説明

アザペプチド誘導体

本発明は、アザペプチドである新規化合物、およびその薬学的に許容され得る塩に関する。より具体的に、本発明は、HIVプロテアーゼインヒビターアタザナビルスルフェートの誘導体である新規アザペプチド化合物に関する。また、本発明は、本発明の1種類以上の化合物および担体を含む、発熱物質を含まない組成物、ならびにHIVプロテアーゼインヒビターの投与によって治療される疾患および状態の治療方法における開示された化合物および組成物の使用を提供する。また、本発明は、アタザナビルを含む分析試験における試薬としての1種類以上の開示された化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2007年6月12日に出願された米国仮特許出願第60/934,201号および2008年2月29日に出願された米国仮特許出願第61/067,627号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス(1,1-ジメチルエチル)-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオン酸ジメチルエステルスルフェートとしても公知のアタザナビルスルフェートは、特定のポリタンパク質(ウイルスGagおよびGag-Pol)のウイルス特異的プロセッシングを選択的に阻害することによってHIV-1感染細胞中の成熟HIVビリオンの形成を妨げる。アタザナビルスルフェートは、現在、HIV感染の治療に承認されている。
【0003】
アタザナビルは、除去のためにCYP3Aに非常に依存し、かつ除去のために血漿濃度の上昇が重大な事象および/または生命を脅かす事象と関連する薬物を用いた共投与について禁忌を示す。CYP3A、CYP2C8およびUGT1A1に関するアタザナビルの阻害効果のために、アタザナビルを受ける患者にCYP3A、CYP2C8、またはUGT1A1によって主に代謝される薬物を処方する場合には注意する。アタザナビルと関連する共通の有害事象としては、過剰ビリルビン血症、発疹、吐き気、頭痛、および黄疸/強膜黄疸が挙げられる。ある患者が経験し、原因関係が確立されていない有害事象としては、真性糖尿病/高血糖症、PR期間延長、血友病、および脂肪再分布が挙げられる。
【0004】
アタザナビルの有利な活性にも関わらず、依然として前記疾患および状態を治療するための新しい化合物が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、アザペプチドである新規化合物、およびその薬学的に許容され得る塩に関する。より具体的に、本発明は、HIVプロテアーゼインヒビターアタザナビルスルフェートの誘導体である新規アザペプチド化合物に関する。また、本発明は、本発明の1種類以上の化合物および担体を含む、発熱物質を含まない組成物、ならびにHIVプロテアーゼインヒビターの投与によって治療される疾患および状態の治療方法における開示された化合物および組成物の使用を提供する。また、本発明は、アタザナビルを含む分析試験における試薬としての1種類以上の開示された化合物の使用に関する。
【0006】
本発明の化合物は、式A:


(式中、
R1aおよびR1bのそれぞれは独立してC1〜C3アルキルから選択され、アルキルの1つ以上の水素原子は重水素原子と任意に置換される;
R2およびR3のそれぞれは独立してイソプロピル、sec-ブチル、およびtert-ブチルから選択され、イソプロピル、sec-ブチル、またはtert-ブチルの1つ以上の水素原子は重水素原子と任意に置換される;
R4はH、OHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択される;
R5はHおよび-(CR6R7-O)n-R8から選択される;
R6およびR7はそれぞれ独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、およびC3〜C7シクロアルキルから選択される、または
R6およびR7は、結合している炭素と共に、3〜7員環シクロアルキルを形成する;
各R8は独立して-C(O)H、-C(O)-(C1〜C7アルキル)、-P(O)-(OH)2、-S(O)-OH、-S(O)2-OHおよびA-R11から選択され、
Aはα-アミノ残基であり、
R11はH、C1〜C6アルキル、-C(O)-(C1〜C7アルキル)、A-R12から選択され、
R12はH、C1〜C6アルキル、および-C(O)-(C1〜C7アルキル)から選択される;
nは0または1である;
R5の任意のアルキルは任意に置換される;
Y1aおよびY1bのそれぞれは独立してHおよびDから選択される;
R9は2-チエニル、3-チエニル、チアゾール-5-イル、チアゾール-2-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、ピラジン-2-イル、2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル、2-(d3-メチル)-2H-テトラゾール-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル、および1-(d3-メチル)-1H-テトラゾール-5-イルから選択される;
R1a、R1b、R2、R3またはYの変数の少なくとも1つは重水素原子を含む)
によって表されるもの、またはその塩、水和物もしくは溶媒和物である。
【0007】
本発明の化合物、その薬学的に許容され得る塩および組成物は、HIVプロテアーゼインヒビターである化合物によって有効的に治療される疾患の治療に有用である。従って、本発明は、有効量の、本明細書に開示される(i)化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩または(ii)発熱物質を含まない組成物(例えば、医薬組成物)を、治療の必要がある被験体に投与する工程を含む、HIVプロテアーゼインヒビターである化合物によって治療できる疾患の治療方法を含むものである。
【0008】
HIVプロテアーゼ阻害活性を有する化合物を用いて治療できる疾患または状態としては、限定されないが、HIV感染が挙げられる。
【0009】
また、本発明の化合物および組成物は、溶液中のアタザナビルスルフェートの濃度の測定方法、アタザナビルスルフェートの代謝の検査方法および他の分析試験における試薬として有用である。本明細書の式のいずれかの化合物のさらなる有用性としては、血漿などの生物マトリックス中のアタザナビルスルフェートの真の濃度を測定するための内部標準としての使用が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、アタザナビルと比較した場合の、ヒト肝臓ミクロソーム中の本発明の化合物の相対的安定性を示すグラフである。
【図2】図2は、アタザナビルと比較した場合の、ヒト肝臓ミクロソーム中の本発明の化合物の相対的安定性を示すグラフである。
【図3】図3は、アタザナビルと比較した場合の、ヒト肝臓ミクロソーム中の本発明の化合物の相対的安定性を示すグラフである。
【図4】図4は、アタザナビルと比較した場合の、チンパンジーに経口投与した後の本発明の化合物の相対的血漿レベルを示すグラフである。
【図5】図5は、アタザナビルと比較した場合の、チンパンジーに経口投与した後の本発明の化合物の相対的血漿レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
用語「改善する」および「治療する」は、互換的に使用され、治療処置および予防処置(発症の可能性を減少する)の両方を含むものである。両方の用語は、疾患(例えば、本明細書に列挙される疾患または障害)の発症または進行を減少し、抑制し、弱め、小さくし、停止し、もしくは安定させること、該疾患の重症度を低下させること、または該疾患と関連する症状を改善することを意味する。
【0012】
「疾患」は、細胞、組織、または器官の正常な機能を損なうまたは妨げる任意の状態または障害を意味する。
【0013】
合成に使用される最初の化学物質に依存して、天然同位体存在度が合成化合物で変化することが認識される。従って、アタザナビルの調製物は、本質的に、少量の重水素化同位体を含む。天然で豊富で安定な水素同位体の濃度は、変化するが低く、本発明の化合物の安定な同位体の置換の程度と比較した場合に重要でない。例えば、Wada Eら、Seikagaku 1994, 66:15; Ganes LZら、Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol 1998, 119:725参照。
【0014】
特に記載されない限り、位置が「H」または「水素」として具体的に特定される場合に、該位置は、天然存在度の同位体組成で水素を有することが理解される。また、特に記載されない限り、位置が「D」または「重水素」として具体的に特定される場合に、該位置は、重水素の天然存在度よりも少なくとも3500倍大きい存在度で重水素を有し、重水素の天然存在度は0.015%(即ち、少なくとも52.5%重水素含有)であることが理解される。
【0015】
用語「同位体濃縮係数」は、本明細書で使用される場合、本発明の化合物中の特定の位置でのDの同位体存在度と該同位体の天然存在度との間の比を意味する。重水素の天然存在度は0.015%である。
【0016】
他の態様において、本発明の化合物は、化合物上で可能な重水素部位として特定される部位に存在する各重水素について、少なくとも4000(60%重水素含有)、少なくとも4500(67.5%重水素含有)、少なくとも5000(75%重水素)、少なくとも5500(82.5%重水素含有)、少なくとも6000(90%重水素含有)、少なくとも6333.3(95%重水素含有)、少なくとも6466.7(97%重水素含有)、少なくとも6600(99%重水素含有)、または少なくとも6633.3(99.5%重水素含有)の同位体濃縮係数を有する。重水素の部位として特定される部位に存在する各重水素の同位体濃縮係数は、他の重水素化部位とは独立していることが理解される。例えば、化合物上に2つの重水素部位がある場合、1つの部位は52.5%で重水素化され得るが、他の部位は75%で重水素化され得る。得られた化合物は、同位体濃縮係数が少なくとも3500(52.5%)の化合物であるとみなされる。
【0017】
用語「アイソトポログ(isotopologue)」とは、その同位体組成のみにおいて、本発明の特定の化合物と異なる種のことをいう。アイソトポログは、1つ以上の位置での同位体濃縮のレベルおよび/または同位体濃縮の(1つまたは複数の)位置で異なる場合がある。
【0018】
用語「化合物」は、本発明の化合物を示す場合に、分子の構成原子間で同位体が変化する場合があることを除いて、同一の化学構造を有する分子の集団のことをいうことが理解される。従って、示された重水素原子を含む特定の化学構造によって表される化合物は、また、該構造中の1つ以上の特定された重水素の位置に水素原子を有する少量のアイソトポログを含むことが当業者に明らかである。本発明の化合物中のかかるアイソトポログの相対量は、化合物を作製するために使用される重水素化試薬の同位体純度、および化合物を調製するために使用される様々な合成工程における重水素の取り込みの効率などの、多くの因子に依存する。しかし、上記のように、かかるアイソトポログの相対量は、化合物中47.5%未満である。
【0019】
用語「化合物」は、また、化合物の任意の溶媒和物または水和物を含むことを意図する。
【0020】
本発明の化合物の塩は、酸と化合物の塩基性基、例えばアミノ官能基との間、または塩基と化合物の酸性基、例えばカルボキシル官能基との間で形成される。別の態様によれば、化合物は、薬学的に許容され得る酸付加塩である。
【0021】
用語「薬学的に許容され得る」は、本明細書で使用される場合、適切な医学判断の範囲内で、過度の毒性、炎症、アレルギー反応などがなくヒトおよび他の哺乳動物の組織との接触における使用に適切であり、適切な利益/リスク比が釣り合っている成分のことをいう。「薬学的に許容され得る塩」は、レシピエントに投与する際に、直接または間接的のいずれかで本発明の化合物を提供することができる任意の非毒性塩を意味する。「薬学的に許容され得る対イオン」は、レシピエントに投与する際に、塩から放出される場合に毒性でない塩のイオン性部分である。
【0022】
薬学的に許容され得る塩を形成するために一般に使用される酸としては、無機酸、例えば、硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸、ならびに有機酸、例えば、パラ-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、重酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、蟻酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸、ならびに関連する無機および有機酸が挙げられる。従って、かかる薬学的に許容され得る塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、モノハイドロジェンリン酸塩、ジハイドロジェンリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、蟻酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩および他の塩が挙げられる。一態様において、薬学的に許容され得る酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸を用いて形成されるもの、特にマレイン酸などの有機酸を用いて形成されるものが挙げられる。
【0023】
-P(O)-(OH)2、-S(O)-OH、-S(O)2-OHを含む本発明の化合物について、薬学的に許容され得る塩を形成する適切なカチオン性部分としては、限定されないが、アルカリ金属、例えば、ナトリウム、カリウム、およびリチウム; アルカリ土類金属、例えばカルシウムおよびマグネシウム;他の金属、例えばアルミニウムおよび亜鉛; アンモニア、および有機アミン、例えばモノ-、ジ-、またはトリアルキルアミン; ジシクロヘキシルアミン; トリブチルアミン; ピリジン; N-メチル、N-エチルアミン; ジエチルアミン; トリエチルアミン; モノ-、ビス-、または トリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、例えばモノ-、ビス-、またはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、 N,N,-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ 低級アルキル)-アミン、例えばN,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、またはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン; N-メチル-D-グルコアミン; アミノ酸、例えばアルギニン、リジンなど、ならびに両性イオン、例えばグリシンなどが挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「水和物」は、非共有分子間力によって結合された化学量論または非化学量論の量の水をさらに含む化合物を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「溶媒和物」は、非共有分子間力によって結合された化学量論または非化学量論の量の溶媒、例えば水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2-プロパノールなどをさらに含む化合物を意味する。
【0026】
開示される化合物は、様々な立体異性体形態で存在してもよい。立体異性体はその空間配置のみで異なる化合物である。複数のエナンチオマーは、最も一般的にこれらが不斉中心として機能する非対称置換炭素原子を含むために、鏡像を重ねることができない複数組の立体異性体である。「エナンチオマー」は、互いに鏡像であり、重ねることができない一組の分子の1つを意味する。複数のジアステレオマーは、最も一般的にこれらが2つ以上の非対称置換炭素原子を含むために、鏡像として関連しない複数の立体異性体である。「R」および「S」は、1つ以上の不斉炭素原子の周辺の置換基の配置を表す。
【0027】
開示された化合物の立体化学が命名されるまたは構造によって示される場合に、命名されるまたは示される立体異性体は、他の立体異性体に対して少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%または99.9重量%純粋である。1つのエナンチマーが命名されるまたは構造によって示される場合に、示されるまたは命名されるエナンチオマーは、少なくとも60%、70%、80%、90%、99%または99.9%光学的に純粋である。光学純度の重量パーセントはエナンチオマーの重量+その光学異性体の重量に対するエナンチオマーの重量の比である。
【0028】
開示された化合物が立体化学を示さずに命名されるまたは構造によって示され、少なくとも1つの不斉中心を有する場合、名称または構造は、対応する光学異性体、化合物のラセミ混合物、およびその対応する光学異性体に対して1つのエナンチオマーが多い混合物(「一定比率の混合物」)を含まない化合物の1つのエナンチオマーを含むことが理解される。
【0029】
開示された化合物が立体化学を示さずに命名されるまたは構造によって示され、少なくとも2つの不斉中心を有する場合に、名称または構造は、他のジアステレオマーを含まないジアステレオマー、他のジアステレオマー組、ジアステレオーマーの混合物、ジアステレオマー組の混合物、他の(1つまたは複数の)ジアステレオマーに対して1つのジアステレオマーが多いジアステレオマーの混合物、他の(1つまたは複数の)ジアステレオマー組に対して1つのジアステレオマー組が多いジアステレオマー組の混合物を含まない一組のジアステレオマーを含むことが理解される。
【0030】
用語「実質的に他の立体異性体を含まない」は、本明細書で使用される場合、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、より好ましくは5%未満の他の立体異性体、最も好ましくは2%未満の他の立体異性体、または「X」%未満の他の立体異性体(Xは0〜100の数字である)が存在することを意味する。
【0031】
用語「安定化合物」は、本明細書で使用される場合、製造を可能にするのに十分な安定性を有し、本明細書で詳細に説明される目的(例えば、治療化合物、単離可能または保存可能な中間体化合物の製造、治療剤に応答する疾患または状態の治療に使用される中間体の治療製品への配合)に有用である十分な時間の間化合物の完全性を維持する化合物のことをいう。
【0032】
「D」とは、重水素のことをいう。「立体異性体」とは、エナンチオマーおよびジアステレオマーの両方のことをいう。「Tert」、「t」および「t-」のそれぞれは、三級のことをいう。「US」とは、アメリカ合衆国のことをいう。「FDA」とは、食品医薬品局のことをいう。「NDA」とは、新規薬物適用のことをいう。
【0033】
用語「任意に置換される」とは、1つ以上の水素原子を別の部分で任意に置換することをいう。別に特定されていない限り、末端の水素原子などの任意の水素原子は任意に置換することができる。
【0034】
用語「ハロ」とは、-Cl、-F、-Br、または-Iのいずれかのことをいう。
【0035】
用語「オキソ」とは、=Oのことをいう。
【0036】
用語「アルコキシ」とは、-O-アルキルのことをいう。
【0037】
用語「アルキルアミノ」とは、-NH-アルキルのことをいう。
【0038】
用語「ジアルキルアミノ」とは、N(アルキル)-アルキルのことをいい、2つのアルキル部分は同一であるまたは異なる。
【0039】
用語「アルキル」とは、別に特定されていない限り、1〜12の炭素原子、好ましくは1〜8の炭素原子、より好ましくは1〜4の炭素原子の直鎖または分枝アルキル鎖のことをいう。直鎖および分枝アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルが挙げられる。アルキルは任意に置換されてもよい。
【0040】
任意に置換されるアルキル基またはアリール基は、典型的に、独立して選択される1〜4の置換基を含む。任意の置換基の例としては、C1〜7アルキル、ハロ、シアノ、ヒドロキシル、カルボキシ、アルコキシ、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロヘテロアルキル、アルキルシクロヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールが挙げられる。
【0041】
用語「シクロヘテロアルキル」とは、少なくとも1つの環中に窒素、酸素、または硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含む、非芳香族単環、二環、三環、スピロ環、または四環式環系のことをいう。各環は、4員環、5員環、6員環、7員環または8員環であり得る。例としては、糖の環状形態と共に、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、およびチアゾリジニルが挙げられる。
【0042】
用語「アルキルシクロヘテロアルキル」とは、アルキル置換基を含むシクロヘテロアルキル基のことをいう。例としては、4-メチルピペラジン-1-イルおよび4-メチルピペリジン-1-イルが挙げられる。
【0043】
用語「アリール」とは、フェニルおよびナフチルなどの炭素環式芳香族基のことをいう。
【0044】
用語「アルキルアリール」とは、アルキル鎖を介して分子の他の部分に結合したアリール基のことをいう。
【0045】
用語「ヘテロアリール」とは、環中に窒素、酸素、または硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含む単環式芳香族基、例えばイミダゾリル、チエニル、フリル、ピリジル、ピリミジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリル、およびテトラゾリルのことをいう。また、ヘテロアリール基としては、少なくとも1つの環が窒素、酸素または硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族環系が挙げられる。例としては、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、キノリニル、イソキノリニルおよびイソインドリルが挙げられる。
【0046】
用語「アルキルヘテロアリール」とは、アルキル鎖を介して分子の他の部分に結合したヘテロアリール基のことをいう。
【0047】
用語「α-アミノ酸残基」とは、一般式-C(O)-CHR-NH-の基のことをいい、D-立体配置またはL-立体配置いずれかの天然アミノ酸および合成アミノ酸を含む。
【0048】
特に特定されていない限り、用語「α-アミノ酸」は、(D)-立体配置、(L)-立体配置またはラセミ(D,L)立体配置を有するα-アミノ酸を含む。変数R8がα-アミノ酸である場合に、これはアミノ酸のα-炭素に直接結合したカルボニル炭素を介して分子の他の部分に結合することが理解される。式Iの構造によれば、かかる結合によって、エステルの形成がもたらされる。
【0049】
本明細書を通じて、変数は一般的に(例えば、「各R」)に示され得るまたは 具体的に(例えば、R1、R2、R3など)に示され得る。特に示されない限り、変数が一般的に示される場合に、その特定の変数の具体的な態様全てを含むことが意図される。
【0050】
本発明の化合物は、式A:


(式中、
R1aおよびR1bのそれぞれは独立してC1〜C3アルキルから選択され、アルキルの1つ以上の水素原子は重水素原子で任意に置換される;
R2およびR3のそれぞれは独立してイソプロピル、sec-ブチル、およびtert-ブチルから選択され、イソプロピル、sec-ブチル、またはtert-ブチルの1つ以上の水素原子は重水素原子で任意に置換される;
R4はH、OHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、
R5はHおよび-(CR6R7-O)n-R8から選択され、
R6およびR7はそれぞれ独立してH、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、およびC3〜C7シクロアルキルから選択される、または
R6およびR7は、結合する炭素と共に、3〜7員環シクロアルキルを形成する;
各R8は独立して-C(O)H、-C(O)-(C1〜C7アルキル)、-P(O)-(OH)2、-S(O)-OH、-S(O)2-OH、およびA-R11から選択され、
Aはα-アミノ酸残基である;
R11はH、C1〜C6アルキル、-C(O)-(C1〜C7アルキル)、A-R12から選択され、
R12はH、C1〜C6アルキルおよび-C(O)-(C1〜C7アルキル)から選択される;
nはOまたは1である;
R5の任意のアルキルは任意に置換される;
Y1aおよびY1bのそれぞれは独立してHおよびDから選択される;
R9は2-チエニル、3-チエニル、チアゾール-5-イル、チアゾール-2-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、ピラジン-2-イル、2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル、2-(d3-メチル)-2H-テトラゾール-5-イル、1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル、および1-(d3-メチル)-1H-テトラゾール-5-イルから選択される;
R1a、R1b、R2、R3またはYの変数の少なくとも1つは重水素原子を含む)
によって表されるもの、またはその塩、水和物もしくは溶媒和物である。
【0051】
式Aの具体的な態様としては、化合物(式中、
a)R2およびR3の1つまたは両方は重水素原子を含む;
b)R2およびR3のそれぞれは独立して-C(CH3)3、-C(CD3)3、-CH(CH3)2、-CD(CD3)2、-CH2CH2(CH3)2、および-CD2CD2(CD3)2から選択される;
c)R1aおよびR1bの1つまたは両方は重水素原子を含む;
d)R1aおよびR1bのそれぞれは独立して-CH3、-CD3、-CH2CH3、-CD2CD3、-CD2CD2CD3、 および-CH2CH2CH3から選択される;
e)R5はH、P(O)-(OH)2、-CH2-O-P(O)-(OH)2、またはその薬学的に許容され得る塩である;
f)R2は-C(CD3)3、-CD(CD3)2、および-CD2CD2(CD3)2から選択される; または
g)a)〜f)に示される2つ以上のパラメーターが満たされる)
が挙げられる。
【0052】
一態様において、本発明の化合物は、式I:


(式中、
R1aおよびR1bのそれぞれは独立してCH3、CH2D、CHD2、およびCD3から選択される;
R2およびR3のそれぞれは独立して-C(CH3)3であり、1〜9の水素原子は重水素原子で任意に置換される;
R4はH、OHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、
R5はHおよび-(CR6R7-O)n-R8から選択され、
R6およびR7は独立してHおよびC1〜C3アルキルから選択される;
各R8は独立してα-アミノ酸、-C(O)H、-C(O)-(C1〜C7アルキル)から選択され、該C1〜C7アルキルは-P(O)-(OH)2、および-S(O)-OHで任意に置換される;
nはOまたは1である;
Y1aおよびY1bは独立してHおよびDから選択される;
R1a、R1b、R2、R3またはYの変数の少なくとも1つは重水素原子を含む)
によって表されるもの、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0053】
式Iの具体的な態様としては、化合物(式中、
i. R1aおよびR1bのそれぞれが独立してCH3およびCD3から選択される;
ii. R2およびR3のそれぞれが独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される;
iii. R2は-C(CD3)3である;
iv. Y1aおよびY1bは同一である;
v. Y1aおよびY1bのそれぞれは重水素である;
vi. R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択される;
vii. R4およびR5は同時にHである;
viii. 各R6および各R7はHである;
ix. 各R8は独立して(L)-立体配置を有するα-アミノ酸; -C(O)H; -C(O)-(C1〜C3アルキル)(該C1〜C3アルキルはシアノ、ヒドロキシル、カルボキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロヘテロアルキル、アルキルシクロヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールで任意に置換される); -P(O)-(OH)2; -P(O)-(OH)2の塩(カチオンはNa+、Mg2+、またはアンモニウムから選択される); -S(O)-OH; および-S(O)-OHの塩(カチオンはNa+、Mg2+、またはアンモニウムから選択される)から選択される;
x. 各R8は独立してL-セリン; L-リジン; L-チロシン; L-バリン; L-グルタミン酸; L-アスパラギン酸; L-3-ピリジルアラニン; L-ヒスチジン; -C(O)H; -C(O)-(C1〜C3アルキル); -C(O)CH2OCH3; -C(O)CH2CH2OCH3; -C(O)CH2CH2C(O)OH; -C(O)CH2CH2NH2;-C(O)CH2CH2NHCH3; -C(O)CH2CH2N(CH3)2;

;


-P(O)-(OH)2; -P(O)-(OH)2の塩(カチオンはNa+、K+またはCa2+から選択される); -S(O)-OH; および-S(O)-OHの塩(カチオンはNa+、K+またはCa2+から選択される)から選択される;または
xi. i.〜x.の2つ以上の上記パラメーターが満たされる)
が挙げられる。
【0054】
2つ以上の上記のパラメーターを満たす実施態様としては、限定されないが、以下の具体的な態様が挙げられる。
【0055】
1つの詳細な態様において、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択され、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択される。
【0056】
別の詳細な態様において、R2は-C(CD3)3であり、R1aはCD3である。
【0057】
別の詳細な態様において、R2は-C(CD3)3であり、R1aはCD3であり、R1bはCD3である。
【0058】
別の詳細な態様において、Y1aおよびY1bは同一であり(即ち、両方は同時に重水素またはHである)、R1aおよびR1bのいずれかが独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。さらに詳細な態様において、Y1aおよびY1bは同一であり(例えば、両方は重水素である)、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0059】
さらに別の詳細な態様において、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、R1aおよびR1bのいずれかは独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。より詳細な態様において、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0060】
さらに別の詳細な態様において、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、Y1aおよびY1bは同一である。より詳細な態様において、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、Y1aおよびY1bは重水素である。別のより詳細な態様において、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、Y1aおよびY1bは同一であり(即ち、両方は同時に重水素または同時に水素である)、R1aおよびR1bのいずれかは独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して、-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。最も詳細な態様において、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、Y1aおよびY1bは同一であり(即ち、両方は同時に重水素または同時に水素である)、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0061】
さらに別の詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、R1aおよびR1bのいずれかは独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。より詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0062】
さらに別の詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、Y1aおよびY1bは同一である。より詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、Y1aおよびY1bは重水素である。さらにより詳細な態様において、R6およびR7 はそれぞれHであり、Y1aおよびY1bは同一であり(即ち、両方は同時に重水素またはHである)、R1aおよびR1bのいずれかは独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。最も詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、Y1aおよびY1bは同一であり(例えば、両方は重水素である)、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0063】
さらに別の詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択される。より詳細な態様において、R6およびR7 はそれぞれHであり、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、R1aおよびR1bのいずれかは独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。最も詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0064】
さらに別の詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、Y1aおよびY1bは同一である。より詳細な態様において、R6および各R7はそれぞれHであり、R4はHおよび-0-(CR6R7O)n-R8から選択され、Y1aおよびY1bは重水素である。さらにより詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、Y1aおよびY1bは同一であり(即ち、両方は同時に重水素またはHである)、R1aおよびR1bのいずれかは独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。最も詳細な態様において、R6およびR7はそれぞれHであり、R4はHおよび-O-(CR6R7-O)n-R8から選択され、Y1aおよびY1bは同一であり(即ち、両方は同時に重水素またはHである)、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0065】
別の組の態様において、上記の態様のいずれかについて、R8は独立して(L)- 立体配置を有するα-アミノ酸; -C(O)H; -C(O)-(C1〜C3アルキル)(該C1〜C3アルキルは、シアノ、ヒドロキシル、カルボキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロヘテロアルキル、アルキルシクロヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールで任意に置換される); -P(O)-(OH)2; -P(O)-(OH)2の塩(カチオンはNa+、K+、またはCa2+から選択される); -S(O)-OH; および-S(O)-OHの塩(カチオンはNa+、K+、またはCa2+から選択される)から選択される。
【0066】
さらなる組の態様において、上記の態様のいずれかについて、R8は独立してL-セリン; L-リジン; L-チロシン; L-バリン; L-グルタミン酸; L-アスパラギン酸; L-3-ピリジルアラニン; L-ヒスチジン; -C(O)H; -C(O)-(C1〜C3アルキル); -C(O)CH2OCH3; -C(O)CH2CH2OCH3; -C(O)CH2CH2C(O)OH; -C(O)CH2CH2NH2;
-C(O)CH2CH2NHCH3; -C(O)CH2CH2N(CH3)2;



; -P(O)-(OH)2; -P(O)-(OH)2の塩(カチオンはNa、Mg2+、またはアンモニウムから選択される); -S(O)-OH; および-S(O)-OHの塩(カチオンはNa+、Mg2+、またはアンモニウムから選択される)から選択される。
【0067】
さらに別の詳細な態様において、R4およびR5は同時にHであり、R1aおよびR1bのいずれかは独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。より詳細な態様において、R4およびR5は同時にHであり、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0068】
別の詳細な態様において、R4およびR5は同時にHであり、Y1aおよびY1bは同一である。より詳細な態様において、R4およびR5は同時にHであり、Y1aおよびY1bは同時に重水素である。さらにより詳細な態様において、R4およびR5は同時にHであり、Y1aおよびY1bは同一であり(即ち、両方は同時に重水素またはHである)、R1aおよびR1bのいずれかは独立してCH3およびCD3から選択される、またはR2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。最も詳細な態様において、R4およびR5は同時にHであり、Y1aおよびY1bは同一であり(即ち、両方は同時に重水素またはHである)、R1aおよびR1bは独立してCH3およびCD3から選択され、R2およびR3は独立して-C(CH3)3および-C(CD3)3から選択される。
【0069】
さらに別の態様において、化合物は式Ia:


の化合物であり、またはその薬学的に許容され得る塩であり、以下の表1に示される化合物のいずれかから選択される。


【0070】
さらに別の態様において、化合物は式Ib:


(式中、
R1aおよびR1bのそれぞれは独立して-CD3および-CH3から選択される;
R3は-C(CD3)3および-C(CH3)3から選択される;
Y1aおよびY1bは同一であり、HおよびDから選択される)
の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0071】
さらに別の態様において、化合物は式Ic:


(式中、
R1aおよびR1bのそれぞれは独立して-CD3および-CH3から選択される;
R3は-C(CD3)3および-C(CH3)3から選択される;
R5は-P(O)-(OH)2、-CH2-P(O)-(OH)2、または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩である;
Y1aおよびY1bは同一であり、HおよびDから選択される)
によって表されるもの、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0072】
さらに別の態様において、本発明の化合物は、以下:




または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される。
【0073】
さらに別の態様において、本発明の化合物は、以下:


または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される。
【0074】
さらにより具体的な態様において、化合物は化合物114、化合物120、化合物122および化合物131から選択される。
【0075】
別の組の態様において、上記の態様のいずれかにおいて重水素として特定されない任意の原子が天然同位体存在度で存在する。
【0076】
式Iの化合物の合成は、化学者の通常の合成技術によって容易に達成することができる。関連する手順および中間体は、例えば、米国特許第 5,849,911号; PCT国際公開WO 97/46514; Bold, Gら、J Med Chem 1998, 41 :3387; Xu, Zら、Org Process Res Dev 2002, 6:323; および PCT国際公開WO 2006/014282に開示されている。
【0077】
かかる方法は、対応する重水素化物および任意に本明細書に示される化合物を合成するための他の同位体含有試薬および/または中間体を利用して、または化学構造に同位体原子を導入するための当該技術分野で公知の標準合成プロトコルを実施して行うことができる。特定の中間体は、精製(例えば、濾過、蒸留、昇華、結晶化、粉砕、固相抽出、およびクロマトグラフィー)の有り無しで使用することができる。
【0078】
例示的合成
式Iaの化合物を合成するための便利な方法をスキーム1に示す。
【0079】
スキーム1. 式Ia(式中R1a=R1b、R2=R3)の化合物を調製するための一般経路


【0080】
アルデヒドXを市販のt-ブトキシカルボニルヒドラジド(XI)で処理して、BOC-保護ヒドラゾン中間体XIIを得、次に水素または重水素ガスのいずれかを用いて還元し、適切なBOC-保護ヒドラジドXIIIを形成させる。次に、BOC-保護ヒドラジドXIIIを市販のエポキシド(XIV)で処理してXVを得、次に塩酸で脱保護してXVIを得る。O-(1,2-ジヒドロ-2-オキソ-1-ピリジル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)の存在下で、tert-ロイシンXVIIの適切なカルバメート誘導体をXVIで処理して、式Iaの化合物を得る。
【0081】
ディファレンシャル脱保護と共にXIまたはXIVのいずれかに関する異なる保護基の使用は、Zhang, Hら、J Labelled Compounds Radiopharm 2005, 48:1041-1047に開示されているように、対称置換されていない式Iaの化合物の合成を可能にする。この様式において、R1aおよびR1bおよび/またはR2およびR3のための異なる重水素パターンは、以下のスキーム1bおよび1cに示されるようにして、達成することができる。
【0082】
スキーム1b. R1a≠R1b、R2≠R3である場合の一般経路


【0083】
スキーム1c. 種々のR基およびY基を組み込むための一般経路


【0084】
上述のスキーム1および1cに有用な非重水素化アルデヒドXは市販されている。重水素化されたアルデヒドXは、以下のスキーム2に示すようにして、Thompson, AF ら、JACS 1939, 61 :1374-1376またはScott, CAら、Syn Comm 1976, 6:135-139に記載される手順に従って合成される。
【0085】
スキーム2.重水素化中間体Xの調製

【0086】
あるいは、以下のスキーム2bに示すように、非重水素化アルデヒドXをカルボン酸に酸化して、アシルクロライドを介したWeinrebアミドに変換し、LiAlD4で還元して、所望の重水素化アルデヒドを得てもよい。
【0087】
スキーム2b.重水素化中間体Xの代替調製

【0088】
重水素化されたtert-ロイシンXVIIのカルバメート誘導体を、スキーム3〜5に従って製造する。
【0089】
スキーム3.重水素化tert-ロイシン(XIII)の調製経路

【0090】
スキーム3に示すように、tert-ロイシンXXIII(式中、R2および/またはR3は、-C(CD3)3である)は、市販のd9-ピバル酸(XX)から開始して調製されてもよい。XXは、Brainard, RLら、Organometallics 1986, 5:1481-1490に記載されているように、リチウムアルミニウムヒドリドを用いてアルコールXXIに還元される。このアルコールXXIを、多くの温和な条件のいずれかによってアルデヒドXXIIに酸化する(例えば、Herrerias, CIら、Tet Lett 2005, 47: 13-17参照)。Boesten, WHJら、Org Lett 2001, 3:1121-1124によって開示される不斉ストレッカー合成を用いて、アルデヒドXXIIをtert-ロイシンXXIIIに変換する。代替不斉ストレッカー合成は、Davis, FAら、J Org Chem 1996, 61 :440-441によって開示されている。
【0091】
スキーム4.対応するカルバメートへの重水素化tert-ロイシンの変換

【0092】
スキーム4に示されるように、重水素化tert-ロイシンXXVを、米国特許出願公開2005131017に記載されているように適切なクロロメチルホルメートXXVIと反応させ、スキーム1に利用される所望のカルバメート誘導体のtert-ロイシンXVIIを得る。
【0093】
スキーム5.対応するピバルアルデヒド(XXII)への重水素化t-ブチルクロライドの変換

【0094】
スキーム5では、重水素化t-ブチルクロライドを、マグネシウムおよびヨウ素の存在下での無水エーテル中で還流して次に無水ジメチルホルムアミド(DMF)を添加して対応するピバルアルデヒド(XXII)に変換する。ピバルアルデヒド(XXII)を、酢酸溶液中の(R)-フェニルグリシンアミドおよびNaCNと反応させてニトリル(XXIIa)を得る。ニトリル(XXIIa)を硫酸で加水分解し、アミド(XXIIb)を得、次に、炭素についてパラジウムで水素化し、アミド(XXIIc)を得る。アミド(XXIIc)を、塩酸で加水分解して対応するカルボン酸(XXV)を得、次にNaOHの存在下で重水素化メチルクロロホルメートと反応させて重水素化中間体XVIIを得る。
【0095】
多くの新規中間体を使用して、式Aの化合物を調製することができる。従って、本発明は、また、以下:





