説明

アクリルフィルムの新規な合成/製造方法

【課題】特定用途に必要な機械的特性を有し、広温度な範囲で機械的応力下で透明性が維持される完全に透明なアクリルフィルムの新規な製造方法。
【解決手段】置換ニトロキシドのアルコキシアミン誘導体の存在下で、制御されたラジカル重合によって得られるブロックコポリマーの上記用での使用。フィルム全体の厚さは40〜300μm、好ましくは70〜90μmで、フィルムのヘイズは2以下、破断伸びは50%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル材料、特に熱可塑性樹脂の被覆に使用されるアクリル材料、特に単一層のアクリルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂はその例外的に優れた光学特性および成形のし易さのため使用が増えている熱可塑性高分子である。アクリル樹脂は優れた外観を有し、少なくとも90%の光透過度を有し、耐久性に優れ、熱成形し易く、耐老化性、特に大気(特にUV)に対する耐久性に優れ、製造も容易である。
【0003】
こうした技術的理由および美的な理由から耐老化性が悪い可塑性部品を保護するのに使用可能で、しかも耐久性のある透明なアクリルフィルムを見つけることが重要である。
しかし、実際には、UV放射に対する耐性(耐久性)を高くしたフィルムは被被覆部品に耐UV特性を付与できるが、そうするとメタクリル材料の脆性によって被被覆部品全体が脆弱になる危険がある。
従って、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)およびPS(ポリスチレン)から成る部品を被覆するのに十分な延性を有する(ダクタイルな)アクリル材料を得ることが最も重要な課題である。
【0004】
この目的で使用される技術の中では特に「インモールド(in-mold)装飾法、多色成形」とよばれる金型内で成形時に装飾する方法が知られている。この方法では、先ず第1段階で、好ましくはロールに巻取られて保存されていたアクリルフィルムを所望形状に予備成形して、物品を成形するのに使用される金型の内側表面形状に一致させる(この操作の前に積層段階とよばれる段階で熱溶着で連続的に他のフィルムまたは熱可塑性基板を加えることもできる)。次の第2段階で溶融状態の熱可塑性樹脂を金型中に射出してフィルムと接触させ、それによってフィルムを成形された物品の表面に付着させる。
【0005】
上記の技術の特に好ましい形態は上記2つの段階を同時に行う方法で、一般にフィルムインサート成形法(Film Insert Molding、FIM)とよばれている方法である。
この技術ではアクリルフィルムをそのまま用いることができる。換言すれば、アクリルフィルムは透過度を維持する。また、輝く外観を維持したまま着色することもできる。さらに、消費者へ与えるための所定情報、デザイン、モチーフ、イメージ、文字、ロゴ等を印刷で付けることもできる。この印刷の例としては木の外観を模倣したデザインを挙げることができる。
【0006】
透明アクリルフィルム上に印刷またはエンボスされるデザインやモチーフはFIMによって熱可塑性樹脂物品の表面に与えることができる。この印刷フィルムは被被覆物品の老化を防止する。さらに、基板と接触する2つの表面上にデザイン、モチーフを形成した場合には、フィルムがデザイン、モチーフと大気との接触を保護し、浮き出し効果で美観的にも優れたものになる。
【0007】
このような製品を製造するための現在の方法としては下記の2つの方法が挙げられる。
