説明

アクチュエータ

【課題】本発明は、1つの電気機械変換素子で複数の移動体を異なる方向に移動させることができるものであって、小型化を図ることができるとともに、低コストで製造できるアクチュエータの提供を目的とする。
【解決手段】軸方向共振モードの共振周波数が異なるように形成された3つの軸を有する1つの圧電素子2と、その圧電素子2の軸夫々の軸方向に延ばされるようにして連結された3つの駆動ロッド31〜33と、駆動ロッド31〜33に摩擦係合した3つの移動体4〜6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品等を駆動させるアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばデジタルカメラ等の光学装置に装備されその光学装置に設けられたレンズ等の光学部品を駆動させるアクチュエータとして、電気機械変換素子である圧電素子と、その圧電素子に連結された駆動ロッドと、その駆動ロッドの軸方向に移動可能に摩擦係合した移動体とを備えたものが知られている。このように構成されたアクチュエータは、圧電素子に電圧が印加されて軸方向に略三角波状の変位(鋸歯状変位)になるように伸縮されると、その伸縮により駆動ロッドが振動し、その駆動ロッドの振動によって移動体が駆動ロッドの軸方向に移動する。例えば圧電素子に電圧が印加されて圧電素子が軸方向にゆっくり伸ばされると駆動ロッドに係合した移動体も摩擦力によって駆動ロッドと共に移動する。一方、圧電素子が軸方向に急激に縮められると移動体は慣性のために駆動ロッドを滑り、その位置でとどまる。従って、移動体に、レンズ等の光学部品を取り付けておけば移動体の移動に際して光学部品を移動体と共に移動させることができる。
【0003】
又、例えば特許文献1には、上記圧電素子と駆動ロッド(駆動軸)と移動体とを備えた第1のアクチュエータと、上記圧電素子と駆動ロッドと移動体とを備えた第2のアクチュエータとを備え、第1のアクチュエータによって光学部品としての撮像素子をX方向に移動させ、第2のアクチュエータによって前記撮像素子をX方向と直交したY方向に移動させるようにしたものが提案されている。このように撮像素子をX方向及びY方向の異なる2方向に移動させることにより、撮像装置の手ぶれ補正や光軸合わせをより精密に行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−110919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、互いに異なる複数の方向に移動させる場合に、圧電素子と駆動ロッドと移動体とを備えた2つのアクチュエータから構成したのでは、アクチュエータの全体として嵩張ったものになり、光学装置に、アクチュエータを配置するための広いスペースが必要になり光学装置の小型化を図り難くなってしまうとともに、アクチュエータの全体の製造コストが高いものにもなってしまう。
【0006】
本発明は、1つの電気機械変換素子で複数の移動体を異なる方向に移動させることができるものであって、小型化を図ることができるとともに、低コストで製造できるアクチュエータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアクチュエータは、軸を有し電圧が印加されることにより前記軸の軸方向に伸縮する電気機械変換素子と、その電気機械変換素子に連結された複数の駆動ロッドと、前記駆動ロッド夫々に摩擦係合した複数の移動体とを備えたアクチュエータであって、前記電気機械変換素子は、前記軸を少なくとも2つ有しているとともに、前記少なくとも2つの軸夫々の軸方向共振モードの共振周波数が互いに異なるように構成され、前記駆動ロッドは、夫々、前記電気機械変換素子における前記各軸夫々の軸方向に沿って延ばされていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、電気機械変換素子に、移動体を動かすために所定の駆動周波数の電圧を印加すると、少なくとも2つの軸夫々の軸方向共振モードの共振周波数が異なるため、各軸における共振周波数に対する駆動周波数の割合が異なるものになり、少なくとも2つの軸における一つの軸に連結した駆動ロッドを移動する移動体の速度と、その他の軸に連結した駆動ロッドを移動する移動体の速度とを異なるものにできる。
【0009】
これにより、例えば移動体にレンズ等の光学部品を係合させておき、電気機械変換素子に異なる駆動周波数の電圧を印加すれば、光学部品を少なくとも異なる2方向に適宜移動させることができる。従って、1つの電気機械変換素子を用いて光学部品を異なる少なくとも2方向に移動させることができ、光学装置の小型化を図ることができるとともに、光学装置を低コストで製造できる。
