説明

アクティブなロール安定化のための装置

本発明は、それぞれ2つのホイールを有する少なくとも2つのアクスルを備えた車両のアクティブなロール安定化のための装置であって、アクスルの少なくとも1つに、横方向スタビライザが装備されており、該横方向スタビライザが、方向切換弁装置(19;43)により液圧装置(25;29)を介して操作可能であり、該液圧装置(25;29)が、圧力供給ユニット(1)、例えばポンプによりアクスル圧力制限弁(3;5)を介してそれぞれ異なる圧力レベルで負荷可能である形式のものに関する。本発明は、前記方向切換弁装置が、圧力レベルの少なくとも1つから形成される液圧的な操作量により制御されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ2つのホイールを有する少なくとも2つのアクスルを備えた車両のアクティブなロール安定化(Wankstabilisierung)のための装置であって、アクスルの少なくとも1つに、横方向スタビライザ(Querstabilisator)が装備されており、該横方向スタビライザが、方向切換弁装置により液圧装置を介して操作可能であり、該液圧装置が、圧力供給ユニット、例えばポンプによりアクスル圧力制限弁(Achsdruckbegrenzungsventil)を介してそれぞれ異なる圧力レベルで負荷可能である形式のものに関する。
【0002】
この種のロール安定化装置は、「アンチロールシステム(Anti−Wank−System)」または「ロールスタビライジングシステム(Wank−Stabilisierungs−System)」とも呼ばれる。図1には、従来慣用のロール安定化装置の液圧回路図が示されている。
【0003】
本発明の課題は、それぞれ少なくとも2つのホイールを有する少なくとも2つのアクスルを備えた車両のアクティブなロール安定化のための装置であって、アクスルの少なくとも1つに、横方向スタビライザが装備されており、該横方向スタビライザが、方向切換装置により液圧装置を介して操作可能であり、該液圧装置が、圧力供給ユニット、例えばポンプによりアクスル圧力制限弁を介してそれぞれ異なる圧力レベルで負荷可能である形式のものにおいて、従来慣用のロール安定化装置に代わる安価に製作可能な装置を提供することである。
【0004】
上記課題は、それぞれ2つのホイールを有する少なくとも2つのアクスルを備えた車両のアクティブなロール安定化のための装置であって、アクスルの少なくとも1つに、横方向スタビライザが装備されており、該横方向スタビライザが、方向切換弁装置により液圧装置を介して操作可能であり、該液圧装置が、圧力供給ユニット、例えばポンプによりアクスル圧力制限弁を介してそれぞれ異なる圧力レベルで負荷可能である形式のものにおいて、前記方向切換弁装置が、圧力レベルの少なくとも1つから形成される液圧的な操作量により制御されていることにより解決される。つまり、方向切換弁装置の制御は、圧力レベルの少なくとも1つの取り出しにより行われ得る。その結果、液圧装置自体を制御するためのエネルギは省略され得る。調節エネルギ、例えば高価で手間のかかるソレノイドによる電気的なエネルギの形態の調節エネルギの付加的な供給は不要である。それゆえ、比較的高価な電気的、磁気的な調節装置の省略により、アクティブなロール安定化のための特に安価な装置が実現され得る。
【0005】
アクティブなロール安定化のための装置の有利な実施の形態は、少なくとも1つの液圧装置が、第1の圧力レベルおよび第2の圧力レベルにより負荷可能であり、前記液圧的な操作量が、第1の圧力レベルおよび第2の圧力レベルの差圧から形成されていることを特徴とする。一般に、横方向スタビライザを操作するための液圧装置は、2つのインプットを有する。この場合、液圧装置は、両インプットが同じ圧力レベルで負荷される限り、停止している。したがって、この停止状態では、発生される操作量もゼロである。しかし、液圧装置の両インプットに異なる圧力がかかるやいなや、正の操作量または負の操作量が出力される。このことは例えば、目下支配している圧力比の、フィードバックされる増幅のために利用され得る。
【0006】
前記装置の別の有利な実施の形態は、前記方向切換弁装置が、前記液圧的な操作量により制御される多方向制御弁(Mehrwegeventil)を有しており、方向切換弁の第1の制御面が、第1の圧力レベルにより、方向切換弁の第2の制御面が、第2の圧力レベルにより負荷されていることを特徴とする。有利には、方向切換弁装置の制御面により、液圧的な操作量の発生のために必要な差圧が形成され得る。
