説明

アスピリン誘発脂質メディエータ

【課題】動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患が治療または予防に使用できる化合物と該化合物による治療方法の提供。
【解決手段】15-ヒドロキシエイコサペンタエン酸、18-ヒドロキシエイコサペンタエン酸、5,12,18-ヒドロキシエイコサペンタエン酸、および下式の化合物。


(式中、R、Pは水素)

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景技術
過去25年間の多数の報告は亜麻仁油、カノーラ油または魚油とともに食物オメガ-3多価不飽和脂肪酸(ω-3 PUFA)を補充することがヒト疾患および実験動物に有益な作用を有することを示唆する(1.De Caterina, R., S. Endres, S.D. Kristensen, and E.B. Schmidt編、1993. n-3 Fatty Acids and Vascular Disease. Spriger-Verlag, London and 2.Lands, W.E.M., 編、1987. Proceedings of the AOCS Short Course on Polysaturated Fatty Acids and Eicosanoids. American Oil Chemists' Society, Champaign, IL)これらには抗腫瘍および抗転移作用だけでなく、動脈硬化、関節炎、および喘息に関連がある、潜在的な抗血栓、免疫調節、および抗炎症反応についての活発な議論も含まれている(参考文献1およびIigo, M., T. Nakagawa, C. Ishikawa, Y. Iwahori, M. Asamoto, K. Yazawa, E. Araki, and H. Tsuda. 1997. Inhibitory effects of docosahexaenoic acid on colon cartinoma 26 metastasis to the lung。Br. J. Cancer 75:650-655)。心血管疾患におけるそれらの予防作用の可能性は、最近、主な食物ω-3 PUFAs、エイコサペンタエン酸(C20:5ω-3;EPA)およびドコサヘキサエン酸(C22:6ω-3;DHA)が虚血誘発心室細動に対して劇的な効果を有し、イヌの突然心臓死を保護できるという発見により支持された(4.Billman, G.E. et al. 1999 Prevention of sudden cardiac death by dietary pure ω-3 polyunsaturated fatty acids in dogs. Circulation. 99:2452-2547)。小児栄養、心血管疾患、および精神衛生におけるω-3 PUFA補充のそのような潜在的な予防および/または治療効果の出現が、国際ワークショップにより推奨される食物摂取の根拠となってきた(5.Simopoulous, A.P. et al., 1999. Workshop on the
essentiality of and Recommended Dietary Intakes for Omega-6 and Omega-3
Fatty Acid. J. Am. Coll. Nutr. 18:487-489)。また、Gruppo Italiano per
lo Studio della Sopravvivense nell' Infarto Miocardio(GISSI)Prevenzione trialは、アスピリンを含む推奨された予防処置に加えて毎日ω-3 PUFAを1 g摂取した心筋梗塞の生存患者>11,300においてω-3 PUFA補充の効果を評価し(n=2,836)、心血管死の減少を伴った重要な利点について報告した(6.Marchioloi、R. 1999. Dietary supplementation with n-3 polyunsaturated fatty acids and vitamin E after myocardial infarction:results of the GISSI-Prevenzione trial. Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivense nell' Infarto miocardioco. Lancet, 354:447-455)。しかし、神経組織に関する研究(パーキンソン病およびアルツハイマー病ならびに脳の炎症に関与するその他の既知のもの)を含むすべての研究において、食物ω-3の保護作用の細胞および分子機序については現在まで大部分説明されていない。
【0002】
魚油の主要脂質、C20:5の作用は、(a)アラキドン酸((C20:4ω-6;AA)から前炎症エイコサノイド(すなわちプロスタグランジン〔PGs〕およびロイコトリエン〔LTS〕)への変換の阻害;(b)作用の弱い5-系列LTSを生じる代替基質となる;および/または(c)抗血栓作用を維持するためにシクロオキシゲナーゼ(COX)によるそれらの4-系列PG対応物に相当する効力を有するプロスタノイド(すなわち、PGI3)への変換に基づく(参考文献1、3および4)。これらおよび他の提案された説明は、in vivoでの分子的証拠の欠如およびin vitroで推定される“有益な作用”を得るために必要なω-3 PUFAの濃度が高いために一般に認められてこなかった(参考文献1-5)。
【0003】
LTおよびPGの前炎症性役割は認められているが、アラキドネート由来の他のエイコサノイド、すなわちリポキシン(LXs)およびそれらの内因性類似体、アスピリン誘発15エピマーLXs(ATLs)がPMN媒介傷害および急性炎症の強力な逆調節物質であるという新規の証拠がある(7.Weissmann, G. 1991. Aspirin. Sci. Am. 264:84-90, 8. Marcus, A. J. 1999. Platelets:their role in hemostasis、thrombosis、and inflammation. In Inflammation:Basic Principals and Clinical Correlates. J.L. Gallin and R. Snyderman, 編、Lippincott Williams&Wilkins, Philadelphia, 77-9;9. Claria, J. and C. N. Serhan. 1995. Aspirin triggers previously undescribed bioactive eicosanoids by human endotherial cell-leukocyte interactions. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9475-9479:10. Serhan, C.N., J.F. Maddox, N.A. Petasis, I. Akritopoulou-Zanze, A. Papayianni, H.R. Brady, S.P. Colgan, and J.L. Madara. 1995. Design of lipoxinA4 stable analogs that block transmigration and adhesion of human neutrophils Biochemistry 34:14609-14615;and 11.Chiang, N.K. Gronert, C.B. Clish, J.A. O'Brian, M.W. Freeman, and C.N. Serhan. 1999, LeukotrieneB4 receptor transgenic mice reveal novel protective roles for lipoxins and aspirin-triggered lipoxins in reperfusion。J. Clin. Invest. 104:309-316)。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の古典的作用部位である、COXの少なくとも2種のアイソフォーム(COX-1および2)がヒトにおいて別個の生理学的および病態生理学的役割を果たしているらしいということが明らかにされてきた(12.Herschman, H.R. 1998, Recent progress in the cellular and molecular biology of prostaglandin systhesis。Trends Cardiovasc. Med. 8:145-150)各COXアイソフォームは2重の酵素活性、ビスオキシゲナーゼおよびペルオキシダーゼを有する。COX-1を阻害せずにCOX-2を選択的に阻害すると従来のNSAIDsに伴う望ましくない副作用を軽減することができるため、COX-2の阻害がいくつかの製薬会社の現時での焦点である(13.Needleman, P. and P.C. Isacson. 1997. The discovery and function of COX-2. J. Rheumatol. 24(Suppl. 49):6-8)。この点において、古典的NSAID、アスピリン(ASA)によるCOX-2のアセチル化はプロスタノイドの形成を阻害するが、アセチル化された酵素はin situsで依然として活性であり、C20:4から15R-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15R-HETE)を生成し、それは遊離され、活性化炎症細胞により15-エピマー性LXsに変換される(14.Ching, N.T. Takano, C.B. Clish, N.A. Petasis, H.-H. Tai, and C.N. Serhan. 1998. Aspirin-triggered15-epi-lipoxinA4(ATL)generation by human leukocytes and murine peritonitis exudates:Development of
a specific 15-epi-LXA4 ELISA、J. Pharmacol. Exp. Ther. 287:779-790 and
15.Xiao G., A.-L. Tsai, G. Palmer, W.C. Boyar, P.J. Marshall, and R.J.
Kulmacz, 1997. Analysis of hydroperoxide-induced tyrosyl radicals and lipoxigenase activity
in aspirin-treated human prostaglandinH syntase-2. Biochemistry 36:1836-1845)。長い生物学的半減期を有するこれらの天然の局所メディエータの合成類似体は強力な抗炎症作用を示し、宿主防御に重要な情報伝達の調節による抗炎症作用を有するメディエータへのAA(および/または他の脂質およびPUFA、図1を参照されたい)の変換に細胞-細胞相互作用が関与できるという証拠を提供する(参考文献11および16.Clish、C.B., J.A. O'Brien, K. Gronert, G.L. Stahl, N.A. Petasis, and C, N. Serhan. 1999. Local and systemic delivery of a stable aspirin-triggered lipoxin prevents neutrophil recruitmemt in vivo. Proc. Nad. Acad. Sci. USA 96:8247-8252)。
【0004】
発明の概要
アスピリン療法はリポキシゲナーゼに直接作用せずにプロスタグランジン生合成を阻害するが、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)をアセチル化して、炭素15でエピマー性の生理活性リポキシン(15-epi-LX、アスピリン誘発LX〔ATL〕とも呼ばれる)を導く。本発明はω-3多価不飽和脂肪酸およびアスピリン(ASA)で処理されたマウスの炎症浸出液が生理活性脂質シグナルの新規アレイを生成することを提供する。ASAで処理され、アップレギュレートされたCOX-2を有するヒト内皮細胞はC20:5ω-3を18R-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(HEPE)および15R-HEPEに変換する。それぞれは、多形核白血球により使用され、5-系列15R-LXおよび5,12,18R-トリHEPEを含む新規トリヒドロキシ-含有メディエータの別個のクラスを生成する。これらの新規化合物はin vivoでヒト多形核白血球の経内皮細胞遊走および浸潤の強力な阻害剤であることが明らかになった(ATL類似体>5,12,18R-トリHEPE>18R-HEPE)。アセトアミノフェンおよびインドメタシンも、ω-3およびω-9だけでなく組換えCOX-2による18R-HEPEおよび15R-HEPEの生成、ならびに血管、脳、炎症および血液細胞に作用する多価不飽和脂肪酸(例えば、C18:3、C22:6)の他の新規酸素化を可能にする。これらの発見はCOX-2-非ステロイド系抗炎症薬-依存的酸素化および微小炎症に影響を与える細胞-細胞相互作用による生理活性脂質メディエータのアレイを生じる新規経細胞経路を証明する。これらおよび関連する化合物の生成は、炎症、組織異常増殖、および血管疾患に重大な影響を与えるω-3食物補充の治療的利点を提供する。
【0005】
内皮細胞(ECs)におけるP450によるC20:4の酸化もEC活性化を阻害すると思われる11,12-エポキシエイコサテトラエン酸を導くが、一方EPAの非酵素的酸化はEC接着分子をダウンレギュレートすることができる(17.Node, K.Y. Huo, X,
Ruan, B. Yang, M. Spiecker, K. Ley, D.C. Zeldin, and J.K. Liao. 1999. Anti-inflammatory properties of cytochrome P450 epoxygenase-derived eicosanoids, Science 285:1276-1279 and 18. Sethi, S., A.Y. Eastman, andJ.W. Eaton. 1996. Inhibition of phagocyte-endothelium interactions by oxidized fatty acids:A natural anti-inflammatory mechanism?J. Lab. Clin. Med.
128:27-38)。PMN-血管相互作用は補充およびPMN-依存的組織傷害の中心であるので、それらの“クロストークダイアログ(cross talk dialogue)”に関与する局所シグナルは興味深い。本発明はアスピリン-アセチル化COX-2がin vivoで活性なままで、十分に証明された抗炎症反応のエフェクターである可能性がある特異的ATLsを生成することを提供し、プロスタノイド阻害のためだけであるはずがないASAの有益な効果の機序を提供する(参考文献8、12、14)。ASAおよび関連するNSAIDsの新規な治療への適用が明らかになり続けている。しかし、それらは通常理論的根拠を提供するための分子的定義づけを必要とする。これには報告された大腸癌におけるASAの予防的利点および2回目の心筋梗塞のより低いリスクが挙げられる(総説19.Levy, G.N. 1997. Prostaglandin H Synthases, nonsteroidal anti-inflammatory drugs, and colon cancer. FASEB J. 11:234-247)。ヒト疾患において食物(ω)-3 PUFAのためであるとされる定性的に重複する有益な側面(参考文献1-6)の観点から、本発明は分子的根拠を提供し、これらの有益な作用のマーカーとしての役割も果たす、脂質由来シグナルの新規経路に向けられる。
【0006】
本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA(s))、すなわちC18:3、C20:4およびC22:6を含む多価不飽和脂肪酸、およびアスピリンの組合せの投与により哺乳動物において炎症を治療または予防するための方法を説明する。一態様において、オメガ脂肪酸、例えばC18:3またはC22:6およびアスピリンは2つの異なる時期に投与される。本発明は哺乳動物にオメガ脂肪酸およびアスピリンの組合せを投与することにより、かかる哺乳動物の動脈性炎症、関節炎、乾癬、蕁麻疹、血管炎、喘息、眼性炎症、肺炎、肺線維症、脂漏性皮膚炎、膿胞性皮膚炎、または心血管疾患を治療するための方法も説明する。
【0007】
別の態様において、本発明は以下の式:
【0008】
【化25】

