説明

アクロレイン類の製造法とその装置

【課題】無触媒又は微量の触媒条件下、グリセリン類からアクロレイン類を短時間、廃棄物量を低減しつつ良好な収率かつ高選択率、高効率で合成する方法、その反応組成物及び装置を提供する。
【解決手段】温度350℃以下、圧力22MPa以下の亜臨界流体、超臨界流体を反応溶媒として使用し、無触媒又は微量触媒添加条件下で、流通式高温高圧装置に、基質及び反応溶媒を導入し、廃棄物量を低減しつつ良好な収率、高選択的、高効率で、高速・連続的にアクロレイン類を合成するアクロレイン類の製造方法、その有機溶媒の存在がない反応組成物、及びその装置。
【効果】高分子原料として有用なアクロレイン類の新しい大量生産プロセスとして、既存の生産プロセスに代替し得るアクロレイン類の製造方法を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリン類からアクロレイン類を製造する方法及びその装置に関するものであり、更に詳しくは、高温高圧状態の水あるいは酢酸、それらの混合溶媒を反応溶媒とし、無触媒あるいは微量触媒で、アクロレイン類を製造する方法及びその装置に関するものである。本発明は、温度350℃以下、かつ圧力22MPa以下の水、それらの混合溶媒を反応溶媒として、触媒無添加で、アクロレイン類を一段階、かつ短時間、連続的に合成する方法、その反応組成物及び装置を提供するものである。
【0002】
アクロレイン類の合成は、該アクロレインを更に酸化してアクリル酸を製造できるため、高分子の分野において有用である。本発明は、グリセリン類から、無触媒、又は微量触媒条件下、水を用いるプロセスのみでアクロレイン類を合成する方法とその反応組成物及びその装置を提供するものであり、アクロレイン類を良好な収率で、短時間で、環境に影響を与えることなく、大量に生産し、提供することを可能にするものである。
【背景技術】
【0003】
従来、アクロレインは、プロピレンから、MoO−Biを触媒とした温度330〜370℃の空気酸化による直接酸化法により、工業的に合成されている(非特許文献1)。ところが、プロピレンは、石油由来であるため、資源枯渇及びCO排出が懸念されている。そこで、植物油からバイオディーゼル製造時、あるいは石けん製造時の副生成物であるグリセリンへの原料転換が行えれば、環境調和型のバイオリファイナリー製造技術として、カーボンニュートラルを達成することが可能である。
【0004】
先行技術文献調査によれば、従来、図1に示されるように、グリセリン類からアクロレイン類を合成する方法が、種々報告されている(図中、R,R,R,R,Rは、水素、アルキル基又はヘテロ原子を含む置換基である)。例えば、粉末状の硫酸水素カリウム、硫酸カリウム及びグリセリンからなる混合物を190〜200℃で処理することにより、アクロレインが理論値の33〜48%の収率で得られる(非特許文献2)。
【0005】
ガスクロマトグラフィー(気化器温度340℃)で、グリセリンからアクロレインを気相脱水反応により生成する方法がある(非特許文献3)。この方法では、260〜300℃で、KHSO 10〜30%を被覆したガスクロマトグラフィーカラムを介して、きわめて薄いグリセリン溶液(1.5〜150mg/l)を脈動化した形で導入する。しかしながら、上記方法は、特殊な手法であり、アクロレイン収率は低い。
【0006】
超臨界水、臨界点近傍の亜臨界水中で、グリセリンからアクロレインが得られるとの報告がある(非特許文献4,5)。この方法では、例えば、グリセリン水溶液濃度0.5Mで、温度350℃、圧力34.5MPaの臨界点近傍の亜臨界水により、グリセリン転化率は39〜55%であり、この場合に、主要生成物は、ほぼ3:1〜4:1の重量比のアクロレイン及びアセトアルデヒドであり、圧力が水の臨界圧力以上であることが重要とされている(非特許文献6)。
【0007】
また、無触媒条件下、温度360℃、圧力25MPaの臨界点近傍の亜臨界水により、反応時間1分で、収率が1%程度と低いものの、微量のZnSOを触媒とすることで、57%の収率が得られている(非特許文献7)。更に、急速昇温型の超臨界装置を用い、微量の硫酸を触媒として、温度400℃、34.5MPaの超臨界水により、反応時間10秒で、収率75%が得られる(非特許文献8)。しかし、超臨界水、臨界点近傍の亜臨界水中を用いる方法は、温度及び圧力が高いため、経済的に有利な技術とは言い難い。
【0008】
リン酸鉄、活性白土、KHSO−KSOの混合物等の酸性物質を触媒として、グリセリンからアクロレインを生成する方法がある(非特許文献9)。この方法では、340〜650℃に保持された固定床の触媒にグリセリンを滴下するものであり、リン酸鉄を用いた場合、最高51%の収率が得られるが、工業的生産には、収率が充分と言えない。
【0009】
ベンゼンスルホン酸を触媒として、無水フタル酸を脱水剤として用いて、グリセリンからアクロレインを製造する技術がある(非特許文献10)。しかし、合成されるアクロレインより、用いる無水フタル酸の方が多いため、工業的に実用的な技術とは言えない。
【0010】
