説明

アクティブステント

本発明は、典型的な実施形態において、望ましくない特性を排除しつつシリコンステントと金属ステントの両方の優れた特性の多くを組み合わせたステントを提供する。特に、本発明に係る主な目的は、ステントの領域の相対的な硬さ/柔らかさをステントの他の領域と異ならせることができ、それにより、患者に更なる快適さを与え且つ径方向の力に対して耐性が得られる一群のステントを提供することである。また、典型的な実施形態は、障害物の除去を伴い及び/又は放射線治療能力を有する一群のステントを提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、管腔閉塞を防止するための医療器具に関し、特に、良性状態および悪性状態の両方の治療において形成して使用するためのステントおよび方法であって、ステントの機能が構造支持部および付随する間隙の幾何学的な変動によって決定されるステントおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、管腔開口を維持し且つ狭窄、外的圧縮または内部障害物に起因する閉塞を防止するために管または通路内に挿入される装置である。特に、ステントは、一般的には冠状動脈における血管開口を維持するために使用され、しばしば、腎臓からの排液を維持するために尿管内に挿入され、膵臓癌または胆管癌において胆管内に挿入され、あるいは、狭窄または癌のために食道内に挿入される。血管および非血管のステント植込み術は著しく発達してきたが、残念ながら、患者の生体構造の様々な部分に適するステントを製造するための技術に関して大きな限界がある。
【0003】
従来、様々な特性を有するステントを提供するためには、複数の材料からステントを製造しなければならなかった。この場合、所望の特性のそれぞれにおいて少なくとも1つの材料を使用しなければならない。その結果、これらのステントの多くが、例えば異なる形状記憶を有する2つ以上の金属を編み込んで形成される。残念ながら、編み上げられたステントは早期に老朽化し易い。また、1つのステントに複数種類の材料を用いると、ステントの表面領域に沿う特性に一貫性がなくなる場合がある。これは、特に、ステントが何らかの理由により閉塞された血管または非血管の管腔内に配置される場合に望ましくない。ステントは、ある領域では硬く、他の領域では更に柔軟である必要がある。また、ステントが手軽に受け入れられるようになると、更なる用途が開発されるようになる。
【0004】
放射線治療は、高エネルギ放射線を注意深く使用して癌を治療するものである。特に、放射線は癌細胞の繁殖能力を破壊し、身体はこれらの細胞を自然に除去する。放射線治療は、放射線効力範囲を高める化学療法等の促進剤の使用も含む広義語である。また、放射線腫瘍医は、患者の体外にある機械によって生成された放射線を使用する場合もある(外照射療法)。また、放射線は、患者内に置かれる放射能源を用いて与えられる場合もある(近接照射療法)。残念ながら、機械による放射線治療処置および静脈内放射線治療処置の両方とも、ある程度、系統的な導入に依存している。その結果、側副組織が放射線に晒されることは避けられない。多量の放射線量または多量な促進剤にあっては、薬理学的に有効な用量を適切に導入して対象組織に到達させる必要がある。これにより、組織の損傷、疲労、疲労、皮膚炎、一時的または永久的な脱毛、治療部位における皮膚色の一時的な変化、食欲不振、吐き気および嘔吐、腸の機能低下、激しい腹痛、下痢、不妊症または不妊、膣の乾燥または狭窄、インポテンスなどの副作用が生じ、場合によっては死亡する。また、放射線治療は、第2の癌を発現する危険を高める可能性もある。これらの影響は、一般に、放射線を対象組織に到達させるために必要な高い放射線量に起因している。
【0005】
既存の装置の更なる限界としては、それらの構造支持部の構造に起因する内径を通過する際の流動特性的な制約を挙げることができる。特に、ステントが編成されたフィラメントで形成されているか或いは被覆されているかに応じて、流れの動特性に悪影響が及ぶ可能性がある。特定の場合、被覆されたステントは、高分子側鎖と粘膜との相互作用の結果として、粘液分泌抑制を引き起こし或いは粘液分泌抑制を悪化させる可能性がある。
【0006】
