説明

アスファルト舗装地用PC構造体の設置工法

【課題】 アスファルト舗装地に設置する際の施工作業性に優れると共に設置時間が大幅に短縮され、しかも設置後における被接合壁面と舗装地の舗装層との接合部の強固な水密状態の接着を確保し得るアスファルト舗装地用PC構造体の設置工法を提供する。
【解決手段】 PC構造体Qの据付固定及び加熱された舗装材の敷設による舗装層Sの構築を含む設置工法において、PC構造体Qの据付固定前に、該PC構造体Qにおける舗装層Sとの被接合壁面Wに、アスファルトシート22を貼着すると共にそれによって該被接合壁面Wにアスファルト接着剤層Lを形成し、さらに、加熱された舗装材の敷設前に、前記PC構造体Qの被接合壁面W上のアスファルト接着剤層Lを加熱溶融する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等のアスファルト舗装地の域内に又はその側縁に沿って設置される側溝、歩車道境界ブロック等のアスファルト舗装地用PC構造体(プレキャストコンクリート構造体)の設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路等のアスファルト舗装地へのPC構造体の設置に際して、該舗装地における表層、基層等のアスファルト舗装層は、それと対向するPC構造体の壁面に接合される(特許文献1及び2参照)。
【0003】
前記PC構造体の被接合壁面と舗装地の舗装層との接合部は、通常、施工現場において接着剤としてのアスファルト乳剤等を介して接着され、具体的には、所定位置に据付固定されたPC構造体の被接合壁面に前記アスファルト乳剤が散布等の方法で塗布され、その後に、加熱されたアスファルト合材からなる舗装材が前記PC構造体の被接合壁面に沿って敷設されると共に締め固められ、それによって前記加熱舗装材がアスファルト乳剤を介してPC構造体の被接合壁面に接着されると共に該被接合壁面に沿って所要構成の舗装層が構築されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−160905
【特許文献2】特開2007−107232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように、施工現場において、アスファルト乳剤等を、据付固定されたPC構造体の被接合壁面に、限られた時間内に均一な厚みで塗り残しなく塗布することは極めて困難な作業であり、仮に前記のような状況下でPC構造体の被接合壁面にアスファルト乳剤等を均一な厚みで塗り残しなく確実に塗布するためには高い熟練技能と多大の工数を要し、また構築後の舗装層における加熱舗装材の冷却を待つために交通解放の時間を遅らせることにもなる。
【0006】
また、前記PC構造体の被接合壁面へのアスファルト乳剤等の塗布が前記のように不十分であると、設置後におけるPC構造体の被接合壁面と舗装地の舗装層との接合部に接着不良、水密不良を生じ、該舗装層端部の強度低下及び不安定化を生じるのみならず、舗装地上に降った雨水が前記接合部から舗装層深部へと侵入し、路盤の洗掘及びそれによる舗装層の沈下を引き起こして、舗装地の寿命が急激に短縮すると共に該舗装地上を通行する歩行者や車両等に重大な危険が及ぶことになる。
【0007】
本発明の課題は、前記従来技術の問題点に鑑み、アスファルト舗装地に設置する際の施工作業性に優れると共に設置時間が大幅に短縮され、しかも設置後における被接合壁面と舗装地の舗装層との接合部の強固な水密状態の接着を確保し、前記被接合壁面に対して舗装層を強固に接着一体化させると共に、それらの接合部からの雨水の浸入、路盤の洗掘及び舗装層の沈下等を生起させないアスファルト舗装地用PC構造体の設置工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する、本発明に係るPC構造体の設置工法は、請求項1に記載のように、PC構造体をアスファルト舗装地又は舗装予定地の域内に又はその側縁に沿って据付固定する工程と、加熱されたアスファルト合材からなる舗装材を、据付固定された前記PC構造体における、該PC構造体の設置時に舗装地の舗装層と対向して接合される予定の被接合壁面に沿って、接着剤層を介して敷設すると共に締め固め、それによって該被接合壁面に沿って舗装層を構築する工程とを少なくとも含むPC構造体の設置工法において、
