へアライン転写シート
【課題】1)ロール状に巻き取った場合であっても、ブロッキングの問題を発生させず、2)ヘアライン転写シートを用いて作成した加飾成形品について、自然な風合いのヘアライン柄を表現でき、3)加飾成形品の表面に虹を発生させないヘアライン転写シートを提供することにある。
【解決手段】物品を装飾するヘアライン転写シートにおいて、前記ヘアライン転写シートが基体シートと、前記基体シートの上に複数形成され、前記基体シートに近づくにつれて断面積が大きくなる胴部と、複数形成された前記胴部の間に前記胴部同士を連結するように形成され、前記胴部より幅が狭く、かつ前記胴部より高さが低いクビレ部とを備えるインク形成部を前記ヘアライン転写シートの長尺方向に備えたヘアライン層と、前記ヘアライン層の上に形成される保護層と、前記保護層の上に形成される接着層とを備えるーヘアライン転写シートとした。
【解決手段】物品を装飾するヘアライン転写シートにおいて、前記ヘアライン転写シートが基体シートと、前記基体シートの上に複数形成され、前記基体シートに近づくにつれて断面積が大きくなる胴部と、複数形成された前記胴部の間に前記胴部同士を連結するように形成され、前記胴部より幅が狭く、かつ前記胴部より高さが低いクビレ部とを備えるインク形成部を前記ヘアライン転写シートの長尺方向に備えたヘアライン層と、前記ヘアライン層の上に形成される保護層と、前記保護層の上に形成される接着層とを備えるーヘアライン転写シートとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はヘアライン柄を有する転写シートに関し、特に無機粒子を含有したインキを用いてヘアライン柄を形成するヘアライン転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
転写シートを用いて、プラスチック部品や外装品のような物品の表面を保護又は装飾する方法は従来から知られている。転写シートの構成として、支持体である基体シートの面上に転写層が形成されたものが知られている。
【0003】
へアライン柄の装飾を物品に行う場合、転写シートとして、へアライン転写シートが用いられる(例えば、特許文献1)。
【0004】
図14は、従来のヘアライン転写シート500の斜視図であり、図15は図14におけるZ1−Z1切断面を示した図である
【0005】
図14を参照して、へアライン転写シート500は、基体シート400、へアライン層410、保護層420、絵柄層430、接着層440から構成されている。
【0006】
図15を参照して、転写シート500のうち、ヘアライン層410は、複数のインク形成部411を備え、インク形成部411は、ヘアライン柄を表現するために直線的な形状から構成されている。そして、そのインク形成部411の上に保護層420が形成されることにより、保護層420にインク形成部411の直線的な形状が複数写し取られ、ヘアライン転写シート500が、ヘアライン柄を表現できるようになっている。
【0007】
図16は、ヘアライン転写シート500をロール状に巻いたときの斜視図であり、図17は、図16におけるZ2−Z2切断面を示した図である。
【0008】
図16を参照して、へアライン転写シート500は、使用する前に、一旦ロール状に巻かれ、保管される。ロール状に巻かれると、ヘアライン転写シート500は巻き締められるので、ヘアライン転写シート500全体に巻き締めの力Fが働く。
【0009】
図17を参照して、インク形成部411が、直線的な形状から構成されていると、ヘアライン転写シート500をロール状に巻き取ったとき、インク形成部411は、ロール内において同一直線上の位置で巻き重ねられる。
【0010】
インク形成部411どうしが、ロール内における同一直線上の位置で巻き重ねられると、インク形成部411は凸形状を有しているため、上記ロール内でンク形成部411どうしが干渉しあう。その結果、上記巻き締めの力Fと相まって、インク形成部411の形状が、その下に巻き重ねられるヘアライン転写シート500にまで写し取られてしまう、いわゆる「ブロッキングが発生する」という問題があった。
【0011】
図18は、ヘアライン転写シート500を用いて得られる加飾成形品700の斜視図である。図19は、図18の加飾成形品700に光を当てたときのZ3−Z3切断面を示した図である。
【0012】
図18を参照して、ヘアライン転写シート500を用いて得られる加飾成形品700は、成形樹脂600と、接着層440、絵柄層430、保護層420から構成されている。保護層420の表面には、ヘアライン柄が形成されており、ヘアライン柄は、上記インク形成部411の形状が写し取られた複数のインク形成転写部412から構成されている。
【0013】
再び図18を参照して、インク形成転写部412の立体形状は、単調な形状となっている。インク形成転写部412の立体形状が単調であると、ヘアライン柄は、肉眼で保護層を見たときに単なる線の羅列にしか見えず、本来のヘアライン柄が備えるカスレや、線の濃淡などを上手く表現できない。その結果、ヘアライン転写シート400を用いて得られた加飾成形品700は、自然な風合いを有するヘアライン柄を表現できず、本当にヘアライン加工がなされた成形品と比較すると、見劣りがしてしまうという問題があった。
【0014】
図19を参照して、上述のようにインク形成転写部412の立体形状は、単調な一定の形状となっている。その結果、インク形成転写部412の表面で反射した光φと、保護層420と絵柄層430の界面で反射した光Φとが干渉してしまう。よって、インク形成転写部412付近では、虹が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平2−95817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、1)ロール状に巻き取った場合であっても、ブロッキングの問題を発生させず、2)ヘアライン転写シートを用いて作成した加飾成形品について、自然な風合いのヘアライン柄を表現でき、3)加飾成形品の表面に虹を発生させないヘアライン転写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、物品を装飾するヘアライン転写シートにおいて、前記ヘアライン転写シートが基体シートと、前記基体シートの上に複数形成され、前記基体シートに近づくにつれて断面積が大きくなる胴部と、複数形成された前記胴部の間に前記胴部同士を連結するように形成され、前記胴部より幅が狭く、かつ前記胴部より高さが低いクビレ部とを備えるインク形成部を前記ヘアライン転写シートの長尺方向に備えたヘアライン層と、前記ヘアライン層の上に形成される保護層と、前記保護層の上に形成される接着層とを備えるヘアライン転写シートを提供する。
【0018】
ある一形態においては、前記ヘアライン層の前記保護層との界面における算術表面粗さ(Ra)が、0.01μm〜1μmである。
【0019】
ある一形態においては、前記胴部と前記クビレ部の中心間距離が5μm〜500μmである。
【0020】
ある一形態においては、前記胴部と前記クビレ部の幅方向の長さが、それぞれ10μm〜500μm、5〜400μmである。
【0021】
ある一形態においては、前記胴部と前記クビレ部の高さが、それぞれ0.01μm〜10μm、0.001μm、〜9μmである。
【0022】
ある一形態においては、前記ヘアライン層が無機粒子を1〜10重量%の割合で含んだものである。
【0023】
ある一形態においては、前記接着層と保護層の間に絵柄層を備えている。
【0024】
ある一形態においては、前記基体シートのヘアライン層が形成される側の算術平均表面粗さ(Ra)が、0.01μm〜1μmである。
【0025】
ある一形態においては、前記インク形成部が、前記ヘアライン転写シートの幅方向に複数形成され、複数形成された前記インク形成部の隣りあう前記インク形成部のうち、少なくとも一組のインク形成部が、その一部において重なり部分を備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明のヘアライン転写シートは、ロール状に巻き取った場合であっても、ブロッキングの問題が発生せず、ヘアライン転写シートを用いて作成した加飾成形品について、自然な風合いのヘアライン柄を表現でき、かつ加飾成形品の表面に虹を発生させないヘアライン転写シートである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、ヘアライン転写シートの斜視図である。
