説明

アジポネクチンとそのレセプターとの間の相互作用を調節するための方法及び組成物

本発明は、アジポネクチンとそのレセプターとの間の相互作用を模倣又は調節する作動物質の同定方法に係る。特に、本発明は、アジポネクチンの欠損又は過多に関連する疾患及び状態を治療するためのアジポネクチン−T-カドヘリン相互作用を模倣又は調節する方法に係る。かかる疾患としては、例えば、肥満症、拒食症、I型及びII型糖尿病、冠動脈疾患並びにアテローム性動脈硬化症等が挙げられる。また、本発明は、単離されたアジポネクチン-T-カドヘリン複合体及びアジポネクチンと相互作用するポリペプチドの同定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の技術分野
本発明は、医薬及び分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、肥満症、拒食症、I型糖尿病、II型糖尿病、冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症等の疾患及び状態を治療することに照らして、リガンド/レセプター相互作用の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
肥満症と、II型糖尿病、異常脂質血症、動脈硬化症等のいくつかの疾患の進行との間の関係が、よく証明されている。従来、脂肪組織が脂質の貯蔵庫として、おおまかに考えられていた。しかしながら、近年の観察は、脂肪細胞が、TNFα、レプチン、レジスチン、プラスミノーゲン活性化タンパク質I、アジポネクチン等の幾つかの生物活性物質を産生し、分泌することを明らかにした。したがって、脂肪組織は、トリグリセリドの主要な補給貯蔵庫だけでなく、代謝シグナルを感知し、体のエネルギー恒常性に影響を与えるホルモンを分泌する能動的な内分泌器官である。
【0003】
アジポネクチン〔脂肪細胞補体関連タンパク質 (30kDa)(Acrp30)、AdipoQ、apM1、及びゼラチン結合タンパク質28(GBP28)としても知られる〕は、脂肪組織で産生される30kDの分泌されたタンパク質である。アジポネクチンは、種間に高度に保存される。アジポネクチンは、シグナル配列と、コラーゲン様ドメインと、TNFファミリーのタンパク質に構造的に非常に類似することが示された球状ドメインとを含む。アジポネクチンの全体のトポロジーは、補体関連タンパク質であるClqの構造に類似する。〔ベルグ(Berg)ら、Trends Endocrinol Metab.13(2):84−9.(2002)).
【0004】
アジポネクチンは、その球状ドメインを介して密接に会合した三量体を形成する。より高分子のオリゴマーが、アジポネクチン三量体のコラーゲン三重らせん間の相互作用を介して形成され、見出されるより高次の複合体の血漿における循環をもたらす。〔ベルグ(Berg)ら、Trends Endocrinol Metab.13(2):84−9.(2002)〕。
【0005】
マウスの研究は、II型糖尿病マウスモデルにおける血清アジポネクチンレベルが、野生型マウスに比べ、強く減少し、それにより、II型糖尿病と血清中におけるアジポネクチンレベルとの間の関連を与えることを示している。これらの研究の結果は、アジポネクチンレベルが細身の被験体よりも肥満体の被験体で顕著に低いことを示したヒト及びサルの疫学的な研究により裏付けられた。
【0006】
さらに、糖尿病患者は、非糖尿病患者に比べ、非常に減少したアジポネクチンレベルを有することが見出された。アジポネクチンのレベルは、冠動脈疾患(CAD)を患う糖尿病患者において特に低いことが示された。これらの血清学的研究は、血清におけるアジポネクチンレベルとII型糖尿病及びCADの進行との間の明らかな関連を与える。低レベルのアジポネクチンとII型糖尿病の進行との他の関連は、インシュリン耐性を発現する傾向があるアカゲザルで観察された。インシュリン耐性の兆候−−II型糖尿病の顕著な特徴−−が、血清におけるアジポネクチンレベルの減少を伴うことが観察されている。また、低アジポネクチンレベルの細身の動物は、高アジポネクチンレベルの肥満の動物よりも、一層高い程度のインシュリン耐性を示した。そのため、やせることよりもむしろ、アジポネクチンレベルは、インシュリン耐性の発生に重要である。したがって、アジポネクチンは、インシュリン耐性の発生及びII型糖尿病に重大な役割を有すると思われる。
【0007】
アジポネクチンレベルの重要性は、肥満の幾つかの遺伝子モデルにおける血液グルコースレベルを改善することが示されているチアゾリジンジオン類(thiazolidineduiones)(TZDs)は、血清中におけるアジポネクチンレベルの顕著な増加を導くという観察によりさらに強調される。
【0008】
これらをもとに、これらの薬理学的及び血清学的データにより、血清におけるアジポネクチンレベルとインシュリン感受性との間の明らかな関係を証明し、その結果、II型糖尿病患者に見出されたアジポネクチンのレベルの減少が、少なくとも一部、これらの被験体において観察されたインシュリン耐性に応答しうるであろうことを示唆する。
【0009】
[0009]また、近年の研究は、慢性腎臓障害、1型糖尿病及び拒食症が、アジポネクチン 血漿レベルの増加及び非酸化的グルコース代謝の減少〔ディーツ(Diez)ら、2003 Eur.J.Endocrinol.,148(3),293−300〕に関連することが示されている。
【0010】
糖尿病の進行におけるアジポネクチンにより果たされる主要な役割をさらに理解するために、いくつかのグループは、異なるI型及びII型マウスモデル並びに野生型マウスを用いたイン・ビトロでの研究及びイン・ビボでの研究を行なっている。
【0011】
高脂肪食の野生型マウスにおける組換えアジポネクチンの注射は、血清中における血糖および遊離脂肪酸レベルを実質的に改善することが示された。さらに、二週間にわたってアジポネクチンの球状部分を投与した場合、重度の肥満マウスにおける顕著な体重減少が観察された。さらに、アジポネクチンの球状部分は、単離された筋肉中におけるβ酸化の急速な増加を引き起こすことが示された。同様に、血糖レベルの明確な一過的な改善は、ob/ob(II型糖尿病)又はNODマウス(I型糖尿病)へのアジポネクチンの単回投与により達成された。アジポネクチンが両方の型の糖尿病における血糖レベルを改善しうるという事実は、アジポネクチンのインシュリン感作性機能を明確に証明する。さらに、単離された肝細胞におけるイン・ビトロでの研究は、アジポネクチンレベルが、インシュリン応答の改善に導くことを証明した。生理的下(subphysiological)レベルのインシュリンがアジポネクチンの存在下に肝臓におけるグルコース生産を止めるに十分であることが示された。
【0012】
初代肝細胞におけるそのインシュリン感作性作用のほか、アジポネクチンは、分化した筋細胞及び単離した筋肉における遊離脂肪酸酸化を増加させることが示されている。さらに、アジポネクチンは、CD36、アシル−CoAオキシダーゼ(ACO)、脱共役タンパク質2(UCP2)等の脂肪酸輸送、酸化及びエネルギー散逸に関与する分子の発現増加を引き起こすことが示された。この調節は、言い換えると、骨格筋における組織トリグリセリド組成の減少を引き起こすことが示された。
【0013】
近年の研究は、アジポネクチンがAMP−活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化することを示した。〔ヤマウチ(Yamauchi)ら、2002,Nat.Med,8(11):1288−95〕 AMPKの活性化と並行して、アジポネクチンは、ミオサイトにおけるアセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ(ACC)のリン酸化、脂肪酸酸化、グルコース取り込み及び乳酸産生、肝臓におけるACCのリン酸化及びグルコース新生に関連する分子の減少、並びにイン・ビボでのグルコースレベルの減少を刺激することが示された〔ヤマウチ(Yamauchi)ら、2002,Nat.Med,8(11):1288−95〕。最後に、アジポネクチンノックアウトマウスは、食餌誘導されたインシュリン耐性を発生することが示されている〔マエダ(Maeda)ら、2002,Nat med.,8(7):731−7〕。
【0014】
要約すると、疫学的な研究、糖尿病マウスモデルを用いた種々の実験及びアジポネクチンノックアウトマウスで観察された特徴は、体のエネルギー恒常性の調節因子としてのアジポネクチンの重要な役割を強く示唆する。したがって、血清におけるアジポネクチンレベルの減少は、II型糖尿病で観察されたインシュリン耐性の発生と、原因として結びつくであろう。
【0015】
グルコース調節及び脂肪酸代謝へのその明確な影響のほかに、いくつかの報告が、冠動脈疾患(CAD)の進行におけるアジポネクチンの役割を示唆する〔マツダ(Matsuda)ら、2002,J Biol Chem. 4;277(40):37487−91;)。この役割は、マクロファージ及び内皮細胞におけるアジポネクチンの作用により少なくとも部分的に媒介されると考えられる。アジポネクチンレベルの減少は、CADのより高い罹患率と関連するという観察は、動脈硬化症の予防におけるアジポネクチンの役割を示唆した。これらの考えの線にそって、いくつかのグループが、CADの進行に関連することが知られているいくつかの細胞型におけるアジポネクチンのイン・ビトロ作用を調べている。
【0016】
まず、アジポネクチンは、内皮への単球接着、骨髄分化、ミエロイド分化並びにマクロファージのサイトカイン産生及び食作用への影響を有することが示された。内皮への単球の接着の減少は、ヒト大動脈内皮細胞におけるTNFα−誘導血管細胞接着分子I(VCAM−I)、内皮性白血球接着分子−1(E−セレクチン)及び細胞内接着因子I(ICAM−1)を抑制するアジポネクチンの能力に、少なくとも部分的に寄与しうる。
【0017】
さらに、アジポネクチンは、ヒト単球由来マクロファージにおける脂質蓄積を減少すること及びマクロファージ−対−泡沫細胞変化を抑制することを示した。
【0018】
アジポネクチンの影響は、動脈硬化性プラーク形成に関連する。イン・ビトロでのデータは、アジポネクチンの抗−動脈形成性を示唆する。したがって、低アジポネクチン症は、血管疾患のより高い罹患率と関連するであろう。
【0019】
さらに、動脈硬化症の顕著な特徴である動脈傷害後の新生内膜肥厚へのアジポネクチンの影響は、イン・ビボで研究されている。1つの研究では、アジポネクチン−欠損マウスが、野生型マウスと比較された。アジポネクチン−欠損マウスは、重度の新生内膜肥厚及び物理的に傷害を受けた動脈における血管平滑筋細胞の増殖の増加を示し、アジポネクチンが、正常環境下でのこの影響を抑制することを示唆した。この結果は、手術モデルにおける新生内膜肥厚が、アジポネクチンをする組換えアデノウイルスの投与により強く縮小されたという観察によりさらに裏付けられる〔マツダ(Matsuda)ら、2002,J Biol Chem.4;277(40):37487−91〕。
【0020】
培養平滑筋細胞におけるさらなる研究は、アジポネクチンが、PDGF、HB−EGF、bEGF、EGF等の成長因子により誘導されたDNA合成並びにHB−EGFにより誘導された細胞増殖及び遊走を阻害したことを明らかにした。最後に、apoE−欠損バックグラウンド(動脈硬化症の進行に関する樹立マウスモデル)におけるアジポネクチンの球状ドメインの過剰発現は、動脈硬化症の明らかな改善を示した〔ヤマウチ(Yamauchi)ら、J.Biol.Chem. 278:2461−2468(2003)〕。イン・ビボでの結果は、さらに、CADの進行に対するアジポネクチンの保護的役割を示す。
【0021】
要約すると、いくつかの疫学的研究並びにイン・ビボ及びイン・ビトロでの研究は、脂質代謝及びインシュリン感受性並びに抗動脈形成因子の調節因子としてのアジポネクチンの重要な役割を明らかにする。
【0022】
従来、アジポネクチンの作用に応答しうるシグナル伝達機構についてほとんど知られていない。したがって、アジポネクチンの欠損又は過多に伴う疾患や状態を効果的に治療するために、アジポネクチンの作用を調節又は模倣する方法及び組成物のための技術が要求される。
【発明の開示】
【0023】
発明の要旨
本発明は、当該技術分野における前記要求を満たす。本発明は、アジポネクチンの作用を調節又は模倣する作用物質の同定方法を提供する。本発明は、T−カドヘリンがアジポネクチンのレセプターであるという驚くべき発見に基づく。したがって、本発明は、アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を調節又は模倣する方法及び作用物質を提供する。また、本発明は、単離されたアジポネクチン−T−カドヘリン複合体及びアジポネクチンと相互作用するポリペプチドの同定方法を提供する。
【0024】
T−カドヘリン(切形型若しくはHカドヘリン又はカドヘリン13としても知られる)は、カドヘリンスーパーファミリーのメンバーである〔アングスト(Angst, B. D.)ら、J.Cell Sci. 114:629−641(2001)〕。T−カドヘリンは、細胞シグナル伝達に関与すると考えられるGPI−アンカータンパク質である〔ドイル(Doyle)ら、J.Biol.Chem. 273:6937−6943(1998),フィリッポバ(Philippova)ら、FEBS Lett. 429:207−210(1998)〕。したがって、おそらく、アジポネクチンの少なくとも一定の作用がT−カドヘリンとのその相互作用を介して媒介されるであろう。アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を調節することにより、また、アジポネクチンの作用を模倣する作用物質を供給することにより、アジポネクチンの細胞及び生理的作用が、アジポネクチンの欠損又は過多により特徴付けられる疾患及び状態を治療することに関して、意図的に制御されうる。このような調節は、例えば、アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用をブロックすること、アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を増強させること及びアジポネクチンの作用を模倣する作用物質を供給することにより達成される。
【0025】
アジポネクチンの活性を模倣する作用物質は、例えば、アジポネクチンの欠損に関連する疾患及び状態の治療に有用である。かかる作用物質は、肥満症、I型糖尿病、II型糖尿病、冠動脈疾患、拒食症及びアテローム性動脈硬化症等の疾患及び状態に苦しめられる患者に対して、かかる疾患及び状態を緩和又は治療するため、投与されうる。
【0026】
T−カドヘリンは、アジポネクチンのレセプターであるという知見を考慮して、T−カドヘリンと相互作用する分子及び組成物が、恐らく、アジポネクチンの活性を模倣する作用物質の候補であろうことを理解する。したがって、本発明のある側面では、T−カドヘリンと相互作用する作用物質等の作用物質が、アジポネクチンの活性を模倣するかどうかを決定する方法が提供される。
【0027】
本発明の1つの側面によれば、作用物質が、アジポネクチンの活性を模倣するかどうかの決定方法が提供される。例えば、本発明は、アジポネクチンの作用を模倣する能力に関して、抗体及び他の分子又は化合物等の複数の作用物質をスクリーニングする方法を含む。ある実施態様において、本発明のこの概念の方法は、(a)T−カドヘリンと相互作用する被験物質(例えば、抗体等)を得るステップ、(b)該被験物質を第1の動物に投与するステップ、(c)作用物質の投与後の該第1の動物における生理学的パラメータを測定するステップ、(d)1又はそれ以上の対照被験体における生理学的パラメータを測定するステップ;及び(e)作用物質の投与後の第1の動物における該生理学的パラメータと、1又はそれ以上の対照被験体における該生理学的パラメータとを比較するステップ、を含んでもよい。
【0028】
前記生理学的パラメータは、動物へのアジポネクチンの投与後に、変化(例えば、増加又は減少)することが知られるいかなるパラメータでもありうる。かかるパラメータは、当該技術分野で公知である。典型的なパラメータを、本明細書の他の部分に記載する。1又はそれ以上の対照被験体で測定された生理学的パラメータと比べて、作用物質の投与後に第1の動物で測定された生理学的パラメータが変化した場合(例えば、測定された生理学的パラメータに依存して、より高いか、より低い)、作用物質は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定される。
【0029】
また、本発明のこの概念による方法は、(a)T−カドヘリンと相互作用する作用物質(例えば、抗体等)を得るステップ、(b)第1の細胞と作用物質とを接触させるステップ、(c)該第1の細胞と作用物質とを接触させた後の該第1の細胞における細胞パラメータを測定するステップ、(d)1又はそれ以上の対照細胞における細胞パラメータを測定するステップ、及び(e)該第1の細胞と作用物質とを接触させた後の該第1の細胞における細胞パラメータと、1又はそれ以上の対照細胞における細胞パラメータとを比較するステップを含む。前記細胞パラメータは、細胞とアジポネクチンとを接触させた後に、変化(例えば、増加又は減少)することが知られる任意のパラメータでありうる。かかるパラメータは、当該技術分野で公知である。1又はそれ以上の対照細胞において測定された細胞パラメータと比べて、第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞において測定された細胞パラメータが、変化(例えば、測定された細胞パラメータに依存して、より高くなる、又はより低くなる)する場合、作用物質は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定される。
【0030】
他の概念では、本発明は、被験物質が、アジポネクチンの作用を模倣するかどうかを決定する方法を提供する。かかる方法は、(a)T−カドヘリンを発現する第1の細胞と被験物質とを接触させるステップ、(b)T−カドヘリンを発現しない第2の細胞と被験物質とを接触させるステップ、(c)第1の細胞及び第2の細胞と、被験物質とを接触させた後の第1の細胞及び第2の細胞における細胞パラメータを測定するステップ及び(d)第1の細胞及び第2の細胞と、被験物質とを接触させた後において、第1の細胞における細胞パラメータと第2の細胞における細胞パラメータとを比較するステップを含んでもよい。第1の細胞及び第2の細胞と、被験物質とを接触させた後の第2の細胞における細胞パラメータと比べて第1の細胞における細胞パラメータの差異(例えば、測定された細胞パラメータに依存した増加又は減少)は、被験物質を、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定するであろう。
【0031】
本発明の他の概念によれば、被験物質がアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害するか促進するかを決定する方法が提供される。本発明のこの概念による方法は、例えば、タンパク質−タンパク質相互作用を測定するアッセイ等の2つの作用物質間の相互作用を測定することを可能にする任意の公知のアッセイを含む。そのような多くの方法は、当該技術分野で公知であり、アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を測定することに適合されうる。(Comb.Chem.High Throughput Screen. 1998 Dec;1(4):171−183.Review)。
【0032】
本発明のこの概念による1つの典型的な実施態様では、(a)一方が検出可能なマーカー若しくは酵素に融合化され、他方が適切な担体に固定される(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii) T−カドヘリン又はその断片と、(iii)被験物質とを含有した試験混合物を供給するステップ、(b)一方が検出可能なマーカー若しくは酵素に融合化され、他方が適切な担体に固定される、(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片を含有した対照混合物を供給するステップ;(c)試験混合物及び対照混合物から、未結合のアジポネクチンとT−カドヘリンとを除去するステップ;並びに(d)試験混合物及び対照混合物中におけるマーカー又は酵素により生じるシグナルを測定するステップを含む方法が提供される。
【0033】
他の典型的な実施態様では、(a)一方が検出可能なマーカー若しくは酵素に融合化され、他方が細胞の表面で発現する、(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片と、(iii)被験物質とを含有した試験混合物を供給するステップ、(b)一方が検出可能なマーカー若しくは酵素に融合化され、他方が細胞の表面で発現する、(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片を含有した対照混合物を供給するステップ、(c)試験混合物及び対照混合物から、未結合のアジポネクチンとT−カドヘリンとを除去するステップ、並びに(d)試験混合物及び対照混合物中におけるマーカー又は酵素により生じるシグナルを測定するステップを含む方法が提供される。
【0034】
前記典型的な実施態様にどちらにおいても、対照混合物中におけるマーカー又は酵素により生じるシグナルに比べた試験混合物中におけるマーカー又は酵素により生じるシグナルの減少は、被験物質が有するアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用の阻害能を示す。一方、対照混合物中におけるマーカー又は酵素により生じるシグナルに比べた試験混合物中におけるマーカー又は酵素により生じるシグナルの増加は、被験物質が有するアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用の促進能を示す。
【0035】
本発明の他の概念によれば、アジポネクチンと相互作用するポリペプチドを同定する方法が提供される。例えば、本発明は、アジポネクチンと相互作用するポリペプチドを発現するクローンについてライブラリー(例えば、ゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリー等)をスクリーニングする方法を包含する。本発明のこの概念による特定の実施態様では、(a)異なる候補ポリペプチドをそれらの個々の表面に発現する2又はそれ以上の細胞を含有する細胞集団を得るステップ、(b)該細胞集団とベイトポリペプチドとを接触させるステップを含む方法が提供される。ベイトポリペプチドは、例えば、アジポネクチン、アジポネクチンの断片、検出可能なマーカー若しくは酵素と融合化されたアジポネクチン、又は検出可能なマーカー若しくは酵素と融合化されたアジポネクチンの断片でありうる。前記方法は、(c)ベイトポリペプチドが結合していない細胞からベイトポリペプチドが結合した細胞を分離するステップ、及び(d)ベイトポリペプチドが結合した細胞の表面に発現する候補ポリペプチドを同定するステップをさらに含む。ある実施態様では、ベイトポリペプチドが結合した細胞の表面に発現する候補ポリペプチドは、細胞において、発現ベクター(例えば、ライブラリー由来の発現ベクター等)から発現するポリペプチドであるであろう。したがって、そのアイデンティティーは、前記発現ベクター内に含まれる塩基配列をクローニングすることにより容易に決定されうる。
【0036】
また、本発明は、(a)アジポネクチン若しくは断片又はそのバリアントと(b)T−カドヘリン若しくは断片又はそのバリアントとを含んだ単離されたレセプター−リガンド複合体を包含する。例えば、本発明は、アジポネクチン若しくはその断片又はそのバリアントが、T−カドヘリン、断片又はそのバリアントに、物理的に付着するか、あるいは接触するものである単離されたアジポネクチン−T−カドヘリン複合体を包含する。
【0037】
また、アジポネクチンの欠乏又は過多に関連する疾患又は状態、例えば、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病等を治療するに有用な医薬組成物の製造方法も本発明に包含される。本発明のこの概念による方法は、(a)アジポネクチンの作用を模倣する作用物質若しくは物質又はアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害若しくは促進する作用物質若しくは物質を得るステップ;及び(b)前記分子又は物質と薬学的に許容されうる担体又は賦形剤とを混合するステップを含む。前記分子又は物質は、本発明の方法のいずれかを用いてえられてもよい。
【0038】
さらに、本発明は、アジポネクチンの欠損又は過多に関連した疾患又は状態、例えば、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病等の治療又は予防方法を包含する。本発明のこの概念による方法は、治療上有効量のアジポネクチンの作用を模倣する作用物質若しくは物質又はアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害若しくは促進する作用物質若しくは物質を被験体に投与するステップを含む。作用物質又は物質は、本発明の方法のいずれかを用いて得られたものであってもよい。
【0039】
本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、レセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体等))に対して、又はT−カドヘリンに対して特異的に反応する抗体及び他の作用物質も提供される。
【0040】
さらに、本発明は、疾患又は状態、好ましくは、低アジポネクチン血症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症から選ばれるもの等を治療及び/又は予防するための薬剤の製造のための本発明のレセプター−リガンド複合体の使用を提供する。
【0041】
本発明のレセプター−リガンド複合体の核酸ベクター並びに該ベクター又は核酸を含有した宿主細胞、及び本発明の操作された核酸を含有するか、あるいは内因性の配列を欠くものである、トランスジェニック、ノックアウト若しくは遺伝子改変動物(ヒト以外、特に、マウス)も本発明に包含される。
【0042】
さらなる概念では、本発明のレセプター−リガンド複合体を含有したキットが提供される。
【0043】
本発明は、さらに、疾患又は状態、例えば、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症等の診断又は予後診断(prognosing)方法を提供する。かかる方法は、(i)固体から試料を得るステップ、(ii)本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)の存在について、該試料を分析するステップ、及び(iii)被験試料中におけるレセプター−リガンド複合体の量と、正常な組織中における該複合体のレベルとを比べるステップを含み、ここで、正常な組織のものと比べて、被験試料中におけるレセプター−リガンド複合体濃度の減少として、個体が、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症等の疾患のリスクを有することを示す。
【0044】
