説明

アイドルストップ車両の制御装置

【課題】アイドルストップ制御中止後に車両の動力性能の低下を抑制したアイドルストップ車両の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン自動停止条件が成立すると、エンジン1を自動的に停止するアイドルストップ制御を実行するアイドルストップ車両の制御装置において、所定条件が成立するとアイドルストップ制御を中止するアイドルストップ制御終了手段10と、アイドルストップ制御終了手段10によってアイドルストップ制御を中止する場合に、車内空調用のコンプレッサ2、またはエンジン1の回転によって発電するオルタネータ3を優先して作動させる補機制御手段10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイドルストップ車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の停止時にエンジンを停止させるアイドルストップ車両が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、アイドルストップ制御中にコンプレッサを停止し、ブロアファンを回すことで、車内に冷風を供給している。そして、エバポレータの温度が所定温度以上となると、アイドルストップ制御を終了し、コンプレッサを作動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−113040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アイドルストップ制御中には、変速機などに油圧を供給するための電動オイルポンプやコントローラなどによってバッテリの電力が消費されるので、バッテリの蓄電量(以下、SOC(State of Charge)とする。)が低下する。上記の発明では、バッテリのSOCが低い状態で、エバポレータの温度が所定温度以上となってアイドルストップ制御を終了すると、コンプレッサとオルタネータとが同時に作動する。そのため、エンジンの負荷が大きくなり、車両を発進させるためのトルクが低下し、車両の動力性能(発進性能)が低下する、といった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、アイドルストップ制御を終了する場合に、エンジンの負荷を小さくし、車両の動力性能の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係るアイドルストップ車両の制御装置は、エンジン自動停止条件が成立すると、エンジンを自動的に停止するアイドルストップ制御を実行する。アイドルストップ車両の制御装置は、所定条件が成立するとアイドルストップ制御を中止するアイドルストップ制御中止手段と、アイドルストップ制御中止手段によってアイドルストップ制御を中止する場合に、車内空調用のコンプレッサとエンジンの回転によって発電するオルタネータとのいずれか一方を優先して作動させる補機制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
この態様によると、アイドルストストップ制御を中止する場合に、コンプレッサ、またはオルタネータを優先して作動させるので、エンジンの負荷を低減し、車両の動力性能が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のアイドルストップ車両の概略構成図である。
【図2】アイドルストップ復帰制御を説明するフローチャートである。
【図3】アイドルストップ復帰制御を説明するフローチャートである。
【図4】アイドルストップ復帰制御を実行した場合のタイムチャートである。
【図5】アイドルストップ復帰制御を実行した場合のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態のアイドルストップ車両について図1を用いて説明する。図1は、アイドルストップ車両の概略構成図である。
【0011】
アイドルストップ車両は、エンジン1と、コンプレッサ2と、オルタネータ3と、バッテリ4と、車両電気負荷5と、コンデンサ6と、モータファン7と、ブロアファン8と、エバポレータ9と、コントロールユニット10とを備える。
【0012】
コンプレッサ2は、エンジン1の回転が伝達されて作動し、エバポレータ9によって蒸発した空調用の冷媒を圧縮する。コンプレッサ2は、コンプレッサクラッチ2aが締結されると、エンジン1から回転が伝達され、コンプレッサクラッチ2aが解放されると、エンジン1から回転が伝達されなくなる。コンプレッサ2は固定容量型のコンプレッサである。
【0013】
