説明

アクセスポイント、無線LANシステム、および送信制御方法

【課題】複数のAP20が近接して配置された場合でも無線LAN端末18からの微弱な電波を確実に受信することができる無線LANシステム10を提供する。
【解決手段】電波の送信に際して、それぞれのAP20が他のAP20に送信許可を問い合わせ、他のAP20は、無線LAN端末18からの電波を受信中でなければ、問い合わせに対して送信許可を返し、他のAP20より送信許可を受信してから電波の送信を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアクセスポントを有する無線LANシステム、当該システムに用いられるアクセスポイント、および当該アクセスポイントにおける送信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、複数のアクセスポイントを用いた無線LANシステムにおいて、同一の周波数チャネルを使用するアクセスポイントに対して、それぞれの時間帯に、いずれかのアクセスポイントの通信のみを許可することにより、同一の周波数チャネルを使用することによる混信を回避する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−48356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、光回線等のアクセス回線は数Gbpsの通信帯域のサービスが存在するものの、無線LANの通信帯域は実効速度で数百Mbps程度である。そのため、無線LANを介してアクセス回線に接続する場合、アクセスポイントがボトルネックとなり、アクセス回線を有効利用することができない。これを回避するために、アクセス回線にアクセスポイントを複数接続する場合がある。このような場合、複数のアクセスポイントが近接して配置される場合がある。
【0005】
また、各アクセスポイントは、使用チャネル以外の周波数成分をフィルタにより減衰させてから電波を送信するため、周波数チャネルが十分(例えば5チャネル以上)離れていれば、他のアクセスポイントの使用チャネルに影響を与えることはない。
【0006】
しかし、2つのアクセスポイントが近接して配置されている場合、一方のアクセスポイントから送信された電波のうち、他方のアクセスポイントの使用チャネルの帯域に含まれる成分は、フィルタにより減衰されているものの、ある程度の強度で他方のアクセスポイントに届いてしまう場合がある。
【0007】
そのような場合に、一方のアクセスポイントが無線LAN端末から微弱な電波を受信中に、他方のアクセスポイントが送信を行うと、当該他方のアクセスポイントからの漏洩電波によって、一方のアクセスポイントは当該無線LAN端末からの微弱な電波を受信することができなくなる場合がある。これにより、無線LAN端末との通信が不安定になったり、アクセスポイントの実質的なカバーエリアが狭くなってしまう場合がある。
【0008】
上記特許文献1に開示されている技術は、それぞれのアクセスポイントの通信を独立して実行させることができるため、通信が不安定になるのを防止することはできるものの、いずれかのアクセスポイントによる通信のみを許可するため、アクセス回線の有効利用を図ることはできない。
【0009】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数のアクセスポイントが近接して配置された場合でも無線LAN端末から送信された微弱な電波を確実に受信できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、無線LAN端末と無線通信するアクセスポイントであって、
電波を送信する電波送信部と、
前記無線LAN端末から送信された電波を受信する電波受信部と、
前記電波送信部による電波の送信を制御すると共に、前記電波受信部の受信動作を管理する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記電波送信部によって電波が送信される前に、他のアクセスポイントに送信許可を求めるための送信要求を有線回線を介して送信し、当該送信要求に応答して、前記有線回線を介して他のアクセスポイントから送信許可が通知された場合に、前記電波送信部に電波の送信を許可し、
前記有線回線を介して、他のアクセスポイントから送信要求を受信した場合に、前記電波受信部が前記無線LAN端末から送信された電波を受信中でなければ、当該他のアクセスポイントに、前記有線回線を介して送信許可を通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクセスポイントによれば、複数のアクセスポイントが近接して配置された場合でも無線LAN端末から送信された微弱な電波を確実に受信することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線LANシステム10の構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】AP20の詳細な機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】制御フレームに格納されるデータの構造の一例を示す図である。