【0009】
または
【0010】
【化26】

【0011】
およびそれらの立体異性体、例えばエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体(式中、Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグ、例えば薬剤的に受容できるそれらの類似体である)の一つを有する天然のクラスのASA誘発脂質(ω-3)メディエータの抗炎症薬の投与により、哺乳動物において炎症を治療または予防するための方法も説明する。好ましい類似体はメチル、エチルおよびグリセロールエステルを含む。PはH(ヒドロキシ)もしくは適切な保護基または当技術分野で既知の基のような、多様なヒドロキシル基を有する基である。これらのヒドロキシル保護基にはエステル(アセテート、エチルアセテート)、エ-テル(メチル、エチル)、エトキシル化誘導体(エチレングリコール、プロピレングリコール)およびシリル化された基(TMSまたはTIPPS)が挙げられる。
【0012】
別の態様において、本発明は天然のクラスのASA誘発脂質(ω-2、ω-3またはω-4)メディエータの抗炎症薬の投与により哺乳動物において炎症を治療または予防するための組成物および方法を説明し、それらのメディエータはモノヒドロキシル化されたドコサヘキサエン酸(DHA)(C22:6)、すなわち、13-ヒドロキシ-DHA、14-ヒドロキシ-DHA、16-ヒドロキシ-DHA、17-ヒドロキシ-DHA、19-ヒドロキシ-DHA、または20-ヒドロキシ-DHAであり、ここでカルボン酸は水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグ、例えば薬剤的に受容できるそれらの類似体のように官能基となることが可能である。好ましい類似体には、メチル、エチル、およびグリセロールエステルが含まれる。モノヒドロキシル化されたDHA化合物のヒドロキシル基も本明細書に記載のように保護することができる。適切な保護基または保護基群は当技術分野で既知の基である。これらにはエステル(アセテート、エチルアセテート)、エーテル(メチル、エチル)、エトキシル化誘導体(エチレングリコール、プロピレングリコール)およびシリルエーテル基(TMSまたはTIPPS)が挙げられる。
【0013】
本発明の一側面において、本発明の化合物は当技術分野で既知の技術により実質的に精製され、単離される。精製された化合物の純度は一般に重量で少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、そして最も好ましくは少なくとも約99%である。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は哺乳動物に1以上の先に記載の化合物を投与することを含む、かかる哺乳動物において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患を治療するための方法を説明する。
【0015】
驚くべきことに、アスピリン、COX-IIならびにω-3およびω-6脂肪酸間の相互作用は組織に抗炎症効果を有するということが思いがけなく見出された。さらに、この組合せは先に同定された式を有する特有の化合物を生成する。これらの化合物は疾患状態またはこれらの疾患または状態に伴う炎症を有する疾患状態の治療のための抗炎症薬として使用できる。
【0016】
好都合には、本発明の化合物および方法は最小の副作用を有する。本発明の化合物が好中球を標的にすることが、NSAIDsに伴う特有の副作用を妨げる。NSAIDsは広範な生物学的/生理学的作用を有するが、本発明の化合物は好中球に対して選択的である。これらの化合物は炎症を軽減するための好中球指向性治療薬であるので、典型的なNSAIDsと比較して副作用は劇的に少ない。本発明の化合物は、便秘、腎毒性および消化器潰瘍形成または出血に関しては、もしあったとしても望ましくない副作用は最小である。これらの利点は、炎症状態が緩和されることを求めている患者のために有用な代替物を提供し、そうでなければ患者らはNSAIDsに伴う1以上の典型的副作用に無駄に苦しむであろう。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の特徴およびその他の詳細については、請求の範囲において本明細書により具体的に記載され、指摘されるであろう。本発明の具体的な態様は図により示され、本発明を限定するものではないことは理解されるであろう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに各種態様により使用することができる。
【0018】
本特許出願を通して使用される略語は以下のものを含み、便宜上ここに挙げられる。NSAID、非ステロイド系抗炎症薬;PUFA、多価不飽和脂肪酸;ALXR、LXA4受容体;ASA、アスピリン;ATL、アスピリン誘発15-エピ-LX、15R-LX;ATLM、アスピリン誘発脂質メディエータ;COX、シクロオキシゲナーゼI、II(アイソフォーム);EC、内皮細胞;HUVEC、ヒト臍帯血管内皮細胞;LC/MS/MS、液体クロマトグラフィータンデム質量分析;LM、脂質由来メディエータ;LO、リポキシゲナーゼ;LT、ロイコトリエン;LX、リポキシン;PG、プロスタグランジン;PMN、多形核白血球;EPA、エイコサペンタエン酸;HEPE、ヒドロキシエイコサペンタエン酸;HETE、ヒドロキシエイコサテトラエン酸;LXA4、5S,6R,15S-トリヒドロキシ-7,9,13-トランス-11-シス-エイコサテトラエン酸;15-エピ-LXA4、5S,6R,15R-トリヒドロキシ-7,9,13-トランス-11-シス-エイコサテトラエン酸;C20:5(エイコサペンタン酸、EPA、ω-3脂肪酸);C20:4(アラキドン酸、AA、ω-6脂肪酸);およびC22:6(ドコサヘキサエン酸、DHA、ω-3脂肪酸)。
【0019】
本発明はオメガ-3(ω-3)脂肪酸およびアスピリンの組合せの投与により哺乳動物において炎症を治療または予防するための方法を説明する。一態様において、オメガ脂肪酸、例えばEPAまたはDHA、とアスピリンは2つの異なる時期に投与される。本発明は哺乳動物にEPAまたはDHAのようなオメガ脂肪酸とアスピリンの組合せを投与することにより、かかる哺乳動物において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患を治療するための方法も説明する。
【0020】
別の態様において、以下の式の一つを有する抗炎症薬の投与により哺乳動物において炎症を治療または予防するための組成物および方法を説明する。化合物1は以下の式:
【0021】
【化27】

【0022】
を有する。
好ましい態様において、炭素15位におけるヒドロキシルはR立体配置を有する。別の態様において、炭素15位におけるヒドロキシルはS立体配置を有する。あるいは、炭素15位におけるヒドロキシルはR/Sラセミ混合物である。
【0023】
化合物2は以下の式:
【0024】
【化28】

【0025】
を有する。
好ましい態様において、炭素18位におけるヒドロキシルはR立体配置を有する。別の態様において、炭素18位におけるヒドロキシルはS立体配置を有する。あるいは、炭素18位におけるヒドロキシルはR/Sラセミ混合物である。
【0026】
化合物3は以下の式:
【0027】
【化29】

【0028】
を有する。
一態様において、炭素5位におけるヒドロキシルはS立体配置を有し、炭素6位におけるヒドロキシルはR立体配置を有し、そして、炭素15位におけるヒドロキシルはR立体配置を有する。別の態様において、炭素5位におけるヒドロキシルはR/S立体配置を有し、炭素6位におけるヒドロキシルはR/S立体配置を有し、そして、炭素15位におけるヒドロキシルはR/S立体配置を有する。
【0029】
化合物4は以下の式:
【0030】
【化30】

【0031】
を有する。
一態様において、5-ヒドロキシルはS立体配置を有し、12-ヒドロキシルはR立体配置を有し、そして、18-ヒドロキシルはR立体配置を有する。別の態様において、5-ヒドロキシルはR/S立体配置を有し、12-ヒドロキシルはR/S立体配置を有し、そして、18-ヒドロキシルはR/S立体配置を有する。
【0032】
化合物5は13-ヒドロキシ-DHAと呼ばれる以下の式:
【0033】
【化31】

【0034】
を有し、ここでP=H(ヒドロキシル)である。一態様において、13-ヒドロキシルはS立体配置を有する。別の態様において、13-ヒドロキシルはR立体配置を有する。さらに別の態様において、13-ヒドロキシルはラセミ混合物、例えばR/S立体配置である。
【0035】
化合物6は14-ヒドロキシ-DHAと呼ばれる以下の式:
【0036】
【化32】