【0007】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、前記第1の制御面と前記第2の制御面とが等しく、制御面を介して、差圧が正である場合には、前記多方向制御弁の第1の切換位置が調節され、差圧が負である場合には、前記多方向制御弁の第2の切換位置が調節されることを特徴とする。このために、制御面は、多方向制御弁の制御部材に対向して配置された2つの制御面であることができる。この場合、差圧は、制御部材を一方向または他方向に移動させる。有利には、多方向制御弁は、液圧装置の、車両のアクティブなロール安定化のために必要な調節運動を、液圧装置に液圧的なエネルギを適当に供給することにより実現し得る。
【0008】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、前記多方向制御弁が4ポート2位置方向制御弁であることを特徴とする。4ポート2位置方向制御弁は、2つの切換位置を取ることができる。この場合、液圧装置への液圧エネルギの供給の正負の記号は反対にされ得る。したがって、液圧装置は一方向への車両のロールまたは他方向への車両のロールを補償して安定化することができる。
【0009】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、前記多方向制御弁が7ポート2位置方向制御弁であることを特徴とする。7ポート2位置方向制御弁も、2つの切換位置を取ることができる。しかし、7ポート2位置方向制御弁は、4ポート2位置方向制御弁とは異なり、2つの液圧装置、例えば車両のフロントアクスルのための第1の液圧装置および車両のリアアクスルのための第2の液圧装置を切り換えることができる。
【0010】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、車両のロール運動の開始が、少なくとも1つの圧力レベルを変更することを特徴とする。液圧装置は、このために、ロール運動の開始が液圧装置の作動部材の行程を変化させ、この行程の変化が、これに由来するポンプ作用により若干量の液圧媒体を管路系統に戻し圧送する、つまり液圧装置の対応する供給管路内の圧力に反作用するように、横方向スタビライザに連結されていることができる。この圧力レベルが、多方向制御弁の制御のための操作量を導出するために使用され得るので、ロール運動の開始に対する負のフィードバックが実現され得る。このために、多方向制御弁は、液圧装置がポンプにより液圧エネルギを供給され、横方向スタビライザがロール運動に反作用するように切り換えられ得る。
【0011】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、形成された液圧的な操作量が、これにより制御される方向切換装置、これにより制御される液圧装置およびこれにより制御される横方向スタビライザを介して、ロール運動の開始に反作用することを特徴とする。有利には、こうして車両がアクティブに安定化され得る。
【0012】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、前記方向切換弁装置が、前記液圧装置と前記多方向制御弁との間に接続される少なくとも1つの第1の逆止弁を有しており、該第1の逆止弁が、圧力供給ユニットにより圧送される液圧媒体を液圧装置に供給するために開放され、他の場合には閉鎖されていることを特徴とする。逆止弁は、液圧装置からの液圧媒体の制御不能な逆流を阻止し得る。これにより、有利には、既に述べたロール運動の開始により上昇する圧力レベルが実現され得る。上昇した圧力レベルを最終的に方向切換弁装置に供給するために、液圧装置と逆止弁との間で、方向切換弁装置に通じる制御管路が分岐され得る。
【0013】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、前記方向切換弁装置、特に多方向制御弁が、第1の供給管路および第2の供給管路を介してそれぞれ液圧装置に接続されており、第1の供給管路が、第1の逆止弁を有し、第2の供給管路が、第1の逆止弁に相応の第2の逆止弁を有することを特徴とする。逆止弁毎に1つの制御管路が設けられていることができる。制御管路はそれぞれ、遮断した逆止弁の手前に支配する相応の圧力レベルを取り出す。したがって、第1および第2の逆止弁を介して、有利には、液圧装置から流出する液圧媒体の制御不能な逆流を阻止することが可能である。その結果、供給管路内に支配する圧力差が、差圧として、もしくは方向切換弁装置のための、差圧から導き出される操作量として形成され得る。このために、第2の供給管路も、第2の逆止弁と方向切換弁装置との間に接続され、方向切換弁装置へと通じる制御管路を有していることができる。
