アイソレーター搬送機構
【課題】簡単な構成の構造で、障害物を乗り越えて容易に搬送させることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【解決手段】第1アイソレーター搬送機構10は、アイソレーター1を設備配管6より上方位置に上昇させるためのチェーンブロック12と、チェーンブロック12を設備配管6の上方を横断するようにして移動させるためのガイドレール11とを備えている。アイソレーター交換時に、建物2の柱3から取り外したアイソレーター1を設備配管6の手前の上昇位置でチェーンブロック12により上昇させ、その上昇位置H1のアイソレーター1をガイドレール11に沿って横断方向で搬送方向へ横移動させ、設備配管6の上方を通過した位置でチェーンブロック12によってアイソレーター1を下方に降ろすことで、設備配管を乗り越えてアイソレーター1を搬送させるようにした。
【解決手段】第1アイソレーター搬送機構10は、アイソレーター1を設備配管6より上方位置に上昇させるためのチェーンブロック12と、チェーンブロック12を設備配管6の上方を横断するようにして移動させるためのガイドレール11とを備えている。アイソレーター交換時に、建物2の柱3から取り外したアイソレーター1を設備配管6の手前の上昇位置でチェーンブロック12により上昇させ、その上昇位置H1のアイソレーター1をガイドレール11に沿って横断方向で搬送方向へ横移動させ、設備配管6の上方を通過した位置でチェーンブロック12によってアイソレーター1を下方に降ろすことで、設備配管を乗り越えてアイソレーター1を搬送させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に設けられるアイソレーターを搬送するためのアイソレーター搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造による建物、土木構造物、大規模モニュメントなどの各種の構築物の耐震性を向上させるために、積層ゴムを上下フランジ間に設けてなる免震装置(以下、アイソレーターという)をその構築物の地下部や中間層部に用いて免震部を形成し、地盤側から建物に達した地震時の揺れを免震部で抑えるようにしている。そして、この免震部を構成しているアイソレーターは、施工中に誤って損傷させてしまったり、その耐用年数に達したり、或いは設置条件の変化により著しく劣化した場合などにこのアイソレーターの交換が行われる。
【0003】
このようなアイソレーターの交換に際しては、免震部の下部構造部と上部構造部との間に躯体支持ジャッキを配し、ジャッキアップしてアイソレーターの交換を行ない易くするための間隔をアイソレーターと上部構造部との間に開けてからそのアイソレーターの交換を行なうようにしているのが一般的となっている。
ところで、上述したアイソレーターは重量物であって作業員の人力による交換作業が煩雑であり、上下構造部との連結を解いたアイソレーターを横移動させて撤去する場合や、新たなアイソレーターをそのアイソレーター設置位置まで横移動させる作業に多大な手間を要している。
【0004】
そこで、簡易な構成の冶具を使用して重量の大きなアイソレーターの横移動を行い、アイソレーターの交換に係る労力を低減させるための交換冶具が、例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1は、ジャッキ支持枠で取り囲んだ免震装置の上フランジに当接して免震装置を上げ下げ可能に支持する昇降ジャッキと、ジャッキ支持枠の下部に取り付けられている車輪とからなり、昇降ジャッキで持ち上げた免震装置を横移動させる交換冶具について開示したものである。
【特許文献1】特開2005−220536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアイソレーターの交換冶具では、以下のような問題があった。
すなわち、アイソレーターの交換時にアイソレーターの搬入出用の通路が建物内に確保されており、一般的に建物の場合、上下のスラブ間がその通路となっている。ところが、その通路には建物の設備配管が配設されるケースが多く、その設備配管はスラブを下方から支持する大梁の下方の高さ寸法内に配設されている。そのため、設備配管の下からスラブ上までの高さが制限されてしまい、アイソレーター交換時に例えば上述した特許文献1のような交換冶具でアイソレーターを持ち上げて浮かせた状態のまま走行して、設備配管の下方を搬送できる十分な高さ寸法が確保できるとは限らないといった現状がある。その場合、設備配管が走行の障害物となり、その設備配管の一部を一時的に取り外して搬送路を確保し、交換作業終了時に設備配管を復旧するという手間のかかる作業を行う必要があるうえ、とくに、病院などのように、一時的にも設備配管の機能を止めることが困難な建物においては、搬送ができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構成の構造で、障害物を乗り越えて容易に搬送することができ、作業効率の向上を図ることができるアイソレーター搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、構造物に備えたアイソレーターに連絡可能であるとともに上方にスペースを有した状態で障害物が配置された搬送路内で、アイソレーターを搬送するためのアイソレーター搬送機構であって、アイソレーターを障害物より上方位置に上昇させるための昇降手段と、障害物の上方を横断するようにして移動させるための横移動手段とを備えていることを特徴としている。
本発明では、アイソレーター交換時に、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で昇降手段により上昇させ、その上昇位置のアイソレーターを横移動手段によって搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で昇降手段によってアイソレーターを下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0008】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、横移動手段は、障害物の上方に横断方向に沿って配置されるとともに、昇降手段を横移動させるためのガイドレールであることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で昇降手段により上昇させ、アイソレーターとともに昇降手段をガイドレールに沿って搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で昇降手段によってアイソレーターを下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0009】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、横移動手段は、横断方向にアイソレーターを移動させるように配列させた移送コロを上面に備えたコロ架台であることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で昇降手段により上昇させ、そのアイソレーターをコロ架台の移送コロ上に載せてから移送コロに沿って搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置でコロ架台上のアイソレーターを昇降手段で下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0010】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、昇降手段は、吊上げ装置であることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で吊上げ装置により上昇させ、その上昇位置のアイソレーターを横移動手段によって搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で吊上げ装置によってアイソレーターを下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0011】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、アイソレーターには、吊上げ装置に連結可能な吊り冶具が設けられていることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターに吊り冶具を取り付け、その吊り冶具を吊上げ装置で吊り上げ可能な所定位置へアイソレーターを移動させた後、吊上げ装置でアイソレーターとともに吊り冶具を吊り上げ、横移動手段で搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で吊り冶具とともにアイソレーターを降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0012】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、アイソレーターは、吊上げ装置で吊り上げ可能な吊り台車に載置されていることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを吊り台車上に載置し、その吊り台車を吊上げ装置で吊り上げ可能な所定位置へ移動させた後、吊上げ装置で吊り台車とともにアイソレーターを吊り上げ、横移動手段で搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で吊り台車を降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0013】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、コロ架台は、障害物の上方位置に固定配置された固定コロ架台と、固定コロ架台を挟んだ横断方向両側に取り外し可能に隣接配置された移動コロ架台とからなることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で昇降手段によって上昇させた後、固定コロ架台を挟んだ横断方向両側に移動コロ架台を隣接配置し、上昇させたアイソレーターをその下方の移動コロ架台の移送コロ上に降ろし、それぞれのコロ架台の移送コロ上を搬送側へ向けて横移動させて、反対側に設置した移動コロ架台上にアイソレーターを移動させる。