説明

ばね製造装置

【課題】ばね形成体の自由長を正確に測定し得るばね製造装置を提供する。
【解決手段】線材供給部材と、ピッチ荷重付与部材と、成形部材と、ばね検長機構と、切断部材とを備える。前記ばね検長機構は、ばね形成体の軸線方向に関し移動可能且つ軸線回りに関し移動不能とされた被検出部材であって、少なくとも該ばね形成体が基準巻き数に達した状態においては、該ばね形成体の自由端部と係合する被検出体の軸線方向位置を検出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の線材からコイルばねを製造するばね製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺の線材を長手方向に沿って送り出す線材供給部材と、前記線材に対して前記長手方向と直交するピッチ方向へのピッチ荷重を付与するピッチ荷重付与部材と、前記線材と衝合して該線材から螺旋状のばね形成体を形成する成形部材と、基準巻き数に達した前記ばね形成体を前記長尺の線材から切断する切断部材とを備えたばね製造装置は、従来から公知である。
【0003】
斯かるばね製造装置は、通常、自動化されたコイルばね製造システムに介挿される。
即ち、該コイルばね製造システムは、前記ばね製造装置によってコイルばねを製造するコイリング工程と、該コイリング工程によって製造されたコイルばねの加工歪みを除去する第1テンパー工程と、前記コイルばねの両端面を研磨する両端研磨工程と、前記コイルばねの表面活性化を図る為の第1ショットピーニング工程と、前記コイルばねの表面硬化を図る為の窒化工程と、前記コイルばねに圧縮残留応力を付与する為の第2ショットピーニング工程と、前記コイルばねの表面に生じた加工歪みを緩和する為の第2テンパー工程と、これらの工程を経て製造されたコイルばねに対して、自由長,外径及び圧縮長に関する検査を行う検査工程とを含んでいる。
【0004】
ところで、前記検査工程において、製造不良とされる原因の殆どは、前記コイリング工程における製造誤差、特に、自由長に関する製造誤差に起因する。
しかしながら、前記従来の構成においては、前記コイリング工程によって製造不良が生じていたとしても、斯かる製造不良品に対しても、前記第1テンパー工程〜前記第2テンパー工程の一連の製造工程が施される為、製造効率が悪いという問題がある。
【0005】
このような問題点に対して、例えば、前記コイリング工程を担うばね製造装置に自由長検出機構を備え、該コイリング工程において製造不良を早期に発見することが提案されている(下記特許文献1参照)。
該特許文献に記載のばね製造装置は、螺旋状に成形されたばね形成体の自由端部(先端部)と対向するように電気的容量検出手段を配設し、該電気的容量検出手段によって、該検出手段と前記ばね形成体の自由端部との間の電気的容量を検出し、この電気的容量に基づき前記ばね形成体の自由長を検出するように構成されている。
【0006】
詳しくは、該特許文献に記載のばね製造装置は、前記電気的容量検出手段によって、まず、基準自由長を有する基準コイルばねの電気的容量と、該基準コイルばねとは自由長が異なる比較コイルばねの電気的容量とを検出し、これらに基づき電気的容量の変化と自由長との関係式を算出し、該関係式に基づき、成形されたばね形成体の自由長を前記基準コイルばねの自由長との差異として検出するように構成されている。
斯かるばね製造装置は、前記電気的容量検出手段を移動させることなくばね形成体の自由長測定を行っている為、ばね形成体回りの物質変化の影響を受けること無く、正確にばね形成体の自由長測定が行えるとされている。
【0007】
しかしながら、前記ばね製造装置においては、前記電気的容量検出手段によって、コイルばねの自由端部の位置を直接的に検出するように構成されている為、以下に示す不都合がある。
即ち、前記電気的容量検出手段は、被検出部位となる前記ばね形成体の自由端部との間の電気的容量を検出するものである。
つまり、前記従来のばね製造装置は、前記ばね形成体の自由端部が該検出手段に近接すると(即ち、前記ばね形成体の自由長が長いと)、前記電気的容量検出手段と該ばね形成体の自由端部との間の電気的容量が大きくなり、逆に、前記ばね形成体の自由端部が該検出手段から離間していると(即ち、前記ばね形成体の自由長が短いと)、前記電気的容量検出手段と該ばね形成体の自由端部との間の電気的容量が小さくなることを利用して、前記ばね形成体の自由長を検出するように構成されている。
