説明

アゾ染料の金属錯体およびインクジェット印刷におけるそれらの使用

下記式(1)の化合物もしくはその塩(式中、XおよびYは、それぞれ独立して置換基であり;Gは、場合によっては置換されていてもよいC1-12-アルキレンであり;Mは、金属であり;nは、0〜6であり;pは、0〜3であり;R1は、場合によっては置換されていてもよいC1-8-アルキル、場合によっては置換されていてもよいC5-8-シクロアルキル、場合によっては置換されていてもよいアリールもしくは場合によっては置換されていてもよいヘテロ環であり;そしてR2は、HもしくはC1-4-アルキルである;ただし、R1がカルボキシル基を有さないことを条件とする)。更に、インクジェット印刷インク、インクジェット印刷プロセス、印刷された材料、及びインクジェットプリンター用カートリッジ。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、化合物、これらの化合物を含む組成物、インク、印刷プロセス、印刷された基材およびインクジェットプリンターカートリッジに関する。
インクジェット印刷は、ノズルを基材と接触させることなく、インクの液滴が細目ノズルを通して基材に噴出される、非衝撃印刷技術である。
【0002】
インクジェット印刷に用いられる染料およびインクに対して多くの要求性能がある。例えば、それらは、望ましくは良好な耐水、耐光および耐オゾン堅牢度ならびに光学濃度を有する鮮明な、毛羽立たない画像を与えるものである。インクは、しばしば汚れを防ぐために基材に施されるとき速乾することが要求されるが、プリンターの作動を停止するのでインクジェットノズルの先端にクラストを形成してはいけない。インクは、また分解もしくは細目ノズルをブロックしかねない沈殿物の形成がなく、長時間の貯蔵に安定であるべきである。
【0003】
銅キレートが、例えば、US 6,265,554 B1から既知である。しかし、インクジェット印刷インクに優れた特性を有する着色剤を提供するという絶え間ない要求がある。
写真的リアリズムの品質の印刷に関する具体的な問題は、耐光堅牢度のそれである。印刷物は、しばしば日光に長時間曝されるので、画像ができるだけ良好な耐光堅牢度を有するべきであるという要求がある。大気オゾンと反応する印刷物における着色剤は、染料の退色に主要な役割を果たし得る。
【0004】
本発明は、改善された耐光堅牢度を有するインクジェット印刷における使用に適するマゼンタ着色剤およびインクジェット関連製品、ならびにこれらの着色剤を用いるプロセスに関する。
【0005】
本発明によれば、式(1)の化合物もしくはその塩が提供される:
【0006】
【化1】

