説明

アイパック化粧料

【課題】 目元に心地良い適度な圧迫感を与え、目元のトラブルの予防又は改善、あるいは眼精疲労の解消効果に優れたアイパック化粧料を提供する。
【解決手段】 支持体上にゲル状組成物を積層させ、両瞼及びその周辺を同時に覆う形状としたゲルシート部と、
片瞼及びその周辺を覆う形状の不織布に液状組成物を含侵させた2枚のアイパッド部とからなり、
該液状組成物の含侵量は不織布の自重の3〜9倍であり、
該アイパッド部は、該ゲルシート部とは別個に密封包装されたものであって、
使用時にゲルシート部のゲル状組成物面側に、アイパッド部を重ねて使用することを特徴とするアイパック化粧料。
前記化粧料において、不織布の厚さは1〜5mmであることが好適である。
前記化粧料において、不織布の形状は楕円であることが好適である。
前記化粧料において、ゲルシート部が、支持体上にゲル状組成物および剥離紙を順次積層させ、両瞼及びその周辺を同時に覆う形状であることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイパック化粧料、特にその使用感の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目元の小じわ、くま、くすみ、むくみの予防又は改善、あるいは眼精疲労の解消を目的とした目元向け化粧料が数多く開発されてきている。例えば、保湿剤や薬効成分を含むゲル状組成物を基材上に延展させた粘着性アイパック(特許文献1、2)等が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−335428号公報
【特許文献2】特開2002−636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記アイパックにおいては、目元周辺部に貼付することはできるものの、瞼への密着性が低いため、使用感に物足りなさがあり、目元のトラブルや眼精疲労に対する効果も十分ではなかった。
本発明の目的は、目元に心地良い適度な圧迫感を与え、目元のトラブルの予防又は改善、あるいは眼精疲労の解消効果に優れたアイパック化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情を鑑み、本発明者等が鋭意検討を行った結果、貼付剤タイプのゲルシートに、含侵タイプのアイパッドを組み合わせることにより、目元に適度な圧迫感を与え、効果的に目元のケアができるアイパック化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のアイパック化粧料は、支持体上にゲル状組成物を積層させ、両瞼及びその周辺を同時に覆う形状としたゲルシート部と、
片瞼及びその周辺を覆う形状の不織布に液状組成物を含侵させた2枚のアイパッド部とからなり、
該液状組成物の含侵量は不織布の自重の3〜9倍であり、
該アイパッド部は、該ゲルシート部とは別個に密封包装されたものであって、
使用時にゲルシート部のゲル状組成物面側に、アイパッド部を重ねて使用することを特徴とする。
【0006】
前記化粧料において、不織布の厚さは1〜5mmであることが好適である。
前記化粧料において、不織布の形状は楕円であることが好適である。
前記化粧料において、ゲルシート部が、支持体上にゲル状組成物および剥離紙を順次積層させ、両瞼及びその周辺を同時に覆う形状であることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアイパック化粧料は、貼付剤タイプのゲルシートに、含侵タイプのアイパッドを組み合わせることにより、目元に心地良い適度な圧迫感を与え、目元の小じわ、くすみ、くま、むくみの予防又は改善、あるいは眼精疲労の解消ができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のアイパック化粧料を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
本発明のアイパック化粧料は、貼付剤タイプのゲルシートであるマスク部と、含侵タイプのアイパッドとを組み合わせたものである。
<ゲルシート部>
本発明のゲルシート部は、ゲル状組成物を支持体上に積層してなるものである。
支持体としては、通常の貼付剤の支持体として用いられているものを使用することができ、その材質に制限はないが、柔軟性を有するものが好ましく、例えば厚織り、糸織り、ガーゼ、コール天、ネル等の織布、平編み、ゴム編み、タック編み、二目編み等の製法による編布、スパンレース、スパンボンド、サーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ等の製法による不織布等を挙げることができる。これらの素材は単独で使用するか、又は混紡とすることができる。
【0010】
ゲル状組成物は、ゲル化剤としては、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ポリアクリル酸またはその塩、ポリメタクリル酸またはその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸またはその塩、ポリアクリルアミド、それらの単量体や他の単量体との共重合体等が含まれる。