コンデンサ6は、モータファン7によって送られた外気によってコンプレッサ2によって圧縮された冷媒を冷却する。
【0014】
エバポレータ9は、コンデンサ6によって冷却され、膨張弁13によってエバポレータ9内に噴射されて霧状になった冷媒をエバポレータ9の周囲の熱によって蒸発させる。
【0015】
ブロアファン8は、エバポレータ9の冷媒を蒸発させることで温度が低くなったエバポレータ9の周囲の空気を車室内に送る。エバポレータ9の温度、つまりエアコンからの吹出し温度は、温度センサ14によって検出される。
【0016】
オルタネータ3は、エンジン1の回転が伝達されて作動して発電する。オルタネータ3によって発電された電力は、車両電気負荷5によって消費され、またバッテリ4に充電される。
【0017】
バッテリ4は、エンジン1が回転していない場合に車両電気負荷5に電力を供給する。
【0018】
車両電気負荷5は、ライトなどの車両電装部品であり、オルタネータ3によって発電される電力、またはバッテリ4から供給される電力によって動作する。
【0019】
コントロールユニット10は、温度センサ14からの信号、電流センサ15からの信号などが入力され、コンプレッサクラッチ2aを制御する信号を出力してコンプレッサクラッチ2aを締結または解放し、オルタネータ3を制御する信号を出力してオルタネータ3の発電量を制御する。
【0020】
コントロールユニット10は、所定のエンジン自動停止条件が成立した場合には、エンジン1を自動停止し、アイドルストップ制御を実行する。コントロールユニット10は、アイドルストップ制御が実行された後にドライバがアクセルペダルを踏み込む、エバポレータ9の温度が高くなる、バッテリ4のSOCが低くなる等、所定のエンジン自動始動条件が成立した場合には、エンジン1を再始動させて、アイドルストップ制御を終了する。
【0021】
コントロールユニット10は、コンプレッサ2の冷媒圧縮やブロアファン8などを制御するACコントロールユニット、エンジン1における点火タイミングなどを制御するエンジンコントロールユニット、スタータスイッチのON/OFFなどを制御するアンダースイッチングモジュールなどを備え、これらをCANによって接続している。コントロールユニット10は、CPU、ROM、RAMなどによって構成され、CPUがROMに格納されたプログラムを読み出すことで、コントロールユニット10の各機能が発揮される。
【0022】
次にアイドルストップ制御を終了し、エンジン1を再始動させるアイドルストップ復帰制御について図2、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0023】
ステップS100では、コントロールユニット10は、アイドルストップ制御を終了するかどうか判定する。具体的には、コントロールユニット10は、アイドルストップ制御中に所定のエンジン自動始動条件が成立したかどうか判定する。コントロールユニット10は、アイドルストップ制御を終了する場合には、ステップS101へ進む。
【0024】
ステップS101では、コントロールユニット10は、カーナビゲーションシステムや高度道路交通システムなどの情報に基づいて、次回のアイドルストップ制御を実行するまでの予測時間を算出する。
【0025】
ステップS102では、コントロールユニット10は、ステップS101によって算出したアイドルストップ制御を実行するまでの予測時間と所定時間とを比較し、予測時間が所定時間よりも大きい場合には、ステップS103へ進み、予測時間が所定時間以下の場合にはステップS140へ進む。所定時間は、コンプレッサ2とオルタネータ3とを順番に作動させた場合に、エバポレータ9の温度を第2所定温度まで十分に下げることができない、またはバッテリ4のSOCを第2所定SOCまで十分に高くすることができない短い時間である。所定時間は、アイドルストップ制御を終了した時のエバポレータ9の温度や、バッテリ4のSOCによって変化する。例えばエバポレータ9の温度が高い場合、バッテリ4のSOCが低い場合には所定時間は長くなる。また、エバポレータ9の温度が等しくても、エアコン負荷が大きい夏などでは所定時間は長くなる。そのため、これらの条件によって所定時間を設定することが望ましいが、本実施形態ではアイドルストップ制御を実際に行う環境下で一番長い所定時間を予め実験などによって算出し、一番長い所定時間を所定時間として設定する。
【0026】
ステップS103では、コントロールユニット10は、温度センサ14によってエバポレータ9の温度を検出する。
【0027】