【0037】
を有し、ここでP=H(ヒドロキシル)である。一態様において、14-ヒドロキシルはS立体配置を有する。別の態様において、14-ヒドロキシルはR立体配置を有する。さらに別の態様において、14-ヒドロキシルはラセミ混合物、例えばR/S立体配置である。
【0038】
化合物7は16-ヒドロキシ-DHAと呼ばれる以下の式:
【0039】
【化33】

【0040】
を有し、ここでP=Hである。一態様において、16-ヒドロキシルはS立体配置を有する。別の態様において、16-ヒドロキシルはR立体配置を有する。さらに別の態様において、16-ヒドロキシルはラセミ混合物、例えばR/S立体配置である。
【0041】
化合物8は17-ヒドロキシ-DHAと呼ばれる以下の式:
【0042】
【化34】

【0043】
を有し、ここでP=Hである。一態様において、17-ヒドロキシルはS立体配置を有する。別の態様において、17-ヒドロキシルはR立体配置を有する。さらに別の態様において、17-ヒドロキシルはラセミ混合物、例えばR/S立体配置である。
【0044】
化合物9は19-ヒドロキシ-DHAと呼ばれる以下の式:
【0045】
【化35】

【0046】
を有し、ここでP=Hである。一態様において、19-ヒドロキシルはS立体配置を有する。別の態様において、19-ヒドロキシルはR立体配置を有する。さらに別の態様において、19-ヒドロキシルはラセミ混合物、例えばR/S立体配置である。
【0047】
化合物10は20-ヒドロキシ-DHAと呼ばれる以下の式:
【0048】
【化36】