から選択されるかかる化合物を提供する。
【0096】
特定の合成条件下で、化合物103、104、106、111、113、114、120、121、122、123、129、および131は、少なくとも約75%の「D」として示される各位置での同位体存在度で調製された。他の合成条件下で、化合物103、104、106、111、113、114、120、121、122、123、129、および131は、約95%より大きい「D」として示される各位置での同位体存在度で調製された。
【0097】
式A(式中R5が-P(O)-(OH)2またはその塩である)によって表される本発明の化合物のプロドラッグは、WO 2001000635 Aに概略された手順に従って調製されてもよい。式A(式中R5は-(CR6R7-O)n-R8であり、R6およびR7はHであり、各R8は-P(O)-(OH)2またはその塩である)によって表される本発明のプロドラッグは、Safadi, M ら、Pharmaceutical Research, 1993, 10(9): 1350の手順に従って調製されてもよい。本発明の化合物のプロドラッグを調製する他の適切な方法はPCT国際公開WO 2006/014282に見ることができる。
【0098】
他の態様において、本発明の化合物は、本発明の化合物中の重水素として特定される各位置で、少なくとも52.5%の重水素(deuterium incorporation)、少なくとも60%の重水素、少なくとも67.5%の重水素、少なくとも75%の重水素、少なくとも82.5%の重水素、少なくとも90%の重水素、または少なくとも95%の重水素を含有する。本発明の化合物は、例えば少なくとも100mg、例えば少なくとも200mg、好ましくは少なくとも400mg、より好ましくは少なくとも500mg、任意に10Kgまでの量であってもよい。
【0099】
上記に示される具体的なアプローチおよび化合物は、限定されることを意図しない。本明細書のスキームの化学構造は、同一変数名(即ち、R1、R2、R3、など)によって同定されようともされなくとも、本明細書の化合物式中の対応する位置の化学基定義(部分、原子など)によって本明細書で同一基準で定義される変数を示す。別の化合物の合成における使用のための化合物構造中の化学基の適切さは当業者の知識の範囲内である。本明細書のスキームに明らかに示されていない経路のものなどの、式Iの化合物および合成前駆体を合成するさらなる方法は、化学者の当該技術分野の通常技術の手段の範囲内である。反応条件を最適化する方法、および必要であれば、競合する副生成物を最小限にする方法は、当該技術分野で公知である。本明細書に引用される合成文献の他に、反応スキームおよびプロトコルは、市販の構造検索可能データベースソフトウェア、例えば、SciFinder(登録商標)(CAS division of the American Chemical Society)、STN(登録商標)(CAS division of the American Chemical Society)、CrossFire Beilstein(登録商標)(Elsevier MDL)またはインターネット検索エンジン、例えばGoogle(登録商標)またはキーワードデータベース、例えば米国特許商標局テキストデータベースを使用して当業者によって決定されてもよい。
【0100】
また、本明細書に記載される方法は、本明細書に具体的に記載される工程の前後いずれかに、本明細書の化合物の合成を最終的に可能にするために適切な保護基を付加または除去する工程をさらに含んでもよい。また、様々な合成工程が所望の化合物を得るために代替順番または代替順序で行われてもよい。利用可能な化合物の合成に有用な合成化学転移および保護基方法論(保護および脱保護)は、当該技術分野で公知であり、例えば、Larock R, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); Greene TWら、Protective Groups in Organic Synthesis, 第3版、John Wiley and Sons (1999); Fieser Lら、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); および Paquette L, 編、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)ならびにその改訂版に記載されるものが挙げられる。
【0101】
本発明によって考慮される置換基および変数の組み合わせは、安定化合物の形成をもたらすもののみである。
【0102】
組成物
本発明はまた、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIc(例えば、本明細書の式のいずれかを含む)のいずれかの化合物または該化合物の薬学的に許容され得る塩; および許容され得る担体を含む、発熱物質を含まない組成物を提供する。好ましくは、本発明の組成物は、医薬使用(「医薬組成物」)のために配合され、担体は薬学的に許容され得る担体である。(1つまたは複数の)担体は、製剤の他の成分と適合する意味でおよび医薬に使用される量でそのレシピエントに有害でない薬学的に許容され得る担体の場合に「許容され得る」。
【0103】
本発明の医薬組成物に使用され得る薬学的に許容され得る担体、補助剤およびビヒクルとしては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レチシン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、トリシリケートマグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0104】
必要である場合、医薬組成物中の本発明の化合物の溶解性および生物学的利用能は、当該技術分野で周知の方法によって高められてもよい。1つの方法としては、製剤中の脂質賦形剤の使用が挙げられる。「Oral Lipid-Based Formulations: Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs (Drugs and the Pharmaceutical Sciences)」, David J. Hauss,編 Informa Healthcare, 2007; および「Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery: Basic Principles and Biological Examples」, Kishor M. Wasan, 編 Wiley-Interscience, 2006参照。
【0105】
生物学的利用能を高める別の公知の方法は、ポロキサマー、例えばLUTROLTMおよびPLURONICTM(BASF Corporation)、またはエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのブロックコポリマーを任意に配合した本発明の化合物の不定形形態の使用である。米国特許第7,014,866号; および米国特許公開第20060094744号および第20060079502号参照。
【0106】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、鼻腔、局所(例えば口内および舌下)、肺、膣または非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈および皮内)投与に適切なものを含むものである。特定の態様において、本明細書の式の化合物が、(例えば、経皮パッチまたはイオン導入技術を用いて)経皮投与される。他の製剤は、単位投薬形態、例えば、錠剤、徐放カプセルでおよびリポソーム中に都合よく存在してもよく、製薬の分野で周知の任意の方法によって調製されてもよい。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA (第17版 1985)参照。
【0107】
かかる調製方法は、投与される分子と1つ以上の補助成分を構成する担体などの成分とを合わせる工程を含む。一般的に、組成物は、有効成分と液体担体、リポソームもしくは微細固体担体または両方とを均一および十分に合わせることによって、次に必要であれば生成物を成形することによって調製される。
【0108】
特定の態様において、化合物は経口投与される。経口投与に適切な本発明の組成物は、それぞれが所定量の有効成分を含むカプセル、サシェ、または錠剤;粉末または顆粒;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液;水中油型液体エマルション;油中水型液体エマルション;リポソーム中の充填物などの別々の単位として、あるいはボーラスなどとして存在してもよい。軟化ゼラチンカプセルは、かかる懸濁液を含むために有用である場合があり、化合物の吸収速度を有利に高める場合もある。
【0109】
経口使用のための錠剤の場合に、一般的に使用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムも典型的に添加される。カプセル形態の経口投与のために、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口投与される場合、有効成分は乳化剤および懸濁剤と混合される。所望される場合、特定の甘味剤および/または風味剤および/または着色剤が添加されてもよい。
【0110】
経口投与に適切な組成物としては、風味基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に成分を含むロゼンジ; および不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア中に有効成分を含むトローチ剤(pastille)が挙げられる。
【0111】
非経口投与に適切な組成物としては、抗酸化剤、バッファ、静菌剤および目的のレシピエントの血液で製剤を等張性にする溶質を含み得る水性および非水性滅菌注射溶液; ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または複数用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中に存在してもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加だけを要するフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即席の注射溶液および懸濁液は滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製されてもよい。
【0112】
かかる注射溶液は、例えば滅菌注射可能溶液または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80など)および懸濁剤を用いて当該技術分野で公知の技術に従って調合されてもよい。滅菌注射可能調製物は、また、非毒性で非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用されてもよい許容され得る賦形剤および溶媒は、マンニトール、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌固定油が溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの任意の刺激の強くない固定油が使用されてもよい。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、オリーブ油またはヒマシ油などの薬学的に許容され得る天然油、特にそのポリオキシエチレン化物と同様に、注射物の調製に有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、また、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含んでもよい。
【0113】
本発明の医薬組成物は、直腸投与の坐薬の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、本発明の化合物と、室温で固体であるが直腸温度で液体であり、直腸で溶けて有効成分を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。かかる物質としては、限定されないが、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0114】
本発明の医薬組成物は、鼻腔エアゾールまたは吸入によって投与されてもよい。かかる組成物は医薬製剤の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、生物学的利用能を高める吸収促進剤、炭化水素、および/または当該技術分野で公知の他の可溶化剤または分散剤を使用して生理食塩水中の溶液として調製されてもよい。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されたRabinowitz JD および Zaffaroni AC, 米国特許第6,803,031号参照。
【0115】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が局所適用によって容易に接近可能な領域または器官を伴う場合、特に有用である。皮膚に局所的な局所適用では、医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する適当な軟膏で製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、限定されないが、鉱油、流動石油、ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が挙げられる。代替的に、医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解された活性化合物を含有する適当なローションまたはクリームで製剤化され得る。適当な担体としては、限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられる。本発明の医薬組成物はまた、直腸坐剤製剤によって、または適当な注腸製剤において下側の腸管に局所適用され得る。局所経皮パッチおよびイオン導入投与もまた本発明に含まれる。
【0116】
患者への治療剤の適用は、目的の部位に投与されるような局所であり得る。患者に組成物を目的の部位に提供するために、注射、カテーテル、トロカール、プロジェクタイル、プルロニクゲル、ステント、薬物徐放ポリマーまたは内部への接近を提供する他のデバイスの使用などの種々の技術が使用され得る。
【0117】
したがって、また別の態様によれば、本発明の化合物は、プロテーゼ、人口弁、血管移植片、ステント、またはカテーテルなどの埋め込み可能な医療用デバイスをコーティングするための組成物に混合され得る。適当なコーティングおよびコーティングされた埋め込み可能なデバイスの一般的な作製は、当該技術分野で公知であり、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に例示されている。コーティングは、典型的に、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテート、およびその混合物などの生体適合性ポリマー材料である。コーティングは、組成物に制御放出特性を付与するため、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはその組合せの適当なトップコートで任意にさらに被覆され得る。侵襲性デバイスのためのコーティングは、本明細書で使用される用語の薬学的に許容され得る担体、補助剤またはビヒクルの定義に含まれる。
【0118】
別の態様によれば、本発明は、前記デバイスを上記のコーティング組成物と接触させる工程を含む、埋め込み可能な医療用デバイスのコーティング方法を提供する。デバイスのコーティングは哺乳動物への埋め込み前に行なわれることは当業者に明白である。
【0119】
別の態様によれば、本発明は、前記薬物放出デバイスを本発明の化合物または組成物と接触させる工程を含む、埋め込み可能な薬物放出デバイスの含浸方法を提供する。埋め込み可能な薬物放出デバイスとしては、限定されないが、生分解性ポリマーカプセルまたは弾丸カプセル(bullet)、非分解性拡散性ポリマーカプセルおよび生分解性ポリマーオブラートが挙げられる。
【0120】
別の態様によれば、本発明は、本発明の化合物または該化合物を含む組成物で、前記化合物が治療上活性であるようにコーティングされた埋め込み可能な医療用デバイスを提供する。
【0121】
別の態様によれば、本発明は、本発明の化合物が薬物放出デバイスから放出され、治療上活性であるように本発明の化合物または該化合物を含む組成物で含浸されているか、またはそれを含む埋め込み可能な薬物放出デバイスを提供する。
【0122】
患者から取り出したため器官または組織に接近可能である場合、かかる器官または組織が本発明の組成物を含む媒体中に浸され得るか、または本発明の組成物が器官上に塗布され得るか、または本発明の組成物が任意の他の簡便な様式で適用され得る。
【0123】
別の態様において、本発明の組成物は、さらに第二治療剤を含む。一態様において、第二治療剤は、1つ以上の更なる本発明の化合物である。特定の態様において、かかる組成物中に存在する2つ以上の本発明の化合物のそれぞれは、他のすべてのものと同位体富化の位置が異なる。一般に、かかる組成物は、3、4、5種類またはそれ以上の異なる本発明の化合物を含む。
【0124】
別の態様において、第二治療剤は、アタザナビルと同じ作用機構を有する化合物とともに投与されると有利な性質を有することが知られたまたは該性質を示す任意の化合物または治療剤から選択され得る。かかる薬剤としては、アタザナビルと組み合わせて有用であると示されたもの、例えば限定されないが、PCT公開公報WO 2003020206、WO 2005058248、WO 2006060731およびWO 2005027855に記載のものが挙げられる。
【0125】
好ましくは、第二治療剤は、HIV感染の治療または予防に有用な薬剤(すなわち、抗レトロウイルス剤)である。
【0126】
一態様において、第二治療剤は、他の抗レトロウイルス剤、例えば限定されないが、第二HIVプロテアーゼインヒビター(例えば、アンプレナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、インジナビル、サキナビル、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、もしくはネルフィナビル)、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(「NNRTI」)(例えば、エトラビリン、デラビルジン、エファビレンツ、ネビラピン、もしくはリルピビリン)、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素インヒビター(「NRTI」)(例えば、ジドブジン、ラミブジン、エムトリシタビン、テノホビルジソプロキシルフマレート、ジダノシン、スタブジン、アバカビル、ラシビル、アムドキソビル、アプリシタビン、エンテカビル、アデフォビルもしくはエルブシタビン)、ウイルス侵入インヒビター(例えば、エンフビルチド(enfuvirtide)、マラビロク、ビクリビロク、PRO 140、もしくはTNX-355)、インテグラーゼインヒビター(例えば、ラルテグラビル、もしくはエルビテグラビル)、免疫系抗レトロウイルス剤(例えば、イムニチン(immunitin)、プロロイキン、レミューン(remune)、BAY 50-4798もしくはIR103)、ウイルス成熟インヒビター(例えば、ベビリマト)、細胞インヒビター(例えば、ドロキシアもしくはヒドロキシ尿素)、または上記の2つ以上の組合せから選択される。
【0127】
より具体的な態様において、第二治療剤は、リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、テノホビルジソプロキシル、メシル酸ネルフィナビル、アンプレナビル、ラルテグラビル、サキナビル、ロピナビル、ネビラピン、エムトリシタビン、アバカビル、ラミブジン、ジドブジン、マラビロク、スタブジン、ダルナビル、ホスアンプレナビル、ビクリビロク、前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、およびその組合せから選択される。
【0128】
さらにより具体的な態様において、第二治療剤は、リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、ラルテグラビル、テノホビルジソプロキシル、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、およびその組合せから選択される。別の具体的な態様において、本発明の組成物は、式A、I、Ia、Ib、またはIcのいずれかの化合物、およびこの段落で上記に示した2〜3種類の第二治療剤を含む。さらにより具体的な態様において、本発明の組成物は、式A、I、Ia、Ib、またはIcのいずれかの化合物、およびこの段落で上記に示した2種類の第二治療剤を含む。
【0129】
別の態様において、本発明は、本発明の化合物および上記のいずれかの1種類以上の第二治療剤の個々の投薬形態を提供し、ここで、該化合物および第二治療剤は互いに関連している。用語「互いに関連する」は、本明細書で使用される場合、個々の投薬形態が一緒にパッケージされているか、または個々の投薬形態が一緒に販売され、投与されること(互いに24時間未満以内、連続もしくは同時に)を意図することが容易に明白であるように他の様式で互いに結び付くことを意味する。
【0130】
また別の態様において、本発明は、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、アタザナビルを同等の試験被検体に同等モル量のアタザナビルを含む医薬組成物で投与し、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物と同じ投与計画で投与した場合に試験被検体への投与が、アタザナビルの血清最終排泄相半減期より大きい化合物の血清最終排泄相半減期をもたらす医薬組成物を提供する。他の態様において、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物の血清最終排泄相半減期は、同じ投与計画で投与される同等モルのアタザナビル組成物によってもたらされるアタザナビルの血清最終排泄相半減期の少なくとも110%、120%、130%、140%、150%または160%またはそれ以上である。より具体的な態様において、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物は、単回用量で投与される。
【0131】
関連する態様において、本発明は、式A、I、Ia、IbもしくはIcのいずれかの化合物またはその薬学的に許容され得る塩の有効量を含み、試験被検体への単回用量の組成物の投与後の化合物の血清最終排泄相半減期が5.0時間より長い、6.0時間より長い、7.0時間より長いまたは8.0時間より長い医薬組成物を提供する。
【0132】
別の態様において、本発明は、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、試験被検体への投与が、アタザナビルを同等の試験被検体に同等モルの医薬組成物で投与し、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物と同じ投与計画で投与した場合にアタザナビルのAUC0〜τより大きい化合物のAUC0〜τ(式中、τ=投与期間)をもたらす医薬組成物を提供する。他の態様において、本発明の組成物によってもたらされるAUC0〜τは、同じ投与計画で投与される同等モルのアタザナビル組成物によってもたらされるAUC0〜τの少なくとも120%、130%、140%、150%、160%またはそれ以上である。より具体的な態様において、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物は、1日1回投与される。
【0133】
別の態様において、本発明は、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、試験被検体への経口投与が、アタザナビルを同等の試験被検体に同等モルの医薬組成物で経口投与し、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物と同じ投与計画で投与した場合にアタザナビルの最大血清濃度より大きい化合物の最大血清濃度(Cmax)をもたらす医薬組成物を提供する。関連する態様において、本発明の組成物の経口投与によって式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物がもたらす最大血清濃度は、同じ投与計画で投与される同等モルのアタザナビル組成物の経口投与によってもたらされるアタザナビルの最大血清濃度の少なくとも120%、125%、130%、135%またはそれ以上である。より具体的な態様において、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物は、1日1回投与される。
【0134】
別の態様において、本発明は、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、試験被検体への経口投与が、アタザナビルを同等の試験被検体に同等モルの医薬組成物で経口投与し、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物と同じ投与計画で投与した場合にアタザナビルの最小血清濃度より大きい化合物の最小血清濃度(Cmin)をもたらす医薬組成物を提供する。関連する態様において、本発明の組成物の経口投与によって式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物がもたらす最小血清濃度は、同じ投与計画で投与される同等モルのアタザナビル組成物の経口投与によってもたらされるアタザナビルの最小血清濃度の少なくとも125%、150%、175%、200%またはそれ以上である。より具体的な態様において、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物は、1日1回投与される。
【0135】
本発明の化合物はまた、アタザナビルと比べて特定の代謝に高い抵抗性を示す。したがって、別の態様において、本発明は、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、試験被検体への経口投与が、同等の試験被検体に同等モルの医薬組成物でアタザナビルを経口投与し、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物と同じ投与計画で投与した後のアタザナビルの血清クリアランス速度より小さい経口投与後の化合物の血清クリアランス速度をもたらす医薬組成物を提供する。他の態様において、本発明の組成物の経口投与後の化合物の血清クリアランス速度は、同じ投与計画で投与される同等モルのアタザナビル組成物の経口投与後のアタザナビルの血清クリアランス速度の90%未満、80%未満、70%未満、または60%未満である。より具体的な態様において、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物は、1日1回投与される。
【0136】
関連する態様において、本発明は、150mgの式A、I、Ia、IbもしくはIcのいずれかの化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含み、チンパンジーへの単回用量の組成物の経口投与後の化合物の血清クリアランス速度が90ml/h/kg未満、80ml/h/kg未満、75ml/h/kg未満、または70ml/h/kg未満である医薬組成物を提供する。
【0137】
別の関連する態様において、本発明は、50mgの式A、I、Ia、IbもしくはIcのいずれかの化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含み、チンパンジーへの単回用量の組成物の経口投与後の化合物の血清クリアランス速度が350/h/kg未満、325/h/kg未満、300/h/kg未満、または275/h/kg未満である医薬組成物を提供する。
【0138】
さらに別の関連する態様において、本発明は、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、試験被検体への経口投与が、同等の試験被検体に同等モルの医薬組成物でアタザナビルを経口投与し、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物と同じ投与計画で投与した後24時間でそのまま排出されるアタザナビルの量より多い投与後24時間でそのまま排出される化合物の量をもたらす医薬組成物を提供する。他の態様において、本発明の組成物の経口投与後24時間でそのまま排出される式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物の量は、同じ投与計画で投与される同等モルのアタザナビル組成物の経口投与後24時間でそのまま排出されるアタザナビルの量の140%より多い、160%より多い、180%より多い、200%より多い、または250%より多い、またはそれ以上である。より具体的な態様において、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物は、1日1回投与される。
【0139】
また別の態様において、本発明は、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、試験被検体への投与が、活性成分のモルベースで式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物の量より多い量のアタザナビルを含む医薬組成物でアタザナビルを同等の試験被検体に投与し、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物と同じ投与計画で投与した場合にアタザナビルとa)類似したAUC0〜12、b)類似したCmax、またはc)類似したCmin(投与期間内での最低濃度)のいずれかをもたらす医薬組成物を提供する。他の態様において、有効量の式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物は、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物と同じ投与計画で投与した場合、類似したAUC0〜12、類似したCminおよび/または類似したCmaxをもたらすのに必要とされるアタザナビルの量の80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下またはそれより少ない。より具体的な態様において、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物は、1日1回投与される。
【0140】
別の態様において、本発明は、250mg〜275mgの式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、リトナビルの共投与の非存在下での試験被検体への1日1回の投与が、275〜625ng/血漿1mLのCminおよび/または925〜1425ng/血漿1mLの定常状態での平均血漿濃度(「Css」はまた、AUC0〜τ(式中、τは投与期間である)と定義される)をもたらす医薬組成物を提供する。
【0141】
別の態様において、本発明は、275mg〜300mgの式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、試験被検体への1日1回の投与が、300〜675ng/血漿1mLのCminおよび/または1000〜1550ng/血漿1mLのCssをもたらす医薬組成物を提供する。
【0142】
別の態様において、本発明は、300mg〜325mgの式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、試験被検体への1日1回の投与が、350〜750ng/血漿1mLのCminおよび/または1100〜1675ng/血漿1mLのCssをもたらす医薬組成物を提供する。
【0143】
別の態様において、本発明は、325mg〜350mgの式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、リトナビルの共投与の非存在下での試験被検体への1日1回の投与が、375〜800ng/血漿1mLのCminおよび/または1200〜1800ng/血漿1mLのCssをもたらす医薬組成物を提供する。
【0144】
別の態様において、本発明は、350mg〜375mgの式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、リトナビルの共投与の非存在下での試験被検体への1日1回の投与が、400〜850ng/血漿1mLのCminおよび/または1300〜1925ng/血漿1mLのCssをもたらす医薬組成物を提供する。
【0145】
別の態様において、本発明は、375mg〜400mgの式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、リトナビルの共投与の非存在下での試験被検体への1日1回の投与が、425〜900ng/血漿1mLのCminおよび/または1400〜2050ng/血漿1mLのCssをもたらす医薬組成物を提供する。
【0146】
別の態様において、本発明は、400mg〜425mgの式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、リトナビルの共投与の非存在下での試験被検体への1日1回の投与が、450〜975ng/血漿1mLのCminおよび/または1500〜2175ng/血漿1mLのCSSをもたらす医薬組成物を提供する。
【0147】
別の態様において、本発明は、425mg〜450mgの式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物を含み、リトナビルの共投与の非存在下での試験被検体への1日1回の投与が、500〜1025ng/血漿1mLのCminおよび/または1575〜2300ng/血漿1mLのCssをもたらす医薬組成物を提供する。
【0148】
上記の態様のそれぞれにおいて、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物、および/またはアタザナビルの薬学的に許容され得る塩が、遊離塩基形態の代わりに使用され得る。
【0149】
より具体的な態様において、上記の組成物のそれぞれにおいて、化合物は式Iの化合物である。さらにより具体的な態様において、上記の組成物のそれぞれにおいて、化合物は、式Ibの化合物である。さらにより具体的な態様において、上記の組成物のそれぞれにおいて、化合物は、化合物114、化合物120、化合物122、および化合物131から選択される。
【0150】
用語「同等モル量」は、本明細書で使用される場合、活性成分のモルベースで、第2の組成物中に存在する量と同じ第1の組成物中に存在する量を意味する。
【0151】
「試験被検体」は、任意の哺乳動物、好ましくはチンパンジーまたはヒトである。
【0152】
「同等の試験被検体」は、本明細書において、試験被検体と同じ種および性別であり、試験被検体と比べ、試験被検体および同等の被検体の両方に等量のアタザナビルの投与後に試験される薬物動態学パラメーターにおいて10%以下の変動性を示すものと定義する。当業者には、変動性を低下させる方法の1つがアタザナビルとの本発明の化合物の共投与であることが認識されよう。
【0153】
本発明の医薬組成物において、本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、適正な投与計画で投与された場合、標的の障害を(治療的または予防的に)処置するのに充分な量をいう。例えば、有効量は、治療される障害の重症度、持続期間または進行を低下または改善するか、治療される障害の進行を妨げるか、治療される障害の後退を引き起こすか、または別の治療の予防効果もしくは治療効果(1つまたは複数)を増強もしくは改善するのに充分なものである。好ましくは、化合物は、組成物中に0.1〜50wt%、より好ましくは1〜30 wt%、最も好ましくは5〜20wt%の量で存在する。
【0154】
動物およびヒトへの投薬量(体表面1平方メートルあたりのミリグラムに基づく)の相互関係は、Freireich et al.,(1966)Cancer Chemother. Rep 50:219に記載されている。体表面積は、患者の身長と体重から概算で測定され得る。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,N. Y.,1970,537参照。
【0155】
一態様において、本発明の化合物の有効量は、治療あたり約200〜約800mgの範囲であり得る。より具体的な態様において、該範囲は、約250mg〜約600mg、または約250mg〜約400mg、または約300mg〜約500mg、または最も具体的には約325mg〜約450mgである。治療剤は、典型的に1日1〜2回投与される。また、有効用量は、当業者によって認識されるように、治療される疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の性別、年齢および一般健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療剤との共使用の可能性、ならびに治療する医師の判断に応じて変わる。例えば、有効用量を選択するための手引きは、アタザナビルの処方情報の参照によって決定され得る。
【0156】
第二治療剤を含む医薬組成物では、第二治療剤の有効量は、まさに該薬剤を用いる単独療法計画に通常使用される投薬量の約20%〜100%である。好ましくは、有効量は、通常の単独療法投薬量の約70%〜100%である。これらの第二治療剤の通常の単独療法投薬量は当該技術分野で周知である。例えば、Wells et al.編,Pharmacotherapy Handbook,第2版,Appleton and Lange,Stamford,Conn. (2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,デラックス版,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif. (2000)を参照、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0157】
上記の第二治療剤のいくつかは、本発明の化合物と相乗的に作用することが予想される。その場合、第二治療剤および/または本発明の化合物の有効投薬量を、単独療法で必要とされる量から減らすことが可能になる。これは、第二治療剤または本発明の化合物いずれかの毒性副作用の最小化、有効性の相乗的改善、投与もしくは使用の容易性の改善および/または化合物調製もしくは製剤の全体的費用の削減の利点を有する。
【0158】
治療方法
別の態様において、本発明は、患者に、有効量の式A、I、Ia、IbもしくはIcのいずれかの化合物または式A、I、Ia、IbもしくはIcのいずれかの化合物を含む薬学的に許容され得る組成物を投与する工程を含む、治療を必要とする患者におけるHIV感染の治療方法を提供する。
【0159】
本明細書に記載した方法はまた、患者が記載の特定の治療を必要とすると同定されたものを含む。かかる治療を必要とする患者を同定することは、患者または健康管理専門家の判断におけるものであり得、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験もしくは診断方法によって測定可能)であり得る。
【0160】
別の態様において、上記の任意の治療方法は、前記患者に1つ以上の第二治療剤を共投与するさらなる工程を含む。第二治療剤の選択は、アタザナビルとの共投与に有用なことが公知の任意の第二治療剤から行なわれ得る。第二治療剤の選択はまた、治療される特定の疾患または状態に依存している。本発明の方法に使用され得る第二治療剤の例は、本発明の化合物および第二治療剤を含む併用組成物における使用のための上記のものである。
【0161】
特に、本発明の併用療法は、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物および第二HIVプロテアーゼインヒビター(例えば、アンプレナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、インジナビル、サキナビル、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、もしくはネルフィナビル)、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(「NNRTI」)(例えば、エトラビリン、デラビルジン、エファビレンツ、ネビラピン、もしくはリルピビリン)、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素インヒビター(「NRTI」)(例えば、ジドブジン、ラミブジン、エムトリシタビン、ジドブジン、テノホビルジソプロキシルフマレート、ジダノシン、スタブジン、アバカビル、ラシビル、アムドキソビル、アプリシタビン、もしくはエルブシタビン)ウイルス侵入インヒビター(例えば、エンフビルチド、マラビロク、ビクリビロク、PRO 140、もしくはTNX-355)、インテグラーゼインヒビター(例えば、ラルテグラビル、もしくはエルビテグラビル)、免疫系抗レトロウイルス剤(例えば、イムニチン、プロロイキン、レミューン、BAY 50-4798もしくはIR103)、ウイルス成熟インヒビター(例えば、ベビリマト)、細胞インヒビター(例えば、ドロキシアもしくはヒドロキシ尿素)、または上記の2種類以上の組合せを共投与する工程を含む。
【0162】
より具体的な態様において、本発明の併用療法は、治療を必要とする患者においてHIV感染を治療するために、式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物およびリトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、テノホビルジソプロキシル、ネルフィナビルメシレート、アンプレナビル、ラルテグラビル、サキナビル、ロピナビル、ネビラピン、エムトリシタビン、アバカビル、ラミブジン、ジドブジン、マラビロク、スタブジン、ダルナビル、ホスアンプレナビル、ビクリビロクから選択される第二治療剤、前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、およびその組合せを共投与する工程を含む。
【0163】
さらにより具体的な態様において、第二治療剤は、リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、ラルテグラビル、テノホビルジソプロキシル、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、およびその組合せから選択される。別の具体的な態様において、該方法は、式A、I、Ia、Ib、またはIcのいずれかの化合物、およびこの段落で上記に示した2〜3種類の第二治療剤を共投与する工程を含む。さらにより具体的な態様において、該方法は、式A、I、Ia、Ib、またはIcのいずれかの化合物、およびこの段落で上記に示した2種類の第二治療剤を共投与する工程を含む。
【0164】
本明細書において使用される用語「共投与される」は、第二治療剤が、本発明の化合物と一緒に単独投薬形態(本発明の化合物および上記の第二治療剤を含む本発明の組成物など)の一部として、または別々の多投薬形態として投与され得ることを意味する。代替的に、さらなる薬剤は、本発明の化合物の投与の前、同時または後に投与され得る。かかる併用処置において、本発明の化合物および第二治療剤(1つまたは複数)は両方とも従来の方法によって投与される。患者への本発明の化合物および第二治療剤の両方を含む本発明の組成物の投与は、治療過程中の別の時点での前記患者への該治療剤、任意の他の第二治療剤または任意の本発明の化合物の別々の投与を除外しない。
【0165】
これらの第二治療剤の有効量は当業者に周知であり、投与の手引きは、本明細書で言及した特許および公開特許出願、ならびにWells et al.編,Pharmacotherapy Handbook,第2版,Appleton and Lange,Stamford,Conn. (2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif. (2000)、ならびに他の医学の教科書に見られ得る。しかしながら、第二治療剤の最適な有効量範囲を決定することは充分当業者の能力の範囲である。
【0166】
未治療患者において、HIV-1感染の治療のためのレイアタッツ(Reyataz)(登録商標)(硫酸アタザナビル)の推奨用量は、食事とともに1日1回400mg である。テノホビルと共投与される場合、推奨用量はレイアタッツ 300mgおよびリトナビル100mgである。治療を受けた患者では、HIV-1感染の治療のためのレイアタッツの推奨用量は、食事とともに1日1回100mgのリトナビルとともに300mgである。本明細書に開示した動物データに基づき、ある種の本発明の化合物は、325mg〜450mgの範囲の1日1回の用量後、ヒトにおいて、100mgのリトナビルで効果促進した300mg用量のアタザナビルの1日1回の投与で達成されるCminおよび/またはAUCと同等のCminおよび/またはAUCが達成されるという利点を有することが予測される。したがって、本発明の一態様は、治療を必要とする被検体に本発明の化合物を含む組成物を325mg〜450mgの範囲の1日1回の用量で投与することによるHIV感染の治療方法を提供する。一態様において、かかる組成物は、リトナビルの共投与なしで投与される。
【0167】
別の態様は、250mg〜400mgの範囲の1日1回の用量で本発明の化合物を含む組成物を投与することによるHIV感染の治療方法に関する。
【0168】
本発明の一態様において、第二治療剤が被検体に投与される場合、本発明の化合物の有効量は、第二治療剤が投与されない場合に有効である量より少ない。別の態様において、第二治療剤の有効量は、本発明の化合物が投与されない場合に有効である量より少ない。このようにして、いずれかの薬剤の高用量に関連する好ましくない副作用が最小化され得る。他のあり得る利点(例えば、限定されないが、投与計画の改善および/または薬物コストの削減)は、当業者に自明であろう。
【0169】
また別の局面において、本発明は、単一の組成物または個々の投薬形態のいずれかとしての、患者における上記の疾患、障害または症状の治療または予防のための医薬の製造における式Iの化合物単独または1つ以上の上記の第二治療剤と一緒の使用を提供する。本発明の別の局面は、患者における本明細書に記載の疾患、障害またはその症状の治療または予防における使用のための式A、I、Ia、IbまたはIcのいずれかの化合物である。さらなる局面において、本発明の化合物は、治療剤などの薬に使用され得る。任意のこれらの使用において、該化合物は、好ましくはリトナビルの共投与なしで投与される。
【0170】
診断用の方法およびキット
本発明の化合物および組成物はまた、溶液または血漿などの生物学的試料中のアタザナビルの濃度を測定する方法、アタザナビルの代謝を検査する方法および他の解析試験における試薬として有用である。
【0171】
一態様によれば、本発明は、
a)公知濃度の式Aの化合物を生物学的試料の溶液に添加する工程;
b)溶液または生物学的試料を、アタザナビルを式Aの化合物と識別する測定デバイスに供する工程;
c)検出された式Aの化合物の量を、生物学的試料または溶液に添加された式Aの化合物の公知濃度と相関させるために測定デバイスを較正する工程;および
d)前記較正された測定デバイスで生物学的試料中のアタザナビルの量を測定する工程;および
e)検出された量と式Aの化合物について得られた濃度との相関を用いて試料の溶液中のアタザナビルの濃度を測定する工程
を含む、溶液または生物学的試料中のアタザナビルの濃度の測定方法を提供する。
【0172】
アタザナビルを対応する式Aの化合物と識別し得る測定デバイスには、互いに同位体存在度のみが異なる2つの化合物を識別し得る任意の測定デバイスが含まれる。例示的な測定デバイスとしては、質量分析計、NMR分光計、またはIR分光計が挙げられる。
【0173】
別の態様において、本発明は、式Aの化合物を代謝酵素源とある期間接触させる工程、および該期間後に、式Aの化合物と式Iの化合物の代謝産物の量を比較する工程を含む、式Aの化合物の代謝安定性の評価方法を提供する。
【0174】
関連する態様において、本発明は、患者における式Aの化合物の投与後の式Aの化合物の代謝安定性の評価方法を提供する。この方法は、被検体への式Aの化合物の投与後のある期間で、患者から血清、尿または便試料を得る工程;および血清、尿または便試料中の式Aの化合物と式Aの化合物の代謝産物の量を比較する工程を含む。
【0175】
本発明はまた、HIV感染を治療するための使用のためのキットを提供する。これらのキットは、(a)式A、I、Ia、IbもしくはIcのいずれかの化合物またはその塩を含む医薬組成物、ここで、前記医薬組成物は容器内に存在する;および(b)HIV感染を治療するための医薬組成物の使用方法を記載した使用説明書を含む。
【0176】
容器は、前記医薬組成物を保持し得る任意の槽または他の密閉もしくは密閉可能な装置であり得る。例としては、ボトル、アンプル、各分割部もしくはチャンバが単回用量の前記組成物を含む分割もしくは多チャンバホルダーボトル、各分割部が単回用量の前記組成物を含む分割ホイルパケット、または単回用量の前記組成物を分配するディスペンサーが挙げられる。容器は、薬学的に許容され得る材料、例えば、紙またはダンボール、ガラスもしくはプラスチックのボトルもしくは瓶、再封止可能なバッグ(例えば、異なる容器への配置のための錠剤の「レフィル」を保持するため)、または治療スケジュールに従うパックの押し出しのための個々の用量を有するブリスターパックで作製された当該技術分野で公知の任意の従来の形状または形態であり得る。使用される容器は、関与する厳密な投薬形態に依存し得、例えば、従来のダンボールは液体懸濁液を保持するのに一般的に使用されない。単独投薬形態の販売のために1つより多くの容器が、単一のパッケージにおいて一緒に使用され得ることは可能である。例えば、錠剤がボトルに含まれ得、これが箱に含まれる。一態様において、容器はブリスターパックである。
【0177】
本発明のキットはまた、医薬組成物の単位用量を投与するまたは計り分けるためのデバイスを含み得る。かかるデバイスは、前記組成物が吸入可能な組成物である場合は吸入器;前記組成物が注射用組成物である場合はシリンジおよび針;前記組成物が経口液体組成物である場合は容量目盛り有り無しのシリンジ、スプーン、ポンプもしくは槽;またはキット内に存在する組成物の投薬製剤に適切な任意の他の計量もしくは送達デバイスを含み得る。
【0178】
ある態様において、本発明のキットは、独立した容器槽に、本発明の化合物との共投与の使用のための上記のものの1つなどの第二治療剤を含む医薬組成物を含み得る。
【0179】
次に、本発明を一般的に記載し、本発明は、本発明の一部の局面および態様の単なる例示の目的のために含まれ、いかなる方法で本発明を制限することを意図しない以下の実施例を参照することによってより容易に理解される。
【実施例】
【0180】
実施例1. 1,14-ジ(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物122)の合成

【0181】
化合物122を上記のスキーム1に従って作製した。合成の各工程の詳細を以下に示し、一般方法Aと称する。
【0182】
tert-ブチル2-(4-(ピリジン-2-イル)ベンジリデン)ヒドラジンカルボキシレート(XII、Y1a=H)の合成
エタノール(125mL)中4-(ピリジン-2-イル)ベンズアルデヒドX (17.7g、96.6mmol)およびtert-ブチルカルバゼート(12.2g、92.3mmol)の混合物を窒素下で還流して4時間維持した。反応混合物を40℃に冷却し、氷(60g)を添加した。得られた混合物を20分間攪拌した。沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄し、真空炉(60℃)内で乾燥し、生成物XII(式中、Y1a=H)を得た(25.0g、91.1%)。
【0183】
tert-ブチル2-(4-(ピリジン-2-イル)ベンジル)ヒドラジンカルボキシレート(XIII、Y1a=Y1b=H)の合成
メタノール(350mL)中XII、Y1a=H (23.15g、77.85mmol)の溶液を、活性炭(2.3g、50%湿潤)上の20%パラジウムで処理し、10psiで4時間水素化した。反応混合物をセライトによって濾過し、濾過ケークをメタノールで洗浄し、溶媒を回転式エバポレーターで除去した。残渣をヘプタンで再結晶化し、真空炉(40℃)内で乾燥し、XIII(式中、Y1a=Y1b=H)を得た(22.48g、96.5%)。
【0184】
tert-ブチル2-((2S,3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチル)-2-(4-(ピリジン-2-イル)ベンジル)ヒドラジンカルボキシレート(XV、Y1a=Y1b=H)の合成
tert-ブチル(S)-1-((R)-オキシラン-2-イル)-2-フェニルエチルカルバメートXIV(1.18g、4.48mmol)、XIII、Y1a=Y1b=H (1.23g、4.11mmol)およびイソプロパノール(15mL)の混合物を窒素下で還流して一晩維持した。溶媒を回転式エバポレーターで除去し、8:2ジクロロメタン/酢酸エチルを用いたシリカ(100g)上でのクロマトグラフィーによって残渣を精製し、生成物XV(式中、Y1a=Y1b=H)を得た(1.74g、75%)。
【0185】
(2S,3S)-3-アミノ-4-フェニル-1-(1-(4-(ピリジン-2-イル)ベンジル)ヒドラジニル)ブタン-2-オール(XVI、Y1a=Y1b=H)の合成
ジクロロメタン(30mL)中XV、Y1a=Y1b=H (2.84g、5.05mmol)の溶液を窒素下、室温で攪拌し、ジオキサン(60mL)中4N HClで処理した。室温で20分間攪拌を継続した。充分なメタノールを添加して形成された沈殿物を溶解し、室温で2時間攪拌を継続した。溶媒を回転式エバポレーターで除去し、残渣を真空炉(60℃)内で乾燥し、XVI(式中、Y1a=Y1b=H)(3.27g、5.05mmol、完全に変換されたと仮定)を多重塩酸塩として得た。
【0186】
1,14-ジ(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(122)の合成
ジクロロメタン(40mL)中(S)-2-(メトキシカルボニルアミノ)-3,3-ジメチルブタン酸XVII-d12(R1a= R1b=CD3、R2=R3=C(CD3)3;0.90g、4.44mmol;スキーム5および実施例13に従って作製)およびO-(1,2-ジヒドロ-2-オキソ-1-ピリジル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)(1.32g、4.44mmol)の混合物を、ジイソプロピルエチルアミン(1.16g、8.88mmol)で処理し、窒素下、室温で30分間攪拌した。この溶液を、XVI、Y1a=Y1b= H、塩酸塩(1.15g、1.78mmol)の氷冷懸濁液に添加し、得られた溶液を室温で一晩攪拌した。反応混合物をジクロロメタン(140mL)で希釈し、水(2×100mL)および飽和炭酸水素ナトリウム溶液(150mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。溶媒を回転式エバポレーターで除去し、1:1ヘプタン/酢酸エチル中2%エタノール(4.5L)を用いたシリカ(120g)上でのクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。溶媒を純粋画分から除去し、残渣(0.57g)を酢酸エチル(10mL)中に入れ、60℃で20分間攪拌し、MTBE(60mL)で希釈した。冷却後、沈殿物を濾過によって回収し、MTBEで洗浄し、真空炉(55℃)内で乾燥し、化合物122(0.40g)を得た。クロマトグラフィーから得られたあまり純粋でない画分から、さらに0.57gの純粋でない物質が得られた。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ2.54 (d,1H),2.87-2.95 (m,3H),3.57 (d,2H),3.75 (d,1H),3.91-4.08 (m,3H),4.81 (bs,1H),5.15-5.30 (m,2H),6.38-6.43 (m,2H),7.14-7.23 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.41 (d,2H),7.68-7.76 (m,2H),7.94 (d,2H),8.68 (d,1H)。HPLC(方法:20mm C18-RPカラム-勾配法2〜95%アセトニトリル + 0.1%ギ酸を3.3分間、95%アセトニトリルで1.7分間保持;波長:254nm):保持時間:3.22分間. MS (M+H+):729.6.
【0187】
実施例2. 1,14-ジメチル(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物106)の合成