【図2】図2は、ヘアライン転写シートの断面図である。
【図3】図3は、ヘアライン層の平面図である。
【図4】図4は、ヘアライン層の断面図である。
【図5】図5は、ヘアライン層の平面図である。
【図6】図6は、ヘアライン層の断面図である。
【図7】図7は、ヘアライン層の平面図である。
【図8】図8は、ヘアライン層の平面図である。
【図9】図9は、ヘアライン層の平面図である。
【図10】図10は、ヘアライン転写シートの斜視図である。
【図11】図11は、ヘアライン転写シートの断面図である。
【図12】図12は、加飾成形品の斜視図である。
【図13】図13は、加飾成形品の断面図である。
【図14】図14は、従来のヘアライン転写シートの斜視図である。
【図15】図15は、従来のヘアライン転写シートの断面図である。
【図16】図16は、従来のヘアライン転写シートをロール状に巻いたときの斜視図である。
【図17】図17は、従来のヘアライン転写シートをロール状に巻いたときの断面図である。
【図18】図18は、従来の加飾成形品の斜視図である。
【図19】図19は、従来の加飾成形品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
下記で、本発明に係る実施形態を図面に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明の実施例に記載した部位や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0029】
本発明の第1の実施形態に係るヘアライン転写シートについて説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係るヘアライン転写シート100の斜視図である。図2は、図1におけるA1−A1切断面を示した図である。
【0031】
図1を参照して、ヘアライン転写シート100は、基体シート1を通してヘアライン柄10が模様として認識される構成となっている。ヘアライン柄10は、複数のインク形成部20からなり、転写シート100の長尺方向Yに形成されている。
【0032】
図2を参照して、本発明のヘアライン転写シート100は、基体シート1、ヘアライン層2、保護層3、絵柄層4、接着層5がこの順番で形成されている。
【0033】
基体シート
基体シート1は、ヘアライン層2、保護層3、絵柄層4、接着層5をシート上に保持するためのベースフィルムである。なお、基体シート1のへアライン層2が形成される側の算術平均表面粗さ(Ra)は、0.01μm〜1μmあることが好ましい。さらに好ましくは0.05μm〜1μmである。
【0034】
基体シートの1の上に、ヘアライン層2が部分的に形成される場合、基体シート1の算術平均表面粗さ(Ra)が、上記範囲にあると、ヘアライン層2に形成されるインク形成部20の形状と、基体シート1の凹凸感が相まって、保護層3に写し取られる。その結果、保護層3により自然な風合いのヘアライン柄を形成できるためである。
【0035】
基体シート1の材質としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体など、基体シートとして離型性を有するものを使用することができる。
【0036】
ヘアライン層
ヘアライン層2は、基体シート1の上に形成される。ヘアライン層2は、保護層3にヘアライン模様を付与する層であり、物品にヘアライン転写シート100を貼着したのち、基体シート1とともに物品から剥がされる層である。再び図2参照して、ヘアライン層2は、インク形成部20備えている。インク形成部20が複数存在するより、全体として、保護層3にヘアライン模様を付与することができる。
【0037】
図3は、ヘアライン層2のインク形成部20を示した平面図である。図4は、図3におけるA2−A2切断面を示した図である。
【0038】
図3を参照して、インク形成部20は、インク形成部20の中心線に対して、対称となるように構成されている。また、インク形成部20は、胴部21とクビレ部22とから構成されている。
【0039】
胴部21は、ヘアライン転写シート100の長尺方向Yに帯状に複数形成され、幅方向に一定の膨らみを備えている。その膨らみは、胴部21の中心部a付近で最も大きくなり、中心部aから離れるに従い、徐々に小さくなっている。胴部21の中心部a付近における幅方向の長さαは、10μm〜500μmであることが好ましく、さらには20μm〜200μmであることが好ましい。10μm未満であると、ヘアラインの線がかすれたり、目視で確認が出来なくなるといった問題が発生し、反対に500μmを超えると、線が太く、自然な風合いのヘアラインとは見えないという問題が発生するためである。
【0040】
クビレ部22は、胴部21と胴部21との間に形成される。クビレ部22は、幅方向に一定の縮みを備えている。その縮みは、クビレ部22の中心部b付近で最も大きくなり、中心部bから離れるに従い、徐々に小さくなっている。クビレ部22の中心部b付近における幅方向の長さβは、5μm〜400μmであることが好ましく、さらには10μm〜150μmであることが好ましい。5μm未満であると、ヘアラインの線がかすれ、かつ、成形時のフィルムの伸縮で容易に凹凸が消失してしまうという問題が発生し、反対に400μmを超えると、線が太く、自然な風合いのヘアラインとは見えないという問題が発生するためである。
【0041】
なお、胴部21とクビレ部22の幅方向の長さの比は、α/βで100/99〜100/10であることが好ましい。より、好ましくは100/90〜100/20である。α/β比が100/99より大きいと、胴部21とクビレ部22の幅方向の長さが、ほぼ同じとなる。その結果、胴部21とクビレ部22からなるインク形成部20の形状が単調な直線形状となり、自然な風合いのヘアラインを保護層3に表現できなくなるという問題が発生し、反対に100/10未満であると、胴部21とクビレ部22の幅方向の長さに極端な差が出来てしまう。その結果、胴部21とクビレ部22からなるインク形成部20の形状は、波線形状となったり、さらには胴部21の形状だけが強調されドット形状のようになってしまうので、自然な風合いのヘアラインを保護層3に表現できなくなるという問題が発生するためである。
【0042】
胴部21の中心部aからクビレ部22の中心部bまでの長さγは、5μm〜500μmであることが好ましく、さらには10μm〜200μmであることが好ましい。5μm未満であると胴部21とクビレ部22の距離が短かくなりすぎる。その結果、胴部21が幅方向に大きく広がって形成される場合には、クビレ部分22が形成されにくくなるという問題が発生する。反対に500μmを超えると胴部21とクビレ部22の距離が長くなり過ぎる。その結果、胴部21とクビレ部22の幅方向の長さに差が無い場合には、インク形成部20の形状が、全体として単なる直線に近似してしまう。その結果、インク形成部20が保護層3に自然な風合いを有するヘアライン模様を付与できないという問題が発生するためである。
【0043】
図4を参照して、インク形成部20の断面について、胴部21とクビレ部22は凹凸形状を構成している。上記凹凸形状のうち、胴部21は、傾斜が始まる点Oから傾斜が終わる点Pまでの凸部を構成し、クビレ部22は、凸部と凸部との間に形成される凹部を構成している。なお、凸部は、基体シート1の近づくにつれて、その断面積が大きくなるように構成され、凹部は、平滑な形状となるように構成されている。
【0044】
凸部の頂点Qから基体シート1までの長さHは、0.01μm〜10μmであることが好ましい。0.01μm未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様が薄くなるという問題が発する。反対に10μmを超えると、ヘアライン層2と保護層3との密着性が必要以上にあがり、転写時に剥離不良という問題が発生するためである。
【0045】
凹部から基体シート1までの長さhは、0.001μm〜9μmであることが好ましい。0.001μm未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様が薄くなるという問題が発生し、反対に9μmを超えると、クビレ部22胴部21との高さの差が少なくなり、ブロッキングが発生するという問題が発生するためである。
【0046】