【0008】
確かに、前記電気的容量検出手段による検出値は、前記ばね形成体の自由端部と該電気的容量検出手段との間の距離、即ち、前記ばね形成体の自由端部の軸線方向位置に応じて比例的に変化するが、その一方で、前記ばね形成体における自由端部の前記検出手段に対する軸線回り位置によっても変化する。
【0009】
ここで、長尺の線材からばね形成体を成形する際の該ばね形成体の自由端部の位置変化について考えると、該ばね形成体の自由端部は、軸線回りに回転しながら軸線方向前方側へ移動する。
つまり、該ばね形成体の自由端部は、前記電気的容量検出手段に対して、軸線方向に加えて、軸線回り方向にも相対移動する。
【0010】
従って、一のばね形成体の自由長と他のばね形成体の自由長とが同一であったとしても、該一のばね形成体の自由端部の軸線回り位置と他のばね形成体の自由端部の軸線回り位置とが異なる場合には、該一のばね形成体に対する検出値と他のばね形成体に対する検出値とが異なることになる。
このように、前記ばね形成体の自由端部を前記電気的容量検出手段によって直接的に検出する場合には、正確にばね形成体の自由長を検出することはできないという問題が生じる。
【0011】
又、前記電気的容量検出手段に代えて、光学式位置検出手段や接触式位置検出手段を用いることも可能であるが、前述のように、前記ばね形成体の自由端部が軸線回りにも変位するから、これらによっても、該ばね形成体の自由長を正確に検出することはできない。
【0012】
また、従来のばね製造装置においては、前記ピッチ荷重付与部材は、単に、前記線材の送出方向に対して略直交するピッチ方向への変位量のみによって制御されていた。
しかし、前記線材には、方向性や線径に関する「くせ」が存在する。
従って、同一の硬度を有する線材に対して、前記ピッチ荷重付与部材の前記ピッチ方向への変位量を同一としたとしても、製造されるばね形成体の自由長にばらつきが生じるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−340541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、長尺の線材からコイルばねを製造するばね製造装置であって、螺旋状に成形されたばね形成体の自由長を正確に測定し得るばね製造装置の提供を、一の目的とする。
また、本発明は、長尺の線材からコイルばねを製造する製造装置であって、コイルばねの自由長のばらつきを可及的に低減させ得るばね製造装置の提供を、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、前記一の目的を達成する為に、長尺の線材を長手方向に沿って送り出す線材供給部材と、前記線材に対して前記長手方向と直交するピッチ方向へのピッチ荷重を付与するピッチ荷重付与部材と、前記線材と衝合して該線材から螺旋状のばね形成体を形成する成形部材と、基準巻き数に達した前記ばね形成体の自由長を検出するばね検長機構と、基準巻き数に達した前記ばね形成体を前記長尺の線材から切断する切断部材とを備えたばね製造装置であって、前記ばね検長機構が、前記ばね形成体の軸線方向に移動可能且つ軸線回りに移動不能とされた被検出部材であって、少なくとも該ばね形成体が基準巻き数に達した状態においては、該ばね形成体の自由端部と係合するように配設された被検出体と、前記被検出体を前記ばね形成体に向けて付勢する付勢部材と、前記基準巻き数に達した状態の前記ばね形成体によって前記付勢部材の付勢力に抗して押動されている前記被検出部材の位置を検出するセンサー部材とを有するばね製造装置を提供する。
【0015】
本発明の一態様における他形態は、前記一の目的を達成する為に、長尺の線材を長手方向に沿って送り出す線材供給部材と、前記線材に対して前記長手方向と直交するピッチ方向へのピッチ荷重を付与するピッチ荷重付与部材と、前記線材と衝合して該線材から螺旋状のばね形成体を形成する成形部材と、基準巻き数に達した前記ばね形成体の自由長を検出するばね検長機構と、基準巻き数に達した前記ばね形成体を前記長尺の線材から切断する切断部材とを備えたばね製造装置であって、前記ばね検長機構が、前記ばね形成体の軸線方向に移動可能とされた被検出部材であって、少なくとも該ばね形成体が基準巻き数に達した状態においては、該ばね形成体の自由端部と係合するように配設された被検出体と、前記被検出体を前記ばね形成体に向けて付勢する付勢部材と、前記基準巻き数に達した状態の前記ばね形成体によって前記付勢部材の付勢力に抗して押動されている前記被検出部材の位置を検出するセンサー部材とを有しており、前記被検出部材は前記センサー部材によって検出される部位が実質的に平板状とされているばね製造装置を提供する。
