説明

ばね加圧式接合装置

【課題】装置全体の小型化、設置占有面積の減少を可能にし、加圧力の増大に適し、またアクチュエータの構造を簡単にしてそのシール交換などのメンテナンス性を向上させ、汎用アクチュエータの使用も可能にする。
【解決手段】基台部50に対して昇降自在に保持した接合ヘッドを、加圧力設定用ばねを介して下向きに加圧するばね加圧式接合装置において、接合ヘッドの昇降用アクチュエータ60の下方に加圧力設定用ばね78を配設し、昇降用アクチュエータ60の加圧出力が加圧力設定用ばね78を介して接合ヘッドを加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被接合物にばねを介して加圧力を加えつつ加熱して接合するばね加圧式接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント配線基板に電子部品等を接合するリフローはんだ付け装置、プラスチック部品の熱圧着装置、スポット溶接などの溶接装置が公知である。またレーザ光により溶接するレーザスポット溶接装置もある。
【0003】
この種の接合装置では、エアシリンダなどのアクチュエータの加圧力をばねを介して接合ヘッドに伝え、ばねが所定量圧縮された状態(設定加圧力となる状態)をマイクロスイッチなどで検出し、加熱電流や溶接電流を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−195936
【0005】
【特許文献2】特開2007−173522
【0006】
【特許文献3】特開平7−32177
【0007】
特許文献1,2,3には、基台部に保持したアクチュエータにより、昇降部を昇降させる一方、この昇降部に上下動自在に保持した押圧シャフト(ロッド)を下向きに加圧力設定用ばね(コイルばね)で加圧しておくものが示されている。ここに昇降部はアクチュエータの前方に突出するように配設され、昇降部の上端(すなわちコイルばね収容筒の上端)に加圧力設定用ばねの加圧力設定部(手動のツマミ、ダイヤル)を設けていた。
【0008】
なお特許文献1,3ではアクチュエータとして足踏みペダルによる踏力を利用し、特許文献2ではモータを用いている。
【0009】
図4は出願人の製品である溶接ヘッド(型式NA−72)の構造を示す側断面図である。この従来例はアクチュエータとしてエアシリンダ1を用い、このエアシリンダ1のピストン軸2内に押圧シャフト3を上下スライド自在に保持し、このピストン軸2に内装したコイルばね4の下端で押圧シャフト3を押し下げる一方、コイルばね4の上端をピストン軸2の上端に設けた加圧力調整機構5により支持したものである。
【0010】
なお図4において、6は基台部(図示せず)に固定した本体部であり、この本体部6にエアシリンダ1のシリンダ7が固定されている。ピストン8に固定されたピストン軸2は、このシリンダ7とシリンダキャップ9を貫通して上下動する。
【0011】
加圧力調整機構5は、ピストン軸2の上端から上下動可能でかつ回転を規制されたナット部材10と、このナット部材10に上方から螺入する送りねじ11とを持ち、この送りねじ11の上端に加圧力設定部となるダイヤル12が固定されている。従ってこのダイヤル12の回転によりナット部材10を上下動させることによって、ピストン軸2が押圧シャフト3に対する加圧力を調整することができる。
【0012】
13は押圧力シャフト3の下端に固定された接合ヘッドである。14は加圧力検出手段であり、接合ヘッド13のピストン軸2に対する変位(すなわちばね4の圧縮量)を検出する。すなわち本体部6をピストン軸2と平行に貫通するロッド15の下端が接合ヘッド13に固定され、ロッド15の上端の変位をピストン軸2に固定されたマイクロスイッチ16によって検出するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1,2,3のものは、昇降部の上端(コイルばねを収容する筒の上端)にばね加圧力調整機構を設けているため、昇降用アクチュエータを昇降部あるいはコイルばね収容筒の後方に配設する必要が生じ、全体が大型化して設置場所の専有面積が増える。またアクチュエータによる下向きの加圧位置と、接合ヘッドによる接合位置(ワークに接触する位置)とが前後に大きく離れる(オフセット量が増大する)ので、加圧力が大きい場合(例えば、大きい加圧を必要とする機構部品や太い撚り線等の溶接の場合)にアクチュエータと接合ヘッドを繋ぐ腕に大きい曲げ方向の力が加わり構造上不利になるという問題も生じる。