したがって、編成によらずに単一の基材から加工され、その表面領域に沿って様々な特性を有することができる治療ステントの必要性が、依然として残っている。さらに、材料的な条件ではなく幾何学的条件に応じて相対的な硬さ、柔軟性、可撓性、剛性、および径方向力を変えることができる治療用ステントが必要である。特に、複数のゾーンに分けられ、ゾーン毎に所定の特性を持たせることができ、且つ、隣接するゾーンにおいて考えられる限り大幅に異なる特性を有することができ、それにより、人体の一般的な管腔に適合させることも、特に特定の患者の特定の管腔形状に適合させることもできるようなステントが必要である。更に、癒着に耐え且つ一般的な流体や特別な粘液の流れを促進させるように特別にデザインされたステントも必要である。また、放射線治療の系統的な導入に伴う放射線の副作用を軽減するために、埋め込み部位において所定量の放射線を放射する埋め込み可能な放射性デバイスの設計の必要性も残されている。さらに、主に、側副組織に対する被爆を大きく減少させることに特定の関心が向けられている。放射線を浸透させるために放射線促進剤が含浸された埋め込み型デバイスのコーティング剤の開発;埋め込み型デバイスの特定部位への導入の知識を利用して、接近することが困難な肝臓等の器官のための放射線送給装置の開発が必要である。したがって、放射線治療に利用できる付加的な部位を創成する、特定部位に限定された用量の生物学的製剤の送給が必要である。
【発明の開示】
【0007】
本発明の主な目的は、本発明の典型的な実施形態に関連し、望ましくない特性を排除しつつシリコンステントと金属ステントの両方の優れた特性の多くを組み合わせたステントを提供することである。特に、本発明の好ましい実施形態に係る目的は、簡単に導入できステントを提供することであり、更に他の実施形態のように除去可能なステントを提供することである。また、本発明のこの実施形態に係るステントは、材料感染を引き起こさず、感染を減少させうることが望ましい。したがって、本発明の好ましい実施形態に係る主な目的は、挿入、再配置、および除去が容易であり、永久的な使用および一時的な使用の両方に適したプロテーゼを提供することである。
【0008】
本発明の好ましい実施形態に係る主な目的は、径方向に圧縮される際にその軸方向の実効長さを維持することができる好適な単一材料から加工されるステントを提供することである。この目的のために、ステントは、管腔組織を悪化させうる継ぎ目を有さない。特に、本発明に係るステントは、ステントの外形状およびその間隙を成形する工具を使用して形成される。
【0009】
本発明の典型的な実施形態に係る更に他の目的は、良性疾患および悪性疾患の治療に適応できるとともに、臨床医師による悪性障害物の治療方法を向上させることができるステントを提供することである。
【0010】
本発明の更に他の目的は、経済的で日常的な用途に適したステントおよびその導入方法を提供することである。また、ステントの移動量が最小であり、組織の肉芽形成を最小限に抑えるとともに、展開後に縮小せず、また、粘液線毛除去が問題とならない。
【0011】
本発明の典型的な実施形態に係る更に他の目的は、外径に対する内径の比率が優れ、動的な拡張を伴う優れた径方向力を有する一方で、悪性疾患および良性疾患を有する小児患者および成人患者における使用に適したプロテーゼを提供することである。
【0012】
本発明に係る典型的なステントの主な目的は、ステントのある領域の相対的な硬さ/柔らかさを他の領域と異ならせることができ、それにより、患者に更なる快適さを与え且つ径方向の力に対して耐性が得られる一群のステントを提供することである。
【0013】
典型的な実施形態に係る更なる目的は、柔軟性や耐久性を向上させ、適切な導入を容易にする新規な間隙構造を有する一群のステントを提供することである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態に係る更に他の目的は、上述したような利点を有し、特にステントの除去のためにステントの末端に複数の開口を画成する、自己拡張式のステントを提供することである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態に係る更なる目的は、外部源によって操作でき、除去を促すための脈動作用を与えうるステントを提供することである。具体的には、ステントは、径方向に収縮することにより人間の脈管構造と同様の様式で任意の鬱血性材料を除去するように設計されている。
【0016】
本発明に係る更に他の目的は、放射線治療及び/又は生物治療の部位特異的導入に適した医療器具を提供することである。好ましい生物学的製剤は、低レベルの放射線供給で組織浸透を高める放射線促進剤である。
【0017】
本発明の更なる目的、特徴、利点は、添付図面と併せて以下の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るステントの好ましい実施形態は、ステントの上皮形成を防止し且つ早期の伸長および縮小を伴わずに所望の移植場所に係合できるステントを提供する。また、ステントは、径方向に圧縮を受ける際にその軸方向の長さを保持する。
【0019】