その第1の方法はアクリル樹脂とこれを延性にするのに十分なコア−シェル型の衝撃改質剤とを混合する方法である(下記文献参照)。
【特許文献1】国際特許第WO99 29766号公報(Rohm社)
【特許文献2】米国特許第6,420,033 B1号明細書(Rohm社)
【特許文献3】欧州特許第EP 1000 978 A1号公報(住友)
【特許文献4】欧州特許第EP 0,763,560 A1号公報(三菱レーヨン)
【0008】
下記文献には50〜95重量%のアクリル樹脂と5〜50重量%のアクリルポリマー(エラストマ層を含む複数層)との組成物からなる単一層のアクリルフィルムが記載されている:
【特許文献5】米国特許第6147162号明細書
【0009】
上記ポリマーは耐衝撃改質剤とよばれ、上記アクリル樹脂中に分散している。このフィルムはFIM法での使用に適し、被被覆物品の表面に優れた強度を与える。
【0010】
下記文献にも50〜95重量%のアクリル樹脂と5〜50重量%の衝撃改良剤とからなる組成物から作ったアクリルフィルムが記載されている:
【特許文献6】欧州特許第EP 1000978号公報
【0011】
このアクリルフィルムもFIM法を実施するのに適し、表面強度を改善する。この文献には積層フィルム(すなわち多層フィルム)、正確に2層フィルムも記載されている。この2層フィルムの内側層は上記組成物からなり、外側層は衝撃改質剤を含まないアクリル樹脂からなる。この2層フィルムは優れた表面強度を有し、ロールの形に巻くことができる。
【0012】
下記文献にはアクリル樹脂とアクリルエラストマ粒子(衝撃改良剤に対応)とを含む層すなわち可撓性層と、衝撃改良剤を含まないアクリル樹脂の層とからなるフィルム(多層)が記載されている:
【特許文献7】米国特許第6444298 B1号明細書
【0013】
3層を有する系も記載されており、その2層は可撓性層の各表面層にそれぞれ接着されている。この多層フィルムは着色処理に優れ、脱色に強く、衝撃改質剤の存在に関連する樹脂の着色を少なくすることができる。この特許では被覆全体の厚さに対する上記可撓性層の厚さの比を50〜100%、好ましくは60〜100%にすることを薦めている。
【0014】
工業的に極めて高度に自動化されたプロセスでは極めて強い引張応力が加わる回転印刷プレス中をフィルムが通る。そのため、回転印刷プレスでの破断を防ぐために破断伸び(周囲温度で測定)は50%以上、好ましくは60%以上でなければならない。
回転印刷プレスのシリンダ間にフィルムを通し、連続操作を行うためにフィルムをリールに巻くことができるようにするためには極めて高い可撓性が要求され、ヤング・モジュラスは300〜1800MPa、好ましくは500〜1200MPaが要求される。
【0015】
上記第1の方法はコア−シェル型の衝撃改質剤を十分にアクリル樹脂に混合するものであるが、コア−シェル粒子の寸法が50nm以上であるため限界があり、粒子およびアクリル樹脂の屈折率を適切にした場合にした材料の透明性は得られない。しかも、粒子およびアクリル樹脂の屈折率は所定の温度範囲内でしか得られず、この温度範囲外では材料が白くなる。
【0016】
第2の方法でも透明性の問題を解決するようにしている。この第2の方法では式:(A)n−B型(ここで、AはPMMAと相溶性のあるブロック、Bはガラス遷移温度が低いアクリレートのブロックである)のブロックコポリマーを用いる。この方法で得られる生成物はナノメータオーダーの寸法(echelle nanometrique)でアクリレートの領域とメタクリレート領域とに分かれているといわれている。これらの領域を小さい寸法にすることによって、温度に関係なく、可視光波長での材料の透明性が良くなる。