温度300℃以上のグリセリン蒸気を、温度400〜420℃で固定床触媒上を通過させる方法がある。この方法では、触媒として担体上の三塩基性酸の塩又はそのような塩の混合物が使用され、リン酸リチウム1%又はリン酸鉄1%を被覆した軽石が使用される。既知のKHSO又はMgSOを使用した液相又は気相工程のアクロレイン収率が、それぞれ20%、30%であるのに対して、上記方法の収率は、75〜80%であるとの対比がなされている(特許文献1)。
【0011】
しかし、他の発明者によるこの方法の再検討によれば、アクロレイン収率は、300℃で、ほぼ1〜3%及び400℃で、30〜35%にすぎず、副生成物としてアリルアルコール、アセトアルデヒド及びプロピオンアルデヒドが多くの量で形成されると述べている(特許文献4)。
【0012】
高沸点のパラフィン溶媒中、2.4mのKHSOを触媒として、温度280℃、反応時間1時間で、アクロレインが最高80%の収率で得られる方法がある(特許文献2)が、触媒濃度が高く、廃液処理に難点がある。また、高沸点の有機溶媒中、HPO、HPO、H又はPを担体に担持した触媒を用い、250〜325℃で、グリセリンの脱水により、アクロレインを72%で得る方法がある(特許文献3)。しかし、この方法の場合、触媒が廃液に残存し、廃液処理を困難にするのみならず、タールが付着した触媒担体が生じるため、触媒再生の問題が生じる。
【0013】
プロトン型ZSM−5を触媒として、バイオマスの熱分解条件下、グリセリンからアクロレインが生成する方法がある(非特許文献11)。しかし、この文献では、ハイドロカーボンやタール等、多数の副生成物の生成が示されているが、アクロレインの収率が明示されていない。
【0014】
グリセリン/水混合物を原料とし、温度180℃以上の液相又は気相中で固体触媒に接触させることで、アクロレイン又はアクロレイン水溶液を製造する方法がある(特許文献4,5)。α−Alをリン酸溶液と混合して調製したアルミナ触媒を用い、気相中300℃で脱水を行った場合、濃度10重量%のアクロレインが最高75%の収率で得られている。ただし、高濃度のグリセリン水溶液の場合、反応の選択率及び触媒の寿命の双方が極端に低下する。したがって、低濃度のアクロレイン水溶液が製造可能となるが、ヒドロキシアセトン等の副生物が含有され、アクロレイン収率も充分ではない。また、リン酸含有アルミナ触媒は、寿命が短く、触媒の安定性に欠ける。
【0015】
このように、従来法では、アクロレイン類の合成の場合、多量の触媒又は有機溶媒が必要であるため、製品の品質上及び環境に対する配慮から、反応後の分離操作において、触媒又は有機溶媒の分離除去が必要である。高度分離に必要なコストは、合成操作と同程度であり、望ましくは多量の触媒や有機溶媒を使用しない方が良い。しかも、分離操作後における水層は、廃棄物となりやすく、廃液の問題を生じやすい。例え、有機溶媒を使用しない場合でも、中和操作や廃棄物処理が低減されるように、触媒は、再生可能である必要があるが、達成されているとは言い難い。
【0016】
一方、従来法では、超臨界水(温度375℃以上)、臨界点近傍の亜臨界水(温度350〜375℃)を用いる場合にも、圧力が臨界圧力(22MPa)以上であることが重要であり、特殊な高圧仕様の装置が必要とされるだけでなく、高温高圧条件下での稼働が必要とされ、経済的に有利とは言い難い。以上のことから、当該技術分野においては、簡単、低コスト、環境負荷低減型の合成プロセスで、分離操作が容易、かつ高度分離が可能で、多量の触媒や有機溶媒が使用されない、より低温低圧の条件下でのアクロレイン類の連続的合成を可能とする新しい製造技術が強く要請されていた。
【0017】
【特許文献1】仏国特許第695931号明細書
【特許文献2】特開2007−137785号公報
【特許文献3】米国特許第2558520号明細書
【特許文献4】特開平6−211724号公報
【特許文献5】米国特許第5387720号明細書
【非特許文献1】園田,亀岡,有機工業化学,化学同人,1985年,p84
【非特許文献2】H.Adkins and W.H.Hartung,Org.Syn.,coll vol I 15(1941)
【非特許文献3】K.Ishikawa et al.,分析化学,1983,32(10),E321−E325
【非特許文献4】S.L.Frye,C.R.Yonker,D.R.Kalkwarf,and R.D.Smith,Preprints of Papers−ACS,Divi.Fuel Chem.,1985,30(3),78−87
【非特許文献5】Energy from Biomass and Wastes,1987,10,p.865−877
【非特許文献6】S.Ramayya,A.Brittain,C.DeAlmeida,W.Mok and M.J.Antal,Jr.,Fuel,1987,66(10),1364−1371
【非特許文献7】L.Ott,M.Bricker and H.Vogel,Green Chem.,2006,8,214
【非特許文献8】M.Watanabe,T.Iida,Y.Aizawa,T.M.Aida,H.Inomata,Bioresource Tech.,2007,98,1285
【非特許文献9】Chem.Ber.,1950,83,287−291
【非特許文献10】工業化学雑誌,1934,37,.538
