説明

ねじ装置及び運動案内装置

【課題】無負荷域から負荷域に転動体を円滑に移動させることができるねじ装置を提供する。
【解決手段】循環部材8の無負荷戻し路10の長さ方向の端部に、ねじ軸1の転動体転走溝1aに対向する拘束部28を設ける。拘束部28とねじ軸1の転動体転走溝1aとの間には、転動体3が挟まれる。ナット2に対してねじ軸1を相対的に回転させることによって、循環部材8の拘束部28とねじ軸1の転動体転走溝1aとの間に挟まれる転動体3が負荷転動体転走路12又は無負荷戻し路10に引き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ軸とナットとの間に転がり運動可能に複数の転動体を介在させたねじ装置、及び軌道部材と移動部材との間に転がり運動可能に複数の転動体を介在させた運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、回転運動を直線運動に変換する機械要素である。ナットに対してねじ軸を相対的に回転させるときの摩擦を低減するために、ねじ軸の外周面のボール転走溝とこれに対向するナットの内周面の負荷ボール転走溝との間には、転がり運動可能に複数のボールが介在される。
【0003】
ねじ軸とナットとの間を転がるボールを循環させるために、ナットには循環部材としてリターンパイプが取り付けられる。リターンパイプには、ナットの螺旋状の負荷ボール転走溝の一端と他端とを接続する無負荷戻し路が形成される。ねじ軸のボール転走溝とナットの負荷ボール転走溝との間を転がるボールは、ナットの負荷ボール転走溝の一端まで転がった後、リターンパイプの無負荷戻し路内に掬い上げられ、リターンパイプの無負荷戻し路を経由した後、ナットの負荷ボール転走溝の他端に戻される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ねじ軸のボール転走溝とナットの負荷ボール転走溝との間の負荷ボール転走路では、ボールは圧縮荷重を受けながら転がり運動する。その一方、リターンパイプの無負荷戻し路では、ボールの周囲には遊びがあり、ボールは荷重を受けることなく後続のボールに押されながら移動し、負荷ボール転走路に移行する。
【0005】
他方、運動案内装置は、移動体の直線運動又は曲線運動を案内する機械要素である。軌道レールに対して移動ブロックが直線運動又は曲線運動するときの摩擦を低減するために、軌道レールの転動体転走部と移動ブロックの負荷転動体転走部との間には、転がり運動可能に複数のボール、ローラ等の転動体が介在される(例えば特許文献2参照)。
【0006】
移動ブロックには、転動体を循環させるためのサーキット状の循環経路が設けられる。循環経路は、軌道レールの転動体転走部と移動ブロックの負荷転動体転走部との間の転動体転走路、移動ブロックの負荷転動体転走部と平行に伸びる無負荷戻し路、及び移動ブロックの負荷転動体転走部の両端部と移動ブロックの無負荷戻し路の両端部とを接続するU字状の方向転換路から構成される。軌道レールの転動体転走部と移動ブロックの負荷転動体転走部との間を転がる転動体は、移動ブロックの負荷転動体転走部の一端まで転がった後、U字状の方向転換路に掬い上げられる。移動ブロックの無負荷戻し路を経由した転動体は、反対側の方向転換路から移動ブロックの負荷転動体転走部の他端に戻される。
【特許文献1】特開2003−194178号公報
【特許文献2】特開2008−89045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のボールねじにあっても運動案内装置にあっても、転動体の循環経路は負荷域と無負荷域の二種類が存在している。そして、無負荷域の無負荷戻し路を移動する転動体は後続の転動体に押されながら負荷域の負荷転動体転走路に移行する。
【0008】
しかし、図33に示されるように、無負荷戻し路71内の後方の転動体72が前方の転動体を押し込むと、無負荷戻し路71内で転動体72が蛇行する。このため、無負荷戻し路71から負荷転動体転走路73に転動体72が円滑に移動することが困難になる。
【0009】
そこで本発明は、無負荷域から負荷域に転動体を円滑に移動させることができるねじ装置及び運動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、外周面に螺旋状の転動体転走溝を有するねじ軸と、内周面に前記ねじ軸の前記転動体転走溝に対向する螺旋状の負荷転動体転走溝を有するナットと、前記ナットの前記負荷転動体転走溝の一端と他端とに接続され、転動体の周囲を囲む断面形状の無負荷戻し路を有する循環部材と、前記ねじ軸の前記転動体転走溝と前記ナットの前記負荷転動体転走溝との間の負荷転動体転走路、及び前記循環部材の前記無負荷戻し路から構成される循環経路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備え、前記循環部材の前記無負荷戻し路の長さ方向の端部には、前記ねじ軸の前記転動体転走溝に対向すると共に、前記ねじ軸の前記転動体転走溝との間で前記転動体を挟む拘束部が設けられ、前記ナットに対して前記ねじ軸を相対的に回転させることによって、前記循環部材の前記拘束部と前記ねじ軸の前記転動体転走溝との間に挟まれる転動体が前記負荷転動体転走路又は前記無負荷戻し路に引き込まれるねじ装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、外周面に螺旋状の転動体転走溝を有するねじ軸と、内周面に前記ねじ軸の前記転動体転走溝に対向する螺旋状の負荷転動体転走溝を有するナットと、前記ナットの前記負荷転動体転走溝の一端と他端とに接続され、転動体の周囲を囲む断面形状の無負荷戻し路