説明

アクチュエータ

【課題】 外部に突出する端子を廃止して薄型化したアクチュエータを提供することを課題とする。
【解決手段】 アクチュエータ(1)は、ステータコア(6)と、ステータコア(6)を覆うボビン(7)と、ボビン(7)の周囲に巻回したコイル(5)とを有するステータ(2)と、ステータ(2)を取り付けたプリント基板(3)と、ステータ(2)に通電することにより回動するロータ(4)とを有する。コイル(5)は、ボビン(7)への巻回した巻回端末部(5a、5b)が形成されている。この巻回端末部(5a、5b)を基板(3)上に設けたランド(3a、3b)に取り付ける。これにより外部に突出する端子を設けないでコイル(5)とプリント基板(3)との導通をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカメラ等の撮影レンズやシャッタ開口を開閉するセクタ等のカメラ要素を駆動するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラの撮影レンズやシャッタといったカメラ要素は、アクチュエータによって駆動するのが一般的であるが、このようなアクチュエータは、ボビンにコイルを巻回して構成したステータと、そのコイルに通電することによって回動するロータとを備えている。ここで、コイルに通電するため、コイルと基板とを導通させるが、コイルを基板に接続するためにコイルには外部に突出した端子が設けられている。このような端子の一例を示すと以下の如くである。
【0003】
図1は、特許文献1に開示されたカメラの駆動装置の平面図である。駆動装置は、開口51aを備えたベース部材51に、ボビン52、53に巻回したコイル54、55を有するステータ56、57と、これらのステータ56、57に通電することにより回動するロータ58が搭載されて構成されている。図2は、図1に示した駆動装置のボビン52の両端に位置するつば部52aで断面とした断面図である。つば部52aには、図2に示すようにステータ56を構成するコイル54と基板61とを接続し導通を得るための端子59が設けられている。このように、端子59は、コイル54から外部に突出した状態で設けられている。また、同様にボビン53の両端に位置するつば部53aにも外部に突出した端子60が設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−236842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載したようなコイルの外部に突出した形態の端子を備えていると、駆動装置の薄型化が困難となる。特に、昨今、カメラの小型化、薄型化が求められている状況下、これに伴ってカメラを構成する各部品の小型化、薄型化が求められ、このような要請はカメラに組み込まれるアクチュエータにも当然及ぶものであるが、前記のような端子を備えたアクチュエータでは、このような要請に応えることは困難であった。
【0006】
そこで本発明は、外部に突出する端子を廃止して薄型化したアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明のアクチュエータは、ステータコアと当該ステータコアを覆うボビンと当該ボビンの周囲に巻回したコイルとを有するステータと、当該ステータを取り付けたプリント基板と、前記ステータに通電することにより回動するロータとを有するアクチュエータであって、前記コイルの前記ボビンへの巻回端末部が前記プリント基板と導通接続することを特徴とする(請求項1)。
【0008】
このような構成のアクチュエータとすることにより、外部に突出する端子を備えていなくてもコイルと基板とを導通させることができ、アクチュエータを薄型に成形することができる。従来のコイルに端子を設けた構成であると、端子を設けた部分に導線を巻回する場合に、巻回方向を変換しなければならないことがあるが、本願発明のように外部に突出する端子を備えない構成とした場合には、前記コイルの全域に亘って巻回方向をステータと略同一方向とすることができる。このように巻回方向を同一とすることにより、コイルの巻回作業の作業性が向上し、コイル巻き作業の全工程を容易に機械化できる。
【0009】
上記のようなアクチュエータにおいて、前記ステータコアと前記ボビンとはインサート成形により一体成形された構成とすることができる(請求項2)。このような構成とすることにより、アクチュエータの組立工程を簡略化することができる。
【0010】
さらに、前記のようなアクチュエータでは、前記ボビンの端部に形成した溝に前記巻回端末部を形成する導線を巻回した構成とすることができる(請求項3)。このような溝を形成すれば、前記巻回端末部を形成する導線が解れないように強固に巻回できる。また、その溝を、巻回端末部とプリント基板とを固定する接着剤又ははんだを溜める接着剤又ははんだ溜まりとして機能させることもでき、コイルの巻回作業の作業性が向上すると共に、ステータをプリント基板上に強固に接着し、取り付けることができる。
【0011】
