説明

アクリル系粘着テープおよびその製造方法

【課題】
紙セパレータを工程紙として用いた、低コストで、しかも粘着剤層の紙セパレータ側の粘着力が良好な粘着テープが得られる製造方法を提供すること。
【解決手段】
白色度が80%以上であって、かつ不透明度が70%以下である紙セパレータ上に多官能モノマーを含有するアクリル系粘着剤組成物を積層し、該粘着剤組成物層側から光を照射することを特徴とする光重合性粘着テープの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系粘着テープおよびその製造方法に関し、さらに詳細には低コストで粘着剤層の紙セパレータ界面における低分子量体の生成をおさえて良好な凝集力を有する粘着テープを得ることができる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系粘着テープの製造において、光重合性のアクリル系粘着剤組成物をセパレータに塗布し、紫外線等を照射して重合硬化させる方法が用いられている。セパレータとして、安価な紙セパレータを用いるとコストダウンを図ることができるが、白色の紙セパレータを用いると、光照射時に紙セパレータとの界面付近では極端に分子量の低いポリマーが生成してしまうため、被着体に貼り付けたときの粘着剤層の紙セパレータ界面側の凝集力が低下するという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、セパレータの色を無彩色の明度6以下とするか、又は有彩色の色相環が青色から緑色とし、紫外線照射を2段階で行う粘着テープの製造方法が提案されている(特許文献1)。しかしながらこのような色のセパレータを用いると、紫外線の照射効率が低下するため、重合率を高くするためには照射時間を長くする必要があり、その結果製造コストが高くなるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平7−331198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、紙セパレータを用いたアクリル系粘着テープの製造において、高い照射効率を維持しながら、良好な紙セパレータ界面の凝集力が得られる製造方法が求められており、本発明はそのような製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、紙セパレータとして白色度が80%以上であり、かつ不透明度が70%以下のものを使用すると、光の反射性および散乱性に優れるため照射効率を高めることができるとともに、紙セパレータ界面の低分子量体の生成を抑制し良好な凝集力を有する粘着剤層が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、白色度が80%以上であって、かつ不透明度が70%以下である紙セパレータ上に多官能モノマーを含有するアクリル系粘着剤組成物を積層し、該粘着剤組成物層側から光を照射することを特徴とするアクリル系粘着テープの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着テープの製造方法は、安価な紙セパレータを使用し、また光の照射効率が高いため低コストで製造することができ、さらに粘着剤層の紙セパレータ界面における低分子量体の生成を抑えて良好な凝集力を有する粘着テープを得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられるアクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系モノマーを主モノマーとして構成されるものであれば特に制限されないが、(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系モノマーとを含むアクリル系部分重合物を含有するものであることが好ましい。アクリル系部分重合物を構成する(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0010】
またアクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−メトキシプロピル、アクリル酸3−メトキシプロピル、アクリル酸2−メトキシブチル、アクリル酸4−メトキシブチル等のアクリル酸アルコキシエステル;メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシプロピル、メタクリル酸3−メトキシプロピル、メタクリル酸2−メトキシブチル、メタクリル酸4−メトキシブチル等のメタクリル酸アルコキシエステル;アクリル酸エチレングリコール、アクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸プロピレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール等のアクリル酸アルキレングリコール;メタクリル酸エチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸プロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等のメタクリル酸アルキレングリコール;アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸アリール;メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸アリールなどを使用することもできる。
【0011】
さらに、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、メタクリル酸β−カルボキシエチル、アクリル酸5−カルボキシペンチル、メタクリル酸5−カルボキシペンチル等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等の水酸基含有モノマー;アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有モノマー;アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテル、メタクリル酸−2−グリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー等を使用することができる。
