説明

アゾ顔料を含む顔料分散体、及び、これを用いたインクジェット記録用水性インク

【課題】長期間保存後又は高温に曝された後であっても、顔料分散体の粒径が変わらず、スジ及びムラの発生が抑制され、均一な印字画像が得られるインクジェット記録用水性インクを提供する。
【解決手段】A及びBを含有するビニルポリマー粒子の顔料分散体であり、Aが窒素複素環を有する特定の構造式を持つアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物、Bがポリマー主鎖と連結基を介して結合した非芳香族脂環式基を有する構造単位と、親水性基を有する構造単位とを含むビニルポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温状態に曝されても顔料分散液中の分散体の粒径に影響がなく均一な顔料分散体と、濃度ムラ及びスジムラのない画質を実現する新規なアゾ顔料を含むインクジェット記録用水性インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット用被記録媒体として様々な媒体が使用されてきており、インクジェット専用紙のみならず、市販の普通紙、上質紙やコート紙やアート紙などの印刷媒体でも高品位の画質が求められている。普通紙や印刷媒体で耐水性や耐光性等の堅牢性を与えるインク色材としては顔料が好ましく、コストの観点も含めて水性顔料インクでの検討が種々行われている。その中で、インクジェット記録用のイエロー顔料としてアゾ系顔料が好ましく使用されている。
しかし、長期間あるいは高温で経時されたインクを受像紙に印字するとスジ及びムラを生じることが判明した。
インクジェット記録用水系インクとして、顔料とアニオン性基含有有機高分子化合物とを含有する水性顔料分散体を有するインクジェット記録用水分散体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、顔料としてC.I.ピグメントイエロー74と、分散剤としてメタクリル酸n−ブチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとメタクリル酸とスチレンとの共重合体とを用いることで、分散性と分散安定性及び鮮明な画像を形成することができるとされている。
また、シクロヘキシルアクリレート及び/又はベンジルアクリレートと、メタクリル酸と、アクリル酸とを重合したポリマー、顔料及び水性媒体からなるインクジェットインク用顔料分散体が特許文献2に開示されている。これを用いたインクジェットインクは、安定性、分散性に優れることが記載されている。
アニオン性基含有高分子化合物を含有するポリマーで作成されたインクジェット記録用インクでは、インクの安定性、分散性が改善されると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−239594号公報
【特許文献2】特開2005−171223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の顔料水分散体を用いて構成したインクジェット記録用水性インクでは、長期間保存あるいは高温で経時された後に使用すると、濃度ムラ及び筋ムラの点で満足できるレベルでないことが判明した。特許文献2のポリマー組成物を用いてもC.I.ピグメントイエロー74などの市販顔料からなる顔料分散体の粒子径はインクが加熱されることで増大し、加熱後の印字では色むらの原因となることが判った。
本発明の課題は、長期間保存後又は高温に曝された後であっても、顔料分散体の粒径が変わらず、スジ及びムラの発生が抑制され、均一な印字画像が得られるとともに、光堅牢性に優れたインクジェット記録用水性インクを作製できる顔料分散体、及び、これを用いたインクジェット記録用水性インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、分子内水素結合を形成可能なカルボニル基を有するアゾ顔料と、特定の構造を有するビニルポリマーとを用いて着色粒子を形成することにより、長期間保存後あるいは高温に曝された後であっても、顔料分散体の粒径が変わらず、スジ及びムラの発生を抑制することが可能なインクジェット記録用水性インクを得られることを見出した。
即ち、以下の手段により本発明の目的は達成される。
【0006】
1. A及びBを含有するビニルポリマー粒子の顔料分散体。
A:下記一般式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物
B:ポリマー主鎖と連結基を介して結合した非芳香族脂環式基を有する構造単位(a)と、親水性基を有する構造単位(b)とを含むビニルポリマー。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(1)中、Qは炭素原子と共に5〜7員の複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2は複素環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した4量体を表す。)
【0009】
2. 前記構造単位(a)が下記一般式(I)で表される構造単位(a1)を含むことを特徴とする1に記載の顔料分散体。
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式(I)中、R1は水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表し、L1は−COO−、−OCO−、−CONR2−、−O−、又は置換若しくは無置換のフェニレン基を表し、R2は水素原子、アルキル基を表す。L2は単結合又は、2価の連結基を表す。Cyc1は1価の非芳香族脂環式基を表す。)
【0012】
3. 前記構造単位(a)が更に、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位(a2)を含むことを特徴とする1又は2に記載の顔料分散体。
【0013】
4. 前記構造単位(a)がシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来の構造単位より選択される1種以上を総量でビニルポリマー全質量に対して5質量%以上93質量%未満で含み、前記構造単位(b)がアクリル酸又はメタクリル酸に由来の構造単位より選択される1種以上をビニルポリマー全質量に対して3質量%以上41質量%未満で含む、ことを特徴とする1〜3のいずれかに記載の顔料分散体。
【0014】
5. 前記ビニルポリマーの重量平均分子量が、5000〜152000であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の顔料分散体。
【0015】
6. 前記ビニルポリマーの酸価が10〜270mgKOH/gであることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の顔料分散体。
【0016】
7. 前記顔料分散体の累積体積95%となる粒子径が、10nm〜400nmであることを特徴とする1〜6のいずれかに記載の顔料分散体。
【0017】
8. 一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする1〜7のいずれかに記載の顔料分散体。
【0018】
【化3】

【0019】
(一般式(2)中のQ、W、X1、R1、R2及びnは前記一般式(1)中のQ、W、X1、R1、R2及びnと同義である。n=2の場合は、Q、W、X1、R1、又はR2を介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X1、R1、又はR2を介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X1、R1、又はR2を介した4量体を表す。)
【0020】
9. 一般式(1)中、Qが炭素原子と共に5員含窒素複素環を形成することを特徴とする1〜8のいずれかに記載の顔料分散体。
【0021】
10.一般式(1)中のnが2であることを特徴とする1〜9のいずれかに記載の顔料分散体。
【0022】
11.一般式(2)中のX1が水素原子であることを特徴とする8〜10のいずれかに記載の顔料分散体。
【0023】
12.一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする1〜8のいずれかに記載の顔料分散体。
【0024】
【化4】

【0025】
(一般式(3)中のYは水素原子又は置換基を表し、Gは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、W、X1、X2、R1、R2及びnは前記一般式(1)中のW、X1、X2、R1、R2及びnと同義である。n=2の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した4量体を表す。)
【0026】
13.一般式(3)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする12に記載の顔料分散体。
【0027】
【化5】

【0028】
(一般式(4)中、Zは5〜8員含窒素複素環を構成するのに必要な原子団を表し、Y1、Y2、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0029】
14.W、W1、W2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であることを特徴とする1〜13のいずれかに記載の顔料分散体。
【0030】
15.G、G1、G2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基であることを特徴とする12又は13に記載の顔料分散体。
【0031】
16.Zが、6員含窒素複素環であることを特徴とする13〜15のいずれかに記載の顔料分散体。
【0032】
17.1〜16のいずれかに記載の顔料分散物と水溶性媒体とを含有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、長期間保存後又は高温に曝された後であっても、顔料分散体の粒径が変わらず、スジ及びムラの発生が抑制され、均一な印字画像が得られるとともに、光堅牢性に優れたインクジェット記録用水性インクを作製できる顔料分散体、及び、これを用いたインクジェット記録用水性インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の顔料分散体は、A及びBを含有するビニルポリマー粒子の分散体を含む。
A:下記一般式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物
B:ポリマー主鎖と連結基を介して結合した非芳香環脂環式基を有する構造単位(a)と、親水性基を有する構造単位(b)とを含むビニルポリマー
【0035】
【化6】