【0049】
を有し、ここでP=Hである。一態様において、20-ヒドロキシルはS立体配置を有する。別の態様において、20-ヒドロキシルはR立体配置を有する。さらに別の態様において、20-ヒドロキシルはラセミ混合物、例えばR/S立体配置である。
【0050】
化合物1から10までにおいて、Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグである。好ましい類似体にはメチル、エチルおよびグリセロールエステルが挙げられる。
【0051】
化合物1から10において、“ヒドロキシル” 立体化学について述べるときは典型的なものを示し、かかる用語は、保護されたヒドロキシル基および遊離ヒドロキシル基も含むことを意味することを理解すべきである。
【0052】
化合物1から10におけるヒドロキシルは当技術分野で既知の、各種保護基により保護可能である。当業者はどの保護基がヒドロキシル基の保護に有用であるかということを容易に決定できる。標準法は当技術分野で既知であり、文献でさらに十分に説明される。例えば、適切な保護基は当業者により選択可能であり、Green and Wuts, “Protecting Groups in Organic Synthesis”, John Wiley and
Sons, Chapters 5 and 7, 1991, に記載され、その教示は参照として本発明明細書に援用する。好ましい保護基には、メチルおよびエチルエーテル、TMSまたはTIPPS基、アセテートまたはプロピオネート基ならびにエチレングリコールエーテルおよびプロピレングリコール誘導体のようなグリコールエーテルを含む。
【0053】
例えば、1以上のヒドロキシル基は、ヒドロキシルイオンとハライド間の反応を促進するために酸クロリドまたはシリルクロリドの存在下でトリエチルアミンのような緩和な塩基により処理することができる。あるいは、アルキルハライドはエーテル形成を促進するためにヒドロキシルイオン(リチウムジイソプロピルアミドのような塩基により生成される)と反応させることができる。
【0054】
化合物3および4ではすべてのヒドロキシル基が保護される必要がないことも理解すべきである。一つ、二つまたは三つすべてのヒドロキシル基が保護されていてもよい。このことはヒドロキシル基を保護するために使用される試薬の化学量論的選択により成し遂げることができる。当技術分野で既知の方法、例えばHPLC、LC、フラッシュクロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、結晶化、蒸留などをモノ、ジ-、またはトリ-保護ヒドロキシ化合物を分離するために使用してもよい。
【0055】
先に同定された化合物のそれぞれに1以上のキラル中心があるということを理解すべきである。本発明はそれぞれの化合物のすべての立体化学的形状、例えば、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体を包含することを理解すべきである。
【0056】
本明細書で使用される“薬剤的に受容できる塩、エステル、アミド、およびプロドラッグ”という用語は本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸負荷塩、エステル、アミド、およびプロドラッグを表し、可能な場合、本発明の化合物の双性イオン型と同様に、それらは確かな医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを有さず、患者の組織に接触した使用に適切で、適度な利点/リスク比を有し、そして意図された使用に効果的である。“塩”という用語は本発明の化合物の相対的に非毒性の、無機および有機酸付加塩を表す。これらの塩は化合物の最終単離および精製中にin situで、または適切な有機または無機酸と遊離塩基型の精製された化合物を別々に反応させ、形成された塩を単離することにより製造してもよい。これらはナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのようなアルカリおよびアルカリ土類金属に基づくカチオン、ならびにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むがそれらに限定されない、非毒性アンモニウム、4級アンモニウム、およびアミン化カチオンを含んでいてもよい。(例えば、本明細書に参照として援用されたBerge S.M. et al., “Pharmaceutical Salts, ”J. Pharm. Sci. , 1977;66:1-19を参照されたい)。
【0057】
“プロドラッグ”という用語は、例えば血中での加水分解によりin vivoで急速に変換されて先の式の親化合物を生じるような化合物を表す。十分な説明はT.
Higuchi and V. Stella, “Pro-drugs as Novel Deliverly Systems, ”Vol. 14 of the A.C.S. Symposium SeriesおよびBioreversible Carriers in Drug Design, Edward B. Roche編、American Pharmaceutical Assoiciation and Pergamon Press, 1987において提供され、それらは参照として本明細書に援用する。本明細書で使用するように、プロドラッグはin vivoで投与したときに代謝され、さもなければ変換されて、生物学的、薬剤的または治療的に活性な化合物の形状になるような化合物である。プロドラッグを製造するために、薬剤的に活性な化合物は修飾され、代謝過程により活性化合物が再生されるであろう。プロドラッグは薬物の代謝安定性もしくは輸送の特徴を変化させるため、副作用もしくは毒性から保護するため、薬物の風味を改善するため、または薬物の他の特徴または性質を変化させるために設計されてもよい。いったん薬剤的に活性な化合物が同定されると、in vivoでの薬物動態学的過程および薬物代謝の知識を利用して、薬剤技術分野の技術者は化合物のプロドラッグを設計することができる〔例えば、Nogrady(1985)Medical Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press, New York, 388-392ページを参照されたい〕。適切なプロドラッグ誘導体の選択および製造のための慣用の方法は例えば、“Design of Prodrugs、”H. Bundgaard編、Elsevier, 1985に記載されている。プロドラッグの適切な例としては、対応する酸のメチル、エチルおよびグリセロールエステルが挙げられる。さらに、ヒドロキシル官能基の保護基は代謝されて親化合物、すなわち天然のヒドロキシル官能基になることが可能であるほど望ましいと思われる。
【0058】
本発明の化合物は以下に記載するように、医薬組成物に製剤されてもよい。好ましい態様において、化合物は徐放性組成物の状態で長期間にわたり投与されてもよい。徐放性組成物は当技術分野で既知であり、当業者は当技術分野で一般に認められるパラメータに基づいて受容できる組成物を製剤することができる。最も好ましい態様において、グリセロールエステルは本明細書に記載の炎症状態の治療において、当技術分野で既知の徐放性組成物、すなわち経皮パッチとして使用してもよい。経皮パッチを製造するための適切な方法は、米国特許第5,814,599,5,846,974または4,201,211に見出すことが可能であり、それらは参照として本明細書に援用する。より具体的には、化合物はCiba-GeigyおよびAlza Corporationから入手できるパッチ技術の型を使用して、経皮的に送達することができる。本発明の医薬組成物はヒトのような温血動物に間欠的に、または段階的、継続的、連続的もしくは管理された速度で投与してもよい。さらに、医薬組成物が投与されるのに適した1日の内の時期、および1日毎の投与回数は変化してもよい。投与は好ましくは医薬組成物の活性成分が炎症状態と相互作用できるように行う。
【0059】
さらに別の態様において、本発明は1以上の先に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、かかる哺乳動物において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患を治療するための方法を説明する。
【0060】
本明細書で使用される“対象”という用語は、免疫反応、例えば抗炎症反応が引き起こされるいずれかの生きた生物を表す。対象という用語はヒト、チンパンジーならびに他の類人猿およびサル種のようなヒト以外の霊長動物;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマのような家畜;イヌおよびネコのようなペット;マウス、ラットおよびモルモットなどのような実験動物などを含むがそれらに限定されない。かかる用語は特定の年齢または性を意味しない。従って、雄または雌にかかわらず、胎児だけでなく成体および新生児が対象として包含されるように意図されている。
【0061】
本明細書で使用される“哺乳動物”という用語は、抗原に対して免疫反応を引き起こすことができる、生きている生物を表す。対象という用語はチンパンジーならびに他の類人猿およびサル種のようなヒト以外の霊長動物、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびモルモットなどを含むがそれらに限定されない。
【0062】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗炎症薬の“治療的有効量”または“予防的有効量”を含んでいてもよい。“治療的有効量”は所望する治療的結果、例えば、各種疾患状態に伴う炎症を軽減または予防するために必要な投与量および期間において有効な量を表す。抗炎症薬の治療的有効量は個体の疾患状態、年齢、性および体重ならびに、個体において所望する反応を引き起こす抗炎症薬の能力のような因子により変化してもよい。治療的有効量は、治療的に有効な効果が抗体または抗体部分のいずれかの毒性または有害作用にまさるような量でもある。“予防的有効量”は、所望する予防的結果を得るために必要な投与量および投与期間において有効な量である。一般に、予防的投与量は疾患の前または初期段階で対象に使用されるため、予防的有効量は治療的有効量より少ないであろう。
【0063】
投与計画は最適の所望する反応を提供するために調節されてもよい(例えば、治療的または予防的反応)。例えば、単回ボーラス投与量を投与してもよく、いくつかの分割投与量を時間をかけて投与してもよく、または投与量を治療的状況の必要性に比例して減少または増加させてもよい。投与を容易にし、投与量を均一にするために、投与量単位の形状において非経口的組成物を製剤することは特に好都合である。本明細書で使用される投与量単位形状は、治療される哺乳動物対象のための単位投与量として適した、物理的に分離した単位を表す;各単位は、必要とされる薬剤的なキャリアと共に所望する治療的効果を生み出すために計算された活性化合物の前もって決められた量を含む。本発明の投与量単位形状についての詳細は、(a)活性化合物の特有の性質、および得ようとする具体的な治療的または予防的効果、ならびに(b)個体の感受性の処置のためにそのような活性化合物を調合する技術に備わる制限に影響を受け、そして直接依存する。
【0064】
