アスファルト舗装用の複合タックフィルム、舗装方法、およびアスファルト舗装用複合タックフィルムの製造方法
タックフィルム材料は、第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材を含む。第1および第2主表面上の表面層は、樹脂性非アスファルト材料を含むか、または約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料を含む。厚さが約3.8cm(1.5インチ)以上であるアスファルト舗装材料の被覆層が敷設されることによってタックフィルム材料に加えられる圧力の下で、表面層が約120℃以上の温度に加熱されると、表面層は、アスファルト舗装材料の隣接層との結合を形成することができる。表面層は、約20℃の温度および約1気圧の圧力では粘着性がない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗道補修用の補強材料に関する。
【背景技術】
【0002】
補強アスファルト道路およびオーバーレイ用の様々な方法および複合材が提案されてきた。その中には、樹脂を含浸させたガラス繊維グリッドについて記載したものがある。古い舗道を補修するには、建設条例に従って、一般にはアスファルトタックコートをガラス繊維グリッドと一緒に施す。タックコートは液体として(例えば、吹き付けでの乳剤または加熱アスファルトセメントバインダーとして)施され、その後、液体から固体に変化する。タックコートは、新しいアスファルト舗道を既存の舗道表面に結合させる際の助けとして使用される敷設グリッド(グリッドの背面に接着コーティングを有する)の上部に施される。グリッドの背面に接着コーティングを有していないガラス繊維グリッドを敷設するためには、タックコートを最初に既存の舗道に施す。タックコートが完全に硬化する前に、グリッドをタックコート上に敷設する。タックコートはさらに硬化するにつれて、下にある舗道上の所定の位置にグリッドを保持する。加熱アスファルトコンクリートをグリッドの上部にオーバーレイする時に、タックコートは部分的に溶けて、グリッド中の含浸樹脂と一体化する。タックコートには、そのような補強で用いる場合に非常に望ましい幾つかの特色がある。特に、それらは、オーバーレイとして用いられるアスファルトコンクリートまたはセメントとの完全な適合性があり、またその流動性により、でこぼこの舗装表面に流れ込んでそれを滑らかにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その一方で、タックコートには幾つかの問題点もある。タックコートの性質が、周囲条件、特に温度、および湿度に非常に影響されやすいという点である。こうした条件は乳剤タックコートの硬化温度に影響を及ぼしうるものであり、過酷な条件では、硬化を妨げかねない。それほど過酷でない状況でも、オーバーレイ舗装機械は、タックコートが硬化するまで待機しなければならず、不必要な遅れが生じる。例えば、タックコートは通常、水中にアスファルトを含んだ乳剤であり、界面活性剤で安定化されていることが多い。その潜在能力を発揮するためには、乳剤が破壊され、水が除去されて、アスファルトのフィルムが敷かれなければならない。水の除去方法は、基本的には蒸発であり、これは環境における時間、温度、および湿度に左右される。しばしば、環境条件は好ましくないことがあり、その結果、接合の効率が悪くなるかまたは受け入れがたい遅れが生じる。
【0004】
特願平05−315732号公報は、吹き付けられる乳剤タックコートの代わりに使用できるアスファルトフィルムを記載している。アスファルトフィルムが基層の上にかぶせられ、加熱されたアスファルト材料がフィルムの上部に敷設される。フィルムは、網状体の両面にアスファルト乳剤を付着させ、それを固化させることによって形成される。砂利、砂などを含んでいる下側基層および砕石の上側基層は、路盤上に置かれて、突き固められる。フィルムは上側基層の上に置かれ、加熱されたアスファルト材料がフィルム上に敷設される。追加のフィルムおよびアスファルト材料層が、アスファルト層の上に何回も敷設される。フィルムは、アスファルト材料の熱によって軟化し、溶融して単一体になる。
【0005】
それゆえに、舗道コース間の層間の層を改良することが依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
タックフィルムは、第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材を含む。第1および第2主表面の表面層は、樹脂性非アスファルト材料を含むか、または約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料を含む。厚さが約3.8cm(1.5インチ)以上であるアスファルト舗装材料の被覆層(overlying layer)が敷設されることによってタックフィルム材料に加えられる圧力の下で、表面層が約120℃以上の温度に加熱されると、表面層は、アスファルト舗装材料の隣接層との結合を形成することができる。表面層は、約20℃の温度および約1気圧の圧力では粘着性がない。
【0007】
舗装方法は、タックフィルムをアスファルト舗装材料のバインダー層の上に置くステップと、アスファルト材料の表面層をそのタックフィルムの上に置くステップとを含む。
【0008】
実施態様によっては、タックフィルムの製造方法は、第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材を用意すること;および樹脂性非アスファルト表面層材料あるいは約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料で、第1および第2主表面を覆うことを含む。
【0009】
添付図面は、本発明の好ましい実施態様、ならびに開示内容に関係した他の情報を示している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】1つの実施例によるアスファルト舗道の舗装し直した区間の部分側面横断面図である。
【図2】図1に示したタックフィルムの一実施態様の詳細横断面図である。
【図3】図2のタックフィルムを含んでいる一番目のタックフィルム−補強材複合材料の横断面図である。
【図4】図3に示したタックフィルム−補強材複合材料の変形形態の横断面図である。
【図5】図3に示したタックフィルム−補強材複合材料の別の変形形態の横断面図である。
【図6】図3〜5のいずれかのタックフィルム−補強材複合材料を含んでいるアスファルト舗道の補修区間の部分側面断面図である。
【図7】図3〜5のタックフィルム−補強材複合材料の1つの実施態様で使用される補強材料のストランドの横断面図である。
【図8】ストランドに樹脂を含浸させた後の図7のストランドの横断面図である。
【図9】図8のストランドを含んでいる補強用グリッドの平面図である。
【図10】図9に示すグリッドの交差部分の拡大詳細図である。
【図11】図2の材料のせん断性能を示す。
【図12】補強材の別の実施態様の横断面図である。
【図13】図12の実施態様の変形形態の横断面図である。
【図14】図12の製造物を製造するための装置の略図である。
【図15】図12または13の補強材で補修された舗装区間の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この例示的実施態様の説明は、記述されている説明全体の一部と見なされるべき添付図面と関連させながら読むことを意図している。説明の中で、「下側」、「上側」、「水平」、「垂直」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上部」および「底部」などの相対語、ならびにそれらの派生語(例えば、「水平に」、「下方に」、「上方に」など)は、その箇所で説明されている配向か、または説明中の図に示されている配向を指すと理解すべきである。これらの相対語は、説明の便宜上用いられているのであり、装置が特定の向きに構成されていたり、操作されたりする必要があるわけではない。連結、結合などに関連した用語(「接続された」および「相互接続された」など)は、特に明確に述べられていない限り、構造体が、直接または間接的に介在構造体を介して互いに固定または連結されている関係、ならびに可動連結(または関係)または固定連結(または関係)の両方を指す。
【0012】
以下の実施例では、アスファルト舗装用の粘着性タックフィルム、そのフィルムの製造方法、および舗装の第2層が舗装の第1層の上に置かれる舗道の形成方法について説明する。本明細書で使用される以下の用語の定義は、次のとおりである。
【0013】
周囲:圧力、温度、または相対湿度などの周囲の環境条件。
【0014】
ストランド:単位として使用される、撚られているかまたは撚られていない連続フィラメント束または集成体(スライバー、トウ、縦糸、糸などを含む)。1本の繊維またはフィラメントでもストランドと呼ぶことがある。
【0015】
樹脂性:荷重(stress)または温度にさらされた時に流動傾向を示す、固体または擬似固体の有機材料(普通は高分子量)に関するかまたは関連した用語。その熱可塑性形態では、普通、軟化点範囲または融点範囲を有する。ほとんどの樹脂はポリマーである。
【0016】
「舗装」、「道路」、「車道」、および「表面」という言葉は、本明細書では、空港、歩道、私設車道、駐車場および他のそのような舗装表面すべてを含む広い意味で使用されている。
【0017】
図1は、舗道区間150の例を示す。舗道150の保守および補修の際に、アスファルトバインダーコース135を既存の古い舗道130の上にオーバーレイするが、古い舗道はコンクリート、アスファルト、またはそれらが混ざったものであってよい。古い舗道130は、典型的にはロール(abrasive roll)(図示せず)によってテクスチャライズまたは粉砕されており、これによってバインダーコース135にとって密着性の良好な表面となっている。予め製造された樹脂性または樹脂含浸フィルム100がバインダーコース135の上に置かれ、表面コース140との結合を向上させる。これにより多層舗装構造における中間層結合が確実に行われる。このことは、表面コースに(例えば、自動車交通によって)生じる荷重分散(stress distribution)を減少させるのに望ましい。
【0018】
タックフィルム100は、第1および第2主表面を有する。タックフィルム100の第1および主表面のその材料は、非アスファルト樹脂である材料であるか、あるいは約50%以上の樹脂および約50%以下のアスファルト材料を含んでいる組成を有する材料である。好ましくは、タックフィルムの表面の材料は、25%以下のアスファルト材料であり、より好ましくは、タックフィルムの表面の材料は20%以下のアスファルト材料である。実施態様によっては、タックフィルム100はキャリヤー基材を含み、樹脂性非アスファルト材料がその第1および第2主表面にコーティングされているか、または約50%以上の樹脂性非アスファルト材料と約50%以下のアスファルト材料とを含む材料がその第1および第2主表面にコーティングされている。他の実施態様では、タックフィルム100全体は、樹脂性非アスファルト材料から本質的に構成されるか、または構成される。あるいはタックフィルム100全体は、主要成分または多量成分である樹脂性非アスファルト材料とゼロではない少量成分のアスファルト材料とを含んでいる材料から本質的に構成されるか、または構成される。
【0019】
実施態様によっては、タックフィルム100は、舗道層135と140との間の結合剤として使用されるアスファルト乳剤の代用品として用いるのに適している。タックフィルム100により、アスファルト道路建設における中間層結合が強化される。
【0020】
タックフィルム100は予め製造される製造物であるため、施工者(installer)がタック層の施工速度および厚さを制御できるようになる。吹き付けおよび硬化作業(アスファルト乳剤を使用した場合、現場で行われる)は、タックフィルム100を用いる場合、なくすことができる。タックフィルム100により、作業現場でのこうしたステップがなくなるため、道路建設がはかどる。タックフィルム100により、厚さとせん断と疲労の性能を、アスファルト乳剤で得られる性能と等しいかそれより優れたものにすることができる。
【0021】
図2は、タックフィルムの1番目の実施例であり、これは複合フィルム100であってよい。実施態様によっては、図1および2に示すように、薄いポリマーフィルム110は、基層135の上にかぶせられ、また複合タックフィルム100の樹脂(または約50%以上のポリマー樹脂と約50%以下のアスファルト材料とを含む材料)120を均一に分散させるためのキャリヤーの役目をする。樹脂120(または樹脂とアスファルト材料との組成物)は、コーティング工程を介して完全にキャリヤーフィルム110の両面を覆って複合タックフィルム100が形成される。コーティングの非粘着性の滑らかな表面特性により、建設現場での取り扱いが便利になる。
【0022】
複合タックフィルム100を製造するための例示的な方法を以下に示す。第1ステップは、樹脂性または樹脂を含浸させた薄いポリマーフィルムをキャリヤーフィルム110として置くことを含む。次いで薄いフィルム110にポリマー樹脂120(または樹脂とアスファルト材料との組成物)をコーティングするが、これは例えば、樹脂の中、または樹脂とアスファルト材料との組成物の中にそのフィルムを浸すことによって行う。その後、そのコーテッドフィルム100を乾燥させる。接着剤122(感圧接着剤など)は、コーテッドフィルムの背面側(敷設後の底部側)に塗布することができる。次いで接着剤122を乾燥させる。被覆(overlying)表面コース140の施工時に、接着剤122によってフィルムは所定の位置に保たれる。
【0023】
ポリマー樹脂(または樹脂とアスファルト材料との組成物)120は、熱膨張係数(CTE)がアスファルト140の熱膨張係数と似たものであってよい。好ましくは、ポリマー樹脂(または樹脂とアスファルト材料との組成物)は、アスファルト140および135よりも安定性が優れており、広い温度範囲でより堅い。複合タックフィルム100は、アスファルトをベースにしたフィルムよりもさらに粘性と弾性がある。乾燥させると、複合フィルム100は表面が滑らかであり非粘着性である。使用時に、表面コース140の加熱アスファルト混合物を複合タックフィルム100に施すと、ポリマー樹脂(または樹脂とアスファルト材料とのコーティング組成物)120が活性化されて結合力がもたらされ、また舗道層135と140との間の連結が複合タックフィルム100によって強化される。
【0024】
吹き付けアスファルト乳剤を道路建設で使用する場合、施工者は、最適な性能を得るために、アスファルト乳剤コーティングを適切な仕方で薄く均一にするようにしなければならなかった。本明細書に記載のタックフィルム100を使用すると、所定の厚さが得られる。コーティング120の厚さの均一性を制御できる。コーティング120の厚さを最適化して、アスファルト乳剤タックコーティングの最適な施工割合に等しい厚さにすることができる。
【0025】
タックフィルム100により、現場でのアスファルト乳剤の吹き付けおよび硬化のステップがなくなる。舗道建設プロジェクトの時間費用と労務費の両方を削減することができる。さらに、現場での硬化ステップがなくなるため、特定区域の舗道を完成させるのに必要な時間が、乳剤を吹き付ける場合よりもより予測可能になる。敷設時間を予測できないということをなくすことにより、敷設スケジュールからスラック時間をなくし、効率を高め、プロジェクト期間をさらに減らすことが可能になりうる。加えて、フィルムの厚さを最適化し、制御できるので、タックフィルムのむだを少なくすることができる。予め製造された大量生産の複合タックフィルムを用いることができるので、材料コストの削減を可能にする道が開かれる。
【0026】
実施態様によっては、タックフィルム100の背部に接着剤122を加えると、現場敷設がより確実に行われるようになる。好ましくは、敷設を容易にするために感圧接着剤122を使用する。
【0027】
実施態様によっては、キャリヤーフィルム110はポリエチレンフィルムを含むことができる。キャリヤーは、厚さが約0.5ミル〜約10ミルであってよく、より好ましくは、約0.5ミル〜約2ミルのキャリヤーを使用できる。例えば、フィルム110は、約0.5ミル(0.01mm)の低密度ポリエチレンフィルムであってよいが、約2ミル(0.05mm)の厚さのポリエチレン−ポリプロピレンコポリマーフィルムなど他の材料および厚さを使用できるであろう。ポリエチレンは安価な材料である。ポリエチレンは、一部の樹脂コーティング材料の乾燥温度で縮むことがあるが、好ましい樹脂はフィルム110を保護し、その結果として、フィルムは乾燥工程の間その形状を維持する。アスファルトと適合性のある他のポリマーフィルムを、キャリヤー層110に使用できる(例えば、PVC、ナイロン(ポリアミド)、ポリアクリレート、HDPE、およびある特定のポリプロピレンがあり、これらにより所望の剛性、適合性、および耐食性が付与される)。他の実施態様では、キャリヤー層は、2種以上のこうした材料からなる多層シートか、またはこうした材料の1種と別の適合性のある材料とを組み合わせたものからなる多層シートを含むことができる。
