例えば温度変動などの外部影響に対して不感な受動的に作用する絞り機構である。毛管は導管の最も狭い領域であり、1mm未満の、とりわけ0.5mm未満の外径と、数デシメートルまたは数メートルの長さを有する。毛管はアーマチュアにまたは比較的大きな直径を有する導管区間に開口している。毛管を通して設定されたガスの流量は下流でも一定にとどまる。ガス噴射システムでは毛管を介して圧力降下が制御されるので、弁を交換した後に設定を検査しなくてもよく、微調整が必要ない、つまり、システムのパラメータ設定は高度に再現可能である。
【0019】
有利には、毛管の幾何学的データから第1の導管を通ってイオン源に供給されるガスの流量を求める制御システムが設けられている。
【0020】
混合ガスを形成するために、有利には、少なくとも2つの前置導管が、とりわけY型ジョイントを介して第2の導管と接続された前置導管が、第2の導管に開口している。イオン化させるべきガスは、例えば不活性ガスなどの搬送ガスによって、イオン源内に輸送することが必要となることが多い。2つのガスを十分に混合させるために、それぞれの導管は第2の導管の同じ箇所に開口している。なお、これは技術的にはY型ジョイントによって実現される。
【0021】
有利な実施形態によれば、前置導管にはそれぞれ1つ、ガス流が混合する前にガス流を遮断するストップバルブが設けられている。別の有利な実施形態によれば、多方切替弁の入口の前にストップバルブが設けられている。同様に、第3の有利な実施形態によれば、多方切替弁とイオン源との間にストップバルブが設けられている。ストップバルブは粒子線治療設備の開始時ないし終了時に開くないし閉じ、それによって作動ガスの供給が制御される。また、作動ガスが30分を超える長い時間にわたって必要とされない場合にも、相応するストップバルブは閉じられ、作動ガスが再び使用されるおよそ5分前に再び開かれる。また、障害時にもストップバルブは個別にまたはグループで閉じられ、それによりガス流がガス噴射システムの異なる導管区間で遮断される。
【0022】
有利な実施形態によれば、弁を集中制御するための制御システムが設けられている。複雑なガス噴射システムが集中制御されることで、高度の自動化および同期化が実現される。
【0023】
本発明の課題はさらに、とりわけ粒子線治療設備用のガス噴射システムを作動させる方法によって解決される。この方法では、ガス噴射システムは多方切替弁を有しており、この多方切替弁から第1の導管を介してイオン源にガスが導き入れられ、多方切替弁には第2の導管と第3の導管が接続されており、第2の導管からのガス流または第3の導管からのガス流のいずれかが第1の導管を介してイオン源に導き入れられる。
【0024】
ガス噴射システムに関連して説明した利点および有利な実施形態は適宜この方法にも転用される。
【0025】
上記方法は、第2の導管からのガス流がイオン源に導き入れられている間は、第3の導管からのガス流を多方切替弁を介してポンプから吸い込み、多方切替弁の切り替え時には、第3の導管からのガス流をイオン源に導き入れ、第2の導管からのガス流を多方切替弁を介してポンプから吸い込むように、ガス噴射システムを好ましくは動作中に制御することにより、第2の導管からのガスがイオン源に導き入れられるのか、または第3の導管からのガスがイオン源に導き入れられるのかにかかわらず、持続的に安定したガス流を生じさせる。
【0026】
本発明の実施例を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
図1には、実質的にイオン源4とイオン源4に前置された多方切替弁6(以下では単に弁と呼ぶ)を含むガス噴射システム2が示されている。多方切替弁6からは第1の導管8がイオン源4へと通じており、第2および第3の導管10,12は弁6に開口している。弁6には第4の導管14を介して真空ポンプ16が接続されている。図示された実施例では、導管8,10,12はステンレス鋼から形成されている。
【0028】
弁6は2位置4方弁である、つまり、弁6は第2および第3の導管10,12のための2つの入口17aと第1および第4の導管8,14のための2つの出口17bの4つの接続部を有している。2つの入口17aを2つの出口17bと接続する際の組合せにより、別の6の2つの位置が生じる。これについては図2との関連で説明される。
【0029】
