説明

アクリル系重合体および感放射線性樹脂組成物

【課題】 レジスト溶剤への溶解性に優れ、ベーク温度依存性が少なく、また現像後のパターンのラインエッジラフネスを低減する。
【解決手段】 式(1)と、式(2)と、式(3)および/または式(4)とを含有することを特徴とする。【化1】 R、R’、R’’、およびR’’’は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を、Rは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基を、Xは炭素数7〜20の炭素原子および水素原子のみからなる多環型脂環式炭化水素基を、RおよびRは相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を、Rは炭素数4〜20の脂環式炭化水素基を、Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を、RおよびRは水素原子、または炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基をそれぞれ表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系重合体および感放射線性樹脂組成物に関し、特にKrFエキシマレーザーあるいはArFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線の如き各種の放射線を使用する微細加工に有用な化学増幅型レジストとして好適に使用できる感放射線性樹脂組成物およびその組成物に利用できるアクリル系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、最近ではArFエキシマレーザー(波長193nm)、Fエキシマレーザ(波長157nm)等を用いた200nm程度以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。このようなエキシマレーザーによる照射に適した感放射線性樹脂組成物として、酸解離性官能基を有する成分と放射線の照射により酸を発生する成分である酸発生剤とによる化学増幅効果を利用した化学増幅型感放射線性組成物が数多く提案されている。例えば、樹脂成分として、ノルボルナン環誘導体を有する単量体ユニットを含む特定の構造を樹脂成分とするフォトレジスト用高分子化合物が知られている(特許文献1、特許文献2)。
また、狭分散性の(メタ)アクリル酸と特定のモノシクロヘキサンまたはビシクロヘプタンカルボラクトン等とのエステルを繰り返し単位とする(メタ)アクリル酸共重合体を用いたレジスト組成物が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2002−201232号公報
【特許文献2】特開2002−145955号公報
【特許文献3】特開2003−84436号公報
【0003】
しかしながら、半導体分野において、より高い集積度が求められるようになると、レジストである感放射線性樹脂組成物はより優れた解像度が必要とされるようになってきた。また、同時により微細化が進むにつれて、現像時に発生する微少な欠陥がデバイス設計において致命的な欠陥になる事例が数多く見られてきた。このような事態に対処すために、レジストとしての解像度および露光量依存性などのプロセスマージンを向上させる開発は当然進めているが、現像時に発生する微少な欠陥が構成成分である樹脂に起因すると考え、そのレジスト溶剤への溶解性を高めることも急務となってきている。現在、一般的に使用されているアクリル系樹脂は、剛直な主鎖に嵩高い側鎖がグラフト化されておりレジストに用いられる一般的な溶剤に対して、極めて溶解性が低いと考えられている。また微細化に伴い、プロセス条件に対するマージン、特にベーク温度による線幅変化が少ないことが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、特定の構造を有するアクリル系重合体およびこの重合体を用いることにより、放射線に対する透明性が高く、しかも感度、解像度、ドライエッチング耐性、パターン形状等のレジストとしての基本物性に優れ、特に、レジスト溶剤への溶解性に優れ、ベーク温度依存性が少なく、また現像後のパターンのラインエッジラフネスを低減する感放射線性樹脂組成物およびこの感放射線性樹脂組成物に用いることができるアクリル系重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアクリル系重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位(i)と、式(2)で表される繰り返し単位(ii)と、式(3)で表される繰り返し単位および式(4)で表される繰り返し単位から選ばれた少なくとも一つの繰り返し単位(iii)を含む酸解離性基含有単位とを含有することを特徴とする。
【化1】