ステントは、Ni、C、Co、Cu、Cr、H、Fe、Nb、O、Tiおよびこれらの組み合わせから実質的になるグループから選択される複合材料によって形成されていることが好ましい。この複合材料は一般に圧縮チューブに形成され、この圧縮チューブからステントが適当な成形装置上でエッチング処理されて形成されることにより、所望の外形状がステントに与えられる。合成カラー技術およびインビトロ評価技術の両方により、本発明に係るステントが、作用する力を、角度のある構造によって吸収される変形作用へと変換でき、それにより過度の構造支持部応力、早期の素材疲労、並びに老朽化の進行を防止できる顕著な能力を有することが示されている。
【0020】
前記ステントの好ましい実施形態は、例えばスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ウンウンニリウム、ウンウンウニウム、ウンウンビウム等の少量の遷移金属を含む。この用途には1族遷移金属が最も適しているが、他の遷移金属も、その放射能性質に起因して、部位特異的ステント介在放射線治療において有用な付加物となり得る。そのような実施形態においては、表面コーティングとして比較的安定している放射遷移金属からなる薄い膜でステント自体をコーティングすることができる。遷移金属がステント構造支持部自体中にある場合、構造支持部は、実効的な磁気活性のため約0.01〜0.95%、好ましくは約5%の重量パーセントで少なくとも1つの遷移金属を含有する。
【0021】
金属調節タンパク質の活性化またはガルバニ電流を避けるため、医療器具は、例えば親水性のポリウレタンおよび特定の場合には吸湿性のポリウレタン等の比較的不活性なコーティング剤、あるいは、タンタル等の遷移金属によってコーティングされることが好ましい。好ましい実施形態においては、生物学的製剤が被覆ステントから放出される場合、被覆剤は、生体分解性の医用グレードのポリウレタン、例えばポリラクチドポリグリコール酸放出膜であることが好ましい。
【0022】
一部の遷移金属は、その放射能性質により、非常に僅かな量で使用しなければならない。そのような場合には、対象組織の浸透を確保するため、ステント及び/又はステント被覆剤が放射線増強因子(potentiator)と錯体を形成し、それにより信号が高められてもよい。許容できる放射線増強因子またはスタンドアロンステント介在治療の例としては、例えばシスプラチナ、パクリタキセル(paclitaxol)、5−フルオロウラシル(5−flourouracial)、ゲムシトビン(gemcytobine)、およびナベルビン(navelbine)等の生物学的製剤を挙げることができるが、これらに限定されない。化学療法薬は、一般に、DNA−相乗効果剤(DNA−interactive Agent)、代謝拮抗物質、チューブリン−相乗効果剤、ホルモン剤、アスパラギナーゼまたはヒドロキシウレア等の他の薬剤としてグループ分けされる。各グループの化学療法薬は、活性または化合物のタイプによって更に分けることができる。本発明の抗癌剤またはベンズイミダゾールと組み合わせて使用される化学療法薬は、これらの全てのグループの構成要素を含む。化学療法薬及びその投与方法の詳細な説明に関しては、参照することにより本明細書に組み込まれるDorr et al, Cancer Chemotherapy Handbook,2d edition,paged 15−34,Appleton & Lange(Connecticut,1994)を参照されたい。
【0023】
DNA相乗効果剤としては、例えばシスプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン(altretamine)等のアルキル化剤;例えばブレオマイシン等のDNA鎖切断剤;例えばダクチノマイシンやドキソルビシン等の挿入トポイソメラーゼII抑制剤; 例えばエトポシドやテニポシド等の非挿入トポイソメラーゼII抑制剤;およびDNAマイナーグルーブ結合剤プルカミジン(plcamydin)を挙げることができる。アルキル化剤は、細胞DNA、RNA、およびタンパク質分子と共に、また、更に小さいアミノ酸、グルタチオン、および類似の化学薬品と共に、共有化学付加体を形成する。一般に、これらのアルキル化剤は、例えばアミノ、カルボキシル、リン酸塩、または、核酸中のスルフヒドリル基、タンパク質、アミノ酸、あるいは、グルタチオン等の細胞構成物質中の求核原子と反応する。癌治療におけるこれらのアルキル化剤の役割および仕組みはあまり理解されていない。