本発明の抗炎症薬の治療的または予防的有効量の典型的な、非制限的範囲は0.1-20 mg/kg、より好ましくは1-10 mg/kgである。投与量の値は軽減しようとする状態の型および重大度により変化してもよいということに注意すべきである。いずれかの特定の対象のために、具体的な投与計画は個体の必要性および、投与するか、または組成物の投与を管理する人の専門的判断に従って時間をかけて調節すべきであること、ならびに本明細書で明らかにされた投与量範囲は単に典型的なものであり、請求された組成物の範囲および実施を制限するように意図されていないということをさらに理解すべきである。本発明の抗炎症性化合物、例えば化合物1から10は、対象に投与するために適した医薬組成物に組み入れることができる。一般に、医薬組成物は本発明の抗炎症薬および薬剤的に受容できるキャリアを含む。本明細書で使用するような“薬剤的に受容できるキャリア”は生理学的に適した、いずれかおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。薬剤的に受容できるキャリアの例として、1以上の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せを含む。多くの場合、組成物に等張剤、例えば砂糖、マンニトールのようなポリアルコール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。薬剤的に受容できるキャリアはさらに湿潤もしくは乳化剤、保存剤またはバッファーのような補助的な物質を少量含んでいてもよく、それらは抗炎症薬の保存性または有効性を高める。
【0065】
本発明の抗炎症薬は非経口的投与に適した医薬組成物に組み入れることができる。他の適切なバッファーにはコハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムなどが挙げられるが、それらに限定されない。塩化ナトリウムは0-300 mM(液体剤型では最適には150 mM)の濃度において溶液の毒性を修飾するために使用することができる。凍結保護物質、主として0-10%ショ糖(最適には0.5-1.0%)は凍結乾燥剤型に含まれていてもよい。他の適切な凍結保護物質としてはトレハロースおよびラクトースが挙げられる。増量剤、主として1-10%マンニトール(最適には2-4%)は凍結乾燥剤型に含まれていてもよい。安定剤、主として1-50 mM L-メチオニン(最適には5-10 mM)は液体および凍結乾燥剤型に共に使用してもよい。他の適切な増量剤にはグリシン、アルギニンが挙げられ、0-0.05%ポリソルベート-80(最適には0.005-0.01%)のように含まれていてもよい。付加的な界面活性剤にはポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0066】
本発明の組成物は多様な形状中にあってもよい。これらには、例えば、液体溶液(例えば注射および注入溶液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉剤、リポソームおよび坐剤のような、液体、半固体および固体剤型が挙げられる。好ましい形状は意図する投与様式および治療的効果に依存する。一般に好ましい組成物は、ヒトの受動免疫に使用するものに類似した組成物のような、注射または注入溶液の形状である。好ましい投与様式は非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい態様において、抗炎症薬は静脈内注入または注射により投与される。別の好ましい態様において、抗炎症薬は筋肉内または皮下注射により投与される。最も好ましい態様において、抗炎症薬は経口的に投与される。
【0067】
治療用組成物は一般に、製造および貯蔵状態下で無菌および安定でなければならない。組成物は溶液、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム、または他の高薬物濃度に適した注文された構造として製剤されてもよい。無菌注射液は、必要に応じて、適切な溶媒中に先に記載された成分の一つまたは組合せと必要な量の活性化合物(例えば、抗原、抗体または抗体部分)を組み入れ、続いて濾過して滅菌することにより製造してもよい。
【0068】
一般に、分散剤は塩基性分散媒を含む無菌ベヒクルおよび先に記載の他の必要な成分に活性化合物を組み入れることにより製造される。無菌注射液の製造のための無菌、凍結乾燥粉剤の場合、好ましい製造方法は、活性成分の粉末と先のそれらの滅菌-濾過溶液由来のいずれかの付加的な所望する成分の無菌粉剤が得られる真空乾燥および噴霧乾燥である。溶液の適切な流動性は例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用により、分散剤の場合は必要な粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により維持することができる。組成物中に例えば、モノステアリン酸およびゼラチンのような吸収を遅延させる物質を含むことにより、注射用組成物が持続的に吸収されるようにしてもよい。
【0069】
本発明の抗炎症薬は当技術分野で既知の各種の方法により投与してもよい。当業者に認識されているように、投与経路および/または様式は所望する結果に依存して変化するであろう。ある態様において、移植錠、経皮パッチ、およびマイクロカプセル送達系を含む徐放製剤のように、迅速な放出に対して化合物を保護するキャリアと共に活性化合物を製造してもよい。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性、生体適合性ポリマーが使用されてもよい。そのような製剤の製造のための多くの方法は特許権を有するか、または当業者に既知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinnson編、Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい
ある態様において、本発明の抗炎症薬は例えば、不活性希釈剤または同化できる食用キャリアと共に経口的に投与されてもよい。化合物(およびもし所望するならば他の成分)はまた、ハードまたはソフトシェルゼラチンカプセル中に密閉され、錠剤に圧縮されるか、または直接対象の食物中に組み入れてもよい。経口治療的投与には、化合物は賦形剤とともに組み入れられ、そして摂取可能な錠剤、バッカル剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル、懸濁剤、シロップ剤、ウェハーなどの形状で使用されてもよい。本発明の化合物を非経口的投与以外で投与するためには、不活性化を阻害する材料で化合物をコートするか、またはそれと一緒に投与することが必要になる。
【0070】
先に記載したように、本発明に記載の化合物1から10および薬剤的に受容できるそれらの類似体は、炎症状態を引き起こすCOX酵素を含む臨床状態の予防および治療における用途を有する。例えばCOX酵素と相互作用をする本発明の化合物の能力がそれらをけいれん発生状態、アレルギー状態、血小板凝集に関与する状態に伴う炎症状態、およびより一般的に認められる炎症状態の予防および治療に役立つ。
【0071】
けいれん発生状態の例としては、平滑筋組織を含むもの、特に喘息(突発性気管支喘息を含む)、気管支炎のような気道平滑筋収縮、ならびに冠状動脈けいれん(心筋梗塞に伴うものを含み、心臓喘息になる左心不全を起こすことも、起こさないこともある)、虚血誘発心筋障害、および脳けいれんまたは発作(中枢神経異常を引き起こすかもしれない)のような動脈平滑筋収縮を含むものが挙げられる。他の例としては、炎症性腸疾患、直腸けいれんおよび粘液性結腸炎として既知の状態のような異常な直腸筋収縮により引き起こされる腸疾患が挙げられる。
【0072】
アレルギー状態の例としては、外因性喘息、湿疹のような全体的または部分的アレルギー起源を有するアレルギー性皮膚疾患、アレルギー性腸疾患(小児脂肪便症を含む)、花粉症(それはさらに、またはかわりに上部気道に影響を与えるかも知れない)のようなアレルギー性眼状態、アレルギー性鼻炎、およびアレルギー性結膜炎が挙げられる。
【0073】
血小板凝集を含む例としては、全体的または部分的血栓性起源を有する発作、冠血栓症、静脈炎および静脈血栓症(後者の2種の状態はおそらく炎症にも関連する)を含む、血栓症に起因するものが挙げられる。
【0074】
炎症状態の例としては肺、関節、眼、腸、皮膚、および心臓の状態;特に炎症組織への白血球の浸潤を伴う状態が挙げられる。炎症性肺状態としては、喘息、成人呼吸窮迫症候群、気管支炎および嚢胞性線維症(さらに、またはかわりに腸または他の組織をふくんでいてもよい)が挙げられる。炎症性関節状態はリウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、骨関節炎、痛風関節炎、および他の関節炎性状態が挙げられる。炎症性眼状態にはぶどう膜炎(虹彩炎を含む)および結膜炎が挙げられる。炎症性腸状態にはクローン(Crohn)病、潰瘍性大腸炎および遠位直腸炎が挙げられる。
【0075】
炎症性皮膚疾患には、乾癬のような細胞増殖に関連する疾患、湿疹、アトピー性および脂漏性皮膚炎のような湿疹様皮膚炎を含む皮膚炎、アレルギー性または刺激性接触皮膚炎、湿疹クラクリー(craquelee)、光アレルギー性皮膚炎、光毒性皮膚炎、植物性光皮膚炎、放射線皮膚炎、およびうっ血性皮膚炎が挙げられる。炎症性皮膚疾患には外傷、火傷、水疱性疾患、または皮膚もしくは粘膜の虚血に起因する潰瘍およびびらん;魚鱗癬のいくつかの形状;表皮水疱症;肥厚性瘢痕およびケロイド;本質的老化および光老化;皮膚の機械的剪断により引き起こされる摩擦性水疱形成;およびコルチコステロイドの局所使用に起因する皮膚萎縮が挙げられるが、それらに限定されない。さらに、炎症性皮膚状態には口唇炎、ひび割れた唇、鼻刺激および外陰部膣炎のような粘膜への炎症が挙げられる。
【0076】
心臓の炎症性状態には心筋梗塞傷害が挙げられる。他の炎症性状態には慢性炎症における皮膚壊死、エンドトキシンショック、平滑筋増殖疾患(例えば血管形成術後の再狭窄)、および移植手術後の組織拒絶が挙げられる。
【0077】
炎症に関連した疾患状態の別の例としては、以下に記載するものが挙げられる。本明細書を通じて説明される炎症状態を提示する疾患状態のすべての例は炎症を治療する本発明の概念に包含される。さらに、炎症状態のこれらのリストは典型的なものであり、網羅的なものではない。当業者は、PMNおよび/または白血球が負傷、傷害、または対象の生理学への刺激物のために、基線に比べ局所的に増加するような炎症状態を緩和するための概念に含まれる、別の炎症状態を認識するであろう。
【0078】
したがって、本発明はけいれん状態、アレルギー状態、血小板凝集に関与する状態、または炎症状態のような対象における臨床状態の予防または治療の方法を提供する。治療には、1以上の本発明の化合物1から10、または本明細書に記載された薬剤的に受容できる類似体の治療的有効量の投与を含む。本発明はさらに、1以上の本発明の化合物1から10、または本明細書に記載された薬剤的に受容できる類似体の治療的有効量の投与を含む、対象におけるHIV感染に伴う神経変性または痴呆の予防または治療の方法を提供する。
【0079】
一態様において、本発明の抗炎症薬は頭皮および/または身体の洗浄のためのシャンプーまたは身体洗浄製品、例えば、石けんに組み入れてもよい。シャンプーまたは石けん製品におけるこれらの化合物の使用は、乾癬、脂漏性皮膚炎、膿胞性皮膚炎およびふけを治療するために使用してもよい。さらに、本発明の抗炎症薬、例えば、化合物1から10、およびそれらの組合せは先に記載の疾患および日焼け、毒ツタ、皮膚炎を治療するため、ならびに転移性癌の増殖を遅延させるために局所ローションに使用してもよい。あるいは、本発明の化合物はアルツハイマー病を治療するために使用してもよく、ここでは抗炎症薬の作用がプラーク形成の長期作用を軽減するために役立つことが知られている。かわりとなる態様において、本発明の化合物は一般に、例えば、気管支炎、喘息、肺炎、気腫、および上部気道疾患のような気道の炎症を治療するために、エアゾールまたはスプレーとして使用してもよい。
【0080】
補足的な活性化合物が組成物に組み入れられてもよい。ある態様において、本発明の抗炎症薬は、炎症が有害である疾患の治療に有用な1以上の付加的な治療薬と共に製剤および/または投与される。例えば、本発明の抗炎症薬は他の標的、例えば受容体に結合する1以上の付加的な抗炎症薬とともに製剤および/または投与してもよい。さらに、本発明の1以上の抗炎症薬は2以上の前記の治療薬と組み合わせて使用してもよい。そのような組合せ療法は、好都合には投与される治療薬のより少ない投与量を使用してもよく、したがって各種単独療法に伴う可能性のある毒性または合併症を避けることができる。