【0016】
又、本発明の他態様は、前記他の目的を達成する為に、長尺の線材を長手方向に沿って送り出す線材供給部材と、前記線材に対して前記長手方向と直交するピッチ方向へのピッチ荷重を付与するピッチ荷重付与部材と、前記線材と衝合して該線材から螺旋状のばね形成体を形成する成形部材と、基準巻き数に達した前記ばね形成体を前記長尺の線材から切断する切断部材とを備えたばね製造装置であって、前記ピッチ荷重付与部材によって前記線材に付与される前記ピッチ荷重を検出するピッチ荷重検出部材が設けられているばね製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、前記ばね形成体の軸線方向に移動可能且つ軸線回りに移動不能とされた被検出部材であって、少なくとも該ばね形成体が基準巻き数に達した状態においては、該ばね形成体の自由端部と係合するように配設された被検出体の位置をセンサー部材によって検出するように構成したので、前記ばね形成体の自由長を正確に測定することができる。
又、本発明の一態様における他形態によれば、前記ばね形成体の軸線方向に移動可能とされた被検出部材であって、少なくとも該ばね形成体が基準巻き数に達した状態においては、該ばね形成体の自由端部と係合するように配設された被検出体の位置をセンサー部材によって検出するように構成すると共に、前記被検出部材のうちは前記センサー部材によって検出される部位を実質的に平板状としたので、前記ばね形成体の自由長を正確に測定することができる。
【0018】
又、本発明の他態様によれば、線材に対して直交するピッチ方向へのピッチ荷重を付与するピッチ荷重付与部材にピッチ荷重検出部材を設けたので、螺旋状のばね形成体を成形する際に、ピッチ荷重をモニタリングすることができる。従って、コイルばねの自由長のばらつきを有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1
以下、本発明に係るばね製造装置の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態に係るばね製造装置が適用されたコイルばね製造システムの製造フローを示すフローチャートである。
【0020】
図1に示すように、前記コイルばね製造システムは、前記ばね製造装置によってコイルばねを製造するコイリング工程と、該コイリング工程によって製造されたコイルばねの加工歪みを除去する第1テンパー工程と、前記コイルばねの両端面を研磨する両端研磨工程と、前記コイルばねの表面活性化を図る為の第1ショットピーニング工程と、前記コイルばねの表面硬化を図る為の窒化工程と、前記コイルばねに圧縮残留応力を付与する為の第2ショットピーニング工程と、前記コイルばねの表面に生じた加工歪みを緩和する為の第2テンパー工程と、これらの工程を経て製造されたコイルばねに対して、自由長,外径及び圧縮長に関する検査を行う検査工程とを含んでいる。
【0021】
好ましくは、前記コイルばね製造システムには、前記両端研磨工程の後に、前記コイルばねの端面内周部を研磨する内面取り工程を含めることができ、これにより、リテーナの摩耗を防止することができる。
また、該コイルばね製造システムには、前記コイルばねの上下を区別する為の塗料をローラによって転写する識別工程を含めることができる。斯かる識別工程は、例えば、前記ショットピーニング工程の後に行うことができる。
【0022】
図2に、本実施の形態に係るばね製造装置の模式図を示す。
該ばね製造装置1Aは、
線材供給部材10と、ピッチ荷重付与部材(図示せず)と、成形部材30と、ばね検長機構40と、切断部材(図示せず)とを備えている。
【0023】
前記線材供給部材10は、長尺の線材2を加工空間Sへ向けて送出するように構成されている。
具体的には、該線材供給部材10は、線材を挟持搬送する線材送りローラ(図示せず)と、該線材送りローラによって送出される線材2を前記加工空間Sへ向けて案内するガイド部材11とを有している。
【0024】
前記ピッチ荷重付与部材は、前記加工空間S内において、前記線材2に対して該線材2の前記長手方向と直交するピッチ方向へピッチ荷重を付与するように構成されている。
具体的には、該ピッチ荷重付与部材は、前記ピッチ方向に関し位置調整可能とされる。