また、前記のようなアクチュエータでは、前記コイルをエナメル系樹脂で被覆した導線により形成し、前記巻回端末部を前記プリント基板にエナメル分解性導電接着剤により固定して導通接続したので、アクチュエータを薄型に形成することができる。ここで、前記「エナメル分解性導電接着剤」とは、エナメル系樹脂を特定の温度条件下にて分解させた後、熱硬化性樹脂のポリマー化反応を促進させることによって分解、接着、導通を一工程で行うことができるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボビンへの巻回端末部がプリント基板と導通接続されるので、アクチュエータを薄型に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図3は、実施例1のアクチュエータ1の分解斜視図である。アクチュエータ1は、ステータ2と、ステータ2を取り付けるプリント基板である基板3(本実施例ではフレキシブルプリント基板)、さらに、図示しない台板に軸支されるロータ4とからなる。図4は、ステータ2の拡大した平面図であり、図5は、ステータ2を基板3に取り付けた状態の側面図である。なお、図4では、ステータ2の構成が明確となるように、コイル5を点線で示している。
【0015】
ステータ2は、図4に示すように、ステータコア6と、ステータコア6を覆う樹脂製のボビン7と、ボビン7の周囲に巻回したコイル5とを有している。この実施例では、U字状のステータコア6とボビン7とをインサート成形により一体成形としている。ステータ2は、図4に示すようにボビン7からステータコア6が露出して形成された第一磁極6a、第二磁極6b、第三磁極6cを備えている。これらの第一磁極6a、第二磁極6b、第三磁極6cは、ステータコア6とボビン7とをインサート成形により一体成形するための型の内部にステータコア6を支持する際に、前記型内の支持部に当接させることによって形成したものである。
ボビン7は、第1磁極6aが設けられコイル5の巻き崩れ防止凸部を兼ねる端部7aと、第2磁極6bが設けられコイル5の巻き崩れ防止凸部を兼ねる端部7bと、第3磁極6cが設けられコイル5の巻き崩れ防止凸部を兼ねる凸部7cと、コイル巻回部7dとを備えている。
ここで、ステータコア6とボビン7との一体成形について詳説すると、まず磁性材からなるU字状のステータコア6を、ボビン7を構成する樹脂を流し込むための空間が形成されるように型内に浮かせた状態で収容する。この際、ステータコア6を支持するためにステータコア6の一部を型内の支持部に当接させるが、このとき、型内の支持部と当接した部分はボビン7を形成する樹脂で覆われないためステータコア6がボビン7から露出する。そこで、磁極を形成したい部分に型内の支持部を当接させて型内に樹脂を流し込み、ボビン7を形成すれば、ボビン7からステータコア6を露出させ、磁極を形成することができる。このような工程を経るインサート成形を行うことにより、本実施例では、ステータコア6とボビン7とを一体成形すると共に、前記のような第一磁極6a、第二磁極6b、第三磁極6cが形成されている。
【0016】
ステータ2は、前記のようにコイル5を備えているが、本実施例では、U字状のボビン7の両側にそれぞれ導線を巻回し、2つのコイル5を備えた構成となっている。すなわち、本実施例のステータ2は、第一ステータ2a、第二ステータ2bの二個のステータを一個に纏め、一体とした構成となっている。このようなステータ2のコイル5を形成する導線は、エナメル系樹脂で被覆されている。また、それぞれのコイル5は、第一ステータ2a、第二ステータ2bの両端部(ボビンの凸部7a、7b)に露出するように巻回した巻回端末部5a、5bを形成している。このようなコイル5は、巻回方向を巻回端末部5aから巻回端末部5bを含む全域に亘ってステータ2と略同一方向としている。巻回方向をコイル5の全域に亘ってステータ2と略同一方向とすることにより、全域に亘って巻回機械の巻回方向を変えずにコイル5を作成することができる。
【0017】
以上のように構成したステータ2は、巻回端末部5a、5bを基板3上のランド3a、3bに当接させ、基板3とステータ2との導通を得た状態で設置する。このとき、巻回端末部5a、5bと基板3とはエナメル分解性導電接着剤を用いて接着して導通接続する。巻回端末部5a、5bとランド3a、3bとの導通は上記のように当接させて直接接した部分で導通接続してもよいし、エナメル分解性導電接着剤を介して導通接続させてもよい。このエナメル分解性導電接着剤としては、株式会社エヌティ・サクセス製のNT−389を用いた。エナメル分解性導電接着剤は、コイル5を形成する導線を被覆しているエナメル系樹脂を剥離しない状態のまま塗布し、巻回端末部5a、5bと基板3のランド3a、3bとを接着する。エナメル分解性導電接着剤は、導線を被覆するエナメル系樹脂を分解し、内部の金属線を剥き出しにした状態で両者を接合することができるので、接着剤の塗布以外の作業をすることなく基板3とステータ2との導通を得ることができる。
【0018】
以上のように構成されたアクチュエータ1は、基板3を介してコイル5に通電することによってロータ4を回動させることができる。
【実施例2】
【0019】