【0014】
また図4に示したものによれば、アクチュエータ1のピストン軸2と押圧シャフト3が同軸に配置されるので前記した特許文献1〜3のような問題は無い。しかしピストン軸2の構造が特殊で複雑になるため、高価になると共に、定期的に必要になるピストン8のシール交換作業が非常に面倒で作業性が悪いという問題もある。
【0015】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、装置全体の小型化、設置占有面積の減少を可能にし、加圧力の増大に適し、またアクチュエータの構造を簡単にしてそのシール交換などのメンテナンス性を向上させ、汎用アクチュエータの使用も可能にすることができるばね加圧式接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明によればこの目的は、基台部に対して昇降自在に保持した接合ヘッドを、加圧力設定用ばねを介して下向きに加圧するばね加圧式接合装置において、接合ヘッドの昇降用アクチュエータの下方に加圧力設定用ばねを配設し、昇降用アクチュエータの加圧出力が加圧力設定用ばねを介して接合ヘッドを加圧することを特徴とするばね加圧式接合装置、により達成される。
【発明の効果】
【0017】
アクチュエータの下方に加圧力設定用ばねを配設し、アクチュエータの加圧出力が加圧力設定用ばねを介して接合ヘッドを加圧するようにしたので、アクチュエータは接合ヘッドの上方に配置でき、装置全体の小型化が図れ、その設置面積を減少させることができる。またアクチュエータの加圧位置と接合ヘッドの接合位置とのオフセット量が小さくなり、特に加圧力が大きい場合に構造上有利である。
【0018】
さらにアクチュエータは、出力軸を同軸構造にするなどの特別な構造にする必要が無いため、そのメンテナンス性が良く、汎用のものを用いることも可能で大幅なコストダウンが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を示す側断面図
【図2】同じく正断面図
【図3】同じく一部省いた正面図
【図4】従来装置を示す側断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
加圧力設定用ばねはコイルばねとして、接合ヘッドのワーク加圧端をアクチュエータとコイルばねの中心軸線上に配設すれば、アクチュエータの加圧力とワーク加圧反力とが同一直線上に位置しオフセット量が0になることになる(請求項2)。従って特に加圧力が大きい場合に構造上有利である。
【0021】
アクチュエータを基台部に保持する一方、加圧力設定用ばね(コイルばね)は基台部に対して上下スライド可能に保持した上下一対のばねケース半体の間に収容し、上下のばねケース半体にそれぞれアクチュエータ出力軸下端および接合ヘッドを固定すれば、下のばねケース半体自身を押圧シャフト(押圧ロッド)として利用でき、部品点数の減少が図れる(請求項3)。
【0022】
一方のばねケース半体には、加圧力設定用ばねのばね座を上下に変位させる加圧力調整機構を設ければ、接合ヘッドの加圧力を調整することができ、接合条件の細かい設定が可能になり、便利である(請求項4)。
【0023】
ここに用いる加圧力調整機構は、ばね座に当接するナットブロックを送りねじで上下動させる構造とし、この送りねじの回転量を加圧力設定部で設定できるようにすることができる(請求項5)。例えば、送りねじに傘歯車を介して噛合する水平設定軸を設け、この設定軸の一端をばねケース半体に設けた開口に臨ませて外から回動可能とすることができる(請求項6)。
【実施例1】
【0024】
図1〜3において、符号50は基台部であり、水平なワーク保持台52と、その後部から上方へ起立する支柱部54とを一体化したものである。この支柱部54の前面には、上部を略逆L字状に折曲した保持部56が固定されている。保持部56の上部は、ワーク保持台52に保持したワーク58の上方に延出している。