【0025】
前記成形部材30は、前記加工空間S内において、前記線材2と衝合して、該線材2から螺旋状のばね形成体3を形成するように構成されている。
なお、前記ピッチ荷重付与部材は該成形部材30より前記線材2の送出方向上流側に配設されても良いし、該成形部材30より前記線材2の送出方向下流側に配設されても良い。
好ましくは、該成形部材30は、前記螺旋状ばね形成体3の軸線を基準にして、周方向に変位配置された第1成形部材31及び第2成形部材(図示せず)を有し得る。
該第1及び第2成形部材は、前記螺旋状ばね形成体3の軸線を基準にして径方向位置調整可能とされる。
即ち、該第1及び第2成形部材の前記径方向位置を調整することによって、前記ばね形成体3の外径を変更し得るようになっている。
【0026】
前記ばね検長機構40は、前記ばね形成体3が基準巻き数の達した段階で、該ばね形成体3の自由長を測定するように構成されている。
なお、該ばね検長機構40の具体的構成については、後述する。
【0027】
前記切断部材は、基準巻き数の達した前記ばね形成体3の自由長が前記ばね検長機構40によって測定された後に、該ばね形成体3を前記長尺の線材2から切断するように構成されている。
【0028】
図2に示すように、前記ばね検長機構40は、被検出部材41と、付勢部材42と、センサー部材43とを備えている。
前記被検出部材41は、前記ばね形成体3の軸線方向に関し移動可能且つ軸線回り方向に関し移動不能とされており、少なくとも該ばね形成体3が基準巻き数に達した状態においては、該ばね形成体3の自由端部3aと係合するように配設されている。
【0029】
前記付勢部材42は、前記被検出部材41を前記ばね形成体3に向けて付勢するように構成されている。
前記センサー部材43は、前記ばね形成体3の軸線方向に関する前記被検出部材41の位置を検出し得るように構成されている。
【0030】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記ばね検長機構40は、前記構成に加えて、ハウジング50を備えている。
該ハウジング50は、前記センサー部材43を支持するベース部材51と、前記ばね形成体3の軸線方向に沿うように前記ベース部材51に立設された複数の支持部材52とを有している。
前記支持部材52には、互いに軸線方向に離間された第1及び第2係止部材53,54が固定的に設けられている。
【0031】
前記被検出部材41は、前記第1及び第2係止部材53,54の間において、前記ハウジング50の前記支持部材52に前記ばね形成体3の軸線方向に関し移動可能且つ軸線回り方向に関し移動不能に支持されている。
詳しくは、前記被検出部材41には、前記複数の支持部材52が挿通される挿通孔が設けられている。そして、前記付勢部材42は、前記第1係止部材53と前記被検出部材41との間に介挿されている。
なお、前記第2係止部材54は、前記付勢部材42によって付勢される前記被検出部材41の初期位置を画している。
【0032】
斯かる構成により、前記被検出部材41は、前記ばね形成体3と係合しない初期状態においては、前記付勢部材42によって前記第2係止部材54と当接する初期位置に位置し、且つ、前記ばね形成体3が基準巻き数に近づくと、該ばね形成体3の自由端部によって前記付勢部材42の付勢力に抗して前記第1係止部材53へ向けて押動されるようになっている。
【0033】
斯かる構成の前記ばね製造装置1Aは、以下の効果を得ることができる。
即ち、該ばね製造装置1Aは、前述の通り、前記ばね検長機構40を備えている。
従って、該ばね製造装置1Aを前記ばね製造システムに適用した際に、自由長が基準範囲内から逸脱している製造不良品を早期に発見でき、従って、該製造不良品に対して、後続する第1テンパー工程〜第2テンパー工程が施されるという不都合を有効に防止できる。
【0034】
さらに、本実施の形態においては、前記ばね検長機構40は、前記ばね形成体3の自由端部の位置を直接検出するのではなく、前記被検出部材41を介して検出するように構成されている。
従って、前記ばね形成体3の自由長を極めて正確に測定することができる。
斯かる本実施の形態の効果を、前記ばね形成体3の自由端部3aと対向するように備えられたセンサー部材によって、該ばね形成体3の自由端部を直接的に測定する従来構成と対比して説明する。
【0035】
前記線材2から螺旋状の前記ばね形成体3を成形する際、該ばね形成体3の自由端部3aは軸線回りに回転しながら軸線方向前方側へ移動する。