次に本発明の実施例2について、図6に基づいて説明する。実施例2のアクチュエータ21が、実施例1のアクチュエータ1と異なる点は、実施例2のアクチュエータ21がボビン7に実施例1のアクチュエータ1では形成されていない溝22が形成されている点である。その他の点は、実施例1のアクチュエータ1と実施例2のアクチュエータ21とは同一の構成となっている。従って、説明の都合上、図6では巻回端末部5a、5bを省略してあるが、実施例2のアクチュエータ21も実施例1のアクチュエータ1と同様に巻回端末部5a、5bを備えている。
【0020】
本実施例における溝22は、主として巻回端末部5a、5bを形成する導線を絡ませるための溝である。このような溝22に導線を絡ませ、巻回するようにすれば、導線の解れを防止することができる。
【0021】
また、溝22には、図6に示したように基板3に当接させる側に深く切り込まれた接着材溜まり22aが形成されている。このような接着剤溜まり22aが形成されていることにより、エナメル分解性導電接着剤を用いた巻回端末部5a、5bと基板3のランド3a、3bとの接着が寄り確実なものとなり、また、その接着作業性も大幅に向上させることができる。
【0022】
なお、実施例2の説明において、実施例1のアクチュエータ1の構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を用いている。
【0023】
実施例1または2の構成のステータ2を基板3に取り付けるには、図7に示すように、複数の基板3が1枚のシート状になったシート33に取り付けるのが好ましい。シート33には、複数の基板3が脚部33aを介して一体的に設けられている。基板3は、脚部33a以外は穴部33bによりシート33からは離れている。このため、脚部33aを切り取れば基板3はシート33から離れるようになっている。シート33の各基板3には、所定位置にエナメル分解性電極接着剤を予め塗布しておき、そこにステータ2を載置して一度に複数のステータ2を基板3に取り付ける。その後、脚部33aをシート33から切り離して各基板3を取り出すようにすればよい。
【0024】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。例えば、基板3とコイル5とをエナメル分解性電極接着剤で固着したが、これに限らず、はんだ又はエナメル分解はんだで固着させてもよい。これらのはんだを用いる場合は、実施例2のように接着剤溜まり22aを設けるほうが好ましい。なぜなら、はんだごての先端がはんだの中まで入れられるのでぬれ性がよくなるためである。
また、エナメル系樹脂の除去は、エナメル分解性接着剤やエナメル分解はんだに限らず、レーザー照射やヒーター等の熱源で除去したりカッタ等でこすってはがしてもよい。
また、ステータ2と基板3とは必ずしも接着剤等で固着する必要はなく、巻回端末部5a、5bとランド3a、3bとが導通されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】特許文献1に開示された従来のカメラの駆動装置の平面図である。
【図2】図1に示した駆動装置のボビンの両端に位置するつば部で断面とした断面図である。
【図3】実施例1のアクチュエータの分解斜視図である。
【図4】図3に示したステータの拡大した平面図である。
【図5】ステータをプリント基板に取り付けた状態の側面図である。
【図6】実施例2のアクチュエータであって、巻回端末部の導線を省略した斜視図である。
【図7】ステータをプリント基板に取り付けるときの例である。
【符号の説明】
【0026】
1、21 アクチュエータ
2 ステータ
2a 第一ステータ
2b 第二ステータ
3 基板
3a、3b ランド
4 ロータ
5 コイル
5a、5b 巻回端末部
6 ステータコア
6a 第一磁極
6b 第二磁極
6c 第三磁極
7 ボビン
22 溝
22a 接着剤溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと当該ステータコアを覆うボビンと当該ボビンの周囲に巻回したコイルとを有するステータと、当該ステータを取り付けたプリント基板と、前記ステータに通電することにより回動するロータとを有するアクチュエータであって、
前記コイルの前記ボビンへの巻回端末部が前記プリント基板と導通接続される
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記ステータコアと前記ボビンとはインサート成形により一体成形されたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記ボビンの端部に形成した溝に前記巻回端末部を形成する導線を巻回したことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアクチュエータにおいて、前記コイルをエナメル系樹脂で被覆した導線により形成し、前記巻回端末部を前記プリント基板にエナメル分解性導電接着剤により固定して導通接続したことを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−136106(P2006−136106A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321437(P2004−321437)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】