【0081】
驚きべくことに、アスピリン、COX-IIおよびオメガ-3脂肪酸間の相互作用が思いがけなく、組織に対する抗炎症作用を有することが見出されてきた。さらに、この組合せは先に同定された式を有する特有の化合物を生み出す。これらの化合物は抗炎症作用を有し、これらの疾患または状態に伴う炎症を有する疾患状態の治療に抗炎症薬として使用することができる。
【0082】
2種のクラスのエイコサノイド、すなわちLTおよびあるPGはヒト疾患に関連がある重要な作用を媒介する。LTおよびPGの前炎症作用は証明されているが(図1参照)、本発明は今までに未知のLMおよびそれらの安定類似体がPMN媒介組織損傷および急性炎症において強力な逆調節作用を有するという新規の証拠を提供する。これらの方針にそって、内皮細胞(EC)におけるp450によるアラキドン酸の酸化が、白血球接着分子を阻害する抗炎症作用を表示する11,12-EETを導くこと、およびEPAの非酵素的酸化もECをダウンレギュレートするような、未だ同定されていない生成物を生み出すことが知られている。
【0083】
本発見は、動脈性炎症、関節炎、心血管疾患、老人性炎症性疾患、過敏性腸管(結腸)、丹毒、湿疹症、乾癬、蕁麻疹、血管炎、炎症を伴うAIDS、眼性炎症、喘息、肺炎、肺線維症のようなヒト疾患として認識される、統合された宿主反応が、ある程度“前”および“抗”炎症性シグナル間の全体のバランスを反映するということを提供する。そのようなシグナル間で、LMの役割は証明されないままである。なぜなら、多分これらの生成物がしばしば経細胞生合成により速やかに生成され、短命で局所的に作用するためである。この点に関して、アラキドン酸由来のリポキシン(LX)および最近証明されたアスピリン誘発LX(ATL)および代謝的に安定な類似体は、それらの長い生体内半減期がin vivoでの有益な作用を促進することから、関心をもたれてきた。
【0084】
ASAは天然に生じる生理活性エイコサノイドのエピマー型の形成を誘発する(参考文献9)ため、NSAIDsがω-3 PUFAsから新規メディエータの形成を促進するという概念について試験した。板上(2時間)でTNF-αとω-3およびASAをマウス空気嚢内に注入することにより嚢において形成された炎症浸出液はいくつかの新規化合物を生み出した(図4)。これらのマウスは0.26%ω-3 PUFAを含む、齧歯類用標準食で飼育された。浸出液由来物質のLC/MS/MS分析はm/z317で得られた結果(図4)から選択イオンクロマトグラムで示した、モノヒドロキシ酸、すなわち18-ヒドロキシ-EPA(18-HEPE)および5-HEPEを示し、それらは合成5S-HEPEおよびC20:5由来の新規トリヒドロキシ-含有化合物とともに溶出した。LC保持時間およびMS/MSスペクトル(図4Bおよび4C)から、それぞれの挿入図で示された構造、すなわちm/z317=(M-H)-H2O-CO2と一致した生成物イオンが得られた。18-HEPE同定と一致する診断用イオンはm/z259に存在し(図4B)、そして5-HEPEはm/z115に存在した(図4C)。これらの基準は同定を通じて使用された。炭素18のアルコールの立体化学はキラルカラムを使用して浸出液由来18-HEPEに対して証明され、参照18-HEPEはB. megateriumを使用して、生合成により製造した(図5、材料と方法を参照されたい)。この微生物モノオキシゲネート脂肪酸は、例えばC20:4を18R-HEPEに変換する(22.Capdevila, J.H., S. Wei, C. Helvig, J.R. Falck, Y. Belosludtsev, G. Truan, S.E. Graham-Lorence, and J.A.
Peterson, 1996. The highly stereoselective oxidation of polynsaturated fatty acids by cytochrome P450 BM-3. J. Biol. Chem. 271:22663-22671;and 23. Ruettinger, R.T. and A.J. Fulco. 1981. Epoxidation of unsaturated fatty acids by a soluble cytochrome P-450-dependent system from Bacillus
megaterium. J. Biol. Chem. 256:5728-5734)。位置18におけるアルコール立体配置は>98%Rであることが証明された。これらの発見は、マウス炎症浸出液がin vivoでC20:5、ω-3およびASAに接して、ヒトPMNsでも同定された生成物である、5-リポキシゲナーゼ経路5-系列5S-HEPE、および形成経路が決定された新規18R-HEPEを生み出すことを示した(以下を参照されたい)(24.Lee, T.H., J.M. Menica-Huerta, C. Shih, E.J. Corey, R.A. Lewis, and K.F. Austen. 1984. Characterization and biologic properties of 5,12-dihydroxy derivatives of eicosapentaenoic acid、including leukotriene B5 and the double lipoxygenase product. J. Biol. Chem. 259:2383-2389)。ASA-およびEPA処理マウス由来の空気嚢炎症浸出細胞は主にPMNを含み(図4参照)、TNF-α単独で形成される浸出液中よりも25-50%数が少なかった(n=3、図6参照)。また、これらの浸出液は、イオノホアA23187(4μM)で活性化されると、本質的に等量の18R-HEPE(10.2±4.3 ng/104細胞)および5S-HEPE(10.9±2.9 ng/104細胞)を生成した。図4A-Dは、LC/MS/MSにより示された新規化合物を生成するためにアスピリンで処理したマウス背側嚢由来の炎症浸出液を示す;TNF-α誘発白血球浸出液はASA(500μg/空気嚢で3.5時間)およびEPA(300μg/空気嚢で4時間)を投与されたFVBマウスから6時間後に収集され、2.3+/-0.5×106白血球/嚢を含んでいた(方法参照)。
【0085】
新規トリヒドロキシ-含有生成物の証拠はこれらの炎症浸出液でも得られた(図4D)。MS/MSに存在するイオンは20:5由来のトリヒドロキシ-含有生成物と一致し、m/z349-(M=H)に親イオン、そしてm/z291および196に存在する構造的に意味のある生成物イオンを有し、それらは挿入図で示したフラグメンテーションに一致する(図4D)。また、共役トリエンを暗示する270 nmUV吸光度最大値は、m/z291(C17-C18位の開裂)および20-炭素構造と一緒に、18R-HEPEおよびトリHEPEが生合成的に関連することを暗示した。
【0086】
これらの新規化合物がヒト細胞によっても生成されるか否かを見出すことは興味をそそられた。この目的のために、IL-1βまたは低酸素(データなし)によりCOX-2を誘発することが知られるヒトECsをEPAでパルスし、ASAで処理し、そして抽出物質をLC/MS/MS分析にかけた(図7A)。m/z259での選択イオンモニタリングにより、ASAにより処理されたHUVECsがEPAを18R-HEPEに変換することを明らかにした(図7A)。また、ASAおよびEPAにより処理されたHMVECsは18-HEPE(10.6 ng/104細胞)および15-HEPEを生成した(6 ng/106細胞)(n=2、4回測定;データなし)。これらの観察はこれらの化合物の生成におけるCOX-2の関与を暗示し、それはASAおよびω-3 PUFAへの組換えヒトCOX-2暴露の実例であり、臨床的に意味があることが明らかになった(図8および表1)。
【0087】
表1に示すように、リノール酸(C18:2)は13-ヒドロキシ-9Z,11E-オクタドカジエン酸(13-HODE;n-5酸素化)および9-HODE(ω-9)の両方に変換され、それらはASAにより非常に減少するが完全には消失しなかった。AAは初期の発見と一致して、15R-HETE(n-5)および11R-HETE(n-9)に変換された。ASAはアセチル化COX-2により15R-HETE産生に転じるリポキシゲナーゼ活性の出現を引き起こし、それは11R-HETE形成に影響するようには見えなかった(表1および図8)。11R-HETEはEPAおよびCOX-2による主要生成物であり、少量の15R-HETE(n-5)および18R-HEPE(n-2)を伴った。1-14C-標識EPAは前駆体-生成物の関連を確かめるために使用された(n=3、方法の図2)。COX-2のASAアセチル化(図8、新規反応生成物のそれぞれの同定、それぞれのマススペクトルにより表示される)は18R-HEPE(n-2)の約2倍の増加、および11R-HETEの>85%減少を導いた(C20:5による位置酸素化の比は1:1:0.3、18R〜15R>11Rであった)。したがって、ECsのアセチル化COX-2(図7)は18R-HEPEおよび15R-HETEの主な供与源であることを一緒にそれらは暗示した。
【0088】
興味深いことに、単離されたCOX-2生成物の場合と異なり、11R-HEPE(C20:5由来)および11R-HETE(C20:4由来)のいずれも血管ECsの主要生成物ではなかった(表1および図7)。選択的COX-2阻害剤によりこれらの酸素化は阻害され、そしてEPAからの18R-HEPE形成のみが阻害を免れるらしかった(表1)。これらの結果は、シトシン駆動急性炎症により例示されるように(図4および図6)、ω-3
PUFA(すなわちEPA;C20:5、ω-3)のほかに炎症の局所部位でのASA処理が、COX-2によりEPAを18R-HEPEおよび15-HEPEに変換できることを示唆した。
【0089】
ヒトPMNsはASA誘発、COX-2由来15R-HETEを15-エピ-LXA4(参考文献9)に変換し、EPAはヒト白血球およびマスマクロファージ(26.Hill, D.J. D.H., Griffiths, and A.F. Rowley. 1999. Trout thrombocytes contain 12-but not 5-lipoxygenase activity。Biochim. Biophys. Acta 1437:63-70)により5-系列LX(25.Serhan、C.N., P.Y. Wong, and B. Samuelsson. 1987. Nomenclature of lipoxins and related compounds derived from arachidonic acid and eicosapentaenoic acid. Prostaglandins 34:201-204)に変換されるため、食作用に関わる活性化ヒトPMNsがアセチル化COX-2由来C20:5、ω-3生成物、18R-HEPEおよび15R-HETEを扱うことについて検討した。食作用刺激、ザイモサン(STZ)処理された血清はアセチル化COX-2 C20:5由来生成物の利用、およびトリ-ヒドロキシ-連続EPEの2種のクラスへの変換を示し、m/z31749.5(M-H)-で選択イオンモニタリングにより、これらの生成物の基礎ピーク分子イオンを再び測定した(図7B)。図7Cで示された一つはマウス細胞の図4Dで観察されたものと本質的に同じMS/MSであり、m/z305、233、195、および291(図4D9のような挿入図の同定用イオン(図7C)で示された5,12,18R-トリHEPE構造と一致した。
【0090】
