説明

アダマンタン骨格を有するアミン類及び第4級アンモニウム塩の製造方法

【課題】安全性や毒性等に関する操作上の問題がなく、高純度及び高収率でかつ効率的に、アダマンタン類からアダマンタン骨格を有するアミン類及びアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウム塩を製造する方法を提供する。
【解決手段】下記工程1〜3を順次含むアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法である。
工程1:アダマンタン類を発煙硫酸及び有機ニトリル化合物からなる混合液中で反応させる工程。
工程2:工程1で得られた反応液を加水分解処理してアダマンタン骨格を有するアミド類とする工程。
工程3:工程2で得られたアミド類をアルカリ処理してアダマンタン骨格を有するアミン類とする工程。
引き続き、下記工程A〜Cを順次含むアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウム塩の製造方法である。
工程A:溶媒aに溶解した上記アダマンタン骨格を有するアミン類をギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させてアダマンタン骨格を有するジメチルアミン類とする工程。
工程B:工程Aで得られたアダマンタン骨格を有するジメチルアミン類を溶媒bに溶解し、ハロゲン化メチルと反応させてアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩とする工程。
工程C:溶媒cに溶解した、アダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩をイオン交換してアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩とする工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダマンタン骨格を有するアミン類及び第4級アンモニウム塩の製造方法に関する。詳しくは、アダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法、及び該製造方法により得られたアミン類を用い、アダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩及び第4級アンモニウムOH塩を高純度及び高収率かつ簡便に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1−アミノアダマンタン等のアダマンタン骨格にアミノ基が結合してなるアミノアダマン類は、医薬中間体、フォトレジスト用モノマーの原料、塗料、接着剤、粘着剤、膜、吸着材等の材料の原料等広く用途があり、工業上重要な化合物である。特に1−アミノアダマンタンの塩酸塩(塩酸アマンタジン)はインフルエンザウィルスの抗ウィルス剤やパーキンソン病の治療薬として非常に重要な化合物である。また、1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタンの塩酸塩(塩酸メマンチン)はアルツハイマー認知症の治療薬として用いられている。さらに、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩はゼオライト用テンプレート剤(構造規定剤)として使用され、重要性が高まってきている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献4には、アダマンタンを臭素化してブロモアダマンタン生成し、得られたブロモアダマンタンをアセトニトリルと硫酸中で反応させてアダマンチルアセチルアミドを生成し、得られたアダマンチルアセチルアミドをアルカリで分解するアミノアダマンタンの製造方法が記載されている。この方法は一旦原料を臭素化するために原料費が高くなり、また本発明に比べ、工程が1つ多い(臭素化工程)。
特許文献5にはブロモアダマンタンにアンモニアを反応させ、アミノアダマンタンを得る方法が記載されている。この方法は毒性物質であるアンモニアを高温、高圧化で使用する必要があり、安全上問題がある。またアミノアダマンタンの収率が58mol%と低い。
非特許文献1にはアダマンタンをNCl3とAlCl3存在下、ジクロロメタン中で反応させることでアミノアダマンタンを得ることが記載されている。しかしNCl3は極めて爆発性が高く、しかも毒性を有しており、工業的な使用は困難である
非特許文献2にはアミノアダマンタンをホルムアルデヒドとギ酸によりジメチル化した後、ハロゲン化メチルを用いて第4級アンモニウム塩を合成する方法が記載されている。この方法は反応速度が遅く、反応に長い時間が必要である。また、原料が完全に反応しきれないため、精製が困難であり、高純度、高収率で目的物を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開1987−191418号公報
【特許文献2】特開1987−202814号公報
【特許文献3】特開1987−216914号公報
【特許文献4】米国特許第3,283,001号明細書
【特許文献5】米国特許第3,256,329号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tetrahedron letters(1968),56,5833−5835
【非特許文献2】Russian Journal of General Chemistry,69(4),644−647(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたもので、安全性や毒性等に関する操作上の問題がなく、高純度及び高収率でかつ効率的に、アダマンタン類からアダマンタン骨格を有するアミン類及びアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウム塩を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、アダマンタン類を、発煙硫酸及び有機ニトリル化合物から成る混合液中で反応させた後、反応液を特定の温度で加水分解処理するアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法により上記目的が達成されること、さらに該製造方法により得られたアダマンタン骨格を有するアミン類を用い、特定の工程を施してアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩及び第4級アンモニウムOH塩を製造する方法により上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記のアダマンタン骨格を有するアミン類並びにアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩及び4級アンモニウムOH塩の製造方法を提供する。
【0008】
1.下記の工程1〜3を順次含むことを特徴とするアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