一般的なアルキル化剤としては、例えばクロラムブシル、シクロホスファミド、イソファミド(isofamide)、メクロレタミン、メルファラン、ウラシル・マスタード等のナイトロジェン・マスタード;例えばチオテパ等のアジリジン;例えばブスルファン等のメタンスルホンエステル;例えばカヌスチン(cannustine)、ロムスチン、ストレプトゾシン等のニトロソウレア;例えばシスプラチン、カルボプラチン等の白金錯体;例えばマイトマイシン等の生物還元アルキル化剤、および、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン(altretamine)を挙げることができ;DNA鎖切断剤としてはブレオマイシンを挙げることができ;DNAトポイソメラーゼII抑制剤としては、以下のもの、すなわち、例えばアムサクリン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ルダルビシン(ldarubicin)、およびミトキサントロン等の挿入物(intercalator);例えばエトポシドやテニポシド等の非挿入物(nonintercalator)を挙げることができる。DNAマイナーグルーブ結合剤はプリカマイシンである。
【0024】
代謝拮抗物質は、2つの主要な仕組みのうちの一方または他方により、核酸の生成を妨げる。一部の薬物は、DNA合成のための即時前駆物質であるデオキシリボヌクレオシド三リン酸の生成を抑制し、したがってDNA複製を抑制する。一部の化合物は、プリンまたはピリミジンにかなり似ており、同化ヌクレオチド経路においてはこれらに取って代わることができる。その結果、これらの類似体は、それらの通常の対応物の代わりにDNAおよびRNAへと置き換えることができる。本明細書で有用な代謝拮抗物質としては、例えばメトトレキサート等の葉酸拮抗薬、および、例えばフルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、CB3717、アザシチジン、シタラビン、およびフロクスウリジン等のトリメトレキサートピリミジン拮抗薬を挙げることができ、プリン拮抗薬としては、メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチンを挙げることができ;糖改質類似体としてはシクトラビン(cyctrabine)、フルダラビンを挙げることができ;リボヌクレオチド還元酵素抑制剤としてはヒドロキシウレアを挙げることができる。
【0025】
チューブリン相乗効果剤は、チューブリン上の特定の部位に結合することにより重合するタンパク質のように作用して、細胞微小管を形成する。この微小管は、重要な細胞構造単位である。相乗効果剤がタンパク質に結合すると、細胞は微小管を形成することができない。チューブリン相乗効果剤としては、ビンクリスチン、およびビンブラスチン、アルカロイドおよびパクリタキセルの両方を挙げることができる。
【0026】
また、癌および腫瘍の治療においてはホルモン剤も有用である。これらは、ホルモンの影響を受け易い腫瘍において使用されるとともに、一般的には自然源から得られる。これらのホルモン剤としては、エストロゲン、複合エストロゲン、およびエチニール・エストラディオール、およびジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、およびルデネストロール(ldenestrol);例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、およびメゲストロール等のプロゲスチン;例えばテストステロン、プロピオン酸テストステロン等のアンドロゲン;フルオキシメステロン、メチルテストステロンを挙げることができ;副腎コルチコステロイドは、天然の副腎コルチゾールまたはヒドロコルチゾンから得られる。これらは、その抗炎症性の利点および有糸分裂を抑制してDNA合成を止める何らかの能力を有するがために使用される。これらの化合物としては、プレドニゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、およびプレドニゾロンを挙げることができる。
【0027】
レウチナイジングホルモン放出(leutinizing hormone releasing)ホルモン剤またはゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬は前立腺癌の治療で主に使用される。これらのホルモン剤としては、ロイプロリドアセテートおよびゴセレリンアセテート(goserelin acetate)を挙げることができる。これらは、検査においてステロイドの生合成を防止する。
【0028】
抗ホルモン抗原としては、タモシフェン(tamosifen)等の抗エストロゲン剤、フルタミド(flutamide)等の抗アンドロゲン剤、および、ミトタン(mitotane)やアミノグルテチミド等の抗アドレナル剤を挙げることができる。ヒドロキシウレアは、主に、酵素の抑制により、リボヌクレオチドレダクターゼのように作用するように思われる。アスパラギナーゼは、アスパラギンを機能しないアスパラギン酸に変え、したがって腫瘍中のタンパク質合成を阻止する酵素である。