また、本発明は、本発明の診断又は予後診断(prognostic)方法に用いるに適したキットを提供する。かかるキットは、これらの方法を行なうに有用な薬剤(reagents)、例えば、レセプター−リガンド複合体(例えば、レセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体))又はT−カドヘリンに特異的な1又はそれ以上の種の抗体等を含有する。一次抗−T−カドヘリン抗体等のいずれか又は両方を認識する二次抗体も、試料に結合する一次抗体の認識及び検出の目的に含まれる。かかる二次抗体は、例えば、フルオロフォア、酵素、放射活性標識等を用いた検出のために標識されうる。他の検出標識は、当業者にとって明らかであろう。あるいは、一次抗−T−カドヘリン抗体は、検出のために標識されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で用いる「T−カドヘリン」の用語は、T−カドヘリン(切形型)、Hカドヘリン(心臓)、カドヘリン13、成熟105kDa T−カドヘリン、T−カドヘリンの部分的にプロセスされた130kDa前駆体等のいずれかのカドヘリン、又は配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33から配列番号:47、配列番号:49、配列番号:51、及び配列番号:53に記載された配列から選択された塩基配列のいずれかによりコードされるいずれかのタンパク質、又は前記配列のいずれかと少なくとも80%の同一性、好ましくは、少なくとも90%の同一性、より好ましくは、少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは、少なくとも98%の同一性、最も好ましくは少なくとも99%の同一性の配列、又はその断片をいう。本明細書で用いる「T−カドヘリン」、「H−カドヘリン」及び「カドヘリン13」の用語は、同義的に用いてもよい。
【0046】
本明細書で用いる「アジポネクチンの作用を模倣する」又は「アジポネクチンの作用を模倣しうる」作用物質とは、アジポネクチンと同じ、類似又は機能的に同じ様式で作用することができる、抗体等の任意の物質、分子又は化合物をいう。〔ヤマウチ(Yamauchi)ら、2002,Nat.Med, 8(11):1288−95を参照〕。
【0047】
アジポネクチンの作用を模倣する作用物質は、例えば、エネルギーホメオスタスティス並びにグルコース及び脂質代謝を制御してもよく、AMPK(5’−AMP−活性化プロテインキナーゼ)のリン酸化及び活性化、ACC(アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ)のリン酸化及び活性化、筋細胞における脂肪酸酸化、グルコース取り込み及び乳酸産生並びにグルコース新生に関与する分子の減少を刺激してもよく、及び血糖濃度、血中遊離脂肪酸濃度、血中トリグリセリド濃度の減少を刺激してもよく、又は動脈損傷後の新生内膜肥厚を減少させてもよい。
【0048】
本明細書で用いる「アジポネクチンの作用により引き起こされる応答に対応する応答」の表現又は「アジポネクチン−様応答」の用語は、例えば、アジポネクチンにより引き起こされる細胞、組織又は試料の応答と同じ、類似又は機能的に同じ反応である動物、細胞、組織、又は試料の反応をいう。例えば、抗体又は本発明の他の作用物質により引き起こされる応答は、アジポネクチンにより引き起こされる応答と同じ、類似又は機能的に同じ応答、AMPK(5’−AMP−活性化プロテインキナーゼ)及びACC〔アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ(acety coenzyme A carboxylase)〕のリン酸化及び活性化、筋細胞における脂肪酸酸化、グルコース取り込み及び乳酸産生、グルコース新生に関与する分子の減少、血糖濃度、血中遊離脂肪酸濃度、血中トリグリセリド濃度の減少の刺激、動脈損傷後の新生内膜肥厚の減少等であってもよい〔ヤマウチ(Yamauchi)ら、2002,Nat.Med, 8(11):1288−95を参照〕。
【0049】
本明細書で用いる「作用物質(分子、化合物、抗体、ポリペプチド等)がアジポネクチンの活性を模倣するかどうか決定する方法」の表現は、「アジポネクチンの活性を模倣する作用物質の同定方法」、「アジポネクチンの活性を模倣する作用物質のスクリーニング方法」、「アジポネクチン−様活性を有する作用物質の同定方法」等の表現と同等である。
【0050】
本明細書で用いる、任意の作用物質に関連して用いられる「精製された」の用語は、精製された作用物質の濃度が、その自然環境において、作用物質と関連する物質と比較して、増加していることを意味する。天然で関連する物質としては、ポリペプチド、核酸、脂質及び糖が挙げられるが、一般的に、水、緩衝液及び保存性を維持するため又は分子の精製を容易にするために添加される試薬は含まれない。例えば、mRNAは、oligo dTカラムクロマトグラフィーの際の水性溶媒で希釈されても、天然で関連した核酸及び他の生体分子が該カラムに結合せず、対象となるmRNA分子から分離できる場合、mRNA分子は、このクロマトグラフィーで精製される。
【0051】
本明細書で用いる、作用物質に関連して用いられる「単離された」の用語は、作用物質が、その自然環境から除かれていることを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは、「単離された」でなく、その天然状態の共存物質から分離された同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは、「単離された」である。さらに、ベクターに含まれる組換えDNA分子は、本発明の目的で、単離されたと考えられる。単離されたRNA分子は、DNA及びRNA分子のイン・ビボ又はイン・ビトロでのRNA複製産物を包含する。単離された核酸分子は、合成的に産生された分子をさらに包含する。さらに、組換え宿主細胞に含まれるベクター分子も単離される。したがって、「単離された」作用物質が、「精製された」である必要があるとは限らない。
【0052】
本明細書で用いる「個体」の用語は、多細胞生物をいい、植物及び動物の両方を包含する。好適な多細胞生物は、動物であり、より好適には、脊椎動物、よりさらに好適には、哺乳動物であり、もっとも好ましくは、ヒトである。
【0053】
本明細書で用いる「ベクター」の用語は、ポリヌクレオチド構築物、典型的には、プラスミド又は宿主細胞に遺伝性物質を伝達するために用いるウイルスをいう。好ましくは、本明細書で用いる「ベクター」の用語は、プラスミド、よりさらに好ましくは、環状プラスミド等の分子である。本明細書で用いるベクターは、DNA又はRNAのいずれから構成されてもよい。好ましくは、ここで用いるベクターは、DNAから構成されるものである。
【0054】
本明細書で用いる他の核酸(例えば、T−カドヘリン、アジポネクチン又は本発明のレセプター−リガンド複合体をコードする核酸等)、例えば、配列番号:6、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33から配列番号:47、配列番号:49、配列番号:51、又は配列番号:53の配列を有する核酸のうちの1つにハイブリダイズする、核酸又はその断片は、前記配列のいずれかと少なくとも80%の同一性を有する塩基配列の特徴を有する核酸の対応物(counterpart)と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列;前記塩基配列の1つとハイブリダイズする核酸;前記塩基配列のいずれかと相補的な塩基配列;又は前記塩基配列の1つとハイブリダイズする、前記塩基配列のいずれかの断片を示す。例えば、ハイブリダイズさせることは、2xSSC中68°C、又はベーリンガー(マンハイム)社のジオキシゲニン−標識−キットのプロトコールに従って行なわれてもよい。ストリンジェントなハイブリダイズ条件のさらなる例示は、例えば、7% SDS、1% BSA、1mM EDTA、250mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中、65°Cで一晩のインキュベーション及び2xSSC; 0.1% SDSを用いた65℃での続く洗浄である。
【0055】
当業者に公知で、本明細書で用いる「パーセント同一性」は、配列間の一致により決定される2又はそれ以上の核酸分子間の関連性の度合いを示す。「同一性」のパーセンテージは、ギャップと他の配列の変わった点とを考慮し、2又はそれ以上の配列における同一領域のパーセンテージの結果である。
【0056】
関連した核酸分子の同一性は、公知の方法の助けにより決定されうる。一般的に、このタスクの特定のニーズに適合したアルゴリズムを用いる専用のコンピュータプログラムが用いられる。同一性を決定する好適な方法は、比較対象の配列間の同一性の最も大きい度合いを発生することにより開始する。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラムは、限定されないが、GAP〔デベロー(Devereux)ら、Nucleic acid Research 12(12):387(1984);Genetics Computer Group University of Wisconsin, Madison,(WI)〕等のGCG−プログラムパッケージ、BLASTP、BLASTN及びFASTA〔アルトシュル(Altschul)ら、J.Molec.Biol 215:403/410(1990)〕を包含する。BLAST Xプログラムは、全米バイオテクノロジー情報センター〔National Center for Biotechnology Information(NCBI)〕から及び他の情報源〔BLAST handbook,アルトシュル(Altschul)ら、NCB NLM NIH Bethesda,MD 20894〕から得られる。また、周知のスミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)アルゴリズムは、同一性の決定に用いられうる。
【0057】
配列比較の好適なパラメータは、下記:
【0058】
【表1】

【0059】
を含む。
【0060】
また、ギャッププログラムは、前記パラメータにより用いられるに適している。前記パラメータは、核酸比較について、標準パラメータ(デフォルト)である。プログラムハンドブック、ウィスコンシン−パッケージ、バージョン9、1997年9月におけるもの等のさらなる典型的なアルゴリズム、ギャップオープニングペナルティー(gap opening penalties)、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalties)、比較マトリックス(comparison matrix)も用いうる。選抜は、処理対象の比較に依存し、さらに、GAP又はBest Fitが好ましい配列ペア間の比較であるかどうか、又はFASTA又はBLASTが好ましい配列と大きな配列データバンクとの間の比較が望まれる。
【0061】
本発明の核酸分子は、当業者に周知の方法によって、合成的に調製されてもよく、適切なDNAライブラリー及び他の公的に利用できる核酸の供給源から単離されてもよく、ついで、任意に変異導入されてもよい。かかるライブラリーの調製及び変異は、当業者に周知である。
【0062】
本明細書で用いる、参照ポリペプチドの「断片」(例えば、アジポネクチンの断片又はT−カドヘリンの断片等)としては、例えば、参照ポリペプチドよりも少なくとも1アミノ酸少ないポリペプチドが挙げられる。参照ポリペプチドの断片は、例えば、参照ポリペプチドよりも少なくとも1アミノ酸少ないポリペプチドを発現するための核酸分子を設計することにより得られうる。他方、参照ポリペプチドの断片は、参照ポリペプチドをタンパク質分解的に切断すること又は参照ポリペプチドよりも少なくとも1アミノ酸少ないポリペプチドを人為的に合成することにより得られうる。参照ポリペプチドの「断片」は、その末端の一方又は両方において、1又はそれ以上のアミノ酸を欠いていることにより参照ポリペプチドと異なってもよく、1又はそれ以上の内部(非末端)アミノ酸を欠いてもよい。アジポネクチン及びT−カドヘリンの断片、誘導体及びバリアントは、アジポネクチン及びT−カドヘリンの配列のその免疫反応性を破壊しない小さな改変を含んでもよい。限定的な改変は、T−カドヘリン及びアジポネクチンの生物学的機能を破壊することなくなされ得、全一次構造のほんの一部が、活性に影響を与えるのに要求されてもよい。かかる小さな改変は、実質的に同等な又は増強された機能を有するタンパク質をもたらすであろう。好適な断片は、全長アジポネクチン又は全長T−カドヘリンを認識しうる抗体により認識される断片である。アジポネクチンの典型的な断片は、アジポネクチンの球状ドメイン又はコラーゲンドメインを含有するもの、又は代わりに本質的にからなるもの、又は代わりにからなるものであってもよい。T−カドヘリンの典型的な断片は、1又はそれ以上のT−カドヘリンの5つのカドヘリンドメイン(配列番号:55,配列番号:56,配列番号:57,配列番号:58,配列番号:59)、好ましくは、T−カドヘリンのカドヘリンドメイン1(配列番号:55)を含有するもの、代わりに本質的にからなるもの、又は代わりにからなるものでもよい。
【0063】
本明細書で用いるポリペプチド配列の「バリアント」は、保存若しくは非保存アミノ酸置換、欠失又は挿入を保持する天然及び人為的な対立遺伝子のポリペプチド配列を包含することを意図する。1又はそれ以上のアミノ酸アナログ、1又はそれ以上の非古典的アミノ酸、及び/又は1又はそれ以上の翻訳後修飾を含むポリペプチドも挙げられる。非古典的アミノ酸としては、限定されないが、一般のアミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、a−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2 アミノ酪酸、g Abu、e Ahx、6アミノヘキサン酸、Aib、2アミノイソ酪酸、3アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、b−アラニン、フルオロ−アミノ酸、一般的にb−メチルアミノ酸、Ca−メチルアミノ酸、Na−メチルアミノ酸、アミノ酸アナログ等のデザイナーアミノ酸が挙げられる。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)又はL(左旋性)でありうる。翻訳後修飾としては、特に限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的切断、抗体分子又は他の細胞リガンドへの結合等が挙げられる。多くの化学修飾のいずれかが、限定されないが、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝合成等の公知技術により行なわれるであろう。また、バリアントとしては、N結合又はO結合の炭水化物鎖、化学的な構成成分、N結合又はO結合の炭水化物鎖の化学修飾、及び原核生物宿主細胞発現の結果としてのN末端メチオニン残基の付加又は欠失を有するポリペプチドを包含する。バリアントポリペプチドは、さらに、酵素、蛍光、アイソトープ、タンパク質の検出及び単離を可能にするアフィニティーラベル等の検出可能な標識で修飾されてもよい。
【0064】
「one」、「a」又は「an」の用語が本開示で用いられる場合、それらは、他に指示がない限り、「少なくとも1つ(at least one)」あるいは「1又はそれ以上(one or more)」を意味する。
【0065】
本発明の実施態様
本発明の1つの概念によれば、アジポネクチンの作用を模倣する作用物質の同定方法が提供される。
【0066】
本発明は、(a)被験物質を得るステップ;(b)被験物質を第1の動物に投与するステップ、(c)作用物質の投与後の第1の動物における生理学的パラメータを測定するステップ、及び(d)作用物質の投与後の第1の動物における生理学的パラメータと対照被験体における生理学的パラメータとを比較するステップ、を含む、被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかの決定方法を包含する。
【0067】
また、本発明は、(a)被験物質を得るステップ、(b)作用物質と第1の細胞とを接触させるステップ、(c)作用物質の投与後の第1の細胞における細胞パラメータを測定するステップ、及び(d)第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞における細胞パラメータと対照細胞における細胞パラメータとを比較するステップ、を含む、被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかを決定する方法を包含する。
【0068】
本明細書で用いる「被験物質」の表現は、アジポネクチンの作用を模倣する能力を試験する分子、化合物又は他の物質を意味することを意図する。被験物質は、いかなる化合物、物質、又は組成物でありうる。被験物質は、ペプチド、ペプチドアナログ、核酸、核酸アナログ、ホルモン、抗原、合成又は天然由来薬剤、麻酔剤、ドーパミン、PNA、セロトニン、カテコールアミン、トロンビン、アセチルコリン、プロスタグランジン、有機分子、フェロモン、アデノシン、シュークロース、グルコース、ラクトース、及びガラクトースからなる群より選ばれてもよい。
【0069】
典型的な被験物質としては、抗体、及び非タンパク質組成物を包含する。本発明の特定の実施態様では、被験物質は、T−カドヘリンと相互作用するか、又は 断片若しくはT−カドヘリンの誘導体と相互作用する。
【0070】
T−カドヘリンと相互作用する作用物質は、例えば、T−カドヘリンとの物理的な相互作用を示すポリペプチド又は他の小さい化合物であってもよい。2つの分子とお互いとの物理的相互作用をアッセイする任意の公知の方法は、作用物質がT−カドヘリンと相互作用するものであるかどうかを決定するために用いられる。特定のポリペプチドと相互作用する作用物質を得る方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、目的のポリペプチドと結合するものについて、作用物質のライブラリーをスクリーニングすること等が挙げられる。
【0071】
「T−カドヘリンと相互作用する作用物質」の表現は、限定されないが、T−カドヘリンの断片、野生型分子と比べて1又はそれ以上の変化したアミノ酸残基を有するT−カドヘリンバリアント、1又はそれ以上の翻訳後修飾を有するT−カドヘリンバリアント、T−カドヘリンの全部又は一部が1又はそれ以上の付加的なポリペプチド又はその断片と融合したものである融合タンパク質等の、野生型の全長T−カドヘリンと相互作用する作用物質又はT−カドヘリンの変異型若しくはバリアント型と相互作用する作用物質を意味することを意図する。
【0072】
T−カドヘリンと相互作用する作用物質は、例えば、抗体であってもよい。特定の態様では、前記抗体は、T−カドヘリンと相互作用するモノクローナル抗体である。
【0073】
本発明の特定の概念では、被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質である。本発明は、特定の概念では、T−カドヘリンと相互作用する作用物質が、アジポネクチンの作用を模倣するかどうかを決定するステップを含む。したがって、本発明は、T−カドヘリンと相互作用する被験物質を得るステップを含む。T−カドヘリンと相互作用する被験物質を得るために、2つの分子又は化合物間の相互作用を評価又はモニターすることを可能にする任意の方法が用いられうる。場合によっては、T−カドヘリンと相互作用する被験物質を得るために、化合物又は分子のライブラリーを最初にスクリーニングして、T−カドヘリンと相互作用するものを同定する。いったん同定されれば、T−カドヘリンと相互作用するライブラリー由来の化合物又は分子を本発明の方法に用いてかかる化合物又は分子がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかを決定しうる。
【0074】
本発明の他の概念では、アジポネクチンの作用を模倣する能力について試験される被験物質は、T−カドヘリンと必ずしも相互作用しない。当業者は、本発明で用いるための、被験物質を得るのに利用可能な方法を良く理解するであろう。
【0075】
いったん得られれば、前期被験物質は、第1の動物に投与されうる。作用物質は、それ自体、又は緩衝液、希釈剤、又は薬学的に許容されうる担体等の他の物質との組み合わせで投与されてもよい。〔レミングストンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences),Mack Publishing Co.(1990)〕。作用物質は、例えば、注射、皮膚を介した投与、経口投与等の任意の公知の手段で投与されうる。
【0076】
第1の動物に作用物質を投与後、当該第1の動物において生理学的パラメータが測定される。測定される生理学的パラメータは、アジポネクチンの投与により、例えば、増加、促進、刺激、減少、減衰、抑制等、影響を与える任意のパラメータである。かかるパラメータは、当該技術分他で公知である。典型的な生理学的パラメータとしては、限定されないが、例えば、血糖濃度、血中遊離脂肪酸濃度、血中トリグリセリド濃度、新生内膜肥厚、冠動脈疾患に関連する損傷(例えば、大動脈弁損傷)等が挙げられる。他の生理学的パラメータとしては、例えば、筋細胞における脂肪酸酸化、肝臓のグルコース生産、アジポネクチン濃度、体重増加、体重減少、インシュリン応答等が挙げられる。かかる生理学的パラメータを測定する方法は、当該技術分野で公知である。〔例えば、ベルグ(Berg)ら、Trends Endocrinol. & Metab. 13:84−89(2002);フルービス(Fruebis)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:2005−2010(2001)〕。
【0077】
生理学的パラメータは、作用物質の投与直後、又は投与後任意の時点で測定されうる。生理学的パラメータは、投与後、多数回、例えば、決まった時間間隔で測定されうる。
【0078】
本発明のこの概念による方法は、1又はそれ以上の対照被験体における生理学的パラメータを測定するステップを含んでもよい。対照被験体で測定された生理学的パラメータは、作用物質の投与後の第1の動物で測定された生理学的パラメータと比較されうる。好適な対照被験体としては、(i)作用物質の投与に先立つ第1の動物;及び(ii)作用物質が投与されていない第2の動物が挙げられる。したがって、ここで用いる「対照被験体」は、場合によっては、前記分子は、投与されるが、そのとき以前に投与される動物、すなわち、作用物質が投与される前の動物と同じ動物であってもよい。
【0079】
また、本発明の方法は、作用物質の投与後の第1の動物における生理学的パラメータと、対照被験体における生理学的パラメータとを比較するステップを含む。対照被験体における生理学的パラメータに比べた作用物質の投与後の第1の動物における生理学的パラメータの差異は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質が、アジポネクチンの作用を模倣するかどうかを示すであろう。
【0080】
例えば、(i)測定される生理学的パラメータが、アジポネクチンの投与に際して増加することが知られる場合、及び(ii)作用物質の投与後の第1の動物における生理学的パラメータが、対照被験体における生理学的パラメータに比べ、大きい場合、作用物質は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されるであろう。例えば、測定される生理学的パラメータが、筋細胞における脂肪酸酸化である場合、その結果、作用物質の投与後の第1の動物における脂肪酸酸化のレベルが、対照被験体における脂肪酸酸化のレベルよりも大きい場合に、作用物質は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されるであろう。
【0081】
また、(i)測定される生理学的パラメータが、アジポネクチンの投与に際して減少することが知られるものである場合、及び(ii)作用物質の投与後の第1の動物における生理学的パラメータが対照被験体における生理学的パラメータよりも小さい場合、作用物質は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されるであろう。例えば、測定される生理学的パラメータが血糖濃度、血中遊離脂肪酸濃度又は血中トリグリセリド濃度である場合、その結果、分子の投与後の第1の動物における生理学的パラメータが対照被験体における生理学的パラメータよりも少ない場合には、作用物質は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されるであろう。
【0082】
本発明の方法に用いられる動物、例えば、第1の動物及び第2の動物は、アジポネクチンの作用に関連する生理学的パラメータが作用物質の投与後に測定されうる任意の動物であってもよい。好適な動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヒト等の哺乳動物等の脊椎動物である。場合によっては、前記動物は、トランスジェニック動物又は変異動物である。前記動物は、場合によっては、対応する野生型動物に比べて、高いまたは低いレベルの生理学的パラメータを示す遺伝子改変動物であってもよい。本発明の内容に用いうる典型的な遺伝子改変動物としては、例えば、ob/obマウス、NODマウス、ApoE−欠損マウス等が挙げられる。
【0083】
また、本発明は、(a)被験物質を得るステップ、(b)第1の細胞と作用物質とを接触させるステップ、(c)第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞における細胞パラメータを測定するステップ、及び(d)第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞における細胞パラメータと対照細胞における細胞パラメータとを比較するステップを含む、被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかの決定方法を包含する。
【0084】
前記被験作用物質は、例えば、T−カドヘリンと相互作用する作用物質であってもよい。T−カドヘリンと相互作用する作用物質は、例えば、T−カドヘリンとの物理的な相互作用を示すポリペプチド又は他の小さい化合物であってもよい。2つの分子とお互いとの物理的相互作用をアッセイする任意の方法が、作用物質がT−カドヘリンと相互作用するものであるかどうかを決定するために用いられうる。特定のポリペプチドと相互作用する分子を得る方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、目的のポリペプチドと結合するものについて、作用物質のライブラリーをスクリーニングするステップを含む。
【0085】
T−カドヘリンと相互作用する作用物質は、例えば、抗体であってもよい。特定の実施態様では、前記抗体は、T−カドヘリンと相互作用するモノクローナル抗体である。
【0086】
特定のタンパク質又は断片と相互作用する抗体、例えば、モノクローナル抗体の生産方法は、当該技術分野で公知である。例えば、T−カドヘリン又はその断片を認識するモノクローナル抗体を産生させるために、動物、好ましくは、マウス及びラット、より好ましくは、ヒト化B細胞レパートリを有するマウスが、T−カドヘリン又はT−カドヘリンの断片を注入されうる。前記T−カドヘリンの断片は、T−カドヘリンの任意の部分であってもよい。好ましい断片は、T−カドヘリンの細胞外部分を含有したものである。T−カドヘリン又はT−カドヘリンの断片は、動物への注入に先立って、担体、好ましくは、タンパク質担体に結合させてもよい。あるいは、前記動物は、T−カドヘリン又はその断片をコードするDNAを注入してもよい。前記DNA分子は、好ましくは、Tヘルパー細胞エピトープに連結される。その後、標準の方法〔例えば、第6章、アンチボディーズ ア ラボラトリーマニュアル(Antibodies A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988〕を用いて、モノクローナル抗体を産生させる。
【0087】
T−カドヘリン抗体は、例えば、イワノフ(Ivanov)ら、Histochem.Cell.Biol. 115:231−242(2001)及び米国特許第5,863,804号明細書に述べられている。