上記式(1)ないし式(4)において、R、R’、R’’、およびR’’’は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基をそれぞれ表し、Rは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、Xは炭素数7〜20の炭素および水素のみからなる多環型脂環式炭化水素基を表し、RおよびRは相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を、Rは炭素数4〜20の脂環式炭化水素基をそれぞれ表し、Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を、RおよびRは水素原子、または炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基をそれぞれ表し、nは3〜7の整数を表す。
特に、繰り返し単位(iii)が上記式(4)であることを特徴とし、また、上記式(4)において、Rがメチル基またはエチル基、RおよびRが水素原子、およびnが4または5であることを特徴とする。
本発明の感放射線性樹脂組成物は、樹脂成分として上記アクリル系重合体を用い、これに感放射線性酸発生剤とを含有させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアクリル系重合体は、式(1)で表される繰り返し単位(i)と、極性基を含まない炭素および水素のみからなる多環型脂環式炭化水素基を側鎖に有する式(2)で表される繰り返し単位(ii)と、式(3)で表される繰り返し単位および/または式(4)で表される繰り返し単位(iii)を含む酸解離性基含有単位とを含有するので、活性放射線、特に、ArFエキシマレーザー(波長193nm)に代表される遠紫外線に感応する化学増幅型レジストとして、放射線に対する透明性が高く、しかも感度、解像度、ドライエッチング耐性、パターン形状も良好であるレジストとしての基本的性能を有しているだけでなく、第一に、現像後のパターンラインエッジラフネスを低減することが可能で、第二に、照射後の加熱処理(以下、「PEB」という。)依存性を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
式(1)で表される繰り返し単位(i)は、ラクトン骨格として5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナンに由来する脂環式炭化水素基を側鎖の一部に有する。またこのラクトン骨格は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基、アルコキシ基、またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよい。
炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基としては、上記アルキル基の水素の一部または全部をフッ素原子で置き換えた基が挙げられる。
式(1)で表される繰り返し単位(i)の中で好ましい繰り返し単位は、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナンに由来する脂環式炭化水素基を側鎖に有する。
【0008】
式(2)で表される繰り返し単位(ii)は、Xとして、炭素数7〜20の炭素原子および水素原子のみからなる多環型脂環式炭化水素基を側鎖の一部に有する。好ましくは、炭素数7〜20の極性基を含まない炭素原子および水素原子のみからなる多環型脂環式炭化水素基を側鎖の一部に有する。このような多環型脂環式炭化水素基としては、例えば、下記式に示すように、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(2a)、ビシクロ[2.2.2]オクタン(2b)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(2c)、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン(2d)、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(2e)等のシクロアルカン類に由来する脂環族環からなる炭化水素基が挙げられる。
【化2】

これらのシクロアルカン由来の脂環族環は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基の1種以上あるいは1個以上で置換した骨格等が挙げられる。これらは例えば、以下の様な具体例で表されるが、これらだけに限定されるものではない。またこれらは単独でも、2種以上を混合して用いることができる。
【化3】

【0009】
式(3)および/または式(4)で表される繰り返し単位(iii)は、酸解離性基を含有する繰り返し単位である。
およびRは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
は、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン、またはこれらの誘導体に由来する炭化水素基が挙げられる。
は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
は、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
繰り返し単位(iii)において、脂環族環を有する酸解離性基が好ましい。
好ましい繰り返し単位(iii)としては、式(4)で表される繰り返し単位であり、特に好ましい繰り返し単位(iii)の例を式(4−1)〜式(4−4)に挙げる。
【化4】

Rは水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表わす。
式(4−1)〜式(4−4)の中でも、本発明の繰り返し単位の組み合わせを考慮すると式(4−1)および式(4−2)が好ましい。
【0010】
本発明のアクリル系重合体は、上記繰り返し単位(i)、(ii)および(iii)を含む酸解離性基含有単位で構成することが好ましい。この繰り返し単位(i)、(ii)および(iii)で表される繰り返し単位を生じさせる単量体として、それぞれ式(1−1)、式(2−1)、式(3−1)、式(4−5)で表されるアクリル酸誘導体エステルが挙げられる。
【化5】

