説明

アダプタ収納モジュール

【課題】モジュールの小型化を可能とするとともに、ユーザーの融着作業の作業性を向上させることができるアダプタ収納モジュールを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を収納する接続箇所収納部16と、アダプタ7を収納するアダプタ収納部5と、光ファイバ心線の配線収納部17とを備えたアダプタ収納モジュールである。モジュール本体1の一側にアダプタ収納部5を設け、モジュール本体1の内部を仕切りプレート14によって上下に二分し、上側スペースを接続箇所収納部16とし、下側スペースをプレ配線される光ファイバ心線の配線収納部17とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを接続する光接続箱の内部に設置されるアダプタ収納モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光接続箱は、光ファイバの接続や分岐を行うためのボックスであり、その内部には例えば特許文献1に示されるような、モジュールやトレーと呼ばれる扁平な箱状体が多段に積層されている。モジュールの内部には光ファイバ心線の接続部材であるスリーブや、光ファイバ心線の分岐部材であるスプリッターを収納する接続箇所収納部があり、またこれらのスリーブやスプリッターに接続された光ファイバ心線の余長を収納する余長収納部が設けられている。さらに、光ファイバを接続するためのコネクタ、アダプタを各モジュールに収納した構造も知られている。
【0003】
このようなモジュールを用いて、モジュールの外側から融着接続点までの配線である1次側配線と融着接続点からコネクタまでの配線である2次側配線とを接続・分岐させるが、多くの場合には2次側配線はメーカーあるいは工事店がプレ配線しておき、ユーザーの負担を軽減している。すなわち、外部からの光ファイバを接続するためのアダプタと、このアダプタに接続され、光ファイバ心線の一端が接続されているコネクタとはプレ配線しておくのが普通である。なお本願において「光ファイバ心線」は、「テープ心線」も含むものとする。また、配線状態によっては1次側配線と2次側配線とは入れ替わるものがある。
【0004】
しかし通常はモジュール内部の同一スペースにモジュールの外側から融着接続点までの配線である1次側配線と融着接続点からコネクタまでの配線である2次側配線とが配置されているため、ユーザーが1次側配線を行う際にプレ配線された光ファイバ心線が損傷されることのないように、十分な被覆を持った例えば2mm径の光ファイバによるプレ配線を行っている。その結果、モジュールのサイズを十分に小型化することができなかった。また、ユーザーが融着作業を行う際にはプレ配線された光ファイバの被覆を剥ぐ必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−20707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、十分な被覆を持った光ファイバによるプレ配線を不要としてモジュールの小型化を可能とするとともに、ユーザーの融着作業の作業性を向上させることができるアダプタ収納モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を収納する接続箇所収納部と、アダプタを収納するアダプタ収納部と、光ファイバ心線の配線収納部とを備えたアダプタ収納モジュールにおいて、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設けるとともに、モジュール本体の内部を仕切りプレートによって上下に二分し、上側スペースを接続箇所収納部とし、下側スペースを配線収納部としたことを特徴とするものである。
【0008】
なお、請求項2のように上側スペースを下側スペースよりも広くすることができ、また請求項3のようにアダプタ収納部からモジュール本体の内部に向かって、仕切りプレートが低くなる傾斜部を設けることができ、また請求項4のように接続箇所収納部に、仕切りプレートと平行な方向に弾性変形して光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を固定する弾性辺を、複数段形成することができる。さらに、請求項5のように仕切りプレートの上面に、光ファイバ心線を複数のパターンに巻きつける複数の巻きつけ部を設けることができ、請求項6のように、仕切りプレートにより、融着接続点からコネクタまでの配線箇所の上部を覆った構造とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアダプタ収納モジュールは、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設け、モジュール本体の内部を仕切りプレートによって上下に二分し、上側スペースを接続箇所収納部とし、下側スペースを配線収納部としたので、アダプタから引き込まれる融着接続点からコネクタまでの配線である2次側配線を仕切りプレートの下側に隠蔽することができる。この結果ユーザーが融着作業やモジュールの外側から融着接続点までの配線である1次側配線を行う際に2次側配線を損傷するおそれがなくなるので、2次側配線を十分な被覆を持った光ファイバから光ファイバ心線に置き換えることができ、モジュールの小型化を図ることができる。しかもユーザーが融着作業を行う際には従来のようにプレ配線された光ファイバの被覆を剥ぐ必要がなくなるから、作業性を向上させることができる。
