説明

ねじ及び中間部材の補強構造

【課題】断熱材等の中間部材の補強に用いる裏面材を比較的薄肉の部材で構成した場合であっても鋭利で危険な先端部が突出したままにならず、裏板材の厚みを生かして最大の締結力を発揮すること。
【解決手段】2つの挟持部材3a、3bの間に中間部材2を挟持し締結する際に使用するねじ1であって、軸部1bは、2つの挟持部材3a、3bと中間部材の合計の厚さ寸法よりも大きな有効長さ寸法を有するとともに、頭部から前記合計の厚さ寸法に対応する位置にくびれ部を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状断熱材等の変形しやすい中間部材を合板等の挟持部材にて補強する際に部材どうしの締結に使用する木ネジ、及びこの木ネジを使用して構成される中間部材の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の建物において断熱性能を向上させることを目的として、断熱材を外気の影響を受けやすい壁面、屋根面、床面等にすることが行われており、特に近年は発泡性の合成樹脂を成形した板状断熱材が使用されることが多くなった。
【0003】
これらの板状断熱材は自立し、加工が容易であり、グラスウール等の綿状断熱材のように温熱環境や設置方法によって性能低下することがないという点で優れている。しかし、合板等一般の板状の建材と比較すると、フェノールフォーム、硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等比較的硬質の板状断熱材であっても変形しやすく自立させることができない。また、釘やビス等がきかないので壁や天井のボード等を直に貼り付けることが不可能である。従って、板状断熱材を自立させたり、釘やビス等がきくようにする為には板状断熱材の表面に所望の強度を有する桟材や面材を付加し補強する必要がある。
【0004】
このような対策を講じる場合、板状断熱材の表面に補強材等の挟持部材を当接し裏面を下地材あるいは補強材等の裏面材に当接した状態でねじを螺入し、固定あるいは締結するのが一般的であるが、ねじの締結力によって板状断熱材が圧縮され凹状に変形してしまうという問題があった。
【0005】
この問題を解決する為のねじが特許文献1に開示されている。このねじは、断熱材の位置と接触する部分にねじが切られておらず、また首部ねじのねじピッチが先端部ねじのねじピッチよりも大きくなるように構成されている。すると、ねじを、断熱材及び断熱材の表裏を挟持する挟持部材に貫通させて固定する場合、挟持部材がねじのピッチに応じて異なる長さで移動する。即ち、ねじの首部に締めこまれる挟持部材(板材3)は大きく左方に移動し、ねじの先端部に締めこまれる挟持部材(下木材1)は小さく左方に移動する。このため、板材と下木材とは離反し、断熱材に圧力を加えることはなく、板状断熱材の圧縮変形を防止することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−38027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のねじは、裏面材(下木材1)がねじの先端部が突出しない程度の厚みを有する部材の場合は特に問題はないものの、ねじの長さと裏面材(下木材1)の厚みとの関係によっては、鋭利なねじの先端部が裏面材から突出してしまい、作業者が怪我をする虞があった。また、先端部が突出しない場合であっても、裏面材の厚みが充分でない場合は、テーパー状の先端部では引き抜き力に対する反力が得られないので締結が不十分となることがあった。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題を解決し、断熱材等の中間部材の補強に用いる裏面材を比較的薄肉の部材で構成した場合であっても鋭利で危険な先端部が突出したままにならず、裏板材の厚みを生かして最大の締結力を発揮することができる、ねじ及び中間部材の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為の本発明に係るねじは、2つの挟持部材の間に中間部材を挟持し締結する際に使用するねじであって、軸部は、前記2つの挟持部材と中間部材の合計の厚さ寸法よりも大きな有効長さ寸法を有するとともに、頭部から前記合計の厚さ寸法に対応する位置にくびれ部を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る中間部材の補強構造の第1の構成は、2つの挟持部材の間に中間部材を挟んだ状態で重ね合わせ、一方の挟持部材の表面から他方の薄肉の挟持部材に向かって前記ねじを螺入し、他方の薄肉の挟持部材の表面から突出した軸部をくびれ部で破断して前記2枚の挟持部材と中間部材とを締結して構成したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る中間部材の補強構造の第2の構成は、前記2つの挟持部材はいずれも薄肉であり、前記他方の挟持部材の表面からも前記ねじを螺入し、前記一方の挟持部材の表面から突出した軸部をくびれ部で破断して前記2つの挟持部材と中間部材とを締結して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るねじによれば、2つの挟持部材の間に中間部材を挟持して締結した場合、裏側から突出した鋭利な先端部をハンマー等で横方向に打撃することによりくびれ部部分で軸部が折れて突出部のみを容易に破断することができる。従って作業者はねじの先端部で怪我をすることがなく安全に作業をすすめることができる。