そして、そのアイソレーターを昇降手段で上昇させ、その下方に位置する移動コロ架台を取り外してから、前記上昇させたアイソレーターを下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0014】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、コロ架台は、障害物の上方位置に固定配置された固定コロ架台と、固定コロ架台を挟んだ横断方向両側に隣接配置された昇降コロ架台とからなり、昇降手段は、昇降コロ架台に設けられ、移送コロを上下方向に移動させるリフト機構であることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で、移送コロを下降させた状態の昇降コロ架台上にアイソレーターを載置した後、昇降コロ架台の移送コロが固定コロ架台の移送コロと同じ高さになるようにリフト機構により上昇させ、このとき固定コロ架台を挟んだ横断方向両側の昇降コロ架台の移送コロも固定コロ架台の移送コロと同じ高さにしておき、アイソレーターをそれぞれのコロ架台の移送コロ上を搬送側へ向けて横移動させて、反対側に設置した昇降コロ架台上にアイソレーターを移動させる。そして、リフト機構によりアイソレーターを移送コロとともに降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアイソレーター搬送機構によれば、簡単な構成の構造で、搬送路に設けられた障害物の上方を乗り越えてアイソレーターを容易に搬送させることができることから、アイソレーターの搬送路に設備配管が配設されている構造物においてアイソレーターを交換する場合であっても、設備配管の一部を取り外して搬送路を確保するといった作業が不要となり、作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態によるアイソレーター搬送機構について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態による第1アイソレーター搬送機構の概略を示す一部破断側面図、図2はアイソレーターに吊り冶具を取り付けた状態を上から見た図、図3は図2のA−A線矢視図であって、係止ピンにチェーンブロックのフックを係止させた状態の図、図4は図2に示すB−B線矢視図である。
【0017】
図1に示すように、本第1の実施の形態によるアイソレーター搬送機構10は、例えばビルなどの建物2(構造物)のスラブ5、5(5A、5B)どうしの間に配置される柱3に設けられた免震装置(以下、アイソレーター1という)を、柱3の免震部から取り外して搬出し、新たなアイソレーター1を前記免震部に搬入して取り付ける交換作業に適用され、柱3の免震部に通じる搬送路Rを横移動させる際に、その搬送路Rに配される設備配管6(障害物)の上方を乗り越えるようにしてアイソレーター1を搬送させるためのものである。
【0018】
ここで、建物2は、スラブ5が大梁4によって下方から支持され、大梁4の下面4aとその下方に位置するスラブ5(図1に示す5B)の上面5bとの間のスペースには、複数本の設備配管6(障害物)が配設されており、搬送路Rの障害物となっている。
第1の実施の形態で使用されるアイソレーター1は、例えば2tの重量を有する平面視円形をなし、鋼板とゴム材とを交互に積層させ、その上下両端を上下フランジ1a、1b(図3、図4参照)によって挟持した構造の公知の免震ゴムを採用したものである。
【0019】
図1に示す第1アイソレーター搬送機構10は、搬送路Rの上方に位置するスラブ5Aの下面5aに沿って設備配管6を横断する方向(以下、横断方向Fとする)に設けたガイドレール11(横移動手段)と、ガイドレール11に沿って移動するチェーンブロック12(昇降手段、吊上げ装置)とから概略構成されている。ガイドレール11は、H形鋼材、又はI形鋼材からなり、長手方向を設備配管6の延設方向に略直交する方向(横断方向F)に向けて配置されるとともに、スラブ5の下面5aにアンカーボルト(図示省略)などで固定され、その両端部が大梁4、4に支持されている。チェーンブロック12は、ガイドレール11の下フランジ11aに沿って移動可能なトロリ12aを備えており、手動で移動できるようになっている。
【0020】
そして、図2乃至図4に示すように、搬送時のアイソレーター1には、チェーンブロック12によって連結可能な吊り冶具7が使用されている。
吊り冶具7は、長尺鋼材からなり、その長手方向中央にチェーンブロック12のフック12bを引掛けるための係止ピン7aが設けられ、アイソレーター1の上フランジ1a上に配置した状態で、上フランジ1aの外周部に設けられたボルト孔1cに対応するボルト取付け穴7bが形成されている。つまり、吊り冶具7のボルト取付け穴7bをボルト孔1cに合わせてボルト7cで締結することで、アイソレーター1に吊り冶具7が取り付けられるようになっている。
【0021】
次に、上述した第1アイソレーター搬送機構1を用いたアイソレーター1の交換手順について図面に基づいて説明する。
なお、交換手順を説明するにあたって、第1アイソレーター搬送機構10における設備配管6を挟んだ両側のうち柱3の免震部から取り外したアイソレーター1を吊り上げる位置を上昇位置H1とし、そのアイソレーター1を吊り降ろす位置を下降位置H2として以下統一して用いる。
【0022】
図1に示すように、アイソレーター1の交換手順は、柱3の免震部に設置されているアイソレーター1に損傷等がある場合等における交換作業によるものである。先ず、アイソレーター1と柱3との接合をボルトの取り外しにより解除し、アイソレーター1を一旦、台車8に載せ替え、そのアイソレーター1が吊上げ可能な位置、すなわち設備配管6の手前の位置(上昇位置H1)まで搬送する。そして、アイソレーター1に吊り冶具7を取り付け、チェーンブロック12でアイソレーター1が設備配管6より上方となる高さまで吊り上げて上昇させ、チェーンブロック12のトロリ12aでガイドレール11上を搬送側に向けて横移動させ、設備配管6の上方を通過させて、下降位置H2に予め配置させておいた台車8(図中の二点鎖線)上にアイソレーター1を吊り降ろすことで、設備配管6を乗り越えてアイソレーター1を搬送させる。そして、アイソレーター1を台車8に固定した後に所定の箇所へ搬出する。
なお、アイソレーター1を取り外した柱3の免震部に新たなアイソレーター1を設置する場合には、上述した逆の手順により行う。
【0023】
上述のように本第1の実施の形態によるアイソレーター搬送機構では、簡単な構成の構造で、搬送路Rに設けられた設備配管6の上方を乗り越えてアイソレーター1を容易に搬送させることができることから、アイソレーター1を交換する場合であっても、設備配管6の一部を取り外して搬送路を確保するといった作業が不要となり、作業効率の向上を図ることができる。
【0024】
次に、他の実施の形態および変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0025】
図5は第1の実施の形態の変形例による第1アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
図5に示すように、第1の実施の形態の変形例は、図1で示したチェーンブロック12に代えてローヘッド型のチェーンブロック13(昇降手段、吊上げ装置)を採用したものであり、前記チェーンブロック12が使用できないような吊り代が小さな場合に適用される。本変形例のチェーンブロック13は、フック13bの位置がトロリ13aの近傍、つまりガイドレール11の下面11b付近まで上昇できる構造であり、レール下面11bからフック13bまでの距離を小さくした構造となっている。その他の構成は、上述した第1の実施の形態と同様の構成であり、アイソレーター1に吊り冶具7を取り付けて、ローヘッド型のチェーンブロック13によって吊り上げるようになっている。