ステップS104では、コントロールユニット10は、アイドルストップ制御を終了した原因がエバポレータ9の温度を低くするためであったかどうか判定する。具体的には、コントロールユニット10は、ステップS103によって検出したエバポレータ9の温度と第1所定温度とを比較する。コントロールユニット10は、エバポレータ9の温度が第1所定温度よりも高い場合にはステップS105へ進み、エバポレータ9の温度が第1所定温度以下である場合にはステップS112へ進む。第1所定温度は、エンジン自動始動条件を成立させる温度である。エバポレータ9の温度が第1所定温度よりも高くなると、コントロールユニット10は、搭乗者に不快感を与えないようにコンプレッサ2などを作動させて、エバポレータ9の温度を下げて車室内に送られる空気を冷却するためにアイドルストップ制御を終了する。
【0028】
ステップS105では、コントロールユニット10は、コンプレッサクラッチ2aを締結させる。
【0029】
ステップS106では、コントロールユニット10は、オルタネータ3の作動を禁止し、オルタネータ3による発電量をゼロにする。
【0030】
ステップS107では、コントロールユニット10は、温度センサ14によってエバポレータ9の温度を検出する。
【0031】
ステップS108では、コントロールユニット10は、ステップS107によって検出したエバポレータ9の温度と第2所定温度とを比較する。コントロールユニット10は、エバポレータ9の温度が第2所定温度以下の場合には、ステップS111へ進み、エバポレータ9の温度が第2所定温度よりも高い場合にはステップS109へ進む。第2所定温度は、第1所定温度よりも低い温度であり、エバポレータ9が十分に冷却され、コンプレッサ2を作動させるためのエンジン1の負荷が十分に小さくなる温度である。
【0032】
ステップS109では、コントロールユニット10は、電流センサ15によって検出される電流値に基づいてバッテリ4のSOCを算出する。
【0033】
ステップS110では、コントロールユニット10は、ステップS109によって算出したバッテリ4のSOCと第1所定SOCとを比較する。コントロールユニット10は、バッテリ4のSOCが第1所定SOC以下の場合にはステップS111へ進み、バッテリ4のSOCが第1所定SOCよりも大きい場合にはステップS106へ戻り上記制御を繰り返す。第1所定SOCは、エンジン自動始動条件を成立させるSOCであり、バッテリ4のSOCが低下することで、バッテリ4が著しく劣化する、またはエンジン1の再始動時の電圧低下により車両電気負荷5が一時的に停止するおそれがあるSOCである。
【0034】
ステップS106からステップS110において、コントロールユニット10は、エバポレータ9の温度が第2所定温度以下となる、もしくはバッテリ4のSOCが第1所定SOC以下となるまで、オルタネータ3による発電量をゼロとする。これによって、エンジン1の負荷を低減し、アイドルストップ制御を終了した後の車両の発進性能の低下を抑制することができる。
【0035】
ステップS111では、コントロールユニット10は、オルタネータ3を作動させてオルタネータ3による発電を開始する。
【0036】
コントロールユニット10は、エバポレータ9の温度が第2所定温度以下となると、コンプレッサ2を作動させるためのエンジン1の負荷が小さくなり、オルタネータ3を作動させても車両の発進性能が低下しないと判定し、オルタネータ3を作動させる。また、コントロールユニット10は、バッテリ4のSOCが第1所定SOC以下となると、バッテリ4が著しく劣化する、またはエンジン1の再始動時の電圧低下により車両電気負荷5が一時的に停止するおそれがあると判定し、オルタネータ3を作動させる。
【0037】
コントロールユニット10は、ステップS104によってアイドルストップ制御を終了した原因がエバポレータ9の温度を低下させるためではないと判定すると、ステップS112において、電流センサ15によって検出される電流値に基づいてバッテリ4のSOCを算出する。
【0038】
ステップS113では、コントロールユニット10は、アイドルストップ制御を終了した原因がバッテリ4のSOCの低下であったかどうか判定する。具体的には、ステップS112によって算出したバッテリ4のSOCと第1所定SOCとを比較する。コントロールユニット10は、バッテリ4のSOCが第1所定SOC以下である場合にはステップS114へ進み、バッテリ4のSOCが第1所定SOCよりも大きい場合にはステップS121へ進む。
【0039】
ステップS114では、コントロールユニット10は、オルタネータ3を作動させてオルタネータ3による発電を開始する。これによって、車両電気負荷5にオルタネータ3から電力を供給し、バッテリ4に電力を供給してバッテリ4を充電する。
【0040】
ステップS115では、コントロールユニット10は、コンプレッサクラッチ2aを解放状態で保持し、コンプレッサ2の作動を制限する。本実施形態では、コンプレッサクラッチ2aを解放状態で保持することで、コンプレッサ2の作動を禁止する。