なお、凸の頂点Qから基体シート1までの長さHと、凹部から基体シート1までの長さhの比は、H/hで100/99〜100/1であることが好ましい。より、好ましくは100/99〜100/1である。H/h比が100/99を越えると、ブロッキングが生じやすくなるという問題が発生し、反対に100/1未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様が自然な風合いに見えないという問題が発生するためである。
【0047】
なお、上記のようにインク形成部20の形状を構成すると、単にインク形成部20を直線形状に構成するよりも表面積が大きくなる。その結果、基体シート1の上にヘアライン層2を形成した後、ヘアライン層2が早期に乾燥しやすくなる。従って、ヘアライン層2が乾燥する前に、保護層3がヘアライン層2の上に形成されるということがなくなるので、ヘアライン層2と保護層3が強固にくっ付くことがなくなる。その結果、本発明のヘアライン転写シート100を使用した場合に、ヘアライン層2と保護層3との剥離性を担保できるものとなっている。
【0048】
なお、へアライン層2の保護層3との界面における算術平均表面粗さ(Ra)は、0.01μm〜1μmであることが好ましい。ヘアライン層2の表面粗さ(Ra)が、上記範囲内にあると、へアライン層2の保護層3との間に適度な凹凸形状が形成されるので、保護層3に表現されるヘアライン模様が自然な風合いを有するようになるためである。なお、上記表面粗さが0.01μm未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様が薄くなるという問題が発生し、1μmを越えると転写時に剥離不良が生じるという問題が発生するため好ましくない。
【0049】
インク形成部20に用いる材料としては、樹脂に無機粒子を添加したものを用いることができる。インク形成部20に用いる樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩酢ビ樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿樹脂などを用いることができる。無機粒子としては、シリコン、フッ素、スチレン、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
【0050】
無機粒子は、樹脂に対して1重量%〜10重量%の割合で樹脂に添加することが好ましい。1重量%未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様がぼやけるという問題や、ブロッキングが発生するという問題が生じる。反対に10重量%を超えると、インキの安定性に問題が生じ、粒子が沈降してくる。その結果、版が詰まるなどの印刷上の不具合を引き起こすだけでなく、ヘアライン層2を構成する胴部21とクビレ部22の形状を安定して作成できなるという問題が発生するためである。
【0051】
無機粒子の平均粒子径は、JIS Z 8901で、0.5μm〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、1μm〜5μmである。1μm未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様がぼやけるという問題や、ブロッキングが発生するという問題が生じ、反対に10μmを超えると、ヘアライン層を形成する際に使用する版が詰まるという問題が発生するためである。
【0052】
なお、インク形成部20は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などにより形成することができる。
【0053】
保護層
保護層3は、ヘアライン層2を構成するインク形成部20の形状が写し取られる層である。インク成形部20の形状が写し取られることにより、保護層3は、ヘアライン転写シート100を用いて物品を装飾した場合に、ヘアライン柄を表現できる。また、保護層3は、ヘアライン転写シート100を用いて物品を装飾した場合、物品の表面に配置される層である。保護層3が物品の表面に配置されることにより、保護層3の下に配置される絵柄層4、接着層5などを物理的または化学的な外傷から保護することができる。具体的には、物品表面の耐損傷性、耐薬品性などを向上させることができる。
【0054】
保護層3の膜厚は、1μm〜20μmの範囲とするのが好ましい。保護層3の膜厚が1μm未満の場合、薄すぎて上記機能を充分に発揮できなくなり、反対に保護層の膜厚が20μmを超えると、成形時に保護層3にクラックが発生するといった問題が発生するためである。また、20μmを超える場合は、保護層3がすぐに乾燥しにくくなり、保護層3をヘアライン層2の上に形成した後に、保護層3が形成されたシートをロール状に巻き取ることができないという問題が生じるため好ましくない。
【0055】
保護層3の材質としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリルもしくはメタクリルモノマーの単独共重合体もしくはこれらのモノマーを含む共重合体のアクリル系樹脂のほか、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いることができる。
【0056】
具体的には、メラミン、アクリルメラミン、エポキシメラミン、アルキド、ウレタン、アクリルなどの一液硬化性及びこれらを混合した樹脂、またはイソシアネートなどの硬化剤との組み合わせによる二液硬化性の樹脂、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレートなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーやプレポリマーなどから構成される紫外線、電子線硬化樹脂などが使用できる。なお、紫外線硬化樹脂を用いるときは、光開始剤をさらに添加する。
【0057】
絵柄層
絵柄層4は、必要に応じて、保護層3の上に形成される層である。絵柄層4の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。また、金属発色させる場合には、アルミニウム、チタン、ブロンズ等の金属粒子やマイカに酸化チタンをコーティングしたパール顔料を用いることもできる。また、絵柄層4は透過性であっても、遮光性であってもよい。絵柄層3の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法を挙げることができる。
【0058】
接着層
接着層5は、必要に応じて、絵柄層4の上に形成される層である。接着層5は、物品とヘアライン転写シート100とを接着するための層である。接着層5は、装飾する物品の種類に適した感熱性又は感圧性のある樹脂が使用される。樹脂部がPMMA系樹脂であれば、例えば、接着層もPMMA系樹脂を使用するとよい。樹脂部がPC、ポリスチレン(PS)系樹脂であれば、例えば、接着層は、これらの樹脂と親和性のある、PMMA、PS、PA系樹脂を使用するとよい。接着層は、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等によりヘアライン転写シート100上に形成される。
【0059】
離型層
必要に応じて、離型層が基体シート1とヘアライン層2との間、もしくはヘアライン層2と保護層3との間に形成されていてもよい。離型層は、転写後、基体シート1を剥離した際に、基体シート1とともに物品から離型する層である。離型層の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤およびこれらの複合型離型剤などを用いることができる。離型層の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法が挙げられる。
【0060】
次に、本発明の第2の実施形態に係るヘアライン転写シート100について説明する。この実施形態のヘアライン転写シート100の基本的な構成は、第1実施形態によるものと同様であるので、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0061】
図5は、ヘアライン層2の平面形状を示した図である。図6は、図5におけるA3−A3切断面を示した図である。
【0062】
図5を参照して、インク形成部20は、胴部21とクビレ部22から構成されている。胴部21はヘアライン転写シートの長尺方向Yに複数形成され、胴部21同士が重なり合っている。クビレ部21は、胴部20と胴部20の間に線状に形成されている。
【0063】
