説明

アキシャルギャップモータ

【課題】ロータの表裏の両面側にステータを配置したアキシャルギャップモータの少なくともロータの軽量化および小型化を図る。
【解決手段】ロータ4の両面側それぞれのステータ3a、3bは、それぞれ外径側と内径側の対の磁極が形成する径方向のステータ磁極対31が周方向に配設され、ロータ4は、ロータ磁極41が両面それぞれに周方向に配設され、ステータ3a、3bのいずれか一方のステータ磁極対31といずれか他方のステータ磁極対31の配置は、周方向にみて交互に励磁されるように周方向にずれ、ステータ3a、3bのステータ磁極31が同時に励磁されても、ロータ4の両面側の磁束はロータ4の周方向にずれた個所(位置)を交互に通り、ロータ4の外径側と内径側の磁極対を径方向に結ぶヨークを通る磁束量が従来構成の場合より半減し、ロータ4のモータ軸2方向の体格を小型にしてロータ4を軽量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの表裏の両面側にステータを配置したアキシャルギャップモータに関し、詳しくは、ロータの軽量化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アキシャルギャップモータには、ロータの表裏の両面側にステータを配置したものがある(例えば、特許文献1(段落[0021]−[0025]、図3等)参照)。
【0003】
図7は特許文献1に第3実施の形態として記載のこの種のアキシャルギャップモータ100を示し、同図(a)はロータのステータ側から見た平面図、同図(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0004】
アキシャルギャップモータ100は、ロータ131の表裏の両面側にステータ132a、132bを配置して形成され、ロータ131はモータ軸131aに軸支されている。
【0005】
ステータ132a、132bは、円盤状のヨーク(固定場所)133の周方向に、それぞれ励磁用のコイル114を集中巻きした外径側磁極の各ティース(コア)134a、134bと、内径側磁極の各ティース(コア)135a、135bが同心状に配設され、外径側磁極と内径側磁極との対の磁極によって周方向の各ステータ磁極対が形成される。
【0006】
ロータ131は、円盤状のコア136に径方向に外径側の永久磁石137aと内径側の永久磁石137bを埋設し、表裏の両面それぞれに周方向にロータ磁極が配設されている。また、ロータ131は、図7(a)に示すように、非磁性部材からなる隔壁部(溝状空間等)119によりコア136の表裏の両面が放射状に等分されて各ロータ磁極が磁気的に隔離される。
【0007】
アキシャルギャップモータ100は、コイル114の通電により図7(a)の磁路r2、同図(b)の磁路rが形成されて周知の永久磁石同期モータと同様に動作する。また、別の従来技術として、スイッチドリラクタンスモータがある(図示せず)。ステータの磁極に集中巻きしたコイルにより、突極の磁石のうち半数または数分の1ずつを磁気的に吸引してトルクを発生させ、ステータの励磁を切替えて、連続的に回転させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−236130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7に示した特許文献1のアキシャルギャップモータ100の場合、ステータ132a、132bは、各ステータ磁極対が周方向の同じ位置に形成される。そのため、ステータ132a、132bは周方向の同じ位置のステータ磁極対が同時に励磁され、その磁束がロータ131を貫通し、表裏のステータ132a、132bの同じ磁路r、すなわち、ロータ131の表裏の両面の同じ個所(位置)を同時に通る。
【0010】
ステータ132a、132bは、磁極がそれぞれ共通のヨーク133上に配置されるので、励磁コイル114は磁極ごとに巻かなければならず、これらコイル114の厚さ等に基づき、その分外径側、および内径側の磁石面積が小さくなってモータ出力が小さくなる。しかも、コイルの数が多くなるので、製作に手間がかかり、製造コストが高くなる。さらに、多数のコイルによりかさばり、また、コイル質量も大きくなり、アキシャルギャップモータ100の体格や質量が大きくなる問題がある。また、別の技術であるスイッチドリラクタンスモータでは、例えばステータ12極、ロータ8極のものであったら、ある瞬間に磁気的に吸引されてトルク発生に寄与するロータ磁極は、8極のうち4極であり、残りの4極は次の励磁に備えて待機している状態である。すなわち、ロータコアの利用率が低く、ロータが重くなる。
