説明

むくみの予防及び/又は治療用組成物

【課題】 ブルーベリー果実を利用した新規な医薬及び食品を提供する。
【解決手段】 ブルーベリー果実由来物を含有する、むくみの予防及び/又は治療用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、むくみの予防及び/又は治療用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
むくみ(浮腫ともいう)は、体内に組織液又はリンパ液などが貯留し、はれたような感じになる状態のことをいう。むくみは、脳卒中からの回復段階、乳房切断手術後、月経前、妊娠中などに発現したり、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンなどのある種の薬剤による副作用、腎臓疾患、腎臓機能の低下(ネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎、急性尿細管壊死、慢性肝疾患など)、心不全、鬱血性心不全、肝硬変、炎症などに伴って発現したり、さらには日常生活での長時間の立位、座位などによって自然発生的に下半身を中心に発現したりもする。疾患に伴って発現するむくみは疾患の悪化を招来し、又自然発生的に発現するむくみは外観形状の変化といった美容上の障害や、靴が履けなくなるなどの物理的障害などの悪影響をもたらす。
【0003】
ブルーベリーの果実には、アントシアニジン誘導体であるアントシアニンが含まれている。このアントシアニンについては、視覚機能改善作用、体内の活性酸素除去作用、血管強化作用、抗炎症作用、抗潰瘍作用などの薬理効果を有していることが知られており、欧米では医薬品として認可されている。
【0004】
特許文献1には、有効成分がブルーベリーの果実から抽出されたアントシアニジン誘導体である抗癌剤が記載されている。
しかし、ブルーベリー果実の抗浮腫作用については今まで知られていなかった。
【特許文献1】特開2003−277271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ブルーベリー果実の人体に及ぼす影響を研究する過程で知見を得たものであり、ブルーベリー果実を利用した新規な医薬及び食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者ら鋭意研究を重ね、ブルーベリー由来物が優れた抗浮腫作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ブルーベリー果実由来物を含有する、むくみの予防及び/又は治療用組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、優れた抗浮腫作用を発揮するので、むくみ(本発明では、浮腫も含む意味で使用する)の予防及び/又は治療に使用することができる。
また、本発明の組成物は、長期に服用しても副作用などの心配が少なく、安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用されるブルーベリー果実由来物とは、ツツジ科スノキ属(Vaccinium)に属する植物(以下、「ブルーベリー」ともいう)の果実を原料として得られるものであれば特に制限されず、例えば、果実そのもの;果実の細片、粉末(例えば果実を乾燥して粉末化したものなど)、及びこれらの懸濁液;果実の抽出液、濃縮抽出液、及びエキス粉末などの抽出物;並びにこの抽出物を精製して得た精製物などが挙げられる。優れた抗浮腫作用が得られる点で、ブルーベリー果実抽出物、特に精製物が好ましい。
本発明では、これらブルーベリー果実由来物を1種のみ使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
本発明では、ブルーベリーの果実として、果実そのものが使用されるが、その果肉のみ又は果皮のみを使用してもよい。
また、本発明では、ブルーベリーの果実として、生の果実、果肉、又は果皮を使用しても、乾燥させた果実、果肉、又は果皮を使用してもよい。
【0009】
上記ブルーベリーとして、ツツジ科スノキ属(Vaccinium)に属する植物であれば特に制限されず、V.shei、V.australe、V.corymbosum、V.myrtillus、又はV.angustifoliumが例示されるが、優れた抗浮腫作用を発揮できる点で、V.myrtillus(ビルベリーともいう)が好ましい。
【0010】