この生成物は18R-ヒドロキシ-含有“LTB5-様”構造(図7D、挿入図参照)である。実際、単離された18R-HEPEが上記のように活性化PMNsとインキュベートされたとき、この生成物を含むいくつかの化合物に変換された。また、ヒドロキシル化を促進する(参考文献23)ためにB. megateriumホモジネートおよびNADPHとともにpH8.0でインキュベートした合成LTB5は、図7Cに示されたヒトPMNsから得られたような、18Rアルコール基の存在に特徴的なm/zイオンを有するトリヒドロキシ生成物(n=3)に変換された(図5)。これらの独立した証拠の系列は、PMNsが18R-HEPEを取り込み、それは分子酸素を挿入するため、そして続く段階でそれらの5-リポキシゲナーゼにより5-ヒドロ(ペルオキシ)-18R-DiH(p)EPEに変換されること、そして前駆体の18Rキラリティーを保持しながら、LTB5の立体化学を有すると思われる、5,12,18R-トリHEPE(18R-含有LTB5様生成物)へのエポキシド形成を示した。
【0091】
類似した生合成様式において、15R-HEPEはPMNにより5-リポキシゲネーションを介して5-系列LTB5類似体に変換され(図7D)、それもC15立体配置を保持する。そのMS/MSから、マスマクロファージの内因性EPA供与源で観察される15S-含有LX5構造(5-系列)と一致する、MS/MSスペクトルに見られる主要イオン、m/z305、233、および251、すなわち15-エピ-LTA5を得た。この場合において、前駆体15RのキラリティーはヒトPMNにより保持され、15-エピ-LXA4の5-系列ω-3類似体である、15-エピ-LTA5が得られる(図7D)。5-リポキシゲネーションを介した活性化PMNsによる18R-および15R-HEPEの両方への変換はLTB5形成減少を伴った(データなし)。まとめると、これらの結果は単離されたヒトECsおよびPMNs(図7)は炎症浸出液で観察される新規生成物を生成できることを示す(図1-4ならびに表1および2)。
【0092】
経内皮細胞遊走はPMN補充および炎症に重要な事象であり、伝統的抗炎症療法の認められた作用部位である(27.Cronstein, B.N., S.C. Kimmel, R.I. Levin, F. Martiniuk, and G. Weissmann. 1992. A mechanism for the antiinflammatory effects of corticosteroids:The glucocorticoid receptor regulates leukocyte adhesion to endotherial cells and expression of endotherial-leukocyte adhesion molecule 1 and intercellular adhesion molecule 1. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9991-9995)。これらの細胞-細胞相互作用を制御できる内因性脂質メディエータは興味深い。したがって、ヒトPMN移動における5,12,18R-トリHEPEおよび前駆体18R-HEPEが評価された。両化合物は、5,12,18R-トリHEPEでは見かけのIC505-50 nM、および18R-HEPEではIC50>1.0μMでLTB4刺激PMN経内皮細胞遊走を阻害した(図9A)。したがって、新規5-系列メンバー、すなわち、18R-運搬トリHEPEおよび18R-HEPEは、直接比較のために同時に試験した、15-エピ-LXA4、ならびにオメガおよび類似体のようにPMN遊走を阻害した(図10A、表1および表2)。それらの効力順位は15-エピ-LXA4、安定類似体>5,12,18R-トリHEPE>18R-HEPEであった。
【0093】
LTB4に対するG蛋白質共役型受容体が同定され(28.Yokomizo, T.T. Izumi, K. Chang, T. Takuwa, and T. Shimizu. 1997. A G-protein-coupled receptor for leukotrieneB4 that mediates chemotaxis. Nature 387:620-624)、そしてこれらの18R-含有生成物がPMNsを阻害するためにヒトLTB4受容体と相互作用するか否かを調べるために、この受容体を報告された配列からクローニングし(参考文献11)、競合的結合実験のためにHEK293細胞に安定に発現させた。(図10B)。ホモリガンドLTB4は効果的に競合した(IC50〜2.5 nM)。18R-HEPEは競合せず、一方LTB5および5,12,18R-トリHEPEは、LTB5>5,12,18R-トリHEPEの順にともに競合した。
【0094】
5,12,18R-トリHEPEおよび関連する構造(すなわちLTB5)はLTB5のPMN活性低下と一致して、4-系列LTB4より実質的に効果的ではないが、〔3H〕LTB4を置換する効力は現在入手できる合成LTB4受容体アンタゴニストの範囲にあった(データなし)。これらの発見は5,12,18R-トリHEPEが、微小環境中で適切な量が生成されれば、in vivoでLT-媒介反応のダンパー、ならびに新規クラスの受容体アンタゴニストの全合成のための生体鋳型になることを示唆する。
【0095】
5,12,18R-トリHEPEは低レベル(100 ng)で尾に静脈内注射すると、直接比較のために等しい投与量を投与した15-エピ-LX安定類似体のように、マウス背側空気嚢へのPMN浸潤の強力な阻害剤であった(図10C)。18R-HEPEもin vivoで多少活性を有する(<5,12,18R-トリHEPE)が、単離されたヒトPMNsの経内皮細胞遊走にはかなり効果が低く、明らかにこれらの濃度では組換えLTB4受容体と相互作用しなかった。
【0096】
他の広く使用されるNSAIDs(すなわち、アセトアミノフェンおよびインドメタシン)も、それらがHEPEへの変換を変化させるか否かを調べるために表1のように組換えCOX-2およびC20:5に関して試験した(表2)。それぞれは11-HEPEを>95%阻害した。興味深いことに、18R-HEPEおよび15R-HETE形成はアセトアミノフェンまたはインドメタシンのいずれか2 mMの存在下で持続(〜1:1の比)したが、15R-および18R-HEPEのレベルは阻害剤の非存在下でのそれらのレベルの1/3〜1/8に低下した(n=3)。これらの発見は、ω3脂肪酸のR-含有モノヒドロ(ペルオキシ)-含有生成物への酸素化はASA処理およびアラキドネートに限定されないことを示す。実際、C18:2、C18:3およびC22:6もNSAID-COX-2複合体により新規反応生成物に変換された(図11A、BおよびC参照)。したがって、これらの一般に使用されるNSAIDsおよび選択的COX-2阻害剤(表1および2)はNSAIDsに暴露された活性化ECsによるPUFA酸素化をなお可能にし、炎症部位では薬物とCOX-2の相互作用の程度がPUFAsの新規に酸素化された形状の生成を可能にする。
【0097】
ヒトにおけるω-3 PUFAs(すなわちC20:5)の可能性のある有益な影響の報告にもかかわらず、ヒトまたは単離された細胞において新規生理活性化合物を生成するCOX-2による酸素化については検討されずにきた。魚類においては、C20:5およびC20:4はともにマクロファージおよび血小板において動員されて、PG、LT、およびLXを含む5-および4-系列エイコサノイドを本質的に等しく豊富に生み出す(参考文献26)。本発明は、ASAおよびEPAで処理されたマウスの炎症浸出液が新規化合物を生成し(図4)、それらはヒトECs、組換えCOX-2、およびPMNsによっても産生されることを提供する(図5)。栄養補給物(参考文献1-6)としてω-3 PUFAをミリグラムからグラム量摂取すると仮定すると、広い面積の微小血管がアップレギュレートされたCOX-2を運搬し、本実験で観察されたように(図4-8)局所微小環境において著しい量のECsおよび近傍細胞によるEPAの変換が認められる。これらのω-3 PUFAのCOX-2-NSAID-依存的変換が、COX-2がアップレギュレートされる炎症または疾患組織内でおそらく上昇し、NSAIDが治療的利点を有するとき脂肪酸代謝に影響を与える、つまり微小炎症に関する決定因子である。
【0098】
15-エピ-LX生合成と類似して、EPA COX-2由来15R-HETEは白血球中で5(6)-エポキシ化形成とともに5-リポキシゲネーションにより変換されて、15-エピ-LX5系列になった(図11)。C15位から20位までかさ高い基で修飾された、15-エピ-LXA4の安定類似体は不活性化酵素に影響を受けずに、PMN輸送ならびに重要な前炎症性サイトカインの形成および作用を阻害する(参考文献10および16)。したがって、5-系列15-エピ-LXsはΔ17-182重結合を有し、従ってω-3由来15-エピ-LX類似体として機能できるため、類似した様式で作用すべきであろう。
【0099】
COX-2-NSAID-依存的酸素化(例えば、18Rおよび15R)がPMN経内皮細胞遊走および浸潤を阻害するin vivoにおける生理活性化合物を導くため、発見はNSAIDsおよびω-3栄養補助の新規作用機序の基礎、すなわち脂質シグナルの内因性機能的アレイの生成(表1および図4および7)を提供し、そのようなアレイは微小炎症における重要な事象を阻害することにより、ヒトでの試験においてω-3療法に対して認められた有益な作用のいくつかを媒介することが可能である。このような状況において、血小板-EC相互作用をダウンレギュレートする、認識されたリポキシゲナーゼ生成物(29.Buchanan, M.R., P. Horsewood, and S.J. Brister. 1998. Regulation of endotherial Cell and platelet receptor-ligand binding by the 12-and 15-lipoxygenase monohydroxides, 12-、15-HETE and 13-HODE. Prostaglandins Leukot. Essent. Fatty Acids 58:339-346)もCOX-2により生成され(表1および2)DHA(C22:6)(図10C)のようにこの経路アレイおよびメディエータのクラスに加わる(図12)DHAも新規反応生成物に変換された(図13)。さらにCOX-2のASA処理によりC17対C13の異なる比の生成物が得られた(図14B-G)。これらの新規COX-2生成物は脳血管系で役割を果たすらしく、そこではCOX-2およびDHAが上昇する。したがって、これらの化合物は神経組織の炎症疾患(すなわち、パーキンソン病、アルツハイマー病など)の治療に使用することができる。したがって、驚くべきことに、NSAIDsとCOX-2の相互作用が広範囲の脂質前駆体の新規酸素化を導き、図15に説明されるような生理活性化合物を産生し、そして治療的処置に使用できるということが見出されてきた。
【0100】
心血管疾患(Ridker, P.M. Cushman, M.J. Stampfer, R.P. Tracy, and C.H. Hennekens. 1997. Inflammation, aspirin, and the risk of cardiovascular disease in apparently healthy men。N. Eng. J. Med. 336:973-979)およびPMN媒介組織傷害が影響を与える臨床症候群(参考文献11)に不適当な炎症反応が関与することが現在認められているため、細胞-細胞相互作用により引き起こされるこれらの新規化合物ω-3 PUFAプロセシング経路の同定およびNSAIDsの思いがけない影響が、ω-3 PUFAを基礎にした補充により提供される潜在的な臨床的保護、および微小炎症を制御する強力な局所的内因性媒介を生み出す機序を検討するための新規手段を開拓する(図4-11)。さらに、本発明は現在行われている抗炎症療法の望ましくない作用を妨げるための基礎および効果的なω-3栄養補助の潜在的な生化学的指標および/またはマーカーを提供する。
【0101】
表1.ASAまたはCOX-2阻害剤を伴ったPUFAおよび組換えヒトCOX-2から生成されるヒドロキシ化合物
【0102】
【表1】

