説明

わずかに溶解性の作用物質用の多粒子の剤形、並びに前記剤形の製造方法

本発明は、a) ペプチド又はタンパク質(その誘導体又は複合体を含める)ではない作用物質と、37℃を超える融点を有する親油性マトリックスと、粘膜付着作用を有するポリマーとを有する内側マトリックス層、b) 場合により製剤学的に通常の助剤で調製されていてもよい、主にアニオン性ポリマー又はコポリマーからなる外側の皮膜形成されたコーティングとから主に構成されている、50〜2500μmの範囲内の平均直径を有する、多数のペレット、粒子、顆粒又はアグロメラートを含有する、胃のpH領域で分解する容器の形の経口の多粒子の剤形において、前記作用物質が、作用物質1質量部に対して水少なくとも30体積部のDAB10による水中での溶解性を示し、かつ親油性マトリックス中に埋め込まれていて、かつこの作用物質含有の親油性マトリックスは粘膜付着作用を有するポリマーからなるマトリックス中に埋め込まれていることを特徴とする、経口の多粒子の剤形に関する。本発明は、更に多粒子の剤形の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド又はタンパク質(その誘導体又は複合体を含める)ではない、わずかに溶解性の作用物質のための多粒子の剤形、並びに前記剤形の製造方法に関する。
【0002】
背景技術
WO 02/03955は、作用物質の舌下投与のための生体付着性の、マイクロスフェアに調製された剤形を記載している。このマイクロスフェアは、50μmよりも小さな平均直径を有し、かつ作用物質を非結晶の形でマイクロマトリックス中に含有し、生体付着性ポリマー中に埋め込まれている。この生体付着性ポリマーは、特にセルロース、キトサン又はアクリルコポリマーであることができる。
【0003】
WO 02/051390は、作用物質の有効な放出を行うことができる、親油性マトリックス及び高い割合(>70%)のモノグリセリド有する調製物を記載している。
【0004】
WO 02/64148は、ムコ多糖を含有する調製物、及びその製造方法を記載している。この場合、ムコ多糖、例えばヘパリンは、吸着補強剤、例えばキトサンと一緒に調製され、引き続き腸液溶解性コーティングが設けられるため、作用物質を小腸の中盤又は後半部分で放出することができる。腸液溶解性コーティングとして、例えばEUDRAGIT(R) L, S, L100-55タイプのアニオン性アクリルコポリマーが挙げられる。この調製物は、カプセル、錠剤及び顆粒剤を有していてもよい。
【0005】
WO 02/43767は、細胞膜伝達部に連結している作用物質、pH値を低下させる薬剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤並びに酸安定性の伝達媒体を有し、前記伝達媒体は患者の胃を通過する経路において製剤学的組成物を保護しかつ胃内に存在するプロテアーゼとの接触を抑制する、生理学的に活性のペプチド作用物質用の経口の製剤学的組成物を記載している。この伝達媒体は、EUDRAGIT(R) L30 D-55らなる耐酸性コーティングでコーティングされているカプセルであることができる。
【0006】
WO 03/007913は、作用物質が多数のいわゆる「パッチ」の形で含まれる経口の多粒子の剤形を記載している。「パッチ」とは、生体適合性材料からなる、直径500μm〜5mm及び高さ100〜1000μmの円盤状の対象物である。このパッチは、2つの層もしくは側からなり、一方の側は水又は体液に対してわずかに透過性の側、例えばエチルセルロースからなる側であり、かつ作用物質、例えばペプチド又はタンパク質を含有する第2の側は粘膜付着性のポリマー、例えばキトサン、CMC、ポリアクリル酸又はペクチンと混合して存在することができる。このパッチは、タブレットに圧縮成形するか又はカプセルに充填することができ、これらは更に腸液溶解性コーティングが設けられている。この作用物質調製物は、更にいわゆるエンハンサー、例えば脂肪酸、脂肪アルコール、エステル、表面活性物質及びプロテアーゼ阻害剤と組み合わせることもできる。作用箇所で、例えば所定の腸部分内でカプセルは溶解し、「パッチ」が放出される。放出された「パッチ」は、粘膜付着性の側で腸粘膜に付着し、そこで作用物質を腸粘膜に向かって遅延放出することができる。前記「パッチ」の第2のわずかに透過性の側は、作用物質に、腸管側からの化学的又は酵素的な失活に対して所定の保護を提供し、かつこの側から作用物質が漏れ出るのを抑制する。
【0007】
課題及び解決手段
WO 03/007913は、特に、腸管中で放出されかつそこで作用を行うことができる作用物質のための経口剤形を準備するための、注目すべきかつ高く評価されるべき解決策を提供している。この解決策の欠点は、特に繁雑な構造にあり、二層の「パッチ」構造の製造にある。前記剤形を胃液耐性で、腸液溶解性のコーティングを備えたカプセルとして準備することは特に不都合であると思われる。2.5mmを明らかに超えるサイズの場合に、不十分な治療的再現性が生じる。カプセルが胃を通過する通過時間は著しく変化することがある。この場合、遅延された作用開始を見込まなければならない。更に、前記カプセルは前記コーティングの部分的な溶解後に迅速に又は緩慢に溶解することができる。このコーティング及びカプセルの両方の原理は不都合にも重複しているため、「パッチ」の全体で制御されない放出を見込まなければならない。前記カプセルは、少なくとも既に部分的に腸液が到達することができる状態で、現状の腸内容物又は腸蠕動に応じて、無傷のままであるか又は機械的に十分に破壊されることもある。まずコーティングされたカプセル構造物の破壊又は機械的負荷に応じて、一方で、大量の「パッチ」の急激な放出が生じるか、又は他方では望ましくない遅延された放出が生じることがある。従って、全体で改善された制御されるべき作用物質放出が望ましい。
【0008】
特別な問題は、DAB10の範囲内でのわずかに溶解性の作用物質の場合に生じる。本発明の範囲内で、これは、DAB10による水中での溶解性が作用物質1質量部に対して水少なくとも30体積部を示す作用物質である。本発明は、ペプチド又はタンパク質(その誘導体又は複合体を含める)である作用物質を明確に除外する、それというのもこれは他の発明の対象であるためである。水中にわずかに溶解するか又はあまり溶解しない作用物質は、剤形の調製の際に問題があり、特にこの作用物質は生物学的利用能が悪い。この理由から、このような多くの作用物質は、腸管外調製物としてだけ、つまり患者のコンプライアンスに明らかな欠点を有するインプラント又は注射剤としてだけ発展されている、又は所定の薬理作用にも関わらず市販されるまでに達した調製物として発展されない。公知の製剤学的発端を有するこの作用物質の経口投与形が発展される場合には、この剤形中に含まれる作用物質の大部分は身体に吸収されることができない。この残る生物学的利用能は、個別の場合の状況、例えば周囲の条件に著しく依存し、かつ恐らくは吸収する生体にも依存し、従って大きな変動に曝されることがある。従って、治療的に確実な適用は多くの場合に不可能である。従って、わずかに溶解性の作用物質をより良好に投与することができる剤形の必要性が生じる。
【0009】
本発明の課題の1つとしては、ペプチド又はタンパク質(その誘導体又は複合体を含める)を除いたわずかに溶解性の作用物質の適切でかつ効果的な放出のために適している剤形を提供することであった。この剤形は、高い用量信頼性を提供し、かつ急速に胃を通過した後に、腸管中で良好に分配される。含まれる作用物質は、この場合、生理学的、化学的又は酵素的な失活に対して十分に保護されているのが好ましく、かつ定義された作用箇所で放出されて、高い割合の作用物質を身体に吸収させることができるのが好ましい。この放出箇所は、治療目的に応じて可変でありかつ確実に調節可能であるのが好ましい。
【0010】
前記課題は、
a) ペプチド又はタンパク質(その誘導体又は複合体を含める)ではない作用物質と、37℃を超える融点を有する親油性マトリックスと、粘膜付着作用を有するポリマーとを有する内側のマトリックス層、
b) 場合により製剤学的に通常の助剤で調製されていてもよい、主にアニオン性ポリマー又はコポリマーからなる外側の皮膜形成されたコーティング
とから主に構成されている、50〜2500μmの範囲内の平均直径を有する、多数のペレット、粒子、顆粒又はアグロメラートを含有する、胃のpH領域で崩壊する容器の形の経口の多粒子の剤形において、前記作用物質が、作用物質1質量部に対して水少なくとも30体積部のDAB10による水中での溶解性を示し、かつ親油性マトリックス中に埋め込まれていて、かつこの作用物質含有の親油性マトリックスは粘膜付着作用を有するポリマーからなるマトリックス中に埋め込まれていることを特徴とする、経口の多粒子の剤形により解決される。
【0011】
発明の実施態様
本発明は、主に内側のマトリックス層と外側の皮膜形成されたコーティングとから構成されている、50〜2500、有利に100〜1000μm、特に有利に200〜800μmの範囲内の平均直径を有する、多数のペレット、粒子、顆粒(例えば押出物、共沈物)又はアグロメレートを含有する、胃のpH領域で溶解する容器の形の、特にタブレット、ミニタブレット、カプセルに充填されたペレット、サシェ又はドライシロップの形の経口の多粒子の剤形に関する。
【0012】
内側のマトリックス層a)は、ペプチド又はタンパク質(その誘導体又は複合体を含む)ではない作用物質と、37℃を超える融点を有する親油性マトリックスと、粘膜付着作用を有するポリマーとを含有する。場合によりもしくは一般に、前記の内側のマトリックス層は、親油性マトリックス中で又は粘膜付着作用を有するポリマーの調製のために、他の製剤学的に通常の助剤を含有してもよい。当業者にはこのような調製助剤は公知である。
【0013】
外側の皮膜形成されたコーティングb)は、主にアニオン性のポリマー又はコポリマーからなり、これはまた場合により製剤学的に通常の助剤、例えば離型剤及び/又は可塑剤で調製されていてもよい。この調製物は、複数のアニオン性ポリマー又はコポリマーを混合物の形で存在することができる調製物を含める。
【0014】
この作用物質は、作用物質1質量部に対して水少なくとも30体積部のDAB10による水中での溶解性を示し、かつ親油性マトリックス中に埋め込まれている。この作用物質含有の親油性マトリックスは、また、粘膜付着作用を有するポリマーからなるマトリックス中に埋め込まれている。
【0015】
この多粒子の剤形は、含まれるペレット、粒子、顆粒(押出物、共沈物を含める)又はアグロメレートを、胃のpH領域で放出するように調製されている。ペレット、粒子、顆粒(押出物、共沈物を含める)又はアグロメレートを含有し、かつ胃のpH領域で崩壊する前記容器は、例えばカプセル、ゼラチンカプセル、タブレット、例えば圧縮成形されたタブレット、ドライシロップ調製物又はサシェであることができる。
【0016】
外側のコーティングは、アニオン性ポリマーもしくはコポリマーの選択もしくは助剤との調製及びその層厚により調節され、これは4.0〜8.0、有利に5.5〜7.8、特に有利に5.8〜7.5のpH領域で腸内で10〜60、有利に20〜40minで溶解するため、粘膜付着性のマトリックス層が露出し、腸粘膜に結合し、そこで親油性作用物質含有マトリックスが腸細胞と接触することができる。従って、親油性マトリックスの成分あり又はなしの前記作用物質は吸収されることができる。この親油性マトリックスは、作用物質と親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質とが、DAB10によるその水中での溶解性において+/−50%より大きくは異ならず、及び/又は付録V〜RL 67/548/EWG、A.8(Anhang V zu RL 67/548/EWG, A.8)による分配係数において+/−60%より大きくは異ならず、及び/又はMarszallにより測定されたそのHLB値において+/−80%より大きくは異ならないように選択される。
【0017】