【0028】
フィルム110は打ち抜き穴があってよい。打ち抜き穴があると、フィルム110への樹脂120の含浸速度が増大する。樹脂(または樹脂とアスファルト材料とのコーティング組成物)120の網を、フィルム110の両面に形成することができる。表面層140の熱溶融したアスファルトからの熱は、フィルム110の下部を通じて下側の(バインダー)アスファルトコンクリート層135に伝わる。
【0029】
実施態様によっては、フィルム110に施された非アスファルト樹脂性コーティング(または樹脂とアスファルト材料とのコーティング組成物)120により、タックフィルム100は、周囲のアスファルト層135、140といっそう適合性のあるものになる。このことは、舗装の温度、圧力、またはその両方で樹脂が塑性流動するように、コーティング120の化学組成を注意深く調整することによって達成される。好ましくは、コーティング120の組成物は、ガラス転移温度が68〜77°F(20〜25℃)よりも高く、好ましくは約120〜140°F(50〜60℃)よりも上の温度で塑性流動が起こる。アスファルト舗装の温度、すなわち、約265〜320°F(130〜160℃)に達すると、非常に低い圧力の下であってもコーティング120の流動が可能になる。事実、建設での締固めによる舗装圧力および表面コース140の重量は、少なくとも非常に近接している表面の局所構造での幾らかの流動に影響を及ぼしうる。表面コース140の典型的な温度は、中間層タックフィルム100において、敷設時に約250〜320°F(121〜160℃)から始まり、最後には温度は約140〜150°F(60〜66℃)になる。これは、タックフィルム100およびフィルム110上のコーティング120を加熱するのに十分である。この熱により、コーティング120の流動が生じ、またフィルム110がゆるやかになって「引き延ばされ」、舗道150のバインダーコース135および表面コース140に対するタックフィルム100によるいっそう良好な機械的接着が促進される。
【0030】
コーティング120の化学的性質により、さらされている凝集体、アスファルトなどへのある程度の物理的結合および/または化学結合(ファンデルワールス力に起因するもの)が可能でありうる。物理的方法および化学的方法のどちらも、表面コースとバインダーコースとの間のせん断保持力を向上させ、せん断強さを向上させる。一般に、コーティング120が厚くなるほど、せん断性能はよくなり、各コーティング材料に固有の最大値まで向上する。
【0031】
別の好ましい実施態様では、アスファルト舗装コースの曲げモーメントを減少させる方法が提供される。その方法は、アスファルトバインダーコース135(好ましくは厚さが約0.75インチ(19mm)以上のもの)を既存の路面130に施し、その後で複合タックフィルム100をアスファルトバインダーコース135に施すことを含む。フィルム100は、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)または他の好適なポリマーのキャリヤー層110を含むことができる。樹脂性非アスファルトコーティング(または樹脂とアスファルト材料とのコーティング組成物)またはフィルム120は、複合層100のキャリヤーフィルム110の上に配置される。コーティングまたはフィルム(以下、まとめて「表面層」と呼ぶ)120は、舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されて(熱可塑性)、アスファルト舗装135、140との適合性のある結合を形成する。表面層120は熱可塑性樹脂を含むことができ、その樹脂は、舗装の温度、圧力、またはその両方で塑性流動するが、周囲の温度および圧力では粘着性がないものである。この方法は、厚さが約1.5インチ(40mm)以上であるアスファルト表面コース140を、複合タックフィルム100、アスファルトバインダーコース135および既存の路面130の上に施すことをさらに含む。表面コース140の圧力および熱により、熱可塑性樹脂120の塑性流動が引き起こされて、アスファルトバインダーコース135とアスファルト表面コース140との間の層間結合が向上する。層間結合は、粘着、溶融または化学(および/またはファンデルワールス)結合、あるいはそれらの組合わせでありうる。
【0032】
実施態様によっては、表面層120はアクリルコーティングである。実施態様によっては、表面層120は、ワックス剥離剤を約1〜8重量%、および可溶性ポリマー、アンモニア、増粘剤、カーボンブラック、脱泡剤、および可塑剤よりなる群から選択される添加剤を約0〜10重量%含んでいる、ポリ塩化ビニル(PVC)ラテックスエマルションコーティングを含んでもよい。1つの好ましいPVCラテックスエマルションは、Noveon,Inc.,Cleveland,OHから入手可能なVycar(登録商標)460x63ラテックス(ビニルエマルション)であり、これは、コーティング表面で約120〜140°F(49〜60℃)より高い舗装温度においてかなりの程度の塑性流動をもたらす。PVCラテックスポリマーとアスファルトとのもともとのレベルの化学的接着もあるであろう。
【0033】
実施態様によっては、コーティングは、40〜60%のVycar(登録商標)460x63ラテックスを含み、実施態様によっては、コーティングは少なくとも約40%のVycar(登録商標)460x63ラテックスおよび約20%までのアスファルト材料を含む。実施態様によっては、コーティングは45〜50%のVycar(登録商標)460x63ラテックスを含み、実施態様によっては、コーティングは少なくとも約45%Vycar(登録商標)460x63ラテックスおよび約5%までのアスファルト材料を含む。
【0034】
Vycar(登録商標)460x63は、単独の場合、特に寒い気候ではかなり堅いことが知られている。このため、コーテッドフィルム100を道路のカーブの周りに施すとき、敷設上の問題が生じうる。Vycar(登録商標)460x63はまた、他の候補となる樹脂性材料よりも、液体の水に対する耐性が小さい。その固形分がかなり少ないため、所望の含浸量を達成するのが難しいことがあり、いったん吸収されるとその構造物を十分に乾燥させるのが難しくなりうる。
【0035】
したがって、実施態様によっては、Vycar(登録商標)460x63を含んでいるコーティング120は、コーティングが柔らかくなり、その固形分が増大するように配合する。
【0036】
コーティング120中のポリマーは、より柔らかいモノマーから作ることもできる。撥水性の問題は、Hydrocer 145などのワックス添加剤を、ドライコーティングの約3〜5重量%の量だけ含有させることによって解決することができる。このワックス剥離剤には、コーティングをわずかに柔らかくする傾向もある。コーティングの固形分を向上させて約50〜60重量%、理想的には約55重量%以上にすることができる。PVCラテックスにこうした改良を行うことに加えて、ドライコーティングの約5〜9重量%の量のCarboset 514Wなどの可溶性ポリマーを添加すると、パッドロールのコーティングにおいて開放時間を増やし、再湿潤性(re−wetability)を高めることができる。Michemprimeポリマーなどの他の水溶性ポリマーを使用してもよい。
【0037】
可溶性ポリマーを活性化させるために、アンモニアを加えてpHを約8または9にすることができる。アンモニアを用いて、組成物中に使用される任意のアルカリ可溶性増粘剤を活性化させることもできる。そのような増粘剤としては、一般に入手可能なものを挙げることができ、それらは好ましくは、含浸量の目標を達成できない場合に使用する。Rohm and Haas,Philadelphia,PAのASE−60または6038Aが、この用途に役立つであろう。
【0038】
約1重量%の量の着色剤(カーボンブラックなど)、および約0.05重量%のレベルまでの脱泡剤(NXZまたはDEFOなど)は、この用途に役立つ。
【0039】
最後の点として、所望の柔軟性をコーティングで得るために可塑剤を使用できる。ADMEX 314が望ましいが、それは、これが不揮発性ポリマー可塑剤であり、環境上の危険も健康上の危険も引き起こさず、約2〜5重量%のレベルでコーティングの柔軟性にかなりの相違をもたらすからである。
【0040】
舗装の温度、圧力、またはその両方で塑性流動するものであれば、多数の別の種類の樹脂を表面層120に使用してよい。主な実例には、PVC、ナイロン、アクリル、HDPE、およびある特定のポリエチレンおよびポリプロピレン、ならびにエチレン酢酸ビニル(EVA)があり、これらは所望の剛性、適合性、および耐食性をもたらす。これらは、熱溶融、エマルション、溶剤、熱硬化または放射線硬化の系を用いて施すことができる。実施態様によっては、タックフィルム100は多層フィルムを含む。例えば、キャリヤー層110は、表面層コーティング120がその上に施された多層フィルムであってよい。他の実施態様では、タックフィルム100全体が共押出しされるものであり、表面層120はキャリヤー層110と一緒に共押出しされる樹脂フィルムである。表面層120の材料は、キャリヤー層110の材料と同じであってよいか、キャリヤー層110と同じ主要構成成分を含んでもよいか、あるいはキャリヤー層110とは異なる主要構成成分を含んでもよい。
【0041】
こうした代替樹脂材料のいずれかを表面層120に使用する場合、粘着防止剤(例えば、ワックス、合成ポリマー、タルカムパウダーの軽い散布)を表面層120に含めて、タックフィルム100がスパイラルロール形態での貯蔵時にそれ自体にくっついたり、その後の巻き出し時にグリッド10から引き離されたりするのを防ぐことができる。キャリヤー層110の片面または両面の表面層120にスリップ剤を含めてもよい。
【0042】
上記の組成物は、アスファルト表面コース140およびバインダーコース135と極めて適合性がある。そられにより、アスファルトコンクリート中の埋め込みタックフィルム100への強力な結合が可能である。舗装の層間の堅固な接着により、交通による表面層への荷重分散が効果的に減少する。そのような解決策は、界面結合の不足によって起こるかまたは生じやすくなるずれ、クラッキングおよび層間剥離(早期荷重(premature stresses)と呼ばれる)を防ぐことができる。
【0043】
表面層120の熱膨張係数は、アスファルト混合物の熱膨張係数と近似している。表面層120では、複合材アスファルトコンクリートのばらばらの熱的挙動によるフィルム100の境界面における望ましくない剥離(disengagement)が多分避けられる。境界面状態が向上するため、顕著な道路荷重に対する、オーバーレイされた表面アスファルト層140の耐用年数は長くなる。
【0044】
キャリヤーフィルム110が第1材料(例えば、ポリエチレンなどのポリマー)を含み、そのフィルム110が第2材料120(例えば、上述のように添加剤を加えたVycar(登録商標)460x63)でコーティングされている例について、上に説明した。しかし、フィルム110が、コーティング材料120(例えば、添加剤を含んだVycar(登録商標)460x63)用として上述した非アスファルト樹脂性材料から本質的に構成される(または構成される)、他の実施態様も企図される。そのような実施態様では、コーティング材料120の別個の層を省くことができる。したがって、タックフィルム層は、複合フィルム100または均一樹脂性フィルムにすることができる。複合フィルムまたは均一フィルムのどちらを使用するかの選択、およびキャリヤーフィルム110の材料の選択は、各材料の材料コスト、製造の容易さ、および商業的入手性によって異なりうるものであり、それは任意の所与の時間で当業者が容易に判断することができる。
【0045】
含浸させて樹脂性コーティングで被覆するか、または樹脂性フィルム120と一緒に共押出しする場合、フィルム100は好ましくは半硬質であり、これは予め製造された連続構成部品として敷設場所へ容易に輸送するために、芯に巻き付けることができる。敷設場所で、それは、迅速に、また経済的かつ簡単に車道へ合体させるため、容易かつ連続的に巻き出すことができる。例えば、フィルム100は、100メートル以上の長さの一体物を含む幅15フィート(4.5メートル)のロール状にすることができる。あるいはまた、バインダーコース135は、典型的には、それぞれが約5フィート(1.5メートル)の幅の幾つかのフィルム100の細いストリップで覆ってもよい。したがって、バインダーコース135の全面または実質的に全面に、このフィルム100を用いることは実際的であり、それは労働力が削減されるため、低コストになる。
【0046】
舗装現場では、接着剤122が下側に向いた状態のフィルム100を巻き出して下にある舗装135上に敷設するが、その舗装は、フィルム100を施す際に好ましくは約40〜140°F(4.4〜60℃)である。
【0047】
タックフィルム100を巻き出して、下敷き層(つまり、アスファルトバインダーコース135)に付着させる。タックフィルムは、好ましくは厚さが約0.75インチ(19mm)以上である。実施態様によっては、任意のオーバーレイまたはアスファルト表面コース140をフィルム100の上に置く前に、フィルム100の製造時に接着剤122(例えば、感圧接着剤)を施すなどして、フィルム100を十分に安定させることができる。その結果、フィルム100は、その上を歩く作業員の活動、その上を動き回る建設車両、そして特に、その上にある舗装機械の移動に耐えることになる。
【0048】
フィルム100は、半硬質であるが、平らになる傾向がある。巻き出された後に、丸まった状態に戻る傾向はほとんどない。これは、バインダーおよび/または表面層樹脂の適切な選択によるものと考えられる。
【0049】
実施態様によっては、図1〜2に示すように、再舗装された舗道は、再舗装対象の舗道130、基層135、複合タックフィルム100、および表面層140を含み、別個の補強層は含まない。
【0050】
他の実施態様では、タックフィルム100がバインダー層135の上に施され、別個の補強層がタックフィルム100の上に施され、さらに表面層140が補強層の上に施される。例えば、補強層は、Saint Gobain Technical Fabricsから市販されているGlasGrid(登録商標)製品(例えば、8550、8501、8502、8511または8512グリッド)であってよい。
【0051】
他の実施態様では、図3〜6に示されるように、タックフィルム100は、一体式(unitary)複合補強中間層200、300、または400に含まれる。一体式複合材料200、300または400は、タックフィルム層100および補強層10を含む。
【0052】
実施態様によっては、複合補強中間層は、補強層10の上に複合層または樹脂性タックフィルム層100を含んでいる複合材200(図3)である。タックフィルム層100は接着剤12によって補強層10に結合され、接着剤はホットメルト接着剤であってよい。ホットメルト接着剤は、感圧接着剤または永久(permanent)接着剤であってよい。補強材10の(タックフィルム層100とは反対の側を向いている)底部表面は、感圧接着剤などの接着剤11を有する。これにより、複合材200は、表面コースが施されている間所定の位置に保たれる。図3の構成では、ホットメルト接着剤層12によってタックフィルム層100が下にある補強層10と結合するので、タックフィルム層100はそれ自体の接着剤層122を必要としない。また、表面コース140はフィルム層100の上部と接触し、フィルム100の上側表面に接着剤層122を必要としない。接着剤層122は、図3の複合材200に使用されるタックフィルム100から省略することができる。
【0053】
実施態様によっては、複合補強中間層は、複合層または樹脂性タックフィルム層100の上に補強層10を含む複合材300(図4)である。タックフィルム層100は接着剤12によって補強層10に結合され、接着剤はホットメルト接着剤であってよい。表面コース140が施されている間、複合材300が確実に所定の位置にあるようにするため、複合材300中のタックフィルム100は、図2に示すようにその底部表面(それは(レベリングコース(leveling course)135と接触する)に接着剤122を含む。
【0054】