つまり、前記ばね形成体3の自由端部3aは、前記センサー部材43に対して、軸線方向のみならず軸線回り方向へも相対移動する。
従って、前記センサー部材43によって前記ばね形成体3における自由端部3aの軸線方向位置を直接測定する場合には、該ばね形成体3の自由端部3aの軸線回りの変位を考慮した上で、該自由端部3aの軸線方向位置を測定しなければならず、測定誤差が生じやすい。
【0036】
特に、前記センサー部材43として静電容量式センサー等の電気的容量検出手段を用いる場合には、前記測定誤差が生じやすい。
即ち、電気的容量検出手段は、被検出部位と該検出手段との間の距離変動に応じて両者の間に存する静電容量が変化することを利用して、被検出部位の離間位置に基づきばね形成体の自由長を検出するものである。
斯かる電気的容量検出手段は、油や埃が多い環境下においても性能が安定している為、本実施の形態におけるようなばね製造装置には好適である。
しかしながら、前述のように、前記ばね形成体3の自由端部3aの軸線方向位置を直接的に前記電気的容量検出手段によって検出すると、該ばね形成体3の自由端部3aの軸線回り位置の変化によって、該自由端部3aの軸線方向位置が同一であっても、検出値が異なるという不都合が生じ得る。
【0037】
詳しくは、前記電気的容量検出手段は、前述の通り、該センサー部材と被検出部位との間の静電容量値を測定するように構成されている。
斯かる静電容量値は、前記ばね形成体3の自由端部3aの前記センサー部材に対する軸線方向位置の変化に応じて比例的に変動するが、該自由端部3aの前記センサー部材に対する軸線回り位置の変化によっても変動する。
【0038】
従って、前述のように、前記電気的容量検出手段を用いて前記ばね形成体3の自由端部3aの軸線方向位置を直接的に検出すると、該検出値には、該自由端部3aの軸線方向位置に加えて、該自由端部3aの軸線回り位置の影響も加算されることになり、前記ばね形成体3の自由長を正確に測定することが困難となる。
即ち、例えば、一のばね形成体3の自由端部3aと前記電気的容量検出手段との離間距離と、他のばね形成体3’の自由端部3a’と前記電気的容量検出手段との離間距離が同一であったとしても、前記一のばね形成体3の自由端部3aの軸線回り位置と、前記他のばね形成体3’の自由端部3a’の軸線回り位置とが異なっていると、前記電気的容量検出手段の検出値が異なることになる。
【0039】
これに対し、本実施の形態においては、前述の通り、前記ばね形成体3の軸線方向に関し移動可能で且つ軸線回りに関し移動不能とされた前記被検出部材41を、該ばね形成体3の自由端部3aによって押動させると共に、該被検出部材41の軸線方向位置を前記センサー部材43によって検出するように構成している。
前記被検出部材41は、前記センサー部材43に対して、前記ばね形成体3の軸線方向に関してのみ相対移動する。つまり、前記ばね形成体3の成形加工時に、該ばね形成体3の自由端部位置が軸線回りに変化しても、斯かる軸線回りの位置変化が前記センサー部材43による検出値に影響を及ぼすことはない。従って、前記ばね形成体3の自由長を高精度に測定することができる。
【0040】
なお、前記センサー部材43としては、前記電気的容量検出手段の他に、光学式位置検出手段又は接触式位置検出手段等の種々の部材を使用することができる。
好ましくは、前記被検出部材43は、前記センサー部材との対向面を平板状とすることができる。
斯かる構成を備えることにより、前記被検出部材41の前記センサー部材43に対する軸線方向位置以外の相対位置変化をより確実に防止でき、前記ばね形成体3の自由長をより高精度に検出することができる。
【0041】
又、好ましくは、前記ばね検長機構40は、前記被検出部材41が前記ばね形成体3の自由端部3aと係合し得るように前記加工空間S内に位置する検出位置と、前記加工空間Sから退避した退避位置とをとり得るように構成される。
例えば、前記ハウジング50を移動可能に構成すると共に、モータ等の駆動部材によって、前記ばね形成体3の形成時には該ハウジング50を検出位置に位置させ、且つ、前記切断部材による切断時には該ハウジング50を退避位置に位置させることができる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、前記被検出部材41を前記センサー部材43に対して前記ばね形成体3の軸線方向に関し移動可能で且つ軸線回りに関し移動不能としたが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