【図4】第1の実施形態におけるAP20の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態における無線LANシステム10の動作の一例を示すシーケンス図である。
【図6】第2の実施形態におけるAP20の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態における無線LANシステム10の動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線LANシステム10の構成の一例を示すシステム構成図である。無線LANシステム10は、基地局14を備える。基地局14は、アクセス回線13を介して基幹網11に接続されている。
【0015】
基地局14は、ONU(Optical Network Unit)15および複数のアクセスポイント(AP)20を有する。それぞれのAP20は、LAN(Local Area Network)ケーブル16を介してONU15に接続されている。また、それぞれのAP20は、シリアルケーブル等の通信ケーブル17を介して他のAP20に接続されている。
【0016】
AP20aおよびAP20bは、それぞれ、異なる周波数チャネルを用いて無線LAN端末18aおよび無線LAN端末18bと無線通信する。本実施形態におけるAP20および無線LAN端末18は、IEEE802.11に規定されているDCF(Distributed Coordination Function)方式に基づく無線LAN通信を行う。図1に示すように、本実施形態では、複数のAP20をONU15を介してアクセス回線13に接続するため、アクセス回線13の通信帯域を有効に利用することができる。
【0017】
また、図1に示すように、AP20aおよびAP20bは、基地局14内に互いに近接して配置されるため、使用する周波数チャネルが異なっていても、一方のAP20の送信によって隣接チャネルに漏洩する電波は高い強度で他方のAP20に届く。そのため、本実施形態では、一方のAP20は、他方のAP20が受信中でない場合(電波を送信中の場合または送信も受信も行っていない場合)にのみ電波の送信を行う。
【0018】
図2は、AP20の詳細な機能構成の一例を示すブロック図である。AP20は、有線インターフェイス(I/F)21、有線通信制御部22、無線通信制御部23、無線インターフェイス(I/F)24、受信中フラグ保持部25、および制御インターフェイス(I/F)26を有する。
【0019】
有線I/F21は、有線通信制御部22から受け取ったデータフレームを、イーサネット(登録商標)の規格に基づく電気信号に変換してLANケーブル16を介してONU15へ送る。また、有線I/F21は、ONU15から受け取った電気信号に基づいてデータフレームを作成し、作成したデータフレームを有線通信制御部22へ送る。
【0020】
有線通信制御部22は、有線I/F21より受け取ったデータフレームから通信データを取り出して無線通信制御部23へ送る。また、有線通信制御部22は、無線通信制御部23から受け取った通信データを、所定の構成のデータフレームに加工して有線I/F21へ送る。
【0021】
無線I/F24は、無線LANの規格に基づいて無線LAN端末18と無線通信を行い、無線LAN端末18から受信した電波を復調してデータフレームを作成し、作成したデータフレームを無線通信制御部23へ送る。また、無線I/F24は、無線LANの規格に従い、無線通信制御部23から受け取ったデータフレームに基づいて電波を変調し、変調した電波を無線LAN端末18へ送る。
【0022】
受信中フラグ保持部25は、自AP20が受信中か否かを示す受信中フラグを保持する。本実施形態において、受信中フラグに「1」が設定されている場合、当該受信中フラグは、AP20が無線LAN端末18からの電波を受信中であることを示し、受信中フラグに「0」が設定されている場合、当該受信中フラグは、AP20が無線LAN端末18からの電波を受信中ではない(送信中または送信も受信も行っていない)ことを示している。
【0023】
制御I/F26は、無線通信制御部23から受け取った制御データを、所定の電気信号に変換して通信ケーブル17を介して、当該通信ケーブル17が接続されている他のAP20へ送る。また、制御I/F26は、他のAP20から通信ケーブル17を介して受け取った電気信号に基づいて制御データを作成し、作成した制御データを無線通信制御部23へ送る。
【0024】