【0013】
また、本発明に係る中間部材の補強構造の第1の構成によれば、特に比較的薄肉の挟持部材側から先端部が突出するようにねじを螺入する場合、引き抜き耐力上無効なテーパー状の先端部は破断され薄肉の挟持部材の内部には引き抜き耐力上有効な軸部のみが残る。従って、薄肉の挟持部材の厚さをねじによる締結のために最大限利用することができ、作業者の安全性を確保しつつ、薄肉の挟持部材による中間部材の補強を確実なものとすることができる。
【0014】
また、本発明に係る中間部材の補強構造の第2の構成によれば、中間部材を2つの薄肉の挟持部材で挟持する場合は、本発明に係るねじで反対側からも締結することで夫々の薄肉の挟持部材がねじの頭部で拘束されるので、2つの薄肉の挟持部材による中間部材の補強を確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明する。
【0016】
(ねじ)
本発明に係るねじは、2つの挟持部材と中間部材の合計の厚さ寸法よりも大きな有効長さ寸法(=テーパー状の先端部を除いた引抜き力に抵抗しうる部分の長さ)を有するとともに、頭部から合計の厚さ寸法に対応する位置にくびれ部を設ける。くびれ部を除いては、一般の木ねじと基本的な構成は同一でよい。
【0017】
頭部の形状は特に限定されるものではなく、皿頭、なべ頭、平頭等任意に設定ができる。軸部もくびれ部を除いては一般的な木ねじに準じてよいが、ねじ山は頭部付近まで略全長にわたって加工されたものが好ましい。
【0018】
材質は、ステンレス、防錆処理された鉄等一般のねじで使用される材質であればよい。長さや径は特に限定されず、中間部材や挟持部材の材質や厚さに応じて適宜設定すればよい。
【0019】
くびれ部の位置は中間部材と2枚の挟持部材の厚さのに対応した位置となることが必須である。また、くびれ部の破断面が裏側の挟持部材の表面から突出しないようにするのが好ましい。このため、ねじを所定の位置まで螺入した状態でくびれ部のねじ先端側の縁が裏側の挟持部材の表面に一致するか、破断作業に影響のない範囲で挟持部材の表面からわずかに奥まるように設定するのが好ましい。
【0020】
また、くびれ部は、ねじの軸部のうちテーパ−状の先端部を除いて径が均一の部分に形成するのが裏側の挟持部材との係合が確実となるので好ましい。
【0021】
くびれ部はその他の軸部に比べて断面が小さく、螺入時のトルクに対しては破断することがなく、螺入完了後はねじ先端部に打撃力等の外力を作用させることによってくびれ部で容易に破断するように構成されていればよく、その断面形状は種々のバリエーションが考えられる。例えば、円形、十文字形、マイナス形、星形等が考えられる。
【0022】
くびれ部はその断面形状に応じて適宜公知のねじ加工技術を選択して加工することができる。例えば、通常のねじの製造工程を経た後に切削や転造によって加工してもよいし、ねじ山の加工に先行して転造、圧造、切削等の方法で加工しておいてもよい。
【0023】
(中間部材)
中間部材は、補強材としての挟持部材を当接し得るようなパネル状であり、挟持部材で挟持し本発明に係るねじを螺入しても変形しない(厚さが減少しない)ものであり、フェノールフォーム、硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等比較的硬質で変形しにくい合成樹脂発泡体からなるパネルである。なお、軟質の合成樹脂発泡体やグラスウールは、挟持部材にて挟持すると潰れてしまい、断熱性能が低下したりねじが緩んでしまう虞があり好ましくない。
【0024】
中間部材は、単一の構成でも複数重ね合わせたものでもよく、また、異なる材質のものを複数重ね合わせたものでもよい。
【0025】
(挟持部材)
挟持部際は、材質や厚さは中間部材の補強材となり得る強度を有するとともに、ねじのねじ山と係合しその状態が維持できる(ねじの引抜きに抵抗し得る)ものであればよいが、合板等の木質材料や硬質の合成樹脂材料等が比較的軽量でもあり好ましい。
【0026】
また、中間部材に対して広い面が当接して補強するものであっても比較的狭い幅で線状に当接し補強するものであってもよい。なお前述のように、挟持部材は薄肉のものであっても、本実施形態の構成は好適である。
【実施例】
【0027】
図を用いて本実施形態の実施例を具体的に説明する。図1は本実施形態に係るねじ1の説明図である。(a)はねじ1の全体の側面図であり、(b)はくびれ部1b1における断面図である。図2はねじ1により中間部材2と挟持部材3a、3bを固定する手順の説明図である。
【0028】
補強の対象となる中間部材2はフェノール樹脂発泡体、すなわちフェノールフォームからなる40mm厚の矩形板状(商品名:ネオマフォーム)を2枚重ね合わせたものである。