粘膜付着作用を有するポリマーもしくはコポリマーは、外側のコーティングが溶解し始めるpH値に関して+/−0.5、有利に+/−0.3pH単位の範囲内で、少なくともηb=150〜1000、有利に200〜900mPa.sの粘膜付着作用及び15minで10〜750、有利に10〜250、特に有利に10〜160%の吸水率を有し、かつマトリックス層の作用物質割合は、粘膜付着作用を有するポリマーに関する含有量の最大で40、特に0.001〜15又は0.05〜5質量%であるように選択される。
【0018】
内側のマトリックス層
この内側のマトリックス層は、作用物質担体として機能する。更に、この内側のマトリックス層は、前記作用物質を親油性マトリックス中に溶解させるか又は少なくとも結合させ、できればその生物学的利用のを高める機能を有する。この親油性マトリックスを取り囲む、粘膜付着性ポリマーからなるマトリックスによって、前記内側層の成分は腸粘膜と結合する。作用物質は、そこから、生体内へと到達することができる。この内側のマトリックス層は、更に作用物質を生理的、化学的又は酵素的な失活から保護する機能を有する。
【0019】
この内側のマトリックス層は、次の2つのマトリックス成分:
a) 作用物質が溶解、分散、乳化又は単に混合されている親油性マトリックス成分と、
b) 親油性マトリックスが埋め込まれている粘膜付着性マトリックス成分と
からなる。
【0020】
この内側の親油性マトリックス成分は、作用物質担体として機能する。更に、この内側のマトリックス層は、前記作用物質を親油性マトリックス中に溶解させるか又は少なくとも結合させ、できればその生物学的利用のを高める機能を有する。更に、この内側のマトリックス層は、作用物質を、含有された脂質及び/又は両親媒性物質により、生理的、化学的又は酵素的な変性に対して保護し、腸上皮(腸細胞)を通した透過及び吸収を促進するため、前記作用物質はそこから生体内へと達することができる機能を有する。
【0021】
親油性マトリックスが埋め込まれている粘膜付着性ポリマーからなる更なるマトリックス層又はコアは、第2の担体として機能する。更に、この層又はコアは、含まれた粘膜付着性ポリマーにより親油性マトリックスを腸粘膜に結合させることで、そこから作用物質が粘液層を通して腸細胞の表面に到達することができ、それにより親油性マトリックスと腸細胞との直接的な接触を行うことができるという機能を有する。この粘膜付着性マトリックス層又はコアは、更に、親油性マトリックスを生理的、化学的又は酵素的な分解/失活から保護する機能を有する。
【0022】
作用物質/作用物質調製物
作用物質
本発明の範囲内で使用された作用物質は、特に
1. 疾病、病気、身体の損傷又は病的な苦痛の治癒、緩和、予防又は識別のため、
2. 身体の性質、状態又は機能又は精神的状態を識別するため、
3. 人体又は動物の身体から製造された作用物質又は体液を交換するため、
4. 病原体、寄生虫又は体外物質を阻止、排除又は無害化するため、又は
5. 身体の性質、状態又は機能又は精神的状態に影響を及ぼすため、
人体又は動物の身体上又は人体内又は動物の体内に適用されることが定められる。
【0023】
ペプチド又はタンパク質(その誘導体又は複合体を含める)ではないこの作用物質は、有利酸又は遊離塩基として使用することができる。対イオンとして、例えば生理学的塩基又は酸、許容性のアルカリ土類金属又はアルカリ金属又はアミン、並びに例えばアセタート、アジパート、アスコルバート、アルギナート、ベンゾアート、ベンゼンスルホナート、ブロミド、カーボナート、カルボキシメチルセルロース(遊離酸)、シトラート、クロリド、ジブチルホスファート、ジヒドロゲンシトラート、ジオクチルホスファート、ジヘキサデシルホスファート、フマラート、グルコナート、グルクロナート、グルタマート、ヒドロゲンカーボナート、ヒドロゲンタートラート、ヒドロクロリド、ヒドロゲンシトラート、ヨージド、ラクタート、アルファ−リポナート、マラート、マレアート、マロナート、パモアート、パルミタート、ホスファート、サリチラート、ステアラート、スクシナート、スルファート、タートラート、タナート、オレアート、オクチルホスファートを使用することができる。
【0024】
親油性マトリックスの作用物質割合は、例えば最大90、特に1〜60又は5〜50質量%であることができる。内側のマトリックス層a)についての作用物質含有の親油性マトリックスの含有量は、有利に5〜60、特に有利に10〜50質量%であることができる。
【0025】
作用物質の生化学特性、例えば油中水の分配係数又は等電点等に依存して、この内側層a)は、付加的にエフラックスポンプ阻害剤、例えばケトコナゾール又はポリエチレン−660−12−ヒドロキシ−ステアラート(Solutol(R) HS15)を含有していてもよい。
【0026】
この内側層a)は、更に浸透促進剤、特に可塑剤、例えばトリエチルシトラート、アセチルトリエチルシトラート、ジエチルセバカート、ジブチルセバカート、ポリマー、例えばカルボマー、キトサン、キトサン−システイン、ナトリウム−カルボキシメチルセルロース、N−トリメチル化キトサン、ポリカルボフィル−システイン、長鎖脂肪酸、そのエステル(例えばモノグリセリド及びジグリセリド)及びその塩、例えばラウリン酸、ラウリンスルホン酸、パルミチン酸、カプリル酸、カプリン酸、油酸、アシルカルニチン、キレート形成剤、例えばEDTA、サリチラート、シクロデキストリン、ポリアクリル酸、胆汁酸、例えばコール酸、コリルタウリン、コリルサルコシン、ケノデオキシコール酸及びそれらの塩、例えばコール酸Na、グリココール酸Na、タウロコール酸Na、タウロジヒドロフシジン酸Na、グリコジヒドロフシジン酸Na、界面活性剤及び乳化剤、例えばポリソルベート80(Tween 80)、ポリオキシエチル化ヒマシ油(Cremophor EL)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール(Pluronic(R) F68)、毒素、密着帯毒素(ZOT)並びにビタミン、例えばビタミンE(トコフェロール)又はビタミンB12を含有することができる。
【0027】
この内側層a)は、更に酵素阻害剤、例えばリパーゼ阻害剤、エステラーゼ阻害剤及び/又はグルコラーゼ阻害剤を含有することができる。
【0028】
粘膜付着作用を有するポリマー
この内側のマトリックス層a)は、更に粘膜付着作用を有するポリマーを含有し、前記ポリマーは、作用物質含有の親油性マトリックスを取り囲むかもしくは埋め込んでいる。粘膜付着作用を有する適当なポリマーは、特にキトサン(キトサン及び誘導体、キトサン類)、メチルメタクリラート20〜45質量%とメタクリル酸55〜80質量%とからなる(メタ)アクリラートコポリマー、セルロース、特にメチルセルロース、例えばNa−カルボキシメチルセルロース(例えばBlanose(R)又はMethocel(R))である。
【0029】
粘膜付着作用を有するポリマーは、外側コーティングが溶解し始めるpH値に関して+/−0.5、有利に+/−0.3pH単位の範囲内で、15minで10〜750、有利に10〜250、特に有利に10〜160%の吸水率を有するように選択される。
【0030】
粘膜付着特性の測定
粘膜付着特性を特性決定するための適当な測定方法は、Hassan及びGallo著(1990)に記載されている(Hassan E.E.及びGallo J.M.著"A Simple Rheological Method for the in Vitro Assessment of Mucin-Polymer Bioadhaesive Bond Strength" Pharma Res. 7 (5), 491 (1990)参照)。この方法は、ポリマーとムチンとの混合物の粘度(η、動粘度もしくは粘度係数)が、個々の成分の粘度の合計と異なっているという仮定に基づいている。次の関係
ηポリマーとムチンとの混合物=ηムチン+ηポリマー+ηb
が成り立ち、その際、ηbは差を表す。ηbが高ければそれだけ、粘膜付着特性も高くなる。個々の成分は、まず回転粘度計でその粘度が測定される。粘膜付着性ポリマーの0.5%(w/w)水溶液とブタの胃からのムチンの15%溶液とを使用した。粘膜付着特性ηbの測定のために、単独のムチン及びポリマーとそれらの混合物とを記載された濃度で測定した。
【0031】
粘膜付着作用を有するポリマーは、外側コーティングが溶解し始めるpH値に関して+/−0.5、有利に+/−0.3pH単位の範囲内で、粘度ηbとして測定した150〜1000、有利に150〜600mPa.sの粘膜付着作用を有するように選択される。
【0032】
水和及び吸水
ポリマーの水和は、水を吸収するポリマーの親和性に基づく。ポリマーはこの吸水により膨潤する。これは、ポリマー中の水の化学ポテンシャルと、周囲環境中の水との間の不均衡が原因である。この水は、ポリマーの浸透圧に基づき、内側の相と外側の相との間で平衡が生じるまで吸収される。このときに、このポリマーは100%まで水和されている。このときに、低い平均分子量を有するポリマーについて溶液が存在する。高い分子量を有するポリマー又は架橋されたポリマーについてはゲルが生じる。平衡になるまでの吸水は、例えばポリマー重量の1000%に相当する、自重の10倍までとなることができる。
【0033】
吸水率の測定
吸水率の測定は当業者に周知である。適当な方法は、例えば、製薬学技術の教書/Rudolf Voigt著, Basel: Verlag Chemie, 5. 完全改訂版, 1984, 151頁, 7.7.6 unter "Aufsaugvermoegen"に記載されている。この方法は、いわゆるEnslin装置を用い、この場合、ガラスフィルター漏斗がホースを介して段階的ピペットと結合されている。このピペットは正確に水平に取り付けられていて、このガラスピペットはガラスフリットと同じ高さにある。100%の吸水率は、この場合に、15minで粘膜付着作用を有するポリマー1g当たり水1mlの吸水として定義される。
【0034】
比較的急速な吸水もしくは水和及び高い水和度により、外側コーティングの溶解が始まる時点で、作用物質の迅速な保護及び腸粘膜への直接的な結合が保証される。粘膜付着マトリックス中の作用物質の結合は低いため、この作用物質は腸粘膜から直接生体内へ移行することができる。
【0035】
粘膜付着特性を有するポリマーを含有するマトリックス中のpH値の制御
粘膜付着作用は、多くの粘膜付着性ポリマーの場合にpH依存である。マトリックス中のpH値は、酸、塩基又は緩衝系の添加により適切に制御することができる。この内側のマトリックスは、例えば粘膜付着特性を有するポリマーとしてキトサンを含有することができ、このキトサンはアセタート緩衝系と一緒に使用される。アセタート/Na−アセタート緩衝剤(例えばpH5.0〜5.5に調節)は、添加物としてマトリックス中に存在してもよいか、又はマトリックスが塗布されているコア上に設けられていてもよい。このように、キトサン(その誘導体を含む)は、より高いpH値、例えばpH6.0〜8.0で溶解し始める皮膜形成されたコーティングと組み合わせて使用することもできる。高い周囲pH値にもかかわらず、マトリックスの微小環境では低いpH値が維持される。こうしてポリマーの粘膜付着特性は、通常では粘膜付着に作用しないか又は適切に作用しないはずのpH範囲で利用することができる。これは、pH最適値がより高いpH領域にある酵素に対して所定の保護を達成するという利点も有する。マトリックスのpH値を塩基の添加によって高めかつ低いpH値で溶解する皮膜形成されたコーティングと組み合わせることによって、同じ原理を逆の場合でも適用することができる。
【0036】
適当な粘膜付着性ポリマーの選択の例
適当な粘膜付着性ポリマーの選択は、その粘膜付着特性及びその吸水性に基づく。このポリマーは、それぞれのpH領域で、少なくともηb=150〜1000mPa.sの粘膜付着作用及び15minで10〜750%の吸水率を有するのが好ましい。次の表は例示した一覧を示す。
【0037】
キトサンは、マトリックスpH領域が例えば緩衝系を用いて約pH5.5の範囲に調節された場合に限り、例えばpH5.5の環境pH領域(十二指腸)で又は他の環境pH領域(回腸又は結腸)で適用するために適している。
【0038】