【0010】
他の一態様では、前記アクチュエータは、前記電気機械変換素子における前記少なくとも2つの軸の内のいずれか一方の軸の軸方向に伸縮させて前記移動体を動かすための駆動周波数が前記いずれか他方の軸の前記共振周波数の略1/2、又は、略1/3、もしくは、共振周波数以上になるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、駆動周波数が共振周波数の略1/2又は略1/3になると、高調波が共振するため、又、駆動周波数が共振周波数以上になると高調波の変位が大きく減少するため、電気機械変換素子が上述の鋸歯状変位を作ることができず、移動体が動き難くなる。従って、一方の軸に連結した駆動ロッドの移動体だけを動かして他方の軸に連結した駆動ロッドの移動体をほとんど動くことのないものにでき、例えば移動体に係合した光学部品を正確かつ確実に2方向に選択的に移動させることができる。
【0012】
他の一態様では、上述のアクチュエータにおいて、前記電気機械変換素子は、互いに略直交し前記共振周波数が異なるように構成された第1軸と第2軸と第3軸とを有する直方体から構成され、前記駆動ロッドは、夫々、前記電気機械変換素子における第1軸と第2軸と第3軸との夫々の軸方向に沿って延ばされていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、移動体に係合した光学部品を、互いに直交する第1の方向、第2の方向及び第3の方向の3方向に選択的に移動させることができる。
【0014】
他の一態様では、上述のアクチュエータにおいて、前記駆動ロッドは、前記第1軸に連結された第1駆動ロッドと、前記第2軸に連結された第2駆動ロッドと、前記第3軸に連結された第3駆動ロッドとを備え、前記移動体は、前記第1駆動ロッドに摩擦係合した第1移動体と、前記第2駆動ロッドに摩擦係合した第2移動体と、前記第3駆動ロッドに摩擦係合した第3移動体とを備え、前記第1移動体は、このアクチュエータが装備される光学装置に設けられた光学部品と前記第2駆動ロッドの軸方向に移動可能に係合され、前記第2移動体は、前記光学部品を前記第1駆動ロッドの軸方向に移動可能に保持し、前記第3移動体は、前記光学装置に固定的に取り付けられるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第3移動体を光学装置に取り付け、第1移動体を光学部品に係合させるとともに、第2移動体で光学部品に保持させ、その状態で、第1移動体を第1駆動ロッドに対して移動させれば、光学部品を第1駆動ロッドの軸方向に移動させることができ、又、第2移動体を第2駆動ロッドに対して移動させれば、光学部品を第2駆動ロッドの軸方向に移動させることができる。一方、第3移動体を第3駆動ロッドに対して移動させれば、第3移動体は光学装置に取り付けられているため、第1移動体及び第2移動体が電気機械変換素子と共に、第3駆動ロッドの軸方向に相対的に移動し、第1移動体及び第2移動体に係合した光学部品を第3駆動ロッドの軸方向に移動させることができる。従って、光学部品を互いに直交する3方向に選択的に容易に移動させることができる。
【0016】
他の一態様では、前記電気機械変換素子と、前記第1移動体及び前記第3移動体とを連結した連結部材が設けられ、前記連結部材は、前記第1移動体が前記第1駆動ロッドの軸方向に移動できるように、前記電気機械変換素子と前記第1移動体とを連結しているとともに、前記第3移動体が前記第3駆動ロッドの軸方向に相対移動できるように、前記電気機械変換素子と前記第3移動体とを連結していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、連結部材によって、第1移動体を第1駆動ロッドの軸方向に円滑且つ確実に移動させることができるとともに、第3移動体を第3駆動ロッドに対してその軸方向に円滑且つ確実に移動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、1つの電気機械変換素子で複数の移動体を異なる方向に移動させることができるものであって、小型化を図ることができるとともに、低コストで製造できるアクチュエータの提供し得たものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】レンズを保持した状態の本発明の一実施形態のアクチュエータを右斜め前方側から見た斜視図である。
