説明

アジュバントにより増強される免疫療法

【課題】癌細胞などの病原性細胞集団が存在する疾病状態を治療するために改善された方法の提供。
【解決手段】病原性細胞集団を潜む予備免疫された宿主動物において、内因性の免疫応答が介在する、該集団の特異的な排除を増強する方法であり、該細胞集団のメンバーがリガンドに対する到達可能な結合部位を有し、
免疫原またはハプテンが宿主における内因性の抗体により認識されるかもしくは宿主における免疫細胞によって直接認識される、免疫原またはリガンドに結合させたハプテンを含有する組成物を宿主に投与する工程を包含する方法において、該免疫原または免疫原性のハプテン−キャリア結合体およびT1偏向性アジュバントを用いて該宿主を予備免疫して既存の免疫を導き出す工程を包含する改善方法。細胞殺傷剤、腫瘍侵入増強剤、化学療法剤等からなる群から選択される治療因子を投与する工程をさらに包含することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性細胞集団の存在を特徴とする疾病状態を治療するための改善された方法に関する。さらに詳しくは、細胞を標的とするリガンド−免疫原またはリガンド−ハプテン結合体を病気の宿主に投与して、宿主の免疫応答を該病原性細胞に指向する。その方法に対する改善方法は、免疫応答をT1応答に偏らせ、免疫原に対する免疫応答を増強するアジュバントの使用を包含する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の免疫系は、腫瘍細胞、他の病原性細胞および侵入する外来性病原体を認識し、排除する手段を提供する。免疫系が正常に強力な防御を提供する一方で、癌細胞、その他の病原性細胞または感染性物質が宿主の免疫応答をくぐりぬけ、増殖し、付随する宿主の病原性と共に持続する多数の例が依然として存在する。複製する新生物を排除するために、化学療法剤および放射線療法が開発されている。しかし、現在利用可能な化学療法剤および放射線療法の治療計画のすべてではないにしろ、そのほとんどが、癌細胞を破壊するだけではなく、例えば造血系の細胞のような正常な宿主細胞にも影響を及ぼすので、有害な副作用を有する。さらに、化学療法剤は、宿主の薬剤耐性が発現する例では限定された有効性しか有さない。
【0003】
外来性の病原体はまた、抵抗能力のある免疫応答をうまく逃れることによって、あるいは、薬物療法またはその他の健康問題によって宿主の免疫系が易感染性になっている場合、宿主において増殖する。多数の治療用化合物が開発されているが、多数の病原体はこのような治療に耐性であるか、または耐性になっている。治療剤に対する耐性を発達させる癌細胞および感染性生物の能力ならびに現在利用可能な抗癌剤の有害な副作用は、病原性細胞集団に特異的でかつ宿主への毒性を減少させる新しい治療法の開発の必要性を強調している。
【0004】
研究者らは、そのような細胞を特異的に標的とする細胞傷害性の化合物により癌細胞を破壊する治療プロトコールを開発してきた。そのようなプロトコールは、正常な細胞への毒素の送達をできるだけ抑えるという試みの中で、癌細胞に独特の、または癌細胞により過剰に発現されている受容体に結合するリガンドに結合させた毒素を利用する。このアプローチを用いて、病原性細胞上の特異的受容体に対する抗体、リシン、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素などの毒素に結合する抗体、および腫瘍壊死因子から成る特定の免疫毒素が開発されている。これらの免疫毒素は抗体により認識される特異的な受容体を持つ腫瘍細胞を標的とする(例えば、非特許文献1、非特許文献2、特許文献1参照)
【0005】
宿主における癌細胞または外来性病原体の集団を選択的に標的とする別のアプローチは、病原性細胞に対する宿主の免疫応答を増強し、それによって宿主への毒性をも独立して表し得る化合物投与の必要性を回避することである。免疫療法について報告された戦略の1つは、抗体、例えば、遺伝子工学で作製した多重体の抗体を腫瘍細胞の表面に結合させて細胞表面に抗体の定常領域を提示させ、それによって、種々の免疫系が介在する過程により腫瘍細胞の殺傷を誘導することである(例えば、非特許文献3、特許文献2参照)。しかし、このアプローチは、腫瘍特異的抗原を規定する困難さによって複雑になっている。宿主の免疫能力を頼る別のアプローチは、抗T細胞受容体抗体または抗Fc受容体抗体の腫瘍細胞への標的化を行って、腫瘍への免疫細胞の直接的結合を促進することである(例えば、特許文献3参照)。サイトカインに融合した抗原を含有するワクチンに頼る、ワクチンを基にしたアプローチも、ワクチン抗原の免疫原性を改変することにより病原性物質に対する免疫応答を刺激するサイトカインとともに、記載されている(例えば、特許文献4参照)。その方法は、報告されている免疫応答の間接的な変調に頼る。望まない細胞集団を殺傷する別のアプローチは、抗原に結合したIL−2または抗胸腺グロブリンのFab断片を利用して、望まないT細胞を排除する;しかし、報告された実験データに基づけば、この方法は、標的細胞集団の50%しか排除しないと思われ、結果的にインビボで非特異的な細胞傷害を生じている(すなわち、T細胞ではない50%の末梢血リンパ球も殺傷される)(例えば、特許文献5参照)。従って、冒された宿主における病原性細胞集団の存在を特徴とする疾病状態の治療に向けられた治療法に対する十分なニーズが依然として残っている。
【0006】
免疫系は、特異的抗原に対する受容体をその表面に提示するBリンパ球およびTリンパ球が介在する特異的免疫と共に、特異的および非特異的な免疫の双方を表し得る。特異的免疫応答は、液性免疫(すなわち、抗体の産生を伴うB細胞の活性化)および細胞性免疫(すなわち、細胞傷害性Tリンパ球、T1細胞およびT2細胞を含有するヘルパーTリンパ球のようなT細胞ならびに抗原提示細胞の活性化)を含み得る。T1応答は、補体結合抗体、細胞傷害性Tリンパ球の活性化および強い遅延型過敏反応を誘発し、IL−2、IL−12、TNF、リンホトキシンおよびγインターフェロンの産生に関係する。T2応答は、IgE、ならびにIL−4、IL−5、IL−6およびIL−10の産生に関係する。特異的な免疫応答には、以前抗原に暴露された免疫細胞が、さらに抗原に暴露された際、同一抗原に迅速に応答し得るように、特異性のみならず、記憶も関与する。
【0007】
アジュバントは、例えば、抗原と共に投与する場合またはこの抗原に先立って投与する場合、抗原の免疫原性を増強することによって免疫応答を刺激する化合物または物質である。アジュバントは、非特異的に多種多様な抗原への免疫応答を刺激するか、または特異的に多種多様な抗原への免疫応答を刺激するか(すなわち、抗原特異的な様式で免疫応答を刺激すること)のいずれかで作用し得る。特異的免疫を増強するアジュバントは、細胞性免疫応答または液性免疫応答、あるいはその双方を刺激することによって作用し得る。細胞性免疫応答を刺激するアジュバントは、免疫応答をT1応答またはT2応答に偏らせ得る。液性免疫応答を刺激するアジュバントは、使用するアジュバントによって異なる抗体アイソタイプ特性の産生を誘導し得る。この点に関して、様々なアジュバントが、(1)様々な抗体アイソタイプ、(2)各アイソタイプの様々なレベルの抗体の産生を刺激し得、そして(3)様々な親和性の抗体の産生を刺激し得、その結果、使用するアジュバントによって多様な抗体集団を生じる。
【0008】
サポニン類は、高等植物間および棘皮動物門の一部の海洋性無脊椎動物に広く分布するグリコシド化合物である(例えば、非特許文献4参照)。サポニンは1またはそれより多くの直鎖状または分枝鎖状の糖鎖に結合するアグリコンからなり、600〜2000ダルトン以上の範囲の分子量を有する。サポニン類はアジュバント活性を示すことが知られている。
【0009】
キラヤサポニンは、O−アシル化トリテルペングリコシド構造に密接に関係するファミリーであり、Quillaja saponariaモリナの木の樹皮から単離される。キラヤサポニンは機能的によく性状分析され、アジュバント活性を示すことが知られている。キラヤサポニンは、細胞性免疫応答および液性免疫応答の双方を刺激する。キラヤサポニンのトリテンペノイド基上のアルデヒド基が細胞性免疫を誘導するのに関与し、キラヤサポニンの炭水化物部分が液性免疫を増強すると思われる。キラヤサポニンは一般に強いT1応答を誘導する。
【特許文献1】Better, M. D., PCT公開番号WO 91/07418(1991年5月30日公開
【特許文献2】米国特許第5,672,486号
【特許文献3】Kranz, D. M., 米国特許第5,547,668号