無線通信制御部23は、無線LAN端末18宛の通信データを有線通信制御部22から受け取った場合、または、ビーコンの送信タイミングとなった場合に、当該通信データまたはビーコンを無線I/F24を介して無線送信する前に、電波の送信許可を要求するための送信要求を含む制御データを制御I/F26へ送ることにより、通信ケーブル17を介して他のAP20に送信要求を送信する。
【0025】
そして、送信許可を含む制御データを制御I/F26を介して他のAP20から受信した場合、無線通信制御部23は、有線通信制御部22から受け取った通信データを含むデータフレームまたはビーコンフレームを作成し、作成したデータフレームまたはビーコンフレームを無線I/F24へ送ることにより、有線通信制御部22から受け取った通信データを含むデータフレームまたはヒーコンフレームに基づく電波を無線I/F24に送信させる。
【0026】
そして、電波の送信が終了した場合、無線通信制御部23は、送信終了を含む制御データを制御I/F26へ送ることにより、通信ケーブル17を介して他のAP20に送信終了を通知する。
【0027】
また、無線通信制御部23は、無線I/F24の動作を監視し、無線I/F24が受信動作を開始した場合に、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグを「1」に書き換え、無線I/F24が受信動作を終了した場合に、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグを「0」に書き換える。
【0028】
また、送信要求を含む制御データを制御I/F26を介して他のAP20から受信した場合、無線通信制御部23は、受信中フラグ保持部25を参照して、受信中フラグが「0」であるか否かを判定する。受信中フラグが「0」である場合、無線通信制御部23は、後述する擬似CTS(Clear to Send)を無線I/F24へ送ることにより、当該擬似CTSに基づく電波を無線I/F24に送信させる。そして、無線通信制御部23は、送信許可を含む制御データを制御I/F26へ送ることにより、通信ケーブル17を介して他のAP20に送信許可を通知する。
【0029】
そして、送信終了を含む制御データを制御I/F26を介して他のAP20から受信した場合、無線通信制御部23は、後述する擬似ACK(ACKnowledgement)を無線I/F24へ送ることにより、当該擬似ACKに基づく電波を無線I/F24に送信させる。
【0030】
一方、受信中フラグが「1」であった場合、無線通信制御部23は、受信中フラグが「0」になるまで待機する。そして、受信中フラグが「0」になった場合、無線通信制御部23は、後述する擬似CTSを無線I/F24へ送ることにより、当該擬似CTSに基づく電波を無線I/F24に送信させる。そして、送信終了を含む制御データを制御I/F26を介して他のAP20から受信した場合に、無線通信制御部23は、後述する擬似ACKを無線I/F24へ送ることにより、当該擬似ACKに基づく電波を無線I/F24に送信させる。
【0031】
ここで、無線LANで用いられる制御メッセージは、例えば図3のようなデータ構造である。フレーム制御31には、CTSやACK等のフレームの種別を示す2バイトのデータが含まれる。デュレーション32には、当該制御メッセージにより指定される期間を示す2バイトのデータが含まれる。受信局アドレス33には、対象となる装置のMAC(Media Access Control)アドレスが含まれる。FCS(Frame Check Sequence)34には、制御メッセージの誤り訂正等を行うための4バイトのデータが含まれる。
【0032】
図3において、本実施形態における擬似CTSでは、フレーム制御31には種別がCTSであることを示すデータが含まれ、デュレーション32には最大値のデュレーションを示すデータ(オール1)が含まれ、受信局アドレス33には当該擬似CTSの送信元のAP20のMACアドレスが含まれる。
【0033】
また、図3において、本実施形態における擬似ACKでは、フレーム制御31には種別がACKであることを示すデータが含まれ、デュレーション32にはランダムな値のデータが含まれ、受信局アドレス33には当該擬似ACKの送信元のAP20のMACアドレスが含まれる。
【0034】
なお、上記擬似CTSや擬似ACKの受信局アドレス33には、必ずしも送信元のAP20のMACアドレスが含まれている必要はなく、通信相手として存在しない無線LAN端末18のMACアドレスが含まれていればよい。
【0035】
図4は、第1の実施形態におけるAP20の動作の一例を示すフローチャートである。例えば、電源投入後に所定の設定が施されることにより、AP20は、本フローチャートに示す動作を開始する。
【0036】