表中に列記された(メタ)アクリラートコポリマーは、pH7.2のpH領域が、約pH5.5のpH領域よりもより良好に適している。
【0039】
アルギン酸Naは、約pH5.5のpH領域が適しているが、pH7.2のpH領域は適していない。
【0040】
Na−カルボキシメチルセルロース及び架橋したポリアクリル酸は、5.5〜7.2の広いpH領域にわたり適している。
【表1】

*=メチルメタクリラート30質量%とメタクリル酸70質量%とからなる(メタ)アクリラートコポリマー。
【0041】
アニオン性(メタ)アクリラートコポリマーからなる外側コーティングb)
アニオン性ポリマー又はコポリマーからなる外側の皮膜形成されたコーティングコーティングb)は、胃液耐性のコーティングとして、胃液から内側の層a)を保護するために用いられる。更に、外側コーティングは、このコーティングが溶解し始める腸部分(十二指腸、空腸、回腸又は結腸)に達する時点まで、作用物質を場合による生理的、化学的又は場合による酵素的な失活から保護するために機能する。この外側コーティングは、特にいわゆる「胃腸管ターゲッティング」のために、つまり、その環境のpH値により規定される腸部分での内側マトリックス層の適切な放出のために用いられる。内側層a)の放出の妨害を生じさせないことにより、外側コーティングの(メタ)アクリラートコポリマーはできる限り、作用物質又は内側層の粘膜付着性ポリマーとの相互作用を示さないか又はわずかにだけ相互作用を示すのが好ましい。
【0042】
適当なアニオン性ポリマーもしくはコポリマーは、セルロースグリコラート(Duodcell(R))、セルロースアセタートフタラート(CAP, Cellulosi acetas, PhEur, Celluloseacetate-phtalate, NF, Aquateric(R))、セルロースアセタートスクシナート(CAS)、セルロースアセタートトリメリアート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP, HP50, HP55)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMCAS -LF, -MF, -HF)、ポリビニルアセタートフタラート(PVAP, Sureteric(R))、酢酸ビニル−ビニルピロリドン−コポリマー(PVAc, Kollidon(R) VA64)、酢酸ビニル:クロトン酸−コポリマー9:1(VAC:CRA, Kollicoat(R) VAC)及び又はセルラックである。前記のポリマーもしくはコポリマーは、多様に十分に満足されるように、pH特異的な溶解を達成できるように調製することができる。
【0043】
特に有利に、外側の皮膜形成されたコーティングは、主にアニオン性の基を有するモノマーの含有量5〜60質量%を有する(メタ)アクリラート−コポリマーからなり、このコーティングは場合により製剤学的に通常の助剤、特に可塑剤で調製されていてもよい。冒頭に記載したポリマーと比較して、前記のアニオン(メタ)アクリラートコポリマーは、本発明の範囲内で、多くの場合に、溶解pH値のさらに正確でかつ再現可能なpH特異的調節を行う可能性を提供する。この取扱及び適用も、一般にあまり煩雑ではない。
【0044】
外側コーティングのための(メタ)アクリラート−コポリマーは、40〜95、有利に45〜90、特に30〜 質量%までがアクリル酸又はメタクリル酸のラジカル重合したC1〜C4−アルキルエステルからなり、かつアニオン性の基を有する(メタ)アクリラート−モノマー5〜60、有利に8〜40、特に有利に20〜35質量%を含有することができる。
【0045】
一般に、前記の割合は100質量%まで合計される。しかしながら、付加的に、本質的な特性に悪影響を及ぼさないか又は本質的な特性を変化させずに、少量の、0〜10、例えば1〜5質量%の範囲内で他のビニル系の共重合可能なモノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリラート又はヒドロキシエチルアクリラートを含有していてもよい。
【0046】
アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステルは、特にメチルメタクリラート、エチルメタクリラート、ブチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びブチルアクリラートである。
【0047】
アニオン性の基を有する(メタ)アクリラート−モノマーは、例えばアクリル酸、有利にメタクリル酸であることができる。
【0048】
更に、メタクリル酸40〜60質量%とメチルメタクリラート60〜40質量%又はエチルアクリラート60〜40質量%からなるアニオン性(メタ)アクリラートコポリマー(EUDRAGIT(R) L又はEUDRAGIT(R) L100-55タイプ)が適している。
【0049】
EUDRAGIT(R) Lは、メチルメタクリラート50質量%とメタクリル酸50質量%とからなるコポリマーである。EUDRAGIT(R) L 30Dは、EUDRAGIT(R) L 30質量%を含有する分散液である。この(メタ)アクリラートコポリマーは、約pH6.0〜6.5のpH領域(空腸)において溶解させるために特に適している。
【0050】
EUDRAGIT(R) L100-55は、エチルアクリラート50質量%とメタクリル酸50質量%とからなるコポリマーである。EUDRAGIT(R) L 30-55は、EUDRAGIT(R) L 100-55 30質量%を含有する分散液である。この(メタ)アクリラートコポリマーは、約pH5.5〜6.0のpH領域(十二指腸)での溶解のために特に適している。
【0051】
同様に、メタクリル酸20〜40質量%と、メチルメタクリラート80〜60質量%とからなるアニオン性の(メタ)アクリラートコポリマー(EUDRAGIT(R) Sタイプ)が適している。この(メタ)アクリラートコポリマーは、約pH6.5〜7.0のpH領域(空腸もしくは回腸)での溶解のために特に適している。
【0052】
特に有利に、メチルメタクリラート10〜30質量%と、メチルアクリラート50〜70質量%と、メタクリル酸5〜15質量%とからなる(メタ)アクリル酸コポリマーが適している。
【0053】
EUDRAGIT(R) FSはメチルメタクリラート25質量%、メチルアクリラート65質量%及びメタクリル酸10質量%からなるコポリマー。EUDRAGIT(R) FS 30 Dは、EUDRAGIT(R) FS 30質量%を含有する分散液である。この(メタ)アクリラートコポリマーは、約pH7.0〜7.8のpH領域(回腸もしくは結腸)での溶解のために特に適している。
【0054】
更に、
メタクリル酸及び/又はアクリル酸20〜34質量%と、
メチルアクリラート20〜69質量%と、
エチルアクリラート0〜40質量%と、及び/又は場合により
他のビニル系の共重合可能なモノマー0〜10質量%と
から構成されたコポリマー(ただし、前記コポリマーのISO 11357-2,ポイント3.3.3によるガラス転移温度は高くても60℃である)が適している。この(メタ)アクリラートコポリマーは、その良好な破断点伸びにより、特にペレットからタブレットへの圧縮成形のために適している。
【0055】
更に、
メタクリル酸及び/又はアクリル酸20〜33質量%と、
メチルアクリラート5〜30質量%と、
エチルアクリラート20〜40質量%と、
ブチルメタクリラート10より多く〜30質量%と、
場合により
他のビニル系の共重合可能なモノマー0〜10質量%(その際、前記モノマーの割合は100%まで合計される)と
から構成されたコポリマー(ただし、前記ポリマーのISO 11357-2,ポイント3.3.3によるガラス転移温度(glass transition temperature)(中心点温度Tmg)は55〜70℃である)が適している。このタイプのコポリマーは、その良好な機械的特性により、特にペレットからタブレットへの圧縮成形のために適している。
【0056】
上記コポリマーは、特に次のラジカル重合した単位から構成されている:
メタクリル酸又はアクリル酸、有利にメタクリル酸20〜33、有利に25〜32、特に有利に28〜31質量%、
メチルアクリラート5〜30、有利に10〜28、特に有利に15〜25質量%、
エチルアクリラート20〜40、有利に25〜35、特に有利に18〜22質量%、
ブチルメタクリラート10より多く〜30、有利に15〜25、特に有利に18〜22質量%、
その際、前記モノマー組成は、コポリマーのガラス転移温度が55〜70℃、有利に59〜66、特に有利に60〜65℃であるように選択される。
【0057】
特別な放出プロフィールもしくは放出位置の調節のために、前記のコポリマーの混合物を使用することもできる。
【0058】
ガラス転移温度とは、特にISO 11357-2,ポイント3.3.3による中心点温度Tmgであると解釈される。この測定は、可塑剤の添加なしで、100ppmより低い残留モノマー含有量(REMO)で、10℃/minの加熱速度でかつ窒素雰囲気下で行われる。
【0059】
このコポリマーは、有利に、主に〜もっぱら、上記の量の範囲で、90、95又は99〜100質量%までモノマーのメタクリル酸、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びブチルメタクリラートからなる。
【0060】
しかしながら、付加的に、本質的な特性に悪影響を及ぼさせずに、少量の、0〜10、例えば1〜5質量%の範囲内で他のビニル系の共重合可能なモノマー、例えばメチルメタクリラート、ブチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ビニルピロリドン、ビニルマロン酸、スチレン、ビニルアルコール、酢酸ビニル及び/又はそれらの誘導体を含有していてもよい。
【0061】
前記のコポリマーは大部分市販されていているか、又は自体公知のように、ラジカルによる塊状重合、溶液重合、パール重合、乳化重合によって得ることができる。このコポリマーは、加工の前に、適当な粉砕、乾燥又は噴霧プロセスにより、本発明による粒度範囲にしなければならない。これは、押し出されかつ冷却された顆粒ストランドの簡単な破砕又はホットカットによって行うことができる。
【0062】
特に、他の粉末又は液体との混合の際に、粉末の使用が有利である。粉末の製造のための適当な装置は当業者には周知であり、例えばエアジェットミル、ピン付きディスクミル、扇形ミルである。場合により、相応する篩別工程を行ってもよい。工業的な大容量の適当なミルは、例えば約6barの加圧で運転されるリバースジェットミル(Multi No. 4200)である。
【0063】
コポリマーの製造
前記の(メタ)アクリラートコポリマーは、モノマーのラジカル重合により得られる(例えばEP 0 704 207 A2及びEP 0 704 208 A2参照)。このポリマーは、公知のように、例えばDE-C 2 135 073に記載の方法によりラジカル乳化重合により水相中で有利にアニオン性乳化剤の存在で製造することができる。
【0064】
有機溶液
前記の(メタ)アクリラートコポリマーは、有機溶液の形で、例えば10〜30質量%の濃度で準備することができる。溶剤として、例えばアセトン、イソプロパノール又はエタノール又はそれらの混合物を使用することができ、これは場合により水の割合を約10質量%までで含有することができる。しかしながら水性分散液が有利である。
【0065】
分散液
前記(メタ)アクリラートコポリマーは、乳化重合体として、有利に10〜50質量%、特に20〜40質量%の水性分散液の形で製造及び適用することができる。市販形態として、30質量%の固体含有量が有利である。加工のために、メタクリル酸単位の部分的中和は不必要であるが、しかしながら、例えばコーティング剤分散液の安定化又は増粘が望ましい場合には、これは5〜10Mol%までの範囲内で可能である。ラテックス−粒子サイズの重量平均値は、一般に40〜100nm、有利に50〜70nmであり、これは加工技術的に望ましい1000mPa・sより低い粘度を保証する。