カネカの特許(下記文献8)ではフィルムとして使用するために、最大95%のブロックコポリマーを含む材料を請求している。
【特許文献8】日本国特許出願第2000−397401号公報
【0017】
この発明は興味のあるブロックコポリマーを開示しているが、ブロックコポリマーとPMMAホモポリマーを混合する必要があり、また、混合物を製造する必要もあるため工業的利益は限られる。さらに、この発明ではブロックコポリマーの合成に銅錯体を触媒として用いる。しかし、銅錯体は強く着色した分子であり、樹脂の透明度をできるだけ高くしなければならない用途では全く使用できない。さらに、この発明に開示のブロックコポリマーをアクリルフィルムの製造で使用するためにはコアーシェル添加剤を5〜95%の含有量で上記ブロックコポリマーに混合しなければならない。この混合はフィルム製造段階に余分な工程を追加するだけでなく、フィルム製造の上記第1の方法で述べたのと同じ欠点(コアーシェル粒子の存在下で光学特性を維持できないという欠点)が生じるため、この発明の利用は制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本出願人は上記の課題(すなわち機械的耐久性および外部からの攻撃に対する耐性が高く、しかも透明性が高いフィルムを得るという課題)を解決するための努力を重ねた結果、追加のコアーシェル添加剤に頼らずに、公知のブロックコポリマーの中から一定のブロックコポリマーを慎重に選択することによって上記の課題が達成できるということを見出した。
本発明の特徴はブロックコポリマーを少なくとも95重量%含むフィルムが製造できるという点にある。
【0019】
以下で説明するように、本発明コポリマーはニトロキシド存在下でのラジカル重合で得られる。
本発明が開示するブロックコポリマーの化学組成は、モジュラスが300〜1800MPaの高い透明性を有するアクリルフィルムを得るのに必要なブロックコポリマーの化学組成である。この「化学組成」とは各ブロックの形成に関与するモノマーの種類、これらモノマーの比、数平均および重量平均分子量および最終材料中のコポリマー含有量を特定するためのものである。
【0020】
従って、本発明の目的は、優れた透過性を維持したまま、破断伸び(特に印刷機通過時の耐抵抗性)が極めて高く、しかも、フィルムをコイル状に巻き取って保存するのに必要な可撓性を与える弾性モジュラスを有するアクリルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のフィルムは95〜100重量%の式:(A)m−(B)n−Iに対応する少なくとも一種のブロックコポリマーと、0〜5重量%の少なくとも一種のポリマーAとを含む組成物から、押出し成形のような熱可塑性樹脂の成形法を用いて得られるフィルムである:
(ここで、
Aは少なくとも60重量%のメタクリルモノマー(a1)を含むモノマー混合物(A0)の重合によって得られ、共有結合によってBブロックに直接結合したポリマーブロックであり、
Bは少なくとも60重量%のアクリルモノマー(b1)を含むモノマー混合物(B0)の重合で得られ、コアIに共有結合によって直接結合したポリマーブロックであり、
コア(I)はn個(2以上)の炭素原子を有し、これらの炭素原子を介してBブロックに結合している有機基であり、
nは2以上の整数であり、
mはn以下の整数である)
【0022】
コア(I)のIは下記の式:Ia、Ib、Icに対応する:
【化1】