【0029】
以上は本発明の幾つかの好ましい実施形態について述べているが、他の化学療法薬およびコーティング技術が使用されてもよい。主な制限は、そのような陳述が全身療法の望ましくない態様の多くを軽減しなければならないということである。
【0030】
ステント工学技術の当業者であれば、本願を知らされることで、他の方法により本発明と一致するステントを製造することができるが、そのようなステントを製造する好ましい方法は以下の通りである。前述のように、複合材料が選択され、半加工品が形成される。半加工品はレーザエッチングされることが好ましく、エッチングされた加工品は、一般に、映像記録顕微鏡検査を使用して精度に関して検証される。支柱厚さ、セグメント角度、ゾーン配置等を確保するために寸法測定が行なわれる。また、ステントは、ステントの外寸法の望ましい外形状を実質的に有する成形工具上で形成されることが好ましい。
【0031】
ステントが特定の管腔の寸法に成形される場合には、ステント形成前に、対象管腔の光学写真撮影及び/又は光学ビデオ撮影が行なわれてもよい。その後、その対象管腔の要件にしたがってステントの対応するゾーンおよび接続領域の幾何学的形状をエッチング形成することができる。例えば、ステントが気管用として設計され、略D形状の管腔を有するとともに端部ゾーンよりも中間ゾーンを柔軟にする必要がある場合には、ステントをその仕様に合わせて設計することができる。特に、特定の患者の気管の形状が光学的に捕らえられ、適切な寸法が与えられる場合には、患者固有のプロテーゼを設計することができる。これらの技術は、血管でない他の管腔にも適合可能であるが、患者固有の形状が遺伝的特徴や生活様式等の様々な因子に依存している血管用途において非常によく適している。
【0032】
なお、様々な形状記憶材料を使用してステントの領域を変更するのとは異なり、本発明に係るステントは、ステントエンジニアリングのエッチング段階および成形段階中あるいは成形後処理段階および研磨段階中に角度、セグメント長、およびセグメント厚を変えることにより複数のゾーンおよび1つのゾーン内の複数のセグメントを修正することができるため、無限の数の特徴的な組み合わせをとることができる。また、ゾーン間の接続部の形状を修正することにより、付加的な機能を得ることができる。
【0033】
本発明に係る典型的なステント10は、好ましい間隙形状(interstice geometry)を表わしている図1〜図3に示されている。この好ましい形状以外の他の許容できる様々な間隙形状は図示しないが、数例を挙げると、U、V、W、Z、S、およびXの形状がある。
また、ステント10は形状記憶合金から形成されており、レーザエッチングされる独特の幾何学的形状の間隙を有する。しかしながら、ユニタリステントにおいて間隙を形成する他の従来の方法も、等価ではないとは考えられるが、当業者の技術的範囲内で使用することができる。
【0034】
しかしながら、このことが、間隙の幾何学的形状の変化がステント機能に影響を及ぼすという知識が現在当該分野で知られていることを意味するものではない。逆に、本発明者らは、間隙の幾何学的形状、幅、長さと、ねじれ応力および径方向の力に対する相対的な抵抗との相互関係を見出した。実際には、ステント10は、管腔装置の長手方向軸に対して垂直に延びる周方向の帯域を有する。これらの帯域は一般にゾーンと称される。接続部(connector)50はこれらの帯域を互いに接続し、また、接続部50はステント機能を調整するための付加的な手段である。特に、接続部50は、略U字形状の部材を画成するが、数例を挙げるとU、V、W、Z、S、およびX等の他の幾何学的形状を画成することもできる。
【0035】
標準的な方向では、特に図1に示されるように、略U形状の接続部は、2つの脚部材(leg member)と、脚部材と接続し且つ脚部材に対して好ましくは90°で直交して延びる交差部材(crossing member)とを備えることが好ましい。なお、本発明から実質的に逸脱することなく、他の角度が与えられてもよい。本発明者らは、交差部材及び/又は脚部材の長さ及び/又は交差部材と脚部材とが交差する角度を変更すると、ステント10の相対的な硬さ/柔らかさ、径方向の力及び/又は柔軟性を変えることができることを見出した。角度は、90°よりも小さい鋭角、または90°よりも大きい鈍角に変更することができる。その漸進的な変化に応じて、ステント10の特定の特性が変化する。その結果、ステント10の異なるゾーンに異なる剛性を与えて、患者の快適さを高めるようにすることができ、また、例えばエアウェイステントにおいては管腔の開放を容易にすることができる。また、種々の解剖学的管腔は、異なるステント剛性度を必要とし得る。そのため、本発明に係るステント10は、医療器具から様々なレベルの構造的サポートを必要とする、患者の生体中の様々な管腔に適した外形状を有するように、厳密な仕様で製造することができる。