を有する循環部材と、前記ねじ軸の前記転動体転走溝と前記ナットの前記負荷転動体転走溝との間の負荷転動体転走路、及び前記循環部材の前記無負荷戻し路から構成される循環経路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備え、前記循環部材の前記無負荷戻し路の長さ方向の端部には、前記ねじ軸の前記転動体転走溝に対向すると共に、前記ねじ軸の前記転動体転走溝との間で前記転動体を挟む拘束部が設けられ、前記ねじ軸の前記転動体転走溝と前記循環部材の前記拘束部との間における前記転動体の遊びが、前記無負荷戻し路における前記転動体の遊びよりも小さいか、又は存在しないねじ装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のねじ装置において、前記転動体はボールであり、前記ナットの前記負荷転動体転走溝の断面形状は、前記ボールの半径よりも大きい曲率半径の二つの円弧状曲線を含むゴシックアーチ溝形状に形成され、前記循環部材の前記拘束部の、前記ボールの進行方向に直交する面内での断面形状は、前記ボールの半径よりも大きい曲率半径の二つの円弧状曲線を含むゴシックアーチ溝形状に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のねじ装置において、前記循環部材の前記拘束部は、前記ボールの遊びが前記負荷転動体転走路に向かって徐々に小さくなるように直線的に伸びることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のねじ装置において、前記循環部材の前記無負荷戻し路には、前記拘束部に繋がると共に、前記ナットの軸線方向からみて、中心線が前記ねじ軸に向かって凸の円弧状の曲線になる曲線通路が設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、転動体転走部を有する軌道部材と、前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部、及び前記負荷転動体転走部と平行な無負荷戻し路を有する移動部材本体と、前記移動部材本体の移動方向の両端部に設けられ、前記負荷転動体転走部の端部と前記無負荷戻し路の端部を接続する方向転換路を有する蓋部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動部材本体の前記負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記無負荷戻し路、及び前記蓋部材の前記方向転換路から構成される循環経路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備え、前記移動部材本体の前記負荷転動体転走部に接続される前記蓋部材の前記方向転換路の長さ方向の端部には、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向すると共に、前記軌道部材の前記転動体転走部との間で前記転動体を挟む拘束部が設けられ、前記軌道部材に対して前記移動部材本体を相対的に運動させることによって、前記蓋部材の前記拘束部と前記軌道部材の前記転動体転走部との間に挟まれる前記転動体が前記負荷転動体転走路又は前記無負荷戻し路に引き込まれる運動案内装置である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、転動体転走部を有する軌道部材と、前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部、及び前記負荷転動体転走部と平行な無負荷戻し路を有する移動部材本体と、前記移動部材本体の移動方向の両端部に設けられ、前記負荷転動体転走部の端部と前記無負荷戻し路の端部を接続する方向転換路を有する蓋部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動部材本体の前記負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記無負荷戻し路、及び前記蓋部材の前記方向転換路から構成される循環経路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備え、前記移動部材本体の前記負荷転動体転走部に接続される前記蓋部材の前記方向転換路の長さ方向の端部には、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向すると共に、前記軌道部材の前記転動体転走部との間で前記転動体を挟む拘束部が設けられ、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記蓋部材の前記拘束部との間における前記転動体の遊びが、前記蓋部材の前記方向転換路における前記転動体の遊びよりも小さいか、又は存在しない運動案内装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無負荷域の無負荷戻し路と負荷域の負荷転動体転走路との間に、拘束部が設けられて遊びの少ない中間領域が設けられる。この中間領域では、後続の転動体に押し込まれることによって、ではなく、ねじ軸の回転によって、転動体が負荷転動体転走路又は無負荷戻し路に引き込まれる。このため、無負荷域から負荷域又は負荷域から無負荷域に転動体を円滑に移動させることができる。
【0018】
