ばね製造機
【課題】線材を送出する線材送りユニットをクイルの軸回りに回転させたときに、線材に歪みが生じることを回避し、精度の良いばねを製造することができるばね製造機を提供する。
【解決手段】プーリ14、15及びベルト16により、線材送りユニット3の回転に同期させて、前記矯正器79、79をクイル4の軸回りに回転させて、前記線材送りユニット3と、前記矯正器79、79との間にある線材の捩れを解消し、線材に歪みが生じることを防ぐ構成とした。
【解決手段】プーリ14、15及びベルト16により、線材送りユニット3の回転に同期させて、前記矯正器79、79をクイル4の軸回りに回転させて、前記線材送りユニット3と、前記矯正器79、79との間にある線材の捩れを解消し、線材に歪みが生じることを防ぐ構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は矯正器により矯正された線材をばねに加工するばね製造機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のばね製造機は、コイル状に巻回してある線材を直線状に矯正する矯正器、線材を送出する線材送りユニット及びクイルを同軸的に配置してあり、引張ばねを製造する場合には、線材送りユニットにより線材を送出して、矯正器により矯正された線材をクイルに挿通し、該クイルを挿通した線材を、線材をコイルに加工する加工ツールに当接させると共に、前記線材送りユニットを前記クイルの軸回りに回転させて線材を捩り、所定以上の荷重を加えた場合にばねを伸長させるための初張力をコイルに発生させていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−61736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記線材送りユニットを回転させた場合には、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材も捩れるため、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材に歪みが生じる虞がある。
【0004】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、前記矯正器を線材の軸回りに回転させる手段を設けることにより、前記線材送りユニットの回転に対応させて、前記矯正器を回転し、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材に歪みが生じることを防ぎ、精度の良いばねを製造することができるばね製造機を提供することを目的とする。
【0005】
また前記矯正器を線材の軸方向に移動させる手段を設けることにより、一の加工ツールにて加工した線材を他の加工ツールにて加工するために、矯正器を一旦通過した線材を、線材の軸方向に沿って逆方向へ移動させて、他の加工ツールと線材との相対位置を調整する場合に、前記矯正器を線材と共に移動させて、線材が矯正器を再度通過することを防ぎ、線材が不必要な矯正を受けることを回避することができるばね製造機を提供することを目的とする。
【0006】
また複数の加工ツールを、前記線材の軸を中心にして放射状に配置することにより、要求される複数の仕様に応じたばねを製造する場合に、仕様を切り替える際の段取り替え時において、一連の製造に使用する複数の加工ツールを予め設けておくことで、加工ツールの交換を不要にすることができ、また共通の線材及び加工ツールを使用して複数の仕様に応じたばねを製造する場合には、段取り替えさえ不要にすることができるばね製造機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係るばね製造機は、線材を直線状に矯正する矯正器と、該矯正器に矯正された線材を線材加工空間へ送り出す線材送りユニットと、該線材送りユニットにより前記線材加工空間送り出された線材をばねに加工する加工ツールとを備え、前記矯正器及び線材送りユニットを線材の軸に沿って同軸的に配置してあるばね製造機において、前記矯正器を線材の軸回りに回転させる手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記線材送りユニットの回転に対応させて、前記矯正器を回転し、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材に歪みが生じることを防ぐ。
【0009】
第2発明に係るばね製造機は、前記矯正器を線材の軸方向に移動させる手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、一の加工ツールにて加工した線材を他の加工ツールにて加工するために、矯正器を一旦通過した線材を線材の軸方向に沿って逆方向へ移動させて、他の加工ツールと線材との相対位置を調整する場合に、前記矯正器を線材と共に移動させて、線材が矯正器を再度通過することを防ぐ。
【0011】
第3発明に係るばね製造機は、前記加工ツールを複数備え、複数の前記加工ツールを、線材の軸を中心にして放射状に配置してあることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、要求される複数の仕様に応じたばねを製造する場合に、仕様を切り替える際の段取り替え時において、一連の製造に使用する複数の加工ツールを予め設けておくことで、加工ツールの交換を不要にし、また共通の線材及び加工ツールを使用して複数の仕様に応じたばねを製造する場合には、段取り替えさえ不要になる。
【発明の効果】
【0013】
第1発明に係るばね製造機にあっては、前記矯正器を線材の軸回りに回転させる手段を設けることにより、前記線材送りユニットの回転に対応させて、前記矯正器を回転し、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材に歪みが生じることを防ぎ、精度の良いばねを製造することができる。
【0014】
第2発明に係るばね製造機にあっては、前記矯正器を線材の軸方向に移動させる手段を設けることにより、一の加工ツールにて加工した線材を他の加工ツールにて加工するために、矯正器を一旦通過した線材を、線材の軸方向に沿って逆方向へ移動させて、他の加工ツールと線材との相対位置を調整する場合に、前記矯正器を線材と共に移動させて、線材が矯正器を再度通過することを防ぎ、線材が不必要な矯正を受けることを回避することができる。
【0015】
第3発明に係るばね製造機にあっては、複数の加工ツールを、前記線材の軸を中心にして放射状に配置することにより、要求される複数の仕様に応じたばねを製造する場合に、仕様を切り替える際の段取り替え時において、一連の製造に使用する複数の加工ツールを予め設けておくことで、加工ツールの交換を不要にすることができ、また共通の線材及び加工ツールを使用して複数の仕様に応じたばねを製造する場合には、段取り替えさえ不要にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施の形態に係るばね製造機を示す図面に基づいて詳述する。図1はばね製造機の略示正面図、図2はばね製造機の略示部分断面側面図、図3はばね製造機の略示背面図、図4は矯正器付近の略示部分断面平面図、図5はスピンドルを示す模式的斜視図、図6は線材送りユニット付近の略示側面断面図である。
【0017】
図において1は箱形の基台であり、該基台1上面の正面寄りに壁状のフレーム2が立設してある。該フレーム2の正面中央部に貫通孔(図示せず)が設けてあり、該貫通孔の正面側に、線材を案内するクイル4が設けてある。該クイル4は半円柱状の本体部4aと、該本体部4aの軸芯部分に設けてあり線材を案内する案内通路4bとを備える。なお前記クイル4の正面側の空間は、クイル4から送出された線材を加工するための線材加工空間5になっている。
【0018】
図1に示す如く、前記クイル4を挟んで前記フレーム2の正面両側に二つのクランクスライドユニット6、6が、それぞれ配置してある。該クランクスライドユニット6は、レールを有するレール台6aを備えており、前記レール上を摺動する板状のスライダ6bを備える。該スライダ6bには、カッタCを保持するツール保持具6cが設けてある。また前記レール台6aに、前記スライダ6bから離間させてサーボモータM1が取付けてある。該サーボモータM1の回転軸には、クランク6dが連結してあり、該クランク6dと前記スライダ6bとは、ロッド6eにより連結されている。
【0019】
前記サーボモータM1の回転運動が、前記クランク6d及びロッド6eにより直進運動に変換され、前記ツール保持具6cに保持してあるカッタCを、前記線材加工空間5に進退させる構成になっている。
【0020】
一方の前記クランクスライドユニット6の上方であって、前記フレーム2の正面に、線材を加工する加工ツールを備える線材加工ユニット7が設けてある。該線材加工ユニット7は、雄ねじ7bを収容する細長い箱体7aを備えており、該箱体7aは、その一端部を前記線材加工空間5に向けてある。前記箱体7aの他端部には、ブロック状のモータ固定部7cが設けてあり、該モータ固定部7cにサーボモータM2を固定してある。
【0021】