【0066】
例えば10〜50Mol%までの高い中和度又は完全な中和の場合に、前記コポリマーは溶解した状態に移行することができる。
【0067】
アニオン性コポリマーの溶液を製造するために一般に、酸基の部分的又は完全な中和が必要である。アニオン性コポリマーは、例えば徐々に水中に1〜40質量%の最終濃度で撹拌混合することができ、その際、塩基性物質、例えばNaOH、KOH、水酸化アンモニウム又は有機塩基例えばトリエタノールアミンの添加により部分的に又は完全に中和させることができる。既にその製造の際に(部分)中和の目的で塩基、例えばNaOHが添加されて、粉末が既に(部分)中和されたポリマーであるコポリマーの粉末を使用することも可能である。溶液のpH値は、一般に4を超え、例えば4〜約7の範囲内にある。
【0068】
この分散液は、例えば公知のように噴霧乾燥又は凍結乾燥されていてもよく、再分散可能な粉末の形で提供することができる(例えばEP-A 0 262 326参照)。他の方法は、凍結乾燥又は凝固及び押出機中での水の絞り出しに引き続き造粒である(例えばEP-A 0 683 028参照)。
【0069】
意外にも、噴霧乾燥又は凍結乾燥されかつ再分散された粉末からなるコポリマー分散液は高い剪断安定性を有することが見出された。これは特に吹き付け塗布の場合に有利である。この利点は、特に、分散液中に含まれるコポリマーが2〜10Mol%まで部分中和された形で存在する場合に強化される(コポリマー中に含まれる酸基に対して)。この目的のためにNaOHの添加による部分中和が有利である。アニオン性乳化剤は0.1〜2質量%の量で含まれるのが有利である。乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウムが特に有利である。
【0070】
層厚
外側コーティングの層厚は、有利に20〜200、特に50〜120μmの範囲内にあるのが有利である。
【0071】
本発明の有利な作用
本発明による剤形は、水中でわずかに溶解性の又は溶解性が悪い作用物質の適切でかつ有効な放出のために適している。この剤形は、高い用量信頼性を有しかつ腸管中で良好に分配される。含有される、水中でわずかに溶解性の又は溶解性が悪い作用物質は、この場合、生理的又は酵素的失活に対して十分に保護され、かつ定義された作用箇所で放出され、高い割合の作用物質を身体に吸収させることができる。この剤形は、従って比較的少ない作用物質で十分である、それというのも作用物質はわずかにしか失われないためである。副作用の危険は、適切な放出により全体として低減される。作用箇所は、治療標的に応じて可変に調節することができる。作用物質吸収の時点は、従ってより良好に制御することができる。経口剤形である場合に、この経口剤形は全体として、他の適用剤形と比較して患者により良好に受け入れられる(患者コンプライアンス、"patient compliance")。水中にわずかに溶解性又は溶解性が悪い作用物質の多くは、それにより初めて経口で適用することができ、かつ特に腸管外適用の場合と同様に適用の危険が少ない。この適用のコストも低く維持される、それというのも適用のための専門家が必要ないためである。
【0072】
マトリックス系からの促進された放出と同時に、生物学的利用能も同時に向上することができ、その際、粘膜付着作用を有するポリマーの割合は、質量%で、作用物質の割合よりも2倍、有利に10〜200倍高い。
【0073】
親油性マトリックス
本発明の特別な態様は、作用物質が、37℃を上回る、有利に40℃を上回る、特に有利に45℃を上回る融点(示差走査熱量測定、DSCにより測定)を有する親油性マトリックス中に埋め込まれていて、かつ作用物質含有の親油性マトリックスが、粘膜付着作用を有するポリマーからなるマトリックスに埋め込まれている場合に生じる。親油性マトリックス中の調製は、作用物質、有利にわずかに溶解性の又は難溶性の作用物質(DAB10の範囲内で)の作用物質の溶解性もしくは生物学的利用のを改善することを目的としている。
【0074】
本発明の範囲内で親油性マトリックスとは、作用物質を溶解、懸濁又は乳化させることができる物質又は物質の混合物であると解釈される。親油性マトリックスの1種の物質又は複数の物質は、通常の製剤学的作用物質及び粘膜付着作用を有するポリマーとは異なっている。親油性マトリックスの1種の物質又は複数の物質は、有利に疎水性又は両親媒性特性を有している。親油性マトリックスは、両親媒性マトリックス又はリポイドのマトリックスとも言われる。
【0075】
この親油性マトリックスは、単独の物質、例えば1種の脂質、又は物質の混合物、例えば複数の脂質の混合物からなることができる。混合物の場合に、DAB10による水溶性、分配係数及び/又はHLB値について次に記載された特性は、それぞれ混合物の物質の重量部及び値からの相加平均から算出される。使用された物質は毒性であってはならない。
【0076】
作用物質と親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質とは、DAB10による水中でのその溶解性が有利に+/−50%より大きくは異ならず、有利に+/−25%より大きくは異ならず、及び/又は付録V〜RL 67/548/EWG,A.8によるその分配係数が+/−60%より大きくは異ならず、有利に+/−30%より大きくは異ならず、及び/又は複数の物質の一つが一つのHLB値に分類することができる場合に、Marszallにより測定したそのHLB値が+/−80%より大きくは異ならず、有利に+/−40%より大きくは異ならない。作用物質と親油性マトリックスの適合性が少なくとも1つの、有利に2つの又は全ての3つの前記の特性において高まればそれだけ、剤形中の作用物質の溶解性及び生物学的利用能がより良好になる。
【0077】
水中の溶解性
作用物質及び親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質の水中での溶解性は、DAB10(ドイツ薬局方、第10版、第3付録、1994、Deutscher Apothekerverlag, Stuttgart及びGovi Verlag, Frankfurt a. M.、第2付録(1993)、IV一般規定、第5〜6頁、"Loeslichkeit und Loesungsmittel"; s. a. Ph. Eur. 4.07, 2004)により規定することができる。溶解性のこの定義は、物質もしくは薬物1質量部に対して溶剤の体積部の数値に関して行われる。「わずかに溶解性」の定義は、物質もしくは薬物1質量部に対して溶剤30質量部より高く〜100まで体積部を必要とする物質を表し、「難溶性」の定義は、物質もしくは薬物1質量部に対して溶剤100体積部より高く〜1000部までを必要とする物質を表す。
【0078】
分配係数
作用物質及び親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質についての分配係数は、付録V〜RL 67/548/EWG,A.8, "Verteilungskoeffizient"により規定することができる。
【0079】
HLB値
HLB値は、1950年にGriffinにより紹介された、非イオン性界面活性剤の親水性もしくは親油性の基準である。この値は実験的にMarszallによるフェノール滴定法により決定される;"Parfuemerie, Kosmetik", 60巻、1979、第444〜448頁参照;他の文献Roempp, Chemie-Lexikon,第8版、1983、第1750頁。更に、例えばUS 4 795 643(Seth)参照。HLB値(親水性/親油性バランス)は、非イオン性物質の場合にのみ正確に決定できる。アニオン性物質の場合には、この値は計算により測定することができるが、実際には常に14を超えるか又は14をはるかに超える。
【0080】
この作用物質及び親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質についてのHLB値は、たいていの場合Marszallにより測定することができ、製剤学的又は化学的参考文献又は教書の表から引用することができるか、又はイオン性物質の場合には計算により測定することができる。
【0081】
親油性マトリックス中の作用物質
有利に、剤形は親油性マトリックス中に作用物質を含有し、前記作用物質は、作用物質1質量部に対して水少なくとも30体積部、特に30体積部より高く〜100体積部まで、又は100体積部より高く〜1000体積部までの、DAB10による水中での溶解性を有する。有利な作用物質は、従って、DAB10の定義によりわずかに溶解性又は難溶性である。
【0082】
親油性マトリックス中に調製される作用物質は、例えばBCSクラスII及びIV(Amidon教授による生物薬剤学分類系)のグループから選択することができる。BCSクラスの作用物質は、当業者に公知である。親油性マトリックス中に調製される作用物質は、例えば抗アンドロゲン、抗抑鬱剤、抗糖尿病薬、抗リューマチ薬、グルココルチコイド、細胞分裂抑制剤、偏頭痛薬、神経弛緩剤、抗生物質、エストロゲン、ビタミン、向精神薬、ACE阻害剤、β遮断薬、Caチャンネル遮断薬、利尿剤、強心配糖体、抗てんかん薬、利尿剤/抗緑内障薬、尿酸形成抑制剤、H2レセプター遮断薬及びウイルス抑制剤のグループから選択することができる。
【0083】
親油性マトリックス中に調製される作用物質は、例えばビカルタミド、アナストロゾール、グリミプリド(Glimiprid)、ニルタミド、ブロモクリプチン、ケトチフェン、レトロゾール、ナラトリプタン、ガンシクロビル、オリスタット、メソプロスズトール(Mesoprosztol)、グラニストロン、ピオグリタゾン、ラミブジン、ロシグリタゾン、ジドブジン、エナラプリル、アテノロール、ナドロール、フェロジピン、ベプリジル、フロセミド、ジゴキシン、ジギトキシン、カルバマゼピン、アセタゾラミド、アロプリノール、シメチジン、ラニチジン、オキサカルバゼピンであることができる。
【0084】
親油性マトリックス/粘膜付着作用を有するポリマー
有利な実施態様の場合には、親油性マトリックスと粘膜付着作用を有するポリマーとの可能な相互作用も考慮される。制御することができない相互作用を避けるために、親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質と粘膜付着作用を有するポリマーとは、有利に同じイオン特性を有する、つまり両方とも一致して、少なくともカチオン性が上回る特性を有するか、一致してアニオン性の特徴を有するのが好ましい。反対のイオン特性を有する物質を選択する場合には、粘膜付着作用を有するポリマーは、有利に少なくとも50%まで、特に有利に100%まで中和された形で存在するのが好ましい。この中和は、酸又は塩基の添加により公知のように行うことができる。
【0085】
親油性マトリックスを構成するための1種又は数種の物質
有利に親油性マトリックスは、80〜100質量%まで、有利に90〜100質量%まで、特に有利に100質量%まで、(平均)HLB値0〜15、有利に2〜10を有する物質からなるか又は前記物質の混合物からなる。親油性マトリックスは、製剤学的に通常の助剤、特に安定剤、増粘剤又は吸着剤0〜20、有利に0〜10質量%を含有することができる。特に有利に、製剤学的に通常の助剤は含まれない。
【0086】
親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質は、例えば、油、脂肪、モノ−、ジ−又はトリグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール、特にC5〜C20−脂肪酸及び/又はC5〜C20−アルコール(その塩、エーテル誘導体、エステル誘導体又はアミド誘導体を含める)、リン脂質、レシチン、乳化剤、リポイド、脂溶性ビタミン又は界面活性剤のグループに属することができる。
【0087】