【特許文献4】Pillai, S., PCT公開番号WO 91/11146(1991年2月7日公開
【特許文献5】Pouletty, P., PCT公開番号WO 97/37690(1997年10月16日公開
【非特許文献1】Olsnes, S., Immunol. Today, 10:291-295, 1989;
【非特許文献2】Malby, E. L., Cancer Res., 53(8):1755-1760, 1993
【非特許文献3】De Vita, V. T., Therapy of Cancer 2nd ed., Philadelphia, Lippincott, 1995
【非特許文献4】ApSimon et al., Stud. Org. Chem., 17:273-286, 1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
宿主における病原性細胞集団を排除する方法に対する改善方法を提供する。本方法は、病原性細胞の抗原性を高めることによって宿主免疫系の病原性細胞集団の認識および病原性細胞集団への応答を高め、内因性の免疫応答が介在する病原性細胞集団の排除を増強することに基づく。本方法に従って、腫瘍細胞または病原性生物の表面に結合させるために、リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体を宿主に投与し、この結合体が、標的とされる細胞集団の細胞を免疫原またはハプテンで「標識」し、それによって、標識された細胞に向けられる免疫介在性の応答を引き起こす。宿主に存在する抗体または宿主で産生される抗体が免疫原またはハプテンに結合し、内因性の免疫応答を引き起こす。あるいは、宿主における免疫細胞が直接、免疫原またはハプテンを認識し得る。本方法に対する改善は、T1偏向性アジュバントを用いて、免疫原/ハプテンに対する免疫応答を増強することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本方法は、リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体の投与を包含し、その際、このリガンドは、インビボで病原性細胞集団への特異的結合が可能であり、リガンドに結合させた免疫原/ハプテンは、抗体により、または直接、宿主における免疫細胞により認識され得る。病原性細胞によって独特に発現される、過剰発現されるまたは優先的に発現される受容体、トランスポータまたはその他の表面に提示されたタンパク質に対する、免疫原/ハプテンを結合するリガンドの結合によって、免疫系が介在する病原性細胞の排除が導かれる。病原性細胞によって独特に発現される、過剰発現されるまたは優先的に発現される表面提示されるタンパク質が、非病原性細胞には存在しないかまたは少量で存在する受容体であるということは、病原性細胞の選択的排除に対する手段を提供している。
【0012】
標的とされる病原性細胞集団は、癌細胞集団、ウイルス感染した内因性の細胞または細菌、マイコプラズマ、酵母もしくは真菌のような外因性の生物集団であり得る。細胞に結合したリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体への抗体の結合は、結果として、補体介在性の細胞傷害、抗体依存性の細胞介在性細胞傷害、抗体のオプソニン化および貪食作用、抗体が誘導するクラスター形成のシグナル伝達による細胞死、あるいは細胞に結合したリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体に結合する抗体により刺激される静止状態または任意のその他の液性免疫または細胞性免疫応答を生じる。免疫応答はまた、宿主の免疫細胞による免疫原/ハプテンの直接認識を含み得る。
【0013】
少なくとも1つの追加の治療因子、例えば、免疫系刺激剤、細胞殺傷剤、腫瘍侵入増強剤、化学療法剤、細胞傷害性免疫細胞、または抗菌剤は、治療効率を高めるために、宿主動物に投与され得る。1つの実施形態において、細胞傷害性免疫細胞は、単離され、エキソビボで増殖させ、次いで宿主動物に注射される細胞傷害性免疫細胞集団である。別の実施形態において、免疫刺激剤が使用され、この免疫刺激剤は、例えば、IL−2、IL−12またはIL−15のようなインターロイキンあるいはIFNα、IFNβまたはIFNγのようなIFNあるいはGM−CSFであり得る。別の実施形態において、この免疫刺激剤は、IFNα、IFNβ、IFNγまたはGM−CSFとの組み合わせで、IL−2、IL−12またはIL−15のようなサイトカインの組み合わせ、あるいはそれらの任意の有効な組み合わせ、あるいはサイトカインの任意のその他の有効な組み合わせであり得る。
【0014】
従って、1つの実施形態において、病原性細胞の集団を潜む、予備免疫された宿主動物において内因性免疫応答が介在する、その集団の特異的排除を増強する方法が提供され、その際、この細胞集団のメンバーはリガンドに対する到達可能な結合部位を有する。本方法は、リガンドに結合された免疫原またはハプテンを含有する組成物を宿主に投与する工程を包含し、その際、この免疫原またはハプテンが宿主における内因性の抗体により認識されるか、または宿主における免疫細胞により直接認識され、改善が免疫原または免疫原性のハプテン−キャリア結合体およびT1偏向性アジュバントを宿主に予備免疫し、既存の免疫を導き出す工程を包含する。
【0015】
別の実施形態において、病原性細胞の集団を潜む宿主動物において免疫反応を増強し、前記病原性細胞集団を排除する方法が提供され、その際、病原性細胞がリガンドに対する到達可能な結合部位を有する。本方法は、宿主にT1偏向性アジュバントを投与する工程、およびリガンドに結合させた免疫原を含有する組成物を宿主に投与する工程を包含する。
【0016】
別の実施形態において、治療有効量のT1偏向性アジュバントおよびハプテン−キャリア結合体を含有する組成物が提供され、その際、このハプテンはフルオレセインおよびジニトロフェニルからなる群から選択される。
【0017】
さらに別の実施形態において、治療有効量のT1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体を含有する組成物が提供される。
【0018】
その上別の実施形態において、T1偏向性アジュバントおよびハプテン−キャリア結合体を含有するキットが提供され、その際、このハプテンはフルオレセインおよびジニトロフェニルからなる群から選択される。
【0019】
別の実施形態において、T1偏向性アジュバント、ハプテン−キャリア結合体およびリガンド−ハプテン結合体を含有するキットが提供される。あるいは、このキットは、T1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体を含有し得るか、またはさらに免疫原を含有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】サポニンアジュバント(すなわち、GPI0100)と共に処方したKLH−FITCで免疫したマウスにおける抗FITC総IgGおよび抗FITC IgG2aの反応を示す。
【図2】KLH−FITC/サポニンアジュバントで免疫し、続いてPBS(対照)、IL−2+IFN−αまたは葉酸−FITC+IL−2+IFN−αを注射した、腹腔内にL1210A白血病を定着させたマウスの生存率を示す。
【図3】KLH−FITC/サポニンアジュバントで免疫し、続いてPBS、IL−2+IFN−αまたは葉酸−FITC+IL−2+IFN−αを注射した、腹腔内に定着したM109腫瘍を持つマウスの生存率を示す。
【図4】KLH−FITC/サポニンアジュバントで免疫し、続いてPBSまたは葉酸−FITCを注射した、腹腔内に初期段階のM109腫瘍を持つマウスの生存率を示す。
【図5】KLH−FITC/サポニンアジュバントで免疫し、続いてPBSまたは葉酸−FITCを注射した、腹腔内に定着したM109腫瘍を持つマウスの生存率を示す。
【図6】KLH−FITC/サポニンアジュバントで免疫し、続いてPBS、IL−2+IFN−αまたは葉酸−FITC+IL−2+IFN−αを注射した、マウスにおける皮下M109腫瘍の腫瘍体積を示す。
【図7】葉酸−FITC(EC17)の構造を示す。
【図8】KLH−FITC(EC90)の構造を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
