説明

アクチュエータ及びこれを用いた電動電子歯ブラシ

【課題】軸方向往復動を行うシャフトへの通電を安定して行う。
【解決手段】軸方向の往復動が自在に支持されているシャフト11と、このシャフトに設けた可動子ブロックと、交番電流が印加されることで上記可動子ブロック及びシャフトに軸方向往復動を行わせる電磁ブロックとからなるとともに、他部材への通電経路として用いる上記シャフトの周面の多点でシャフトに接触する通電部材4を備える。シャフトの周面の多点で通電部材が接するために、1箇所での接続が不安定になっても他の点での接触によって電気的接続の安定性が保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向の往復動または軸回りの往復回動を行うアクチュエータと、このアクチュエータを歯ブラシの駆動手段として用いている電動電子歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子歯ブラシと称されている歯ブラシがある。これは、口中に入れられる部分と、手に持つ部分との間に人体を通じて微弱電流を流すことで、電位傾斜を利用して歯垢の除去を図る歯ブラシである。
【0003】
このような機能を電動歯ブラシに付加したものとして、特許文献1に示されたものがある。軸方向の往復駆動がなされるとともに先端にブラシ体が連結されるシャフトに対し、電源に接続されている端子板を接触させることで、シャフトを通じてブラシ体に給電している。
【0004】
しかし、シャフトの往復動に伴ってシャフトと端子板とが摺接するものであるために、ブラシ体のブラシを歯に押し当てた時のシャフトの撓みやシャフトの軸方向往復動の際のブレなどが原因でシャフトと端子板との摺動接触部の電気的抵抗値が変化して、通電電流に大きなばらつきを生じさせるという問題を有している。
【特許文献1】特許第2560025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、シャフトへの通電を安定して行うことができるアクチュエータと、このアクチュエータを用いることで安定した電流を流すことができる電動電子歯ブラシとを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係るアクチュエータは、軸方向の往復動が自在に支持されているシャフトと、このシャフトに設けた可動子ブロックと、交番電流が印加されることで上記可動子ブロック及びシャフトに軸方向往復動を行わせる電磁ブロックとからなるリニア振動型のアクチュエータであり、他部材への通電経路として用いる上記シャフトの周面の多点でシャフトに接触する通電部材を備えていることに第1の特徴を有し、軸回りの往復回動が自在に支持されているシャフトと、このシャフトに設けた可動子ブロックと、交番電流が印加されることで上記可動子ブロック及びシャフトに軸回りの往復回動を行わせる電磁ブロックとからなる往復回動型のアクチュエータであり、他部材への通電経路として用いる上記シャフトの周面の多点でシャフトに接触する通電部材を備えていることに第2の特徴を有している。シャフトの周面の多点で通電部材が接するために、高速の軸方向往復動もしくは高速の往復回動を行うシャフトへの給電は、1箇所での接続が不安定になっても他の点での接触によって電気的抵抗値が変化することは殆どなく、安定した電流をシャフトに供給することができる。
【0007】
上記通電部材としては、シャフトの支持用のベアリングを好適に用いることができる。また、シャフトの一端が位置する室内に配された液乃至ゲル状の通電剤を通電部材としてもよい。
【0008】
そして本発明に係る電動電子歯ブラシは、上記のアクチュエータをブラシ体の往復駆動用の駆動源としているとともに、ブラシ体がシャフトを通じて給電される部材であることに特徴を有している。電動歯ブラシとしてだけでなく、安定した電流が流れるために歯垢除去効果が高い電子歯ブラシとしても機能するものとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアクチュエータは、シャフトへの通電(給電)をシャフト周面に多点で接触する通電部材を用いて行うために、シャフトと通電部材との間の電気的抵抗がシャフトに外力が加わっても変化することは殆どなく、安定した電流をシャフトに供給することができる。
【0010】
そして本発明の電動電子歯ブラシにおいては、歯垢除去効果が安定している電子歯ブラシとしても機能するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図1は本発明に係る電動電子歯ブラシの一例を示しており、円筒状のハウジング1内にはリニア振動型のアクチュエータ2と電源としての電池12とが納められており、ハウジング1の先端からは上記アクチュエータ2によって軸方向の往復駆動がなされるシャフト11の先端部が突出して、この先端部にブラシ体5が着脱自在に連結されている。