上式において、R、R’、R’’、R’’’、R〜R、X、nは、式(1)、式(2)、式(3)、式(4)におけるR、R〜R、X、nと同一である。
【0011】
本発明のアクリル系重合体において、繰り返し単位(iii)とともに酸解離性基含有繰り返し単位を形成する単量体として、以下の単量体を挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸との表記は、アクリル酸またはメタクリル酸を表す。
(メタ)アクリル酸2−メチルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−n−プロビルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−イソプロビルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸1−(テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1,1−ジシクロヘキシルエチルエステル等の酸解離性基を有する単量体が挙げられる。
【0012】
本発明のアクリル系重合体は、上記繰り返し単位(i)および繰り返し単位(ii)と、繰り返し単位(iii)を含む酸解離性基含有単位とで構成することが好ましく、上記繰り返し単位(i)および繰り返し単位(ii)と、繰り返し単位(iii)とで構成することが特に好ましい。
その割合は、アクリル系重合体を構成する全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(i)が20〜70モル%、好ましくは30〜60モル%;繰り返し単位(ii)が1〜20モル%、好ましくは3〜15モル%;繰り返し単位(iii)を含む酸解離性基含有単位が20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%である。
繰り返し単位(i)の含有率が、20モル%未満では、レジストとしての現像性が低下する傾向にあり、70モル%をこえると解像度の劣化およびレジスト溶剤への溶解性が低下する傾向にある。繰り返し単位(ii)の含有率が、1モル%未満では、解像性が低下する傾向にあり、20モル%をこえると解像性が劣化する傾向にあり、また繰り返し単位(iii)を含む酸解離性基含有単位の含有率が20モル%未満では、解像性が劣化する傾向にあり、60モル%をこえると現像性が低下する傾向にある。
繰り返し単位(iii)を含む酸解離性基含有単位において、繰り返し単位(iii)は、アクリル系重合体を構成する全繰り返し単位に対して、10モル%以上となることが好ましい。
【0013】
本発明のアクリル系重合体は、例えば、各繰り返し単位に対応する単量体の混合物を、ヒドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、ジアシルパーオキシド類、アゾ化合物等のラジカル重合開始剤を使用し、必要に応じて連鎖移動剤の存在下、適当な溶剤中で重合することにより製造できる。
上記重合に使用される溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の飽和カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のアルキルラクトン類;2−ブタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のアルキルケトン類;シクロヘキサノン等のシクロアルキルケトン類;2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
また、上記重合における反応温度は、通常、40〜120℃、好ましくは50〜100℃であり、反応時間は、通常、1〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0014】
本発明のアクリル系重合体は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が既定値以下、例えばHPLCで0.1重量%等であることが好ましく、それにより、レジストとしての感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等をさらに改善できるだけでなく、液中異物や感度等の経時変化がないレジストとして使用できる感放射線性組成物が得られる。
アクリル系重合体の精製法としては、例えば以下の方法が挙げられる。金属等の不純物を除去する方法としては、ゼータ電位フィルターを用いて樹脂溶液中の金属を吸着させる方法や蓚酸やスルホン酸等の酸性水溶液で樹脂溶液を洗浄することで金属をキレート状態にして除去する方法等が挙げられる。また、残留単量体やオリゴマー成分を規定値以下に除去する方法としては、水洗や適切な溶剤を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、アクリル系重合体溶液を貧溶媒へ滴下することで重合体を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した重合体スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法がある。また、これらの方法を組み合わせることもできる。上記再沈澱法に用いられる貧溶媒としては、精製するアクリル系重合体の物性等に左右され一概には例示することはできない。適宜、貧溶媒は選定されるものである。
【0015】
アクリル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と略称する)は、通常、1,000〜300,000、好ましくは2,000〜200,000、さらに好ましくは3,000〜100,000である。この場合、アクリル系重合体のMwが1,000未満では、レジストとしての耐熱性が低下する傾向があり、一方300,000をこえると、レジストとしての現像性が低下する傾向がある。
また、アクリル系重合体のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」と略称する)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜5、好ましくは1〜3である。
なお、MwおよびMnは、東ソー(株)製高速GPC装置(型式「HLC−8120」)に東ソー(株)製のGPCカラム(商品名「G2000HXL」;2本、「G3000HXL」;1本、「G4000HXL」;1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0016】
本発明において、アクリル系重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
また、このアクリル系重合体はアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性であるが、酸の作用によりアルカリ易溶性となる。そのため、感放射線性樹脂組成物に用いられる酸解離性基含有樹脂として好適である。
【0017】
上記アクリル系重合体を酸解離性基含有樹脂として用い、放射線の照射により酸を発生する成分である酸発生剤と組み合わせることにより感放射線性樹脂組成物が得られる。
酸発生剤としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、ジスルホン類やジアゾメタンスルホン類等のスルホン化合物を挙げることができる。
酸発生剤として好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩化合物;
【0018】
4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0019】
4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0020】
トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムカンファースルホネート等のトリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム塩化合物;
【0021】
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物;
【0022】
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等のビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩化合物;
【0023】
1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0024】
1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0025】
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド等のスクシンイミド類化合物;
【0026】
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド類化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明において、酸発生剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。酸発生剤の使用量は、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、アクリル系重合体100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。この場合、酸発生剤の使用量が0.1重量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方30重量部をこえると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンを得られ難くなる傾向がある。
【0028】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、酸拡散制御剤、酸解離性基を有する脂環族添加剤、酸解離性基を有しない脂環族添加剤、界面活性剤、増感剤等の各種の添加剤を配合できる。
上記酸拡散制御剤は、照射により酸発生剤から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非照射領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有する成分である。
このような酸拡散制御剤を配合することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、照射から現像処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。
上記酸拡散制御剤としては、レジストパターンの形成工程中の照射や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。
