説明

アイソレータ・デカップラ

プーリ(3)と、シャフト(11)と、プーリ(3)に摺動係合し、かつシャフト(11)に摺動係合するブッシュ(2)とを備え、プーリはベアリング(8)によってシャフト(11)に軸支され、シャフト(11)に固定されるとともにブッシュ(2)に係合されることによりブッシュ(2)と共に回転するワンウェイクラッチ(7)と、プーリ(3)とワンウェイクラッチ(7)の間に係合されてプーリ(3)をシャフト(11)に弾性的に連結するトーションバネ(4)とを備え、プーリ(3)が一時的な所定の負荷状態においてシャフト(11)に非弾性的に直接連結可能であるアイソレータ・デカップラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイソレータ・デカップラに関し、特に、トーションバネがプーリとワンウェイクラッチの間に係合してプーリをシャフトに弾性的に連結し、かつ一時的な所定の負荷状態においてプーリがシャフトに非弾性的に直接連結可能であるアイソレータ・デカップラに関する。
【背景技術】
【0002】
サーペンタイン形のアクセサリドライブシステムがエンジンアクセサリを駆動するために自動車に日常的に用いられている。典型的なサーペタイン形のドライブシステムは、車両の内燃機関のクランクシャフトに取付けられた駆動プーリと、アクセサリのための一連の被駆動プーリと、駆動プーリと被駆動プーリに掛け回されたマルチリブベルトとを有する。サーペタイン形ドライブの利点は、ベルトに自動ベルトテンショナを設けることによって、アクセサリが固定的に取付けられることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
駆動プーリはベルトに対して高い動的負荷をかける。この高い動的負荷は内燃機関の変化するトルク出力特性によるものである。この環境下においてテンショナは、変化するトルクによって引き起こされるベルト負荷の変化と変化するトルク特性との全てに順応できない。この結果は、瞬間的なベルトのスリップによるノイズとベルト寿命の減少となりうる。
【0004】
本発明の代表は米国特許第6,083,130号明細書(2000年)であり、これは駆動プーリ軸の周りに関して回転自在な駆動プーリを備えた出力シャフトを有する内燃機関を含むドライブアセンブリを備えた自動車のためのサーペタイン形ベルトドライブシステムである。一連のドライブアセンブリはそれぞれ、駆動プーリ軸に平行な軸の周りに回転自在な駆動プーリと、駆動プーリと一連の被駆動プーリに協働するように取付けられたサーペタインベルトとを有し、一連の被駆動プーリは、ベルトの移動方向が駆動プーリの回転に応じて被駆動プーリを回転させることに関係したとき、一連のドリブンアセンブリに対応する。一連のドリブンアセンブリは、シャフト軸の周りに回転するために取付けられたオルタネータシャフトを含むオルタネータアセンブリを有する。ハブ構造はシャフト軸の周りに回転するためにオルタネータシャフトにより固定的に支持される。バネおよびワンウェイクラッチ機構はオルタネータプーリをハブ構造に連結する。バネおよびワンウェイクラッチ機構は、ワンウェイクラッチの部材から離れて成形されるとともに連続して連結した弾性バネ部材を備える。弾性バネ部材は、サーペンタインベルトによってオルタネータプーリの被駆動回転運動をハブ構造に伝達するように構成かつ配置され、オルタネータシャフトは、駆動された回転運動の間オルタネータプーリに関して反対方向の瞬間的な相対的な弾性的運動が可能でありつつ、オルタネータプーリと同一方向に回転される。ワンウェイクラッチの部材は、エンジンの出力シャフトのスピードが所定のネガティブレベルでオルタネータプーリとハブ構造との間にトルクを発生させるに十分な程度に減速されるとき、ハブ構造とオルタネータシャフトをオルタネータプーリの回転スピードを超えるスピードで回転させるように構成され、配置される。
【0005】