またゲル状組成物を構成する溶媒としては、水のほか、水と相分離を起こさず、従来、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野で経皮用途として使用されている溶媒であれば構わない。例えばエチルアルコール等のモノアルコール類、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
さらに、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば保湿剤、薬剤、ビタミン等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0011】
上記支持体に形成するゲル状組成物の層は0.05〜5mm、好ましくは0.3〜2mm程度の厚みとすることが望ましい。厚みがあまり薄すぎると、保湿効果が薄れる恐れがある。一方、厚みが厚すぎると貼付時に違和感を生じる恐れがある。
本発明においてゲルシート部の形状としては、両瞼及びその周辺を同時に覆うことのできる形状であれば、特に制限はない。さらに目もとに密着させて使用できるよう適宜切込みを設けることもできる。また、ゲルシート部の中心や周辺に位置合わせの目的で印を付ける事もできる。
【0012】
ゲルシート部は、使用されるまでの間、粘着面側にはポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の剥離紙を貼り付けておくことが好ましい。上記剥離紙は、ゲルシート部のゲル製造プロセスの際に下敷きや表面材として用いてもよいし、ゲルシート部の製造が終了した後で貼付してもよい。また、ゲルシート部は、個別にあるいは複数を包装材料にて密封包装することが好ましい。
【0013】
<アイパッド部>
本発明のアイパッド部は、液状組成物を不織布に含侵させてなるものである。含侵タイプなので、目元に対する作用が持続する。
不織布としては、液状組成物を十分に含侵させることができ、厚手で柔らかく且つ含侵させても厚みが薄くなりすぎないものを用いることが好適である。例えば、紙、天然繊維や化学繊維を原料とする不織布、又はこれらの積層体等を挙げることができる。好ましくは、不織布を単独層又は2種以上積層させて使用する。
不織布の厚みは1〜5mm、特に2〜4mmであることが好ましい。1mm未満であると、目元に適度な圧迫感を与えることができず、また目元のトラブルや眼精疲労に対する効果が薄れる恐れがある。5mmを超えると使用上違和感が生じることがある。
本発明において不織布は、厚みがあり、液状組成物を含侵させても薄くなりすぎないため、目元に心地良い適度な圧迫感を与えることができる。
本発明において、不織布の形状としては、特に目の形に合わせ楕円形であることが好ましいが、特にこれに制限されない。
【0014】
液状組成物としては、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば水、保湿剤、界面活性剤、液体油脂、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、水溶性高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、着色剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0015】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、アルキレンオキシド誘導体、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0016】
その他の配合可能成分としては、例えばコラーゲン、エラスチン、フィトコラージュ、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【0017】
上記不織布に含侵させる液状組成物の量は、不織布の自重に対して3〜9倍であり、好ましくは4〜8倍、特に5〜7倍、最も好ましくは6倍程度とすることが望ましい。3倍未満であると、目元に適度な圧迫感を与えることができず、また目元のトラブルや眼精疲労に対する効果が薄れる恐れがある。一方、9倍を越えると液状組成物が滴り落ちることがあるので好ましくない。
また、アイパッド部は、個別にあるいは複数を包装材料にて密封包装することが好ましい。
【0018】
<使用形態>
本発明のアイパック化粧料は、ゲルシート部の離型紙を取り除き、その面にアイパッド部を左右2枚載せ、両方の瞼の上にそれぞれアイパッド部が当たるように載せて使用する。10分程度目部をパック後、剥がすことが好ましい。なお、予めゲルシート部上にアイパッド部を載せておくと、ゲルシート部のゲルの状態が悪くなるため、使用直前にセットすることが好ましい。
本発明のアイパック化粧料は、瞼の上にのせるアイパッド部と、目元全体を覆うゲルシート部とを組み合わせているため、従来のアイパックにおいては不十分であった瞼のケアと共に、目部全体のケアが可能である。
特に、目元の乾燥、小じわ、くすみ、くま、むくみ、あるいは眼精疲労に有効である。
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【実施例】
【0019】
初めに本発明における評価基準について説明する。
<評価1>
各アイパック化粧料を目元に載せ、目元に心地良い適度な圧迫感を与えるかどうかについて、10名の専門パネラーにより評価した。
A: 10名中8名以上が、心地良い適度な圧迫感があると回答。
B: 10名中6〜7名が、心地良い適度な圧迫感があると回答。