【0012】
図2〜図4に上記リニア振動型アクチュエータ2の詳細を示す。前記シャフト1の両端寄りの部分を夫々軸方向スライド自在に且つ軸回り回転自在に支持する一対の軸受け部20,20間には、磁性体で形成された円筒状のケース21を配置しており、該ケースの内周にはコイル25と一対の磁極22,22とを有する円筒状の電磁ブロックSを納めてある。
【0013】
前記シャフト11は導電性材で形成されたもので、その中程には永久磁石23とヨーク24とからなる可動子ブロックMが固定されている。そして、可動子ブロックMは上記電磁ブロックSの内周位置に配され、また可動子ブロックMと上記軸受け部20,20との間には、夫々コイルばね29,29が配設される。これらコイルばね29,29は、可動子ブロックM及びシャフト11をばね振動系とするためのものである。
【0014】
電磁ブロックSにおけるコイル25に電流を印加したならば、磁極22と永久磁石23及びヨーク24との間に働く磁気吸引力や磁気反発力で、可動子ブロックM及びシャフト11が軸方向に駆動され、コイル25に逆方向電流を流したならば、可動子ブロックM及びシャフト11が逆方向に駆動されることから、コイル25への印加電流を交番電流とすることで、シャフト11は軸方向の往復駆動がなされることになる。この時、上記ばね振動系の共振周波数となるように往復駆動することで、安定した往復駆動が得られる。
【0015】
そしてこのリニア振動型のアクチュエータ2を前記ハウジング1内に組み込んで、シャフト11の先端にブラシ体5を連結した時、ブラシ体5のブラシ50が植毛された先端部までの通電路として、ここではアクチュエータ2のシャフト11そのものを利用している。
【0016】
ここにおいて、シャフト11は軸方向往復動を行う上に軸回りの回転も自在となっていることから、シャフト11を支持している軸受け部20,20のうちの電池12寄りに位置している軸受け部20に配したベアリング4を利用して、シャフト11への通電路を確保している。
【0017】
すなわち、ベアリング4として、図5及び図6に示すように、アウターリング40と、その内周にあってリテーナ42で保持されている複数の鋼球41とからなるものを用いて、上記アウターリング40をリード線などを介して前記電池12に接続している。上記鋼球41はシャフト11に接すると同時にアウターリング40に接していることから、シャフト11にも通電される。しかもベアリング4における鋼球41は複数個あることから、アウターリング40から鋼球41を通じたシャフト11への給電は、シャフト11の周面における複数点においてなされるものであり、しかもシャフト11に外力が働いて、複数個あるうちのいずれかの鋼球41とシャフト11とが離れたり、電気的抵抗が高くなることがあっても、他の鋼球41はシャフト11に接しているために、シャフト11への給電部における電気的接続が不安定になることはない。
【0018】
一対の軸受け部20,20のうちの電池12寄りの軸受け部20に配したベアリング4でシャフト1への給電を行っているのは、電池12からベアリング4までの配線用リード線の長さを短くするとともに、アクチュエータ2における電磁ブロックが配された部分にリード線を通す必要を無くすためであるが、ブラシ体5側の軸受け部20のベアリングでシャフト11に給電するようにしてもよい。
【0019】
ブラシ体5はその内部にブラシ体50につながる通電路が用意されてるもので、シャフト11との接触面において上記通電路はシャフト11に電気的に接続される。また、ハウジング1の外周面には上記電池12の他極に接続された端子板(図示せず)が配設されており、ハウジング1を手に持って歯ブラシを使用する時、ブラシ50と端子板との間の電気的接続は人体を利用して行う。
【0020】
なお、リニア振動型のアクチュエータ2として、ここでは軸方向の往復動だけをシャフト1に行わせるものを示したが、この他、軸回りの往復回転も行わせるものであってもよい。また、ベアリング4として上記形態のものを示したが、複数点でシャフト11に接するものであれば、どのようなものであってもよい。また、ベアリング4に導電性を有する潤滑グリスを用いる時は、アウターリング40と鋼球41のうちの一方は導電性を持たないものであってもよい。
【0021】
図7に他例を示す。これは上記ハウジング1における電池12の収納部とリニア振動型アクチュエータ2の収納部との間に液体乃至ゲル状の導電剤を満たした通電室15を設け、軸方向往復動を行う前記シャフト11の一端をこの通電室15内に位置させている。電池12に一端を接続した端子も他端を通電室15内に位置させていることから、上記導電剤を介してシャフト11に通電されることになる。なお、上記導電剤はスポンジ状の部材にしみ込ませた状態で通電室15内に配置することが好ましい。
【0022】