【0023】
これらIa、Ib、Icは後述の対応するアルコキシアミン(式II)の熱分解で生じ、Arは置換された芳香族基を表し、Zはモル質量が14以上である多官能性の有機または無機の基で、式Iaのn個のアクリル官能基と結合し、式Ibのn個のメタクリル官能基と結合し、式Icのn個のスチリル官能基と結合する。
Zは例えばポリアルコキシ基、特にジアルコキシ基、例えば1,2−エタンジオキシ、1,3−プロパン−ジオキシ、1,4−ブタンジオキシ、1,6−ヘキサンジオキシ、1,3,5−tris(2−エトキシ)シアヌル酸、ポリアミノアミン、例えばポリエチレンアミンまたは1,3,5−tris(2−エチルアミノ)シアヌル酸、ポリチオキシ基、ホスホン酸エステルまたはポリホスホネート基にすることができる(これらの例は本発明の範囲を限定するものではない)。
Zはさらに無機の基、例えばMn+-nのような有機金属錯体(酸素原子の第2の価はZとアクリル、メタクリルおよびスチリル基との間の結合に対応)にすることができる。Mはマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛またはスズ原子にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
Bは共有結合によってコアIに直接結合したポリマーブロックで、少なくとも60重量%のアクリルモノマー(b1)を含むモノマー混合物(B0)の重合で得られ、ガラス遷移温度(Tg)は0℃以下で、重量平均分子量(Mw)は40000〜200000g/molで、多分散性指数(PI)は1.1〜2.5、好ましくは1.1〜2.0である。
本発明ではモノマーB0の混合物は、アルキル鎖に少なくとも2つの炭素原子、好ましくは4つの炭素原子を含むアルキルアクリレート、例えばブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートまたはアクリロニトリルの中から選択されるアクリルモノマー(b1)を60〜100重量%含む。
【0025】
Bブロックの他の成分となるモノマー(b2)はラジカル重合可能なモノマー、例えばエチレン系モノマー、ビニルモノマー、これらの類似モノマーの中から選択される。
【0026】
本発明のAブロックは本発明フィルムで被覆する材料との親和力が高くなければならならず、50℃以上のTgを有する。
このAブロックは下記(1)と(2)のモノマー混合物A0の重合で得られる:
(1)アルキルメタクリレート、例えばメチル、ブチル、オクチル、ノニルまたは2−エチルヘキシルメタクリレート、さらには官能性メタクリル誘導体、例えばメタクリル酸、グリシジルメタクリレート、メタクリロニトリルまたはアルコール、アミドまたはアミン官能基を有する任意のメタクリレートの中から選択される少なくとも一種のメタクリルモノマー(a1)の60〜100重量%、
(2)酸無水物、例えば無水マレイン酸および芳香族ビニルモノマー、例えばスチレンおよびその誘導体、特にαメチルスチレンおよび(b1)に対応するモノマーの中から選択される少なくとも一種のモノマー(a2)の0〜40重量%。
【0027】
混合物A0はBブロックのために用いるモノマーの一部を含むことができる。この比率はAブロックに用いるモノマーの混合物の最大20%である。
ブロックコポリマー(A)m−(B)n−Iの重量平均分子量(MW)は80000グラム/モル〜300000グラム/モルで、多分散度は1.5〜2.5である。
【0028】
ブロックBからのモノマーがブロックAの組成物中に入るので、コポリマーを完全に記述するためには、ブロックBでのモノマーの全体含有量とブロックAとブロックBとの比を特定するのがよい。これらの2つの比は必ずしも同じである必要はない。
コポリマー(A)m−(B)n−Iはモノマー(B0)を60〜10重量%、好ましくは50〜25重量%含み、このブロックコポリマー中でのブロックBの比率は10〜50重量%、好ましくは20〜50重量%である。
【0029】
このコポリマー(A)m−(B)n−Iの製造方法ではアルコキシアミンタイプの開始剤を用いてBブロックのために必要な一つまたは複数のモノマー(B0)の重合を開始する。本発明のフィルム材料の製造の成功にとって開始剤の選択は重要である。すなわち、この開始剤がブロックコポリマーの腕の数を制御し、シーケンス(sequencage、ブロック化)を制御する。この特徴は開始剤のアルコキシアミンの分解で生じるニトロキシド制御剤の選択に依存する。本発明で選択したアルコキシアミンは下記の一般式を有する:
【0030】
【化2】