【図2】図1のアクチュエータを右斜め上後方側から見た斜視図である。
【図3】図1のアクチュエータの正面図である。
【図4】図1のアクチュエータの右側面図である。
【図5】図1のアクチュエータの左側面図である。
【図6】図1のアクチュエータの平面図である。
【図7】図1のアクチュエータの底面図である。
【図8】アクチュエータの圧電素子と駆動ロッドとを表した斜視図である。
【図9】アクチュエータにおける圧電素子の各軸の寸法、共振周波数、駆動周波数、及び各駆動ロッドの寸法を表した図表である。
【図10】アクチュエータにおける駆動周波数/共振周波数と移動体の速度との関係をグラフに表した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、レンズを保持した状態の本発明の一実施形態のアクチュエータを右斜め前方側から見た斜視図、図2は、図1のアクチュエータを右斜め上後方側から見た斜視図、図3は、図1のアクチュエータの正面図である。又、図4は、図1のアクチュエータの右側面図、図5は、図1のアクチュエータの左側面図、図6は、図1のアクチュエータの平面図、図7は、図1のアクチュエータの底面図である。
【0021】
この実施形態のアクチュエータ1は、1つの電気機械変換素子である圧電素子2と、圧電素子2に連結された3つの駆動ロッド31〜33と、3つの駆動ロッド31〜33夫々に対して移動する3つの移動体4〜6とを備えている。
【0022】
圧電素子2は、図8に示すように複数の圧電層が積層されるようにして形成された四角柱状(直方体)のものから構成されており、第1の方向としての図8のX方向に延ばされた第1軸21と、X方向と直交した第2の方向としてのZ方向に延ばされた第2軸22と、X方向及びZ方向夫々と直交した第3の方向としてのY方向に延ばされた第3軸23との3つの軸を備えている。
【0023】
この実施形態の圧電素子2は、図9に示すように、第1軸21に沿う方向の共振モードの共振周波数が90kHzになるように第1軸21に沿う方向の長さが4mmに設定されている。又、圧電素子2は、第2軸22に沿う方向の共振周波数が60kHzなるように、第2軸22に沿う方向の長さが6mmに設定されており、又、第3軸23に沿う方向の共振周波数が40kHzなるように第3軸23に沿う方向の長さが9mmに設定されている。
【0024】
このように構成された圧電素子2は、例えば所定の周波数の電圧が印加されることによって軸方向に鋸歯状変位となるように伸縮し得るようになっている。
【0025】
この実施形態では、圧電素子2を、上記各軸21〜23の方向に伸縮させて移動体4〜6を移動させるための駆動周波数として、67.5kHz、45kHz、30kHzの3つの異なる値の周波数が設定されており、これらの駆動周波数の電圧が適宜印加されるようになっている。尚、これらの駆動周波数については、後述する。
【0026】
図1に戻って説明を続けると、駆動ロッドは、第1駆動ロッド31と第2駆動ロッド32と第3駆動ロッド33との3つから構成されている。この実施形態では、これらの3つの駆動ロッド31〜33は、同構成を採っており、夫々は、軸方向の長さが15mmからなる円柱状のものから構成されている。
【0027】
第1駆動ロッド31は、図8に示すように、その軸方向が上記圧電素子2の第1軸21の軸方向であるX方向に沿って延ばされるようにして、その軸方向の第1端が上記圧電素子2の端面に接着剤等の連結手段によって連結されており、圧電素子2が第1軸21の方向に伸縮するに伴い振動する。
【0028】
第2駆動ロッド32は、その軸方向が上記圧電素子2の第2軸22の軸方向であるZ方向に沿って延ばされるようにして、その軸方向の第1端が上記圧電素子2の端面に接着剤等の連結手段によって連結されており、圧電素子2が第2軸22の方向に伸縮するに伴い振動する。
【0029】
又、第3駆動ロッド33は、その軸方向が上記圧電素子2の第3軸23の軸方向であるY方向に沿って延ばされるようにして、その軸方向の第1端が上記圧電素子2の端面に接着剤等の連結手段によって連結されており、圧電素子2が第3軸23の方向に伸縮するに伴い振動する。
【0030】
移動体は、図1〜図7に示すように第1駆動ロッド31に摩擦係合された第1移動体4と、第2駆動ロッド32に摩擦係合された第2移動体5と、第3駆動ロッド33に摩擦係合された第3移動体6とを備えている。
【0031】
第1移動体4は、第1移動体本体41と、第1移動体本体41を第1駆動ロッド31に押し付けた第1付勢部材45と、レンズ係合部としてのレンズ係合軸46(図3、図4に図示)とを備えている。第1移動体本体41は、第1駆動ロッド摺動部42と、第1連結軸受容部43とを備えている。