図6を参照して、インク形成部20の胴部21とクビレ部22は凹凸形状を構成している。上記凹凸形状のうち、胴部21は、傾斜が始まる点Rから傾斜が終わる点Sまでの凸部を構成し、クビレ部22は、凸部と凸部との間に形成され、凸部と凸部とが重なっている領域点R、Sを構成している。なお、凸部は、基体シートに近づくにつれて、その断面が大きくなるように構成され、凹部は、線形状となるように構成されている。
【0064】
図7、図8は、ヘアライン層2におけるインク形成部20の配列方法を示した図である。
【0065】
図7(a)を参照して、インク形成部20は、胴部21どうしが、その幅方向において同一直線上に配置されるよう配列されていてもよい。
【0066】
図7(b)を参照して、インク形成部20は、胴部21とクビレ部22とが、その幅方向において同一直線上に配置されるよう配列されていてもよい。
【0067】
図8を参照して、インキ形成部20は、隣接するインキ形成部20と、その一部が重なっていてもよい。インク形成部20が、隣接するインク形成部20と、その一部で重なっていることにより、様々な太さをヘアライン柄として表現できる。その結果、より自然な風合いヘアライン柄を備えるヘアライン転写シートとなる。
【0068】
図9は、インキ形成部20の変形例である。図9(a)を参照して、インキ形成部20を構成する胴部21の平面形状は、多角形などから構成されていてもよい。
【0069】
図9(b)を参照して、インキ形成部20を構成するクビレ部22の平面形状は、直線状であってもよい。
【0070】
本発明のヘアライン転写シート100をロール状に巻き取ったときのヘアライン転写シート100の状態について説明する。図10は、ヘアライン転写シート100をロール状に巻いたときの斜視図であり、図11は、A4−A4切断面を示した図である。
【0071】
図10を参照して、ヘアライン転写シート100は、ロール状に巻き取られている。ロール状に巻き取られると、ヘアライン転写シート100は巻き締められるので、ヘアライン転写シート100全体に巻き締めの力fが働く。このとき、インク形成部20は、直線的な形状で構成されているので、ロール内においてインク形成部20は、同一直線上の位置で巻き重ねられる。
【0072】
しかし、図11を参照して、インク形成部20は、胴部21とクビレ部22を備えている。胴部21はクビレ部22を挟んで、所定の間隔で形成されている。そのため、ロール内において、インク形成部20の胴部21どうしは、同一直線上の位置で巻き重ねられることはほとんどない。従って、胴部21どうしが干渉しあうこともほとんどない。よって、巻き締めの力fが加わっても、インク形成部20の形状が、その下に巻き重ねられたヘアライン転写シート100に写し取られるという「ブロッキング」の問題がほとんど生じなくなる。
【0073】
より詳細には、本発明のヘアライン転写シート100は、インク形成部20が胴部21とクビレ部22から構成されている。そのため、ヘアライン転写シート100をロール状に巻き取っても胴部21どうしが、同一直線上の位置に巻き重ねられることはほとんどない。その結果、巻き締めの力fが、インク形成部20に加わっても、その力を解消するように、胴部21が、その下に重ねられたヘアライン転写シートの100のクビレ部22に入り込む。よって、インク形成部21全体としての干渉割合が少なくなるので、ヘアライン転写シート100に形成されたインク形成部20の形状が、その下に巻き重ねられたヘアライン転写シート100に写し取られるという「ブロッキング」の問題がほとんど生じなくなる。
【0074】
図12は、ヘアライン転写シート100を基材200に転写して得られた加飾成形品300の斜視図である。図13は、図12におけるB−B切断面を示した図であり、図14は、図12のδ領域における拡大図である。
【0075】
図12を参照して、加飾成形品300は、基材200の上に接着層5、絵柄層4、保護層3が、この順番で形成されている。保護層3は、インク形成転写部30を備え、インク形成転写部30がヘアライン柄を表現している。
【0076】
なお、インク形成転写部30は、上述のインク形成部20の胴部21とクビレ部22の形状が写し取られた部分であり、上記インク形成部20の胴部21とクビレ部22を反映するような形状から構成されている。その結果、加飾成形品300は、ヘアライン加工がなされた製品と同じ風合いを感じられるものとなっている。
【0077】
図13を参照して、インク形成転写部30は、その断面が凹凸形状となっており、凹凸形状の凹部分の断面積は絵柄層4に近づくにつれ、小さくなっている。インク形成転写部30が、上記形状を備えていることにより、保護層3の表面から保護層3と絵柄層4の界面までの距離は一定ではなくなるので、保護層3の表面で反射した光と保護層3と絵柄層4との界面で反射した光が干渉するのを抑制できる。その結果、加飾成形品300のヘアライン柄が形成された部分に虹が発生するのを抑制することができる。
【0078】
物品の装飾方法
最後に、加飾成形品300の製造方法について説明する。本発明のヘアライン転写シート100を使用して熱ロール転写又はインモールド成形などにより、物品を装飾することができる。例えば、熱ロール転写においては、まず、ヘアライン転写シート100に存在する絵柄の位置を考慮して、被装飾物の所望の位置に絵柄が配置されるようにヘアライン転写シート100の位置を決定する。次いで、ヘアライン転写シート100の内側(接着層5側)の面を被装飾物の表面に重ね、ロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用いて、ヘアライン転写シート100の基体シート側から熱及び圧力をかける。こうすることにより、ヘアライン転写シート100が被装飾物の表面に接着し、物品の表面が装飾される。
【0079】
また、インモールド射出成形においては、まず、成形用金型内に、ヘアライン転写シート100を送り込む。その際、ヘアライン転写シート100の向きは、外側が金型キャビティ面を向くように合わせ、ヘアライン転写シート100の位置は、ヘアライン転写シート100に存在する絵柄の位置を考慮して、被装飾物の所望の位置に絵柄が配置されるように決定する。
【0080】
次いで、金型を閉じ、溶融樹脂がヘアライン転写シート100の内側(即ち、接着層5側)の面に接するように、即ち、ヘアライン転写シート100が溶融樹脂と金型キャビティ面に挟まれるように、溶融樹脂を金型のキャビティ内に充填させる。その結果、溶融樹脂は成形され、同時にヘアライン転写シート100は射出成形体の表面に接着される。樹脂を冷却し、金型を開いて射出成形体を取り出すと、転写層が射出成形体の表面に接着されて、射出成形体の表面が装飾される。最後に基体シート1が剥離される。
【0081】
被装飾物の材質は、従来からヘアライン転写シートによって装飾されてきたもの、又は接着層の成分を工夫して転写層をその表面に接着させることができるものであれば特に限定されない。各種合成樹脂、金属、ガラス、木、紙でなる部材、これらの塗装物及び装飾物は、被装飾物として用いられる。
【符号の説明】
【0082】
1 基体シート、
2 ヘアライン層、
3 ハードコート層、
4 絵柄層、
5 接着層、
20 インク形成部、
21 胴部、
22 クビレ部、
100 ヘアライン転写シート、
【技術分野】
【0001】
この発明はヘアライン柄を有する転写シートに関し、特に無機粒子を含有したインキを用いてヘアライン柄を形成するヘアライン転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
転写シートを用いて、プラスチック部品や外装品のような物品の表面を保護又は装飾する方法は従来から知られている。転写シートの構成として、支持体である基体シートの面上に転写層が形成されたものが知られている。
【0003】
へアライン柄の装飾を物品に行う場合、転写シートとして、へアライン転写シートが用いられる(例えば、特許文献1)。
【0004】
図14は、従来のヘアライン転写シート500の斜視図であり、図15は図14におけるZ1−Z1切断面を示した図である
【0005】
図14を参照して、へアライン転写シート500は、基体シート400、へアライン層410、保護層420、絵柄層430、接着層440から構成されている。
【0006】
図15を参照して、転写シート500のうち、ヘアライン層410は、複数のインク形成部411を備え、インク形成部411は、ヘアライン柄を表現するために直線的な形状から構成されている。そして、そのインク形成部411の上に保護層420が形成されることにより、保護層420にインク形成部411の直線的な形状が複数写し取られ、ヘアライン転写シート500が、ヘアライン柄を表現できるようになっている。