【0041】
ステップS116では、コントロールユニット10は、電流センサ15によって検出される電流値に基づいてバッテリ4のSOCを算出する。
【0042】
ステップS117では、コントロールユニット10は、ステップS116によって算出したバッテリ4のSOCと第2所定SOCとを比較する。コントロールユニット10は、バッテリ4のSOCが第2所定SOC以上である場合にはステップS120へ進み、バッテリ4のSOCが第2所定SOCよりも小さい場合にはステップS118へ進む。第2所定SOCは、第1所定SOCよりも大きい値であり、アイドルストップ制御が可能となる値、要するにアイドルストップ制御を実行してもバッテリ4が著しく劣化することのない、またはエンジン1の再始動時の電圧低下により車両電気負荷5が一時的に停止することのない値である。
【0043】
ステップS118では、コントロールユニット10は、温度センサ14によってエバポレータ9の温度を検出する。
【0044】
ステップS119では、コントロールユニット10は、ステップS118によって算出したエバポレータ9の温度と第1所定温度とを比較する。コントロールユニット10は、エバポレータ9の温度が第1所定温度以上の場合にはステップS120へ進み、エバポレータ9の温度が第1所定温度よりも低い場合にはステップS115へ戻り上記制御を繰り返す。
【0045】
ステップS115からステップ119において、コントロールユニット10は、バッテリ4のSOCが第2所定SOC以上となる、もしくはエバポレータ9の温度が第1所定温度以上となるまで、コンプレッサクラッチ2aを解放状態に保持する。これによって、エンジン1の負荷を低減し、アイドルストップ制御を終了した後の車両の発進性能の低下を抑制することができる。
【0046】
ステップS120では、コントロールユニット10は、コンプレッサクラッチ2aを締結する。
【0047】
コントロールユニット10は、バッテリ4のSOCが第2所定SOC以上となると、オルタネータ3を作動させるためのエンジン1の負荷が小さくなり、コンプレッサ2を作動させても車両の発進性能が低下しないと判定し、コンプレッサ2を作動させる。また、コントロールユニット10は、エバポレータ9の温度が第1所定温度以上となると、搭乗者に不快感を与えると判定し、コンプレッサ2を作動させてエバポレータ9の温度を下げる。
【0048】
コントロールユニット10は、ステップS113においてアイドルストップ制御を終了した原因がバッテリ4のSOCの低下ではないと判定する、つまり、アイドルストップ制御を終了した原因がエバポレータ9の温度を低下させるためではなく、かつバッテリ4のSOCの低下ではないと判定すると、ステップS121に進む。
【0049】
ステップS121では、コントロールユニット10は、電流センサ15によって検出される電流値に基づいてバッテリ4のSOCを算出する。
【0050】
ステップS122では、コントロールユニット10は、ステップS121によって算出したバッテリ4のSOC、車両電気負荷5の消費電流に基づいて、オルタネータ3の停止可能時間を式(1)によって算出する。
【0051】
オルタネータ3の停止可能時間=(算出したSOC(%)−第1所定SOC(%))×SOC1%当たりの電気量(A)/車両電気負荷5の消費電流(A)・・・(1)
【0052】
ここではオルタネータ3によって発電が行われていないので、車両電気負荷5の消費電流は電流センサ15によって検出される電流値である。
【0053】
ステップS123では、コントロールユニット10は、温度センサ14によってエバポレータ9の温度を検出する。
【0054】
ステップS124では、コントロールユニット10は、ステップS123によって検出したエバポレータ9の温度、エバポレータ9の温度上昇速度に基づいて、コンプレッサ2の停止可能時間を式(2)によって算出する。
【0055】
コンプレッサ2の停止可能時間=(第1所定温度(℃)−検出したエバポレータ9の温度(℃))/エバポレータ9の温度上昇速度・・・(2)
【0056】
エバポレータ9の温度上昇速度は、ステップS123によって検出したエバポレータ9の温度とアイドルストップ制御開始時のエバポレータ9の温度と、アイドルストップ制御開始時からステップS123によってエバポレータ9の温度を検出するまでの時間に基づいて算出される。
【0057】
ステップS125では、コントロールユニット10は、オルタネータ3の停止可能時間とエバポレータ9の停止可能時間とを比較する。コントロールユニット10は、オルタネータ3の停止可能時間がエバポレータ9の停止可能時間よりも大きい場合にはステップS126へ進み、オルタネータ3の停止可能時間がエバポレータ9の停止可能時間以下の場合にはステップS133へ進む。