【0014】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、前記第1および第2の逆止弁に、それぞれ第1の逆止弁および第2の逆止弁とは逆向きに作用する第3および第4の逆止弁が並列に接続されていることを特徴とする。並列に接続された逆止弁は、液圧装置からの液圧媒体の逆流を許可するが、例えば2バールであるその開弁圧により、ロール運動の開始により起こる圧力上昇が起こっても、所定の有意義な範囲を逸脱しないことを保証する。その際、この範囲は、方向切換弁装置がなお確実に切り換わり、しかし過度に高い絞り損失が生じないように選択されている。それというのも、この絞り損失は、液圧装置のために必要な調節エネルギを高めるか、もしくは装置全体の液圧効率を下げることになるからである。第1および第2の逆止弁の開弁圧は、例えば第3および第4の逆止弁の相応の開弁圧よりも1.5バール低くあることができる。第1および第2の逆止弁でも、開弁圧は比較的低く維持すべきである。それというのも、ここでも絞り損失は効率に対して負の影響を及ぼすからである。その理由は、第1および第2の逆止弁がそれぞれ液圧装置のための供給管路内に存在するためである。
【0015】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、フロントアクスルが、前記方向切換弁装置により前側の液圧装置を介して操作可能な前側の横方向スタビライザを装備し、リアアクスルが、前記方向切換弁装置により後側の液圧装置を介して操作可能な後側の横方向スタビライザを装備していることを特徴とする。有利には、前側および後側の液圧装置を介して、フロントアクスルに対してもリアアクスルに対しても均等に作用して安定化させることができる。
【0016】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、液圧的な操作量が、前記後側の液圧装置にかかる少なくとも1つの圧力レベルから形成されることを特徴とする。これにより、唯一の戻し案内によって均等にフロントアクスルおよびリアアクスルを制御することが可能である。
【0017】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、液圧的な操作量が、前記前側の液圧装置にかかる少なくとも1つの圧力レベルから形成されることを特徴とする。したがって、液圧的な操作量は、フロントアクスルにおける唯一の測定点により形成され得る。
【0018】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、液圧的な操作量が、前記後側の液圧装置にかかる少なくとも1つの圧力レベルおよび前記前側の液圧装置にかかる少なくとも1つの圧力レベルから形成されることを特徴とする。有利には、特に一方のアクスルにのみ最初にロール運動が提示された段階で、フロントアクスルまたはリアアクスルのロール運動の開始に対してより迅速に反応することができる。さらに、複数のアクスルで発生される制御体積流量が加算され得る。
【0019】
前記装置のさらに別の有利な実施の形態は、前記前側の液圧装置および前記後側の液圧装置がそれぞれ異なる圧力レベルで運転され、2つの逆止弁が圧力レベルの補償のために後側の液圧装置に配設されていることを特徴とする。有利には、それぞれ異なるアクスル圧力にも関わらず、1つの共通の液圧的な信号が導き出されることができる。
【0020】
全体として、アクティブなロール安定化のための装置が、ロール運動の開始についての情報を提供する特別な位置センサを必要としない点でも有利である。この情報は有利には液圧装置に対する運動の反作用により、さらには、対応する圧力レベルに対する運動の反作用により得られる。比較的高価な電磁式の作動部材は、少なくとも1つの圧力レベルを介した液圧的な制御により代替され得る。
【0021】
本発明の別の利点、特徴および詳細は、以下の説明にあるとおりである。以下の説明では、図面を参照しながら実施の形態について詳説する。同一、機能同一かつ/または類似の部材には、同一の符号を付した。図中、
図1は、従来慣用のロール安定化装置の液圧回路図であり、
図2は、1軸システムのための本発明によるロール安定化装置の液圧回路図であり、
図3は、液圧的な操作量がリアアクスルの液圧装置で取り出される、フロントアクスルおよびリアアクスルを備える2軸システムのための本発明によるロールスタビライジングシステムの液圧回路図であり、
図4は、液圧的な操作量がフロントアクスルの液圧装置で取り出される、フロントアクスルおよびリアアクスルを備える2軸システムのための本発明によるロール安定化装置の液圧回路図であり、かつ