【0031】
Zは上記定義のものであり、NO結合に対してα位にある炭素原子は分子量が16g/mol以上の有機基RLを少なくとも1つ有する。窒素またはα位にある炭素の他の価は有機基、例えば直鎖または分岐鎖のアルキル基、例えば置換されていてもよいtert-ブチルまたはイソプロピル、例えば1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、水素原子または芳香族環、例えば置換されていてもよいフェニル基を有する。
本発明の好ましいアルコキシアミンは下記の式に対応するものである:
【0032】
【化3】

【0033】
これらの分子IIには下記一般式に対応するニトロキシドXが結合している:
【化4】

【0034】
(ここで、RL、窒素原子および窒素原子に対してα位にある炭素原子に結合した基は上記の意味を有する)
nを2以上の整数に選択することによって、A生成後の未反応Bブロックの存在を制限することができ、最終材料中でのブロックコポリマーの含有量を極めて高い値に維持できる。
Lの選択はBの生成中に重合を良く制御し、それによってAの再開始中にBの高い反応性を維持できるようにするために特に重要である。好ましくは下記の2つのニトロキシドX1およびX2が挙げられる:
【0035】
【化5】

【0036】
本発明の造方法では先ず最初に、式IIの開始剤の存在下(必要に応じてさらに追加の量の化合物Xの存在下)で60〜150℃の温度、1〜10barの圧力下でBブロックを重合する。重合は溶媒または分散媒体の存在下または非存在下で行うことができる。重合は変換率が90%になる前に止める。Bブロックの残留モノマーを蒸発するか否かは合成プロセスに関する設備に応じて選択する。次に、Aブロック用のモノマーを追加する。Aブロックの重合はBブロックの重合と同様な条件下で行う。Aブロックの重合は目標の変換率になるまで続ける。生成物は当業者に周知の手段でポリマーを単に乾燥するだけで回収できる。この段階でアクリルフィルム用途に求められる必要な種々の添加剤(耐UV、耐熱用)を添加し、フラットダイを用いた押出し成形で所望厚さのフィルムを製造する。
【0037】
得られたフィルム材料は少なくとも95%のブロックコポリマーを含む。
必要な場合には一定量のホモポリマーAを添加してフィルム材料中に存在するコポリマーの量を95〜100%にすることができる。この添加はAブロックの生成時に必要であることはわかろう。すなわち、当業者はモノマーの最終痕跡量の変換にこれらの残留モノマーを変換できる開始剤を新たに添加する。これらの制限内で本発明のフィルム材料の特性はアクリルフィルムとしての使用に適したものになる。
【0038】
本発明フィルムはその製造および着色に必要な全ての添加剤、例えば有機または無機の顔料をさらに含んでいる。
本発明フィルムは周知の成形方法、例えば押出し成形、カレンダリング、押出し吹込成形および注型によって製造できる。
本発明フィルムは厚さが50〜200ミクロン、好ましくは70〜90ミクロンの薄い層の形をしている。
【0039】
一般に、本発明で製造されたフィルムは寸法が50nm以下のエラストマー特性の領域を有し、弾性モジュラスが300〜1800MPaで、破断伸びが60%以上で、ヘイズが2以下である。
本発明フィルムはABS、PVC、PS、PPまたはPCのような材料を保護するための表面処理で使用できる。保護技術の例としては金型内での装飾(多色成形)、積層装飾、スクリーン印刷および代用塗料としての使用が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明はさらに、上記のようにして処理された部品と、これらの部品の各種用途、特に広い温度範囲で良好な安定性が要求される用途での使用に関する。すなわち、本発明フィルムは−40〜100℃の選択された任意の使用温度でほぼ一定な優れた透明性(ヘイズが2以下)を示す。
【実施例】
【0041】
実施例の説明では下記の略語を用いる:
BuA:ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
PI:多分散性指数
w:重量平均分子量
DTDDS:tert-ドデシルジスルフィド
【0042】
材料の特徴付けには標準的な分析法を用いた。分子量は立体除外クロマトグラフィーを用いて測定し、ポリスチレン当量で表す。ブロックコポリマーの含有量は液体吸収クロマトグラフィ技術で測定した。
【0043】
フィルムはRheocord研究室の熱可塑性材料用スクリュー押出機でフラットダイを通して押出し、温度調整した三本のロールカレンダーを通した後、水浴で冷却した。
押出前にサンプルを80℃で最低3時間、真空下に貯蔵した。
押出機帯域1、2、3の温度:175℃
ダイ帯域4の温度: 190℃
スクリュー速度: 33回転/分
ダイとカレンダーロール軸線の距離: 接触
ダイギャップ: 0.1mm
フィルムの厚さ: 100〜150μm
ホッパーに材料をチャージする前にスクリューを取外し、解体し、清掃した。
【0044】
得られたフィルムの機械特性および光学特性は下記で評価した:
ASTM規格D882: フィルムの引張特性の測定
ASTM規格D1003:全視感透過率およびヘイズの測定
原子間力顕微鏡を用いた分析(デジタル計器、Dimension 3100)によって低Tg領域(写真で暗く見える)の寸法が50nm以下であることを確認した。
【0045】
ブロックコポリマーの合成と、低Tg領域の寸法測定
Bブロックの製造
攪拌機を備えたジャケット付き金属反応装置中に、6000gのn−ブチルアクリレートと、65gの開始剤II1(下記式に対応)と、3.2gの過剰ニトロキシドX1(すなわちII1/X1モル比=7%)とを導入した。反応媒体の温度を115℃にする。
【化6】