本発明では、ブルーベリー果実由来物として、ブルーベリーの果実に含有されている成分も例示される。このような成分として、アントシアニジン誘導体、例えばアントシアニジン、アントシアニン、フラバン−3−ノール、及びフラボノール配糖体などが例示される。
優れた抗浮腫作用を発揮する点で、アントシアニジン誘導体、特にアントシアニンが好ましい。
【0011】
ブルーベリーの果実中に含まれるアントシアニンは、例えば、下記一般式で表されるアントシアニジン骨格を有する。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Glycは、アラビノース、グルコース、及びガラクトースのいずれか一つを示す。また、式中R1、R2、及びR3は表1に示すような組合せを有する。)
【0014】
【表1】

【0015】
V.myrtillusの果実に含まれるアントシアニンは、表1に示したようにR1〜R3の置換基が異なる5種類のアントシアニジンに3種類の糖(アラビノース、グルコース、ガラクトース)が結合した合計15種類が存在する。なお、以下これら15種類のアントシアニンを総称して「アントシアニン」ということとする。
【0016】
ブルーベリーからのアントシアニンの抽出は、公知の方法で行うことができる。例えば、ブルーベリーの果実をすり潰すことで得られたブルーベリージュースをSep-Pac Plus C18Cartridgeカラム(Waters社製)に吸着させ、滅菌水で洗浄後、1%HCl−メタノール溶液で溶出させることで、純度90%のアントシアニンを抽出した。
なお、アントシアニンを大量に含有したブルーベリー果実抽出物が得られる点で、カラムとしてSEPHADEXLH-20(Amersham pharmacia Biotech AB社製:Cat17-0090-01)を用いることが好ましい。
【0017】
このようにして得られた抽出液のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によるクロマトグラムを標準品のアントシアニンのクロマトグラムと比較したところ、抽出液には、前記した15種類のアントシアニンが含まれていることが確認された。
【0018】
なお、アントシアニンを得るための原料は、ブルーベリーの果実をすり潰したブルーベリージュースに限定されず、市販されているブルーベリー粉末や濃縮液を用いても構わない。
【0019】
本発明の組成物は、ブルーベリー果実由来物、例えば、ブルーベリーの果実、その抽出物、その精製物、又はアントシアニンそのものであってもよいが、他の抗浮腫作用を有する物質、例えば、グァバ、ギムネム、モモタマナ、月桃、サツマイモ、又はシコンなどを含んでもよい。
【0020】
本発明の組成物は、ブルーベリー果実由来物、例えば、ブルーベリーの果実、その抽出物、その精製物、又はアントシアニンそのものであってもよいが、本発明の効果を損なわない限り、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素、乳化剤、及びその他に医薬品や食品などで一般に利用されている添加剤や素材を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の組成物は、むくみの予防又は治療に使用できる。
例えば、本発明の組成物は以下のむくみの予防又は治療に使用できる。すなわち、脳卒中からの回復段階、乳房切断手術後又は月経前などに発現するむくみ;妊娠中毒症又は妊娠浮腫などといった妊娠中に発現するむくみ;コルチゾン、ヒドロコルチゾン、又はプレドニゾロンなどのある種の薬剤による副作用により発現するむくみ;腎性浮腫といった、腎臓疾患又は腎臓機能の低下(ネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎、又は急性尿細管壊死など)などに伴って発現するむくみ;心性浮腫といった、心不全又は鬱血性心不全などに伴って発現するむくみ;肝性浮腫といった、慢性肝疾患、例として肝硬変などに伴って発現するむくみ;末梢血管障害によるむくみ;炎症などに伴って発現するむくみ;癌性腹水貯留;並びに日常生活での長時間の立位又は座位などによって自然発生的に下半身を中心に、例えば下肢に発現するむくみなどである。
なお、本発明では、治療には、むくみを縮小させたり、治癒したり、むくみの症状を軽くしたり、むくみの増悪を抑制したりすることなども含まれる。
【0022】
本発明に係る組成物の摂取量は、特に制限されないが、剤型、並びに使用者若しくは患者などの摂取者又は摂取動物の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択することができる。例えば、有効成分量として1日あたり摂取者又は摂取動物の体重1kgにつきアントシアニン量で0.3〜5mg、好ましくは0.35〜3mg、より好ましくは0.35〜1.5mgを経口摂取することが、優れた抗浮腫作用が発揮できるので、望ましい。