【0036】
(一般式(1)中、Qは炭素原子と共に5〜7員の複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2は複素環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した4量体を表す。)
【0037】
<主鎖と連結基を介して結合した非芳香族脂環式基を有する構造単位(a)>
主鎖と連結基を介して結合した非芳香族脂環式化合物を有する構造単位(a)(以下単に「構造単位(a)」と称する場合がある)における非芳香族脂環式化合物としては、特に限定されないが、非芳香族脂環式炭化水素基又は非芳香族複素環基が挙げられ、環を形成する炭素数が5〜15の非芳香族脂環式炭化水素基や環を形成する炭素数が3〜10の非芳香族複素環基が好ましい。中でも環を形成する炭素数が5〜15の非芳香族脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0038】
前記非芳香族脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、具体的な例としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、クロロシクロヘキサン、t−アミルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロオクタノール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はシクロヘキサンカルボキシルアルデヒドから水素原子を除いた基が挙げられる。また、この非芳香族脂環式炭化水素基には、環を形成する炭素原子の2個以上が、アルキレンで架橋した構造も含まれ、例えば、ノルボルネン、3−メチルー2−ノルボルネンメタノール、デカヒドロナフタレン、パーヒドロフルオレン、トリシクロデカン、アダマンタン、1−アダナンチルメチルケトン、1,3−シクロペンタンジオン、2−デカロンやノルカンファーに由来する構造が挙げられる。環を形成する基は、5〜10個の脂環式基がより好ましく、5〜8個の脂環式基が更に好ましく、炭素数が5若しくは6個の脂環式基が最も好ましい。
【0039】
前記非芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。前記非芳香族複素環基の複素環には、脂環式エーテル、糖、脂環式チオエーテル、脂環式アミン、脂環式アミド、脂環式エステル、脂環式チオエステル、脂環式チオアミドや複数のヘテロ原子を含む脂環式複素環が含まれる。
脂環式エーテルの具体例として、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロ−4H−ピラン−4−オール、2−メチル−1,3−ジオキソラン、ジオキサン、2−(ヒドロキシメチル)−12−クラウン−4が挙げられる。脂環式エーテルにヒドロキシル基が置換した糖類も含まれる。糖の具体例として、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、フルクトース、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール等が挙げられる。脂環式チオエーテルの具体例としてテトラヒドロチオフェン、ペンタメチレンスルフィド、テトラメチレンスルフィド、テトラメチレンスルホン、グリコールサルファイト等が挙げられる。脂環式アミンの具体例として、ピロリジン、3−ピロリジノール、1−アミノピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、1−アミノー2,6−ジメチルピペリジン、デカヒドロキノリン、キノクリジン、ピペコリン酸、ニピペコティック酸、i−ニペコティック酸、1−アセチルピペラジンやプロリンなどが挙げられる。脂環式アミド類として、例えば、2−イミダゾリドン、テトラヒドロー2−ピリミドン、ヒダントイン、2,4−チアゾリジンジオン、パラバニック酸、シクロセリン、バルビツール酸、2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、2−ピロリジノン、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、4−アザトリシクロ[4.3.1.1(3,8)]−ウンデカン−5−オ、2−オキサゾリドン、スクシンイミド、無水グリシン、グルタルイミド、β,β‐メチルエチルグルタルイミド、等が挙げられる。脂環式エステルとしてεカプロラクタム、デルターバレロラクトン、メバロニックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンやテトロニック酸が挙げられる。脂環式チオエステルの例として、γ−チオブチロラクトンやチオテトロニック酸が挙げられる。脂環式チオアミドの具体例として、ω−チオカプロラクタム、ローダニン、2−チオヒダントイン、3−アミノローダニンが挙げられる。複数のヘテロ原子を含む脂環式複素環の例として、モルホリンやチアゾリジンが挙げられる。
非芳香族複素環式基の複素環の中でも、脂環式エーテル、糖、脂環式アミン、脂環式アミド、脂環式チオアミドや複数のヘテロ原子を含む脂環式複素環がより好ましく、糖、脂環式アミン、脂環式アミド、脂環式チオアミドが更に好ましく、脂環式アミド、脂環式チオアミドが最も好ましい。
【0040】
構造単位(a)における連結基としては、−COO−、−OCO−、−CONR2−(Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す)、−O−、アルキレン基又は置換若しくは無置換のフェニレン基及びこれらを組み合わせたものを挙げることができる。
【0041】
構造単位(a)における主鎖としては、ビニル結合、エステル結合、ウレタン結合を挙げることができ、ビニル結合が好ましい。
【0042】
ビニルポリマーの主鎖と連結基を介して結合した非芳香族脂環式基を有する構造単位(a)は、一般式(I)で表される構造単位(a1)を含むことが好ましい。構造単位(a)は更に、アクリル酸又はメタクリル酸の、アルキルエステルに由来する構造単位(a2)を有していてもよい。
【0043】
(一般式(I)で表される構造単位(a1))
一般式(I)で表される構造単位(a1)(以下単に「構造単位(a1)」と称する場合がある。)の含有量は、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性の観点から、前記ビニルポリマーの全質量のうち5質量%以上93質量%未満であることが好ましく、5質量%以上90質量%未満であることがより好ましく、10質量%以上80質量%未満であることが特に好ましい。
【0044】
【化7】

【0045】
一般式(I)中、R1は水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表し、Lは−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、又は置換若しくは無置換のフェニレン基を表し、Rは水素原子、アルキル基を表す。Lは単結合又は、2価の連結基を表す。Cycは1価の非芳香族脂環式基を表す。
【0046】
は水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表し、水素原子又はメチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
2が表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。ここで、前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられるが、特に限定されない。
【0047】
は−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、又は置換若しくは無置換のフェニレン基を表し、−COO−、−OCO−、又はCONR−が好ましく、−COO−、又はCONR−がより好ましく、−COO−が更に好ましい。中でもアルキレンオキシ基及びアルキレン基より選択される少なくとも一つを含む炭素数1〜25の2価の連結基であることが好ましく、−(CH−CH)n−、−(CHO)n−又は−(CH−CH−O)n−(nは平均の繰り返し単位数を表し、n=1〜6であり、nは1又は2が好ましく、1がより好ましい)であることが好ましい。
が2価の連結基である場合、好ましくは炭素数1〜30の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、特に好ましくは炭素数1〜20の連結基である。
【0048】
Cycにおける非芳香族脂環式基の具体例及び好ましい例は、前記した非芳香族脂環式基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0049】
一般式(I)で表される構造単位(a1)はアクリレート及び(メタ)アクリレートに由来の構造単位より選択される少なくとも一つであることが好ましい。アクリレート及び(メタ)アクリレートに由来の構造単位より選択される少なくとも一つであれば、主鎖から非芳香族脂環式化合物をエステル結合を介して結合することができ、顔料と吸着性などの相互作用が期待できる非芳香族脂環式基が主鎖から自由度を持った立体構造をとることができる。
また、一般式(I)で表される構造単位(a1)は、非芳香族脂環式基として、非芳香族脂環式炭化水素基若しくは非芳香族複素環基の1価の基を含むことが好ましい。前記の非芳香族脂環式基を採用することで基の嵩高さがビニルポリマーを剛直に保たせることが可能となる。従って、ビニルポリマー自身が相互作用し糸まり状となるのを抑制でき本来の効果、すなわちポリマーの疎水性部分と顔料表面とが相互作用し、ポリマーの親水性部分が液媒体と相互作用する効果が発揮できるからである。
【0050】
以下に、一般式(I)で表される構造単位(a1)を形成しうるモノマーの具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例に制限されるものではない。
【0051】
【化8】