前記雄ねじ7bには図示しないナット部を螺合してある。前記雄ねじ7b及びナット部の溝部分に図示しないボールが転動可能に嵌合してあり、ボールねじ機構を構成している。前記ナット部にツール保持具7eが設けてあり、該ツール保持具7eに線材を曲げ加工する曲げダイスTが取り付けてある。該曲げダイスTは先端部を前記線材加工空間5へ向けてあり、曲げダイスTには、左巻用溝T1及び右巻用溝T2を設けてある。
【0022】
前記サーボモータM2の正逆回転は、前記雄ねじ7b及びナット部により直進運動に変換される。前記サーボモータM2が正回転したときに、前記曲げダイスTは、前記雄ねじ7bに沿って前記線材加工空間5側へ移動し、前記サーボモータM2が逆回転したときに、前記線材加工空間5側と反対側へ移動する。
【0023】
他方の前記クランクスライドユニット6の上方であって、前記フレーム2の正面に、線材を加工する加工ツールを備える線材加工ユニット8が設けてある。該線材加工ユニット8は、雄ねじ(図示せず)を収容する細長い箱体8aを備えており、該箱体8aは、その一端部を前記線材加工空間5に向けてある。前記箱体8aの他端部には、ブロック状のモータ固定部8bが設けてあり、該モータ固定部8bにサーボモータM3を固定してある。
【0024】
前記雄ねじにナット部(図示せず)を螺合してある。前記雄ねじ及びナット部の溝部分に図示しないボールが転動可能に嵌合しており、ボールねじ機構を構成している。前記ナット部にスピンドル作動装置8cが設けてあり、該スピンドル作動装置8cに、線材を曲げるスピンドルSが取り付けてある。該スピンドルSはその先端部を前記線材加工空間5へ向けてある。
【0025】
前記サーボモータM3の正逆回転は、前記雄ねじ及びナット部により直進運動に変換される。前記サーボモータM3が正回転したときに、前記スピンドルSは、前記雄ねじに沿って前記線材加工空間5側へ移動し、前記サーボモータM3が逆回転したときに、前記線材加工空間5側と反対側へ移動する。
【0026】
次にスピンドルSの構成について説明する。図5に示すように、前記スピンドルSは外側スリーブSaを備えており、該外側スリーブSaの内側に内側円柱Sbが設けてある。該内側円柱Sbは外側スリーブSaから突出している。前記外側スリーブSaの先端部には線材を曲げる円柱突起Scを突設してある。また図1に示すように、前記スピンドル作動装置8cの側面部には、サーボモータM4が連結してある。該サーボモータM4は前記外側スリーブSaに連結してあり、サーボモータM4の回転により、前記外側スリーブSaが軸回りに回転するようにしてある。該円柱突起Sc及び内側円柱Sbの間に線材を挟持し、前記外側スリーブSaを回転させて、円柱突起Scを内側円柱Sbの軸回りに回転させ、線材を内側円柱Sbに巻き付け、線材をフック状に変形させるようにしてある。
【0027】
次に線材を送出する機構について説明する。図6に示すように前記フレーム2の背面側であって、前記基台1上に中間壁80が立設してある。また該中間壁80の背面側であって、前記基台1上に背面壁81が立設してある。前記中間壁80に、貫通した中間穴82が開設してあり、前記背面壁81に穴部81aが開設してある。なお前記案内通路4b、中間穴82及び穴部81aの中心軸は同じ軸上にある。
【0028】
前記フレーム2と前記中間壁80との間に、線材を送出する線材送りユニット3が配設してある。該線材送りユニット3は筐体31を備え、該筐体31には後述するサーボモータM5の回転を後述する線材送りローラ30、30に伝動する複数の伝動歯車(図示せず)を収容してある。
【0029】
前記筐体31の側面には二つの窓部31a、31aが開設してあり、各窓部31a、31aから、前記伝動歯車の回転を伝動する上下一対の軸(図示せず)が筐体31の外側に適長延出してある。各軸の延出端部に線材送りローラ30、30、・・・30を連結して、該線材送りローラ30、30・・・30を筐体31の側面に沿って配置してある。前記線材送りローラ30、30・・・30は、上下に配置してある線材送りローラ30、30・・・30の間で線材を狭圧し、上側の線材送りローラ30を反時計回りに回転させ、下側の線材送りローラ30を時計回りに回転させて線材を正面側へ送り出し、上側の線材送りローラ30を時計回りに回転させ、下側の線材送りローラ30を反時計回りに回転させて線材を背面側へ送り出すようにしてある。
【0030】
前記線材送りローラ30、30の間、上流側及び下流側には線材を案内する溝を備える三つのガイドブロック32、32、32がそれぞれ設けてあり、前記筐体31の背面には後述する嵌合部92cに嵌合する嵌合孔31cが開設してある。
【0031】
前記筐体31の後部に、後述する通路円筒36が嵌入する嵌入穴35aを中央に有する環状歯車35が設けてある。前記筐体31の側面後部には後窓部31bが設けてあり、該後窓部31bから前記環状歯車35は露出している。前記環状歯車35は前記伝動歯車に噛合しており、環状歯車35の回転が前記伝動歯車に伝動するようにしてある。なお前記環状歯車35の中心軸は、前記案内通路4bの中心軸と同軸上にある。
【0032】
前記嵌入穴35aに、線材が通過する通路円筒36の一端部が嵌入してあり、該通路円筒36は前記中間穴82に挿入され、通路円筒36の他端部が前記穴部81aに軸受を介して嵌入してある。
【0033】
前記中間壁80及び背面壁81の間にて、前記通路円筒36の前記他端部付近に、後述する主動ギヤ90に噛合する従動ギヤ91が外嵌している。前記通路円筒36の上側にて、サーボモータM5が背面壁81に取付けてある。該サーボモータM5の回転軸に主動ギヤ90が嵌合しており、該主動ギヤ90は前記従動ギヤ91に噛合している。前記サーボモータM5の回転が主動ギヤ90を介して前記従動ギヤ91に伝動し、前記通路円筒36が回転するようにしてある。
【0034】
前記サーボモータM5の正回転により、前記通路円筒36が回転し、該通路円筒36を嵌入してある前記環状歯車35は回転し、前記伝動歯車を介して前記線材送りローラ30、30、・・・、30は回転し、線材を正面側へ送り出して、線材加工空間5へ送出する。
また前記サーボモータM5の逆回転により、前記線材送りローラ30、30、・・・、30は逆回転し、線材を背面側へ送出する。
【0035】
前記筐体31の背面に、後述するサーボモータM6の回転を前記筐体31に伝動するハブ92が設けられている。該ハブ92は、円筒部92aと、該円筒部92aの一端部に連なる鍔部92bと、該鍔部92bから前記円筒部92aと反対側に突出しており、筐体31の前記嵌合孔31cに嵌合する嵌合部92cとを備える。該嵌合部92cは前記嵌合孔31cに嵌合してある。また前記鍔部92bは前記筐体31の背面に密着している。前記円筒部92aは、前記通路円筒36に軸受を介して回転自在に外嵌しており、前記中間穴82に挿通してある。
【0036】
前記円筒部92aに従動ギヤ94が外嵌してある。該従動ギヤ94はギヤ部と、一面側に突出したボス部とを有する。該ボス部が前記円筒部92aに外嵌してあり、前記中間穴82に軸受を介して回転自在に支持されている。前記ギヤ部は中間壁80及び背面壁81の間にて、中間壁80寄りに配置してある。
【0037】
前記通路円筒36の下側にて、サーボモータM6が前記背面壁81に取付けてあり、該サーボモータM6の回転軸に前記従動ギヤ94に噛合する主動ギヤ93が嵌合してある。
前記サーボモータM6の正回転が主動ギヤ93を介して前記従動ギヤ94に伝動し、前記筐体31はクイル4の軸回りに反時計回りに回転して、前記線材送りローラ30、30により狭圧されている線材はクイル4の軸回りに回転する。
また前記サーボモータM6の逆回転により、前記筐体31は時計回りに回転し、線材はクイル4の軸回りに逆回転する。
【0038】
前記フレーム2の下部に、サーボモータM7を固定するモータ固定部2aが設けてある。該モータ固定部2aには、サーボモータM7を嵌合する図示しない嵌合穴が開設してあり、該嵌合穴にサーボモータM7を嵌合固定してある。また該サーボモータM7の回転軸にプーリ38が連結してある。また前記クイル4にプーリ39を連結しており、二つのプーリ38、39にベルト40を掛架してある。前記サーボモータM7の回転が前記プーリ38、39及びベルト40を介して、前記クイル4に伝動し、前記クイル4が軸回りに回転するようにしてある。
【0039】
図2に示す如く、前記背面壁81の背面側であって、前記基台1の上面に支持台70が設けてあり、該支持台70には、上面に開口を有しており、正背面方向に沿う細長い箱形のボールねじケース71を支持してある。該ボールねじケース71には前記クイル4の軸方向に平行な雄ねじ71aが収容してあり、該雄ねじ71aにはナット部材71bが螺合してある。前記雄ねじ71a及びナット部材71bの溝部分に図示しないボールが転動可能に嵌合しており、ボールねじ機構を構成している。
【0040】
前記ボールねじケース71の背面にサーボモータM8が設けてあり、該サーボモータM8の回転軸は前記雄ねじ71aに連結してある。前記ナット部材71bの上側に、前記基台1の上面に平行な移動テーブル72が設けてあり、前記サーボモータM8が正回転したときに、前記移動テーブル72は、前記雄ねじ71aに沿って正面側へ移動し、前記サーボモータM8が逆回転したときに背面側へ移動する。
【0041】
該移動テーブル72には後述する矯正器79を支持する支持板73が立設しており、該支持板73の上部に貫通孔73aが設けてある。該貫通孔73aには後述する案内円筒76を支持する支持部74が設けてある。該支持部74は円筒部74aと、該円筒部74aの一端部に連なる鍔部74bと、該鍔部74bから前記円筒部74aと反対側に突出しており、前記貫通孔73aの正面側に固定してある円環部74cとを備える。