【0103】
結果は平均±SEM、3.選択的COX-2阻害剤NS398は100 uMで使用された。すべての生成物は抽出され、同定され、そして内部標準およびLC/MS/MSを使用して定量された。関心のある化合物はボールド型で示す。
【0104】
表2.NSAID-ヒト組換えCOX2(n-3 C20:5の変換)
【0105】
【表2】

【0106】
値は平均(ng)±SEM、n=3である。
実施例
材料と方法
ザイモサン、ヘマチン、NADPH、およびASAはSigma-Aldrichから購入した。EPA(Cayman Chemical)および他の合成標準物質、ヒドロキシ-脂肪酸、および同定に使用される中間体はCascade Biochem Ltdから購入した。B. megateriumはAmerican Type Culture Collectionから購入した。液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC/MS/MS)に使用される材料は(20.Gronert, K., C.B. Clish,
M. Romano, and C.N. Serhan. 1999. Transcellular regulation of eicosanoid biosynthesis. In Eicosanoid Protocols. E.A. Lianos, 編、Humana Press, Totowa, NJ. 119-144)に記載された業者から購入した。
【0107】
ヒトPMNは健康なボランティア(供与2週間前から薬物を摂取しなかった;Brigham and Women's Hospital Protocols no. 88-02642)の静脈血からFicollグラジエントにより新たに単離し、数え上げた。ヒト臍帯静脈または微小血管ECs(それぞれHUVECsまたはHMVECs)は経内皮細胞遊走のために培養し(参考文献10)、HMVEC単層(1、2、または3継代培養)は、NSAIDおよびPUFAとのインキュベーションのために0.1%ゼラチンでプレコートしたポリカーボネート透過性支持体上に播かれた(〜2×105細胞/cm2)。
【0108】
炎症浸出液は6〜8週齢雄FVBマウス(0.26% n-3脂肪酸を含有する標準齧歯類食5001で飼育された)の6日の背側空気嚢へのTNF-α(R&Dシステム)の嚢内注入とともに開始され(参考文献16)、続いて3.5時間後にASA(500μg)、そして4時間後に300μg C20:5/嚢を注入した。6時間後に嚢を洗浄(3 ml 生理食塩水)し、浸出細胞を数え上げ、37℃で20分間、94μM A23187で活性化した。18R-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(HEPE)、5,12,18R-HEPE、または15-エピ-LXA類似体のいずれかの静脈内尾注射によるTNF-α刺激(100 ng/嚢、FVB系統)PMN浸潤の阻害は4時間後に採取した嚢洗浄液で測定(参考文献16)した。
【0109】
特異的〔3H〕LTB4、(NEN Life Science Products)結合はヒトLTB4受容体を安定にトランスフェクトされたヒト胎児腎〔HEK〕293細胞で行った(Chiang, N., K. Groner, C.B. Clish, J.A. O'Brien, M.W. Freeman, and C.N. Serban. 1999. Leukotriene B4 receptor transgenic mice reveal novel protective roles for lipoxins and aspirin-triggered lipoxins in reperfusion。J. Clin. Invest. 104:309-316)。ヒト組換えCOX-2(Dr. R.A. Copeland, DuPont Merck,
Wilmington, DEから恵与された)は、参考文献21.George, H.J.D.E. Van Dyk,
R.A. Straney, J.M. Trzaskos, and R.A. Copeland. 1996. Expression purification and characterization of recombinant human inducible prostaglandinG/H synthase from baculovirus-infected insect cells. Protein Expres. Purif. 7:19-26. のようにTris(100 mM、pH8.0)中に懸濁されたミクロソーム画分(〜8μl)により、5/9昆虫細胞(American Type Culture Collection)中に過剰発現された。NSAIDはPUFA(20μM)添加の前に30分間、37℃でインキュベート(すなわちASA〜1 mM)し、変換は1-14C-標識C20:4(図2Aおよび2B参照)またはC20:5(NEN Life Science Products)(図2Cおよび2D参照)を使用してモニターした。
【0110】
中間体および参照化合物のために、B. megateriumをBacto Nutrient Broth(Fisher Scientific)中、30℃で、振とう培養した。18R-HEPEの標準物質を調製するために、2 M Trisバッファー、pH8.1中でNADPH(2 mM)およびC20:5(EPA)(330μM)と共にインキュベートしたB. megaterium超音波処理物を生合成に使用した。同様の条件を使用して、LTB5(15μM)を新規生成物に変換した。結果を参照。インキュベーション物は重水素標識内部標準(15-HETEおよびC20:4)で抽出し、LUNA C18-2(150X 2 mm;5μM)カラムおよび迅速スペクトルスキャニングUV/Vis検出器を備えたFinniganLCQを使用して、LC/MS/MS分析を行った。また、アイソクラティック溶離液(ヘキサン/イソプロパノール 96:4 vol/vol)を使用したChiralcel CB-Hカラム(J.T. Baker)を使用して、モノヒドロキシ-PUFAのRおよびSアルコール立体配置を決定した。脂質由来メディエータの単離、定量、および構造決定の詳細な方法は最近報告され、新規生成物の説明のために記載されたように、本質的に本明細書で使用された。
【0111】
ヒドロキシ-DHA化合物の製造:
ヒドロキシ-DHA化合物はアスピリンアセチル化の存在および非存在下の両方において、組換えCOX-IIを使用してin vivoで製造された。簡単に述べると、インキュベーション混合物は、酵素を発現しているSF9細胞由来の膜調製物として精製された組換えヒトCOX-IIを使用して製造された。酵素は5 mMフェノールを含む1 M Trisバッファー(pH8.0) 400μl中に懸濁した。COX-IIのアスピリンアセチル化のために、アスピリン(2 mM)を混合物に添加し、37℃で30分間インキュベートした。次にDHA(5μM)を添加し、37℃で5分間インキュベートした。反応は冷却したエタノール 400μlの添加により停止した。その後、生成物を固相抽出カートリッジ(SepPak C18)を使用して抽出した。
【0112】
新規DHA化合物、13-ヒドロキシ-DHA、14-ヒドロキシ-DHA、16-ヒドロキシ-DHA、17-ヒドロキシ-DHA、19-ヒドロキシ-DHAまたは20-ヒドロキシ-DHAは先に記載の、例えば図9Aおよび9Cで示した結果と同様の、EPA由来の化合物に相当する効力を有した。
【0113】
当業者は、常用の実験法を使用するだけで、本明細書に記載された発明の具体的な態様に対する多くの同等のものを知る、または確かめることができるであろう。これらおよびすべての他の同等のものは以下の請求項に包含されるように意図されている。背景部分を含む、本明細書で引用したすべての出版物および参考文献はそれらの全体を参照として明確に本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
本発明は添付された図面に関連した以下の詳細な説明からさらに十分に理解されるであろう。
【図1】図1は経細胞脂質メディエータ(LM)生合成を表す。
【図2A】図2Aはシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)により14C-標識アラキドン酸(AA、ω-6)から生成した生成物の薄層クロマトグラムを表す。
【図2B】図2Bはアスピリン アセチル化COX-2により14C-標識アラキドン酸(AA、ω-6)から生成した生成物の薄層クロマトグラムを表す。
【図2C】図2CはシクロオキシゲナーゼII(COX-2)により14C-標識エイコサペンタエン酸(EPA、ω-3)から生成した生成物の薄層クロマトグラムを表す。
【図2D】図2Dはアスピリンアセチル化-COX-2により14C-標識EPA(ω-3)から生成した生成物の薄層クロマトグラムを表す。
【図3】図3はB. megateriumによるEPA(ω-3)の変換をLC/MSイオンクロマトグラムおよびマススペクトル分析により表す。
【図4】図4Aはアスピリン処置マウスの背側空気嚢炎症浸出液においてEPAから生成されたモノヒドロキシ生成物のLC/MSイオンクロマトグラムである。図4Bはアスピリン処置マウスの背側空気嚢炎症浸出液においてEPAから生成された18R-HEPEのマススペクトル分析である。図4Cはアスピリン処置マウスの背側空気嚢炎症浸出液においてEPAから生成された5S-HEPEのマススペクトル分析である。図4Dはアスピリン処置マウスの背側空気嚢炎症浸出液においてEPAから生成された5,12,18R-トリHEPEのマススペクトル分析である。
【図5】図5はB. megateriumにより5S,12R-ジヒドロキシ-6Z,8E,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸(ω-3)から生成された5,12,18-トリHEPE異性体のLC/MSイオンクロマトグラムをマススペクトル分析とともに表す。
【図6】図6は腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)およびアスピリンで処理したマウス背側空気嚢を表す。
【図7】図7AはアスピリンおよびEPA処理したIL-1β-刺激ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)から生成された18-HEPEのLC/MSイオンクロマトグラムを表す。図7Bはアスピリン アセチル化-COX-2および血清処理ザイモサン(zymosan)(STZ)-刺激ヒトPMNによりEPAから生成されたトリHEPEsのLC/MSイオンクロマトグラムを表す。図7Cは図7BにおけるトリHEPE生成物I、5,12,18R-トリHEPEのマススペクトル分析を表す。図7Dは図7BにおけるトリHEPE生成物II、15-エピ-LXA5のマススペクトル分析を表す。
【図8】図8はアスピリンアセチル化-COX-2によりEPAから生成されたモノヒドロキシ生成物の選択的イオンモニタリングLC/MS/MSクロマトグラムおよび18-HEPE、15-HEPEおよび11-HEPEのマススペクトル分析を表す。
【図9】図9Aは18-HEPE(○)、15,12,18R-トリHEPE(●)およびアスピリン誘発リポキシン(ATL)類似体基準化合物(■)によるLTB4-刺激PMN経内皮細胞遊走の阻害を示す。図9BはHEK-293細胞において安定に発現された組換えヒトLTB4受容体に対する、3H-LTB4を用いた18R-HEPE(○)、5,12,18R-トリHEPE(●)、LTB5(□)、またはホモリガンドLTB4(■)間の競合的結合を示す。図9Cは、18R-HEPE、5,12,18-トリHEPE、または比較のために使用されたATL類似体基準化合物(類似体15(S)-16(パラ-フルオロ)-フェノキシ-LTB4のいずれかの100 ngを静脈内注射後の、マウス背側空気嚢へのTNF-α誘発白血球輸送の阻害を表し、結果はN=4を表す。
【図10A】図10Aはジホモ-γ-リノール酸(C20:3、ω-3)およびアスピリンアセチル化-COX-2から生成されたモノヒドロキシ生成物のLC/MS/MSクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図10B】図10Bはリノレン酸(C18:3、ω-3)およびアスピリンアセチル化-COX-2から生成されたモノヒドロキシ生成物のLC/MS/MSクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図10C】図10Cはリノール酸(C18:2、ω-6)およびアスピリンアセチル化-COX-2から生成されたモノヒドロキシ生成物のLC/MS/MSクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図11】経細胞プロセッシングによりω-3 PUFAから脂質シグナルの機能的アレイを生成するための提案スキーム:微小炎症の内因性阻害物質。COX-2がアップレギュレートされ、NSAIDsで処理される部位では、C20:4からのプロスタグランジン形成が阻害される。全身性ω-3 PUFAは、COX-2-NSAIDリポキシゲナーゼ型機序により変換されて、EPA(C20:5)の(パネルA)C16またはC13で立体特異的に水素を抽出し、分子O2をR挿入し、エポキシドから15R-H(p)EPEまたは18R-H(p)EPEを生成する、もしくはアルコールに還元されるか、または同様にDHA((C22:6)のC13またはC17(パネルB)で分子O2をR挿入して13-ヒドロキシ-DHAまたは17-ヒドロキシ-DHAを生成する。トリヒドロキシ化合物の完全な立体化学は決定されないままであり、適当な立体配置で表す。これらの化合物は局所微小環境において細胞と相互作用し、PMN補充を阻害する。COX-2-NSAID依存的水素抽出および分子酸素の挿入は1,4-シスペンタジエン単位を有するすべてのω-3 PUFAに見出される。
【図12】図12はアスピリン処理のマーカーでもある新規脂質メディエータ生成のためのアスピリンアセチル化-COX-2依存的経路を表す。
【図13】図13はドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6、ω-3)およびアスピリンアセチル化-COX-2から生成される主要および少量生成物の構造を表す。
【図14A】図14AはアスピリンによるCOX-2のアセチル化により誘発されるDHA生成物の特色の変換を表す。左パネルのLC/MSイオンクロマトグラムは、アスピリン非存在下では13-ヒドロキシ-DHAが主要な生成物であることを示す。アスピリンによるCOX-2のアセチル化により、13-ヒドロキシ-DHA生成が抑制され、右パネルに示すように17-ヒドロキシ-DHA生成が主要生成物になる。
【図14B】図14Bはアスピリンアセチル化-COX-2によりDHAから生成された13-ヒドロキシ-DHAのLC/MS/MSイオンクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図14C】図14Cはアスピリンアセチル化-COX-2によりDHAから生成された14-ヒドロキシ-DHAのLC/MS/MSイオンクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図14D】図14Dはアスピリンアセチル化-COX-2によりDHAから生成された16-ヒドロキシ-DHAのLC/MS/MSイオンクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図14E】図14Eはアスピリンアセチル化-COX-2によりDHAから生成された17-ヒドロキシ-DHAのLC/MS/MSイオンクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図14F】図14Fはアスピリンアセチル化-COX-2によりDHAから生成された19-ヒドロキシ-DHAのLC/MS/MSイオンクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図14G】図14Gはアスピリンアセチル化-COX-2によりDHAから生成された20-ヒドロキシ-DHAのLC/MS/MSイオンクロマトグラムおよびマススペクトル分析を表す。
【図15】図15はアスピリンアセチル化-COX-2によるω-3およびω-6の酸素化のための部位選択性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物。
【請求項2】
C-15炭素がR立体配置を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
C-15炭素がS立体配置を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
以下の式:
【化2】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物。
【請求項5】
C-18炭素がR立体配置を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
C-18炭素がS立体配置を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
以下の式:
【化3】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中1以上のPは水素原子もしくは1以上の保護基、またはそれらの組合せである
を有する化合物。
【請求項8】
C-5炭素がS立体配置を有し、C-12炭素がR立体配置を有し、C-18炭素がR立体配置を有する、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
以下の式:
【化4】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中1以上のPは水素原子もしくは1以上の保護基、またはそれらの組合せである
を有する化合物。
【請求項10】
C-5炭素がS立体配置を有し、C-6炭素がR立体配置を有し、C-15炭素がR立体配置を有する、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
対象において炎症が治療または予防されるように、オメガ-3脂肪酸およびアスピリンの組合せを投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項12】
オメガ-3脂肪酸およびアスピリンが2つの異なる時期に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
オメガ-3脂肪酸がエイコサペンタエン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
オメガ-3脂肪酸がドコサヘキサエン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患が治療または予防されるように、オメガ-3脂肪酸およびアスピリンの組合せを対象に投与するステップを含む、かかる対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患を治療または予防するための方法。
【請求項16】
オメガ-3脂肪酸およびアスピリンが2つの異なる時期に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
オメガ-3脂肪酸がエイコサペンタエン酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
オメガ-3脂肪酸がドコサヘキサエン酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
対象において炎症が治療または予防されるように、以下の式:
【化5】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項20】
対象において炎症が治療または予防されるように、以下の式:
【化6】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項21】
対象において炎症が治療または予防されるように、以下の式:
【化7】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中1以上のPは水素原子もしくは1以上の保護基またはそれらの組合せである
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項22】
対象において炎症が治療または予防されるように、以下の式:
【化8】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中1以上のPは水素原子もしくは1以上の保護基またはそれらの組合せである
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項23】
対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患が治療または予防されるように、以下の式:
【化9】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患を治療するための方法。
【請求項24】
対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患が治療または予防されるように、以下の式:
【化10】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そしてPは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与することを含む、かかる対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患を治療するための方法。
【請求項25】
対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患が治療または予防されるように、以下の式:
【化11】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして1以上のPは水素原子もしくは1以上の保護基またはそれらの組合せである
を有する化合物を哺乳動物に投与することを含む、かかる対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患を治療するための方法。
【請求項26】
対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患が治療または予防されるように、以下の式:
【化12】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして1以上のPは水素原子もしくは1以上の保護基またはそれらの組合せである
を有する化合物を哺乳動物に投与することを含む、かかる対象において動脈性炎症、関節炎、または心血管疾患を治療するための方法。
【請求項27】
ヒドロキシル保護された、または保護されないモノヒドロキシル-ドコサヘキサエン酸または薬剤的に受容できるその類似体。
【請求項28】
以下の式:
【化13】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物。
【請求項29】
以下の式:
【化14】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物。
【請求項30】
以下の式:
【化15】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物。
【請求項31】
以下の式:
【化16】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物。
【請求項32】
以下の式:
【化17】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物。
【請求項33】
以下の式:
【化18】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物。
【請求項34】
対象が治療されるように、以下の式:
【化19】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項35】
対象が治療されるように、以下の式:
【化20】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項36】
対象が治療されるように、以下の式:
【化21】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項37】
対象が治療されるように、以下の式:
【化22】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項38】
対象が治療されるように、以下の式:
【化23】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。
【請求項39】
対象が治療されるように、以下の式:
【化24】

式中Rは水素原子または薬剤的に受容できる塩、エステル、アミドまたはプロドラッグであり、そして式中Pは水素原子または保護基である
を有する化合物を対象に投与するステップを含む、かかる対象において炎症を治療または予防するための方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図14G】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−248213(P2010−248213A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134989(P2010−134989)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【分割の表示】特願2001−559832(P2001−559832)の分割
【原出願日】平成13年2月16日(2001.2.16)
【出願人】(501368643)ザ・ブリガーム・アンド・ウーメンズ・ホスピタル・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】