図8以降に他の実施の形態の一例を示す。ここで示したアクチュエータ3はシャフト11に軸回りの小角度内の往復回動を与える往復回動型のもので、電磁ブロックSが内面に配された円筒状ケース21内に、シャフト11に装着した可動子ブロックMを配置してある。
【0023】
軸方向Bの両端部がケース21の両端の軸受け部20,20にベアリング4,4を介して軸周り方向Aに回転自在に支持されている上記シャフト11に装着された可動子ブロックMは、シャフト11に圧入固定されたヨーク34と該ヨーク34の外周面に固定した複数枚の平板状永久磁石33とからなる。
【0024】
ヨーク34は図10に示すように外周面に円弧部分と直線部分とが連続する辺がn個(例えば4個)設けられたものとなっている。なおnは少なくとも1以上であればよい。そして上記の各辺の直線部分には底面が平坦なコ字状溝34aが設けられており、図11に示すように、各コ字状溝34a内に平板状永久磁石33を各々嵌め込むことで、平板状永久磁石33の外面とヨーク34の外面とが周方向に隣接配置された状態となり、この状態で各平板状永久磁石33の外面がそれぞれ直線部分を形成し、平板状永久磁石33間におけるヨーク34の外面aがそれぞれ円弧部分を形成している。
【0025】
ここで、平板状永久磁石33はその外面側と内面側とが異極となるように着磁されているとともに、各平板状永久磁石33の外面が同極となるようにヨーク34に取り付けられており、このために、ヨーク34の上記円弧部分が他の磁極を形成することになる。
【0026】
上記ヨーク34の軸方向B両側には非磁性体からなる環状のばね受け部材36がそれぞれ装着されている。ばね受け部材36は後述するばね部材39の端部を回り止め固定するものであり、図10に示すばね受け部材36の片面に設けた複数の突起36aがヨーク34のコ字状溝34aの長手方向の端部に挿入されることによって、ばね受け部材36はヨーク34に対して回り止め状態で装着される。
【0027】
一方、ケース21の内周面に配設固定された筒状の電磁ブロックSは、磁路を励磁するためのコイル35、コイル35が巻回された巻線ボビン30、巻線ボビン30の軸方向B両側にそれぞれ配されたヨーク31,31とからなるもので、各ヨーク31の内周面には、図11に示すように、n個以下の磁極子32(例えば、4個)が設けられており、ヨーク31の磁極子32間は切欠されている。なお磁極子32の数は少なくとも1個以上であればよいが、出力を高める場合は磁極子32の数を平板状永久磁石33の数(4個)と同数まで増やすことが好ましい。
【0028】
ここで、巻線ボビン30の軸方向B一方側に位置するヨーク31に設けた磁極子32aと、他方のヨーク31に設けた磁極子32bとは軸回り方向においてずらした位置に設けている。また本例では可動子ブロックMの回転初期において、一方のヨーク31の磁極子32aが平板状永久磁石33の軸周り方向Aの一端部とヨーク34との一方の接点38aに対向して位置し、他方のヨーク31の磁極子32bが当該平板状永久磁石33の軸周り方向Aの他端部とヨーク34との他方の接点38bに対向して位置するように設定してある。これは、同一の平板状永久磁石33に対する一方のヨーク31の磁極子32aとのギャップ、他方のヨーク31の磁極子32bとのギャップを略同じとするためである。
【0029】
今、図11に示す状態でコイル35に一方向の電流を流すと、平板状永久磁石33は一方のヨーク31の磁極子32aから磁気反発力を受け、同時に他方の磁極子32bから磁気吸引力を受けることで軸周りの一方向A2に大きな力で回動し、コイル35に他方向の電流を流すと当該平板状永久磁石33は一方のヨーク31の磁極子32aからは磁気吸引力を受け、同時に他方の磁極子32bからは磁気反発力を受けることで軸周りの他方向A1に大きな力で回動する。また、このものでは磁極子32a,32bとヨーク34の外面との間でも可動子ブロックMを回転させる磁気力が発生する。
【0030】
ここにおいて、コイル35に電流を流していないときには平板状永久磁石33がヨーク31に及ぼす磁力と後述するばね部材39a,39b,39cによる回転方向のばね力とが釣り合う位置で可動子ブロックMが停止しており、コイル35に一方向の電流を流すと一方のヨーク31の磁極子32aがN極、他方のヨーク31の磁極子32bがS極となり、可動子ブロックMは軸周りの一方向A1(或いはA2)に回動し、コイル35に他方向の電流を流すと一方のヨーク31の磁極子32aがS極、他方のヨーク31の磁極子32bがN極となり、可動子ブロックMは軸周りの他方向A2(或いはA1)に回動する。従って、コイル35に交番電流を流すことによって可動子ブロックM及びシャフト11に軸周り方向Aに小角度で往復回動させることができる。
【0031】
