説明

アクリル酸を与えるための結晶相の混合物内の触媒を用いたプロパンの酸化

本発明は、プロパンからアクリル酸を生成させる方法に関するものであり、該プロパンを活性化するための結晶触媒相に混合された式(I)又は(I’)(TeaMo1bNbcx(I)、SbaMo1by(I’))の結晶触媒相を含む触媒上を、プロパン、水蒸気と、随意選択的な不活性気体及び/又は分子酸素とを含む混合気体を通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶相の混合物中の触媒を用いてプロパンをアクリル酸に選択的に酸化することと、これらの触媒の調製とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロパンからアクリル酸を調製する収率及び選択性は、相当制限されることが多く、そのためにプロパンの転化率を上げるための改良が必要となっている。さらに活性があり、かつさらに選択性を有する触媒の調製が、この問題を解決するためにはたらく。
【0003】
特開平10−330343号公報には、気相中でアルカンを酸化してニトリルを調製する上で有用な触媒が記載されている。結晶構造を有するこれらの触媒は、式MoabSbcxnによって表され、そしてそれらの格子定数と回折角(2θ)とによって規定されている。記号Xは、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、W、Sn等から選択される1種以上の金属元素を表す。アンチモン源及びバナジウム源を含むそれぞれの溶液又は懸濁液を添加し、続いて比状態量のモリブデンを含む懸濁溶液を添加し、そして粉末又は溶液状の元素Xを添加して、これらの触媒を調製する。これらの元素又はアンモニウムメタバナデート又はアンモニウムパラモリブデート等の誘導体の酸化物が、特に好ましい。この方法によって、金属酸化物の化合物を与えるために乾燥及びか焼される前駆体がもたらされる。2種の相:斜方晶系相及び六方晶系相を、調製の際に得ることができる。該斜方晶系相が、期待される相である。斜方晶系相の単一相を得るために、得られた触媒混合物を連続的に洗浄することで、触媒性能を向上させることができる。
【0004】
特開平7−232071号公報には、MoVTeXタイプの式に相当する結晶構造を有する触媒が記載されている。これらの触媒は、300℃で事前にか焼された。該X線回折線は、斜方晶系の格子構造の存在を表す傾向を示した。
欧州特許出願公開第608838号明細書には、必須成分としてMo、V、Te及びOを含む混合金属酸化物と、1種以上の元素(ニオブ、タンタル、タングステン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、アンチモン、ビスマス、ホウ素、インジウム及びセリウムの群から選択される)を含む触媒の存在下での気相触媒酸化によって、アルカンから不飽和カルボン酸を調製することが記載されており、これらの元素は、明らかに規定された割合で存在する。
【0005】
欧州特許出願公開第895809号明細書及び米国特許第6,143,916号明細書には、モリブデン、バナジウム、ニオブ、酸素、テルル及び/又はアンチモンを含む酸化物ベースの触媒が記載されている。これらの触媒が用いられ、分子酸素の存在下で、プロパンがアクリル酸に転化する(欧州特許出願公開明細書の例9及び例10)。例9には、プロパン、酸素及びヘリウムを含むガス流と水蒸気流とから式Mo10.33Nb0.11Te0.22nを有する触媒を用いたプロパンの酸化が記載されている。特許US6,143,916には、これらの触媒の結晶形態が記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
結晶状態の触媒のいくつかの異なる相の混合物が、プロパンのアクリル酸への酸化に関して、単一層を含む触媒とともに得られる結果と比較して驚くべき結果を生じうることを見出している(本発明の目的でもある)。実は、用いられる触媒の構成の一部となる相の選択が、非常に重要な要因であることが実証されている。
【0007】
本発明に従うと、プロパンを活性化するための結晶触媒相と組み合わせて、好ましくは最終混合物に選択性を与える六方晶系格子(以下、「相A」と称する。)を有するテルル又はアンチモン及びモリブデンに基づく結晶触媒相によって、予想外に高い酸化を生じさせることができ、活性及び選択性の観点に起因する。これらの結晶触媒相の混合物の使用において、相乗効果が観察されうる。
最終混合物に選択性を付与する、テルル又はアンチモン及びモリブデンに基づく相は、六方晶系格子の結晶構造(相A)を有するテルル及び/若しくはモリブデンの化合物又はアンチモン及びモリブデンの化合物から有利に選択することができるか、又はTe2o7、又はTe0.2MoOxから有利に選択することができる。
【0008】
良好な選択性を付与するための結晶触媒相は、下記式;
TeaMo1bNbcx (I)、又は
Sba’Mo1by (I’)
のどちらかを満足し、
式中、
aは、0.1〜2の範囲を含み;
a’は、0.1〜2の範囲を含み;
bは、0〜1の範囲を含み;
cは、0〜0.2の範囲を含み;
x及びyは、他の元素と結合した酸素量を表し、そしてそれらの酸化状態によって決まり、そして
六方晶系の格子構造(X線源として銅Kα1線及びKα2線を用い、0.02°のステップで測定されたX線回折スペクトル、回折角(2θ)が、回折角28.2°と、格子定数a=0.729(±0.02)nm×p(pは、1〜4の整数);c=0.400(±0.01)nm×q(qは、1〜2の整数);α=90°、γ=120°を有する)に相当するか、又は、
単斜晶系構造Te2MoO7又はTe0.2MoOxを有する。
【0009】
プロパンを活性化するための結晶触媒相は、結晶化された混合金属酸化物の相であり、詳細には、モリブデン−バナジウム混合酸化物等のモリブデン及びバナジウム、アンチモン及びニオブを有する六方晶系相の触媒(相A)等、又は斜方晶系相の触媒(下記にて、相Bと称する)に基づく。
【0010】
特に、該プロパンを活性化するための結晶相は、下記式(II)、(II’)又は(II’’);
Modev (II)
Mod'fSbgNbhw (II’)
Mod''iTejNbkz (II’’)