【0058】
ステップS126では、コントロールユニット10は、コンプレッサクラッチ2aを締結する。
【0059】
ステップS127では、コントロールユニット10は、オルタネータ3の発電量をゼロとする。
【0060】
ステップS128では、コントロールユニット10は、温度センサ14によってエバポレータ9の温度を検出する。
【0061】
ステップS129では、コントロールユニット10は、ステップS128によって検出したエバポレータ9の温度と第2所定温度とを比較する。コントロールユニット10は、エバポレータ9の温度が第2所定温度以下の場合には、ステップS132へ進み、エバポレータ9の温度が第2所定温度よりも高い場合にはステップS130へ進む。
【0062】
ステップS130では、コントロールユニット10は、電流センサ15によって検出される電流値に基づいてバッテリ4のSOCを算出する。
【0063】
ステップS131では、コントロールユニット10は、ステップS130によって算出したバッテリ4のSOCと第1所定SOCとを比較する。コントロールユニット10は、バッテリ4のSOCが第1所定SOC以下の場合にはステップS132へ進み、バッテリ4のSOCが第1所定SOCよりも大きい場合にはステップS127へ戻り上記制御を繰り返す。
【0064】
ステップS132では、コントロールユニット10は、オルタネータ3による発電を開始する。
【0065】
ステップS126からステップS132において、オルタネータ3の停止可能時間がコンプレッサ2の停止可能時間よりも大きい場合には、コントロールユニット10は、コンプレッサ2を優先的に作動させる。これにより、エンジン1の負荷が小さくなり、アイドルストップ制御を終了した後の車両の発進性能を向上することができる。
【0066】
コントロールユニット10は、ステップS125においてオルタネータ3の停止可能時間がエバポレータ9の停止可能時間以下であると判定すると、ステップS133において、オルタネータ3を作動させてオルタネータ3による発電を開始する。
【0067】
ステップS134では、コントロールユニット10は、コンプレッサクラッチ2aを解放状態で保持する。
【0068】
ステップS135では、コントロールユニット10は、電流センサ15によって検出される電流値に基づいてバッテリ4のSOCを算出する。
【0069】
ステップS136では、コントロールユニット10は、ステップS135によって算出したバッテリ4のSOCと第2所定SOCとを比較する。コントロールユニット10は、バッテリ4のSOCが第2所定SOC以上である場合にはステップS139へ進み、バッテリ4のSOCが第2所定SOCよりも小さい場合にはステップS137へ進む。
【0070】
ステップS137では、コントロールユニット10は、温度センサ14によってエバポレータ9の温度を検出する。
【0071】
ステップS138では、コントロールユニット10は、ステップS137によって算出したエバポレータ9の温度と第1所定温度とを比較する。コントロールユニット10は、エバポレータ9の温度が第1所定温度以上の場合にはステップS139へ進み、エバポレータ9の温度が第1所定温度よりも低い場合にはステップS134へ戻り上記制御を繰り返す。
【0072】
ステップS139では、コントロールユニット10は、コンプレッサクラッチ2aを締結する。
【0073】
ステップS133からステップS139において、オルタネータ3の停止可能時間がコンプレッサ2の停止可能時間以下である場合には、コントロールユニット10は、オルタネータ3を優先的に作動させる。これにより、エンジン1の負荷が小さくなり、アイドルストップ制御を終了した後の車両の発進性能を向上することができる。
【0074】
コントロールユニット10は、ステップS102において、アイドルストップ制御を実行するまでの時間が所定時間以下であると判定すると、ステップS140においてオルタネータ3の発電を開始する。
【0075】
ステップS141では、コントロールユニット10は、コンプレッサクラッチ2aを締結する。
【0076】
次に本実施形態のアイドルストップ制御を終了する場合のオルタネータ3の動作状態、コンプレッサ2の動作状態などについて図4、5のタイムチャートを用いて説明する。
【0077】
まず、エバポレータ9の温度を低くするためにアイドルストップ制御を終了した場合について図4のタイムチャートを用いて説明する。
【0078】
時間t0において、アイドルストップ条件が成立し、アイドルストップ制御を開始する。これによって、エンジン1が停止するので、コンプレッサ2が作動せず、エバポレータ9の温度が高くなる。また、オルタネータ3が作動せず、オルタネータ3の発電量はゼロになる。そのため、車両電気負荷5にバッテリ4から電力を供給するのでバッテリ4のSOCが減少する。