宿主において病原性細胞集団を排除する方法における改善方法を提供する。本方法は、病原性細胞の抗原性を高めることによって宿主免疫系の病原性細胞集団の認識および病原性細胞集団への応答を高め、内因性の免疫応答が介在する病原性細胞集団の排除を増強することに基づく。本方法に従って、リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体を、腫瘍細胞または病原性生物の表面に結合させるために、宿主に投与し、この結合体が、標的とされる細胞集団の細胞を免疫原またはハプテンで「標識」し、それによって、標識された細胞に向けられる免疫介在性の応答を引き出す。宿主において存在する抗体または産生される抗体あるいは宿主における免疫細胞が免疫原/ハプテンに結合し、内因性の免疫応答を引き出す。本発明に係る方法に対する改善は、T1偏向性アジュバントを用いて免疫原/ハプテンに対する免疫応答を高めることを包含する。
【0022】
改善された本方法は、病原性細胞の集団を潜む宿主動物において、内因性免疫反応が介在する、病原性細胞集団の排除を増強するために利用される。本発明は、例えば、癌および感染性疾患のような様々な病態を引き起こす病原性細胞の集団に適用可能である。従って、病原性細胞の集団は、良性腫瘍および悪性腫瘍を含む腫瘍形成性である癌細胞集団であり得るか、またはそれは非腫瘍形成性であり得る。癌細胞集団は、自然に生じ得るか、または宿主動物の生殖細胞系に存在する突然変異もしくは体細胞突然変異のような過程によって生じ得るか、あるいは、それが化学的な誘発、ウイルスの誘発もしくは放射線誘発であってもよい。本発明は、癌腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、悪性黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽腔癌、白血病および骨髄腫のような癌を治療するのに利用され得る。癌細胞集団は、口腔癌、甲状腺癌、分泌腺癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、咽頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、卵巣癌、頚部癌、子宮癌、乳癌、精巣癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
病原性細胞の集団はまた、外来性の病原体であり得るか、または外来性の病原体(例えばウイルス)を潜む細胞集団であり得る。本発明は、細菌、真菌、ウイルス、マイコプラズマおよび寄生虫のような外因性の病原体に適用可能である。本発明で治療され得る感染性因子は、例えば、グラム陰性もしくはグラム陽性の球菌もしくは桿菌であるような細菌、DNAウイルスならびにRNAウイルス(例えば、パピローマウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびワクシニアウイルスのようなDNAウイルスならびにアレナウイルス、コロナウイルス、リノウイルス、呼吸系発疹ウイルス、インフルエンザウイルス、ピコルナウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、レトロウイルスおよびラブドウイルスのようなRNAウイルスが挙げられるがこれらに限定されない)のような生物を含む、動物において病態形成を引き起こす当該分野で認識される任意の感染性生物である。特に関心があるのは、抗生物質耐性のStreptococcus種およびStaphlococcus種のような抗生物質耐性である細菌、または抗生物質に感受性ではあるが、耐性生物が最終的に発生するように、抗生物質で治療される再発性感染を引き起こす細菌である。これらの抗生物質耐性菌株の発生を回避するために、このような生物は、通常患者に投与するより低い用量の抗生物質との組み合わせで、本発明のリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体で処置され得る。本発明はまた、任意の真菌、マイコプラズマ種、寄生虫または動物において疾病を引き起こす他の感染性生物にも適用可能である。本発明の方法を用いて処置され得る真菌の例は、例えば、疾病を引き起こす真菌(例えば、白癬、ヒストプラスマ症、分芽菌症、コウジカビ菌症、クリプトコッカス症、スポロトリクム症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症およびカンジダ症)を含む、カビとして増殖するかあるいは酵母様である真菌が挙げられる。本発明は、寄生虫感染(身体の条虫、血中の吸虫類、組織の蛔虫、アメーバならびにPlasmodium種、Trypanosoma種、Leishmania種およびToxoplasma種によって引き起こされる感染が挙げられるが、これらに限定されない)を治療するのに利用され得る。特に目的の寄生虫は、葉酸受容体を発現し、葉酸に結合するものである;しかし、この文献は、感染性生物に対して高い親和性を示すリガンドに対する参考文献で満ち溢れている。例えば、これらの抗生物質活性および細菌細胞壁前駆体への特異的結合で知られるペニシリンおよびセファロスポリンは同様に、本発明に係る使用のためにリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体を調製するリガンドとして使用され得る。本発明のリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体はまた、内因性の病原体を潜む細胞集団に指向され得、その際、病原体特異的な抗原は病原体を潜む細胞の表面で優先的に発現され、抗原に特異的に結合するリガンドと共にリガンドに対する受容体として作用する。
【0024】
本発明の方法は、ヒトの臨床医学および獣医への適用の双方で使用され得る。従って、病原性生物の集団を潜む宿主動物およびリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体を用いて処置された宿主動物は、ヒトであってもよいし、あるいは獣医適用の場合、実験動物、農業用動物、家畜または野生動物であってもよい。本発明は、宿主動物(ヒト、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターなど)のような実験動物、ウサギ、サル、チンパンジー、家畜(例えば、イヌ、ネコおよびウサギ)、農業用動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギならびに野生動物(例えば、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカおよびクジラ))が挙げられるが、これらに限定されない)に適用され得る。
【0025】
改善された方法の1つの実施形態において、免疫原−キャリアまたはハプテン−キャリア(例えば、KLHまたはBSA)の結合体およびT1偏向性アジュバントにより宿主を予備免疫して、免疫原またはハプテンに対する既存の免疫を導き出す。次いで、リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体を宿主に投与して、結果として、標的とされる病原性細胞に結合するリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体に指向された液性免疫応答または細胞性免疫応答、あるいはその双方を生じる。
【0026】
別の実施形態において、既存の免疫は、免疫原(例えば、スーパー抗原またはムラミルジペプチドのような免疫原)に対する先天性の免疫である。本実施形態において、T1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体を併用投与して、先天性の免疫に由来する免疫応答を少なくとも一部増強し得る。
【0027】
別の実施形態において、既存の免疫は、通常予定されたワクチン接種または抗原(例えば、ポリオウイルス、破傷風、インフルエンザなど)への以前の自然な暴露を介して発達した免疫であり得る。本実施形態において、免疫原は、既存の免疫を導き出す抗原であり、T1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体を併用投与し、既存の免疫から生じる免疫応答を増強する。
【0028】
さらに別の実施形態において、リガンド−免疫原結合体およびT1偏向性アジュバントを併用投与して既存の免疫がないところに免疫応答を引き出す。本実施形態において、アジュバントとリガンド−免疫原結合体の併用免疫の際、T1偏向性アジュバントが免疫原に対する免疫応答を増強する。
【0029】
別の実施形態において、既存の免疫がない場合、リガンド−免疫原結合体、T1偏向性アジュバントおよび受動的に投与される抗体を併用投与し得る。本実施形態において、受動的に投与される抗体が、免疫原に対する免疫応答を高めるのに役立つ。