【0011】
本発明は、ロータの表裏の両面側にステータを配置したこの種のアキシャルギャップモータをスイッチドリラクタンスモータと同じ原理で作動させるモータの少なくともロータの軽量化および小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明のアキシャルギャップモータは、ロータの両面側それぞれにステータを設けたアキシャルギャップモータであって、前記両ステータは、それぞれ外径側と内径側の対の磁極が形成するステータ磁極対が周方向に配設され、前記ロータは、ロータ磁極が両面それぞれに周方向に配設され、前記両ステータのいずれか一方の前記ステータ磁極対といずれか他方の前記ステータ磁極対の配置は、周方向にみて交互に励磁されるようにずれていることを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、本発明のアキシャルギャップモータにおいては、前記ロータは、ロータコアが前記ロータ磁極毎に磁気的に独立し、前記両ステータの前記ステータ磁極対は、前記ロータ磁極と非対向の状態では、前記ステータ磁極対の前記対の磁極のうちの少なくとも外径側の磁極が前記ロータ磁極毎のロータコア間の隙間に位置することを特徴としている(請求項2)。
【0014】
また、本発明のアキシャルギャップモータにおいては、前記両ステータは、前記ステータ磁極対毎に、前記対の磁極間に配置されて当該ステータ磁極対を励磁するコイルが設けられていることを特徴としている(請求項3)。
【0015】
また、本発明のアキシャルギャップモータにおいては、前記両ステータの外径側の磁極部分が内径側の磁極部分よりモータ軸方向に長く、前記ロータコアの外径側の磁極部分が内径側の磁極部分よりも軸方向に短いことを特徴としている(請求項4)。
【0016】
また、本発明のアキシャルギャップモータにおいては、前記両ステータは、それぞれ環状の界磁コイルが配置されていることを特徴としている(請求項5)。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、ロータの両面側のステータは、同時に励磁されるステータ磁極対の位置が周方向にみて、交互になるようにずれる。そのため、前記両ステータのステータ磁極が同時に励磁されても、ロータの両面側の磁束はロータの周方向にずれた個所(位置)を通り、ロータの各所を通る磁束量が従来構成の場合より半減し、ロータのヨークのモータ軸方向の厚みを従来より薄くすることができ、ロータのモータ軸方向の体格が小型になってロータが軽量になり、アキシャルギャップモータの軽量化および小型化を図ることができる。
【0018】
請求項2に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、リラクタンス動作で回転中にロータの両面側のステータのステータ磁極対とロータのロータ磁極とが対向した状態から非対向の状態に変化すると、ステータ磁極対の対の磁極のうちの少なくとも外径側の磁極は、ロータ磁極毎のロータコア間の隙間に位置してロータ磁極と完全にずれた状態になるので、ロータとその両面側のステータとの磁極の非対向時のインダクタンスを小さくでき、トルクアップできる。
【0019】
請求項3に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、ロータの両面側のステータの各ステータ磁極対の対の磁極がステータ磁極毎の1個のコイルによって励磁され、磁極毎にコイルを巻く必要がなく、各ステータ磁極対の対の磁極それぞれ毎に個別にコイルを設けて励磁する場合に比してコイルの個数と質量が低減される。
【0020】
請求項4に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、回転するロータの外径側の磁極の部分が内径側の磁極の部分よりも軸方向に短く薄いので慣性モーメントが小さく、回転の立ち上がりが急峻になる。また、ステータの内径側の磁極の部分がモータ軸方向に短く薄いので、ステータ磁極毎のコイルをカセットコイルにより形成する際にはステータの内周側からカセットコイルを容易に装着できる利点もある。
【0021】
請求項5に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、製作が容易な環状の界磁コイルを設けてトルクアップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態のアキシャルギャップモータの断面図である。
【図2】(a)、(b)は図1の一方、他方のステータを紙面の左側からみた背面図と正面図である。