【0025】
保持部56の上部にはアクチュエータとしてのエアシリンダ60が固定されている。このエアシリンダ60は出力軸であるピストン軸62を垂直にしてシリンダ64を保持部56の上面に固定したものである。ピストン軸62は保持部56に設けた開口66から下方に突出している。なおこのピストン軸62の中心軸線68は垂直であり前記ワーク58を通る。
【0026】
ピストン軸62の上端はシリンダ64から上方へ突出し、ここにストローク設定ダイヤル70が螺合している。このダイヤル70はピストン軸62の押下ストロークを設定する。シリンダ64内は、ピストン軸62に固定したピストン72により上空気室と下空気室に区画され、各空気室にはエア流入口74,76を通してエアポンプ(図示せず)の空気圧が供給されまた排出される。
【0027】
エアシリンダ60の下方には、中心軸線68と同軸に加圧力設定用ばねであるコイルばね78が配設される。80,82はこのコイルばね78を収容する上下一対のばねケース半体である。これらのばねケース半体80,82は、前記保持部56の前面に上下動自在かつ後記する間隙Aを空けて保持されている。すなわちこれらばねケース半体80,82の後面に固定したスライドブロック84,86が、保持部56に固定したスライドレール88に上下動自在に保持されている。なお前記ストローク設定ダイヤル70は、ピストン軸62が上のケース半体80を押し下げた時にピストン軸62の最大下降量を設定する。
【0028】
上下のばねケース半体80,82には、コイルばね78の収容室90,92が互いに同軸かつ対向して開口するように形成されている。上のばねケース半体80の上部には前記ピストン軸62の下端が固定されている。下の収容室92の底にはばね座94が、上の収容室90内にはばね座96が上下スライド可能に収容され、これらばね座94,96の間にコイルばね78が縮装される。
【0029】
上のばね座96の上面には、ナットブロック98の下面が当接する。ここにナットブロック98は収容室90内で回転が規制されつつ上下動可能である。すなわちこのナットブロック98の外周には、上のばねケース半体80に形成した上下に長い窓100(図3)に係入する突起102が突設され、この突起102が窓100に当たって回転が規制される。また窓100の上下寸法は突起102より長く形成され、ナットブロック98は上下動可能である。
【0030】
ナットブロック98には送りねじ104が上方から螺入している。この送りねじ104は、上のばねケース半体80に取付けたスラスト軸受106により上下動を規制されつつ回転する。送りねじ104の上端付近には加圧力調整機構108が配設されている。
【0031】
この加圧力調整機構108は、送りねじ104の上方で水平に横断する水平な設定軸110と、これら送りねじ104と設定軸110とに固定された傘歯車からなるマイタギヤ112とを備える。水平設定軸110の一端に設けた六角穴付きヘッド114は、上のばねケース半体80の正面に設けた円形の開口116に臨み、このヘッド114を外側からアレンキードライバー(六角ドライバ)で回転することによって送りねじ104を回転し、ナットブロック98を上下させることができる。この結果上のばね座96を上下させてコイルばね78の圧縮量、すなわちばね力を調節することができる。
【0032】
なおナットブロック98の突起102と、窓100とには目盛が付され、ナットブロック98の位置によってコイルばね78の加圧力を確認できるようにしている。
【0033】
図2,3で118,118は上ばねケース半体の下部に固定したかぎ型のストッパであり、上下ばねケース半体80,82の最大離隔時に下のばねケース半体82の左右側面に形成した段部120,120に係合して、間隙Aを得るものである。上下のばねケース半体80,82の正面側には、両者の相対位置変化、すなわち間隙Aの変化を検出する光センサからなる位置検出器122が取付けられている。
【0034】
下のばねケース半体82の下端にはシャンク124を介してヒータチップ126が固定されている。ヒータチップ126は電気抵抗材を幅広で略U字状に形成したものであり、給電端子(図示せず)から供給されるパルス電流によって発熱する。