工程1:アダマンタン類を発煙硫酸及び有機ニトリル化合物からなる混合液中で反応させる工程。
工程2:工程1で得られた反応液を加水分解処理してアダマンタン骨格を有するアミド類とする工程。
工程3:工程2で得られたアミド類をアルカリ処理してアダマンタン骨格を有するアミン類とする工程。
【0009】
2.工程1において、アダマンタン類1モルに対して、発煙硫酸を10〜20モル、有機ニトリル化合物を1〜10モル使用し、反応温度が0〜60℃である前記1に記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
3.工程1において、発煙硫酸中のSO3濃度が10〜26質量%であり、反応温度が10〜50℃である前記1又は2に記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
4.工程1において、有機ニトリル化合物がアセトニトリルである前記1〜3のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
5.工程2において、加水分解温度が1℃以上30℃未満である前記1〜4のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
6.アダマンタン類がアダマンタンであり、製造するアミン類が1−アミノアダマンタンである前記1〜5のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
【0010】
7.前記1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られたアダマンタン骨格を有するアミン類を用い、下記工程A及びBを順次含むことを特徴とするアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
工程A:溶媒aに溶解した上記アダマンタン骨格を有するアミン類をギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させてアダマンタン骨格を有するジメチルアミン類とする工程。
工程B:工程Aで得られたアダマンタン骨格を有するジメチルアミン類を溶媒bに溶解し、ハロゲン化メチルと反応させてアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩とする工程。
【0011】
8.工程Bにおいて、ハロゲン化メチルが臭化メチル又はヨウ化メチルである前記7に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
9.工程Aにおいて、溶媒aが比誘電率10.0〜18.7のアルコール系溶媒である前記7又は8に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
10.工程Bにおいて、溶媒bが比誘電率4.0〜20.0のアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒から選ばれる1種以上である前記7〜9のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
11.さらに、下記の工程Dを含む前記7〜10のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
工程D:工程Bで得られたアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩を精製する工程。
12.工程Aにおいて、アダマンタン骨格を有するアミン類が1−アミノアダマンタンである前記7〜11のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
【0012】
13.前記7〜12のいずれかに記載の製造方法により得られたアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩を用い、下記の工程Cを含むことを特徴とするアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
工程C:溶媒cに溶解した、アダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩をイオン交換してアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩とする工程。
14.工程Cにおけるイオン交換を水酸化アルカリ金属を用いて行なう前記13に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
15.水酸化アルカリ金属が水酸化カリウムである前記14に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
16.工程Cにおけるイオン交換をOH形塩基性陰イオン交換樹脂を用いて行なう前記13に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
17.工程Cにおける溶媒cが水及び/又はアルコール系溶媒である前記13〜16のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安全性や毒性等の操作上の問題がなく、高純度及び高収率かつ簡便な方法で効率的にアダマンタン骨格を有するアミン類並びにアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩及び第4級アンモニウムOH塩を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[アダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法]
第1に本発明は、アダマンタン類を原料とするアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法を提供するものである。具体的には、下記の工程1〜3を順次含むアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法である。
工程1:アダマンタン類〔下記式(1)〕を発煙硫酸及び有機ニトリル化合物からなる混合液中で反応させる工程。
工程2:工程1で得られた反応液を加水分解処理してアダマンタン骨格を有するアミド類〔下記式(2)〕とする工程。
工程3:工程2で得られたアミド類をアルカリ処理してアダマンタン骨格を有するアミン類〔下記式(3)〕とする工程。
【0015】
【化1】

【0016】
(工程1)
工程1は、発煙硫酸の作用により、アダマンタン骨格の1位、3位、5位あるいは7位上に生じた3級カルボカチオンに有機ニトリル化合物を求核付加反応することで、ニトリリウムイオンが生じた求核付加体とする工程である。
原料である上記式(1)で表されるアダマンタン類とは、アダマンタンの他、アダマンタン骨格上の4個の3級炭素、すなわち、1位、3位、5位及び7位の炭素原子の少なくとも1個が無置換の化合物である。
【0017】
式(1)中、R1は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、又はハロゲン原子であり、nは0〜4の整数であり、1位、3位、5位及び7位の炭素原子の少なくとも1個は、R1が無置換である。