を満足し、
式中、
d、d’及びd’’は、0.93〜1の範囲を含み;
eは、0.05〜1の範囲を含み;
fは、0〜0.5の範囲を含み;
gは、0.05〜0.3の範囲を含み;
hは、0.01〜0.2の範囲を含み;
iは、0〜0.5の範囲を含み;
jは、0.05〜0.3の範囲を含み;
kは、0.01〜0.2の範囲を含み;
v、w及びzは、他の元素と結合した酸素量を表し、そしてそれらの酸化状態によって決まり、
式(II’)の生成物は、六方晶系の格子構造(X線回折スペクトルが、回折角ピーク28.2°と、格子定数a=0.729(±0.02)nm×p(pは、1〜4の整数);c=0.400(±0.01)nm×q(qは、1〜2の整数);α=90°、γ=120°)、又は斜方晶系の格子構造(X線回折スペクトルが、回折角ピーク27.3°と、格子定数a=2.68(±0.04)nm;b=2.12(±0.04)nm;c=0.401(±0.006)nm×q’(q’は、1〜2の整数);α=β=γ=90°)のどちらかを有することが分かり、そして式(II’’)の生成物が、斜方晶系の格子構造を有し、そしてまた回折角27.3°にX線回折のピークと、格子定数a=2.68(±0.04)nm;b=2.12(±0.04)nm;c=0.401(±0.006)nm×q’(q’は、1〜2の整数);α=β=γ=90°とを有することが分かる。
【0011】
上記の六方晶系又は斜方晶系の結晶構造のX線回折スペクトルでは、X線源として銅Kα1線及びKα2線を用い、0.02°のステップを用いて回折角(2θ)を測定した。
本発明の好ましい実施形態に従って、結晶触媒相の混合物は、該プロパンを活性化するために良好な選択性/触媒作用を付与する触媒混合物の総質量の90/10〜15/85の質量比で調製され、混合物の総質量の90/10〜50/50の質量で調製されることが好ましく、そして該プロパンを活性化するための良好な選択性/触媒作用を付与する触媒混合物の総質量の70/30〜50/50の質量比で調製されることが特に好ましい。
【0012】
従って、特に、触媒混合物において、該プロパンを活性化するための結晶触媒相の10〜50質量%を用いることが有利であり、30〜50質量%が好ましい。
本発明の主部は、プロパンからアクリル酸を調製する方法であり、プロパン、水蒸気と、随意選択的な不活性気体及び/又は分子酸素とを含む混合気体を、アクリル酸に対して良好な選択性を付与するために、該プロパンを活性化させるための結晶触媒相と混合された式(I)、(I’)、Te2MoO7又はTe0.2MoOxの触媒上を通過させる。
【0013】
好ましくは、本発明に従う方法は、式(I)、(I’)、Te2MoO7又はTe0.2MoOxを有する触媒と、式(II)、(II’)又は(II’’)の結晶触媒相との混合物を含む触媒上に、上記の混合気体を通過させることに存在する。
本発明の好ましい実施形態に従って、該プロパンを活性化するために良好な選択性/触媒作用を付与する触媒混合物の総質量の90/10〜15/85の質量比の結晶相の混合物を含む触媒を用いて、好ましくは90/10〜50/50の質量比を用いて、そして特に好ましくは、該プロパンを活性化するために良好な選択性/触媒作用を付与する触媒混合物の総質量の70/30〜50/50の質量比を用いて、プロパンからアクリル酸を調製する。
【0014】
好ましくは、本発明の方法に従って、分子酸素の存在下で操作する場合は、初期混合気体中の該プロパン/分子酸素のモル比は、0.5以上である。0.3以上のモル比も有利である。
さらに本発明は、該プロパンを活性化する場合に、プロパンからアクリル酸を調製するため、式(I)又は(I’)、Te2MoO7又はTe0.2MoOxの結晶構造と、式(II)、(II’)又は(II’’)の結晶構造とを有する触媒混合物の使用に関する。
【0015】
本発明に従う方法は、アクリル酸に対する良好な選択性と、高いプロパン転化率を同時に提供するものである。さらに、それは、固定層、流動層又は移動層中で容易に実施することができ、そして該反応物質を種々のポイントで反応器中に注入することができ、そのために高プロパン濃度、従って、高い触媒生産性で生産しながらも、当該操作は、可燃性領域外にある。転化しなかったプロパンを再利用することができる。
【0016】
特に有利な実施形態に従い、本発明に従う方法は、下記の各段階:
I/分子酸素の不存在下において
初期混合気体が、分子酸素を含まない場合、該プロパンは、次のレドックス反応(A):
固体酸化された + プロパン → 固体還元された + アクリル酸 (A)
によって酸化される段階、
II/分子酸素の存在下において
a) 該初期混合気体を、触媒移動層を有する反応器中に導入する段階;
b) 第1の反応器のアウトレットのところで、該気体を触媒から分離する段階;
c) 該触媒混合物を再生器に送る段階;そして
d) 該再生器から出てきた該再生された触媒を該反応器に再導入する段階:
を含む。
【0017】
本発明の他の有利な実施形態に従い、該方法は、下記の連続的な各段階:
1) あらかじめ規定されたように、混合気体を注入する段階;
2) 水蒸気と、妥当な場合に、不活性気体とを注入する段階;
3) 分子酸素、水蒸気、及び妥当な場合に、不活性気体の混合物を注入する段階;そして、
4) 水蒸気と、妥当な場合に不活性気体とを注入する段階:
を含むサイクルの触媒混合物を供給する反応器において繰返すことを含む。
段階1)を、複数回の注入の形で実行できることが理解される。
【0018】
まさに記載される有利な実施形態の改良に従って、該サイクルは、段階1)の気体に先行するか又は段階1)に続く追加の段階を含み、そしてその際に分子酸素なしで段階1)に相当する混合気体が注入され、そのときに該プロパン/分子酸素のモル比が、段階1)及びこの追加の段階に対する全体に基づいて計算される。
まさに記載される改良の有利な形態に従い、該サイクルにおいて、該追加段階は、段階1)に先行する。
本発明の他の特色及び優位性が、下記にさらに詳細に記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に従う、分子酸素が導入される別法では、初期混合気体中の該プロパン/分子酸素のモル比は、0.5以上、又は0.3以上であることが好ましいので、該触媒を用いたプロパンのアクリル酸への転化は、酸化、好ましくは次の競争反応(A)及び(B):