【0029】
このような含窒素有機化合物としては、「3級アミン化合物」、「アミド基含有化合物」、「4級アンモニウムヒドロキシド化合物」、「含窒素複素環化合物」等が挙げられる。
「3級アミン化合物」としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族アミン類;トリエタノールアミン、ジエタノールアニリンなどのアルカノールアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。
【0030】
「アミド基含有化合物」としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−ピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−ピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−ピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−モルフォリン等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物のほか、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0031】
「4級アンモニウムヒドロキシド化合物」としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
「含窒素複素環化合物」としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン等のピリジン類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルフォリン、4−メチルモルフォリン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0032】
上記含窒素複素環化合物のうち、3級アミン化合物、アミド基含有化合物、含窒素複素環化合物が好ましく、また、アミド基含有化合物の中ではN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物が好ましく、含窒素複素環化合物の中ではイミダゾール類が好ましい。
【0033】
上記酸拡散制御剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。酸拡散制御剤の配合量は、アクリル系重合体100重量部に対して、通常、15重量部以下、好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。この場合、酸拡散制御剤の配合量が15重量部をこえると、レジストとしての感度および放射線照射部の現像性が低下する傾向がある。なお、酸拡散制御剤の配合量が0.001重量部未満であると、プロセス条件によってはレジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0034】
また、酸解離性基を有する脂環族添加剤、または酸解離性基を有しない脂環族添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。
このような脂環族添加剤としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1−アダマンタンカルボン酸αブチロラクトンエステル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(アダマンチルカルボニルオキシ)ヘキサン等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル等のリトコール酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジt−ブチル等のアルキルカルボン酸エステル類等が挙げられる。
これらの脂環族添加剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。脂環族添加剤の配合量は、アクリル系重合体100重量部に対して、通常、50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。この場合、脂環族添加剤の配合量が50重量部をこえると、レジストとしての耐熱性が低下する傾向がある。
【0035】
また、添加剤としての界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。
このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤のほか、以下商品名で、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75,同No.95(共栄社化学(株)製)、エフトップEF301,同EF303,同EF352(トーケムプロダクツ(株)製)、メガファックスF171,同F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430,同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−382,同SC−101,同SC−102,同SC−103,同SC−104,同SC−105,同SC−106(旭硝子(株)製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。界面活性剤の配合量は、アクリル系重合体100重量部に対して、通常、2重量部以下である。
【0036】
また、添加剤としての増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すもので、感放射線性樹脂組成物のみかけの感度を向上させる効果を有する。
このような増感剤としては、例えば、カルバゾール類、ベンゾフェノン類、ローズベンガル類、アントラセン類、フェノール類等が挙げられる。
これらの増感剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。増感剤の配合量は、アクリル系重合体100重量部に対して、好ましくは50重量部以下である。
さらに、上記以外の添加剤としては、ハレーション防止剤、接着助剤、保存安定化剤、消泡剤等が挙げられる。
【0037】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、普通、その使用に際して、全固形分濃度が、通常、3〜50重量%、好ましくは5〜25重量%となるように、溶剤に溶解したのち、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過し組成物溶液として調製される。
上記組成物溶液の調製に使用される溶剤としては、例えば、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等の直鎖状もしくは分岐状のケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の3−アルコキシプロピオン酸アルキル類のほか、
【0038】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0039】
これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できるが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。ただし、シクロヘキサノンは溶解性の点からは、有効な溶剤であるが、その毒性からは使用はできるだけ避けることが好ましい。
【0040】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、特に化学増幅型レジストとして有用である。特に現像後のパターンのラインエッジラフネスを低減できるポジ型レジストとして有用である。
化学増幅型レジストにおいては、放射線照射により酸発生剤から発生した酸の作用によって、樹脂中の酸解離性基が解離して、カルボキシル基を生じ、その結果、レジストの照射部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、該照射部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のレジストパターンが得られる。
本発明の感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際には、組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、場合により予め加熱処理(以下、「PB」という。)を行なったのち、所定のレジストパターンを形成するように該レジスト被膜に照射する。その際に使用される放射線としては、例えば、紫外線、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、EUV(極紫外線、波長13nm等)等の遠紫外線、電子線等の荷電粒子線、シンクロトロン放射線等のX線等を適宜選択して使用できるが、これらのうち遠紫外線、電子線が好ましい。また、照射量等の照射条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成、各添加剤の種類等に応じて、適宜選定される。
本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、PEBを行なうことが好ましい。このPEBにより、アクリル系重合体中の酸解離性有機基の解離反応が円滑に進行する。PEBの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって変わるが、通常、30〜200℃、好ましくは50〜170℃である。
【0041】
本発明においては、感放射線性樹脂組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば特公平6−12452号公報等に開示されているように、使用される基板上に有機系あるいは無機系の反射防止膜を形成しておくこともでき、また環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト被膜上に保護膜を設けることもでき、あるいはこれらの技術を併用することもできる。
次いで、照射されたレジスト被膜をアルカリ現像液を用いて現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。
上記アルカリ現像液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。
上記アルカリ性水溶液の濃度は、通常、10重量%以下である。この場合、アルカリ性水溶液の濃度が10重量%をこえると、非照射部も現像液に溶解するおそれがあり好ましくない。
また、上記アルカリ性水溶液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像液で現像したのちは、一般に、水で洗浄して乾燥する。
【実施例】
【0042】
実施例1
【化6】

