説明

アクチュエータ

【課題】 人間の柔らかな筋肉と同様な性質を有する人工筋肉としてのアクチュエータであって、しかも、特別な材料を使用する必要性がなく設計の自由度の高いアクチュエータを提供する。
【解決手段】磁界体とコイル体と結合体とを有するアクチュエータであって、磁界体は、円筒形状の周ヨークと、その周ヨークの内側に設けた磁石を有し、それにより、周ヨークの内面と磁石の外面との間の空間に磁界を生じ、コイル体は電気の良導体を材料とする線を円筒形状に巻いた巻線を有し、結合体は、巻線が磁界を生じている空間に嵌る配置で、かつ所定の範囲内において変位可能となるように、記磁界体とコイル体とを結合し、コイル体の巻線に電流を流すことにより磁界体とコイル体との間で電磁力が作用するようにしたアクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータの技術分野に属する。特に、直進運動する出力を得ることができるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
直進運動する出力を得るアクチュエータとしては、空気シリンダー、油圧シリンダーが良く知られている。これらのアクチュエータは加圧された空気、油をピストンとシリンダーによって密閉された室内に送り込んで、その圧力でピストンを直進運動させる構造を有する。ピストンとシリンダーはその直進運動が可能なように摺動面で接しているが、その摺動面の隙間から空気、油が漏れることがあってはならない。そのため、その隙間は僅少であって、ピストンとシリンダーは機械的に強固に結合した構造となっている。
その構造は多くの用途において問題となることはないのであるが、義手、義足等の人工骨格に運動を与える用途、または介護ロボットのような用途では、必ずしも最適なアクチュエータではない。そのような用途においては、人間の柔らかな筋肉と同様な性質を有する人工筋肉としてのアクチュエータが求められている。
【0003】
そのようなアクチュエータとして、直線的な動作を確実に得ることができるアクチュエータの発明がある(特許文献1)。そのアクチュエータは、ポリアニン、ポリピロール等のπ共役型高分子材料でなる伸縮素子と、伸縮素子に電圧を印加するための電源部2及び電圧印加部と、電流を伸縮素子から外部に導通させるための電解質部と、を有し、電圧印加部に正の電位を印加すると伸縮素子が伸張し、電圧印加部に負の電位を印加すると伸縮素子が収縮するようになしたアクチュエータ本体に、伸縮素子の伸縮によって直線的に動作される移動部を設けた構造を有する。
また、伸縮量の大きな圧電式アクチュエータの発明がある(特許文献2)。そのアクチュエータは、全体的に湾曲しており、長尺シート状の圧電シートに基材を貼りあわせた積層体であるユニモルフ型圧電素子と、このユニモルフ型圧電素子の一端を支える支持部材とからなり、前記圧電シートに通電して基材及び圧電シートを撓ませることにより、ユニモルフ型圧電素子の他端で負荷を前記支持部材を基準にして変位させる構造を有する。
【特許文献1】特開2000−133854
【特許文献2】特開2000−236682
【0004】
しかしながら、この従来のアクチュエータにおいては、電気的な入力を機械的な出力に変換する変換部として特別な材料が使用される。すなわち、特許文献1においてはπ共役型高分子材料が使用され、特許文献2においてはPVDF(ポリふっ化ビンリデン)等の圧電シートが使用される。変換部にそれらの材料を使用するときに、その要求特性に合致する特性の材料を選択可能であれば問題はない。しかし現状においては、材料の選択範囲は狭く、変換部の特性は材料特性による制約を受け易く、実用的なアクチュエータを設計する上で問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものである。その目的は、人間の柔らかな筋肉と同様な性質を有する人工筋肉としてのアクチュエータであって、しかも、特別な材料を使用する必要性がなく設計の自由度の高いアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るアクチュエータは、磁界体とコイル体と結合体とを有するアクチュエータであって、前記磁界体は、円筒形状の周ヨークと、その周ヨークの内側に設けた磁石を有し、それにより、前記周ヨークの内面と前記磁石の外面との間の空間に磁界を生じ、前記コイル体は電気の良導体を材料とする線を円筒形状に巻いた巻線を有し、前記結合体は、前記巻線が前記磁界を生じている空間に嵌る配置で、かつ所定の範囲内において変位可能となるように、前記磁界体と前記コイル体とを結合し、前記コイル体の巻線に電流を流すことにより前記磁界体と前記コイル体との間で電磁力が作用するようにしたものである。