−通常の触媒反応(B):
CH3−CH2−CH3+2O2 → CH2=CH−COOH+2H2O (B)
−そして上記レドックス反応(A):
固体酸化された+CH3−CH2−CH3 → 固体還元された+CH2=CH−COOH (A)
によって、実施されると思われる。
【0020】
該初期混合気体中の該プロパン/水蒸気の体積比は不可欠なものではなく、広い範囲で変わり得る。
同様に、ヘリウム、クリプトン、それらの混合物、又は窒素、二酸化炭素等でありうる不活性気体の割合も不可欠なものではなく、広い範囲で変わり得る。
【0021】
初期混合気体の成分比は、一般的に次の通り(モル比):
プロパン/酸素/不活性気体(He−Kr)/H2O(水蒸気)=1/0.05〜2/1〜10/1〜10、又は好ましくは1/0.5〜2/1〜10/1〜10
さらにいっそう好ましくは、それらは1/0.1〜1/1〜5/1〜5である。
さらにいっそう好ましくは、それらは、1/0.167〜0.667/2〜5/2〜5である。1/0.2〜0.4/4〜5/4〜5の比も、特に有利である。
【0022】
一般に、反応(A)及び反応(B)は、200〜500℃、好ましくは250℃〜450℃、さらにいっそう好ましくは、350℃〜400℃の温度において実施される。一又は複数の反応器内の圧力は、1.01×104〜1.01×106Pa(0.1〜10バール)が一般的であり、5.05×104〜5.05×105Pa(0.5〜5バール)が好ましい。
該反応器中の滞留時間は、0.01〜90秒が一般的であり、そして0.1〜30秒が好ましい。
【0023】
触媒の調製
式(I)、(I’)、Te2MoO7若しくはTe0.2MoOx、又は式(II)、(II’)、(II’’)の結晶化触媒を、種々の方法(熱水合成、共沈又は固体−固体反応等)で調製することができる。
それらのうちいくつかを、米国特許第6,143,916号明細書;特開平10−330343号公報;J.of Solid State Chemistry,129,303(1997);Acta Chemica Scandinavica,26,1827(1972);Applied Catalysis,A:General 244,359−70(2003);又はL.M.Plyasovaらによって記載されたKinetica i Kataliz,31(6)1430−1434(1990);A.KaddouriらによるJ.Therm.Anal.Cal,66,63−78(2001);J.M.M.MilletらによるAppl,Catal.,232,77−92(2202)に記載された方法によって、特に調製することができる。それらはまた、下記例中の記載のように調製することができる。
【0024】
一般に、原材料として用いられる種々の金属源は、酸化物であることが多いが、必然的に酸化物に限定されるものではない。
非限定的な様式として、次の原材料;
○モリブデンの場合には、アンモニウムモリブデート、アンモニウムパラモリブデート、アンモニウムヘプタモリブデート、モリブデン酸、モリブデンのハロゲン化物及びオキシハライド(MoCl5等)、Mo(OC255等のモリブデンアルコキシド等のモリブデンの有機金属化合物、アセチルアセトンモリブデニル(molybdenyl);
○テルルの場合には、テルル、テルル酸、TeO2
○アンチモンの場合には、例えば、酸化アンチモン(三酸化アンチモン)、特に方安鉱種、アンチモンスルフェート(Sb2(SO43)、又は塩化アンチモン(三塩化アンチモン、五塩化アンチモン);
○バナジウムの場合には、アンモニウムメタバナデート、バナジウムのハロゲン化物及びオキシハライド(VCl4、VCl5及びVOCl3等)、VO(OC253等のバナジウムアルコキシド等のバナジウムの有機金属化合物;
○ニオブの場合には、ニオブ酸、ニオブタルトレート、ニオブハイドロゲンオキサレート、アンモニウムオキソトリオキサレートニオベート{(NH43[NbO−(C243],1.5H2O}、ニオブアンモニウムオキサレート、ニオブオキサレート又はタルトレート、ニオブのハロゲン化物又はオキシハライド(NbCl3、NbCl5等)、及びNb(OC255、Nb(O−n−Bu)5等のニオブアルコキシド等のニオブの有機金属化合物;及び、
一般に、か焼によって酸化物を形成するのに好適な全ての化合物、すなわち、有機酸の金属塩、無機酸の金属塩、金属化合物の複合体等:
を用いることができる。
【0025】
触媒を調製するための様式のひとつは、ニオブ酸、シュウ酸、及びアンモニウムヘプタモリブデート、アンモニウムメタバナデート、テルル酸又は酸化アンチモンの水溶液を撹拌しながら混合し、そして好ましくは該混合物を空気中で約300〜320℃の温度で事前か焼し、そして約600℃において窒素下でか焼させる。
好ましい実施形態に従って、触媒を調製する方法のひとつは、ニオブ酸及びシュウ酸の溶液を調製し、モリブデン、バナジウム、テルル又はアンチモンの溶液を調製し、該2種の溶液を混合し、ゲルを形成させ、続いて得られたゲルを乾燥させ、事前か焼、そしてか焼を続けることにある。
【0026】
特に好ましい方法に従って、該触媒を、下記の各段階:
1)撹拌しながら、そして随意選択的に加熱しながら、バナジウム源(アンモニウムメタバナデート等)を水に溶解させる段階;
2)妥当な場合、テルル酸又は酸化アンチモン(特に方安鉱種)等のテルル又はアンチモン源を上記溶液に添加する段階;
3)アンモニウムヘプタモリブデート等のモルブデン源を添加する段階;
4)還流させながら、得られた溶液を反応させる段階;
5)アンチモン触媒の場合において、妥当なときに、過酸化水素等の酸化剤を添加する段階;
6)妥当な場合、シュウ酸とニオブ酸等のニオブ源とを加熱しながら混合することで調製された溶液を添加する段階;
7)還流させながら、そして好ましくは不活性雰囲気下で、ゲルが得られるまで反応媒体を反応させる段階;
8)得られたゲルを乾燥させる段階;
9)好ましくは、該ゲルを事前か焼させる段階;そして、
10)該触媒を得るために、必要に応じて事前か焼されたゲルをか焼する段階:
によって調製することができる。
【0027】
上記方法への別法において:
スプレードライ、フリーズドライ、ゼオドレーション(zeodration)、マイクロ波等によって、薄層としてオーブン中で、乾燥[例えば、段階8)]を実施することができる;
280〜300℃における気流下又は320℃の静的空気の下、流動層内、通気した固定層内の回転炉内で、事前か焼を実施することができ、該触媒粒子がお互いに分離され、事前か焼又は、場合によりか焼の際の凝集を防ぐ;
高純度の窒素の下で、そして600℃に近い温度で、例えば回転炉又は流動層の中で、そして最大2時間の間、か焼を実施することが好ましい。
【0028】
本発明の特に好ましい実施形態に従って、事前か焼は、下記いずれかの温度;
−少なくとも10ml/分/gの触媒の気流の下の300℃未満の温度;又は
−10ml/分/g未満の触媒の気流の下の300〜350℃の間の温度:
で実施される。
【0029】
特に好ましい実施形態に従って、事前か焼は;
−10ml/分/g未満の気流下での約320℃;又は、
−約50ml/分/gの気流下での約290℃:
において実施される。
触媒を調製するための他の方法に従って、金属源を混合し、続いて共粉砕(co−grinding)し、均一な混合物を得ることで、固体−固体反応を実施する。減圧下で、600℃付近で加熱した後に、該固体を得る。
金属酸化物又は金属そのものを金属源として用いることが有利である。長期間(好ましくは3日間から一週間)にわたり、加熱を実施することが好ましい。
【0030】
上述の方法で調製された触媒は、一般的に直径20〜300μmの直径の粒子状で、それぞれ製造されうる。それぞれの混合された触媒の粒子は、一般的に、本発明の方法を実施する前に混合される。ゲル又は懸濁液をスプレードライすることで、該粒子を得ることができる。
触媒混合物は、両方の触媒を含むそれぞれの粒子を含む固体触媒構成物の状態でもありうる。
【0031】
触媒再生
レドックス反応(A)の際、該触媒は、還元を受け、それらの活性が進行とともに失われる。
該触媒が、少なくとも部分的には還元された状態にある場合、酸素又は酸素含有気体の存在下、該触媒を酸化するのに十分な時間、250〜500℃の温度で加熱することで、それらは反応(C):
固体還元された+〇2 → 固体酸化された (C)
で再生される。
【0032】
該再生混合気体の成分比は、次の通り(モル比);
酸素/不活性気体(He−Kr)/H2O(水蒸気)=1/1〜10/0〜10:
が一般的である。
それらは、1/1〜5/0〜5であることが好ましい。
酸素単体を用いる代わりに、乾燥空気(21%のO2)を用いることができる。水蒸気に代わり又は水蒸気に加えて、湿潤空気を用いることができる。
該再生温度は、250〜500℃が一般的である。
該方法は、該触媒の還元率が触媒のkgあたり酸素0.1〜10gとなるまで実施するのが一般的である。
【0033】
この還元率は、得られる生成物の量によって、反応の間モニターすることができる。酸素当量が計算される。該還元率は、該反応の発熱によってもモニターすることができる。該還元率は、該再生器中で消費された酸素量によって追跡することもできる。
反応(A)及び反応(B)の条件と同一又は異なる温度及び圧力条件下で実施できる再生の後、該触媒は、初期の活性を回復し、そして該反応器中に再導入できる。
【0034】
反応(A)及び反応(B)並びに再生(C)を、固定層反応器、流動層反応器、又は移動層反応器等の一般的な反応器中で実施することができる。
従って、反応(A)及び反応(B)並びに再生(C)を、2段階の装置、すなわち同時に作動し、そして触媒混合物の2つの供給が定期的に交替する反応器及び再生器中で実施することができる。
【0035】
反応及び再生の時間を交替することによって、同一の反応器中で、反応(A)及び反応(B)並びに再生(C)を実施することもできる。
触媒移動層反応器中で、特に上に動く触媒と共に垂直の反応器中で、反応(A)及び反応(B)並びに再生(C)を実施することが好ましい。
気体のシングルパスを伴うか、又は気体のリサイクルを伴う操作様式を用いることができる。
好ましい実施形態に従って、生産されたプロピレン及び/又は未反応のプロパンを反応器のインレットに再利用する(又は戻す)、すなわち、プロパン、水蒸気、及び随意選択的な一又は複数の不活性気体の初期混合物との混合物又はそれらと平行して、反応器のインレットのところで再導入される。
【0036】
触媒混合物を用いて相乗効果を得るので、本発明は、アクリル酸に関する非常に良好な選択性と、良好なプロパンの転換を組み合わせた顕著な優位性を有する。この相乗効果では、一方では、単独と見られるそれぞれの触媒は、プロパンを活性化する触媒と良好な選択性を付与する触媒との混合物と比較して有効ではなく、他方では、単独と見られる2種の触媒によって付与される相加的作用よりも、観察される選択性が高いことが、ほとんどの場合で観察された。この効果は、特に下記で検討する試験で観察できる。
【実施例】
【0037】
次の例は、本発明を具体的に説明するものであるが、本発明の範囲を制限するものではない。
下記例において、選択性及びプロパン転化率を次の通りに規定した。
プロパン転化率(%)=(反応したプロパンのモル数)/(導入したプロパンのモル数)×100
アクリル酸選択性(%)=(アクリル酸のモル数(/(反応したプロパンのモル数)×100
同様に、他の化合物に関連する選択性も計算した。
【0038】
混じりけのない触媒相の調製
例1
MoV0.8Te0.6xの組成のテルルを有する相Aの調製
当該調製は、減圧下で密封されたアンプル内で、固体−固体反応で行った。10.00gのMoO3(Merck)と、1.37gのモリブデン金属(Alfa Aesar)と、8.01gのTeO2(Alfa Aesar)と、3.04gのV25(Riedel de Haen)とを、均一混合物を得るまで、15分間、めのう乳鉢でこすり合わせた。この混合物を石英アンプル内に導入した。次いで、該アンプルを減圧下で密封し、そして1週間、600℃で加熱した。回収した当該固体をエックス線回折で解析した。該解析によって、六方晶系構造に相当する所望の相の生成物であることが確認された(回折図−図1)。得られた固体は、化学式:MoV0.8Te0.6xを有し、xは、カチオンの酸化状態に相当する酸素量である。
【0039】
例2