【0007】
式中、XおよびYは、それぞれ独立して置換基であり;
Gは、場合によっては置換されていてもよいC1-12-アルキレンであり;
Mは、金属であり;
nは、0〜6であり;
pは、0〜3であり;
R1は、場合によっては置換されていてもよいC1-8-アルキル、場合によっては置換されていてもよいC5-8-シクロアルキル、場合によっては置換されていてもよいアリールもしくは場合によっては置換されていてもよいヘテロ環であり;そして
R2は、HもしくはC1-4-アルキルである;
ただし、R1がカルボキシル基を有さないことを条件とする。
【0008】
好ましくは、Mは銅であり、より好ましくは、MはCu2+である。
式(1)の化合物は、1つ以上の追加の配位子も含んでもよい。これらの配位子は、有色でも、無色でもよく、1よりも多い配位子が存在するとき、それらは同じでも異なっていてもよい。例えば、水が、Mへのさらなる配位子でもよい。
【0009】
好ましくは、XおよびYは、それぞれ独立して下記のものから選ばれる:場合によっては置換されていてもよいアルキル(好ましくはC1-4-アルキル)、場合によっては置換されていてもよいアルケニル(好ましくはC1-4-アルケニル)、場合によっては置換されていてもよいアルキニル(好ましくはC1-4-アルキニル)、場合によっては置換されていてもよいアルコキシ(好ましくはC1-4-アルコキシ)、場合によっては置換されていてもよいアリール(好ましくはフェニル)、場合によっては置換されていてもよいアリールオキシ(好ましくはフェノキシ)、場合によっては置換されていてもよいヘテロ環、酸化ポリアルキレン(好ましくは酸化ポリエチレンもしくは酸化ポリプロピレン)、カルボキシル、ホスファト、スルホ、ニトロ、シアノ、ハロ、ウレイド、-SO2F、ヒドロキシル、エステル、-NR3R4、-COR3、-CONR3R4、-NHCOR3、カルボキシエステル、スルホンおよび-SO2NR3R4(式中、R3およびR4は、それぞれ独立してHもしくは場合によっては置換されていてもよいアルキル(特にC1-4-アルキル)、あるいは-CONR3R4および-SO2NR3R4の場合、R3およびR4は、それらが結合する窒素原子とともに脂肪族もしくは芳香族環構造を表してもよい)。XおよびYについて記載した置換基のいずれかの任意の置換基を、置換基の同じリストから選んでもよい。
【0010】
好ましくは、Xは、スルホ、ヒドロキシルもしくはアミノである。
好ましくは、Yは、スルホ、アミノ、カルボキシルもしくはホスファトである。
Gは、好ましくは場合によっては置換されていてもよいC1-8-アルキレン、より好ましくは場合によっては置換されていてもよいC1-4-アルキル、特にC2-4-アルキルである。
【0011】
Gに存在する場合によって存在してもよい置換基は、好ましくは下記のものから選ばれる:場合によっては置換されていてもよいアルケニル(好ましくはC1-4-アルケニル)、場合によっては置換されていてもよいアルキニル(好ましくはC1-4-アルキニル)、場合によっては置換されていてもよいアルコキシ(好ましくはC1-4-アルコキシ)、場合によっては置換されていてもよいアリール(好ましくはフェニル)、場合によっては置換されていてもよいアリールオキシ(好ましくはフェノキシ)、場合によっては置換されていてもよいヘテロ環、酸化ポリアルキレン(好ましくは酸化ポリエチレンもしくは酸化ポリプロピレン)、カルボキシル、ホスファト、スルホ、ニトロ、シアノ、ハロ、ウレイド、-SO2F、ヒドロキシル、エステル、-NR3R4、-COR3、-CONR3R4、-NHCOR3、カルボキシエステル、スルホンおよび-SO2NR3R4(式中、R3およびR4は、上で定義される通りである)。Gについて記載した置換基のいずれかの場合によって存在してもよい置換基を、置換基の同じリストから選んでもよい。
【0012】
R1は、好ましくは場合によっては置換されていてもよいC1-8-アルキル、特にC1-4-アルキル;場合によっては置換されていてもよいフェニルもしくは場合によっては置換されていてもよいヘテロ環である。
【0013】
R1が場合によっては置換されていてもよいC1-8-アルキルであるとき、好ましい置換基は、Gについて上に挙げたものから独立して選ばれる。R1が場合によっては置換されていてもよいC1-8-アルキルであるとき、R1がスルホ;ホスファト;ヒドロキシル;シアノ、場合によっては置換されていてもよいフェニル、特にフェニルユリア;場合によっては置換されていてもよいヘテロ環、特にテトラヒドロフラニルからなる群から選ばれる1つ以上の基で置換されていることが特に好ましい。