実施態様によっては、複合補強中間層は、1対の複合層または樹脂性タックフィルム層100の間に挟まれた補強層10を含む複合材400(図5)である。以下の説明のそれぞれにおいて、タックフィルム100は、キャリヤー層110および表面層120を有する複合材であるか、または表面層120のコーティングに用いるのに適した材料の均一フィルム(ここで、均一フィルムは、その中に別個のキャリヤー層110を有していない)のいずれかであってよいことが理解されるであろう。複合材400では、タックフィルム層100は接着剤12(ホットメルト接着剤であってよい)によって補強層10に結合される。表面コース140が施されている間、複合材400が所定の位置に留まるようにするために、複合材400中の(レベリングコース135と接触する)底部タックフィルム100は、図2に示すようにその底部表面に接着剤122を含んでいる。(表面コース140と接触する)上部タックフィルム層100は、その表面上に接着剤122がなくてもよい。接着剤122は、上部タックフィルム層100から省くことができる。
【0055】
補強層10は、任意のさまざまな補強材であってよい。実施態様によっては、少なくとも2セットの実質的に平行なストランド21(図7および8の断面図に示す)を含むオープングリッド(図9および10に示す)を、補強層10として用意する。各セットのストランド21は隣接ストランド21間に開口部19(図9)を含み、セットは互いに対して大きな角度(例えば、任意選択でおよそ90度)で配向されている。実施態様によっては、補強層は、Saint Gobain Technical FabricsのGlasGrid(登録商標)製品(例えば、8550、8501、8502、8511または8512グリッド)であってよい。
【0056】
実施態様によっては、グリッド10は、好ましくは、図9に示すように、ストランド21が互いに対して約90°に配向されている、横糸の入った縦編みを含む。開口部は、好ましくは大きさが約0.5インチ×0.5インチ(12mm×12mm)以上であるが、開口部はおよそ1インチ×1インチもの大きさであってもよい。開口部19は正方形にすることができるが、長方形の場合のように「a」および「b」の大きさは異なっていてもよい。
【0057】
実施態様によっては、非アスファルトコーティング22は、図8において最も良くわかるように、ストランド21間の開口部をふさぐことなくグリッド10の上に配置される。コーティング22は、舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されて、アスファルト舗装との適合性のある結合を形成する。コーティング22は、周囲の温度および圧力では粘着性がないので、作業現場で容易に取り扱うことができる。実施態様によっては、ストランド21上のコーティング22は、複合タックフィルム100中のポリマーフィルム110に施されるコーティング120と同じ材料である。
【0058】
図9に示す大きなグリッド開口部19により、アスファルト混合物135および/または140が、糸20またはロービングの各ストランド21を完全に封じ込めることができることになり、またタック層100とバインダーコース135および表面コース140の両方との間の完全かつ相当の接触が可能となる。タック層100は、グリッド10の開口部19を介して層135および140と実質的に結合して、舗道135、140からの荷重を補強層10のガラス繊維または類似の繊維に実質的に伝えることができる。その結果得られる複合グリッド材は、モジュラスが高くかつ強度対コスト比が大きく、その膨張係数が道路建設材料の膨張係数に近似しており、さらにこれは道路建設に使用されまた道路環境にある物質(道路用塩など)による腐食に対して抵抗性がある。
【0059】
グリッド10は、連続フィラメントガラス繊維のストランドまたは糸21で形成されていてよいが、Kevlar(登録商標)と呼ばれるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)のポリアミド系繊維などの他の高モジュラス繊維を使用してもよい。2000テックスのECRまたはEガラスロービングが好ましいが、約300〜約5000テックスの範囲の重さを使用してもよいであろう。好ましいガラス繊維糸は、ASTM D6637に従って測定したときに約560ポンド/インチ(100kN/m)以上のストランド強度を有し、破断点伸びが5%以下のものである。こうしたストランドは、好ましくは、質量/単位面積が約22oz/yd2(740g/m2)未満、より好ましくは約11oz/yd2(370g/m2)未満である。
【0060】
こうしたストランドは、好ましくは低撚り(すなわち、約1回撚り/インチ以下)であり、好ましくはサイズが1辺(図9の寸法「a」、「b」、またはその両方)当たり3/4インチ〜1インチの範囲である長方形または正方形の開口部19を有するグリッドに形成されるが、1辺(「a」、「b」、またはその両方)当たり1/8インチ〜6インチの範囲のグリッド開口部19を使用してもよい。
【0061】
グリッド10は、好ましくは糸25で結び合わせられているか(図10に示す)、またはそうでない場合は横および縦のストランドの交差部分で固定接続されている。この接続により、グリッド10はそのグリッドパターンが保持され、非アスファルトのコーティング22を含浸させる前およびその間にストランド21が過度に離ればなれにならないようにされ、開口部19が維持される。これによって、下にある層に上敷きが結合することが可能になり、それによって最終的な複合車道補修100の強度が増大する。
【0062】
グリッド10の交差部分の固定接続もグリッド10の強度に寄与する。これは、それらにより、1セットのストランド21に平行な力が部分的に他のセットの平行ストランド21に伝達できるようにされるからである。同時に、このオープングリッド構造体により、平方ヤード当たりのガラスの少ないものを使用できるようになり、それゆえに、それは、例えば目の詰まった織物よりもいっそう経済的な製造物である。平方ヤード当たり約8オンスのグリッド10を使用するのが好ましいが、平方ヤード当たり4〜24オンスのものを使用してもよい。
【0063】
70〜150デニールのポリエステル糸25(または同等物)を用いて、縦編および横糸挿入織物機械(warp−knit,weft−insertion knitting equipment)でグリッド交差部分を結び合わせるのが好ましいが、固定接続された交差部分を有するグリッドを形成する他の方法を利用してもよい。例えば、熱硬化性または熱可塑性接着剤を用いて作られた不織グリッドは、好適な強さをもたらしうる。
【0064】
グリッド10が形成されたなら、それをタックフィルム100に接合する前に、樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂22を施す。すなわち、グリッド10に樹脂22を「事前含浸」させる。
【0065】
樹脂性コーティング22の粘度は、コーティングがグリッド10のストランド21に浸透するように選ぶ。樹脂性コーティング22はガラス繊維ストランド21中のすべてのフィラメント20を取り囲みうるわけではないが、樹脂性コーティング22は、図8に示すように、一般にはストランド21の内部の端から端まで均一に広がる。この含浸により、好ましい半硬質性がストランド21に付与され、車道環境にある水、塩、油および他の要素による腐食からストランド21およびガラスフィラメント20は守られ、保護される。また含浸により、ガラスストランド21またはフィラメント20間の摩損が減少し、またあるガラスストランド21またはフィラメント20が別のものによって切断されることが少なくなる。また含浸により、グリッドが敷かれた後(但し、上敷き140が施される前)に、ガラス繊維が互いを切断する傾向が減少させられる。
【0066】
グリッドは、各セットの平行ストランドの方向における最小強度が好ましくは約25kN/メートル(kN/m)、より好ましくは約50kN/m、もっとも好ましくは約100kN/m以上であり、破断点伸びが好ましくは約10%未満、より好ましくは5%未満であるべきである。
【0067】
グリッド10上の好ましい樹脂性コーティング22を乾燥または硬化させている間に、ストランド21はいくらか平らになり得るが、開口部19は維持される。例えば、2000テックスのロービングを用いた好ましい実施態様では、約3/4インチ×1インチ(a=b=0.75インチ)の開口部19を有する長方形グリッド10を形成することができる。ロービングは、幅が約1/16インチ(1.6mm)〜1/8インチ(3.2mm)となるように平らにされる。コーティングおよび乾燥後のロービングの太さは、約1/32インチ(0.8mm)以下にすることができる。好ましいガラス繊維ストランドのグリッドは、Saint−Gobain Technical Fabricsから入手可能なコーティングされていないGlasGrid(登録商標)製品(例えば、8550、8501、8502、8511または8512グリッド)である。
【0068】
グリッド10の含浸には多種類の樹脂を使用できるが、但し、舗装の温度、圧力、またはその両方で塑性流動することが条件である。主な実例には、PVC、ナイロン、アクリル、HDPE、ならびにある特定のポリエチレンおよびポリプロピレンがあり、これらは所望の剛性、適合性、および耐食性をもたらす。それらは、熱溶融、エマルション、溶剤、熱硬化または放射線硬化の系を用いて(例えば、PVCエマルションを含んでいるVycar(登録商標)460×63などのコーティング)施すことができる。PVCエマルションは、ワックス剥離剤を約1〜8重量%、および可溶性ポリマー、アンモニア、増粘剤、カーボンブラック、脱泡剤、および可塑剤よりなる群から選択される1種または複数種の他の添加剤を約0〜10重量%含んでもよい。複合ポリマーフィルム100のコーティング120として使用するのに適した材料(上述のいずれかの材料など)はどれでも、グリッド10のコーティング22として使用してよい。他の実施態様では、コーティング120および22は異なる材料であり、その場合、それぞれのコーティング120、22はアスファルトと適合性があり、熱および/または圧力によって活性化可能である。
【0069】
コーティング120および22は、圧力、熱、または他の手段によって活性化可能である。圧力で活性化可能な樹脂は、それによってコーティングされた表面が別の未処理表面と接触させられて、圧力が加えられた時に、結合を形成する。熱活性化可能な樹脂は、それによってコーティングされた表面が未処理表面と接触させられて、熱が加えられた時に、結合を形成する。周囲の温度(例えば、約72°F)および圧力(例えば、約1気圧)で粘着性がある他の接着剤と比べて、コーティング120および22は、好ましくは周囲の温度または圧力では粘着性がなく、ほぼ舗装の圧力または温度でのみ粘着性がでてくる。
【0070】
使用する場合には大抵、コーティング120および22は、コーティング温度が約120〜140°F(49〜60℃)に達するまで、または厚さが約1〜1.5インチ(25〜38mm)以上の舗装コースが施されるまで、あるいはその両方が行われるまで、塑性流動も付着もしない。Eガラス繊維の融点は、約1800〜1832°F(約1000℃)である。これにより、舗装作業の過度の熱にさらされたときでも安定性が確保される。
【0071】
表面コース140とバインダーコース135との間のせん断強さはできるだけ大きく、またせん断強さはグリッド10がさらされるであろう極めて広い温度範囲全体でかなりあることが望ましい。タックフィルム−グリッド複合材200、300または400は、わずか約40°Fという周囲温度で舗装の下敷き上に敷設することができ、アスファルトコンクリートは、約250〜320°F(121〜160℃)、一般には約300°F(149℃)の温度で施すことができ、これによりコーティング22の温度は約150°F(66℃)に上昇する。それゆえに我々は、コーティング120および22は、融点またはガラス転移温度(Tg)が約66〜77°F(20〜25℃)以上であり、好ましくは舗装によって加わる典型的な圧力のもとで約120〜140°F(50〜60℃)より上で塑性流動するのがよいと考える。
【0072】
約265〜300°F(130〜150℃)の温度に達したなら、非常に低い圧力(非常に薄いアスファルト層が施された場合など)であっても、流動が可能である。これにより、コーティング120および22の塑性流動が可能になり、グリッド10の中および周りにおいて表面コース140とバインダーコース135との間のせん断強さが向上するであろう。
【0073】
コーティング120および22の粘度は、グリッド上に流れるのに十分な流動性があるべきであるが、好ましくは、施す時または貯蔵時にグリッドからまたはグリッドを通過して流れず、むしろグリッド上に留まるような十分の粘性がある。
【実施例】
【0074】
実施例1
以下の表1に記載されているコーティング22を調製し、コーティングが施されていないSaint Gobain Technical FabricsのGlasGrid(登録商標)製品(8501または8511グリッド)に施した。
【0075】
コーティング120および22に有用な好ましい樹脂系としては、フィラメント20間の空間の一部または全部に含浸させるために、液体であるものまたは液化することのできるものがある。樹脂系は、舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されて、アスファルト舗装との適合性のある結合を形成するべきである。そのような系として、熱硬化性樹脂(Bステージエポキシ(B−stage epoxy)樹脂、シリコーン樹脂、またはフェノール樹脂など);または熱可塑性樹脂(ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンまたはポリ塩化ビニルなど)を挙げることができる。添加剤を含むかどうかにかかわらず、樹脂と溶剤の混合物または未希釈(neat)樹脂を含むプラスチゾルは、有用な代替物である。望ましいポリ塩化ビニルラテックスエマルション系の好ましい成分および範囲を以下の表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
樹脂性非アスファルトコーティング22による含浸およびコーティングを行う場合(図8)、タックフィルム−グリッド複合材200、300または400(図3〜5)は、好ましくは半硬質であり、これは予め製造された連続構成部品として敷設場所へ容易に輸送するために、芯に巻き付けることができる。敷設場所で、それは、迅速に、また経済的かつ簡単に車道へ合体させるため、容易かつ連続的に巻き出すことができる。例えば、これは、100ヤード以上の一体物を含む幅5フィート(1.5メートル)のロール状にすることができる。タックフィルム−グリッド複合材200、300または400の敷設手順は、別個のタックフィルム100に関連して上述したのと同じ手順であってよい。それゆえに、このタックフィルム−グリッド複合材200、300または400を、すべての、または実質的にすべての舗道表面に用いるのが実際的である。これは、局在クラック231(図6)(伸縮目地など)を補強するために使用することもできる。
【0078】
グリッド10は、半硬質であるが、平らになる傾向がある。それらは、巻き出された後に、丸まった状態に戻る傾向がほとんどない。これは、バインダーおよび/またはコーティング樹脂の適切な選択、およびグリッド10にマルチフィラメント補強ストランド(好ましくはガラス)を使用していることが理由と考えられる。
【0079】
図9に示す大きなグリッド開口部19により、アスファルト混合物は糸21またはロービングの各ストランド20を完全に封じ込めることができ、複合材200、300、400とバインダーコース135および表面コース140との間の完全かつ相当の接触が可能になる。表面コース140は、好ましくは、厚さが約1.5インチ(40mm)以上で配置される。その結果得られる複合材200、300、400は、モジュラスが高くかつ強度対コスト比が大きく、その膨張係数が道路建設材料の膨張係数に近似しており、さらにこれは道路建設に使用されまた道路環境にある物質(道路用塩など)による腐食に対して抵抗性がある。
【0080】
上記のことから、粘着性タックフィルムは、単独で、またはオープングリッドおよび樹脂性コーティング(舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されてアスファルト舗装との適合性のある結合を形成する)と組み合わせて、アスファルト舗装の補強材に使用できることが理解できる。
【0081】
実施例2
ポリマー樹脂コーテッドフィルムの調製
ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)がブレンドされた、厚さが12.7マイクロメートルの薄いフィルムを調製した。フィルムに孔をあけて、直径0.5ミリメートルの開口部が25.4ミリメートルごとの間隔で存在するようにした。これは、表面層の施工における加熱アスファルト混合物から下側のアスファルト層への熱伝達を容易にし、フィルムをアスファルト舗道層に付着させるためである。塊状重合された(塩化ビニル)PVCアクリル系共重合体のエマルション中に、フィルムを21℃で浸し、コーティングされたフィルムを熱対流炉において100℃で2分間乾燥させ、フィルム上のコーティングの残留率(residual rate)は123g/m2になった。