また本発明の請求項2に係るアクチュエータは、請求項1に係るアクチュエータにおいて、前記磁性体と前記コイル体とは両者の合計が3個以上であって、それらが交互に配置されて前記結合体により連結した構造を有するようにしたものである。
また本発明の請求項3に係るアクチュエータは、請求項1または2に係るアクチュエータにおいて、前記磁石は、前記周ヨークの一端の内側に同軸で設けた円柱形状のN極ヨークと、前記周ヨークの他端の内側に同軸で設けた円柱形状のS極ヨークと、前記N極ヨークにN極が前記S極ヨークにS極が磁気的に結合する永久磁石とを有するようにしたものである。
また本発明の請求項4に係るアクチュエータは、請求項1〜3のいずれかに係るアクチュエータにおいて、前記結合体は柔軟性を有する材料からなるスリーブであって、そのスリーブの内面において前記磁界体の外面および前記コイル体の外面に結合し、すくなくとも前記スリーブの内面と前記コイル体の外面とが結合する部分は前記コイル体の中央部分だけであるようにしたものである。
また本発明の請求項5に係るアクチュエータは、請求項1〜4のいずれかに係るアクチュエータにおいて、前記磁石と前記周ヨークを一体に結合するとともに、前記磁界体に入り込む前記コイル体を当接停止させる支持部材を有するようにしたものである。
また本発明の請求項6に係るアクチュエータは、請求項1〜5のいずれかに係るアクチュエータにおいて、前記コイル体は全体として柔軟性を有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係るアクチュエータによれば、磁界体とコイル体と結合体とを有するアクチュエータであって、磁界体は円筒形状の周ヨークと、その周ヨークの内側に設けた磁石を有し、その磁界体により周ヨークの内面と磁石の外面との間の空間に磁界が生じ、コイル体は電気の良導体を材料とする線を円筒形状に巻いた巻線を有し、結合体は、巻線が磁界を生じている空間に嵌る配置で、かつ所定の範囲内において変位可能となるように、磁界体とコイル体とを結合し、コイル体の巻線に電流を流すことにより磁界体とコイル体との間で電磁力が作用する。すなわち、磁界体とコイル体と結合体とにより直線運動の出力を得ることでき、それら磁界体とコイル体と結合体とは、前述したピストンとシリンダーのように、機械的に強固な結合をさせる必要性がなく、磁界体とコイル体との間には隙間が存在し、結合体の材料は柔軟性の材料でもよく選択範囲は広い。したがって、人間の柔らかな筋肉と同様な性質を有する人工筋肉としてのアクチュエータであって、しかも、特別な材料を使用する必要性がなく寸法、出力、等において設計の自由度の高いアクチュエータが提供される。
また本発明の請求項2に係るアクチュエータによれば、磁性体とコイル体とは両者の合計が3個以上であって、それらが交互に配置されて結合体により連結した構造を有する。したがって、全体としての柔軟性と伸縮量が増大する。
また本発明の請求項3に係るアクチュエータによれば、磁石は、周ヨークの一端の内側に同軸で設けた円柱形状のN極ヨークと、周ヨークの他端の内側に同軸で設けた円柱形状のS極ヨークと、N極ヨークにN極がS極ヨークにS極が磁気的に結合する永久磁石とを有する。したがって、N極ヨークとS極ヨークと永久磁石を組み合せた磁石であるから形状、永久磁石の特性、等についての選択の自由度が大きく、その結果、周ヨークとの間に生じる磁界を適正化することが可能となる。したがって、寸法、出力、等において設計の自由度が増大する。