【0014】
R1が場合によっては置換されていてもよいフェニルもしくは場合によっては置換されていてもよいヘテロ環であるとき、好ましい置換基は、XおよびYについて上に挙げたものから独立して選ばれる。
【0015】
R2は、好ましくはHもしくはメチルである。
式(1)の化合物上の酸性もしくは塩基性基、特に酸性基は、好ましくは塩の形である。かくて、本明細書に示される式には、遊離酸および塩の形、ならびにそれらの混合物における化合物が含まれる。
【0016】
好ましい塩類は、アルカリ金属塩類、特にリチウム、ナトリウムおよびカリウム、アンモニウムおよび置換アンモニウム塩類((CH3)4N+などの第四アミン類も含む)、ならびにそれらの混合物である。特に好ましいものは、ナトリウム、リチウム、アンモニア塩類および揮発性アミン類ならびにこれらの混合物であり、より特別に好ましいものは、ナトリウム塩類である。化合物は、既知の技術を用いて塩類に転化されてもよい。
【0017】
式(1)の化合物は、本明細書に示されるもの以外の互変異性形で存在してもよい。これらの互変異性体は、本発明の範囲内に含まれる。
式(1)の化合物を含む金属錯体は、魅力的な強いマゼンタシェードを有し、インクジェット印刷インクの調製における使用に価値ある着色剤である。それらは、溶解性、貯蔵安定性ならびに耐水および耐光堅牢度の良好なバランスから利益を得ている。特に、それらは、優れた耐光および耐オゾン堅牢度を示す。
【0018】
本発明の第二側面によれば、本発明の第一側面による式(1)の化合物および媒体、好ましくは液状媒体を含む組成物が提供される。
好ましい組成物は、下記のものを含む:
(a)0.01〜30部の本発明の第一側面による化合物;および
(b)70〜99.99部の液状媒体。
【0019】
成分(a)の部数は、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.5〜15、特に1〜5部である。成分(b)の部数は、好ましくは99.9〜80、より好ましくは99.5〜85、特に99〜95部である。
【0020】
好ましくは、成分(a)は、成分(b)に完全に溶解する。好ましくは、成分(a)は、20℃で少なくとも10%の成分(b)への溶解度を有する。これは、より希薄なインクを調製するために用いてもよい液体染料濃縮物の調製を可能とし、液状媒体の蒸発が貯蔵中に起こっても染料沈殿のチャンスを低減させる。
【0021】
好ましい液状媒体としては、水、水と有機溶媒との混合物、および無水の有機溶媒などが挙げられる。
媒体が水と有機溶媒との混合物を含むとき、水対有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1〜1:99、より好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20である。
【0022】
水と有機溶媒との混合物に存在する有機溶媒が水混和性有機溶媒もしくはそのような溶媒の混合物であることが好ましい。好ましい水混和性有機溶媒としては、C1-6-アルカノール類、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;線状アミド類、好ましくはジメチルホルムアミドもしくはジメチルアセトアミド;ケトン類およびケトンアルコール類、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル類、好ましくはテトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール類、好ましくは2〜12の炭素原子を有するジオール類、例えば、ペンタン-1,5-ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコールおよびチオジグリコールならびにオリゴおよびポリアルキレングリコール類、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール類、好ましくはグリセロールおよび1,2,6-へキサントリオール;ジオール類のモノ-C1-4-アルキルエーテル類、好ましくは2〜12の炭素原子を有するジオール類のモノ-C1-4-アルキルエーテル類、特に2-メトキシエタノール、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)-エタノール