第2の導管にはY型ジョイント18が取り付けられているので、2つの前置導管20,22は第2の導管8の同じ箇所に開口している。低流量減圧器を備えた第1の圧力容器24から前置導管20を介して二酸化炭素が供給される。搬送ガスとしてはヘリウムが使用される。ヘリウムは低流量減圧器を備えた別の圧力容器26に貯蔵されており、前置導管22を介して第2の導管8に達し、第2の導管8のY型ジョイント18の部分で二酸化炭素と混合する。2つの前置導管20,22はそれぞれ1つのニードル弁28a,28b、前置導管20,22内の圧力を測定する圧力センサ30a,30bおよび圧力容器24,26からのそれぞれガス流を遮断するストップバルブ32,34を有している。低圧弁28a,28bは前置導管22,24内の圧力の迅速な制御を可能にする。1つの導管の中の圧力を下げる場合、1sccmの流れならば、圧力はゆっくりとしか変化しない。調節を加速するには、ニードル弁28a,28bによってガス吐出し量を増大させる。
【0030】
粒子線を陽子から発生させるために、低流量減圧器を備えた別の圧力容器36から第3の導管12を介して水素をイオン源4に導き入れるようにしてもよい。水素導管にも同様にニードル弁28c、圧力センサ30cおよびストップバルブ38が取り付けられている。有利には、(実施例に示されているように)多位置弁40が多方切替弁6に前置されており、多位置弁40を通って、必要ならば、例えば酸素のような別のガスが第3の導管12を介してイオン源4に導き入れられる。
【0031】
第1の導管8には多方切替弁6とイオン源4との間に同様にストップバルブ42が設けられており、このストップバルブ42によって多方切替弁6より後でガス流を遮断することができる。
【0032】
ガス噴射システム2はその他に少なくともストップバルブ32,34,35,38および42を集中制御するための制御システム44を有している。ストップバルブ32,34,35,38および42の制御は、低流量減圧器を備えた圧力容器46からの圧縮空気の空気圧によって行われる。空気の供給および排出はディジタル制御される電気弁48を用いて行われる。
【0033】
ガス噴射システム2内では、圧力容器24,26,36の間の圧力差により、ガスは排気されるべきイオン源4ないし真空ポンプ16へと輸送される。なお、圧力容器24,26,36の中の圧力は元々は例えばおよそ2barである。2barからほぼ0barへの圧力降下を実現するために、前置導管20,22のストップバルブ32,34とY型ジョイント18の間の区間と、Y型ジョイント18とストップバルブ35の間の区間と、第3の導管12の圧力容器36とストップバルブ38の間の区間には、毛管C1,C2,C3が、とりわけガラス毛管が形成される。毛管C1,C2,C3の長さおよび内径は、毛管C1,C2,C3に沿って所望の圧力降下を行うことができるように選ばれている。毛管C1,C2,C3の長さはデシメートルまたはメートル領域内で変化する、例えば、所望の圧力降下はおよそ2mの区間で行われる。毛管C1,C2,C3の外径は好ましくは1mm未満、例えば0.2〜0.3mmの範囲内であり、内径はおよそ10-1倍の大きさで、例えば0.02〜0.06mmである。
【0034】
ガス噴射システム2は、ヘリウムと二酸化炭素が所望の流量でイオン源4に導き入れられるように形成されている。ヘリウム前置導管22への二酸化炭素の逆流および二酸化炭素導管へのヘリウムの逆流を防ぐために、ヘリウムストップバルブ34とY型ジョイント18の間に毛管C1が、二酸化炭素ストップバルブ32とY型ジョイントの間に毛管C2が設けられている。これにより、ヘリウムストップバルブ24側の方がY型ジョイント18よりも圧力が高くなることが保証されるので、ガス流の方向は予め決められている。
【0035】
二酸化炭素ガス流はガラス毛管C2を介してY型ジョイント18に導かれ、そこでヘリウムに供給される。この毛管C2の特性と二酸化炭素の圧力がヘリウム中での二酸化炭素の濃度を決定する。ヘリウムと二酸化炭素の流量が毛管C1およびC2によって例えばそれぞれ0.3sccmに設定された後、別の毛管C3がイオン源4へのガス輸送のためにY型ジョイント18からストップバルブ35まで設けられる。
【0036】
同様に、水素タンク36とストップバルブ38の間での圧力降下は毛管C4によって設定される。
【0037】
注意すべきことは、圧力容器24,26の中でのガスの混合を拡散によって防ぐには、ガス混合ストップバルブ35が閉じられる前に、二酸化炭素およびヘリウムのストップバルブ32および34が閉じられなければならないということである。