【0042】
前記支持部74の正面及び背面側の開口に、二つの軸受75、75がそれぞれ嵌入してある。二つの該軸受75、75には、線材を案内しており、前記クイル4の軸に平行な案内円筒76が転動可能に嵌入してある。該案内円筒76は正面側に突出しており、案内円筒76の突出した部分には連結環77が外嵌してある。該連結環77の正面側にはテーブル78が連結してある。
該テーブル78上に、線材を直線状に矯正する二つの矯正器79、79が前記クイル4の軸方向に沿って並設してあり、正面側にある矯正器79は、前記通路円筒36の他端部に対向しており、二つの矯正器79、79により矯正された線材は前記通路円筒36に送出される。
【0043】
前記矯正器79には複数の矯正ローラ79a、79a、・・・、79aが、前記クイル4の軸の延長線を挟んで交互に並設してある。該矯正ローラ79a、79a、・・・、79aにより線材の側面を狭圧して、線材を直線状に矯正する。
【0044】
一方の矯正器79と、他方の矯正器79とは、線材の軸周りに略90度の位相差を設けて配置してある。一方の矯正器79により、互いに対向する線材の一側面及び他側面を狭圧し、他方の矯正器79により、軸周りの相対位置において前記一側面及び他側面に対し略90度の位相差がある線材の側面を狭圧する。
【0045】
前記案内円筒76の背面側に円筒部材11が連結してあり、該円筒部材11は前記支持板73の背面側に突出している。前記円筒部材11の中心軸と、前記案内円筒76の中心軸とは同軸上にある。前記円筒部材11の背面側にはキャプスターン13を固定する固定円環12が外嵌してあり、該固定円環12にキャプスターン13が連結してある。前記固定円環12と、前記支持板73との間において、プーリ14が前記円筒部材11に外嵌してある。
【0046】
前記支持板73の正面下部には図示しない嵌入穴が開設してあり、該嵌入穴にサーボモータM9が正面側から取り付けてある。該サーボモータM9の回転軸は支持板73の背面側に突出しており、該回転軸にプーリ15が連結してある。該プーリ15と、前記プーリ14との間にベルト16が掛架してあり、前記サーボモータM9の正回転が前記プーリ14、15及びベルト16を介して、前記案内円筒76に伝動し、前記矯正器79、79がクイル4の軸回りに、反時計回りに回転し、前記サーボモータM9の逆回転により、前記矯正器79、79が時計回りに回転するようにしてある。
【0047】
前記基台1に、前記線材送りローラ30、30、・・・、30に供給される線材を巻付けてある図示しないボビンが収容されている。線材は該ボビンから前記キャプスターン13を介して二つの矯正器79、79に送られ、前記線材送りローラ30、30、・・・、30に供給される。供給された線材は前記線材送りローラ30、30・・・、30により前記クイル4に案内される。案内された線材は前記線材加工空間5に送出され、前記線材加工ユニット7、8により加工される。
【0048】
また図1に示す如く、前記基台1の側面には操作部50を設けてある。該操作部50により、ばねのコイル部の巻方向、コイル部の長さ、屈曲位置、及び脚部の長さ等の製造するばねの寸法、並びにばねの製造に使用するツールの種類、及びツールの取付け位置等のばねの製造に必要な情報を後述する制御回路60に入力する構成となっている。前記操作部50は、ばね製造の開始及び停止を入力するスイッチ51を備える。
【0049】
次にばねの製造について説明する。図7は各サーボモータの回転を制御する制御回路付近の要部構成を示すブロック図である。
前記操作部50に前記各サーボモータM1乃至M9の正逆回転を制御する制御回路60が内蔵されており、該制御回路60は、後述する駆動回路に回転信号を出力するCPU、サーボモータM1乃至M9の正逆回転を制御する制御プログラムを格納してあるROM、操作部50から入力された情報を一時的に格納するRAM等を有する。
【0050】
制御回路60には、前記サーボモータM3を駆動して、前記スピンドルSを線材加工空間5に進退させるスピンドル進退駆動回路61、サーボモータM4を駆動して、外側スリーブSaを回転させるスピンドル回転駆動回路62、前記サーボモータM2を駆動して、前記曲げダイスTを線材加工空間5に進退させる曲げダイス進退駆動回路63、サーボモータM1、M1を駆動して、、カッタCを線材加工空間5に進退させるカッタ駆動回路64、サーボモータM5を駆動して、線材送りローラ30、30、・・・、30により線材を送出するローラ駆動回路65、サーボモータM6を駆動して、線材送りユニット3を回転させるユニット駆動回路66、サーボモータM8を駆動して、矯正器79を前後進させる矯正器進退駆動回路67及びサーボモータM9を駆動して、矯正器79を回転させる矯正器回転駆動回路68を接続してある。前記制御回路60から前記各駆動回路61乃至68に回転信号を出力し、前記各サーボモータを所定数回転させる構成にしてある。
【0051】
図8乃至図10はばねの製造工程を示すフローチャート、図11乃至図17はばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【0052】
制御回路60は、操作部50により、ばねの寸法、ばねの製造に使用するツールの種類及びツールの取付け位置等のばねの製造に必要な情報が全て入力されているか否か判断する(ステップS1)。ばねの製造に必要な情報が全て入力されていないときは(ステップS1:NO)、ステップS1に戻る。ばねの製造に必要な情報が全て入力されているときは(ステップS1:YES)、スイッチ51がオンになっているか否か判断する(ステップS2)。スイッチ51がオンになっていないときは(ステップS2:NO)、ステップS2に戻る。スイッチ51がオンになっているときは(ステップS2:YES)、制御回路60は、前記曲げダイスT、スピンドルS及びカッタC、Cを前記線材加工空間5から退出させて、制御プログラムに設定してある初期位置に配置することを示す信号を出力する(ステップS3)。該信号の出力により、各サーボモータが正逆回転して、前記曲げダイスT、スピンドルS及びカッタC、Cは初期位置に配置される。
【0053】
次に制御回路60は、スピンドル進退駆動回路61にスピンドルSを線材加工空間5へ進入させることを示す信号を出力する(ステップS4)。該信号の出力により、サーボモータM3が正回転し前記スピンドルSが線材加工空間5へ進入する。次に制御回路60は、ローラ駆動回路65に線材を送出することを示す信号を出力する(ステップS5)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は正回転し、図11の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は回転し、線材は線材加工空間5へ送出され、前記円柱突起Sc及び内側円柱Sbの間に挿入される。
【0054】
次に制御回路60は、スピンドル回転駆動回路62に前記外側スリーブSaを回転させることを示す信号を出力する(ステップS6)。該信号の出力により、前記サーボモータM4は回転し、図11の矢印にて示す如く、前記外側スリーブSaと共に円柱突起Scが回転し、線材が前記内側円柱Sbに沿って曲げられ、フック部が形成される。そして制御回路60はスピンドル進退駆動回路61にスピンドルSを線材加工空間5から退出させることを示す信号を出力する(ステップS7)。該信号の出力により、前記サーボモータM3は逆回転し、前記スピンドルSは線材加工空間5から退出する。
【0055】
次に制御回路60はローラ駆動回路65に、線材を逆方向へ送出することを示す信号を出力する(ステップS8)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は逆回転し、図12の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は逆回転し、前記線材を逆方向へ送出する。そして制御回路60は矯正器進退駆動回路67に矯正器79、79を後退させることを示す信号を出力する(ステップS9)。該信号の出力により、前記サーボモータM8は逆回転し、線材が逆方向へ送出される距離に対応させて、線材の送出開始と同時に、図12の矢印にて示す如く、前記移動テーブル72は背面側へ移動し、前記矯正器79、79は後退する。
【0056】
次に制御回路60は、曲げダイス進退駆動回路63に曲げダイスTを線材加工空間5に進入させることを示す信号を出力する(ステップS10)。該信号の出力により、前記サーボモータM2は正回転し、曲げダイスTは線材加工空間5に進入して線材に当接する。そして制御回路60はユニット駆動回路66に、線材送りユニット3を反時計回りに回転させることを示す信号を出力する(ステップS11)。該信号の出力により、前記サーボモータM6は正回転し、図13の矢印にて示す如く、前記線材送りユニット3は反時計回りに回転して線材は捩れる。次に矯正器回転駆動回路68に、矯正器79、79を反時計回りに回転させることを示す信号を出力する(ステップS12)。該信号の出力により、前記サーボモータM9は正回転し、図13の矢印にて示す如く、線材送りユニット3の回転に同期して前記矯正器79、79は反時計回りに回転し、矯正器79、79と、線材送りユニット3との間にある線材の捩れは解消する。
【0057】