【0052】
【化9】

【0053】
一般式(I)で表される構造単位(a1)に関し、顔料分散体の分散安定性の観点から、非芳香族脂環式炭化水素基は、環を形成する炭素数が、5〜10個の脂環式基がより好ましく、中でも5〜8個の脂環式基がより好ましく、5若しくは6個の脂環式基が更に好ましく、炭素数が6個の脂環式基化合物が特に好ましく、シクロヘキシル基が最も好ましい。本発明の顔料分散物は、前記構造単位(a)として、シクロヘキシル基を有する構造単位を総量でビニルポリマー全質量に対して5質量%以上93質量%未満で含むのが好ましく、5質量%以上90質量%未満で含むのがより好ましく、10質量%以上80質量%未満で含むのが特に好ましい。
【0054】
(アクリル酸又はメタクリル酸の、アルキルエステルに由来する構造単位(a2))
前記構造単位(a)はアクリル酸又はメタクリル酸の、アルキルエステルに由来する構造単位(a2)を含有してもよい。
アルキルエステルの炭素数は1〜18が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4が更に好ましく、1〜2が特に好ましい。
構造単位(a2)の含有量はビニルポリマー中に好ましくは5質量%以上95質量%未満であり、より好ましくは10質量%以上90質量%未満であり、更に好ましくは、15質量%以上86質量%未満である。
構造単位(a2)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(i−)プロピル(メタ)アクリレート、(i−又はt−)ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類が挙げられる。
中でもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0055】
<構造単位(b)>
本発明におけるビニルポリマーに含まれる親水性基を有する構造単位(b)について説明する。
構造単位(b)の例として、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する構造単位を挙げることができる。また、非イオン性の親水性基を含有する構造単位を挙げることができる。
【0056】
また、前記構造単位(b)の例として、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類が挙げられる。
親水性の官能基としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基及び、後述するようなポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド重合体が挙げられる。
親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類の内、、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0057】
前記構造単位(b)の例として、アルキレンオキシド重合体構造を有する親水性の構造単位を挙げることができる。
前記アルキレンオキシド重合体構造のアルキレンとしては、親水性の観点から炭素数1〜6が好ましく、炭素数2〜6がより好ましく、炭素数2〜4が特に好ましい。
また、前記アルキレンオキシド重合体構造の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
【0058】
前記構造単位(b)の例として、水酸基を含む親水性の構造単位を挙げることができる。水酸基数としては、特に限定されず、ビニルポリマーの親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0059】
構造単位(b)としては、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸に由来する構造である。
【0060】
前記構造単位(b)の含有量は、ビニルポリマー全質量に対して、2質量%以上50質量%未満が好ましく、2質量%以上45質量%未満がより好ましく、3質量%以上41質量%未満が更に好ましい。
【0061】
<構造単位(c)>
本発明におけるビニルポリマーは、前述の通り、前記構造単位(a1)、前記構造単位(a2)、及び前記構造単位(b)とは異なる構造を有する構造単位(c)(以下、単に「構造単位(c)」という。)を含有することもできる。
前記構造単位(c)の含有量は、ビニルポリマー全質量に対して、15質量%以上80質量%以下が好ましく、25質量%以上70質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0062】
前記構造単位(c)が疎水性の構造単位である場合のモノマーは、重合体を形成しうる官能基と疎水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知の如何なるモノマー類をも用いることができる。
前記疎水性の構造単位を形成しうるモノマーとしては、入手性、取り扱い性、汎用性の観点から、ビニルモノマー類、((メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類等)が好ましい。
【0063】
(メタ)アクリルアミド類としては、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0064】
スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、n−ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0065】
ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられ、中でも、ビニルアセテートが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
ビニルポリマーは構造単位(a1)、構造単位(b)のみから構成されることも可能である。
インクジェット記録用水性インク用として、より好ましくは、前記ビニルポリマーの前記構造単位(a)がシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来の構造単位より選択される1種以上を総量でビニルポリマー全質量に対して5質量%以上93質量%未満で含み、前記構造単位(b)がアクリル酸又はメタクリル酸に由来の構造単位より選択される1種以上をビニルポリマー全質量に対して3質量%以上41質量%未満で含むものがより好ましい。
【0067】
本発明のビニルポリマーの酸価は、顔料分散性、保存安定性の観点から、10mgKOH/g以上270mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上180mgKOH/g未満であることがより好ましく、30mgKOH/g以上160mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が10mgKOH/g以上で顔料の易分散性が保たれ、長期保存による顔料分散物の凝集も抑制できる。一方、酸価が160mgKOH/gよりも小さいと、ビニルポリマーの親水性が低くなり、水との相互作用が弱くなる一方で、顔料表面へビニルポリマーが接触しやすくなり、結果、長期保存による顔料分散物の抑制が可能となる。
なお、ここでいう酸価とは、ビニルポリマーの1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定することができる。
【0068】
本発明におけるビニルポリマーは、各構造単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構造単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよいが、ランダム共重合体であることが汎用性、製造性の点で好ましい。
【0069】
更に、本発明で用いるビニルポリマーの分子量範囲は、質量平均分子量(Mw)で、好ましくは5000〜152000であり、より好ましくは7000〜120000であり、更に好ましくは7000〜100000である。
前記分子量を上記範囲とすることにより、分散剤としての立体反発効果が良好な傾向となり、また立体効果により顔料への吸着に時間がかからなくなる傾向の観点から好ましい。
また、本発明で用いるビニルポリマーの分子量分布(質量平均分子量値/数平均分子量値で表される)は、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
前記分子量分布を上記範囲とすることは、インクの分散安定性、顔料分散体の凝集抑制の観点から好ましい。ここで数平均分子量及び、質量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用い換算して表した分子量である。
【0070】
本発明に用いられるビニルポリマーは、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常、0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は再沈殿などの精製を行っても良い。
【0071】
本発明における前記ビニルポリマーの添加量比率は、分散安定性の観点から、顔料に対して質量基準で、10%以上100%以下の範囲が好ましく、15%以上60%以下がより好ましい。
【0072】
<アゾ顔料>
本発明に用いられるアゾ顔料は、一般式(1)で表される。まず、下記一般式(1)で表されるアゾ顔料について説明する。
一般式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により色素分子の分子間相互作用を形成しやすく、水又は有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、媒体中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
【0073】
【化10】

【0074】
(一般式(1)中、Qは炭素原子と共に5〜7員の複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2は複素環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した4量体を表す。)
【0075】
nが1の時は、Q、W、X1、X2、R1、R2は1価の基を表し、括弧内で示されるモノ型アゾ顔料を表す。
【0076】
nが2の時は、Q、W、X1、X2、R1、R2は1価又は2価の基を表す。但し、少なくとも1つは2価の基を表し、括弧内で示される色素のビス型アゾ顔料を表す。
【0077】
nが3の時は、Q、W、X1、X2、R1、R2は1価、2価又は3価の基を表す。但し、少なくとも2つが2価の置換基を表すか、又は、少なくとも1つが3価の基を表し、括弧内で示される色素のトリス型アゾ顔料を表す。
【0078】
nが4の時は、Q、W、X1、X2、R1、R2は1価、2価又は3価の基を表す。但し、少なくとも2つが2価の置換基を表すか、少なくとも1つが3価の基を表し、又は、少なくとも1つが4価の基を表し、括弧内で示される色素のテトラ型アゾ顔料を表す。
【0079】
nは、1〜3の整数が好ましく、更に1又は2が好ましく、その中でも特に2が最も好ましい。nを2とすることで水や有機溶剤に対する溶解性が低下し(実質的に難溶化)、耐水性、耐薬品堅牢性が向上する点で好ましい。
【0080】
一般式(1)において、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。
【0081】
1、X2で表されるアルキル基としては、それぞれ独立に直鎖、分岐、脂環式の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。
詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0082】
1、X2で表される好ましいアシル基としては、それぞれ独立に、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
【0083】
1、X2で表される好ましいアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基としては、それぞれ独立に炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0084】
その中でも好ましいX1、X2は、それぞれ独立に水素原子、アシル基、アルキルスルホニル基であり、特に好ましくは、水素原子であり、その中でも特にX1とX2が共に水素原子であることが最も好ましい。
【0085】
一般式(1)において、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。
【0086】
Wで表されるアルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0087】
Wで表されるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0088】
Wで表されるアルキル基としては、直鎖、分岐、脂環式の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0089】
Wで表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0090】
その中でも好ましいWは、アルコシキ基、アミノ基又はアルキル基であり、より好ましくはアルコキシ基、又はアミノ基であり、更に好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基又は総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基が最も好ましい。Wが総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基、総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、色素分子が分子内及び分子間で相互作用を強固に形成しやすくなり、より安定な分子配列の顔料を構成しやすくなることで、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
【0091】
一般式(1)において、R1は水素原子又は置換基を表し、R1が置換基を表す場合の置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、複素環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、複素環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)が挙げられる。
【0092】
一般式(1)において、好ましいR1は、置換若しくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換若しくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換若しくは無置換の総炭素数4〜12の複素環基であり、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であり、更にメチル基又はt−ブチル基が好ましくその中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
【0093】
一般式(1)において、R2は複素環基を表し、それらは更に縮環していてもよい。R2として好ましくは5〜8員複素環基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の複素環基であり、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素複素環基である。
【0094】
前記R2で表される複素環基の例には、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミリジル、トリアジニル、キノリニル、i−キノリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、キノキサリニル、ピロリル、インドリル、フリル、ベンゾフリル、チエニル、ベンゾチエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、i−チアゾリル、ベンズi−チアゾリル、チアジアゾリル、i−オキサゾリル、ベンズi−オキサゾリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、チアゾリニル、スルホラニルなどが挙げられる。
【0095】
好ましい複素環の例は、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,4チアジアゾール環、1,3,4チアジアゾール環、イミダゾール環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、特に好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
【0096】
一般式(1)において、Qは炭素原子と共に5〜7員の複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、複素環に脂肪族環、芳香族環、又は他の複素環が縮合していてもよい。Qが炭素原子と共に形成する5〜7員の複素環としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、i−チアゾリル基、オキサゾリル基、i−オキサゾリル基、トリアジニル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基などが挙げられる。各複素環基には、更に置換基を有していてもよい。
【0097】
Qが炭素原子と共に形成する5〜7員の複素環として好ましくは、5員含窒素複素環であり、特に好ましくは、下記一般式(a)〜(j)で表される複素環が最も好ましい。
中でも(a)〜(f)又は(j)が好ましく、更に(a)、(b)、(c)、(e)、(j)で表される複素環であることが好ましく、特に(a)、(c)で表される複素環であることが好ましく、(a)が色相、着色力、画像堅牢性の点から最も好ましい。なお、下記一般式(a)〜(j)において、「*」は一般式(1)におけるアゾ基との結合位置を表す。
【0098】
【化11】