【非特許文献11】Lee H.Dao et al.,Reactions of Model Compounds of Biomass−Pyrolysis Oils over ZSM−5 Zeolite Catalysts −ACS Symposium Series,1988,376,328−341
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このような状況のなかで、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、低コストで、環境に優しい簡単な高速合成プロセスで、上記アクロレイン類を連続的、かつ選択的に合成することができる新しい合成方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒とする反応系で、特定の条件で無触媒ないし微量触媒で、グリセリン類からアクロレイン類を高収率、高選択的に合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、グリセリン類からアクロレイン類を無触媒又は微量触媒で、超臨界流体又は亜臨界流体を用いて、短時間で、連続的に合成する方法、その反応組成物及び装置を提供することを目的とするものである(図2)。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)アクロレイン類を合成する方法において、高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用し、無触媒又は微量の触媒条件下、グリセリン類から一段階の合成反応でアクロレイン類を選択的に合成することを特徴とするアクロレイン類の製造方法。
(2)高くても温度350℃で、かつ高くても圧力22MPaの高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用する、前記(1)記載のアクロレイン類の製造方法。
(3)超臨界流体又は亜臨界流体として、超臨界又は亜臨界状態の二酸化炭素、水、エタノール、又はメタノール、あるいはこれらの同じ状態の混合溶媒、あるいは、これら以外の有機溶媒及び/又は無機溶媒を含む溶媒を用いる、前記(1)又は(2)記載のアクロレイン類の製造方法。
(4)微量触媒として無機酸、又は固体酸の酸を用いる、前記(1)記載のアクロレイン類の製造方法。
(5)グリセリン類水溶液を原料として、無触媒で反応を実施する、又はグリセリン類水溶液に微量触媒を添加した水溶液を原料として、反応を実施する、前記(1)から(4)のいずれかに記載のアクロレイン類の製造方法。
(6)流通式高温高圧装置に、基質及び反応溶媒を導入し、反応時間を3〜180秒の範囲で変化させることで合成反応を実施する、前記(1)から(5)のいずれかに記載のアクロレイン類の製造方法。
(7)アクロレイン類の合成後、回収水溶液に水を注入してデカンテーションし、油/水二層溶液に分離後、アクロレイン類を含む油層を分液回収する簡易な連続分離法を行う、前記(1)から(6)のいずれかに記載のアクロレイン類の製造方法。
(8)アクロレイン類の合成反応で反応物として得られる合成反応組成物であって、有機溶媒の残存がないことを特徴とするアクロレイン類の合成反応組成物。
(9)水を送液する水送液ポンプ、該送液された水を加熱する水加熱用コイル、基質を送液する反応物送液ポンプ、該送液された反応物を導入する反応物導入管、反応を行う高温高圧フローセル、反応溶液を排出する排出液ライン、該排出液を冷却する冷却フランジ及び圧力を設定する背圧弁を具備し、高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用し、無触媒又は微量の触媒条件下、グリセリン類から一段階の合成反応でアクロレイン類を選択的に合成するようにしたことを特徴とするアクロレイン類の合成装置。
【0020】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、アクロレイン類を合成する方法において、高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用し、無触媒又は微量の触媒条件下、グリセリン類から一段階の合成反応でアクロレイン類を選択的に合成することを特徴とするものである。また、本発明は、アクロレイン類の合成反応で反応物として得られる合成反応組成物であって、有機溶媒の残存がないことを特徴とするものである。本発明では、高くても温度350℃で、かつ高くても圧力22MPaの高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用すること、超臨界流体又は亜臨界流体として、超臨界又は亜臨界状態の二酸化炭素、水、エタノール、又はメタノール、あるいはこれらの同じ状態の混合溶媒、あるいは、これら以外の有機溶媒及び/又は無機溶媒を含む溶媒を用いること、を好ましい実施の態様としている。
【0021】
また、本発明では、微量触媒として無機酸、又は固体酸の酸を用いること、グリセリン類水溶液を原料として、無触媒で反応を実施する、又はグリセリン類水溶液に微量触媒を添加した水溶液を原料として、反応を実施すること、流通式高温高圧装置に、基質及び反応溶媒を導入し、反応時間を3〜180秒の範囲で変化させることで合成反応を実施すること、を好ましい実施の態様としている。