次に制御回路60は、ローラ駆動回路65に線材加工空間5へ線材を送出することを示す信号を出力する(ステップS13)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は正回転し、図14の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は回転し、線材は線材加工空間5へ送出され、曲げダイスTに当接して、コイル部が形成される。そして制御回路60は矯正器進退駆動回路67に矯正器79、79を前進させることを示す信号を出力する(ステップS14)。該信号の出力により、前記サーボモータM8は正回転し、前記移動テーブル72が背面側に移動した距離に対応する距離を、線材の送出開始と同時に、図14の矢印にて示す如く、前記移動テーブル72は正面側に移動し、矯正器79、79は前進する。
【0058】
次に制御回路60はユニット駆動回路66に、線材送りユニット3を時計回りに回転させることを示す信号を出力する(ステップS15)。該信号の出力により、前記サーボモータM6は逆回転し、図14の矢印にて示す如く、前記線材送りユニット3は時計回りに回転して線材の捩れは解消する。次に制御回路60は矯正器回転駆動回路68に、矯正器79、79を時計回りに回転させることを示す信号を出力する(ステップS16)。該信号の出力により、前記サーボモータM9は逆回転し、前記線材送りユニット3の回転に同期して、図14の矢印にて示す如く、前記矯正器79、79は時計回りに回転する。そして制御回路60は曲げダイス進退駆動回路63に曲げダイスTを線材加工空間5から退出させることを示す信号を出力する(ステップS17)。該信号の出力により、前記サーボモータM2は逆回転し、前記曲げダイスTは線材加工空間5から退出する。
【0059】
次に制御回路60は、ローラ駆動回路65に線材加工空間5へ線材を送出することを示す信号を出力する(ステップS18)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は正回転し、図15の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は回転し、線材は線材加工空間5へ送出される。そして制御回路60はスピンドル進退駆動回路61に、スピンドルSを線材加工空間5に進入させることを示す信号を出力する(ステップS19)。該信号の出力により、前記サーボモータM3が正回転して、前記スピンドルSは線材加工空間5に進入し、送出された線材は前記円柱突起Sc及び内側円柱Sbの間に係止される。
【0060】
次に制御回路60は、スピンドル回転駆動回路62に前記外側スリーブSaを回転させることを示す信号を出力する(ステップS20)。該信号の出力により、前記サーボモータM4は回転し、図16の矢印にて示す如く、前記外側スリーブSaと共に前記円柱突起Scが回転し、線材が前記内側円柱Sbに沿って曲げられ、フック部が形成される。そして制御回路60はスピンドル進退駆動回路61にスピンドルSを線材加工空間5から退出させることを示す信号を出力する(ステップS21)。該信号の出力により、前記サーボモータM3は逆回転し、前記スピンドルSは線材加工空間5から退出する。
【0061】
次に制御回路60はローラ駆動回路65に、線材を逆方向へ送出することを示す信号を出力する(ステップS22)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は逆回転し、図17の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は逆回転し、前記線材を逆方向へ送出する。そして制御回路60は矯正器進退駆動回路67に矯正器79、79を後退させることを示す信号を出力する(ステップS23)。該信号の出力により、前記サーボモータM8は逆回転し、線材が逆方向へ送出される距離に対応させて、線材の送出開始と同時に、図17の矢印にて示す如く、前記移動テーブル72は背面側へ移動し、前記矯正器79、79は後退する。
【0062】
次に制御回路60は、カッタ駆動回路64に線材を切断することを示す信号を出力する(ステップS24)。該信号の出力によりサーボモータM1、M1が回転し、カッタC、Cが線材加工空間5に進入して線材を切断する。そして制御回路60は、前記スイッチ51がオフになっているか否か判断する(ステップS25)。スイッチ51がオンになっているときは(ステップ25:NO)、ステップS3に戻り、ばねの製造を継続する。スイッチ51がオフになっているときは(ステップ25:YES)、ばねの製造を終了する。
【0063】
実施の形態に係るばね製造機にあっては、前記プーリ14、15及びベルト16を設けることにより、前記線材送りユニット3の回転に同期させて、前記矯正器79、79を前記クイル4の軸回り、つまり線材の軸回りに回転させて、前記線材送りユニット3と、前記矯正器79、79との間にある線材に歪みが生じることを防ぎ、精度の良いばねを製造することができる。
【0064】
また前記移動テーブル72を設けることにより、スピンドルSにて加工した線材を曲げダイスTにて加工するために、矯正器79、79を一旦通過した線材を逆方向へ送出させて、線材と曲げダイスTとの相対位置を調整する場合に、前記矯正器79、79を線材と共に移動させて、線材が矯正器79、79を再度通過することを防ぎ、線材が不必要な矯正を受けて変形することを回避することができる。
【0065】
また複数の加工ツールを、前記クイル4を中心にして、つまり線材の軸を中心にして放射状に配置することにより、要求される複数の仕様に応じたばねを製造する場合に、仕様を切り替える際の段取り替え時において、一連の製造に使用するスピンドルS、曲げダイスT及びカッタCを予め設けておくことで、加工ツールの交換を不要にすることができ、また共通の線材及び加工ツールを使用して複数の仕様に応じたばねを製造する場合には、段取り替えさえ不要にすることができる。
【0066】
なおコイル部を形成するときに、線材送りユニットを回転させずに、矯正器のみを回転させて線材を捩り、コイル部に初張力を発生させても良い。また要求される仕様に対応させてフック部をコイル部の軸方向に沿うように屈曲しても良い。またプーリ14、15及びベルト16に代えて、線材送りユニット3の回転機構と同様な回転機構を設け、矯正器79、79を回転させても良い。またクイルを設けずに、フレームの正面に線材送りユニット及び矯正器を装着し、線材送りユニットに対向させて加工ツールをフレームの正面に装着し、矯正器を線材の軸回りに回転させると共に線材の軸方向に沿って移動させて、線材を加工しても良い。またクイルを備えておらず、線材を加工するベンダー機において、ベンダー機の矯正器を、線材の軸回りに回転させると共に線材の軸方向に沿って移動させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態に係るばね製造機の略示正面図である。
【図2】実施の形態に係るばね製造機の略示部分断面側面図である。
【図3】実施の形態に係るばね製造機の略示背面図である。
【図4】実施の形態に係るばね製造機の矯正器付近の略示部分断面平面図である。
【図5】実施の形態に係るばね製造機のスピンドルを示す模式的斜視図である。
【図6】実施の形態に係るばね製造機の線材送りユニット付近の略示側面断面図である。
【図7】実施の形態に係るばね製造機の各サーボモータの回転を制御する制御回路付近の要部構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図12】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図13】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図14】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図15】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図16】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図17】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【符号の説明】
【0068】
3 線材送りユニット
4 クイル
14、15 プーリ
16 ベルト
50 操作部
51 スイッチ
60 制御回路
72 移動テーブル
79 矯正器
C カッタ(加工ツール)
S スピンドル(加工ツール)
T 曲げダイス(加工ツール)
【技術分野】
【0001】
本発明は矯正器により矯正された線材をばねに加工するばね製造機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のばね製造機は、コイル状に巻回してある線材を直線状に矯正する矯正器、線材を送出する線材送りユニット及びクイルを同軸的に配置してあり、引張ばねを製造する場合には、線材送りユニットにより線材を送出して、矯正器により矯正された線材をクイルに挿通し、該クイルを挿通した線材を、線材をコイルに加工する加工ツールに当接させると共に、前記線材送りユニットを前記クイルの軸回りに回転させて線材を捩り、所定以上の荷重を加えた場合にばねを伸長させるための初張力をコイルに発生させていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−61736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記線材送りユニットを回転させた場合には、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材も捩れるため、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材に歪みが生じる虞がある。