化合物(5−1)53.93g(50モル%)、化合物(5−2)10.69g(10モル%)、化合物(5−3)35.38g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、さらにジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(72g、収率72%)。この重合体はMwが7,400であり、13C−NMR分析の結果、化合物(5−1)、化合物(5−2)、化合物(5−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が52.2:8.6:39.2(モル%)の共重合体であった。この重合体をアクリル系重合体(A−1)とする。
【0043】
実施例2
【化7】

化合物(6−1)52.50g(50モル%)、化合物(6−2)10.41g(10モル%)、化合物(6−3)37.09g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、さらにジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.44gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(74g、収率74%)。この重合体はMwが6,900であり、13C−NMR分析の結果、化合物(6−1)、化合物(6−2)、化合物(6−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が53.0:9.8:37.2(モル%)の共重合体であった。この重合体をアクリル系重合体(A−2)とする。
【0044】
実施例3
【化8】

化合物(7−1)53.88g(50モル%)、化合物(7−2)10.78g(10モル%)、化合物(7−3)35.34g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、さらにジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(72g、収率72%)。この重合体はMwが7,100であり、13C−NMR分析の結果、化合物(7−1)、化合物(7−2)、化合物(7−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が52.6:8.2:39.2(モル%)の共重合体であった。この重合体をアクリル系重合体(A−3)とする。
【0045】
実施例4
【化9】