【0030】
本明細書で記載される実施形態のすべてについて、「併用投与」は、リガンド−免疫原結合体もしくはハプテン−キャリア結合体または免疫原の投与の前での、同時のあるいは後での投与として定義される。本発明に従って、「併用投与」はまた、同一の溶液または別々の溶液における投与も意味し得る。
【0031】
本発明に従って使用するのに好適なアジュバントは、免疫応答をT1応答に偏らせるアジュバントである。アジュバントが誘導するT1偏向性免疫は、免疫グロブリンのアイソタイプの分布解析を介して測定し得る。免疫応答をT1応答に偏らせるアジュバントは、マウスにおいてIgG1抗体のレベルに対してIgG2aのレベルを優先的に高めるアジュバントである。1以上の抗原特異的IgG2a/IgG1比によってT1様の抗体サブクラスのパターンを示し得る。しかし、本発明に従って、抗原特異的な抗体の産生を高め、同時にIgG2a/IgG1の相対比を約0.3以上に高める任意のアジュバントは、T1偏向性免疫応答に向けて免疫応答を動かす。そのようなアジュバントは、サポニンアジュバント(例えば、脂質が改変されているキラヤサポニンを含有するキラヤサポニン)、CpG、3−脱アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)、ウシ型弱毒結核菌ワクチン(BCG)、二重ステムループの免疫調節性オリゴデオキシリボヌクレオチド(d−SLIM)、熱で殺したBrucella abortus(HKBA)、熱で殺したMycobacterium vaccae(SRL172)、不活化ワクチンウイルス、シクロホスファミド、プロラクチン、サリドマイド、アクチミド、レビミドなどを含み得る。サポニンアジュバントおよびその調製方法およびその使用方法は、本明細書中において参考として援用される米国特許第5,057,540号、同第5,273,965号、同第5,443,829号、同第5,508,310号、同第5,583,112号、同第5,650,398号、同第5,977,081号、同第6,080,725号、同第6,231,859号および同第6,262,029号に詳細が記載される。
【0032】
リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体は、多種多様なリガンド、免疫原およびハプテンから選択され得る。病原性細胞上でリガンドの結合に到達可能な、リガンドに対する受容体を優先的に発現または過剰に発現しているので、このリガンドは、宿主動物において病原性細胞の集団を優先的に標的とされ得るべきである。許容可能なリガンドは、葉酸、葉酸のアナログおよびその他の葉酸受容体結合分子、他のビタミン、ライブラリのスクリーニングで同定されるペプチドリガンド、腫瘍特異的ペプチド、腫瘍特異的アプタマー、腫瘍特異的炭水化物、腫瘍特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、例えば、EphA2または転移性癌細胞に特異的に発現されるかもしくは独特に到達可能な他のタンパク質に対して指向された抗体のFab断片のような抗体のFab断片またはscFv断片(すなわち、単鎖可変領域)、コンビナトリアルライブラリに由来する小型の有機分子、成長因子(例えば、EGF、FGF、インスリンおよびインスリン様の成長因子)および相同のポリペプチドのような成長因子、ソマトスタチンおよびそのアナログ、トランスフェリン、リポタンパク質複合体、胆汁酸塩、セレクチン、ステロイドホルモン、Arg−Gly−Aspを含有するペプチド、レチノイド、種々のガレクチン、δ−オピオイド受容体のリガンド、コレシストキニンA受容体のリガンド、アンギオテンシンAT1またはアンギオテンシンAT2の受容体に特異的なリガンド、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γのリガンド、β−ラクタム抗生物質、抗菌剤を含む小型有機分子、ならびに腫瘍細胞の表面または感染性生物の表面に優先的に発現される受容体に特異的に結合する他の分子、またはこれらの分子の任意の断片が挙げられる。感染性生物に結合するリガンドの場合で関心があるのは、微生物に優先的に結合することが当該分野で公知である抗生物質または他の薬剤のような任意の分子である。本発明はまた、受容体または他の細胞表面タンパク質の結晶構造に基づいて、特定の受容体の結合ポケットに適合するように設計され、その際、このような受容体は腫瘍、細菌、ウイルス、マイコプラズマ、真菌、寄生虫または他の病原体の表面に優先的に発現される、抗菌剤のような分子であるリガンドにも適用される。1つの実施形態において、任意の腫瘍抗原または腫瘍細胞の表面に優先的に発現される他の分子に結合するリガンドを利用され得ることもまた企図される。
【0033】
1つの実施形態において、リガンドは、ビタミンまたはそのアナログもしくはその誘導体である。許容可能なビタミンは、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12ならびに脂溶性ビタミンA、D、EおよびKが挙げられる。これらのビタミン、ならびにその受容体結合のアナログおよび誘導体は、本発明に従って使用するためのリガンド−免疫原またはリガンド−ハプテンの結合体を形成するターゲティング本体を構成する。好ましいビタミン部分には、葉酸、ビオチン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、ならびにこれらビタミン分子の受容体に結合するアナログおよび誘導体、ならびに他の関連するビタミンの受容体に結合する分子(本明細書中において参考として援用される米国特許第5,108,921号、同第5,416,016号および同第5,635,382号を参照のこと)が挙げられる。ビタミンアナログの例示は、D配置にグルタミン酸残基を含有する葉酸アナログである(葉酸は通常、プテロイン酸に結合するL配置にグルタミン酸を1つ含有する)。
【0034】
リガンドに対する結合部位は、受容体に特異的に結合し得る任意の分子に対する受容体を含み得、その際、受容体またはその他のタンパク質は、病原性細胞(例えば、成長因子、ビタミン、オピオイドペプチドを含むペプチド、ホルモン、抗体、炭水化物および小型有機分子に対する受容体が挙げられる)の集団に優先的に発現する。結合部位はまた、抗生物質または他の薬剤のような任意の分子に対する結合部位でもあり得、その際、この部位は微生物上に優先的に存在することが当該分野で公知である。例えば、主題の結合部位は、ペニシリンのようなβラクタム抗生物質に対する細菌細胞壁における結合部位、またはウイルスの表面に独特に存在する抗ウイルス剤に対する結合部位であってもよい。本発明はまた、受容体の結晶構造に基づいて、受容体の結合部位に適合するように設計される抗菌剤のようなリガンドに対する結合部位にも適用され、その際、この受容体は、病原性細胞または生物の表面上に優先的に発現される。
【0035】
腫瘍特異抗原がリガンドに対する結合部位として機能し得ることもまた企図される。リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体に対する結合部位として機能し得た腫瘍特異抗原の一例は、EphA2のようなエフリンファミリータンパク質のメンバーの細胞外エピトープが挙げられる。EphA2の発現は、正常な細胞では、細胞−細胞の接合部に制約されているが、EphA2は、転移性の腫瘍細胞では細胞表面の全体にわたって分布する。従って、転移性細胞上のEphA2は、例えば、免疫原またはハプテンに結合される抗体のFab断片への結合に到達可能であるが、正常な細胞ではこのタンパク質はFab断片への結合に到達可能ではないということは、結果的に、転移性癌細胞に特異的なリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体を生じる。本発明はさらに、リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体の組み合わせを使用して、免疫応答による排除のための病原性細胞に対するターゲティングを最大化することを企図する。
【0036】
適切な免疫原には、通常予定されるワクチン接種または例えば、ポリオウイルス、破傷風、チフス、風疹、はしか、おたふく風邪、百日咳、結核およびインフルエンザの抗原のような作用物質への以前の自然な暴露を介して、それに対する既存の免疫が発生している、抗原または抗原性ペプチド、ならびにα−ガラクトシル基が挙げられる。そのような場合、外来性細胞または病原性生物を排除するために、以前獲得した液性免疫または細胞性免疫を宿主動物における病原性細胞の集団に再び指向するのに、リガンド−免疫原結合体が使用され、T1偏向性アジュバントが、免疫応答を補強し、病原性細胞の排除を増強する。