図5は、液圧的な操作量がリアアクスルの液圧装置およびフロントアクスルの液圧装置で取り出される、本発明によるロール安定化装置の液圧回路図である。
【0022】
図1には、大量生産によるシステムの瞬時状態が示されている。圧力供給ユニットは、吸込を絞ったラジアルピストンポンプ1である。ラジアルピストンポンプ1は、カスケード回路を介して2つの比例圧力制限弁3,5により2つの異なる圧力レベルを提供する。比例圧力制限弁3,5は、「アクスル圧力制限弁(Achsdruckbegrenzungsventil)」と呼ばれ、差圧弁として接続されている。圧力レベルは、圧力センサ7,9により監視される。圧力範囲はそれぞれ、フロントアクスルのスタビライザに設けられた前側の液圧装置25、例えば揺動モータ(Schwenkmotor)27に関して、右サイドについては符号11で、左サイドについては符号13で示し、リアアクスルのスタビライザに設けられた後側の液圧装置29、例えば揺動モータ31に関して、右サイドについては符号15で、左サイドについては符号17で示した。リアアクスルにおける圧力は、フロントアクスルにおける圧力より常に低くなければならない。
【0023】
圧力レベルは、方向切換弁とも呼ばれる7ポート2位置方向制御弁19により、カーブ走行時に方向に応じて右または左に切り換えられる。その結果、それぞれ同期的に右または左の車両サイドにおける揺動モータ内の圧力が上昇もしくは下降される。方向切換弁19の運転は、切換検出センサ21により監視される。付加的に、フロントアクスルにはフェールセーブ弁(Fail Save Ventil)23が配置されている。フェールセーブ弁23は、弁が固着したり、電流が失われたりした際のフェールセーブ時に、フロントアクスルの揺動モータ27をブロックし、かつリアアクスルの揺動モータ31を無圧に切り換えるために役立つ。付加的に、さらに2つの後吸込弁33,35が取り付けられている。後吸込弁33,35はそれぞれ、フロントアクスルの揺動モータ27の圧力範囲11,13をタンク管路を介してタンク37に接続、より詳細に言えば、揺動モータ27の絞られた解放運動(Freischaukeln)が揺動モータ自体の漏れ位置を介してキャビテーション問題なしに体積流量の後吸込により実施され得るように接続することができる。
【0024】
本発明の根本的な端緒は、ハイコストな部品を省略することにある。その際、特に、直接制御される弁の電磁石の削減が課題となる。本発明により、方向切換弁は、少なくとも圧力レベル11〜17の1つから形成される第1の液圧的な操作量により制御され得る。本発明の主要な特徴は、方向切換弁19の切換磁石が省略され得る点にある。
【0025】
図2は、「1軸システム(Einachssystem)」、例えば自動車のフロントアクスルのための本発明によるロール安定化装置(Wankstabilisierungseinrichtung)の液圧回路図を示す。切換磁石の節減は、図2に示す実施の形態では、第1の制御管路39ならびに第2の制御管路41が設けられていることにより達成される。制御管路39,41を介して、フロントアクスル右の第1の圧力レベル11ならびにフロントアクスル左の第2の圧力レベル13が、方向切換弁19に戻し案内される。図2では、方向切換弁19が4ポート2位置方向制御弁43として形成されている。
【0026】
方向切換弁装置19もしくは4ポート2位置方向制御弁43は、第1の制御管路39に対応付けられた第1の制御チャンバ45と、第2の制御管路41に対応付けられた第2の制御チャンバ47とを有する。制御チャンバ45,47はそれぞれ、制御管路39,41を介して液圧媒体で負荷されることができ、それぞれ、4ポート2位置方向制御弁43の制御部材の端面に配設されている。制御管路39,41を介して、制御チャンバ45,47内に、それぞれ第1もしくは第2の圧力レベル11,13が生じる。その結果、対向して位置する側に配置された端面を介して、制御管路39,41内の差圧、つまり第1の圧力レベル11と第2の圧力レベル13との間の差圧に対応する信号が形成される。このとき、結果として得られる信号は、4ポート2位置方向制御弁43の制御部材の、図2で見て右または左への運動に対応する。つまり、4ポート2位置方向制御弁の制御部材は、対応する差圧が制御管路39,41内に支配する限り、一方向に、2つの切換位置の一方に対応する終端位置に来るまで運動する。切換検出センサ21は、制御部材の位置を監視し、これを、図2には示さない中央の制御ユニットに伝送することができる。中央の制御ユニットは、特に、その他の信号を評価することにより、システムの障害を認識することができ、例えば、図2に示す実施の形態では1つしかない前側の液圧装置25をブロックするフェールセーブ弁23を切り換える。