【0032】
第1駆動ロッド摺動部42は、第1駆動ロッド31を摺動する部分で、この実施形態では、互いに所定の角度をなす第1当接面42aと第2当接面42bとを備え、これらによって、第1駆動ロッド31の一部を受容する第1駆動ロッド用の受容凹部42cが区画形成されている。
【0033】
そして、第1当接面42aと第2当接面42bとに第1駆動ロッド31の外周を当接させるようにして受容凹部42cに第1駆動ロッド31を受容し、その当接した第1当接面42aと第2当接面42bとが第1駆動ロッド31を軸方向に沿って摺動するようになっている。
【0034】
第1連結軸受容部43は、後述する連結部材7の第1連結軸71を第1軸21の軸方向(X方向)に移動可能に受容する。この実施形態では、第1連結軸受容部43は、第1連結軸71の径と同幅で第1軸21の軸方向に所定の深さであけられた溝から構成されている。
【0035】
第1付勢部材45は、板状の第1板バネ片45aと、第1板バネ片45aから折り曲げ成形された板状の第2板バネ片45bとを備えたL字状を呈するものから構成されている。そして、第1板バネ片45aが、第1移動体本体41に固定されており、この固定状態で、第2板バネ片45bが第1駆動ロッド31を第1移動体本体41の受容凹部42cの第1当接面42aと第2当接面42bとに押圧している。これにより、第1移動体4が第1駆動ロッド31に摩擦係合されている。
【0036】
レンズ係合軸46は、この実施形態では、図3、図4に示すように円柱状のものから構成されている。そして、レンズ係合軸46の第1端が第1移動体本体41に固定されており、この状態で、レンズ係合軸46の軸方向が第2軸22(第2駆動ロッド32)の軸方向(Z方向)に沿って延ばされるようにして第2端が第1移動体本体41から図の上側に突設されている。
【0037】
次に、第2移動体5について説明する。第2移動体5は、第2移動体本体51と、第2移動体本体51を第2駆動ロッド32に押し付けた第2付勢部材55と、レンズ保持部としてのレンズ挟持片56とを備えている。第2移動体本体51は、第2駆動ロッド32を摺動する第2駆動ロッド摺動部52を備えている。この第2駆動ロッド摺動部52は、第1移動体本体41の第1駆動ロッド摺動部42とほぼ同構成を採っている。
【0038】
詳しくは、第2駆動ロッド摺動部52は、互いに所定の角度をなす第1当接面52aと第2当接面52bとを備え、これらによって、第3駆動ロッド33の一部を受容する第3駆動ロッド用の受容凹部52cが区画形成されている。そして、第1当接面52aと第2当接面52bとに第3駆動ロッド33の外周を当接させるようにして受容凹部52cに第3駆動ロッド33を受容し、その当接した第1当接面52aと第2当接面52bとが第3駆動ロッド33を軸方向に沿って摺動するようになっている。
【0039】
第2付勢部材55は、板状の第1板バネ片55aと、第1板バネ片55aから折り曲げ成形された板状の第2板バネ片55bとを備えたL字状を呈するものから構成されている。そして、第1板バネ片55aが、第2移動体本体51に固定されており、この固定状態で、第2板バネ片55bが第2駆動ロッド32を第2移動体本体51の受容凹部52cの第1当接面52aと第2当接面52bとに押圧している。これにより、第2移動体5が第2駆動ロッド32に摩擦係合されている。
【0040】
レンズ挟持片56は、この実施形態では、2枚の板バネから構成されている。そして、レンズ挟持片56は、後述する枠体102aの幅と同程度の距離を互いに隔てて、夫々の第1端(図の上端)が第2移動体本体51に固定されている。
【0041】
次に、第3移動体6について説明する。第3移動体6は、第3移動体本体61と、第3付勢部材65とを備えている。第3移動体本体61は、第3駆動ロッド摺動部62を備えている。この第3駆動ロッド摺動部62も、第1移動体本体41の第1駆動ロッド摺動部42とほぼ同構成を採っている。
【0042】
より詳しくは、第3駆動ロッド摺動部62は、互いに所定の角度をなす第1当接面62aと第2当接面62bとを備え、これらによって、第3駆動ロッド33の一部を受容する第3駆動ロッド用の受容凹部62cが区画形成されている。そして、第1当接面62aと第2当接面62bとに第3駆動ロッド33の外周を当接させるようにして受容凹部62cに第3駆動ロッド33を受容し、その当接した第1当接面62aと第2当接面62bとが第3駆動ロッド33を軸方向に沿って相対的に摺動するようになっている。
【0043】