MoV0.3Te0.4Nb0.1xの組成のテルル及びニオブを有する相Aの調製
共沈により、ニオブを含むテルルを有する相Aを得た。5.00gのアンモニウムヘプタモリブデート(Starck)と、1.00gのアンモニウムメタバナデート(GFE)と、2.60gのテルル酸(Fluka)と、25mlの水とをビーカーに入れた。澄んだ溶液が得られるまで、該ビーカーを撹拌しながら加熱(70℃)した。同時に、0.52gのニオブ酸(CBMM)と、1.08gのシュウ酸(Alfa Aesar)と、15mlの水とをビーカーに入れた。該溶液が澄んだ状態となるまで(約4時間、温度70℃)、該ビーカーを加熱し、該溶液を遠心分離機にかけ(3500rpm、15分間)、そして該溶液相をMo、V及びTeを含む溶液に添加した。この生成されたオレンジのゲルを、一晩中、110℃のオーブン内に置いた。得られた固体を、300℃で4時間、空気中で(50ml/分/g)事前か焼し、そして600℃で2時間、窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。得られた固体は、化学式:MoV0.3Te0.4Nb0.1xを有していた。回収した該固体を、X線回折(図2)で解析した。
【0040】
例3
Mo10.5Sb0.3yの組成のアンチモンを有する相の調製
アンチモンを有する相Aを例1の相Aのように調製したが、成分は下記の通りである。
15.00gのMoO3(Merck)と、5.49gのSb23と、2.85gのV25(Riedel de Haen)と、2.05gのMo(Alfa Aesar)とを、めのう乳鉢内で15分間こすり合わせ、アンプル内に入れた。該アンプルを減圧下で密封し、そして600℃で1週間加熱した。得られた固体は、化学式:Mo10.5Sb0.3yを有していた。回収した固体を、エックス線回折(図3)で解析した。
【0041】
例4
MoV0.3Sb0.1Nb0.1wの組成のアンチモン及びニオブを有する相Aの調製
共沈により、ニオブを含みアンチモンを有する相Aを得た。7.00gのアンモニウムヘプタモリブデート(Starck)と、1.39gのアンモニウムメタバナデート(GfE)とをビーカーに入れ、澄んだ溶液が得られるまで、撹拌しながら加熱(80℃)した。次いで、1.17gのSb23(Alfa Aesar)を添加し、そして加熱を続けながら、該混合物を撹拌した。次いで、10mlの水で希釈された30質量%を含む2mlのH22を添加した後、澄んだオレンジ色に変化した。
【0042】
同時に、0.66gのニオブ酸(CBMM)と、1.34gのシュウ酸(Alfa Aesar)と、15mlの水とをビーカーに入れた。該溶液が澄んだ状態となるまで(約4時間、温度70℃)、該ビーカーを加熱し、次いで、該溶液を遠心分離機にかけ(3500rpm、15分間)、そして該溶液相をMo、V及びSbを含む溶液に添加した。これにより、イエローのゲルが生成された(110℃のオーブン中に、一晩中乾燥させるために置いた)。得られた固体を、300℃で4時間、空気中で(50ml/分/g)事前か焼させ、そして600℃で2時間、窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。得られた固体は、化学式:MoV0.3Sb0.1Nb0.1wを有していた。回収した該固体を、X線回折(図4)で解析した。
【0043】
例5
0.95Mo0.975タイプのモリブデンを有する相の調製
0.95Mo0.975相を熱水合成で調製した。2.00gのアンモニウムヘプタモリブデート(Starck)と、1.33gのVOSO4(Alfa Aesar)と、0.07gのNH40H(NH3、28質量%)とを、50mlの水とともに100mlのテフロン(登録商標)ジャーに入れた。該混合物を、175℃で72時間、オートクレーブ内に置いた。次いで、該固体をろ過し、蒸留水で洗浄し、110℃のオーブン内で乾燥させ、そして600℃で2時間、窒素下(50ml/分/g)でか焼させた。得られた固体は、Mo11vタイプの化学式を有していた。回収した固体をX線回折(図5)で解析し、そしてJCPDS(Joint Committee of Powder Diffraction Spectroscopy)データシート77−0649と一致した。この相は、L.M.Plyasovaらにより、Kinetica i kataliz,31(6),1430−1434(1990)に記載されている。
【0044】
例6
Te2MoO7タイプのテルル及びモリブデンを有する相の調製
共沈により、Te2MoO7相を調製した。6.50gのテルル酸(Fluka)と、2.50gのアンモニウムヘプタモリブデート(Starck)とを、最小の水(15ml)に溶解させた。該混合物を撹拌しながら加熱(80℃)し、そしてホワイトペーストにいたるまで蒸発させた(110℃のオーブン中、一晩中乾燥させるために置いた)。得られた固体を、2時間、470℃の空気(50ml/分/g)中でか焼させた。得られた個体は、化学式Mo0.5Te1xを有していた。回収した固体をX線回折(図6)で解析し、そしてJCPDSデータシート70−0047と一致した。この相は、A.Kaddouriらにより、J.Therm.Anal Cal.66,63−78(2001)に記載されている。
【0045】
例7
Mo10.26Te0.10Nb0.142の組成のテルル及びニオブを有する相の調製
MoVTeNb触媒は、高濃度の相Bを含んでいる。35mlの蒸留水と、7.78gのアンモニウムヘプタモリブデート(Starck)と、1.70gのアンモニウムメタバナデート(GfE)と、2.22gのテルル酸(Fluka)とを同時に100mlのビーカーに入れた。該混合物を撹拌しながら80℃で加熱し、澄んだレッドの溶液を得た。次いで、該溶液を室温で冷却させるために置いた。
【0046】
同時に、オキサレート/Nbの比が2.70であるニオブ酸/シュウ酸の溶液を調製した。10mlの蒸留水と、0.82gのニオブ酸(CBMM)と、1.67gのシュウ酸(Alfa Aesar)とを50mlのビーカーに入れた。初期溶液が澄んだ状態となるまで(約4時間)、該混合物を撹拌しながら70℃で加熱した。該溶液を遠心分離機にかけ(3500rpm、15分間)、次いで、該液相をモリブデン、バナジウム及びテルルを含む澄んだレッドの溶液に導入した。数分後、不透明なオレンジのゲルが得られ、110℃のオーブン内で一晩中乾燥させるために晶出装置内に置いた。該固体を、300℃で4時間、空気中で(50ml/分/g)事前か焼し、次いで、600℃で2時間、精製した窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。