、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2-[2-(2-エトキシエトキシ)-エトキシ]-エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド類、好ましくは2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3-ジメチルイミダゾリドン;環状エステル類、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド類、好ましくはジメチルスルホキシドおよびスルホランなどが挙げられる。好ましくは、液状媒体は、水および2つ以上、特に2〜8の水混和性有機溶媒を含む。
【0023】
特に好ましい水混和性溶媒は、環状アミド類、特に2-ピロリドン、N-メチル-ピロリドンおよびN-エチル-ピロリドン;ジオール類、特に1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;ならびにジオール類のモノ-C1-4-アルキルおよびC1-4-アルキルエーテル類、より好ましくは2〜12の炭素原子を有するジオール類のモノ-C1-4-アルキルエーテル類、特に2-メトキシ-2-エトキシ-2-エトキシエタノールである。
【0024】
水および1つ以上の有機溶媒の混合物を含むさらなる好適な液状媒体の例は、US 4,963,189、US 4,703,113、US 4,626,284およびEP 4,251,50Aに記載されている。
液状媒体が無水の(すなわち、1重量%未満の水)有機溶媒を含むとき、溶媒は、好ましくは30℃〜200℃、より好ましくは40℃〜150℃、特に50〜125℃の沸点を有する。有機溶媒は、水不混和性、水混和性もしくはそのような溶媒の混合物でもよい。好ましい水混和性有機溶媒は、前述の水混和性有機溶媒およびそれらの混合物のいずれかである。好ましい水不混和性溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類;エステル類、好ましくはエチルアセテート;塩素化炭化水素類、好ましくはCH2Cl2;およびエーテル類、好ましくはジエチルエーテル;ならびにこれらの混合物などが挙げられる。
【0025】
液状媒体が水不混和性有機溶媒を含むとき、好ましくは極性溶媒が含まれるが、それは、これが液状媒体中の化合物の溶解度を高めるからである。極性溶媒としては、C1-4-アルコール類などが挙げられる。
【0026】
前記好適態様によれば、液状媒体が無水の有機溶媒である場合、それがケトン(特にメチルエチルケトン)および/またはアルコール(特にC1-4-アルカノール、より特別にはエタノールもしくはプロパノール)を含むことが特に好ましい。
【0027】
無水の有機溶媒は、単一の有機溶媒でも、あるいは2つ以上の有機溶媒の混合物でもよい。媒体が無水の有機溶媒であるとき、それが2〜5の異なる有機溶媒の混合物であることが好ましい。これは、インクの乾燥特性および貯蔵安定性に良好な制御を与える媒体が選ばれることを可能とする。
【0028】
無水の有機溶媒を含む液状媒体は、速乾時間が要求される場合、特に疎水性および非吸収性基材、例えば、プラスチック、金属およびガラスに印刷するときに、特に有用である。
【0029】
液状媒体は、従来インクジェット印刷インクに用いられる追加の成分、例えば、粘度および表面張力改変剤、腐蝕抑制剤、殺生剤、コゲーション(kogation)低減添加剤およびイオン性でも非イオン性でもよい界面活性剤も含んでもよい。
【0030】
いつも必要というわけではないが、さらなる着色剤を組成物に添加してシェードおよび性能特性を改変してもよい。そのような着色剤の例としては、C. I. Direct Yellow 86、132、142および173;C. I. Direct Blue 199 および307;C. I. Food Black 2;C. I. Direct Black 168 および195;C. I. Acid Yellow 23;ならびにSeiko Epson Corporation、Hewlett Packard Company、Canon Inc. & Lexmark Internationalから市販されているインクジェットプリンターに用いられる染料のいずれもなどが挙げられる。そのようなさらなる染料の添加は、総溶解度を増大させて結果として得られるインクの低コゲーション(kogation:ノズル閉塞)をもたらすことができる。