親油性マトリックスは、例えば次のピリド調製物を含有することができる:(Imwitor 308)>80%のモノエステル割合を有するグリセリルモノカプリラート、(Imwitor 312)>90%のモノエステル割合を有するグリセリルモノラウラート、(Imwitor 491)>90%のモノエステル割合を有するグリセロールモノステアラート(C16+C18)、(Imwitor 900 P)40〜55%のモノエステル割合を有しかつ40〜60%のC18含有率を有するグリセロールモノステアラート、(Imwitor 900 K)40〜55%のモノエステル割合を有しかつ60〜80%のC18含有率を有するグリセロールモノステアラート、(Imwitor 742)45〜55%のモノエステル割合を有する中鎖長のC8〜C10グリセリド、(Imwitor 928)C12を主成分としかつ34〜36%のモノエステル割合を有する植物系の飽和C10〜C18脂肪酸の部分グリセリド、C8及びC10グリセリド、カプリル酸Na又はカプリン酸Na。
【0088】
親油性マトリックスは、例えば次のピリド調製物を含有することができる:
親油性マトリックスは、脂肪又はリピド、例えば飽和又は不飽和脂肪酸のモノ−、ジ−、トリグリセリドの単一成分又は混合物からなることができる。特に、グリセリン−ステアリン酸エステル、グリセリン−パルミチン酸エステル、グリセリン−ミリスチン酸エステル、グリセリン−パルミチン酸−ステアリン酸エステル、グリセリン−ラウリン酸エステル、グリセリン−カプリル酸エステル、グリセリン−油酸エステル、このエステルの例は、Imwitor(R) - 308, - 312, - 491, 742, - 900, - 928, - 988並びにGelucire (R) 44/14, - 50/13, Geleol, Compritol E ATO, Dynasan 114, Softisan, Witepsol, Dynacet 212,ココヤシ脂肪である。
【0089】
ロウ、例えばカルナバロウ、蜜ロウ、羊毛ロウ、グリセリンベヘン酸エステル。
【0090】
油、例えばヒマシ油、ゴマ油、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油、扁桃油、落花生油、オリーブ油、ココヤシ油、キャロット油、小麦胚芽油、ウォールナッツ油。
【0091】
ニュートラルオイル、例えばイソプロピルミリスタート、−パルミタート、−ステアラート、中鎖長グリセリド(Miglyol(R))。
【0092】
脂肪アルコール、例えばステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチンアルコール、グリセリンホルマール。
【0093】
脂肪酸アミド、例えばステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド。
【0094】
短鎖長の脂肪族及び芳香族カルボン酸エステル、例えばジブチルフタラート、ジエチルセバカート、ジブチルセバカート、トリブチルシトラート、アセチルトリブチルシトラート、グリセリントリアセタート。
【0095】
脂肪族長鎖長のカルボン酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、油酸、カプリル酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸。並びに例えばそれらのNa塩、Al塩及びMg塩。
【0096】
脂肪族の短鎖長及び中鎖長のカルボン酸、例えば吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸。
【0097】
並びに例えばそれらのNa塩、Al塩及びMg塩。
【0098】
W/O乳化剤、例えばコレステロール、グリセリンモノステアラート、エチレングリコールモノステアラート、ソルビタンモノオレアート(Span(R) 80)、−パルミタート(Span(R) 40)、−ラウラート(Span(R) 20)、−ステアラート(Span(R) 60)、ソルビタントリオレアート(Span(R) 85)、ソルビタントリステアラート(Span(R) 65)、ソルビタンセスキオレアート(Arlacel(R) 83)、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Al、ステアリン酸Mg、ポリオキシエチレンソルビタントリステアラート(Tween(R) 65)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート(Tween(R) 85)。
【0099】
非イオン性O/W乳化剤、例えばマクロゴルステアラート400(Chremophor(R) A)、マクロゴルラウリルエーテル、ポリエチレングリコール−20−ソルビタンモノラウラート、−ステアラート、−パルミタート、−オレアート、マクロゴル−1500−グリセリントリリシノエラート、マクロゴル−グリセリンヒドロキシステアラート(Cremophor(R) RH)、マクロゴル−1000−グリセリンモノラウラート、−ステアラート、−オレアート、サッカロースモノステアラート。ポリソルベート60(Tween(R) 60)、ポリオキシエチレンモノステアラート(Myrj 49)、ポリソルベート80(Tween(R) 80)、ポリソルベート40(Tween(R) 40)、ポリソルベート20(Tween(R) 20)、ポリオキサマー407(Lutrol(R) F 127)、ポリオキサマー188(Lutrol(R) F 68)、ポリオキシエチレンリシノラート(Cremophor(R) EL)、ポリオキシエチレン−5−ステアリルステアラート、
イオン性O/W乳化剤、例えばセチルステアリルスルファート(Lanette(R) E)、Naラウリルスルファート(Texapon(R) Z)、Naグリココラート、ヘデラゲニン、
両親媒性乳化剤、例えばリン脂質、レシチン、卵ホスファチジルコリン(卵レシチン)、大豆ホスファチジルコリン(大豆レシチン)、ベタイン、スルホベタイン、セラミド(スフィンゴミエリン)、
ビタミン、例えばレチノール(ビタミンA)、コレカルシフェロール(ビタミンD)、アルファ−トコフェロール及びアルファ−トコフェロールアセタート(ビタミンE)及びそれらの誘導体、フィロキノン(ビタミンK)、
ガラクトリピド、例えばモノガラクトシル−ジアシルグリセリン、ジガラクトシル−ジアシルグリセリン、トリガラクトシル−ジアシルグリセリン、
芳香油、例えばアニス油、シトロネラ油、ユーカリ油、ウイキョウ油、カモミール油、カルダモン油、松葉油、キャラウェー油、ハイマツ油、ラベンダー油、ミント油、ナツメグ油、チョウジ油、ペパーミント油、ローズマリー油、サルビア油、
テルペン、例えばメントール、リナロオール、1,4−シネオール、ピレトリン、ボルネオール、オイデスモール、フィトール、マノオール、アザジラクチン、ニンビン、
これらは、所望の溶解性、分配係数(油/水の分配係数としても公知)又はHLB値の調節のために特有に個々に又は混合物として選択することができる。
【0100】
有利に、作用物質は、少なくとも10%、特に有利に少なくとも20%、特に少なくとも50%まで親油性マトリックス中に溶ける。
【0101】
内側のマトリックス層a)についての作用物質含有の親油性マトリックスの含有量は、有利に5〜60、特に有利に10〜50質量%であることができる。
【0102】
有利に、親油性マトリックスは、グリセリンモノカプリラート少なくとも50質量%まで、コール酸Na10質量%まで、トコフェロールスクシナート10質量%まで、エフラックスポンプ阻害剤1〜5質量%を、作用物質がPgpエフラックスポンプの基質、例えば、Solutol HS 15、トリグリセリド、特にトリステアラートである場合に含有し、その際、これらの成分は100%まで添加される。この親油性マトリックスは、粘膜付着性ポリマー中に直接混入することができるか、又は水中に乳化させて粘膜付着性ポリマーに混入することができる。後者の場合に、水相は弱酸、例えばクエン酸を有していてもよい。
【0103】
方法
プレペレット及びペレットの製造
この造粒は、作用物質不含の球(ノンパレル)に行ってもよく又はコア不含のペレットを製造してもよい。
【0104】
まず、コアあり又はコアなしで内側のマトリックス層を作成する。このなおコーティングされていない、丸められた層はプレペレットといわれる。
【0105】
中性のコアなしの実施
まず、作用物質を親油性マトリックス中に溶解、分散又は混合させる。このために、全ての公知の製剤学的方法が適用可能である。次いで、マトリックスのどの程度の親油性及び化学的−物理的特性が許容されるかによって、親油性マトリックスを水性媒体中に乳化又は分散又は溶解させる。
【0106】
水性媒体として、単なる水を用いるか、又は酸、弱塩基及び塩の水性調製物を使用する。例えば15%の酢酸溶液。
【0107】
こうして得られたエマルション、分散液又は溶液は、粘膜付着性ポリマーを更にペレットの形に加工するための結合剤として利用される。
【0108】
内側のマトリックス層a)の合わせられた内容物を、回転アグロメレーション、析出、押出、造粒又は吹き付け法のような方法により、特に超音波流動層吹き付け法により丸めて、例えば50〜1000μmの定義されたサイズのなおコーティングされていないペレット(プレペレット)にすることができる。全体のペレット体積は作用物質負荷のために提供されるのが有利である。
【0109】
次の段落では、回転アグロメレーションの例に関する実施を説明する。ローター取付部材を備えた流動層装置(例えばGlattのGPCG1)中に、粘膜付着性ポリマー粉末を微結晶セルロース粉末(MCC)と共に装入する。MCCの割合は、全体の粉末分の50%までであることができる。エアフローもしくはローター取付部材を始動し、結合剤を吹き付ける。それにより、水相が粘膜付着性ポリマーを膨潤させ、MCCの加湿を引き起こし、これは、ローター取付部材の遠心力によるプレペレットの形成のために必要である。このMCCの割合は材料の改善された成形性のために利用され、従って、生じるプレペレットの物理的特性(例えば密度、耐摩耗性、形状等)の調節のためにも利用される。生成プロセスの間に、結合剤の親油性成分は粉末粒子の表面に分配され、かつそれによりマイクロドメインの形でペレット中に均質に分配もしくは埋め込まれる。
【0110】
中性のコアを用いた実施態様
この実施態様の場合には、作用物質の親油性及び/又は両親媒性溶液を、既に粘膜付着性ポリマーを(分散液又は溶液として)含有する水性媒体中に乳化、分散又は溶解させる。このエマルション、分散液又は溶液を、次いで中性のコア上に公知の流動層装置を用いて吹き付け、層として形成させる。前記混合物の十分な噴霧性を保証するために、たいていの場合、低い粘度を有する混合物を調製する必要がある。この目的のために、粘膜付着作用を有するポリマーは比較的低い濃度で、例えば1〜高くても10、有利に2〜5質量%に調節されるのが好ましい。更に、界面活性剤、例えばTweenの0.1〜20、有利に0.5〜10質量%の濃度での添加は、表面張力を低減するために有利である。
【0111】
作用物質の他に、これは更に次のような製剤学的な助剤を含有することができる:結合剤、例えばセルロース及びその誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、湿度保持剤、崩壊促進剤、滑剤、崩壊剤、(メタ)アクリラート、デンプン及びその誘導体、糖可溶化剤等。
【0112】
相応する塗布方法は、例えばBauer, Lehmann, Osterwald, Rothgang著、「Ueberzogene Arzneiformen」、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgart, 第7章、第165〜196頁から公知である。
【0113】
詳細は、当業者に更に次の教書から公知である。例えば次のものを参照:
− Voigt, R.著(1984):Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie;Verlag Chemie Weinheim - Beerfield Beach/Florida - Basel.