運動案内装置においても、無負荷域の無負荷戻し路と負荷域の負荷転動体転走路との間に、拘束部を設けて遊びの少ない中間領域を設ければ、後続の転動体に押し込まれることによって、ではなく、移動部材の運動によって、転動体を負荷転動体転走路に引き込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第一の実施形態のボールねじの斜視図を示す。ボールねじは、外周面に螺旋状の転動体転走溝であるボール転走溝1aが形成されるねじ軸1と、内周面にボール転走溝1aに対向する螺旋状の負荷転動体転走溝である負荷ボール転走溝2aが形成されるナット2と、ねじ軸1のボール転走溝1aとナット2の負荷ボール転走溝2aとの間に転がり運動可能に介在される複数のボール3(図4参照)と、を備える。
【0020】
ねじ軸1の外周面には、所定のリードのボール転走溝1aが研削加工や転造加工によって形成される。図4に示されるように、ボール転走溝1aの断面形状は、ボール3の半径よりも僅かに大きい半径の二つの円弧4を含むゴシックアーチ溝形状に形成される。二つの円弧の中心C1は、ボール3の中心C2よりも離れた位置にある。ボール3はゴシックアーチ溝形状のボール転走溝1aに二点で接触する。ボール3の中心C2とゴシックアーチ溝の底5と結んだ線Lと、円弧4とボール3との接触点6とボール3の中心C2とを結んだ線のなす接触角θは、例えば40〜50度に設定される。ボール転走溝1aは、熱処理された後、研削加工される。ボール転走溝1aの両側の縁に円弧状の面取り7を施してもよいし、ゴシックアーチ溝の底5に研削時の逃げになる逃げ溝を形成してもよい。
【0021】
図2は、ねじ軸1を取り外した状態のナット2の斜視図を示す。ナット2には、ねじ軸1が貫通する貫通孔2eが開けられる。ナット2の内周面には、所定のリードの螺旋状の負荷ボール転走溝2aが研削加工によって形成される。図4に示されるように、負荷ボール転走溝2aの断面形状は、ボール3の半径よりも僅かに大きい半径の二つの円弧4を含むゴシックアーチ溝形状に形成される。ゴシックアーチ溝形状はねじ軸1のボール転走溝1aと同一である。負荷ボール転走溝2aは、熱処理された後、研削加工される。
【0022】
ナット2の軸線方向の一端部には、ナット2を相手方の機械部品に取り付けるためのフランジ2bが形成される。ナット2の外周面には、平坦な平取り部2cが形成される。平取り部2cには、循環部材8が取り付けられる。循環部材8には、ナット2の負荷ボール転走溝の一端及び他端に接続される無負荷戻し路10(図6参照)が形成される。
【0023】
図5は、循環部材8を取り外したナットの斜視図を示す。循環部材8の無負荷戻し路10の長さ方向の両端部には、ねじ軸1のボール転走溝1aとナット2の負荷ボール転走溝2aとの間の負荷ボール転走路12を転がるボール3を無負荷戻し路10内に掬い上げる一対の掬上げ部14が形成される。ナット2の平取り部2cには、ナット2の外面から内面まで貫通し、循環部材8の一対の掬上げ部14が嵌められる一対の貫通孔15が開けられる。貫通孔15は、ナット2の負荷ボール転走溝2aに沿って伸びる長孔からなる。一対の貫通孔15の間には、ナット2の軸線方向に伸びる切欠き溝16が形成される。切欠き溝16は、平らな溝底16aと、この溝底16aから立ち上がり、対向する一対の平らな内壁面16bと、を有する。溝底16aは、平取り部2cの平面と平行であり、ナット2の軸線と平行な平面内に位置する。内壁面16bはナット2の軸線と平行な平面内に位置し、かつ溝底16aが含まれる平面に直交する。
【0024】
ナット2の貫通孔15及び切欠き溝16には、循環部材8が嵌められる。循環部材8は、一対の掬上げ部14を含む一対の端部8aと、一対の端部8a間の本体部8bと、を有する。端部8aはナット2の負荷ボール転走溝2aに沿って細長く伸びる。端部8aの断面形状は貫通孔15の断面形状に一致する。本体部8bは、ナット2の軸線方向に伸びる。本体部8bの断面形状は、四角形と半円形とを組み合わせた形状である。本体部8bの側面には、切欠き溝16の内壁面16bに対応した一対の平らな外壁面17が形成される。本体部8bの底面19は、切欠き溝16の溝底16aに対応した平面に形成される。
【0025】
この循環部材8は、無負荷戻し路10に沿って二分割された一対の分割体18を結合させてなる。図中符号24aが分割面である。一対の分割体18は同じ形状に形成され、共通の金型に樹脂を射出成形することで製造される。一対の分割体18はレーザー溶接等の溶接、溶着、又は接着によって結合される。
【0026】
図2に示されるように、循環部材8をナット2に装着するとき、循環部材8の一対の端部8aがナット2の一対の貫通孔15に嵌まり、循環部材8の本体部8bがナット2の切欠き溝16に嵌まる。図3に示されるように、循環部材8の本体部8bの上部20は切欠き溝16から突出する。本体部8bの上部20は、押え部材21によって押さえられる。押え部材21は、本体部8bの上部に合わせてU字状に曲げられた本体押え21aと、本体押え21aの両側に設けられる取付け座21bと、から構成される。押え部材21は、金属板を曲げ加工することで製造される。取付け座21bには通し孔21cが開けられる。通し孔21cにボルトを通し、ボルトをナット2のねじ穴にねじ込むことで、押え部材21がナット2に取り付けられる。循環部材8は押え部材21とナット2の切欠き溝16との間に挟まれ、ナット2に固定される。
【0027】