また本発明の請求項4に係るアクチュエータによれば、結合体は柔軟性を有する材料からなるスリーブであって、そのスリーブの内面において磁界体の外面およびコイル体の外面に結合し、すくなくともスリーブの内面とコイル体の外面とが結合する部分はコイル体の中央部分だけである。したがって、磁界体とコイル体との間における相対的な直進運動がスリーブによって制約される程度を極めて小さくすることができ、結果として柔軟性と伸縮量が増大する。
また本発明の請求項5に係るアクチュエータによれば、支持部材により磁石と周ヨークが一体に結合されるとともに、磁界体に入り込むコイル体が当接停止される。したがって、支持体とストッパーの2つの役割を1つの支持部材に持たせることができる。
また本発明の請求項6に係るアクチュエータによれば、コイル体は全体として柔軟性を有する。したがって、アクチュエータとしても柔軟性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。本発明のアクチュエータにおける構成について斜視図を図1に、断面図を図2に示す。図1、図2において、100a,100bは磁界体、101a,101bは永久磁石、102a,102bはS極ヨーク、103a,103bはN極ヨーク、104a,104bは周ヨーク、105a,105bは支持部材、200aはコイル体、300a,300bは結合体である。
本発明のアクチュエータは磁界体とコイル体と結合体とを主要な構成要素とする。図1に示す一例においては、磁界体は100aと100bの2つが示され、コイル体は200aの1つが示され、結合体は300aの1つが示されている。図1に示すように、磁界体100a、100bとコイル体200aは、磁界体100a、100bがコイル体200aをその両端から嵌め込むように配置されている。図2においては、磁界体100a、100bとコイル体200aとが嵌め合わされている配置が判り易く示されている。嵌め合わされている部位は非接触、または一部分が接触していても強固ではなく、接触部分の周囲において間隙を有している。
【0009】
この配置を緩やかに保持するのが結合体300aである。緩やかに保持するというのは、所定の範囲ではあるが本来のアクチュエータにおける出力の変位方向(直進運動の方向)に限らず自由な変位を可能とするものである。結合体300aは、アクチュエータを駆動したときの出力の変位方向に連れて変位するとともに、出力軸方向磁界体100a、100bとコイル体200aとの嵌め合わせが外れないようにそれらの位置関係を規定する機能を有する。また、磁界体100a、100bとコイル体200aとが間隙を有して嵌め合わされいるため、磁界体100a、100bの軸方向とコイル体200aの軸方向とを相対的にずらすことが可能となっている。
結合体300aとしては、そのような自由な変位を可能とするために、たとえば、柔軟性を有する材料からなるスリーブを使用する。スリーブである結合体300aは、図1に一例を示すように、磁界体100a、100bとコイル体200aと内側に収容する。スリーブである結合体300aの内面は、磁界体100a、100bの外面(周囲の部分)と接合している。また、スリーブである結合体300aの内面は、コイル体200aの外面(周囲の部分)における中央部分においてだけ接合している。
【0010】
図1、図2に示す本発明のアクチュエータにおける構成は、2つの磁界体100a、100b、1つのコイル体200a、1つの結合体300aからなるが、これは説明のための一例である。多数の磁界体とコイル体とを互い違いに嵌め合わせ、スリーブである結合体300aにより包み込むように構成することができる。すなわち、磁界体とコイル体とを互い違いに連結することにより、全長の長いアクチュエータを形成することができ、それにより全体としての柔軟性と伸縮量が増大する。また、各連結部分ごとにアクチュエータの出力を制御したり、各連結部分ごとに変位の自由度の一部を拘束することにより、多様な動作を行わせることができる。
【0011】
磁界体100aと磁界体100bとは同一の構成を有するから、一方についてだけ説明する。磁界体100aは、図2に示すように、永久磁石101a、S極ヨーク102a、N極ヨーク103a、周ヨーク104a、支持部材105aを有する。