【0037】
宿主動物が先天性の免疫を発展させる抗原または抗原性ペプチド(例えば、スーパー抗原およびムラミルジペプチド)もまた、本発明に従って使用するための最適な免疫原である。本実施形態において、T1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体が併用投与され、このアジュバントは、先天性の免疫から生じる、免疫原に対する免疫応答を増強する。
【0038】
既存の免疫が存在しない場合、免疫原またはハプテンによる予備免疫によって既存の免疫を発生させ得る。このような場合、新規の既存の免疫は、免疫原またはハプテン(例えば、フルオレセイン、ジニトロフェニル、トリニトロフェニル、α−galエピトープ、一般のウイルス、細菌に由来する合成のペプチドまたは糖ペプチド、炭水化物、多糖類、ガングリオシドおよび低分子量の薬剤)による免疫を介して発生させ得る。ハプテンを使用する実施形態において、ハプテンは通常キャリアに結合させてハプテン−キャリア結合体を形成する。ハプテン−キャリア結合体およびT1偏向性アジュバントで宿主を予備免疫する。このT1偏向性アジュバントは、それに続くリガンド−ハプテン結合体の投与の際、ハプテンに対する免疫応答を増強する。免疫原がハプテンではない実施形態において、免疫原およびT1偏向性アジュバントで予備免疫することにより既存の免疫を発生させ得る。
【0039】
既存の免疫が存在しない実施形態において、T1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体の併用投与の際、免疫応答を誘導する任意の免疫原を使用し得る。
【0040】
本発明に従って使用し得るキャリアには、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、アワビのヘモシアニン(HtH)、不活化したジフテリア毒素、不活化した破傷風毒素、精製Mycobacterium tuberculosis蛋白体(PPD)、ウシ血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン(OVA)、g−グロブリン、サイログロブリン、ペプチド抗原、ならびに例えば、ポリ−L−リジン、デンドリマーおよびリポソームのような合成キャリアが挙げられる。
【0041】
当該分野で認識される、複合体の形成方法を用いることによって、リガンドまたはキャリア(例えば、KLHまたはBSA)を免疫原またはハプテンに結合させ得る。これは、免疫原またはハプテンに対するキャリアまたはリガンドの、直接、または二価のリンカーのような連結基を介した間接的のいずれかの、共有結合、イオン結合または水素結合を含み得る。ハプテン−キャリア結合体、リガンド−免疫原結合体およびリガンド−ハプテン結合体は代表的に、この結合体の成分それぞれにおける酸基、アルデヒド基、水酸基、アミノ基もしくはヒドラゾ基の間でのアミド結合、エステル結合またはイミド結合の形成を介した共有結合によって形成される。リンカーを使用する実施形態において、リンカーは代表的に、約1〜約30の炭素原子、さらに代表的に、約2〜約20の炭素原子を含有する。さらに分子量の小さいリンカー(すなわち、約20〜約500のおよその分子量を有するもの)が代表的に使用される。また、本発明に従って、このリンカーは、例えば、中間的なリンカー、スペーサーアームもしくは架橋分子を介した接続のような、リガンドまたはキャリアを免疫原またはハプテンと会合させるための間接的な手段を包含し得る。会合のための直接的手段および間接的手段は双方とも、本発明の方法の操作上、細胞膜上の受容体へのリガンドの結合を妨げるべきではない。
【0042】
1つの実施形態において、リガンドは、葉酸、葉酸のアナログ、または任意の他の葉酸受容体に結合する分子であり、葉酸リガンドは、無水チオフルオロ酢酸を利用し、アジ化プテロイル中間体を介して葉酸のγエステルを調製する手順によって免疫原またはハプテンに結合させる。この手順は、葉酸のグルタミン酸基のγカルボキシ基を介するのみで(図7を参照のこと)免疫原またはハプテンに結合した葉酸リガンドの合成を生じ、その際、このγ−結合体は、α−結合体とγ−結合体の混合物の形成を回避して、高い親和性で葉酸受容体に結合する。あるいは、γ−カルボキシ基を選択的にブロックした中間体から純粋なα−結合体を調製し得、当該分野で認識される有機合成プロトコールおよび手順を用いて、α−結合体が形成され、それに続いてγ−カルボキシ基が脱ブロックされる。
【0043】
内因性の免疫応答が介在する病原性細胞集団の排除は、T1偏向性アジュバントによる免疫によって増強される。内因性の免疫応答は、液性免疫、細胞性免疫、ならびに宿主動物に対する内因性の任意の他の免疫応答(例えば、補体介在性の細胞溶解、抗体依存性の細胞介在性の細胞傷害(ADCC)、貪食作用を招く抗体のオプソニン化、抗体結合の際の受容体のクラスター形成により生じるアポトーシス、抗増殖もしくは分化のシグナル伝達、および送達された免疫原/ハプテンの免疫細胞による直接の認識が挙げられる)を含み得る。内因性の免疫応答が免疫細胞の増殖および移動のような過程を調節するサイトカインの分泌を使用することもまた企図される。内因性の免疫応答は、B細胞、ヘルパーT細胞および細胞傷害性のT細胞を含むT細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、LAK細胞などのような免疫細胞の類型の関与も包含し得る。
【0044】
リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体が腫瘍細胞または感染性生物に優先的に結合することによって、既存の抗体、誘導された抗体または受動的に投与された抗体をこれら侵入する細胞に再び指向させ、上述の免疫応答によって病原性細胞を殺傷することが企図される。引き付けられた抗原提示細胞が所望でない細胞を貪食し、天然の腫瘍抗原または外来性の病原体を、この抗原を持つ細胞または生物を排除するために、免疫系の細胞性アームに提示する場合生じる二次応答に、細胞傷害性過程が関与し得る。
【0045】
上記で議論したように、通常予定されたワクチン接種、あるいは、天然の免疫原または非天然の免疫原または非天然の免疫原を伴ったハプテン(例えば、フルオレセインまたはジニトロフェニル)または新規免疫を誘導するハプテンによる能動的な免疫のような過程によって免疫応答を誘導し得る。能動的免疫は、免疫を誘導するために順当なワクチン接種以外に計画された、天然の免疫原もしくは非天然の免疫原またはハプテン(例えば、ハプテン−キャリア結合体)の複数回の注射を包含し得る。例えば、天然の免疫原もしくは非天然の免疫原またはハプテンの投与の前に、同時に、またはその後で、任意の免疫計画を用いて、免疫原またはハプテンと共にT1偏向性アジュバントを投与し得る。免疫原またはハプテンと同一の溶液あるいは免疫原またはハプテンとは異なる溶液でT1偏向性アジュバントを投与し得る。免疫応答はまた、α−ガラクトシル基に対する免疫のように、宿主動物が天然の既存の免疫を有する先天性の免疫からも生じ得、先天性の免疫の場合、T1偏向性アジュバントは、先天性の免疫から生じる免疫応答を補強する。
【0046】
上述した方法論と組み合わせて、治療因子を含む少なくとも1つの追加の組成物を宿主に投与して、内因性の免疫応答が介在する病原性細胞の集団の排除を増強し得るか、または1以上の追加の治療因子を投与し得る。治療因子は、内因性免疫応答を刺激可能である化合物、化学療法剤、抗菌剤、または投与されたリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体の有効性を補完可能である他の治療因子(例えば、細胞傷害性免疫細胞)から選択し得る。1つの実施形態において、細胞傷害性免疫細胞は、単離され、エキソビボで増殖させ、次いで宿主動物に注射する細胞傷害性免疫細胞集団である。上述の結合体に加えて、内因性免疫応答を刺激し得る化合物または組成物(例えば、インターロイキン類1〜18、IL−23、幹細胞因子、塩基性FGF、EGF、G−CSF、GM−CSF、FLK−2リガンド、FLT−3リガンド、HILDA、MIP−1α、TGF−α、TGF−β、M−CSF、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、可溶性CD23、LIFのようなサイトカインまたは免疫細胞成長因子、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)を宿主に投与することによって、本発明の方法を実施し得る。