【0022】
更に、本発明は、上記アクロレインを合成する装置であって、水を送液する水送液ポンプ、該送液された水を加熱する水加熱用コイル、基質を送液する反応物送液ポンプ、該送液された反応物を導入する反応物導入管、反応を行う高温高圧フローセル、反応溶液を排出する排出液ライン、該排出液を冷却する冷却フランジ及び圧力を設定する背圧弁を具備し、高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用し、無触媒又は微量の触媒条件下、グリセリン類から一段階の合成反応でアクロレイン類を選択的に合成するようにしたことを特徴とするものである。
【0023】
本発明は、化1のグリセリン類から化2のアクロレイン類を、一段階の反応プロセスで、無触媒又は微量触媒で、短時間の反応条件下で、良好な収率、高選択的、かつ連続的に合成することを特徴とするものである。本発明では、上記反応溶媒として、温度350℃以下、圧力22MPa以下の超臨界流体又は亜臨界流体が用いられる。また、反応条件として、好適には、温度275℃、圧力6MPaの亜臨界水で、反応時間は3〜180秒の範囲、好適には、反応時間が92秒程度に調整される。ここで、化1、化2の式中、R,R,R,R,Rは、水素、アルキル基又はヘテロ原子を含む置換基である。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
本発明においては、上記基質及び反応溶媒を反応容器に導入して、所定の反応時間で合成反応を実施する。したがって、上記反応器としては、例えば、バッチ式の常温高圧装置又は高温高圧反応容器、及び連続型の流通式常温高圧装置又は流通式高温高圧反応装置を使用することができるが、本発明は、これらの反応装置の型式は特に制限されるものでない。
【0027】
本発明の方法では、反応溶媒として、上記常温流体又は高温高圧状態にある、超臨界流体又は亜臨界流体が用いられるが、具体的には、亜臨界二酸化炭素(常温以上、0.1MPa以上)、亜臨界水(100℃以上、0.1MPa以上)、亜臨界メタノール(100℃以上、0.1MPa以上)、亜臨界エタノール(100℃以上、0.1MPa以上)、超臨界二酸化炭素(34℃以上、7.38MPa以上)、超臨界水(375℃以上、22MPa以上)、超臨界メタノール(239℃以上、8.1MPa以上)、超臨界エタノール(241℃以上、6.1MPa以上)、これらの同じ状態の混合溶媒が例示され、好適には、亜臨界水(200〜350℃、5MPa以上)が用いられる。
【0028】
反応溶媒としては、上記以外の有機溶媒や無機溶媒を任意の割合で含むことができ、具体的には、有機溶媒として、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等、無機溶媒として、酢酸、アンモニア等を含む反応溶液に代替することも可能である。
【0029】
本発明では、上記亜臨界流体又は超臨界流体の反応溶媒の組成、温度及び圧力条件、基質の種類及びその使用量、反応時間を調整することにより、短時間で、効率良く、反応生成物を合成することができる。また、本発明では、例えば、基質及び反応溶媒を流通式高温高圧装置に導入し、それらの反応時間を3〜180秒の範囲で変えることにより、所定の反応生成物を合成することができる。上記反応条件は、使用する出発原料、目的とする反応生成物の種類等により、適宜設定することができる。
【0030】
また、本発明では、グリセリン類水溶液を原料として、無触媒で反応を実施すること、又はグリセリン類水溶液に微量触媒を添加した水溶液を原料として、反応を実施することが必要、かつ重要である。したがって、本発明では、低粘性のグリセリン類水溶液を原料とするため、高粘性のグリセリン類の送液に必要なシリンジポンプのような特殊ポンプでなく、レシプロポンプ等の通常のポンプで送液可能となり、装置を廉価とすることができる。
【0031】
本発明の方法では、従来、触媒存在下で行われていた、アクロレイン類の合成を、高速で、連続的に、しかも、無触媒で実施できるため、長時間を要するプロセスを効率化することができる。また、本発明の方法では、無触媒又は微量触媒で、良好な収率、かつ高選択性を達成可能であることから、反応後の溶液の中和処理、無害化処理等の後処理・処分が低減され、環境負荷低減を達成することが可能である。
【0032】
更に、反応後は、静置分離操作のみであるため、触媒や有機溶媒の分離回収の必要性はなく、生成物の分離が容易になる。本発明によれば、微量触媒添加で、3〜180秒、好適には、92秒程度の短時間で、転化率85%以上、選択率89%以上で合成反応を行い、対応するアクロレイン類を合成することが可能である。本発明の合成方法は、高分子原料として重要なアクロレイン類を、効率良く、大量に、高速で、連続的に生産することを可能にするものとして有用である。
【0033】
従来、グリセリン類からアクロレイン類を、350℃以下、圧力22MPa以下の低温低圧条件での超臨界流体又は亜臨界流体で、良好な収率、かつ高選択的に合成可能であることを実証した例はなく、本発明の対象とするアクロレイン類の環境負荷低減型高選択的合成反応法は、本発明者らによって初めてその有効性が実証されたものである。しかも、従来法では、グリセリン類から合成されるアクロレイン類は、多量の触媒及び有機溶媒の残存が問題とされていたが、本発明でグリセリン類から合成される反応組成物は、多量の触媒及び有機溶媒の残存がなく、本発明の方法で反応物として得られるアクロレイン類組成物は、従来製品にない利点を有している。