化合物(8−1)49.84g(45モル%)、化合物(8−2)16.62g(15モル%)、化合物(8−3)33.45g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、さらにジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.73gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(68g、収率68%)。この重合体はMwが6,200であり、13C−NMR分析の結果、化合物(8−1)、化合物(8−2)、化合物(8−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が46.4:12.8:40.8(モル%)の共重合体であった。この重合体をアクリル系重合体(A−4)とする。
【0046】
実施例5
【化10】

化合物(9−1)53.94g(50モル%)、化合物(9−2)10.69g(10モル%)、化合物(9−3)35.37g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、さらにジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.74gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(73g、収率73%)。この重合体はMwが7,200であり、13C−NMR分析の結果、化合物(9−1)、化合物(9−2)、化合物(9−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が53.0:8.5:38.5(モル%)の共重合体であった。この重合体をアクリル系重合体(A−5)とする。
【0047】
実施例6
【化11】

化合物(10−1)50.72g(50モル%)、化合物(10−2)10.06g(10モル%)、化合物(10−3)26.74g(25モル%)、化合物(10−4)12.48g(15モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、さらにジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)6.30gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(76g、収率76%)。この重合体はMwが5,800であり、13C−NMR分析の結果、化合物(10−1)、化合物(10−2)、化合物(10−3)、化合物(10−4)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が53.2:9.8:22.5:14.5(モル%)の共重合体であった。この重合体をアクリル系重合体(A−6)とする。
【0048】
実施例7
【化12】

化合物(11−1)52.51g(50モル%)、化合物(11−2)10.41g(10モル%)と化合物(11−3)37.09g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを投入したモノマー溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(80g、収率80%)。この重合体はMwが8,500であり、13C−NMR分析の結果、化合物(11−1)、化合物(11−2)および化合物(11−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が53.2:8.6:38.2(モル%)の共重合体であった。この樹脂をアクリル系重合体(A−7)とする。
【0049】
実施例8
【化13】

化合物(12−1)53.94g(50モル%)、化合物(12−2)10.69g(10モル%)と化合物(12−3)35.37g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.62gを投入したモノマー溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(77g、収率77%)。この重合体はMwが8,400であり、13C−NMR分析の結果、化合物(12−1)、化合物(12−2)および化合物(12−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が50.8:9.5:39.7(モル%)の共重合体であった。この樹脂をアクリル系重合体(A−8)とする。
実施例9
【化14】

化合物(13−1)50.04g(50モル%)、化合物(13−2)9.92g(10モル%)と化合物(13−3)40.04g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.18gを投入したモノマー溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(75g、収率75%)。この重合体はMwが7,700であり、13C−NMR分析の結果、化合物(13−1)、化合物(13−2)および化合物(13−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が51.8:9.3:38.9(モル%)の共重合体であった。この樹脂をアクリル系重合体(A−9)とする。
【0050】
比較例1
【化15】