式(1)においてR1のアルキル基は、特に制限されるものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のものが好ましい。アリール基は、フェニル基等の炭素数が6〜10のものが好ましい。アラルキル基は、ベンジル基等の炭素数が7〜12のものが好ましい。アミノ基は、メチルアミノ基、エチルアミノ基等の炭素数1〜4のものが好ましい。ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が好ましい。これらR1のうちでも、アルキル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、又はハロゲン原子が特に好ましい。
また、R1がアダマンタン骨格に対して複数個置換している場合、これらは各々同種のものであってもよいし、異種のものであってもよい。
【0018】
アダマンタン類(1)を具体的に例示すると、アダマンタン;1−メチルアダマンタン、1−エチルアダマンタン、2−メチルアダマンタン、2−エチルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1,3−ジエチルアダマンタン、1,2−ジメチルアダマンタン、1,2−ジエチルアダマンタン等のアルキルアダマンタン類;1−アダマンタナミン、1,3−ジアミノアダマンタン、1−アダマンタンメチルアミン等のアミノアダマンタン類;1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1,3−ジヒドロキシアダマンタン等のヒドロキシアダマンタン類;、1−シアノアダマンタン、2−シアノアダマンタン等のシアノアダマンタン類;1−アダマンタンカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸等のカルボキシルアダマンタン類;1−フルオロアダマンタン、2−フルオロアダマンタン、1−クロロアダマンタン、2−クロロアダマンタン、1−ブロモアダマンタン、2−ブロモアダマンタン、1−ヨードアダマンタン、2−ヨードアダマンタン、1,3−ジフルオロアダマンタン、1,3−ジクロロアダマンタン、1,3−ジブロモアダマンタン、1,3−ジヨードアダマンタン等のハロゲン化アダマンタン類等が挙げられる。
これらのなかでも、反応性や入手の容易さ等の理由から、アダマンタン、1−メチルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタンが好ましく、アダマンタンが特に好ましい。
【0019】
本発明において、発煙硫酸は、酸化剤として使用するものであり、試薬および工業用に入手可能なものを何ら制限なく使用できる。発煙硫酸中のSO3濃度は、通常5〜60質量%であり、好ましくは10〜26質量%である。SO3濃度を60質量%以下とすることによりニトリリウムイオンが生じた求核付加体の収率が向上し、5質量%以上とすることにより反応速度が向上する。
発煙硫酸の使用量は、アダマンタン類1モルに対して、通常8モル以上であり、好ましくは8〜50モルであり、さらに好ましくは10〜20モルである。アダマンタン類1モルに対して8モル以上とすることにより上記求核付加体の収率が向上する。また、20モルより多くしても収率向上の効果は無く、使用量増大により製造コストが上昇する。
【0020】
有機ニトリル化合物としては、式: R2−CN で表すことができる。該式中、R2はアルキル基、アリール基、アラルキル基、XR3基(Xはハロゲン原子、R3は炭素数1〜6のアルキル基)である。例えば、具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のものが挙げられ、アリール基としては、フェニル基等の炭素数6〜10のものが挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基等の炭素数7〜12のものが挙げられる。また、XR3基は、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル等が挙げられる。
【0021】
有機ニトリル化合物を具体的に例示すると、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ベンジルニトリル、ビニルアセトニトリル、クロロアセトニトリル、2−クロロプロピオニトリル、3−クロロプロピオニトリル、2−ブロモフェニルアセトニトリル、3−ブロモフニェルアセトニトリル、4−ブロモフェニルアセトニトリル等が挙げられ、これらのなかでも、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルを用いるのが好ましい。
【0022】
アダマンタン類(1)と有機ニトリル化合物との反応は量論反応であるため、有機ニトリル化合物の使用量としてはアダマンタン類1モルに対して1モル以上使用すれば特に制限は無いが、あまり量が多いと、副生成物が増加する可能性があるため、通常、アダマンタン類1モルに対して1〜10モルであり、好ましくは1〜5モルである。
【0023】
アダマンタン類(1)と、発煙硫酸及び有機ニトリル化合物との反応温度は、通常0〜60℃である。反応温度を0℃以上とすることにより反応速度が向上する。また、60℃以下とすることにより副反応が少なくなり、収率が向上する。反応は発煙硫酸の凝固点以上で実施する必要があり、例えば発煙硫酸中のSO3濃度が10〜26質量%の場合、10〜50℃で実施するのが好ましく、より好ましくは15〜45℃である。
反応時間は使用する発煙硫酸量、SO3濃度、有機ニトリル化合物の種類、量等により一概には言えないが、通常、0.5〜50時間である。
【0024】
(工程2)
工程2は、工程1で得られた反応液を加水分解処理する工程であり、具体的には求核付加体に生じたニトリリウムイオンを水により加水分解し、アダマンタン骨格を有するアミド類〔前記式(2)、以下アミド類(2)と称すことがある。〕とする工程である。
加水分解処理を行う際の水使用量は、発煙硫酸の質量に対して1倍以上、好ましくは1.5〜10倍である。水使用量を1倍以上とすることにより、アミド類(2)の収率が向上する。水使用量が多すぎると、回分式では1バッチ当たりのアミド類(2)の収量が低下することになる。
加水分解処理における温度は、1℃以上30℃未満が好ましく、より好ましくは1℃以上20℃未満である。上記加水分解処理の温度が30℃未満であればアダマンタノール類の副生を抑制することができるため好ましい。
加水分解の反応時間は、反応液の水への滴下後0〜5時間程度であるが、通常滴下終了時には加水分解反応がほぼ完結しており、短時間にアミド類(2)を高収率で得ることができる。
【0025】
アミド類(2)は、例えば、加水分解後の液を冷却することにより析出した結晶を、濾過や遠心分離により回収することができる。濾過した結晶又は加水分解後の液を、必要により有機溶媒(例えばトルエン、1−ヘキサノール、1−オクタノール等)を加えて抽出し、水酸化ナトリウム水溶液等を加えて中和した後、次工程3に使用してもよい。また、必要に応じて得られた有機溶媒を濃縮し、晶析を行う等の手法により精製することができる。