【0082】
フィルムは、好ましくは、アスファルト系に強く接着するポリマー樹脂を担持させるための合成材料である。使用できる薄いフィルの実例として以下のものがあるが、これらに限定されない。
ポリエチレン
ポリプロピレン
ポリエチレンとポリプロピレンのコポリマー
ポリエステル
ポリ塩化ビニル
ガラス繊維マット
熱可塑性ポリオレフィン
エチレン酢酸ビニル
【0083】
非アスファルト樹脂を調製するのに使用できる好ましいポリマーの中には、アクリル系共重合体、すなわち、アクリル系共重合体およびポリ塩化ビニル−アクリル系共重合体(polyvinylchloride acrylic copolymer)がある。
【0084】
表2は、PVCアクリル系共重合体コーティングが123g/m2の割合で施された種々の基材材料のさまざまなフィルムについての機械試験データを示す。試験された基材材料には、PEおよびPPのブレンドフィルム(試料1);ポリエステルのフィルム(試料2);熱可塑性ポリオレフィンのフィルム(試料3)およびガラス繊維のマット(試料4)が含まれていた。
【0085】
【表2】
【0086】
敷設を容易にするために、グリッド10または複合材製造物200の作製時に、感圧接着剤11をグリッド10の底部に施すことができる。ここで、グリッド10は敷設時に複合材200の底部層である。接着剤11は、プレコーテッドフィルム(pre−coated film)100をグリッド10に付着させるために用いるホットメルト接着剤12とは異なる種類のものであってよい。存在する場合、感圧接着剤11は、複合材200のポリマー樹脂コーテッドフィルム100の表面に圧力を加えることによって活性化される。感圧接着剤11を用いる場合、フィルムを巻き出すために相当の力が必要でありうるので、牽引器または他の機械的手段を使用できる。接着剤11は好ましくは合成材料であり、ラテックス系、溶剤系、または熱溶融系を用いるなど、任意の好適な仕方でプレコーテッドフィルムに施すことができる。好ましいラテックス系では、接着剤11を水中に分散させ、グラビア印刷ロールを用いてフィルム上に印刷し、乾燥させる。溶剤系では、接着剤を適切な溶剤に溶かし、フィルムへの印刷後に、溶剤を蒸発させる。熱溶融系では、接着剤を貯蔵器内で溶融させ、ロールに塗布し、注意深く制御されたナイフエッジでロール上に調節しながら供給して、ロール上に液体接着剤の均一なフィルムが形成されるようにする。次いでグリッド10をロールと接触させ、接着剤をグリッド10の底部に移す。こうした塗布方法は単なる例示的なものであり、ラテックス系、溶剤系、または熱溶融系を用いて接着剤を塗布するための他の方法を当業者は容易に選択することができる。
【0087】
実施例3
図11は、コーティング120および/またはコーティング22に使用される組成物に対して実施された一連の試験のデータをプロットしたものである。そのデータを用いて、非樹脂性コーティングのせん断性能と比較してせん断性能を実質的に低下させることなく、コーティング120に使用する非アスファルト樹脂性材料と一緒にどのくらいの割合のアスファルト乳剤をブレンドできるかを求めた。
【0088】
アスファルト乳剤は、表1に記載したポリマー樹脂とブレンドした(乾燥重量の百分率に対する相対量)。ブレンド樹脂は、6種類の異なる樹脂/アスファルト比(ポリマー対アスファルト。100%樹脂、75:25、50:50、25:75、10:90、0:100)で調製した。
【0089】
コーティングされていないeガラスグリッド構造物(「生機」と呼ばれる)を、手作業で樹脂または樹脂/アスファルト混合物中に浸し、完全に含浸させてから、乾燥させた。手作業でコーティングした構造物を1対のアスファルトパック(直径4インチの円柱形試料)の間に置いた。ASTM D6926−04に従って、75ブロー標準Marshall圧縮機(75−blow standard Marshall compactor)を用いて146℃においてアスファルト混合物で各パックを作った。直接せん断試験法によってせん断性能を実施した。
【0090】
図11に示すように、せん断強さは、純粋のアスファルトコーティングの1kNから100%非アスファルト樹脂の3.68kNまで変化している。データ点を当てはめた曲線から、約30%樹脂でのせん断強さは、アスファルト乳剤単独のせん断強さの約2倍である。約50%の樹脂では、せん断強さは、アスファルト乳剤のせん断強さの約2.4倍である。約75%の樹脂では、せん断強さは、アスファルト乳剤のせん断強さの約3.5倍である。約80%樹脂での約3.5kNというせん断強さは、100%ポリマー樹脂のせん断強さ(約3.7kN)に近い大きさである。したがって、約75%〜約80%の樹脂の混合物は、経済性が向上するとともに、100%樹脂コーティングのほぼ限度いっぱいの強さとなる。
【0091】
したがって、ブレンドされたコーティングを用いる場合、タックフィルム100の表面層120に用いる材料は、好ましくは、アスファルト乳剤とのブレンド中に50%以上の非アスファルトポリマー樹脂を含む。
【0092】
図12〜14は別の実施態様を示す。図12は、第1および第2不織ポリマー基材501、不織ポリマー基材501間に挟まれた補強用繊維の層510、および補強用繊維の層を不織基材に接合する接着剤512を含む、製造物500を示す。メッシュまたはスクリム510は、基材501に接着されて、任意のさまざまな幅および/または長さのロール状にされている。
【0093】
実施態様によっては、基材501は、ポリエステル不織フェルトウェブを含むことができる。ポリエステル不織基材はそれぞれ、名目上は重量が17.0g/m2または0.5oz/yd2である。それぞれの厚さは0.14mmまたは0.0056インチである。これらのポリエステル不織布は、Shalag Shamir Non−wovens(Upper Galilee,Israel)から市販されている。他の実施態様では、基材501はポリエチレン不織フェルトであってよいが、ポリエチレン−ポリプロピレンコポリマーなどの他の材料を用いることもできるであろう。アスファルトとの適合性のある他のポリマーを、基材501に使用できる(例えば、PVC、ナイロン(ポリアミド)、ポリアクリレート、HDPE、およびある特定のポリプロピレンがあり、これらは所望の剛性、適合性、および耐食性を付与する)。他の実施態様では、基材501は、2種類以上のこうした材料からできた多層シート、またはこうした材料と別の適合性のある材料を組み合わせたものからできた多層シートを含むことができる。
【0094】
補強用繊維の層510としては、ガラス繊維メッシュまたはスクリム(実質的に縦方向に配向されている少なくとも第1セットの糸を含む)がある。糸は、ECRまたはEガラスフィラメントを含んでもよい。他の実施態様では、「KEVLAR(登録商標)」と呼ばれるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)のポリアミド系繊維などの他の高モジュラス繊維を使用してよい。
【0095】
接着剤512は、舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されて、アスファルト舗装との適合性のある結合を形成することができる。好ましくは、接着剤512は、50〜99重量%のPVCラテックスエマルションを含む。実施態様によっては、接着剤512は、上述した表1中のPVCラテックスエマルションである。
【0096】
ここで図12に関して言えば、実施態様によっては、製造物は、補強用繊維被覆糸(例えば、ガラス繊維)のメッシュまたはスクリム510と2つのポリエステル不織布基材501とを含む。ガラス繊維のメッシュまたはスクリム510は、「タービン技術」によって形成される。タービン技術は、横方向糸を備えた回転タービンヘッド(rotating turbine head)を使用すること、および機械的スパイラル機構を利用して糸の横方向のスペースを制御することを含む。次いでガラス繊維スクリム510にバインダーを含浸させてコーティングする。多数の樹脂をバインダーに使用できるが、それは樹脂が舗装の温度、圧力、またはその両方で塑性流動する場合である。実施態様によっては、バインダーは、上述した表1中のPVCラテックスエマルションである。他の実施態様では、バインダーは、所望の剛性、適合性、および耐食性を示す、アクリル、PVC、ナイロン、HDPE、ならびにある特定のポリエチレンおよびポリプロピレンであってよい。これらは、熱溶融、エマルション、溶剤、熱硬化または放射線硬化の系を用いて施すことができる。糸をバインダーでコーティングした直後に、接着剤512を用いて、スクリム510を2つのポリエステル基材501に積層する。
【0097】
実施態様によっては、接着剤512およびバインダーは両方とも上述した表1中の同じPVCラテックスエマルションであり、1つの施工ステップで、糸にバインダー/接着剤を含浸させかつ積層ステップ用に接着剤512を糸にコーティングする。他の実施態様では、糸510にバインダーを含浸させるステップとは別に、接着剤512を施すことができる。例えば、バインダーおよび接着剤512が互いに異なる材料である場合には、接着剤を施すステップは別に行われるであろう。
【0098】
メッシュまたはスクリム510にコーティングを行った後、製造物500を(例えば、機械の乾燥セクションで)硬化させ、巻いて完成ロールにする。その結果として、上部層501と底部層501(ポリエステル不織基材)との間に挟まれたガラス繊維スクリム510を有する3層製造物500が得られる。
【0099】
図14は、図12の製造物を作るための装置の一例を示す。上部および底部の基材501(ポリエステル不織材料であってよい)を、ロール552から供給する。基材501の方向は、供給ローラ558で制御することができる。ガラス繊維スクリム510は、別のローラ558で供給し、コーティング512を含んでいる容器を通過させる(これにより、スクリム510がコーティングされる)。コーティングされたスクリム510がコーティング容器から現れ、1つまたは複数のローラ560、561によって向きを変えられる。その後、上部不織層501およびコーティングされたスクリム510は第1積層ロール554の下を通過する一方、第2積層ロール556とローラ561との間で張力を維持して、スクリムを上部不織層501に接合する。次いで、上部不織層501(スクリム510が積層されている)が供給されて、別の積層ローラ556を通るようにされ、それによって底部不織基材501がスクリム510の底部に接合されて製造物500が形成される。次いで積層製造物500を乾燥炉(図示せず)に供給する。
【0100】
他の実施態様(例えば、図13)では、ガラス繊維スクリムは、縦方向に伸びている第1セットの糸510mおよび実質的に横方向に配向されている第2セットの糸510cを含む。実施態様によっては、スクリム510c、510mは、縦方向および横方向の両方に1インチ当たり3本の糸(1センチメートル当たり約1本の糸)を含む。1インチ当たり3本の糸を有する製造物は、交通量の少ない区域の舗道に用いるのに適している。1インチ当たりの糸の数がもっと多いものは、中程度の交通量の区域用としていっそう強い補強材を提供するのに使用できる。
【0101】
製造物500(図12)の場合と同じ機械を使用し、その方法に幾つかの変更を加えて、製造物600(図13)を作ることができる。横方向の糸510cを縦方向の繊維510mの上部に置き、縦方向に対して実質的に垂直になるようにする。ポリエステルの上部層501tは上部から供給するが、スクリム510m、510cと一緒にコーティングパン(coating pan)およびコーティングロール(図示せず)を通過するようにする。これは、最終製造物600における糸の間隔を(上部層501tとスクリム510mとの間のスクリム510cによって)維持するために行う。バインダー/接着剤512をスクリムに施した直後に(それがコーティングロールをちょうど離れるときに)、ポリエステルの底部層501bを上述と同じようにして施す。
【0102】
図15は、製造物500(図12)または600(図13)を用いた舗道構成550を示す。舗道550の保守および補修の際には、クラック231が含まれる既存の古い舗道230の上部にアスファルトバインダーコース235をオーバーレイする。古い舗道230は、典型的にはロール(図示せず)によってテクスチャライズまたは粉砕されており、これによってバインダーコース235用の密着性の良好な表面となっている。(あるいはまた、製造物500および600は、新しいアスファルト/ポルトランドセメントのコンクリートの舗道表面にかぶせることができる)。
【0103】
ビチューメンタックコート(bitumen tack coat)を、例えば、ホットスプレーまたはエマルションとして施す。施す速度は、約0.1ガロン/yd2〜約0.3ガロン/yd2であってよい。ビチューメンを吹き付けた後、製造物500または600を機械的手段または手動手段のいずれかによってビチューメン中にローラで入れる。ビチューメンは、製造物500、600とバインダーコース235との間の結合を形成し、また製造物500または600の中に吸収されて防水層を形成する。その後、さまざまな厚さのうちの1つの厚さでアスファルトコンクリートオーバーレイ240を施す。
【0104】
本発明を例示的実施態様によって説明してきたが、それらに限定されるわけではない。むしろ、本発明は広く解釈されるべきであり、本発明の同等物の範囲から逸脱しない範囲で当業者が実施できる他の変更形態および実施態様も含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗道補修用の補強材料に関する。
【背景技術】
【0002】
補強アスファルト道路およびオーバーレイ用の様々な方法および複合材が提案されてきた。その中には、樹脂を含浸させたガラス繊維グリッドについて記載したものがある。古い舗道を補修するには、建設条例に従って、一般にはアスファルトタックコートをガラス繊維グリッドと一緒に施す。タックコートは液体として(例えば、吹き付けでの乳剤または加熱アスファルトセメントバインダーとして)施され、その後、液体から固体に変化する。タックコートは、新しいアスファルト舗道を既存の舗道表面に結合させる際の助けとして使用される敷設グリッド(グリッドの背面に接着コーティングを有する)の上部に施される。グリッドの背面に接着コーティングを有していないガラス繊維グリッドを敷設するためには、タックコートを最初に既存の舗道に施す。タックコートが完全に硬化する前に、グリッドをタックコート上に敷設する。タックコートはさらに硬化するにつれて、下にある舗道上の所定の位置にグリッドを保持する。加熱アスファルトコンクリートをグリッドの上部にオーバーレイする時に、タックコートは部分的に溶けて、グリッド中の含浸樹脂と一体化する。タックコートには、そのような補強で用いる場合に非常に望ましい幾つかの特色がある。特に、それらは、オーバーレイとして用いられるアスファルトコンクリートまたはセメントとの完全な適合性があり、またその流動性により、でこぼこの舗装表面に流れ込んでそれを滑らかにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その一方で、タックコートには幾つかの問題点もある。タックコートの性質が、周囲条件、特に温度、および湿度に非常に影響されやすいという点である。こうした条件は乳剤タックコートの硬化温度に影響を及ぼしうるものであり、過酷な条件では、硬化を妨げかねない。それほど過酷でない状況でも、オーバーレイ舗装機械は、タックコートが硬化するまで待機しなければならず、不必要な遅れが生じる。例えば、タックコートは通常、水中にアスファルトを含んだ乳剤であり、界面活性剤で安定化されていることが多い。その潜在能力を発揮するためには、乳剤が破壊され、水が除去されて、アスファルトのフィルムが敷かれなければならない。水の除去方法は、基本的には蒸発であり、これは環境における時間、温度、および湿度に左右される。しばしば、環境条件は好ましくないことがあり、その結果、接合の効率が悪くなるかまたは受け入れがたい遅れが生じる。
【0004】
特願平05−315732号公報は、吹き付けられる乳剤タックコートの代わりに使用できるアスファルトフィルムを記載している。アスファルトフィルムが基層の上にかぶせられ、加熱されたアスファルト材料がフィルムの上部に敷設される。フィルムは、網状体の両面にアスファルト乳剤を付着させ、それを固化させることによって形成される。砂利、砂などを含んでいる下側基層および砕石の上側基層は、路盤上に置かれて、突き固められる。フィルムは上側基層の上に置かれ、加熱されたアスファルト材料がフィルム上に敷設される。追加のフィルムおよびアスファルト材料層が、アスファルト層の上に何回も敷設される。フィルムは、アスファルト材料の熱によって軟化し、溶融して単一体になる。
【0005】