必要とされるものは、プーリとワンウェイクラッチの間に係合されてプーリをシャフトに弾性的に連結するトーションバネと、一時的な所定の負荷状態においてシャフトに非弾性的に直接連結可能なプーリとを備えるアイソレータ・デカップラである。本発明はこの要求に合致する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の目的は、プーリとワンウェイクラッチの間に係合されてプーリをシャフトに弾性的に連結するトーションバネと、一時的な所定の負荷状態においてシャフトに非弾性的に直接連結可能なプーリとを備えるアイソレータ・デカップラを提供することである。
【0007】
本発明のその他の目的は、本発明の以下の説明と添付された図面により指摘され明らかにされる。
【0008】
本発明は、プーリと、シャフトと、プーリに摺動係合し、かつシャフトに摺動係合するブッシュとを備え、プーリがベアリングによってシャフトに軸支され、シャフトに固定されるとともにブッシュに係合されることによりブッシュと共に回転するワンウェイクラッチと、プーリとワンウェイクラッチの間に係合されてプーリをシャフトに弾性的に連結するトーションバネとを備え、プーリが一時的な所定の負荷状態においてシャフトに非弾性的に直接連結可能であるアイソレータ・デカップラを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【図1】アイソレータ・デカップラの断面図である。
【図2】アイソレータ・デカップラの分解図である。
【図3】ブッシュの斜視図である。
【図4】アイソレータ・デカップラの端面図である。
【図5】図4の斜視図である。
【図6】バネリテーナの斜視図である。
【図7】クラッチキャリアの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1はアイソレータ・デカップラの断面図である。アイソレータ・デカップラ100はマルチリブ面31を有するプーリ3を備える。プーリ3はボールベアリング8のアウタレース81に回転自在に取付けられる。ベアリング8はスリーブ、ブッシュ、ニードル、あるいは他のベアリングに適切な形態を備えてもよい。
【0011】
バネリテーナ6はプーリ3内に圧入される。トーションバネ4の端部41はバネリテーナ6に係合する。トーションバネ4の他の端部42はプラスチックブッシュ2に係合する。ブッシュ2はプーリ3とシャフト11の間に配置される。
【0012】
ワンウェイクラッチ7はケージとインナおよびアウタレースとを有するローラ型クラッチである。ワンウェイクラッチの内径はシャフト11により形成される。クラッチキャリア5はワンウェイクラッチのアウタレース71に締り嵌めされる。
【0013】
クラッチキャリア5はキャリアから回転軸A−Aに垂直な方向に、半径方向に延びる2つのタブ51を備える。各タブ51はブッシュ2の凹部22に協働的に係合し、トルクが伝達される。このようにして凹部22内にタブ51を係合させることにより、ブッシュ2の回転運動がワンウェイクラッチ7により制御され、したがってブッシュ2はクラッチキャリア5とワンウェイクラッチ7と共に回転する。
【0014】
ブッシュ2はカバー1とバネ42の間においてシャフト11に軸方向に固定される。バネ42はクラッチキャリア5を押圧し、タブ51をブッシュ2内に押圧する。バネ42の他の端部はバネリテーナ6に係合する。アイソレータ・デカップラは装置への破片の侵入を防ぐため外部端部カバー1により覆われる。オルタネータシャフト(AS)におけるプーリの軸位置はスペーサ9により調整可能である。ブッシュ2は従来公知の低摩擦プラスチック材料であってもよい。
【0015】
トルクはベルト(図示せず)からプーリ3に伝達される。プーリ3からのトルクはバネリテーナ6に伝達され、トーションバネ4に、ブッシュ2そしてワンウェイクラッチキャリア5およびワンウェイクラッチ7に、そしてシャフト11に、最後にオルタネータシャフトASのようなアクセサリシャフトに伝わる。
【0016】
動作中、トルクは巻戻し方向に捻り負荷を与えられたバネ4によって弾性的に伝達される。トルクの反転の間、駆動されるアクセサリの慣性により被駆動シャフト11はプーリ3をオーバーランする傾向にある。顕著なオーバーランがある前に、トーションバネ4はニュートラル(負荷のない)位置に解放される。いったんバネ4が解放されると、シャフト11に連結されたアクセサリシャフトはワンウェイクラッチ7によりクラッチキャリア5から遮断される。
【0017】