【0012】
また上記(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとして、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸アリル、アクリロニトリル等を使用することもできる。
【0013】
これらの中でも、アルキル基の炭素数が4〜8のアクリル酸アルキルエステルを使用モノマー全体の50%以上、好ましくは60%以上使用すると、共重合性が良好で、得られる粘着剤の粘着力、柔軟性が良好になるため好ましく、特に、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルを使用することが好ましい。
【0014】
アクリル系重合物中の(メタ)アクリル系ポリマーの含有量は特に限定されるものではないが、5〜60質量%(以下、「%」で示す)であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの含有量がこの範囲となる(メタ)アクリル系部分重合物は、上記モノマーを含有する組成物を重合率5〜60%で重合することによって得ることができる。また、予め上記モノマーを重合した(メタ)アクリル系ポリマーと前記(メタ)アクリル系モノマーとを、5〜60:95〜40の割合で混合することによっても得ることができる。さらに、粘度やゲル分率を調整するために、上記モノマーをアクリル系部分重合物中に添加したり、またこれから除去することもできる。
【0015】
またアクリル系部分重合物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は10万〜100万、さらには20万〜80万であることが好ましい。
【0016】
本発明に用いるアクリル系粘着剤組成物は、多官能モノマーを必須成分として含有するものである。多官能性モノマーは、分子内にエチレン性二重結合を2個以上有するモノマーであり、上記アクリル系部分重合物中の(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な化合物である。このような多官能性モノマーとして、具体的には、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレートおよびネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのような多価アクリレート;エチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのジ(メタ) アクリレート、ポリエチレングリコールのジアクリレート、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレートおよびトリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレートのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼンが好ましく用いられる。多官能モノマーは、(メタ)アクリル系部分重合物100質量部あたり、0.05〜10質量部使用することが好ましく、0.1〜10質量部使用することがより好ましい。
【0017】
さらにアクリル系粘着剤組成物には、光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤としては、可視光線、紫外線、α線、X線などのエネルギー線を照射することによりアクリル系粘着剤組成物中のモノマー成分をラジカル重合せさることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤などを用いることができる。
【0018】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。
【0019】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0020】
ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0021】
ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられ、チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0022】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0023】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、トリス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0024】
光重合開始剤の使用量は、アクリル系粘着剤組成物を形成するための全モノマー100質量部に対して一般に0.01〜5質量部であり、好ましくは0.05〜3質量部の範囲である。
【0025】
また、本発明に用いるアクリル系粘着剤組成物には、アゾ系重合開始剤や過酸化物系開始剤などの熱重合開始剤を配合することもできる。この熱重合開始剤は、前記したアクリル系部分重合物の調製時にも用いることができる。
【0026】
アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどが挙げられる。
【0027】
過酸化物系開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類などが挙げられる。
【0028】
さらにまた、アクリル系粘着剤組成物には、必要に応じ、フィラー、粘着付与樹脂等の任意成分を配合することもできる。
【0029】