それゆえに、舗道コース間の層間の層を改良することが依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
タックフィルムは、第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材を含む。第1および第2主表面の表面層は、樹脂性非アスファルト材料を含むか、または約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料を含む。厚さが約3.8cm(1.5インチ)以上であるアスファルト舗装材料の被覆層(overlying layer)が敷設されることによってタックフィルム材料に加えられる圧力の下で、表面層が約120℃以上の温度に加熱されると、表面層は、アスファルト舗装材料の隣接層との結合を形成することができる。表面層は、約20℃の温度および約1気圧の圧力では粘着性がない。
【0007】
舗装方法は、タックフィルムをアスファルト舗装材料のバインダー層の上に置くステップと、アスファルト材料の表面層をそのタックフィルムの上に置くステップとを含む。
【0008】
実施態様によっては、タックフィルムの製造方法は、第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材を用意すること;および樹脂性非アスファルト表面層材料あるいは約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料で、第1および第2主表面を覆うことを含む。
【0009】
添付図面は、本発明の好ましい実施態様、ならびに開示内容に関係した他の情報を示している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】1つの実施例によるアスファルト舗道の舗装し直した区間の部分側面横断面図である。
【図2】図1に示したタックフィルムの一実施態様の詳細横断面図である。
【図3】図2のタックフィルムを含んでいる一番目のタックフィルム−補強材複合材料の横断面図である。
【図4】図3に示したタックフィルム−補強材複合材料の変形形態の横断面図である。
【図5】図3に示したタックフィルム−補強材複合材料の別の変形形態の横断面図である。
【図6】図3〜5のいずれかのタックフィルム−補強材複合材料を含んでいるアスファルト舗道の補修区間の部分側面断面図である。
【図7】図3〜5のタックフィルム−補強材複合材料の1つの実施態様で使用される補強材料のストランドの横断面図である。
【図8】ストランドに樹脂を含浸させた後の図7のストランドの横断面図である。
【図9】図8のストランドを含んでいる補強用グリッドの平面図である。
【図10】図9に示すグリッドの交差部分の拡大詳細図である。
【図11】図2の材料のせん断性能を示す。
【図12】補強材の別の実施態様の横断面図である。
【図13】図12の実施態様の変形形態の横断面図である。
【図14】図12の製造物を製造するための装置の略図である。
【図15】図12または13の補強材で補修された舗装区間の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この例示的実施態様の説明は、記述されている説明全体の一部と見なされるべき添付図面と関連させながら読むことを意図している。説明の中で、「下側」、「上側」、「水平」、「垂直」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上部」および「底部」などの相対語、ならびにそれらの派生語(例えば、「水平に」、「下方に」、「上方に」など)は、その箇所で説明されている配向か、または説明中の図に示されている配向を指すと理解すべきである。これらの相対語は、説明の便宜上用いられているのであり、装置が特定の向きに構成されていたり、操作されたりする必要があるわけではない。連結、結合などに関連した用語(「接続された」および「相互接続された」など)は、特に明確に述べられていない限り、構造体が、直接または間接的に介在構造体を介して互いに固定または連結されている関係、ならびに可動連結(または関係)または固定連結(または関係)の両方を指す。
【0012】
以下の実施例では、アスファルト舗装用の粘着性タックフィルム、そのフィルムの製造方法、および舗装の第2層が舗装の第1層の上に置かれる舗道の形成方法について説明する。本明細書で使用される以下の用語の定義は、次のとおりである。
【0013】
周囲:圧力、温度、または相対湿度などの周囲の環境条件。
【0014】
ストランド:単位として使用される、撚られているかまたは撚られていない連続フィラメント束または集成体(スライバー、トウ、縦糸、糸などを含む)。1本の繊維またはフィラメントでもストランドと呼ぶことがある。
【0015】
樹脂性:荷重(stress)または温度にさらされた時に流動傾向を示す、固体または擬似固体の有機材料(普通は高分子量)に関するかまたは関連した用語。その熱可塑性形態では、普通、軟化点範囲または融点範囲を有する。ほとんどの樹脂はポリマーである。
【0016】
「舗装」、「道路」、「車道」、および「表面」という言葉は、本明細書では、空港、歩道、私設車道、駐車場および他のそのような舗装表面すべてを含む広い意味で使用されている。
【0017】
図1は、舗道区間150の例を示す。舗道150の保守および補修の際に、アスファルトバインダーコース135を既存の古い舗道130の上にオーバーレイするが、古い舗道はコンクリート、アスファルト、またはそれらが混ざったものであってよい。古い舗道130は、典型的にはロール(abrasive roll)(図示せず)によってテクスチャライズまたは粉砕されており、これによってバインダーコース135にとって密着性の良好な表面となっている。予め製造された樹脂性または樹脂含浸フィルム100がバインダーコース135の上に置かれ、表面コース140との結合を向上させる。これにより多層舗装構造における中間層結合が確実に行われる。このことは、表面コースに(例えば、自動車交通によって)生じる荷重分散(stress distribution)を減少させるのに望ましい。
【0018】
タックフィルム100は、第1および第2主表面を有する。タックフィルム100の第1および主表面のその材料は、非アスファルト樹脂である材料であるか、あるいは約50%以上の樹脂および約50%以下のアスファルト材料を含んでいる組成を有する材料である。好ましくは、タックフィルムの表面の材料は、25%以下のアスファルト材料であり、より好ましくは、タックフィルムの表面の材料は20%以下のアスファルト材料である。実施態様によっては、タックフィルム100はキャリヤー基材を含み、樹脂性非アスファルト材料がその第1および第2主表面にコーティングされているか、または約50%以上の樹脂性非アスファルト材料と約50%以下のアスファルト材料とを含む材料がその第1および第2主表面にコーティングされている。他の実施態様では、タックフィルム100全体は、樹脂性非アスファルト材料から本質的に構成されるか、または構成される。あるいはタックフィルム100全体は、主要成分または多量成分である樹脂性非アスファルト材料とゼロではない少量成分のアスファルト材料とを含んでいる材料から本質的に構成されるか、または構成される。
【0019】
実施態様によっては、タックフィルム100は、舗道層135と140との間の結合剤として使用されるアスファルト乳剤の代用品として用いるのに適している。タックフィルム100により、アスファルト道路建設における中間層結合が強化される。
【0020】
タックフィルム100は予め製造される製造物であるため、施工者(installer)がタック層の施工速度および厚さを制御できるようになる。吹き付けおよび硬化作業(アスファルト乳剤を使用した場合、現場で行われる)は、タックフィルム100を用いる場合、なくすことができる。タックフィルム100により、作業現場でのこうしたステップがなくなるため、道路建設がはかどる。タックフィルム100により、厚さとせん断と疲労の性能を、アスファルト乳剤で得られる性能と等しいかそれより優れたものにすることができる。
【0021】
図2は、タックフィルムの1番目の実施例であり、これは複合フィルム100であってよい。実施態様によっては、図1および2に示すように、薄いポリマーフィルム110は、基層135の上にかぶせられ、また複合タックフィルム100の樹脂(または約50%以上のポリマー樹脂と約50%以下のアスファルト材料とを含む材料)120を均一に分散させるためのキャリヤーの役目をする。樹脂120(または樹脂とアスファルト材料との組成物)は、コーティング工程を介して完全にキャリヤーフィルム110の両面を覆って複合タックフィルム100が形成される。コーティングの非粘着性の滑らかな表面特性により、建設現場での取り扱いが便利になる。
【0022】
複合タックフィルム100を製造するための例示的な方法を以下に示す。第1ステップは、樹脂性または樹脂を含浸させた薄いポリマーフィルムをキャリヤーフィルム110として置くことを含む。次いで薄いフィルム110にポリマー樹脂120(または樹脂とアスファルト材料との組成物)をコーティングするが、これは例えば、樹脂の中、または樹脂とアスファルト材料との組成物の中にそのフィルムを浸すことによって行う。その後、そのコーテッドフィルム100を乾燥させる。接着剤122(感圧接着剤など)は、コーテッドフィルムの背面側(敷設後の底部側)に塗布することができる。次いで接着剤122を乾燥させる。被覆(overlying)表面コース140の施工時に、接着剤122によってフィルムは所定の位置に保たれる。
【0023】
ポリマー樹脂(または樹脂とアスファルト材料との組成物)120は、熱膨張係数(CTE)がアスファルト140の熱膨張係数と似たものであってよい。好ましくは、ポリマー樹脂(または樹脂とアスファルト材料との組成物)は、アスファルト140および135よりも安定性が優れており、広い温度範囲でより堅い。複合タックフィルム100は、アスファルトをベースにしたフィルムよりもさらに粘性と弾性がある。乾燥させると、複合フィルム100は表面が滑らかであり非粘着性である。使用時に、表面コース140の加熱アスファルト混合物を複合タックフィルム100に施すと、ポリマー樹脂(または樹脂とアスファルト材料とのコーティング組成物)120が活性化されて結合力がもたらされ、また舗道層135と140との間の連結が複合タックフィルム100によって強化される。
【0024】
吹き付けアスファルト乳剤を道路建設で使用する場合、施工者は、最適な性能を得るために、アスファルト乳剤コーティングを適切な仕方で薄く均一にするようにしなければならなかった。本明細書に記載のタックフィルム100を使用すると、所定の厚さが得られる。コーティング120の厚さの均一性を制御できる。コーティング120の厚さを最適化して、アスファルト乳剤タックコーティングの最適な施工割合に等しい厚さにすることができる。
【0025】
タックフィルム100により、現場でのアスファルト乳剤の吹き付けおよび硬化のステップがなくなる。舗道建設プロジェクトの時間費用と労務費の両方を削減することができる。さらに、現場での硬化ステップがなくなるため、特定区域の舗道を完成させるのに必要な時間が、乳剤を吹き付ける場合よりもより予測可能になる。敷設時間を予測できないということをなくすことにより、敷設スケジュールからスラック時間をなくし、効率を高め、プロジェクト期間をさらに減らすことが可能になりうる。加えて、フィルムの厚さを最適化し、制御できるので、タックフィルムのむだを少なくすることができる。予め製造された大量生産の複合タックフィルムを用いることができるので、材料コストの削減を可能にする道が開かれる。
【0026】
実施態様によっては、タックフィルム100の背部に接着剤122を加えると、現場敷設がより確実に行われるようになる。好ましくは、敷設を容易にするために感圧接着剤122を使用する。
【0027】
実施態様によっては、キャリヤーフィルム110はポリエチレンフィルムを含むことができる。キャリヤーは、厚さが約0.5ミル〜約10ミルであってよく、より好ましくは、約0.5ミル〜約2ミルのキャリヤーを使用できる。例えば、フィルム110は、約0.5ミル(0.01mm)の低密度ポリエチレンフィルムであってよいが、約2ミル(0.05mm)の厚さのポリエチレン−ポリプロピレンコポリマーフィルムなど他の材料および厚さを使用できるであろう。ポリエチレンは安価な材料である。ポリエチレンは、一部の樹脂コーティング材料の乾燥温度で縮むことがあるが、好ましい樹脂はフィルム110を保護し、その結果として、フィルムは乾燥工程の間その形状を維持する。アスファルトと適合性のある他のポリマーフィルムを、キャリヤー層110に使用できる(例えば、PVC、ナイロン(ポリアミド)、ポリアクリレート、HDPE、およびある特定のポリプロピレンがあり、これらにより所望の剛性、適合性、および耐食性が付与される)。他の実施態様では、キャリヤー層は、2種以上のこうした材料からなる多層シートか、またはこうした材料の1種と別の適合性のある材料とを組み合わせたものからなる多層シートを含むことができる。
【0028】
フィルム110は打ち抜き穴があってよい。打ち抜き穴があると、フィルム110への樹脂120の含浸速度が増大する。樹脂(または樹脂とアスファルト材料とのコーティング組成物)120の網を、フィルム110の両面に形成することができる。表面層140の熱溶融したアスファルトからの熱は、フィルム110の下部を通じて下側の(バインダー)アスファルトコンクリート層135に伝わる。
【0029】
実施態様によっては、フィルム110に施された非アスファルト樹脂性コーティング(または樹脂とアスファルト材料とのコーティング組成物)120により、タックフィルム100は、周囲のアスファルト層135、140といっそう適合性のあるものになる。このことは、舗装の温度、圧力、またはその両方で樹脂が塑性流動するように、コーティング120の化学組成を注意深く調整することによって達成される。好ましくは、コーティング120の組成物は、ガラス転移温度が68〜77°F(20〜25℃)よりも高く、好ましくは約120〜140°F(50〜60℃)よりも上の温度で塑性流動が起こる。アスファルト舗装の温度、すなわち、約265〜320°F(130〜160℃)に達すると、非常に低い圧力の下であってもコーティング120の流動が可能になる。事実、建設での締固めによる舗装圧力および表面コース140の重量は、少なくとも非常に近接している表面の局所構造での幾らかの流動に影響を及ぼしうる。表面コース140の典型的な温度は、中間層タックフィルム100において、敷設時に約250〜320°F(121〜160℃)から始まり、最後には温度は約140〜150°F(60〜66℃)になる。これは、タックフィルム100およびフィルム110上のコーティング120を加熱するのに十分である。この熱により、コーティング120の流動が生じ、またフィルム110がゆるやかになって「引き延ばされ」、舗道150のバインダーコース135および表面コース140に対するタックフィルム100によるいっそう良好な機械的接着が促進される。
【0030】
コーティング120の化学的性質により、さらされている凝集体、アスファルトなどへのある程度の物理的結合および/または化学結合(ファンデルワールス力に起因するもの)が可能でありうる。物理的方法および化学的方法のどちらも、表面コースとバインダーコースとの間のせん断保持力を向上させ、せん断強さを向上させる。一般に、コーティング120が厚くなるほど、せん断性能はよくなり、各コーティング材料に固有の最大値まで向上する。
【0031】
別の好ましい実施態様では、アスファルト舗装コースの曲げモーメントを減少させる方法が提供される。その方法は、アスファルトバインダーコース135(好ましくは厚さが約0.75インチ(19mm)以上のもの)を既存の路面130に施し、その後で複合タックフィルム100をアスファルトバインダーコース135に施すことを含む。フィルム100は、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)または他の好適なポリマーのキャリヤー層110を含むことができる。樹脂性非アスファルトコーティング(または樹脂とアスファルト材料とのコーティング組成物)またはフィルム120は、複合層100のキャリヤーフィルム110の上に配置される。コーティングまたはフィルム(以下、まとめて「表面層」と呼ぶ)120は、舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されて(熱可塑性)、アスファルト舗装135、140との適合性のある結合を形成する。表面層120は熱可塑性樹脂を含むことができ、その樹脂は、舗装の温度、圧力、またはその両方で塑性流動するが、周囲の温度および圧力では粘着性がないものである。この方法は、厚さが約1.5インチ(40mm)以上であるアスファルト表面コース140を、複合タックフィルム100、アスファルトバインダーコース135および既存の路面130の上に施すことをさらに含む。表面コース140の圧力および熱により、熱可塑性樹脂120の塑性流動が引き起こされて、アスファルトバインダーコース135とアスファルト表面コース140との間の層間結合が向上する。層間結合は、粘着、溶融または化学(および/またはファンデルワールス)結合、あるいはそれらの組合わせでありうる。