【0099】
一般式(a)〜(j)において、Raは、水素原子又は置換基を表し、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。Wは一般式(1)中のWと同義であり好ましいものも同じである。
【0100】
Wは、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i-プロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i-プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)又はアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基又はアルキル基が好ましく、更にアルコキシ基、アミノ基が好ましい。
より好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基である。Wが総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基、総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
色相、光堅牢性、耐溶剤性の点から特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH基)又はエトキシ基(−OC基)、アミノ基が好ましく、良好な色相と光堅牢性向上の点からメトキシ基が最も好ましい。
【0101】
Raとして好ましくは、水素原子、置換若しくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換若しくは無置換の総炭素数4〜12複素環基であり、より好ましくは、水素原子、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基及び又は分岐アルキル基であり、特に好ましくは、水素原子、又は総炭素数1〜4の直鎖アルキル基であり、特に色相・画像堅牢性の点から水素原子、メチル基が好ましく、その中でも特に水素原子が良好な色相と光堅牢性向上の点から最も好ましい。
【0102】
Rb、Rcとして好ましくは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基であり、より好ましくは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基であり、特に色相・画像堅牢性の点から総炭素数3以下のアルキル基が好ましく、その中でも良好な色相と光堅牢性向上の点からメチル基が最も好ましい。
【0103】
Q、W、X、X、R、Rが、更に置換基を有する場合の置換基としては、下記の置換基(以下「置換基J」と称する場合がある)を挙げることができる。
【0104】
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又は複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、イオン性親水性基が例として挙げられる。
【0105】
更に詳しくは、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
【0106】
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0107】
アラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。例えばベンジル基及び2−フェネチル基を挙げられる。
【0108】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。詳細には、アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。
【0109】
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0110】
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0111】
複素環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族の複素環基、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0112】
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0113】
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
【0114】
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
【0115】
複素環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換の複素環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
【0116】
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0117】
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0118】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0119】
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0120】
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0121】
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0122】
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0123】
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0124】
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0125】
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0126】
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
【0127】
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
【0128】
複素環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。
【0129】
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
【0130】
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
【0131】
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0132】
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
【0133】
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0134】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0135】
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
【0136】
アリール又は複素環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。
【0137】
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
【0138】
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
【0139】
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
【0140】
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
【0141】
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
【0142】
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0143】
イオン性親水性基としては、好ましくは、−SOM、−COM:M=Ca、Mg、Ba等のレーキ顔料の形態等が挙げられる。
【0144】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、該水素原子が上記の置換基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0145】
本発明の一般式(1)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0146】
本発明の一般式(1)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ヘ)を含むものである。
【0147】
(イ)X、Xはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、又はエチルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基)が好ましく、その中でも水素原子、アセチル基、メチルスルホニル基が好ましく、特に水素原子が好ましく、その中でも特にXとXが共に水素原子であることが最も好ましい。
【0148】
(ロ)Wは、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)又はアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基又はアルキル基が好ましく、更にアルコキシ基、アミノ基が好ましい。
より好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基である。Wが総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基、総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
色相、光堅牢性、耐溶剤性の点から特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH基)又はエトキシ基(−OC基)が好ましく、良好な色相と光堅牢性向上の点からメトキシ基が最も好ましい。
【0149】
(ハ)Rは、水素原子、又は置換基(例えば、置換若しくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換若しくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換若しくは無置換の総炭素数4〜12の複素環基)が好ましく、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基、置換若しくは無置換の総炭素数6〜10のアリール基、又は置換若しくは無置換の総炭素数4〜8の複素環基であり、更にメチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、フェニル環、又はピリジン環が好ましく、その中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
【0150】
(ニ)Rは、複素環基を表し、それらは更に縮環していてもよい。Rとして好ましくは5〜8員複素環基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の複素環基であり、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素複素環基である。更に好ましい複素環の例は、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,4チアジアゾール環、1,3,4チアジアゾール環、イミダゾール環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、特に好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
【0151】
(ホ)Qは、炭素原子と共に5〜7員の複素環をを表し、複素環に脂肪族環、芳香族環、又は他の複素環が縮合していてもよい。特に好ましいQが炭素原子と共に形成する5〜7員の複素環としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、i−チアゾリル基、オキサゾリル基、i−オキサゾリル基、トリアジニル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基などが挙げられる。各複素環基には、更に置換基を有していてもよい。特に、Qが炭素原子と共に形成する5〜7員の複素環として好ましくは、5員含窒素複素環であり、特に好ましくは、上記一般式(a)〜(j)で表される複素環が最も好ましい。一般式(a)〜(j)で表される複素環のRa、Rb、Rcの好ましい例も前記したものと同様である。
【0152】
(ヘ)nは、1〜3の整数が好ましく、更に1又は2が好ましく、その中でも特にn=2が最も好ましい。
【0153】
上記一般式(1)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(2)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0154】
以下、一般式(2)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物について詳細に説明する。
【0155】
【化12】

【0156】
(一般式(2)中のQ、W、X、R、R及びnは前記一般式(1)中のQ、W、X、R、R及びnと同義である。n=2の場合は、Q、W、X、R、又はRを介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X、R、又はRを介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X、R、又はRを介した4量体を表す。)
【0157】
以下に、前記Q、W、X、R、R、及びnを更に詳しく説明する。
【0158】
Qの例は、上記一般式(1)中のQの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0159】
Wの例は、上記一般式(1)中のWの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0160】
の例は、上記一般式(1)中のXの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0161】
、Rの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のR、Rの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0162】
nの例は、上記一般式(1)中のnの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0163】
本発明の一般式(2)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0164】
本発明の一般式(2)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、下記(イ)及び上記(ロ)〜(ヘ)を含むものである。
【0165】
(イ)Xは水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、又はエチルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基)が好ましく、その中でも水素原子、アセチル基、メチルスルホニル基が好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0166】
本発明は、一般式(1)及び(2)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(1)及び(2)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いても良い。
【0167】
例えば、一般式(2)で表される顔料には、下記一般式(2’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
【0168】
本発明において、一般式(2)で表されるアゾ顔料は、その互変異性体である以下の一般式(2’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0169】
【化13】

【0170】
(一般式(2’)中、R、R、Q、W、X、及びnは一般式(2)中のR、R、Q、W、X、及びnと同義である。)
【0171】
上記一般式(1)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(3)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0172】
以下、一般式(3)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物について詳細に説明する。
【0173】
【化14】

【0174】
(一般式(3)中のYは水素原子又は置換基を表し、Gは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、W、X、X、R、R及びnは前記一般式(1)中のW、X、X、R、R及びnと同義である。n=2の場合は、Q、W、X、X、R、又はRを介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X、X、R、又はRを介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X、X、R、又はRを介した4量体を表す。)
【0175】
以下に、前記W、X、X、R、R、G、Y及びnを更に詳しく説明する。
【0176】
Wの例は、上記一般式(1)中のWの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0177】
、Xの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のX、Xの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0178】
、Rの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のR、Rの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0179】
nの例は、上記一般式(1)中のnの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0180】
Gの例は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i-プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましく、総炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、総炭素数3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0181】
Yが置換基を表す場合の例は、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又は複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。Yの例として特に好ましくは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)アリール基(例えば、フェニル基)、複素環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。
【0182】
本発明の一般式(3)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0183】
本発明の一般式(3)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ト)を含むものである。
【0184】
(イ)X、Xはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、又はエチルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基)が好ましく、その中でも水素原子、アセチル基、メチルスルホニル基が好ましく、特に水素原子が好ましく、その中でも特にXとXの少なくとも一方が水素原子であることがより好ましく、共に水素原子であることが最も好ましい。XとXの少なくとも一方が水素原子であることにより、色素分子の分子間相互作用だけでなく、分子内相互作用を強固に形成しやすくなる事でより安定な分子配列の顔料を構成しやすくなり、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
【0185】
(ロ)Wは、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)又はアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基又はアルキル基が好ましく、更にアルコキシ基、アミノ基が好ましい。
より好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基である。Wが総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基、総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
色相、光堅牢性、耐溶剤性の点から特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH基)又はエトキシ基(−OC基)が好ましく、良好な色相と光堅牢性向上の点からメトキシ基が最も好ましい。
【0186】
(ハ)Rは、水素原子、又は置換基(例えば、置換若しくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換若しくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換若しくは無置換の総炭素数4〜12の複素環基)が好ましく、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基、置換若しくは無置換の総炭素数6〜10のアリール基、又は置換若しくは無置換の総炭素数4〜8の複素環基であり、更にメチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、フェニル環、又はピリジン環が好ましく、その中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
【0187】
(ニ)Rは、複素環基を表し、それらは更に縮環していてもよい。Rとして好ましくは5〜8員複素環基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の複素環基であり、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素複素環基である。更に好ましい複素環の例は、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,4チアジアゾール環、1,3,4チアジアゾール環、イミダゾール環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、特に好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
【0188】
(ホ)Gは、好ましくは、水素原子、総炭素数12以下の、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。
より好ましくは総炭素数6以下のアルキル基、総炭素数6以下のシクロアルキル基、総炭素数12以下のアラルキル基、総炭素数12以下のアルケニル基、総炭素数12以下のアルキニル基、総炭素数18以下のアリール基又は総炭素数12以下の複素環基を表す。
更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基若しくはプロパルギル基、ベンジル基、2−フェネチル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基を表す。
特に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でも、メチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましく、メチル基であることが最も好ましい。
【0189】
(ヘ)Yは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)アリール基(例えば、フェニル基)、複素環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。
【0190】
(ト)nは、1〜3の整数が好ましく、更に1又は2が好ましく、その中でも特にn=2が最も好ましい。
【0191】
一般式(1)、(2)及び(3)において、好ましいnは2又は3のときであり、特に好ましくは、nが2のときである。nが2の場合、着色力が高く耐光性に優れ、かつ耐薬品堅牢性が向上する。
【0192】
一般式(1)、(2)及び(3)において、n=2の場合のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物は、Q、W、X、X、R、又はRを介した2量体を表す。
【0193】
本発明のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物が2量体を表す場合は、例えば、下記一般式(4)、(5)、(6)、(7)、(8)及び(9)で表される連結様式が挙げられる。
【0194】
【化15】