【0088】
いったん得られたら、前記被験物質を第1の細胞と接触させる。例えば、作用物質を第1の細胞と接触させるために、作用物質を、第1の細胞を含む容器に添加しうる。特定の実施態様では、前記容器は、試験管、ペトリ皿、バイアル、ボトル、又はその他の類似の容器であり、第1の細胞は、適切な溶液又は固体培地とともに容器内に存在する。作用物質を、例えば、前記分子を、溶液又は固体培地に添加することにより、前記細胞に接触させる。あるいは、前記第1の細胞は、前記分子又は前記分子を含有した組成物(例えば、溶液)に、直接的に添加されうる。
【0089】
作用物質を第1の細胞と接触させた後、前記細胞において、細胞パラメータを測定する。測定される細胞パラメータは、例えば、増加、促進、刺激、減少、減衰、抑制等、アジポネクチンにより影響をうける任意のパラメータである。典型的な細胞パラメータとしては、例えば、脂肪酸酸化、グルコース取り込み、乳酸産生、5’−AMP−活性化プロテインキナーゼ(AMPK)リン酸化、アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ(ACC)リン酸化、IRS−1−媒介PI−3−キナーゼ活性、平滑筋細胞増殖及び/又は遊走、NF−κBシグナル伝達、cAMP生産、内皮接着分子〔例えば、血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、内皮性白血球接着分子−1(E−セレクチン)、及び細胞内接着分子−1(ICAM−1)〕のTNF−α−誘導発現等が挙げられる。他の細胞パラメータとしては、細胞内接着(例えば、内皮への単球接着)、骨髄分化、マクロファージサイトカイン産生、食作用、脂質蓄積、アセチル化低密度リポタンパク質粒子の取り込み等が挙げられる。〔ベルグ(Berg)ら、Trends Endocrinol. & Metab. 13:84−89(2002)を参照〕。かかる細胞パラメータの測定方法は、当該技術分野で公知である。〔例えば、ベルグ(Berg)ら、Trends Endocrinol. & Metab. 13:84−89(2002);ヤマウチ(Yamauchi)ら、Nat.Med. 8:1288−1295(2002)参照〕。
【0090】
前記細胞パラメータは、前記細胞と作用物質とを接触させた直後に、又はその後任意の時点で測定されうる。前記細胞パラメータは、前記細胞と作用物質とを接触させた後、多数回、例えば、決まった時間間隔で測定されうる。
【0091】
また、本発明の方法は、場合によっては、1又はそれ以上の対照細胞における細胞パラメータを測定するステップを含んでもよい。対照細胞で測定される細胞パラメータは、前記第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞において測定された細胞パラメータと比較されうる。好ましい対照細胞としては、(i)第1の細胞と作用物質との接触に先立つ第1の細胞;及び(ii)作用物質と接触させていない第2の細胞が挙げられる。本発明の特定の実施態様では、第1の細胞は、T−カドヘリンを発現する細胞である。また、前記第1の細胞がT−カドヘリンを発現する場合、前記対照細胞は、(iii)T−カドヘリンを発現しない第2の細胞であってもよい。ここで用いる「対照細胞」は、場合によっては、作用物質を接触させるが、より早い時、すなわち、作用物質を前記細胞に接触させる前の細胞と同じ細胞であってもよい。
【0092】
本発明の方法は、第1の細胞と作用物質とを接触させた後の前記第1の細胞における細胞パラメータと、対照細胞における細胞パラメータとを比較するステップをも含んでもよい。対照細胞における細胞パラメータに比べた第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞における細胞パラメータの差異は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質が、アジポネクチンの作用を模倣するかどうかを示すであろう。
【0093】
例えば、(i)測定される細胞パラメータが、細胞とアジポネクチンとの接触に際して増加することがしられるものである場合、及び(ii)第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞における細胞パラメータが、対照細胞における細胞パラメータよりも大きい場合、作用物質は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されるであろう。例えば、測定される細胞パラメータが、脂肪酸酸化、グルコース取り込み、乳酸生産、AMPKリン酸化又はACCリン酸化である場合、その結果、第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞における細胞パラメータが、対照細胞の細胞パラメータよりも大きい場合、作用物質が、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されるであろう。
【0094】
また、作用物質は、(i)測定される細胞パラメータが、細胞とアジポネクチンとを接触させるに際して減少することが知られるものである場合、及び(ii)第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞における細胞パラメータが、対照細胞における細胞パラメータよりも少ない場合、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されるであろう。例えば、測定される細胞パラメータが、インシュリン−依存性グルコース排出である場合、第1の細胞と作用物質とを接触させた後の第1の細胞におけるインシュリン−依存性グルコース排出のレベルが、対照細胞におけるインシュリン−依存性グルコース排出のレベルよりも少ない場合、その結果、作用物質がアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されるであろう。
【0095】
第1及び第2の細胞は、細胞とアジポネクチンとの相互作用により影響をうける細胞パラメータと同じ又は類似の細胞パラメータを提示しうる任意の細胞でありうる。第1及び第2の細胞は、細胞とアジポネクチンとの相互作用により影響をうける細胞パラメータと同じ又は類似の細胞パラメータを天然で提示してもよい。あるいは、第1及び第2の細胞は、細胞とアジポネクチンとの相互作用により影響をうける細胞パラメータと同じ又は類似の細胞パラメータを提示するように操作されてもよい。アジポネクチンとの相互作用に応答して、細胞パラメータの変化を天然で示す典型的な細胞は、肝細胞、筋細胞〔例えば、平滑筋細胞(例えば、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMCs))、骨格筋細胞、筋芽細胞等〕、内皮細胞(例えば、ヒト大動脈内皮細胞(HAECs)等である。
【0096】
また、本発明は、(a)T−カドヘリンを発現する第1の細胞と被験物質とを接触させるステップ、(b)T−カドヘリンを発現しない第2の細胞と被験物質とを接触させるステップ、(c)第1及び第2の細胞と被験物質との接触後の第1及び第2の細胞における細胞パラメータを測定するステップ、及び(d)前記第1の細胞における細胞パラメータと第1及び第2の細胞と被験物質との接触後の前記第2の細胞における細胞パラメータとを比較するステップ、を含む、被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかの決定方法を包含する。
【0097】
好ましい実施態様では、第1及び第2の細胞は、T−カドヘリンの発現を除き、互いに実質的に同一、すなわち、T−カドヘリンを発現する第1の細胞及びT−カドヘリンを発現しない第2の細胞である。好ましくは、T−カドヘリンは、前記第1の細胞の表面に発現する。したがって、第1及び第2の細胞と被験物質との接触後の第1及び第2の細胞間で観察される細胞パラメータのいずれかの差異は、被験物質とT−カドヘリンとの相互作用を反映するであろう。
【0098】
測定される細胞パラメータは、例えば、増加、促進、刺激、減少、減衰、抑制等、アジポネクチンにより影響をうける任意のパラメータである。典型的な細胞パラメータとしては、例えば、脂肪酸酸化、グルコース取り込み又は排出、乳酸生産、5’−AMP−活性化プロテインキナーゼ(AMPK)リン酸化、アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ(ACC)リン酸化、IRS−1−媒介PI−3−キナーゼ活性、平滑筋細胞増殖及び/又は遊走、NF−κBシグナル伝達、cAMP産生、内皮接着分子〔例えば、血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、内皮性白血球接着分子−1(E−セレクチン)、及び細胞内接着分子−1(ICAM−1)〕のTNF−α−誘導発現等が挙げられる。他の細胞パラメータとしては、細胞接着(例えば、内皮への単球接着)、ミエロイド分化、マクロファージサイトカイン生産、食作用、脂質蓄積、アセチル化低密度リポタンパク質粒子の取り込み等が挙げられる。〔ベルグ(Berg)ら、Trends Endocrinol. & Metab. 13:84−89(2002)〕。かかる細胞パラメータの測定方法は、当該技術分野で公知である。〔例えば、ベルグ(Berg)ら、Trends Endocrinol. & Metab. 13:84−89(2002);ヤマウチ(Yamauchi)ら、Nat.Med. 8:1288−1295(2002)〕。
【0099】
本発明の方法によれば、第1及び第2の細胞と被験物質との接触後、前記第1の細胞で測定された細胞パラメータにおける増加により、被験物質を、前記第2の細胞で測定された細胞パラメータに比べて、細胞パラメータが、アジポネクチンが投与されるときに増加することが知られるものである場合、アジポネクチンの作用を模倣するものと同定する。第1及び第2の細胞と被験物質との接触後、前記第2の細胞で測定された細胞パラメータに比べた、前記第1の細胞で測定された細胞パラメータにおける減少は、細胞パラメータが、アジポネクチンが投与されるときに減少することが知られるものである場合、アジポネクチンの作用を模倣するものとして被験物質を同定する。
【0100】
例えば、測定される細胞パラメータが、AMPKリン酸化である場合、及び第1及び第2の細胞と被験物質とを接触させた後、前記第2の細胞(T−カドヘリンを発現しない)よりも前記第1の細胞(T−カドヘリンを発現)で大きい場合、その結果、前記被験物質は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定される。
【0101】
特定の実施態様において、前記被験物質は、抗体である。前記被験物質は、例えば、T−カドヘリンと相互作用する抗体であってもよい。前記抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。
【0102】
本発明の方法で用いられる細胞は、細胞とアジポネクチンとの相互作用により影響をうける細胞パラメータと同じ又は類似の細胞パラメータを提示しうるいかなる細胞でもありうる。本発明の実施で用いられる細胞は、細胞とアジポネクチンとの相互作用により影響をうける細胞パラメータと同じ又は類似の細胞パラメータを天然で提示してもよい。あるいは、第1の及び/又は第2の細胞は、細胞とアジポネクチンとの相互作用により影響を受ける細胞パラメータと同じ又は類似の細胞パラメータを提示するように操作されてもよい。
【0103】
また、本発明は、被験物質が、アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害又は促進するかどうかの決定方法を包含する。特定の実施態様によれば、本発明の方法は、(a)いずれか一方が検出可能なマーカー又は酵素と融合され、他方が適切な担体に固定化されるものである(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片と、(iii)被験物質とを含有した試験混合物を提供するステップ、(b)いずれか一方が検出可能なマーカー又は酵素と融合され、他方が適切な担体に固定化されるものである(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片を含有した対照混合物を提供するステップ、(c)未結合のアジポネクチン及びT−カドヘリンを、試験混合物及び対照混合物から除去するステップ、並びに(d)試験混合物及び対照混合物において、マーカー又は酵素により生じるシグナルを測定するステップを含む。
【0104】
別の実施態様では、本発明の方法は、(a)いずれか一方が検出可能なマーカー又は酵素と融合され、他方が細胞の表面に発現されるものである(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片と(iii)被験物質とを含有した試験混合物とを提供するステップ、並びに(b)いずれか一方が検出可能なマーカー又は酵素と融合され、他方が細胞の表面に発現されるものである(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片を含有した対照混合物を提供するステップ、(c)未結合のアジポネクチン及びT−カドヘリンを、試験混合物及び対照混合物から除去するステップ、並びに(d)試験混合物及び対照混合物におけるマーカー又は酵素により生じるシグナルを測定するステップを含む。
【0105】
アジポネクチン、T−カドヘリン、及びそれらの断片並びにバリアントは、当業者に利用可能な任意の供給源又は方法で得られうる。アジポネクチン、T−カドヘリン及びそれらの断片は、例えば、適切な細胞で分子及び/又は断片を発現する塩基配列を含有した発現ベクターから得られうる。種々の生物由来のアジポネクチン又はT−カドヘリンをコードする核酸分子が当該技術分野で公知である。かかる核酸分子は、発現ベクターに直接的にクローン化されうる。あるいは、前記核酸分子は、発現ベクターに該核酸分子をクローニングするに先立ち、操作及び/又は変異させうる。かかる操作としては、限定されないが、個々のヌクレオチド又はヌクレオチド群を変化させること、翻訳後修飾に供するアミノ酸配列のトランケーション、挿入、欠失及び付加等が挙げられる。
【0106】
アジポネクチン及びT−カドヘリンの断片、誘導体並びにバリアントは、アジポネクチン及びT−カドヘリンの配列の免疫原性を破壊しないマイナーな修飾を含んでもよい。限定的な修飾は、T−カドヘリン及びアジポネクチンの生物学的機能を破壊することなくなされてもよく、全一次構造の一部分のみが活性に作用するために要求されてもよい。かかるマイナーな修飾は、実質的に同等又は向上した機能を有するタンパク質をもたらしてもよい。典型的なアジポネクチンの断片は、アジポネクチンの球形ドメイン又はコラーゲンドメインを、含有するもの、又は代わりに本質的にからなるもの、又は代わりにからなるものであってもよい。T−カドヘリンの典型的な断片は、T−カドヘリンの1又はそれ以上の5つのカドヘリンドメイン、好ましくは、T−カドヘリンのカドヘリンドメイン1(配列番号:55)を、含有するもの、又は代わりに本質的にからなるもの、又は代わりにからなるものであってもよい。
【0107】
本発明の特定の概念によれば、アジポネクチン、アジポネクチンの断片、T−カドヘリン又は、T−カドヘリンの断片は、検出可能なマーカー又は酵素に融合される。
【0108】
ここで用いる「検出可能なマーカー」としては、例えば、シグナルを生じるポリペプチド又は該ポリペプチドと相互作用するか又は該ポリペプチドに関する化学反応を検出する1又はそれ以上の薬剤を用いて特異的に検出されうるポリペプチドをコードする任意の塩基配列等をあげることができる。
【0109】
典型的な検出可能なマーカーは、特異的な抗体又は結合試薬により認識されうるエピトープタグ〔例えば、FLAG、Strep、ポリヒスチジン、VSV−G、ヘマグルタニン、c−myc及びトリペプチドGlu−Glu−Phe等〕及び翻訳後に修飾されるアミノ酸配列を包含する。本発明に用いられうる典型的な翻訳後修飾としては、ビオチニル化、4−ホスホパンテテインの結合、脂肪酸の結合、フラビンの結合及びグリコシル化を包含する。アミノ酸配列の翻訳後修飾に関するさらなる詳細は、米国特許第5,252,466号明細書に見出され得、参照により本明細書に取り込まれる。また、検出可能なマーカーは、放射標識(例えば、14C又は3H)、色素及び金属ゾルでありうる。
【0110】
検出可能なマーカーは、ある場合には、標識と物理的に相互作用する標識又は分子種であってもよい。標識は、検出が分光学、光化学、免疫化学、物理学又は化学でありうる任意の検出可能な組成物であってもよい。例えば、有用な標識は、32P、35S、3H、14C、125I、131I、蛍光色素(例えば、FITC、ローダミン及びランタニド蛍光物質)、高電子密度薬剤、例えば、ELISAに一般的に用いられる酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ及びアルカリホスファターゼ)、ビオチン、ジオキシゲニン、又は抗血清又はモノクローナル抗体が利用可能であるハプテン及びタンパク質を包含しうる。前記標識は、検出対象の標的分子(例えば、アジポネクチン又はT−カドヘリン)に直接的に取り込まれてもよく、標的に結合するプローブ又は抗体に結合させてもよい。
【0111】
「酵素に融合」の表現は、アジポネクチン、アジポネクチンの断片、T−カドヘリン又はT−カドヘリンの断片が、共有結合により又は非共有結合により、1又はそれ以上の化学反応に関与する酵素、特定の薬剤で検出されうる産物又は中間体に付着することを意味することを意図する。例えば、ある酵素は、他の化学成分と組み合わさった場合に色の変化を引き起こす分子を産生する反応を触媒する。他の酵素は、種々の化学薬剤及び草地を用いて検出されうる化学中間体を産生する。
【0112】
本発明の特定の概念によれば、アジポネクチン又はアジポネクチンの断片が検出可能なマーカー又は酵素に融合される場合、ついで、T−カドヘリン又はT−カドヘリンの断片は、適切な担体に固定化されるであろう。逆に、T−カドヘリン又はT−カドヘリンの断片が検出可能なマーカー又は酵素に融合される場合、ついで、アジポネクチン又はアジポネクチンの断片は、適切な担体に固定化されるであろう。
【0113】
本明細書に用いる「適切な担体」の用語は、直接的に又は間接的に、ポリペプチドが付着されうるいかなる固体表面をも意味することを意図する。適切な担体としては、例えば、ビーズ、マトリックス、例えば、ペトリ皿、マイクロタイターウェル、試験管、顕微鏡用スライド、カバースリップ等の他の固体表面等が挙げられる。ポリペプチドを担体に固定化する方法は、当該技術分野で公知である。
【0114】
本発明の特定の他の概念によれば、アジポネクチン又はアジポネクチンの断片が検出可能なマーカー又は酵素に融合される場合、ついで、T−カドヘリン又はT−カドヘリンの断片は、細胞の表面で発現されるであろう。逆に、T−カドヘリン又はT−カドヘリンの断片が検出可能なマーカー又は酵素に融合される場合、ついで、アジポネクチン又はアジポネクチンの断片は、細胞の表面に発現されるであろう。
【0115】
細胞の表面でタンパク質を発現する方法は、当該技術分野でよく知られる。例えば、タンパク質は、細胞の表面で正常に発現又は細胞の表面に送達される配列に、結合又は融合されるように発現されうる。例えば、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、及び他の動物等のいかなるタイプの細胞もT−カドヘリン又はアジポネクチンをその表面で発現させるために用いられうる。
【0116】
被験物質が、アジポネクチンとT−カドヘリン(又はその断片)との間の相互作用を阻害又は促進するかどうかを決定するために、試験混合物(被験物質を含む)中のマーカー又は酵素により生成されたシグナルが、対照混合物(被験物質を含まない)中のマーカー又は酵素により生成されたシグナルと比較される。
【0117】
マーカー又は酵素により生成されたシグナルを測定する前に、まず、未結合のアジポネクチン及びT−カドヘリンを、試験混合物及び対照混合物から除去することが好ましい。「未結合のアジポネクチン及びT−カドヘリン」の表現は、適切な担体に又は細胞の表面に、直接的又は間接的(例えば、ポリペプチドとの相互作用を介して)に結合しないアジポネクチン、アジポネクチンの断片、T−カドヘリン及びT−カドヘリンの断片を意味することが意図される。
【0118】
例えば、T−カドヘリンが適切な担体に固定化され、標識アジポネクチンが加えられる場合、適切な担体に(固定化されたT−カドヘリンとのその相互作用を介して)結合しない任意のアジポネクチンが、マーカー又は酵素から生成されたシグナルを測定するに先立って試験混合物及び対象混合物から除去されることが望ましい。未結合のアジポネクチン及びT−カドヘリンを除去することにより、測定されるシグナルがアジポネクチン及びT−カドヘリンが相互作用する度合いをより的確に反映するであろう。
【0119】
同様に、細胞の表面でT−カドヘリンを発現させ、標識アジポネクチンを加える場合、マーカー又は酵素により生成されたシグナルを測定するに先立ち、細胞の表面に(表面で発現したT−カドヘリンとのその相互作用を介して)結合しない任意のアジポネクチンが試験混合物及び対照混合物から除去されることが望ましい。未結合のアジポネクチン及びT−カドヘリンを除去することにより、測定されるシグナルは、アジポネクチン及びT−カドヘリンが相互作用する度合いをより的確に反映するであろう。
【0120】
ある実施態様では、免疫沈降は、結合標識成分と遊離標識成分とを分離するために用いられてもよい。抗体を、溶液中から非標識成分を出す(この成分が他の標識成分と結合しているかどうか)ために用いてもよい。分離後、溶液中に存在する標識(遊離)及び固相中又は固相上に存在する標識(結合)を測定してもよい。かかる結合及び遊離データの標準的な解析、例えば、スキャッチャード(Scatchard)プロット並びに結合についての親和性係数及び阻害係数の決定は、当業者に良く知られる。
【0121】
前記固相が粒子状物質ではない、例えば、マイクロタイタープレートウェル等の表面の形態の場合、ついで、結合及び遊離標識を測定する結合アッセイを行ってもよいが、これは、通常、結合反応が起こった後のウェルから液相を除去することを含むであろう。有利なことに、このアッセイ形式は、特異的に標識された反応成分を供給する必要の手間を省くであろう。代わりに標識抗体を用いて、固相成分へのそれまでは遊離の反応成分の結合を測定するために用いてもよい。
【0122】
免疫学的結合アッセイは、当該技術分野で公知である。概説として、メソッド イン セル バイオロジー(Methods in Cell Biology)、第37巻:細胞生物学における抗体(Antibodies in Cell Biology)、アサイ(Asai)(編)Academic Press,Inc. New York(1993)を参照のこと。
【0123】
本発明のアッセイの間中、インキュベーション及び/又は洗浄ステップを、各薬剤の利用後又は薬剤の組み合わせのインキュベーション後に必要としてもよい。インキュベーションステップは、約5分から数時間、恐らく約30分から約6時間まで変更してもよい。しかしながら、インキュベーション時間は、通常、アッセイ形式、分析対象物、溶液の容積、濃度等に依存する。通常、前記アッセイは、室温で行われるべきであるが、例えば、10℃から40℃の範囲の温度で行われてもよい。1つの実施可能なアッセイ形式は、酵素免疫吸着法(ELISA)である。
【0124】
試験混合物及び対照混合物から未結合のアジポネクチン及びT−カドヘリンを除去後、試験混合物及び対照混合物において、マーカー又は酵素により生成されたシグナルを測定する。前記シグナルは、特定の検出可能なシグナルを考慮して適切な任意の技術を用いて測定されうる。例えば、前記シグナルは、色又は紫外線吸光、濁度等を測定する装置を用いて測定されうる。あるいは、測定は、一貫性のある測定基準が用いられるのであれば、手動で、例えば、肉眼により行われうる。
【0125】
対照混合物におけるマーカー又は酵素により生成されたシグナルに比べた試験混合物中におけるマーカー又は酵素により生成されたシグナルの減少は、アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用の被験物質による阻害能を示す。
【0126】
対照的に、対照混合物におけるマーカー又は酵素により生成されたシグナルに比べた試験混合物中におけるマーカー又は酵素により生成されたシグナルの増加は、アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用の被験物質による促進能を示す。
【0127】
前記被験物質は、任意の分子又は化合物でありうる。前記被験物質は、例えば、抗体であってもよい。特定の実施態様では、前記被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する抗体である。T−カドヘリンと相互作用する抗体は、モノクローナル抗体でもよい。
【0128】
また、本発明は、アジポネクチンと相互作用するポリペプチドの同定方法を包含する。本発明のこの概念によれば、前記方法は、(a)表面に異なる候補ポリペプチド(前記候補ポリペプチドは、アジポネクチンとのその相互作用について試験されるものである)を発現する2又はそれ以上の細胞を含有した細胞の集団を得るステップ、(b)細胞の集団とベイトポリペプチドとを接触させるステップ、(c)ベイトポリペプチドが結合しない細胞からベイトポリペプチドが結合した細胞を分離するステップ、及び(d)ベイトポリペプチドが結合した細胞の表面で発現する候補ポリペプチドを同定するステップを含む。ベイトポリペプチドが結合した細胞の表面で発現する候補ポリペプチドは、アジポネクチンと相互作用するポリペプチドである。
【0129】
本発明のこの概念によれば、前記「ベイトポリペプチド」は、アジポネクチン、アジポネクチンの断片、検出可能なマーカー若しくは酵素と融合されたアジポネクチン、検出可能なマーカー若しくは酵素と融合されたアジポネクチンの断片又はアジポネクチンの他の任意のバリアントである。
【0130】
ベイトポリペプチドが結合した細胞は、当該技術分野でよく知られた方法:例えば、細胞を、ベイトポリペプチドと相互作用する作用物質を結合する固相表面又はマトリックスを含有した組成物と接触させること等を用いて、ベイトポリペプチドが結合していない細胞から分離されうる。ついで、固相表面又はマトリックスを、あらゆる未結合細胞から除去し、ベイトポリペプチドが結合した細胞に持っていき、かかる細胞をベイトポリペプチドが結合していない細胞から分離することができる。
【0131】
ベイトポリペプチドは、検出可能なマーカーと融合させたアジポネクチン又は検出可能なマーカーと融合させたアジポネクチンの断片であり、該検出可能なマーカーが蛍光シグナル放射するか、又は直接的に又は間接的に蛍光シグナルを放射する作用物質と相互作用できる(例えば、蛍光標識抗体)場合、ついで、分離ステップは、蛍光細胞分離〔FACS〕を用いて達成されうる。FACSのプロセスは、当該技術分野でよく知られる。
【0132】
細胞の集団中の細胞の表面で発現される候補ポリペプチドは、特定の実施態様では、細胞内の発現ベクターから発現されうる。例えば、細胞の表面上に種々の候補ポリペプチドを発現する発現ライブラリーが適切な細胞型に導入され得、得られた細胞の集団(それぞれ異なるメンバーのライブラリーを発現する)が本発明の方法に用いられうる。
【0133】
ベイトポリペプチドが結合した細胞を、ベイトポリペプチドが結合していない細胞から分離後、ベイトポリペプチドが結合した細胞の表面上に発現される候補ポリペプチドが同定されうる。例えば、発現ベクター型候補ポリペプチドが発現される場合、前記ベクターは、細胞から単離され得、候補ポリペプチドの核酸配列が当該技術分野でルーチンな方法を用いて決定される。アミノ酸配列は、核酸配列から翻訳され得、細胞の表面上に発現されるポリペプチドのアイデンティティーが解明される。あるいは、ベイトポリペプチドが結合する細胞の表面上に発現されるポリペプリドのアミノ酸配列が、当該技術分野でよく知られる方法を用いて、解明される。