C: 10名中3〜5名が、心地良い適度な圧迫感があると回答。
D: 10名中2名以下が、心地良い適度な圧迫感があると回答。
<評価2>
各アイパック化粧料を目元に10分間載せ、小じわ及びくまの改善効果があるかどうかについて、10名の専門パネラーにより評価した。
A: 10名中8名以上が、小じわ及びくまの改善効果があると回答。
B: 10名中6〜7名が、小じわ及びくまの改善効果があると回答。
C: 10名中3〜5名が、小じわ及びくまの改善効果があると回答。
D: 10名中2名以下が、小じわ及びくまの改善効果があると回答。
<評価3>
各アイパック化粧料を目元に10分間載せ、眼精疲労が解消されたかどうかについて、10名の専門パネラーにより評価した。
A: 10名中8名以上が、眼精疲労が解消されたと回答。
B: 10名中6〜7名が、眼精疲労が解消されたと回答。
C: 10名中3〜5名が、眼精疲労が解消されたと回答。
D: 10名中2名以下が、眼精疲労が解消されたと回答。
【0020】
実施例1:Aのゲルシート部上にBのアイパッド部を左右2枚載せる(図1)。
A.ゲルシート部
(配合成分) (質量%)
(1)精製水 残余
(2)ポリアクリル酸 5.0
(3)ポリアクリル酸ナトリウム 3.0
(4)カルボキシメチルセルロースナトリウム 2.5
(5)ケイ酸アルミニウム 4.0
(6)酒石酸 0.7
(7)グリセリン 10.0
(8)1,3−ブチレングリコール 5.0
(9)ソルビトール 10.0
(10)トラネキサム酸 1.0
(11)グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
(12)クエン酸 0.1
(13)クエン酸ナトリウム 0.08
(14)シャクヤク抽出液 1.0
(15)メチルパラベン 0.15
(製法)
(2)〜(4)を一部の精製水に溶解した。これに(5)〜(15)を残りの(1)に溶解したパーツを均一に混合しジェル基剤とした。このジェル基剤を不織布のシートに均一の厚さに塗布した後、水分が揮散しないように樹脂フィルムで被覆した。使用時には樹脂フィルムを剥離し、ジェル状基剤面を貼付した。
B.アイパッド部
基材
(三層構造;厚み2.9mm、45mm×65mm楕円、260g/m
表面層:コットン/ポリエチレンテレフタレート
中間層:パルプ・合成繊維
表面層:コットン/ポリエチレンテレフタレート(接着材:オレフィンパウダー)
上記基材に下記液状組成物を6倍量(質量)含侵させる。含侵後のアイパッド部の厚みは2.5mmであった。
【0021】
液状組成物(pH6.0)
(処方) (質量%)
POE(14)POP(7)ジメチルエーテル(分子量1000) 3
1,3−ブチレングリコール 5
グリセリン 9.5
エラスチン 0.01
コラーゲン 0.01
フィトコラージュ 0.1
界面活性剤(エスセーフ1324TM) 0.2
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.07
メタリン酸ソーダ 0.05
防腐剤 適量
香料 適量
着色剤 適量
イオン交換水 残余
【0022】
比較例1:上記Aのゲルシート部のみ
(表1)
実施例1 比較例1
評価1 A C
評価2 A B
評価3 A C
【0023】
表1に示されるように、本発明のアイパック化粧料は、目元に適度な圧迫感を与え、目元の小じわ、くまを改善し、目の緊張や疲れを解消できることが確認された。
【符号の説明】
【0024】
10 アイパック化粧料
12 ゲルシート部
14 アイパッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にゲル状組成物を積層させ、両瞼及びその周辺を同時に覆う形状としたゲルシート部と、
片瞼及びその周辺を覆う形状の不織布に液状組成物を含侵させた2枚のアイパッド部とからなり、
該液状組成物の含侵量は不織布の自重の3〜9倍であり、
該アイパッド部は、該ゲルシート部とは別個に密封包装されたものであって、
使用時にゲルシート部のゲル状組成物面側に、アイパッド部を重ねて使用することを特徴とするアイパック化粧料。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧料において、不織布の厚さが1〜5mmであることを特徴とするアイパック化粧料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化粧料において、不織布の形状が楕円であることを特徴とするアイパック化粧料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の化粧料において、ゲルシート部が、支持体上にゲル状組成物および剥離紙を順次積層させ、両瞼及びその周辺を同時に覆う形状であることを特徴とするアイパック化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−292840(P2009−292840A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216389(P2009−216389)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【分割の表示】特願2004−310863(P2004−310863)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】