まず、無線通信制御部23は、無線送信が必要になったか否かを判定する(S100)。無線通信制御部23は、例えば、無線LAN端末18宛の通信データを有線通信制御部22から受け取った場合、または、ビーコンの送信タイミングとなった場合に、無線送信が必要になったと判定する。
【0037】
無線送信が必要になった場合(S100:Yes)、無線通信制御部23は、送信要求を、制御I/F26および通信ケーブル17を介して他のAP20に送信する(S101)。そして、無線通信制御部23は、制御I/F26および通信ケーブル17を介して、他のAP20から送信許可を受信したか否かを判定する(S102)。
【0038】
他のAP20から送信許可を受信した場合(S102:Yes)、無線通信制御部23は、データフレームまたはビーコンフレームを作成し、作成したデータフレームまたはビーコンフレームに基づく電波の送信を無線I/F24に開始させる(S103)。
【0039】
そして、データフレームまたはビーコンフレームに基づく電波の送信が終了した場合(S104:Yes)、無線通信制御部23は、送信終了を、制御I/F26および通信ケーブル17を介して他のAP20に通知し(S105)、再びステップS100に示した処理を実行する。
【0040】
ステップS100において、無線送信が必要になっていない場合(S100:No)、無線通信制御部23は、制御I/F26および通信ケーブル17を介して他のAP20から送信要求を受信したか否かを判定する(S106)。送信要求を受信した場合(S106:Yes)、無線通信制御部23は、受信中フラグ保持部25を参照し、受信中フラグの値が受信中を示す「1」であるか否かを判定する(S107)。受信中フラグの値が「0」である場合(S107:No)、無線通信制御部23は、ステップS109に示す処理を実行する。
【0041】
一方、受信中フラグの値が受信中を示す「1」である場合(S107:Yes)、無線通信制御部23は、無線I/F24の動作を監視して、受信動作が終了したか否かを判定する(S108)。受信動作が終了した場合(S108:Yes)、無線通信制御部23は、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグを「0」にリセットする(S109)。
【0042】
次に、無線通信制御部23は、前述の擬似CTSを作成し、作成した擬似CTSを無線I/F24を介して無線送信する(S110)。そして、無線通信制御部23は、送信許可を、送信要求の送信元のAP20へ、制御I/F26および通信ケーブル17を介して送信する(S111)。
【0043】
次に、無線通信制御部23は、送信許可の送信先のAP20から、制御I/F26および通信ケーブル17を介して送信終了を受信したか否かを判定する(S112)。送信終了を受信した場合(S112:Yes)、無線通信制御部23は、前述の擬似ACKを作成し、作成した擬似ACKを無線I/F24を介して無線送信し(S113)、再びステップS100に示した処理を実行する。
【0044】
ステップS106において、送信要求を受信していない場合(S106:Yes)、無線通信制御部23は、無線I/F24の動作を監視して、受信動作を開始したか否かを判定する(S114)。受信動作を開始した場合(S114:Yes)、無線通信制御部23は、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグに「1」をセットし(S115)、再びステップS100に示した処理を実行する。
【0045】
受信動作を開始していない場合(S114:No)、無線通信制御部23は、無線I/F24の動作を監視して、受信動作を終了したか否かを判定する(S116)。受信動作を終了していない場合(S116:No)、無線通信制御部23は、再びステップS100に示した処理を実行する。一方、受信動作を終了した場合(S116:Yes)、無線通信制御部23は、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグを「0」にリセットし(S117)、再びステップS100に示した処理を実行する。
【0046】
図5は、第1の実施形態における無線LANシステム10の動作の一例を示すシーケンス図である。
【0047】
まず、AP20bは、無線LAN端末18bからの電波の受信を開始した場合に(S300)、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグに「1」をセットする(S301)。一方、AP20aは、通信回線11を介してWebサーバ12から通信データを受信した場合に(S302)、通信ケーブル17を介してAP20bに送信要求を送信する(S303)。
【0048】
AP20aから送信要求を受信した時点では、AP20bは受信動作を継続しているため(S304)、AP20bは受信動作が終了するまで待機する。そして、受信動作が終了した場合、AP20bは、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグを「0」にリセットする(S305)。