摂取期間は、摂取者又は摂取動物の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【0023】
本発明に係る組成物は、食品又は動物用飼料として、例えば、健康食品、機能性食品、健康補助食品、特定保健用食品、美容食品、又は栄養補助食品(サプリメント)として使用することができる。これら食品及び動物用飼料は、例えば、お茶及びジュースなどの飲料水;並びにアイスクリーム、ゼリー、あめ、チョコレート、及びチューインガムなどの形態であってもよい。また、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、又は錠剤の形態であってもよい。ここで、動物用飼料の動物には、ペット動物、畜産動物、又は動物園などで飼育されている動物を含む、むくみの予防又は治療を必要とする全ての動物が含まれる。
【0024】
本発明に係る組成物は、医薬品又は医薬部外品として使用することができる。これら医薬品又は医薬部外品は、例えば、散剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳濁剤、又は懸濁剤の形態で経口的に投与できるが、例えば坐剤の形態で直腸的に;例えば軟膏、クリーム剤、ゲル剤、又は液剤の形態で局部的又は経皮的に非経口的に投与することもできる。好ましくは経口投与である。
【0025】
本発明の組成物を錠剤の形態で用いる場合には、薬学的又は食品学的に認容された種々のキャリアを用いることができ、乳糖、ブドウ糖などの賦形剤、水、エタノールなどの結合剤、カンテン末、乾燥デンプンなどの崩壊剤、ステアリン、カカオバターなどの崩壊抑制剤、カオリン、ベントナイトなどの吸着剤、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑択剤などを例示できる。
【実施例】
【0026】
以下、製造例、製剤例、試験例などを挙げて本発明を更に詳しく具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、ここでは本発明のブルーベリーの果実を果肉と果皮とに分けないで実施例を示しているが、果肉から果皮を分離してそれぞれを使用することもできる。
【0027】
1.ブルーベリー果実抽出物の製造例1
ブルーベリー(V.myrtillus)の果実をすり潰し、得られたブルーベリージュースをSep-Pac Plus C18 Cartridgeカラム(Waters社製)に吸着させ、滅菌水で洗浄後、1%HCl−メタノール溶液で溶出させることで、ブルーベリー中のアントシアニンを抽出した。このようにして得られた抽出液を温度37℃においてエバポレータにより濃縮後、pHを7.0に調整し、DMSO(ジメチルスルフォキシド)に溶解させ、次いで乾燥させて、ブルーベリー果実抽出物を得た。なお、アントシアニンを大量に含有したブルーベリー果実抽出物を得たい場合には、カラムとしてSEPHADEXLH-20(Amersham pharmacia Biotech AB社製:Cat17-0090-01)を用いてもよい。
【0028】
2.試験食の製剤例1及びプラセボ食
以下の処方に基づき、慣用の方法に従い、配合成分をソフトカプセル(OVAL No. 6)中に充填して、試験食として製剤例1及びプラセボ食を製造した。
【0029】
【表2】

【0030】
3.ブルーベリー果実抽出物の下肢むくみ改善作用試験
(1)被験者
以下の選択基準及び除外基準により被験者を選別した。生活習慣アンケートは本試験の実施前に行った。その結果、被験者10名を選別し、これを5名ずつ、表3に示すとおりA群とB群にそれぞれ割付けた。
(i)選択基準
30歳から59歳までの女性。
(ii)除外基準
(ア)喫煙する者
(イ)すでにブルーベリーを常用している者
(ウ)ブルーベリーを主成分とする医薬品又は健康補助食品を常用している者
(エ)末梢機能又は血液流動に影響する、医薬品(ワ−ファリンなど)又は健康食品を使用している者
(オ)糖尿病、脳機能障害、末梢血管障害、消化器、膵臓、肝臓、及び腎臓などに重篤な疾患を有している者
(カ)本試験開始時に他の臨床試験に参加中の者
(キ)食物アレルギーのある者
(ク)妊娠中の者又は授乳期の者
(ケ)生活習慣アンケートの回答から、被験者として不適と判断される者、例えば、試験食組成分中にアレルギーを起こしたことのある者、飲酒量の多い者など