【0026】
(工程3)
工程3は、工程2で得られたアミド類(2)をアルカリ処理してアダマンタン骨格を有するアミン類〔前記式(3)、以下アミン類(3)と称すことがある。〕とする工程である。
アルカリ処理する際のアルカリとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物又はアルカリ金属の水酸化物が好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリの使用量はアミド類(2)に対して0.2〜10質量倍が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量倍である。0.2〜10質量倍の範囲内であれば、適度な反応速度となり反応が良好に進行する。
【0027】
工程3において使用する溶媒としては、アミド類(2)及びアルカリの溶解性から、アルコール系溶媒が好適である。アルコール系溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、ベンジルアルコール等の一価アルコールや、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。これらのなかでも、炭素数2〜8のアルコール系溶媒が好ましく、1−ブタノールが精製の容易さ、引きつづき第4級アンモニウム塩を製造する場合の工程Aにおいてでも使用できる等の理由から特に好ましい。また、炭化水素系の溶媒と混合して使用しても良い。
溶媒の量はアミド類(2)に対して0.5〜20質量倍、好ましくは1〜10質量倍である。0.5質量倍以上であればアミド類(2)の溶解量が適度で反応速度が良好となり、20質量倍以下であれば反応系の容積が増大することがなく、生産効率が良好である。
【0028】
工程3における反応温度としては、50〜250℃であることが好ましく、さらに好ましくは70〜200℃である。温度が50℃以上であれば適度な反応速度となり、温度が250℃以下であれば副反応が進行することなく、アミン類(3)の収率が低下する可能性がなくなる。
反応時間は、条件により一概にはいえないが、1〜24時間で十分である。
【0029】
アミン類(3)は、例えば、工程3において使用した溶媒が非水溶性の溶媒(例えば1−ブタノール等)であれば、水洗でアルカリを除去あるいは塩酸等で中和した後、有機層の溶媒を留去し回収すればよい。水溶性の溶媒を使用したのであれば、非水溶性溶媒(例えばトルエン等)を加えた後、上記非水溶性溶媒を使用した場合と同様の操作を行えばよい。
【0030】
アダマンタン類は、前述の工程1〜3を含む製造方法により、高収率及び高純度でアミン類(3)とすることができるため、上記工程3によって得られたアミン類(3)を含むアルカリ除去後の有機層は、そのまま次工程(第4級アンモニウム塩を製造する場合の工程A)に使用してもよい。また、必要に応じて得られた有機層を濃縮し、晶析を行う等の手法により、精製することができる。
【0031】
[アダマンタン骨格を有する第4級アンモニウム塩の製造方法]
第2に本発明は、前述の製造方法により得られたアダマンタン骨格を有するアミン類(3)を用い、アダマンタン骨格を有する第4級アンモニウム塩の製造方法を提供するものである。
具体的には、前述の工程1〜3を含む製造方法に引き続き、下記工程A及びBを順次含むアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法、さらに、後述する工程Cを含むアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法である。
【0032】
工程A:溶媒aに溶解した上記アダマンタン骨格を有するアミン類〔下記式(3)〕をギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させてアダマンタン骨格を有するジメチルアミン類〔下記式(4)〕とする工程。
工程B:工程Aで得られたアダマンタン骨格を有するジメチルアミン類〔下記式(4)〕を溶媒bに溶解し、ハロゲン化メチルと反応させてアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩〔下記式(5)〕とする工程。
【0033】
【化2】

【0034】
(工程A)
工程Aは、前述の工程1〜3を含む製造方法により得られた、上記式(3)で表されるアダマンタン骨格を有するアミン類を原料とし、溶媒aに溶解したアミン類(3)を、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させて、アダマンタン骨格を有するジメチルアミン類〔上記式(4)、以下ジメチルアミン類(4)と称すことがある。〕とする工程である。
工程Aは、1級アミンにメチル基を導入する還元的アミノ化反応であるエシュバイラー・クラーク反応(Eschweiler−Clarke methylation)を行うものである。エシュバイラー・クラーク反応は、1級アミンに過剰のギ酸、及び過剰のホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを加えて加温し、2級アミンへと還元する反応である。これにより、1級アミンに対してメチル基を導入し、同様の反応機構で2級アミンに対してメチル基を導入して、3級アミンを効率的にかつ高純度及び高収率で得ることができる。
【0035】
工程Aで使用する溶媒aは、比誘電率が10.0〜18.7であるアルコール系溶媒が好ましく、比誘電率が15.0〜18.7であるアルコール系溶媒がより好ましい。10.0以上であれば、アミン類(3)の溶解性が良好であり、18.7以下であれば、通常反応溶媒として使用できる。
比誘電率が上記範囲内であるアルコール系溶媒としては、例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、sec−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール等が挙げられる。これらは、単独でも、2種類以上混合して使用してもよい。
アミン類(3)は溶媒aに溶解もしくは分散していることが望ましいため、溶媒aの使用量は、アミン類(3)に対して、通常0.5〜20質量倍が好ましく、より好ましくは1〜10質量倍である。0.5質量倍以上であれば、アミン類(3)が溶解して良好に反応し、20質量倍以下であれば、全体の体積が大きくなりすぎず適量である。
【0036】
工程Aで使用するギ酸は、通常80〜97質量%程度のギ酸水溶液として反応系内に加えることが好ましい。上記範囲内であれば、全体の体積も大きくならず、製造の効率が良い。ギ酸の使用量は、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドに対して、通常0.3〜0.7モル倍が好ましく、0.4〜0.5モル倍がより好ましい。0.3モル倍以上であれば、良好に反応が進行し、0.7モル倍より多くても反応に影響がでないため、0.7モル倍以下が最適である。
【0037】
工程Aで使用するホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドは、通常30〜50質量%程度の水溶液として反応系内に加えることが好ましい。上記範囲内であれば、反応の発熱も小さく製造の効率がよい。
ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドの使用量は、アミン類(3)に対して、通常2〜20モル倍が好ましく、3〜8モル倍がより好ましい。2モル倍以上であれば、短時間で反応が進行し、20モル倍より多くても反応速度はほぼ一緒となるため、20モル倍以下でよい。
【0038】
工程Aにおいて、ギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを加えた後の反応系内の温度は、50〜90℃程度であることが好ましい。該温度内であれば反応が速やかに進行し、反応生成物が熱分解するおそれもない。
【0039】
例えば、以下の手順で工程Aを進行することができる。
反応容器にアミン類(3)を仕込み、50℃の2−プロパノールを加えて溶解させる。その後、50質量%水酸化ナトリウム水溶液(アミン類(3)に対して同モル量)を加え2時間反応させる。
97質量%ギ酸水溶液(アミン類(3)に対して3モル倍)をゆっくり滴下し、37質量%ホルムアルデヒド水溶液(アミン類(3)に対して4モル倍)をゆっくり滴下して、80℃に昇温した後、3時間反応させる。
ガスクロマトグラフィー等でアミン類(3)が消失したことを確認した後、25質量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液をpH10に調整し溶媒bを加え分取する。分取した溶媒bを次工程でそのまま使用する。工程Aでは高収率及び高純度でジメチルアミン類(4)を得ることができるため、精製せずに粗体のまま、次工程に使用することができる。純度が低い場合は、別途、ジメチルアミン類(4)の精製を行い単離して、次工程で使用してもよい。
【0040】
(工程B)
工程Bは、工程Aで得られたジメチルアミン類(4)を溶媒bに溶解し、ハロゲン化メチルと反応させて前記式(5)で表されるアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩〔以下第4級アンモニウムハロゲン塩(5)と称すことがある。〕とする工程である。
工程Bにおいて、ジメチルアミン類(4)と反応させるハロゲン化メチルとしては、臭化メチル又はヨウ化メチルであることが好ましい。ハロゲン化メチルの使用量は、ジメチルアミン類(4)に対して、通常0.9〜5モル倍が好ましく、1.1〜2モル倍がより好ましい。0.9モル倍以上であれば、反応は良好であり、5モル倍以下であれば、ハロゲン由来の副生物の生成を減少させることが可能である。
【0041】
工程Bで使用する溶媒bとしては、比誘電率が4.0〜20.0であるものが好ましい。比誘電率が4.0以上であれば、ジメチルアミン類(4)の溶解性が良好であり、20.0以下であれば、通常反応溶媒として使用できる。
また、溶媒bはアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒又はエステル系溶媒であることが好ましく、例えば、2−プロパノール、1−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−ペンタノール、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。これらは、単独でも、2種類以上混合して使用してもよい。
【0042】
反応温度は、ハロゲン化メチルを反応系内に加える際、通常−60〜100℃程度が好ましく、さらに−20℃〜50℃であることが好ましい。反応温度が上記範囲内であれば、反応が良好に進行し、目的物が結晶化されるため効率よく製造することが可能であり、熱による品質低下のおそれもない。また、ジメチルアミン類(4)とハロゲン化メチルとの反応の際、発熱するため上記反応温度を保ちながら、ハロゲン化メチルを滴下する等の適当な方法で加えることが好ましい。
【0043】
例えば、以下の手順で工程Bを進行することができる。
工程Aで得られたジメチルアミン類(4)を2−プロパノールに溶解させ0℃に冷却した後、ハロゲン化メチル(ジメチルアミン類(4)に対して1.1モル倍)を滴下し反応させる。
ガスクロマトグラフィー等でジメチルアミン類(4)が消失したことを確認した後、溶媒を減圧留去し、第4級アンモニウムハロゲン塩(5)を得る。
【0044】
さらに、本願発明は、上述した工程A及びBに引き続き、下記工程Cを行うことを含むアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩〔以下第4級アンモニウムOH塩と称すことがある。〕の製造方法をも提供する。
(工程C)
工程Cは、下記反応式で表される工程であり、溶媒cに溶解した第4級アンモニウムハロゲン塩〔下記式(5)〕をイオン交換して第4級アンモニウムOH塩〔下記式(6)〕とする工程である。
【0045】
【化3】

【0046】
イオン交換の方法としては、第4級アンモニウムハロゲン塩(5)の溶液中に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属を添加し、析出するアルカリ金属のハロゲン化物を除去する方法、あるいはOH形塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる方法等がある。
【0047】
水酸化アルカリ金属を使用する場合、第4級アンモニウムハロゲン塩(5)を溶媒cに溶解させた中に、例えば、水酸化カリウムをそのまま、あるいは、水酸化カリウムを溶媒cに溶解させた溶液を、第4級アンモニウムハロゲン塩の0.8〜5モル倍量添加し、析出する中性無機塩をろ過により除去した後、得られた溶液より第4級アンモニウムOH塩(6)を得ることができる。
溶媒cとしては、第4級アンモニウムハロゲン塩(5)や第4級アンモニウムOH塩(6)の溶解度は高いが、中性無機塩の溶解度が低いものが好ましく、例えば、水及び/又はアルコール系溶媒が用いられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
反応温度は、溶媒が液体であって、かつ−30℃〜120℃程度が好ましく、さらに0℃〜100℃であることがより好ましい。
この範囲内であると、イオン交換反応が良好に進行し中性無機塩の除去効率の良い温度で反応を実施可能であり、必要に応じて濃縮等の操作を行なうことも可能で、熱による品質低下のおそれもない。
【0049】
OH形塩基性陰イオン交換樹脂を使用する場合、溶媒cに溶解した第4級アンモニウムハロゲン塩(5)の溶液中にOH形塩基性陰イオン交換樹脂を添加した後、OH形塩基性陰イオン交換樹脂をろ過等で除去した溶液より第4級アンモニウムOH塩(6)を得ることができ、あるいはOH形塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラム中に溶媒cに溶解した第4級アンモニウムハロゲン塩(5)の溶液を仕込み、展開溶媒として溶媒cを使用して、カラム出口より流出してきた溶液より第4級アンモニウムOH塩(6)を得ることができるが、後者の方がより残留ハロゲンの少ない第4級アンモニウムOH塩(6)を得ることができる。
【0050】