バネ4の各端部41、42が部分26および部分64との係合から解放するので、トーションバネ4は負荷方向から反対(巻取り)の方向には負荷をかけられない。
【0018】
トーションバネ4はバネリテーナ6とブッシュ2の間に、わずかに予荷重を与えられ、すなわち圧縮され、所定の大きさの減衰力を発生し、装置の構成間の相対運動を制限する。
【0019】
ワンウェイクラッチ7はインナおよびアウタレースの間にベアリング支持を有しないローラ型ワンウェイクラッチである。インナおよびアウタレースの間にベアリング支持がないことにより、設計を小型化、安価、そして軽量化する。例えば、ワンウェイクラッチ7は、HFあるいはHFL型クラッチを用いた、SBFあるいは550−0003 大阪府大阪市西区京町堀1−3−17にあるNTN株式会社から入手可能である。本実施形態において、製造業者はスゾウベアリングファクトリ(SBF)であり、部品番号はHF2016である。
【0020】
さらにブッシュ2はインナベアリング摩擦面24およびアウタベアリング摩擦面21を有する。アウタベアリング面21はプーリ3の面32に摺動係合する。面21は分離モードのとき、つまり、トーションバネ4がバネリテーナ6とプーリ3により負荷が与えられるとき機能し、それによりプーリ3はブッシュ2に対して変位可能である。
【0021】
カバー面16はブッシュ面27に摩擦係合する。面16と面27間の摩擦係合は所定の大きさの減衰力をもたらし、これによりトルク反転の間、バネ4は部分64と部分26間に着座し続ける。これは、延いては、ブッシュ2とバネリテーナ6の間において装置におけるバネの相対運動により引き起されるかもしれないノイズを防ぐ。
【0022】
オーバーランニングモード(トルク反転)において、ブッシュ2のインナベアリング面24はシャフト11に対して摺動係合し、これによりシャフト11はブッシュ2そしてプーリ3を「オーバーラン」させることができる。この態様においてシャフト11とブッシュ2は相対回転運動を有する。この態様における分離摩擦面はアイソレータ・デカップラに生じる摩擦負荷、摩耗、および熱を減少させる。
【0023】
本装置は、負荷のかかった動作中にバネの巻戻しを制限してバネのオーバーロードを防ぐ、ストッパをさらに備える。ストッパはクラッチキャリア5とバネリテーナ6の間に配置され、すなわち、バネリテーナタブ61はオーバーロード状態においてタブ受部52に協働的に係合する。通常の負荷および通常の動作トルク状態では、各タブ61はタブ52に接触しない。しかし、過剰負荷のとき、バネ4は巻戻され、各タブ61はタブ52に係合し、それにより、基本的にはバネ4とワンウェイクラッチ7をバイパスして、直接かつ非弾性的にプーリ3をシャフト11に連結する。例えば、このようなオーバーロード状態はエンジンの加速状態において存在する。
【0024】
バネ4は、バネ4がブッシュ2のシート25から、またバネリテーナ6から離れるのを防ぐため、小さい角度だけ予荷重を与えられる。予荷重の角度は約5°であり、これは約1から2N-mのトルクに匹敵する。この「負荷のない」状態においてタブ61はタブ52に当接し、これにより予荷重を生じる。図5参照。
【0025】
図2はアイソレータ・デカップラの分解図である。アウタ面21はプーリ3のインナ面32に摺動係合する。端部41は端部64に当接する。
【0026】
スナップリング10はプッシュ2をシャフト11に保持する。カバー1はプーリ3の端部33に圧入される。
【0027】
図3はブッシュの斜視図である。インナ面24はシャフト11のアウタ面に摺動係合する。各凹部22はタブ64を受容する。バネ4の渦巻き部分は面25に係合する。端部42は端部26に係合する。
【0028】
図4はアイソレータ・デカップラの端面図である。バネリテーナ6におけるタブ61は協働受部つまりクラッチキャリア5におけるギャップ53に係合する。バネリテーナ6はトルク反転と同様に通常の負荷の変動に順応するため、クラッチキャリア5に関して回転自在に移動可能である。
【0029】