【0027】
図2に示すフェールセーブ弁23の切換位置で、前側の液圧装置はブロックされていない。この状態で、ラジアルピストンポンプ1は、第1の供給管路49を介して右前のチャンバ51または左前のチャンバ53に液圧エネルギを供給し得る。図2に示す切換位置では、第1の供給管路49が、フロントアクスルの揺動モータ27の右前のチャンバ51に連通されている。
【0028】
4ポート2位置方向制御弁43の切換位置次第で、ポンプ供給管路49は、右前のチャンバ51を制御する第1の供給管路55か、左前のチャンバ53を制御する第2の供給管路57に開口する。供給管路53,55内には計4つの逆止弁が接続されている。このとき、第1の供給管路55は第1の逆止弁59を有する。第1の逆止弁59は、ラジアルピストンポンプ1が供給管路49および第1の供給管路55を介して右前のチャンバ51に接続されている場合、右前のチャンバ51に液圧エネルギを供給するために自動的に開弁する。第1の逆止弁59の開弁圧は、例えば約0.5バールであることができる。第1の逆止弁59と同様、第2の供給管路57は第2の逆止弁61を有する。第1の逆止弁59に対しては第3の逆止弁63が、第2の逆止弁61に対しては第4の逆止弁65が並列に、かつ逆向きの作用方向を有して接続されている。逆止弁63,65は、第1および第2の逆止弁59,61より高い開弁圧、例えば2バールの開弁圧を有する。
【0029】
4ポート2位置方向制御弁43の、図2に示した切換位置を参照しながら、例示的にアンチロール装置(Antiwankeinrichtung)の機能形式について説明する。もし第1の逆止弁59がなければ、右前のチャンバ51から押しのけられた液圧媒体は、障害なくタンク37に還流する。液圧媒体のそのような戻し圧送は、例えばロール運動の開始により実施され得る。しかし、第1の逆止弁59があることにより、第1の供給管路55を介したこの逆流経路は遮断されている。並列に接続された第3の逆止弁63の開弁圧、つまり例えば2バールの開弁圧に相当する圧力に達して初めて、相応の逆流が発生し得る。発生したこの圧力は、第2の制御管路41を介して4ポート2位置方向制御弁43の第2の制御チャンバ47に供給される。その際、第3の逆止弁63は、第2の制御チャンバ47に作用する制御圧を例えば2バールに制限する。ロール運動の開始により発生し、制御圧として利用される圧力は、最終的に、4ポート2位置方向制御弁の制御部材の制御運動、つまり図2で見て左向きの運動に至る。このことは、これまで無圧であった第1の供給管路55が今度はポンプ供給管路49に、つまりラジアルピストンポンプ1に接続されることを結果として伴う。これにより、揺動モータ27の右前のチャンバ51に液圧エネルギが供給される。これにより、自動的に、ロール運動の開始に対して揺動モータ27の調節運動により反作用し得る。調節運動は、逆向きの差圧が生じるまで、つまり例えば車両のカーブ走行が終了するまで継続される。これにより、今度は、左前のチャンバ53内により高い圧力が生じ、その結果、4ポート2位置方向制御弁が再び、図2に示す位置に復帰し、つまり調節介入は自動的に取り消される。
【0030】
図3は、フロントアクスルおよびリアアクスルを備える「2軸システム(Zweiachssystem)」のためのロール安定化装置の実施の形態を示す。この場合、液圧的な操作量は、液圧装置29、例えばリアアクスルの揺動モータ31で取り出される。
【0031】
図4は、フロントアクスルおよびリアアクスルを備える2軸システムのためのロール安定化装置の液圧回路図を示す。この場合、液圧的な操作量は、前側の液圧装置25、例えばフロントアクスルの揺動モータ27で取り出される。
【0032】
図5は、図3および図4に示したものと類似のロール安定化装置の液圧回路図を示す。この場合、相違点としては、液圧的な操作量が、前側の液圧装置25および後側の液圧装置29で取り出される。図3〜図5に示す液圧回路図は、基本的特徴の点においては、背景技術による液圧回路図1に相当する。その点については図1の説明を参照されたい。本発明の根幹をなす共通点として、7ポート2位置方向制御弁19が制御管路39,41を介して液圧式に制御されている。図3および図4に示す液圧回路図に示す制御は、図2で説明したものと同様に行われる。その点については、図2の説明を参照されたい。
【0033】
図5に示す液圧回路図では、前側の液圧装置25および後側の液圧装置29に、それぞれ一式の逆止弁59〜65が、図2で説明した作用形式で配設されている。2つの液圧装置25,29から1つの共通の液圧信号を生成するために、制御管路39,41は、それぞれ1つの分岐点、すなわち第1の分岐点67および第2の分岐点69を有する。分岐点67,69において、制御管路39,41はそれぞれ前側の液圧ユニット25および後側の液圧ユニット29に向けて分岐する。