【0034】
本発明では、無触媒又は微量触媒条件下、グリセリン類からのアクロレイン類の合成反応を実現するために、例えば、基質をあらかじめ溶媒に溶解した溶液を送液し、亜臨界流体又は超臨界流体中の反応経過を、高温高圧赤外フローセル(図3)により赤外分光分析によって観察する、流通型高温高圧赤外分光その場測定装置(図4)を用いることも可能である。
【0035】
しかしながら、高温高圧赤外フローセルを窓なし高温高圧フローセル(図5)に交換し、超臨界流体の流れに対して、直接反応物の流れを接触反応するように配管配置した方が、高温高圧赤外フローセルにおけるセル窓付近におけるリーク等の問題が発生せず、より高流量で短時間に合成を実施することが可能である。これらのことから、後記する実施例では、この窓なし高温高圧フローセルを装着した装置を用いた。
【0036】
ここで、窓なし高温高圧フローセル本体(図5)とは、例えば、市販のSUS316製のクロス1にネジを切り、次に説明する温度センサーシース(図6の12)に固定できるようにする。炉体雰囲気の温度を測定せずに、セル温度を示すように温度センサー位置を調節し、シース固定ネジとオネジ3でネジ止めする。SUS316の配管4は、クロス1にワンリングフェラル付きのテーパーネジ2でクロス1に接続される。もちろん、クロス1は、エンドネジで一つの流路を塞ぐことによって、ティーとしても使用可能である。
【0037】
図6は、窓なし高温高圧フローセルを装着した流通式高温高圧反応装置の炉体部分であり、反応装置本体である。これを、図4の流通型高温高圧流体その場赤外分光測定装置の斜線位置に設置すれば、赤外分光は測定できないものの、温度、圧力、流量が可変な亜臨界・超臨界流体接触型の合成反応装置として利用可能となる。なお、この場合における反応観察は、排出後の水溶液を採取し、GC−FIDにより、生成物の純品を用いた検量線から定量を実施し、GC/MSにより定性分析を実施する。また、NMRにより定量・定性分析を実施する。
【0038】
以下、図6について説明すると、水送液ポンプ5から水が送液され、冷却フランジ8を通過後、炉体13へ送液される。その後、水加熱用管コイル9を通過し、高温高圧状態で温度センサー11が挿入された温度センサーシース12に支持固定された高温高圧フローセル14に導入される。一方、反応物が反応物送液ポンプ6から送液され、冷却フランジ8を通過後、炉体13へ送液される。コイル状反応物導入管10を通過後、温度センサーシース12に固定された高温高圧フローセル14に導入される。また、洗浄水がポンプ7により送液され、配管16を通過後、ティー18に導入され、洗浄用に用いられる。
【0039】
高温高圧フローセルを通過した溶液は、配管17を通過後、冷却フランジ8を通過して、炉体外を空冷されながら通過する。その後、圧力を設定している背圧弁19からの排出液を採取し、サンプルとする。ここで、反応物や生成物を含む排出液の加熱による影響を排除する場合には、急速昇温を実施し、反応物導入ライン10と排出液ライン17の配管をできるだけ短く、水加熱用コイル9をできるだけ長くすることが望ましい。本発明は、これらに限らず、これらと同効の反応装置であれば同様に使用することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)グリセリン類から高速で、連続的に、アクロレイン類を合成することができる。
(2)アクロレイン類を廃棄物量を低減しつつ、良好な収率、かつ高選択的、高効率で合成することができる。
(3)多量の触媒及び有機溶媒を用いない合成プロセスを実現できる。
(4)そのため、多量の触媒及び有機溶媒の残存のないアクロレイン類組成物を提供できる。
(5)生成物が水に溶解しない場合には、排出された油水分散水溶液に対して、更に水を注入することで、洗浄も行われ、油水二層に分液された高純度の生成物を容易に回収できる。
(6)高分子原料として有用なアクロレイン類の新しい大量生産プロセスとして、既存の生産プロセスに代替し得る新しい生産技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
まず、実施方法を示した後、実施例を示す。
本実施例では、図6の流通式高温高圧反応装置を用いて、合成条件を、無触媒又は微量触媒添加で、温度200〜400℃、圧力5〜22MPa、滞留時間3〜180秒で実施した。図6の流通式高温高圧反応装置の本体(主要部分)を、図4の流通型高温高圧流体その場赤外分光測定装置に設置した装置に、まず、温度275℃、圧力6MPaに設定し、ポンプ5により、純水を流量5.0ml/minで送液し、配管コイル9を通じて、一つの接続穴をエンドで塞いだ窓なしセル(ティー14)へ送液した。
【0043】
その後、エタノールを内標準として添加した(基質の5mol%)、グリセリン混合溶液0.5ml/minをポンプで送液した(混合後の水溶液濃度:0.76mol/kg)。基質送液後、20分後の背圧弁からの排出水溶液を1ml採取した。加熱炉から背圧弁出口までの配管内容積を反応体積とした場合、反応時間は92秒であった。