【0195】
一般式(4)中、
、Gはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のGと同義である。
11、R12はそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
、Wはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のWと同義である。
、Yはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のYと同義である。
Zは、前記一般式(3)中のRが二価の置換基を表す場合と同義である。
【0196】
【化16】

【0197】
一般式(5)中、
、Gはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のGと同義である。
11、R12はそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
、Wはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のWと同義である。
、Zはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
Yは、前記一般式(3)中のYが二価の置換基を表す場合と同義である。
【0198】
【化17】

【0199】
一般式(6)中、
、Gはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のGと同義である。
11、R12はそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
、Wはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のWと同義である。
、Yはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のYと同義である。
、Zはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
Xは、前記一般式(3)中のX又はXが二価の置換基を表す場合と同義である。
【0200】
【化18】

【0201】
一般式(7)中、
、Gはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のGと同義である。
11、R12はそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
、Yはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のYと同義である。
、Zはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
Wは、前記一般式(3)中のWが二価の置換基を表す場合と同義である。
【0202】
【化19】

【0203】
一般式(8)中、
、Gはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のGと同義である。
、Wはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のWと同義である。
、Yはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のYと同義である。
、Zはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
Rは、前記一般式(3)中のRが二価の置換基を表す場合と同義である。
【0204】
【化20】

【0205】
一般式(9)中、
11、R12はそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
、Wはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のWと同義である。
、Yはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のYと同義である。
、Zはそれぞれ独立に、前記一般式(3)中のRと同義である。
Gは、前記一般式(3)中のGが二価の置換基を表す場合と同義である。
【0206】
本発明において、一般式(3)で表されるアゾ顔料は、特に、上記一般式(4)、(5)、(7)、(8)及び(9)で表されるアゾ顔料であることが好ましく、更に上記一般式(4)、(5)、(7)及び(9)で表されるアゾ顔料であることが好ましく、その中でも特に上記一般式(4)で表されるアゾ顔料であることが最も好ましい。
【0207】
以下、上記一般式(4)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物について詳細に説明する。
【0208】
【化21】

【0209】
一般式(4)中、Zは5〜8員含窒素複素環を表し、Y、Y、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G、Gは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、W、Wはそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。
【0210】
一般式(4)において、Zは2価の5〜8員含窒素複素環を表し、好ましい複素環基の例を置換位置を限定せずには、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、i−チアゾール環、オキサゾール環、i−オキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダン環である。より好ましくは、6員含窒素複素環であり、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環が挙げられる。Zとして特に好ましくは、ピリミジン環である。Zが6員含窒素複素環の場合、色素分子の分子内、分子間作用が、水素結合性、分子の平面性の点からもより向上しやすい点で好ましい。
【0211】
一般式(4)において、Y、Yは、前記一般式(3)中のYと同義であり、好ましい例も同じである。
【0212】
一般式(4)において、G、Gは、前記一般式(3)中のGと同義であり、好ましい例も同じである。
【0213】
一般式(4)において、R11、R12は、前記一般式(3)中のRと同義であり、好ましい例も同じである。
【0214】
一般式(4)において、W、Wは、前記一般式(3)中のWと同義であり、好ましい例も同じである。
【0215】
本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、その互変異性体もその範囲に含むものである。
一般式(1)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いても良い。
例えば、一般式(4)で表される顔料には、下記一般式(4’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(4)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(4’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0216】
【化22】

【0217】
(一般式(4’)中、R11、R12、W、W、Y、Y、G、G及びZは一般式(4)中のR11、R12、W、W、Y、Y、G、G及びZと同義である。)
【0218】
なお、前記一般式(4)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0219】
本発明の一般式(4)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
【0220】
(イ)W、Wはそれぞれ独立に、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)又はアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基又はアルキル基が好ましく、更にアルコキシ基、アミノ基が好ましく、更に好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH基)が最も好ましい。
【0221】
(ロ)R11、R12はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基(例えば、置換若しくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換若しくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換若しくは無置換の総炭素数4〜12の複素環基)が好ましく、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であり、更にメチル基、i−プロピル基又はt−ブチル基が好ましく、その中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
【0222】
(ハ)Zは、二価の複素環基を表し、それらは更に縮環していてもよい。Zとして好ましくは5〜8員複素環基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の複素環、例えば、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、i−チアゾール環、オキサゾール環、i−オキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダン環が好ましく、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素複素環基である。更に好ましい複素環の例は、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、更に好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
【0223】
(ニ)G、Gはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。総炭素数5以下のアルキル基がより好ましく、総炭素数3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0224】
(ホ)Y、Yはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)アリール基(例えば、フェニル基)、複素環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。
【0225】
一般式(1)、(2)及び(3)において、好ましいnは2又は3のときであり、特に好ましくは、nが2のときである。nが2の場合、着色力が高く耐光性に優れ、かつ耐薬品堅牢性が向上する。
【0226】
本発明の上記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるアゾ顔料のうち、好ましくは下記一般式(10)〜(13)で表されるアゾ顔料である。
【0227】
【化23】

【0228】
上記一般式(10)中のR、R、W及びQは、上記一般式(2)中のR、R、W及びQと同義である。
上記一般式(11)中のG、R、R、W及びYは、上記一般式(3)中のG、R、R、W及びYと同義である。
【0229】
【化24】

【0230】
上記一般式(12)中のG、G、R11、R12、W、W、Y及びYは、上記一般式(4)中のG、G、R11、R12、W、W、Y及びYと同義である。
11、X12はそれぞれ独立に上記一般式(4)中のZが構成する複素環を表し、Het.が構成する複素環中のそれぞれヘテロ原子を表す。
【0231】
【化25】

【0232】
上記一般式(13)中、
、G及びG、はそれぞれ独立に上記一般式(3)中のGと同義である。
、W及びWは、それぞれ独立に上記一般式(3)中のWと同義である。
、Y及びYは、それぞれ独立に上記一般式(3)中のYと同義である。
11、R12、R13は、それぞれ独立に上記一般式(3)中のRと同義である。
11、X12及びX13はそれぞれ独立に上記一般式(3)中のRが3価の複素環を表す場合と同義であり、Het.が構成する複素環中のそれぞれヘテロ原子を表す。
【0233】
上記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるアゾ顔料において多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有し、かつ、それらの水素結合の少なくとも2個が分子内交叉水素結合を形成する置換基を有する場合が特に好ましい。
【0234】
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の一般式の例としては、上記一般式(10)〜(13)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。
【0235】
この構造が好ましい要因としては、一般式(10)〜(13)で示すようにアゾ顔料構造に含有する複素環を構成する窒素原子、水素原子及びヘテロ原子(アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合(分子内水素結合)を容易に形成し易いことが挙げられる。
この構造が好ましい要因としては、上記一般式(10)及び(11)で示すようにアゾ顔料構造に含有する複素環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子及びヘテロ原子(アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
更に好ましくは、上記一般式(12)及び(13)で示すようにアゾ顔料構造に含有する複素環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子及びヘテロ原子(アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも4個以上の分子内水素結合を容易に形成し易く、かつ、少なくとも2個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、例えば一般式(12)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
【0236】
また、本発明では、一般式(1)〜(13)で表される化合物中に同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N)を含有していても適用できる。
【0237】
以下に前記一般式(1)〜(13)で表されるアゾ顔料の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造のものであっても良いことは言うまでもない。
【0238】
【化26】

【0239】
【化27】

【0240】
【化28】

【0241】
【化29】

【0242】
【化30】

【0243】
【化31】

【0244】
【化32】

【0245】
【化33】

【0246】
【化34】

【0247】
【化35】

【0248】
【化36】

【0249】
【化37】

【0250】
【化38】

【0251】
【化39】

【0252】
【化40】

【0253】
【化41】

【0254】
【化42】

【0255】
【化43】

【0256】
【化44】

【0257】
【化45】

【0258】
【化46】

【0259】
【化47】

【0260】
【化48】

【0261】
【化49】

【0262】
本発明では、化合物の構造によって互変異性体が存在する場合においても、本発明においては代表的な形の一つで記載しているが、本発明の記述と異なる互変異性体も本発明のアゾ顔料に含まれる。また、本発明のアゾ顔料の塩、水和物、溶媒和物も本発明のアゾ顔料に含まれる。
【0263】
本発明において、一般式(1)で表される顔料は、化学構造式が一般式(1)又はその互変異性体であれば良く、多形とも呼ばれるいかなる結晶形態の顔料であっても良い。
【0264】
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子又はイオン)の配置が異なることを言う。結晶構造によって化学的及び物理的性質が決定され、各多形は、レオロジー、色、及び他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる多形は、X−Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX−Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。
本発明の一般式(1)〜(4)で表される顔料に結晶多形が存在する場合、どの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であっても良いが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多が混入していないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、更に好ましくは95%〜100%、特に好ましくは100%である。単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性及び耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
【0265】
本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、酸基のある場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0266】
更に、本発明で使用する顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型あるいは酸型であり互いに異なるものであってもよい。
【0267】
本発明において、前記一般式(1)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物、あるいは、溶媒(例えば、メタノール,エタノール,2−プロパノール,t−ブチルアルコール等のアルコール類や、ジメチルスルホキシド,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドン等の非プロトン性溶媒、アセトン,メチルエチルケトン等のケトン系溶媒など)を含む溶媒和物であっても良い。
【0268】
次に上記一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法の一例について説明する。例えば、下記一般式(A)で表される複素環アミンを酸性条件でジアゾニウム化し、下記一般式(B)で表される化合物とカップリング反応を行い、常法による後処理を行って上記一般式(1)で表されるアゾ顔料を製造することができる。
【0269】
【化50】

【0270】
(一般式(A)及び(B)中、W、Q、R、R及びX、Xは一般式(1)と同義である。)
【0271】
上記一般式(A)で表される複素環アミンは、一般的には公知慣用の方法、例えば、Helv.Chim.Acta,41,1958,1052〜1056やHelv.Chim.Acta,42,1959,349〜352等に記載の方法、及び、それに準じた方法で製造することができる。
上記一般式(B)で表される化合物は、国際公開第06/082669号や特開2006−57076号公報に記載の方法、及び、それに準じた方法で製造することができる。
上記一般式(A)で表される複素環アミンのジアゾニウム化反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬を15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。
カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記一般式(B)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは、25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
このようにして反応させたものは、結晶が析出しているものもあるが、一般的には反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、一般式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
【0272】
上記の製造方法によって、上記一般式(1)で表される化合物は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明の顔料として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0273】
本発明の一般式(1)で表される化合物は後処理として溶媒加熱処理及び/又はソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、i−プロパノール、i−ブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、更に無機又は有機の酸又は塩基を加えても良い。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0274】
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(i−ペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0275】
<ビニルポリマー粒子>
本発明におけるビニルポリマー粒子は、前記一般式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物、及びポリマー主鎖に連結基を介して結合した非芳香族脂環式基を有する構造単位(a)と、親水性基を有する構造単位(b)とを含むビニルポリマー(以下「樹脂」又は「特定樹脂」ともいう)を含有する。
本発明における顔料を含有するビニルポリマー粒子は、特定樹脂及び顔料等を用いて従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、又は特開平11−43636号の各公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相法と酸析法等が挙げられ、中でも、分散安定性の点で転相法が好ましい。
【0276】
a)転相法
転相法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)させる方法であり、顔料を含有するビニルポリマー粒子を得ることができる。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
b)酸析法
酸析法は、樹脂と顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、樹脂が有するアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和することによって、顔料を含有するビニルポリマー粒子を製造する方法である。
酸析法は、具体的には、(1)樹脂と顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程と、(2)pHを中性又は酸性にすることによって樹脂を疎水化して、樹脂を顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過及び水洗を行って含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、樹脂が有するアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行い、樹脂のゲル化を図る工程と、を含む方法がある。
【0277】
上記の転相法及び酸析法のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号、特開平10−140065号の各公報に記載の方法が挙げられる。
【0278】
本発明のインクジェット記録用水性インクにおいて、顔料を含有するビニルポリマー粒子は、特定樹脂を水性分散物として得る工程、具体的には下記の工程(1)及び工程(2)を含む方法により顔料を含有するビニルポリマー粒子の分散物を調製する調製工程を設けて得ることができ、また、本発明のインクジェット記録用水性インクの製造は、この調製工程を設け、得られた顔料を含有するビニルポリマー粒子の分散物を水と水溶性媒体と共に用いて水性インクとする方法により好適に行なえる。
工程(1):既述の本発明における特定樹脂、有機溶媒、中和剤、顔料、及び水を含有する混合物を攪拌等により分散して分散物を得る工程
工程(2):前記分散物から前記有機溶媒を除去する工程
【0279】
攪拌方法には特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー、ビーズミル等の分散機を用いることができる。
【0280】
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。
前記アルコール系溶媒としては、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。前記ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルi−ブチルケトン等が挙げられる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とi−プロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0281】
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、特定樹脂が水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。特定樹脂が解離性基としてアニオン性の解離基を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。前記有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアニン、モノi−プロパノールアミン、ジi−プロパノールアミン、トリi−プロパノールアミン等が挙げられる。前記アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、水中での分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0282】
前記塩基性化合物の含有量は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%の範囲が好ましく、10〜120モル%の範囲がより好ましく、80〜120モル%の範囲が更に好ましい。該含有量は、5モル%以上であると水中での分散安定化に効果的であり、120モル%以下であると水溶性成分を低下させる効果がある。
【0283】
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散物から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで、顔料の粒子表面が前記樹脂で被覆された顔料を含有するビニルポリマー粒子の分散物を得ることができる。得られた分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、ここでの有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0284】
より具体的には、例えば、(1)アニオン性基を有する、本発明における特定樹脂を有機溶剤に溶解した溶液と塩基性化合物(中和剤)と水とを混合して中和する工程と、(2)得られた混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得る工程と、(3)有機溶剤を例えば蒸留して除去することによって、顔料を、アニオン性基を有する特定樹脂で被覆し、水性媒体中に分散させて水性分散体とする工程と、を設けて、インクジェット記録用水性インクを製造することができる。
なお、より具体的には、特開平11−2096722号公報及び特開平11−172180号の記載を参照することができる。
【0285】
本発明のインクジェット記録用水性インク中に含まれる顔料を含有するビニルポリマー粒子の累積体積95%となる粒子径は、10〜400nmの範囲であることが好ましく、40〜400nmの範囲がより好ましく、60〜350nmの範囲が更に好ましい。累積体積95%となる粒子径は、10nm以上であると製造適性が向上し、400nm以下であると保存安定性が良好になる。なお、顔料を含有するビニルポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。
顔料を含有するビニルポリマー粒子の累積体積95%となる粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0286】
本発明において、分散処理は、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザ−などを用いて行なうことができる。
【0287】
本発明におけるビニルポリマー粒子のインクジェット記録用水性インク中における含有量としては、インクジェット記録用水性インクの分散安定性、濃度の観点から、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、2〜6質量%が特に好ましい。
【0288】
<水溶性媒体>
本発明のインクジェット記録用水性インクは水溶性媒体を必須成分として含む。水溶性媒体としては、水溶性有機溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤は乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤の目的で使用される。
ノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で乾燥防止剤が用いられ、乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また、インクジェット用インクを紙により良く浸透させる目的で浸透促進剤として、水溶性有機溶剤が好適に使用される。
【0289】
水溶性媒体の例として、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオール(多価アルコール類);ヴルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ピアルロン酸類;尿素類等のいわゆる固体湿潤剤;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、i−プロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルポキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0290】
乾燥防止剤や湿潤剤の目的としては,ポリオール化合物が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0291】
浸透促進剤の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
【0292】
本発明に使用される水溶性媒体は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性媒体の好ましい例として、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルを挙げることができる。
水溶性媒体の含有量としては、インクの全質量に対して5質量%以上60質量%以下、好ましくは、10質量%以上40質量%以下で使用される。
本発明に使用される水の添加量は特に制限は無いが、インクの全質量に対して好ましくは、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
【0293】
<界面活性剤>
本発明のインクには、表面張力調整剤を含有することが好ましい。表面張力調整剤としてはノニオン、カチオン、アニオン、ベタイン界面活性剤が挙げられる。表面張力の調整剤の添加量は、インクジェットで良好に打滴するために、本発明のインクの表面張力を20〜60mN/mに調整する量が好ましく、より好ましくは20〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
本発明における界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子物質(高分子分散剤)を界面活性剤としても使用することもできる。
【0294】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルポコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテ硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルポコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、t−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
本発明におけるインクジェット用液体組成物に添加する界面活性剤の量は、特に限定されるものではないが、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
【0295】
<その他成分>
本発明のインクには、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0296】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0297】
褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
【0298】
防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズi−チアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0299】
pH調整剤としては、調合される記録用インクに悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
【0300】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジi−プロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0301】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤などが挙げられる。
【0302】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0303】
<樹脂微粒子>
本発明のインクには樹脂微粒子あるいはポリマーラテックスを含有してもよい。樹脂微粒子あるいはポリマーラテックスとしては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
樹脂微粒子の好ましい例として、自己分散性ポリマー微粒子を挙げることができる。自己分散性ポリマー微粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に、酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる高分子ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない高分子ポリマーの微粒子を意味する。ここで分散状態とは、水性媒体中に高分子ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び、水性媒体中に高分子ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。本発明では高分子ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる高分子ポリマーであることが好ましい。
本発明で好ましく用いられる自己分散性ポリマー微粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む高分子ポリマーを含むことが好ましい。
【0304】
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0305】
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートであることが特に好ましい。
【0306】
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。自己分散性ポリマー微粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
自己分散性ポリマー微粒子は、例えば、芳香族基含有モノマーからなる構成単位と、解離性基含有モノマーからなる構成単位とから構成することができるが、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んで構成することができる。
【0307】
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,i−)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、i−)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子を構成する高分子ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
【0308】
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定することできる。
自己分散性ポリマー微粒子を構成する高分子ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜90質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜100であって、重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜80質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜95であって、重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
自己分散性ポリマー微粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
自己分散性ポリマー微粒子の添加量はインクに対して、0.5〜20質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。
自己分散性ポリマー微粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。
また、ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つポリマー微粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
【0309】
<プリント性を向上させる液体組成物>
本発明には、プリント性を向上させる液体組成物を印字媒体に付与することが好ましい例として挙げることができる。
本発明に用いることができるプリント性を向上させる液体組成物の好ましい一例として、インクのpHを変化させることにより凝集物を生じさせる液体組成物を挙げることができる。このとき、液体組成物のpHは1.0〜9.0であることが好ましく、pHは2.0〜9.0であることがより好ましく、pHは3.0〜8.5であることが更に好ましい。液体組成物の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0310】
また、本発明に用いることができるプリント性を向上させる液体組成物の好ましい一例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。液体組成物の成分として、多価金属塩として周期表の2A属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウムとカルシウム);周期表の3B属の遷移金属(例えば、ランタン);周期表の3A属からのカチオン(例えば、アルミニウム);ランタニド類(例えば、ネオジム);及びポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体、を挙げることができる。好ましい例として、カルシウムとマグネシウムを挙げることができる。カルシウム又はマグネシウムの対塩として好ましく採用されるアニオンは、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩を挙げることができる。処理液への添加量として、当該塩は約1〜約10重量%、好ましくは約1.5〜約7重量%、より好ましくは約2〜約6重量%の範囲の量で処理液中に存在させることができる。
【0311】
<インク物性>
本発明のインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
本発明のインクの20℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
【0312】
<インクジェット記録方法>
本発明に好ましいインクジェット記録方法として、インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105の記載が適用できる。
【0313】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマーラテックス化合物を併用してもよい。ラテックス化合物を受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。具体的には、特開2002−166638(特願2000−363090)、特開2002−121440(特願2000−315231)、特開2002−154201(特願2000−354380)、特開2002−144696(特願2000−343944)、特開2002−080759(特願2000−268952)に記載された方法を好ましく用いることができる。
【0314】
本発明に好ましい画像形成方式の一例として、
第一の工程:プリント性を向上させる液体組成物を記録媒体に付与する工程。
第二の工程:前記液体組成物が付与された記録媒体にインク組成物を付与する工程。
その他の工程:その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥除去工程、加熱定着工程等が挙げられる。前記乾燥除去工程としては、記録媒体に付与されたインク組成物におけるインク溶媒を乾燥除去する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記加熱定着工程としては、前記インクジェット記録方法で用いられるインク中に含まれるラテックス粒子を溶融定着する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0315】
本発明に好ましい画像形成方式のもう一つの例として、
第一の工程:プリント性を向上させる液体組成物を中間転写体に付与する工程。
第二の工程:前記液体組成物が付与された中間転写体にインク組成物を付与する工程。
第三の工程:前記中間転写体に形成されたインク画像を記録媒体に転写する工程。
その他の工程:その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥除去工程、加熱定着工程等が挙げられる。
【実施例】
【0316】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とは質量部を表す。
本発明のアゾ顔料は、下記顔料の合成例1で説明するPig.−1の合成方法に準じて合成することが可能である。
【0317】
[合成例1]
(顔料の合成)
例示化合物(Pig.−1)の合成
例示化合物(Pig.−1)の合成スキームを下記に示す。
【0318】
【化51】