【0004】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、前記矯正器を線材の軸回りに回転させる手段を設けることにより、前記線材送りユニットの回転に対応させて、前記矯正器を回転し、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材に歪みが生じることを防ぎ、精度の良いばねを製造することができるばね製造機を提供することを目的とする。
【0005】
また前記矯正器を線材の軸方向に移動させる手段を設けることにより、一の加工ツールにて加工した線材を他の加工ツールにて加工するために、矯正器を一旦通過した線材を、線材の軸方向に沿って逆方向へ移動させて、他の加工ツールと線材との相対位置を調整する場合に、前記矯正器を線材と共に移動させて、線材が矯正器を再度通過することを防ぎ、線材が不必要な矯正を受けることを回避することができるばね製造機を提供することを目的とする。
【0006】
また複数の加工ツールを、前記線材の軸を中心にして放射状に配置することにより、要求される複数の仕様に応じたばねを製造する場合に、仕様を切り替える際の段取り替え時において、一連の製造に使用する複数の加工ツールを予め設けておくことで、加工ツールの交換を不要にすることができ、また共通の線材及び加工ツールを使用して複数の仕様に応じたばねを製造する場合には、段取り替えさえ不要にすることができるばね製造機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係るばね製造機は、線材を直線状に矯正する矯正器と、該矯正器に矯正された線材を線材加工空間へ送り出す線材送りユニットと、該線材送りユニットにより前記線材加工空間送り出された線材をばねに加工する加工ツールとを備え、前記矯正器及び線材送りユニットを線材の軸に沿って同軸的に配置してあるばね製造機において、前記矯正器を線材の軸回りに回転させる手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記線材送りユニットの回転に対応させて、前記矯正器を回転し、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材に歪みが生じることを防ぐ。
【0009】
第2発明に係るばね製造機は、前記矯正器を線材の軸方向に移動させる手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、一の加工ツールにて加工した線材を他の加工ツールにて加工するために、矯正器を一旦通過した線材を線材の軸方向に沿って逆方向へ移動させて、他の加工ツールと線材との相対位置を調整する場合に、前記矯正器を線材と共に移動させて、線材が矯正器を再度通過することを防ぐ。
【0011】
第3発明に係るばね製造機は、前記加工ツールを複数備え、複数の前記加工ツールを、線材の軸を中心にして放射状に配置してあることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、要求される複数の仕様に応じたばねを製造する場合に、仕様を切り替える際の段取り替え時において、一連の製造に使用する複数の加工ツールを予め設けておくことで、加工ツールの交換を不要にし、また共通の線材及び加工ツールを使用して複数の仕様に応じたばねを製造する場合には、段取り替えさえ不要になる。
【発明の効果】
【0013】
第1発明に係るばね製造機にあっては、前記矯正器を線材の軸回りに回転させる手段を設けることにより、前記線材送りユニットの回転に対応させて、前記矯正器を回転し、前記線材送りユニットと、前記矯正器との間にある線材に歪みが生じることを防ぎ、精度の良いばねを製造することができる。
【0014】
第2発明に係るばね製造機にあっては、前記矯正器を線材の軸方向に移動させる手段を設けることにより、一の加工ツールにて加工した線材を他の加工ツールにて加工するために、矯正器を一旦通過した線材を、線材の軸方向に沿って逆方向へ移動させて、他の加工ツールと線材との相対位置を調整する場合に、前記矯正器を線材と共に移動させて、線材が矯正器を再度通過することを防ぎ、線材が不必要な矯正を受けることを回避することができる。
【0015】
第3発明に係るばね製造機にあっては、複数の加工ツールを、前記線材の軸を中心にして放射状に配置することにより、要求される複数の仕様に応じたばねを製造する場合に、仕様を切り替える際の段取り替え時において、一連の製造に使用する複数の加工ツールを予め設けておくことで、加工ツールの交換を不要にすることができ、また共通の線材及び加工ツールを使用して複数の仕様に応じたばねを製造する場合には、段取り替えさえ不要にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施の形態に係るばね製造機を示す図面に基づいて詳述する。図1はばね製造機の略示正面図、図2はばね製造機の略示部分断面側面図、図3はばね製造機の略示背面図、図4は矯正器付近の略示部分断面平面図、図5はスピンドルを示す模式的斜視図、図6は線材送りユニット付近の略示側面断面図である。
【0017】
図において1は箱形の基台であり、該基台1上面の正面寄りに壁状のフレーム2が立設してある。該フレーム2の正面中央部に貫通孔(図示せず)が設けてあり、該貫通孔の正面側に、線材を案内するクイル4が設けてある。該クイル4は半円柱状の本体部4aと、該本体部4aの軸芯部分に設けてあり線材を案内する案内通路4bとを備える。なお前記クイル4の正面側の空間は、クイル4から送出された線材を加工するための線材加工空間5になっている。
【0018】
図1に示す如く、前記クイル4を挟んで前記フレーム2の正面両側に二つのクランクスライドユニット6、6が、それぞれ配置してある。該クランクスライドユニット6は、レールを有するレール台6aを備えており、前記レール上を摺動する板状のスライダ6bを備える。該スライダ6bには、カッタCを保持するツール保持具6cが設けてある。また前記レール台6aに、前記スライダ6bから離間させてサーボモータM1が取付けてある。該サーボモータM1の回転軸には、クランク6dが連結してあり、該クランク6dと前記スライダ6bとは、ロッド6eにより連結されている。
【0019】
前記サーボモータM1の回転運動が、前記クランク6d及びロッド6eにより直進運動に変換され、前記ツール保持具6cに保持してあるカッタCを、前記線材加工空間5に進退させる構成になっている。
【0020】
一方の前記クランクスライドユニット6の上方であって、前記フレーム2の正面に、線材を加工する加工ツールを備える線材加工ユニット7が設けてある。該線材加工ユニット7は、雄ねじ7bを収容する細長い箱体7aを備えており、該箱体7aは、その一端部を前記線材加工空間5に向けてある。前記箱体7aの他端部には、ブロック状のモータ固定部7cが設けてあり、該モータ固定部7cにサーボモータM2を固定してある。
【0021】
前記雄ねじ7bには図示しないナット部を螺合してある。前記雄ねじ7b及びナット部の溝部分に図示しないボールが転動可能に嵌合してあり、ボールねじ機構を構成している。前記ナット部にツール保持具7eが設けてあり、該ツール保持具7eに線材を曲げ加工する曲げダイスTが取り付けてある。該曲げダイスTは先端部を前記線材加工空間5へ向けてあり、曲げダイスTには、左巻用溝T1及び右巻用溝T2を設けてある。
【0022】
前記サーボモータM2の正逆回転は、前記雄ねじ7b及びナット部により直進運動に変換される。前記サーボモータM2が正回転したときに、前記曲げダイスTは、前記雄ねじ7bに沿って前記線材加工空間5側へ移動し、前記サーボモータM2が逆回転したときに、前記線材加工空間5側と反対側へ移動する。
【0023】
他方の前記クランクスライドユニット6の上方であって、前記フレーム2の正面に、線材を加工する加工ツールを備える線材加工ユニット8が設けてある。該線材加工ユニット8は、雄ねじ(図示せず)を収容する細長い箱体8aを備えており、該箱体8aは、その一端部を前記線材加工空間5に向けてある。前記箱体8aの他端部には、ブロック状のモータ固定部8bが設けてあり、該モータ固定部8bにサーボモータM3を固定してある。
【0024】
前記雄ねじにナット部(図示せず)を螺合してある。前記雄ねじ及びナット部の溝部分に図示しないボールが転動可能に嵌合しており、ボールねじ機構を構成している。前記ナット部にスピンドル作動装置8cが設けてあり、該スピンドル作動装置8cに、線材を曲げるスピンドルSが取り付けてある。該スピンドルSはその先端部を前記線材加工空間5へ向けてある。
【0025】
前記サーボモータM3の正逆回転は、前記雄ねじ及びナット部により直進運動に変換される。前記サーボモータM3が正回転したときに、前記スピンドルSは、前記雄ねじに沿って前記線材加工空間5側へ移動し、前記サーボモータM3が逆回転したときに、前記線材加工空間5側と反対側へ移動する。