【0134】
本発明の方法又はその特定の概念は、ハイスループットスクリーニングとの関連で行なわれてもよい。例えば、自動化システム及び装置を用いて、試料を処理することができ、薬剤を組合すことができ、未結合タンパク質を除去することができ、種々の細胞/生理学的パラメータを記録することができ、本方法に関連する他のステップを行なうことができる。ハイスループットシステムは、同時に又は連続して、数百又は数千の試料をアッセイするために用いられてもよい。本発明の方法のいずれかをハイスループットスクリーニング形式に応用することは、当業者により達成されうる。
【0135】
本発明の他の概念では、医薬組成物の製造方法が提供される。本発明のこの概念の方法は、アジポネクチンの作用を模倣しうる又はアジポネクチン−T−カドヘリン相互作用を調節しうる作用物質を同定するステップ、及びさらに化合物、又はその誘導体若しくはホモログと薬学的に許容されうる担体(すなわち、賦形剤)とを混合するステップを含む。かかる作用物質を同定することは、本明細書の他の場所で述べられる本発明の方法のいずれかにより行なわれうる。いくつかの実施態様において、作用物質は、抗体、例えば、モノクローナル抗体であってもよい。
【0136】
適切な担体、すなわち賦形剤は、当該技術分野でよく知られる。担体又は賦形剤は、固体であってもよく、半固体であってもよく、有効成分のためのビヒクル又は培地として働く固体、半固体又は液体材料であってもよい。当業者は、選択された産物の特定の特徴、治療対象の疾患又は状態、疾患又は状態の段階及び他の関連する環境〔レミングストンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、Mack Publishing Co.(1990)〕に応じて、正しい形式及び様式の投与を容易に選択できる。薬学的に許容されうる担体、すなわち、賦形剤の割合及び性質は、選択された薬学上有効な化合物の溶解性及び化学的性質、選択された投与経路及び標準的な薬務により決定される。前記医薬品(pharmaceutical preparation)は、経口、非経口又は局所用途に適用してもよく、患者に、錠剤、カプセル、坐剤、溶液、懸濁物等の形態で投与してもよい。本発明の薬学上有効な作用物質は、それ自体有効であるが、安定性、結晶化の利便性、溶解性の増加等の目的で、酸付加塩若しくは塩基付加塩等のそれらの薬学的に許容されうる塩の形態で処方され、投与されうる。
【0137】
さらなる実施態様では、疾患又は状態、好ましくは、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患(CAD)、I型糖尿病、II型糖尿病から選ばれたもの等の治療又は予防的治療のための、本発明の方法により同定された作用物質が提供される。前記作用物質は、ある実施態様では、抗体、例えば、モノクローナル抗体であってもよい。
【0138】
さらに、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より好ましくは選択されたもの等の疾患又は状態から選ばれた哺乳動物における疾患又は状態の治療及び/又は予防方法が提供される。本発明のこの概念の方法は、治療上有効量の本発明の方法で同定された作用物質を哺乳動物に投与するステップを含む。前記化合物は、ある実施態様では、抗体、例えば、モノクローナル抗体であってもよい。
【0139】
他の実施態様では、アジポネクチンの作用を模倣しうる薬剤の製造のための、T−カドヘリンの使用が提供される。別の実施態様では、T−カドヘリンは、疾患又は状態、好ましくは、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症から選択されたもの等を治療及び/又は阻害するための薬剤の製造のために使用されてもよい。
【0140】
さらなる概念では、疾患又は状態、好ましくは、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症から選択されたもの等を治療及び/又は予防するための薬剤としての使用のために、T−カドヘリン又はその断片に特異的に結合する本発明の方法により同定された作用物質が提供されてもよい。前記化合物は、ある場合には、抗体、例えば、モノクローナル抗体であってもよい。
【0141】
本発明の他の概念では、アジポネクチンの作用を模倣しうる薬剤の製造のために、T−カドヘリン又はその断片に特異的に結合する本発明の方法により同定された作用物質が提供されてもよい。あるいは、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症等の疾患又は状態を治療及び/又は阻害するための薬剤の製造のために、T−カドヘリンに特異的に結合する本発明の方法により同定された化合物を用いてもよい。作用物質は、ある実施態様では、抗体、例えば、モノクローナル抗体であってもよい。
【0142】
T−カドヘリンの断片及び誘導体及びバリアントは、T−カドヘリンの5つのカドヘリンドメイン(配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59)の1又はそれ以上、好ましくは、T−カドヘリンのカドヘリンドメイン1(配列番号:55)を、含有するもの、又は代わりに本質的にからなるもの、又は代わりにからなるものであってもよい。
【0143】
本発明により、本発明の方法により同定された作用物質が、当業者に公知の適切な賦形剤の存在下に処方された医薬組成物も提供される。前記組成物は、当業者の知識の範囲の何れかの適切な投与方法により何れかの適切な組成物の形態で投与されてもよい。
【0144】
投与の典型的な経路は、非経口である。非経口投与では、本発明の組成物は、薬学的に許容されうる賦形剤と関連して、溶液、懸濁物、乳化物等の注射可能な形態の投与単位で処方されるであろう。かかる賦形剤は、本質的に非毒性であり、非治療的なものである。かかる賦形剤の例は、生理的食塩水、リンガー溶液、ブドウ糖溶液、ハンクス液等である。不揮発性油、オレイン酸エチル等の非水性賦形剤も用いてもよい。好ましい賦形剤は、5% ブドウ糖生理的食塩水溶液である。前記賦形剤は、緩衝液、保存剤等の等張性及び化学的安定性を向上する物質等の少量の添加剤を含んでもよい。
【0145】
作用物質は、タンパク質である場合、同種移植の拒絶反応、GVHD、アレルギー及び自己免疫疾患を抑制するに治療上有効である濃度で好ましくは投与される。投与量及び投与の様式は、個体により依存するであろう。
【0146】
一般的に、前記組成物は、機能タンパク質が、1pg/kg〜10mg/kg、より好ましくは、10ug/kg〜5mg/kg、最も好ましくは、0.1〜2mg/kgの投与量で与えられるように投与される。好ましくは、注射として与えられる。継続的な短時間(30分間)の注入も用いてもよい。本発明の組成物は、5〜20μg/kg/分、より好ましくは、7〜15μg/kg/分の投与量で注入されてもよい。
【0147】
場合によっては、必要とされる「治療上有効量」の作用物質は、治療を必要とする患者を治療するに十分又は少なくとも部分的に疾患又はその合併症を停止するに十分な量であるとして決定される。かかる用途に有効な量は、疾患の重篤度及び患者の健康の一般的状態に依存するであろう。単回投与又は複数回投与が、患者に必要とされ、かつ許容される投与量及び頻度に応じて必要とされてもよい。
【0148】
また、本発明は、(a)アジポネクチン又はその断片又はバリアントと(b)T−カドヘリン又はその断片又はバリアントとを含有し、該アジポネクチン又はその断片又はバリアントが該T−カドヘリン又はその断片又はバリアントと接触するものである、単離されたレセプター−リガンド複合体を提供する。例えば、本発明のレセプター−リガンド複合体は、共有結合により又は非共有結合により互いに結合したものであるアジポネクチンとT−カドヘリンとを含有してもよい。
【0149】
さらに、本発明は、(a)アジポネクチン又はその断片又はバリアントと(b)アジポネクチンレセプターとを含有し、該アジポネクチン又はその断片又はバリアントが該アジポネクチンレセプターと接触するものである、単離されたレセプター−リガンド複合体を提供する。
【0150】
本明細書で用いる「接触する」の表現は、アジポネクチンとT−カドヘリン又は別のアジポネクチンレセプターとの間の結合が直接的である状態(例えば、アジポネクチン及びT−カドヘリンが、互いに直接接触すること)及び(例えば、アジポネクチン及びT−カドヘリンが、互いに直接接触しないが、それぞれ1又はそれ以上の共通の分子と接触すること)を包含することが意図される。
【0151】
本発明のレセプター−リガンド複合体は、例えば、アジポネクチン/T−カドヘリン複合体を認識する抗体を産生すること、動物を免疫すること、肥満症、拒食症、I型又はII型糖尿病、冠動脈疾患等の疾患及び状態に罹患した個体を治療すること、肥満症、拒食症、II型糖尿病、冠動脈疾患等の疾患及び状態を診断すること等に有用である。本発明のレセプター−リガンド複合体の他の用途は、当業者により十分に理解されるであろう。
【0152】
好ましい概念では、前記アジポネクチンは、(i)配列番号:6に記載の配列のコード領域(CDS)を含有した塩基配列、(ii)(i)の配列のいずれかと少なくとも80%の同一性を有する塩基配列、(iii)(i)又は(ii)の塩基配列とハイブリダイズする核酸、(iv)(i)、(ii)又は(iii)の塩基配列のいずれかに相補的な塩基配列、又は(v)(i)の塩基配列にハイブリダイズするものであって、(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の塩基配列のいずれかの断片又はバリアントからなる群より選ばれた塩基配列によりコードされる。
【0153】
本発明の他の概念では、アジポネクチンとそのレセプターとを含有し、該アジポネクチンが、(i)配列番号:4〜配列番号:5、配列番号:7〜配列番号:10、及び配列番号:20から選択された配列のいずれかに記載のアミノ酸配列、(ii)(i)の配列の何れかと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、又は(iii)(i)又は(ii)のアミノ酸配列のいずれかの断片又はバリアントからなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであるレセプター−リガンド複合体が提供される。
【0154】
本発明の1つの概念では、前記レセプター−リガンド複合体は、(i)の配列と少なくとも80%の同一性を示すか、配列番号:4〜配列番号:5、配列番号:7〜配列番号:10及び配列番号:20から選択された配列のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のバリアント、アミノ酸欠失、付加(例えば、融合タンパク質若しくは融合タンパク質)又は配列番号:4〜配列番号:5、配列番号:7〜配列番号:10、及び配列番号:20から選択された配列のいずれか1つに示されるアミノ酸配列の置換を含有したバリアント等を含有するアジポネクチンを含有する。好ましくは、前記バリアントは、配列番号:4〜配列番号:5、配列番号:7〜配列番号:10及び配列番号:20から選択された配列のいずれか1つのアミノ酸配列における少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含有する。好ましい実施態様では、前記アジポネクチンは、配列番号:4〜配列番号: 5、配列番号: 7〜配列番号:10及び配列番号:20から選択された配列のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0155】
好ましくは、アジポネクチンのアミノ酸配列は、配列番号:4〜配列番号:5、配列番号:7〜配列番号:10及び配列番号:20から選択された配列のアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含有する。有用な断片は、例えば、配列番号:4〜配列番号:5、配列番号:7〜配列番号:10及び配列番号:20から選択された配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対して生じたポリクローナル抗体により認識されるエピトープを示す。特に好ましいポリペプチドは、配列番号:4〜配列番号:5、配列番号:7〜配列番号:10及び配列番号:20から選択された配列に示されるアミノ酸配列のいずれか1つによりコードされるものである。また、本発明のレセプター−リガンド複合体のポリペプチドに対して特異的に反応する抗体が提供される。
【0156】
本発明は、さらに、アジポネクチンとそのレセプターとを含有し、該アジポネクチンレセプターが、(i)配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33〜配列番号:47、配列番号:49、配列番号:51及び配列番号:53から選択された配列のいずれか1つに記載の塩基配列、(ii)(i)の配列のいずれかと少なくとも80%の同一性を有する塩基配列、(iii)(i)又は(ii)の塩基配列とハイブリダイズする核酸、(iv)(i)、(ii)又は(iii)の塩基配列のいずれかと相補的な塩基配列、及び(v)(i)の塩基配列にハイブリダイズするものであって、(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の塩基配列のいずれかの断片からなる群より選択された塩基配列によりコードされるものである、レセプター−リガンド複合体を提供する。
【0157】
他の実施態様では、本発明のレセプター−リガンド複合体は、アジポネクチンレセプターを含有し、該アジポネクチンレセプターが、(i)配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58及び配列番号:59から選択された配列のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、(ii)(i)の配列のいずれかと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、又は(iii)(i)又は(ii)のアミノ酸配列のいずれかの断片又はバリアントからなる群より選ばれたアミノ酸配列を有するものである。
【0158】
本発明の1つの概念では、単離及び精製されたレセプター−リガンド複合体は、(i)の配列と少なくとも80%の同一性を示すか、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58及び配列番号:59から選択された配列のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のバリアント、アミノ酸欠失、付加(例えば、融合タンパク質)又は配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、及び配列番号:59から選択された配列のいずれか1つに示されるアミノ酸配列の置換を含有したバリアント等を含有したアジポネクチンレセプターを含有する。好ましくは、前記バリアントは、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58及び配列番号:59から選択されたいずれか1つの配列のアミノ酸配列における少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含有する。好ましい実施態様では、前記アジポネクチンレセプターは、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58及び配列番号:59から選択されたいずれか1つの配列に示されるアミノ酸配列を含有する。
【0159】
好ましくは、前記アジポネクチンレセプターのアミノ酸配列は、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59から選択された配列のアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含有する。有用な断片は、例えば、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58及び配列番号:59から選択されたいずれかの配列に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対して生じたポリクローナル抗体により認識されるエピトープを提示してもよい。特定の好ましいポリペプチドは、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58及び配列番号:59から選択された配列、好ましくは、配列番号:55に示されるいずれか1つのアミノ酸配列を含有するものである。本発明のレセプター−リガンド複合体のポリペプチドに対して特異的に反応する抗体も提供される。
【0160】
配列番号:4〜配列番号:5、配列番号:7〜配列番号:10及び配列番号:20若しくはそれらの断片により、あるいは配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58若しくは配列番号:59又はそれらの断片により記載される、組換え手段若しくは合成手段で生産されたか、又は天然の供給源から単離されたポリペプチドのバリアント及び誘導体も本発明の範囲に包含される。例えば、安定性又は活性等の改良された性質を有してもよい改変されたアミノ酸/ペプチド結合を有するペプチド、非天然アミノ酸及び/又は環状ペプチドを包含する。また、本発明のペプチドは、例えば、ポリペプチド(その断片を含む)の目標とされた送達又は検出のためのタグ等の他のタンパク質との融合物の形態であってもよい。
【0161】
本発明のレセプター−リガンド複合体の範囲に含まれるポリペプチドのバリアントとしては、例えば、少なくとも1つのアミノ酸が欠失又は置換された変異体バリアントの全ての形態が挙げられる。アミノ酸の置換に関連する任意の変化は、好ましくは、中立の又は保存的な置換である。他のバリアントとしては、当該技術分野でよく知られるように、配列における少なくとも1つのさらなるアミノ酸を含有したタンパク質又はポリペプチド及び/又はさらなるアミノ酸配列又はドメインをさらに含有したタンパク質又はポリペプチド、融合タンパク質等が挙げられる。
【0162】
本発明のレセプター−リガンド複合体の範囲内に含まれるポリペプチドのさらなるバリアントとしては、配列における少なくとも1つのアミノ酸が、天然又は非天然アナログであるものが挙げられる。また、配列における1又はそれ以上のアミノ酸は、例えば、物理的な安定性を増加又は酵素活性、特に、プロテアーゼ若しくはキナーゼ活性に対する感受性を低減させるように、化学的に修飾されてもよい。アジポネクチン及びT−カドヘリンの断片及び誘導体及びバリアントは、免疫原性を破壊しないアジポネクチン及びT−カドヘリンの配列の小さな修飾を含んでもよい。限定的な修飾は、T−カドヘリン及びアジポネクチンの生物学的機能を破壊することなくなされてもよく、全1次構造のほんの一部のみが活性に影響を与えるのに要求されてもよい。かかる小さな修飾は、実質的に同等又は向上した機能を有するタンパク質をもたらしてもよい。典型的なアジポネクチンの断片は、アジポネクチンの球状ドメイン又はコラーゲンドメインを、含有したもの、又は代わりに本質的にからなるもの、又は代わりにからなるものであってもよい。T−カドヘリンの典型的な断片は、T−カドヘリンの5つのカドヘリンドメイン(配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59)の1又はそれ以上、好ましくは、T−カドヘリンのカドヘリンドメイン1(配列番号:55)を、含有するもの、又は代わりに本質的にからなるもの、又は代わりにからなるものであってもよい。
【0163】
また、本発明は、本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリンに対して特異的に反応する抗体を提供する。抗体の製造方法は、当該技術分野でよく知られる。本発明のポリペプチドに特異的な抗体は、免疫原量のポリペプチドにより動物を免疫することにより容易に得られうる。したがって、特定のポリペプチドを認識する抗体は、動物を免疫することにより得られるポリクローナル抗体及び抗血清と、本発明のポリペプチドを認識することがウエスタンブロッティング、ELISA、免疫染色又は当該技術分野で公知の他のルーチンな手法により確認されうるポリクローナル抗体及び抗血清との両方を包含する。
【0164】
ポリクローナル抗体が感作により得られうる場合、モノクローナル抗体がハイブリドーマにより分泌されることが知られており、該モノクローナル抗体は、感作動物のリンパ球から得られてもよい〔アンチボディーズ ア ラボラトリー マニュアル(Antibodies A Laboratory Manual) 第6章、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988〕。したがって、本発明のポリペプチドを認識するモノクローナル抗体も提供される。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の生産方法は、当業者に公知であり、科学文献及び特許文献に記載されており、例えば、コリガン(Coligan)、カレント プロトコールズ イン イムノロジー(Current Protocols in Immunology)、ウィリー(Wiley)/グリーン(Green),NY(1991); スタイテス(Stites)(編) ベーシック アンド クリニカル イムノロジー(Basic and Clinical Immunology)(第7版) Lange Medical Publications、Los Altos、CA及びそこに挙げられる参考文献(スタイテス(Stites));ゴディング(Goding)、モノクローナル抗体 原理及び実践(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice)(第2版) Academic Press,New York,NY(1986);及びコラー(Kohler)(1975) Nature 256: 495を参照のこと。かかる技術としては、ファージに又は同様に細胞上に提示された組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択が挙げられる。ヒューズ(Huse) (1989) Science 246:1275及びワード(Ward)(1989) Nature 341:544を参照のこと。組換え抗体は、ノルダーハウ(Norderhaug)(1997) J.Immunol.Methods 204:77−87のように、哺乳動物細胞における一過性又は安定型発現ベクターにより発現されうる。
【0165】
本発明によれば、「抗体」は、その活性断片をも包含する。活性断片とは、抗原−抗体反応の活性を有する抗体の断片を意味する。これらは、具体的に名づけられるF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv等の活性断片である。例えば、本発明の抗体がペプシンで消化された場合、F(ab’)2が生じ、パパインで消化された場合、Fabが生じる。F(ab’)2が2−メルカプトエタノール等の薬剤で還元され、モノヨード酢酸でアルキル化された場合、Fab’が生じる。Fvは、重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とをリンカーが連結される単一の活性断片である。キメラ抗体は、これらの活性断片を残し、これらの活性断片以外の断片について、他の動物の断片と置き換えることにより得られる。特に、ヒト化抗体が、想定される。
【0166】
さらに、本発明は、疾患又は状態、好ましくは、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症から選択されたもの等を治療及び/又は阻害するための医薬の製造のための本発明のレセプター−リガンド複合体の使用を提供する。
【0167】
本発明のレセプター−リガンド複合体をコードする核酸ベクター並びに前記ベクター又は核酸を含有した宿主細胞及び本発明の操作された核酸を含有又は内因性配列を欠損したものである、トランスジェニック、ノックアウト又は遺伝子改変動物(ヒト以外のもの、特に、マウス)も提供される。
【0168】
さらなる概念では、本発明のレセプター−リガンド複合体を含有したキットが提供される。
【0169】
さらに、本発明は、例えば、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症等の疾患又は状態を診断又は予後診断する方法を提供する。かかる方法は、(i)個体由来の試料を得るステップ、(ii)本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)の存在について、該試料を解析するステップ、及び(iii)被験試料におけるレセプター−リガンド複合体のレベルと、正常組織における該複合体のレベルとを比較するステップを含み、正常組織におけるものと比べた被験試料でのレセプター−リガンド複合体濃度の減少として、個体が、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症等の疾患のリスクにさらされていることを示す。
【0170】
さらなる概念では、本発明は、疾患又は状態、例えば、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症等の診断又は予後診断方法を提供する。かかる方法は、(i)個体から試料を得るステップ、(ii)T−カドヘリン又はその断片又はバリアントの存在について、該試料を解析するステップ、及び(iii)被験試料中におけるT−カドヘリンのレベルと、正常組織におけるT−カドヘリンのレベルとを比較するステップを含み、正常組織におけるものと比べた被験試料中におけるT−カドヘリン濃度の減少として、個体が、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症等の疾患のリスクにさらされていることを示す。
【0171】
本発明の意味における不利な予後診断又は診断は、健常な個体の試料に比べた、本発明のレセプター−リガンド複合体〔例えば、レセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)〕の減少又は個体の試料におけるT−カドヘリンの減少が検出される場合、個体が、疾患又は状態、例えば、疾患又は状態、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病又はアテローム性動脈硬化症等に罹患することであろうことである。本発明の1つの実施態様では、個体から得られた試料は、血清であってもよい。本発明の他の実施態様では、前記試料は、組織又は細胞であってもよい。本発明のさらなる実施態様では、細胞培養物中の該試料における細胞を増殖させるステップをさらに含む、疾患又は状態、例えば、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症から選択された疾患又は状態等の診断又は予後診断方法が提供されるであろう。
【0172】
本発明の方法は、典型的には、しばしば、ヒトから得られるであろう、細胞又は組織試料中における本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片の存在、レベル、又は活性の決定を含んでもよい。また、本方法により試験された試料は、ウシ、ウマ、ヒツジ等の農業上重要な哺乳動物又はネコ、イヌ等の他の獣医対象の動物から得られうる。アッセイは、体細胞組織、生殖細胞組織又は癌組織等の任意の細胞又は組織試料や、胸膜液、血液、血清、血漿、尿等の体液由来の試料で行なわれてもよい。
【0173】