− Sucker, H., Fuchs, P., Speiser, P.著:Pharmazeutische Technologie, Georg Thieme Verlag Stuttgart (1991),特に第15章及び第16章、第626頁〜第642頁.
− Gennaro, A.,R. (編者), Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton Pennsylvania (1985), 第88章、第1567頁〜第1573頁.
− List, P. H.(1982)著: Arzneiformenlehre, Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH, Stuttgart.
内側のマトリックスコア(もしくはプレペレット)の製造後に、これを再び有利に吹き付け法で外側コーティングを設け、完成されたペレットが得られる。ペレットの製造は、有機溶液又は有利に水性分散液から吹き付け塗布によって行われる。この実施のために、この場合に均質でかつ無孔性のコーティングを得ることが重要である。
【0114】
トップコート
ペレットは、付加的に顔料添加されたコーティングが設けられていてもよいが、このコーティングは溶解−pH値に影響を及ぼしてはならない。例えば顔料添加されたヒドロキシプロピルメチルセルロース又は他の水溶性又は水中で急速に崩壊するポリマーからなるコーティングが適している。
【0115】
製剤学的に通常の助剤
本発明による調製物は、その製造の際に通常の助剤もしくは添加物を添加されていてもよい。根本的に無論、全ての使用した物質は毒物学的に問題なく、かつ特に製剤中で患者への危険なしに使用されることが必要である。
【0116】
製剤コーティング又は被覆中の前記の通常の助剤の使用量及び使用は、当業者に公知である。通常の添加物は、例えば可塑剤、離型剤、顔料、安定剤、酸化防止剤、細孔形成剤、浸透促進剤、光沢剤、芳香剤、界面活性剤、滑剤又は矯味剤であってよい。これらは、投与助剤として用いられ、かつ確実でかつ再現可能性のある製造方法並びに良好な長期貯蔵安定性を保証するか又はこれらは前記剤形中で更に有利な特性を達成することが望ましい。これらはこの投与前に前記ポリマー調製物に添加され、かつ前記コーティングの透過性に影響を及ぼし、これを場合により付加的な制御パラメーターとして利用してよい。
【0117】
剥離剤:
剥離剤は、通常は親油性特性を有し、かつ通常は吹付け懸濁物に添加される。これらは、フィルム化の間の前記コアの凝集を妨げる。有利には、タルク、Mg−ステアラート又はCa−ステアラート、粉砕したシリカ、カオリン又は、HLB値3〜8を有する非イオン性の乳化剤が使用される。本発明によるコーティング剤及び結合剤中の離型剤の通常の使用量は、前記コポリマーに対して0.5〜100質量%である。
【0118】
顔料:
これらのコーティング剤と不適合の顔料は特に、(メタ)アクリラート−コポリマー分散体に直接的に、例えば混和により添加される場合に、前記(メタ)アクリラートコポリマーの乾燥質量に対して、例えば20〜400質量%の通常の適用量において、前記分散体の不安定化、凝結、分離現象又は類似した不所望な効果を生じる顔料である。更に、この使用すべき顔料は無論、毒性がなく、かつ医薬的な目的に適する。これに関して、例えば以下を参照:Deutsche Forschungsgemeinschaft, Farbstoffe fuer Lebensmittel, Harald Boldt Verlag KG, Boppard (1978); Deutsche Lebensmittelrundschau 74, 4号, 156頁 (1978); Arzneimittelfarbstoffverordnung AmFarbV ,1980.08.25。
【0119】
前記コーティング剤と不適合である顔料は例えば、酸化アルミニウム顔料であってよい。不適合の顔料は例えば、イエローオレンジ、コチニールレッド塗料、酸化アルミニウムベースの色素顔料、又はアゾ色素、スルホン酸色素、イエローオレンジS(E110、C.I.15985、FD&Cイエロー6)、インジゴカルミン(E132、C.I.73015、FD&Cブルー2)、タルトラジン(E102、C.I.19140、FD&Cイエロー5)、ポンソー4R (E125、C.I.16255、FD&CコチニールレッドA)、キノリンイエロー(E104、C.I.47005、FD&Cイエロー10)、エリスロシン(E127、C.I.45430、FD&Cレッド3)、アゾルビン(E122、C.I.14720、FD&Cカルモイシン)、アマランス(E123、C.I.16185、FD&Cレッド2)、ブリリアントアシドグリーン(E142、C.I.44090、FD&CグリーンS)である。
【0120】
前記顔料の上述のE−値は、EU−番号表示に関連する。これについては次のものも参照:Deutsche Forschungsgemeinschaft, Farbstoffe fuer Lebensmittel, Harald Boldt Verlag KG, Boppard (1978); Deutsche Lebensmittelrundschau 74, 4号, 156頁 (1978); Arzneimittelfarbstoffverordnung AmFarbV ,1980.08.25。このFD&C−番号は、U.S. Food and Drug Administration, Center for Food Safety and Applied Nutrition, Office of Cosmetics and Colors: Code of Federal Regulations - Title 21 Color Additive Regulations Part 82, Listing of Certified Provisionally Listed Colors and Specifications (CFR 21 Part 82)に記載されたU.S. Food and Drug Administration (FDA)による食品、薬品及び化粧品における認可に関している。
【0121】
可塑剤
他の添加物は、可塑剤であってもよい。通常の量は、0〜50、有利に2〜20、特に5〜10質量%である。
【0122】
可塑剤は、種類(親油性又は親水性)及び添加した量に応じて、前記ポリマー層の機能性に影響を及ぼしてよい。可塑剤は、前記ポリマーとの物理的な相互作用により、このガラス転移温度の降下を生じ、この添加量に依存せずにこの皮膜形成を促進する。適した物質は通常、100〜20000の分子量を有し、かつ親水基、例えばヒドロキシル基、エステル基又はアミノ基を1分子中に1個以上含有する。
【0123】
適した可塑剤の例は、クエン酸アルキルエステル、グリセリンエステル、フタル酸アルキルエステル、セバシン酸アルキルエステル、サッカロースエステル、ソルビタンエステル、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート及びポリエチレングリコール200〜12000である。有利な可塑剤はトリエチルシトラート(TEC)及びアセチルトリエチルシトラート(ATEC)である。更に通常室温で液状のエステル例えばシトラート、フタラート、セバケート又はひまし油を挙げることができる。有利にはクエン酸エステル及びセバシン酸エステルが使用される。
【0124】
前記調製物への前記可塑剤の添加は公知の方法で、水溶液中に直接又は前記混合物の熱的な前処理後に実行されてよい。可塑剤の混合物も使用してもよい。
【0125】
多粒子の剤形の製造
この作用物質含有のコーティングされたペレットは、製剤学的に通常の助剤を用いて、自体公知のように多粒子の剤形、特にペレット含有のタブレット、ミニタブレット、カプセル、サシェ又はドライシロップに加工することができ、これらは、含まれるペレットが胃のpH領域で遊離されるように調製されている。多粒子の剤形としてのこの製造は高い用量信頼性を提供し、腸管中でのペレットの良好な分配の利点を提供する。本発明による多粒子の剤形は、更に異なる作用物質及び/又は異なるペレット構造を有する多様なペレットタイプを含有していてもよい。
【0126】
圧縮成形されたタブレット
製剤学的に通常の結合剤と作用物質含有粒子との圧縮成形による多粒子の剤形の製造は、例えばBeckert et al.著、"Compression of enteric-coated pellets to disintegrating tablets", International Journal of Pharmaceutics 143, 第13〜23頁及びWO 96/01624に記載されている。
【0127】
作用物質含有ペレット上のフィルムコーティングは、通常では流動層装置中で塗布される。配合例は本願明細書中に記載されている。皮膜形成剤は、通常では可塑剤と離型剤とを適当な方法により混合する。この場合、前記皮膜形成剤は溶液又は懸濁液として存在してもよい。この皮膜形成剤用の助剤は、同様に溶解又は懸濁されていてもよい。有機又は水性の溶剤又は分散剤を使用することができる。この分散液の安定化のために、更に安定剤を使用することができる(例えば:Tween 80又は他の適当な乳化剤もしくは安定剤)。
【0128】
離型剤の例は、グリセロモノステアラート又は他の適当な脂肪酸誘導体、シリカ誘導体又はタルクである。可塑剤の例は、プロピレングリコール、フタラート、ポリエチレングリコール、セバカート又はシトラート、並びに他の文献に記載された物質である。
【0129】
作用物質含有層と腸溶性コポリマー層との間に、分離層が設けられていてもよく、この分離層は相互作用を抑制する目的で作用物質と被覆剤とを分離するために用いられる。この層は、不活性な皮膜形成剤(例えばHPMC、HPC又は(メタ)アクリル酸−コポリマー)又は例えばタルク又は他の適当な製剤学的物質からなることができる。同様に、皮膜形成剤及びタルク又は同様の物質からなる組合せを使用することもできる。
【0130】
部分的に又は完全に中和された(メタ)アクリラートコポリマー−分散液からなる分離層を塗布することもできる。
【0131】
中間層a)及び外側の皮膜形成するコーティング層b)との間に分離層を設けることができる。前記分離層は、下層と同様の又は下層と異なる粘膜付着性ポリマーからなることもできる。このように、作用物質又は粘膜結合性ポリマーの場合による相互作用又は不適合性に皮膜形成する(メタ)アクリラートコポリマー層で対処することができる。
【0132】
コーティングされた粒子からなるタブレットを製造するための混合物は、ペレットを、タブレット化のための適当な結合剤と混合し、必要な場合に崩壊促進物質を添加し、必要な場合に潤滑剤を添加することにより調製される。この混合は、適当な装置中で行うことができる。コーティングされた粒子の損傷を引き起こすミキサー、例えば鋤刃型ミキサーは適していない。適当な短い崩壊時間を達成するために、コーティング粒子に助剤を添加する場合に特別な順序が必要なこともある。コーティングされた粒子に潤滑剤又は離型剤のステアリン酸マグネシウムと予備混合することにより、この表面を疎水化し、それにより粘着を回避することができる。
【0133】
タブレット化のために適した混合物は、通常では崩壊助剤、例えばKollidon CL 3〜15質量%及び例えば潤滑剤及び離型剤、例えばステアリン酸マグネシウム0.1〜1質量%を含有する。結合剤の割合は、コーティングされた粒子の必要な割合によって決定される。
【0134】
典型的な結合剤は、例えば、Cellactose(R)、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、Ludipress(R)、ラクトース又は他の適当な糖、硫酸カルシウム又はデンプン誘導体である。嵩密度が低い物質が適している。
【0135】
典型的な崩壊助剤(崩壊剤)は、架橋デンプン誘導体又はセルロース誘導体、並びに架橋ポリビニルピロリドンである。同様にセルロース誘導体が適している。適当な結合剤の選択により崩壊剤の使用を省略できる。
【0136】
典型的な潤滑剤及び離型剤は、ステアリン酸マグネシウム又は他の適当な脂肪酸の塩又は文献中にこの目的のために記載された物質(例えば、ラウリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク等)である。適当な装置(例えば、外部潤滑を備えたタブレット成形装置)又は適当な調製物の使用の際に、混合物中での潤滑剤及び離型剤の使用は省略できる。