【0038】
導管10,12からのガス流は2位置4方弁6へと導かれ、イオン源4にヘリウム-に酸化炭素-混合気が供給されるのか、水素が供給されるのかが弁6によって設定される。図1には、弁6の第1の位置が示されている。第2の導管10からの混合ガスは第1の導管8を介してイオン源4に供給される。それと並行して、弁6の後の第3の導管12からの水素が真空ポンプ16によって吸い込まれる。その際、真空ポンプ16によってイオン源4内の動作状態がシミュレートされる。真空ポンプ16による水素の連続的な吸い込みによって、弁6の切替によって水素がイオン源4に供給される前に、安定した流れが生じることができる。第3の導管12からの予備ガス、今のケースでは水素、が長い時間にわたって利用されない場合には、ガス損失を最小化するために、相応するストップバルブ38を閉じてよい。
【0039】
弁6の第2の位置は図2に示されている。図から明らかなように、弁6の切替の後、第3の導管12からの水素はイオン源4に供給され、第2の導管10からのヘリウム-二酸化炭素-混合気は真空ポンプ16によって吸い込まれる。
【0040】
弁6のおかげで、ガス流の切替を非常に迅速に行うことができる。切替後、今までイオン源4に供給されていた作動ガスが真空ポンプ16によってシステム2から吸い出され、その間に安定した流れを形成していた今までの予備ガスが第1の導管8に、したがってまたイオン源4に供給される。このような切替プロセスはふつう約0.5秒続き、5秒未満の後にはイオン源4の方向のガス流はすでに安定する。
【0041】
導管8,10,12および14はステンレス鋼からできているので、およそ24kVのイオン源4の電位に置かれる。高電位の領域は図では破線のブロックによって示されている。この領域は電気的に絶縁されたガラス毛管C3およびC4によって導管10および12に沿って画定されている。ガルバニック絶縁に鑑み、弁6と真空ポンプ16の間の接続もガラス管50によって実現されている。
【0042】
ガス噴射システム2が待たされたり、部品の交換が必要な場合には、ストップバルブ42によって直接イオン源4を閉じてもよい。このバルブはさらに停電の際にイオン源4へのガス流を速やかに遮断するのに使用することもできる。
【0043】
ガス噴射システム2の別の利点は、ガス流の設定を待機後に再現できることにある。ガス流の流量は導管8,10,12の両端における圧力差によって制御されるので、システム2内の任意の弁を交換しても導管8,10,12に沿って圧力が変化することがない。その上、システム2はむだ体積領域が生じないように設計されている。
【0044】
ガス噴射システム2とイオン源4は、ここでは詳しく示されていない、正の電荷を有する粒子から粒子線を形成する粒子治療装置の一部である。イオンを発生させるために、容器24,26または36からの作動ガスがガス噴射システム2によってイオン源4のプラズマチャンバに供給される。その際、粒子線の種類に応じて、導管10からのヘリウム-二酸化炭素-混合ガスまたは導管12からの水素が交互にイオン源4に供給される。発生したイオンはつぎに粒子線治療設備のシンクロトロンリングでマグネットによって50MeV/uを超える最終エネルギーまで達し、最終的には患者の治療されるべき人体領域へ向けられる。
【符号の説明】
【0045】
2 ガス噴射システム
4 イオン源
6 多方切替弁
8 第1の導管
10 第2の導管
12 第3の導管
14 第4の導管
16 真空ポンプ
17a 多方切替弁の入口
17b 多方切替弁の出口
18 Y型ジョイント
20 前置導管
22 前置導管
24 低流量減圧器を備えた圧力容器
26 低流量減圧器を備えた圧力容器
28a,b,c ニードル弁
30a,b,c 圧力センサ
32 ストップバルブ
34 ストップバルブ
35 ストップバルブ
36 低流量減圧器を備えた圧力容器
38 ストップバルブ
40 多位置弁
42 ストップバルブ
44 制御システム
46 低流量減圧器を備えた圧力容器
48 電気弁
50 ガラス管
1−C4 ガラス毛管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