【図3】(a)、(b)は図1のロータを紙面の左側からみた正面図、斜視図である。
【図4】(a)、(b)は図1のアキシャルギャップモータのステータとロータの磁極対向時、磁極非対向時それぞれの磁路を説明する断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態のアキシャルギャップモータの断面図である。
【図6】(a)、(b)は図5の一方、他方のステータを紙面の左側からみた背面図と正面図である。
【図7】(a)、(b)は従来例のロータの磁極面側の平面図、そのB−B線で切断したモータ全体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、実施形態について、図1〜図6を参照して詳述する。なお、それらの図面においては、モータ軸等は適宜省略している。
【0024】
(一実施形態)
一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0025】
図1は本実施形態のアキシャルギャップモータ1aを示し、アキシャルギャップモータ1aは、モータ軸2の出力側(紙面左側の表側)から順に、一方(表側)のステータ3a、ロータ4、他方(裏側)のステータ3bが隙間(ギャップ)を設けて磁極面が対向するように配設されている。なお、図中の破線はステータ3a、3bの非対向の磁極を示す。
【0026】
ロータ4の両面側のステータ3a、3bは、磁極面がロータ4に対向する片側磁極構成であり、両面磁極構成のロータ4は、両面が磁極面であり、モータ軸2に軸支されて回転する。
【0027】
図2(a)、(b)はステータ3a、3bを示す。アキシャルギャップモータ1aはA、B、Cの3相駆動のリラクタンスモータであり、ステータ3a、3bは、例えば圧粉磁心で形成された平面視扇形の径方向のステータ磁極対31が周方向に30度の間隔で設けられ、ステータ磁極対31は、外径側、内径側にロータ4方向に突出した対の磁極31a、31bのティースを有し、ティース間はステータコア31cで繋がれて磁極31a、31bのティースおよびステータコア31cが一体に形成されている。磁極31a、31bのティースおよびステータコア31cはモータ軸2方向に同じ長さ(厚み)であってもよく、ティースだけがロータ4方向に突出してモータ軸2方向に長くなっていてもよいが、本実施形態の場合、後述するカセットコイルの装着のし易さ等を考慮して、外径側の磁極31aのティース部分が内径側の磁極31bのティース部分よりモータ軸2方向に長く、内径側の磁極31bのティース部分より、磁極31a、31bのティース間のステータコア31cの部分が最も短い(薄い)。なお、両ステータ31a、31bは、厚みが連続的に又はステップ状に外径側の磁極32aの部分が内径側の磁極32bの部分よりモータ軸2方向に長くなる楔形の厚みであってもよい。
【0028】
そして、ステータ3a、3bそれぞれの各ステータ磁極対31は放射状に配設した状態で外径側、内径側に非磁性体金属のリング体51、52が嵌められて環状に固定されている。また、周方向の各ステータ磁極対31の間(ギャップ)は、本実施形態においては軽量化を図るために空間であるが樹脂等の絶縁体であってもよい。
【0029】
ところで、ステータ3a、3bの各ステータ磁極対31は、例えば表側からみて時計回りにA相、B相、C相の順の各相の磁極対を形成し、90度ずつずれた各4個の磁極対が各相の同時に例示される磁極対である。
【0030】
また、本実施形態の場合、後述するようにロータ4の両面に周方向に45度間隔で8個のステータ磁極が配設されるため、図2(b)のずれ量θに示すように、例えばステータ3aの各ステータ磁極対31に配置に対して、ステータ3bの各ステータ磁極対31の配置は、周方向に1ロータ磁極ピッチ(磁極間隔)ずらされる。このようにすると、モータ軸2からステータ3a、3bを見た場合、ステータ3aの各相それぞれの90度間隔の4個のステータ磁極31の間にステータ3bの各相それぞれの4個のステータ磁極31が位置した状態になり、例えばA相の励磁時には、周方向にみると、表側のステータ3aのA相のステータ磁極対31、裏側のステータ3bのA相のステータ磁極対31が45度の間隔で交互に励磁位置の磁極になる。なお、図2(b)の実線aは表側のステータ3aのA相のステータ磁極対31の位置であり、実線bはそれから45度ずれた裏側のステータ3bのA相のステータ磁極対31の位置である。
【0031】