OH形塩基性陰イオン交換樹脂としては、強塩基性のものであれば使用可能で、例えばアンバーライトIRA400JやアンバーライトIRA400BL(いずれもオルガノ社製)、ダイヤイオンSA10A(三菱化学社製)等が代表的なものとして挙げられる。
また、塩基性陰イオン交換樹脂は、OH形であればそのまま使用することができるが、Cl形であれば一度アルカリでOH形にイオン交換して使用することができる。
溶媒cとしては前記のなかでも特に水が好ましいが、水以外に溶媒cとして前記に挙げたものを2種類以上混合して使用してもよい。
OH形塩基性陰イオン交換樹脂の使用温度は、0〜80℃程度が好ましく、OH形塩基性陰イオン交換樹脂を除去した後は、水酸化アルカリ金属を使用する場合と同様に必要に応じて濃縮等の操作を行なうことも可能で、熱による品質低下のおそれもない。
【0051】
上述した本発明の工程A、B及びCを含む方法により製造されたアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩は、該第4級アンモニウムOH塩中に含まれるアルコールが5質量%以下、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子換算で2質量%以下、ハロゲンイオンがハロゲン原子換算で2質量%以下とすることができる。すなわち、本発明の製造方法により高純度の第4級アンモニウムOH塩を製造することができる。
なお、上記純度の第4級アンモニウムOH塩でなければ、ゼオライト製造用テンプレート剤として使用した場合に、収率が低下してしまうため、使用することが難しい。
また、必要に応じて、工程A、B及びCの後、晶析等により、アダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩を精製し、さらに純度を向上させることができる。
【0052】
(工程D)
本発明のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウム塩の製造方法において、前述の工程A及びBの後、工程Bで得られた第4級アンモニウムハロゲン塩(5)を精製する工程Dを行うことが好ましい。
精製の工程には再結晶で塩を析出する工程を含み、さらにはろ過や洗浄等を含む。精製は、第4級アンモニウムハロゲン塩(5)の純度が高くなるまで何度行ってもよい。再結晶は溶媒として例えばアセトンを使用することで、高純度の第4級アンモニウムハロゲン塩(5)を高収率で得ることができる。
なお、上述した本発明の第4級アンモニウムOH塩(6)の製造方法には、当然のことながら工程Dを含む製造方法により得られた第4級アンモニウムハロゲン塩を用いることができる。
【0053】
本発明の前述の工程A、B及びDを含む方法により製造された第4級アンモニウムハロゲン塩(5)は、ハロゲン化メチルとして臭化メチルを使用した場合、臭素イオンの含有量を臭素原子換算で28.3質量%以上とすることができ、ハロゲン化メチルとしてヨウ化メチルを使用した場合、ヨウ素イオンの含有量をヨウ素原子換算で38.2質量%以上とすることができる。
また、第4級アンモニウムハロゲン塩(5)中に含まれる不純物として、工程Bで未反応であったジメチルアミン類(4)の含有量を0.5質量%以下とすることができ、さらに、アルカリ金属の含有量を原子換算で1000ppm以下とすることができる。
なお、上記純度の第4級アンモニウムハロゲン塩でなければ、ゼオライト製造用テンプレート剤として使用した場合に、収率が低下してしまい工業的に製造することができない。
【0054】
上述のとおり、本発明によれば、工程1〜3並びに工程A〜C(好ましくは工程A〜D)を含む製造方法により、アダマンタン類を出発原料として、高純度のアダマンタン骨格を有するアミン類並びに第4級アンモニウム塩を製造することができる。また、本発明の製造方法は、各工程において安全性や毒性等に関し操作上の問題がなく、さらに各反応において複雑な操作を必要とせず簡便な方法により高収率で生成物を得ることができるため、工業的に非常に有利である。
【実施例】
【0055】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
[製造例1]:工程1及び2
300mLの四つ口フラスコに25質量%発煙硫酸100mL(1937mmol)を仕込み、アセトニトリル8g(195mmol)、アダマンタン20g(147mmol)を添加し、反応温度25℃で3時間反応させた。なお、原料のアダマンタンに対する発煙硫酸のモル比は13.2(=1937/147)である。
続いて、1Lの四つ口フラスコに張り込んだ5℃の水300gに反応液を滴下した。滴下終了時、水と反応液との混合液の温度は10℃であった。滴下終了後、10℃にて30分間攪拌して加水分解を完了させた後、析出した結晶を濾過、水洗、乾燥し、27.5gの結晶を得た。
この結晶は、ガスクロカトグラフィー分析によって、GC純度98%のN−(1−アダマンチル)アセチルアミドであり、その収率は97mol%であった。
【0057】
[製造例2]:工程1及び2
アセトニトリルの量を12gにした以外は製造例1と同様の操作を行った。その結果、N−(1−アダマンチル)アセチルアミド27.8g(収率98mol%、GC純度98%)を得た。
[製造例3]:工程1及び2
反応温度25℃を40℃にした以外は製造例1と同様の操作を行った。その結果、N−(1−アダマンチル)アセチルアミドを25.5g(収率90mol%、GC純度95%)を得た。
[製造例4]:工程1及び2
反応温度25℃を10℃、反応時間を5時間にした以外は製造例1と同様の操作を行った。その結果、N−(1−アダマンチル)アセチルアミドを27.1g(収率95mol%、GC純度99%)を得た。
【0058】
[製造例5]:工程1及び2
アセトニトリルの代わりにプロピオニトリル10.7g(195mmol)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行った。その結果、をN−(1−アダマンチル)プロピオンアミド29.1g(収率96mol%、GC純度97%)を得た。
[製造例6]:工程1及び2
アセトニトリルの代わりにベンゾニトリル20.1g(195mmol)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行った。その結果、N−(1−アダマンチル)ベンズアミド35.3g(収率89mol%、GC純度96%)得た。
[製造例7]:工程1及び2
アダマンタンの代わりに1,3−ジメチルアダマンタン24.1g(147mmol)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行った。その結果、N−(3,5−ジメチル1−アダマンチル)アセチルアミドを31.5g(収率97mol%、GC純度98%)得た。
【0059】
[実施例1]:工程3
300mLの四つ口フラスコに製造例1の方法で得られたN−(1−アダマンチル)アセチルアミド20g、1−ブタノール40g、NaOH20gを加え、115℃で5時間反応した。室温まで冷却後、反応液に水30gを添加した。有機層を分取し、溶媒を留去した。その結果1−アミノアダマンタン15.1g(収率96mol%、GC純度96%)を得た。
[実施例2]:工程3