図5に示されるように、循環部材8がナット2の切欠き溝16に嵌まり、循環部材8の本体部8bの底面19がナット2の切欠き溝16の溝底16aに接触することによって、ナット2の軸線と直交する平面において、循環部材8のX方向位置が位置決めされる。また、循環部材8の本体部8bの外壁面がナット2の切欠き溝16の内壁面16bに接触することによって、当該平面上の循環部材8のY方向位置が位置決めされる。そして、循環部材8の端部8aがナット2の貫通孔15に嵌まることによって、ナット2の軸線方向における循環部材8のZ方向位置が位置決めされる。すなわち、ナット2に対して循環部材8を、ひいてはナット2の負荷ボール転走溝2aに対して循環部材8の掬上げ部14を正確に位置決めすることができる。これにより、無負荷戻し路10と負荷ボール転走路12との間で円滑にボール3を移動させることができる。循環部材8を切欠き溝16の内壁面16b間に挟むことによって、二分割された循環部材8の分割面24aが開くことを防止できる。
【0028】
図6は、ボールねじのボール循環経路を示す。ねじ軸1のボール転走溝1aとナット2の負荷ボール転走溝2aとの間には、螺旋状の負荷ボール転走路12が形成される。負荷ボール転走路12の一端から他端まで移動するボール3を循環させることができるように、負荷ボール転走路12の一端と他端とは無負荷戻し路10によって接続される。負荷ボール転走路12及び無負荷戻し路10から構成される循環経路には、多数のボール3が配列・収容される。上述のように、無負荷戻し路10は循環部材8に形成される。無負荷戻し路10は、負荷ボール転走路12の巻数が2巻、3巻、4巻等の整数に近くなる構造を持つ。
【0029】
図7は、ナット2の側方からみた循環経路の中心線(ボール3の中心の軌道)を示し、図8は、ナット2の軸線方向からみた無負荷戻し路10の中心線(ボール3の中心の軌道)を示す。無負荷戻し路10は、曲線通路22、半径方向通路23、及び軸線方向通路24の三つの区間に分けることができる。図8に示されるように、曲線通路22は、ナット2の軸線方向からみて、円形状の負荷ボール転走路12を移動するボール3をその中心の軌道がねじ軸1に向かって凸の円弧になるように移動させる。従来のボールねじにおいては、ナット2の軸線方向からみて、円形状の負荷ボール転走路12の接線方向にボール3を掬い上げていた。これに対して、本実施形態のボールねじにおいては、リニアガイドのように円弧の軌道に沿ってボール3を掬い上げる。曲線通路22においては、掬上げ部14の円弧状の曲面に沿ってボール3を掬い上げる。負荷ボール転走路12から曲線通路22にボール3が円滑に移動するように、負荷ボール転走路12と曲線通路22との接続点P1(掬上げ点)で接線方向が連続する。
【0030】
図7に示されるように、曲線通路22の中心線はナット2の側方からみてナット2の軸線2fと直交する。図8に示されるように、曲線通路22は、ナット2の軸線方向からみて、ボール3を半径方向に移動させる半径方向通路23に接続される。半径方向通路23の中心線は、ナット2の軸線方向からみてナット2の半径方向に伸びる。図7に示されるように、半径方向通路23は後方に90度に曲げられた後、ナット2の軸線2fと平行な軸線方向通路24に接続される。軸線方向通路24は、ボール3をナット2に軸線と平行に移動させる。軸線方向通路24を移動したボール3は、反対側の半径方向通路23及び曲線通路22を経由して再び負荷ボール転走路12に戻される。図8に示されるように、手前側の曲線通路22と奥側の曲線通路22とは、ナット2の中心線2gを境にした線対称に形成される。
【0031】
図9は、ねじ軸1上に展開された無負荷戻し路10の斜視図を示す。循環部材8の無負荷戻し路10にナット2の軸線と平行な軸線方向通路24を設け、ボール3をナット2の軸線と平行に循環させることで、ナット2の軸線方向からみた無負荷戻し路10の入口と出口を同じ位置に近づけることができる。このため、負荷ボール転走路12の巻数を整数に近づけることできる。また、リニアガイドのように循環部材8の曲線通路22の掬上げ部14がボール3を円弧状に掬い上げるので、負荷ボール転走路12の巻数を整数により近づけることができ、ボール3の円滑な循環も可能になる。
【0032】
図10及び図11は、ねじ軸1及び循環部材8を示す。ねじ軸1上に展開される無負荷戻し路10は、循環部材8に形成される。循環部材8の無負荷戻し路10は、ボール3の周囲を囲む閉曲線の円形状に形成される。循環部材8の無負荷戻し路10には、入口10aと出口10bが設けられる。入口10aが負荷ボール転走路12の一端に接続され、出口10bが負荷ボール転走路12の他端に接続される。循環部材8は、無負荷戻し路10の中心線に沿って二分割される。図10に示されるように、無負荷戻し路10の軸線方向通路24は、ねじ軸1の軸線と平行な分割面24aで二分割され、図11に示されるように、無負荷戻し路10の半径方向通路23及び曲線通路22は、ねじ軸1の軸線方向からみて、これらの中心線に沿った分割面24bで二分割される。曲線通路22の掬上げ部14で分割されないように、掬上げ部14は二分割された分割体のそれぞれに形成される。
【0033】
図12及び図13は、ナット2に取り付けられた循環部材8の詳細図を示す。循環部材8の曲線通路22には、負荷ボール転走路12を転がるボール3を掬い上げる掬上げ部14が形成される。図13に示されるように、ねじ軸1の軸線方向からみて、掬上げ部14の背面14aは半径方向通路23の中心線と平行である。掬上げ部14の内周面14bには円弧状の曲面が形成される。掬上げ部14はねじ軸1の中心に向かって徐々に厚みが厚くなる。掬上げ部14の厚さを厚くすることで、ボール3が衝突する掬上げ部14の強度を高くすることができる。
【0034】
循環部材8の前記無負荷戻し路10の長さ方向の端部には、ねじ軸1のボール転走溝に対向する拘束部28が形成される。拘束部28がナット2の負荷ボール転走溝2aに接続される部分になる。この拘束部28とねじ軸1の転動体転走溝との間には、ボール3が挟まれる。拘束部28の、ボール3の進行方向と直交する面内での断面形状は、ナット2の負荷ボール転走溝2aの断面形状に合わせたゴシックアーチ溝形状に形成される。ねじ軸1のボール転走溝1aと循環部材8の拘束部28との間に挟まれるボール3の遊びは、閉曲線の断面を持つ無負荷戻し路10におけるボール3の遊びよりも小さいか、又は存在しない。循環部材8の拘束部28は、ボール3の遊びが負荷ボール転走路12に向かって徐々に小さくなるように、ボール3の進行方向に直線的に伸びる。