【0049】
そして、AP20bは、配下の無線LAN端末18bに擬似CTSを無線送信する(S306)。これにより、AP20bの配下の無線LAN端末18bは、擬似CTSのデュレーションで指定された期間が経過するまで無線送信を停止する。これにより、AP20bは、AP20aから電波が送信されている間に、無線LAN端末18bから電波が送信されることを防止することができる。
【0050】
次に、AP20bは、通信ケーブル17を介してAP20aに送信許可を送信する(S307)。AP20aは、送信許可を受信すると、Webサーバ12から受信した通信データを含むデータフレームを無線LAN端末18aに無線送信する(S308)。
【0051】
データフレームの送信が終了した場合、AP20aは、送信終了を通信ケーブル17を介してAP20bに通知する(S309)。そして、AP20bは、擬似ACKを配下の無線LAN端末18bに無線送信する(S310)。これにより、AP20bの配下の各無線LAN端末18bは、擬似CTSで指定された送信禁止期間が終了したことを認識し、送信が可能な状態に戻る。
【0052】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0053】
上記説明から明らかなように、本実施形態の無線LANシステム10によれば、複数のAP20が近接して配置された場合でも無線LAN端末18から送信された微弱な電波を確実に受信することができる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0055】
上記した第1の実施形態は、DCF方式の無線LANシステムであったが、本実施形態の無線LANシステム10は、PCF(Point Coordination Function)方式である点が異なる。なお、本実施形態の無線LANシステム10のシステム構成は、図1と同様であるため説明を省略する。また、本実施形態におけるAP20は、以下に説明する点を除き、図2を用いて説明した第1の実施形態におけるAP20と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
無線通信制御部23は、無線LAN端末18宛の通信データを有線通信制御部22から受け取った場合、ビーコンの送信タイミングとなった場合、または、ポーリングのタイミングとなった場合に、無線I/F24を介して無線送信する前に、電波の送信許可を要求するための送信要求を含む制御データを制御I/F26へ送ることにより、通信ケーブル17を介して他のAP20に送信要求を送信する。
【0057】
そして、送信許可を含む制御データを制御I/F26を介して他のAP20から受信した場合、無線通信制御部23は、有線通信制御部22から受け取った通信データを含むデータフレーム、ビーコンフレーム、または送信権を与えるための制御パケットを作成し、作成したデータフレーム、ビーコンフレーム、または制御パケットに基づく電波を無線I/F24に送信させる。
【0058】
また、送信要求を含む制御データを、制御I/F26を介して他のAP20から受信した場合、無線通信制御部23は、受信中フラグ保持部25を参照して、受信中フラグが「0」であるか否かを判定する。受信中フラグが「0」である場合、無線通信制御部23は、送信権を与えるための制御パケットの無線送信を停止する。そして、無線通信制御部23は、送信許可を含む制御データを制御I/F26へ送ることにより、通信ケーブル17を介して他のAP20に送信許可を通知する。
【0059】
そして、送信終了を含む制御データを制御I/F26を介して他のAP20から受信した場合、無線通信制御部23は、停止していた送信権を与えるための制御パケットの無線送信を再開する。なお、送信権を与えるための制御パケットを送信する場合も、他方のAP20に送信要求を送信し、送信許可を受信してから当該制御パケットを無線送信する。
【0060】
図6は、第2の実施形態におけるAP20の動作の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する点を除き、図6において、図4と同じ符号を付した処理は、図4における処理と同様であるため説明を省略する。
【0061】
他のAP20から制御I/F26および通信ケーブル17を介して送信要求を受信した場合(S106:Yes)、無線通信制御部23は、自AP20が受信中でないか(S107:No)、受信中であっても受信動作が終了した場合(S108:Yes)、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグを「0」にリセットする(S109)。そして、無線通信制御部23は、送信権を与えるための制御パケットを無線I/F24へ送る動作を停止することにより、ポーリングを停止する(S120)。