前記PC構造体の据付固定前に、該PC構造体の前記被接合壁面に、アスファルトシートを貼着すると共にそれによって該被接合壁面にアスファルト接着剤層を形成する工程と、前記加熱されたアスファルト合材からなる舗装材の敷設前に、前記PC構造体Qの被接合壁面W上のアスファルト接着剤層を加熱溶融する工程とをさらに含むことを特徴としている。
【0009】
前記アスファルト舗装地として、例えばアスファルト舗装が施された道路、駐車場、公園、庭園等が包含され、またPC構造体としては、例えばアスファルト舗装地上に降った雨水や舗装地の透水性舗装層を透過した雨水等の集水及び排水処理、歩道と車道間等の境界形成、舗装地域内の区画形成、舗装地への種々の設置物の基礎形成等を目的とするプレキャストコンクリート製の水路ブロック、排水ブロック、導水ブロック、暗渠、側溝、集水桝、道路境界ブロック、歩車道境界ブロック、舗装止め、縁石、車止め等が包含される。
【0010】
前記PC構造体が、非透水性舗装層上に透水性舗装層を積層してなる排水性舗装層を含むアスファルト舗装地の域内に又はその側縁に沿って設置されるものであって、内部又は表面に管状、U字状、L字状等の排水路を備え、設置時に被接合壁面における透水性舗装層と対向して接合される壁面部分に、該透水性舗装層を透過する雨水を前記排水路内に流出させるための水抜き孔やそれらに透過雨水を案内する案内溝等の水抜き手段が穿設されてなるPC構造体については、請求項2に記載のように、その設置工法におけるアスファルト接着剤層の形成工程において、前記PC構造体の被接合壁面に、前記水抜き手段の穿設口を除いてアスファルトシートが貼着される。
【0011】
前記PC構造体の被接合壁面の形状としては、一面又は二面以上の平面及び/又は曲面からなるものが広く包含され、例えば従来多用される一面の垂直平面からなるものであってもよいが、他方、設置後に該被接合壁面に沿って構築される舗装層の端部を該被接合壁面に効果的に支持させ、該舗装層の沈下傾向を抑制し得るように、請求項3に記載のように、該被接合壁面が部分的に又は全体的に、傾斜、湾曲、段付け等で下拡がりに形成されたものも好適に採用することができる。例えば前記被接合壁面は、表層や表層及び基層等の特定の舗装層と接合される区域部分にのみ前記下拡がりの傾斜や湾曲が形成されてもよく、或いは該被接合壁面全域にわたって前記下拡がりの傾斜や湾曲が形成されてもよい。
【0012】
前記PC構造体の据付固定前における、前記PC構造体の被接合壁面へのアスファルトシートの貼着工程では、均一なアスファルト接着剤層を確実に形成するために、シート基材にアスファルト材を担持させてなるアスファルトシート、好ましくは、請求項4に記載のように、耐熱性のガラス繊維や化学繊維等からなる不織布、編織物その他の多孔性、含浸性シート基材にアスファルト、改質アスファルト等のアスファルト材を含浸、被覆、積層する等して担持させてなるアスファルトシートを使用し、これを、必要に応じてタックコート等を介して、またそのアスファルト材自体に元来備わるか粘着付与剤等の添加により強化された粘着性を利用して、或いはその被着面のアスファルト材をトーチバーナその他の手段で加熱溶融させながら貼着することにより行われる。
【0013】
前記のようにアスファルトシートの貼着により形成されたアスファルト接着剤層の表面には、請求項5に記載のように、その加熱溶融時まで表面が汚染や汚損等から保護すると共に該表面がそれに接触したものと不用意に粘着しないように、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等のプラスチックフィルムや紙材等からなる保護フィルムが剥離可能に被覆されてもよく、或いは請求項6に記載のように、硅砂等の鉱物、セラミック等の耐熱性材料からなる微粒が付着されていてもよい。
【0014】
前記PC構造体は、その製造から最終的な設置の完成に至るまでに表面に汚染を受け易く、特に設置工事等に際して黒色のアスファルト舗装材が該PC構造体における灰白色のコンクリート表面に付着すると、それによる汚染が際立ち、美観を損なうと共に施工の評価を低下させることになる。そこで、前記PC構造体の据付固定前に、請求項7に記載のように、設置後に舗装地から露出するPC構造体の上面等の壁面にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等のプラスチックフィルムや紙材等からなる防汚フィルムが粘着剤層等を介して剥離可能に接着されてもよい。
【0015】
前記PC構造体の据付固定工程では、前記PC構造体が、その形態や種類に応じて、従来と同様の工法で、アスファルト舗装地又は舗装予定地の域内又はその側縁に沿って、所定の位置に所定の深さで、例えば、予め構築された基礎砕石等の基礎材上に均コンクリート、基礎コンクリート、敷モルタル等を介して据付固定される。
【0016】
前記被接合壁面上のアスファルト接着剤層の加熱溶融工程では、前記のように据付固定された前記PC構造体における被接合壁面上のアスファルト接着剤層が例えばトーチバーナや熱風ヒータ等の加熱装置により加熱溶融され、それによって、後述されるように被接合壁面に沿って敷設された、加熱されたアスファルト舗装材と良好に溶着可能な状態とされる。
【0017】
なお、既述のように、被接合壁面上のアスファルト接着剤層の表面に保護フィルムが剥離可能に被覆されている場合は、前記加熱溶融工程に先立って該保護フィルムが剥離除去される。また、既述のように、被接合壁面上のアスファルト接着剤層の表面にセラミック等の耐熱性材料からなる微粒が付着されている場合は、そのまま前記加熱溶融工程に供されることにより前記アスファルト接着剤層が加熱溶融されると共に前記微粒が表面からアスファルト接着剤層内部へと分散し、溶融アスファルト接着剤層で被覆されて一種の骨材として作用し、前記のように加熱溶融されたアスファルト接着剤層と加熱されたアスファルト舗装材との溶着に支障は生じない。
【0018】
さらに、前記加熱舗装材の敷設、締め固め工程では、従来と同様の工法で、アスファルト合材からなる所要の舗装材が、前記のように加熱溶融されたアスファルト接着剤層の形成された被接合壁面に沿って、アスファルト舗装地又は舗装予定地の舗装構造や据付固定されたPC構造体の深さ等に応じた構成で、例えば路盤、基層及び表層、或いは基層及び表層等を構成するように順次敷設されると共に転圧機等で締め固められ、それによって前記舗装材がPC構造体の被接合壁面にアスファルト接着剤層を介して確実に接着されると共に該被接合壁面に沿って所要構成の舗装層が構築されるものである。なお、前記被接合壁面に沿って構築される舗装層が基層及び表層等のように複数層にわたる場合は、各層の構築ごとに前記所要の舗装材及びその締め固めが行われるが、その場合、必要に応じて、各層の構築ごとに、所要の舗装材の敷設に先立って該層に対向する被接合壁面上のアスファルト接着剤層の加熱溶融が行われる。
【0019】
前記PC構造体が請求項2に記載のように排水性舗装層に対応する構造を有する場合は、その設置工法において、被接合壁面における水抜き手段が穿設された壁面部分に沿って透水性舗装層が構築され、前記壁面部分より下位の壁面部分に沿って非透水性舗装層が構築されることになる。
【0020】
前記の場合は、前記PC構造体の設置後において、舗装地に降った雨水は透水性舗装層を透過し、非透水性舗装層で以降の舗装層への進入を阻止されつつ前記被接合壁面上の前記水抜き手段を介して排水路内に流出する。
【0021】
なお、前記PC構造体については、透水性舗装層とそれに対向する被接合壁面との接合部に水密性の接着は要求されないが、構築後の舗装層の強度保持や安定化のために、前記透水性舗装層と接合される被接合壁面にも前記水抜き手段の穿設口を除いてアスファルト接着剤層が形成され、それによって前記接合部の強固な接着が得られる。
【0022】
なお、設置後に舗装地から露出する壁面に汚染防止用の防汚フィルムが剥離可能に接着されている場合は、最終的な舗装材の前記敷設、締め固めによる舗装層の構築後に該防汚フィルムが剥離除去される。
【0023】
前記構成のPC構造体の設置工法においては、PC構造体の据付固定前に、その被接合壁面にアスファルトシートが貼着されると共にそれによって均一なアスファルト接着剤層が形成されるので、PC構造体の据付固定後は、前記被接合壁面へのアスファルト乳剤等からなる接着剤の均一で塗り残しのない塗布の工程、即ち困難で多大の工数を要する塗布工程を一切経ることなく、前記被接合壁面に予め形成されたアスファルト接着剤層の加熱溶融の工程、即ち容易で僅少の工数で足りる加熱溶融工程のみを経て、後に続くアスファルト舗装材の敷設、締め固めの工程へと移行することができ、それらの敷設、締め固めの工程で、前記被接合壁面上の加熱溶融されたアスファルト接着剤層と加熱されたアスファルト舗装材とが溶着され、それによってPC構造体の被接合壁面と舗装地の舗装層との接合部が確実に接着されるのである。
【0024】
また、前記構成により、設置後におけるPC構造体の被接合壁面に対して舗装地の舗装層が強固に接着一体化されるので、該舗装層端部の強度保持及び安定化が図られ、また設置後におけるPC構造体の被接合壁面と舗装地の舗装層との接合部は、前記のように、該被接合壁面に予め形成されたアスファルトシートによる均一なアスファルト接着剤層を介して水密状態に接着されるので、該被接合壁面と接合される舗装層が通常のアスファルト舗装のように非透水性舗装層を含む場合には、雨水等が前記接合部から路盤等の舗装層深部へと侵入することが防止される。
【0025】
アスファルトシートによるアスファルト接着剤層は、必ずしも被接合壁面にその全面にわたって形成される必要はないが、設置後におけるPC構造体の被接合壁面と舗装地の舗装層との接合部から雨水等が路盤等の舗装層深部へと侵入しないようにするためには、前記のように、舗装層における路盤等の舗装層深部に至る前に配置された非透水性舗装層と対向して接合される被接合壁面にアスファルト接着剤層が確実に形成されている必要がある。
【0026】
なお、前記のような、前記PC構造体の据付固定前における、前記PC構造体の被接合壁面へのアスファルトシートの貼着工程は、該被接合壁面に沿って構築される舗装層が雨水を敢えて舗装層深部の路盤を介して浸透排水させる透水性舗装層の場合にも、舗装層の強度保持や安定化のために適用可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、PC構造体を舗装地に設置する際の施工作業性に優れると共に設置時間が大幅に短縮され、しかも設置後における被接合壁面と舗装地の舗装層との接合部の強固な水密状態の接着が確保され、前記被接合壁面に対して舗装層が強固に接着一体化されると共に、それらの接合部からの雨水の浸入、路盤の洗掘及び舗装層の沈下等が生起しないPC構造体の設置工法が提供される。
【0028】
請求項2に係る発明によれば、非透水性舗装層上に透水性舗装層を積層してなる排水性舗装層を含むアスファルト舗装地に好適に適用し得るPC構造体の設置工法が提供される。
【0029】
請求項3に係る発明によれば、設置後に被接合壁面に沿って構築される舗装層の端部が該被接合壁面に効果的に支持され、該舗装層端部の強度保持及び安定化並びに該舗装層の沈下傾向の抑制に寄与し得るPC構造体の設置工法が提供される。
請求項4に係る発明によれば、被接合壁面に所定の品質と均一な厚みを有する強靭なアスファルト接着剤層が確実に形成される。
【0030】
請求項4に係る発明によれば、設置後に被接合壁面に沿って構築される舗装層の端部が該被接合壁面に効果的に支持され、該舗装層端部の強度保持及び安定化並びに該舗装層の沈下傾向の抑制に寄与し得るPC構造体が提供される。
【0031】
請求項5に係る発明によれば、被接合壁面上のアスファルト接着剤層が、設置工程における加熱溶融時まで表面の粘着性を抑制されると共に加熱溶融時まで表面の汚染や汚損等から保護される。
【0032】
請求項6に係る発明によれば、被接合壁面上のアスファルト接着剤層が、設置工程における加熱溶融時まで表面の粘着性を抑制されると共に加熱溶融時まで表面の汚染や汚損等から保護され、しかも特別の追加作業なしにそのまま加熱溶融に供される。
【0033】
請求項7に係る発明によれば、設置後に舗装地から露出する壁面が、設置完了後に前記防汚フィルムが剥離除去されるまで防汚されて美麗な表面状態に保護される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るPC構造体の設置工法を経時的に示す断面図であり、(A)はPC構造体の被接合壁面へのアスファルトシートの貼着工程、(B)はPC構造体の据付固定工程、(C)は被接合壁面上のアスファルト接着剤層の加熱溶融工程、(D)は被接合壁面に沿った舗装材の敷設による舗装層の構築工程を示している。
【図2】本発明に係るPC構造体の設置工法において、PC構造体の被接合壁面へのアスファルトシートの貼着により形成されたアスファルト接着剤層の要部断面図であり、(A)は表面が露出したもの、(B)は表面に保護フィルムが剥離可能に被覆されたもの、(C)は表面に耐熱性材料からなる微粒が付着されたものを各々を示している。
【図3】本発明に係るPC構造体の設置工法において、PC構造体の種々の形状の被接合壁面に沿った舗装材の敷設による舗装層の構築態様を例示する断面図であり、(A)は被接合壁面が上部に下拡がりの傾斜壁面を含む複数面からなる場合、(B)は被接合壁面が上部に下拡がりの湾曲壁面を含む複数面からなる場合、(C)は被接合壁面が上部に下拡がりの傾斜壁面及び水平壁面を含む複数面からなる場合、(D)は被接合壁面が全体的に下拡がりの傾斜壁面からなる場合を各々を示している。
【図4】本発明に係るPC構造体の設置工法において、排水性舗装層に対応するPC構造体の種々の形態の被接合壁面に沿った舗装材の敷設による舗装層の構築態様を例示する断面図であり、(A)は被接合壁面が上部に下拡がりの傾斜壁面を含む複数面からなる場合、(B)は被接合壁面が上部に垂直壁面、水平壁面及び下拡がりの傾斜壁面を含む複数面からなる場合を各々を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係るアスファルト舗装地用PC構造体の設置工法を図面に基づいて具体的に説明する。
【0036】
[PC構造体の被接合壁面へのアスファルトシートの貼着工程]
図1(A)において、例示されたPC構造体Qは境界形成兼水路ブロックであり、内部に円管状排水路2が穿設され、上壁面に、前記排水路2に通じる複数の排水孔3が貫設されると共にそれらの開口部を連通させる案内溝4が穿設され、且つ上壁面後方に境界形成片5が突設されている。
【0037】
前記PC構造体Qは、搬入された施工現場又は保管倉庫等において、設置時に前面側において舗装道路等のアスファルト舗装地の舗装層と対向して接合される被接合壁面Wとなる垂直壁面Waにアスファルトシート22が貼着されると共にそれによってアスファルト接着剤層Lが形成され、さらに設置後に舗装地から露出する上壁面と境界形成片5の上壁面及び前壁面に汚染防止用の防汚フィルムFが剥離可能に接着される。
【0038】
前記PC構造体Qは、図1(B)に示すように、従来公知の工法により、舗装地Rの掘削された側縁に沿って、基礎砕石11上に均コンクリート12を介して据付固定される。なお、前記PC構造体Q間の長さ方向の接合も、従来公知の接合手段により行われる。
【0039】
次に、前記のように据付固定された前記PC構造体Qにおける被接合壁面W上のアスファルト接着剤層Lが、後述される加熱舗装材の敷設、締め固め工程に先立って、図1(C)に示すように、トーチバーナ、熱風ヒータ等の加熱装置14により加熱溶融される。
【0040】
続いて、アスファルト合材からなる所要の舗装材が、図1(D)に示すように、前記のように加熱溶融されたアスファルト接着剤層Lの形成された被接合壁面Wに沿って、従来公知の工法により、所要構成の舗装層S、即ち路盤Sa並びに非透水性舗装層からなる基層Sb及び非透水性舗装層からなる表層Scを構成するようにプライムコート、タックコート等を介して順次敷設されると共に転圧機で締め固められ、それによって前記舗装材がPC構造体Qの被接合壁面Wにアスファルト接着剤層Lを介して確実に接着されると共に該被接合壁面Wに沿って所要構成の舗装層Sが構築される。なお、前記舗装層Sの構築に際しては、舗装層Sにおける基層Sb及び表層Sc等の構築ごとに、それらに対向する被接合壁面W上のアスファルト接着剤層Lの加熱溶融、所要舗装材の敷設及び締め固めが行われる。前記舗装層Sからなる舗装地Rは、表層Scの舗装材が放冷されて所定温度以下に至るのを待って交通解放に供される。
【0041】
なお、PC構造体Qの用途や高さ寸法、設置深さ等によっては、その被接合壁面Wに沿って構築される舗装層Sが表層Scのみの場合や基層Sb及び表層Scの場合もあり得る。また、アスファルト接着剤層Lは、必ずしも被接合壁面Wにその全面にわたって形成される必要はなく、必要に応じて、例えば被接合壁面Wの内、表層Scと接合される壁面部分にのみ形成されてもよく、また路盤に至るまでの表層Sc及び/又は基層Sbと接合される壁面部分に形成されてもよい。また、前記PC構造体Qの背面側、即ち前記舗装地Rと反対の側には、前記と共通又は別異の舗装地や歩道等の地面構造Hが従来公知の工法により構築されるが、ここではその詳細な説明を省略する。
【0042】
前記舗装の施工完了によるPC構造体Qの設置完了後に防汚フィルムFが剥離除去され、それによって該PC構造体Q本体の上壁面と境界形成片5の上壁面及び前壁面が舗装地Rから汚染のない美麗な表面状態で露出させられる。
【0043】
前記PC構造体Qの設置後において、舗装地R上に降った雨水は非透水性舗装層からなる表層Scに沿って上壁面へと流下し、該上壁面における排水孔3及び案内溝4を介して排水路2内に流出する。なお、前記表層Scが透水性舗装層からなる場合も、舗装地R上に降った雨水は、表層Scに吸収され、透過されつつ、前記と同様に該表層Scに沿って上壁面へと流下することになるが、好ましくは、既述のように、或いは具体的に後述されるように、PC構造体Qの前記被接合壁面Wにおける前記透水性舗装層からなる表層Scと対向して接合される壁面部分に、該表層Scを透過する雨水を中央の排水路2等に排出させるための水抜き孔やそれらに透過雨水を案内する案内溝等の水抜き手段が穿設される。
【0044】
[アスファルトシートの構成]
PC構造体Qにおける被接合壁面Wへのアスファルト接着剤層Lの形成は、例えば下記のような構成のアスファルトシートの貼着により行われる。
【0045】
即ち、図2において、PC構造体Qの被接合壁面Wに、不織布等からなる多孔性、含浸性シート基材23にアスファルト材24を含浸、被覆させてなるアスファルトシート22が貼着され、それによってアスファルト接着剤層Lが形成されている。図2(A)では、形成されたアスファルト接着剤層Lの表面がそのまま露出し、図2(B)では、形成されたアスファルト接着剤層Lの表面に、その加熱溶融時まで該表面を汚染や汚損等から保護すると共に該表面がそれに接触したものと不用意に粘着しないように、保護フィルム15が剥離可能に被覆され、また図2(C)では、形成されたアスファルト接着剤層Lの表面に、前記と同様の理由で、硅砂等の鉱物、セラミック等の耐熱性材料からなる微粒16が付着されている。
【0046】
[被接合壁面の形状と舗装層の構築態様]
PC構造体Qにおける被接合壁面Wの形状としては、図1に示される一面の平坦な垂直壁面Waのもの以外にも種々の形状が採用される。
【0047】
例えば、図3(A)において、例示されたPC構造体QはL字形側溝ブロックであり、上面にL字形排水路6が穿設され、設置時に前面側において舗装地Rの舗装層Sと対向して接合される被接合壁面Wは、下拡がりの傾斜壁面Wb及び垂直壁面Waが連接されてなり、設置工事に際して、表層Sc及び基層Sb等からなる舗装層Sが、前記構成の被接合壁面Wに沿って、それらの面上のアスファルトシート22からなるアスファルト接着剤層Lを介して構築される。
【0048】
図3(B)に示すPC構造体Qにおいて、例示されたPC構造体QもまたL字形側溝ブロックであり、上面にL字形排水路6が穿設され、設置時に前面側において舗装地Rの舗装層Sと対向して接合される被接合壁面Wは、下拡がりの湾曲壁面Wc及び垂直壁面Waが連接されてなり、設置工事に際して、表層Sc及び基層Sb等からなる舗装層Sが、前記構成の被接合壁面Wに沿って、それらの面上のアスファルトシート22からなるアスファルト接着剤層Lを介して構築される。
【0049】
図3(C)において、例示されたPC構造体Qは境界形成ブロックであり、設置時に前面側において舗装地Rの舗装層Sと対向して接合される被接合壁面Wは、下拡がりの傾斜壁面Wb、水平壁面Wd及び垂直壁面Waが順次段状に連接されてなり、設置工事に際して、表層Sc及び基層Sb等からなる舗装層Sが、前記構成の被接合壁面Wに沿って、それらの面上のアスファルトシート22からなるアスファルト接着剤層Lを介して構築される。
【0050】
図3(D)において、例示されたPC構造体Qは車止めブロックであり、設置時に四方周囲(前面側及び背面側の二方のみ図示される)の舗装地Rの舗装層Sと対向して接合される被接合壁面Wは、前面側における全体的に下拡がりの傾斜壁面Wb及び背面、両横面における垂直壁面Waからなり、設置工事に際して、表層Sc及び基層Sb等からなる舗装層Sが、前記の被接合壁面Wに沿って、それらの面上のアスファルトシート22からなるアスファルト接着剤層Lを介して各々構築される。
【0051】
図3(A)〜(C)に示される前記PC構造体Qにおいては、それらの背面側、即ち前記舗装地Rと反対の側に、必要に応じて、前記と共通又は別異の舗装地や歩道等の地面構造Hが従来公知の工法により構築される。なお、前記PC構造体Qの背面側に構築される前記地面構造Hが前記と同様にアスファルト舗装層である場合は、それらを構成する舗装層に対向して接合される背面側の被接合壁面Wにも、前記と同様にアスファルトシート22からなるアスファルト接着剤層Lが形成されることが好ましい。
【0052】
なお、図3(A)〜(D)に示される前記PC構造体Qにおいても、図1に示される場合と同様に、必要に応じて、設置後に舗装地から露出する壁面に防汚フィルムFが剥離可能に接着される。
【0053】
[排水性舗装層に対応するPC構造体の形状と舗装層の構築態様]
排水性舗装層に対応するPC構造体Qには、通常、透水性舗装層を透過する雨水をブロック内部や表面に穿設された排水路に排出させるための水抜き通路が被接合壁面Wに穿設され、その場合、アスファルトシート22からなるアスファルト接着剤層Lは前記水抜き通路の穿設口を除いて被接合壁面Wに形成される。
【0054】
例えば、図4(A)において、例示されたPC構造体Qは一種の水路ブロックであり、内部に円管状排水路2が穿設され、上壁面に、前記排水路2に通じる複数の排水孔3が貫設されると共にそれらの開口部を連通させる案内溝4が穿設されている。
【0055】
前記PC構造体Qにおいて、設置時に前面側において舗装地Rの舗装層Sと対向して接合される被接合壁面Wは、下拡がりの傾斜壁面Wb及び垂直壁面Waが連接されてなり、前記傾斜壁面Wbには、前記排水路2に通じる複数の水抜き孔7が貫設されると共にそれらの開口部を連通させる案内溝8が穿設され、前記被接合壁面Wにおける、前記傾斜壁面Wbの水抜き孔7及びその案内溝8を除く部分にアスファルトシート22からなるアスファルト接着剤層Lが形成され、さらに設置後に舗装地Rから露出する上壁面には排水孔3及びその案内溝4を含めて汚染防止用の防汚フィルムFが剥離可能に接着され、図面では設置後における剥離始めの状態が示されている。
【0056】
設置工事に際して、表層Sc及び基層Sb等からなる舗装層Sが、前記被接合壁面Wに沿って、それらの面上のアスファルトシート22からなる各アスファルト接着剤層Lを介して各々構築され、その場合、透水性舗装層からなる表層Scは前記被接合壁面Wの傾斜壁面Wbに沿って、また非透水性舗装層からなる基層Sb及びそれ以下の路盤Saは前記被接合壁面Wの垂直壁面Waに沿って各々構築される。
【0057】
前記PC構造体Qの設置後において、舗装地R上に降った雨水の内、表層Sc表面を流れる雨水は前記上壁面における排水孔3及び案内溝4を介して排水路2内に流出し、また表層Scを透過した雨水は、非透水性舗装層からなる基層Sbで以降の舗装層への進入を阻止されつつ、前記前記傾斜壁面Wbにおける水抜き孔7及び案内溝8を介して排水路2内に流出する。
【0058】
また、図4(B)に示すPC構造体Qにおいて、例示されたPC構造体Qは境界形成兼水路ブロックであり、内部に矩形管状排水路2が穿設され、上壁面前方に、前記排水路2に通じる複数の水抜き孔7が貫設されると共にそれらの開口部を連通させる案内溝8が穿設され、さらに上壁面後方に、前記排水路2に通じる複数の排水孔3が貫設されると共にそれらの開口部を連通させる案内溝4が穿設され、さらに前記上壁面後方に境界形成片5が突設されると共に該境界形成片5の底面に、前記上壁面後方上の複数の排水孔3及び案内溝4と連通する案内空洞9が穿設され、前記境界形成片5の前壁面に、前記案内空洞9に連通する複数の導水孔10が穿設されている。
【0059】
前記PC構造体Qにおいて、設置時に前面側において舗装地Rの舗装層Sと対向して接合される被接合壁面Wは、前記境界形成片5の前壁面における複数の導水孔10より下位にある部分傾斜壁面We、並びにPC構造体Qの水平壁面Wd、下拡がりの傾斜壁面Wb及び垂直壁面Waが順次段状に連接されてなり、前記被接合壁面Wにおける、前記上壁面の水抜き孔7及びその案内溝8を除く部分にアスファルトシート22からなるアスファルト接着剤層Lが形成され、さらに設置後に舗装地Rから露出する境界形成片5の上壁面及び前壁面上部に汚染防止用の防汚フィルムFが剥離可能に接着され、図面では設置後における剥離始めの状態が示されている。
【0060】
設置工事に際して、表層Sc及び基層Sb等からなる舗装層Sが、前記被接合壁面Wに沿って、それらの面上のアスファルトシート22からなる各アスファルト接着剤層Lを介して各々構築され、その場合、透水性舗装層からなる表層Scは前記被接合壁面Wの部分傾斜壁面We及び水平壁面Wdに沿って、また非透水性舗装層からなる基層Sbは前記被接合壁面Wの傾斜壁面Wbに沿って、さらに路盤Saは前記被接合壁面Wの垂直壁面Waに沿って各々構築される。
【0061】
前記PC構造体Qの設置後において、舗装地R上に降った雨水の内、表層Sc表面を流れる雨水は前記境界形成片5の前壁面における導水孔10及び案内空洞9並びに上壁面における排水孔3及び案内溝4を順次介して排水路2内に流出し、また表層Scを透過した雨水は前記水抜き孔7及び案内溝8を介して排水路2内に流出する。
【符号の説明】
【0062】
Q PC構造体
H 地面構造
R 舗装地
S 舗装層
Sa 路盤
Sb 基層
Sc 表層
W 被接合壁面
Wa 垂直壁面
Wb 傾斜壁面
Wc 湾曲壁面
Wd 水平壁面
We 部分傾斜壁面
L アスファルト接着剤層
F 防汚フィルム
2 排水路
3 排水孔
4 案内溝
5 境界形成片
6 排水路
7 水抜き孔
8 案内溝
9 案内空洞
10 導水孔
11 基礎砕石
12 均コンクリート
14 加熱装置
15 保護フィルム
16 微粒
22 アスファルトシート
23 シート基材
24 アスファルト材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC構造体をアスファルト舗装地又は舗装予定地の域内に又はその側縁に沿って据付固定する工程と、加熱されたアスファルト合材からなる舗装材を、据付固定された前記PC構造体における、該PC構造体の設置時に舗装地の舗装層と対向して接合される予定の被接合壁面に沿って、接着剤層を介して敷設すると共に締め固め、それによって該被接合壁面に沿って舗装層を構築する工程とを少なくとも含むPC構造体の設置工法において、
前記PC構造体の据付固定前に、該PC構造体の前記被接合壁面に、アスファルトシートを貼着すると共にそれによって該被接合壁面にアスファルト接着剤層を形成する工程と、前記加熱されたアスファルト合材からなる舗装材の敷設前に、前記PC構造体の被接合壁面上のアスファルト接着剤層を加熱溶融する工程とをさらに含むことを特徴とするPC構造体の設置工法。
【請求項2】
前記PC構造体が、非透水性舗装層上に透水性舗装層を積層してなる排水性舗装層を含むアスファルト舗装地の域内に又はその側縁に沿って設置されるものであって、内部又は表面に排水路を備え、設置時に被接合壁面における透水性舗装層と対向して接合される壁面部分に、該透水性舗装層を透過する雨水を前記排水路内に流出させるための水抜き手段が穿設されてなるPC構造体であり、その設置工法におけるアスファルト接着剤層の形成工程において、前記PC構造体の被接合壁面に、前記水抜き手段の穿設口を除いてアスファルトシートが貼着された請求項1に記載のPC構造体の設置工法。
【請求項3】
前記被接合壁面が部分的又は全体的に下拡がりに形成された請求項1〜2の何れかに記載のPC構造体の設置工法。
【請求項4】
前記アスファルトシートが、多孔性、含浸性シート基材にアスファルト材を担持させてなる請求項1〜3の何れかに記載のPC構造体の設置工法。
【請求項5】
前記アスファルトシートからなるアスファルト接着剤層の表面に保護フィルムが剥離可能に被覆された請求項1〜4の何れかに記載のPC構造体の設置工法。
【請求項6】
前記アスファルトシートからなるアスファルト接着剤層の表面に耐熱性材料からなる微粒が付着された請求項1〜4の何れかに記載のPC構造体の設置工法。
【請求項7】
前記PC構造体の据付固定前に、設置後に舗装地から露出するPC構造体の壁面に防汚フィルムが剥離可能に接着され、前記舗装層の構築後に、前記防汚フィルムが剥離除去されるようにした請求項1〜6の何れかに記載のPC構造体の設置工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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