【0026】
次に、図6は第2の実施の形態による第2アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図7は第2アイソレーター搬送機構を上から見た図、図8は図7に示すC−C線矢視図である。
図6乃至図8に示すように、第2の実施の形態による第2アイソレーター搬送機構20は、上述した第1アイソレーター搬送機構10と同様に設備配管6の上方を乗り越えてアイソレーター1を搬送させるために採用され、設備配管6の上方で横断方向Fに配される一対のガイドレール21、21(横移動手段)と、ガイドレール21、21を下方より支持する架台22と、ガイドレール21、21に沿って横移動する移動ガータ23(横移動手段)と、移動ガータ23に設けられたローヘッド型のチェーンブロック24(昇降手段、吊上げ装置)とから概略構成されている。
【0027】
ガイドレール21、21は、H形鋼材からなり、互いに所定間隔を空けて平行に配置されている。移動ガータ23は、その両端部にガイドレール21、21上を転動可能な転動体25、25を介して、一対のガイドレール21、21上に跨るようにして架設されている。架台22は、図8に示すように門型形状に枠組みされ、その内空部をチェーンブロック24によって吊り上げたアイソレーター1が通過できるようになっている。転動体25として周知のチルタンクが使用され、移動ガータ23の移動方向側に電動又は手動のウインチ等を配置し、そのウインチのワイヤを移動ガータ23に固定してワイヤを巻き取ることで移動ガータ23を横移動させるように構成されている。なお、チェーンブロック24は、トロリ24aにより移動ガータ23の長手方向(横断方向Fに直交する方向)に沿って移動可能であり、アイソレーター1に取り付けた吊り冶具7(図2〜図4参照)を吊り上げるように構成されている。
【0028】
このように構成される第2アイソレーター搬送機構20では、チェーンブロック24の吊り下げ位置(上昇位置H1)へアイソレーター1を載せた台車8を移動させ、そのアイソレーター1を吊り上げた後、移動ガータ23を設備配管6の上方を通過する位置までガイドレール21に沿って搬送側に向けて横移動させ、下降位置H2において予め配置させておいた二点鎖線で示す台車8上にアイソレーター1を吊り下げて搬送することができるため、本第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様にアイソレーター1の交換にかかる作業効率の向上を図ることができる。
【0029】
次に、図9は第3の実施の形態による第3アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図10は図9に示す第3アイソレーター搬送機構を上から見た図、図11は図10に示すD−D線矢視図、図12は吊り台車の構成を示す図であって、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
図9乃至図11に示すように、第3アイソレーター搬送機構30は、上述した第2の実施の形態の第2アイソレーター搬送機構20を変形した構成であり、設備配管6の上方で横断方向Fに配置されているガイドレール31、31(横移動手段)に沿って一対の移動ガータ33(33A、33B)(横移動手段)を設けた構成となっている。ガイドレール31、31は、門型形状の架台32によって支持され、移動ガータ33は転動体35を介してガイドレール31上を移動できるようになっている。移動ガータ33A、33Bには、それぞれ2つのチェーンブロック34、34(昇降手段、吊上げ装置)が設けられている。そして、本第2の実施の形態では、アイソレーター1は、上昇時にチェーンブロック34で吊上げ可能な吊り台車9に載置されるようになっている。
【0030】
図12(a)および(b)に示すように、吊り台車9は、平面視四角形状の板状体をなし、上面にアイソレーター1を載置させた状態でボルト等で固定可能とされ、その吊り台車9の4つの角部のそれぞれにチェーンブロック34のフック34bを引掛ける係止部9a、9a、…が設けられている。つまり、4つのチェーンブロック34、34、…でアイソレーター1を載置させた吊り台車9を吊り上げるように構成されている。
【0031】
本第3の実施の形態では、柱3から取り外したアイソレーター1を吊り台車9に載置して固定し、その吊り台車9を移動ガータ33A、33Bの吊り上げ位置(上昇位置H1)に移動させ、吊り台車9とともにアイソレーター1を吊り上げて、移動ガータ33A、33Bを搬送側に向けて横移動させ、吊り降ろし位置(下降位置H2)で吊り台車9ごとスラブ5B上に降ろすことで設備配管6を乗り越えてアイソレーター1を搬送させることができる。本第3アイソレーター搬送機構30では、上述した第1および第2の実施の形態のように設備配管6を乗り越える際にいちいち台車(図1、図5、図6等に示す符号8)にアイソレーター1を載せ替える手間がなくなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0032】
次に、図13は第4の実施の形態による第4アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図14は第4アイソレーター搬送機構を上から見た図であって、移動コロ架台を取り外した状態を示す図、図15は図14に示すE−E線矢視図である。
図13乃至図15に示すように、第4アイソレーター搬送機構40は、設置配管6の上方位置に固定配置された固定コロ架台41(横移動手段)と、固定コロ架台41を挟んだ横断方向F両側に取り外し可能に隣接配置された移動コロ架台42(横移動手段)と、移動コロ架台42の設置箇所でその架台42上に吊上げ冶具44(昇降手段、吊上げ装置)を取り付けた門型架台43とから概略構成されている。固定コロ架台41の上面には、多数のコロを横断方向Fに配列させた移送コロ41aが設けられている。
【0033】
移動コロ架台42は、固定コロ架台41と同様の構成をなし、移送コロ42aの高さは、固定コロ架台41の移送コロ41aの高さと同じ高さとなっている。つまり、アイソレーター1は、隣接配置された固定コロ架台41と移動コロ架台42との間で横移動させることが可能な構成となっている。移送コロ架台42は、後述するようにアイソレーター1を搬送させる過程において、門型架台43の吊上げ冶具44で吊り冶具7を備えたアイソレーター1を吊り上げた状態のときに取り付けられるものである。
【0034】
第4の実施の形態によるアイソレーター1の交換手順としては、先ず柱3から取り外したアイソレーター1を載せた台車(図示省略)を吊り上げ位置(上昇位置H1)の門型架台43の位置に移動させ、吊上げ冶具44でアイソレーター1を吊り上げ、台車を退避させ、その上昇させた状態のままアイソレーター1の下方に固定コロ架台41に隣接させて移動コロ架台42Aを組み立てる。このとき、固定コロ架台41の設備配管6を挟んだ反対側の門型架台43の位置(下降位置H2)にも移動コロ架台42B(図13に示す二点鎖線)を組み立てておく。その後、上昇させたアイソレーター1をその下方の移動コロ架台42Aの移送コロ42a上に降ろし、それぞれのコロ架台42A、41、42Bの移送コロ42a、41a上を搬送側に向けて横移動させて、反対側に設置した移動コロ架台42B上にアイソレーター1を移動させる。
【0035】
次に、アイソレーター1を門型架台43の吊り上げ冶具44、44で吊上げて上昇させ、その下方に位置する移動コロ架台42Bを取り外してから、前記上昇させたアイソレーター1を搬送路Rに用意した台車(図示省略)に下降させることで、設備配管6を乗り越えてアイソレーター1を搬送させることができる。
本第4アイソレーター搬送機構40では、上述した第1〜第3アイソレーター搬送機構10、20、30のように横移動用のガイドレールやそのガイドレール上を移動するガータ等の設備が不要となる。
【0036】
次に、図16は第5の実施の形態による第5アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図17は図16に示すF−F線矢視図である。
図16および図17に示すように、本第5の実施の形態による第5アイソレーター搬送機構50は、上述した図13に示す第4アイソレーター搬送機構40の吊上げ冶具44を備えた門型架台43を使用しない構成であって、その代わりに油圧式シリンダ55を使用した門型形状の吊上げ架台54(昇降手段、吊上げ装置)を採用したものである。
【0037】
具体的には、設備配管6の位置には固定コロ架台51(横移動手段)が設けられ、その横断方向両側に図16の二点鎖線で示す移動コロ架台52(52A、52B)(横移動手段)が取り外し可能に配置されている。
吊上げ架台54は、移動コロ架台52A、52Bが配置される位置にそれぞれ配置されており、それぞれの上部枠材54aに吊り部材をなす一対のチェーン57、57が図17に示す正面視で左右両側に設けられている。つまり、上部枠材54aから両脚部枠材54b、54bにかけて適宜な位置にスプロケット56、56、…が配置され、それらスプロケット56、56、…にチェーン57、57が巻き回され、チェーン57の基端57bが油圧式シリンダ55の先端55aに固定され、チェーン57の先端に設けた係止部57aがアイソレーター1に取り付けた吊り冶具7に係止される構成となっている。つまり、油圧式シリンダ55の伸縮によりチェーン57の係止部57aが上下移動する構造になっている。