【0044】
回収された1mlの水溶液に、1mlのアセトンを加え、振とうし、組成をGC/MS分析計(Hewlett Packard社製HP6890、カラム HP−5、注入口温度150℃、初期カラム温度60℃(保持時間2分)、昇温速度10℃/分、最終カラム温度250℃(保持時間2分))で実施し、得られたマススペクトルは、Willey データベースで一致度90%以上で確認した。また、定量及び市販試薬がある場合の定性は、エタノールを内標準としてGC−FID(Agilent社製GC6890,カラム DB−WAX、注入口温度250℃、スプリット比5.61、初期カラム温度30℃(保持時間0.5分)、昇温速度20℃/分、最終カラム温度250℃(保持時間2分))で実施した。
【0045】
また、得られた生成物水溶液が油水分散状態で白濁している場合には、水を20ml/minで3分注入し、デカンテーションすると、油水二層溶液となり、下(上)層の油層にアクロレイン類を、上(下)層の水相に水を得た(GCにより確認)。このことは、生成物が水に溶解しない場合、反応終了後の油水分散水溶液に、水を更に注入することで、油水二層に変化してアクロレイン類と酢酸水溶液を分液することができる。したがって、分離精製に高度な手法や膨大なエネルギーを必要とする精留は必要とされない。
【0046】
無触媒条件でグリセリン(化1の式中、R1、、R、R、Rは水素)水溶液を原料として、圧力5〜22MPa、滞留時間92秒で温度を200〜400℃で温度依存性を検討したところ、図7のようになった。以下に、実施例1〜9を示す。
【0047】
実施例1
温度200℃、圧力5MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率2%、選択率0%、収率0%で得た。また、その他化合物の収率は2%であった。
【0048】
実施例2
温度225℃、圧力5MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率3%、選択率0%、収率0%で得た。また、その他化合物の収率は3%であった。
【0049】
実施例3
温度250℃、圧力5MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率1%、選択率0%、収率0%で得た。また、その他化合物の収率は1%であった。
【0050】
実施例4
温度275℃、圧力6MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率1%、選択率0%、収率0%で得た。また、その他化合物の収率は1%であった。
【0051】
実施例5
温度300℃、圧力10MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率3%、選択率21%、収率0.7%で得た。また、その他化合物の収率は3%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図8のように、透明な水溶液であった。
【0052】
実施例6
温度350℃、圧力17MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率12%、選択率6%、収率0.7%で得た。また、その他化合物の収率は11%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図8のように、透明な水溶液であった。
【0053】
実施例7
温度375℃、圧力22MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率22%、選択率5%、収率1.2%で得た。また、その他化合物の収率は21%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図8のように、わずかに着色した透明な水溶液であった。
【0054】
実施例8
温度400℃、圧力22MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率31%、選択率4%、収率1.3%で得た。また、その他化合物の収率は30%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図8のように、わずかに着色した透明な水溶液であった。
【0055】
実施例9
温度425℃、圧力22MPaにおいて、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率49%、選択率4%、収率1.9%の最大値で得た。また、その他化合物の収率は47%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図8のように、わずかに着色した透明な水溶液であった。
【0056】
次に、3.8mmol/kgの微量の硫酸を添加したグリセリン(化1の式中、R1、、R、R、Rは水素)水溶液を原料として、流通型高温高圧流体装置を用いて、温度200〜275℃、滞留時間92秒で、圧力を5〜6Mpaで温度依存性を検討したところ、図9のようになった。以下に、実施例10〜16を示す。