【0036】
前述の脚の全ての長さを変えることにより、あるいは、個々の脚の長さを個別に変えることにより、付加的なステント特性を得ることができる。このシステムの利点は、ステントを成形する以前に所望する特性を決定しておくことができ、また、特定の成形パラメータ内にとどめることにより、信頼性をもってステントを形成し、捲縮させ、導入し、配置することができ、結果として所望する機能が得られるという点である。これは、血管およびそれ以外の管腔のそれぞれが独特の形状を有するという事実に鑑みて重要である。その結果、本発明に係る方法および装置は、一般的には解剖学的組織に合わせて、特に特定の患者の解剖学的構造に合わせてプロテーゼを形成することができる。
【0037】
U形状の接続部は、交差部材と、少なくとも2つの脚部材とをそれぞれ有する。本発明者らは、脚部材の長さの増減、及び/又は、交差部材の長さの増減、及び/又は、交差部材と脚部材との交差角度の変更が、ステントの機能に影響を及ぼすことを見出した。特に、脚部材の長さが短くなるほど、ステントのその部分で利用できる柔軟性が少なくなる。一例として、ステント10のねじりに対する柔軟性を減少させたい場合には、脚部材が図示よりも長くなり且つ脚部材と交差部材とによって形成される角度がそれぞれ90°よりも僅かに大きくなるように、接続部40を修正しなければならない。また、交差部材の長さも同様にステントの機能に影響を与えうる。交差部材を短くすることによりステントを更に硬くすることができ、交差部材を長くすることによりステントを更に柔軟にすることができる。すなわち、脚部材の長さの変更、交差部材の長さの変更、角度の変更、接続部の形状および数の変更を組み合わせることにより、患者の生体中の特定の管腔に対してステントを適合させることができる。その結果、あらゆる解剖学的管腔に適合し、個々の患者の解剖学的管腔に適合した好ましい医用プロテーゼを形成することができる。
【0038】
好ましい実施形態においては、ステントの機能を変更するために、間隙の幾何学的形状の変更およびU形状接続部材の操作が行なわれる。ステント構造支持部または間隙マトリクスの剛性と、それに伴うステント自体のねじり剛性は、これらの変更によって主に決まる。典型的な実施形態において、ステントの相対的な柔軟性は、収縮性およびねじり性の度合いに応じて、柔らかい、中程度、または硬いと評価することができる。ステントのねじり性および収縮性が低下すればするほど、ステントは硬いと見なされる。
【0039】
ねじり性および径方向の柔軟性が比較的大きい本発明に係る典型的なステントは、柔らかいと見なされる。柔らかいと評価される典型的なステントは、U形状の接続部間の距離が圧縮状態(すなわち、レーザエッチングが施された3mmチューブの状態に収縮された状態)で約4.5μmである。また、交差部材の長さは約1.0μmであることが好ましい。脚部材の長さは約1.5μmであることが好ましい。また、脚部材は、ステントの構造支持部の残りの部分に設けられる足部を更に備えていてもよい。足部は、ステントの特性を更に調整するために、約0.25μmの標準的な長さから調整することができる。また、略矩形部材がU形状接続部中に同様の容量をもって変動的に組み込まれる。略矩形部材の寸法を変更する変動性の要因および結果は、脚部材の長さ寸法変更によって表わされるそれと同様である。
【0040】
一例として、決して限定的に解釈されないが、柔らかさの指標または相対的な柔軟性は、前述の様々な長さを増大することにより大きくすることができる。例えば、U形状接続部の脚部材および交差部材の長さを増大させることにより、柔軟性が高まる。しかしながら、ステントの好ましい実施形態において、U形状部材間の距離および間隙同士の間の距離に関しては、長さと柔らかさとの間に逆の相関関係がある。間隙寸法の帰結として指標付けるこの相対的な柔らかさ/硬さは、本発明の好ましい実施形態の新規な態様である。実際の経験として、長い脚部材を鋭角で結合すると柔軟性が大きくなる。逆に、脚部の長さを短くして鈍角に結合すると剛性が大きくなる。非限定的な例として、短い脚部材が90°よりも大きい角度で交差部材から曲がり出ているU形状の接続部は、長い脚部材が90°よりも小さい角度で交差部材から分岐しているU形状の接続部と比べて極めて硬く、ねじり歪みに耐性がある。
【0041】
長さ及び間隔の違いに加えて、間隙自体は、正にその性質だけにより新規な機能をステントに与えることができる様々な形状を画成してもよい。しかしながら、機能の変化は、形状それ自体に依存するよりもむしろ、様々な形状の寸法差に大きく依存している。したがって、先の段落で説明した寸法差が様々な間隙形状によりステントに与えられる機能を決定する点に留意することが重要である。このため、当業者は、本発明を知らされた後、多くの間隙形状を考え付いて、特定の寸法的なパラメータを一定に保つことにより特定の機能基準を満たすようにすることができる。