永久磁石101aは磁界体100 aにおいて磁界を発生させる磁石である。磁石としては、永久磁石101aに代えて電磁石を使用することもできるが、ここでは一例として、永久磁石101aを使用する。図2に示す一例において、永久磁石101aは円柱形状となっている。円柱形状としたのは、アクチュエータの限られた内部空間において磁石の最大体積を得ることができ、空間を有効利用できる形状だからである。永久磁石101aの形状は、必ずしも円柱形状でなくてもよく、たとえば、角柱形状、円筒形状、リング(ドーナツ)形状、等の形状のものであってもよい。永久磁石101aは、周知のように、保磁力が極めて大きい強磁性体のことを指す。永久磁石では最大の残留磁化Bとそのときの外部磁化の値Hの積である最大磁気エネルギー積BHmaxが性能指針である。その値が大きいほど小さいサイズで強い磁界を発生させることができる。また、磁気特性が安定し機械的な強度を有し加工性に優れていることも永久磁石101aの特性として重要である。
【0012】
本発明において使用される永久磁石には特に限定はなく、通常知られている永久磁石を使用することができる。たとえば、酸化鉄を主原料にして焼き固めて作るフェライト磁石、フェライト磁石などの磁石を砕いてゴムや合成樹脂に練り込んだ柔軟性のあるボンド磁石、アルミニウム、ニッケル、コバルトなどを原料としたアルニコ磁石、サマリウムとコバルトを原料としているサマリウムコバルト磁石、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とするネオジム磁石、その他、KS鋼、MK鋼、マンガンアルミ磁石、プラセオジム磁石、等を使用することができる。
【0013】
S極ヨーク102aは、図2に一例を示すように、永久磁石101aのS極と磁気的に結合している高さの低い(平たい)円柱形状のヨークである。N極ヨーク103aは、図2に一例を示すように、永久磁石101aのN極と磁気的に結合している高さの低い(平たい)円柱形状のヨークである。周ヨーク104aは、図2に一例を示すように、円柱形状の永久磁石101aと同軸となるように、永久磁石101aを囲む円筒形状のヨークである。この周ヨーク104aの一端の内側にS極ヨーク102aが同軸で設けられ、多端の内側にN極ヨーク103aが同軸で設けられる。これらのヨーク(yoke)は、周知のように、磁石から出る磁力線を分散させずに所定の部位に集中させる役割を持っている。すなわち、N極とS極を近づけるように組み合わせ、所定の部位における磁界を強くする。所定の部位は、磁界体とコイル体が嵌め合わさっている部分である。この部分の磁界を強くすることにより吸着力あるいは吸引力を増大させる役割をヨークは持っている。これらのヨークの材料としては、通常は、強磁性を有する材料である鉄、ステンレス鋼(たとえば、SUSXM27)、等を使用することができる。
【0014】
支持部材105aは、図2に示す一例においては、支持部材105aは断面が矩形のリング形状を有する部材である。その支持部材105aの内周面において永久磁石101aの外周面と接合し、その支持部材105aの外周面において周ヨーク104aの内周面と接合する。支持部材105aは、それらの接合により永久磁石101aと周ヨーク104aとを一体に結合する。支持部材105aは、永久磁石101aと周ヨーク104aと距離を一定の間隔に保持するスペーサとしての役割を有する。永久磁石101aと周ヨーク104aと距離が一定であるということは、S極ヨーク102aの外周面と周ヨーク104aの内周面との距離、およびN極ヨーク103aの外周面と周ヨーク104aの内周面との距離が一定ということである。
支持部材105aは、もう一つの役割を有する。コイル体200aが磁界体100aに入り込んだときに、コイル体200aはその端部を支持部材105aに当接させて停止する。すなわち、支持部材105aは、ストッパーとしての役割を有する(図4参照)。支持部材105aは、その両側から入り込むコイル体のストロークが同一となるように、図2に示す一例においては、周ヨーク104aの軸方向における中間の位置に設けられている。
【0015】