【0079】
時間t1において、エバポレータ9の温度が第1所定温度よりも高くなると、アイドルストップ制御を終了し、エンジン1が始動する。ここでは、エバポレータ9の温度を下げるためにコンプレッサ2が作動する。これにより、エバポレータ9の温度が低下する。一方、オルタネータ3は作動せず、オルタネータ3の発電量はゼロである。
【0080】
時間t2において、エバポレータ9の温度が第2所定温度となると、オルタネータ3を作動させる。これによって、バッテリ4が充電され、バッテリ4のSOCが上昇する。
【0081】
本実施形態を用いずに、アイドルストップ制御を終了した場合にコンプレッサ2とオルタネータ3とを作動させた場合を一点鎖線で示す。
【0082】
本実施形態を用いない場合には、時間t1においてコンプレッサ2に加えてオルタネータ3も作動する。そのため、エンジン1の負荷が大きくなり、動力性能が低下する。
【0083】
次にバッテリ4のSOCが低下したためにアイドルストップ制御を終了した場合について図5のタイムチャートを用いて説明する。
【0084】
時間t0において、アイドルストップ条件が成立し、アイドルストップ制御を開始する。
【0085】
時間t1において、バッテリ4のSOCが第1所定SOCよりも小さくなると、アイドルストップ制御を終了し、エンジン1が始動する。ここでは、バッテリ4のSOCを高くするためにオルタネータ3が作動する。これにより、バッテリ4が充電され、バッテリ4のSOCが上昇する。一方、コンプレッサ2は作動しない。
【0086】
時間t2において、バッテリ4のSOCが、第2所定SOCとなると、コンプレッサ2を作動させる。これによって、エバポレータ9の温度が低下する。
【0087】
本実施形態を用いない場合を図4と同様に一点鎖線で示す。
【0088】
本実施形態を用いない場合には、時間t1においてオルタネータ3に加えてコンプレッサ2も作動するので、エンジン1の負荷が大きくなり、動力性能が低下する。
【0089】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0090】
アイドルストップ制御を終了する場合に、コンプレッサ2とオルタネータ3のうちいずれ一方を優先して作動させることで、エンジン1の負荷を小さくし、アイドルストップ制御から復帰した後に車両の動力性能が低下することを抑制することができる。
【0091】
アイドルストップ制御を終了し、エバポレータ9の温度が第1所定温度よりも高い場合には、コンプレッサ2を作動させて、オルタネータ3の作動を禁止する。また、アイドルストップ制御を終了し、バッテリ4のSOCが第1所定SOCよりも小さい場合には、オルタネータ3を作動させて、コンプレッサ2の作動を禁止する。これにより、アイドルストップ制御終了後に、エンジン1の負荷を確実に小さくすることができ、アイドルストップ制御から復帰した後に車両の動力性能が低下することを抑制することができる。
【0092】
コンプレッサ2を作動させて、オルタネータ3の作動を禁止した後に、エバポレータ9の温度が第2所定温度よりも低くなった場合にはオルタネータ3の作動の禁止を解除する。また、オルタネータ3を作動させて、コンプレッサ2の作動を禁止した後に、バッテリ4のSOCが第2所定SOCよりも大きくなった場合にはコンプレッサ2の作動の禁止を解除する。コンプレッサ2またはオルタネータ3を作動させるためのエンジン1の負荷が小さくなった場合に、作動を禁止していたコンプレッサ2またはオルタネータ3を作動させて、車両の動力性能の低下を抑制するとともに、エバポレータ9の温度を低く、またはバッテリ4のSOCを大きくすることができる。
【0093】
アイドルストップ制御の終了がエバポレータ9の温度上昇、またはバッテリ4のSOC低下によるものではなく、オルタネータ3の停止可能時間がコンプレッサ2の停止可能時間よりも大きい場合にはコンプレッサ2を優先して作動させ、オルタネータ3の停止可能時間がエバポレータ9の停止可能時間以下の場合には、オルタネータ3を優先して作動させる。これにより、アイドルストップ制御の終了がエバポレータ9の温度上昇、またはバッテリ4のSOC低下によるものではない場合でも、エンジン1の負荷を小さくし、アイドルストップ制御から復帰した後に車両の動力性能が低下することを抑制することができる。
【0094】
次回のアイドルストップ制御までの予測時間が所定時間よりも短い場合には、コンプレッサ2およびオルタネータ3を作動させることで、次回のアイドルストップ制御を確実に実行させることができる。
【0095】