【0188】
化合物106を上記の一般方法Aに従い、上記のスキーム1に従って作製した。
【0189】
1,14-ジメチル(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(106)の合成
化合物106を、上記の一般方法Aによって、(2S,3S)-3-アミノ-4-フェニル-1-(1-(4-(ピリジン-2-イル)ベンジル)ヒドラジニル)ブタン-2-オール(XVI、Y1a=Y1b= H、塩酸塩)および(S)-2-(メトキシカルボニルアミノ)-3,3-ジメチルブタン酸-d9(XVII-d9、R1a= R1b=CH3、R2=R3=C(CD3)3;スキーム5に従って作製)から作製した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ2.54 (d,1H),2.84-2.89 (m,1H),2.93 (d,2H),3.57 (d,2H),3.63 (s,3H),3.66 (s,3H),3.75 (d,1H),3.91-4.08 (m,3H),4.81 (bs,1H),5.15-5.32 (m,2H),6.36-6.45 (m,2H),7.18-7.24 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.41 (d,2H),7.68-7.76 (m,2H),7.94 (d,2H),8.68 (d,1H)。HPLC(方法:20mm C18-RPカラム-勾配法2〜95%ACN + 0.1%ギ酸を3.3分間、95%ACNで1.7分間保持;波長:254nm):保持時間:3.23分間. MS (M+H+):723.6.
【0190】
実施例3. 1,14-ジ(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス(1,1-ジメチルエチル)-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物103)の合成

【0191】
化合物103を上記の一般方法Aに従い、上記のスキーム1に従って作製した。
【0192】
1,14-ジ(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス(1,1-ジメチルエチル)-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(103)の合成
化合物103を、一般方法Aによって、(2S,3S)-3-アミノ-4-フェニル-1-(1-(4-(ピリジン-2-イル)ベンジル)ヒドラジニル)ブタン-2-オール(XVI、Y1a=Y1b= H、塩酸塩)および公知化合物(S)-2-(メトキシカルボニルアミノ)-3,3-ジメチルブタン酸-d3(XVII-d3、R1a= R1b=CH3、R2=R3=C(CD3)3)(Zhang,Huiping et al.,Journal of Labelled Compounds & Radiopharmaceuticals,2005,48(14),1041-1047)から作製した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ 0.79 (s,9H),0.87 (s,9H),2.52 (d,1H),2.82-2.95 (m,3H),3.58 (d,2H),3.77 (d,1H),3.91-4.08 (m,3H),4.81 (s,1H),5.15-5.32 (m,2H),6.35-6.45 (m,2H),7.16-7.24 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.41 (d,2H),7.68-7.76 (m,2H),7.94 (d,2H),8.68 (d,1H)。HPLC(方法:20mm C18-RPカラム-勾配法2〜95%ACN + 0.1%ギ酸を3.3分間、95%ACNで1.7分間保持;波長:254nm):保持時間:3.24分間. MS (M+H+):7.11.3.
【0193】
実施例4. 1,14-ジ(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル-d2]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物131)の合成

【0194】
化合物131を上記の一般方法Aに従い、上記のスキーム1に従って作製した。重水素ガス(Cambridge Isotopes、99.8原子%D)、MeOD (Aldrich、99.5原子%D)、iPrOD (Aldrich、98原子%D)および塩化重水素(Aldrich、99原子%D)をこの合成に使用した。重水素化アルデヒドXを、LiAlD4(Cambridge Isotopes、98原子%D)を用いてスキーム2bに従って作製した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ2.71 (dd,2H),2.94 (d,2H),3.56 (d,2H),3.77 (d,1H),4.02-4.05 (m,1H),4.83 (s,1H),5.19-5.29 (m,2H),6.40-6.47 (m,2H),7.20-7.23 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.41 (d,2H),7.69-7.76 (m,2H),7.95 (d,2H),8.69 (d,1H)。HPLC(方法:20mm C18-RPカラム-勾配法2〜95%ACN + 0.1%ギ酸を3.3分間、95%ACNで1.7分間保持;波長:254nm):保持時間:3.22分間;純度:99.2%. MS (M+H+):731.7. .
【0195】
実施例5. 1,14-ジ(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3-(1,1-ジメチルエチル)-12-[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物120)の合成

【0196】
化合物120を上記のスキーム1bに従って作製した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ0.78 (s,9H),2.72 (dd,2H),2.94 (d,2H),3.58-3.63 (m,2H),3.78 (d,1H),3.92-4.09 (m,3H),4.88 (s,1H),5.28 (dd,2H),6.46 (d,1H),6.73 (s,1H),7.14-7.25 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.42 (d,2H),7.68-7.78 (m,2H),7.94 (d,2H),8.68 (d,1H)。HPLC(方法:20mm C18-RPカラム-勾配法2〜95%ACN + 0.1%ギ酸を3.3分間、95%ACNで1.7分間保持;波長:254nm):保持時間:3.23分間;純度:99.6%. MS (M+H+):720.6.
【0197】
実施例6. 1,14-ジ(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3-[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-12-(1,1-ジメチルエチル)-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物121)の合成

【0198】
化合物121を上記のスキーム1cに従って作製した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ0.86 (s,9H),2.72 (dd,2H),2.94 (d,2H),3.60-3.63 (m,2H),3.80 (d,1H),3.92-4.09 (m,3H),4.89 (s,1H),5.30 (dd,2H),6.43 (d,1H),6.74 (s,1H),7.14-7.26 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.42 (d,2H),7.68-7.79 (m,2H),7.93 (d,2H),8.68 (d,1H)。HPLC(方法:20mm C18-RPカラム-勾配法2〜95%ACN + 0.1%ギ酸を3.3分間、95%ACNで1.7分間保持;波長:254nm):保持時間:3.22分間;純度:99.4%. MS (M+H+):720.6.
【0199】
実施例7. 1,14-ジメチル(3S,8S,9S,12S)-3-(1,1-ジメチルエチル)-12-[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物104)の合成

【0200】
化合物104を上記のスキーム1cに従って作製した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ0.78 (s,9H),2.70 (dd,2H),2.94 (d,2H),3.59-3.66 (m,8H),3.78 (d,1H),3.92-4.09 (m,3H),4.86 (s,1H),5.27 (dd,2H),6.44 (d,1H),6.63 (s,1H),7.14-7.26 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.42 (d,2H),7.68-7.79 (m,2H),7.94 (d,2H),8.69 (d,1H)。HPLC(方法:20mm C18-RPカラム-勾配法2〜95%ACN + 0.1%ギ酸を3.3分間、95%ACNで1.7分間保持;波長:254nm):保持時間:3.23分間;純度:99.8%. MS (M+H+):714.6.
【0201】
実施例8. 1,14-ジメチル(3S,8S,9S,12S)-3,12-ビス[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル-d2]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物113)の合成

【0202】
化合物113を上記の一般方法Aに従い、上記のスキーム1に従って作製した。重水素ガス(Cambridge Isotopes、99.8原子%D)、MeOD (Aldrich、99.5原子%D)、iPrOD (Aldrich、98原子%D)および塩化重水素(Aldrich、99原子%D)をこの合成に使用した。重水素化アルデヒドXを、LiAlD4(Cambridge Isotopes、98原子%D)を用いてスキーム2bに従って作製した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ2.69 (dd,2H),2.94 (d,2H),3.56-3.59 (m,2H),3.64 (s,3H),3.67 (s,3H),3.77 (d,1H),4.02-4.05 (m,1H),4.84 (s,1H),5.18-5.32 (m,2H),6.40-6.45 (m,2H),7.14-7.26 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.41 (d,2H),7.61-7.80 (m,2H),7.95 (d,2H),8.69 (d,1H)。HPLC(方法:20mm C18-RPカラム-勾配法2〜95%ACN + 0.1%ギ酸を3.3分間、95%ACNで1.7分間保持;波長:254nm):保持時間:3.25分間;純度:99.4%. MS (M+H+):725.4.
【0203】
実施例9. 1-メチル-14-(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3-(1,1-ジメチルエチル)-12-[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物114)の合成

【0204】
化合物114を上記のスキーム1cに従って作製した。XXXIIIへのXXXIIの変換には、Pd/Cの代わりにPd(OH)2を使用した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ0.78 (s,9H),2.70 (dd,2H),2.93 (d,2H),3.59-3.63 (m,5H),3.78 (d,1H),3.92-4.04 (m,3H),4.84 (s,1H),5.30 (dd,2H),6.44 (d,1H),6.60 (s,1H),7.20-7.26 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.41 (d,2H),7.70-7.79 (m,2H),7.94 (d,2H),8.68 (d,1H)。MS (M+H+):717.4.
【0205】
実施例10. 1-メチル-14-(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3-(1,1-ジメチルエチル)-12-[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル-d2]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物123)の合成