【0038】
本第5アイソレーター搬送機構50によるアイソレーター1の交換手順は、アイソレーター1の上昇位置H1、および下降位置H2において、左右に設けられている一対の油圧式シリンダ55、55をほぼ同調させて駆動させることにより両チェーン57、57の係止部57a、57aを上下方向に移動させる方法によりアイソレーター1を昇降させる方法によるものであり、その他の手順は上述した第4アイソレーター搬送機構40とほぼ同様であることから、本第5の実施の形態では第4の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0039】
次に、図18は第6の実施の形態による第6アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図19は図18に示す第6アイソレーター搬送機構を上から見た図、図20は図19に示すG−G線矢視図である。
図18乃至図20に示すように、本第6の実施の形態による第6アイソレーター搬送機構60は、上述した図13に示す第4アイソレーター搬送機構40の移動コロ架台42に代えてリフト機構を備えたリフト架台62(62A、62B)(横移動手段、昇降手段、昇降ロコ架台)を設けた構成となっている。
【0040】
設備配管6の箇所に固定配置される固定コロ架台61(横移動手段)は、上述した第4アイソレーター搬送機構40の固定コロ架台41と同じ構成であり、上面に多数のコロを横断方向Fに配列させた移送コロ61aが設けられている。リフト架台62A、62Bは、上面に移送コロ62aを備えたステージ62bと、ステージ62bを昇降させるための昇降ジャッキ62cとから構成されている。そして、リフト架台62A、62Bは、その移送コロ62aの高さがステージ62bの上昇位置において固定コロ架台61の移送コロ61aの高さと同じ高さとなっている。また、本リフト架台62では、アイソレーター1を載置させた吊り台車9ごとステージ62b上に載せることが可能な構成となっている。
【0041】
第6の実施の形態によるアイソレーター1の交換手順としては、柱3から取り外したアイソレーター1を上昇位置H1で、移送コロ62aを下降させた状態のリフト架台62A上にアイソレーター1を載置した後、リフト架台62A上のアイソレーター1を、移送コロ62aが固定コロ架台61の移送コロ61aと同じ高さになるように昇降ジャッキ62cの駆動によりステージ62bを上昇させる。このとき、下降位置H2のリフト架台62Bの移送コロ62aも固定コロ架台61の移送コロ61aと同じ高さにしておき、それぞれの架台62A、61、62B上を搬送側に向けて横移動させて、下降位置H2のリフト架台62B上にアイソレーター1を移動させる。そして、リフト架台62Bの昇降ジャッキ62cによりステージ62bをアイソレーター1とともに下降させることで、設備配管6を乗り越えてアイソレーター1を搬送させることができることから、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0042】
以上、本発明によるアイソレーター搬送機構の第1〜第6の実施の形態および変形例について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では設備配管6を搬送路Rの障害物としているが、これに限定されることはなく、例えば、スラブ上に構造上の段差部等がある場合に、この段差部(障害物)の上方を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
また、吊り冶具7、吊り台車9の大きさ、形状、その他の構成は本実施の形態に限定されることはなく、アイソレーターの重量、搬送路Rの広さなどの条件に応じて任意に設定することができる。
【0043】
さらに、本実施の形態では柱3から取り外したアイソレーター1を最初に上昇させる位置を上昇位置H1とし、その上昇位置H1に対して設備配管6を挟んで反対側の位置を下降位置H2としているが、これはアイソレーター1を搬出する際の説明上適用したものであり、柱3の免震部にアイソレーターを搬入する場合には、上記上昇位置と下降位置とが逆になることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態による第1アイソレーター搬送機構の概略を示す一部破断側面図である。
【図2】アイソレーターに吊り冶具を取り付けた状態を上から見た図である。
【図3】図2のA−A線矢視図であって、係止ピンにチェーンブロックのフックを係止させた状態の図である。
【図4】図2に示すB−B線矢視図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例による第1アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図6】第2の実施の形態による第2アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図7】第2アイソレーター搬送機構を上から見た図である。
【図8】図7に示すC−C線矢視図である。
【図9】第3の実施の形態による第3アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図10】図9に示す第3アイソレーター搬送機構を上から見た図である。
【図11】図10に示すD−D線矢視図である。
【図12】吊り台車の構成を示す図であって、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
【図13】第4の実施の形態による第4アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図14】第4アイソレーター搬送機構を上から見た図であって、移動コロ架台を取り外した状態を示す図である。
【図15】図14に示すE−E線矢視図である。
【図16】第5の実施の形態による第5アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図17】図16に示すF−F線矢視図である。
【図18】第6の実施の形態による第6アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図19】図18に示す第6アイソレーター搬送機構を上から見た図である。
【図20】図19に示すG−G線矢視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 アイソレーター
2 建物(構造物)
3 柱
5、5A、5B スラブ
6 設備配管(障害物)
7 吊り冶具
9 吊り台車
10、20、30、40、50、60 第1〜第6アイソレーター搬送機構
11、21、31 ガイドレール(横移動手段)
12、13、24、34 チェーンブロック(昇降手段、吊上げ装置)
23、33 移動ガータ(横移動手段)
41、51、61 固定コロ架台(横移動手段)
41a、61a 移送コロ
42、52 移動コロ架台(横移動手段)
42a、62a 移送コロ
44 吊上げ冶具(昇降手段、吊上げ装置)
54 吊上げ架台(昇降手段、吊上げ装置)
62 リフト架台(横移動手段、昇降手段、昇降ロコ架台)
H1 上昇位置
H2 下降位置
R 搬送路
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に設けられるアイソレーターを搬送するためのアイソレーター搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造による建物、土木構造物、大規模モニュメントなどの各種の構築物の耐震性を向上させるために、積層ゴムを上下フランジ間に設けてなる免震装置(以下、アイソレーターという)をその構築物の地下部や中間層部に用いて免震部を形成し、地盤側から建物に達した地震時の揺れを免震部で抑えるようにしている。そして、この免震部を構成しているアイソレーターは、施工中に誤って損傷させてしまったり、その耐用年数に達したり、或いは設置条件の変化により著しく劣化した場合などにこのアイソレーターの交換が行われる。
【0003】
このようなアイソレーターの交換に際しては、免震部の下部構造部と上部構造部との間に躯体支持ジャッキを配し、ジャッキアップしてアイソレーターの交換を行ない易くするための間隔をアイソレーターと上部構造部との間に開けてからそのアイソレーターの交換を行なうようにしているのが一般的となっている。
ところで、上述したアイソレーターは重量物であって作業員の人力による交換作業が煩雑であり、上下構造部との連結を解いたアイソレーターを横移動させて撤去する場合や、新たなアイソレーターをそのアイソレーター設置位置まで横移動させる作業に多大な手間を要している。
【0004】