【0026】
次にスピンドルSの構成について説明する。図5に示すように、前記スピンドルSは外側スリーブSaを備えており、該外側スリーブSaの内側に内側円柱Sbが設けてある。該内側円柱Sbは外側スリーブSaから突出している。前記外側スリーブSaの先端部には線材を曲げる円柱突起Scを突設してある。また図1に示すように、前記スピンドル作動装置8cの側面部には、サーボモータM4が連結してある。該サーボモータM4は前記外側スリーブSaに連結してあり、サーボモータM4の回転により、前記外側スリーブSaが軸回りに回転するようにしてある。該円柱突起Sc及び内側円柱Sbの間に線材を挟持し、前記外側スリーブSaを回転させて、円柱突起Scを内側円柱Sbの軸回りに回転させ、線材を内側円柱Sbに巻き付け、線材をフック状に変形させるようにしてある。
【0027】
次に線材を送出する機構について説明する。図6に示すように前記フレーム2の背面側であって、前記基台1上に中間壁80が立設してある。また該中間壁80の背面側であって、前記基台1上に背面壁81が立設してある。前記中間壁80に、貫通した中間穴82が開設してあり、前記背面壁81に穴部81aが開設してある。なお前記案内通路4b、中間穴82及び穴部81aの中心軸は同じ軸上にある。
【0028】
前記フレーム2と前記中間壁80との間に、線材を送出する線材送りユニット3が配設してある。該線材送りユニット3は筐体31を備え、該筐体31には後述するサーボモータM5の回転を後述する線材送りローラ30、30に伝動する複数の伝動歯車(図示せず)を収容してある。
【0029】
前記筐体31の側面には二つの窓部31a、31aが開設してあり、各窓部31a、31aから、前記伝動歯車の回転を伝動する上下一対の軸(図示せず)が筐体31の外側に適長延出してある。各軸の延出端部に線材送りローラ30、30、・・・30を連結して、該線材送りローラ30、30・・・30を筐体31の側面に沿って配置してある。前記線材送りローラ30、30・・・30は、上下に配置してある線材送りローラ30、30・・・30の間で線材を狭圧し、上側の線材送りローラ30を反時計回りに回転させ、下側の線材送りローラ30を時計回りに回転させて線材を正面側へ送り出し、上側の線材送りローラ30を時計回りに回転させ、下側の線材送りローラ30を反時計回りに回転させて線材を背面側へ送り出すようにしてある。
【0030】
前記線材送りローラ30、30の間、上流側及び下流側には線材を案内する溝を備える三つのガイドブロック32、32、32がそれぞれ設けてあり、前記筐体31の背面には後述する嵌合部92cに嵌合する嵌合孔31cが開設してある。
【0031】
前記筐体31の後部に、後述する通路円筒36が嵌入する嵌入穴35aを中央に有する環状歯車35が設けてある。前記筐体31の側面後部には後窓部31bが設けてあり、該後窓部31bから前記環状歯車35は露出している。前記環状歯車35は前記伝動歯車に噛合しており、環状歯車35の回転が前記伝動歯車に伝動するようにしてある。なお前記環状歯車35の中心軸は、前記案内通路4bの中心軸と同軸上にある。
【0032】
前記嵌入穴35aに、線材が通過する通路円筒36の一端部が嵌入してあり、該通路円筒36は前記中間穴82に挿入され、通路円筒36の他端部が前記穴部81aに軸受を介して嵌入してある。
【0033】
前記中間壁80及び背面壁81の間にて、前記通路円筒36の前記他端部付近に、後述する主動ギヤ90に噛合する従動ギヤ91が外嵌している。前記通路円筒36の上側にて、サーボモータM5が背面壁81に取付けてある。該サーボモータM5の回転軸に主動ギヤ90が嵌合しており、該主動ギヤ90は前記従動ギヤ91に噛合している。前記サーボモータM5の回転が主動ギヤ90を介して前記従動ギヤ91に伝動し、前記通路円筒36が回転するようにしてある。
【0034】
前記サーボモータM5の正回転により、前記通路円筒36が回転し、該通路円筒36を嵌入してある前記環状歯車35は回転し、前記伝動歯車を介して前記線材送りローラ30、30、・・・、30は回転し、線材を正面側へ送り出して、線材加工空間5へ送出する。
また前記サーボモータM5の逆回転により、前記線材送りローラ30、30、・・・、30は逆回転し、線材を背面側へ送出する。
【0035】
前記筐体31の背面に、後述するサーボモータM6の回転を前記筐体31に伝動するハブ92が設けられている。該ハブ92は、円筒部92aと、該円筒部92aの一端部に連なる鍔部92bと、該鍔部92bから前記円筒部92aと反対側に突出しており、筐体31の前記嵌合孔31cに嵌合する嵌合部92cとを備える。該嵌合部92cは前記嵌合孔31cに嵌合してある。また前記鍔部92bは前記筐体31の背面に密着している。前記円筒部92aは、前記通路円筒36に軸受を介して回転自在に外嵌しており、前記中間穴82に挿通してある。
【0036】
前記円筒部92aに従動ギヤ94が外嵌してある。該従動ギヤ94はギヤ部と、一面側に突出したボス部とを有する。該ボス部が前記円筒部92aに外嵌してあり、前記中間穴82に軸受を介して回転自在に支持されている。前記ギヤ部は中間壁80及び背面壁81の間にて、中間壁80寄りに配置してある。
【0037】
前記通路円筒36の下側にて、サーボモータM6が前記背面壁81に取付けてあり、該サーボモータM6の回転軸に前記従動ギヤ94に噛合する主動ギヤ93が嵌合してある。
前記サーボモータM6の正回転が主動ギヤ93を介して前記従動ギヤ94に伝動し、前記筐体31はクイル4の軸回りに反時計回りに回転して、前記線材送りローラ30、30により狭圧されている線材はクイル4の軸回りに回転する。
また前記サーボモータM6の逆回転により、前記筐体31は時計回りに回転し、線材はクイル4の軸回りに逆回転する。
【0038】
前記フレーム2の下部に、サーボモータM7を固定するモータ固定部2aが設けてある。該モータ固定部2aには、サーボモータM7を嵌合する図示しない嵌合穴が開設してあり、該嵌合穴にサーボモータM7を嵌合固定してある。また該サーボモータM7の回転軸にプーリ38が連結してある。また前記クイル4にプーリ39を連結しており、二つのプーリ38、39にベルト40を掛架してある。前記サーボモータM7の回転が前記プーリ38、39及びベルト40を介して、前記クイル4に伝動し、前記クイル4が軸回りに回転するようにしてある。
【0039】
図2に示す如く、前記背面壁81の背面側であって、前記基台1の上面に支持台70が設けてあり、該支持台70には、上面に開口を有しており、正背面方向に沿う細長い箱形のボールねじケース71を支持してある。該ボールねじケース71には前記クイル4の軸方向に平行な雄ねじ71aが収容してあり、該雄ねじ71aにはナット部材71bが螺合してある。前記雄ねじ71a及びナット部材71bの溝部分に図示しないボールが転動可能に嵌合しており、ボールねじ機構を構成している。
【0040】
前記ボールねじケース71の背面にサーボモータM8が設けてあり、該サーボモータM8の回転軸は前記雄ねじ71aに連結してある。前記ナット部材71bの上側に、前記基台1の上面に平行な移動テーブル72が設けてあり、前記サーボモータM8が正回転したときに、前記移動テーブル72は、前記雄ねじ71aに沿って正面側へ移動し、前記サーボモータM8が逆回転したときに背面側へ移動する。
【0041】
該移動テーブル72には後述する矯正器79を支持する支持板73が立設しており、該支持板73の上部に貫通孔73aが設けてある。該貫通孔73aには後述する案内円筒76を支持する支持部74が設けてある。該支持部74は円筒部74aと、該円筒部74aの一端部に連なる鍔部74bと、該鍔部74bから前記円筒部74aと反対側に突出しており、前記貫通孔73aの正面側に固定してある円環部74cとを備える。
【0042】
前記支持部74の正面及び背面側の開口に、二つの軸受75、75がそれぞれ嵌入してある。二つの該軸受75、75には、線材を案内しており、前記クイル4の軸に平行な案内円筒76が転動可能に嵌入してある。該案内円筒76は正面側に突出しており、案内円筒76の突出した部分には連結環77が外嵌してある。該連結環77の正面側にはテーブル78が連結してある。
該テーブル78上に、線材を直線状に矯正する二つの矯正器79、79が前記クイル4の軸方向に沿って並設してあり、正面側にある矯正器79は、前記通路円筒36の他端部に対向しており、二つの矯正器79、79により矯正された線材は前記通路円筒36に送出される。
【0043】
前記矯正器79には複数の矯正ローラ79a、79a、・・・、79aが、前記クイル4の軸の延長線を挟んで交互に並設してある。該矯正ローラ79a、79a、・・・、79aにより線材の側面を狭圧して、線材を直線状に矯正する。
【0044】
一方の矯正器79と、他方の矯正器79とは、線材の軸周りに略90度の位相差を設けて配置してある。一方の矯正器79により、互いに対向する線材の一側面及び他側面を狭圧し、他方の矯正器79により、軸周りの相対位置において前記一側面及び他側面に対し略90度の位相差がある線材の側面を狭圧する。
【0045】
前記案内円筒76の背面側に円筒部材11が連結してあり、該円筒部材11は前記支持板73の背面側に突出している。前記円筒部材11の中心軸と、前記案内円筒76の中心軸とは同軸上にある。前記円筒部材11の背面側にはキャプスターン13を固定する固定円環12が外嵌してあり、該固定円環12にキャプスターン13が連結してある。前記固定円環12と、前記支持板73との間において、プーリ14が前記円筒部材11に外嵌してある。