本実施形態では、コンプレッサ2の作動を禁止したが、コンプレッサ2が吐出容量を制御可能な可変容量型のコンプレッサ(外部可変容量コンプレッサ)である場合には、コンプレッサ2の作動を禁止する他に、コンプレッサ2の吐出容量を通常時の吐出容量よりも小さくすることでエンジン1の負荷を小さくしてもよい。つまり、本実施形態においては、コンプレッサ2の作動を制限することによって、アイドルストップ制御終了後にエンジン1の負荷を小さくし、車両の動力性能が低下することを抑制することができればよい。なお、コンプレッサ2の吐出容量を小さくする場合には、車両の動力性能が低下することを抑制しつつ、エアコンの冷却性能の低下を最小限に抑えるように吐出容量は制御される。
【0096】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
1 エンジン
2 コンプレッサ
2a コンプレッサクラッチ
3 オルタネータ
4 バッテリ(蓄電手段)
9 エバポレータ
10 コントロールユニット(アイドルストップ制御終了手段、補機制御手段、蓄電量算出手段、第1停止可能時間算出手段、第2停止可能時間算出手段、時間予測手段)
14 温度センサ(温度検出手段)
15 電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン自動停止条件が成立すると、エンジンを自動的に停止するアイドルストップ制御を実行するアイドルストップ車両の制御装置において、
所定条件が成立するとアイドルストップ制御を終了するアイドルストップ制御終了手段と、
前記アイドルストップ制御終了手段によって前記アイドルストップ制御を終了する場合に、車内空調用のコンプレッサとエンジンの回転によって発電するオルタネータとのいずれか一方を優先して作動させる補機制御手段とを備えることを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置。
【請求項2】
エバポレータの温度を検出する温度検出手段と、
前記オルタネータと電気的に接続する蓄電手段と、
前記蓄電手段の蓄電量を算出する蓄電量算出手段とを備え、
前記アイドルストップ制御終了手段は、前記エバポレータの温度が前記アイドルストップ制御を終了させる第1所定温度よりも高い、または前記蓄電量が第1所定蓄電量よりも小さい場合に前記アイドルストップ制御を終了し、
前記補機制御手段は、
前記エバポレータの温度が前記第1所定温度よりも高く、前記アイドルストップ制御を終了する場合には、前記コンプレッサを作動させ、前記オルタネータの作動を禁止し、
前記蓄電量が前記第1所定蓄電量よりも小さく、前記アイドルストップ制御を終了する場合には、前記コンプレッサの作動を制限し、前記オルタネータを作動させることを特徴とする請求項1に記載のアイドルストップ車両の制御装置。
【請求項3】
前記補機制御手段は、
前記エバポレータの温度が前記第1所定温度よりも高く、前記アイドルストップ制御を終了した後に、前記エバポレータの温度が前記第1所定温度よりも低い第2所定温度よりも低くなった場合に、前記オルタネータの作動の禁止を解除し、
前記蓄電量が前記第1所定蓄電量よりも小さく、前記アイドルストップ制御を終了した後に、前記蓄電量が前記第1所定蓄電量よりも大きい第2所定蓄電量よりも大きくなった場合に、前記コンプレッサの作動の制限を解除することを特徴とする請求項2に記載のアイドルストップ車両の制御装置。
【請求項4】
前記オルタネータの停止可能時間を算出する第1停止可能時間算出手段と、
前記コンプレッサの停止可能時間を算出する第2停止可能時間算出手段とを備え、
前記補機制御手段は、前記エバポレータの温度が前記第1所定温度以下であり、前記蓄電量が前記第1所定蓄電量以上であるにも関わらず、前記アイドルストップ制御を終了する場合に、
前記オルタネータの停止可能時間が前記コンプレッサの停止可能時間よりも大きい場合には、前記コンプレッサを前記オルタネータよりも優先して作動させ、
前記コンプレッサの停止可能時間が前記オルタネータの停止可能時間よりも大きい場合には、前記オルタネータを前記コンプレッサよりも優先して作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のアイドルストップ車両の制御装置。
【請求項5】
次回の前記アイドルストップ制御が実行されるまで予測時間を予測する時間予測手段を備え、
前記補機制御手段は、前記予測時間が、前記エバポレータの温度を前記第2所定温度まで下げることができない、または前記蓄電手段の蓄電量を前記第2所定蓄電量まで大きくすることができない所定時間よりも短い場合には、前記アイドルストップ制御中止後に前記コンプレッサおよび前記オルタネータを同時に作動することを特徴とする請求項3に記載のアイドルストップ車両の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate