アスファルトフィニッシャの車高調整装置
【課題】アスファルトフィニッシャの車高調整装置に関し、良好な輸送性を確保しつつ、舗装用材料の積み込み性を改善する。
【解決手段】
車幅方向に延在する車軸1の端部にキングピン3を設け、車輪4の支持体2を左右方向に揺動自在に枢支させるとともに、その内部に油圧シリンダを内蔵させる。
すなわち、筒軸を鉛直に配向した円筒状に形成されたピストン部3aを車軸1の端部に固設し、ピストン部3aの筒面に摺接する中空円筒状のシリンダ部3bをピストン部3aの下端部に冠着させ、シリンダ部3bとピストン部3aとの間隙に作動流体を充填させることにより、該油圧シリンダを形成する。
【解決手段】
車幅方向に延在する車軸1の端部にキングピン3を設け、車輪4の支持体2を左右方向に揺動自在に枢支させるとともに、その内部に油圧シリンダを内蔵させる。
すなわち、筒軸を鉛直に配向した円筒状に形成されたピストン部3aを車軸1の端部に固設し、ピストン部3aの筒面に摺接する中空円筒状のシリンダ部3bをピストン部3aの下端部に冠着させ、シリンダ部3bとピストン部3aとの間隙に作動流体を充填させることにより、該油圧シリンダを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトフィニッシャの車高を任意に変更するための車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路運送車両の保安基準の改正により、新規に販売される貨物車両に対して突入防止部材(いわゆる、アンダープロテクタ)の装着が義務付けられている。突入防止部材とは、貨物車両との接触時に自動車がシャシフレームよりも下方へ潜り込むような事態を防止するための部材である。道路舗装工事に係るダンプトラックにおいても、リヤバンパーよりも下方に突入防止部材を備えたものが増加しつつある。
【0003】
一方、一般的な道路舗装工事では、アスファルト合材や樹脂系舗装用材料等の舗装用材料がダンプトラックで舗装現場まで輸送され、現地でアスファルトフィニッシャへと移送される。例えば、特許文献1に記載されたように、アスファルトフィニッシャはその前端部に設けられたホッパ装置をダンプトラックの下方へ潜り込ませた状態で、ダンプトラックの荷台上の舗装用材料を荷受けするようになっている。そのため、アスファルトフィニッシャには、ダンプトラックの突入防止部材と干渉しない低い位置にホッパ装置の床面高さを設定することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−255046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ホッパ装置の床面高さを低くすると、アプローチ角が小さくなり輸送性を確保することができないという課題がある。
すなわち、アスファルトフィニッシャでは、車体全体の重量バランスや操舵輪となる前輪の軸重を維持するために、バランスウェイトを車体前端部に配置する必要がある。そのため、車体前端部における地上高さがホッパ装置の床面高さよりもさらに低く設定されることになり、十分なアプローチ角を確保することができなくなる。
【0006】
また、アスファルトフィニッシャの回送時において、トレーラ荷台からの積み下ろし作業やトレーラ荷台への積み込み作業では、積み込み角(すなわち、地面に対する歩み板のなす角度)がアプローチ角よりも大きいと、アスファルトフィニッシャの前端部底面が走行面に接触するおそれが生じる。そのため、アスファルトフィニッシャのアプローチ角が小さいほど、寸法の長い歩み板を用いて積み込み距離を稼ぐ必要が生じ、良好な輸送性が得られないのである。なお、回送時の積み下ろし作業,積み込み作業に限らず、アプローチ角が小さいほど、段差路面や不整地におけるアスファルトフィニッシャの走破性,機動性が低下するという課題もある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、良好な輸送性を確保しつつ、舗装用材料の積み込み性を改善することができるようにした、アスファルトフィニッシャの車高調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明のアスファルトフィニッシャの車高調整装置は、アスファルトフィニッシャの車体に接続され、車幅方向に延在する車軸(ビーム)と、該車体の走行に係る車輪の回転軸を枢支する支持体(モータ)と、該車軸の端部に配設されるとともに上下方向へ延在し、該支持体を左右方向に揺動自在に枢支するキングピンとを備え、該キングピンが、筒軸を鉛直に配向した円筒状に形成され、該車軸の端部に固設されたピストン部と、該ピストン部の筒面に摺接する中空円筒状に形成され、該ピストン部の下端部に冠着されたシリンダ部と、該シリンダ部と該ピストン部との間隙に作動流体を充填されてなる作動流体室とを有することを特徴としている。
【0009】
なお、該キングピンの枢支軸が該車輪の操舵回転軸となる。また、該ピストン部の該シリンダ部に対する摺動方向は、該枢支軸の延在方向となる。したがって、該ピストン部が上下に移動したとしても操舵回転軸は変化せず、車軸の地上高さ(すなわち車高)のみが変化する。
また、請求項2記載の本発明のアスファルトフィニッシャの車高調整装置は、請求項1記載の構成に加え、該キングピンが、該車軸の左右両端部に配設されるとともに、該左右両端部の該キングピンにおける左右の該作動流体室へ該作動流体を供給する流体圧ポンプと、該左右の該作動流体室と該流体圧ポンプとをともに連通する作動流体路とをさらに備えたことを特徴としている。
【0010】
なお、車軸の左端部に配設されたキングピンと右端部に配設されたキングピンとは、ともに同一のシリンダ径とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアスファルトフィニッシャの車高調整装置(請求項1)によれば、作動流体室へ充填される作動流体量を変更することにより、車輪に対する車軸の上下方向の位置を調整することができ、すなわち車軸の高さを調整することができる。これにより、必要に応じて車高を変更することが容易となり、舗装用材料の荷受けの作業性を高めつつ移動時のアプローチアングルも確保することが可能となる。
【0012】
また、本発明のアスファルトフィニッシャの車高調整装置(請求項2)によれば、流体圧ポンプから供給される作動流体を同時に左右の作動流体室へ供給することにより、車軸の左右両端部の車高を同時に変更して同一の高さにすることができ、より容易に車高を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車高調整装置を搭載したアスファルトフィニッシャの全体構成を示す側面図である。
【図2】本車高調整装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【図3】本車高調整装置の内部構成を示す縦断面図(図2のA−A矢視断面図)である。
【図4】本車高調整装置の内部構成を示す縦断面図(図3のB−B矢視断面図)である。
【図5】本車高調整装置を駆動するための油圧回路図である。
【図6】本車高調整装置により車高が最も低められた状態を示す模式的な断面図である。
【図7】本車高調整装置を備えたアスファルトフィニッシャにおける舗装用材料の荷受け状態を示す模式的な側面図である。
【図8】本車高調整装置により車高が最も高められた状態を示す模式的な断面図である。
【図9】本車高調整装置によるアプローチ角の変化を説明するための模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[1.全体の構成]
本発明に係る車高調整装置は、図1に示すアスファルトフィニッシャ10に適用されている。本アスファルトフィニッシャ10は、前輪4及び後輪5を備えたホイール型のものであり、ホッパ装置11,コンベヤ装置12,スプレッダ装置13及びスクリード装置14を備えて構成される。
【0015】
ホッパ装置11は、車体の前端部に設けられた舗装用材料を積載するための装置である。このホッパ装置11の形状は、その床面に開口部を持つ漏斗型に形成されており、ダンプトラックの荷台から舗装用材料を直接荷受けすることができるようになっている。また、ホッパ装置11の前端部には、車体全体の重量バランスや前輪4の軸重を維持するためのバランスウェイト19が固定されている。このバランスウェイト19は、ホッパ装置11の床面よりも低い位置に配設されている。
【0016】
コンベヤ装置12は、ホッパ装置11の底部の開口部の下方において車体前後方向に延在する搬送装置であり、ホッパ装置11に貯留された舗装用材料を適量ずつ車両後方へ搬送するものである。搬送された舗装用材料は、スプレッダ装置13へと供給されている。なお、ホッパ装置11の壁部を構成する仕切板は、傾斜角を変更する方向に回動して開閉自在に備えられている。例えば、ホッパ装置11内の舗装用材料の残量に応じて漏斗型壁部の勾配を変化させることで、舗装用材料のコンベヤ装置12への供給量を調整できるようになっている。
【0017】
スプレッダ装置13は、コンベヤ装置12で搬送されてきた舗装用材料を車幅方向へ拡散させつつ、路面への敷設を行う装置である。また、スクリード装置14は、スプレッダ装置13の後部に配置されて、舗装用材料の敷き慣らしや整厚を行う装置である。これらのスプレッダ装置13及びスクリード装置14は、後輪5よりも後方側に配設されている。
【0018】
ホッパ装置11の後方には、エンジンルーム15が設けられている。エンジンルーム15内には、本アスファルトフィニッシャ10の駆動源であるエンジン16やエンジン駆動の油圧ポンプ17,作動油が貯留された作動油タンク18等が配設されている。
本アスファルトフィニッシャ10の前輪4及び後輪5はともに油圧モータによって駆動されている。なお、本アスファルトフィニッシャ10の駆動輪は四輪であるが、操舵輪は前輪4の二輪のみとなっている。
【0019】
[2.操舵輪の構成]
図2に示すように、左右の前輪4は、ビーム(車軸)1及びキングピン3を介して車体に接続されている。ビーム1は、車幅方向に延在する梁状の部材であり、その左右両端部にキングピン3が設けられている。また、ビーム1の幅方向中央部には車体前後方向に配向された回転軸を持つセンタピン8が固設されている。このセンタピン8を介して、ビーム1が車体に対して揺動(ロール方向の揺動)自在に枢支されており、前輪4のオシレーションが所定量許容されている。
【0020】
キングピン3は、上下方向に延在する略円筒状の部材であり、車輪4を枢支して操舵回転(揺動)の回転軸となるものである。キングピン3による前輪4の枢支軸は、上下方向に配向されている。さらに、キングピン3は、ビーム1に対する車輪4の上下方向位置を変更するための油圧シリンダを内蔵している。
図3,図4に示すように、キングピン3は、ピストン部3a,シリンダ部3b及び揺動部3cを備えて構成されている。ピストン部3aは、円筒状に形成された部材であり、筒軸を鉛直に配向した状態でビーム1の左右両端部に固設されている。本実施形態では、固定部材6aによってビーム1とピストン部3aとが締結固定されている。また、ピストン部3aの内部には、円形の上端面及び下端面と筒面(側面)とをそれぞれ連通する第一通路3f及び第二通路3gが形成されている。
【0021】
シリンダ部3bは、ピストン部3aの上端部及び下端部のそれぞれにおいて、ピストン部3aの外周面(側面)と摺接する内周面を有した中空円筒状の部材である。ピストン部3aの上下端部がそれぞれシリンダ部3bに内挿されており、すなわち、二つのシリンダ部3bがピストン部3aの上下端部に冠着されている。
以下、図4に示すように、ピストン部3aの上端面と上方のシリンダ部3bとによって形成される間隙を第一油圧室3d(作動流体室の一つ)と呼び、ピストン部3aの下端面と下方のシリンダ部3bとによって形成される間隙を第二油圧室3eと呼ぶ。これらの第一油圧室3d及び第二油圧室3eは、ピストン部3aを上下方向に駆動する作動流体室として機能しており、油圧ポンプ16から供給される作動油がその内部に充填されている。このように、本実施形態では、キングピン3に内蔵された油圧シリンダが、上記のピストン部3a,シリンダ部3b,第一油圧室3d及び第二油圧室3eから構成されている。
【0022】
一方、揺動部3cは、図3に示すように、シリンダ部3bの外周面に沿って周方向に摺動自在に環装された部材である。揺動部3cの揺動軸(枢支軸)は、シリンダ部3bの内周面の筒軸、すなわち、ピストン部3aの外周面の筒軸に一致している。また、揺動部3cは図示しない操舵機構に対して連結されており、例えばオペレータによるステアリングホイールへの操舵操作に応じて、シリンダ部3bの周囲をヨー方向に揺動する。なお、揺動部3cは、シリンダ部3bに対して上下,左右方向へは移動しない。
【0023】
図4に示すビーム1のピストン部3aとの固定部について詳述する。ビーム1には、第一通路3f及び第二通路3gに連設された通路孔1a,1bが形成されている。通路孔1a,1bの位置は、ピストン部3aの外周面上における第一通路3f及び第二通路3gの穿設位置と対応する位置である。これらの通路孔1a,1bには、ピストン部3aを上下方向に駆動するための油圧回路が接続されている。また、ピストン部3aとシリンダ部3bとの摺接面上には、Oリング3hが環着されている。
【0024】
車輪4の内部にはモータ(支持体)2が配設されている。モータ2は、キングピン3の揺動部3cに対して固設されたキングピン固定部2aと、車輪4のホイールリム4aに対して固設されたホイール固定部2bとを備えて構成されている。
本実施形態では、キングピン固定部2a及び揺動部3cが締結部材6bによって締結固定されており、また、ホイール固定部2b及びホイールリム4aが締結部材6cによって締結固定されている。モータ2は、車輪4の回転軸を枢支した状態で、揺動部3cを介してシリンダ部3bに枢着されている。また、ホイールリム4aの外周にはソリッドタイヤ4bが装着されている。
【0025】
これにより、揺動部3cの揺動軸が車輪4の操舵回転軸となる。また、ピストン部3aのシリンダ部3bに対する摺動方向は、揺動部3cの枢支軸の延在方向となる。したがって、ピストン部3aが上下に移動したとしても操舵回転軸は変化せず、ビーム1の地上高さ(車高)のみが変化する。
なお、モータ2は、油圧ポンプ17から供給される作動油により、ホイール固定部2bをキングピン固定部2aに対して回転駆動するものである。図3中では、モータ2の具体的な内部構成についての記載を省略している。
【0026】
[3.油圧回路]
図5に、本車高調整装置を駆動するための油圧回路を模式的に示す。この図5では、ビーム1の左右両端部のキングピン3に内蔵された油圧シリンダの駆動に係る油圧回路の概略構成が示されており、他のアクチュエータ,油圧モータに係る油圧回路に関しては記載を省略している。ここでは、ビーム1の左端部の油圧シリンダに符号7A,右端部の油圧シリンダに符号7Bを付して示す。なお、これらの油圧シリンダ7A,7Bは図7に示すように左右対称形状となっており、シリンダ部3bの直径及びピストン部3aの長さが同一である。
【0027】
本油圧回路は、油圧ポンプ17から吐出される作動油を油圧シリンダ7Aへと導く第一油圧回路L1と、第一油圧回路L1の中途から分岐形成されて油圧シリンダ7Bへと接続された第二油圧回路L2とを備えている。第一油圧回路L1はビーム1の左端部に形成された通路孔1a,1bに接続され、第二油圧回路L2は右端部に形成された通路孔1a,1bに接続されている。
【0028】
第一油圧回路L1及び第二油圧回路L2には、作動油が均等に分配されている。また、第一油圧回路L1及び第二油圧回路L2の分岐点よりも油圧ポンプ17側には、各油圧シリンダ7A,7Bへ供給される作動油流量及び作動油の流通方向を制御するためのコントロールバルブ9が介装されている。
コントロールバルブ9は、スプール(ステム)の位置を複数の位置に切り替えて作動油の流量及び流通方向を可変制御できる電磁流量制御弁として構成されている。本実施形態では、図5中に示すように、スプールがS1位置であるときに、作動油タンク18と各油圧シリンダ7A,7Bの第一油圧室3dとが接続されて内部の作動油が作動油タンク18へ戻されるとともに、油圧ポンプ17からの作動油が各油圧シリンダ7A,7Bの第二油圧室3eへ供給される回路構成となっている。また、スプールがS2位置であるときには第一油圧室3d及び第二油圧室3e内の作動油が保持され、スプールがS3位置であるときには第一油圧室3d及び第二油圧室3eがともに作動油タンク18に接続されるようになっている。
【0029】
なお、コントロールバルブ9のスプール位置は、図示しない電子制御ユニットを介して、オペレータの操作に応じて制御可能となっている。
【0030】
[4.作用,効果]
図6に示すように、本アスファルトフィニッシャ10がダンプトラック20の荷台21から舗装用材料を荷受けするときには、オペレータ操作によりコントロールバルブ9のスプールをS3位置に制御する。これにより、第一油圧室3d及び第二油圧室3eがともに作動油タンク18に連通され、車体の自重によりピストン部3aがシリンダ部3bに対して下方へと摺動し、ビーム1の地上高さが低くなる。
【0031】
図7に示すように、下方のシリンダ部3bの底面とピストン部3aの下面とが接触したとき、すなわち、第二油圧室3eの容積が最小となったときに、ビーム1の地上高さが最小となる。したがって、この状態におけるホッパ装置11の床面がダンプトラック20のリヤアンダランプロテクタ22の地上高さよりも低い位置となるように設定することで、これらの干渉を防止することができ、余裕を持ってホッパ装置11をダンプトラック20の下方に潜り込ませることができる。
【0032】
一方、本アスファルトフィニッシャ10の回送時には、オペレータ操作によりコントロールバルブ9のスプールをS1位置に制御する。これにより、油圧ポンプ17から第二油圧室3eへと作動油が供給され、ピストン部3aがシリンダ部3bに対して上方へと摺動し、ビーム1の地上高さが高くなる。
図8に示すように、上方のシリンダ部3bの頂面とピストン部3aの上面とが接触したとき、すなわち、第一油圧室3dの容積が最小となったときに、ビーム1の地上高さが最大となる。例えば図9中に、ビーム1の地上高さが最小の状態を実線で示し、ビーム1の地上高さが最大の状態を実線で示す。ここでは、車体全体を持ち上げることにより、アプローチ角αがα+βへと増加することがわかる。したがって、トレーラ荷台からの積み下ろし作業やトレーラ荷台への積み込み作業において、積み込み角を大きく設定することが可能となる。
【0033】
なお、図9の事例では、アプローチ角をαからα+βまでの間で任意の角度に設定することができる。例えば、ピストン部3aがシリンダ部3bに対して上方へと摺動している間に、必要とされるアプローチ角が得られた時点で、コントロールバルブ9のスプールをS2位置に制御すればよい。これにより、第一油圧室3d及び第二油圧室3eにおける作動油流通が遮断され、ピストン部3aのシリンダ部3bに対する摺動が停止したまま固定される。
【0034】
このように、本車高調整装置によれば、キングピン3に内蔵された油圧シリンダ7A,7Bへ供給される作動油流量を制御することにより、車輪4に対するビーム1の相対位置である地上高さ(すなわち車高)を調整することができ、舗装用材料の積み込み性及び輸送性をともに高めることができる。例えば、舗装用材料の荷受け時には車高を低くしてその荷受けの作業性を高めることができる。また、搬送時には車高を高くして移動時のアプローチアングルを確保することができる。
【0035】
また、本車高調整装置は、従前のアスファルトフィニッシャに搭載されている油圧ポンプ17や作動油タンク18,コントロールバルブ9等を含む油圧回路を利用して実現可能であり、コストダウンに寄与することができる。さらに、コントロールバルブ9におけるスプール位置を変更するという簡単な操作によって容易に車高を調整することができるという利点もある。
【0036】
また、油圧ポンプ17から吐出される作動油を左右の油圧シリンダ7A,7Bに同時に供給することにより、ビーム1の左右両端部の高さを同時に変更して均一にすることができ、より容易に車高を調整することができる。
【0037】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の実施形態では、図5に示すように、第一油圧室3d及び第二油圧室3eの両室に対して油圧回路L1,L2が接続されているが、少なくとも第二油圧室3eのみに接続されていればよい。すなわち、少なくともピストン部3aを上方へ移動させる構成を備えたものであればよく、その場合ピストン部3aを下方へ移動させるには車体の自重を利用すればよい。なお、ピストン部3aとシリンダ部3bとの摺接面の潤滑性や封止性を考慮すると、上述の実施形態のように、ピストン部3aの上下端部にシリンダ部3bを冠着させる構成とすることが好ましいものと考えられる。
【0038】
また、上述の実施形態では、ビーム1の左右両端部の油圧シリンダ7A,7Bに対して均等に作動油が供給される構成としてあるが、作動油の供給割合を任意に調整可能とすることも考えられる。これにより、車体の左右方向における車高を相違させることができる。
また、上述の実施形態では、キングピン3のシリンダ部3bと揺動部3cとが別部材として備えられているが、これらを一体に形成することも考えられる。この場合、ピストン部3aがシリンダ部3bに対して上下方向に摺動し、かつ、ピストン部3aがシリンダ部3bの周面に沿って回転する構造となり、部品点数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、アスファルトフィニッシャの製造産業全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ビーム(車軸)
1a,1b 通路孔
2 モータ(支持体)
2a キングピン固定部
2b ホイール固定部
3 キングピン
3a ピストン部
3b シリンダ部
3c 揺動部
3d 第一油圧室
3e 第二油圧室(作動流体室)
3f 第一通路
3g 第二通路
3h Oリング
4 前輪
4a ホイールリム
4b ソリッドタイヤ
5 後輪
6a,6b,6c 固定部材
7A ビーム1の左端部の油圧シリンダ
7B ビーム1の右端部の油圧シリンダ
8 センタピン
9 コントロールバルブ
10 アスファルトフィニッシャ
11 ホッパ装置
12 コンベヤ装置
13 スプレッダ装置
14 スクリード装置
15 エンジンルーム
16 エンジン
17 油圧ポンプ
18 作動油タンク
L1 第一油圧回路(作動流体路の一つ)
L2 第二油圧回路(作動流体路の一つ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトフィニッシャの車高を任意に変更するための車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路運送車両の保安基準の改正により、新規に販売される貨物車両に対して突入防止部材(いわゆる、アンダープロテクタ)の装着が義務付けられている。突入防止部材とは、貨物車両との接触時に自動車がシャシフレームよりも下方へ潜り込むような事態を防止するための部材である。道路舗装工事に係るダンプトラックにおいても、リヤバンパーよりも下方に突入防止部材を備えたものが増加しつつある。
【0003】
一方、一般的な道路舗装工事では、アスファルト合材や樹脂系舗装用材料等の舗装用材料がダンプトラックで舗装現場まで輸送され、現地でアスファルトフィニッシャへと移送される。例えば、特許文献1に記載されたように、アスファルトフィニッシャはその前端部に設けられたホッパ装置をダンプトラックの下方へ潜り込ませた状態で、ダンプトラックの荷台上の舗装用材料を荷受けするようになっている。そのため、アスファルトフィニッシャには、ダンプトラックの突入防止部材と干渉しない低い位置にホッパ装置の床面高さを設定することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−255046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ホッパ装置の床面高さを低くすると、アプローチ角が小さくなり輸送性を確保することができないという課題がある。
すなわち、アスファルトフィニッシャでは、車体全体の重量バランスや操舵輪となる前輪の軸重を維持するために、バランスウェイトを車体前端部に配置する必要がある。そのため、車体前端部における地上高さがホッパ装置の床面高さよりもさらに低く設定されることになり、十分なアプローチ角を確保することができなくなる。
【0006】
また、アスファルトフィニッシャの回送時において、トレーラ荷台からの積み下ろし作業やトレーラ荷台への積み込み作業では、積み込み角(すなわち、地面に対する歩み板のなす角度)がアプローチ角よりも大きいと、アスファルトフィニッシャの前端部底面が走行面に接触するおそれが生じる。そのため、アスファルトフィニッシャのアプローチ角が小さいほど、寸法の長い歩み板を用いて積み込み距離を稼ぐ必要が生じ、良好な輸送性が得られないのである。なお、回送時の積み下ろし作業,積み込み作業に限らず、アプローチ角が小さいほど、段差路面や不整地におけるアスファルトフィニッシャの走破性,機動性が低下するという課題もある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、良好な輸送性を確保しつつ、舗装用材料の積み込み性を改善することができるようにした、アスファルトフィニッシャの車高調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明のアスファルトフィニッシャの車高調整装置は、アスファルトフィニッシャの車体に接続され、車幅方向に延在する車軸(ビーム)と、該車体の走行に係る車輪の回転軸を枢支する支持体(モータ)と、該車軸の端部に配設されるとともに上下方向へ延在し、該支持体を左右方向に揺動自在に枢支するキングピンとを備え、該キングピンが、筒軸を鉛直に配向した円筒状に形成され、該車軸の端部に固設されたピストン部と、該ピストン部の筒面に摺接する中空円筒状に形成され、該ピストン部の下端部に冠着されたシリンダ部と、該シリンダ部と該ピストン部との間隙に作動流体を充填されてなる作動流体室とを有することを特徴としている。
【0009】
なお、該キングピンの枢支軸が該車輪の操舵回転軸となる。また、該ピストン部の該シリンダ部に対する摺動方向は、該枢支軸の延在方向となる。したがって、該ピストン部が上下に移動したとしても操舵回転軸は変化せず、車軸の地上高さ(すなわち車高)のみが変化する。
また、請求項2記載の本発明のアスファルトフィニッシャの車高調整装置は、請求項1記載の構成に加え、該キングピンが、該車軸の左右両端部に配設されるとともに、該左右両端部の該キングピンにおける左右の該作動流体室へ該作動流体を供給する流体圧ポンプと、該左右の該作動流体室と該流体圧ポンプとをともに連通する作動流体路とをさらに備えたことを特徴としている。
【0010】
なお、車軸の左端部に配設されたキングピンと右端部に配設されたキングピンとは、ともに同一のシリンダ径とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアスファルトフィニッシャの車高調整装置(請求項1)によれば、作動流体室へ充填される作動流体量を変更することにより、車輪に対する車軸の上下方向の位置を調整することができ、すなわち車軸の高さを調整することができる。これにより、必要に応じて車高を変更することが容易となり、舗装用材料の荷受けの作業性を高めつつ移動時のアプローチアングルも確保することが可能となる。
【0012】
また、本発明のアスファルトフィニッシャの車高調整装置(請求項2)によれば、流体圧ポンプから供給される作動流体を同時に左右の作動流体室へ供給することにより、車軸の左右両端部の車高を同時に変更して同一の高さにすることができ、より容易に車高を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車高調整装置を搭載したアスファルトフィニッシャの全体構成を示す側面図である。
【図2】本車高調整装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【図3】本車高調整装置の内部構成を示す縦断面図(図2のA−A矢視断面図)である。
【図4】本車高調整装置の内部構成を示す縦断面図(図3のB−B矢視断面図)である。
【図5】本車高調整装置を駆動するための油圧回路図である。
【図6】本車高調整装置により車高が最も低められた状態を示す模式的な断面図である。
【図7】本車高調整装置を備えたアスファルトフィニッシャにおける舗装用材料の荷受け状態を示す模式的な側面図である。
【図8】本車高調整装置により車高が最も高められた状態を示す模式的な断面図である。
【図9】本車高調整装置によるアプローチ角の変化を説明するための模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[1.全体の構成]
本発明に係る車高調整装置は、図1に示すアスファルトフィニッシャ10に適用されている。本アスファルトフィニッシャ10は、前輪4及び後輪5を備えたホイール型のものであり、ホッパ装置11,コンベヤ装置12,スプレッダ装置13及びスクリード装置14を備えて構成される。
【0015】
ホッパ装置11は、車体の前端部に設けられた舗装用材料を積載するための装置である。このホッパ装置11の形状は、その床面に開口部を持つ漏斗型に形成されており、ダンプトラックの荷台から舗装用材料を直接荷受けすることができるようになっている。また、ホッパ装置11の前端部には、車体全体の重量バランスや前輪4の軸重を維持するためのバランスウェイト19が固定されている。このバランスウェイト19は、ホッパ装置11の床面よりも低い位置に配設されている。
【0016】
コンベヤ装置12は、ホッパ装置11の底部の開口部の下方において車体前後方向に延在する搬送装置であり、ホッパ装置11に貯留された舗装用材料を適量ずつ車両後方へ搬送するものである。搬送された舗装用材料は、スプレッダ装置13へと供給されている。なお、ホッパ装置11の壁部を構成する仕切板は、傾斜角を変更する方向に回動して開閉自在に備えられている。例えば、ホッパ装置11内の舗装用材料の残量に応じて漏斗型壁部の勾配を変化させることで、舗装用材料のコンベヤ装置12への供給量を調整できるようになっている。
【0017】
スプレッダ装置13は、コンベヤ装置12で搬送されてきた舗装用材料を車幅方向へ拡散させつつ、路面への敷設を行う装置である。また、スクリード装置14は、スプレッダ装置13の後部に配置されて、舗装用材料の敷き慣らしや整厚を行う装置である。これらのスプレッダ装置13及びスクリード装置14は、後輪5よりも後方側に配設されている。
【0018】
ホッパ装置11の後方には、エンジンルーム15が設けられている。エンジンルーム15内には、本アスファルトフィニッシャ10の駆動源であるエンジン16やエンジン駆動の油圧ポンプ17,作動油が貯留された作動油タンク18等が配設されている。
本アスファルトフィニッシャ10の前輪4及び後輪5はともに油圧モータによって駆動されている。なお、本アスファルトフィニッシャ10の駆動輪は四輪であるが、操舵輪は前輪4の二輪のみとなっている。
【0019】
[2.操舵輪の構成]
図2に示すように、左右の前輪4は、ビーム(車軸)1及びキングピン3を介して車体に接続されている。ビーム1は、車幅方向に延在する梁状の部材であり、その左右両端部にキングピン3が設けられている。また、ビーム1の幅方向中央部には車体前後方向に配向された回転軸を持つセンタピン8が固設されている。このセンタピン8を介して、ビーム1が車体に対して揺動(ロール方向の揺動)自在に枢支されており、前輪4のオシレーションが所定量許容されている。
【0020】
キングピン3は、上下方向に延在する略円筒状の部材であり、車輪4を枢支して操舵回転(揺動)の回転軸となるものである。キングピン3による前輪4の枢支軸は、上下方向に配向されている。さらに、キングピン3は、ビーム1に対する車輪4の上下方向位置を変更するための油圧シリンダを内蔵している。
図3,図4に示すように、キングピン3は、ピストン部3a,シリンダ部3b及び揺動部3cを備えて構成されている。ピストン部3aは、円筒状に形成された部材であり、筒軸を鉛直に配向した状態でビーム1の左右両端部に固設されている。本実施形態では、固定部材6aによってビーム1とピストン部3aとが締結固定されている。また、ピストン部3aの内部には、円形の上端面及び下端面と筒面(側面)とをそれぞれ連通する第一通路3f及び第二通路3gが形成されている。
【0021】
シリンダ部3bは、ピストン部3aの上端部及び下端部のそれぞれにおいて、ピストン部3aの外周面(側面)と摺接する内周面を有した中空円筒状の部材である。ピストン部3aの上下端部がそれぞれシリンダ部3bに内挿されており、すなわち、二つのシリンダ部3bがピストン部3aの上下端部に冠着されている。
以下、図4に示すように、ピストン部3aの上端面と上方のシリンダ部3bとによって形成される間隙を第一油圧室3d(作動流体室の一つ)と呼び、ピストン部3aの下端面と下方のシリンダ部3bとによって形成される間隙を第二油圧室3eと呼ぶ。これらの第一油圧室3d及び第二油圧室3eは、ピストン部3aを上下方向に駆動する作動流体室として機能しており、油圧ポンプ16から供給される作動油がその内部に充填されている。このように、本実施形態では、キングピン3に内蔵された油圧シリンダが、上記のピストン部3a,シリンダ部3b,第一油圧室3d及び第二油圧室3eから構成されている。
【0022】
一方、揺動部3cは、図3に示すように、シリンダ部3bの外周面に沿って周方向に摺動自在に環装された部材である。揺動部3cの揺動軸(枢支軸)は、シリンダ部3bの内周面の筒軸、すなわち、ピストン部3aの外周面の筒軸に一致している。また、揺動部3cは図示しない操舵機構に対して連結されており、例えばオペレータによるステアリングホイールへの操舵操作に応じて、シリンダ部3bの周囲をヨー方向に揺動する。なお、揺動部3cは、シリンダ部3bに対して上下,左右方向へは移動しない。
【0023】
図4に示すビーム1のピストン部3aとの固定部について詳述する。ビーム1には、第一通路3f及び第二通路3gに連設された通路孔1a,1bが形成されている。通路孔1a,1bの位置は、ピストン部3aの外周面上における第一通路3f及び第二通路3gの穿設位置と対応する位置である。これらの通路孔1a,1bには、ピストン部3aを上下方向に駆動するための油圧回路が接続されている。また、ピストン部3aとシリンダ部3bとの摺接面上には、Oリング3hが環着されている。
【0024】
車輪4の内部にはモータ(支持体)2が配設されている。モータ2は、キングピン3の揺動部3cに対して固設されたキングピン固定部2aと、車輪4のホイールリム4aに対して固設されたホイール固定部2bとを備えて構成されている。
本実施形態では、キングピン固定部2a及び揺動部3cが締結部材6bによって締結固定されており、また、ホイール固定部2b及びホイールリム4aが締結部材6cによって締結固定されている。モータ2は、車輪4の回転軸を枢支した状態で、揺動部3cを介してシリンダ部3bに枢着されている。また、ホイールリム4aの外周にはソリッドタイヤ4bが装着されている。
【0025】
これにより、揺動部3cの揺動軸が車輪4の操舵回転軸となる。また、ピストン部3aのシリンダ部3bに対する摺動方向は、揺動部3cの枢支軸の延在方向となる。したがって、ピストン部3aが上下に移動したとしても操舵回転軸は変化せず、ビーム1の地上高さ(車高)のみが変化する。
なお、モータ2は、油圧ポンプ17から供給される作動油により、ホイール固定部2bをキングピン固定部2aに対して回転駆動するものである。図3中では、モータ2の具体的な内部構成についての記載を省略している。
【0026】
[3.油圧回路]
図5に、本車高調整装置を駆動するための油圧回路を模式的に示す。この図5では、ビーム1の左右両端部のキングピン3に内蔵された油圧シリンダの駆動に係る油圧回路の概略構成が示されており、他のアクチュエータ,油圧モータに係る油圧回路に関しては記載を省略している。ここでは、ビーム1の左端部の油圧シリンダに符号7A,右端部の油圧シリンダに符号7Bを付して示す。なお、これらの油圧シリンダ7A,7Bは図7に示すように左右対称形状となっており、シリンダ部3bの直径及びピストン部3aの長さが同一である。
【0027】
本油圧回路は、油圧ポンプ17から吐出される作動油を油圧シリンダ7Aへと導く第一油圧回路L1と、第一油圧回路L1の中途から分岐形成されて油圧シリンダ7Bへと接続された第二油圧回路L2とを備えている。第一油圧回路L1はビーム1の左端部に形成された通路孔1a,1bに接続され、第二油圧回路L2は右端部に形成された通路孔1a,1bに接続されている。
【0028】
第一油圧回路L1及び第二油圧回路L2には、作動油が均等に分配されている。また、第一油圧回路L1及び第二油圧回路L2の分岐点よりも油圧ポンプ17側には、各油圧シリンダ7A,7Bへ供給される作動油流量及び作動油の流通方向を制御するためのコントロールバルブ9が介装されている。
コントロールバルブ9は、スプール(ステム)の位置を複数の位置に切り替えて作動油の流量及び流通方向を可変制御できる電磁流量制御弁として構成されている。本実施形態では、図5中に示すように、スプールがS1位置であるときに、作動油タンク18と各油圧シリンダ7A,7Bの第一油圧室3dとが接続されて内部の作動油が作動油タンク18へ戻されるとともに、油圧ポンプ17からの作動油が各油圧シリンダ7A,7Bの第二油圧室3eへ供給される回路構成となっている。また、スプールがS2位置であるときには第一油圧室3d及び第二油圧室3e内の作動油が保持され、スプールがS3位置であるときには第一油圧室3d及び第二油圧室3eがともに作動油タンク18に接続されるようになっている。
【0029】
なお、コントロールバルブ9のスプール位置は、図示しない電子制御ユニットを介して、オペレータの操作に応じて制御可能となっている。
【0030】
[4.作用,効果]
図6に示すように、本アスファルトフィニッシャ10がダンプトラック20の荷台21から舗装用材料を荷受けするときには、オペレータ操作によりコントロールバルブ9のスプールをS3位置に制御する。これにより、第一油圧室3d及び第二油圧室3eがともに作動油タンク18に連通され、車体の自重によりピストン部3aがシリンダ部3bに対して下方へと摺動し、ビーム1の地上高さが低くなる。
【0031】
図7に示すように、下方のシリンダ部3bの底面とピストン部3aの下面とが接触したとき、すなわち、第二油圧室3eの容積が最小となったときに、ビーム1の地上高さが最小となる。したがって、この状態におけるホッパ装置11の床面がダンプトラック20のリヤアンダランプロテクタ22の地上高さよりも低い位置となるように設定することで、これらの干渉を防止することができ、余裕を持ってホッパ装置11をダンプトラック20の下方に潜り込ませることができる。
【0032】
一方、本アスファルトフィニッシャ10の回送時には、オペレータ操作によりコントロールバルブ9のスプールをS1位置に制御する。これにより、油圧ポンプ17から第二油圧室3eへと作動油が供給され、ピストン部3aがシリンダ部3bに対して上方へと摺動し、ビーム1の地上高さが高くなる。
図8に示すように、上方のシリンダ部3bの頂面とピストン部3aの上面とが接触したとき、すなわち、第一油圧室3dの容積が最小となったときに、ビーム1の地上高さが最大となる。例えば図9中に、ビーム1の地上高さが最小の状態を実線で示し、ビーム1の地上高さが最大の状態を実線で示す。ここでは、車体全体を持ち上げることにより、アプローチ角αがα+βへと増加することがわかる。したがって、トレーラ荷台からの積み下ろし作業やトレーラ荷台への積み込み作業において、積み込み角を大きく設定することが可能となる。
【0033】
なお、図9の事例では、アプローチ角をαからα+βまでの間で任意の角度に設定することができる。例えば、ピストン部3aがシリンダ部3bに対して上方へと摺動している間に、必要とされるアプローチ角が得られた時点で、コントロールバルブ9のスプールをS2位置に制御すればよい。これにより、第一油圧室3d及び第二油圧室3eにおける作動油流通が遮断され、ピストン部3aのシリンダ部3bに対する摺動が停止したまま固定される。
【0034】
このように、本車高調整装置によれば、キングピン3に内蔵された油圧シリンダ7A,7Bへ供給される作動油流量を制御することにより、車輪4に対するビーム1の相対位置である地上高さ(すなわち車高)を調整することができ、舗装用材料の積み込み性及び輸送性をともに高めることができる。例えば、舗装用材料の荷受け時には車高を低くしてその荷受けの作業性を高めることができる。また、搬送時には車高を高くして移動時のアプローチアングルを確保することができる。
【0035】