フィラーとしては、中空および中実のフィラーを用いることができる。またフィラーは、無機系フィラーでも、有機系フィラーのいずれでもよい。具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク、酸化チタンなどの無機物、ガラスバルーン、シラスバルーン、セラミックバルーンなどの無機中空体、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズ、ポリエチレンビーズなどの有機物、塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーンなどの有機中空体などが挙げられる。フィラーの大きさは特に制限されないが、0.1〜100μm、さらに好ましくは0.5〜50μmであることが好ましい。アクリル系粘着剤組成物中のフィラーの配合量は、通常0〜50%であり、好ましくは0〜30%である。
【0030】
粘着付与剤としては、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、重量平均分子量300〜10000のアクリル系低分子量体などが挙げられるが、なかでも、相溶性が良好なアクリル系低分子量体が好ましく用いられる。粘着付与剤のアクリル系粘着剤組成物中の配合量は、通常0〜50%であり、好ましくは5〜30%である。
【0031】
その他、アクリル系粘着剤組成物には、硬化剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、顔料などを必要に応じて配合することもできる。
【0032】
アクリル系粘着剤組成物の製造は、上記アクリル系部分重合物および多官能モノマーと、必要に応じて配合する任意成分とを、常法に従って均一に混合することにより行うことができる。
【0033】
上記のようにして得られたアクリル系粘着剤組成物は紙セパレータに塗工される。紙セパレータの種類としては、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、クレーコート紙等が例示できるが、本発明においては、紙セパレータの白色度および不透明度が一定の範囲にある必要がある。すなわち、まず白色度が80%以上である必要があり、好ましくは80〜90%である。白色度が80%よりも低いと光の照射効率が低下して残存モノマーが多くなるため好ましくない。なお、本明細書において白色度とは、JIS P 8148に準拠した試験方法に基づく白色度を意味する。
【0034】
さらに紙セパレータは、不透明度が70%以下である必要があり、好ましくは、70〜30%である。不透明度が70%より高いと光照射により紙セパレータ界面での低分子量体の生成量が多くなるため好ましくない。なお、本明細書において不透明度とはJIS P 8149に準拠した試験方法に基づく不透明度を意味する。
【0035】
この白色度80%以上であって、かつ不透明度70%以下の紙セパレータ上に上記アクリル系粘着剤組成物を10〜1000μm程度の厚みで塗工し、必要によりさらに、別途セパレータを塗工面に積層した後、紙セパレータとは反対側の粘着剤組成物層側から、もしくは、両側から光を照射して、アクリル系粘着剤組成物を重合硬化させる。塗工面に積層されるセパレータ(光照射側)としては、上記紙セパレータや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等よりなる樹脂フィルム等が挙げられるが、光、特に紫外線を透過可能なものであることが好ましく、実質的に透明又は半透明の樹脂フィルムが好ましい。
【0036】
本発明で照射される光は、紫外線、可視光線、γ線、電子線等の光重合開始剤の反応を開始できるエネルギー線であり、中でも、波長200〜400nmの紫外線を用いて光重合反応させることが好ましく、照度0.1〜400mW/cm、光量100〜5000mJ/cmの範囲内に設定することが好ましい。紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられる。
【実施例】
【0037】
次に製造例および実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0038】
製 造 例 1
アクリル系部分重合物の製造(1):
撹拌機、環流冷却管、温度計及び窒素道入管を備えた反応装置に、アクリル酸ブチル(BA)75.85質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)20質量部、アクリル酸(AA)4質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)0.15質量部、n−ドデシルメルカプタン0.01質量部を投入し、フラスコ内の空気を窒素に置換しながら、50℃まで加熱した。次いで、重合開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメルバレロニトリル)(和光純薬工業製 V−70)0.0025質量部を撹拌下に投入して均一に混合した。重合開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが、冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が120℃に達し、その後徐々に下がり始めた。反応系の温度が115℃まで下がったところで、強制冷却を行い(メタ)アクリル系モノマーの部分重合物を得た(アクリル系部分重合物(A))。この部分重合物は、ポリマー濃度20%で、下記測定方法によるポリマー分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量は70万であった。
【0039】
( 分子量の測定 )
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)を求めた。
<測定条件>
装置:HLC−8120(東ソー(株)製)
カラム:G7000HXL(東ソー(株)製)
GMHXL(東ソー(株)製)
G2500HXL(東ソー(株)製)
サンプル濃度:1.5mg/ml(テトラヒドロフランで希釈)
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
カラム濃度:40℃
【0040】
製 造 例 2
アクリル系部分重合物の製造(2):