【0206】
化合物123を上記のスキーム1cに従って作製した。重水素ガス(Med-Tech、98原子%D)、EtOD (Aldrich、99.5原子%D)、MeOD (Aldrich、99.5原子%D)、iPrOD (CDN、99.1原子%D)および塩化重水素(Aldrich、99原子%D)をこの合成に使用した。XXXIIIへのXXXIIの変換には、Pd/Cの代わりにPd(OH)2を使用した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ0.79 (s,9H),2.72 (dd,2H),2.93 (d,2H),3.56-3.63 (m,5H),3.77 (d,1H),4.04 (d,1H),4.81 (s,1H),5.30 (dd,2H),6.41 (d,1H),6.51 (s,1H),7.14-7.26 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.41 (d,2H),7.69-7.76 (m,2H),7.94 (d,2H),8.68 (d,1H)。MS (M+H+):719.5.
【0207】
実施例11. 1,14-ジメチル(3S,8S,9S,12S)-3-(1,1-ジメチルエチル)-12-[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル-d2]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物111)の合成

【0208】
化合物111を上記のスキーム1cに従って作製した。重水素ガス(Med-Tech、98原子%D)、EtOD (Aldrich、99.5原子%D)、MeOD (Aldrich、99.5原子%D)、iPrOD (CDN、99.1原子%D)および塩化重水素(Aldrich、99原子%D)をこの合成に使用した。XXXIIIへのXXXIIの変換には、Pd/Cの代わりにPd(OH)2を使用した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ0.79 (s,9H),2.74 (dd,2H),2.93 (d,2H),3.58-3.66 (m,8H),3.77 (d,1H),4.03 (d,1H),4.82 (s,1H),5.30 (dd,2H),6.41 (d,1H),6.51 (s,1H),7.20-7.26 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.41 (d,2H),7.70-7.76 (m,2H),7.94 (d,2H),8.68 (d,1H)。MS (M+H+):716.5.
【0209】
実施例12. 1,14-ジ(メチル-d3)(3S,8S,9S,12S)-3-(1,1-ジメチルエチル)-12-[(1,1-ジメチルエチル)-d9]-8-ヒドロキシ-4,11-ジオキソ-9-(フェニルメチル)-6-[[4-(2-ピリジニル)フェニル]メチル-d2]-2,5,6,10,13-ペンタアザテトラデカンジオエート(化合物129)の合成

【0210】
化合物129を上記のスキーム1cに従って作製した。重水素ガス(Med-Tech、98原子%D)、EtOD (Aldrich、99.5原子%D)、MeOD (Aldrich、99.5原子%D)、iPrOD (CDN、99.1原子%D)および塩化重水素(Aldrich、99原子%D)をこの合成に使用した。XXXIIIへのXXXIIの変換には、Pd/Cの代わりにPd(OH)2を使用した。1H-NMR (300 MHz,CDCl3):δ0.79 (s,9H),2.71 (dd,2H),2.93 (d,2H),3.52-3.61 (m,2H),3.76 (d,1H),3.99-4.05 (m,1H),4.82 (s,1H),5.19-5.21 (m,2H),6.40-6.47 (m,2H),7.20-7.26 (m,6H,CDCl3によって一部不明瞭),7.42 (d,2H),7.69-7.76 (m,2H),7.95 (d,2H),8.69 (d,1H)。MS (M+H+):722.5.
【0211】
実施例13. (S)-2-(d3-メトキシ-カルボニルアミノ)-3,3-d9-ジメチルブタン酸(XVII-d12)の合成
中間体XVII-d12(R2= R3 =C(CD3)3;R1a=R1b=CD3を上記のスキーム5に従って作製した。合成の詳細を以下に示す。
【0212】
d9-ピバルアルデヒド(XXII、R2=R3=C(CD3)3)の合成
メカニカルスターラー、還流冷却器、滴下漏斗および温度計を取り付けた3-Lの4ッ口丸底フラスコに、数個の小さいヨウ素の結晶を入れ、次いで、マグネシウム削り屑(24.7g、1.029mol)を入れた。ヨウ素が気化し始めるまで、フラスコの底部を熱線銃で加熱し、次いで冷却させながら無水エーテル中塩化t-ブチル-d9(100.0g、1.029mol、Cambridge Isotopes、99原子%D)の溶液を滴下漏斗に入れた。エーテル(3〜5mL)中塩化t-ブチル-d9の溶液を乾燥マグネシウムに直接添加した。さらなる無水エーテル(1L)および数個の小さいヨウ素の結晶を添加し、得られた混合物を0.5時間加熱して反応を開始させた。エーテル中塩化t-ブチル-d9の残りの溶液を、攪拌しながら、1滴/秒より速くない速度で添加した。ハロゲン化物-エーテルの添加の間、混合物を還流し、外部冷却は適用しなかった。次いで、ほぼすべてのマグネシウムが消失するまで反応混合物を数時間還流加熱した。混合物を-20℃に冷却し、エーテル(100mL)中無水DMF(73.0g、1.0mol)の溶液を、反応の温度が-15℃を超えないような速度で35分間かけて添加した。次いで、無水DMF(73.0g、1.0mol)の第2の溶液を-8℃で急速に添加した。さらに5分後、ハイドロキノン(0.5g)を添加し、攪拌を停止し、冷却浴を除去し、混合物を窒素下、常温で一晩放置した。混合物を5℃に冷却し、4M HCl水溶液(600mL)を分割して添加し、反応をクエンチした。混合物を水(400mL)で希釈し、層を分離させた。水層をエーテル(3×200mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し、濾過した。濾液を窒素雰囲気圧下で分別蒸留に供し、大部分のエーテルを除去した。残渣を小さいフラスコに移し、分別蒸留を継続し、所望の化合物XXII(R2=R3=C(CD3)3)(39.5g、40%収率)を65〜75℃での無色油状物として回収した。化合物XXII(R2=R3=C(CD3)3)を窒素下で冷凍庫に保存した。
【0213】
(R)-2-((S)-1-シアノ-2,2-d9-ジメチルプロピルアミノ)-2-フェニルアセトアミド(XXIIa、R2=R3=C(CD3)3)の合成
水(400mL)中(R)-フェニルグリシンアミド(60.7g、400mmol)の攪拌懸濁液に、化合物XXII(R2=R3=C(CD3)3)(39.5g、415mmol)を室温で添加した。同時に、30%NaCN水溶液(68.8g、420mmol)および氷酢酸(25.4g、423mmol)を30分で添加し、それにより反応温度を34℃に上げた。混合物を30℃で2時間攪拌した後、70℃で20時間攪拌した。30℃に冷却後、生成物を濾過によって単離した。固体を水(500mL) で洗浄し、50℃で真空乾燥し、所望の化合物XXIIa(R2=R3=C(CD3)3)(90.0g、88%収率)を、[α]D=-298°(c=1.0、CHCl3)の黄褐色固体として得た。
【0214】
(S)-2-((R)-2-アミノ-2-オキソ-1-フェニルエチルアミノ)-3,3-d9-ジメチルブタンアミド(XXIIb、R2/3=C(CD3)3)の合成
ジクロロメタン(500mL)中化合物XXIIa(R2=R3=C(CD3)3)(64.2g、252.4mmol)の溶液を氷浴の冷却下、15〜20℃で別の漏斗によって濃硫酸(96%、350mL)に添加した。得られた混合物を室温で1時間攪拌した。混合物を氷上に注入し、NH4OH溶液によって注意深くpH=9に中和した。混合物をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥し、濾過し、真空濃縮し、所望の化合物XXIIb(R2=R3=C(CD3)3)(55.0g、80%収率)を[α]D=-140°(c=1.0、CHCl3)の黄色泡状物として得た。
【0215】
(S)-2-アミノ-3,3-d9-ジメチルブタンアミド(XXIIc、R2/3=C(CD3)3)の合成
エタノール(1.2L)中化合物XXIIb(R2=R3=C(CD3)3)(77.0g、282.7mmol)、10%Pd/C(約50%水、20g)および酢酸(50mL)の混合物を、LCMSによって反応が終了したことが示されるまで、室温で数日間、30psiでの水素化に供した。混合物をセライトによって濾過し、EtOAcで洗浄した。濾液を真空濃縮後、残渣を水(1L)で希釈し、1M NaOH溶液でpH=9に塩基性化した。混合物をジクロロメタンで抽出し、水層を半分の容量まで真空濃縮し、固体NaClで飽和させ、THFで抽出した。合わせた抽出物を乾燥し、濾過し、真空濃縮した。残渣にトルエンを追加(chase)し、残留している水を除去した後、ジクロロメタンで粉砕し、所望の化合物XXIIc(R2=R3=C(CD3)3)(38.0g、96%収率)を白色固体として得た。
【0216】
(S)-2-アミノ-3,3-d9-ジメチルブタン酸塩酸塩(XXV、R2/3=C(CD3)3)の合成
6M HCl水溶液(1.5L)中化合物XXIIc(R2=R3=C(CD3)3)(31.0g、222.6mmol)の混合物を、24時間還流加熱した。混合物を真空濃縮し、粗生成物を得た。固体を水(500mL)に再溶解し、EtOAc (2×200mL) で洗浄し、先の工程からの不純物を除去した。次いで、水層を真空濃縮し、トルエンを追加し、50℃で真空乾燥し、所望の化合物(S)-2-アミノ-3,3-ジメチルブタン酸-d9塩酸塩(XXV、R2=R3=C(CD3)3)(33.6g、85%収率)のHCl塩を白色固体として得た。
【0217】
(S)-2-(d3-メトキシカルボニルアミノ)-3,3-d9-ジメチルブタン酸(XVII-d12)の合成
ジオキサン(12.5mL)および2M NaOH 溶液(60mL)の混合物中化合物XXV(R2=R3=C(CD3)3)(4.42g、25.0mmol)の溶液に、内部温度を50℃以下に維持して、メチルクロロホルメート-d3(5.0g、50.0mmol、Cambridge Isotopes、99原子%D)を滴下した。得られた混合物を60℃に加温し、一晩攪拌し、次いで室温に冷却した。混合物をジクロロメタンで洗浄し、水層を濃HClでpH=2に酸性化し、EtOAcで抽出した。合わせた抽出物を乾燥し、濾過し、真空濃縮し、所望の化合物(S)-2-(メトキシカルボニルアミノ)-3,3-ジメチルブタン酸-d12(XVII-d12)(3.8g)を黄色油状物として得た。
【0218】
実施例14. (S)-2-(メトキシカルボニルアミノ)-3,3-d9-ジメチルブタン酸(XVII-d9)の合成
中間体XVII-d9(R2=R3=C(CD3)3;R1a=R1b=CH3)を、スキーム5およびXVII-d12の合成について上記の方法に従って、最終工程でメチルクロロホルメート-d3の代わりにメチルクロロホルメートを用いて作製した。
【0219】
実施例15. (S)-2-(d3-メトキシカルボニルアミノ)-3,3-ジメチルブタン酸(XVII-d3)
中間体XVII-d3(R2=R3=C(CH3)3;R1a=R1b=CD3)は、文献(Zhang,H et al,J Label Comp Radiopharm 2005,48(14):1041-1047)において公知であり、メチルクロロホルメート-d3(Cambridge Isotopes、99原子%D)から作製した。
【0220】
実施例16. 代謝安定性の評価
一部のインビトロ肝臓代謝試験が、以前に、その全体が本明細書に援用される以下の各参考文献:Obach,RS,Drug Metab Disp,1999,27:1350;Houston,JB et al.,Drug Metab Rev,1997,29:891;Houston,JB,Biochem Pharmacol,1994,47:1469;Iwatsubo,T et al.,Pharmacol Ther,1997,73:147;およびLave,T,et al.,Pharm Res,1997,14:152に記載されている。
【0221】
ミクロソームアッセイ
ヒト肝臓ミクロソーム(20mg/mL、50名の個体のプール)をXenotech LLC(Lenexa,KS)から入手した。インキュベーション混合物は以下のようにして調製される。試験化合物103、106、122およびアタザナビルのストック溶液(10mM)溶液をDMSO中で調製した。10mMストック溶液をアセトニトリル(ACN)中で1mMに希釈した。20mg/mL肝臓ミクロソームを3mM MgCl2を含有する0.1Mのリン酸カリウムバッファー、pH7.4中で0.625mg/mLに希釈した。1mMの試験化合物を、希釈したミクロソームに添加し、1.25μMの試験化合物を含む混合物を得た。ミクロソーム-試験化合物の混合物を2mLの96ウェル深ウェルポリプロピレンプレートのウェルに3重で添加した。プレートを37℃に加温した後、予備加温した、3mM MgCl2を含有する0.1Mリン酸カリウムバッファー、pH7.4中NADPHの添加によって反応を開始した。最終反応混合物組成物は、
肝臓ミクロソーム 0.5mg/mL
NADPH 2mM
リン酸カリウム、pH7.4 100mM
塩化マグネシウム 3mM
試験化合物 1.0μM
を含んだ。
【0222】
反応混合物を37℃でインキュベートし、0、3、7、12、20および30分のときに50μLの等分量を取り出し、内部標準を含む50μLの氷冷ACNを含む96ウェルプレートの浅いウェルに添加し、反応を停止させた。プレートを-20℃で30分間で保存した後、100μLの水をプレートのウェルに添加した後、遠心分離して沈殿タンパク質をペレット化した。上清みを別の96ウェルプレートに移し、Applied Biosystems API 4000 質量分析計を用いたLC-MS/MSによって残留している親物質の量について解析した。
【0223】
試験化合物のインビトロt1/2を、式:インビトロt1/2=0.693/k(式中、k=-[残留している親物質の%(ln)対インキュベーション時間の線形回帰の傾き]を使用し、残留している親物質の%(ln)対インキュベーション時間の関係の線形回帰の傾きから計算した。データ解析はマイクロソフトエクセルソフトウェアを用いて行なった。
【0224】
結果を図1および以下の表2に示す。
【0225】

【0226】
アッセイ条件下において、試験化合物103、106および122はすべて、アタザナビルと比べて増大した半減期を示した。化合物106および122は、アタザナビルと比べて最大の差を示し、それぞれ、ほぼ40%と67%の半減期の増大を示す。
【0227】
アタザナビルならびに化合物103、104、106、111、114、120、121、122、123および131を用いて上記のアッセイを繰返した。結果を図2および3ならびに以下の表3に示す。