【0046】
前記支持板73の正面下部には図示しない嵌入穴が開設してあり、該嵌入穴にサーボモータM9が正面側から取り付けてある。該サーボモータM9の回転軸は支持板73の背面側に突出しており、該回転軸にプーリ15が連結してある。該プーリ15と、前記プーリ14との間にベルト16が掛架してあり、前記サーボモータM9の正回転が前記プーリ14、15及びベルト16を介して、前記案内円筒76に伝動し、前記矯正器79、79がクイル4の軸回りに、反時計回りに回転し、前記サーボモータM9の逆回転により、前記矯正器79、79が時計回りに回転するようにしてある。
【0047】
前記基台1に、前記線材送りローラ30、30、・・・、30に供給される線材を巻付けてある図示しないボビンが収容されている。線材は該ボビンから前記キャプスターン13を介して二つの矯正器79、79に送られ、前記線材送りローラ30、30、・・・、30に供給される。供給された線材は前記線材送りローラ30、30・・・、30により前記クイル4に案内される。案内された線材は前記線材加工空間5に送出され、前記線材加工ユニット7、8により加工される。
【0048】
また図1に示す如く、前記基台1の側面には操作部50を設けてある。該操作部50により、ばねのコイル部の巻方向、コイル部の長さ、屈曲位置、及び脚部の長さ等の製造するばねの寸法、並びにばねの製造に使用するツールの種類、及びツールの取付け位置等のばねの製造に必要な情報を後述する制御回路60に入力する構成となっている。前記操作部50は、ばね製造の開始及び停止を入力するスイッチ51を備える。
【0049】
次にばねの製造について説明する。図7は各サーボモータの回転を制御する制御回路付近の要部構成を示すブロック図である。
前記操作部50に前記各サーボモータM1乃至M9の正逆回転を制御する制御回路60が内蔵されており、該制御回路60は、後述する駆動回路に回転信号を出力するCPU、サーボモータM1乃至M9の正逆回転を制御する制御プログラムを格納してあるROM、操作部50から入力された情報を一時的に格納するRAM等を有する。
【0050】
制御回路60には、前記サーボモータM3を駆動して、前記スピンドルSを線材加工空間5に進退させるスピンドル進退駆動回路61、サーボモータM4を駆動して、外側スリーブSaを回転させるスピンドル回転駆動回路62、前記サーボモータM2を駆動して、前記曲げダイスTを線材加工空間5に進退させる曲げダイス進退駆動回路63、サーボモータM1、M1を駆動して、、カッタCを線材加工空間5に進退させるカッタ駆動回路64、サーボモータM5を駆動して、線材送りローラ30、30、・・・、30により線材を送出するローラ駆動回路65、サーボモータM6を駆動して、線材送りユニット3を回転させるユニット駆動回路66、サーボモータM8を駆動して、矯正器79を前後進させる矯正器進退駆動回路67及びサーボモータM9を駆動して、矯正器79を回転させる矯正器回転駆動回路68を接続してある。前記制御回路60から前記各駆動回路61乃至68に回転信号を出力し、前記各サーボモータを所定数回転させる構成にしてある。
【0051】
図8乃至図10はばねの製造工程を示すフローチャート、図11乃至図17はばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【0052】
制御回路60は、操作部50により、ばねの寸法、ばねの製造に使用するツールの種類及びツールの取付け位置等のばねの製造に必要な情報が全て入力されているか否か判断する(ステップS1)。ばねの製造に必要な情報が全て入力されていないときは(ステップS1:NO)、ステップS1に戻る。ばねの製造に必要な情報が全て入力されているときは(ステップS1:YES)、スイッチ51がオンになっているか否か判断する(ステップS2)。スイッチ51がオンになっていないときは(ステップS2:NO)、ステップS2に戻る。スイッチ51がオンになっているときは(ステップS2:YES)、制御回路60は、前記曲げダイスT、スピンドルS及びカッタC、Cを前記線材加工空間5から退出させて、制御プログラムに設定してある初期位置に配置することを示す信号を出力する(ステップS3)。該信号の出力により、各サーボモータが正逆回転して、前記曲げダイスT、スピンドルS及びカッタC、Cは初期位置に配置される。
【0053】
次に制御回路60は、スピンドル進退駆動回路61にスピンドルSを線材加工空間5へ進入させることを示す信号を出力する(ステップS4)。該信号の出力により、サーボモータM3が正回転し前記スピンドルSが線材加工空間5へ進入する。次に制御回路60は、ローラ駆動回路65に線材を送出することを示す信号を出力する(ステップS5)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は正回転し、図11の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は回転し、線材は線材加工空間5へ送出され、前記円柱突起Sc及び内側円柱Sbの間に挿入される。
【0054】
次に制御回路60は、スピンドル回転駆動回路62に前記外側スリーブSaを回転させることを示す信号を出力する(ステップS6)。該信号の出力により、前記サーボモータM4は回転し、図11の矢印にて示す如く、前記外側スリーブSaと共に円柱突起Scが回転し、線材が前記内側円柱Sbに沿って曲げられ、フック部が形成される。そして制御回路60はスピンドル進退駆動回路61にスピンドルSを線材加工空間5から退出させることを示す信号を出力する(ステップS7)。該信号の出力により、前記サーボモータM3は逆回転し、前記スピンドルSは線材加工空間5から退出する。
【0055】
次に制御回路60はローラ駆動回路65に、線材を逆方向へ送出することを示す信号を出力する(ステップS8)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は逆回転し、図12の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は逆回転し、前記線材を逆方向へ送出する。そして制御回路60は矯正器進退駆動回路67に矯正器79、79を後退させることを示す信号を出力する(ステップS9)。該信号の出力により、前記サーボモータM8は逆回転し、線材が逆方向へ送出される距離に対応させて、線材の送出開始と同時に、図12の矢印にて示す如く、前記移動テーブル72は背面側へ移動し、前記矯正器79、79は後退する。
【0056】
次に制御回路60は、曲げダイス進退駆動回路63に曲げダイスTを線材加工空間5に進入させることを示す信号を出力する(ステップS10)。該信号の出力により、前記サーボモータM2は正回転し、曲げダイスTは線材加工空間5に進入して線材に当接する。そして制御回路60はユニット駆動回路66に、線材送りユニット3を反時計回りに回転させることを示す信号を出力する(ステップS11)。該信号の出力により、前記サーボモータM6は正回転し、図13の矢印にて示す如く、前記線材送りユニット3は反時計回りに回転して線材は捩れる。次に矯正器回転駆動回路68に、矯正器79、79を反時計回りに回転させることを示す信号を出力する(ステップS12)。該信号の出力により、前記サーボモータM9は正回転し、図13の矢印にて示す如く、線材送りユニット3の回転に同期して前記矯正器79、79は反時計回りに回転し、矯正器79、79と、線材送りユニット3との間にある線材の捩れは解消する。
【0057】
次に制御回路60は、ローラ駆動回路65に線材加工空間5へ線材を送出することを示す信号を出力する(ステップS13)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は正回転し、図14の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は回転し、線材は線材加工空間5へ送出され、曲げダイスTに当接して、コイル部が形成される。そして制御回路60は矯正器進退駆動回路67に矯正器79、79を前進させることを示す信号を出力する(ステップS14)。該信号の出力により、前記サーボモータM8は正回転し、前記移動テーブル72が背面側に移動した距離に対応する距離を、線材の送出開始と同時に、図14の矢印にて示す如く、前記移動テーブル72は正面側に移動し、矯正器79、79は前進する。
【0058】
次に制御回路60はユニット駆動回路66に、線材送りユニット3を時計回りに回転させることを示す信号を出力する(ステップS15)。該信号の出力により、前記サーボモータM6は逆回転し、図14の矢印にて示す如く、前記線材送りユニット3は時計回りに回転して線材の捩れは解消する。次に制御回路60は矯正器回転駆動回路68に、矯正器79、79を時計回りに回転させることを示す信号を出力する(ステップS16)。該信号の出力により、前記サーボモータM9は逆回転し、前記線材送りユニット3の回転に同期して、図14の矢印にて示す如く、前記矯正器79、79は時計回りに回転する。そして制御回路60は曲げダイス進退駆動回路63に曲げダイスTを線材加工空間5から退出させることを示す信号を出力する(ステップS17)。該信号の出力により、前記サーボモータM2は逆回転し、前記曲げダイスTは線材加工空間5から退出する。
【0059】