【0035】
循環部材8の掬上げ部14の、ボール3の進行方向と直交する面内での断面形状は、ボール3の半径よりも僅かに大きい曲率半径の単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状に形成される。循環部材8の半径方向通路23及び軸線方向通路24の断面形状は、ボール3の半径よりも僅かに大きい半径の円形状に形成される。
【0036】
図14及び図15は、循環部材8の無負荷戻し路10の断面形状の変化を示す。(1)から(2)に至る領域、すなわち負荷ボール転走路12及び循環部材8の拘束部28の領域においては、これらの断面形状がゴシックアーチ溝形状に形成される。(2)から(3)に至る領域、すなわち曲線通路22の領域においては、曲線通路22の外側の断面形状は、拘束部28に合わせたゴシックアーチ溝形状からサーキュラーアーク溝形状に除々に変化する。曲線通路22の内側の掬上げ部14の断面形状はサーキュラーアーク溝形状に形成される。(3)から(4)に至る領域、すなわち半径方向通路23及び軸線方向通路24の領域においては、これらに断面形状が円形状に形成される。(4)から(5)に至る領域の無負荷戻し路10の断面形状は、(2)から(3)に至る領域と同一である。(5)から(6)に至る領域の無負荷戻し路10の断面形状は、(1)から(2)に至る領域と同一である。
【0037】
図16は、(2)から(3)に至る領域である曲線通路22の断面の詳細図を示す。曲線通路22においては、ナット2側(拘束部28側)の断面形状が二つの円弧R1からなるゴシックアーチ溝形状に形成される。その一方、ねじ軸1側(掬上げ部14側)の断面形状が単一の円弧R2からなるサーキュラーアーク溝形状に形成される。
【0038】
図13に示されるように、負荷ボール転走路12においては、ボール3はねじ軸1のボール転走溝1aとナット2の負荷ボール転走溝2aとの間に挟まれて、圧縮荷重を受けながら転がり運動する。一方、循環部材8の無負荷戻し通路10では、ボール3と無負荷戻し転走路10との間には僅かな遊びがあり、ボール3は負荷を受けることなく、後続のボール3に押されながら移動する。
【0039】
従来のボールねじにおいては、ボール3の循環経路は無負荷域の無負荷戻し路10と負荷域の負荷ボール転走路12との二種類が存在している。これに対して、本実施形態のボールねじにおいては、無負荷域の無負荷戻し路10と負荷域の負荷ボール転走路12との間に、拘束部が設けられて遊びの少ない中間領域が設けられる。この中間領域では、後続のボール3に押し込まれることによってではなく、ねじ軸1の回転によって、ボール3が負荷ボール転走路12に引き込まれる。このため、無負荷域から負荷域にボール3を円滑に移動させることができる。また、ボール3が負荷ボール転走路12から無負荷戻し路10へ移動するときも、循環部材8の拘束部28とねじ軸1との間で案内されるので、ボール3を無負荷戻し路10の内方へ円滑に移動させることができる。
【0040】
また、循環部材8の無負荷戻し路10の拘束部28の断面形状をナット2の負荷ボール転走溝2aの断面形状に合わせたゴシックアーチ溝形状に形成することで、拘束部28で正しく整列されたボール3を負荷ボール転走溝2aへ円滑に移動させることができる。拘束部28におけるボール3の遊びが負荷ボール転走路12に向かって徐々に小さくなるようにすることで、ボール3をより円滑に移動させることができる。
【0041】
図17に示されるように、従来のボールねじにおいては、循環部材の無負荷戻し路10の断面形状がサーキュラーアーク溝形状に形成される。一方、ナット2の負荷ボール転走溝2aの断面形状はゴシックアーチ溝形状に形成される。このため、ナット2の負荷ボール転走溝2aの繋ぎ目に断面形状を連続にするための面取り29を加工する必要があった。これに対して、本実施形態のように、循環部材8の拘束部28の断面形状をゴシックアーチ溝形状に形成することで、ナット2に面取り加工しなくてもボール3が無負荷戻し路10から負荷ボール転走溝2aへ容易に乗り移ることができる。
【0042】
図13に示されるように、掬上げ部14にはボール3が衝突する。掬上げ部14の断面形状をゴシックアーチ溝形状に形成すると、ボール3が衝突する掬上げ部14の先端にエッジが生じ易い。掬上げ部14の断面形状をサーキュラーアーク溝形状に形成し、掬上げの先端を円弧状に丸めることで、掬上げ部14の先端にエッジが発生するのを防止できる。また、無負荷戻し路10の半径方向通路23及び軸線方向通路24の断面形状を円形状に形成することで、金型による分割体18の製造が容易になる。
【0043】
図18は、完全な整数巻きを実現するための循環経路を示す。ナット2の軸線方向からみて、ねじ軸1の中心S1と循環部材8の半径方向通路23の中心線を結んだ線L1(中心線)から、ねじ軸1の中心S1とナット2の負荷ボール転走溝と循環部材8の無負荷戻し路10との境目B1(図13参照、循環開始点)とを結んだ線L2までの、負荷ボール転走路12におけるボール3の中心の円弧形状の軌道上の距離αが0より大きく、かつ前記ボール3の直径Daの1.5倍以下に設定される。距離αが短くなればなる程、ターンすることが難しくなるので、曲線通路22の中心線は、ナット2の中心線L1を超えた後、再びナット2の中心線L1上に戻るように設計してもよい。
【0044】