即ち、前記被検出部材41における前記センサー部材43による被検出部位を実質的に平板状とすれば、該被検出部材41が前記ばね形成体3の軸線回りに移動しても、斯かる軸線回りの移動によって前記センサー部材43による検出に誤差が生じる虞はない。
【0043】
つまり、被検出部位が実質的に平板状とされている場合には、前記被検出部材41が前記ばね形成体3の軸線方向に関し移動可能であれば、該ばね形成体3の軸線回りに関し移動不能か否かに拘わらず、前記ばね形成体3の自由長を高精度に測定することができる。
なお、前記「実質的に平板状」とは、前記被検出部材41の前記軸線回りの移動によって、前記センサー部材43による検出値に影響が生じない程度の平板状という意義である。
従って、前記被検出部材41における前記センサー部材43との対向面の一部に凹部又は凸部が存在したとしても、該凹部又は凸部が前記センサー部材43による検出値に影響を及ぼさないものであれば、前記「実質的に平板状」に含まれる。
【0044】
実施の形態2
以下、本発明に係るばね製造装置の好ましい他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施の形態に係るばね製造装置1Bの模式図である。
【0045】
本実施の形態に係るばね製造装置1Bは、前記実施の形態1に係るばね製造装置1Aと同様、前記コイルばね製造システムに適用される。
なお、前記実施の形態1における同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
図3に示すように、該ばね製造装置1Bは、前記線材供給部材10と、ピッチ荷重付与部材20と、前記成形部材30と、前記切断部材(図示せず)とを備えている。
【0047】
前記ピッチ荷重付与部材20は、前記加工空間S内において、前記線材2に対して該線材2の前記長手方向と直交するピッチ方向へピッチ荷重を付与するように構成されている点は、前記実施の形態1におけると同一であるが、さらに、前記線材2に付与される前記ピッチ荷重を検出するピッチ荷重検出部材25が備えられている。
詳しくは、該ピッチ荷重付与部材20は、モータ部材21と、該モータ部材21によって前記ピッチ方向へ進退移動される係合部材22と、前記ピッチ荷重検出部材25とを有している。
【0048】
本実施の形態においては、前記係合部材22は、前記モータ部材21の出力軸21aに作動的に連結された基端側部材23と、前記線材2と係合するピッチツール24aが設けられた先端側部材24とを有している。
そして、前記ピッチ荷重検出部材25は、前記基端側部材23及び前記先端側部材24の間に介挿されたロードセルとされている。
これに代えて、前記ピッチ荷重検出部材25を、前記モータ部材21の出力軸21aの負荷を検出するように構成することも可能である。
【0049】
斯かる構成のばね製造装置1Bにおいては以下の効果を得ることができる。
即ち、従来のばね製造装置においては、ピッチ荷重付与部材は、単に、前記線材2の送出方向に対して略直交するピッチ方向への変位量のみによって制御されていた。
しかし、前記線材2には、方向性や線径に関する「くせ」が存在する。
その為、同一の硬度を有する線材2に対して、ピッチ荷重付与部材のピッチ方向への変位量を同一としたとしても、製造されるコイルばねの自由長にばらつきが生じ得る。
【0050】
つまり、前記ピッチ荷重付与部材20を変位量制御するだけでは、製造されたコイルばねの自由長が許容範囲を外れる場合が生じ得る。
前記ばね製造装置を前記ばね製造システムに適用した場合、このような製造不良品に対しても、後続する第1テンパー工程〜第2テンパー工程が施されることになる。
【0051】
これに対し、本実施の形態においては、前述の通り、前記ピッチ荷重検出部材25によって前記ピッチ荷重付与部材20によるピッチ荷重を検出するように構成している。
従って、前記ピッチ荷重検出部材25の検出値に基づき、現在成形中のばね成形体3が所定のピッチ荷重を有するか否かを、リアルタイムに判断することができる。