そこで、簡易な構成の冶具を使用して重量の大きなアイソレーターの横移動を行い、アイソレーターの交換に係る労力を低減させるための交換冶具が、例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1は、ジャッキ支持枠で取り囲んだ免震装置の上フランジに当接して免震装置を上げ下げ可能に支持する昇降ジャッキと、ジャッキ支持枠の下部に取り付けられている車輪とからなり、昇降ジャッキで持ち上げた免震装置を横移動させる交換冶具について開示したものである。
【特許文献1】特開2005−220536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアイソレーターの交換冶具では、以下のような問題があった。
すなわち、アイソレーターの交換時にアイソレーターの搬入出用の通路が建物内に確保されており、一般的に建物の場合、上下のスラブ間がその通路となっている。ところが、その通路には建物の設備配管が配設されるケースが多く、その設備配管はスラブを下方から支持する大梁の下方の高さ寸法内に配設されている。そのため、設備配管の下からスラブ上までの高さが制限されてしまい、アイソレーター交換時に例えば上述した特許文献1のような交換冶具でアイソレーターを持ち上げて浮かせた状態のまま走行して、設備配管の下方を搬送できる十分な高さ寸法が確保できるとは限らないといった現状がある。その場合、設備配管が走行の障害物となり、その設備配管の一部を一時的に取り外して搬送路を確保し、交換作業終了時に設備配管を復旧するという手間のかかる作業を行う必要があるうえ、とくに、病院などのように、一時的にも設備配管の機能を止めることが困難な建物においては、搬送ができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構成の構造で、障害物を乗り越えて容易に搬送することができ、作業効率の向上を図ることができるアイソレーター搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、構造物に備えたアイソレーターに連絡可能であるとともに上方にスペースを有した状態で障害物が配置された搬送路内で、アイソレーターを搬送するためのアイソレーター搬送機構であって、アイソレーターを障害物より上方位置に上昇させるための昇降手段と、障害物の上方を横断するようにして移動させるための横移動手段とを備えていることを特徴としている。
本発明では、アイソレーター交換時に、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で昇降手段により上昇させ、その上昇位置のアイソレーターを横移動手段によって搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で昇降手段によってアイソレーターを下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0008】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、横移動手段は、障害物の上方に横断方向に沿って配置されるとともに、昇降手段を横移動させるためのガイドレールであることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で昇降手段により上昇させ、アイソレーターとともに昇降手段をガイドレールに沿って搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で昇降手段によってアイソレーターを下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0009】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、横移動手段は、横断方向にアイソレーターを移動させるように配列させた移送コロを上面に備えたコロ架台であることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で昇降手段により上昇させ、そのアイソレーターをコロ架台の移送コロ上に載せてから移送コロに沿って搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置でコロ架台上のアイソレーターを昇降手段で下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0010】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、昇降手段は、吊上げ装置であることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で吊上げ装置により上昇させ、その上昇位置のアイソレーターを横移動手段によって搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で吊上げ装置によってアイソレーターを下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0011】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、アイソレーターには、吊上げ装置に連結可能な吊り冶具が設けられていることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターに吊り冶具を取り付け、その吊り冶具を吊上げ装置で吊り上げ可能な所定位置へアイソレーターを移動させた後、吊上げ装置でアイソレーターとともに吊り冶具を吊り上げ、横移動手段で搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で吊り冶具とともにアイソレーターを降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0012】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、アイソレーターは、吊上げ装置で吊り上げ可能な吊り台車に載置されていることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを吊り台車上に載置し、その吊り台車を吊上げ装置で吊り上げ可能な所定位置へ移動させた後、吊上げ装置で吊り台車とともにアイソレーターを吊り上げ、横移動手段で搬送側へ向けて横移動させ、障害物の上方を通過した所定位置で吊り台車を降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0013】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、コロ架台は、障害物の上方位置に固定配置された固定コロ架台と、固定コロ架台を挟んだ横断方向両側に取り外し可能に隣接配置された移動コロ架台とからなることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で昇降手段によって上昇させた後、固定コロ架台を挟んだ横断方向両側に移動コロ架台を隣接配置し、上昇させたアイソレーターをその下方の移動コロ架台の移送コロ上に降ろし、それぞれのコロ架台の移送コロ上を搬送側へ向けて横移動させて、反対側に設置した移動コロ架台上にアイソレーターを移動させる。そして、そのアイソレーターを昇降手段で上昇させ、その下方に位置する移動コロ架台を取り外してから、前記上昇させたアイソレーターを下方に降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【0014】
また、本発明に係るアイソレーター搬送機構では、コロ架台は、障害物の上方位置に固定配置された固定コロ架台と、固定コロ架台を挟んだ横断方向両側に隣接配置された昇降コロ架台とからなり、昇降手段は、昇降コロ架台に設けられ、移送コロを上下方向に移動させるリフト機構であることが好ましい。
本発明では、構造物から取り外したアイソレーターを障害物の手前の所定位置で、移送コロを下降させた状態の昇降コロ架台上にアイソレーターを載置した後、昇降コロ架台の移送コロが固定コロ架台の移送コロと同じ高さになるようにリフト機構により上昇させ、このとき固定コロ架台を挟んだ横断方向両側の昇降コロ架台の移送コロも固定コロ架台の移送コロと同じ高さにしておき、アイソレーターをそれぞれのコロ架台の移送コロ上を搬送側へ向けて横移動させて、反対側に設置した昇降コロ架台上にアイソレーターを移動させる。そして、リフト機構によりアイソレーターを移送コロとともに降ろすことで、障害物を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアイソレーター搬送機構によれば、簡単な構成の構造で、搬送路に設けられた障害物の上方を乗り越えてアイソレーターを容易に搬送させることができることから、アイソレーターの搬送路に設備配管が配設されている構造物においてアイソレーターを交換する場合であっても、設備配管の一部を取り外して搬送路を確保するといった作業が不要となり、作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態によるアイソレーター搬送機構について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態による第1アイソレーター搬送機構の概略を示す一部破断側面図、図2はアイソレーターに吊り冶具を取り付けた状態を上から見た図、図3は図2のA−A線矢視図であって、係止ピンにチェーンブロックのフックを係止させた状態の図、図4は図2に示すB−B線矢視図である。