【0047】
これらサイトカインの治療上有効な組み合わせもまた使用し得る。1つの実施形態において、1日に複数回服用する計画において、治療有効量のIL−2(例えば、約0.1MIU/m/用量/日〜約60MIU/m/用量/日の範囲の量)および1日に複数回服用する計画において、IFN−α(例えば、約0.1MIU/m/用量/日〜約10MIU/m/用量/日の範囲での量)を使用し得る(MIU=百万国際単位;m=平均的なヒトのおよその体表面積)。別の実施形態において、IL−12およびIFN−αを治療有効量で使用し、さらに別の実施形態において、IL−15およびIFN−αを治療有効量で使用する。別の実施形態において、IL−2、IFN−αまたはIFN−γおよびGM−CSFとを組み合わせて使用する。これらの組み合わせを含む、IL−2、IL−12、IL−15、IFN−α、IFN−γおよびGM−CSFのような、使用される治療因子は、ナチュラルキラー細胞および/またはT細胞を活性化し得る。あるいは、インターフェロンおよびGM−CSFとの組み合わせでインターロイキンを含めた、治療因子またはこれらの組み合わせは、他の免疫エフェクター細胞(例えば、マクロファージ、B細胞、好中球、NK細胞、NKT細胞、T細胞、LAK細胞など)を活性化し得る。本発明はまた、他のインターロイキンおよびインターフェロンならびにコロニー刺激因子の組み合わせを含めたサイトカインの任意の他の有効な組み合わせの使用も企図する。
【0048】
それら自体が細胞傷害性であり、腫瘍透過性を高めるように作用し得、本発明に従って治療因子として使用するのに適切な化学療法剤には、副腎コルチコイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、エストロゲン、代謝阻害剤(例えば、シトシン、アラビノシド、プリンアナログ、ピリミジンアナログおよびメソトレキセート)、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチンおよび他のプラチナ化合物、タモキシフェン、タキソール、シクロホスファミド、植物アルカロイド、プレドニゾン、ヒドロキシ尿素、テニポシド、抗生物質(例えば、マイトマイシンCおよびブレオマイシン)、ニトロゲンマスタード、ニトロソ尿素、ビンクリスチン、ビンブラスチン、炎症性作用剤および炎症誘発性作用剤、ならびに当該分野で認識される任意の他の化学療法剤が挙げられる。本結合体と共に投与し得る他の治療因子には、ペニシリン、セファロスポリン、バノマイシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リファムピン、クロラムフェニコール、アミノグリコシド、ゲンタマイシン、アンフォテリシンB、アシクロビル、トリフルリジン、ガンシクロビル、ジドブジン、アマンタジン、リバビリンおよび当該分野で認識される任意の他の抗菌化合物が挙げられる。
【0049】
治療因子はまた、免疫原またはハプテンに対して指向された抗体(例えば、血清から回収される天然抗体、またはヒト化抗体を含む遺伝子工学で作製される抗体であってもよいし、そうでなくてもよいモノクローナル抗体)であり得、宿主動物に受動的に投与されて、病原性細胞の排除を補強し得る。受動的に投与される抗体は、リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体と共に併用投与し得る。
【0050】
病原性細胞の集団の排除は、治療応答を生じる腫瘍塊または病原性生物の減少または排除を包含する。従って、本発明に従って、病原性細胞の「排除」は、細胞の部分的なまたは完全な排除を意味する。腫瘍の場合、この排除は、原発性腫瘍の細胞あるいは転移したかまたは原発性腫瘍から解離する過程にある細胞の排除であり得る。腫瘍の外科的除去、放射線療法、化学療法または生物学的療法を含む任意の治療アプローチにより除去された後の腫瘍の再発を防ぐ予防的治療も本発明に従って企図され、病原性細胞の排除であると考えられる。予防的治療は、T1偏向性アジュバントおよびハプテン−キャリア結合体または免疫原による当初の治療、それに続くリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体による治療(例えば、毎日の複数用量計画における治療)であり得、および/あるいはT1偏向性アジュバントの投与を伴うかまたは伴わない当初の治療に続く数日または数ヵ月の間隔の後のリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体による追加の治療または一連の治療であり得る。
【0051】
本発明はまた、治療有効量のT1偏向性アジュバントおよびハプテン−キャリア結合体を含有する組成物も指向する。本実施形態において、ハプテンは、フルオレセインもしくはジニトロフェニルまたは任意の他のハプテンであり得る。別の実施形態において、治療有効量のT1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体を含有する組成物が提供される。本組成物は、病原性細胞の排除を増強するのに有効な量の治療因子をさらに含有し得る。この治療因子は、細胞殺傷剤、腫瘍侵入増強剤、化学療法剤、抗菌剤、細胞傷害性免疫細胞および内因性の免疫応答を刺激し得る化合物からなる群から選択される。治療因子が、内因性の免疫応答を刺激し得る化合物である実施形態において、治療因子は、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−12、IL−15またはIL−23)、あるいはIL−2、IL−12、IL−15またはIL−23を含むサイトカインならびにIFN−α、IFN−βおよびIFN−γを含むインターフェロンの組み合わせ、ならびにインターフェロン、インターロイキンおよびコロニー刺激因子(例えば、GM−CSF)の組み合わせを含有し得る。上述の成分を含有するキットもまた企図される。T1偏向性アジュバント、ハプテン−キャリア結合体およびリガンド−ハプテン結合体を含有するキットもまた企図される。別の実施形態において、キットは、免疫原、T1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体を含有し得る。このキットはさらに治療因子を含有し得る。
【0052】
アジュバント、免疫原、ハプテン−キャリア結合体、リガンド−免疫原結合体およびリガンド−ハプテン結合体の投与量は、宿主の症状、治療される疾病の状態、結合体または免疫原の分子量、投与経路および組織分布、ならびに例えば放射線療法のような他の治療の併用の可能性によって、変化し得る。患者に投与される有効用量は、体表面積、患者の体重、および患者の症状の内科医の評価に基づく。アジュバントの有効用量は、患者当たり約0.01μg〜約100mg、または患者当たり約100μg〜約50mg、または患者当たり約500μg〜約10mgの範囲であり得る。ハプテン−キャリア結合体または免疫原の有効用量は、患者当たり約1μg〜約100mg、または患者当たり約10μg〜約50mg、または患者当たり約50μg〜約10mgの範囲であり得る。リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体の有効用量は、約1ng/kg〜約1mg/kg、または約1μg/kg〜約500μg/kg、または約1μg/kg〜約100μgの範囲であり得る。
【0053】
1偏向性アジュバント、免疫原、ハプテン−キャリア結合体、リガンド−免疫原結合体、リガンド−ハプテン結合体および治療因子を投与して免疫応答を再び腫瘍細胞または感染性生物に指向する任意の有効な投薬計画を使用し得る。例えば、T1偏向性アジュバント、免疫原、結合体および治療因子を単一用量で投与し得、またはそれらを分割し得、1日複数用量の投薬計画として投与し得る。さらに、時差的な投薬計画、例えば、毎日の治療の代替として、週に1〜3日を使用し得、本発明を定義する目的では、そのような間欠的なまたは時差的な日々の投与計画は、毎日の治療と同等とみなされ、本発明の範囲内であるとみなされる。例えば、本発明の1つの実施形態において、宿主は、T1偏向性アジュバントおよびハプテン−キャリア結合体の3回の当初投与の後、リガンド−ハプテン結合体および治療因子の複数回の注射で治療されて、病原性細胞の集団を排除する。別の実施形態において、宿主は、例えば、12〜72時間間隔、または48〜72時間間隔で、リガンド−ハプテン結合体を複数回(例えば、約2回から約50回まで)注射される。初回の注射の後、数日または数ヵ月の間隔でリガンド−ハプテン結合体の追加の注射を患者に投与し得、追加の注射は疾病の再発を予防する。あるいは、リガンド−ハプテン結合体の初回の注射が疾病の再発を予防し得る。