【0010】
請求項2のように上側スペースを下側スペースよりも広くすれば、ユーザーによる融着作業や1次側配線を広い側のスペースで行うことができ、作業性が向上する。また請求項3のようにアダプタ収納部からモジュール本体の内部に向かって仕切りプレートが低くなる傾斜部を設けておけば、モジュールを小型化することができるのみならず、傾斜部の下面に2次側配線を無理なく沿わせることができる。また、請求項4のように接続箇所収納部に、仕切りプレートと平行な方向に弾性変形して光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を固定する弾性辺を複数段形成しておけば、サイズの異なるスリーブやスプリッターを多段に固定することができる。さらに、請求項5のように仕切りプレートの上面に、光ファイバ心線を複数のパターンに巻きつける複数の巻きつけ部を設けておけば、光ファイバ心線を複数の取り回しパターンで巻くことができ、請求項6のように、仕切りプレートにより、融着接続点からコネクタまでの配線箇所の上部を覆った構造とすれば、ユーザーがモジュールの外側から融着接続点までの配線である1次側配線をする際に融着接続点からコネクタまでの配線である2次側配線箇所が仕切りプレートによって覆われているので、2次側配線を指で直接さわることができず、プレ配線部(2次側配線部)の損傷防止となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】分解斜視図である。
【図3】カバーを外した状態を示す斜視図である。
【図4】長手方向の断面を示す斜視図である。
【図5】長手方向の垂直断面図である。
【図6】カバーを外した状態を示す平面図である。
【図7】光ファイバ心線の巻付け例を示す斜視図である。
【図8】接続箇所収納体の拡大斜視図である。
【図9】接続箇所収納体の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1〜図3に示されるように、本発明のアダプタ収納モジュールは浅箱状のモジュール本体1と、その上面を覆うカバー2とを備えている。従来品と同様に、モジュール本体1の両側壁の上下端部には、アダプタ収納モジュールを多段に積層するための係合手段3、4が突設されている。
【0013】
モジュール本体1の一側には、アダプタ収納部5が設けられている。この実施形態ではアダプタ収納部5は一定ピッチの垂直壁6からなり、アダプタ7を落とし込むようにはめ込んで支持することができる。なお垂直壁6の中央部には縦溝8が形成されており、アダプタ7の突起9を嵌合させることによって、長手方向の力が加えられてもアダプタ7が動かない構造となっている。
【0014】
アダプタ7の両側にはコネクタ10、11が装入されている。外側のコネクタ10には十分な被覆を持った光ファイバが接続され、内側のコネクタ11には2次側配線である光ファイバ心線が接続される。前記したように、融着接続点からコネクタまでの配線である2次側配線はメーカー側でプレ配線しておくのが普通である。
【0015】
モジュール本体1の内部は、仕切りプレート14によって上下に二分されている。仕切りプレート14はアダプタ収納部5からモジュール本体1の内部に向かって低くなる傾斜部15を備えている。図5に示されるように、傾斜部15の先端は内側のコネクタ11の上側まで延びている。仕切りプレート14の上側スペースは接続箇所収納部16となり、下側スペースは配線収納部17となる。下側スペースはプレ配線が収納されるスペースであるのに対して、上側スペースはユーザーがモジュールの外側から融着接続点までの配線である1次配線を行うスペースであるから、図5に明示されるように、上側スペースを下側スペースよりも広くしてユーザーの作業性を高めている。
【0016】
下側スペースである配線収納部17には、内側のコネクタ11に接続された光ファイバ心線が収納される。この実施形態では、配線収納部17に高さの低い円盤状の突起の外周に腕を突設し、その先端部を円弧状の余長巻付面とした余長巻付体18が設けられている。内側のコネクタ11に接続された光ファイバ心線はこの余長巻付体18に巻き付けられる。しかし余長が短い場合には単に光ファイバ心線を通過させるだけでもよい。
【0017】
仕切りプレート14にも、余長巻付体18の直上位置に円盤状の突起19が形成されている。そして余長巻付体18の上面から立ち上がる係止柱20が円盤状の突起19の係止孔21に挿入されて位置決めされるとともに、仕切りプレート14の周縁の係止部がモジュール本体1の壁面の係止部22に係合して取り付けられている。円盤状の突起19の奥側には下側スペースから上側スペースに光ファイバ心線を通すための貫通孔23が適当数形成されており、プレ配線された光ファイバ心線の端部はこれらの貫通孔23から上側スペースである接続箇所収納部16に引き出されている。
【0018】
なお仕切りプレート14には光ファイバ心線を係止させるための多数の突起24が配置されており、例えば図7に示すように大周り、中周り、小周りの複数の取りまわしパターンをもって光ファイバ心線を巻きつけることができる構造となっている。この実施形態では円盤状の突起19の周りを小周り巻きつけ部32とし、仕切りプレート14の傾斜部15の上面にも突起24を設け中周り巻きつけ部33とし、仕切りプレート14のアダプタ7の上方面35の突起36を設け大周り巻きつけ部33としており、仕切りプレート14の上面の複数の巻きつけ部によって光ファイバ心線を複数の取り回しパターンで巻き付けることができるようにしてある。