つぎに、ステータ3a、3bそれぞれにおいて、各ステータ磁極対31は、磁極31a、31b毎に集中巻きの励磁コイルを設けるとステータ3a、3bのコイルの個数、量が極めて多くなるため、ステータ磁極対31毎に磁極31a、31b間のステータコアの部分に磁極31a、31bの励磁に共用される励磁コイル6を備え、ステータ3a、3bのコイルの個数、量を極力少なくするように形成される。この場合、例えばA相の各励磁コイル6が通電されると、各励磁コイル6の磁束がそれぞれのステータ磁極対31を径方向に通って磁極31a、31bが、N極、S極(またはその逆)に励磁される。
【0032】
各励磁コイル6は、各ステータ磁極対31のステータコアにエナメル線を直接に集中巻きしてもよいが、例えば樹脂枠体のコイルボビン7にエナメル線を巻回してカセットコイルに形成することが好ましい。各励磁コイル6をカセットコイルに形成すると、例えば、ステータ3a、3bの各ステータ磁極対31を外径側のリング体51だけを嵌めて放射状(環状)に配設した状態で、各カセットコイルをステータ3a、3bそれぞれの各ステータ磁極対31に薄い内径側の磁極部分から簡単に装着して集中巻きできる。なお、カセットコイルの装着後に内径側のリング体52が嵌められて各ステータ磁極対31が環状に固定される。また、各励磁コイル6は外径側、内径側の渡り線61によって各相の一対の端子8a〜8cに引き出される。さらに、図1の8は各ステータ磁極対31の裏面のコイルボビン7を係止するコ字枠状の係止片である。
【0033】
図3(a)はロータ4の例えば表側の磁極面を示し、ロータ4は表裏の両面にロータ磁極としての平面視扇形のロータ磁極対41が周方向に45度の間隔で設けられ、表裏が対称な形状である。そして、各ロータ磁極対41は、ステータ3a、3bの対の磁極31a、31bに対向する外径側、内径側の対の磁極41a、4bのティースをロータコア41cで繋いだ構成であり、ステータ磁極31と同様、外径側、内径側の非磁性金属のリング体91、92が嵌められて放射状(環状)に固定される。
【0034】
ロータ4の表裏の各ロータ磁極対41は、実際には、例えば圧粉磁心のロータコア(ヨーク)により裏表の磁極対が一体に形成され、さらに、ロータ4の表裏それぞれにおいて、ロータコアはロータ磁極対41毎に磁気的に独立している。
【0035】
図3(b)は表裏の各ロータ磁極対41が圧粉磁心の共通のヨークにより一体に形成された場合のロータ4の斜視図であり、圧粉磁心の各ヨークユニット42は、表裏に磁極41a、41bの突出したティースが形成され、そのティース間が凹状のロータコア41cで繋がれている。このとき、ステータ3a、3bの各ステータ磁極対31のモータ軸2方向の長さ(厚み)を考慮して、ロータ4は各ロータ磁極対41の内径側の磁極41bのティース部分が最もモータ軸2方向に長く(厚く)、外径側の磁極41bのティース部分、ティース間のロータコア41cの部分の順に短く(薄く)なる。
【0036】
そして、ステータ3a、3bおよびロータ4を図1のように組み付けると、ステータ3a、3bの各ステータ磁極対31に装着された励磁コイル6のロータ4の方向に突出した部分は、ロータ4の前記ティース間のロータコア41cの凹部に回転自在に嵌る。また、ステータ3a、3bの外径側の突出した厚みのある部分に、ロータ4の外径側の厚みの薄い部分が対向し、ステータ3a、3bの内径側の薄い部分に、ロータ4の内径側のステータ3a、3b側に突出した厚みのある部分が対向する。そのため、ステータ3a、3bとロータ4の合計の軸方向長さを小さくしてモータ体格の低減を図ることができる。
【0037】
また、回転するロータ4の外径側の磁極41aの部分が内径側の磁極41bの部分よりもモータ軸方向に短く薄いので慣性モーメントが小さく、回転の立ち上がりが急峻になる等の利点がある。
【0038】
上記構成のアキシャルギャップモータ1aの場合、各相の励磁コイル6はA相、B相、C相の順にパルス通電される。
【0039】
そして、例えばA相の励磁コイル6の通電時は、ステータ3a、3bのA相の90度間隔の各4個のステータ磁極対31が同時に励磁され、ロータ4は、表側の90度間隔の4個の各ロータ磁極対41が対向する表側のステータ3aのA相の各ステータ磁極対31の磁束によって吸引され、同時に、裏側の90度間隔の4個の各ロータ磁極対41が対向する裏側のステータ3bのA相の各ステータ磁極対31の磁束によって吸引される。B相、C相の励磁コイル6の通電時も同様である。
【0040】