【0054】
1偏向性アジュバントおよび免疫原またはハプテンーキャリア結合体により予備免疫することによって既存の免疫が発生している別の実施形態において、それに続いて治療因子と共に、リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体を投与し得る。リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体の前に、後で、またはそれと同時に治療因子を投与し得、リガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体を含有する同一組成物の一部として、または結合体とは異なる組成物の一部として治療因子を投与し得る。治療上有効な用量で治療因子を含む任意のこのような治療用組成物も本発明で使用し得る。既存の免疫が発生しない別の実施形態において、T1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体と共に治療因子を併用投与し得る。
【0055】
さらに、1種類以上の免疫原、ハプテン−キャリア結合体、リガンド−免疫原結合体、またはリガンド−ハプテン結合体を使用し得る。例えば、併用投薬プロトコールにおいて、宿主動物を、フルオレセイン−キャリア結合体およびジニトロフェニル−キャリア結合体の双方で予備免疫し、続いて、同一のまたは異なったリガンドに結合したフルオレセインおよびジニトロフェニルで処理し得る。化学療法剤および抗菌剤の場合、併用療法においてリガンド−免疫原結合体またはリガンド−ハプテン結合体と共に、最適下限用量で治療因子を投与し、宿主動物による化学療法剤または抗菌剤への耐性の発生を回避し得る。
【0056】
1偏向性アジュバント、免疫原、ハプテン−キャリア結合体、リガンド−免疫原結合体、リガンド−ハプテン結合体および治療因子は好ましくは非経口的に注射され、このような注射は、皮内注射、腹腔内注射、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射またはくも膜下注射であり得る。あるいは、T1偏向性アジュバント、免疫原および結合体は、例えば経口投与のような他の医学的に有用な方法によって宿主動物に投与し得、任意の最適な治療用投与形態も使用し得る。非経口の投与形態の例には、等張生理食塩水、5%グルコース、または薬学的に受容可能な他の周知の液体担体(例えば、液体アルコール類、グリコール類、エステル類およびアミド類)における、有効成分の水溶液が挙げられる。本発明に係る非経口の投与形態はまた、再構成可能な凍結乾燥物の形態であり得る。1つの実施形態において、当該分野で公知の任意の多数の徐放性投与形態は、例えば、本明細書中において参考として援用される米国特許第4,713,249号、同第5,266,333号および同第5,417,982号に記載される生分解性炭水化物の基質を投与し得る。別の実施形態において、遅いポンプを使用し得る。
【0057】
本発明の方法は、例えば、腫瘍の外科的切除、放射線療法、化学療法、または他の免疫療法のような生物学的治療法(例えば、モノクローナル抗体療法、免疫調節性作用剤による治療、免疫エフェクター細胞の養子免疫伝達、造血系成長因子、サイトカインおよびワクチン接種による治療が挙げられるが、これらに限定されない)との組み合わせで使用し得る。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
(腹腔内にL1210A白血病を有するDBAマウスにおけるサポニン(サイトカインと共に)増強性免疫療法の治療効果)
【0059】
2週間隔にて皮下に3回、100μgのGPI−0100と共に処方した35μgのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識したスカシカイのヘモシアニン(KLH;図8を参照のこと)により、6〜8週齢(約20〜22グラム)のメスDBAマウスを免疫した。GPI−0100は、部分精製したキラヤサポニンの脂質を改変した誘導体であるサポニンアジュバントである。GPI−0100の調製および使用は、本明細書中において参考として援用される米国特許第6,080,725号に記載される。3回目の免疫の約1週間後、処理した動物から血液試料を回収し、ELISAアッセイに使用して、存在する抗FITC IgG抗体量および抗FITC IgG2a抗体量を測定した(図1を参照のこと)。すべてのマウスにおいて抗FITC抗体力価が高いことを確認した後、初回免疫からおよそ5週間後、高親和性の葉酸受容体を高レベルで発現している同系マウスの白血病細胞株である、2.5×10個のL1210A細胞を、各マウスの腹腔内に注射した。次いで、インビボで7日間癌細胞を増殖させ、成長させた。その後、癌細胞を移植後7、8、9、11および14日に、担癌マウスの腹腔内にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で処置するか、あるいはPBS、IL−2(250,000IU/用量)およびIFN−α(75,000IU/用量)、または葉酸−FITC結合体(EC17;図7を参照のこと;1800nmol/kg)、IL−2(250,000IU/用量)およびIFN−α(75,000IU/用量)を担癌マウスの腹腔内に同時注射した。動物の肉眼的な形態、行動および生存率を毎日モニターした。図2に示すように、サイトカイン単独では、担癌マウスの生存率はある程度延びたが、EC17、IL−2およびIFN−αで処置したマウスは治癒した(組織学的解析により裏付けられた)。
【0060】
(実施例2)
(M109癌細胞を腹腔内に注射したBalb/cマウスの生存を延ばしたサポニン増強性(サイトカインと共に)免疫療法)
【0061】
2週間隔にて皮下に3回、100μgのGPI−0100と共に処方された35μgのKLH−FITCで、6〜8週齢(約20〜22グラム)のメスBalb/cマウスを免疫した。実施例1に記載したように、すべてのマウスにおいて抗FITC抗体力価が高いことを確認した後、初回免疫のおよそ5週間後、高親和性の葉酸受容体を高レベルで発現している同系マウスの肺癌細胞株である、7.5×10個のM109細胞を、各マウスの腹腔内に注射した。次いで、インビボで7日間癌細胞を増殖させた。その後、癌細胞を移植後7〜11日、14〜18日および21〜25日に、PBSを担癌マウスの腹腔内に注射するか、あるいはPBS、IL−2(5,000IU/用量)およびIFN−α(25,000IU/用量)、またはEC17(1800nmol/kg)、IL−2(5,000IU/用量)およびIFN−α(25,000IU/用量)を担癌マウスの腹腔内に同時注射した。EC17およびIFNαを、週3回投薬した。IL−2は週5回投薬した。動物の肉眼的な形態、行動および生存率を毎日モニターした。図3に示すように、サイトカイン単独では、担癌マウスの生存率はある程度延びたが、EC17、IL−2およびIFN−αで処置したマウスの生存率は実質的に延長した。
【0062】
(実施例3)
(腹腔内にM109腫瘍を持つ1日齢のBalb/cマウスにおけるサポニン増強性E17免疫療法単独(サイトカインなし)の効果)
【0063】
2週間隔にて皮下に3回、100μgのGPI−0100と共に処方された35μgのKLH−FITCで、6〜8週齢(約20〜22グラム)のメスBalb/cマウスを免疫した。実施例1に記載したように、すべてのマウスにおいて抗FITC抗体力価が高いことを確認した後、初回免疫からおよそ5週間後、7.5×10個のM109細胞を各動物の腹膜内に注射した。1日後から、癌細胞移植後1、2、5、7、9、12、14および16日に、PBSを担癌マウスの皮下に注射するか、あるいはPBSおよびEC17(1800nmol/kg)を担癌マウスの皮下に同時注射した。動物の肉眼的な形態、行動および生存率を毎日モニターした。図4に示すように、PBS対照群のマウスは、腫瘍移植後約24〜25日ですべて死亡したが、EC17で処置したマウスの生存率は実質的に延長した。
【0064】
(実施例4)
(腹腔内にM109腫瘍を持つ7日齢のBalb/cマウスにおけるサポニン増強性E17免疫療法単独(サイトカインなし)の効果)
【0065】