本発明による「試料」は、通常、しかし必ずしも必要ではないが、本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片をアッセイ可能な形態で供給するための前処理に供される、解析される物質を包含する。これは、細胞抽出物を形成させることを伴い、その方法は当該技術分野で公知である〔例えば、スコープス(Scopes),タンパク質生成:原理及び実践(Protein Purification:Principles and Practice)、第2版(Springer−Verlag,N.Y.,1987)を参照のこと〕。
【0174】
本発明のより広い概念では、一貫性が維持されるものであれば、試料の回収及び処理に限定はない。前記試料は、生検、外科的切除、塗抹標本等、当該技術分野で公知の方法で得られるものである。任意に、試料中で得られた細胞を細胞培養で増殖させてもよい。
【0175】
本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片あるいは又は臨床の試料におけるその活性の測定の一貫性は、種々の技術を用いることにより確保される。例えば、各組織抽出物の性質の対照として、アルカリホスファターゼ等の他の酵素活性を内部対照として使用できる。また、内部対照は、アッセイ条件の対照として試料中における本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片とともに測定されうる。したがって、解析ステップは、試料中における対照タンパク質を検出するステップを含み得、本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片について得られた値を、対照タンパク質で得られたシグナルを用いて、任意に標準化するステップを含みうる。
【0176】
試料中における本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片の存在は、当該技術分野で公知の方法を用いて、レセプター及び/又はリガンドを検出することにより決定されうる。本発明においては、本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片を測定するため、あるいはそれらの活性を測定するために用いられるアッセイの種類に限定されない。例えば、本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片は、リガンド及び/又はレセプターに特異的な抗体を用いたイムノアッセイにより検出されうる。特異的抗体は、例えば、本発明の方法により同定されたモノクローナル抗体であってもよい。前記抗体は、例えば、全細胞タンパク質又は部分精製タンパク質の酵素結合イムノアッセイ又はドットブロット(抗体サンドウィッチ)アッセイによりタンパク質が同定される二次元ゲルのウエスタンブロット等で用いられうる。
【0177】
試料濃縮方法及びタンパク質精製方法は、文献に記載される〔スコープス(Scopes)、1987を参照のこと〕。例えば、所望であれば、細胞抽出物中に存在する本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片は、硫酸アンモニウムを用いて沈殿させること、又は該抽出物を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、アミコン又はミリポア限外ろ過ユニットに通すことにより、濃縮されうる。前記抽出物を、アニオン又はカチオン交換樹脂若しくはゲルろ過充填剤等の適切な精製用充填剤に負荷させることができ、あるいは分取ゲル電気泳動に供することができる。かかるケースでは、各精製ステップ後の本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片及びタンパク質の収量は、試料中における本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片の量を測定するステップで考慮される必要がある。
【0178】
レセプター及び/又はリガンドに特異的な抗体を用いて本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片は、検出されてもよい。対照アッセイは、例えば、他のカドヘリン分子に特異的な抗体を用いて行なわれうる。状況に応じて、前記方法は、正常組織に対して、試料中における本発明のレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片の減少を相互に関連付けるステップをさらに含んでもよい。
【0179】
「試料」は、好ましくは、組織化学的分析のための固相表面に据え付けた組織試料である。正常組織中に存在する検出可能で、利用しうるレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片の量に比べた、検出可能で、利用可能なレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片の減少は、好ましくない診断又は予後診断の結果に至る。一方、検出可能で、利用可能なレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片の量が正常組織に存在する検出可能で、利用可能なレセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリン若しくはその断片の量と比べて、同一又は増加した場合、このことは、好ましい診断又は予後診断の結果に至る。
【0180】
好ましい実施態様では、本発明は、本発明の診断又は予後診断方法での使用に適したキットを提供する。かかるキットは、これらの方法を行なうに有用な薬剤、例えば、レセプター−リガンド複合体(例えば、T−カドヘリン−アジポネクチン複合体)又はT−カドヘリンに特異的な1又はそれ以上の種由来抗体等を含有する。また、試料に結合する一次抗体の認識及び検出の目的のためのかかる一次抗−T−カドヘリン抗体のいずれか又は両方を認識する二次抗体も含まれうる。かかる二次抗体は、例えば、フルオロフォア、酵素、放射活性標識その他により、検出のために標識されうる。他の検出標識は、当業者が思いつくであろう。あるいは、一次抗−T−カドヘリン抗体は、検出のために標識されうる。
【0181】
当該関連分野に属する通常の知識を有する者にとって、本明細書に記載の方法及び応用への他の適切な改変及び適応は、自明であり、本発明の範囲又は任意の実施態様から逸脱することなくなされるであろうことは明らかであろう。ここで詳細に本発明を述べており、説明のみの目的で本明細書に含まれ、本発明を限定することを意図するものではない下記実施例を参照することにより、本発明は、より明らかになるであろう。
【実施例】
【0182】
実施例1
アジポネクチン発現ベクターの構築
Acrp30及びgAcrp30(=Acrpl6)のクローニング
異なるアジポネクチンドメインのC末端及びN末端融合物を創出することができる手段として、我々は、内因性シグナルペプチドなしのアジポネクチンのコード領域をクローン化することを決定した。すなわち、Qiagen RNeasyキットを用いて、製造者の推奨に従い、全RNAを60mgのマウス脂肪組織から単離した。この全RNAを、ThermoScriptTM RT−PCR System〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)〕を用いて、製造者の推奨に従い、oligo dTプライマーによる逆転写に用いた。このRT反応物を、ついで、プライマー対30 Fwd:GCGGATCCAGAAGATGACGTTACTACAACTG(配列番号:1)とAcrp Rev:GCCTCTAGAGAGTTGGTATCATGGTAGAGAAG(配列番号:2)とを用いたマウスアジポネクチンのアミノ酸(aa)18−247位(=Acrp30、シグナルペプチドなし)のPCR増幅及びプライマー対16 Fwd:GCGGATCCAAAAGGAGAGCCTGGAGAAGCC(配列番号:3)とAcrp Rev:GCCTCTAGAGAGTTGGTATCATGGTAGAGAAG(配列番号:2)とを用いた球状ドメインaa104−247(Acrpl6)のPCR増幅に用いた。
【0183】
両方のフォワードプライマーは、Bam HI部位を含み、リバースプライマーは、Xba I 部位を含み、Acrp30(配列番号:4)及び16(配列番号:5)それぞれのサブクローニングを可能にする。PCR断片を、サブクローン化し、配列決定した。この配列解析は、公の配列と比べて、aa113がMetからVal(ATGからGTG)に変化したことを明らかにした。この変異は、2つの独立した脂肪RNA標品からの全てのPCR増幅物で見出されたので、我々は、公の配列がたぶん間違っていると考える。30を超えるexpression sequence tags (EST)の実際の解析は、113位は、MetでなくValであることを示した。前記アミノ酸番号は、公の配列を参照する(GenBank、U37222、配列番号:7)。
【0184】
タグ付加アジポネクチンバージョンの生成
ついで、Acrp30をコードするcDNA及びAcrp30の球状ドメイン(=Acrpl6)をコードするcDNAを、C−又はN−末端FLAGタグのいずれかを含むベクターにサブクローン化した。生産目的のため、これらの異なるタグ付加バージョンを、pCep−puroにサブクローン化した〔ウッケ(Wuttke)ら、J.Biol. Chem. 2001,Sep 28;276(39):36839−48〕。このベクターは、pCep4(インビトロジェン)の改変バージョンであり、ヒグロマイシン耐性が、ピューロマイシン選択マーカーに交換されている。エプスタイン−バーウイルスの複製開始起点(OriP)及び複製開始因子(EBNA1)により、このプラスミドは、293−EBNA1細胞において、エピソームで、低コピー数で維持され、安定な細胞集団の迅速な創出を可能にする。種々のタンパク質の配列の詳細については、アジポネクチン(Acrp30)について、配列番号:6及び配列番号:7、Acrp30−FLAG−Cについて、配列番号:8、Acrpl6−FLAG−Cについて、配列番号:9、Acrpl6−FLAG−Nについて、配列番号:10を参照のこと。
【0185】
ベイトの真核生物発現
種々のベイトタンパク質を産生させるために、293 EBNA1細胞を、種々のアジポネクチン構築物でトランスフェクトした。細胞を、10% FCSと1% pen/strepと250μg/ml G418とを補足したDMEMで増殖させた。トランスフェクションの一日前、細胞を、1〜3に分けた。トランスフェクションは、リポフェクタミン2000(Lippofectamine 2000)(インビトロジェン)を用い、製造者の推奨に従って実施した。トランスフェクション1日後、細胞を、1μg/ml ピューロマイシンの存在下、10cmディッシュから15cmディッシュに移した。24〜48時間後、全非トランスフェクト細胞を分離させた。プレートがコンフルエンスに達したら、細胞を、1から3の割合で分け、選択を終わらせた。ついで、これらのプレートを、コンフルエントに達しさせ、1から2の割合となるように、回収目的のポリ−L−リジンコートされたプレートに移した。翌日、接着細胞を、PBSで洗浄し、無血清培地を、プレート(10mg/l L−還元グルタチオンと、161mg/l N−アセチル−L−システインと、1% pen/strepと、1μg/ml ピューロマイシンとを補ったDMEM/F12 1:1)に添加した。上清を、3〜4週間に渡って、3 1/2日毎に回収した。細胞のデブリスを、3000gで10分間の遠心分離し、0.2μフィルターによりろ過した。アジポネクチン含有培地を、さらなる処理まで、4℃で維持した。
【0186】
実施例2
ベイトの精製
FLAG−タグ融合タンパク質の濃縮
FLAGアフィニティークロマトグラフィーにより効率的な精製を得るため、FLAGタグタンパク質を、まず、細胞培養上清から濃縮した。2つの異なる方法、アニオン交換クロモトグラフィー又は硫酸アンモニウム沈殿のいずれかを用いた。両方の方法は、他により、首尾よく細胞培養上清から、生物学的活性があるAcrp30を精製するために用いた。2つの方法を、簡単に以下に述べる。
【0187】
アニオン交換クロマトグラフィー
FLAGタグ付加タンパク質〔Acrpl6−FLAG−C(配列番号:9),Acrp30−FLAG−C(配列番号:8)〕を含有した上清を、20mM HEPESを用いて、pH8.0に平衡化させ、アニオン交換カラム〔Q−セファロース ファストフロー;ファルマシア Cat.No.17−0510−01〕に、流速2〜4ml/分、4℃で負荷した。ついで、前記カラムを、少なくとも10カラム容積の20mM HEPES pH8.0、50mM NaClで洗浄した。結合タンパク質を、流速4ml/分で、Akta purifier(Pharmacia)上、20mM HEPES pH8.0を用いて、50〜500mM NaClを5カラム容積、500〜750mM NaClを1カラム容積及び1.5M NaClを1カラム容積のグラジェントで溶出させた。画分を、SDS−PAGEとクマシーブリリアントブルー染色又は抗FLAGウエスタンブロットにより解析した。画分を含むアジポネクチンを、プールし、0.2μフィルターでろ過し、FLAGアフィニティー精製まで4℃で保存した。
【0188】
硫酸アンモニウム沈殿
FLAGタグ付加タンパク質を含む上清〔Acrpl6−FLAG−N(配列番号:10)〕を、20 mM HEPESでpH8.0に平衡化させ、40%w/v 硫酸アンモニウムを、上清に添加した。硫酸アンモニウム沈殿を、4℃で、6から8時間撹拌下に行なった。ついで、沈殿を、8000 g、4℃で1時間ペレット化させた。ペレットを、50mM NaClを補足した20mM HEPES、pH8.0中で再懸濁させた。不溶性物質を、22μM Millex GV滅菌フィルター〔ミリポア〕フィルターを通して、ろ過することにより除去し、再懸濁させた沈殿を、FLAGアフィニティー精製まで4℃で保存させた。
【0189】
FLAGアフィニティークロマトグラフィー
全FLAGタグ付加構築物を、以下のように、M2− FLAG−アガロース樹脂(シグマ、Cat.No.A220)を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製した。ペリスタルティック・ポンプを用いて、濃縮した試料を、室温、流速1−2ml/分でFLAGカラムに送りこんだ。ついで、カラムを、少なくとも20カラム容量のTBS(10mM Tris/HCl pH7.5)で洗浄した。結合タンパク質を、FLAGペプチド〔シグマ、Cat.No.F3290〕を用いて、TBS中0.1mg/mlの濃度で溶出させた。タンパク質を含む画分をため、ミリポアウルトラフリー遠心式フィルター5K(Ultrafree centrifugal filters 5K)〔ミリポア、Cat.No.UFV4BCC25〕を用いて、濃縮した。同じ濃縮フィルターを用いて、PBSへの緩衝液交換を行ない、残余のFLAGペプチドを除去した。種々の試料で、少なくとも200倍希釈を行なった。精製タンパク質を、ミリポアマイレックスフィルター(Millipore Millex filters)〔ミリポア、Cat.No.SLGV 004 SL)を用いて、無菌ろ過し、PBS中、4℃で保存した。
【0190】
ベイトの解析及び定量
IgGを標準として用いて、製造者の推奨に従ったブラッドフォード解析〔バイオラッド(Biorad)〕及び理論吸光係数を用いたUV吸収の両方により、種々のベイト標品を定量した。理論吸光係数を、ExPASyウェブサイトで決定した。すなわち、試料を、PBS中1〜10に希釈し、280nmでの吸光を測定した。濃度は、下記:希釈×MW/s×OD280=mg/ml(MW=分子量、OD=光学(的)濃度)のように算出した。定量の結果を図4に示す。ついで、試料を、UV測定に基づき、1.5 mg/mlに希釈した。タンパク質の純度を、SDS−PAGE及びつづくゲルのクマシー染色により評価した。全試料は、SDS PAGE解析でのメジャーバンド(>90%)の出現により実証されたように高度の純度を示した。Acrp30−FLAG−Cは、タンパク質の差異的なグリコシル化に起因する典型的な報告された3つのバンドを示した。
【0191】
実施例3
アジポネクチン レセプターを含むアルファ・ウイルスcDNA発現ライブラリーの構築
全RNAは、RNeasyTM RNA単離キット〔キアジェン〕を用いて、分化したC2C12 マウス筋芽細胞から単離した。polyA+ RNAの選択は、OligotexTM mRNA単離キット(キアジェン)を用いて行なった。テンプレートスイッチプロトコール〔ズ(Zhu)ら、2001〕を用いて、3’−Sfiオリゴヌクレオチド(5’−AAG CAG TGG TAT CAA CGC AGA GTG GCC GAG GCG GCC TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT TTT VN−3’)(配列番号:11)をプライマーとし、5’−Sfiオリゴヌクレオチド(5’−d[AAG CAG TGG TAT CAA CGC AGA GTG GCC ATT ACG GCC]r[GGG]−3’)(配列番号:12)をスイッチテンプレートとし、PowerScriptTM 逆転写酵素(クローンテック)を用いて、1μg polyA+ RNAから、一本鎖cDNAを生産した。
【0192】
ついで、全量500μl中、アドバンテージ2(Advantage2)ポリメラーゼミックス〔クローンテック〕と、アンカープライマー(5’−AAG CAG TGG TAT CAA CGC AGA GT−3’)(配列番号:13)とを用いて、14サイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、二本鎖cDNAを生産した。二本鎖cDNAを、Qiaquick PCR精製キット〔キアジェン〕で精製し、制限酵素Sfil〔ロシュ〕で消化し、アガロースゲル電気泳動でサイズ分画した。大cDNA(>3kb;画分A)、中cDNA(1.5−3kb;画分B)及び小cDNA(0.4−1.5kb;画分C)に対応する3つの画分を、電気抽出により単離し、別々に、アルファ・ウイルス発現ベクターpDelSfiにクローン化した。サブライブラリーA、B、及びCは、それぞれ、7×106、2×107及び1.2x107の独立の形質転換体からなった。DNAを、プールしたコロニーから、HiSpeed Plasmid Maxiキット(キアジェン)を用いて単離した。
【0193】
イン・ビトロ転写のために、プラスミドを以下のように調製した。5μgの各サブライブラリーは、半分を、制限酵素NotI(ロシュ)、他の半分をPacI(ニューイングランドバイオラボ)で直線化した。5μgのシンドビスウイルス構造タンパク質をコードするヘルパープラスミドpDHEB〔ブレデンビーク(Bredenbeek)ら、1993〕を、制限酵素EcoRIで直線化した。ついで、全制限酵素消化物を、フェノール−クロロホルムで抽出し、エタノール沈殿させ、濃度0.5μg/μlで、RNase−フリーH20に再懸濁させた。1μgの各直線化サブライブラリーとヘルパープラスミドとを、容量20μl中、mMessage mMachineTMキット(アンビコン)を用いたSP6 RNAポリメラーゼ介在イン・ビトロ転写に供した。各サブライブラリーRNAを、等モル量のヘルパーRNAとともに、107 BHK細胞に、コエレクトロポレーションした。トランスフェクション8時間前、細胞上清を、回収し、ウイルス力価を測定した。力価は、画分A、8x106;画分B、1.2x107;画分C、1.5x107であった。
【0194】
実施例4
蛍光細胞分析分離装置によるアジポネクチンレセプターのスクリーニング
サブコンフルエント(80%)の新生ハムスター腎臓(BHK)細胞を、感染の多重度(MOI) 0.2のC2C12ウイルスライブラリーで感染させた。2x107細胞を、各サブライブラリーで感染させた。5.5時間感染後細胞を、細胞解離緩衝液〔シグマ〕で分離し、洗浄し、50μg/mlの濃度でAcrp30−FLAG−Cを用いて45分間染色した。広範な洗浄後、細胞を、30分間、1.8μg/mlの濃度のマウス抗FLAG抗体(FLAG M2、シグマ)でインキュベーションした。洗浄後、細胞を、5μg/mlの濃度のFITC−結合抗−マウスIgG抗体〔ジャクソンイムノリサーチ〕とともに、さらに30分間染色した。全染色は、0.5% FCSを補足したHP1培地(TurboDoma培地、Cell Culture Technologies GmbH)中、4℃で行なった。
【0195】
ついで、細胞プールを、ろ過し、FACS Vantage フローサイトメーター〔ベクトンディッキンソン〕でソーティングを行なった。最初のステップにおいて、FITC−陽性細胞を濃縮し、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、死細胞を除去した。その後、ベイト結合(より高いFL1蛍光)PI陰性細胞について、単一細胞ソーティングを行なった。各ソート後の単一細胞を、50%コンフルエントのBHKフィーダー細胞を含む24−ウェルプレートのウェルでインキュベーションした。ウイルス拡散(ソーティング2−3日後)に際して、感染細胞を、ソーティングについて上記したように、アジポネクチン結合についてFACS解析により試験した。偽陽性事象を除外するため、Fc−レセプター(FcR)染色を平行して行なった。2日目、176ウェル中の69ウェルがウイルス感染の典型的なサインを示し、43ウェルが、アジポネクチンベイトを結合し、4ウェルが、FcRとして同定された。アジポネクチンを結合する20試料を、さらに遺伝子レスキューについて処理した。
【0196】
実施例5
アジポネクチンレセプター、T−カドヘリンをコードするcDNAのレスキュー
推定アジポネクチンレセプターをコードするcDNAを得るために、組換えシンドビスウイルスを含む20の上清を用いて、RT−PCRを行なった。
【0197】
ウイルスRNA単離のために、50μ1のウイルス上清とQIAmp Viral RNAキット〔キアジェン、Cat No.:52409〕を用いた。操作は、製造者のプロトコールに従って行なわれ、RNAを30μlのAVE抽出緩衝液に溶解させた。
【0198】
cDNA合成のために、9μ1のウイルスRNAを、全量20μl中、製造者のプロトコールにしたがって、200単位のSUPERSCRIPTTM II RNase H−逆転写酵素〔インビトロジェン ライフテクノロジーズ,Cat. No.18064−022〕と10pmol LPP2プライマー(5’−ACA AAT TGG ACT AAT CGA TGG C−3’)(配列番号:14)とを用いて、42℃で1時間、逆転写させた。70℃で15分間のインキュベーションにより、反応を終わらせた。相補的RNAを除去するために、PCRに先立ち、cDNAを、2単位のRNase Hを用いて、37℃で30分間処理した。
【0199】
PCRを、5μl cDNAをテンプレートとして用い、Expand High Fidelity PCRシステム〔ロシュ、Cat. No. 1 732 650〕とプライマーGW−Del7630(5’−GGG GAC AAG TTT GTA CAA AAA AGC AGG CTC TAC AAC ACC ACC ACC TCT AG−3’)(配列番号:15)とGW−LPP2 (5’−GGG GAC CAC TTT GTA CAA GAA AGC TGG GTA CAA ATT GGA CTA ATC GAT GGC−3’)(配列番号:16)とを用いて行なった。PCR反応を、25μl反応容量中、2分、94℃の1回の前変性の後、20秒、94℃と20秒、60℃と3分プラス各サイクル毎10秒、68℃とを34サイクルと、20分、68℃の1回の最終サイクルにより、Eppendorf Mastercyclerグラジェントサーマルサイクラーで行なった。得られたPCR産物を、アガロースゲルで解析し、QIAquick PCR精製キット(Cat No.:218104)で、製造者のプロトコールにしたがい単離を行なった。PCR産物を、30μlの抽出緩衝液(lOmM Tris)で抽出し、LPP−1プライマー(ATACGACTCACTATAGGGAGAC)(配列番号:17)を用いて直接配列決定した。得られた配列を、標準ヌクレオチド−ヌクレオチドBLAST (blastn) 類似性検索プログラムとGenBank+EMBL+DDBJ+PDB(EST、STS、GSSなし又はphase 0、1又は2 HTGS配列)の配列とを用いて、同一性又は類似性について解析した。20クローンの解析は、アジポネクチンの新規なレセプターが、T−カドヘリンであることを示した。これらの知見に基づき、残りの23個のアジポネクチン陽性クローンを、T−カドヘリン特異的プライマーT−Cad−1:CAG CCG AGA ACT CCG CTC AC(配列番号:18)とT−Cad−2. CGG TGA GCC GGA ACT TGG AC(配列番号:19)とを用いたRT−PCRにより、解析した。全クローンは、T−カドヘリンであることを示した。そのため、T−カドヘリンは、アジポネクチンの相互作用パートナーとして独立して、43回クローン化された。
【0200】
実施例6
一過性トランスフェクト293細胞において、アジポネクチン−ベイトAcrp30−FLAG−Cは、T−カドヘリンに結合する
独立した発現系で、アジポネクチンとT−カドヘリンとの結合を評価するために、T−カドヘリンを、哺乳動物発現ベクターにサブクローン化した。この目的のため、遺伝子レスキューをもたらすゲートウェイB1及びB2部位を含むT−カドヘリンcDNAを用いて、適切なドナーベクター(pDonor201、インビトロジェン)を用い、製造者の推奨に従って、ゲートウェイBP反応を行なった。得られたクローンを、pEN−T−カドヘリンと命名した。ついで、pEN−T−カドヘリンを、ゲートウェイLR反応に用い、製造者の推奨に従い、cDNAを哺乳動物発現ベクター(pGF−GW)に伝達させた。pGF−GWは、ゲートウェイ技術で組換えられるcDNAが、CMVプロモーターの制御下にあるように、CMVプロモーターの下流のゲートウェイカセット(インビトロジェン)を含む。さらに、pGF−GWは、レトロウイルスLTRの制御下にGFPを含む。このベクターは、フローサイトメトリーによるトランスフェクト細胞の可視化を可能にし、T−カドヘリン及びGFPが同じベクター上にあるので、GFP陽性の全ての細胞が、T−カドヘリンを発現する。293−EBNA細胞を、10cmディッシュあたり4.5×106細胞の密度で、トランスフェクション前の日にまいた。翌日、リポフェクタミン2000(インビトロジェン)を用いて、製造者の推奨に従い、細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション2日後、細胞を、回収し、アジポネクチンで染色した。すなわち、細胞を、50μg/ml 精製Acrp30−FLAG−Cとともに30分間インキュベーションし、マウス抗−FLAG(M2、シグマ、2μg/ml、30分)とCy5−結合抗−マウス(ジャクソン、1μg/ml)とともにインキュベーションした。異なるインキュベーションステップの間、試料を、広範に洗浄した。全染色と洗浄とを、1% FCSを補足したPBSで行なった。ついで、染色された試料を、FACS Calibur〔ベクトンディッキンソン〕を用いて、FACSにより解析した。ずに示されるように、Acrp30−FLAG−Cは、pGF−T−カドヘリンでトランスフェクトした細胞中におけるGFP陽性集団に明らかな結合を示し、GFP陰性(非トランスフェクト)細胞に対しては、結合が検出されなかった。二次薬剤単独では、GFP陰性及びGFP陽性細胞集団のどちらも染色されなかった。同様に、空ベクター(pGF−GW)でトランスフェクトした細胞へのAcrp30−FLAG−Cの結合は検出されなかった。これらのデータは、独立した発現系により、T−カドヘリンがアジポネクチンに特異的に結合し、それゆえ、T−カドヘリンは新規なアジポネクチンレセプターであることを確認する。
【0201】
実施例7
アジポネクチン−T−カドヘリン相互作用の解離係数の決定