【0032】
実施態様によっては、表面層120はアクリルコーティングである。実施態様によっては、表面層120は、ワックス剥離剤を約1〜8重量%、および可溶性ポリマー、アンモニア、増粘剤、カーボンブラック、脱泡剤、および可塑剤よりなる群から選択される添加剤を約0〜10重量%含んでいる、ポリ塩化ビニル(PVC)ラテックスエマルションコーティングを含んでもよい。1つの好ましいPVCラテックスエマルションは、Noveon,Inc.,Cleveland,OHから入手可能なVycar(登録商標)460x63ラテックス(ビニルエマルション)であり、これは、コーティング表面で約120〜140°F(49〜60℃)より高い舗装温度においてかなりの程度の塑性流動をもたらす。PVCラテックスポリマーとアスファルトとのもともとのレベルの化学的接着もあるであろう。
【0033】
実施態様によっては、コーティングは、40〜60%のVycar(登録商標)460x63ラテックスを含み、実施態様によっては、コーティングは少なくとも約40%のVycar(登録商標)460x63ラテックスおよび約20%までのアスファルト材料を含む。実施態様によっては、コーティングは45〜50%のVycar(登録商標)460x63ラテックスを含み、実施態様によっては、コーティングは少なくとも約45%Vycar(登録商標)460x63ラテックスおよび約5%までのアスファルト材料を含む。
【0034】
Vycar(登録商標)460x63は、単独の場合、特に寒い気候ではかなり堅いことが知られている。このため、コーテッドフィルム100を道路のカーブの周りに施すとき、敷設上の問題が生じうる。Vycar(登録商標)460x63はまた、他の候補となる樹脂性材料よりも、液体の水に対する耐性が小さい。その固形分がかなり少ないため、所望の含浸量を達成するのが難しいことがあり、いったん吸収されるとその構造物を十分に乾燥させるのが難しくなりうる。
【0035】
したがって、実施態様によっては、Vycar(登録商標)460x63を含んでいるコーティング120は、コーティングが柔らかくなり、その固形分が増大するように配合する。
【0036】
コーティング120中のポリマーは、より柔らかいモノマーから作ることもできる。撥水性の問題は、Hydrocer 145などのワックス添加剤を、ドライコーティングの約3〜5重量%の量だけ含有させることによって解決することができる。このワックス剥離剤には、コーティングをわずかに柔らかくする傾向もある。コーティングの固形分を向上させて約50〜60重量%、理想的には約55重量%以上にすることができる。PVCラテックスにこうした改良を行うことに加えて、ドライコーティングの約5〜9重量%の量のCarboset 514Wなどの可溶性ポリマーを添加すると、パッドロールのコーティングにおいて開放時間を増やし、再湿潤性(re−wetability)を高めることができる。Michemprimeポリマーなどの他の水溶性ポリマーを使用してもよい。
【0037】
可溶性ポリマーを活性化させるために、アンモニアを加えてpHを約8または9にすることができる。アンモニアを用いて、組成物中に使用される任意のアルカリ可溶性増粘剤を活性化させることもできる。そのような増粘剤としては、一般に入手可能なものを挙げることができ、それらは好ましくは、含浸量の目標を達成できない場合に使用する。Rohm and Haas,Philadelphia,PAのASE−60または6038Aが、この用途に役立つであろう。
【0038】
約1重量%の量の着色剤(カーボンブラックなど)、および約0.05重量%のレベルまでの脱泡剤(NXZまたはDEFOなど)は、この用途に役立つ。
【0039】
最後の点として、所望の柔軟性をコーティングで得るために可塑剤を使用できる。ADMEX 314が望ましいが、それは、これが不揮発性ポリマー可塑剤であり、環境上の危険も健康上の危険も引き起こさず、約2〜5重量%のレベルでコーティングの柔軟性にかなりの相違をもたらすからである。
【0040】
舗装の温度、圧力、またはその両方で塑性流動するものであれば、多数の別の種類の樹脂を表面層120に使用してよい。主な実例には、PVC、ナイロン、アクリル、HDPE、およびある特定のポリエチレンおよびポリプロピレン、ならびにエチレン酢酸ビニル(EVA)があり、これらは所望の剛性、適合性、および耐食性をもたらす。これらは、熱溶融、エマルション、溶剤、熱硬化または放射線硬化の系を用いて施すことができる。実施態様によっては、タックフィルム100は多層フィルムを含む。例えば、キャリヤー層110は、表面層コーティング120がその上に施された多層フィルムであってよい。他の実施態様では、タックフィルム100全体が共押出しされるものであり、表面層120はキャリヤー層110と一緒に共押出しされる樹脂フィルムである。表面層120の材料は、キャリヤー層110の材料と同じであってよいか、キャリヤー層110と同じ主要構成成分を含んでもよいか、あるいはキャリヤー層110とは異なる主要構成成分を含んでもよい。
【0041】
こうした代替樹脂材料のいずれかを表面層120に使用する場合、粘着防止剤(例えば、ワックス、合成ポリマー、タルカムパウダーの軽い散布)を表面層120に含めて、タックフィルム100がスパイラルロール形態での貯蔵時にそれ自体にくっついたり、その後の巻き出し時にグリッド10から引き離されたりするのを防ぐことができる。キャリヤー層110の片面または両面の表面層120にスリップ剤を含めてもよい。
【0042】
上記の組成物は、アスファルト表面コース140およびバインダーコース135と極めて適合性がある。そられにより、アスファルトコンクリート中の埋め込みタックフィルム100への強力な結合が可能である。舗装の層間の堅固な接着により、交通による表面層への荷重分散が効果的に減少する。そのような解決策は、界面結合の不足によって起こるかまたは生じやすくなるずれ、クラッキングおよび層間剥離(早期荷重(premature stresses)と呼ばれる)を防ぐことができる。
【0043】
表面層120の熱膨張係数は、アスファルト混合物の熱膨張係数と近似している。表面層120では、複合材アスファルトコンクリートのばらばらの熱的挙動によるフィルム100の境界面における望ましくない剥離(disengagement)が多分避けられる。境界面状態が向上するため、顕著な道路荷重に対する、オーバーレイされた表面アスファルト層140の耐用年数は長くなる。
【0044】
キャリヤーフィルム110が第1材料(例えば、ポリエチレンなどのポリマー)を含み、そのフィルム110が第2材料120(例えば、上述のように添加剤を加えたVycar(登録商標)460x63)でコーティングされている例について、上に説明した。しかし、フィルム110が、コーティング材料120(例えば、添加剤を含んだVycar(登録商標)460x63)用として上述した非アスファルト樹脂性材料から本質的に構成される(または構成される)、他の実施態様も企図される。そのような実施態様では、コーティング材料120の別個の層を省くことができる。したがって、タックフィルム層は、複合フィルム100または均一樹脂性フィルムにすることができる。複合フィルムまたは均一フィルムのどちらを使用するかの選択、およびキャリヤーフィルム110の材料の選択は、各材料の材料コスト、製造の容易さ、および商業的入手性によって異なりうるものであり、それは任意の所与の時間で当業者が容易に判断することができる。
【0045】
含浸させて樹脂性コーティングで被覆するか、または樹脂性フィルム120と一緒に共押出しする場合、フィルム100は好ましくは半硬質であり、これは予め製造された連続構成部品として敷設場所へ容易に輸送するために、芯に巻き付けることができる。敷設場所で、それは、迅速に、また経済的かつ簡単に車道へ合体させるため、容易かつ連続的に巻き出すことができる。例えば、フィルム100は、100メートル以上の長さの一体物を含む幅15フィート(4.5メートル)のロール状にすることができる。あるいはまた、バインダーコース135は、典型的には、それぞれが約5フィート(1.5メートル)の幅の幾つかのフィルム100の細いストリップで覆ってもよい。したがって、バインダーコース135の全面または実質的に全面に、このフィルム100を用いることは実際的であり、それは労働力が削減されるため、低コストになる。
【0046】
舗装現場では、接着剤122が下側に向いた状態のフィルム100を巻き出して下にある舗装135上に敷設するが、その舗装は、フィルム100を施す際に好ましくは約40〜140°F(4.4〜60℃)である。
【0047】
タックフィルム100を巻き出して、下敷き層(つまり、アスファルトバインダーコース135)に付着させる。タックフィルムは、好ましくは厚さが約0.75インチ(19mm)以上である。実施態様によっては、任意のオーバーレイまたはアスファルト表面コース140をフィルム100の上に置く前に、フィルム100の製造時に接着剤122(例えば、感圧接着剤)を施すなどして、フィルム100を十分に安定させることができる。その結果、フィルム100は、その上を歩く作業員の活動、その上を動き回る建設車両、そして特に、その上にある舗装機械の移動に耐えることになる。
【0048】
フィルム100は、半硬質であるが、平らになる傾向がある。巻き出された後に、丸まった状態に戻る傾向はほとんどない。これは、バインダーおよび/または表面層樹脂の適切な選択によるものと考えられる。
【0049】
実施態様によっては、図1〜2に示すように、再舗装された舗道は、再舗装対象の舗道130、基層135、複合タックフィルム100、および表面層140を含み、別個の補強層は含まない。
【0050】
他の実施態様では、タックフィルム100がバインダー層135の上に施され、別個の補強層がタックフィルム100の上に施され、さらに表面層140が補強層の上に施される。例えば、補強層は、Saint Gobain Technical Fabricsから市販されているGlasGrid(登録商標)製品(例えば、8550、8501、8502、8511または8512グリッド)であってよい。
【0051】
他の実施態様では、図3〜6に示されるように、タックフィルム100は、一体式(unitary)複合補強中間層200、300、または400に含まれる。一体式複合材料200、300または400は、タックフィルム層100および補強層10を含む。
【0052】
実施態様によっては、複合補強中間層は、補強層10の上に複合層または樹脂性タックフィルム層100を含んでいる複合材200(図3)である。タックフィルム層100は接着剤12によって補強層10に結合され、接着剤はホットメルト接着剤であってよい。ホットメルト接着剤は、感圧接着剤または永久(permanent)接着剤であってよい。補強材10の(タックフィルム層100とは反対の側を向いている)底部表面は、感圧接着剤などの接着剤11を有する。これにより、複合材200は、表面コースが施されている間所定の位置に保たれる。図3の構成では、ホットメルト接着剤層12によってタックフィルム層100が下にある補強層10と結合するので、タックフィルム層100はそれ自体の接着剤層122を必要としない。また、表面コース140はフィルム層100の上部と接触し、フィルム100の上側表面に接着剤層122を必要としない。接着剤層122は、図3の複合材200に使用されるタックフィルム100から省略することができる。
【0053】
実施態様によっては、複合補強中間層は、複合層または樹脂性タックフィルム層100の上に補強層10を含む複合材300(図4)である。タックフィルム層100は接着剤12によって補強層10に結合され、接着剤はホットメルト接着剤であってよい。表面コース140が施されている間、複合材300が確実に所定の位置にあるようにするため、複合材300中のタックフィルム100は、図2に示すようにその底部表面(それは(レベリングコース(leveling course)135と接触する)に接着剤122を含む。
【0054】
実施態様によっては、複合補強中間層は、1対の複合層または樹脂性タックフィルム層100の間に挟まれた補強層10を含む複合材400(図5)である。以下の説明のそれぞれにおいて、タックフィルム100は、キャリヤー層110および表面層120を有する複合材であるか、または表面層120のコーティングに用いるのに適した材料の均一フィルム(ここで、均一フィルムは、その中に別個のキャリヤー層110を有していない)のいずれかであってよいことが理解されるであろう。複合材400では、タックフィルム層100は接着剤12(ホットメルト接着剤であってよい)によって補強層10に結合される。表面コース140が施されている間、複合材400が所定の位置に留まるようにするために、複合材400中の(レベリングコース135と接触する)底部タックフィルム100は、図2に示すようにその底部表面に接着剤122を含んでいる。(表面コース140と接触する)上部タックフィルム層100は、その表面上に接着剤122がなくてもよい。接着剤122は、上部タックフィルム層100から省くことができる。
【0055】
補強層10は、任意のさまざまな補強材であってよい。実施態様によっては、少なくとも2セットの実質的に平行なストランド21(図7および8の断面図に示す)を含むオープングリッド(図9および10に示す)を、補強層10として用意する。各セットのストランド21は隣接ストランド21間に開口部19(図9)を含み、セットは互いに対して大きな角度(例えば、任意選択でおよそ90度)で配向されている。実施態様によっては、補強層は、Saint Gobain Technical FabricsのGlasGrid(登録商標)製品(例えば、8550、8501、8502、8511または8512グリッド)であってよい。
【0056】
実施態様によっては、グリッド10は、好ましくは、図9に示すように、ストランド21が互いに対して約90°に配向されている、横糸の入った縦編みを含む。開口部は、好ましくは大きさが約0.5インチ×0.5インチ(12mm×12mm)以上であるが、開口部はおよそ1インチ×1インチもの大きさであってもよい。開口部19は正方形にすることができるが、長方形の場合のように「a」および「b」の大きさは異なっていてもよい。
【0057】
実施態様によっては、非アスファルトコーティング22は、図8において最も良くわかるように、ストランド21間の開口部をふさぐことなくグリッド10の上に配置される。コーティング22は、舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されて、アスファルト舗装との適合性のある結合を形成する。コーティング22は、周囲の温度および圧力では粘着性がないので、作業現場で容易に取り扱うことができる。実施態様によっては、ストランド21上のコーティング22は、複合タックフィルム100中のポリマーフィルム110に施されるコーティング120と同じ材料である。
【0058】
図9に示す大きなグリッド開口部19により、アスファルト混合物135および/または140が、糸20またはロービングの各ストランド21を完全に封じ込めることができることになり、またタック層100とバインダーコース135および表面コース140の両方との間の完全かつ相当の接触が可能となる。タック層100は、グリッド10の開口部19を介して層135および140と実質的に結合して、舗道135、140からの荷重を補強層10のガラス繊維または類似の繊維に実質的に伝えることができる。その結果得られる複合グリッド材は、モジュラスが高くかつ強度対コスト比が大きく、その膨張係数が道路建設材料の膨張係数に近似しており、さらにこれは道路建設に使用されまた道路環境にある物質(道路用塩など)による腐食に対して抵抗性がある。
【0059】
グリッド10は、連続フィラメントガラス繊維のストランドまたは糸21で形成されていてよいが、Kevlar(登録商標)と呼ばれるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)のポリアミド系繊維などの他の高モジュラス繊維を使用してもよい。2000テックスのECRまたはEガラスロービングが好ましいが、約300〜約5000テックスの範囲の重さを使用してもよいであろう。好ましいガラス繊維糸は、ASTM D6637に従って測定したときに約560ポンド/インチ(100kN/m)以上のストランド強度を有し、破断点伸びが5%以下のものである。こうしたストランドは、好ましくは、質量/単位面積が約22oz/yd2(740g/m2)未満、より好ましくは約11oz/yd2(370g/m2)未満である。
【0060】