【0035】
次にこの実施例の動作を説明する。まずワーク58をヒータチップ126の下方に位置決めする。ワーク58に対応した加圧力を設定するため、ストローク設定ダイヤル70と加圧力調整機構108の水平設定軸110を調整する。すなわち上のばねケース半体80の最大下降量をダイヤル70で設定する一方、コイルばね78の圧縮圧力(予圧力)を設定軸110の回動により設定する。
【0036】
作動開始スイッチのオン作動により、エアシリンダ60の上の空気室にエアポンプ(エアタンク)からエアが供給されるとピストン軸62が下降する。このためストッパ118で係合している上下のばねケース半体80,82は一体となって下降し、ヒータチップ126がワーク58を押圧する。エアシリンダ60による押圧力が上昇すると下のばねケース半体82がワーク58により下降が規制される一方、上のばねケース半体80だけがコイルばね78を圧縮しつつ下降する。この下降量が一定の設定量になることを位置検出器122が検出すると、制御回路(図示せず)はヒータチップ126に電流を供給し、ヒータチップ126を発熱させる。この結果ワーク58の接合が行われる。
【0037】
制御回路はヒータチップ126に流す電流の変化を監視し、所定条件を満たす状態で電流を遮断する。そして制御回路は、エアシリンダ60のピストン軸62を上昇させ、上下のばねケース半体80,82を上昇させて接合動作を終了し、次のワークの接合に備える。
【符号の説明】
【0038】
50 基台部
58 ワーク
60 エアシリンダ(アクチュエータ)
62 ピストン軸
68 中心軸線
72 ピストン
78 コイルばね(加圧力設定用ばね)
80 上のばねケース半体
82 下のばねケース半体
94,96 ばね座
98 ナットブロック
104 送りねじ
108 加圧力調整機構
110 水平設定軸
112 マイタギヤ(傘歯車)
116 開口
126 ヒータチップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部に対して昇降自在に保持した接合ヘッドを、加圧力設定用ばねを介して下向きに加圧するばね加圧式接合装置において、
接合ヘッドの昇降用アクチュエータの下方に加圧力設定用ばねを配設し、昇降用アクチュエータの加圧出力が加圧力設定用ばねを介して接合ヘッドを加圧することを特徴とするばね加圧式接合装置。
【請求項2】
加圧力設定用ばねはコイルばねであり、接合ヘッドのワーク加圧端は、昇降用アクチュエータおよび前記加圧力設定用ばねの中心軸線上に配設されている請求項1のばね加圧式接合装置。
【請求項3】
昇降用アクチュエータは基台部に固定され、
加圧力設定用ばねは前記基台部にそれぞれ独立に上下スライド可能に保持された上下一対のばねケース半体の間に収容され、
前記上のばねケース半体が前記昇降用アクチュエータの出力軸下端に固定され、前記下のばねケース半体に接合ヘッドが固定されている請求項1または2のばね加圧式接合装置。
【請求項4】
ばねケース半体の一方に加圧力設定用ばねのばね座を上下に変位させる加圧力調整機構が設けられている請求項3のばね加圧式接合装置。
【請求項5】
加圧力調整機構は、一方のばねケース半体に回転可能に保持されかつ上下動を規制された送りねじと、この送りねじに螺合しこの一方のばねケース半体に上下動可能に保持されかつ回転が規制されてばね座に当接したナットブロックと、送りねじの回転量を設定する加圧力設定部とを備える請求項4のばね加圧式接合装置。
【請求項6】
加圧力設定部は、ばねケース半体に保持され送りねじに傘歯車を介して噛合する水平な設定軸を備え、前記設定軸の軸端はばねケース半体に設けた開口に臨んで外部から回動可能とした請求項5のばね加圧式接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110574(P2011−110574A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268663(P2009−268663)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】