【0137】
この混合物は、場合により流動性を改善するための助剤が添加されていてもよい(例えば高分散性シリカ誘導体、タルク等)。
【0138】
このタブレットは、通常のタブレット成形装置、偏心−又は回転タブレット成形装置で行うことができ、圧縮圧力は5〜40kN、有利に10〜20kNの範囲内にある。このタブレット成形装置は、外部潤滑のためのシステムを備えていてもよい。場合により、マトリックス充填のために特別なシステムを使用し、撹拌羽根を用いたマトリックス充填は避けられる。
【0139】
他の多粒子の剤形
圧縮成形すべきタブレット又はミニタブレットとは別に、作用物質含有の、コーティングされたペレットも任意な、他の経口投与可能な多粒子の剤形に加工することができる。このコーティングされたペレットは、例えばカプセル、例えばゼラチンカプセル中に充填することができるか、又はサシェ又はドライシロップに調製することができる。
【0140】
多粒子の剤形の製造方法
本発明は、次の工程
a) 親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質及び場合により他の製剤学的に通常の助剤と作用物質とを、前記内容物の強力混合又は溶融により懸濁及び/又は溶解させることにより作用物質含有の親油性マトリックスを製造する工程、
b) 粘膜付着性ポリマーを作用物質含有の親油性マトリックスを有する混合物の形でコアに吹き付け塗布することにより、又はコアなしで回転アグロメレーション、析出又は吹き付け法(その際、例えば粘膜付着性ポリマーは粉末として存在させることができる)によりプレペレット(ペレットコア)を製造する工程、
c) 場合により製剤学的に通常の助剤、特に可塑剤及び離型剤の添加物を含有することができるアニオン性ポリマー又はコポリマーのコーティングを、工程b)からのプレペレットに分散液又は有機溶液から吹き付け塗布することによりペレットを製造する工程、
d) 工程c)からのペレットを自体公知のように、場合により製剤学的に通常の助剤を使用して充填又は混合することにより、特にペレット含有のタブレット、ミニタブレット、カプセル、サシェ又はドライシロップに加工することにより多粒子の剤形を製造する工程
を有する、多粒子の剤形の製造方法にも関する。
【0141】
有利な方法
有利に、方法工程a)及びb)は次のように実施される:
a) 親油性マトリックス用の1種又は数種の物質及び場合により他の製剤学的に通常の助剤と作用物質とのエマルション、分散液又は溶液を製造し、前記内容物を水中で強力に混合して60μmを超えない、有利に20μmを超えない平均粒子サイズを有する水中油型の調製物を作成することにより内部マトリックス層を製造する工程、
b) 場合により他の製剤学的に通常の助剤の添加物を含有することができる粘膜付着性ポリマー上に、工程a)からの水中油型調製物を吹き付け塗布して、回転アグロメレーション、押出又は造粒することにより、前記内容物が例えば10〜100μmの平均粒度を有する微細化された粉末の形で存在するプレペレットを製造する工程。
【0142】
本発明の有利な作用
本発明による剤形は、わずかに溶解性の作用物質(その際、ペプチド及びタンパク質(その誘導体又は複合体を含める)を除く)の適切でかつ有効な放出のために適している。この剤形は、高い用量信頼性を有しかつ腸管中で良好に分配される。含まれる作用物質は、この場合、生理学的、化学的又は酵素的な失活に対して十分に保護されていて、かつ定義された作用箇所で放出されて、高い割合の作用物質を身体に吸収させることができる。この剤形は、従って比較的少ない作用物質で十分である、それというのも作用物質はわずかにしか失われないためである。副作用の危険は、適切な放出により全体として低減される。作用箇所は、治療標的に応じて可変に調節することができる。作用物質吸収の時点は、従ってより良好に制御することができる。経口剤形である場合に、この経口剤形は全体として、他の適用剤形と比較して患者により良好に受け入れられる(患者コンプライアンス、"patient compliance")。わずかに溶解性の作用物質の多くは、それにより初めて経口で適用することができ、かつ特に腸管外適用の場合と同様に適用の危険が少ない。この適用のコストも低く維持される、それというのも適用のための専門家が必要ないためである。
【0143】
マトリックス系からの促進された放出と同時に、生物学的利用能も同時に向上することができ、その際、粘膜付着作用を有するポリマーの割合は、質量%で、作用物質の割合よりも2倍、特に有利に10〜200倍高い。
【0144】
実施例
作用物質含有の親油性マトリックスを用いた実施態様の例
実施例1
(ジドブジン;作用物質1部に対して水少なくとも50部のDAB10による水中での溶解性;20g/lに相当)。
【0145】
a) 親油性相の準備
Inwitor 312(融点55〜60℃)150gを、水浴中で65℃で溶融させ、Poloxamer 407(Lutrol F127、融点50〜55℃)75gを前記溶融物中にゆっくりと混入した。前記水浴を52℃に冷却し、酢酸トコフェロール12.5g及びNaグリココラート5gを撹拌しながら添加した。それにより、前記脂肪を再び凝固させることなく、浴温度を更に5℃低下させることができた。従って、生じた親油性マトリックスは38〜41℃の融点を有し、個々の成分から計算されたDAB10による水中での溶解性は親油性マトリックス1部に対して水少なくとも40部(25g/lに相当)を有していた。この溶液にジドブジン500gを撹拌しながら添加した。
【0146】
b) 分散液の製造
蒸留水1500mlをまず45℃に加熱し、カプリン酸Na30gを乳化剤(2%)として添加した。この溶液を、次いでクエン酸の添加でpH値約7.0に調節した。この溶液に、次いで強力に撹拌しながら前記親油性相を分散させた。顕微鏡により観察して50〜60μmより大きい親油性粒子が確認されなければ、前記分散プロセスを完了することができる。
【0147】
c) 粘膜付着性コアの製造
ローター取付部材を備えたGPCG1中で、アルギン酸Na粉末700g、微結晶セルロース285g、クエン酸15gを混合した。b)に記載された分散液を、結合剤として回転アグロメレーションプロセスにおいて約90g/minの吹き付け速度で吹き付けた。ローターを1700〜1800rpmに、供給空気を42m3/時間に、及び空気の温度を30℃に調節した。
【0148】
この条件下で、250〜600μmの粘膜付着性コアを80%までの収率で製造することができる。
【0149】
250mgの治療用量はペレットコア886mg中に含まれる。
【0150】
d) コーティングされたペレットの製造
c)からのペレットコアを、通常の流動層法で、EUDRAGIT(R) FS 30D*でコーティングした。このポリマー被覆は、コア質量に対して40質量%である。コーティングのための分散液/懸濁液は次の成分からなる:
EUDRAGIT(R) FS 30D 44.65%
トリエチルシトラート 0.67%
Polysorbat 80 0.26%
グリセリンモノステアラート 0.67%
水 53.75%。
【0151】
こうして得られたペレットは、通常の製剤学的な方法及び助剤を用いてタブレットに圧縮成形するか又はカプセル中に充填することができる。
【0152】
*=EUDRAGIT(R) FS 30 Dは、EUDRAGIT(R) FS(メチルアクリラート65質量%、メチルメタクリラート25質量%及びメタクリル酸10質量%からなるコポリマー) 30質量%を含有する分散液である。
【0153】
実施例2
(ロシグリタゾン;作用物質1部に対して水少なくとも1000部のDAB10による水中での溶解性;1g/lに相当)。
【0154】
a) 親油性相の準備
Imwitor 312(溶融温度55〜60℃)13gを、Poloxamer 407(Lutrol F127、溶融温度50〜55℃)4gと一緒に水浴中で65℃で溶融させた。引き続き、カプリル酸1g、カプリル酸Na1g及び酢酸トコフェロール1gを撹拌しながら添加した。従って、生じた親油性マトリックスは40〜48℃の融点を有し、個々の成分から計算されたDAB10による水中での溶解性は親油性マトリックス1部に対して水少なくとも700部(1.5g/lに相当)を有する。前記溶液を45℃に冷却した後、ロシグリタゾン2.9gを急速撹拌下で親油性相中に混入しかつ冷却した。
【0155】
b) 粘膜付着性分散液の製造
キトサン20gを水1000g中に分散させ、引き続き極めて急速に撹拌しながらクエン酸20gを分散させた。得られた透明で黄色がかった粘性の溶液中に、急速に撹拌しながらドデカン酸Na 2gを添加し、1h更に撹拌した。
【0156】
c) 吹き付け懸濁液の製造
a)からの得られた分散液をウルトラテュラックス(20000rpm)で、b)からのキトサン−シトラート分散液と一緒に、氷浴を用いて10℃までに更に冷却しながら少なくとも10min分散させた顕微鏡により観察して50〜60μmより大きい親油性粒子が確認されなければ、前記分散プロセスを完了することができる。
【0157】
c) 粘膜付着性コアの製造
c)からの懸濁液をGPCG1(Glatt)を用いて10〜12g/min/kgの吹き付け速度で、400〜600μmの中性のペレット250gに30℃の供給空気温度で吹き付けた。供給空気は、この場合45〜50m3/hに調節した。
【0158】
収率はこの場合90%であった。8mgの治療用量はペレットコア179mg中に含まれる。
【0159】
d) コーティングされたペレットの製造
こうして得られたペレットを、通常の流動層法でEUDRAGIT(R) L12.5でコーティングした。このポリマー被覆は、コア質量に対して40質量%である。コーティングのための懸濁液は次の成分からなる:
EUDRAGIT(R) L12.5 53.3%
トリエチルシトラート 1.33%
イソプロパノール 38.3%
タルク 2.0%
水 5.0%。
【0160】
こうして得られたペレットは、通常の製剤学的な方法及び助剤を用いてタブレットに圧縮成形するか又はカプセル中に充填することができる。
【0161】
実施例3
(オキサカルバゼピン;作用物質1部に対して水少なくとも10000部のDAB10による水中での溶解性;0.1g/lに相当)。
【0162】
a) 親油性相の準備
Imwitor 312(溶融温度55〜60℃)200g及びDynasan 114(溶融温度55〜58℃)400gを、酢酸トコフェロール30gと65℃で溶解させ、造粒機(Bohle)中に入れた。これに、カプリル酸Na 20gを撹拌しながら添加した。この混合物を45℃に冷却し、その中にオキサカルバゼピン940gを溶かした。従って、生じた親油性マトリックスは39〜46℃の融点を有し、個々の成分から計算されたDAB10による水中での溶解性は親油性マトリックス1部に対して水少なくとも7000部を有する。この親油性マトリックスは冷却しながら50μmより低い粒子サイズにまで粉砕した。
【0163】
b) 緩衝液の製造
クエン酸Na 1g及びクエン酸1gを水500g中に溶かした。急速に撹拌しながら、コール酸Na 0.5gを添加した。
【0164】
c) 造粒
a)からの粉砕された作用物質含有の親油性マトリックスを、造粒機中でBlanose 7LF 1500gと混合した。引き続き、b)からの水性緩衝液と一緒に造粒して、0.2〜0.5mmのサイズの粒子が得られ、これを球状化装置で丸めた。得られた湿ったコアを30〜25℃で流動層乾燥装置中で穏和に乾燥させた。300mgの治療用量はペレットコア837mg中に含まれる。
【0165】
d) コーティングされたペレットの製造
c)から得られたコアを、通常の流動層法で、EUDRAGIT(R) FS 30Dでコーティングした。このポリマー被覆は、コア質量に対して40質量%である。コーティングのための分散液/懸濁液は次の成分からなる:
EUDRAGIT(R) FS 30D 44.65%
トリエチルシトラート 0.67%
Polysorbat 80 0.26%
グリセリンモノステアラート 0.67%
水 53.75%。
【0166】
こうして得られたペレットは、通常の製剤学的な方法及び助剤を用いてタブレットに圧縮成形するか又はカプセル中に充填することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) ペプチド又はタンパク質(その誘導体又は複合体を含める)ではない作用物質と、37℃を超える融点を有する親油性マトリックスと、粘膜付着作用を有するポリマーとを有する内側マトリックス層、