第3付勢部材65は、板状バネから構成されている。そして、第3付勢部材65の第1端が第3移動体本体61に固定されており、この固定状態で、第3付勢部材65の第2端が第3駆動ロッド33を第3移動体本体61の受容凹部62cの第1当接面62aと第2当接面62bとに押圧している。これにより、第3移動体6が第3駆動ロッド33に摩擦係合されている。
【0044】
このように構成された第3移動体6の第3移動体本体61は、この実施形態では、本発明のアクチュエータ1が用いられる撮像装置等の光学装置(図示せず)に設けられた筐体等に固定的に取り付けられる装置取付部を構成する。従って、この第3移動体6は、光学装置に装着された後は、第3移動体6は移動せずに第3駆動ロッド33に連結された圧電素子2が第3移動体6に対して移動する。
【0045】
又、この実施形態では、上記圧電素子2と、上記第1移動体4及び第3移動体6とを連結した連結部材7が設けられている。この連結部材7は、連結部材本体70と、連結部材本体70から突設された第1連結軸71及び第2連結軸72を備えている。
【0046】
連結部材本体70は、圧電素子2における第2駆動ロッド32と反対側(図の下方側)の端面に接着されて固定的に連結されている。
【0047】
第1連結軸71は、第1駆動ロッド31と所定距離を隔てて第1駆動ロッド31の軸方向と同方向のX方向に延ばされて第1駆動ロッド31と平行に配設されているとともに、第1移動体本体41の第1連結軸受容部43に軸方向移動可能に通されている。
【0048】
これにより、連結部材7によって、第1移動体4は、第1駆動ロッド31に対して回動できないように圧電素子2と連結されて第1駆動ロッド31の軸方向に円滑且つ確実に移動できるようになっている。
【0049】
第2連結軸72は、図2に示すように第3駆動ロッド33と所定距離を隔てて第3駆動ロッド33の軸方向と同方向のY方向に延ばされて第3駆動ロッド33と平行に配設されているとともに、第3移動体本体61に設けられた第1連結軸用嵌挿孔63に軸方向移動可能に通されている。
【0050】
これにより、連結部材7によって、第3移動体6は、第3駆動ロッド33に対して回動できないように圧電素子2と連結されて第3駆動ロッド33の軸方向に円滑且つ確実に移動できるようになっている。
【0051】
以上のように構成されたアクチュエータ1は、例えば光学部品としてのレンズ102を保持するとともに、第3移動体6の第3移動体本体61が撮像装置等の光学装置に固定されるようにして装着されて使用される。
【0052】
詳しくは、レンズ102は、ほぼ四角柱状の枠体102aに保持されている。そして、枠体102aがアクチュエータ1の第1移動体4のレンズ係合軸46に係合されているとともに、第2移動体5のレンズ挟持片56に挟持されている。そして、この状態で、レンズ102の光軸が第3駆動ロッド33の軸方向と同方向に延ばされている。
【0053】
又、光学装置に装着されたアクチュエータ1には、図示しないが、例えばアクチュエータ1の圧電素子2に電圧を印加して圧電素子2を駆動させる駆動回路及び制御部が接続され、その制御部によって、上記駆動回路に、予め設定された駆動周波数の電圧を印加させるように制御する。ここで、上述のように設定した駆動周波数について、説明する。
【0054】
まず、駆動周波数と共振周波数との比(駆動周波数/共振周波数)と、移動体の速度との関係を調べたので、その関係について説明する。図10に示すように駆動周波数/共振周波数が増していき所定の値(0.8〜0.9程度)となるPまでは、原則として移動体の速度は徐々に速くなり、Pを超えると、共振に近づき、駆動波形の基本振動成分が大きくなり、高調波成分に対して相対的に大きくなるため、変位波形が鋸歯状波形にならず、移動体の速度が0近傍値(0を含む)になって移動体が移動し難くなり、ほとんど動かなくなる。
【0055】
又、駆動周波数/共振周波数が0〜Pまでの間で、駆動周波数/共振周波数が略1/2及び略1/3になる場合は、移動体の速度がPを超えた場合と同様に、0近傍値(0を含む)になって移動体が移動し難くなり、ほとんど動かなくなる。これは、高調波が共振するので圧電素子2に鋸歯状変位を形成させることができず、その結果、移動体が移動し難くなるからである。
【0056】
従って、駆動周波数/共振周波数がP近傍の値になるように移動体を駆動させる駆動周波数を設定すれば、各軸の移動体の移動速度を速くでき、効率のよいものにできる。その一方、駆動周波数が、圧電素子における軸の共振周波数に対して略1/2又は略1/3或いはPを超える値になる場合は、その軸に係合した移動体がほとんど移動しなくなる。
【0057】