アジポネクチン−T−カドヘリン相互作用の解離係数を決定するために実施例6で述べたように、293−EBNA細胞を、pGF−T−カドヘリンでトランスフェクトした。トランスフェクション2日後、細胞を、回収し、実施例6に記載のように、Acrp30−FLAG−C(50、12.5、6.3、3.1、1.6、0.8、0.4及び0μg/ml)の濃度を減少させながら染色した。ついで、細胞を、FACS Calibur〔ベクトンディッキンソン〕を用いて、FACSで解析した。結合親和性を決定するために、FACS WINmdiソフトウェアを用いて、GFP陽性集団の幾何平均蛍光を決定した。種々の試料からの二次薬剤単独で染色した試料の平均蛍光を推定することにより、幾何平均蛍光を正規化し、ついで、全値を、最大蛍光で割った。平均蛍光の正規化値を、Acrp30−FLAG−Cの濃度に対してプロットした。図2に示されるように、結合は、Acrp30−FLAG−Cの最高濃度において飽和し、タンパク質量の減少を伴い、段階的に下降する。最大半減結合の濃度は、2.2μg/mlと決定された。ついで、Kdを、最大半減結合(0.0022g/1)の濃度を、タンパク質の分子量(26546g/Mol)で割ることにより算出し、その結果、Kdが83nMであった。アジポネクチンの循環濃度は、正常個体の血清中10μg/μlの範囲内にあるため、このKdは、T−カドヘリン−アジポネクチン相互作用の生理的役割に合致する。
【0202】
実施例8
アジポネクチン−T−カドヘリン相互作用のインヒビターの同定
小分子インヒビターの同定方法は、当該技術分野でよく知られる〔Comb Chem High Throughput Screen. 1998 Dec;1(4):171−83.概説〕。可溶性T−カドヘリン又はアジポネクチンを、それぞれ、種々の小分子の存在下に添加する前に、アジポネクチン又はT−カドヘリンを固相に結合させる場合には、無細胞系は、最も有用である。小分子は、アジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用をブロックすることを期待される。好ましくは、数百又は数十万ものアッセイが、1アッセイあたり1つの小分子を用いて、並行して実施される。
【0203】
一方、T−カドヘリンを発現する細胞系が用いられてもよく、アジポネクチンと細胞系との間の相互作用は、前記したものと同様のアッセイで小分子を用いてブロックされる。
【0204】
当該技術分野で公知のタンパク質間の相互作用を測定する種々の方法がある(Comb Chem High Throughput Screen. 1998 Dec;1(4):171−83.概説)。
【0205】
実施例9
アジポネクチン−T−カドヘリン相互作用の阻害剤の同定:モノクローナル抗体
動物、好ましくは、マウス、より好ましくは、ヒト化B細胞レパートリを有するマウスが、担体、好ましくは、タンパク質担体に結合したT−カドヘリンの細胞外部分で免疫化される。代わりに、マウスを、T−カドヘリンをコードしたDNA、好ましくは、Tヘルパー細胞エピトープと結合させたものを用いて免疫してもよい。代わりに、マウスを、T−カドヘリンの断片で免疫してもよい。モノクローナル抗体は、標準法〔例えば、第6章、アンチボディーズ ア ラボラトリーマニュアル(Antibodies A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988参照のこと〕を用いて産生される。モノクローナル抗体は、その後、アジポネクチン T−カドヘリン相互作用をブロックする該抗体の能力について、選択されてもよく、それらは、アンタゴニストとして特徴付けられる。代わりに、T−カドヘリンに特異的なモノクローナル抗体を、当該技術分野でよく知られるファージディスプレイ法〔例えば、アザジー(Azzazy)ら、2002,Clin Biochem. 35(6):425−45等を参照のこと〕を用いて産生させてもよい。ついで、特異的モノクローナル抗体は、アジポネクチン T−カドヘリン相互作用をブロックするそれらの能力について、特徴付けられてもよい。
【0206】
実施例10
T−カドヘリンアゴニストの同定
小分子アゴニストの同定方法は、当該技術分野でよく知られる〔Comb Chem High Throughput Screen. 1998 Dec;1(4):171−83.〕。細胞基盤の系は、当該課題にもっとも有用である。具体的に、T−カドヘリンでトランスフェクトされ、それにより、アジポネクチンとの処理に対する応答がはじまる細胞系が産生される。親細胞系は、アジポネクチンに応答しない。ハイスループットスクリーニングアッセイでは、トランスフェクトされた細胞系では、アジポネクチン−様応答を誘発するが、親細胞系では、引き起こさない小分子が探される。
【0207】
実施例11
T−カドヘリンアゴニストの同定:モノクローナル抗体
動物、好ましくは、マウス又はラット、より好ましくは、ヒト化B細胞レパートリを有するマウスが、担体、好ましくは、タンパク質担体に結合させたT−カドヘリンの細胞外部分を用いて免疫される。代わりに、マウスは、T−カドヘリンをコードするDNA、好ましくは、Tヘルパー細胞エピトープに連結させたものを用いて免疫してもよい。代わりに、T−カドヘリンの断片を用いてマウスを免疫してもよい。その後、標準方法〔例えば、第6章、アンチボディーズ ア ラボラトリー マニュアル(Antibodies A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988〕を用いて、モノクローナル抗体を産生させる。ついで、モノクローナル抗体は、イン・ビボで又はイン・ビトロでのアジポネクチンの作用を模倣する能力について、選択され、T−カドヘリンアゴニストとして特徴付けられる。代わりに、T−カドヘリン特異的モノクローナル抗体は、当該技術分野でよく知られるファージディスプレイ法〔例えば、アザジー(Azzazy)ら、2002,Clin Biochem. 35(6):425−45〕を用いて、産生されてもよい。ついで、特異的モノクローナル抗体は、イン・ビボ又はイン・ビトロでのアジポネクチンの作用を模倣する能力について、選択されてもよく、T−カドヘリンアゴニストとして特徴付けられる。
【0208】
実施例12
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビトロでのインシュリン感受性を改善するかどうかの決定方法
アジポネクチンは、インシュリン活性を促進することが示されている。したがって、アジポネクチンレセプター(T−カドヘリン)と相互作用する分子は、おそらく、インシュリン感受性を改善する働きをするであろう。T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、抗体又は他の化学作用物質等は、イン・ビトロアッセイを用いて、インシュリン感受性を改善する能力について試験される。典型的なアッセイは、ベルグ(Berg)ら、Nat.Med. 7:947−953(2001)に記載される。すなわち、肝細胞の単個細胞浮遊液は、ベリー(Berry)及びフレンド(Friend)、J.Cell.Biol. 43:506−520(1969)の手法及びレファート(Leffert)ら、Methods in Enzymol. 58:536−544(1979)の灌流方法を用いて、Sprague−Dawleyラットの灌流から得られる。細胞は、ラット尻尾コラーゲンIで予め被覆されている24ウェルプレート中1ウェルあたり2x105細胞の密度で、組織培養プラスチック上に蒔かれる。これを、96ウェル型に減じて、細胞表面に従って細胞の容積及び数を適合させることができる。プレーティングに際して、細胞を、10% FCSとペニシリン/ストレプトマイシンと10μg/mlとインシュリンとを10μM デキサメタゾンを補ったRPMI 1640培地で培養する。
【0209】
細胞が、プレートに接着した後、培地を、インシュリンとデキサメタゾンとを除外して、5mM グルコースと0.4% FCSとを補ったRPMI 1640培地に交換する。ついで、一晩、細胞を、この低グルコース培地に適合させる。
【0210】
翌朝、培地を新しくし、生理的濃度下のインシュリンを、漸増量の被験物質の存在下又は非存在下に肝細胞培地に添加する。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、抗体等又はT−カドヘリンとの物理的な相互作用を示す化合物である。抗体を用いる場合、該抗体を、好ましくは、約0〜10mg/mlの濃度で投与する。被験物質が化合物である場合、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与する。生理的濃度下のインシュリンは、肝臓のグルコース生産に影響しない平均濃度のインシュリンを意味するものとする。これらの濃度は、典型的には、35pMの範囲であるが、1つのインシュリンバッチから他に変化させてもよい。
【0211】
このアッセイでのインシュリンの至適濃度を決定するために、滴定実験を、インシュリンバッチ毎に行なうべきである。滴定実験のために、典型的には、約0〜約1000pM インシュリンが用いられる。インシュリン作用の促進を試験するために、グルコース生産の減少を導かない最も高い濃度が用いられる。この濃度は、一般的に、35pMの範囲である。
【0212】
ついで、細胞を、さらに24時間インキュベーションする。その後、細胞を、各5mMのアラニン、バリン、グリシン、ピルビン酸及び乳酸を含む無グルコース培地でインキュベーションする。ついで、グルコース生産を、トリンダー(Trinder)アッセイ〔シグマ〕で測定する。被験物質を用いない場合(又は他の適切な対照アッセイ)に観察されるグルコース生産と比べて、被験物質を用いたグルコース生産の減少は、、アジポネクチンの作用を模倣するものとして、被験物質が同定されるであろう。
【0213】
実施例13
T−カドヘリンと相互作用する作用物質が、インシュリン−媒介グルコース取り込み及び/又はイン・ビトロでのIRS−1−媒介PI−3−キナーゼ活性を促進するかどうかの決定方法
アジポネクチンは、分化骨格筋細胞(C2C12)において、インシュリン−媒介グルコース取り込みを促進し、IRS−1−媒介PI−3−キナーゼ活性を促進する。したがって、T−カドヘリンと相互作用する分子は、分子が、アジポネクチンの作用を模倣するかどうかを決定するために、分化C2C12細胞におけるインシュリン媒介グルコース取り込み及び/又はIRS−1媒介PI−3−キナーゼ活性の促進能について、アッセイされうる。これらのアッセイは、マエダ(Maeda)ら、Nat.Med. 8:731−737(2002)及びデルアグリア(del Aguila)ら、Am.J.Physiol. 276:E849−855(1999)に記載のように行なわれうる。
【0214】
すなわち、供給者(ATCC)の指示に従い、培養されたC2C12骨格筋細胞を維持する。分化誘導するために、C2C12細胞を、コンフルエントに達成させ、ついで、2%ウマ血清を補ったDMEMに移す。ついで、この分化培地中で、細胞をさらに5〜7日間インキュベーションする。このとき、筋管形成が最大である。ついで、細胞を、漸増濃度の被験物質の存在下又は非存在下にインキュベーションする。被験物質は、T−カドヘリンに相互作用する作用物質、例えば、抗体等又はT−カドヘリンとの物理的相互作用を示す化合物である。抗体が用いられる場合、該抗体は、好ましくは、約0.1〜10mg/mlの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、該化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。ついで、細胞を、100nMの濃度のインシュリンの存在下又は非存在下に表示時間インキュベーションする。
【0215】
IRS−1関連PI−3−キナーゼ活性の解析のために、処理細胞を、100nM インシュリンとともに5分間インキュベーションし、ついで、回収し、溶解させる。細胞溶解物の1mg試料を、ついで、4μgのIRS−1ポリクローナル抗体とともに免疫沈降させ、4℃で一晩振盪させる。スラリープロテインA−セファロースの40μlの試料を、2時間免疫沈降物に添加し、9,000rpmでの短時間の遠心分離及びPBS−1% NP−40中で3回、500mM LiCl−100mM Tris、pH7.6中2回、10mM Tris・HC1、pH7.4、100mM NaCl及び1M トランス−1,2−ジアミノアシルクロヘキサン(diaminoacylclohexane)−N,N,N8,N8−四酢酸中1回の洗浄により、免疫複合体を得る。ついで、ペレットを、もう一度遠沈させ、PI 3−キナーゼアデノシンアッセイ緩衝液(20mM Tris、pH7.4、100mM NaCl、10mM MgC12、0.5mM EGTA及び120μM アデノシン)で洗浄する。その後、最終ペレットを、40μlのPI 3−キナーゼアデノシンアッセイ緩衝液に再懸濁させる。ホスファチジルイノシトールとホスファチジルセリンとの50μlの試料を、窒素気流中、乾燥させ、100μlの20mM HEPES−1mM EDTA、pH7.4中で超音波処理する。脂質混合物を、氷上で維持し、5μlの本混合物(2μg/μlのホソファチジルイノシトール)を、各試料に添加する。溶液を超音波処理により混合し、ヒートブロック上30℃で10分間インキュベーションする。170μCiの[g−32P]ATPと280μMの非標識ATPとからなる混合物を調製し、反応を、5μlの本混合物を、各試料に添加することにより開始させる。30℃で10分後、反応を、200μlの1N HClを各試料に添加することにより停止させる。Theホスファチジルイノシトール三リン酸(PI3P)を、160μlのクロロホルム−メタノール(1:1)で抽出する。相を、遠心分離により分離し、低有機相を、TLCで除去し、分離する。PI3Pに取り込まれた放射活性を、TLCプレートのリン光イメージングにより決定する。被験物質を用いない場合(又は他の適切な対照アッセイ)に観察されるシグナルに比べて、被験物質を用いたシグナルの増加は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして、被験物質を同定するであろう。
【0216】
インシュリン−媒介グルコース取り込みの促進を決定するため、処理した細胞(前記参照)を、デルアグイラ(del Aguila)ら、Am.J.Physiol. 276:E849−855(1999)に記載のように、グルコース取り込みアッセイで用いた。すなわち、グルコース取り込みは、2−DGを用いてアッセイした。血清飢餓5時間後(被験物質による24h処理の最後の5時間)、細胞を、インシュリン(100nM)の存在下又は非存在下に30分間インキュベーションする。その後、洗浄緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、140mM NaCl、5mM KCl、2.5mM MgS04及び1mM CaC12)で2回細胞を洗浄した。その後、細胞を、緩衝液輸送溶液(0.5mCi 2−[3H] DG/mlと10mM 2−DGとを含む洗浄緩衝液)中、10分間インキュベーションする。取り込みは、溶液の吸引により終わらせる。ついで、細胞を、3回洗浄し、細胞に関連する放射活性を、0.05M NaOH中における細胞溶解、その後のシンチレーション計数により決定する。細胞溶解物のアリコートを、タンパク質含有量の測定に用いる。2−DG取り込みは、タンパク質のミリグラムあたりの分あたりのピコモルとして表される。被験物質を用いない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察されるシグナルに比べて、被験物質を用いたシグナルの増加は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして被験物質を同定するであろう。
【0217】
実施例14
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビトロでのβ−酸化を促進するかどうかの決定方法
アジポネクチンは、単離した筋細胞におけるβ−酸化の強いエンハンサーであることを示している。したがって、T−カドヘリンに相互作用する分子は、筋細胞における脂肪酸酸化の増加を引き起こす作用物質の候補であろう。マウス筋細胞(C2C12細胞)は、筋細胞における脂肪酸酸化を促進する能力について、T−カドヘリンと相互作用する分子をアッセイするのに用いられうる。脂肪酸酸化のアッセイは、フルービス(Fruebis)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 13:2005−2010(2001)に記載される。
【0218】
すなわち、培養C2C12骨格筋細胞を、供給者(ATCC)の指示に従い維持する。分化誘導するために、C2C12細胞を、コンフルエントに達成させ、その後、2% ウマ血清を補ったDMEMに移す。ついで、細胞を、この分化培地において、さらに7日間インキュベーションする。このとき、筋管形成は、最大である。実験1時間前、培地を除去し、プレインキュベーション(MEM、3mM グルコース、4mM、グルタミン、25mM Hepes、1% 遊離脂肪酸 BSAなし、0.25mM オレイン酸)培地を、漸増濃度の被験物質の存在下又は非存在下に添加する。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、抗体等又はT−カドヘリンと相互作用する物理的相互作用を示す化合物等である。抗体が用いられる場合、抗体は、好ましくは、約0.1〜10mg/mlの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。
【0219】
つぎに、[1−C14]オレイン酸〔1μCi/ml、アメリカンラジオラベルドケミカルズ(American Radiolabeled Chemicals)〕を添加し、細胞を、37℃で90分間インキュベーションする。インキュベーション時間後、培地を除去し、液体シンチレーション計数により14CO2についてアッセイする。被験物質を用いない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察されるシグナルに比べて、被験物質を用いたシグナルの増加は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして、被験物質を同定するであろう。
【0220】
実施例15
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビトロでのAMPKリン酸化、ACCリン酸化及び/又は乳酸生産を刺激するかどうかの決定方法
アジポネクチンは、肝臓及び骨格筋における5’−AMP−活性化プロテインキナーゼのリン酸化及び活性化並びにアセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ(ACC)のリン酸化を刺激することを示している。同時に、アジポネクチンは、筋細胞における脂肪酸酸化及び乳酸生産を刺激し、肝臓におけるグルコース新生に関与する分子の減少を示した。アジポネクチンのこれらの効果は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質がアジポネクチンの活性を模倣するかどうかを決定するのに用いられうる。これらの活性の評価は、ヤマウチ(Yamauchi)ら、Nat.Med. 8:1288−1295(2002)で既報のように行なわれうる。
【0221】
すなわち、培養C2C12骨格筋細胞は、提供者(ATCC)の指示に従い維持される。分化誘導するために、C2C12細胞を、コンフルエントに達成させ、ついで、2%ウシ血清を補ったDMEMに移す。その後、細胞を、さらに5〜7日間、この分化培地でインキュベーションする。このとき、筋管形成は最大である。ついで、細胞を、漸増濃度の被験物質の存在下又は非存在下にインキュベーションする。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、抗体等又はT−カドヘリンとの物理的相互作用を示す化合物である。抗体を用いる場合、抗体は、好ましくは、約0.1〜10mg/mlの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。
【0222】
その後、ACC及びAMPKのリン酸化状態は、短時間、被験物質の添加時点から処理後1時間まで、モニターされる。これらの2つのタンパク質のリン酸化状態は、AMPK〔セルシグナリング〕及びACC〔アップステートバイオテック〕に対する蛍光体特異的抗体を用いたイムノブロット解析で評価される。すなわち、細胞を回収し、溶解させる。その後、種々の試料におけるタンパク質の濃度を決定し、等量のタンパク質を、ポリアクリルアミドゲルに負荷する。ついで、タンパク質を、ウエスタンブロッティングによりニトロセルロースに移す。その後、リン酸化ACC及びAMPKそれぞれの量がACC及びAMPKに対するリンペプチド特異的抗体と適切な二次薬剤とを用いて評価される。同様に、AMPK及びACCの酵素活性を、ミノコシ(Minokoshi)ら、Nature 415:339−343(2002)に記載のように測定する。すなわち、C2C12細胞におけるアイソフォームAMPK比活性を測定するために、プロテインA又はプロテインGセファロースビーズに結合させたAMPKに対する特異的抗体を用いて100μgの細胞溶解物からAMPKを免疫沈降させる。ついで、キナーゼ活性を、合成ペプチド(SAMS)及び[D−32P] ATPを用いて測定した。C2C12細胞溶解物中におけるACCの活性を、ACCのアロステリックアクチベータ活性化剤である2mM クエン酸の存在下又は非存在下での酸安定産物への14CO2固定化により測定する。被験物質が用いられない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察されたシグナルと比べて、被験物質を用いたシグナルの増加は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして被験物質を同定するであろう。
【0223】
分化C2C12細胞でのd乳酸生産におけるT−カドヘリン抗体又は化学作用物質の活性を試験するため、該細胞を、前記のように分化させ、漸増濃度の被験物質の存在下又は非存在下にインキュベーションする。前記被験物質は、T−カドヘリンに相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。抗体が用いられる場合、該抗体は、好ましくは、約0.1〜10mg/mlの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、該化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。ついで、前記細胞を、1時間インキュベーションし、乳酸生産を、0、15、30及び60分間のインキュベーション後に測定する。前記乳酸濃度を、熱量法〔Lactate C、和光純薬株式会社、日本、大阪〕を用いて決定する。被験物質を用いない場合 (又は他の適切な対照アッセイ)で観察された乳酸濃度と比べた、被験物質を用いた乳酸濃度の増加は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして、被験物質を同定するであろう。
【0224】
実施例16
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビトロでの平滑筋細胞増殖を阻害するかどうかの決定方法
平滑筋細胞の過剰増殖は、内膜肥厚及び狭窄に関係があるとみなされる。これは、特に、血管形成後又は一般的に動脈損傷後に観察される。アジポネクチンは、平滑筋細胞増殖を減少させることが示される。したがって、T−カドヘリンと相互作用する分子は、平滑筋細胞増殖の減少能についてアッセイされ、それにより、冠動脈疾患の治療に有用な作用物質としてかかる分子を同定する。
【0225】
T−カドヘリンと相互作用する作用物質の有する平滑筋細胞増殖に影響をもたらす能力は、マツダ(Matsuda)ら、J.Biol.Chem. 277:37487−37491(2002)に記載のように試験されうる。すなわち、実験を、Clonetics、CA、USAから得られ、I型コラーゲンで予め被覆したプラスチックプレート〔ベクトンディッキンソン〕中で維持しうるヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC’s)を用いて行なう。前記細胞は、典型的には、4又は5継代で用いられる。細胞増殖アッセイのために、HASMCを、漸増濃度の被験物質の存在下又は非存在下に、2% 胎仔ウシ血清を含み、10ng/ml ヒト組換え血小板由来増殖因子(PDGF)−BB、HB−EGF、塩基性線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)を有するダルベッコ改変イーグル培地中、18時間処理する。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。抗体を用いる場合、該抗体は、好ましくは、約0.1〜l0mg/mlの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、該化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。
【0226】
その後、増殖アッセイを行なう。このアッセイは、一般的に、放射活性標識されたチミジンの取り込みを評価することを含む。典型的には、細胞を、20μCi/mlの[H3]チミジン〔アマシャムファルマシアバイオテック〕に6時間曝露させ、トリプシン処理し、自動細胞回収機を用いてガラスファイバーフィルターに回収する。ついで、増殖速度の指標である[H3]チミジン取り込みを、直接のベータカウンターで測定する。被験物質が用いられない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察された[H3]チミジン取り込みに比べて、被験物質を用いた[H3]チミジン取り込みの減少は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして被験物質を同定するであろう。本アッセイでアジポネクチンの活性を模倣することが示される被験物質は、他に本明細書に記載されたものなどのイン・ビボアッセイをさらに用いて試験されうる。
【0227】
実施例17
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビトロでの平滑筋細胞遊走を阻害するかどうかの決定方法
平滑筋細胞遊走は、血管外傷、例えば、しばしば狭窄に至る血管形成術に際して引き起こされた外傷等の後に観察される。アジポネクチンは、平滑筋細胞遊走を阻害することが示されている。したがって、T−カドヘリンと相互作用する作用物質は、かかる分子がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかを決定するために、それらの平滑筋細胞遊走の阻害能について試験されうる。
【0228】
平滑筋細胞遊走の典型的なアッセイが、マツダ(Matsuda)ら、J.Biol.Chem. 277:37487−3791(2002)に記載される。Clonetics,CA,USAから得られうるヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)は、I型コラーゲン(ベクトンディッキンソン)で予め被覆されたプラスチックプレートで維持される。HASMCは、4〜5継代で用いられる。被験物質がこれらの細胞の遊走に影響を与える能力を評価するために、ボイデンチャンバーを用いうる。HASMCは、1mlあたりの5x104細胞の密度でトランスウェルインサート(コスター、12mm直径、12pm間隙径)に添加される。HASMCの遊走は、漸増濃度の被験物質の存在下又は非存在下における10ng/mlの濃度でのHB−EGFの添加により誘導される。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。抗体が用いられる場合、好ましくは、約0.1〜10mg/mlの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。