【0017】
図1に示すように、本第1の実施の形態によるアイソレーター搬送機構10は、例えばビルなどの建物2(構造物)のスラブ5、5(5A、5B)どうしの間に配置される柱3に設けられた免震装置(以下、アイソレーター1という)を、柱3の免震部から取り外して搬出し、新たなアイソレーター1を前記免震部に搬入して取り付ける交換作業に適用され、柱3の免震部に通じる搬送路Rを横移動させる際に、その搬送路Rに配される設備配管6(障害物)の上方を乗り越えるようにしてアイソレーター1を搬送させるためのものである。
【0018】
ここで、建物2は、スラブ5が大梁4によって下方から支持され、大梁4の下面4aとその下方に位置するスラブ5(図1に示す5B)の上面5bとの間のスペースには、複数本の設備配管6(障害物)が配設されており、搬送路Rの障害物となっている。
第1の実施の形態で使用されるアイソレーター1は、例えば2tの重量を有する平面視円形をなし、鋼板とゴム材とを交互に積層させ、その上下両端を上下フランジ1a、1b(図3、図4参照)によって挟持した構造の公知の免震ゴムを採用したものである。
【0019】
図1に示す第1アイソレーター搬送機構10は、搬送路Rの上方に位置するスラブ5Aの下面5aに沿って設備配管6を横断する方向(以下、横断方向Fとする)に設けたガイドレール11(横移動手段)と、ガイドレール11に沿って移動するチェーンブロック12(昇降手段、吊上げ装置)とから概略構成されている。ガイドレール11は、H形鋼材、又はI形鋼材からなり、長手方向を設備配管6の延設方向に略直交する方向(横断方向F)に向けて配置されるとともに、スラブ5の下面5aにアンカーボルト(図示省略)などで固定され、その両端部が大梁4、4に支持されている。チェーンブロック12は、ガイドレール11の下フランジ11aに沿って移動可能なトロリ12aを備えており、手動で移動できるようになっている。
【0020】
そして、図2乃至図4に示すように、搬送時のアイソレーター1には、チェーンブロック12によって連結可能な吊り冶具7が使用されている。
吊り冶具7は、長尺鋼材からなり、その長手方向中央にチェーンブロック12のフック12bを引掛けるための係止ピン7aが設けられ、アイソレーター1の上フランジ1a上に配置した状態で、上フランジ1aの外周部に設けられたボルト孔1cに対応するボルト取付け穴7bが形成されている。つまり、吊り冶具7のボルト取付け穴7bをボルト孔1cに合わせてボルト7cで締結することで、アイソレーター1に吊り冶具7が取り付けられるようになっている。
【0021】
次に、上述した第1アイソレーター搬送機構1を用いたアイソレーター1の交換手順について図面に基づいて説明する。
なお、交換手順を説明するにあたって、第1アイソレーター搬送機構10における設備配管6を挟んだ両側のうち柱3の免震部から取り外したアイソレーター1を吊り上げる位置を上昇位置H1とし、そのアイソレーター1を吊り降ろす位置を下降位置H2として以下統一して用いる。
【0022】
図1に示すように、アイソレーター1の交換手順は、柱3の免震部に設置されているアイソレーター1に損傷等がある場合等における交換作業によるものである。先ず、アイソレーター1と柱3との接合をボルトの取り外しにより解除し、アイソレーター1を一旦、台車8に載せ替え、そのアイソレーター1が吊上げ可能な位置、すなわち設備配管6の手前の位置(上昇位置H1)まで搬送する。そして、アイソレーター1に吊り冶具7を取り付け、チェーンブロック12でアイソレーター1が設備配管6より上方となる高さまで吊り上げて上昇させ、チェーンブロック12のトロリ12aでガイドレール11上を搬送側に向けて横移動させ、設備配管6の上方を通過させて、下降位置H2に予め配置させておいた台車8(図中の二点鎖線)上にアイソレーター1を吊り降ろすことで、設備配管6を乗り越えてアイソレーター1を搬送させる。そして、アイソレーター1を台車8に固定した後に所定の箇所へ搬出する。
なお、アイソレーター1を取り外した柱3の免震部に新たなアイソレーター1を設置する場合には、上述した逆の手順により行う。
【0023】
上述のように本第1の実施の形態によるアイソレーター搬送機構では、簡単な構成の構造で、搬送路Rに設けられた設備配管6の上方を乗り越えてアイソレーター1を容易に搬送させることができることから、アイソレーター1を交換する場合であっても、設備配管6の一部を取り外して搬送路を確保するといった作業が不要となり、作業効率の向上を図ることができる。
【0024】
次に、他の実施の形態および変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0025】
図5は第1の実施の形態の変形例による第1アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
図5に示すように、第1の実施の形態の変形例は、図1で示したチェーンブロック12に代えてローヘッド型のチェーンブロック13(昇降手段、吊上げ装置)を採用したものであり、前記チェーンブロック12が使用できないような吊り代が小さな場合に適用される。本変形例のチェーンブロック13は、フック13bの位置がトロリ13aの近傍、つまりガイドレール11の下面11b付近まで上昇できる構造であり、レール下面11bからフック13bまでの距離を小さくした構造となっている。その他の構成は、上述した第1の実施の形態と同様の構成であり、アイソレーター1に吊り冶具7を取り付けて、ローヘッド型のチェーンブロック13によって吊り上げるようになっている。
【0026】
次に、図6は第2の実施の形態による第2アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図7は第2アイソレーター搬送機構を上から見た図、図8は図7に示すC−C線矢視図である。
図6乃至図8に示すように、第2の実施の形態による第2アイソレーター搬送機構20は、上述した第1アイソレーター搬送機構10と同様に設備配管6の上方を乗り越えてアイソレーター1を搬送させるために採用され、設備配管6の上方で横断方向Fに配される一対のガイドレール21、21(横移動手段)と、ガイドレール21、21を下方より支持する架台22と、ガイドレール21、21に沿って横移動する移動ガータ23(横移動手段)と、移動ガータ23に設けられたローヘッド型のチェーンブロック24(昇降手段、吊上げ装置)とから概略構成されている。
【0027】
ガイドレール21、21は、H形鋼材からなり、互いに所定間隔を空けて平行に配置されている。移動ガータ23は、その両端部にガイドレール21、21上を転動可能な転動体25、25を介して、一対のガイドレール21、21上に跨るようにして架設されている。架台22は、図8に示すように門型形状に枠組みされ、その内空部をチェーンブロック24によって吊り上げたアイソレーター1が通過できるようになっている。転動体25として周知のチルタンクが使用され、移動ガータ23の移動方向側に電動又は手動のウインチ等を配置し、そのウインチのワイヤを移動ガータ23に固定してワイヤを巻き取ることで移動ガータ23を横移動させるように構成されている。なお、チェーンブロック24は、トロリ24aにより移動ガータ23の長手方向(横断方向Fに直交する方向)に沿って移動可能であり、アイソレーター1に取り付けた吊り冶具7(図2〜図4参照)を吊り上げるように構成されている。
【0028】
このように構成される第2アイソレーター搬送機構20では、チェーンブロック24の吊り下げ位置(上昇位置H1)へアイソレーター1を載せた台車8を移動させ、そのアイソレーター1を吊り上げた後、移動ガータ23を設備配管6の上方を通過する位置までガイドレール21に沿って搬送側に向けて横移動させ、下降位置H2において予め配置させておいた二点鎖線で示す台車8上にアイソレーター1を吊り下げて搬送することができるため、本第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様にアイソレーター1の交換にかかる作業効率の向上を図ることができる。
【0029】
次に、図9は第3の実施の形態による第3アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図10は図9に示す第3アイソレーター搬送機構を上から見た図、図11は図10に示すD−D線矢視図、図12は吊り台車の構成を示す図であって、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
図9乃至図11に示すように、第3アイソレーター搬送機構30は、上述した第2の実施の形態の第2アイソレーター搬送機構20を変形した構成であり、設備配管6の上方で横断方向Fに配置されているガイドレール31、31(横移動手段)に沿って一対の移動ガータ33(33A、33B)(横移動手段)を設けた構成となっている。ガイドレール31、31は、門型形状の架台32によって支持され、移動ガータ33は転動体35を介してガイドレール31上を移動できるようになっている。移動ガータ33A、33Bには、それぞれ2つのチェーンブロック34、34(昇降手段、吊上げ装置)が設けられている。そして、本第2の実施の形態では、アイソレーター1は、上昇時にチェーンブロック34で吊上げ可能な吊り台車9に載置されるようになっている。