【0057】
実施例10
温度200℃、圧力5MPaで、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率0%、選択率0%、収率0%で得た。また、その他化合物の収率は0%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図10のように、透明な水溶液であった。
【0058】
実施例11
温度225℃、圧力5MPaで、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率20%、選択率56%、収率11%で得た。また、その他化合物の収率は9%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図10のように、わずかに着色した透明な水溶液であった。
【0059】
実施例12
温度250℃、圧力5MPaで、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率65%、選択率90%、収率58%で得た。また、その他化合物の収率は7%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図10のように、黄褐色の透明な水溶液であった。
【0060】
実施例13
温度275℃、圧力6MPaで、アクロレイン(化2の式中、R1、、R、R、Rは水素)を、転化率85%、選択率89%、収率76%の最大値で得た。また、その他化合物の収率は10%であった。ここで、回収サンプルの外観は、図10のように、茶褐色の不透明な水溶液であった。
【0061】
実施例14
温度300℃、圧力10MPaでは、閉塞が発生し、収率などの結果を得ることができなかった。生成したアクロレインが高分子化及び炭化したため、閉塞を生じたものと考えられる。
【0062】
実施例15
温度350℃、圧力17MPaでは、やや激しい閉塞が発生し、収率等の結果を得ることができなかった。生成したアクロレインが高分子化及び炭化したため、閉塞を生じたものと考えられる。
【0063】
実施例16
温度400℃、圧力22MPaでは、激しい閉塞が発生し、収率等の結果を得ることができなかった。生成したクロレインが高分子化及び炭化したため、閉塞を生じたものと考えられる。
【0064】
以上の本発明における、無触媒(実施例9),微量硫酸添加条件(実施例14)の結果と、他の方法(特許文献2、非特許文献6及び7)との比較を行った(図11)。実施例14(Entry6)と、KHSO触媒、パラフィン溶媒中、温度280℃、常圧で行った場合の結果(Entry1)と比べた場合、明らかに触媒量は少なく、反応時間も短い上に、TOFも大きくなっており、本発明における方法が高効率であることが理解できる。また、実施例14(Entry6)とZnSO触媒添加持の亜臨界水条件(Entry2)、硫酸触媒添加持の超臨界水条件(Entry4)と比べても、温度、圧力が低温低圧となっているにもかかわらず、収率、選択率、TOF、初濃度すべてについて高い値となった。
【0065】
以上の実施例から、亜臨界流体又は超臨界流体を反応溶媒として、無触媒又は微量触媒添加で、アクロレイン類が廃棄物量を低減しつつ良好な収率で高選択的に、しかも高効率で合成可能であることが明らかとなった。また、アクロレイン類合成後、回収水溶液に水を注入してデカンテーションし、油/水二層溶液に分離後、アクロレイン類を含む油層を分液回収する一方、水層からは、水を分離し、回収する簡易な連続分離法も構築できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上詳述したように、本発明は、グリセリン類から有機溶媒を用いることなく、亜臨界流体又は超臨界流体を反応溶媒として、無触媒又は微量触媒でアクロレイン類を合成する方法及びその反応組成物に係るものであり、従来法では、グリセリン類からアクロレイン類の合成は、無溶媒又は微量触媒での低温低圧条件では、良好な収率、かつ高選択的で、高効率合成が達成不可能であったが、本発明で示した亜臨界流体・超臨界流体を用いることにより、触媒微量添加で、有機溶媒を使用することなく、廃棄物量を低減しつつ高速で連続的に選択的にアクロレイン類を合成することが可能となった。このことは、高分子原料として有用なアクロレイン類を、短時間で、大量に連続的に生産できるというメリットをもたらす。また、アクロレイン類合成後、回収水溶液に水を注入してデカンテーションし、油/水二層溶液に分離後、アクロレイン類を含む油層を分液回収する一方、水層からは水を回収し、水をリサイクルすることが可能である。これらのことから、合成・分離プロセスを単純化させることで、プロセスの初期コスト及びランニングコストを圧縮することが可能である。更に、中和処理の後処理も低減され、環境調和型生産が可能となる。本発明は、高分子原料として有用なアクロレイン類の新しい大量生産プロセスとして、既存の生産プロセスに代替し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】従来型のアクロレイン類合成を示す。
【図2】亜臨界流体又は超臨界流体を用いるアクロレイン類合成を示す。