【0319】
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz、CDCl)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
【0320】
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にi−プロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz、CDCl)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H), 3.60(s,3H)
【0321】
(3)中間体(c)の合成
ヒドラジン1水和物130mLにメタノール100mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン50.0g(336ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、50℃に加熱して4時間30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、i−プロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(c)を43.1g(白色粉末、収率92%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.82(s,1H),7.55(s,2H),5.96(s,1H),4.12(s,4H)
【0322】
(4)中間体(d)の合成
中間体(c)35.0g(0.25モル)、ピバロイルアセトニトリル68.8g(0.55モル)に水900mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液に1M塩酸水をpH3になるように滴下した後、50℃に加熱して8時間攪拌した。この反応液に8M水酸化カリウム水溶液を滴下してpH8に調整して、更に1M塩酸水を滴下してpH6に調整して析出した結晶をろ取、i−プロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)を83.0g(白色粉末、収率94%)で得た。得られた中間体(d)のNMR測定結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz、d−DMSO)8.73(s,1H),7.97(s,1H),6.88(s,4H),5.35(s,2H),1.22(s,18H)
【0323】
(5)例示化合物(Pig.−1)の合成
濃硫酸4.1mLに酢酸18.5mLを加えて氷冷で攪拌し、40%ニトロシル硫酸3.85g(12.1ミリモル)を滴下した。この混合液に中間体(b)1.71g(11.0ミリモル)を徐々に添加(内温0℃以下)した後、0℃で2時間攪拌した。この反応液に尿素150mgを添加し、更に0℃で15分攪拌して、ジアゾ液Aを調製した。
中間体(d)にメタノール50mLを加えて加熱溶解させた後、氷冷で攪拌した混合液に前記ジアゾ液Aをゆっくり滴下した(内温10℃以下)。この反応液を室温で2時間攪拌した後、析出した結晶をろ取、メタノールでかけ洗いして前記例示化合物(Pig.−1)の粗結晶を得た。更に前記粗結晶に水を加えて攪拌した後、この懸濁液を水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、更にジメチルアセトアミド20mLを加えて、80℃で2時間攪拌した。析出した結晶をろ取、更にメタノールで懸濁洗浄し得られた結晶をろ取、乾燥して例示化合物(Pig.−1)を2.0g(黄色粉末、収率79%)で得た。
【0324】
[合成例2]
(ビニルポリマーの合成)
下記モノマー組成の成分を全量が100質量部になるように混合し、更に重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1質量部添加し、窒素ガス置換を十分に行い、合成混合液を得た。
【0325】
シクロヘキシルアクリレート(M−3) 90質量部
アクリル酸 5質量部
メタクリル酸 5質量部
2−メルカプトエタノール 0.1質量部
【0326】
次に、メチルエチルケトン100質量部を窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃まで昇温させた。75℃、攪拌状態で上記合成混合液を3時間にわたって滴下した。更に75℃、攪拌状態で5時間反応を続けた。その後、反応合成物を25℃まで自然冷却した後、固形分が50%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈し、質量平均分子量45000のビニルポリマー溶液を得た。
【0327】
[実施例1(実験番号101)]
得られた50%ビニルポリマー溶液10質量部に5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。なお、ビニルポリマーのメタクリル酸及びアクリル酸を完全中和するアルカリ量を添加した。本発明の顔料例示化合物(Pig.−1)10質量部を加え、ロールミルで必要に応じて2〜8時間混練した。混練物をイオン交換水100質量部に分散した。得られた分散物から減圧下、55℃で有機溶媒を完全に除去し、更に水を除去することにより濃縮し、固形分濃度が15質量%の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。
【0328】
[実験番号102〜389]
顔料の種類、及び、ビニルポリマーの種類を、表1〜7に置き換えた以外は、実験番号101と同様に、実験番号102〜389の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。ここで、顔料及びビニルポリマーは、それぞれ、上記[合成例1]と同様の手法で合成した。
なお、表2においては、主として、本発明の顔料の種類を変更して評価したものである。表3においては、主として、ビニルポリマーの重合平均分子量の酸価の依存性を評価したものである。表4においては、主として、本発明のビニルポリマーの種類を変更して評価したものである。
【0329】
(熱時分散体安定性の評価)
表1〜7に示す顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体をPET製容器に密栓し70℃環境下に7日間経時した。加熱前後で累積体積が95%となる粒子径:D95をナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて測定した。評価の基準を以下に示す。
A・・・加熱前の累積体積が95%となる粒子径:D95が230nm未満で、かつ加熱前後のD95の差が50nm未満のサンプル
B・・・加熱前の累積体積が95%となる粒子径:D95が230nm以上280nm未満で、かつ加熱前後のD95の差が50nm未満のサンプル
C・・・加熱前の累積体積が95%となる粒子径:D95が230nm未満で、かつ加熱前後のD95の差が50以上80nm未満のサンプル
D・・・加熱前の累積体積が95%となる粒子径:D95が230nm以上280nm未満で、かつ加熱前後のD95の差が50nm以上80nm未満のサンプル
E・・・AからDの範囲外に該当するサンプル
上記の基準に従い評価後、A,B,C,D,Eの順で熱時安定性が悪化し、評価がEの分散体は好ましくないと判断した。
【0330】
【表1】