使用モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)92質量部、アクリル酸(AA)8質量部を使用した以外は製造例1と同様にして(メタ)アクリル系モノマーの部分重合物を得た(アクリル系部分重合物(B))。この部分重合物は、ポリマー濃度45%で、上記方法によるポリマー分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量は20万であった。
【0041】
実 施 例 1
アクリル系粘着テープの製造:
製造例1で得られた部分重合物(A)100質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA:新中村化学(株)製)0.1質量部、光重合開始剤ESACURE KK(日本シイベルヘグナー(株)製)及び粘着付与樹脂シクロヘキシルメタクリレートオリゴマーを混合して粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を、剥離処理された白色度84.4%、不透明度66.8%であるグラシン紙上に、全体の厚さが160μmになるように不織布(ミキロン♯805、三木特種製紙(株)製)の両面に塗工した後、塗工面を、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(A−50、帝人デュポンフィルム(株)製)でカバーした。ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、ブラックライトを用いて極大波長365nmの光を3mW/cmの強度で5分間照射し、粘着シートを製造した。この粘着シートについて、下記方法により定荷重、保持力および残存モノマーを測定した。結果を表2に示す。
【0042】
( 定荷重の測定 )
定荷重剥離は、20×50mmの粘着シートを用い、紙セパレータ面およびA−50面をそれぞれステンレス板に接着させて温度80℃で90°の方向に荷重200gの条件で60分間放置したときのズレの大きさ(mm)、または、落下した場合には、落下するまでの時間(min)を測定した。
【0043】
( 保持力の測定 )
保持力は、JIS Z 0237に準拠して行い、粘着テープを20mm幅に裁断し、ステンレス板に20mm×20mmの面積が接するように貼り付け、温度80℃、荷重1kgの条件で60分間放置したときのズレの大きさ(mm)、または、落下した場合には落下するまでの時間(min)を測定した。
【0044】
( 残存モノマーの測定 )
ガスクロマトグラフィー法により残存モノマー量を測定した。得られた粘着シートから25cm2を採取して、片面の紙セパレータを剥がして不織布に貼付け、もう一方の面のPETフィルムも剥がして開放状態として、直ちに試料の秤量をおこなった後、バイアル瓶に入れて密栓した。その後、130℃で20分間加熱して、加熱状態のガス1μLをガスクロマトグラフ装置に注入して測定を行なった。ヘッドスペースオートサンプラーとしてAgilent G1888(アジレントテクノロジー(株)製)、ガスクロマトグラフとしてAgilent Technologies 6850(アジレントテクノロジー(株)製)を用いた。
【0045】
実 施 例2〜3および比 較 例1〜6
下記表1に示す組成により実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物および表2に示す紙セパレータを用いて実施例1と同様にしてそれぞれ粘着シートを製造し、定荷重、保持力および残存モノマーを測定した。結果を表2に併せて示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
この結果から明らかなように、実施例1〜3の粘着テープはいずれも残存モノマー量が低く、またA−50面と紙セパレート面がほぼ同等の優れた凝集力を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の粘着テープの製造方法は、安価な紙セパレータを利用し、光の照射効率が高いものであり、また紙セパレータ界面における低分子量体の生成を抑制し、良好な凝集力が得られるものである。
【0050】
従って、本発明は、低コストで優れた凝集力を有するアクリル系粘着テープの製造方法として有利に利用できるものである。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色度が80%以上であり、かつ不透明度が70%以下である紙セパレータ上に多官能モノマーを含有するアクリル系粘着剤組成物を積層し、該粘着剤組成物層側から光を照射することを特徴とするアクリル系粘着テープの製造方法。
【請求項2】
アクリル系粘着剤組成物が、アクリル系部分重合物および多官能モノマーを含有するものである請求項1に記載のアクリル系粘着テープの製造方法。
【請求項3】
アクリル系部分重合物が、アルキル基の炭素数が4〜8のアクリル酸アルキルエステルを含有するアクリル系モノマーを重合して得られるものである請求項2に記載のアクリル系粘着テープの製造方法。
【請求項4】
アルキル基の炭素数が4〜8のアクリル酸アルキルエステルの含有量が、アクリル系部分重合物を構成するモノマー全体に対して50質量%以上である請求項3に記載のアクリル系粘着テープの製造方法。
【請求項5】
アクリル系部分重合物が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量10万〜100万の(メタ)アクリル系ポリマーを5〜60質量%含有するものである請求項2ないし4のいずれかの項に記載のアクリル系粘着テープの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの項に記載の製造方法により得られたアクリル系粘着テープ。

【公開番号】特開2009−13360(P2009−13360A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179297(P2007−179297)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】