もし距離αが0ならば、ねじ軸1の軸線方向からみて、ボール3を掬い上げる位置において、手前と奥のボール3が重なってしまう分、負荷を受けられるボール3の数が負荷ボール転走路12の他の部分よりも一個多くなる。その一方、距離αが1・Da以上であると、ボール3を掬い上げる位置において、逆に負荷を受けられるボール3の数が他の部分よりも一個少なくなる。ただし、ターンする距離が長くなるので、ボール3をターンさせ易くなる。整数巻きに近付けることと、ボール3のターンのし易さを考慮して、距離αを0より大きく、かつボール直径の1.5倍以下に設定する。円弧状の距離αをボール直径の0.4倍以上かつ0.6倍以下、望ましくは0.5倍に設定することで、図19に示されるように、ねじ軸1の軸線方向からみて、手前側と奥側にある二個のボール3を接触するように並べることができ、負荷ボール転走路12にすきまなくボール3を配列することができる。言い換えれば、手前側でボール3が負荷ボール転走路12から掬われるのと同時に、奥側でボール3が負荷ボール転走路12に戻る。したがって、完全な整数巻きが実現できるねじ装置が得られる。
【0045】
図20は、本発明の第二の実施形態のボールねじの斜視図を示す。この実施形態のボールねじにおいても、負荷ボール転走路33の巻数は整数に近づけられている。ねじ軸31にボール転走溝31aが形成され、ナット32に負荷ボール転走溝32aが形成される点は、上記第一の実施形態のボールねじと同一である。
【0046】
図21及び図22は循環部材34が取り付けられたナット32を示す。循環部材34には、負荷ボール転走路33の一端と他端に接続される無負荷戻し路35が形成される。無負荷戻し路35は、負荷ボール転走路33を移動するボールを円弧状の軌道に沿って掬い上げる曲線通路36(図22参照)と、掬い上げたボールを半径方向に移動させる半径方向通路37(図22参照)と、ボールをナット32の軸線と平行に移動させる軸線方向通路38(図21参照)と、から構成される。
【0047】
図23に示されるように、循環部材34は、ナット32の軸線に沿って二分割された一対の分割体39を結合させてなる。
【0048】
図24に示されるように、ナット32にはその外側から内側に貫通する一対の貫通孔32bが開けられる。一対の貫通孔32bは、ナット32の軸線方向に並べられる。
【0049】
図25及び図26は、循環部材34の詳細図を示す。一対の分割体39のそれぞれに負荷ボール転走路33を移動するボールを円弧の軌道に沿って掬い上げる掬上げ部40が形成される。
【0050】
図27は掬上げ部40の詳細図を示す。循環部材34の無負荷戻し路35の長さ方向の端部の、ナット32の負荷ボール転走溝32aに接続される部分には、拘束部42が形成される。この拘束部42とねじ軸31との間には、ボール41が挟まれる。拘束部42の断面形状は、ナット32の負荷ボール転走溝32aの断面形状に合わせたゴシックアーチ溝形状に形成される。一方、循環部材34の掬上げ部40の断面形状は、ボール41の半径よりも大きい半径のサーキュラーアーク溝形状に形成される。
【0051】
図28及び図29は、循環経路を循環するボール41を示す。ナット32に対してねじ軸31を相対的に回転させると、ねじ軸31とナット32との間の負荷ボール転走路33をボール41が転がり運動する。負荷ボール転走路33の一端まで移動したボール41は、循環部材34の掬上げ部40によって、円弧状の軌道に沿って掬い上げられる。循環部材34の曲線通路36、半径方向通路37、軸線方向通路38を通過したボール41は、反対側の半径方向通路37、曲線通路36を経由して再び負荷ボール転走路33に戻される。ボール41が負荷ボール転走路33に戻されるとき、ねじ軸31の回転によって、ねじ軸31と循環部材34の拘束部42との間に挟まれるボール41が負荷ボール転走路33に引き込まれる。このため、ボール41を円滑に移動させることができる。
【0052】
図30は、本発明の第三の実施形態の運動案内装置の斜視図を示す。運動案内装置(リニアガイド)は、軌道部材である軌道レール51と、軌道レール51に相対的に直線運動可能に組みつけられる移動部材である移動ブロック52と、から構成される。軌道レール51には、転動体転走部であるボール転走溝51aが形成される。
【0053】
移動ブロック52は、金属製の移動ブロック本体53と、移動ブロック本体53の移動方向の両端部に設けられる樹脂製の蓋部材であるエンドプレート54と、から構成される。移動ブロック本体53には、軌道レール51のボール転走溝51aに対向する負荷転動体転走部である負荷ボール転走溝53aが形成されると共に、負荷ボール転走溝53aと平行な無負荷戻し路55が形成される。エンドプレート54には、負荷ボール転走溝53aの端部と無負荷戻し路55の端部とを接続するU字状の方向転換路56(図31参照)が形成される。
【0054】
図31に示されるように、軌道レール51のボール転走溝51aと移動ブロック本体53の負荷ボール転走溝53aとの間の負荷ボール転走路57、無負荷戻し路55、及びエンドプレート54の方向転換路56から構成されるサーキット状の循環経路には、複数のボール58が循環可能に配列される。ボール58はリテーナバンド59によって一連に保持されている。ボール58間にはボール58同士の接触を防止するスペーサ60が介在される。
【0055】
エンドプレート54のU字状の方向転換路56の長さ方向の端部には、軌道レール51のボール転走溝51aに対向する拘束部62が設けられる。軌道レール51のボール転走溝51aとエンドプレート54の拘束部62との間には、ボール58が挟まれる。軌道レール51のボール転走溝51aとエンドプレート54の拘束部62との間におけるボール58の遊びは、エンドプレート54の方向転換路56におけるボール58の遊びよりも小さいか、又は存在しない。