製造例5の方法で得られたN−(1−アダマンチル)プロピオンアミド20gを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果1−アミノアダマンタン13.9g(収率95mol%、GC純度95%)を得た。
[実施例3]:工程3
製造例6の方法で得られたN−(1−アダマンチル)ベンズアミド20gを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果1−アミノアダマンタン10.3g(収率92mol%、GC純度93%)を得た。
[実施例4]:工程3
製造例7の方法で得られたN−(3,5−ジメチル1−アダマンチル)アセチルアミド20gを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果3,5−ジメチル−1−アミノアダマンタン15.4g(収率95mol%、GC純度96%)を得た。
【0060】
[実施例5]:工程A,B及びD
300mLの三口フラスコに、実施例1で得られた1−アミノアダマンタン15g(99.2mmol)、1−ブタノール50mLを加えた。50℃に昇温した後、97質量%ギ酸水溶液23g(483mmol)をゆっくり滴下した。攪拌しながら、37質量%ホルムアルデヒド水溶液48g(591mmol)を30分かけて滴下した。滴下終了後80℃まで昇温し、3時間反応を行なった。反応液を冷却し、50質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した。酢酸エチル20gを加え、有機相を分取した。
300mLの三口フラスコに、分取した1−アダマンチルジメチルアミン含有の有機層を加え、0℃まで冷却した。氷冷下、攪拌しながら臭化メチル9.42g(99.2mmol)を4時間かけて添加した。添加終了後、5時間反応させた。反応液を冷却した後、固形分をろ別し、さらにアセトンで洗浄後、乾燥して目的物であるアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイドを25.3g(収率93mol%、白色粉体)得た。
また、得られたアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイドは、高速液体クロマトクラフィー(HPLC−RI法)分析によって、純度99%であった。
【0061】
[実施例6]:工程C
温度計、攪拌機を備えた100mLの三口フラスコに、実施例5で得られたアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイド10.0g[FW:274.24,36.5mmol]、メタノール33mlを加え溶解した。この中に85質量%水酸化カリウム2.41g[FW:56.11、36.5mmol]をメタノール5mLに溶解したものを、30℃以下になるように冷却、攪拌しながら30分かけて滴下すると、イオン交換反応が進むに従って無機塩が析出してきた。その後25℃で30分攪拌を行った後、5℃まで冷却し、ろ過を行なった。ろ液を濃縮,乾固し、アダマンチルトリメチルアンモニウムOH塩7.4g[FW:211.35、35mmol、収率96mol%]を得た。
【0062】
[実施例7]:工程C
陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA402BL OH AG(オルガノ社製))175mLをカラムに充填し、純水でよく洗浄した。実施例5で得られたアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイド10.0g[FW:274.24、36.5mmol]を純水10mlに溶解して充填カラムに流し、次いで展開溶媒として純水を40mL/minで流し、pH12以上の流出液を回収した。回収した水溶液を40℃で濃縮、乾固し、アダマンチルトリメチルアンモニウムOH塩7.5g[FW:211.35,35.5mmol、収率97mol%]を得た。
【0063】
[実施例8]:工程1〜3+工程A〜D
300mLの三口フラスコに25質量%発煙硫酸100mL(1937mmol)を仕込み、アセトニトリル8g(195mmol)、アダマンタン20g(147mmol)を添加し、反応温度25℃で3時間反応させた。続いて、1Lの四つ口フラスコに張り込んだ5℃の水300gに反応液を滴下した。滴下終了時、水と反応液との混合液の温度は10℃であった。滴下終了後、10℃にて30分間攪拌して加水分解を完了させた後、析出した結晶を濾過した。300mLの三口フラスコに得られた結晶、トルエン60gと水10gを加え、60℃まで加熱し、溶解させた。50質量%のNaOHを加え、pH10に調整した。有機層を分取後、溶媒を留去し、N−(1−アダマンチル)アセチルアミド27.2gを得た。
300mLの三口フラスコに得られたN−(1−アダマンチル)アセチルアミド、1−ブタノール50g、NaOH27gを加え、115℃で5時間反応した。室温まで冷却後、反応液に水40gを添加、30分攪拌後、有機層を分取した。
300mLの三口フラスコに分取した1−アミノアダマンタンを含む有機層を仕込んだ。50℃に昇温した後、97質量%ギ酸水溶液31gをゆっくり滴下した。攪拌しながら、37質量%ホルムアルデヒド水溶液65gを30分かけて滴下した。滴下終了後80℃まで昇温し、3時間反応を行なった。反応液を冷却し、50質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調整した。酢酸エチル30gを加え、有機相を分取した。
300mLの三口フラスコに、分取した1−アダマンチルジメチルアミンを含む有機層を加え、0℃まで冷却した。氷冷下、攪拌しながら臭化メチル12.7gを4時間かけて添加した。添加終了後、5時間反応した。反応液を冷却した後、固形分をろ別し、さらにアセトンで洗浄後、乾燥してアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイドを33.3g(アダマンタンからの収率83mol%、HPLC−RI純度99%、白色粉体)得た。
得られたアダマンチルトリメチルアンモニウムブロマイドを300mLの三口フラスコに加え、メタノール110mLで溶解した。この中に85質量%水酸化カリウム8.03gをメタノール17mLに溶解したものを、30℃以下になるように冷却、攪拌しながら30分かけて滴下すると、イオン交換反応が進むに従って無機塩が析出してきた。その後25℃で30分攪拌を行った後、5℃まで冷却し、ろ過を行なった。ろ液を濃縮、乾固し、アダマンチルトリメチルアンモニウムOH塩24.3g(アダマンタンからの収率80mol%、HPLC−RI純度99%、白色粉体)を得た。
【0064】
[比較製造例1]
25質量%発煙硫酸の代わりに98質量%濃硫酸を使用した以外は製造例2と同様の操作を行った。N−(1−アダマンチル)アセチルアミドは全く得られなかった。
[比較製造例2]
反応時間を12時間にした以外は比較製造例1と同様の操作を行った。その結果、N−(1−アダマンチル)アセチルアミドを0.30g(収率1.1mol%)得た。
[比較製造例3]
反応温度を60℃にした以外は比較製造例1と同様の操作を行った。その結果、N−(1−アダマンチル)アセチルアミドを0.58g(収率2.0mol%)得た。
[比較製造例4]