そこで、この実施形態では、図8に示すように駆動周波数として67.5kHzと、45kHzと、30kHzとの3つの値を設定し、それらの値の駆動周波数の電圧を選択的に印加することで第1軸21〜第3軸23の何れか1つに係合した移動体を効率よく移動させ、残りの2つの軸に係合した移動体を実質的に移動させないようにしている。
【0058】
詳しくは、圧電素子に、67.5kHzの周波数の電圧を印加すれば、第1軸21に対しては、駆動周波数/共振周波数が0.75(図10中のQの位置)になり、第1移動体4の移動速度を速くでき、効率よく移動させることができる。その一方、第3軸23に対しては、駆動周波数/共振周波数が1.69になり、又、第2軸22に対しては、駆動周波数/共振周波数が1.13になり、第2軸22の方向に移動する第2移動体及び第3軸23の方向に移動する第3移動体6がほとんど移動しないものにでき、実質的に第1移動体4だけを移動させることができる。
【0059】
又、圧電素子に、45.0kHzの周波数の電圧を印加すれば、第2軸22に対しては、駆動周波数/共振周波数が0.75になり、第2移動体5の移動速度を速くでき、効率よく移動させることができる。その一方、第1軸21に対しては、駆動周波数/共振周波数が1/2になり、又、第3軸23に対しては、駆動周波数/共振周波数が1.1になり、第1移動体4及び第3移動体6がほとんど移動しないものにでき、実質的に第2移動体5だけを移動させることができる。
【0060】
又、圧電素子に、30.0kHzの周波数の電圧を印加すれば、第3軸23に対しては、駆動周波数/共振周波数が0.75になり、第3移動体6の移動速度を速くでき、効率よく移動させることができる。その一方、第1軸21に対しては、駆動周波数/共振周波数が1/3になり、又、第2軸22に対しては、駆動周波数/共振周波数が1/2になり、第1移動体4及び第2移動体5が移動し難いものにでき、ほぼ第3移動体6だけを移動させることができる。
【0061】
そして、例えば光学装置に設けられた検出装置によってレンズ102がX方向にずれを生じていることを検出した場合、制御部は、その検出データに基づいて駆動回路に、X方向のずれと関連付けられて予めその制御部に記憶された67.5kHzの駆動周波数の電圧を印加させるように制御する。
【0062】
これにより、圧電素子2は、第1軸21の方向にのみ鋸歯状変位するように伸縮して、第1移動体本体41は、第1駆動ロッド31の軸方向(X方向)に移動してその第1移動体本体41に係合されたレンズ102が共に同方向に移動する。一方、第2移動体本体51及び第3移動体本体61は、ほとんど移動しない。これにより、レンズ102のX方向のずれを効率よく矯正できる。
【0063】
尚、上記第1移動体本体41が第1駆動ロッド31の軸方向の移動に移動する際に、レンズ挟持片56は第1駆動ロッド31の軸方向に湾曲状に撓んで枠体102aを挟持した状態を維持する。
【0064】
一方、検出装置によってレンズ102がZ方向にずれを生じていることを検出した場合、制御部は、その検出データに基づいて駆動回路に、Z方向のずれと関連付けられて予めその制御部に記憶された45kHzの駆動周波数を印加させるように制御する。
【0065】
これにより、圧電素子2は、第2軸22の方向にのみ鋸歯状変位するように伸縮し、第2移動体本体51は、第2駆動ロッド32の軸方向(Z方向)に移動してその第2移動体本体51に係合されたレンズ102が共に同方向に移動する。一方、第1移動体本体41及び第3移動体本体61は、ほとんど移動しない。これにより、レンズ102のZ方向のずれを効率よく矯正できる。
【0066】
又、検出装置によってレンズ102がY方向にずれを生じていることを検出した場合、制御部は、その検出データに基づいて駆動回路に、Y方向のずれと関連付けられて予めその制御部に記憶された30kHzの駆動周波数を印加させるように制御する。
【0067】
これにより、圧電素子2は、第3軸23の方向にのみ伸縮して鋸歯状変位し、第3移動体本体61は、第3駆動ロッド33に対してその軸方向(Y方向)に移動する。その際、第3移動体本体61が光学装置に固定されているため、第1移動体4及び第2移動体5が圧電素子2と共に、第3駆動ロッド33の軸方向に移動し、第1移動体4及び第2移動体5に係合したレンズ102を第3駆動ロッド33の軸方向に移動させることができる。
【0068】
尚、上記実施形態では、圧電素子を、共振周波数が異なる3つの軸を有するものから構成したが、この形態のものに限らず、例えば軸方向共振モードの共振周波数が異なる2つの軸を有するものから構成してもよく、適宜変更できる。
【0069】