また、本車高調整装置は、従前のアスファルトフィニッシャに搭載されている油圧ポンプ17や作動油タンク18,コントロールバルブ9等を含む油圧回路を利用して実現可能であり、コストダウンに寄与することができる。さらに、コントロールバルブ9におけるスプール位置を変更するという簡単な操作によって容易に車高を調整することができるという利点もある。
【0036】
また、油圧ポンプ17から吐出される作動油を左右の油圧シリンダ7A,7Bに同時に供給することにより、ビーム1の左右両端部の高さを同時に変更して均一にすることができ、より容易に車高を調整することができる。
【0037】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の実施形態では、図5に示すように、第一油圧室3d及び第二油圧室3eの両室に対して油圧回路L1,L2が接続されているが、少なくとも第二油圧室3eのみに接続されていればよい。すなわち、少なくともピストン部3aを上方へ移動させる構成を備えたものであればよく、その場合ピストン部3aを下方へ移動させるには車体の自重を利用すればよい。なお、ピストン部3aとシリンダ部3bとの摺接面の潤滑性や封止性を考慮すると、上述の実施形態のように、ピストン部3aの上下端部にシリンダ部3bを冠着させる構成とすることが好ましいものと考えられる。
【0038】
また、上述の実施形態では、ビーム1の左右両端部の油圧シリンダ7A,7Bに対して均等に作動油が供給される構成としてあるが、作動油の供給割合を任意に調整可能とすることも考えられる。これにより、車体の左右方向における車高を相違させることができる。
また、上述の実施形態では、キングピン3のシリンダ部3bと揺動部3cとが別部材として備えられているが、これらを一体に形成することも考えられる。この場合、ピストン部3aがシリンダ部3bに対して上下方向に摺動し、かつ、ピストン部3aがシリンダ部3bの周面に沿って回転する構造となり、部品点数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、アスファルトフィニッシャの製造産業全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ビーム(車軸)
1a,1b 通路孔
2 モータ(支持体)
2a キングピン固定部
2b ホイール固定部
3 キングピン
3a ピストン部
3b シリンダ部
3c 揺動部
3d 第一油圧室
3e 第二油圧室(作動流体室)
3f 第一通路
3g 第二通路
3h Oリング
4 前輪
4a ホイールリム
4b ソリッドタイヤ
5 後輪
6a,6b,6c 固定部材
7A ビーム1の左端部の油圧シリンダ
7B ビーム1の右端部の油圧シリンダ
8 センタピン
9 コントロールバルブ
10 アスファルトフィニッシャ
11 ホッパ装置
12 コンベヤ装置
13 スプレッダ装置
14 スクリード装置
15 エンジンルーム
16 エンジン
17 油圧ポンプ
18 作動油タンク
L1 第一油圧回路(作動流体路の一つ)
L2 第二油圧回路(作動流体路の一つ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトフィニッシャの車体に接続され、車幅方向に延在する車軸と、
該車体の走行に係る車輪の回転軸を枢支する支持体と、
該車軸の端部に配設されるとともに上下方向へ延在し、該支持体を左右方向に揺動自在に枢支するキングピンとを備え、
該キングピンが、
筒軸を鉛直に配向した円筒状に形成され、該車軸の端部に固設されたピストン部と、
該ピストン部の筒面に摺接する中空円筒状に形成され、該ピストン部の下端部に冠着されたシリンダ部と、
該シリンダ部と該ピストン部との間隙に作動流体を充填されてなる作動流体室とを有する
ことを特徴とする、アスファルトフィニッシャの車高調整装置。
【請求項2】
該キングピンが、該車軸の左右両端部に配設されるとともに、
該左右両端部の該キングピンにおける左右の該作動流体室へ該作動流体を供給する流体圧ポンプと、
該左右の該作動流体室と該流体圧ポンプとをともに連通する作動流体路とをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1記載のアスファルトフィニッシャの車高調整装置。
【請求項1】
アスファルトフィニッシャの車体に接続され、車幅方向に延在する車軸と、
該車体の走行に係る車輪の回転軸を枢支する支持体と、
該車軸の端部に配設されるとともに上下方向へ延在し、該支持体を左右方向に揺動自在に枢支するキングピンとを備え、
該キングピンが、
筒軸を鉛直に配向した円筒状に形成され、該車軸の端部に固設されたピストン部と、
該ピストン部の筒面に摺接する中空円筒状に形成され、該ピストン部の下端部に冠着されたシリンダ部と、
該シリンダ部と該ピストン部との間隙に作動流体を充填されてなる作動流体室とを有する
ことを特徴とする、アスファルトフィニッシャの車高調整装置。
【請求項2】
該キングピンが、該車軸の左右両端部に配設されるとともに、
該左右両端部の該キングピンにおける左右の該作動流体室へ該作動流体を供給する流体圧ポンプと、
該左右の該作動流体室と該流体圧ポンプとをともに連通する作動流体路とをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1記載のアスファルトフィニッシャの車高調整装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−261274(P2010−261274A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114836(P2009−114836)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】
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