【0062】
次に、無線通信制御部23は、送信許可を、送信要求の送信元のAP20へ、制御I/F26および通信ケーブル17を介して送信し(S111)、送信許可の送信先のAP20から、制御I/F26および通信ケーブル17を介して送信終了を受信したか否かを判定する(S112)。
【0063】
送信終了を受信した場合(S112:Yes)、無線通信制御部23は、停止していた、送信権を与えるための制御パケットを無線I/F24へ送る動作を再開することにより、ポーリングを再開し(S121)、再びステップS100に示した処理を実行する。
【0064】
図7は、第2の実施形態における無線LANシステム10の動作の一例を示すシーケンス図である。
【0065】
まず、AP20bは、無線LAN端末18bからの電波の受信を開始した場合に(S320)、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグに「1」をセットする(S321)。なお、AP20bは、AP20aに送信要求を送信し、AP20aから送信許可を受信した後に、送信権を与えるための制御パケットを無線LAN端末18bへ無線送信(ポーリング)し、無線LAN端末18bは、当該制御パケットを受信してからAP20bへデータの無線送信を開始する。
【0066】
一方、AP20aは、通信回線11を介してWebサーバ12から通信データを受信した場合に(S322)、通信ケーブル17を介してAP20bに送信要求を送信する(S323)。AP20aから送信要求を受信した時点では、AP20bは受信動作を継続しているため(S324)、AP20bは受信動作が終了するまで待機する。そして、受信動作が終了した場合、AP20bは、受信中フラグ保持部25内の受信中フラグを「0」にリセットする(S325)。
【0067】
そして、AP20bは、送信権を与えるための制御パケットの送信、すなわち、ポーリングを停止する(S326)。これにより、AP20bの配下の無線LAN端末18bは、送信権を与えるための制御パケットを受信するまでは無線送信を行うことができない。これにより、AP20bは、AP20aから電波が送信されている間に、無線LAN端末18bから電波が送信されることを防止することができる。
【0068】
次に、AP20bは、通信ケーブル17を介してAP20aに送信許可を送信する(S327)。AP20aは、送信許可を受信すると、Webサーバ12から受信した通信データを含むデータフレームを無線LAN端末18aに無線送信する(S328)。
【0069】
データフレームの送信が終了した場合、AP20aは、送信終了を通信ケーブル17を介してAP20bに通知する(S329)。AP20bは、停止していた、送信権を与えるための制御パケットの送信を再開する(S330)。
【0070】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0071】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態において、それぞれのAP20は、通信ケーブル17を介して接続され、通信ケーブル17を介して送信要求や送信許可を送受信したが、本発明はこれに限られず、ONU15およびLANケーブル16を介してこれらの情報を送受信するようにしてもよい。
【0072】
また、上記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0073】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現されてもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0074】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10・・・無線LANシステム、11・・・基幹網、12・・・Webサーバ、13・・・アクセス回線、14・・・基地局、15・・・ONU、16・・・LANケーブル、17・・・通信ケーブル、18・・・無線LAN端末、20・・・AP、21・・・有線I/F、22・・・有線通信制御部、23・・・無線通信制御部、24・・・無線I/F、25・・・受信中フラグ保持部、26・・・制御I/F、31・・・フレーム制御、32・・・デュレーション、33・・・受信局アドレス、34・・・FCS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN端末と無線通信するアクセスポイントであって、
電波を送信する電波送信部と、
前記無線LAN端末から送信された電波を受信する電波受信部と、