b) 場合により製剤学的に通常の助剤で調製されていてもよい、主にアニオン性ポリマー又はコポリマーからなる外側の皮膜形成されたコーティング
とから主に構成されている、50〜2500μmの範囲内の平均直径を有する、多数のペレット、粒子、顆粒又はアグロメラートを含有する、胃のpH領域で分解する容器の形の経口の多粒子の剤形において、前記作用物質が、作用物質1質量部に対して水少なくとも30体積部のDAB10による水中での溶解性を示し、かつ親油性マトリックス中に埋め込まれていて、かつこの作用物質含有の親油性マトリックスは粘膜付着作用を有するポリマーからなるマトリックス中に埋め込まれていることを特徴とする、経口の多粒子の剤形。
【請求項2】
作用物質と親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質とが、DAB10によるその水中での溶解性において+/−50%より大きくは異ならず、及び/又はRL67/548/EWG、A.8の付録Vによる分配係数において+/−60%より大きくは異ならず、及び/又はMarszallにより測定されたそのHLB値において+/−80%より大きくは異ならないことを特徴とする、請求項1記載の剤形。
【請求項3】
親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質及び粘膜付着作用を有するポリマーは、同じイオン特性を有するか又は反対のイオン特性を有する場合には、粘膜付着特性を有するポリマーは少なくとも50%まで中性の形で存在していることを特徴とする、請求項1又は2記載の剤形。
【請求項4】
親油性マトリックスは、80〜100%までHLB値0〜15の物質又は平均HLB値0〜15の物質の混合物からなり、かつ製剤学的に通常の助剤、特に安定剤、増粘剤又は吸着剤0〜20質量%を含有することができることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項5】
親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質は、油、脂肪、モノ−、ジ−又はトリグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール、特にC5〜C20−脂肪酸及び/又はC5〜C20−アルコール(その塩、エーテル誘導体、エステル誘導体又はアミド誘導体を含める)、リン脂質、レシチン、乳化剤、リポイド、脂溶性ビタミン又は界面活性剤のグループに属することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項6】
親油性マトリックスが、次のリピド調製物:(Imwitor 308)>80%のモノエステル割合を有するグリセリルモノカプリラート、(Imwitor 312)>90%のモノエステル割合を有するグリセリルモノラウラート、(Imwitor 491)>90%のモノエステル割合を有するグリセロールモノステアラート(C16+C18)、(Imwitor 900 P)40〜55%のモノエステル割合を有しかつ40〜60%のC18含有率を有するグリセロールモノステアラート、(Imwitor 900 K)40〜55%のモノエステル割合を有しかつ60〜80%のC18含有率を有するグリセロールモノステアラート、(Imwitor 742)45〜55%のモノエステル割合を有する中鎖長のC8及びC10グリセリド、(Imwitor 928)C12を主成分としかつ34〜36%のモノエステル割合を有する植物系の飽和C10〜C18脂肪酸の部分グリセリド、C8及びC10グリセリド、カプリル酸Na又はカプリン酸Naを含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項7】
作用物質が少なくとも10%まで親油性マトリックス中に溶解性であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項8】
作用物質含有の親油性マトリックスの内部マトリックス層a)に関する含有量が、5〜60質量%であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項9】
胃のpH領域で崩壊する容器が、カプセル、タブレット、ドライシロップ調製物又はサシェであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
外側コーティングは、アニオン性ポリマー又はコポリマーの選択もしくは助剤とのその調製及びその層厚により、腸内の4.0〜8.0のpH領域中で10〜60min内で溶解するように調節されているため、作用物質含有の親油性マトリックスは埋め込まれた粘膜付着性マトリックス層から露出し、腸粘膜に結合し、そこで作用物質を放出することができ、その際、前記粘膜付着特性を有するポリマーは、外側コーティングが溶解し始めるpH値に対して+/−0.5pH単位の範囲内で、粘膜付着性ηb=150〜1000mPa.s及び15minで10〜750%の吸水率を有するように選択され、かつ親油性マトリックスの作用物質割合が最大で90質量%であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の粘膜粘着作用。
【請求項11】
外側の皮膜形成されたコーティングが、セルロースグリコラート(Duodcell(R))、セルロースアセタートフタラート(CAP, Cellulosi acetas, PhEur, Celluloseacetate-phtalate, NF, Aquateric(R))、セルロースアセタートスクシナート(CAS)、セルロースアセタートトリメリアート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP, HP50, HP55)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMCAS -LF, -MF, -HF)、ポリビニルアセタートフタラート(PVAP, Sureteric(R))、酢酸ビニル−ビニルピロリドン−コポリマー(PVAc, Kollidon(R) VA64)、酢酸ビニル:クロトン酸−コポリマー9:1(VAC:CRA, Kollicoat(R) VAC)及び/又はセルラックであることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項12】
外側の皮膜形成されたコーティングが、アニオン性基を有するモノマーの含有量5〜60質量%を有する(メタ)アクリラートコポリマーからなることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項13】
外側のコーティングの層厚は20〜200μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項14】
内側の層a)がエフラックスポンプ阻害剤及び/又は浸透促進剤を含有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項15】
粘膜付着特性を有するポリマーは、キトサン、メチルメタクリラート20〜40質量%とメタクリル酸60〜80質量%とからなる(メタ)アクリラートコポリマー及び/又はセルロース、特にNaカルボキシメチルセルロース、架橋された及び/又は架橋されていないポリアクリル酸、レクチン、アルギン酸Na及び/又はペクチンであることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項16】
粘膜付着特性を有するポリマーからなるマトリックスがキトサンを含有し、前記キトサンは酸又は緩衝系と一緒に使用され、前記酸もしくは緩衝系は、マトリックス中に存在するか又はマトリックスが塗布されているコア中又はコア上に存在することを特徴とする、請求項15記載の剤形。
【請求項17】
粘膜付着特性を有するポリマーからなるマトリックスがキトサンを含有し、酸又は緩衝系でpH5.0〜5.5に調節され、かつpH6.0〜8.0の範囲内で溶解し始める外側の皮膜形成されたコーティングと組み合わされることを特徴とする、請求項16記載の剤形。
【請求項18】
内側の層a)と外側の皮膜形成されたコーティング層b)との間に分離層が設けられていることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項19】
親油性マトリックス中に調製された作用物質が、BCSクラスII及びIV(Amidon教授による生物薬剤学分類系)のグループ及び/又は抗アンドロゲン、抗抑鬱剤、抗糖尿病薬、抗リューマチ薬、グルココルチコイド、細胞分裂抑制剤、偏頭痛薬、神経弛緩剤、抗生物質、エストロゲン、ビタミン、向精神薬、ACE阻害剤、β遮断薬、Caチャンネル遮断薬、利尿剤、強心配糖体、抗てんかん薬、利尿剤/抗緑内障薬、尿酸形成抑制剤、H2レセプター遮断薬及びウイルス抑制剤のグループら選択される、請求項1から18までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項20】
親油性マトリックス中に調製された作用物質を含有する作用物質は、ビカルタミド、アナストロゾール、グリミプリド、ニルタミド、ブロモクリプチン、ケトチフェン、レトロゾール、ナラトリプタン、ガンシクロビル、オリスタット、メソプロスズトール、グラニストロン、ピオグリタゾン、ラミブジン、ロシグリタゾン、ジドブジン、エナラプリル、アテノロール、ナドロール、フェロジピン、ベプリジル、フロセミド、ジゴキシン、ジギトキシン、カルバマゼピン、アセタゾラミド、アロプリノール、シメチジン、ラニチジン又はオキサカルバゼピンであることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項21】
a) 親油性マトリックスを形成する1種又は数種の物質及び場合により他の製剤学的に通常の助剤と作用物質とを、前記内容物の強力混合又は溶融により懸濁及び/又は溶解させることにより作用物質含有の親油性マトリックスを製造する工程、
b) 粘膜付着性ポリマーを作用物質含有の親油性マトリックスとの混合物の形でコアへ吹き付け塗布することによるか又はコアなしで回転アグロメレーション、析出又は吹き付け法によりプレペレット(ペレットコア)を製造する工程、
c) 場合により製剤学的に通常の助剤、特に可塑剤及び離型剤の添加物を含有することができるアニオン性ポリマー又はコポリマーのコーティングを、工程b)からのプレペレットに分散液又は有機溶液から吹き付け塗布することによりペレットを製造する工程、
d) 工程c)からのペレットを自体公知のように、場合により製剤学的に通常の助剤を使用して充填又は混合することにより、特にペレット含有のタブレット、ミニタブレット、カプセル、サシェ又はドライシロップに加工することにより多粒子の剤形を製造する工程
を特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項記載の多粒子の剤形の製造方法。
【請求項22】
工程a)及びb)を次のように実施する
a) 親油性マトリックス用の1種又は数種の物質、及び場合により他の製剤学的に通常の助剤と作用物質とのエマルション、分散液又は溶液を、前記内容物を水に強力に混合することにより製造し、かつ60μmを超えない平均粒子サイズを有する水中油型調製物を製造することにより、内側マトリックス層を製造する、
b) 場合により他の製剤学的に通常の助剤の添加物を含有することができる粘膜付着性ポリマー上に、工程a)からの水中油型調製物を吹き付け塗布して、回転アグロメレーション、押出又は造粒することによりプレペレットを製造し、その際、前記内容物は微細化された粉末の形で存在する
ことを特徴とする、請求項21記載の多粒子の剤形の製造方法。

【公表番号】特表2008−508204(P2008−508204A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522954(P2007−522954)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007427
【国際公開番号】WO2006/010453
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】