このとき、ステータ3bのA相の各ステータ磁極対31が、ステータ3bのA相の各ステータ磁極対31に対して、ロータ磁極対41の間隔(1磁極対ピッチ間隔:45度)ずれるので、各相の励磁時、ステータ3a、3bのステータ磁極対31の周方向にみて励磁位置が45度間隔で交互になる。そのため、ロータ4は周方向に表側のロータ磁極対41、裏側のロータ磁極対41、表側の磁極対41、…が交互に励磁されるようになる。このとき、ロータ4の磁路は図3(b)の破線の矢印線に示すように、ステータ3aのステータ磁極対31の磁束の磁路と、ステータ3bのステータ磁極対31の磁束の磁路とが、全ての磁極対ユニット42に交互に形成される。そのため、ロータ4は、表裏で周方向の同じ位置の磁極が同時に励磁される場合よりも周方向に磁束が分散される。
【0041】
なお、従来構成であれば、ステータ3a、3bの各ステータ磁極対31が裏表の同じ位置に配置されるので、各相の励磁時、ステータ3a、3bのステータ磁極対31の周方向にみた励磁位置は90度間隔の同じ位置になる。そのため、ロータ4は周方向に90度間隔で表側と裏側の同じ位置のロータ磁極対41が励磁され、この場合は、ステータ3aのステータ磁極対31の磁束の磁路と、ステータ3bのステータ磁極対31の磁束の磁路とが、一つおきの磁極対ユニット42により表側と裏側とから形成される。そのため、ロータ4は表裏で周方向の同じ位置の磁極が同時に励磁され、磁束が局所的に集中する。
【0042】
したがって、アキシャルギャップモータ1aの場合、同時に、ロータ4の全ての磁極対ユニット42の表と裏のロータ磁極対41を磁極対ユニット42毎に交互に励磁し、ロータ4のコア利用率を高めることができる。そして、ロータ4の表と裏のロータ磁極対41が周方向にみて交互に励磁されるので、ロータ4は、表裏で周方向の同じ位置の磁極が同時に励磁される場合よりも周方向に磁束が分散され、ヨークをモータ軸4方向に短く(薄く)することが可能になり、小型、軽量にできる。
【0043】
つぎに、励磁中のステータ3a、3bのステータ磁極対31とロータ4の裏表のロータ磁極対41とが略重なり合って対向する磁極対向時と、励磁中のステータ3a、3bのステータ磁極対31とロータ4の裏表のロータ磁極対41とがずれる磁極非対向時とについて説明する。
【0044】
図4(a)、(b)はリラクタンス動作で回転中のアキシャルギャップモータ1aの磁極対向時、磁極非対向時の例を示し、磁極対向時はステータ3a、3bのステータ磁極対31とロータ4の裏表のロータ磁極対41との間に同図(a)の破線の矢印線に示す磁束の磁路が形成される。一方、磁極非対向時は、ステータ3a、3bのステータ磁極対41の対の磁極のうちの少なくとも外径側の磁極は。完全にロータ磁極対41毎のロータコア間の隙間に位置して対向する磁極がなく、同図(b)に示すようにステータ3a、3bのステータ磁極対31とロータ4の裏表のロータ磁極対41との間には磁路は形成されず、実線の矢印線に示すようにステータ3a、ロータ4、ステータ3bの漏れ磁束のループしか形成されない。しかも、ロータ4、ステータ3bは、ステータ3あの磁極の正面には存在しておらず、この漏れ磁束は極めて小さくなる。したがって、磁極非対向時のインダクタンスを小さくでき、トルクアップを図ることができる。なお、図4(a)、(b)の破線は磁極が非対向でずれた状態を示す。
【0045】
以上のように、本実施形態のアキシャルギャップモータ1aの場合、小型・軽量に形成できる。すなわち、(1)ロータ4のヨークを薄くできるので軽量・小型になる。(2)ロータ4の磁極対ユニット42の表と裏でロータ磁極対41を形成するので、磁極対を背中合わせに張り合わせる場合に比して補強材等が少なく、ロータ4が軽量である。(3)磁極非対向時にステータ3a、3bのステータ磁極対41の対の磁極41a、41bのうちの少なくとも外径側の磁極41aが完全に磁極に対向しない状態になるので、インダクタンスを小さくしてモータトルクを向上でき、アキシャルギャップモータ1aの小型・軽量が図られる。(4)ロータ4は各磁極対ユニット42により、ヨークで繋がった表裏のロータ磁極対41が形成されるので、各ロータ磁極対41の磁極41a、41bを個別に形成する場合等に比して組み付けが容易であり、部品コスト、組付コストを低減できる。(4)ロータ4,ステータ31a、31bとも、磁極31a、31b、41a、41bを繋ぐコアが小面積小型であり、圧粉磁心によって容易に製作できる。(5)ステータ3a、3bの外径側端面にステータコイル6のコイルエンドが配置されるので放熱が良く、アキシャルギャップモータ1aの高出力化を図ることができ、同じ出力のモータと比較すると、アキシャルギャップモータ1aが小型・軽量になる。
【0046】
(他の実施形態)
他の実施形態について、図5、図6を参照して説明する。それらの図面において、図1〜図4と同一符号は同一もしくは相当するものを示す