例えば、前記ピッチ荷重付与部材20を変位量制御しつつ、且つ、前記ピッチ荷重検出部材25の検出値をモニタリングすることによって、該ばね製造装置1Bによるコイリング工程において、製造不良を早期に発見することができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係るばね製造装置1Bによれば、コイリング工程において、コイルばねの製造不良を発見できるので、自由長が基準範囲内から逸脱している製造不良品に対して、後続する第1テンパー工程〜第2テンパー工程が施されるという不都合を有効に防止できる。
なお、本実施の形態においては、前記ばね検長機構40を削除したが、当然ながら、本実施の形態に係るばね製造装置1Bに、前記ばね検長機構40を備えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明に係るばね製造装置が適用されるばね製造システムのフロー図である。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態に係るばね製造装置の模式図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施の形態に係るばね製造装置の模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B ばね製造装置
10 線材供給部材
20 ピッチ荷重付与部材
25 ピッチ荷重検出部材
30 成形部材
40 ばね検長機構
41 被検出部材
42 付勢部材
43 センサー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の線材を長手方向に沿って送り出す線材供給部材と、前記線材に対して前記長手方向と直交するピッチ方向へのピッチ荷重を付与するピッチ荷重付与部材と、前記線材と衝合して該線材から螺旋状のばね形成体を形成する成形部材と、基準巻き数に達した前記ばね形成体の自由長を検出するばね検長機構と、基準巻き数に達した前記ばね形成体を前記長尺の線材から切断する切断部材とを備えたばね製造装置であって、
前記ばね検長機構は、
前記ばね形成体の軸線方向に移動可能且つ軸線回りに移動不能とされた被検出部材であって、少なくとも該ばね形成体が基準巻き数に達した状態においては、該ばね形成体の自由端部と係合するように配設された被検出体と、
前記被検出体を前記ばね形成体に向けて付勢する付勢部材と、
前記基準巻き数に達した状態の前記ばね形成体によって前記付勢部材の付勢力に抗して押動されている前記被検出部材の位置を検出するセンサー部材とを有していることを特徴とするばね製造装置。
【請求項2】
長尺の線材を長手方向に沿って送り出す線材供給部材と、前記線材に対して前記長手方向と直交するピッチ方向へのピッチ荷重を付与するピッチ荷重付与部材と、前記線材と衝合して該線材から螺旋状のばね形成体を形成する成形部材と、基準巻き数に達した前記ばね形成体の自由長を検出するばね検長機構と、基準巻き数に達した前記ばね形成体を前記長尺の線材から切断する切断部材とを備えたばね製造装置であって、
前記ばね検長機構は、
前記ばね形成体の軸線方向に移動可能とされた被検出部材であって、少なくとも該ばね形成体が基準巻き数に達した状態においては、該ばね形成体の自由端部と係合するように配設された被検出体と、
前記被検出体を前記ばね形成体に向けて付勢する付勢部材と、
前記基準巻き数に達した状態の前記ばね形成体によって前記付勢部材の付勢力に抗して押動されている前記被検出部材の位置を検出するセンサー部材とを有しており、
前記被検出部材は前記センサー部材によって検出される部位が実質的に平板状とされていることを特徴とするばね製造装置。
【請求項3】
長尺の線材を長手方向に沿って送り出す線材供給部材と、前記線材に対して前記長手方向と直交するピッチ方向へのピッチ荷重を付与するピッチ荷重付与部材と、前記線材と衝合して該線材から螺旋状のばね形成体を形成する成形部材と、基準巻き数に達した前記ばね形成体を前記長尺の線材から切断する切断部材とを備えたばね製造装置であって、
前記ピッチ荷重付与部材によって前記線材に付与される前記ピッチ荷重を検出するピッチ荷重検出部材が設けられていることを特徴とするばね製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−111726(P2007−111726A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304713(P2005−304713)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】