【0046】
225分後のn−ブチルアクリレートの変換率は55.3%である。サンプルを抜き取り、生成したBブロックの特性を立体除外クロマトグラフィで決定した。
数平均分子量Mn :33,000Da
重量平均分子量Mw:44,000Da
多分散性指数PI(=Mw/Mn):1.3
【0047】
Aブロックの製造
次に、上記反応装置中に2000gのメチルエチルケトンと、4000gのMMAと、444gのメタクリル酸とを入れる。Aブロックの重合は90℃の温度で行う。
達成された変換率:51%
【0048】
立体除外クロマトグラフィによる分析からコポリマーは下記の特徴を有する:
数平均分子量Mn :77,160Da
重量平均分子量Mw:134,000Da
多分散性指数PI=1.75
1H NMRによる組成分析から下記がわかる:
n−ブチルアクリレートの含有量:42%
メチルメタクリレートの含有量 :53%
メタクリル酸の含有量 :5%
領域の寸法: 添付の[図1]のAFN写真からエラストマー領域の寸法は極めて小さく、50nm以下であることがわかる。
【0049】
合成実施例1、2、3
下記実施例の合成条件を〔表1〕に示す。
〔これらの実施例ではBブロックの最後に残ったブチルアクリレート(BuA)をAブロックの合成のためにとっておく〕
【表1】

【0050】
実施例1(本発明)
組成:MMA54%、BuA46%、
w=139,000Da、
PI=1.9
ヘイズ(%)<2
モジュラス(MPa)=368
塑性降伏点(MPa)=8.5
破断変形(%)=125
【0051】
実施例2(本発明)
組成:MMA59%、BuA41%、
w=138,000Da、
PI=1.9
ヘイズ(%)<2
モジュラス(MPa)=451
塑性降伏点(MPa)=15.6
破断変形(%)=79
【0052】
実施例3(本発明)
組成:MMA67%、BuA33%、
w=143,000Da、
PI=1.95
ヘイズ(%)<2
モジュラス(MPa)=921
塑性降伏点(MPa)=28.4
破断変形(%)=56
【0053】
実施例4(比較例)
上記日本国特許第2000−397401号に従ってMnが83,000Daで、Mwが108,000Daである48%のn−ブチルアクリレートと52%のメチルメタクリレートとを含むブロックコポリマーを製造した。
得られた生成物を窒素雰囲気下の炉中に200℃で1時間保持した。ポリマーは黒くなり、押出し成形すると分解し、フィルムできなかった。
【0054】
実施例5(比較例)
【表2】

【0055】
この比較例で得られた生成物は粘着性があり、押出し成形でフィルムに形成できない。この比較例はブロックコポリマー中に存在するアクリレートの量の選択の重要性を示し、また、国際特許第WO 97/27233号で請求されているコポリマーの全てが単一層フィルムとして使用できるとは限らないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】フィルムの原子間力顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
95〜100重量%の式:(A)m−(B)n−Iに対応する少なくとも一種のブロックコポリマーと、0〜5重量%の少なくとも一種のポリマーAとからなる組成物から押し出成形のような熱可塑性樹脂の成形法を用いて得られるフィルム:
[ここで、
Aは少なくとも60重量%のメタクリルモノマー(a1)を含むモノマー混合物(A0)の重合で得られ、共有結合によってBブロックに直接結合したポリマーブロック、
Bは少なくとも60重量%のアクリルモノマー(b1)を含むモノマー混合物(B0)の重合で得られる、共有結合によってコア(I)に直接結合したポリマーブロック、
コア(I)は下記のいずれか一つの式に対応する有機基:
【化1】