【0007】
図16は、ヘアライン転写シート500をロール状に巻いたときの斜視図であり、図17は、図16におけるZ2−Z2切断面を示した図である。
【0008】
図16を参照して、へアライン転写シート500は、使用する前に、一旦ロール状に巻かれ、保管される。ロール状に巻かれると、ヘアライン転写シート500は巻き締められるので、ヘアライン転写シート500全体に巻き締めの力Fが働く。
【0009】
図17を参照して、インク形成部411が、直線的な形状から構成されていると、ヘアライン転写シート500をロール状に巻き取ったとき、インク形成部411は、ロール内において同一直線上の位置で巻き重ねられる。
【0010】
インク形成部411どうしが、ロール内における同一直線上の位置で巻き重ねられると、インク形成部411は凸形状を有しているため、上記ロール内でンク形成部411どうしが干渉しあう。その結果、上記巻き締めの力Fと相まって、インク形成部411の形状が、その下に巻き重ねられるヘアライン転写シート500にまで写し取られてしまう、いわゆる「ブロッキングが発生する」という問題があった。
【0011】
図18は、ヘアライン転写シート500を用いて得られる加飾成形品700の斜視図である。図19は、図18の加飾成形品700に光を当てたときのZ3−Z3切断面を示した図である。
【0012】
図18を参照して、ヘアライン転写シート500を用いて得られる加飾成形品700は、成形樹脂600と、接着層440、絵柄層430、保護層420から構成されている。保護層420の表面には、ヘアライン柄が形成されており、ヘアライン柄は、上記インク形成部411の形状が写し取られた複数のインク形成転写部412から構成されている。
【0013】
再び図18を参照して、インク形成転写部412の立体形状は、単調な形状となっている。インク形成転写部412の立体形状が単調であると、ヘアライン柄は、肉眼で保護層を見たときに単なる線の羅列にしか見えず、本来のヘアライン柄が備えるカスレや、線の濃淡などを上手く表現できない。その結果、ヘアライン転写シート400を用いて得られた加飾成形品700は、自然な風合いを有するヘアライン柄を表現できず、本当にヘアライン加工がなされた成形品と比較すると、見劣りがしてしまうという問題があった。
【0014】
図19を参照して、上述のようにインク形成転写部412の立体形状は、単調な一定の形状となっている。その結果、インク形成転写部412の表面で反射した光φと、保護層420と絵柄層430の界面で反射した光Φとが干渉してしまう。よって、インク形成転写部412付近では、虹が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平2−95817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、1)ロール状に巻き取った場合であっても、ブロッキングの問題を発生させず、2)ヘアライン転写シートを用いて作成した加飾成形品について、自然な風合いのヘアライン柄を表現でき、3)加飾成形品の表面に虹を発生させないヘアライン転写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、物品を装飾するヘアライン転写シートにおいて、前記ヘアライン転写シートが基体シートと、前記基体シートの上に複数形成され、前記基体シートに近づくにつれて断面積が大きくなる胴部と、複数形成された前記胴部の間に前記胴部同士を連結するように形成され、前記胴部より幅が狭く、かつ前記胴部より高さが低いクビレ部とを備えるインク形成部を前記ヘアライン転写シートの長尺方向に備えたヘアライン層と、前記ヘアライン層の上に形成される保護層と、前記保護層の上に形成される接着層とを備えるヘアライン転写シートを提供する。
【0018】
ある一形態においては、前記ヘアライン層の前記保護層との界面における算術表面粗さ(Ra)が、0.01μm〜1μmである。
【0019】
ある一形態においては、前記胴部と前記クビレ部の中心間距離が5μm〜500μmである。
【0020】
ある一形態においては、前記胴部と前記クビレ部の幅方向の長さが、それぞれ10μm〜500μm、5〜400μmである。
【0021】
ある一形態においては、前記胴部と前記クビレ部の高さが、それぞれ0.01μm〜10μm、0.001μm、〜9μmである。
【0022】
ある一形態においては、前記ヘアライン層が無機粒子を1〜10重量%の割合で含んだものである。
【0023】
ある一形態においては、前記接着層と保護層の間に絵柄層を備えている。
【0024】
ある一形態においては、前記基体シートのヘアライン層が形成される側の算術平均表面粗さ(Ra)が、0.01μm〜1μmである。
【0025】
ある一形態においては、前記インク形成部が、前記ヘアライン転写シートの幅方向に複数形成され、複数形成された前記インク形成部の隣りあう前記インク形成部のうち、少なくとも一組のインク形成部が、その一部において重なり部分を備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明のヘアライン転写シートは、ロール状に巻き取った場合であっても、ブロッキングの問題が発生せず、ヘアライン転写シートを用いて作成した加飾成形品について、自然な風合いのヘアライン柄を表現でき、かつ加飾成形品の表面に虹を発生させないヘアライン転写シートである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、ヘアライン転写シートの斜視図である。
【図2】図2は、ヘアライン転写シートの断面図である。
【図3】図3は、ヘアライン層の平面図である。
【図4】図4は、ヘアライン層の断面図である。
【図5】図5は、ヘアライン層の平面図である。
【図6】図6は、ヘアライン層の断面図である。
【図7】図7は、ヘアライン層の平面図である。
【図8】図8は、ヘアライン層の平面図である。
【図9】図9は、ヘアライン層の平面図である。
【図10】図10は、ヘアライン転写シートの斜視図である。
【図11】図11は、ヘアライン転写シートの断面図である。
【図12】図12は、加飾成形品の斜視図である。
【図13】図13は、加飾成形品の断面図である。
【図14】図14は、従来のヘアライン転写シートの斜視図である。
【図15】図15は、従来のヘアライン転写シートの断面図である。
【図16】図16は、従来のヘアライン転写シートをロール状に巻いたときの斜視図である。
【図17】図17は、従来のヘアライン転写シートをロール状に巻いたときの断面図である。
【図18】図18は、従来の加飾成形品の斜視図である。
【図19】図19は、従来の加飾成形品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
下記で、本発明に係る実施形態を図面に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明の実施例に記載した部位や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0029】
本発明の第1の実施形態に係るヘアライン転写シートについて説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係るヘアライン転写シート100の斜視図である。図2は、図1におけるA1−A1切断面を示した図である。
【0031】
図1を参照して、ヘアライン転写シート100は、基体シート1を通してヘアライン柄10が模様として認識される構成となっている。ヘアライン柄10は、複数のインク形成部20からなり、転写シート100の長尺方向Yに形成されている。
【0032】
図2を参照して、本発明のヘアライン転写シート100は、基体シート1、ヘアライン層2、保護層3、絵柄層4、接着層5がこの順番で形成されている。
【0033】
基体シート
基体シート1は、ヘアライン層2、保護層3、絵柄層4、接着層5をシート上に保持するためのベースフィルムである。なお、基体シート1のへアライン層2が形成される側の算術平均表面粗さ(Ra)は、0.01μm〜1μmあることが好ましい。さらに好ましくは0.05μm〜1μmである。
【0034】
基体シートの1の上に、ヘアライン層2が部分的に形成される場合、基体シート1の算術平均表面粗さ(Ra)が、上記範囲にあると、ヘアライン層2に形成されるインク形成部20の形状と、基体シート1の凹凸感が相まって、保護層3に写し取られる。その結果、保護層3により自然な風合いのヘアライン柄を形成できるためである。