こうしたストランドは、好ましくは低撚り(すなわち、約1回撚り/インチ以下)であり、好ましくはサイズが1辺(図9の寸法「a」、「b」、またはその両方)当たり3/4インチ〜1インチの範囲である長方形または正方形の開口部19を有するグリッドに形成されるが、1辺(「a」、「b」、またはその両方)当たり1/8インチ〜6インチの範囲のグリッド開口部19を使用してもよい。
【0061】
グリッド10は、好ましくは糸25で結び合わせられているか(図10に示す)、またはそうでない場合は横および縦のストランドの交差部分で固定接続されている。この接続により、グリッド10はそのグリッドパターンが保持され、非アスファルトのコーティング22を含浸させる前およびその間にストランド21が過度に離ればなれにならないようにされ、開口部19が維持される。これによって、下にある層に上敷きが結合することが可能になり、それによって最終的な複合車道補修100の強度が増大する。
【0062】
グリッド10の交差部分の固定接続もグリッド10の強度に寄与する。これは、それらにより、1セットのストランド21に平行な力が部分的に他のセットの平行ストランド21に伝達できるようにされるからである。同時に、このオープングリッド構造体により、平方ヤード当たりのガラスの少ないものを使用できるようになり、それゆえに、それは、例えば目の詰まった織物よりもいっそう経済的な製造物である。平方ヤード当たり約8オンスのグリッド10を使用するのが好ましいが、平方ヤード当たり4〜24オンスのものを使用してもよい。
【0063】
70〜150デニールのポリエステル糸25(または同等物)を用いて、縦編および横糸挿入織物機械(warp−knit,weft−insertion knitting equipment)でグリッド交差部分を結び合わせるのが好ましいが、固定接続された交差部分を有するグリッドを形成する他の方法を利用してもよい。例えば、熱硬化性または熱可塑性接着剤を用いて作られた不織グリッドは、好適な強さをもたらしうる。
【0064】
グリッド10が形成されたなら、それをタックフィルム100に接合する前に、樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂22を施す。すなわち、グリッド10に樹脂22を「事前含浸」させる。
【0065】
樹脂性コーティング22の粘度は、コーティングがグリッド10のストランド21に浸透するように選ぶ。樹脂性コーティング22はガラス繊維ストランド21中のすべてのフィラメント20を取り囲みうるわけではないが、樹脂性コーティング22は、図8に示すように、一般にはストランド21の内部の端から端まで均一に広がる。この含浸により、好ましい半硬質性がストランド21に付与され、車道環境にある水、塩、油および他の要素による腐食からストランド21およびガラスフィラメント20は守られ、保護される。また含浸により、ガラスストランド21またはフィラメント20間の摩損が減少し、またあるガラスストランド21またはフィラメント20が別のものによって切断されることが少なくなる。また含浸により、グリッドが敷かれた後(但し、上敷き140が施される前)に、ガラス繊維が互いを切断する傾向が減少させられる。
【0066】
グリッドは、各セットの平行ストランドの方向における最小強度が好ましくは約25kN/メートル(kN/m)、より好ましくは約50kN/m、もっとも好ましくは約100kN/m以上であり、破断点伸びが好ましくは約10%未満、より好ましくは5%未満であるべきである。
【0067】
グリッド10上の好ましい樹脂性コーティング22を乾燥または硬化させている間に、ストランド21はいくらか平らになり得るが、開口部19は維持される。例えば、2000テックスのロービングを用いた好ましい実施態様では、約3/4インチ×1インチ(a=b=0.75インチ)の開口部19を有する長方形グリッド10を形成することができる。ロービングは、幅が約1/16インチ(1.6mm)〜1/8インチ(3.2mm)となるように平らにされる。コーティングおよび乾燥後のロービングの太さは、約1/32インチ(0.8mm)以下にすることができる。好ましいガラス繊維ストランドのグリッドは、Saint−Gobain Technical Fabricsから入手可能なコーティングされていないGlasGrid(登録商標)製品(例えば、8550、8501、8502、8511または8512グリッド)である。
【0068】
グリッド10の含浸には多種類の樹脂を使用できるが、但し、舗装の温度、圧力、またはその両方で塑性流動することが条件である。主な実例には、PVC、ナイロン、アクリル、HDPE、ならびにある特定のポリエチレンおよびポリプロピレンがあり、これらは所望の剛性、適合性、および耐食性をもたらす。それらは、熱溶融、エマルション、溶剤、熱硬化または放射線硬化の系を用いて(例えば、PVCエマルションを含んでいるVycar(登録商標)460×63などのコーティング)施すことができる。PVCエマルションは、ワックス剥離剤を約1〜8重量%、および可溶性ポリマー、アンモニア、増粘剤、カーボンブラック、脱泡剤、および可塑剤よりなる群から選択される1種または複数種の他の添加剤を約0〜10重量%含んでもよい。複合ポリマーフィルム100のコーティング120として使用するのに適した材料(上述のいずれかの材料など)はどれでも、グリッド10のコーティング22として使用してよい。他の実施態様では、コーティング120および22は異なる材料であり、その場合、それぞれのコーティング120、22はアスファルトと適合性があり、熱および/または圧力によって活性化可能である。
【0069】
コーティング120および22は、圧力、熱、または他の手段によって活性化可能である。圧力で活性化可能な樹脂は、それによってコーティングされた表面が別の未処理表面と接触させられて、圧力が加えられた時に、結合を形成する。熱活性化可能な樹脂は、それによってコーティングされた表面が未処理表面と接触させられて、熱が加えられた時に、結合を形成する。周囲の温度(例えば、約72°F)および圧力(例えば、約1気圧)で粘着性がある他の接着剤と比べて、コーティング120および22は、好ましくは周囲の温度または圧力では粘着性がなく、ほぼ舗装の圧力または温度でのみ粘着性がでてくる。
【0070】
使用する場合には大抵、コーティング120および22は、コーティング温度が約120〜140°F(49〜60℃)に達するまで、または厚さが約1〜1.5インチ(25〜38mm)以上の舗装コースが施されるまで、あるいはその両方が行われるまで、塑性流動も付着もしない。Eガラス繊維の融点は、約1800〜1832°F(約1000℃)である。これにより、舗装作業の過度の熱にさらされたときでも安定性が確保される。
【0071】
表面コース140とバインダーコース135との間のせん断強さはできるだけ大きく、またせん断強さはグリッド10がさらされるであろう極めて広い温度範囲全体でかなりあることが望ましい。タックフィルム−グリッド複合材200、300または400は、わずか約40°Fという周囲温度で舗装の下敷き上に敷設することができ、アスファルトコンクリートは、約250〜320°F(121〜160℃)、一般には約300°F(149℃)の温度で施すことができ、これによりコーティング22の温度は約150°F(66℃)に上昇する。それゆえに我々は、コーティング120および22は、融点またはガラス転移温度(Tg)が約66〜77°F(20〜25℃)以上であり、好ましくは舗装によって加わる典型的な圧力のもとで約120〜140°F(50〜60℃)より上で塑性流動するのがよいと考える。
【0072】
約265〜300°F(130〜150℃)の温度に達したなら、非常に低い圧力(非常に薄いアスファルト層が施された場合など)であっても、流動が可能である。これにより、コーティング120および22の塑性流動が可能になり、グリッド10の中および周りにおいて表面コース140とバインダーコース135との間のせん断強さが向上するであろう。
【0073】
コーティング120および22の粘度は、グリッド上に流れるのに十分な流動性があるべきであるが、好ましくは、施す時または貯蔵時にグリッドからまたはグリッドを通過して流れず、むしろグリッド上に留まるような十分の粘性がある。
【実施例】
【0074】
実施例1
以下の表1に記載されているコーティング22を調製し、コーティングが施されていないSaint Gobain Technical FabricsのGlasGrid(登録商標)製品(8501または8511グリッド)に施した。
【0075】
コーティング120および22に有用な好ましい樹脂系としては、フィラメント20間の空間の一部または全部に含浸させるために、液体であるものまたは液化することのできるものがある。樹脂系は、舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されて、アスファルト舗装との適合性のある結合を形成するべきである。そのような系として、熱硬化性樹脂(Bステージエポキシ(B−stage epoxy)樹脂、シリコーン樹脂、またはフェノール樹脂など);または熱可塑性樹脂(ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンまたはポリ塩化ビニルなど)を挙げることができる。添加剤を含むかどうかにかかわらず、樹脂と溶剤の混合物または未希釈(neat)樹脂を含むプラスチゾルは、有用な代替物である。望ましいポリ塩化ビニルラテックスエマルション系の好ましい成分および範囲を以下の表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
樹脂性非アスファルトコーティング22による含浸およびコーティングを行う場合(図8)、タックフィルム−グリッド複合材200、300または400(図3〜5)は、好ましくは半硬質であり、これは予め製造された連続構成部品として敷設場所へ容易に輸送するために、芯に巻き付けることができる。敷設場所で、それは、迅速に、また経済的かつ簡単に車道へ合体させるため、容易かつ連続的に巻き出すことができる。例えば、これは、100ヤード以上の一体物を含む幅5フィート(1.5メートル)のロール状にすることができる。タックフィルム−グリッド複合材200、300または400の敷設手順は、別個のタックフィルム100に関連して上述したのと同じ手順であってよい。それゆえに、このタックフィルム−グリッド複合材200、300または400を、すべての、または実質的にすべての舗道表面に用いるのが実際的である。これは、局在クラック231(図6)(伸縮目地など)を補強するために使用することもできる。
【0078】
グリッド10は、半硬質であるが、平らになる傾向がある。それらは、巻き出された後に、丸まった状態に戻る傾向がほとんどない。これは、バインダーおよび/またはコーティング樹脂の適切な選択、およびグリッド10にマルチフィラメント補強ストランド(好ましくはガラス)を使用していることが理由と考えられる。
【0079】
図9に示す大きなグリッド開口部19により、アスファルト混合物は糸21またはロービングの各ストランド20を完全に封じ込めることができ、複合材200、300、400とバインダーコース135および表面コース140との間の完全かつ相当の接触が可能になる。表面コース140は、好ましくは、厚さが約1.5インチ(40mm)以上で配置される。その結果得られる複合材200、300、400は、モジュラスが高くかつ強度対コスト比が大きく、その膨張係数が道路建設材料の膨張係数に近似しており、さらにこれは道路建設に使用されまた道路環境にある物質(道路用塩など)による腐食に対して抵抗性がある。
【0080】
上記のことから、粘着性タックフィルムは、単独で、またはオープングリッドおよび樹脂性コーティング(舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されてアスファルト舗装との適合性のある結合を形成する)と組み合わせて、アスファルト舗装の補強材に使用できることが理解できる。
【0081】
実施例2
ポリマー樹脂コーテッドフィルムの調製
ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)がブレンドされた、厚さが12.7マイクロメートルの薄いフィルムを調製した。フィルムに孔をあけて、直径0.5ミリメートルの開口部が25.4ミリメートルごとの間隔で存在するようにした。これは、表面層の施工における加熱アスファルト混合物から下側のアスファルト層への熱伝達を容易にし、フィルムをアスファルト舗道層に付着させるためである。塊状重合された(塩化ビニル)PVCアクリル系共重合体のエマルション中に、フィルムを21℃で浸し、コーティングされたフィルムを熱対流炉において100℃で2分間乾燥させ、フィルム上のコーティングの残留率(residual rate)は123g/m2になった。
【0082】
フィルムは、好ましくは、アスファルト系に強く接着するポリマー樹脂を担持させるための合成材料である。使用できる薄いフィルの実例として以下のものがあるが、これらに限定されない。
ポリエチレン
ポリプロピレン
ポリエチレンとポリプロピレンのコポリマー
ポリエステル
ポリ塩化ビニル
ガラス繊維マット
熱可塑性ポリオレフィン
エチレン酢酸ビニル
【0083】
非アスファルト樹脂を調製するのに使用できる好ましいポリマーの中には、アクリル系共重合体、すなわち、アクリル系共重合体およびポリ塩化ビニル−アクリル系共重合体(polyvinylchloride acrylic copolymer)がある。
【0084】
表2は、PVCアクリル系共重合体コーティングが123g/m2の割合で施された種々の基材材料のさまざまなフィルムについての機械試験データを示す。試験された基材材料には、PEおよびPPのブレンドフィルム(試料1);ポリエステルのフィルム(試料2);熱可塑性ポリオレフィンのフィルム(試料3)およびガラス繊維のマット(試料4)が含まれていた。
【0085】
【表2】
【0086】
敷設を容易にするために、グリッド10または複合材製造物200の作製時に、感圧接着剤11をグリッド10の底部に施すことができる。ここで、グリッド10は敷設時に複合材200の底部層である。接着剤11は、プレコーテッドフィルム(pre−coated film)100をグリッド10に付着させるために用いるホットメルト接着剤12とは異なる種類のものであってよい。存在する場合、感圧接着剤11は、複合材200のポリマー樹脂コーテッドフィルム100の表面に圧力を加えることによって活性化される。感圧接着剤11を用いる場合、フィルムを巻き出すために相当の力が必要でありうるので、牽引器または他の機械的手段を使用できる。接着剤11は好ましくは合成材料であり、ラテックス系、溶剤系、または熱溶融系を用いるなど、任意の好適な仕方でプレコーテッドフィルムに施すことができる。好ましいラテックス系では、接着剤11を水中に分散させ、グラビア印刷ロールを用いてフィルム上に印刷し、乾燥させる。溶剤系では、接着剤を適切な溶剤に溶かし、フィルムへの印刷後に、溶剤を蒸発させる。熱溶融系では、接着剤を貯蔵器内で溶融させ、ロールに塗布し、注意深く制御されたナイフエッジでロール上に調節しながら供給して、ロール上に液体接着剤の均一なフィルムが形成されるようにする。次いでグリッド10をロールと接触させ、接着剤をグリッド10の底部に移す。こうした塗布方法は単なる例示的なものであり、ラテックス系、溶剤系、または熱溶融系を用いて接着剤を塗布するための他の方法を当業者は容易に選択することができる。
【0087】
実施例3
図11は、コーティング120および/またはコーティング22に使用される組成物に対して実施された一連の試験のデータをプロットしたものである。そのデータを用いて、非樹脂性コーティングのせん断性能と比較してせん断性能を実質的に低下させることなく、コーティング120に使用する非アスファルト樹脂性材料と一緒にどのくらいの割合のアスファルト乳剤をブレンドできるかを求めた。
【0088】
アスファルト乳剤は、表1に記載したポリマー樹脂とブレンドした(乾燥重量の百分率に対する相対量)。ブレンド樹脂は、6種類の異なる樹脂/アスファルト比(ポリマー対アスファルト。100%樹脂、75:25、50:50、25:75、10:90、0:100)で調製した。
【0089】
コーティングされていないeガラスグリッド構造物(「生機」と呼ばれる)を、手作業で樹脂または樹脂/アスファルト混合物中に浸し、完全に含浸させてから、乾燥させた。手作業でコーティングした構造物を1対のアスファルトパック(直径4インチの円柱形試料)の間に置いた。ASTM D6926−04に従って、75ブロー標準Marshall圧縮機(75−blow standard Marshall compactor)を用いて146℃においてアスファルト混合物で各パックを作った。直接せん断試験法によってせん断性能を実施した。
【0090】