【0030】
図12(a)および(b)に示すように、吊り台車9は、平面視四角形状の板状体をなし、上面にアイソレーター1を載置させた状態でボルト等で固定可能とされ、その吊り台車9の4つの角部のそれぞれにチェーンブロック34のフック34bを引掛ける係止部9a、9a、…が設けられている。つまり、4つのチェーンブロック34、34、…でアイソレーター1を載置させた吊り台車9を吊り上げるように構成されている。
【0031】
本第3の実施の形態では、柱3から取り外したアイソレーター1を吊り台車9に載置して固定し、その吊り台車9を移動ガータ33A、33Bの吊り上げ位置(上昇位置H1)に移動させ、吊り台車9とともにアイソレーター1を吊り上げて、移動ガータ33A、33Bを搬送側に向けて横移動させ、吊り降ろし位置(下降位置H2)で吊り台車9ごとスラブ5B上に降ろすことで設備配管6を乗り越えてアイソレーター1を搬送させることができる。本第3アイソレーター搬送機構30では、上述した第1および第2の実施の形態のように設備配管6を乗り越える際にいちいち台車(図1、図5、図6等に示す符号8)にアイソレーター1を載せ替える手間がなくなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0032】
次に、図13は第4の実施の形態による第4アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図14は第4アイソレーター搬送機構を上から見た図であって、移動コロ架台を取り外した状態を示す図、図15は図14に示すE−E線矢視図である。
図13乃至図15に示すように、第4アイソレーター搬送機構40は、設置配管6の上方位置に固定配置された固定コロ架台41(横移動手段)と、固定コロ架台41を挟んだ横断方向F両側に取り外し可能に隣接配置された移動コロ架台42(横移動手段)と、移動コロ架台42の設置箇所でその架台42上に吊上げ冶具44(昇降手段、吊上げ装置)を取り付けた門型架台43とから概略構成されている。固定コロ架台41の上面には、多数のコロを横断方向Fに配列させた移送コロ41aが設けられている。
【0033】
移動コロ架台42は、固定コロ架台41と同様の構成をなし、移送コロ42aの高さは、固定コロ架台41の移送コロ41aの高さと同じ高さとなっている。つまり、アイソレーター1は、隣接配置された固定コロ架台41と移動コロ架台42との間で横移動させることが可能な構成となっている。移送コロ架台42は、後述するようにアイソレーター1を搬送させる過程において、門型架台43の吊上げ冶具44で吊り冶具7を備えたアイソレーター1を吊り上げた状態のときに取り付けられるものである。
【0034】
第4の実施の形態によるアイソレーター1の交換手順としては、先ず柱3から取り外したアイソレーター1を載せた台車(図示省略)を吊り上げ位置(上昇位置H1)の門型架台43の位置に移動させ、吊上げ冶具44でアイソレーター1を吊り上げ、台車を退避させ、その上昇させた状態のままアイソレーター1の下方に固定コロ架台41に隣接させて移動コロ架台42Aを組み立てる。このとき、固定コロ架台41の設備配管6を挟んだ反対側の門型架台43の位置(下降位置H2)にも移動コロ架台42B(図13に示す二点鎖線)を組み立てておく。その後、上昇させたアイソレーター1をその下方の移動コロ架台42Aの移送コロ42a上に降ろし、それぞれのコロ架台42A、41、42Bの移送コロ42a、41a上を搬送側に向けて横移動させて、反対側に設置した移動コロ架台42B上にアイソレーター1を移動させる。
【0035】
次に、アイソレーター1を門型架台43の吊り上げ冶具44、44で吊上げて上昇させ、その下方に位置する移動コロ架台42Bを取り外してから、前記上昇させたアイソレーター1を搬送路Rに用意した台車(図示省略)に下降させることで、設備配管6を乗り越えてアイソレーター1を搬送させることができる。
本第4アイソレーター搬送機構40では、上述した第1〜第3アイソレーター搬送機構10、20、30のように横移動用のガイドレールやそのガイドレール上を移動するガータ等の設備が不要となる。
【0036】
次に、図16は第5の実施の形態による第5アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図17は図16に示すF−F線矢視図である。
図16および図17に示すように、本第5の実施の形態による第5アイソレーター搬送機構50は、上述した図13に示す第4アイソレーター搬送機構40の吊上げ冶具44を備えた門型架台43を使用しない構成であって、その代わりに油圧式シリンダ55を使用した門型形状の吊上げ架台54(昇降手段、吊上げ装置)を採用したものである。
【0037】
具体的には、設備配管6の位置には固定コロ架台51(横移動手段)が設けられ、その横断方向両側に図16の二点鎖線で示す移動コロ架台52(52A、52B)(横移動手段)が取り外し可能に配置されている。
吊上げ架台54は、移動コロ架台52A、52Bが配置される位置にそれぞれ配置されており、それぞれの上部枠材54aに吊り部材をなす一対のチェーン57、57が図17に示す正面視で左右両側に設けられている。つまり、上部枠材54aから両脚部枠材54b、54bにかけて適宜な位置にスプロケット56、56、…が配置され、それらスプロケット56、56、…にチェーン57、57が巻き回され、チェーン57の基端57bが油圧式シリンダ55の先端55aに固定され、チェーン57の先端に設けた係止部57aがアイソレーター1に取り付けた吊り冶具7に係止される構成となっている。つまり、油圧式シリンダ55の伸縮によりチェーン57の係止部57aが上下移動する構造になっている。
【0038】
本第5アイソレーター搬送機構50によるアイソレーター1の交換手順は、アイソレーター1の上昇位置H1、および下降位置H2において、左右に設けられている一対の油圧式シリンダ55、55をほぼ同調させて駆動させることにより両チェーン57、57の係止部57a、57aを上下方向に移動させる方法によりアイソレーター1を昇降させる方法によるものであり、その他の手順は上述した第4アイソレーター搬送機構40とほぼ同様であることから、本第5の実施の形態では第4の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0039】
次に、図18は第6の実施の形態による第6アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図、図19は図18に示す第6アイソレーター搬送機構を上から見た図、図20は図19に示すG−G線矢視図である。
図18乃至図20に示すように、本第6の実施の形態による第6アイソレーター搬送機構60は、上述した図13に示す第4アイソレーター搬送機構40の移動コロ架台42に代えてリフト機構を備えたリフト架台62(62A、62B)(横移動手段、昇降手段、昇降ロコ架台)を設けた構成となっている。
【0040】
設備配管6の箇所に固定配置される固定コロ架台61(横移動手段)は、上述した第4アイソレーター搬送機構40の固定コロ架台41と同じ構成であり、上面に多数のコロを横断方向Fに配列させた移送コロ61aが設けられている。リフト架台62A、62Bは、上面に移送コロ62aを備えたステージ62bと、ステージ62bを昇降させるための昇降ジャッキ62cとから構成されている。そして、リフト架台62A、62Bは、その移送コロ62aの高さがステージ62bの上昇位置において固定コロ架台61の移送コロ61aの高さと同じ高さとなっている。また、本リフト架台62では、アイソレーター1を載置させた吊り台車9ごとステージ62b上に載せることが可能な構成となっている。
【0041】
第6の実施の形態によるアイソレーター1の交換手順としては、柱3から取り外したアイソレーター1を上昇位置H1で、移送コロ62aを下降させた状態のリフト架台62A上にアイソレーター1を載置した後、リフト架台62A上のアイソレーター1を、移送コロ62aが固定コロ架台61の移送コロ61aと同じ高さになるように昇降ジャッキ62cの駆動によりステージ62bを上昇させる。このとき、下降位置H2のリフト架台62Bの移送コロ62aも固定コロ架台61の移送コロ61aと同じ高さにしておき、それぞれの架台62A、61、62B上を搬送側に向けて横移動させて、下降位置H2のリフト架台62B上にアイソレーター1を移動させる。そして、リフト架台62Bの昇降ジャッキ62cによりステージ62bをアイソレーター1とともに下降させることで、設備配管6を乗り越えてアイソレーター1を搬送させることができることから、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0042】