(ここで、
Arは置換された芳香族基、
Zはモル質量が14以上である多官能性の有機または無機の基)
nは2以上の整数、
mはn以下の整数]
【請求項2】
上記多官能性の有機の基が1,2−エタンジオキシ、1,3−プロパン−ジオキシ、1,4−ブタンジオキシ、1,6−ヘキサンジオキシ、1,3,5−tris(2−エトキシ)シアヌル酸、ポリアミノアミン、例えばポリエチレンアミン、1,3,5−tris(2−エチルアミノ)シアヌル酸、ポリチオキシ、ホスホン酸エステルまたはポリホスホネートから選択される請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
上記の多官能性の無機の基が式:Mn+-nの錯体(ここで、Mはマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛またはスズ原子)の中から選択される請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
下記(1)〜(4):
(1)アルコキシアミンと重合制御剤との存在下で60〜150℃で変換率が90%になるまでモノマー混合物B0を重合し、
(2)未反応のモノマーB0の一部または全部を除去し、
(3)モノマーA0の混合物を加えて重合をさらに行い、
(4)未反応のモノマーの全てを除去し、生成したコポリマーを回収する、
の工程を有する、制御された重合法で得られる組成物を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
上記のアルコキシアミンを下記式に対応する化合物の中から選択する請求項4に記載のフィルム:
【化2】

【請求項6】
上記重合制御剤を下記式に対応する化合物の中から選択する請求項4または5に記載のフィルム:
【化3】

【請求項7】
モノマー混合物B0が下記(1)および(2):
(1)アルキル鎖に少なくとも2つの炭素原子、好ましくは4つの炭素原子を含むアルキルアクリレート、例えばブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートまたはアクリロニトリルの中から選択されるアクリルモノマー(b1)の60〜100重量%、
(2)ラジカル重合可能なモノマー、例えばエチレン系モノマー、ビニルモノマーおよびこれらの類似モノマーの中から選択されるモノマー(b2)の0〜40重量%、
から成る請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
モノマー混合物A0が下記(1)および(2):
(1)アルキルメタクリレート、例えばメチル、ブチル、オクチル、ノニルまたは2−エチルヘキシルメタクリレートおよび官能性のメタクリル誘導体、例えばメタクリル酸、グリシジルメタクリレート、メタクリロニトリルまたはアルコール、アミドまたはアミン官能基を有するメタクリレートの中から選択される少なくとも一種のメタクリルモノマー(a1)の60〜100重量%、
(2)酸無水物モノマー、例えば無水マレイン酸、芳香族ビニル、例えばスチレンおよびスチレン置換体、特にα−メチルスチレンおよび(b1)に対応するモノマーの中から選択される少なくとも一種のモノマーの0〜40重量%
から成る請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
コポリマー組成物中の全モノマー重量に対するモノマーB0の量が10〜60重量%である請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
Bブロックの比率がコポリマーの10〜50重量%、好ましくは20〜50重量%である請求項1〜9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
BブロックのTgが0℃以下である請求項1〜10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
寸法が50nm以下のエラストマー領域Bを有する請求項1〜11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
厚さが50〜200ミクロン、好ましくは70〜90ミクロンである請求項1〜12のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
弾性モジュラスが300〜1800MPaで、ヘイズが2以下で、破断伸びが60%以上である請求項1〜13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
無機または有機の顔料をさらに含む請求項1〜14のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のフィルムの、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリスチレン(PS)、高衝撃ポリスチレン(HIPS)またはポリプロピレン(PP)の材料を保護するための表面処理での使用。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のフィルムの金型内装飾での使用。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のフィルムの積層装飾での使用。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のフィルムのスクリーン印刷被覆での使用。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のフィルムの代用塗料としての使用。
【請求項21】
請求項16〜20のいずれか一項に記載の使用で表面処理されたPS、PC、PP、PVCまたはABSをベースにした部品。
【請求項22】
請求項21に記載の部品の−40〜100℃の温度での使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−521441(P2006−521441A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505747(P2006−505747)
【出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000713
【国際公開番号】WO2004/087796
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(591004685)アルケマ (112)
【Fターム(参考)】