1週間隔にて皮下に3回、100μgのGPI−0100と共に処方された35μgのKLH−FITCで、6〜8週齢(約20〜22グラム)のメスBalb/cマウスを免疫した。実施例1に記載したように、すべてのマウスにおいて抗FITC抗体力価が高いことを確認した後、0.5×10個のM109細胞を各動物の腹腔内に注射した。次いで、インビボで7日間癌細胞を成長させた。その後、癌細胞を移植後7〜11日、14〜18日および21〜25日に、PBS、またはPBSおよびEC17(1800nmol/kg/日)を担癌マウスの腹腔内に注射した。EC17およびIFNαを、週3回投薬した。IL−2は週5回投薬した。動物の肉眼的な形態、行動および生存率を毎日モニターした。図5に示すように、PBS対照に比べて、EC17単独では担癌マウスの寿命をわずかに延ばした。従って、図4および図5に示される結果は、総合すれば、EC17は単独で、腫瘍発生の早期段階で有意な抗腫瘍効果を有することを示す。さらに重要なことには、図3および図5に示される結果は、総合すれば、EC17またはサイトカイン単独による治療に比べて、EC17およびサイトカイン(例えば、IL−2およびIFN−α)は、担癌マウスの寿命において相乗的な延長を誘発することを示す。
【0066】
(実施例5)
(M109癌細胞を皮下に持つBalb/cマウスにおいて腫瘍の成長を妨げたサポニン増強性(サイトカインと共に)免疫療法)
【0067】
1週間隔にて皮下に3回、100μgのGPI−0100と共に処方された35μgのKLH−FITCで、6〜8週齢(約20〜22グラム)のメスBalb/cマウスを免疫した。実施例1に記載したように、すべてのマウスにおいて抗FITC抗体力価が高いことを確認した後、1×10個のM109細胞を各動物の肩の皮下に注射した。次いで、30〜50mmまで1週間癌細胞を成長させた。その後、癌細胞を移植後7〜11日、14〜18日および21〜25日に、PBSを担癌マウスの腹腔内に注射するか、あるいはPBS、IL−2(40,000IU/用量)およびIFN−α(25,000IU/用量)、またはPBS、EC17(1800nmol/kg)、IL−2(40,000IU/用量)およびIFN−α(25,000IU/用量)を担癌マウスの腹腔内に同時注射した。EC17およびIL−2を、週5回投薬した。IFNαは週3回投薬した。キャリパーを用いて2日に1回腫瘍の体積を測定した。図6に示すように、PBS、またはPBS、IL−2およびIFN−αを注射したマウスにおける腫瘍の有意な成長に比べて、EC17、IL−2およびIFN−αを注射したマウスにおける皮下の腫瘍は、移植後35日間にわたってサイズの減少を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原性細胞集団を潜む予備免疫された宿主動物において、内因性の免疫応答が介在する、該集団の特異的排除を増強する方法であって、
該細胞集団のメンバーがリガンドに対する到達可能な結合部位を有し、
免疫原またはハプテンが宿主における内因性の抗体により認識されるかもしくは宿主における免疫細胞によって直接認識される、免疫原またはリガンドに結合させたハプテンを含有する組成物を宿主に投与する工程を包含する方法において、
該免疫原または免疫原性のハプテン−キャリア結合体およびT1偏向性アジュバントを用いて該宿主を予備免疫して既存の免疫を導き出す工程を包含する改善方法。
【請求項2】
細胞殺傷剤、腫瘍侵入増強剤、化学療法剤、抗菌剤、細胞傷害性免疫細胞および内因性の免疫応答を刺激し得る化合物からなる群から選択される治療因子を含有する、少なくとも1つの追加の組成物を宿主に投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アジュバントが、非改変サポニンアジュバントおよび改変サポニンアジュバントからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記改変サポニンアジュバントは、脂質が改変されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アジュバントがキラヤサポニンアジュバントである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
改変サポニンアジュバントが脂質改変キラヤサポニンアジュバントである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記宿主がハプテン−キャリア結合体を含有する組成物で予備免疫される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ハプテンがフルオレセインおよびジニトロフェニルからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
病原性細胞の集団を潜む宿主動物において、該病原性細胞の集団を排除するために、免疫応答を増強する方法であって、
該病原性細胞がリガンドに対する到達可能な結合部位を有し、
該方法が、T1偏向性アジュバントを宿主に投与する工程およびリガンドに結合させた免疫原を含有する組成物を宿主に投与する工程を包含する、方法。
【請求項10】
細胞殺傷剤、腫瘍侵入増強剤、化学療法剤、抗菌剤、細胞傷害性免疫細胞および内因性の免疫応答を刺激し得る化合物からなる群から選択される治療因子を含有する、少なくとも1つの追加の組成物を宿主に投与する工程をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アジュバントが非改変サポニンアジュバントおよび改変サポニンアジュバントからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記改変サポニンアジュバントが脂質改変されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アジュバントがキラヤサポニンアジュバントである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記改変サポニンアジュバントが脂質改変キラヤサポニンアジュバントである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ハプテンがフルオレセインおよびジニトロフェニルからなる群から選択される、治療有効量のT1偏向性アジュバントおよびハプテン−キャリア結合体を含有する組成物。
【請求項16】
治療有効量のT1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体を含有する組成物。
【請求項17】
前記ハプテンがフルオレセインおよびジニトロフェニルからなる群から選択される、T1偏向性アジュバントおよびハプテン−キャリア結合体を含有するキット。
【請求項18】
1偏向性アジュバント、ハプテン−キャリア結合体およびリガンド−ハプテン結合体を含有するキット。
【請求項19】
1偏向性アジュバントおよびリガンド−免疫原結合体を含有するキット。
【請求項20】
前記免疫原がハプテンである、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記ハプテンがフルオレセインおよびジニトロフェニルからなる群から選択される、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
治療因子をさらに含有する、請求項18に記載のキット。
【請求項23】
前記治療因子がサイトカインを含有する、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
治療因子をさらに含有する、請求項19に記載のキット。
【請求項25】
前記治療因子がサイトカインを含有する、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
1偏向性アジュバント、免疫原およびリガンド−免疫原結合体を含有するキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−12065(P2011−12065A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−157088(P2010−157088)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2003−586306(P2003−586306)の分割
【原出願日】平成15年4月16日(2003.4.16)
【出願人】(504389588)エンドサイト,インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】