図5は図4の斜視図である。タブ61はわずかなバネの予荷重により、負荷のない状態においてタブ52に当接して示される。アイソレータに負荷をかけられ、バネ4が巻戻されるとき、タブ61は負荷のない状態で係合するタブ52から離れる方向に動く。オーバーロードの状態において各タブ61は、クラッチキャリア5に関するバネリテーナ6の相対回転により、隣に続くタブ52に接触するようになる。各タブ61はタブ52間におけるギャップ53の中に移動する。すなわち、第1タブ61および第2タブ52は協働的に係合可能であり、それによりワンウェイクラッチキャリア5に関するバネリテーナ部材6の動作の回転範囲が第1無負荷位置と第2オーバーロード位置の間に制限され、プーリはタブ52に対するタブ61の直接接触により、最大オーバーロード状態においてシャフトに対して一時的に直接的に連結することができる。
【0030】
図6はバネリテーナの斜視図である。バネリテーナは半径方向の内側に延びるタブ61を備える。部材62はバネの渦巻き部分を支持する突出面を備える。スロープ部63はバネ4の渦巻き部分を支持する。バネ4の端部41は端部64に係合する。
【0031】
図7はクラッチキャリアの斜視図である。クラッチキャリア5はワンウェイクラッチ7のアウタレースに圧入される。クラッチキャリア5は軸方向に延びるタブ52を備える。受け部53はタブ52の間に配置され、これらにより区画される。各受部53の周方向長さCLは各タブ61の幅Wより大きい。これは通常の動作およびトルク反転において、バネリテーナ6とクラッチキャリア5の間のいくらかの相対回転運動を許容し、すなわち第1タブ52と第2タブ61が協働的に係合され、これによりバネリテーナ部材6に関するワンウェイクラッチキャリア5の動作の回転範囲が制限される。さらに、この構成によりトーションバネ4は、タブ53および61の係合によって決定される第1位置と第2位置の間において、ワンウェイクラッチ7から回転方向に一時的に解放可能になる。安定状態でゼロ加速動作であるとき、各タブ61は各タブ52の間の各凹部53において実質的に中心を合わせて配置される。
【0032】
本発明の一態様が説明されたが、当業者にとって、ここに記載された発明の範囲と精神から逸脱することなく部分の構造と関係に変形を加えてもよいことは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリ(3)と、
シャフト(11)と、
前記プーリに摺動係合し、かつ前記シャフトに摺動係合するブッシュ(2)とを備え、
前記プーリはベアリング(8)によって前記シャフトに軸支され、
前記シャフトに固定されるとともに前記ブッシュに係合されることにより前記ブッシュと共に回転するワンウェイクラッチ(7)と、
前記プーリと前記ワンウェイクラッチの間に係合されて前記プーリを前記シャフトに弾性的に連結するトーションバネ(4)とを備え、
前記プーリが一時的な所定の負荷状態において前記シャフトに対して非弾性的に直接的に連結可能である
アイソレータ・デカップラ。
【請求項2】
前記トーションバネが巻戻し方向に捻り負荷を与えられる請求項1に記載のアイソレータ・デカップラ。
【請求項3】
前記ブッシュと前記ワンウェイクラッチの間に作動的に係合され、第1タブを有するワンウェイクラッチキャリアと、
前記プーリに連結されるとともに前記トーションバネに係合し、第2タブを有するバネリテーナ部材とをさらに備え、
前記第1タブと前記第2タブが協働的に係合可能であり、前記ワンウェイクラッチキャリアに関する前記バネリテーナ部材の動作の回転範囲が前記第1位置と前記第2位置の間に制限され、前記プーリが最大負荷状態において前記シャフトに対して一時的に直接的に連結可能である
請求項1に記載のアイソレータ・デカップラ。
【請求項4】
前記一時的な所定の状態がバネのオーバーロード状態である請求項1に記載のアイソレータ・デカップラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−504028(P2013−504028A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529009(P2012−529009)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/049204
【国際公開番号】WO2011/035080
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】