又、上記実施形態では、駆動ロッドを3つ設けたものとしているが、この形態のものに限らず、例えば2つの駆動ロッドを設けたものとし、駆動ロッド夫々を、共振周波数が異なる2つの軸夫々の軸方向に沿って延ばすように配設してもよく、適宜変更できる。
【0070】
又、上記実施形態では、レンズ保持部は、レンズ挟持片56から構成されているが、この形態のものに限らず、適宜変更でき、例えば第2移動体本体51とレンズ102との一方に、第3軸23の軸方向に突出させた保持軸を設け、他方に保持軸を軸方向移動可能に嵌合して保持する嵌合凹部を設けたものでもよい。
【0071】
又、上記実施形態では、連結部材7に、第1連結軸71及び第2連結軸72を備えたものとしているが、例えば第1連結軸を第1移動体4に、第2連結軸を第3移動体6に、夫々設け、連結部材7に第1連結軸、第2連結軸夫々を移動可能に嵌挿する孔を設けたものでもよい。
【0072】
又、本発明のアクチュエータは、デジタルカメラやカメラを有する携帯電話機などの光学装置に使用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 アクチュエータ
2 圧電素子(電気機械変換素子)
4 第1移動体
5 第2移動体
6 第3移動体
21 第1軸
22 第2軸
23 第3軸
31 第1駆動ロッド
32 第2駆動ロッド
33 第3駆動ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を有し電圧が印加されることにより前記軸の軸方向に伸縮する電気機械変換素子と、その電気機械変換素子に連結された複数の駆動ロッドと、前記駆動ロッド夫々に摩擦係合した複数の移動体とを備えたアクチュエータであって、
前記電気機械変換素子は、前記軸を少なくとも2つ有しているとともに、前記少なくとも2つの軸夫々の軸方向共振モードの共振周波数が互いに異なるように構成され、
前記駆動ロッドは、夫々、前記電気機械変換素子における前記少なくとも2つの軸夫々の軸方向に沿って延ばされていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記電気機械変換素子における前記少なくとも2つの軸の内のいずれか一方の軸の軸方向に伸縮させて前記移動体を動かすための駆動周波数が前記いずれか他方の軸の前記共振周波数の略1/2、又は、略1/3、もしくは共振周波数以上になるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記電気機械変換素子は、互いに略直交し前記共振周波数が異なるように構成された第1軸と第2軸と第3軸とを有する直方体から構成され、
前記駆動ロッドは、夫々、前記電気機械変換素子における第1軸と第2軸と第3軸との夫々の軸方向に沿って延ばされていることを特徴とする請求項1又は2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記駆動ロッドは、前記第1軸に連結された第1駆動ロッドと、前記第2軸に連結された第2駆動ロッドと、前記第3軸に連結された第3駆動ロッドとを備え、
前記移動体は、前記第1駆動ロッドに摩擦係合した第1移動体と、前記第2駆動ロッドに摩擦係合した第2移動体と、前記第3駆動ロッドに摩擦係合した第3移動体とを備え、
前記第1移動体は、このアクチュエータが装備される光学装置に設けられた光学部品と前記第2駆動ロッドの軸方向に移動可能に係合され、
前記第2移動体は、前記光学部品を前記第1駆動ロッドの軸方向に移動可能に保持し、
前記第3移動体は、前記光学装置に固定的に取り付けられるように構成されていることを特徴とする請求項3記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記電気機械変換素子と、前記第1移動体及び前記第3移動体とを連結した連結部材が設けられ、
前記連結部材は、前記第1移動体が前記第1駆動ロッドの軸方向に移動できるように、前記電気機械変換素子と前記第1移動体とを連結しているとともに、前記第3移動体が前記第3駆動ロッドの軸方向に相対移動できるように、前記電気機械変換素子と前記第3移動体とを連結していることを特徴とする請求項4記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−125047(P2012−125047A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273383(P2010−273383)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】