図11に示すように、せん断強さは、純粋のアスファルトコーティングの1kNから100%非アスファルト樹脂の3.68kNまで変化している。データ点を当てはめた曲線から、約30%樹脂でのせん断強さは、アスファルト乳剤単独のせん断強さの約2倍である。約50%の樹脂では、せん断強さは、アスファルト乳剤のせん断強さの約2.4倍である。約75%の樹脂では、せん断強さは、アスファルト乳剤のせん断強さの約3.5倍である。約80%樹脂での約3.5kNというせん断強さは、100%ポリマー樹脂のせん断強さ(約3.7kN)に近い大きさである。したがって、約75%〜約80%の樹脂の混合物は、経済性が向上するとともに、100%樹脂コーティングのほぼ限度いっぱいの強さとなる。
【0091】
したがって、ブレンドされたコーティングを用いる場合、タックフィルム100の表面層120に用いる材料は、好ましくは、アスファルト乳剤とのブレンド中に50%以上の非アスファルトポリマー樹脂を含む。
【0092】
図12〜14は別の実施態様を示す。図12は、第1および第2不織ポリマー基材501、不織ポリマー基材501間に挟まれた補強用繊維の層510、および補強用繊維の層を不織基材に接合する接着剤512を含む、製造物500を示す。メッシュまたはスクリム510は、基材501に接着されて、任意のさまざまな幅および/または長さのロール状にされている。
【0093】
実施態様によっては、基材501は、ポリエステル不織フェルトウェブを含むことができる。ポリエステル不織基材はそれぞれ、名目上は重量が17.0g/m2または0.5oz/yd2である。それぞれの厚さは0.14mmまたは0.0056インチである。これらのポリエステル不織布は、Shalag Shamir Non−wovens(Upper Galilee,Israel)から市販されている。他の実施態様では、基材501はポリエチレン不織フェルトであってよいが、ポリエチレン−ポリプロピレンコポリマーなどの他の材料を用いることもできるであろう。アスファルトとの適合性のある他のポリマーを、基材501に使用できる(例えば、PVC、ナイロン(ポリアミド)、ポリアクリレート、HDPE、およびある特定のポリプロピレンがあり、これらは所望の剛性、適合性、および耐食性を付与する)。他の実施態様では、基材501は、2種類以上のこうした材料からできた多層シート、またはこうした材料と別の適合性のある材料を組み合わせたものからできた多層シートを含むことができる。
【0094】
補強用繊維の層510としては、ガラス繊維メッシュまたはスクリム(実質的に縦方向に配向されている少なくとも第1セットの糸を含む)がある。糸は、ECRまたはEガラスフィラメントを含んでもよい。他の実施態様では、「KEVLAR(登録商標)」と呼ばれるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)のポリアミド系繊維などの他の高モジュラス繊維を使用してよい。
【0095】
接着剤512は、舗装の温度、圧力、またはその両方で活性化されて、アスファルト舗装との適合性のある結合を形成することができる。好ましくは、接着剤512は、50〜99重量%のPVCラテックスエマルションを含む。実施態様によっては、接着剤512は、上述した表1中のPVCラテックスエマルションである。
【0096】
ここで図12に関して言えば、実施態様によっては、製造物は、補強用繊維被覆糸(例えば、ガラス繊維)のメッシュまたはスクリム510と2つのポリエステル不織布基材501とを含む。ガラス繊維のメッシュまたはスクリム510は、「タービン技術」によって形成される。タービン技術は、横方向糸を備えた回転タービンヘッド(rotating turbine head)を使用すること、および機械的スパイラル機構を利用して糸の横方向のスペースを制御することを含む。次いでガラス繊維スクリム510にバインダーを含浸させてコーティングする。多数の樹脂をバインダーに使用できるが、それは樹脂が舗装の温度、圧力、またはその両方で塑性流動する場合である。実施態様によっては、バインダーは、上述した表1中のPVCラテックスエマルションである。他の実施態様では、バインダーは、所望の剛性、適合性、および耐食性を示す、アクリル、PVC、ナイロン、HDPE、ならびにある特定のポリエチレンおよびポリプロピレンであってよい。これらは、熱溶融、エマルション、溶剤、熱硬化または放射線硬化の系を用いて施すことができる。糸をバインダーでコーティングした直後に、接着剤512を用いて、スクリム510を2つのポリエステル基材501に積層する。
【0097】
実施態様によっては、接着剤512およびバインダーは両方とも上述した表1中の同じPVCラテックスエマルションであり、1つの施工ステップで、糸にバインダー/接着剤を含浸させかつ積層ステップ用に接着剤512を糸にコーティングする。他の実施態様では、糸510にバインダーを含浸させるステップとは別に、接着剤512を施すことができる。例えば、バインダーおよび接着剤512が互いに異なる材料である場合には、接着剤を施すステップは別に行われるであろう。
【0098】
メッシュまたはスクリム510にコーティングを行った後、製造物500を(例えば、機械の乾燥セクションで)硬化させ、巻いて完成ロールにする。その結果として、上部層501と底部層501(ポリエステル不織基材)との間に挟まれたガラス繊維スクリム510を有する3層製造物500が得られる。
【0099】
図14は、図12の製造物を作るための装置の一例を示す。上部および底部の基材501(ポリエステル不織材料であってよい)を、ロール552から供給する。基材501の方向は、供給ローラ558で制御することができる。ガラス繊維スクリム510は、別のローラ558で供給し、コーティング512を含んでいる容器を通過させる(これにより、スクリム510がコーティングされる)。コーティングされたスクリム510がコーティング容器から現れ、1つまたは複数のローラ560、561によって向きを変えられる。その後、上部不織層501およびコーティングされたスクリム510は第1積層ロール554の下を通過する一方、第2積層ロール556とローラ561との間で張力を維持して、スクリムを上部不織層501に接合する。次いで、上部不織層501(スクリム510が積層されている)が供給されて、別の積層ローラ556を通るようにされ、それによって底部不織基材501がスクリム510の底部に接合されて製造物500が形成される。次いで積層製造物500を乾燥炉(図示せず)に供給する。
【0100】
他の実施態様(例えば、図13)では、ガラス繊維スクリムは、縦方向に伸びている第1セットの糸510mおよび実質的に横方向に配向されている第2セットの糸510cを含む。実施態様によっては、スクリム510c、510mは、縦方向および横方向の両方に1インチ当たり3本の糸(1センチメートル当たり約1本の糸)を含む。1インチ当たり3本の糸を有する製造物は、交通量の少ない区域の舗道に用いるのに適している。1インチ当たりの糸の数がもっと多いものは、中程度の交通量の区域用としていっそう強い補強材を提供するのに使用できる。
【0101】
製造物500(図12)の場合と同じ機械を使用し、その方法に幾つかの変更を加えて、製造物600(図13)を作ることができる。横方向の糸510cを縦方向の繊維510mの上部に置き、縦方向に対して実質的に垂直になるようにする。ポリエステルの上部層501tは上部から供給するが、スクリム510m、510cと一緒にコーティングパン(coating pan)およびコーティングロール(図示せず)を通過するようにする。これは、最終製造物600における糸の間隔を(上部層501tとスクリム510mとの間のスクリム510cによって)維持するために行う。バインダー/接着剤512をスクリムに施した直後に(それがコーティングロールをちょうど離れるときに)、ポリエステルの底部層501bを上述と同じようにして施す。
【0102】
図15は、製造物500(図12)または600(図13)を用いた舗道構成550を示す。舗道550の保守および補修の際には、クラック231が含まれる既存の古い舗道230の上部にアスファルトバインダーコース235をオーバーレイする。古い舗道230は、典型的にはロール(図示せず)によってテクスチャライズまたは粉砕されており、これによってバインダーコース235用の密着性の良好な表面となっている。(あるいはまた、製造物500および600は、新しいアスファルト/ポルトランドセメントのコンクリートの舗道表面にかぶせることができる)。
【0103】
ビチューメンタックコート(bitumen tack coat)を、例えば、ホットスプレーまたはエマルションとして施す。施す速度は、約0.1ガロン/yd2〜約0.3ガロン/yd2であってよい。ビチューメンを吹き付けた後、製造物500または600を機械的手段または手動手段のいずれかによってビチューメン中にローラで入れる。ビチューメンは、製造物500、600とバインダーコース235との間の結合を形成し、また製造物500または600の中に吸収されて防水層を形成する。その後、さまざまな厚さのうちの1つの厚さでアスファルトコンクリートオーバーレイ240を施す。
【0104】
本発明を例示的実施態様によって説明してきたが、それらに限定されるわけではない。むしろ、本発明は広く解釈されるべきであり、本発明の同等物の範囲から逸脱しない範囲で当業者が実施できる他の変更形態および実施態様も含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材と;
樹脂性非アスファルト材料を含むか、あるいは約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含む材料を含んでいる、前記第1および第2主表面上の表面層と
を含むタックフィルムであって、
厚さが約3.8cm(1.5インチ)以上であるアスファルト舗装材料の被覆層が敷設されることよって前記タックフィルム材料に加えられる圧力の下で、前記表面層が約120℃以上の温度に加熱されると、前記表面層がアスファルト舗装材料の隣接層との結合を形成することができ、さらに
前記表面層が約20℃の温度および約1気圧の圧力では粘着性がない、タックフィルム。
【請求項2】
前記表面層が、前記コーティングの乾燥重量の約5重量%〜約9重量%の量の水溶性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のタックフィルム。
【請求項3】
前記表面層が、表面層のpHが約8または9となるのに十分な量のアンモニアをさらに含む、請求項1に記載のタックフィルム。
【請求項4】
前記表面層が約2重量%〜約5重量%の可塑剤をさらに含む、請求項1に記載のタックフィルム。
【請求項5】
前記表面層が、可溶性ポリマー、アンモニア、増粘剤、カーボンブラック、脱泡剤、および可塑剤からなる群の1種または複数種を約1〜10重量%だけさらに含む、請求項1に記載のタックフィルム。
【請求項6】
請求項1に記載のタックフィルムをアスファルト舗装材料のバインダー層の上に置くステップと、
アスファルト材料の表面層を前記タックフィルムの上に置くステップと
を含む、舗装方法。
【請求項7】
前記方法が、前記アスファルト材料の表面層を置く前に、オープン補強層を前記タックフィルムの上にかぶせることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材を用意するステップと、
樹脂性非アスファルト表面層材料か、あるいは約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料で前記第1および第2主表面を覆うステップと
を含む、請求項1に記載のタックフィルム材料を製造する方法。
【請求項9】
厚さが約3.8cm(1.5インチ)以上であるアスファルト舗装材料の被覆層が敷設されることによって前記タックフィルム材料に加えられる圧力の下で、前記表面層材料が約120℃以上の温度に加熱されると、前記表面層材料がアスファルト舗装材料の隣接層との結合を形成することができ、かつ前記表面層材料が約20℃の温度および約1気圧の圧力では粘着性がない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記覆うステップが、前記キャリヤー基材を、前記樹脂性非アスファルト表面層材料の中に、あるいは約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料の中に浸すことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項1】
第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材と;
樹脂性非アスファルト材料を含むか、あるいは約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含む材料を含んでいる、前記第1および第2主表面上の表面層と
を含むタックフィルムであって、
厚さが約3.8cm(1.5インチ)以上であるアスファルト舗装材料の被覆層が敷設されることよって前記タックフィルム材料に加えられる圧力の下で、前記表面層が約120℃以上の温度に加熱されると、前記表面層がアスファルト舗装材料の隣接層との結合を形成することができ、さらに
前記表面層が約20℃の温度および約1気圧の圧力では粘着性がない、タックフィルム。
【請求項2】
前記表面層が、前記コーティングの乾燥重量の約5重量%〜約9重量%の量の水溶性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のタックフィルム。
【請求項3】
前記表面層が、表面層のpHが約8または9となるのに十分な量のアンモニアをさらに含む、請求項1に記載のタックフィルム。
【請求項4】
前記表面層が約2重量%〜約5重量%の可塑剤をさらに含む、請求項1に記載のタックフィルム。
【請求項5】
前記表面層が、可溶性ポリマー、アンモニア、増粘剤、カーボンブラック、脱泡剤、および可塑剤からなる群の1種または複数種を約1〜10重量%だけさらに含む、請求項1に記載のタックフィルム。
【請求項6】
請求項1に記載のタックフィルムをアスファルト舗装材料のバインダー層の上に置くステップと、
アスファルト材料の表面層を前記タックフィルムの上に置くステップと
を含む、舗装方法。
【請求項7】
前記方法が、前記アスファルト材料の表面層を置く前に、オープン補強層を前記タックフィルムの上にかぶせることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1および第2主表面を有するポリマーフィルムを含んでいるキャリヤー基材を用意するステップと、
樹脂性非アスファルト表面層材料か、あるいは約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料で前記第1および第2主表面を覆うステップと
を含む、請求項1に記載のタックフィルム材料を製造する方法。
【請求項9】
厚さが約3.8cm(1.5インチ)以上であるアスファルト舗装材料の被覆層が敷設されることによって前記タックフィルム材料に加えられる圧力の下で、前記表面層材料が約120℃以上の温度に加熱されると、前記表面層材料がアスファルト舗装材料の隣接層との結合を形成することができ、かつ前記表面層材料が約20℃の温度および約1気圧の圧力では粘着性がない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記覆うステップが、前記キャリヤー基材を、前記樹脂性非アスファルト表面層材料の中に、あるいは約50%以上の樹脂性非アスファルト構成材と約50%以下のアスファルト構成材とを含んでいる材料の中に浸すことを含む、請求項8に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−535654(P2010−535654A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520280(P2010−520280)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/072339
【国際公開番号】WO2009/021040
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510029807)サンゴバン・テクニカル・ファブリックス・アメリカ・インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/072339
【国際公開番号】WO2009/021040
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510029807)サンゴバン・テクニカル・ファブリックス・アメリカ・インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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