【0228】
アッセイ条件下において、化合物104、106、111、114、120、122、123および131はすべて、アタザナビルと比べて≧24%の増大した半減期を示した。
【0229】
実施例17. 薬物動態特性
本発明の化合物の薬物動態特性を、ラットおよびチンパンジーの両方において経口投与および静脈内投与の両方を用いて試験した。
【0230】
ラット薬物動態学
化合物122およびアタザナビルを、それぞれ10%DMI、15%EtOHおよび35%PGを2mg/mLまで含む5%グルコース溶液に溶解した。次いで、静脈内投与および経口投与について、各化合物(pH=5〜6)に対して1mg/mLの最終濃度となるように両者を1:1で混合することにより組合せ用量を作製した。
【0231】
雄Sprague-Dawleyラット(体重:170g〜235g)をこの試験に使用した。ラットに、化合物122(2mg/kg)、アタザナビル(2mg/kg)または化合物122とアタザナビルの1:1の組合せ(各1mg/kg)のいずれかを経口または静脈内のいずれかで投与した。投与前ならびに投与の0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8、10、12および24時間後に、眼窩後静脈から血液試料(300μL)を採取した。血液試料をヘパリン処理エッペンドルフチューブ(蒸発させる)内に入れ、次いで、8000rpmで6分間遠心分離した。100μLの等分量の血漿をきれいなエッペンドルフチューブに移し、バイオ解析まで投与製剤とともに-20℃で保存した。バイオ解析のため、血漿を解凍し、これに20μLのメタノールおよび500μLの50ng/mlの内部標準溶液(メタノール中ケチアピン)を添加した。試料をボルテックスし、15,000rpmで5分間遠心分離し、上清みをガラス製自動試料採取バイアルに移した。
【0232】
血漿試料の解析は、高速液体クロマトグラフィー/質量分析(HPLC/MS/MS)法を用いて行なった。LCシステムは、定組成ポンプ(1100シリーズ)、自動試料採取装置(1100シリーズ)および脱気装置(1100シリーズ)を備えたAgilent (Agilent Technologies Inc. USA)液体クロマトグラフを含んでいた。質量分析解析は、ESIインターフェースを有するAB Inc (Canada)製のAPI3000 (3連の四重極)装置を用いて行なった。データ取得および制御システムは、ABI Inc.製のAnalyst 1.4ソフトウェアを用いて作製した。化合物122およびアタザナビルの静脈内共投与後、アタザナビルは血中からより急速に消失した。化合物122と比べたアタザナビルの加速された減少は、IV投与の1〜2時間後に始まった。
【0233】
静脈内注射後の半減期およびAUCを以下の表4に示す。化合物122は、静脈内注射後、半減期で10.7%の増大およびAUCで6.0%の増大を示した。
【0234】

【0235】
化合物122およびアタザナビルの経口共投与により、2つの化合物間の薬物動態において、さらにより顕著な差が生じた。表5に示すように、化合物122は、経口共投与後、アタザナビルと比べて有意なCmaxの増大を示した。経口共投与後の2つの化合物のCmax、半減期およびAUCを以下の表に示す。化合物122は、ラットにおいて2つの化合物の経口共投与後、アタザナビルと比べて、半減期で43%の増大、Cmaxで67%の増大、およびAUCで81%の増大を示した。
【0236】

【0237】
チンパンジー薬物動態学
実験A:アタザナビルならびに化合物114、120および122のそれぞれの4mg/mL溶液を、D5W中10%DMI(ジメチルイソソルビド)、15%EtOH、35%PGにおいて調製した。具体的には、各化合物について、240mgの化合物を、6mLのDMI、9mLのEtOHおよび21mLのPGから構成された溶液に溶解した。化合物が充分溶解したら、24mLのD5Wを添加し、溶液を混合した。これにより、各化合物について4mg/mLの60mLの溶液が得られた。
【0238】
次いで、55mLの各薬物溶液を合わせ、0.2μmフィルターを用いて混合物を滅菌濾過する。これにより、220mLの1:1:1:1の混合物アタザナビル:化合物114:化合物120:化合物122が得られた。溶液中の各薬物の最終濃度は1mg/mLであった。各動物は、IV経路またはPO経路のいずれかによって50mLのこの溶液を受けた。
【0239】
4匹のチンパンジー(2匹の雄および2匹の雌)をこの試験に使用し、化合物溶液の投与前に一晩絶食させた。投与前、動物をケタミンおよび/またはテラゾールで鎮静化させた。静脈内投与は、30分間にわたるIV注入によって行なった。
【0240】
0(注入前)、15分、29.5分(注入終了直前)、次いで、注入を終了して6、15、30、および45分間、ならびに1、2、4、6、8、10、12、24時間後に、抗凝固薬としてヘパリンナトリウムを入れたバキュテナーチューブ内にほぼ4.5mLの血液を採取した。類似した手順を用いて、経口投与後に血液を採取し、試料は、0(投与前)、投与の15および30分後ならびに1、1.5、2、4、6、8、10、12、24時間後に採取した。試料収集後、バキュテナーチューブを手で数回振り、充分な混合を確実にした。収集時から1時間以内に血液試料を湿った氷上に直接置き、遠心分離した。遠心分離後、解析まで、得られた血漿を-70℃で凍結保存した。結果を図4および5ならびに表6および7に要約する。
【0241】
静脈内共投与後のアタザナビルに対する本発明の化合物の半減期の増大の割合を以下の表6に示す。化合物120、122、および114は、チンパンジーにおいて共投与した場合にアタザナビルよりも有意に長い半減期を有した。
【0242】



【0243】
静脈内または経口投与の24時間後に尿中にそのままで検出された化合物120、122、および114の濃度ng/mLを表7に要約する。表7はまた、アタザナビルに対する試験された本発明の各化合物の比を示す。アタザナビルと比べて、尿中の非代謝試験化合物の濃度は高く、アタザナビルと比べて遅い試験化合物の代謝速度を示す。
【0244】

【0245】
実験B:用量はアタザナビルならびに化合物114および120のそれぞれを150mg経口とし、ビヒクルを10パーセントエタノール、2.5パーセントクエン酸中40パーセントポリプロピルグリコールとしたこと以外は実験Aと同じ。経口共投与後の化合物のCmax、Cmin、半減期、AUC、およびクリアランス(CL、mL/分/kg)を以下の表8および9ならびに図4および5に示す。化合物114および120は、チンパンジーにおいて共投与した場合にアタザナビルよりも有意に長い半減期、Cmax、CminおよびAUCを有し、遅いクリアランス速度を有した。
【0246】

【0247】
経口投与の24時間後に尿中にそのままで検出された投与化合物の濃度ng/mLを表9に要約する。アタザナビルと比べて、尿中の非代謝化合物120および114の濃度は高く、試験化合物の代謝速度が遅いことを示す。
【0248】

【0249】
実施例18. HIV抗ウイルス活性
本発明の化合物のHIV抗ウイルス活性を、HIV-1に感染させたCEM-SS細胞において試験した。抗ウイルスアッセイにおいて使用する前に、T-75フラスコ内で、10%熱不活化ウシ胎児血清、2mmol/L L-グルタミン、100 U/mL ペニシリンおよび100 flg/mL ストレプトマイシンを添加したRPMI 1640培地中でCEM-SS細胞を継代培養した。アッセイの前日、感染時に指数増殖期であることを確実にするため、細胞を1:2に分割した。血球計およびトリパンブルー染色排除を用いて全細胞および成育能の定量を行なった。細胞成育能は、アッセイに利用する細胞では95%より大きかった。細胞を組織培養培地中に5×104細胞/mLで再懸濁し、薬物含有マイクロタイタープレートに50μLの容量で添加した。
【0250】
アッセイに使用したウイルスは、リンパ球向性ウイルス株HIV-IRFであった。ウイルスはNIH AIDS Research and Reference Reagent Programから入手し、ストックウイルスプールはCEM-SS細胞において作製した。予備滴定した等分量のウイルスを冷凍庫(-80℃)から取り出し、生物学的安全キャビネット内でゆっくり室温に解凍した。50μLの容量で各ウェルに添加されたウイルスの量が、感染6日後に85〜95%の細胞殺傷が測定される量となるようにウイルスを組織培養培地中に再懸濁して希釈した。
【0251】
各プレートは、細胞対照ウェル(細胞のみ)、ウイルス対照ウェル(細胞+ウイルス)、化合物毒性ウェル(細胞+化合物のみ)、化合物比色対照ウェル(化合物のみ)ならびに実験ウェル(化合物+細胞+ウイルス)を含む。0.1μMの化合物から始めて化合物あたり11個の半log希釈物を用いて試料を3重で試験した。化合物104、120および122を試験し、アタザナビルおよびAZTも試験した。また、すべての化合物は、2mg/mL α1酸糖タンパク質(AAGP)、10mg/mL ヒト血清アルブミン(HSA)またはAAGP+HASの組合せの存在下で試験した。
【0252】
5%CO2のインキュベーター内で37℃でインキュベーション後、試験プレートをテトラゾリウム色素XTT(2,3-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5スルホフェニル)-5-[(フェニルアミノ)カルボニル]-2H-テトラゾリウムヒドロキシド)で染色した。XTT-テトラゾリウムは、代謝的に活性な細胞のミトコンドリア酵素によって可溶性ホルマザン生成物に代謝され、抗HIV試験物質によるHIV誘導性細胞殺傷の阻害の迅速な定量的解析が可能となる。XTT溶液は、RPMI 1640中1mg/mLのストックとして毎日調製した。メト硫酸フェナジン(PMS)溶液は、PBS中に0.15mg/mLで調製し、暗所に-20℃で保存した。XTT/PMSストックは、XTT溶液1mLあたり40μLのPMSを添加することにより、使用直前に調製した。50マイクロリットルのXTT/PMSをプレートの各ウェルに添加し、プレートを37℃で4時間再度インキュベートした。接着性プレートシーラーでプレートを密閉し、静かに振るか、または数回反転させて可溶性ホルマザン生成物を混合させ、Molecu1ar Devices Vmax プレートリーダーを用いて450/650nmにおいて分光光度法によりプレートを読み取った。
【0253】
Softmax Pro 4.6ソフトウェアから生データを収集し、線形曲線フィット計算による解析のためにマイクロソフトエクセル2003スプレッドシートに移した。アッセイの結果を以下の表10に示す。
【0254】

【0255】
化合物122および120は、細胞培養培地中でEC50値がそれぞれ0.4nM未満および0.5nM未満であり、0.5mg/mL AAGPの存在下で、それぞれ2nMおよび3nMに5〜6倍増加した。化合物104は、細胞培養培地中でEC5O値が0.3nM未満であり、AAGPの存在下では2nMに7倍より大きく増加した。10mg/mL HSAの存在下では、化合物104、120および122は、EC50値がそれぞれ0.8nM、1nMおよび0.9nMであり、これは、細胞培養培地単独よりも2倍〜3倍超ほど、効力が小さかった。抗ウイルス活性は、AAGP+HSAの存在下の化合物122および120について8〜15倍減少し、EC5O値はそれぞれ6nMおよび4nMであった。化合物104は、AAGP+HSAの存在下でEC50値が4nMであり、これは、細胞培養培地単独よりも13倍超ほど、効力が小さかった。AAGPの単独またはHSAとの組合せでの存在により、化合物104、120および122で、最も有意なタンパク質結合および抗ウイルス活性の低下がもたらされた。これらの血清タンパク質の影響それぞれは、アタザナビルで観察されるものと類似している。このアッセイで試験した本発明の各化合物は、アタザナビルと少なくとも同等に効力があった。
【0256】
さらなる説明がなくても、当業者は、先の説明および例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を作製および利用し、特許請求の範囲の方法を実施することができると考えられる。前述の記載および実施例は単に一部の好ましい態様の詳細な説明を提示することを理解されたい。当業者には、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の変形物および同等物が作製され得ることが自明である。上記に記載または引用したすべての特許、雑誌論文および他の文献は、参照により本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ib:


(式中、
R1aおよびR1bのそれぞれは独立して-CD3および-CH3から選択される;
R3は-C(CD3)3および-C(CH3)3から選択される;
Y1aおよびY1bは同一であり、HおよびDから選択される)
の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
化合物が




または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化合物が化合物114、化合物120、化合物122および化合物131または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項4】


から選択される化合物または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩。
【請求項5】
重水素として特定されない任意の原子が天然同位体存在度で存在する、請求項1〜4いずれかに記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の化合物、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項7】
化合物が化合物131、化合物122、化合物114、化合物106、化合物104、化合物120、および化合物123または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
第二HIVプロテアーゼインヒビター、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素インヒビター、ウイルス侵入インヒビター、インテグラーゼインヒビター、免疫系抗レトロウイルス剤、ウイルス成熟インヒビター、細胞インヒビター、または上記の2種類以上の組み合わせから選択される第二治療剤をさらに含む、請求項6または7記載の組成物。
【請求項9】
第二治療剤が、リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、テノホビルジソプロキシル、メシル酸ネルフィナビル、アンプレナビル、ラルテグラビルカリウム、サキナビル、ロピナビル、ネビラピン、エムトリシタビン、アバカビル、ラミブジン、ジドブジン、マラビロク、スタブジン、ダルナビル、ホスアンプレナビル、ビクリビロク、前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、およびその組み合わせから選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
第二治療剤が、リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、ラルテグラビル、テノホビルジソプロキシル、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、およびその組み合わせから選択される、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、ラルテグラビル、テノホビルジソプロキシル、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、および前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から独立して選択される2〜3種類のさらなる第二治療剤を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、ラルテグラビル、テノホビルジソプロキシル、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、および前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から独立して選択される2種類のさらなる第二薬剤を含む、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
患者のHIV感染の治療における使用のための、請求項1〜5いずれかに記載の化合物または請求項6〜12いずれかに記載の組成物。
【請求項14】
第二HIVプロテアーゼインヒビター、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素インヒビター、ウイルス侵入インヒビター、インテグラーゼインヒビター、免疫系抗レトロウイルス剤、ウイルス成熟インヒビター、細胞インヒビター、または上記の2つ以上の組み合わせから選択される第二治療剤と共に投与するための、請求項13記載の化合物または組成物。
【請求項15】
第二治療剤が、リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、テノホビルジソプロキシル、メシル酸ネルフィナビル、アンプレナビル、ラルテグラビルカリウム、サキナビル、ロピナビル、ネビラピン、エムトリシタビン、アバカビル、ラミブジン、ジドブジン、マラビロク、スタブジン、ダルナビル、ホスアンプレナビル、ビクリビロク、前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、およびその組み合わせから選択される、請求項14記載の化合物または組成物。
【請求項16】
第二治療剤が、リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、ラルテグラビル、テノホビルジソプロキシル、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、およびその組み合わせから選択される、請求項15記載の化合物または組成物。
【請求項17】
リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、ラルテグラビル、テノホビルジソプロキシル、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、および前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から独立して選択される2〜3種類のさらなる第二治療剤と共に投与するための、請求項13記載の化合物または組成物。
【請求項18】
リトナビル、エファビレンツ、ジダノシン、ラルテグラビル、テノホビルジソプロキシル、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、および前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩から独立して選択される2種類のさらなる第二薬剤と共に投与するための、請求項13記載の化合物または組成物。
【請求項19】
医薬における使用のための、請求項1〜5いずれかに記載の化合物または請求項6〜12いずれかに記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−529196(P2010−529196A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512186(P2010−512186)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/007331
【国際公開番号】WO2008/156632
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509049012)コンサート ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】