以上、本発明によるアイソレーター搬送機構の第1〜第6の実施の形態および変形例について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では設備配管6を搬送路Rの障害物としているが、これに限定されることはなく、例えば、スラブ上に構造上の段差部等がある場合に、この段差部(障害物)の上方を乗り越えてアイソレーターを搬送させることができる。
また、吊り冶具7、吊り台車9の大きさ、形状、その他の構成は本実施の形態に限定されることはなく、アイソレーターの重量、搬送路Rの広さなどの条件に応じて任意に設定することができる。
【0043】
さらに、本実施の形態では柱3から取り外したアイソレーター1を最初に上昇させる位置を上昇位置H1とし、その上昇位置H1に対して設備配管6を挟んで反対側の位置を下降位置H2としているが、これはアイソレーター1を搬出する際の説明上適用したものであり、柱3の免震部にアイソレーターを搬入する場合には、上記上昇位置と下降位置とが逆になることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態による第1アイソレーター搬送機構の概略を示す一部破断側面図である。
【図2】アイソレーターに吊り冶具を取り付けた状態を上から見た図である。
【図3】図2のA−A線矢視図であって、係止ピンにチェーンブロックのフックを係止させた状態の図である。
【図4】図2に示すB−B線矢視図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例による第1アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図6】第2の実施の形態による第2アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図7】第2アイソレーター搬送機構を上から見た図である。
【図8】図7に示すC−C線矢視図である。
【図9】第3の実施の形態による第3アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図10】図9に示す第3アイソレーター搬送機構を上から見た図である。
【図11】図10に示すD−D線矢視図である。
【図12】吊り台車の構成を示す図であって、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
【図13】第4の実施の形態による第4アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図14】第4アイソレーター搬送機構を上から見た図であって、移動コロ架台を取り外した状態を示す図である。
【図15】図14に示すE−E線矢視図である。
【図16】第5の実施の形態による第5アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図17】図16に示すF−F線矢視図である。
【図18】第6の実施の形態による第6アイソレーター搬送機構の構成を示す一部破断側面図である。
【図19】図18に示す第6アイソレーター搬送機構を上から見た図である。
【図20】図19に示すG−G線矢視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 アイソレーター
2 建物(構造物)
3 柱
5、5A、5B スラブ
6 設備配管(障害物)
7 吊り冶具
9 吊り台車
10、20、30、40、50、60 第1〜第6アイソレーター搬送機構
11、21、31 ガイドレール(横移動手段)
12、13、24、34 チェーンブロック(昇降手段、吊上げ装置)
23、33 移動ガータ(横移動手段)
41、51、61 固定コロ架台(横移動手段)
41a、61a 移送コロ
42、52 移動コロ架台(横移動手段)
42a、62a 移送コロ
44 吊上げ冶具(昇降手段、吊上げ装置)
54 吊上げ架台(昇降手段、吊上げ装置)
62 リフト架台(横移動手段、昇降手段、昇降ロコ架台)
H1 上昇位置
H2 下降位置
R 搬送路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に備えたアイソレーターに連絡可能であるとともに上方にスペースを有した状態で障害物が配置された搬送路内で、前記アイソレーターを搬送するためのアイソレーター搬送機構であって、
前記アイソレーターを前記障害物より上方位置に上昇させるための昇降手段と、
前記障害物の上方を横断するようにして移動させるための横移動手段と、
を備えていることを特徴とするアイソレーター搬送機構。
【請求項2】
前記横移動手段は、前記障害物の上方に前記横断方向に沿って配置されるとともに、前記昇降手段を横移動させるためのガイドレールであることを特徴とする請求項1に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項3】
前記横移動手段は、前記横断方向に前記アイソレーターを移動させるように配列させた移送コロを上面に備えたコロ架台であることを特徴とする請求項1に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項4】
前記昇降手段は、吊上げ装置であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項5】
前記アイソレーターには、前記吊上げ装置に連結可能な吊り冶具が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項6】
前記アイソレーターは、前記吊上げ装置で吊り上げ可能な吊り台車に載置されていることを特徴とする請求項4に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項7】
前記コロ架台は、前記障害物の上方位置に固定配置された固定コロ架台と、該固定コロ架台を挟んだ前記横断方向両側に取り外し可能に隣接配置された移動コロ架台とからなることを特徴とする請求項3に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項8】
前記コロ架台は、前記障害物の上方位置に固定配置された固定コロ架台と、該固定コロ架台を挟んだ前記横断方向両側に隣接配置された昇降コロ架台とからなり、
前記昇降手段は、前記昇降コロ架台に設けられ、前記移送コロを上下方向に移動させるリフト機構であることを特徴とする請求項3に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項1】
構造物に備えたアイソレーターに連絡可能であるとともに上方にスペースを有した状態で障害物が配置された搬送路内で、前記アイソレーターを搬送するためのアイソレーター搬送機構であって、
前記アイソレーターを前記障害物より上方位置に上昇させるための昇降手段と、
前記障害物の上方を横断するようにして移動させるための横移動手段と、
を備えていることを特徴とするアイソレーター搬送機構。
【請求項2】
前記横移動手段は、前記障害物の上方に前記横断方向に沿って配置されるとともに、前記昇降手段を横移動させるためのガイドレールであることを特徴とする請求項1に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項3】
前記横移動手段は、前記横断方向に前記アイソレーターを移動させるように配列させた移送コロを上面に備えたコロ架台であることを特徴とする請求項1に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項4】
前記昇降手段は、吊上げ装置であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項5】
前記アイソレーターには、前記吊上げ装置に連結可能な吊り冶具が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項6】
前記アイソレーターは、前記吊上げ装置で吊り上げ可能な吊り台車に載置されていることを特徴とする請求項4に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項7】
前記コロ架台は、前記障害物の上方位置に固定配置された固定コロ架台と、該固定コロ架台を挟んだ前記横断方向両側に取り外し可能に隣接配置された移動コロ架台とからなることを特徴とする請求項3に記載のアイソレーター搬送機構。
【請求項8】
前記コロ架台は、前記障害物の上方位置に固定配置された固定コロ架台と、該固定コロ架台を挟んだ前記横断方向両側に隣接配置された昇降コロ架台とからなり、
前記昇降手段は、前記昇降コロ架台に設けられ、前記移送コロを上下方向に移動させるリフト機構であることを特徴とする請求項3に記載のアイソレーター搬送機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−281061(P2009−281061A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134413(P2008−134413)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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