【0056】
図32に示されるように、拘束部62は移動ブロック本体53の負荷ボール転走溝53aに向かって直線状に伸びる。拘束部28におけるボール58の遊びは、移動ブロック本体53の負荷ボール転走溝53aに向かって除々に小さく設定される。
【0057】
軌道レール51に対して移動ブロック52を相対的に直線運動させることによって、エンドプレート54の拘束部62と軌道レール51のボール転走溝51aとの間に挟まれるボール58が、軌道レール51のボール転走溝51aと移動ブロック本体53の負荷ボール転走溝53aとの間の負荷ボール転走路57に引き込まれる。このため、ボール58を円滑に循環させることができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更できる。例えば、運動案内装置としてはボールスプラインも含まれる。また、転動体には、ボールの替わりにローラを用いることができる。ボール間にはボール同士の接触を防止するためのスペーサを介在させてもよい。
【0059】
ゴシックアーチ溝形状は、二つの円弧から構成されなくても、ボールと二点で接触できる曲線であれば、二つのスプライン曲線、二つのクロソイド曲線等から構成されてもよい。
【0060】
循環部材の拘束部の断面形状は、ゴシックアーチ溝形状に限られることはなく、ボールの遊びを少なくすることができれば、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状に形成されてもよい。ねじ軸の軸線方向からみた拘束部の形状は、直線的に伸びていなくても、ねじ軸のボール転走溝に対応した円弧状に曲がっていてもよい。
【0061】
なお、ボールねじの循環方式はリターンパイプ方式に限らず、エンドキャップ方式でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第一の実施形態のボールねじの斜視図
【図2】ナットの斜視図
【図3】循環部材の拡大図
【図4】ねじ軸のボール転走溝及びナットの負荷ボール転走溝の断面図
【図5】循環部材を取り外したナットの斜視図
【図6】ボールねじの循環経路を示す斜視図
【図7】ナットの側方からみた循環経路の中心線を示す図
【図8】ナットの軸線方向からみた無負荷戻し路の中心線を示す図
【図9】ねじ軸上に展開された無負荷戻し路の斜視図
【図10】ねじ軸及び循環部材の斜視図
【図11】ねじ軸及び循環部材の正面図
【図12】ナットに取り付けられた循環部材の斜視図
【図13】ナットに取り付けられた循環部材の正面図(一部断面を含む)
【図14】循環部材の無負荷戻し路の断面形状の変化を示す図
【図15】循環部材の無負荷戻し路の断面形状の変化を示す図
【図16】曲線通路の断面の詳細図
【図17】従来のボールねじの面取り加工を示す概念図
【図18】完全な整数巻きを実現するための循環経路の正面図
【図19】ねじ軸の頂点にボールを二つ並べた状態を示す正面図
【図20】本発明の第二の実施形態のボールねじの斜視図
【図21】ナットの側面図
【図22】ナットの正面図
【図23】ナットの平面図
【図24】循環部材を取り外したナットの平面図
【図25】循環部材の分割体の斜視図
【図26】循環部材の斜視図
【図27】循環部材の掬上げ部の詳細図(図26のIIXVI部)
【図28】循環経路の斜視図
【図29】循環経路の側面図
【図30】第三の実施形態の運動案内装置の斜視図
【図31】循環経路の断面図
【図32】拘束部の詳細図(図31のIIIXI部拡大図)
【図33】従来の無負荷戻し路を移動するボールを示す概念図
【符号の説明】
【0063】
1a…ボール転走溝(転動体転走溝),1…ねじ軸,2…ナット,2a…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走溝),3…ボール(転動体),8…循環部材,8a…端部,8b…本体部,10…無負荷戻し路,12…負荷ボール転走路(負荷転動体転走路),14…掬上げ部,18…分割体,22…曲線通路,23…半径方向通路,24…軸線方向通路,28…拘束部,31…ねじ軸,31a…ボール転走溝(転動体転走溝),32…ナット,32a…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走溝),34…循環部材,35…無負荷戻し路,36…曲線通路,37…半径方向通路,38…軸線方向通路,39…分割体,40…掬上げ部,41…ボール(転動体),42…拘束部,51…軌道レール(軌道部材),51a…ボール転走溝(転動体転走部),52…移動ブロック,53…移動ブロック本体(移動部材本体),53a…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部),54…エンドプレート(蓋部材),55…無負荷戻し路,56…方向転換路,57…負荷ボール転走路(負荷転動体転走路),58…ボール(転動体),62…拘束部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状の転動体転走溝を有するねじ軸と、
内周面に前記ねじ軸の前記転動体転走溝に対向する螺旋状の負荷転動体転走溝を有するナットと、
前記ナットの前記負荷転動体転走溝の一端と他端とに接続され、転動体の周囲を囲む断面形状の無負荷戻し路を有する循環部材と、
前記ねじ軸の前記転動体転走溝と前記ナットの前記負荷転動体転走溝との間の負荷転動体転走路、及び前記循環部材の前記無負荷戻し路から構成される循環経路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備え、