【0331】
【表2】

【0332】
【表3】

【0333】
【表4】

【0334】
【表5】

【0335】
【表6】

【0336】
【表7】

【0337】
実験101〜146から、顔料として本発明の例示化合物(Pig.−1)を用い、ビニルポリマーの構造単位(a)にシクロヘキシルアクリレートを用いることにより高温条件下で保存した後であっても、累積体積が95%となる粒子径(D95)の安定性が特に良好な結果が得られたことが判る。
【0338】
また、実験147〜178から、顔料として本発明の例示化合物(Pig.−1)を本発明の例示化合物(Pig.−1)とは異なる例示化合物に変更しても、同様に累積体積が95%となる粒子径(D95)の安定性が特に良好な結果が得られたことが判る。
【0339】
また、実験195〜247から、顔料として本発明のビニルポリマーの重合平均分子量及び、酸価を変更しても、同様に累積体積が95%となる粒子径(D95)の安定性が特に良好な結果が得られたことが判る。
【0340】
また、実験248〜277から、ビニルポリマーの構造単位(a)をシクロヘキシルアクリレート(例示化合物:M−3)から、本発明の構造単位(a)に変更しても、同様に累積体積が95%となる粒子径(D95)の安定性が特に良好な結果が得られたことが判る。
【0341】
更に、実験320〜375から、本発明のビニルポリマーの構成成分(a)が、構成成分(a1)と構成成分(a2)となっても、本発明の構造単位(a)に変更しても、同様に累積体積が95%となる粒子径(D95)の安定性が特に良好な結果が得られたことが判る。
【0342】
[実施例2]
(自己分散性ポリマー微粒子の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン350.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート162.0g、メチルメタクリレート180.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン70g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、更に「V−601」0.72g、i−プロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、更に2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。
次に、重合溶液668.3gを秤量し、i−プロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、i−プロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。
【0343】
実施例1(実験101)の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散物 25質量部
グリセリン 5質量部
ジエチレングリコール 5質量部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
ポリオキシプロピレングリセリルエーテル 10質量部
ジプロピレングリコール 5質量部
トリエタノールアミン 1質量部
オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) 1質量部
自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物 15質量部
イオン交換水 28質量部
上記を混合しインク組成物を得た。
東亜DKK(株)製pHメータ−WM−50EGにて、インク組成物のpHを測定したところ、pHは8.5であった。
【0344】
(スジ・ムラ評価)
実施例1の顔料分散体(実験番号101)から得られた上記のインク組成物(インクジェット記録用水性インク)をPET製容器に密栓し58℃環境下に4週間経時した。次いで、インクジェット記録装置として、富士フイルムDimatix社製DMP−2831プリンターを用い、富士フイルム社製画彩写真仕上げProに印画した。なお、印画サンプルには、R値、G値、B値で表現できるベタ印字サンプルを用い、表8に示したRGBの設定で印字した。
【0345】
【表8】

【0346】
印字サンプルの反射濃度を、X−rite983(X−rite社製)で測定しスジやムラを確認した。表8の1〜20までのサンプルを順に測定し、濃度の上昇が飽和した点のサンプルにおける、任意の3箇所の測定を実施したところ1.82、1.79、1.84だった。また、実施例1の顔料分散体(実験番号101)を表9に示す顔料分散体に変更した以外は実施例2と同様にして、実施例3〜20及び比較例1〜3の印字評価を実施した。
評価の基準は、印字部分の任意の3箇所の印字濃度の最大値と最小値の差が、0〜0.15を○、0.16〜0.30を△、0.31以上の場合を×、任意の3点の少なくとも1点において印字濃度が1.5以下を記録した場合はいかなる場合においても×とした。
【0347】
(印字画像評価実験)
上記で作成したインク組成物を富士フイルムDimatix社製DMP−2831プリンターを用い、受像シートには、紙aとしてEPSON 写真用紙<光沢>と、紙bとして写真用紙クリスピア<高光沢>、紙cとしてCanon社製PR101を、紙dとしてHewlett−Packard社製アドバンストフォトペーパーを、紙eとして富士フイルム株式会社製画彩を使用し、階段状に濃度が変化した単色画像パターンをPM−G800にて印字させ、画像堅牢性の評価を行った。
【0348】
画像保存性について色濃度を測定することで以下の評価を行った。
光堅牢性は印字直後の画像濃度CiをX−rite 310にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(10万ルックス)を7日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し色素の残存率(Cf/Ci)×100を求め評価を行った。色素の残像率について反射濃度が0.7,1.2,2.0の3点にて評価し、いずれの濃度でも色素の残存率が85%以上の場合をA、1点が85%未満の場合をB、2点が85%の場合をC、3点全ての濃度で85%未満の場合をDとした。
結果を表9に示す。
【0349】
【表9】

【0350】
実施例2〜20から、本発明のインクジェット記録用水性インクを用いた場合は、高い印字濃度が得られつつも、印字濃度の最大値と最小値の差が小さく、均一な印字画像が得られ、スジやムラの発生が抑制された。更に、本発明のインクジェット記録用水性インクを用いた印字画像の光堅牢性は、紙の差がなく高い耐光性を示し、先のスジ・ムラの抑制効果との両立が実現できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A及びBを含有するビニルポリマー粒子の顔料分散体。
A:下記一般式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩、それらの水和物又はそれらの溶媒和物
B:ポリマー主鎖と連結基を介して結合した非芳香族脂環式基を有する構造単位(a)と、親水性基を有する構造単位(b)とを含むビニルポリマー。
【化1】

(一般式(1)中、Qは炭素原子と共に5〜7員の複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2は複素環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した4量体を表す。)
【請求項2】
前記構造単位(a)が下記一般式(I)で表される構造単位(a1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の顔料分散体。
【化2】

(一般式(I)中、R1は水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表し、L1は−COO−、−OCO−、−CONR2−、−O−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R2は水素原子、アルキル基を表す。L2は単結合又は、2価の連結基を表す。Cyc1は1価の非芳香族脂環式基を表す。)
【請求項3】
前記構造単位(a)が更に、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位(a2)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料分散体。
【請求項4】
前記構造単位(a)がシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来の構造単位より選択される1種以上を総量でビニルポリマー全質量に対して5質量%以上93質量%未満で含み、前記構造単位(b)がアクリル酸又はメタクリル酸に由来の構造単位より選択される1種以上をビニルポリマー全質量に対して3質量%以上41質量%未満を含む、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項5】
前記ビニルポリマーの重量平均分子量が、5000〜152000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項6】
前記ビニルポリマーの酸価が10〜270mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項7】
前記顔料分散体の累積体積95%となる粒子径が、10nm〜400nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項8】
一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の顔料分散体。
【化3】

(一般式(2)中のQ、W、X1、R1、R2及びnは前記一般式(1)中のQ、W、X1、R1、R2及びnと同義である。n=2の場合は、Q、W、X1、R1、又はR2を介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X1、R1、又はR2を介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X1、R1、又はR2を介した4量体を表す。)
【請求項9】
一般式(1)中、Qが炭素原子と共に5員含窒素複素環を形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項10】
一般式(1)中のnが2であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項11】
一般式(2)中のX1が水素原子であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項12】
一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の顔料分散体。
【化4】

(一般式(3)中のYは水素原子又は置換基を表し、Gは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、W、X1、X2、R1、R2及びnは前記一般式(1)中のW、X1、X2、R1、R2及びnと同義である。n=2の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した2量体を表す。n=3の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した3量体を表す。n=4の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介した4量体を表す。)
【請求項13】
一般式(3)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項12に記載の顔料分散体。
【化5】

(一般式(4)中、Zは5〜8員含窒素複素環を構成するのに必要な原子団を表し、Y1、Y2、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項14】
W、W1、W2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項15】
G、G1、G2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基であることを特徴とする請求項12又は13に記載の顔料分散体。
【請求項16】
Zが、6員含窒素複素環であることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の顔料分散物と水溶性媒体とを含有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク。

【公開番号】特開2011−57732(P2011−57732A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205360(P2009−205360)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】