【0035】
基体シート1の材質としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体など、基体シートとして離型性を有するものを使用することができる。
【0036】
ヘアライン層
ヘアライン層2は、基体シート1の上に形成される。ヘアライン層2は、保護層3にヘアライン模様を付与する層であり、物品にヘアライン転写シート100を貼着したのち、基体シート1とともに物品から剥がされる層である。再び図2参照して、ヘアライン層2は、インク形成部20備えている。インク形成部20が複数存在するより、全体として、保護層3にヘアライン模様を付与することができる。
【0037】
図3は、ヘアライン層2のインク形成部20を示した平面図である。図4は、図3におけるA2−A2切断面を示した図である。
【0038】
図3を参照して、インク形成部20は、インク形成部20の中心線に対して、対称となるように構成されている。また、インク形成部20は、胴部21とクビレ部22とから構成されている。
【0039】
胴部21は、ヘアライン転写シート100の長尺方向Yに帯状に複数形成され、幅方向に一定の膨らみを備えている。その膨らみは、胴部21の中心部a付近で最も大きくなり、中心部aから離れるに従い、徐々に小さくなっている。胴部21の中心部a付近における幅方向の長さαは、10μm〜500μmであることが好ましく、さらには20μm〜200μmであることが好ましい。10μm未満であると、ヘアラインの線がかすれたり、目視で確認が出来なくなるといった問題が発生し、反対に500μmを超えると、線が太く、自然な風合いのヘアラインとは見えないという問題が発生するためである。
【0040】
クビレ部22は、胴部21と胴部21との間に形成される。クビレ部22は、幅方向に一定の縮みを備えている。その縮みは、クビレ部22の中心部b付近で最も大きくなり、中心部bから離れるに従い、徐々に小さくなっている。クビレ部22の中心部b付近における幅方向の長さβは、5μm〜400μmであることが好ましく、さらには10μm〜150μmであることが好ましい。5μm未満であると、ヘアラインの線がかすれ、かつ、成形時のフィルムの伸縮で容易に凹凸が消失してしまうという問題が発生し、反対に400μmを超えると、線が太く、自然な風合いのヘアラインとは見えないという問題が発生するためである。
【0041】
なお、胴部21とクビレ部22の幅方向の長さの比は、α/βで100/99〜100/10であることが好ましい。より、好ましくは100/90〜100/20である。α/β比が100/99より大きいと、胴部21とクビレ部22の幅方向の長さが、ほぼ同じとなる。その結果、胴部21とクビレ部22からなるインク形成部20の形状が単調な直線形状となり、自然な風合いのヘアラインを保護層3に表現できなくなるという問題が発生し、反対に100/10未満であると、胴部21とクビレ部22の幅方向の長さに極端な差が出来てしまう。その結果、胴部21とクビレ部22からなるインク形成部20の形状は、波線形状となったり、さらには胴部21の形状だけが強調されドット形状のようになってしまうので、自然な風合いのヘアラインを保護層3に表現できなくなるという問題が発生するためである。
【0042】
胴部21の中心部aからクビレ部22の中心部bまでの長さγは、5μm〜500μmであることが好ましく、さらには10μm〜200μmであることが好ましい。5μm未満であると胴部21とクビレ部22の距離が短かくなりすぎる。その結果、胴部21が幅方向に大きく広がって形成される場合には、クビレ部分22が形成されにくくなるという問題が発生する。反対に500μmを超えると胴部21とクビレ部22の距離が長くなり過ぎる。その結果、胴部21とクビレ部22の幅方向の長さに差が無い場合には、インク形成部20の形状が、全体として単なる直線に近似してしまう。その結果、インク形成部20が保護層3に自然な風合いを有するヘアライン模様を付与できないという問題が発生するためである。
【0043】
図4を参照して、インク形成部20の断面について、胴部21とクビレ部22は凹凸形状を構成している。上記凹凸形状のうち、胴部21は、傾斜が始まる点Oから傾斜が終わる点Pまでの凸部を構成し、クビレ部22は、凸部と凸部との間に形成される凹部を構成している。なお、凸部は、基体シート1の近づくにつれて、その断面積が大きくなるように構成され、凹部は、平滑な形状となるように構成されている。
【0044】
凸部の頂点Qから基体シート1までの長さHは、0.01μm〜10μmであることが好ましい。0.01μm未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様が薄くなるという問題が発する。反対に10μmを超えると、ヘアライン層2と保護層3との密着性が必要以上にあがり、転写時に剥離不良という問題が発生するためである。
【0045】
凹部から基体シート1までの長さhは、0.001μm〜9μmであることが好ましい。0.001μm未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様が薄くなるという問題が発生し、反対に9μmを超えると、クビレ部22胴部21との高さの差が少なくなり、ブロッキングが発生するという問題が発生するためである。
【0046】
なお、凸の頂点Qから基体シート1までの長さHと、凹部から基体シート1までの長さhの比は、H/hで100/99〜100/1であることが好ましい。より、好ましくは100/99〜100/1である。H/h比が100/99を越えると、ブロッキングが生じやすくなるという問題が発生し、反対に100/1未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様が自然な風合いに見えないという問題が発生するためである。
【0047】
なお、上記のようにインク形成部20の形状を構成すると、単にインク形成部20を直線形状に構成するよりも表面積が大きくなる。その結果、基体シート1の上にヘアライン層2を形成した後、ヘアライン層2が早期に乾燥しやすくなる。従って、ヘアライン層2が乾燥する前に、保護層3がヘアライン層2の上に形成されるということがなくなるので、ヘアライン層2と保護層3が強固にくっ付くことがなくなる。その結果、本発明のヘアライン転写シート100を使用した場合に、ヘアライン層2と保護層3との剥離性を担保できるものとなっている。
【0048】
なお、へアライン層2の保護層3との界面における算術平均表面粗さ(Ra)は、0.01μm〜1μmであることが好ましい。ヘアライン層2の表面粗さ(Ra)が、上記範囲内にあると、へアライン層2の保護層3との間に適度な凹凸形状が形成されるので、保護層3に表現されるヘアライン模様が自然な風合いを有するようになるためである。なお、上記表面粗さが0.01μm未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様が薄くなるという問題が発生し、1μmを越えると転写時に剥離不良が生じるという問題が発生するため好ましくない。
【0049】
インク形成部20に用いる材料としては、樹脂に無機粒子を添加したものを用いることができる。インク形成部20に用いる樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩酢ビ樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿樹脂などを用いることができる。無機粒子としては、シリコン、フッ素、スチレン、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
【0050】
無機粒子は、樹脂に対して1重量%〜10重量%の割合で樹脂に添加することが好ましい。1重量%未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様がぼやけるという問題や、ブロッキングが発生するという問題が生じる。反対に10重量%を超えると、インキの安定性に問題が生じ、粒子が沈降してくる。その結果、版が詰まるなどの印刷上の不具合を引き起こすだけでなく、ヘアライン層2を構成する胴部21とクビレ部22の形状を安定して作成できなるという問題が発生するためである。
【0051】