コイル体200aは、電気の良導体である線、たとえばポリウレタン銅線(エナメル線)、耐熱ポリイミド銅線、等の銅線に絶縁被覆した線を円筒形状に巻き上げた巻線と、その巻線を円筒形状にまとめるための結合材料から構成される。結合材料としては、たとえば、電気的に絶縁性を有するプラスチック、ゴム、等を使用することができる。結合材料がボビンを含んでいてもよいし、ボビンレスであってもよい。また、加熱または溶剤によって表面が自己融着性を有する線を使用することもできる。結合材料として柔軟性を有する材料を使用することによって、コイル体200aが全体として柔軟性を有するように構成することができる。コイル体200aに柔軟性を持たせることでアクチュエータとしての柔軟性を高めることができる。また、アクチュエータが機械的な衝撃を受けたときに、比較的に強固でないコイル体200aの部分が損傷することを防ぐ効果がある。
【0016】
結合体300aは、すでに説明したように、コイル体200aの巻線の部分が磁界体100aの磁界を生じている空間に嵌る配置で、かつ所定の範囲内において変位可能となるように、磁界体100aとコイル体200aとを結合する。結合体300aは、図2に示す一例においては、柔軟性を有する材料からなるスリーブである。結合体300aはそのスリーブの内面において磁界体100aの外面およびコイル体200aの外面に結合している。そして、すくなくともスリーブの内面とコイル体の外面とが結合する部分はコイル体200aの中央部分だけとなっている。結合体300aとしては、ある程度の剛性と柔軟性をあわせ持つシート、布、等を使用することができる。
【0017】
以上、構成について説明した。次に、本発明のアクチュエータにおける動作について説明する。本発明のアクチュエータが伸びた状態の説明図を図3に示す。本発明のアクチュエータが縮んだ状態の説明図を図4に示す。
図3において、201aと202aはコイル体200aに電流を流すためのコイル体200aの端子である。端子201aから電流を送り込み端子202aから送り込んだ電流のリターンがあるものとする。すなわち、図3に電流の方向を示すように、端子201aの側の巻線の断面においては図3の紙面の表から裏の方向に電流が流れ、端子202aの側の巻線の断面においては図3の紙面の裏から表の方向に電流が流れる。
【0018】
コイル体200aの巻線の一方の端部は、図3に示すように、磁界体100aにおけるN極ヨーク103aと周ヨーク104aとの間の空間に嵌っている。その空間においては、図3に磁界の方向を示すように、磁界の方向はN極ヨーク103aから周ヨーク104aに向かっている。電流の方向と磁界の方向が明らかであるから、この部分にフレミングの左手の法則を適用して巻線に作用する力の方向を導出することができる。巻線に作用する力の方向は、図3に力の方向を示すように、コイル体200aが磁界体100aに引き込まれる方向の力である。
【0019】
また、コイル体200aの巻線の他方の端部は、図3に示すように、磁界体100bにおけるS極ヨーク102bと周ヨーク104bとの間の空間に嵌っている。その空間においては、図3に磁界の方向を示すように、磁界の方向は周ヨーク104bからS極ヨーク102bに向かっている。電流の方向と磁界の方向が明らかであるから、この部分にフレミングの左手の法則を適用して巻線に作用する力の方向を導出することができる。巻線に作用する力の方向は、図3に力の方向を示すように、コイル体200aが磁界体100bに引き込まれる方向の力である。
【0020】
このような方向の力が作用して、コイル体200aの一方の端部が磁界体100aに引き込まれ、コイル体200aの他方の端部が磁界体100bに引き込まれる。このとき、コイル体200aそのものは、大きな伸縮を行うことがない。すなわち、コイル体200aに作用する力の反作用として、磁界体100aと磁界体100bが引き寄せられ接近することになる。したがって、図4に示すように、アクチュエータは縮んだ状態となる。
アクチュエータが縮んだ状態において、図4に示すように、コイル体200aの一方の端部は磁界体100aの支持体105aに当接して停止し、コイル体200aの一方の端部は磁界体100bの支持体105bに当接して停止する。すなわち、コイル体200aに引き込む方向の力が作用してもコイル体200aが引き込まれることはない。