図5の本実施形態のアキシャルギャップモータ1bが一実施形態のアキシャルギャップモータ1aと異なる点は、図6(a)、(b)に示すステータ3a、3bに、ステータ3a、3bそれぞれの各励磁コイル6に重なるように、環状の樹脂ケース11に収容された環状の界磁コイル10a、10bが配置され、界磁コイル10a、10bは各ステータ磁極対31毎の磁極31a、31b間のステータコアの部分を一方向に通る励磁磁束の向きの直流の界磁磁束を発生し、ステータ3a、3b毎に全ステータ磁極対31の励磁磁束に一括して界磁磁束を重畳する。
【0047】
そのため、(1)モータ出力がより増加して向上する。(2)界磁コイル10a、10bは簡単な円環状であるので、製作が容易であり、簡単にトルクアップを図ることができる。
【0048】
したがって、本実施形態の場合、製作が容易な環状の界磁コイル10a、10bにより、ステータ4の表裏の両面の磁束を増加してトルクアップを図り、アキシャルギャップモータ1bのモータ出力を一層向上できる。
【0049】
そして、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、ステータ3a、3bのステータ磁極対31の間隔、ロータ4のロータ磁極対41の間隔、個数は実施形態の45度、8個に限るものではない。また、ステータ3a、3bの駆動相の相数、ステータ磁極対31の間隔、個数も、実施形態の3相、30度、12個に限るものではない。そして、ステータ3a、3bのステータ磁極対31の間隔、個数は、いずれか一方のステータ磁極対31と、他方のステータ磁極対31とは、周方向にみた励磁位置が交互になるように、例えば周方向にロータ磁極対41の1磁極ピッチ間隔ずれて設けられていればよい。
【0050】
つぎに、ステータ3a、3bの各ステータ磁極対31、ロータ4のロータ磁極対41の磁性材は圧粉磁心に限るものではない。
【0051】
つぎに、例えば第1の実施形態のステータ3a、ロータ4、ステータ3bの構成を、複数組み合わせていわゆる多段構成にすることも可能であり、他の実施形態についても同様である。
【0052】
そして、本発明は、電気自動車の駆動モータ等の種々の用途のアキシャルギャップモータに適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1a、1b アキシャルギャップモータ
2 モータ軸
3a、3b ステータ
4 ロータ
6 励磁コイル
10a、10b 界磁コイル
31 ステータ磁極対
41 ロータ磁極対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの両面側それぞれにステータを設けたアキシャルギャップモータであって、
前記両面側のステータは、それぞれ外径側と内径側の対の磁極が形成する径方向のステータ磁極対が周方向に配設され、
前記ロータは、ロータ磁極が両面それぞれに周方向に配設され、
前記両ステータのいずれか一方の前記ステータ磁極対といずれか他方の前記ステータ磁極対の配置は、周方向にみて交互に励磁されるようにずれていることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記ロータは、ロータコアが前記ロータ磁極毎に磁気的に独立し、
前記両ステータの前記ステータ磁極対は、前記ロータ磁極と非対向の状態では、前記ステータ磁極対の前記対の磁極のうちの少なくとも外径側の磁極が前記ロータ磁極毎のロータコア間の隙間に位置することを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記両ステータは、前記ステータ磁極対毎に、前記対の磁極間に配置されて当該ステータ磁極対を励磁するコイルが設けられていることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記両ステータのステータコアは、外径側の磁極部分が内径側の磁極部分よりモータ軸方向に長く、
前記ロータコアは、外径側の磁極部分が内径側の磁極部分よりも軸方向に短いことを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記両ステータは、それぞれ環状の界磁コイルが配置されていることを特徴とするアキシャルギャップモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−193676(P2011−193676A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58974(P2010−58974)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】