【0031】
好ましくは、本発明の第二側面による組成物は、インクジェットプリンターにおける使用に適するインクもしくは液体染料濃縮物である。濃縮物は、着色剤を輸送し、したがって染料を乾燥させ過剰の液体を輸送することに関連するコストを最小限度にする手段として有用である。
【0032】
かくて、本発明の第二側面による組成物は、好ましくは高純度成分を用いて、および/または組成物が調製された後に精製することにより調製される。好適な精製技術は周知であり、例えば、限外ろ過、逆浸透、イオン交換およびそれらの組合せである(それらが本発明による組成物に組み込まれる前でも後でもよい)。この精製は、無機塩類およびその合成からもたらされる副産物を実質的にすべて除去する。そのような精製は、インクジェットプリンターにおける使用に適する低粘度水溶液の調製において有用である。
【0033】
好ましくは、インクは、25℃で20cP未満、より好ましくは10cP未満、特に5cP未満の粘度を有する。これらの低粘度インクは、インクジェットプリンターで基材に施すのに特に好適である。
【0034】
好ましくは、インクは、全部で500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満、より特別には10ppm未満の二価および三価の金属イオン(インクの成分に結合した二価および三価の金属イオン以外の)を含む。遊離の二価および三価の金属は、インクジェットプリンターノズルをブロックしかねない不溶性錯体を貯蔵時に形成し得る。
【0035】
好ましくは、インクは、10μm以下、より好ましくは3μm以下、特に2μm以下、より特別には1μm以下の平均ポアサイズを有するフィルターを通してろ過されている。このろ過は、多くのインクジェットプリンターで見られる細目ノズルをブロックしかねない粒状物質を除去する。
【0036】
好ましくは、インクは、全部で500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満、より特別には10ppm未満のハライドイオンを含む。高レベルのハライドイオンは、例えば、インクジェットプリンターヘッドにおける金属部分の腐蝕などの有害作用を起こし得る。
【0037】
本発明の第三側面は、本発明の第二側面によるインクをインクジェットプリンターにより基材に施すことを含む、基材に画像を形成するためのプロセスを提供する。
インクジェットプリンターは、好ましくはインクを小さなオリフィスを通して基材に噴出される液滴の形で基材に施す。好ましいインクジェットプリンターは、圧電インクジェットプリンターおよび熱インクジェットプリンターである。熱インクジェットプリンターにおいては、プログラムされたパルスの熱が、オリフィスに隣接する抵抗器によりインク溜め中のインクに適用され、それによりインクが基材とオリフィスとの間の相対運動中に基材に向けられる小さな液滴の形でオリフィスから噴出されるようにする。圧電インクジェットプリンターにおいては、小さな結晶の振動が、オリフィスからインクを噴出させる。別の方法として、インクは、例えば、国際特許出願00/48938および国際特許出願00/55089に記載されるような、可動なパドルもしくはプランジャーに接続された電気機械的作動器により噴出される。
【0038】
基材は、好ましくは紙、プラスチック、布帛(textile)、金属もしくはガラス、より好ましくは紙、オーバーヘッドプロジェクタスライドもしくは布帛材料、特に紙である。
好ましい紙は、普通紙、あるいは酸性、アルカリ性もしくは中性の性質を有してもよい処理紙である。
【0039】
写真用インクジェット紙は、特に好ましい基材である。
本発明の第四側面は、本発明の第二側面による組成物、本発明の第一側面による化合物、もしくは本発明の第三側面によるプロセスにより印刷された紙、プラスチック、布帛、金属もしくはガラス、あるいはオーバーヘッドプロジェクタスライド、特に紙、より特別には普通紙、コーテッドあるいは処理紙である。
【0040】
本発明の第四側面が写真用品質のインクジェット紙上の写真印刷物であることが、特に好ましい。
本発明の第五側面は、チャンバーおよびインクを含み、前記インクが、チャンバー内にあり、前記インクが、本発明の第二側面で定義される通りである、インクジェットプリンターカートリッジを提供する。
【0041】
本発明を、下記実施例によりさらに説明するが、すべての部およびパーセンテージは、特に断りがない限り重量基準である。
実施例1
【0042】
【化2】