【0229】
HASMCの遊走活性をモニターするために、トランスウェルチャンバーを、培養条件下に4時間インキュベーションする。その後、膜の下面上の遊走したHASMCをエタノールで固定し、ヘマトキシリン(heamatoxylin)で染色した。ついで、遊走の程度を高倍率視野(HPF;x400) での染色された核の数をカウントすることにより顕微鏡下でモニターする。
【0230】
ハイスループット形式において、成長因子に応答したHASMCの遊走を測定するために、底に膜を含むカバープレートを有する96ウェルプレート〔ミリポア、マルチスクリーン−遊走、侵襲及び遊走(Multiscreen−Migration,Invasion and Chemotaxis) トレー付マルチスクリーン96−ウェルプレート〕を用いうる。典型的には、HASMCを、上面のプレートに添加し、10ng/mlの濃度の遊走誘導性HB−EGFを底のウェルに添加する。その後、被験物質を、上面のウェル又は底のウェルのいずれかに添加する。ついで、プレートを、決まった時間、典型的には、1〜12時間の間、培養条件下にインキュベーションする。その後、遊走した細胞(底のウェルの細胞)の量を、比色法、放射活性法又は顕微鏡法によりモニターされうる。あるいは、遊走した細胞は、蛍光細胞分析分離装置によりカウントされうる。
【0231】
被験物質が用いられない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察された遊走細胞に比べた被験物質を用いた遊走細胞における減少は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして被験物質を同定するであろう。このアッセイによりアジポネクチンの活性を模倣することが示される被験物質は、本明細書における他の所で記載されるもの等のイン・ビボアッセイを用いて試験されうる。
【0232】
実施例18
イン・ビトロにおいて、T−カドヘリンと相互作用する作用物質がNF−κBシグナル伝達を阻害又はcAMPレベルを刺激するかどうかの決定方法
アジポネクチンは、ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)において、cAMP依存経路を介したTNF−α誘導NF−κBシグナル伝達を阻害することが示されている。したがって、T−カドヘリンと相互作用する分子がTNF−α誘導NF−κBシグナル伝達を阻害する能力は、かかる分子を、アジポネクチンの活性を模倣するものとして同定する。NF−κBシグナル伝達は、例えば、オオウチ(Ouchi)ら、Circulation 102:1296−1301(2000)の方法によりモニターされうる。
【0233】
すなわち、HAECs(Clonetics)を、I型コラーゲン(ベクトンディッキンソン)で予め被覆したプラスチックプレート中で維持する。TNF−α誘導NF−κBシグナル伝達への作用物質の影響を解決するために、コンフルエントな状態におけるHAECsを、漸増量の被験物質を有する0.5% FCSと3% BSAとを含有した培地(ギブコ)中で18時間プレインキュベーションする。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。抗体を用いる場合、該抗体は、好ましくは、約0.1〜10mg/mlの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、該化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。
【0234】
ついで、細胞を、表示時間、終濃度10U/mLのヒト組換えTNF−α〔R&Dシステムズ〕又はビヒクルに曝露する。IκB−αリン酸化を測定するために、プロテオソームインヒビターであるMG132(20μmol/l)を、TNF−α1時間前に、細胞に添加し、リン酸化型のIκB−αを安定化させる。ついで、TNF−αを、細胞に添加する(10U/ml)。ついで、IκB−αのリン酸化状態を、イムノブロット解析で決定する。ローディング対照として、GAPDHに対する抗体を用いる。TNF−αの添加0分、30分及び60分後に、細胞を回収する。全細胞溶解物を、12.5% SDS−PAGEゲル及び上で分離し、ニトロセルロース膜〔アマシャム〕への電気転写を行なう。ついで、膜を、一次抗体(ニューイングランドバイオラボの抗−リン特異的IκB−α Ser32及びバイオジェネシスの抗GAPDH)に曝露し、その後、HRPと結合した二次抗体に曝露する。抗体を、ECL Western Detection Kit (アマシャム)で検出する。被験物質が用いられない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察されたシグナルに比べた、被験物質を用いるシグナルの減少は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして被験物質を同定するであろう。
【0235】
同様に、アジポネクチンは、HAECsにおけるcAMPレベルの増加を導くことが示されているので、被験物質も、それらがアジポネクチンの活性を模倣するかどうかを決定するために、HAECsにおけるcAMPレベルを増加する能力について、評価されうる。例えば、オオウチら、Circulation 102: 1296−1301 (2000)の方法により、cAMPレベルを、アッセイしうる。
【0236】
すなわち、HAECs(24−ウェルプレート中2x105細胞/ウェル)を、0.5% FCSと3% BSAとを含む培地199中漸増量の被験物質で18時間刺激する。ついで、ディッシュを、氷上に置き、培地を氷冷PBSに交換して、反応を停止させる。その後、酵素イムノアッセイキット〔アマシャム〕を用いて、製造者の説明書に従って、細胞内cAMPを決定する。被験物質が用いられない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察されるシグナルに比べた、被験物質を用いたシグナルの増加は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして、被験物質を同定するであろう。
【0237】
実施例19
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビトロでの内皮接着分子発現を阻害するかどうかの決定方法
アジポネクチンは、ヒト動脈内皮細胞(HAECs)中の血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、内皮性白血球接着分子−1(E−セレクチン)及び細胞内接着分子−1(ICAM−1)のTNF−α誘導細胞表面発現を阻害することが示されている。したがって、T−カドヘリンと相互作用する分子を、該分子がアジポネクチンの活性を模倣するかどうかを決定するために、これらの接着分子の発現を阻害する能力について試験しうる。例えば、オオウチ(Ouchi)ら、Circulation 100:2473−2476(1999)に接着分子の細胞表面発現の評価方法が記載される。
【0238】
すなわち、HAECs(Clonetics)を、5% FCSを補ったMCDB131培地(Clonetics)で維持し、4〜6継代の細胞を実験に用いる。I型コラーゲン被覆プレートで培養されたHAECを、コンフルエントに達成させ、漸増量の被験物質を有する0.5% FCSと3% BSAとを含む培地199(Gibco)で18時間インキュベーションする。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。抗体を用いる場合、抗体は、好ましくは、約0.1〜10mg/mlの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、該化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。
【0239】
ついで、細胞を、終濃度10U/mLのヒト組換えTNF−α(R&Dシステムズ)又はビヒクルに6時間を曝露する。ついで、VCAM−1、E−セレクチン及びICAM−1の表面発現は、細胞ELISAにより測定される。すなわち、HAECを、抗ヒトVCAM−1、抗E−セレクチン又は抗ICAM−1モノクローナル抗体(ダコ)とともに、0.5% BSAを含む培地199中1:1000の希釈律で、1時間室温でインキュベーションし、ついで、同じ培地中1:1000の希釈律で西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(キャッペル)とともにインキュベーションする。ついで、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリドによる発色を、492nmで測定する。被験物質を用いない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察されるシグナルに比べて、被験物質を用いたシグナルの減少は、被験物質をアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定するであろう。
【0240】
実施例20
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビボでの血管損傷後の新生内膜肥厚を抑制するかどうかの決定方法
アジポネクチンは、血管損傷後の動物モデルにおける新生内膜肥厚を減少させることが示されている。したがって、T−カドヘリンと相互作用する分子を、該分子をアジポネクチンの活性を模倣するものとして同定するために、血管損傷後の新生内膜肥厚を抑制する能力についてアッセイされうる。新生内膜肥厚の典型的な評価方法は、マツダ(Matsuda)ら、J.Biol.Chem. 277:37487−3791(2002)に記載される。
【0241】
すなわち、マウスにおいて、大腿動脈損傷は、血管内皮を剥離させ、新生内膜過形成を誘導する直線バネワイヤ(直径0.36mm、No.SKI 175 FLP 14−S,INVATEC,Concessio(BS),Italy)によりマウスで誘導される。被験物質は、動物に投与される。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。好ましくは、被験物質は、イン・ビトロアッセイ(例えば、上記を参照のこと)によりアジポネクチンの活性を模倣することが示される作用物質である。抗体を用いる場合、該抗体は、好ましくは、1注射あたり約0.1〜l0mgの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、好ましくは、0〜100mMの濃度で投与される。
【0242】
注射プロトコールは、外科的介入1〜5日前まで、外科的介入時、又は外科的介入1〜10日後のいずれかに開始される。典型的には、試験化合物の単回投与が動物に行なわれるか、あるいは数回注射(1日あたり10回までの注射)が動物に行なわれる。あるいは、マウスを、試験化合物の持続注入により処理し、外科的介入に1〜5日先立ち、外科的介入時、又は外科的介入1〜10日後、注入を開始する。被験物質の一定の送達のために、1日所要量の分子を送達する浸透ポンプ(アルツェット、Newark,DE)を埋め込む。注射研究のために、マウスに対し、示された量の被験物質を、静脈内に又は腹腔内に注入する。
【0243】
同様に、手術の場で、注射手段により、示された濃度の被験物質の局所投与でマウスを処理しうる。対照として、動物を、PBS又は対照分子〔例えば、同じ種(イソタイプ対照)で創出された無関係の抗体〕で処理される。
【0244】
前記処理の有益な効果を評価するために、血管損傷2〜3週間後、マウスを、麻酔し、両方の大腿動脈を、灌流後、回収し、10% ホルマリンで固定し、パラフィンで包埋する。パラフィン包埋後、平行切片を、ヘマトキシリン及びエオシンで染色する。平滑筋細胞を、一次抗体としてシグマ由来のクローン1A4を用いてα−平滑筋アクチンについて免疫染色することにより同定する。ついで、内膜領域と中間領域とを、画像分析ソフトウェアMacSCOPEを用いて測定する。
【0245】
被験物質を用いる場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察された新生内膜肥厚と比べた、被験物質の投与後の新生内膜肥厚の減少は、アジポネクチンの作用を模倣するものとして被験物質を同定するであろう。
【0246】
実施例21
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビボでの冠動脈疾患の発生を減少させるかどうかの決定方法
アジポネクチンは、マウスモデルにおける冠動脈疾患(CAD)の発生に対する抑制効果を有することが示されている。したがって、T−カドヘリンと相互作用する分子を、分子をアジポネクチンの活性を模倣するものとして同定するために、CADの抑制能について、試験しうる。冠動脈疾患の発生の研究のための1つのモデルは、関節硬化症のよく樹立されたモデルであるApo E欠損マウスである。これらのマウスは、高コレステロール血症であり、自然に、重篤な関節硬化症を発生する。
【0247】
T−カドヘリンと相互作用する分子を、Apo E欠損マウスにおける動脈硬化症を抑制する能力について試験する。被験物質は、動物に投与される。被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。好ましくは、前記被験物質は、イン・ビトロアッセイ(例えば、上記参照のこと)によりアジポネクチンの活性を模倣することが示されている作用物質である。抗体を用いる場合、該抗体は、好ましくは、1注射あたり約0.1〜l0mgの濃度で投与される。被験物質が化合物である場合、該化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。これらの実験は、例えば、ヤマウチ(Yamauchi)ら、Nat.Med. 8:1288−1295(2002)に記載のように行なわれうる。
【0248】
すなわち、被験物質の単回投与が動物に与えられる。あるいは、マウスを、被験物質の持続注入で処理する。.被験物質の一定の送達のために、1日所要量の被験物質を送達する浸透圧ポンプ(アルツェット、Newark,DE)を既報〔フリュービス(Fruebis)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 13:2005−2010(2001)〕のように埋め込む。注射研究のために、マウスに対し、示された量の被験物質を、静脈内に又は腹腔内に注入する。対照として、動物を、PBS又は対照分子〔例えば、同じ種で創出した無関係の抗体(イソタイプ対照)〕で処理する。
【0249】
治療の有益な効果を評価するために、種々の時点の後に、動物を研究目的で屠殺し、大動脈アテローム硬化性損傷を解析する。損傷をモニターするために、総腸骨レベルのアーチを形成する切除大動脈の正面スーダンIV染色が、リン酸緩衝化10%ホルムアルデヒド中での固定の後、行なわれる。全動脈領域に対するスーダンIV−陽性領域の割合を算出する。定量的分析を、コンピュータ支援面積測定により行なわれる。アテローム硬化性損傷の免疫組織化学法及び定量を以下のように行なう。すなわち、QCT埋め込み、凍結大動脈弁を、全3つの葉状構造が最初に目に見える大動脈弁の底部の300μm剖検の全てについて10μmの厚さで連続的に薄片にする。各動物由来の5つの切片の全てについて各前方の切片を、Oil−Red Oで染色して、脂質に富む損傷を同定する。下記抗体:抗−マウスマクロファージMac−3〔ファーミンゲン〕及び抗−マウスSRA 2F8〔セロテック〕を用いて、マウス大動脈弁損傷を免疫組織化学的に解析する。各動物についてSRA−陽性マクロファージの割合を決定するために、大動脈のアテローム斑におけるMac−3又はSRA陽性の細胞の全数を各切片でカウントする。
【0250】
被験物質を用いない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察された染色に比べた、被験物質の投与後のOil−Red−0、Mac−3又はSRA染色の減少は、被験物質をアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定するであろう。
【0251】
実施例22
T−カドヘリンと相互作用する作用物質がイン・ビボでの血糖レベルを改善するかどうかの決定方法
アジポネクチンは、インシュリン感受性効果を有し、動物における血糖レベルを改善することを示している。したがって、T−カドヘリンと相互作用する分子を、該分子がアジポネクチンの活性を模倣するものとして同定するために、インシュリン感受性効果を発揮しうる能力及び/又は動物における血糖レベルを改善する能力を試験しうる。血糖レベルの典型的なアッセイ方法は、ベルグ(Berg)ら、Nat.Med. 7:947−953(2001)に記載される。
【0252】
すなわち、被験物質を、野生型マウス、肥満(ob/ob)マウス又はNODマウスのいずれかに投与する。前記被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。好ましくは、前記被験物質は、イン・ビトロアッセイ(例えば、上記を参照のこと)によりアジポネクチンの活性を模倣することが示されている作用物質である。抗体を用いる場合、該抗体は。好ましくは、注射あたり約0.1〜10mgの濃度で投与される。前記被験物質が化合物である場合、該化合物は、好ましくは、約0〜100mMの濃度で投与される。
【0253】
典型的には、前記で示された用量の被験物質の単回投与が動物に行なわれ、又は複数注射(1日あたり10注射まで)が動物に行なわれる。あるいは、マウスを、被験物質の持続注入で処理する。被験物質の一定の送達のために、1日所要量の被験物質を送達する浸透圧ポンプ〔アルツェット(Alzet)、Newark、DE)を埋め込む〔フリュービス(Fruebis)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 13:2005−2010(2001)〕。注入研究のために、マウスに対し、示された量の被験物質を、静脈内に又は腹腔内に注入する。対照として、動物を、PBS又は対照分子〔例えば、同じ種で創出した無関係の抗体(イソタイプ対照)〕。
【0254】
種々の時点でベルグ(Berg)ら、Nat.Med. 7:947−953(2001)に記載のように決定する。すなわち、血糖レベルを、Precision Q−I−Dグルコースメーター〔メディセンス(Medisence)、Abbott、Chicago〕を用いて測定する。前記血糖レベルを、最初の投与から1日後又は定期的なより長い時間にわたってのいずれかで決定する。
【0255】
被験物質を用いない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察された血糖レベルと比べた、被験物質の投与後の血糖レベルの減少は、被験物質を、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定するであろう。前記減少は、ob/ob又はNODマウスを用いる場合、これらのマウスは、大変高いグルコースレベル(250−500mg/dl)を有するため、最も顕著であろう。それでもなお、グルコースレベルの少なくとも一過的な減少は、アジポネクチンの作用を模倣する作用物質の投与後の野生型マウスで観察されるであろう〔ベルグ(Berg)ら、Nat.Med. 7:947−953(2001)〕。
【0256】
実施例23
T−カドヘリンと相互作用する作用物質が体重減少又はイン・ビボでのトリグリセリド又は遊離脂肪酸濃度の減少を引き起こすかどうかの決定方法
アジポネクチンは、高脂肪食下でのマウスにおける血漿中の遊離脂肪酸の上昇レベルを減少させ、マウスの食糧摂取量に影響を及ぼすことなく持続性の体重減少を導くことが報告されている。したがって、T−カドヘリンと相互作用する分子は、該分子がアジポネクチンの活性を模倣するかどうかを決定するため、動物における遊離脂肪酸濃度を減少させる能力について試験されうる。体重減少及び血漿中の遊離脂肪酸レベルに対する作用物質の影響の典型的なアッセイ方法は、フルービス(Fruebis)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 13:2005−2010(2001)に記載される。
【0257】
すなわち、被験物質は、高脂肪食のマウスに投与される。前記被験物質は、T−カドヘリンと相互作用する作用物質、例えば、T−カドヘリンとの物理的相互作用を示す抗体等又は化合物である。好ましくは、前記被験物質が、イン・ビトロアッセイ(例えば、上記参照)によりアジポネクチンの活性を模倣することが示されている作用物質である。抗体を用いる場合、該抗体は、好ましくは、1注射あたり約0.1〜10mgの濃度で投与される。前記被験物質が化合物である場合、該化合物は、好ましくは、約0〜100 mMの濃度で投与される。
【0258】
典型的には、上記で示された用量での被験物質の単回投与は、動物に行なわれ、複数注射(1日あたり10注射まで)が動物に行なわれる。あるいは、マウスは、被験物質の持続注入により処理される。被験物質の一定の送達のために、1日所要量の抗体を送達する浸透圧ポンプ(アルツェット、Newark、DE)を埋め込む。注射研究のために、マウスに対し、示された量の被験物質を、静脈内に又は腹腔内に注入する。対照として、動物を、PBS又は対照分子〔例えば、同じ種で創出した無関係の抗体(イソタイプ対照)〕で処理する。
【0259】
体重損失を決定するために、処理後、種々の時点でマウスを体重測定する。トリグリセリド及び遊離脂肪酸の血漿中の濃度は、市販のキット〔トリグリセリド、シグマ;遊離脂肪酸 和光バイオケミカルズ、大阪〕で決定される。被験物質を用いない場合(又は他の適切な対照アッセイ)で観察された体重、トリグリセリド及び/又は脂肪酸レベルと比べた、体重、被験物質の投与後のトリグリセリド及び/又は脂肪酸レベルの減少は、被験物質をアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定するであろう。
【0260】
実施例24
T−カドヘリン特異的抗体による血糖レベルの減少
血糖レベルとの関連で、アジポネクチン T−カドヘリン相互作用の潜在的な役割を試験するため、T−カドヘリン特異的抗体を、血糖 レベルに影響を及ぼす能力について試験した。アジポネクチンによる血糖低下効果を示すことがすでに述べられているモデルを選択した〔パジャバニ(Pajvani U.P.)ら、J.Biol.Chem. 278,March 2003:9073−9085〕。すなわち、12〜15週齡オスFVBマウスを実験に用いた。食餌中止の2時間後、300μlのPBS、300μl PBS中100μgのウサギガンマグロブリン(ジャクソンイムノリサーチ、No.011−000−002)又は300μl PBS中100pgの抗−T−カドヘリン抗体(サンタクルズ、No.sc−7940)を、マウスに静脈内注射した。血糖レベルを、トリンダーアッセイを用いて、注射直前及び注射後の種々の時点(2時間、4時間及び6時間)でモニターした。実験の全コース中、動物は、餌にアクセスさせなかった。種々の動物は、個々のグルコースレベルで異なるため、全ての値を、基準グルコースレベルの割合として表した。基準グルコースレベルは、注射直前のグルコース値として定義される。図3に結果を示す。長期絶食期から予測されるように、血糖レベルは、全3群の実験のコースで下がる。しかしながら、PBS注射又はウサギガンマグロブリン注射対照動物に比べて、T−カドヘリンに対する抗体を注射した動物において、明らかに速い減少が観察された。これらの結果は、血糖低下に関して、T−カドヘリンに対する抗体がアジポネクチンの作用を模倣することを示す。
【0261】
ここで、少し詳しい説明及び実施例により本発明を十分に述べることで、当業者であれば、本発明の範囲又はいかなる特定の実施太陽に影響を与えることなく、本発明を、広範かつ同等の範囲内の条件、処方、及び他のパラメータに改変又は変化させることにより同様のことを行ないうることは明らかであろし、かかる改変又は変化は、添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されることを意図する。
【0262】
本明細書で述べられた全ての刊行物、特許及び特許出願は、本発明が関係する当業者の知識レベルの指標であり、各刊行物、特許及び特許出願が具体的にかつ個別的に参照により取り込まれるべきであることを示唆した場合と同程度まで、参照により本明細書に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1】図1:一過的トランスフェクト細胞におけるアジポネクチン T−カドヘリン結合のバリデーション。293−EBNA細胞を、pGF−T−カドヘリンでトランスフェクトした。トランスフェクション2日後、細胞を、Acrp30−FLAG−Cで染色した後、マウス抗−FLAG、及びCy5−結合抗マウス抗体とともにインキュベーションを行なうか、あるいは二次抗体のみで染色した。ついで、細胞を、フローサイトメトリーで解析した。ベイト結合(Cy5蛍光)は、Y軸上に示され、GFP発現は、X軸上に示された。Acrp30−FLAG−Cで染色した試料において、GFP陽性集団のみがシフトし、二次薬剤単独で染色した試料ではシフトが観察されなかった。これらのデータは、アジポネクチンが、T−カドヘリンと特異的に相互作用することを示す。
【図2】図2:アジポネクチン T−カドヘリン相互作用のKdの決定。293−EBNA細胞を、pGF−T−カドヘリンでトランスフェクトした。2日後、細胞を回収し、実施例6に記載のように、30−FLAG−Cの量を減らしながら(50、25、12.5、6.3、3.1、1.6、0.8、0.4及び0μg/ml)染色した。解離定数を評価するため、GFP陽性集団の幾何平均蛍光(GMF1)をFACS Winmdiソフトウェアを用いて決定した。ついで、GMF1を下記:(試料のGMFLマイナス二次試薬単独で染色した試料のGMF1)/最大GMFLのように標準化した。タンパク質濃度を、X軸に示し、標準化GMFLを、Y軸に示す。Kdは、最大結合の半分(2.2μg/ml)に必要な濃度を、タンパク質の分子量(26546g/mol)で割ることにより決定された。Kdは、83nMであると決定された。
【図3】図3:抗T−カドヘリン抗体は、血糖レベルを減らす。雄のFVBマウスを、2時間飢えさせ、PBS、100μg ウサギガンマグロブリン又は100μg ウサギ抗T−カドヘリン抗体〔サンタクルズ(Santa Cruz)、sc−7940〕を注射した。血糖レベルを、示された時点で、トリンダー(trinder)アッセイにより測定し、全値を、基準グルコースレベル(注射前のグルコースレベル=0h)に対して標準化した。全実験において、動物を餌に近づけさせなかった。誤差バーは、5匹の動物の平均の標準誤差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)T−カドヘリンと相互作用する被験物質を得るステップ、
(b)該被験物質を第1の動物に投与するステップ、
(c)該被験物質の投与後の該第1の動物における1又はそれ以上の生理学的パラメータを測定するステップ、
(d)該被験物質の投与後の該第1の動物における該1又はそれ以上の生理学的パラメータと、
i. 該被験物質の投与前の該第1の動物及び
ii. 該被験物質が投与されていない第2の動物
からなる群より選ばれた1又はそれ以上の対照被験体における該1又はそれ以上の生理学的パラメータとを比較するステップ、
を含み、
該1又はそれ以上の生理学的パラメータが、血糖濃度、血中遊離脂肪酸濃度、血中トリグリセリド濃度、生理的下のインシュリン濃度の存在下でのグルコース産生、新生内膜肥厚、冠動脈疾患に関連する損傷及び体重からなる群より選択され、