【図3】高温高圧赤外フローセルを示す。
【図4】実施例で用いた流通型高温高圧流体その場赤外分光測定装置を示す。
【図5】窓なし高温高圧フローセルを示す。
【図6】実施例で用いた流通式高温高圧反応装置の主要部分を示す。
【図7】無触媒条件でのグリセリン類のアクロレイン類合成における温度依存性を示す。
【図8】無触媒条件でのグリセリン類のアクロレイン類合成における温度依存性による回収サンプル外観を示す。
【図9】微量硫酸添加条件でのグリセリン類のアクロレイン類合成における温度依存性を示す。
【図10】微量硫酸添加条件でのグリセリン類のアクロレイン類合成における温度依存性による回収サンプル外観を示す。
【図11】本発明と他の方法との収率の比較を示す。
【符号の説明】
【0068】
1 ティー又はクロス(片側口φ4mmネジ切り)
2 φ4mm×5.0mmL六角ネジ
3 ワンリングフェラル付オネジ
4 SUS316チューブ
5 水送液ポンプ
6 反応物送液ポンプ
7 洗浄水送液ポンプ
8 冷却フランジ(冷却水が循環する)
9 水加熱コイル
10 反応物導入管
11 温度センサー
12 温度センサーシース
13 炉体
14 高温高圧フローセル(通常昇温ではティー型、急速昇温ではクロス型)
15 ZnSe窓
16 溶媒導入管
17 排出配管
18 ティー
19 背圧弁
21 水溶液
22 洗浄水
23 水溶液ポンプ
24 洗浄用純水送液ポンプ
25 炉体加熱システム
26 炉体
27 高温高圧赤外フローセル
28 冷却水(入口)
29 冷却水(出口)
30 背圧弁
31 排出水溶液受器
32 可動鏡
33 可動鏡
34 干渉計
35 光源
36 赤外レーザー
37 MCT受光器
38 TGS受光器
39 解析モニター
40 反応物送液ポンプ
41 基質送液ポンプ
42 水送液ポンプ
43 反応ティー
44 配管
45 混合ティー
46 排出配管
47 冷却器
48 背圧弁
49 回収容器
50 温度センサー
51 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクロレイン類を合成する方法において、高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用し、無触媒又は微量の触媒条件下、グリセリン類から一段階の合成反応でアクロレイン類を選択的に合成することを特徴とするアクロレイン類の製造方法。
【請求項2】
高くても温度350℃で、かつ高くても圧力22MPaの高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用する、請求項1記載のアクロレイン類の製造方法。
【請求項3】
超臨界流体又は亜臨界流体として、超臨界又は亜臨界状態の二酸化炭素、水、エタノール、又はメタノール、あるいはこれらの同じ状態の混合溶媒、あるいは、これら以外の有機溶媒及び/又は無機溶媒を含む溶媒を用いる、請求項1又は2記載のアクロレイン類の製造方法。
【請求項4】
微量触媒として無機酸、又は固体酸の酸を用いる、請求項1記載のアクロレイン類の製造方法。
【請求項5】
グリセリン類水溶液を原料として、無触媒で反応を実施する、又はグリセリン類水溶液に微量触媒を添加した水溶液を原料として、反応を実施する、請求項1から4のいずれかに記載のアクロレイン類の製造方法。
【請求項6】
流通式高温高圧装置に、基質及び反応溶媒を導入し、反応時間を3〜180秒の範囲で変化させることで合成反応を実施する、請求項1から5のいずれかに記載のアクロレイン類の製造方法。
【請求項7】
アクロレイン類の合成後、回収水溶液に水を注入してデカンテーションし、油/水二層溶液に分離後、アクロレイン類を含む油層を分液回収する簡易な連続分離法を行う、請求項1から6のいずれかに記載のアクロレイン類の製造方法。
【請求項8】
アクロレイン類の合成反応で反応物として得られる合成反応組成物であって、有機溶媒の残存がないことを特徴とするアクロレイン類の合成反応組成物。
【請求項9】
水を送液する水送液ポンプ、該送液された水を加熱する水加熱用コイル、基質を送液する反応物送液ポンプ、該送液された反応物を導入する反応物導入管、反応を行う高温高圧フローセル、反応溶液を排出する排出液ライン、該排出液を冷却する冷却フランジ及び圧力を設定する背圧弁を具備し、高温高圧状態の超臨界流体又は亜臨界流体を反応溶媒として使用し、無触媒又は微量の触媒条件下、グリセリン類から一段階の合成反応でアクロレイン類を選択的に合成するようにしたことを特徴とするアクロレイン類の合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図11】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−132663(P2009−132663A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311802(P2007−311802)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的マイクロ反応利用部材技術開発事業」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】