前記電波送信部による電波の送信を制御すると共に、前記電波受信部の受信動作を管理する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記電波送信部によって電波が送信される前に、他のアクセスポイントに送信許可を求めるための送信要求を有線回線を介して送信し、当該送信要求に応答して、前記有線回線を介して他のアクセスポイントから送信許可が通知された場合に、前記電波送信部に電波の送信を許可し、
前記有線回線を介して、他のアクセスポイントから送信要求を受信した場合に、前記電波受信部が前記無線LAN端末から送信された電波を受信中でなければ、当該他のアクセスポイントに、前記有線回線を介して送信許可を通知することを特徴とするアクセスポイント。
【請求項2】
請求項1に記載のアクセスポイントであって、
前記制御部は、
前記有線回線を介して、他のアクセスポイントから送信要求を受信した場合に、前記電波受信部が前記無線LAN端末から送信された電波を受信中であれば、前記電波受信部の受信動作が終了した後に、当該他のアクセスポイントに、前記有線回線を介して送信許可を通知することを特徴とするアクセスポイント。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクセスポイントであって、
前記制御部は、
前記有線回線を介して、他のアクセスポイントから送信要求を受信した場合に、前記電波受信部が前記無線LAN端末から送信された電波を受信中でなければ、自アクセスポイントのアドレスを宛先とし、デュレーションを最大値とするCTS(Clear To Send)を前記電波送信部に送信させてから、当該他のアクセスポイントに前記有線回線を介して送信許可を通知することを特徴とするアクセスポイント。
【請求項4】
請求項3に記載のアクセスポイントであって、
前記制御部は、
他のアクセスポイントから通知された送信許可に応じて前記電波送信部に電波の送信を許可した後に、当該電波送信部が電波の送信を終了した場合に、前記有線回線を介して、当該他のアクセスポイントに送信終了を通知し、
前記有線回線を介して、他のアクセスポイントに送信許可を送信した後に、当該他のアクセスポイントから前記有線回線を介して送信終了を受信した場合に、前記CTSに対応するACK(ACKnowledgement)を、自アクセスポイントのアドレスを宛先として、前記電波送信部に送信させることを特徴とするアクセスポイント。
【請求項5】
請求項1または2に記載のアクセスポイントであって、
前記制御部は、
前記電波送信部を介して、配下の無線LAN端末のそれぞれに順次送信権を与えるポーリングを行うことで、それぞれの前記無線LAN端末に電波を送信させており、
前記有線回線を介して、他のアクセスポイントから送信要求を受信した場合に、前記電波受信部が前記無線LAN端末から送信された電波を受信中でなければ、前記電波送信部を介した前記ポーリングを停止した上で、当該他のアクセスポイントに前記有線回線を介して送信許可を通知することを特徴とするアクセスポイント。
【請求項6】
請求項5に記載のアクセスポイントであって、
前記制御部は、
他のアクセスポイントから通知された送信許可に応じて前記電波送信部に電波の送信を許可した後に、当該電波送信部が電波の送信を終了した場合に、前記有線回線を介して、当該他のアクセスポイントに送信終了を通知し、
前記有線回線を介して、他のアクセスポイントに送信許可を送信した後に、当該他のアクセスポイントから前記有線回線を介して送信終了を受信した場合に、前記電波送信部を介した前記ポーリングを再開することを特徴とするアクセスポイント。
【請求項7】
有線回線を介して接続され、無線LAN端末と無線通信する複数のアクセスポイントを備え、
前記複数のアクセスポイントのそれぞれは、
請求項1から6のいずれか一項に記載のアクセスポイントであることを特徴とする無線LANシステム。
【請求項8】
無線LAN端末と無線通信するアクセスポイントにおける送信制御方法であって、
前記アクセスポイントが、
電波の送信に先立って、他のアクセスポイントに送信許可を求めるための送信要求を有線回線を介して送信する送信要求ステップと、
前記送信要求に応答して、前記有線回線を介して他のアクセスポイントから送信許可が通知された場合に、電波を送信する電波送信ステップと、
前記有線回線を介して、他のアクセスポイントから送信要求を受信した場合に、前記電波受信部が前記無線LAN端末から送信された電波を受信中でなければ、当該他のアクセスポイントに、前記有線回線を介して送信許可を通知する送信許可通知ステップと
を実行することを特徴とする送信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−156783(P2012−156783A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13997(P2011−13997)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】