【0047】
回収した固体をX線回折で解析した。これによって、六方晶系相と、所望の斜方晶系相との混合物であることが示された。得られた固体は、化学式Mo10.26Te0.10Nb0.14zを有し、そしてJ.M.M.MilletらによるAppl.Catal.,232 77−92(2002)に記載される回折図と同様の回折図を有していた。
【0048】
得られた固体を、希釈され、30質量%を含む過酸化水素(Alfa Aesar)の溶液内で、室温で4時間、2回洗浄した。該溶液をろ過し、そして回収した固体をオーブン内(110℃)で乾燥させ、次いで、600℃で2時間、窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。回収した固体をX線回折で解析した(図7)。該解析によって、少量の六方晶系相を伴う、上記出版物中に記載される構造のような斜方晶系構造に対応する相が得られたことが確認された。得られた固体は、化学式Mo10.26Te0.10Nb0.14zを有していた。
【0049】
例8
MoV0.28Sb0.13Nb0.15wの組成のアンチモン及びニオブを有する相の調製
MoVSbNbO触媒は、高濃度の相Bを含んでいる。1、99gのアンモニウムメタバナデート(GfE)と、45mlの蒸留水とをフラスコに入れた。該混合物を、撹拌しながら95℃の還流下で加熱し、澄んだ溶液を得て、その後、1.24gの三酸化アンチモン(Alfa Aesar)と、10.00gのアンモニウムヘプタモリブデート(Starck)とを添加した。アルゴンブランケットを用いて、1時間加熱を続けた。10mlの水に対して30質量%を含む過酸化水素(Alfa Aesar)を2ml含む溶液を導入した。次いで、澄んだオレンジの溶液を得た。
【0050】
同時に、オキサレート/Nbの比が2.7であるニオブ酸/シュウ酸の混合物を調製した。1.73gのシュウ酸(Alfa Aesar)と、0.76gのニオブ酸(CBMM)と、15mlの蒸留水とを50mlのビーカーに入れた。初期溶液が澄んだ状態となるまで(約4時間)、該混合物を撹拌しながら70℃で加熱した。次いで該溶液を遠心分離機にかけ(3500rpm、15分間)、そして該液相をモリブデン、バナジウム及びアンチモンを含む溶液に導入した。該混合物を30分撹拌し、次いで、乾燥のため、110℃のオーブンに置いた。該固体を、320℃で4時間(温度傾斜、2.5℃/分)、空気中で事前か焼し、そして600℃で2時間、窒素下でか焼させた(温度傾斜2.5℃/分、流速=50ml/分/g)。
【0051】
回収した固体をX線回折で解析した。これは、六方晶系相と、所望の斜方晶系相との混合物を表していた。得られた固体は、化学式MoV0.3Sb0.15Nb0.1wを有していた。
得られた固体を、希釈され、30質量%を含む過酸化水素(Alfa Aesar)の溶液内で、室温で4時間、2回洗浄した。該溶液をろ過し、そして回収した固体をオーブン中で乾燥させ、次いで、600℃で2時間、窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。回収した固体をX線回折で解析した(図8)。該解析によって、斜方晶系構造に対応する所望の相が得られたことが確認された。該固体は、組成MoV0.28Sb0.13Nb0.15wを有していた。
【0052】
例9
TeMo516タイプのテルル及びモリブデンを有する相の調製
当該TeMo516相を、減圧下の密封アンプル内で、固体−固体反応によって得た。28.02gのMoO3(Merck)と、1.32gのモリブデン金属(Alfa Aesar)と、6.65gのTeO2(Alfa Aesar)とを、均一混合物を得るまで、15分間、めのう乳鉢内でこすり合わせた。この混合物を石英アンプル内に導入した。次いで、該アンプルを減圧下で密封し、そして72時間、600℃で加熱した。回収した固体をエックス線回折で解析し(図9)、データシートJCPDS 70−0451と一致した。該解析によって、化学式MoTe0.2xを有するモノジニック(monodinic)構造に相当する所望の相の生成物であることが確認された。
【0053】
例10
大量の相Bを含むMoVTeNb触媒のMoV0.23Te0.09Nb0.16の組成の相の調製
35mlの蒸留水と、7.78gのアンモニウムヘプタモリブデート(Starck)と、1.70gのアンモニウムメタバナデート(GfE)と、2.22gのテルル酸(Fluka)とを、100mlのビーカーに同時に入れた。澄んだレッドの溶液を得るまで、撹拌しながら該混合物を80℃で加熱した。この溶液を室温で冷却させた。
【0054】
同時に、Ox/Nbの比が2.70であるニオブ酸/シュウ酸の溶液を調製した。10mlの蒸留水と、0.82gのニオブ酸(CBMM)と、1.67gのシュウ酸(Alfa Aesar)とを、15mlのビーカーに入れた。初期溶液が澄んだ状態となるまで(約4時間)、該混合物を撹拌しながら70℃で加熱した。該溶液を遠心分離機にかけ(3500rpm、15分間)、そして該液相をモリブデン、バナジウム及びテルルを含む澄んだレッドの溶液に導入した。数分後、不透明なオレンジのゲルが得られ、110℃のオーブン内で一晩中乾燥させるために晶出装置内に置いた。該固体を、300℃で4時間、空気中で(50ml/分/g)事前か焼させ、次いで、600℃で2時間、精製した窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。
【0055】
回収した固体をX線回折で解析した。これは、六方晶系相と、所望の斜方晶系相との混合物であることを表している。得られた固体は、J.M.M.Millet,H.Roussel、A.Pigamo,J.L.Dubois,J.C.JumasらによるAppl.Catal 232(2002)77−92の図1bに記載される回折図と同様の回折図を有していた。得られた個体は、化学式MoV0.3Te0.2Nb0.1を有していた。