【0029】
この中間部材2を挟持して補強する挟持部材3a、3bは厚さ12mmの構造用合板からなり中間部材2と同一サイズの矩形板状である。
【0030】
ねじ1は、平状、皿状又はなべ状の頭部1aと、先端がテーパ−状で中間にくびれ部1b1を有する軸部1bとからなる。ねじ1は、ねじ山の加工の前段階のリベット状態のねじに対して平ダイスを用いた平転造によって軸部1bにねじ山を加工成形し、更にNC旋盤を用いた回転切削によって円形断面のくびれ部1b1を加工成形している。
【0031】
ねじ1の頭部1aの上端からくびれ部1b1の先端側の端部までの寸法Lは、中間部材2とこれを挟持する2枚の挟持部材3とを合わせた全体の厚さ(104mm)に等しい寸法に設定されている。
【0032】
上記構成のねじ1と挟持部材3a、3bによる中間部材2の補強手順は以下のとおりである。図2を用いて説明する。
【0033】
(1) 図2(a)に示すように、中間部材2を挟持部材3a、3bで挟んだ状態で水平な載置面4に載置する。なお、載置面4は、ねじ1が中間部材2と挟持部材3a、3bを貫通して突出する際に障害とならないように、ねじ1の螺入位置については部分的に空間4aを設けておく。
【0034】
(2) 上面(挟持部材3a側)から複数箇所所定のピッチでねじ1を螺入して下面(挟持部材3b側)からねじ1の先端部1b2を空間4aに至るまで突出させる。
【0035】
(3) 図2(b)に示すように、ねじ1の螺入により挟持部材3a、3bと一体化され補強された中間部材2を反転して、ねじの先端部1b2が突出した面(挟持部材3b側)が上になるように、載置面4上に載置する。
【0036】
(4) 突出した軸部1の先端をハンマー5を挟持部材3bの表面に沿って操作、打撃して破断する。
【0037】
(5) 上記(3)〜(5)の作業を最初に螺入したねじの中間点において再度行ない、ねじの螺入方向が交互となるようにする。
【0038】
上記の通り、ねじ1を用いて、2つの挟持部材3a、3bで中間部材2を挟持し補強すると、裏側から突出した鋭利な先端部1b2をハンマー5で横方向に打撃することによりくびれ部1b1で軸部1bが折れ、突出した先端部1b2のみを容易に破断することができる。従って作業者はねじ1の先端部1b2で怪我をすることがなく安全に作業をすすめることができる。
【0039】
また、引き抜き耐力上無効なテーパー状の先端部1b2は破断され挟持部材3bの内部には引き抜き耐力上有効な軸部1bのみが残る。従って、挟持部材3bの厚さをねじ1との係合のために最大限活用することができ挟持部材3bの締結を確実なものとすることができる。
【0040】
更に、挟持ねじ1を用いて反対方向(挟持部材3b側)からも螺入して締結することで頭部1aによる拘束が一方の挟持部材3に偏ることがなくなるので、挟持部材3a、3bの締結力を更に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るねじ及び中間部材の補強構造は、パネル化されてはいるが荷重を負担することが想定されていない断熱材に荷重を負担させたり構造的に自立させたい場合に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係るねじ1の説明図。
【図2】ねじ1により中間部材2と挟持部材3a、3bを固定する手順の説明図。
【符号の説明】
【0043】
1…ねじ、1a…頭部、1b…軸部、1b1…くびれ部、1b2…先端部、2…中間部材、3a…挟持部材、3b…挟持部材、4…載置面、4a…空間、5…ハンマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの挟持部材の間に中間部材を挟持し締結する際に使用するねじであって、
軸部は、
前記2つの挟持部材と中間部材の合計の厚さ寸法よりも大きな有効長さ寸法を有するとともに、
頭部から前記合計の厚さ寸法に対応する位置にくびれ部を設けたことを特徴とするねじ。
【請求項2】
2つの挟持部材の間に中間部材を挟んだ状態で重ね合わせ、
一方の挟持部材の表面から他方の薄肉の挟持部材に向かって請求項1に記載したねじを螺入し、
他方の薄肉の挟持部材の表面から突出した軸部をくびれ部で破断して前記2枚の挟持部材と中間部材とを締結して構成したことを特徴とする中間部材の補強構造。
【請求項3】
前記2つの挟持部材はいずれも薄肉であり、
前記他方の挟持部材の表面からも請求項1に記載したねじを螺入し、前記一方の挟持部材の表面から突出した軸部をくびれ部で破断して前記2つの挟持部材と中間部材とを締結して構成したことを特徴とする請求項2に記載した中間部材の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−267397(P2008−267397A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106936(P2007−106936)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】