【0019】
仕切りプレート14の両側端部には、光ファイバ心線の接続部材であるスリーブや、光ファイバ心線の分岐部材であるスプリッターを収納する接続箇所収納体25が設けられている。この部分の詳細は図8、図9に示されるとおりであり、左右の垂直壁26、27の中央部に中間壁28を突設し、その長手方向の両端に左右の垂直壁26、27の方向に近接する弾性辺29、30を複数段設けたものである。これらの弾性辺29、30は仕切りプレート14と平行な方向、すなわち水平方向に弾性変形して光ファイバ心線の接続部材であるスリーブまたは分岐部材であるスプリッターを固定するためのものである。
【0020】
この実施形態では、弾性辺29、30は2段に設けられており、同一位置に接続部材または分岐部材を2個固定することができる。これによってモジュール全体のサイズを小型化することができる。なお下側の弾性辺29は中間壁28の中心面に対する角度が先端に行くほど大きくなる略Y字形状をしており、上側の弾性辺30は中間壁28の中心面に対する角度が先端に行くほど小さくなる略U字形状をしている。このような形状としておけば、平面視したときの弾性辺29と弾性辺30との間の距離をとることができるので、仕切りプレート14を射出成形する金型からの抜き取りが容易に行える利点がある。
【0021】
なお、この実施形態では仕切りプレート14はモジュール本体1のほぼ全面を覆う大きさであるが、ユーザーが1次配線を行う際に、仕切りプレート14により融着接続点からコネクタまでの配線である2次側配線箇所の上部を覆った構造としており、プレ配線された光ファイバ心線に手が接触しない程度に覆うことができれば、さらに小型化しても差し支えない。
【0022】
このように構成された本発明のアダプタ収納モジュールは、光ファイバ心線の一端を接続した内側のコネクタ11をアダプタ7に挿入し、この光ファイバ心線を仕切りプレート14の下側の配線収納部17に収納し、この光ファイバ心線の先端を貫通孔23から上側に引き出すプレ配線を、製造業者あるいは工事業者が行った状態でユーザーに出荷される。そしてユーザーはプレ配線された光ファイバ心線の先端に対して、接続箇所収納部16において接続部材または分岐部材を用いて接続や分岐などの作業を行い、1次配線はモジュール本体1の左右両側の光ファイバ収納溝31から外部に引き出される。
【0023】
プレ配線された光ファイバ心線は仕切りプレート14の下側の配線収納部17に収納されているので、ユーザーが1次配線を行う際にプレ配線された光ファイバ心線を損傷するおそれがない。このためプレ配線を細い光ファイバ心線によって行うことができ、従来のような強度のある光ファイバが不要となる。このためモジュールの小型化を図ることができるうえ、ユーザーが融着作業を行う際に従来のようにプレ配線された光ファイバの被覆を剥ぐ必要がなくなるから、作業性を向上させることができる利点がある。
【符号の説明】
【0024】
1 モジュール本体
2 カバー
3 係合手段
4 係合手段
5 アダプタ収納部
6 垂直壁
7 アダプタ
8 縦溝
9 突起
10 コネクタ
11 コネクタ
14 仕切りプレート
15 傾斜部
16 接続箇所収納部
17 配線収納部
18 余長巻付体
19 円盤状の突起
20 係止柱
21 係止孔
22 係止部
23 貫通孔
24 突起
25 接続箇所収納体
26 垂直壁
27 垂直壁
28 中間壁
29 弾性辺
30 弾性辺
31 光ファイバ収納溝
32 小周り巻きつけ部
33 中周り巻きつけ部
34 大周り巻きつけ部
35 上方面
36 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を収納する接続箇所収納部と、アダプタを収納するアダプタ収納部と、光ファイバ心線の配線収納部とを備えたアダプタ収納モジュールにおいて、モジュール本体の一側にアダプタ収納部を設けるとともに、モジュール本体の内部を仕切りプレートによって上下に二分し、上側スペースを接続箇所収納部とし、下側スペースを配線収納部としたことを特徴とするアダプタ収納モジュール。
【請求項2】
上側スペースを下側スペースよりも広くしたことを特徴とする請求項1記載のアダプタ収納モジュール。
【請求項3】
アダプタ収納部からモジュール本体の内部に向かって、仕切りプレートが低くなる傾斜部を設けたことを特徴とする請求項1記載のアダプタ収納モジュール。
【請求項4】
接続箇所収納部に、仕切りプレートと平行な方向に弾性変形して光ファイバ心線の接続部材または分岐部材を固定する弾性辺を、複数段形成したことを特徴とする請求項1記載のアダプタ収納モジュール。
【請求項5】
仕切りプレートの上面に、光ファイバ心線を複数のパターンに巻きつける複数の巻きつけ部を設けたことを特徴とする請求項1記載のアダプタ収納モジュール。
【請求項6】
仕切りプレートにより、融着接続点からコネクタまでの配線箇所の上部を覆ったことを特徴とする請求項1記載のアダプタ収納モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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