無機粒子の平均粒子径は、JIS Z 8901で、0.5μm〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、1μm〜5μmである。1μm未満であると、保護層3に表現されるヘアライン模様がぼやけるという問題や、ブロッキングが発生するという問題が生じ、反対に10μmを超えると、ヘアライン層を形成する際に使用する版が詰まるという問題が発生するためである。
【0052】
なお、インク形成部20は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などにより形成することができる。
【0053】
保護層
保護層3は、ヘアライン層2を構成するインク形成部20の形状が写し取られる層である。インク成形部20の形状が写し取られることにより、保護層3は、ヘアライン転写シート100を用いて物品を装飾した場合に、ヘアライン柄を表現できる。また、保護層3は、ヘアライン転写シート100を用いて物品を装飾した場合、物品の表面に配置される層である。保護層3が物品の表面に配置されることにより、保護層3の下に配置される絵柄層4、接着層5などを物理的または化学的な外傷から保護することができる。具体的には、物品表面の耐損傷性、耐薬品性などを向上させることができる。
【0054】
保護層3の膜厚は、1μm〜20μmの範囲とするのが好ましい。保護層3の膜厚が1μm未満の場合、薄すぎて上記機能を充分に発揮できなくなり、反対に保護層の膜厚が20μmを超えると、成形時に保護層3にクラックが発生するといった問題が発生するためである。また、20μmを超える場合は、保護層3がすぐに乾燥しにくくなり、保護層3をヘアライン層2の上に形成した後に、保護層3が形成されたシートをロール状に巻き取ることができないという問題が生じるため好ましくない。
【0055】
保護層3の材質としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリルもしくはメタクリルモノマーの単独共重合体もしくはこれらのモノマーを含む共重合体のアクリル系樹脂のほか、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いることができる。
【0056】
具体的には、メラミン、アクリルメラミン、エポキシメラミン、アルキド、ウレタン、アクリルなどの一液硬化性及びこれらを混合した樹脂、またはイソシアネートなどの硬化剤との組み合わせによる二液硬化性の樹脂、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレートなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーやプレポリマーなどから構成される紫外線、電子線硬化樹脂などが使用できる。なお、紫外線硬化樹脂を用いるときは、光開始剤をさらに添加する。
【0057】
絵柄層
絵柄層4は、必要に応じて、保護層3の上に形成される層である。絵柄層4の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。また、金属発色させる場合には、アルミニウム、チタン、ブロンズ等の金属粒子やマイカに酸化チタンをコーティングしたパール顔料を用いることもできる。また、絵柄層4は透過性であっても、遮光性であってもよい。絵柄層3の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法を挙げることができる。
【0058】
接着層
接着層5は、必要に応じて、絵柄層4の上に形成される層である。接着層5は、物品とヘアライン転写シート100とを接着するための層である。接着層5は、装飾する物品の種類に適した感熱性又は感圧性のある樹脂が使用される。樹脂部がPMMA系樹脂であれば、例えば、接着層もPMMA系樹脂を使用するとよい。樹脂部がPC、ポリスチレン(PS)系樹脂であれば、例えば、接着層は、これらの樹脂と親和性のある、PMMA、PS、PA系樹脂を使用するとよい。接着層は、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等によりヘアライン転写シート100上に形成される。
【0059】
離型層
必要に応じて、離型層が基体シート1とヘアライン層2との間、もしくはヘアライン層2と保護層3との間に形成されていてもよい。離型層は、転写後、基体シート1を剥離した際に、基体シート1とともに物品から離型する層である。離型層の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤およびこれらの複合型離型剤などを用いることができる。離型層の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法が挙げられる。
【0060】
次に、本発明の第2の実施形態に係るヘアライン転写シート100について説明する。この実施形態のヘアライン転写シート100の基本的な構成は、第1実施形態によるものと同様であるので、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0061】
図5は、ヘアライン層2の平面形状を示した図である。図6は、図5におけるA3−A3切断面を示した図である。
【0062】
図5を参照して、インク形成部20は、胴部21とクビレ部22から構成されている。胴部21はヘアライン転写シートの長尺方向Yに複数形成され、胴部21同士が重なり合っている。クビレ部21は、胴部20と胴部20の間に線状に形成されている。
【0063】
図6を参照して、インク形成部20の胴部21とクビレ部22は凹凸形状を構成している。上記凹凸形状のうち、胴部21は、傾斜が始まる点Rから傾斜が終わる点Sまでの凸部を構成し、クビレ部22は、凸部と凸部との間に形成され、凸部と凸部とが重なっている領域点R、Sを構成している。なお、凸部は、基体シートに近づくにつれて、その断面が大きくなるように構成され、凹部は、線形状となるように構成されている。
【0064】
図7、図8は、ヘアライン層2におけるインク形成部20の配列方法を示した図である。
【0065】
図7(a)を参照して、インク形成部20は、胴部21どうしが、その幅方向において同一直線上に配置されるよう配列されていてもよい。
【0066】
図7(b)を参照して、インク形成部20は、胴部21とクビレ部22とが、その幅方向において同一直線上に配置されるよう配列されていてもよい。
【0067】
図8を参照して、インキ形成部20は、隣接するインキ形成部20と、その一部が重なっていてもよい。インク形成部20が、隣接するインク形成部20と、その一部で重なっていることにより、様々な太さをヘアライン柄として表現できる。その結果、より自然な風合いヘアライン柄を備えるヘアライン転写シートとなる。
【0068】
図9は、インキ形成部20の変形例である。図9(a)を参照して、インキ形成部20を構成する胴部21の平面形状は、多角形などから構成されていてもよい。
【0069】
図9(b)を参照して、インキ形成部20を構成するクビレ部22の平面形状は、直線状であってもよい。
【0070】
本発明のヘアライン転写シート100をロール状に巻き取ったときのヘアライン転写シート100の状態について説明する。図10は、ヘアライン転写シート100をロール状に巻いたときの斜視図であり、図11は、A4−A4切断面を示した図である。
【0071】
図10を参照して、ヘアライン転写シート100は、ロール状に巻き取られている。ロール状に巻き取られると、ヘアライン転写シート100は巻き締められるので、ヘアライン転写シート100全体に巻き締めの力fが働く。このとき、インク形成部20は、直線的な形状で構成されているので、ロール内においてインク形成部20は、同一直線上の位置で巻き重ねられる。
【0072】
しかし、図11を参照して、インク形成部20は、胴部21とクビレ部22を備えている。胴部21はクビレ部22を挟んで、所定の間隔で形成されている。そのため、ロール内において、インク形成部20の胴部21どうしは、同一直線上の位置で巻き重ねられることはほとんどない。従って、胴部21どうしが干渉しあうこともほとんどない。よって、巻き締めの力fが加わっても、インク形成部20の形状が、その下に巻き重ねられたヘアライン転写シート100に写し取られるという「ブロッキング」の問題がほとんど生じなくなる。
【0073】