次に制御回路60は、ローラ駆動回路65に線材加工空間5へ線材を送出することを示す信号を出力する(ステップS18)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は正回転し、図15の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は回転し、線材は線材加工空間5へ送出される。そして制御回路60はスピンドル進退駆動回路61に、スピンドルSを線材加工空間5に進入させることを示す信号を出力する(ステップS19)。該信号の出力により、前記サーボモータM3が正回転して、前記スピンドルSは線材加工空間5に進入し、送出された線材は前記円柱突起Sc及び内側円柱Sbの間に係止される。
【0060】
次に制御回路60は、スピンドル回転駆動回路62に前記外側スリーブSaを回転させることを示す信号を出力する(ステップS20)。該信号の出力により、前記サーボモータM4は回転し、図16の矢印にて示す如く、前記外側スリーブSaと共に前記円柱突起Scが回転し、線材が前記内側円柱Sbに沿って曲げられ、フック部が形成される。そして制御回路60はスピンドル進退駆動回路61にスピンドルSを線材加工空間5から退出させることを示す信号を出力する(ステップS21)。該信号の出力により、前記サーボモータM3は逆回転し、前記スピンドルSは線材加工空間5から退出する。
【0061】
次に制御回路60はローラ駆動回路65に、線材を逆方向へ送出することを示す信号を出力する(ステップS22)。該信号の出力により、前記サーボモータM5は逆回転し、図17の矢印にて示す如く、線材送りローラ30、30・・・30は逆回転し、前記線材を逆方向へ送出する。そして制御回路60は矯正器進退駆動回路67に矯正器79、79を後退させることを示す信号を出力する(ステップS23)。該信号の出力により、前記サーボモータM8は逆回転し、線材が逆方向へ送出される距離に対応させて、線材の送出開始と同時に、図17の矢印にて示す如く、前記移動テーブル72は背面側へ移動し、前記矯正器79、79は後退する。
【0062】
次に制御回路60は、カッタ駆動回路64に線材を切断することを示す信号を出力する(ステップS24)。該信号の出力によりサーボモータM1、M1が回転し、カッタC、Cが線材加工空間5に進入して線材を切断する。そして制御回路60は、前記スイッチ51がオフになっているか否か判断する(ステップS25)。スイッチ51がオンになっているときは(ステップ25:NO)、ステップS3に戻り、ばねの製造を継続する。スイッチ51がオフになっているときは(ステップ25:YES)、ばねの製造を終了する。
【0063】
実施の形態に係るばね製造機にあっては、前記プーリ14、15及びベルト16を設けることにより、前記線材送りユニット3の回転に同期させて、前記矯正器79、79を前記クイル4の軸回り、つまり線材の軸回りに回転させて、前記線材送りユニット3と、前記矯正器79、79との間にある線材に歪みが生じることを防ぎ、精度の良いばねを製造することができる。
【0064】
また前記移動テーブル72を設けることにより、スピンドルSにて加工した線材を曲げダイスTにて加工するために、矯正器79、79を一旦通過した線材を逆方向へ送出させて、線材と曲げダイスTとの相対位置を調整する場合に、前記矯正器79、79を線材と共に移動させて、線材が矯正器79、79を再度通過することを防ぎ、線材が不必要な矯正を受けて変形することを回避することができる。
【0065】
また複数の加工ツールを、前記クイル4を中心にして、つまり線材の軸を中心にして放射状に配置することにより、要求される複数の仕様に応じたばねを製造する場合に、仕様を切り替える際の段取り替え時において、一連の製造に使用するスピンドルS、曲げダイスT及びカッタCを予め設けておくことで、加工ツールの交換を不要にすることができ、また共通の線材及び加工ツールを使用して複数の仕様に応じたばねを製造する場合には、段取り替えさえ不要にすることができる。
【0066】
なおコイル部を形成するときに、線材送りユニットを回転させずに、矯正器のみを回転させて線材を捩り、コイル部に初張力を発生させても良い。また要求される仕様に対応させてフック部をコイル部の軸方向に沿うように屈曲しても良い。またプーリ14、15及びベルト16に代えて、線材送りユニット3の回転機構と同様な回転機構を設け、矯正器79、79を回転させても良い。またクイルを設けずに、フレームの正面に線材送りユニット及び矯正器を装着し、線材送りユニットに対向させて加工ツールをフレームの正面に装着し、矯正器を線材の軸回りに回転させると共に線材の軸方向に沿って移動させて、線材を加工しても良い。またクイルを備えておらず、線材を加工するベンダー機において、ベンダー機の矯正器を、線材の軸回りに回転させると共に線材の軸方向に沿って移動させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態に係るばね製造機の略示正面図である。
【図2】実施の形態に係るばね製造機の略示部分断面側面図である。
【図3】実施の形態に係るばね製造機の略示背面図である。
【図4】実施の形態に係るばね製造機の矯正器付近の略示部分断面平面図である。
【図5】実施の形態に係るばね製造機のスピンドルを示す模式的斜視図である。
【図6】実施の形態に係るばね製造機の線材送りユニット付近の略示側面断面図である。
【図7】実施の形態に係るばね製造機の各サーボモータの回転を制御する制御回路付近の要部構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図12】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図13】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図14】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図15】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図16】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【図17】実施の形態に係るばね製造機によるばねの製造工程を説明する略示部分断面側面図である。
【符号の説明】
【0068】
3 線材送りユニット
4 クイル
14、15 プーリ
16 ベルト
50 操作部
51 スイッチ
60 制御回路
72 移動テーブル
79 矯正器
C カッタ(加工ツール)
S スピンドル(加工ツール)
T 曲げダイス(加工ツール)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を直線状に矯正する矯正器と、該矯正器に矯正された線材を線材加工空間へ送り出す線材送りユニットと、該線材送りユニットにより前記線材加工空間送り出された線材をばねに加工する加工ツールとを備え、前記矯正器及び線材送りユニットを線材の軸に沿って同軸的に配置してあるばね製造機において、
前記矯正器を線材の軸回りに回転させる手段を備えることを特徴とするばね製造機。
【請求項2】
前記矯正器を線材の軸方向に移動させる手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のばね製造機。
【請求項3】
前記加工ツールを複数備え、
複数の前記加工ツールを、線材の軸を中心にして放射状に配置してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のばね製造機。
【請求項1】
線材を直線状に矯正する矯正器と、該矯正器に矯正された線材を線材加工空間へ送り出す線材送りユニットと、該線材送りユニットにより前記線材加工空間送り出された線材をばねに加工する加工ツールとを備え、前記矯正器及び線材送りユニットを線材の軸に沿って同軸的に配置してあるばね製造機において、
前記矯正器を線材の軸回りに回転させる手段を備えることを特徴とするばね製造機。
【請求項2】
前記矯正器を線材の軸方向に移動させる手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のばね製造機。
【請求項3】
前記加工ツールを複数備え、
複数の前記加工ツールを、線材の軸を中心にして放射状に配置してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のばね製造機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−190047(P2009−190047A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30720(P2008−30720)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000190622)新興機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000190622)新興機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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