(コ)その他、試験担当医師が不適当と判断した者
【0031】
【表3】

【0032】
(3)試験スケジュール
(i)試験デザイン
クロスオーバー法で行った。すなわち、試験日を第1試験日と第2試験日の2日設け、表3に示すとおり、第1試験日では、上記で割付けた2群のうちA群の被験者にプラセボ食を、B群の被験者に製剤例1を、それぞれ摂取させて試験を行い、第2試験日では、A群の被験者に製剤例1を、B群の被験者にプラセボ食を、それぞれ摂取させて試験を行った。第1試験日と第2試験日の間に1週間の間隔を置いた。
なお、製剤例1又はプラセボ食は、2カプセルを水とともに被験者に摂取させた。
(ii)試験日のスケジュール
第1試験日も第2試験日も共に以下のスケジュールに従い試験を行った。
先ず、朝の10:00頃に被験者に朝食を取らせた後、11:00〜12:00に1回目のむくみ測定を行った。次いで、12:00頃に被験者に昼食を取らせ、またその際に試験食として製剤例1又はプラセボ食を被験者に摂取させた。また、飲料水は昼食時にのみ500ml摂取させた。
次いで、13:00〜17:00頃までの約4時間、被験者にむくみ作業をさせた。むくみ作業中の15:00頃に2回目のむくみ測定を、むくみ作業終了直後の17:00頃に3回目のむくみ測定を、それぞれ行った。
【0033】
(4)むくみの測定
(i)むくみ作業
一定温度(20℃)に空調された部屋で、被験者を、背もたれや肘掛けのないイスに座らせて、テーブル上で作業、例えば、読書などを4時間させた。むくみ作業中は必要時以外、極力動きまわらないようにさせたが、トイレなどは許可した。むくみ作業中は、膝と足首は直角程度にしてもらい、極力動かさないようにさせた。足の組み替え、貧乏ゆすり、足踏み、下肢のノビなども極力させないようにさせた。胴体と腕も極力動かさないようにさせた。
(ii)むくみ測定
むくみは、下肢の周囲長及び体積から計算した。
下肢の周囲長は、足底から23cm及び30cmの高さの部位を、メジャーを用いて測定した。
下肢の体積は、水を満たした容器に、下肢を足底から30cmの高さまで浸し、その際オーバーフローした水をメスシリンダーに採取して、その体積及び重量をメスシリンダー及び上皿電子天秤でそれぞれ測定した。
むくみ測定は左右両下肢のそれぞれで行った。
また、測定値は平均値で示した。
【0034】
(5)制限事項
被験者には以下の制限事項を課した。
(ア)各試験日前の3日間は日常範囲を大きく逸脱する過度な運動、節食及び過食を制限させた。
(イ)試験日当日は、朝食摂取前8時間以内には食事を摂らないよう指導した。
(ウ)検査日前の2日間はアルコール類を飲まないよう指導した。
【0035】
(6)試験結果
結果を表4に示した。製剤例1は、プラセボ食と比べて、むくみによる下肢の周囲長及び体積の増加をより大きく抑制した。このことから、ブルーベリー果実抽出物は、抗浮腫効果があることが認められた。
【0036】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、むくみの予防及び/又は治療用の組成物を得ることができる。
これら組成物は、医薬品、あるいは健康食品、健康補助食品、特定保健用食品、又は栄養補助食品などの食品に利用できる。
また、むくみの改善により痩身にも有用であることから、本発明の組成物は化粧料又は美容食品にも利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルーベリー果実由来物を含有する、むくみの予防及び/又は治療用組成物。
【請求項2】
ブルーベリー果実由来物がブルーベリーの果実抽出物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ブルーベリー果実由来物がアントシアニンである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
食品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
医薬品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−306797(P2006−306797A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132392(P2005−132392)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(500314810)ナチュラルウェイ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】