より詳細には、本発明のヘアライン転写シート100は、インク形成部20が胴部21とクビレ部22から構成されている。そのため、ヘアライン転写シート100をロール状に巻き取っても胴部21どうしが、同一直線上の位置に巻き重ねられることはほとんどない。その結果、巻き締めの力fが、インク形成部20に加わっても、その力を解消するように、胴部21が、その下に重ねられたヘアライン転写シートの100のクビレ部22に入り込む。よって、インク形成部21全体としての干渉割合が少なくなるので、ヘアライン転写シート100に形成されたインク形成部20の形状が、その下に巻き重ねられたヘアライン転写シート100に写し取られるという「ブロッキング」の問題がほとんど生じなくなる。
【0074】
図12は、ヘアライン転写シート100を基材200に転写して得られた加飾成形品300の斜視図である。図13は、図12におけるB−B切断面を示した図であり、図14は、図12のδ領域における拡大図である。
【0075】
図12を参照して、加飾成形品300は、基材200の上に接着層5、絵柄層4、保護層3が、この順番で形成されている。保護層3は、インク形成転写部30を備え、インク形成転写部30がヘアライン柄を表現している。
【0076】
なお、インク形成転写部30は、上述のインク形成部20の胴部21とクビレ部22の形状が写し取られた部分であり、上記インク形成部20の胴部21とクビレ部22を反映するような形状から構成されている。その結果、加飾成形品300は、ヘアライン加工がなされた製品と同じ風合いを感じられるものとなっている。
【0077】
図13を参照して、インク形成転写部30は、その断面が凹凸形状となっており、凹凸形状の凹部分の断面積は絵柄層4に近づくにつれ、小さくなっている。インク形成転写部30が、上記形状を備えていることにより、保護層3の表面から保護層3と絵柄層4の界面までの距離は一定ではなくなるので、保護層3の表面で反射した光と保護層3と絵柄層4との界面で反射した光が干渉するのを抑制できる。その結果、加飾成形品300のヘアライン柄が形成された部分に虹が発生するのを抑制することができる。
【0078】
物品の装飾方法
最後に、加飾成形品300の製造方法について説明する。本発明のヘアライン転写シート100を使用して熱ロール転写又はインモールド成形などにより、物品を装飾することができる。例えば、熱ロール転写においては、まず、ヘアライン転写シート100に存在する絵柄の位置を考慮して、被装飾物の所望の位置に絵柄が配置されるようにヘアライン転写シート100の位置を決定する。次いで、ヘアライン転写シート100の内側(接着層5側)の面を被装飾物の表面に重ね、ロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用いて、ヘアライン転写シート100の基体シート側から熱及び圧力をかける。こうすることにより、ヘアライン転写シート100が被装飾物の表面に接着し、物品の表面が装飾される。
【0079】
また、インモールド射出成形においては、まず、成形用金型内に、ヘアライン転写シート100を送り込む。その際、ヘアライン転写シート100の向きは、外側が金型キャビティ面を向くように合わせ、ヘアライン転写シート100の位置は、ヘアライン転写シート100に存在する絵柄の位置を考慮して、被装飾物の所望の位置に絵柄が配置されるように決定する。
【0080】
次いで、金型を閉じ、溶融樹脂がヘアライン転写シート100の内側(即ち、接着層5側)の面に接するように、即ち、ヘアライン転写シート100が溶融樹脂と金型キャビティ面に挟まれるように、溶融樹脂を金型のキャビティ内に充填させる。その結果、溶融樹脂は成形され、同時にヘアライン転写シート100は射出成形体の表面に接着される。樹脂を冷却し、金型を開いて射出成形体を取り出すと、転写層が射出成形体の表面に接着されて、射出成形体の表面が装飾される。最後に基体シート1が剥離される。
【0081】
被装飾物の材質は、従来からヘアライン転写シートによって装飾されてきたもの、又は接着層の成分を工夫して転写層をその表面に接着させることができるものであれば特に限定されない。各種合成樹脂、金属、ガラス、木、紙でなる部材、これらの塗装物及び装飾物は、被装飾物として用いられる。
【符号の説明】
【0082】
1 基体シート、
2 ヘアライン層、
3 ハードコート層、
4 絵柄層、
5 接着層、
20 インク形成部、
21 胴部、
22 クビレ部、
100 ヘアライン転写シート、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を装飾するヘアライン転写シートにおいて、
前記ヘアライン転写シートが
基体シートと、
前記基体シートの上に複数形成され、前記基体シートに近づくにつれて断面積が大きくなる胴部と、複数形成された前記胴部の間に前記胴部同士を連結するように形成され、前記胴部より幅が狭く、かつ前記胴部より高さが低いクビレ部とを備えるインク形成部を前記ヘアライン転写シートの長尺方向に備えたヘアライン層と、
前記ヘアライン層の上に形成される保護層と、
前記保護層の上に形成される接着層と、
を備えるーヘアライン転写シート。
【請求項2】
前記ヘアライン層の前記保護層との界面における算術表面粗さ(Ra)が、0.01μm〜1μmである請求項1のへアライン転写シート。
【請求項3】
前記胴部と前記クビレ部の中心間距離が5μm〜500μmである請求項1〜2のヘアライン転写シート。
【請求項4】
前記胴部と前記クビレ部の幅方向の長さが、それぞれ10μm〜500μm、5〜400μmである請求項1〜3のヘアライン転写シート。
【請求項5】
前記胴部と前記クビレ部の高さが、それぞれ0.01μm〜10μm、0.001μm、〜9μmである請求項1〜4のヘアライン転写シート。
【請求項6】
前記ヘアライン層が、無機粒子を1〜10重量%の割合で含む請求項1〜5のヘアライン転写シート。
【請求項7】
前記接着層と保護層の間に絵柄層を備える請求項1〜6のヘアライン転写シート。
【請求項8】
前記基体シートの算術平均表面粗さ(Ra)が、0.01μm〜1μmである請求項1〜7のヘアライン転写シート。
【請求項9】
前記インク形成部が、前記ヘアライン転写シートの幅方向に複数形成され、複数形成された前記インク形成部の隣りあう前記インク形成部のうち、少なくとも一組のインク形成部が、その一部において重なり部分を備える請求項1〜8のヘアライン転写シート。
【請求項1】
物品を装飾するヘアライン転写シートにおいて、
前記ヘアライン転写シートが
基体シートと、
前記基体シートの上に複数形成され、前記基体シートに近づくにつれて断面積が大きくなる胴部と、複数形成された前記胴部の間に前記胴部同士を連結するように形成され、前記胴部より幅が狭く、かつ前記胴部より高さが低いクビレ部とを備えるインク形成部を前記ヘアライン転写シートの長尺方向に備えたヘアライン層と、
前記ヘアライン層の上に形成される保護層と、
前記保護層の上に形成される接着層と、
を備えるーヘアライン転写シート。
【請求項2】
前記ヘアライン層の前記保護層との界面における算術表面粗さ(Ra)が、0.01μm〜1μmである請求項1のへアライン転写シート。
【請求項3】
前記胴部と前記クビレ部の中心間距離が5μm〜500μmである請求項1〜2のヘアライン転写シート。
【請求項4】
前記胴部と前記クビレ部の幅方向の長さが、それぞれ10μm〜500μm、5〜400μmである請求項1〜3のヘアライン転写シート。
【請求項5】
前記胴部と前記クビレ部の高さが、それぞれ0.01μm〜10μm、0.001μm、〜9μmである請求項1〜4のヘアライン転写シート。
【請求項6】
前記ヘアライン層が、無機粒子を1〜10重量%の割合で含む請求項1〜5のヘアライン転写シート。
【請求項7】
前記接着層と保護層の間に絵柄層を備える請求項1〜6のヘアライン転写シート。
【請求項8】
前記基体シートの算術平均表面粗さ(Ra)が、0.01μm〜1μmである請求項1〜7のヘアライン転写シート。
【請求項9】
前記インク形成部が、前記ヘアライン転写シートの幅方向に複数形成され、複数形成された前記インク形成部の隣りあう前記インク形成部のうち、少なくとも一組のインク形成部が、その一部において重なり部分を備える請求項1〜8のヘアライン転写シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−6368(P2013−6368A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141141(P2011−141141)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
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