【0043】
タウリン(7.8g、0.062モル)をReactive Red 23 (Clariant 製Duasyn(登録商標)Red 3B-SF-VP 346)(25g、0.031モル)の水(300ml)溶液に添加した。反応混合物を2N NaOH の添加によりpH9に調整し、60℃で2時間攪拌した。ついで反応混合物を室温まで冷却し、pHを濃HClで3に調整し、塩化ナトリウムの添加により生成物を沈殿させた。生成物をろ過により集め、水(300ml)に溶解し、pHを48%NaOHで7に調整した。この溶液を、導電率が100μs未満になるまで透析し、ついで70℃のオーブン中で蒸発させて19gのマゼンタ固体を与えた。
【0044】
実施例2〜4
タウリンの代わりに表1に示されるアミノ化合物を用いたことを除いて、実施例1に記載されるものと同様なプロセスを用いて実施例2〜4を調製し、表1に示される異なる置換基Xを有する一般式(2)の化合物を与えた。
【0045】
【化3】

【0046】
【表1】

【0047】
比較例1
タウリンの代わりに下記式:
【0048】
【化4】

【0049】
のアミノ化合物を用いたことを除いて、実施例1に記載されるものと同様なプロセスを用いて比較例1を調製し、Xが、
【0050】
【化5】

【0051】
である式(2)の化合物を与えた。
実施例5
インク1〜4および比較インク1の調製
インク1〜4を、実施例1〜4の対応する化合物(3.5g)を5:5:1の重量比で2-ピロリドン/チオジグリコール/Surfynol(登録商標)465 からなる液状媒体100mlに溶解することにより調製した。
【0052】
比較インク1を、比較例1の化合物(3.5g)を5:5:1の重量比で2-ピロリドン/チオジグリコール/Surfynol(登録商標)465 からなる液状媒体100mlに溶解することにより調製した。
【0053】
実施例6
インクジェット印刷
インク1〜4および比較インク1を、Hewlett Packard DeskJet 550C(登録商標)を用いて種々の紙にインクジェット印刷した。それぞれの印刷物のCIE色座標(a、b、L、Chroma "C"および色相(hue)"h") を、20nmスペクトル間隔で400〜700nmのスペクトル範囲で0°/45°の測定配置を有するXrite 983(登録商標)Spectrodensitometerを用い、2°(CIE 1931)の観測装置角度およびステータスTの密度操作で光源C(illuminant C)を用いて、測定した。2回以上の測定を、10mmx10mmよりも大きいサイズを有する印刷物上の固体の色ブロックを対角線に横切って行った。結果として得られたインク1〜4の印刷物の特性を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
耐光堅牢度
耐光堅牢度を評価するために、印刷物をAtlas Ci35 Weatherometer中で100時間照射した。結果を表3に示すが、退色の程度をΔEで表す(ここでは低い数字は、高い耐光堅牢度を示す)。ΔEは、印刷物のCIE色座標L*、a*、b*における総合変化と定義され、方程式ΔE=(ΔL2+Δa2+Δb20.5により表される。
【0056】
【表3】

【0057】
表3から、本発明のインクが、R1がカルボキシル基を含むインクに比べて、予想もしなかった、より優れた耐光堅牢度を示すことが明らかである。
さらなるインク
表AおよびBに記載されるインクを調製してもよく、ここでは第一欄に記載される染料は、同じ数字の上記実施例で作られた化合物である。第二欄から先に引用された数字は、関連した成分の部数を示し、全ての部は重量基準である。インクを、インクジェット印刷により紙に施してもよい。
【0058】
下記の略語が、表AおよびBで用いられている:
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N-メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2-ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン-1,2-ジオール
BDL=ブタン-2,3-ジオール
CET=セチルアンモニウムブロマイド
PHO=Na2HPO4および
TBT=第三ブタノール
TDG=チオジグリコール
【0059】
【表4】

【0060】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物もしくはその塩:
【化1】

式中、XおよびYは、それぞれ独立して置換基であり;
Gは、場合によっては置換されていてもよいC1-12-アルキレンであり;
Mは、金属であり;
nは、0〜6であり;
pは、0〜3であり;
R1は、場合によっては置換されていてもよいC1-8-アルキル、場合によっては置換されていてもよいC5-8-シクロアルキル、場合によっては置換されていてもよいアリールもしくは場合によっては置換されていてもよいヘテロ環であり;そして
R2は、HもしくはC1-4-アルキルである;
ただし、R1がカルボキシル基を有さないことを条件とする。
【請求項2】
Mが、Cu2+である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Gが、場合によっては置換されていてもよいC1-4-アルキルである、請求項1もしくは請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R1が、場合によっては置換されていてもよいC1-8-アルキル、場合によっては置換されていてもよいフェニルもしくは場合によっては置換されていてもよいヘテロ環である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項5】
R2が、Hもしくはメチルである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物および液状媒体を含む組成物。
【請求項7】
インクジェットプリンターにおける使用に適するインクである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
インクジェットプリンターにより請求項7に記載のインクを基材に施すことを含む、基材に画像を形成するためのプロセス。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の化合物で印刷された紙、プラスチック、布帛、金属もしくはガラス、あるいはオーバーヘッドプロジェクタスライド。
【請求項10】
チャンバーおよびインクを含み、前記インクが、チャンバー内にあり、前記インクが、請求項7で定義される通りである、インクジェットプリンターカートリッジ。

【公表番号】特表2006−500455(P2006−500455A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539169(P2004−539169)
【出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003812
【国際公開番号】WO2004/029158
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(500060825)アベシア・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】