得られた固体を、希釈され、30質量%を含む過酸化水素(Alfa Aesar)の溶液内で、室温で4時間、2回洗浄した。該溶液をろ過し、そして回収した固体をオーブン内(110℃)で乾燥し、次いで、600℃で2時間、窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。回収した固体をX線回折で解析した(図10)。該解析によって、少量の六方晶系相を伴う、上記出版物中に記載される構造のような斜方晶系構造に対応する相が得られたことが確認された。得られた固体は、化学式Mo10.23Te0.09Nb0.16zを有していた。
【0056】
例11
大量の相Bを含むMoVTeNb触媒に関してMoV0.24Te0.09Nb0.16zの組成の相の調製
上記例7に記載される手順を続けた。
35mlの蒸留水と、7.78gのアンモニウムヘプタモリブデート(Starck)と、1.70gのアンモニウムメタバナデート(GfE)と、2.22gのテルル酸(Fluka)とを、100mlのビーカーに同時に入れた。澄んだレッドの溶液を得るまで、該混合物を撹拌しながら80℃で加熱した。次いで、この溶液を室温で冷却させる様に置いた。
【0057】
同時に、Ox/Nbの比が2.70であるニオブ酸/シュウ酸の溶液を調製した。10mlの蒸留水と、0.82gのニオブ酸(CBMM)と、1.67gのシュウ酸(Alfa Aesar)とを、50mlのビーカーに入れた。初期溶液が澄んだ状態となるまで(約4時間)、該混合物を撹拌しながら70℃で加熱した。該溶液を遠心分離機にかけ(3500rpm、15分間)、そして該液相を、モリブデン、バナジウム及びテルルを含む澄んだレッドの溶液に導入した。数分後、不透明なオレンジのゲルが得られ、110℃のオーブン内で一晩中乾燥させるために晶出装置内に置いた。該固体を、300℃で4時間、空気中で(50ml/分/g)事前か焼し、次いで、600℃で2時間、精製した窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。
【0058】
回収した固体をX線回折で解析した。これは、六方晶系相と、所望の斜方晶系相との混合物であることを表している。得られた固体は、J.M.M.Millet,H.Roussel,A.Pigamo,J.L.Dubois,J.C.JumasらによるAppl.Catal 232(2002)77−92の図1bに記載される回折図と同様の回折図を有していた。得られた個体は、化学式MoV0.3Te0.2Nb0.1を有していた。
【0059】
得られた固体を、希釈され、30質量%を含む過酸化水素(Alfa Aesar)の溶液内で、室温で4時間、2回洗浄した。該溶液をろ過し、そして回収した固体をオーブン内(110℃)で乾燥させ、次いで、600℃で2時間、窒素下で(50ml/分/g)か焼させた。回収した固体をX線回折で解析した。該解析によって、少量の六方晶系相を伴う、上記出版物中に記載される構造のような斜方晶系構造に対応する相が得られたことが確認された。得られた固体は、化学式MoV0.24Te0.09Nb0.16を有していた。
【0060】
触媒試験:
例12
次いで、調製された混じりけのない相を次の通り試験した。0.5〜1.5gの固体を、まっすぐな固定層のパイレックス(登録商標)反応器に導入し、そして窒素下で温度勾配(2.5℃/分)をかけた。所望の温度に達すると、次の反応混合物の条件:総流速30ml/分(5%のC38、5%のNe、10%のO2、45%のH2O及び35%のN2(モル%))が得られ、そして該反応器を30分間一定に保った。5mlの水を含む25mlのフラスコを、該反応器のアウトレットのところに置き、有機化合物を凝縮させた。それぞれの温度において、凝縮時間は2時間であった。凝縮できないものは、Chrompack製クロマトグラフと協調して分析し、そして液体の流出液は、反応後に、別のChrompack製クロマトグラフで分析した。該反応器の図を添付する(図11)。
【0061】
例13
触媒10及び11の試験:触媒7の試験I及び試験Jと同一条件下で試験A1、A2、AA1、AA2を実施するため、試験A1及び試験AA1には、質量0.5gを用い、そして試験A2及び試験AA2には、質量0.47gを用いた。得られた結果を表2に示す。該結果は、触媒性能の再現性を、非常に良好に示している。
【0062】
【表1】

【0063】
例D:例1の固体1gを、反応器に加えた。該固体を、所望の温度まで、窒素下で加熱させた。次いで、該触媒を該反応混合物中に置いた(総流速=30ml/分、(5%のNe、10%のO2、35%のN2、45%のH2O及び5%のC38))。例B、例C及び例E〜例K:例2〜例9中で調製された該固体の質量m(表中に規定)を、例Dのように該反応器に加え、そして該触媒を例Dの様に試験した。
例L〜例Y及び例Z:2種の異なる固体の2種の質量m1及びm2を、めのう乳鉢中で15分間混合させ、均一混合物を得た。そのように形成された混合物を、例Dの様に反応器に加え、そして該触媒を例Dのように試験した。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0068】
(原文記載なし)
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロパンからアクリル酸を調製する方法であって、プロパン、水蒸気と、随意選択的な不活性気体及び/又は分子酸素とを含む混合気体を、結晶触媒相であって;
式(I)又は式(I’):
TeaMo1bNbcx (I)
Sba’Mo1by (I’)
(式中、
aは、0.1〜2の範囲を含み;
a’は、0.1〜2の範囲を含み;
bは、0〜1の範囲を含み;
cは、0〜0.2の範囲を含み;
x及びyは、他の元素と結合した酸素量を表し、そしてそれらの酸化状態によって決まる)
を満たし、
そして0.02°のステップで、X線源として銅Kα1及びKα2線を用いて測定されたX線回折スペクトル、回折角(2θ)が、回折角28.2°におけるピークと、格子定数a=0.729(±0.02)nm×p(pは、1〜4の整数);c=0.400(±0.01)nm×q(qは、1〜2の整数);α=90°、γ=120°とを有する六方晶系の格子構造、又は