そのとき、結合体300aはしわが寄って折り重なった状態となる。特に、コイル体200aと結合体300aの結合部においてその状態は顕著である。なお、図4には示していないが、結合体300aを蛇腹構造とすること好適である。
【0021】
次に、アクチュエータが縮んだ状態において、逆向きの電流をコイル体200aに流すと、コイル体200aには逆方向の力が作用する。すなわち、磁界体100aに引き込まれたコイル体200aの一方の端部が引き出され、磁界体100bに引き込まれたコイル体200aの他方の端部も引き出される。このとき、コイル体200aそのものは、大きな伸縮を行うことがない。すなわち、コイル体200aに作用する力の反作用として、磁界体100aと磁界体100bが引き離されて離反することになる。したがって、図4に示すアクチュエータが縮んだ状態から、図3に示すアクチュエータが伸びた状態となる。
図3に示すように、アクチュエータが伸びた状態において、結合体300aは最大限に引き伸ばされており、それ以上伸びることはない。すなわち、コイル体200aの両端部においてだけ、磁界体100a,100bと嵌め合わされているが、それ以上に離れて、嵌め合いが外れるようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のアクチュエータにおける構成を示す斜視図である。
【図2】本発明のアクチュエータにおける構成を示す断面図である。
【図3】本発明のアクチュエータが伸びた状態の説明図である。
【図4】本発明のアクチュエータが縮んだ状態の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
100a,100b 磁界体
101a,101b 永久磁石
102a,102b S極ヨーク
103a,103b N極ヨーク
104a,104b 周ヨーク
105a,105b 支持部材
200a コイル体
300a,300b 結合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界体とコイル体と結合体とを有するアクチュエータであって、
前記磁界体は、円筒形状の周ヨークと、その周ヨークの内側に設けた磁石を有し、それにより、前記周ヨークの内面と前記磁石の外面との間の空間に磁界を生じ、
前記コイル体は電気の良導体を材料とする線を円筒形状に巻いた巻線を有し、
前記結合体は、前記巻線が前記磁界を生じている空間に嵌る配置で、かつ所定の範囲内において変位可能となるように、前記磁界体と前記コイル体とを結合し、
前記コイル体の巻線に電流を流すことにより前記磁界体と前記コイル体との間で電磁力が作用するようにしたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のアクチュエータにおいて、前記磁性体と前記コイル体とは両者の合計が3個以上であって、それらが交互に配置されて前記結合体により連結した構造を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のアクチュエータにおいて、前記磁石は、前記周ヨークの一端の内側に同軸で設けた円柱形状のN極ヨークと、前記周ヨークの他端の内側に同軸で設けた円柱形状のS極ヨークと、前記N極ヨークにN極が前記S極ヨークにS極が磁気的に結合する永久磁石とを有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、前記結合体は柔軟性を有する材料からなるスリーブであって、そのスリーブの内面において前記磁界体の外面および前記コイル体の外面に結合し、すくなくとも前記スリーブの内面と前記コイル体の外面とが結合する部分は前記コイル体の中央部分だけであることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、前記磁石と前記周ヨークを一体に結合するとともに、前記磁界体に入り込む前記コイル体を当接停止させる支持部材を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、前記コイル体は全体として柔軟性を有することを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate