説明

ねじ切り加工用チップおよびその製造方法

【課題】短時間かつ低コストで製造することができる加工ねじ精度に優れたねじ切り加工用チップおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ねじ切り工具本体の所定位置に装着される加工すべきねじ山に対応する山形状の複数の切れ刃を有するねじ切り加工用チップにおいて、これら切れ刃のうち、送り方向における前方側の少なくとも1つが荒刃で、後方側の少なくとも1つが仕上げ刃であり、仕上げ刃の山の高さが荒刃の山の高さより大きく、この仕上げ刃と荒刃の山形状を重ねたときに荒刃が仕上げ刃に含まれるように形成されるとともに、荒刃の逃げ面における表面粗さが仕上げ刃の逃げ面における表面粗さよりも粗いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ切り工具に装着されるねじ切り加工用チップ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ切り工具に取り付けられるねじ切り加工用チップは、ねじ山に合致する形状に形成された1つ又は複数の山形状の切れ刃を有し、これらの切れ刃が被加工物に転写されることによってねじ切りが行われる。複数の山形状の切れ刃を有するねじ切り加工用チップとして、例えば、特許文献1がある。そのねじ切りは、通常、荒加工と仕上げ加工とに切込みを分けて切削が行われるため、工程数が多く効率が悪い。
そのため、このようなねじ切り加工用チップの中には、工具本体に取り付けられた際の切れ刃の送り方向における前方側に荒刃、後方側に仕上げ刃を設け、切削に伴い荒刃によって切削されたねじ切り跡を仕上げ刃によって切削することにより、ねじ形状に仕上げられるようにしたものがある。これにより、荒加工と仕上げ加工が一度にでき、かつ、仕上げ刃の実質切込み量が少なくなることから切削抵抗が少なく、精度の高いねじ切り加工ができる。
【特許文献1】特開平5−277809号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ねじ切り加工用チップを製造する場合には、一般的には、複数の切れ刃全体を砥石の研削面形状を転写させるようにして研削する総形研削加工により形成するため、荒刃と仕上げ刃の区別なく仕上げ刃の精度を基準とした研削条件に設定されるので、過剰な品質の製品を供給することになるとともに、送り量の増大等が図れず研削能率が上がらないという問題があった。これを回避するために研削能率を上げると、研削抵抗が大きくなり、仕上げ刃の精度及び逃げ面の表面粗さが悪化するため、加工ねじの加工寸法精度及び仕上げ面の表面粗さが悪化するという問題がある。
また、複雑かつ微細なねじ切りを行うような、さらに高い精度が要求されるねじ切り加工用チップを製造する場合には、所要の製品形状と実際の工作物の投影図を重ね合わせてその輪郭に沿って砥石を動かし倣い研削するプロファイル研削加工により形成するため(図4参照)、研削に長時間を要するので、製造効率が悪く製造コストが高くなるという問題があった。これを回避するため上記輪郭に沿って砥石を動かす量を大きくして製造効率を高めようとすると、研削抵抗が大きくなり、仕上げ刃の精度及び逃げ面の表面粗さが悪化するという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、短時間かつ低コストで製造することができる加工ねじ精度に優れたねじ切り加工用チップおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
請求項1に記載の発明は、ねじ切り工具本体の所定位置に装着される加工すべきねじ山に対応する山形状の複数の切れ刃を有するねじ切り加工用チップであって、これら切れ刃のうち、送り方向における前方側の少なくとも1つが荒刃で、後方側の少なくとも1つが仕上げ刃であり、仕上げ刃の山の高さが荒刃の山の高さより大きく、この仕上げ刃と荒刃の山形状を重ねたときに荒刃が仕上げ刃に含まれるように形成されるとともに、荒刃の逃げ面における表面粗さが仕上げ刃の逃げ面における表面粗さよりも粗いことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、荒刃の逃げ面における表面粗さが仕上げ刃の逃げ面における表面粗さよりも粗い構成となっていることから、仕上げ刃の精度および逃げ面の表面粗さを維持しつつ従来と比べて研削時間が少なくて済むので、短時間かつ低コストでねじ切り加工用チップを提供することができる。また、仕上げ刃の山の高さが荒刃の山の高さより大きく、仕上げ刃と荒刃の山形状を重ねたときに荒刃が仕上げ刃に含まれるように形成されていることにより、仕上げ刃によって切削されたねじ切り跡が被加工物の最終加工面となるので、荒刃の逃げ面における表面粗さが仕上げ刃の逃げ面における表面粗さよりも粗い構成となっていても、仕上げ刃の逃げ面における表面粗さが維持されていれば優れた仕上げ面粗さと高い加工寸法精度を実現することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1のねじ切り加工用チップにおいて、仕上げ刃の山元部における側部に、切り出されたねじ山の山頂部をさらうさらい刃を有し、このさらい刃の逃げ面における表面粗さが仕上げ刃の逃げ面における表面粗さと同等であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、さらい刃の働きにより切り出されたねじ山の精度が向上するとともに、被加工物の仕上げ面の品位も向上する。また、仕上げ刃およびさらい刃の精度および逃げ面の表面粗さを維持しつつ、荒刃の逃げ面における表面粗さが仕上げ刃およびさらい刃の逃げ面における表面粗さよりも粗い構成となっていることから、短時間かつ低コストで加工ねじ精度に優れたねじ加工用チップを提供することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のねじ切り加工用チップにおいて、仕上げ刃の逃げ面における表面粗さが最大高さ(Rz)で0.5μm以上10μm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、工具送り方向の最後部に位置し被加工物の最終加工面に転写される仕上げ刃の逃げ面における表面粗さが、最大高さ(Rz)で0.5μm以上10μm以下であることから、被加工物の仕上げ面を滑らかにすることができ、ねじ精度の高いねじ切り加工を行うことができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、ねじ切り工具本体の所定位置に装着される加工すべきねじ山に対応する山形状の複数の切れ刃を有するとともに、これら切れ刃のうち、送り方向における前方側の少なくとも1つが荒刃で後方側の少なくとも1つが仕上げ刃であるねじ切り加工用チップの製造方法であって、切れ刃を形成した焼結体を作製した後、少なくとも仕上げ刃をプロファイル研削または総形研削によって加工する工程を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、切れ刃を形成した焼結体を作製した後、少なくとも仕上げ刃をプロファイル研削または総形研削によって加工すれば、被加工物の最終加工面に転写される仕上げ刃の精度及び逃げ面の表面粗さが向上するため、加工ねじの加工寸法精度及び仕上げ面の表面粗さに優れたねじ切り加工用チップを製造することができるうえに、従来と比べて研削量が少なくて済み加工が容易であることから製造工程が簡略化され、製造効率の向上を図ることができ、製造コストを縮減することができるという利点がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明のねじ切り加工用チップによれば、仕上げ刃の精度及び逃げ面の表面粗さを維持しつつ、短時間かつ低コストで製造することができる、加工ねじの加工寸法精度及び仕上げ面の表面粗さに優れたねじ切り加工用チップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るねじ切り加工用チップについて、図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るねじ切り加工用チップを示す平面図である。図2は本発明の第2の実施形態に係るねじ切り加工用チップを示す平面図であり、図3はその斜視図である。
【0015】
本実施形態に係るねじ切り加工用チップ10は、図1に示されるように、加工すべきねじ山に対応する山形状の複数の切れ刃11,12を形成してなる。そして、この切れ刃11,12のうち、ねじ切り工具本体の所定位置に取り付けられた際の工具送り方向Fにおける前方側の少なくとも1つは荒刃11に、後方側の少なくとも1つは仕上げ刃12に形成され、この仕上げ刃12の山の高さは荒刃11の山の高さより大きく、仕上げ刃12と荒刃11の山形状を重ねたときに荒刃11が仕上げ刃12に含まれるように形成されている。さらに、この荒刃の逃げ面21における表面粗さは、仕上げ刃の逃げ面22における表面粗さよりも粗い構成となっている(図3参照)。
【0016】
このねじ切り加工用チップ10は、例えば、旋盤においてねじ切りバイトを使用してねじ切りを行う場合には、ねじ切りバイト本体の先端部における側部に装着され、回転させた被加工物に接触させながら、加工すべきねじのリードに合った送りにより移動させて使用される。また、工具自体を回転させてねじ切りを行う場合には、チェーザー、フライスおよびダイス等の所定位置に装着されて使用される。
【0017】
このようなねじ切り加工用チップ10を取り付けたねじ切り工具を用いたねじ切りは、荒刃11によって切削されたねじ切り跡が仕上げ刃12によって再度切削されることにより行われる。すなわち、工具送り方向Fの最後部に位置する仕上げ刃12の精度が被加工物の最終加工面の仕上がりを左右することになる。一方、工具送り方向Fの前方に位置する荒刃11は、仕上げ刃12の先行刃としての役割を果たすことになるので、荒刃11の精度が被加工物の最終加工面に影響を与えることはなく、実用上は精度、逃げ面21の表面粗さおよび刃立ちが悪くても最終製品の品質を劣化させることはない。
【0018】
このため、被加工物の仕上げ面に転写される仕上げ刃の逃げ面22の表面粗さ等が所望の条件を満たしていれば、荒刃の逃げ面21における表面粗さが仕上げ刃の逃げ面22の表面粗さよりも粗い構成となっていても、優れた仕上げ面粗さと高い加工寸法精度を実現することができる。また、荒刃の精度及び逃げ面22の表面粗さは必ずしも仕上げ刃と同等である必要はなく特に高品質であることまでは要求されないことから、従来と比べて研削時間が少なくて済むので、短時間かつ低コストでねじ切り加工用チップ10を製造することができる。
【0019】
次に、本発明の第2の実施形態に係るねじ切り加工用チップ10について説明する。
本実施形態は、上述した第1の実施形態とは基本的構成が同じで、さらい刃13を有している点が異なっている。よって、上述した第1の実施形態の説明と共通する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略し、相違する点について説明する。
【0020】
本実施形態に係るねじ切り加工用チップ10は、図2に示されるように、第1の実施形態に係るねじ切り加工用チップ10に、さらに、切り出されたねじ山の山頂部をさらうさらい刃13を、仕上げ刃12の山元部における側部に形成してなる。そして、このさらい刃の逃げ面23における表面粗さは仕上げ刃の逃げ面22における表面粗さと同等の構成となっている(図3参照)。
【0021】
このさらい刃13があることにより、ねじ山の精度が向上するとともに、被加工物の仕上げ面の品位も向上する。また、第1の実施形態に係るねじ切り加工用チップと同様に、荒刃の逃げ面21における表面粗さが仕上げ刃の逃げ面22およびさらい刃の逃げ面23の表面粗さよりも粗い構成となっていることで、従来と比べて研削時間を短縮することができ、製造コストの低減を図ることができる。このように荒刃の逃げ面21における表面粗さが粗い構成となっていても、被加工物の仕上げ面に転写される仕上げ刃の逃げ面22およびさらい刃の逃げ面23の表面粗さ等が所望の条件を満たしていれば、加工ねじの加工寸法精度及び仕上げ面粗さを維持することができる。
【0022】
ここで、第1および第2の実施形態に係るねじ切り加工用チップ10においては、工具送り方向Fの最後部に位置する仕上げ刃の逃げ面の表図面粗さは加工物の最終加工面に転写されることになるため、仕上げ刃の逃げ面22における表面粗さは、最大高さ(Rz)で0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。また、仕上げ刃12の山元部における側部にさらい刃13を設けた場合には、このさらい刃の逃げ面23の表面粗さも、最大高さ(Rz)で0.5μm以上10μm以下とすることが好ましい。
このような構成とすることで、被加工物の仕上げ面を滑らかにすることができ、良好な加工面品位を維持するとともに、ねじ精度の高いねじ切り加工を行うことができる。
【0023】
さらに、切れ刃11,12の刃先が尖鋭であると欠け易くねじ切り性能が劣ることになるので、ある程度刃先を鈍化させることで耐チッピング性、耐欠損性の向上を図るべく、切れ刃11,12の刃先稜線部に丸ホーニングあるいは複合ホーニング等を施すことにより刃先強化処理を行うことが好ましい。例えば、丸ホーニングを施す場合には、ねじ切り加工用チップ10のすくい面に直交する方向からみたホーニング幅を曲率半径R0.02〜0.15mmの範囲に設定するとよい。
【0024】
なお、第1および第2の実施形態に係るねじ切り加工用チップとして、図1および図2において、2つの荒刃11a,11bと1つの仕上げ刃12が形成されたねじ切り加工用チップを図示したが、荒刃11および仕上げ刃12は少なくとも1つ以上形成されていれば任意の個数を形成してもよく、その個数はこれに限定されるものではない。また、本実施形態に係る加工用チップに形成される切れ刃11,12としては、三角ねじ、台形ねじ、平行ねじ、テーパねじその他の加工すべきねじ山に対応する任意の形状を採用することができ、その形状は図1および図2に図示される形状に限定されるものではない。
また、図2において、さらい刃13を仕上げ刃12の前方側の山元部における側部に設けた第2の実施形態に係るねじ切り加工用チップを図示したが、これに限定されるものではなく、さらい刃13を仕上げ刃12の後方側の山元部における側部に設けてもよく、また、前方側と後端側の両方に設けてもよい。
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係るねじ切り加工用チップの製造方法について、図1乃至図3を用いて以下に説明する。
本実施形態に係るねじ切り加工用チップを製造するには、まず、工具送り方向Fにおける前方側の少なくとも1つを荒刃11、後方側の少なくとも1つを仕上げ刃12とする、加工すべきねじ山に対応する山形状の複数の切れ刃11,12を形成してなる、焼結体を作製する。この焼結体は、超硬合金、サーメット、セラミックス等の高硬度焼結体のなかから選ばれる。
次に、得られた焼結体の切れ刃11,12となる部分のうち、少なくとも仕上げ刃12となる部分(図1においてW2で示した部分)をプロファイル研削または総形研削によって加工する。
なお、仕上げ刃12の山元部における側部にさらい刃13を形成した焼結体としてもよく、この場合には、仕上げ刃12となる部分およびさらい刃13となる部分(図2においてW2で示した部分)をプロファイル研削または総形研削によって加工する。
【0026】
このように少なくとも仕上げ刃12をプロファイル研削または総形研削によって加工すれば、被加工物の最終加工面に転写される仕上げ刃12の精度及び逃げ面の表面粗さが向上するため、加工ねじの加工寸法精度及び仕上げ面の表面粗さに優れたねじ切り加工用チップを提供することができる。
【0027】
この場合において、切れ刃11,12となる部分のうち、被加工物の最終加工面に直接影響を与えることのない荒刃11となる部分(図1および図2においてW1で示した部分)は、寸法精度を上げる必要がないので研削を施さず、焼成時のままの焼結肌とすることが好ましい。
これにより、従来と比べ研削範囲が少なくて済み加工が容易であることから製造工程が簡略化され、製造効率の向上および製造コストの縮減を図ることができる。
なお、仕上げ刃12のみを総形研削により加工した場合に、焼結肌とのつなぎ部分に鋭利なエッジが形成される等の精度劣化が生じることで切れ刃欠損を誘発する恐れがあるが、焼結肌面と総形研削面のつなぎ部分の精度劣化を生じた部分のみをプロファイル研削にて補修することで防止することができる。
【0028】
一方、複雑、微細なねじ切りを行うようなさらに高精度のねじ切り加工用チップが要求されるときには、仕上げ刃12のみならず荒刃11についてもプロファイル研削により加工する場合が考えられる。
しかし、所要の製品形状と実際の工作物の投影図を重ね合わせてその輪郭に沿ってプロファイル砥石30を動かし倣い研削するプロファイル研削加工(図4参照)は、幅の狭い円盤状砥石30を用いるため加工面全体を研削するには長時間を要し、製造効率が悪く製造コストが高くなってしまう。逆に、砥石30を上記輪郭に沿って動かす量を大きくして製造効率を高めようとすると、研削抵抗が大きくなり、仕上げ刃の精度及び逃げ面の表面粗さが悪化してしまう。
そこで、このようなねじ切り加工用チップが要求される場合には、被加工物の仕上げ面に転写される仕上げ刃12となる部分(図1においてW2で示した部分)では要求性能に応じた研削条件によりプロファイル研削を行い、被加工物の最終加工面に直接影響を与えることのない荒刃11となる部分(図1においてW1で示した部分)については、プロファイル砥石30を上記輪郭に沿って動かす量を仕上げ刃12のプロファイル研削時より大きくしてプロファイル研削を行うのが好ましい。
さらに荒刃11の前方側における食付き部が荒刃11の先行刃として切削に関与するときは、この食付き部となる部分も荒刃11と同様に、プロファイル砥石30を上記輪郭に沿って動かす量を仕上げ刃12のプロファイル研削時より大きくしてプロファイル研削を行うとよい。
これにより、従来と比べ研削時間が短縮し製造効率が向上するので、複雑、微細なねじ切りを行う高精度のねじ切り加工用チップを短時間かつ低コストで提供することが可能となる。
【0029】
なお、上記実施形態に係るねじ切り加工用チップの製造方法においては、仕上げ刃12のみをプロファイル研削または総形研削により加工する場合、ならびに、仕上げ刃12および荒刃11の両方をプロファイル研削により加工する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、荒刃11を総形研削、仕上げ刃をプロファイル研削により加工してもよい。
【0030】
また、耐チッピング性、耐欠損性の向上を図る観点から切れ刃11,12の刃先強化処理としてホーニングを施す場合には、切れ刃のホーニング面の表面粗さは被加工物の仕上げ面精度に作用するため、研削粒度の影響や研削加工時にエッジ部の欠けを生じる等の不具合を生じやすいホーニング砥石を用いるのではなく、研磨ブラシを用いて加工するのが好ましい。
このように研磨ブラシを用いることで複雑、微細な切れ刃11,12であったとしてもホーニングを施すことができ、刃先の耐チッピング性、耐欠損性に優れたねじ切り加工用チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るねじ切り加工用チップを示す平面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るねじ切り加工用チップを示す平面図である。
【図3】図2のねじ切り加工用チップを示す斜視図である。
【図4】プロファイル研削加工時の砥石の動きを説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
10 ねじ切り加工用チップ
11 荒刃
12 仕上げ刃
13 さらい刃
21 荒刃の逃げ面
22 仕上げ刃の逃げ面
23 さらい刃の逃げ面
30 プロファイル砥石
F 工具送り方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ切り工具本体の所定位置に装着される、加工すべきねじ山に対応する山形状の複数の切れ刃を有するねじ切り加工用チップであって、
これら切れ刃のうち、送り方向における前方側の少なくとも1つが荒刃で、後方側の少なくとも1つが仕上げ刃であり、
前記仕上げ刃の山の高さが、前記荒刃の山の高さより大きく、この仕上げ刃と荒刃の山形状を重ねたときに荒刃が仕上げ刃に含まれるように形成されるとともに、
前記荒刃の逃げ面における表面粗さが、前記仕上げ刃の逃げ面における表面粗さよりも粗い
ことを特徴とするねじ切り加工用チップ。
【請求項2】
前記仕上げ刃の山元部における側部に、切り出されたねじ山の山頂部をさらうさらい刃を有し、
このさらい刃の逃げ面における表面粗さが、前記仕上げ刃の逃げ面における表面粗さと同等である
ことを特徴とする請求項1に記載のねじ切り加工用チップ。
【請求項3】
前記仕上げ刃の逃げ面における表面粗さが、
最大高さ(Rz)で0.5μm以上10μm以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のねじ切り加工用チップ。
【請求項4】
ねじ切り工具本体の所定位置に装着される、加工すべきねじ山に対応する山形状の複数の切れ刃を有するとともに、これら切れ刃のうち、送り方向における前方側の少なくとも1つが荒刃で、後方側の少なくとも1つが仕上げ刃である、ねじ切り加工用チップの製造方法であって、
前記切れ刃を形成した焼結体を作製した後、少なくとも前記仕上げ刃をプロファイル研削または総形研削によって加工する工程を備える
ことを特徴とするねじ切り加工用チップの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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