反応時間を12時間にした以外は比較製造例3と同様の操作を行った。その結果、N−(1−アダマンチル)アセチルアミドを0.70g(収率2.5mol%)得た。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、安全性や毒性等に関する操作上の問題がなく、高収率かつ簡便な方法で効率的にアダマンタン骨格を有するアミン類及びアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウム塩を製造することができる。また、本発明の製造方法により得られるアダマンタン骨格を有するアミン類及びアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウム塩は高純度であるため、アダマンタン骨格を有するアミン類は、医薬中間体、フォトレジスト用モノマーの原料、塗料、接着剤、粘着剤、膜、吸着材等の材料の原料等に有用であり、さらに、アダマンチル基を有する第4級アンモニウム塩は、ゼオライト用テンプレート剤(構造規定剤)として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1〜3を順次含むことを特徴とするアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
工程1:アダマンタン類を発煙硫酸及び有機ニトリル化合物からなる混合液中で反応させる工程。
工程2:工程1で得られた反応液を加水分解処理してアダマンタン骨格を有するアミド類とする工程。
工程3:工程2で得られたアミド類をアルカリ処理してアダマンタン骨格を有するアミン類とする工程。
【請求項2】
工程1において、アダマンタン類1モルに対して、発煙硫酸を10〜20モル、有機ニトリル化合物を1〜10モル使用し、反応温度が0〜60℃である請求項1に記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
【請求項3】
工程1において、発煙硫酸中のSO3濃度が10〜26質量%であり、反応温度が10〜50℃である請求項1又は2に記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
【請求項4】
工程1において、有機ニトリル化合物がアセトニトリルである請求項1〜3のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
【請求項5】
工程2において、加水分解温度が1℃以上30℃未満である請求項1〜4のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
【請求項6】
アダマンタン類がアダマンタンであり、製造するアミン類が1−アミノアダマンタンである請求項1〜5のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有するアミン類の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られたアダマンタン骨格を有するアミン類を用い、下記工程A及びBを順次含むことを特徴とするアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
工程A:溶媒aに溶解した上記アダマンタン骨格を有するアミン類をギ酸、並びに、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと反応させてアダマンタン骨格を有するジメチルアミン類とする工程。
工程B:工程Aで得られたアダマンタン骨格を有するジメチルアミン類を溶媒bに溶解し、ハロゲン化メチルと反応させてアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩とする工程。
【請求項8】
工程Bにおいて、ハロゲン化メチルが臭化メチル又はヨウ化メチルである請求項7に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
【請求項9】
工程Aにおいて、溶媒aが比誘電率10.0〜18.7のアルコール系溶媒である請求項7又は8に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
【請求項10】
工程Bにおいて、溶媒bが比誘電率4.0〜20.0のアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒から選ばれる1種以上である請求項7〜9のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
【請求項11】
さらに、下記の工程Dを含む請求項7〜10のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
工程D:工程Bで得られたアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩を精製する工程。
【請求項12】
工程Aにおいて、アダマンタン骨格を有するアミン類が1−アミノアダマンタンである請求項7〜11のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩の製造方法。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれかに記載の製造方法により得られたアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩を用い、下記の工程Cを含むことを特徴とするアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
工程C:溶媒cに溶解した、アダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムハロゲン塩をイオン交換してアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩とする工程。
【請求項14】
工程Cにおけるイオン交換を水酸化アルカリ金属を用いて行なう請求項13に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
【請求項15】
水酸化アルカリ金属が水酸化カリウムである請求項14に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
【請求項16】
工程Cにおけるイオン交換をOH形塩基性陰イオン交換樹脂を用いて行なう請求項13に記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。
【請求項17】
工程Cにおける溶媒cが水及び/又はアルコール系溶媒である請求項13〜16のいずれかに記載のアダマンタン骨格を有する第4級アンモニウムOH塩の製造方法。

【公開番号】特開2011−51976(P2011−51976A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173953(P2010−173953)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】