【0042】
磁気特性を組み入れることにより、幾何学的な決定された機能を超えて特性が高められ、それにより、外部の対象物の極性を変えることで、ステントの収縮を促し、管腔内部の鬱血性材料を除去することができる。特に、ステントは短縮せずに径方向に収縮でき、それによりステントの移動が防止される。また、ドッグボーン形状(dog bone shape)の少なくとも1つの端部により、ステントが脈動して収縮する際に、ドッグボーン形状端部が移動を防止する。このため、殆どの用途において、基端はドッグボーン形状であることが好ましいが、特定の管腔では、径方向の保持力が最先端に存在することが必要である。
【0043】
好ましい外部脈動源は、収縮を引き起こすためにインプラントの全体的な領域の周囲に配置可能な磁石である。あるいは、磁極性を逆転できる機能を有する装置を設けて同じ結果を達成してもよい。いずれの場合にも、ステント自体は、他のゾーンとは異なる磁荷を有することによりステントをその長手方向に沿う断面で収縮させることができる図1に20で示されるような様々なゾーンを有することができる。
【0044】
本発明は、その精神または本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態で具現化されてもよい。前述の実施形態は、全ての点で単なる例示的なものと見なさなければならない。したがって、本発明の範囲は、以上の説明によってではなく、添付の請求項によって表わされる。請求項の等価物の意味および範囲内に入る全ての変更は、本発明の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る典型的なステントの電子顕微鏡写真である。
【図2】図1の典型的なステントの圧縮状態の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生体構造部内に配置するための医療器具であって、
構造支持部を備え、この構造支持部は、先端部と基端部とを有し、それらの間に長手方向に延在するとともに管腔が貫通して形成されている略円筒状部材を画成するように構成され、それにより、前記器具の長手方向に延在する各地点に沿って圧力が作用する際に、前記器具が望ましくない短縮または伸長を引き起こさないように構成されている、医療器具。
【請求項2】
前記構造支持部が遷移金属を含んでいる、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記遷移金属が放射能を有している、請求項2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記放射能による放射線は、側副組織の被曝を最小限に抑えつつ対象組織を治療するために、薬学的に許容される量で放射される、請求項3に記載の医療器具。
【請求項5】
磁場に晒されることにより径方向に収縮可能である、請求項1に記載の医療器具。
【請求項6】
医療用インプラント内に障害物を伴う患者を治療する方法において、
構造支持部を備える医療器具を導入するステップであって、前記構造支持部は、先端部と基端部とを有し、それらの間に長手方向に延在するとともに管腔が貫通して形成されている略円筒状部材を画成するように構成され、前記構造支持部は、前記器具が延在する長手方向に沿って、複数の角部により作られる幾何学的なパターンを形成し、前記角部が医療器具の相対的な柔軟性を決定し、それにより、前記医療器具が対象管腔の形状に一致し、かつ、前記器具の長手方向に延在する各地点に沿って圧力が作用する際に、前記器具が望ましくない短縮または伸長を引き起こさないようなステップと、
前記医療器具を収縮させて前記閉塞物を移動させるステップと、
前記医療器具を収縮前の状態まで拡張させるステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−507302(P2007−507302A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534044(P2006−534044)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/031898
【国際公開番号】WO2005/032413
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(505156226)アルヴィオラス,インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】