該1又はそれ以上の対照被験体における1又はそれ以上の生理学的パラメータに比べた、該被験物質の投与後に該第1の動物で測定される1又はそれ以上の生理学的パラメータの減少により、該被験物質が、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定される、
被験物質が、アジポネクチンの作用を模倣するかどうかの決定方法。
【請求項2】
該被験物質が、抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該抗体が、モノクローナル抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該第1及び第2の動物が、脊椎動物である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該第1及び第2の動物が、哺乳動物である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
該第1及び第2の動物が、該被験物質の投与に先立ち、対応の野生型動物と比べて、より高いレベルの1又はそれ以上の生理学的パラメータを示す遺伝子改変動物である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該第1及び第2の動物が遺伝子改変マウスである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該遺伝子改変マウスが、ob/obマウス、NODマウス及びApoE−欠損マウスからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該第1及び第2の動物が、マウス、ラット、ラビット、ブタ、ウシ、ヒツジ及びヒトからなる群より選択されたものである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
(a)T−カドヘリンと相互作用する被験物質を得るステップ、
(b)T−カドヘリンを発現する第1の細胞と該被験物質とを接触させるステップ、
(c)該第1の細胞と該被験物質とを接触させた後の該第1の細胞における1又はそれ以上の細胞パラメータを測定するステップ、
(d)該第1の細胞と該被験物質とを接触させた後の該第1の細胞における1又はそれ以上の細胞パラメータと、
i. 該第1の細胞と該被験物質とを接触させるより前の該第1の細胞、
ii. 該被験物質と接触させていない第2の細胞、及び
iii. T−カドヘリンを発現しない第2の細胞
からなる群より選択された、1又はそれ以上の対照細胞における該1又はそれ以上の細胞パラメータとを比較するステップ、
を含み、
該1又はそれ以上の細胞パラメータが、脂肪酸酸化、グルコース取り込み、インシュリン感受性、乳酸生産、5’−AMP−活性化プロテインキナーゼ(AMPK)リン酸化、アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ(ACC)リン酸化、及びIRS−1−媒介PI−3−キナーゼ活性からなる群より選択され、
該1又はそれ以上の対照細胞における該細胞パラメータに比べた、該第1の細胞と該被験物質との接触後の該第1の細胞で測定された該1又はそれ以上の細胞パラメータの増加により、該被験物質が、アジポネクチンの作用を模倣するものとして同定される、
被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかの決定方法。
【請求項11】
該被験物質が抗体である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該第1及び第2の細胞が動物細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項14】
該第1及び第2の動物細胞が肝細胞又は筋細胞である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該第1及び第2の細胞が、C2C12細胞、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMCs)及びヒト大動脈内皮細胞(HAECs)からなる群より選択されたものである、請求項10記載の方法。
【請求項16】
(a)T−カドヘリンと相互作用する被験物質を得るステップ、
(b)T−カドヘリンを発現する第1の細胞と該被験物質とを接触させるステップ、
(c)該第1の細胞と該被験物質とを接触させた後の該第1の細胞における1又はそれ以上の細胞パラメータを測定するステップ、
(d)該第1の細胞と該被験物質とを接触させた後の該第1の細胞における該1又はそれ以上の細胞パラメータと、
i. 該第1の細胞と該被験物質とを接触させるより前の該第1の細胞、
ii. 該被験物質と接触させていない第2の細胞、及び
iii. T−カドヘリンを発現しない第2の細胞
からなる群より選択された、1又はそれ以上の対照細胞における該1又はそれ以上の細胞パラメータとを比較するステップ、
を含み、
該1又はそれ以上の細胞パラメータが、平滑筋細胞増殖、平滑筋細胞遊走、TNF−α−誘導NF−κBシグナル伝達及び接着分子のTNF−α−誘導発現からなる群より選択され、
該1又はそれ以上の対照細胞における該1又はそれ以上の細胞パラメータと比べた、該第1の細胞と該被験物質とを接触させた後の該第1の細胞で測定された該1又はそれ以上の細胞パラメータの減少により、該被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定される、
被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかの決定方法。
【請求項17】
該被験物質が、抗体である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
該抗体が、モノクローナル抗体である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
該第1及び第2の細胞が、動物細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
該第1及び第2の動物細胞が、肝細胞又は筋細胞である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
該第1及び第2の細胞が、C2C12細胞、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMCs)及びヒト大動脈内皮細胞(HAECs)からなる群より選択されたものである、請求項16記載の方法。
【請求項22】
(a)T−カドヘリンを発現する第1の細胞と被験物質とを接触させるステップ、
(b)T−カドヘリンを発現しない第2の細胞と該被験物質とを接触させるステップ、
(c)該第1及び第2の細胞と被験物質とを接触させた後の該第1及び第2の細胞における1又はそれ以上の細胞パラメータを測定するステップ、
(d)該第1及び第2の細胞と被験物質とを接触させた後の該第1の細胞における該1又はそれ以上の細胞パラメータと該第2の細胞における該1又はそれ以上の細胞パラメータとを比較するステップ、
該1又はそれ以上の細胞パラメータが、脂肪酸酸化、グルコース取り込み、インシュリン感受性、乳酸生産、5’−AMP−活性化プロテインキナーゼ(AMPK)リン酸化、アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ(ACC)リン酸化及びIRS−1−媒介PI−3−キナーゼ活性からなる群より選択され、
該第1及び第2の細胞と該被験物質とを接触させた後の該第2の細胞で測定された該1又はそれ以上の細胞パラメータと比べた、該第1の細胞で測定された該1又はそれ以上の細胞パラメータの増加により、該被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定される、
被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかの決定方法。
【請求項23】
該被験物質が、抗体である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
該抗体が、T−カドヘリンと相互作用する抗体である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
該抗体が、モノクローナル抗体である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
該第1及び第2の細胞が、動物細胞である、請求項22記載の方法。
【請求項27】
(a)T−カドヘリンを発現する第1の細胞と被験物質とを接触させるステップ、
(b)T−カドヘリンを発現しない第2の細胞と該被験物質とを接触させるステップ、
(c)該第1及び第2の細胞と該被験物質とを接触させた後の該第1及び第2の細胞における1又はそれ以上の細胞パラメータを測定するステップ、
(d)該第1及び第2の細胞と該被験物質とを接触させた後の、該第1の細胞における該1又はそれ以上の細胞パラメータと該第2の細胞における該1又はそれ以上の細胞パラメータとを比較するステップ
を含み、
該1又はそれ以上の細胞パラメータが、平滑筋細胞増殖、平滑筋細胞遊走、TNF−α−誘導NF−κBシグナル伝達及び接着分子のTNF−α−誘導発現からなる群より選択され、
該第1及び第2の細胞と該被験物質とを接触させた後の該第2の細胞で測定された該1又はそれ以上の細胞パラメータと比べた、該第1の細胞で測定された該1又はそれ以上の細胞パラメータの減少により、該被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定される、
被験物質がアジポネクチンの作用を模倣するかどうかの決定方法。
【請求項28】
被験物質が抗体である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該抗体が、T−カドヘリンと相互作用する抗体である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
該抗体が、モノクローナル抗体である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
(a)一方が検出可能なマーカー若しくは酵素に融合化され、他方が適切な担体に固定される(i)アジポネクチン又はその断片若しくは誘導体及び(ii)T−カドヘリン又はその断片若しくは誘導体と、(iii)被験物質とを含有した試験混合物を供給するステップ、
(b)一方が検出可能なマーカー若しくは酵素に融合化され、他方が適切な担体に固定される、(i)アジポネクチン又はその断片若しくは誘導体及び(ii)T−カドヘリン又はその断片若しくは誘導体を含有した対照混合物を供給するステップ、
(c)試験混合物及び対照混合物から、未結合のアジポネクチンとT−カドヘリンとを除去するステップ、
(d)該試験混合物及び該対照混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルを測定するステップ
を含み、
該対照混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルに比べた該試験混合物中におけるマーカー又は酵素により生じるシグナルの減少が、被験物質が有するアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用の阻害能を示し、
該対照混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルに比べた該試験混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルの増加が、被験物質が有するアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用の促進能を示す、
被験物質がアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害又は促進するかどうかの決定方法。
【請求項32】
該被験物質が、抗体である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
該抗体が、T−カドヘリンと相互作用する抗体である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
該抗体が、モノクローナル抗体である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
(a)一方が検出可能なマーカー若しくは酵素に融合化され、他方が細胞の表面で発現する、(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片と、(iii)被験物質とを含有した試験混合物を供給するステップ
(b)一方が検出可能なマーカー若しくは酵素に融合化され、他方が細胞の表面で発現する、(i)アジポネクチン又はその断片及び(ii)T−カドヘリン又はその断片を含有した対照混合物を供給するステップ、
(c)該試験混合物及び対照混合物から、未結合のアジポネクチンとT−カドヘリンとを除去するステップ、
(d)該試験混合物及び該対照混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルを測定するステップ
を含み、
該対照混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルに比べた試験混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルの減少が、該被験物質が有するアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用の阻害能を示し、
該対照混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルに比べた試験混合物中における該マーカー又は酵素により生じるシグナルの増加が、該被験物質が有するアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用の促進能を示す、
被験物質がアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害又は促進するかどうかの決定方法。
【請求項36】
該被験物質が、抗体である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
該抗体が、T−カドヘリンと相互作用する抗体である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
該抗体が、モノクローナル抗体である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
(a)アジポネクチン又はその断片若しくはバリアントと、(b)T−カドヘリン又はその断片若しくはバリアントとを含有し、該アジポネクチン又はその断片若しくはバリアントが、該T−カドヘリン又はその断片若しくはバリアントと接触するものである、単離されたレセプター−リガンド複合体。
【請求項40】
該アジポネクチンが、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:20及びそれらに少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を含有してなる、請求項39記載の単離されたレセプター−リガンド複合体。
【請求項41】
該アジポネクチンが、(i)配列番号:6、(ii) 配列番号:6に少なくとも80%同一である核酸配列及び(iii)(i)又は(ii)の核酸配列に相補的である核酸配列からなる群より選択された核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含有してなる、請求項39記載の単離されたレセプター−リガンド複合体。
【請求項42】
(a)アジポネクチン又はその断片若しくはバリアントと(b)アジポネクチンレセプター又はその断片若しくはバリアントとを含有し、該アジポネクチン又はその断片若しくはバリアントが、該アジポネクチンレセプターに接触する、単離されたレセプター−リガンド複合体。
【請求項43】
該アジポネクチンが、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:20及びそれらと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を含有してなる、請求項42記載の単離されたレセプター−リガンド複合体。
【請求項44】
該アジポネクチンが、(i)配列番号:6、(ii)配列番号:6と少なくとも80%同一である核酸配列、及び(iii)(i)又は(ii)の核酸配列に相補的な核酸配列からなる群より選択された核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含有したものである、請求項42記載の単離されたレセプター−リガンド複合体。
【請求項45】
該アジポネクチンレセプターが、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58、配列番号:59及びそれらと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を含有したものである、請求項42記載の単離されたレセプター−リガンド複合体。
【請求項46】
該アジポネクチンレセプターが、i.配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33〜配列番号:47、配列番号:49、配列番号:51又は配列番号:53、
ii.(i)の核酸配列と少なくとも80%同一である核酸配列、及び
iii. (i)又は(ii)の核酸配列と相補的な核酸配列
からなる群より選択された核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含有したものである、請求項42記載の単離されたレセプター−リガンド複合体。
【請求項47】
(a)異なる候補ポリペプチドをそれらの表面に発現する2又はそれ以上の細胞を含有する細胞集団を得るステップ、
(b)該細胞集団と、アジポネクチン、アジポネクチンの断片、検出可能なマーカー若しくは酵素と融合化されたアジポネクチン、又は検出可能なマーカー若しくは酵素と融合化されたアジポネクチンの断片であるベイトポリペプチドとを接触させるステップ、
(c)該ベイトポリペプチドが結合していない細胞から該ベイトポリペプチドが結合した細胞を分離するステップ、及び
(d)該ベイトポリペプチドが結合した細胞の表面に発現する候補ポリペプチドを同定するステップ、
を含み、
該ベイトポリペプチドが結合した該細胞の表面で発現される候補ポリペプチドが、アジポネクチンと相互作用するポリペプチドである、
アジポネクチンと相互作用するポリペプチドの同定方法。
【請求項48】
該ベイトポリペプチドが、検出可能なマーカー若しくは酵素と融合化されたアジポネクチン又は検出可能なマーカー若しくは酵素と融合化されたアジポネクチンの断片である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
該ベイトポリペプチドが、配列番号:8、配列番号:9及び配列番号:10からなる群より選択されたアミノ酸配列を含有するものである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
該分離が、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)により達成される、請求項47記載の方法。
【請求項51】
該候補ポリペプチドが、2又はそれ以上の細胞における発現ベクターから発現される、請求項47記載の方法。
【請求項52】
治療上有効量のアジポネクチンの作用を模倣する作用物質若しくは物質又はアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害若しくは促進する作用物質若しくは物質を哺乳動物に投与するステップ、
を含む、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選択された疾患又は状態であるアジポネクチンの欠損又は過多に関連した哺乳動物の疾患又は状態の治療及び/又は予防方法。
【請求項53】
該作用物質又は物質が、請求項1記載の方法により同定されたものである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
該作用物質又は物質が、請求項10記載の方法により同定されたものである、請求項52記載の方法。
【請求項55】
該作用物質又は物質が、請求項16記載の方法により同定されたものである、請求項52記載の方法。
【請求項56】
該作用物質又は物質が、請求項22記載の方法により同定されたものである、請求項52記載の方法。
【請求項57】
該作用物質又は物質が、請求項27記載の方法により同定されたものである、請求項52記載の方法。
【請求項58】
該作用物質又は物質が、請求項31記載の方法により同定されたものである、請求項52記載の方法。
【請求項59】
アジポネクチンの作用を模倣するモノクローナル抗体又はアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害若しくは促進するモノクローナル抗体の治療上有効量を哺乳動物に投与するステップ、
を含む、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選択された疾患又は状態であるアジポネクチンの欠損又は過多に関連した哺乳動物の疾患又は状態の治療及び/又は予防方法。
【請求項60】
該モノクローナル抗体が、請求項3記載の方法により同定されたものである、請求項59記載の方法。
【請求項61】
該モノクローナル抗体が、請求項12記載の方法により同定されたものである、請求項59記載の方法。
【請求項62】
該モノクローナル抗体が、請求項18記載の方法により同定されたものである、請求項59記載の方法。
【請求項63】
該モノクローナル抗体が、請求項25記載の方法により同定されたものである、請求項59記載の方法。
【請求項64】
該モノクローナル抗体が、請求項30記載の方法により同定されたものである、請求項59記載の方法。
【請求項65】
該モノクローナル抗体が、請求項34記載の方法により同定されたものである、請求項59記載の方法。
【請求項66】
該モノクローナル抗体が、請求項38記載の方法により同定されたものである、請求項59記載の方法。
【請求項67】
アジポネクチンの作用を模倣する医薬又はアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害又は促進する医薬の製造のための、T−カドヘリン又はその断片若しくは誘導体の使用。
【請求項68】
低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選択された疾患又は状態であるアジポネクチンの欠損又は過多に関連した疾患又は状態の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、T−カドヘリン又はその断片若しくは誘導体の使用。
【請求項69】
低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選択された疾患又は状態であるアジポネクチンの欠損又は過多に関連した疾患又は状態の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、請求項39記載のレセプター−リガンド複合体の使用。
【請求項70】
低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選択された疾患又は状態であるアジポネクチンの欠損又は過多に関連した疾患又は状態の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、請求項1記載の方法でアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定された作用物質の使用。
【請求項71】
低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選択された疾患又は状態であるアジポネクチンの欠損又は過多に関連した疾患又は状態の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、請求項3記載の方法でアジポネクチンの作用を模倣するものとして同定されたモノクローナル抗体の使用。
【請求項72】
低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選択された疾患又は状態であるアジポネクチンの欠損又は過多に関連した疾患又は状態の治療及び/又は予防のための医薬として用いるための、アジポネクチンの作用を模倣又はアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害若しくは促進するモノクローナル抗体。
【請求項73】
該モノクローナル抗体が、請求項3記載の方法により同定されたものである、請求項72記載の方法。
【請求項74】
該モノクローナル抗体が、請求項12記載の方法により同定されたものである、請求項72記載の方法。
【請求項75】
該モノクローナル抗体が、請求項18記載の方法により同定されたものである、請求項72記載の方法。
【請求項76】
該モノクローナル抗体が、請求項25記載の方法により同定されたものである、請求項72記載の方法。
【請求項77】
該モノクローナル抗体が、請求項30記載の方法により同定されたものである、請求項72記載の方法。
【請求項78】
該モノクローナル抗体が、請求項34記載の方法により同定されたものである、請求項72記載の方法。
【請求項79】
該モノクローナル抗体が、請求項38記載の方法により同定されたものである、請求項72記載の方法。
【請求項80】
T−カドヘリンと請求項1記載の方法でアジポネクチンの作用を模倣又はアジポネクチンとT−カドヘリンとの間の相互作用を阻害若しくは促進するとして同定された被験物質とを接触させるステップを含む、動物におけるアジポネクチンに応答する増加又は減少である1又はそれ以上の生理学的パラメータの増加又は低減方法。
【請求項81】
該1又はそれ以上の生理学的パラメータが、血糖濃度、血中遊離脂肪酸濃度、血中トリグリセリド濃度、生理下濃度のインシュリンの存在下でのグルコース生産、新生内膜肥厚及び冠動脈疾患に関連した損傷、体重からなる群より選択されたものである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
動物における該1又はそれ以上の生理学的パラメータを増加又は低減させることが、アジポネクチンの欠損又は過多に関連した疾患又は状態の進行をそれぞれ妨害する、請求項80記載の方法。
【請求項83】
該疾患又は状態が、低アジポネクチン症、肥満症、拒食症、冠動脈疾患、I型糖尿病、II型糖尿病及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選ばれたものである、請求項82記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526762(P2006−526762A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505297(P2006−505297)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004473
【国際公開番号】WO2004/096272
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(304042375)サイトス バイオテクノロジー アーゲー (26)
【Fターム(参考)】