前記循環部材の前記無負荷戻し路の長さ方向の端部には、前記ねじ軸の前記転動体転走溝に対向すると共に、前記ねじ軸の前記転動体転走溝との間で前記転動体を挟む拘束部が設けられ、
前記ナットに対して前記ねじ軸を相対的に回転させることによって、前記循環部材の前記拘束部と前記ねじ軸の前記転動体転走溝との間に挟まれる転動体が前記負荷転動体転走路又は前記無負荷戻し路に引き込まれるねじ装置。
【請求項2】
外周面に螺旋状の転動体転走溝を有するねじ軸と、
内周面に前記ねじ軸の前記転動体転走溝に対向する螺旋状の負荷転動体転走溝を有するナットと、
前記ナットの前記負荷転動体転走溝の一端と他端とに接続され、転動体の周囲を囲む断面形状の無負荷戻し路を有する循環部材と、
前記ねじ軸の前記転動体転走溝と前記ナットの前記負荷転動体転走溝との間の負荷転動体転走路、及び前記循環部材の前記無負荷戻し路から構成される循環経路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備え、
前記循環部材の前記無負荷戻し路の長さ方向の端部には、前記ねじ軸の前記転動体転走溝に対向すると共に、前記ねじ軸の前記転動体転走溝との間で前記転動体を挟む拘束部が設けられ、
前記ねじ軸の前記転動体転走溝と前記循環部材の前記拘束部との間における前記転動体の遊びが、前記無負荷戻し路における前記転動体の遊びよりも小さいか、又は存在しないねじ装置。
【請求項3】
前記転動体はボールであり、
前記ナットの前記負荷転動体転走溝の断面形状は、前記ボールの半径よりも大きい曲率半径の二つの円弧状曲線を含むゴシックアーチ溝形状に形成され、
前記循環部材の前記拘束部の、前記ボールの進行方向に直交する面内での断面形状は、前記ボールの半径よりも大きい曲率半径の二つの円弧状曲線を含むゴシックアーチ溝形状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ装置。
【請求項4】
前記循環部材の前記拘束部は、前記ボールの遊びが前記負荷転動体転走路に向かって徐々に小さくなるように直線的に伸びることを特徴とする請求項3に記載のねじ装置。
【請求項5】
前記循環部材の前記無負荷戻し路には、前記拘束部に繋がると共に、前記ナットの軸線方向からみて、中心線が前記ねじ軸に向かって凸の円弧状の曲線になる曲線通路が設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載のねじ装置。
【請求項6】
転動体転走部を有する軌道部材と、
前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部、及び前記負荷転動体転走部と平行な無負荷戻し路を有する移動部材本体と、
前記移動部材本体の移動方向の両端部に設けられ、前記負荷転動体転走部の端部と前記無負荷戻し路の端部を接続する方向転換路を有する蓋部材と、
前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動部材本体の前記負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記無負荷戻し路、及び前記蓋部材の前記方向転換路から構成される循環経路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備え、
前記移動部材本体の前記負荷転動体転走部に接続される前記蓋部材の前記方向転換路の長さ方向の端部には、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向すると共に、前記軌道部材の前記転動体転走部との間で前記転動体を挟む拘束部が設けられ、
前記軌道部材に対して前記移動部材本体を相対的に運動させることによって、前記蓋部材の前記拘束部と前記軌道部材の前記転動体転走部との間に挟まれる前記転動体が前記負荷転動体転走路又は前記無負荷戻し路に引き込まれる運動案内装置。
【請求項7】
転動体転走部を有する軌道部材と、
前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部、及び前記負荷転動体転走部と平行な無負荷戻し路を有する移動部材本体と、
前記移動部材本体の移動方向の両端部に設けられ、前記負荷転動体転走部の端部と前記無負荷戻し路の端部を接続する方向転換路を有する蓋部材と、
前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動部材本体の前記負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記無負荷戻し路、及び前記蓋部材の前記方向転換路から構成される循環経路に循環可能に配列される複数の転動体と、を備え、
前記移動部材本体の前記負荷転動体転走部に接続される前記蓋部材の前記方向転換路の長さ方向の端部には、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向すると共に、前記軌道部材の前記転動体転走部との間で前記転動体を挟む拘束部が設けられ、
前記軌道部材の前記転動体転走部と前記蓋部材の前記拘束部との間における前記転動体の遊びが、前記蓋部材の前記方向転換路における前記転動体の遊びよりも小さいか、又は存在しない運動案内装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2010−38197(P2010−38197A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198981(P2008−198981)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】