【0034】
第1の分岐点67で、第1の制御管路39は、リアアクスル左の圧力レベル17を取り出す第1の後側の制御管路71と、フロントアクスル左の圧力レベル13を取り出す第1の前側の制御管路73とに分岐する。
【0035】
第2の分岐点69で、第2の制御管路41は、リアアクスル右の圧力レベル15を取り出す第2の後側の制御管路75と、フロントアクスル右の圧力レベル11を取り出す第2の前側の制御管路77とに分岐する。
【0036】
分岐点67,69で、それぞれ分岐される制御管路内に支配する圧力の最大値が形成される。このことは有利には、一方のアクスルのロール開始が既に調節介入に至るように利用され得る。さらに、分岐点67,69で、対応する液圧装置により生成される制御体積流が加算される。このことは、7ポート2位置方向制御弁19の接続された制御チャンバ45,47のより迅速な充填、つまり、7ポート2位置方向制御弁19、ひいてはアンチロールコントローラのより良好な応答特性に至る。要するに、全体的により短い応答時間を有するアンチロールコントローラが実現され得る。場合によっては、フロントアクスルおよびリアアクスルにおいてそれぞれ異なるシステム圧を実現することが必要であり得る。その際、不都合な反作用を回避するために、特にそれぞれ異なる圧力レベルの同化を達成するために、第1の後側の制御管路71ならびに第2の後側の制御管路75は、それぞれ1つの逆止弁79を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来慣用のロール安定化装置の液圧回路図である。
【図2】1軸システムのための本発明によるロール安定化装置の液圧回路図である。
【図3】液圧的な操作量がリアアクスルの液圧装置で取り出される、フロントアクスルおよびリアアクスルを備える2軸システムのための本発明によるロールスタビライジングシステムの液圧回路図である。
【図4】液圧的な操作量がフロントアクスルの液圧装置で取り出される、フロントアクスルおよびリアアクスルを備える2軸システムのための本発明によるロール安定化装置の液圧回路図である。
【図5】液圧的な操作量がリアアクスルの液圧装置およびフロントアクスルの液圧装置で取り出される、本発明によるロール安定化装置の液圧回路図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ラジアルピストンポンプ
3 圧力制限弁
5 圧力制限弁
7 圧力センサ
9 圧力センサ
11 フロントアクスルの圧力レベル
13 フロントアクスルの圧力レベル
15 リアアクスルの圧力レベル
17 リアアクスルの圧力レベル
19 7ポート2位置方向制御弁
21 切換検出センサ
23 フェールセーブ弁
25 液圧装置
27 揺動モータ
29 液圧装置
31 揺動モータ
33 後吸込弁
35 後吸込弁
37 タンク
39 第1の制御管路
41 第2の制御管路
43 4ポート2位置方向制御弁
45 第1の制御チャンバ
47 第2の制御チャンバ
49 供給管路
51 右前のチャンバ
53 左前のチャンバ
55 供給管路
57 供給管路
59 逆止弁
61 逆止弁
63 逆止弁
65 逆止弁
67 第1の分岐点
69 第2の分岐点
71 制御管路
73 制御管路
75 制御管路
77 制御管路
79 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ2つのホイールを有する少なくとも2つのアクスルを備えた車両のアクティブなロール安定化のための装置であって、アクスルの少なくとも1つに、横方向スタビライザが装備されており、該横方向スタビライザが、方向切換弁装置(19;43)により液圧装置(25;29)を介して操作可能であり、該液圧装置(25;29)が、圧力供給ユニット(1)、例えばポンプによりアクスル圧力制限弁(3;5)を介してそれぞれ異なる圧力レベル(11,13;11,13,15,17)で負荷可能である形式のものにおいて、前記方向切換弁装置(19;43)が、圧力レベル(11,13;11,13,15,17)の少なくとも1つから形成される液圧的な操作量により制御されていることを特徴とする、アクティブなロール安定化のための装置。
【請求項2】