次に上記ばね部材39a,39b,39cについて説明すると、ねじりコイルばねであるこれらばね部材39a,39b,39cは、軸回りAにおける往復回動シャフト11及び可動子ブロックMの動きをばね振動系とするもので、ばね部材39aは一端が軸受け部材20に回り止め固定され、他端が可動子ブロックMに回り止め固定されている。ばね部材39bは可動子ブロックMに一端が回り止め固定され、他端が吸振錘37の一端側に回り止め固定されている。更にばね部材39cは一端を上記吸振錘37の他端側に回り止め固定され、他端が軸受け部材20に回り止め固定されている。その重心位置Gは可動子ブロックMの回転軸線Dと同軸上に位置している上記吸振錘37は、シャフト11が中央に通されたもので、可動子ブロックMが軸回りAに回動する時、逆位相で回転するようにばね系を構成してある。また、これらばね部材39a,39b,39cは可動子ブロックMの回転角度を許容範囲内に規制するものとしても機能している。
【0032】
もっとも上記ばね部材39のみで可動子ブロックMの回転を規制する構造では、外部から可動子ブロックMを軸周り方向Aに許容範囲以上に回転させる力が加わったときには可動子ブロックMが許容範囲を越えて回転する可能性があるために、ここでは図8に示すようにシャフト11の一端を断面D字状をしたDカット面14aとするとともに、軸受け部材20にDカット面14aに係合するストッパ面20aを設けることで、シャフト11の回転角を規制している。
【0033】
そして本例におけるシャフト11への給電は、前記実施例のものと同様に、シャフト11を回転自在に支持している一対のベアリング4,4のうちの一端側のベアリング4を用いて行っている。図11に上記往復回動型アクチュエータ3をブラシ体5の往復回動駆動用に用いた電動電子歯ブラシを示す。
【0034】
この往復回動型アクチュエータ3においても、前述の導電剤を満たした通電室15を利用した給電を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態の一例の断面図である。
【図2】同上のリニア振動型アクチュエータの斜視図である。
【図3】同上の分解斜視図である。
【図4】同上のケース及び電磁ブロックを外した状態の斜視図である。
【図5】同上のベアリングの斜視図である。
【図6】同上のベアリングの正面図である。
【図7】他の実施形態の一例の断面図である。
【図8】(a)は他例のアクチュエータの縦断面図、(b)は横断面図である。
【図9】同上の分解斜視図である。
【図10】同上のシャフトとヨークの斜視図である。
【図11】(a)は同上の部分縦断面図、(b)は横断面図である。
【図12】同上のアクチュエータを備えた電動電子歯ブラシの断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ハウジング
2 アクチュエータ
4 ベアリング
5 ブラシ体
11 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の往復動が自在に支持されているシャフトと、このシャフトに設けた可動子ブロックと、交番電流が印加されることで上記可動子ブロック及びシャフトに軸方向往復動を行わせる電磁ブロックとからなるリニア振動型のアクチュエータであり、他部材への通電経路として用いる上記シャフトの周面の多点でシャフトに接触する通電部材を備えていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
軸回りの往復回動が自在に支持されているシャフトと、このシャフトに設けた可動子ブロックと、交番電流が印加されることで上記可動子ブロック及びシャフトに軸回りの往復回動を行わせる電磁ブロックとからなる往復回動型のアクチュエータであり、他部材への通電経路として用いる上記シャフトの周面の多点でシャフトに接触する通電部材を備えていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
通電部材はシャフトの支持用のベアリングであることを特徴とする請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
通電部材は、シャフトの一端が位置する室内に配された液乃至ゲル状の通電剤であることを特徴とする請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクチュエータを、ブラシ体の往復駆動源としているとともに、ブラシ体がシャフトを通じて給電される部材であることを特徴とする電動電子歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−173468(P2008−173468A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330914(P2007−330914)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】