化合物(14−1)48.59g(50モル%)、化合物(14−2)20.67g(20モル%)と化合物(14−3)30.74g(30モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.03gを投入したモノマー溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(74g、収率74%)。この重合体はMwが9,800であり、13C−NMR分析の結果、化合物(14−1)、化合物(14−2)および化合物(14−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が55.2:18.6:27.2(モル%)の共重合体であった。この樹脂をアクリル系重合体(A−10)とする。
【0051】
実施例10〜実施例18および比較例2
実施例1〜実施例9、および比較例1で得られた各重合体と、以下に示す酸発生剤と、他の成分とを表1に示す割合で配合して各感放射線性樹脂組成物溶液を得た。得られた感放射線性樹脂組成物溶液を表2に示す条件にて露光して各種評価を行なった。評価結果を表3に示す。ここで、部は、特記しない限り重量基準である。
酸発生剤(B)
(B−1):トリフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
酸拡散制御剤(C)
(C−1):トリエタノールアミン
溶剤(D)
(D−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(D−2):シクロヘキサノン
【0052】
評価方法
(1)感度:
ArF光源にて露光を行なう場合、ウエハー表面に膜厚77nmのARC29((Brewer Science)社製)膜を形成したシリコンウエハー(ARC29)を用い、各組成物溶液を、基板上にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表3に示す条件でPBを行なって形成した膜厚250nmのレジスト被膜に、ニコン製ArFエキシマレーザー露光装置(開口数0.75、σ0.75、2/3輪帯照明)を用い、マスクパターンを介して露光した。その後、表2に示す条件でPEBを行なったのち、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で60秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅120nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。
(2)解像度:
最適露光量で解像される最小のライン・アンド・スペースパターンの寸法を解像度とした。
(3)放射線透過率:
組成物溶液を石英ガラス上にスピンコートにより塗布し、表3に示した温度条件に保持したホットプレート上で表3に示した条件の間PBを行なって形成した膜厚300nmのレジスト被膜について、波長193nmにおける吸光度から、放射線透過率を算出して、遠紫外線領域における透明性の尺度とした。
(4)ラインエッジラフネス(LER):
最適露光量にて解像した120nm1L/1Sパターンの観測において、日立製測長SEM:S9220にてパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで観測し、その測定ばらつきを3シグマで表現した場合に、その値が10nm以上の場合を不良、10nm未満の場合を良好と表現した。
(5)PEB温度依存性
最適露光量にて解像した120nm1L/1Sパターンの観測で、日立製測長SEM:S9220にてパターン上部から観察する際の線幅において、表2に示す条件でPEBを行なった場合の線幅と、PEBを±2℃それぞれ変化させたときの最適露光量での線幅の差をそれぞれ取り、温度差で割ったときの変化量をPEB温度依存性(nm/℃)とした。
【0053】
【表1】

【表2】

【表3】

【0054】
表3に示すように、各実施例はラインエッジラフネス(LER)特性に優れ、またPEB温度依存性にも優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、ラインエッジラフネス(LER)特性およびPEB温度依存性に優れているので、これからさらに微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用の化学増幅型レジストとして極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される繰り返し単位(i)と、式(2)で表される繰り返し単位(ii)と、式(3)で表される繰り返し単位および式(4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位(iii)を含む酸解離性基含有単位とを含有するアクリル系重合体。
【化1】

(式(1)ないし式(4)において、R、R’、R’’、およびR’’’は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基をそれぞれ表し、
式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、
式(2)において、Xは炭素数7〜20の炭素原子および水素原子のみからなる多環型脂環式炭化水素基を表し、
式(3)において、RおよびRは相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を、Rは炭素数4〜20の脂環式炭化水素基をそれぞれ表し、
式(4)において、Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を、RおよびRは水素原子、または炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基をそれぞれ表し、nは3〜7の整数を表す。)
【請求項2】
前記繰り返し単位(iii)が前記式(4)であることを特徴とする請求項1記載のアクリル系重合体。
【請求項3】
前記式(4)において、Rがメチル基またはエチル基、RおよびRが水素原子、およびnが4または5であることを特徴とする請求項2記載のアクリル系重合体。
【請求項4】
前記式(1)で表される繰り返し単位(i)において、Rが水素原子またはメチル基、およびRが水素原子であることを特徴とする請求項1記載のアクリル系重合体。
【請求項5】
前記式(2)で表される繰り返し単位(ii)において、炭素数7〜20の炭素原子および水素原子のみからなる多環型脂環式炭化水素基がビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカンに由来する炭化水素基であることを特徴とする請求項1記載のアクリル系重合体。
【請求項6】
全繰り返し単位に対して、前記繰り返し単位(i)が20〜70モル%、前記繰り返し単位(ii)が1〜20モル%、前記繰り返し単位(iii)を含む酸解離性基含有単位が20〜60モル%であることを特徴とする請求項1記載のアクリル系重合体。
【請求項7】
請求項1記載のアクリル系重合体と、感放射線性酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項2記載のアクリル系重合体と、感放射線性酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物。

【国際公開番号】WO2005/012374
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512561(P2005−512561)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011143
【国際出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】