単斜晶系構造Te2MoO7若しくはTe0.2MoOx
に相当しており、該プロパンを活性化するための結晶触媒相と混合された結晶触媒相を含む良好な選択性を付与する触媒上を通すことを特徴とする方法。
【請求項2】
該プロパンを活性化するための結晶触媒相が、式(II)、(II’)又は(II’’):
Modev (II)
Mod’fSbgNbhw (II’)
Mod’’iTejNbkz (II’’)
(式中、
d、d’及びd’’は、0.93〜1の範囲を含み;
eは、0.05〜1の範囲を含み;
fは、0〜0.5の範囲を含み;
gは、0.05〜0.3の範囲を含み;
hは、0.01〜0.2の範囲を含み;
iは、0〜0.5の範囲を含み;
jは、0.05〜0.3の範囲を含み;
kは、0.01〜0.2の範囲を含み;
v、w及びzは、他の元素と結合した酸素量を表し、そしてそれらの酸化状態によって決まる)
の混合された金属酸化物を含み、
該式(II’)の生成物は、X線回折スペクトルが、回折角28.2°におけるピークと、格子定数a=0.729(±0.02)nm×p(pは、1〜4の整数);c=0.400(±0.01)nm×q(qは、1〜2の整数);α=90°、γ=120°を有する六方晶系の格子構造か、又はX線回折スペクトルが、回折角27.3°における回折角ピークと、格子定数a=2.68(±0.04)nm;b=2.12(±0.04)nm;c=0.401(±0.006)nm×q’(q’は、1〜2の整数);α=β=γ=90°とを有する斜方晶系の格子構造のどちらかを有することが分かっており、
そして式(II’’)の生成物は、斜方晶系の格子構造を有し、そして回折角27.3°にX線回折のピークと、格子定数a=2.68(±0.04)nm;b=2.12(±0.04)nm;c=0.401(±0.006)nm×q’(q’は、1〜2の整数);α=β=γ=90°とを有することが分かっている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロパン、水蒸気と、随意選択的な不活性気体及び/又は分子酸素とを含む混合気体を、該プロパンを活性化するための良好な選択性/触媒作用を付与する触媒混合物の総質量の90/10〜15/85の比においてプロパンを活性化するための結晶触媒相と混合され、請求項1に規定される式(I)若しくは(I’)又は単斜晶系構造Te2MoO7若しくはTe0.2MoOxからなる良好な選択性を付与する触媒上を通すことを特徴とする、請求項1及び2のどちらかに記載の方法。
【請求項4】
プロパン、水蒸気と、随意選択的な不活性気体及び/又は分子酸素とを含む混合気体を、該プロパンを活性化するための良好な選択性/触媒作用を付与する触媒混合物の総質量の90/10〜50/50の比において、プロパンを活性化するための結晶触媒相と混合され、請求項1に規定される式(I)若しくは(I’)又は単斜晶系構造Te2MoO7若しくはTe0.2MoOxからなる良好な選択性を付与する触媒上を通すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
プロパン、水蒸気と、随意選択的な不活性気体及び/又は分子酸素とを含む混合気体を、該プロパンを活性化するための良好な選択性/触媒作用を付与する触媒混合物の総質量の70/30〜50/50の比において、プロパンを活性化するための結晶触媒相と混合され、請求項1に規定される式(I)若しくは(I’)又は単斜晶系構造Te2MoO7若しくはTe0.2MoOxからなる良好な選択性を付与する触媒上を通すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
分子酸素の存在下で操作する場合の該初期混合気体中の該プロパン/分子酸素のモル比が0.3以上である、請求項1及び2のどちらかに記載の方法。
【請求項7】
該初期混合気体中の該プロパン/分子酸素のモル比が0.5以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該初期混合気体の成分の該モル比が、プロパン/O2/不活性気体/H2O(水蒸気)=1/0.05〜3/1〜10/1〜10である、請求項1及び2のどちらかに記載の方法。
【請求項9】
該初期混合気体の該成分の該モル比が、プロパン/O2/不活性気体/H2O(水蒸気)=1/0.05〜2/1〜10/1〜10である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に規定される式(I)若しくは(I’)、又はTe2MoO7若しくはTe0.2MoOxの結晶触媒相と、請求項2に規定される式(II)、(II’)又は(II’’)の該プロパンを活性化するための結晶触媒相とを含む触媒の混合物。
【請求項11】
該混合物が、該プロパンを活性化するために良好な選択性/触媒作用を付与する該触媒混合物の総質量の90/10〜15/85の比で調製されることを特徴とする、請求項10に記載の混合物。
【請求項12】
該混合物が、該プロパンを活性化するために良好な選択性/触媒作用を付与する該触媒の混合物の総質量の90/10〜50/50の比で調製されることを特徴とする、請求項10及び11のどちらかに記載の混合物。
【請求項13】
該混合物が、該プロパンを活性化するために良好な選択性/触媒作用を付与する該触媒の混合物の総質量の70/30〜50/50の比で調製されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項14】
プロパンからアクリル酸を調製するための、請求項10〜13のいずれか一項に記載される触媒混合物の使用。

【公表番号】特表2007−502319(P2007−502319A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530376(P2006−530376)
【出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001290
【国際公開番号】WO2004/105938
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】