少なくとも1つの液圧装置(25;29)が、第1の圧力レベル(11)および第2の圧力レベル(13)により負荷可能であり、前記液圧的な操作量が、第1の圧力レベル(11;15)および第2の圧力レベル(13;17)の差圧から形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記方向切換弁装置(19;43)が、前記液圧的な操作量により制御される多方向制御弁を有しており、方向切換弁(19;43)の第1の制御面が、第1の圧力レベル(11;15)により、方向切換弁(19;43)の第2の制御面が、第2の圧力レベル(13;17)により負荷されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記第1の制御面と前記第2の制御面とが等しく、制御面を介して、差圧が正である場合には、前記多方向制御弁(19;43)の第1の切換位置が調節され、差圧が負である場合には、前記多方向制御弁(19;43)の第2の切換位置が調節される、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記多方向制御弁が4ポート2位置方向制御弁(43)である、請求項3記載の装置。
【請求項6】
前記多方向制御弁が7ポート2位置方向制御弁(19)である、請求項3記載の装置。
【請求項7】
車両のロール運動の開始が、少なくとも1つの圧力レベル(11,13;11,13,15,17)を変更する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
形成された液圧的な操作量が、これにより制御される方向切換弁装置(19;43)、これにより制御される液圧装置(25;29)およびこれにより制御される横方向スタビライザを介して、ロール運動の開始に反作用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記方向切換弁装置(19;43)が、前記液圧装置(25;29)と前記多方向制御弁との間に接続される少なくとも1つの第1の逆止弁(59)を有しており、該第1の逆止弁(59)が、圧力供給ユニット(1)により圧送される液圧媒体を液圧装置(25;29)に供給するために開放され、他の場合には閉鎖されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記方向切換弁装置(19;43)が、第1の供給管路(55)および第2の供給管路(57)を介してそれぞれ液圧装置(25;29)に接続されており、第1の供給管路(55)が、第1の逆止弁(59)を有し、第2の供給管路(57)が、第1の逆止弁(59)に相応の第2の逆止弁(61)を有する、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記第1の逆止弁(59)に、逆向きに作用する第3の逆止弁(63)が、前記第2の逆止弁(61)に、逆向きに作用する第4の逆止弁(65)が並列に接続されている、請求項10記載の装置。
【請求項12】
車両のフロントアクスルが、前記方向切換弁装置(19)により前側の液圧装置(25)を介して操作可能な前側の横方向スタビライザを装備し、車両のリアアクスルが、前記方向切換弁装置(19)により後側の液圧装置(29)を介して操作可能な後側の横方向スタビライザを装備している、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
液圧的な操作量が、前記後側の液圧装置(29)にかかる少なくとも1つの圧力レベル(15,17)から形成される、請求項12記載の装置。
【請求項14】
液圧的な操作量が、前記前側の液圧装置(25)にかかる少なくとも1つの圧力レベル(11,13)から形成される、請求項12記載の装置。
【請求項15】
液圧的な操作量が、前記後側の液圧装置(29)にかかる少なくとも1つの圧力レベル(15,17)および前記前側の液圧装置(25)にかかる少なくとも1つの圧力レベル(11,13)から形成される、請求項12記載の装置。
【請求項16】
前記前側の液圧装置(25)および前記後側の液圧装置(29)がそれぞれ異なる圧力レベルで運転され、2つの逆止弁(79)が圧力レベル(15,17)の補償のために後側の液圧装置(29)に配設されている、請求項15記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−536120(P2009−536120A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508100(P2009−508100)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000624
【国際公開番号】WO2007/128253
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】