とりわけ粒子線治療設備用の、ガス噴射システム(2)であって、イオン源(4)にガスを導き入れる第1の導管(8)と、分離された2つのガス流のための第2および第3の導管(10,12)と、多方切替弁(6)とを有しており、前記第2および第3の導管(10,12)はそれぞれ前記多方切替弁(6)の入口(17a)に開口しており、前記第1の導管(8)は前記多方切替弁(6)の出口(17b)に接続されており、前記多方切替弁(6)は前記入口(17a)の一方または他方を前記出口(17b)と選択的に接続するように形成されており、これにより前記第2または第3の導管(10,12)は流体技術的に前記第1の導管(8)と接続される、ことを特徴とするガス噴射システム(2)。
【請求項2】
前記多方切替弁(6)は第2の出口(17b)を有しており、前記第1の導管(8)と流体技術的に連通していない前記導管(10,12)が前記第2の出口(17b)と接続されている、請求項1記載のガス噴射システム(2)。
【請求項3】
前記第2の出口(17b)には、ポンプ、とりわけ真空ポンプが接続されている、請求項2記載のガス噴射システム(2)。
【請求項4】
前記多方切替弁(6)は2位置4方弁である、請求項1から3のいずれか1項記載のガス噴射システム(2)。
【請求項5】
前記多方切替弁(6)の一方の入口(17a)に流体技術的に接続された付加的な多位置弁が設けられている、請求項4記載のガス噴射システム(2)。
【請求項6】
前記第2の導管(10)と前記第3の導管(12)は、ガス体積流を形成するために、少なくとも部分的に毛管(C1,C2,C3,C4)から形成されている、請求項1から5のいずれか1項記載のガス噴射システム(2)。
【請求項7】
制御システム(44)が設けられており、該制御システム(44)が、前記毛管(C1,C2,C3,C4)の幾何学的データから、前記第1の導管(8)を通って前記イオン源(4)に供給されるガスの流量を求める、請求項1から6のいずれか1項記載のガス噴射システム(2)。
【請求項8】
混合ガスを形成するために、少なくとも2つの前置導管(20,22)が前記第2の導管(10)に開口しており、前記少なくとも2つの前置導管(20,22)はとりわけY型ジョイント(18)を介して前記第2の導管(10)と接続されている、請求項1から7のいずれか1項記載のガス噴射システム(2)。
【請求項9】
前記前置導管(20,22)内にそれぞれ1つのストップバルブ(32,34)が設けられている、請求項8記載のガス噴射システム(2)。
【請求項10】
前記多方切替弁(6)の入口(17a)の前にストップバルブ(35,38)が設けられている、請求項1から9のいずれか1項記載のガス噴射システム(2)。
【請求項11】
前記多方切替弁(6)と前記イオン源(4)の間にストップバルブ(42)が設けられている、請求項1から10のいずれか1項記載のガス噴射システム(2)。
【請求項12】
前記制御システム(44)は前記ストップバルブ(32,34,35,38,42)を集中制御するために設けられている、請求項8から10のいずれか1項記載のガス噴射システム(2)。
【請求項13】
とりわけ粒子線治療設備用のガス噴射システムを作動させる方法において、前記ガス噴射システム(2)は多方切替弁(6)を有しており、該多方切替弁(6)から第1の導管(8)を介してイオン源(4)にガスが導き入れられ、前記多方切替弁(6)には第2の導管(10)と第3の導管(12)が接続されており、前記第2の導管(10)からのガス流または前記第3の導管(12)からのガス流のいずれかが前記第1の導管(8)を介して前記イオン源(4)に導き入れられるようにしたことを特徴とする、ガス噴射システムを作動させる方法。
【請求項14】
前記ガス噴射システム(2)は、動作中、前記第2の導管(10)からのガス流が前記イオン源(4)に導き入れられている間は前記第3の導管(12)からのガス流を前記多方切替弁(6)を介してポンプ(16)により吸い込み、前記多方切替弁(6)の切替時には前記第3の導管(12)からのガス流を前記イオン源(4)に導き入れ、前記第2の導管(10)からのガス流を前記多方切替弁(6)を介して前記ポンプ(16)により吸い込む、請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−251324(P2010−251324A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94622(P2010−94622)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】