説明

アッセイ試薬の安定化方法、安定化アッセイ試薬を収容した試薬容器およびその使用

本発明は、サンプルから得られる少なくとも1つの生物学的または化学的被検体の検出および/または定量のための試薬容器であって、上記試薬容器が、体積を囲む内側表面を包含し、少なくとも1つの被検体の検出および/または定量のための少なくとも1つの分析の体積分析的反応が起こり、被検体の分析の少なくとも2つの試薬が、上記内側表面上で乾燥され、少なくとも1つの第一の上記試薬が、少なくとも1つの第二の試薬が乾燥された内側表面の第二の領域から明らかに隔たった、すなわち、なんらの重複もない内側表面の第一の領域上で乾燥された試薬容器に関する。試薬容器についての特徴は、第一の試薬と第二の試薬が、第一の試薬が酵素であり、第二の試薬が上記酵素の基質である対を形成することであり、該対は、核酸ポリメラーゼおよびその基質より構成されるものである。本発明は、試薬容器の内側表面の上に、サンプルから得られる生物学的または化学的被検体の検出および/または定量のための乾燥アッセイ試薬を安定化させる方法にも関し、該方法は、試薬容器の内側表面の上に、被検体の検出に必要とされる少なくとも2つの試薬、第一の試薬および第二の試薬を分配させること;試薬から過剰の水を除去すること、の段階を包含するものであって、第一の試薬は、第二の試薬がその上に分配される内側表面の第二の領域からはっきりと隔たった、すなわち、なんらの重複もない内側表面の第一の領域の上に分配されることを包含する。該方法の特徴は、第一の試薬と第二の試薬が、第一の試薬が酵素であり、第二の試薬が上記酵素の基質である対を形成することであり、該対は核酸ポリメラーゼおよびその基質より構成されることである。本発明は、さらに、逆転写酵素を利用するアッセイであるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応、免疫PCRアッセイ、核酸配列基本アッセイ(NASBA)、近接ライゲーションアッセイ、リガーゼ連鎖反応(LCR)アッセイ、ローリングサークル増幅(RCA)アッセイ、および鎖置換増幅(SDA)アッセイより構成される群から選択されるアッセイを行う試薬容器の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥形態にある生物学的および化学的検出試薬を安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を詳述するために本明細書に使用される刊行物およびその他の資料、および特に、実施に関するさらなる詳細を提供する事例が、参照としてここに組み込まれる。
【0003】
特異的被検体分子(低分子、電解質、タンパク質、脂質、炭水化物または核酸)または細菌、ウイルス、真菌または原生生物のような微生物の検出までも可能にするインビトロ分析方法は、現代のヒト用および動物用医薬品、環境の制御、食品安全性の監視、およびその他の生物学的研究の分野全てに必須である。多くの分析技術の中で、検出は、少なくとも部分的に、核酸増幅に基づく。核酸増幅技術の例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saikiら、1985年)、核酸配列基本増幅(NASBA)(Compton、1991年)、逆転写PCR、およびリアルタイムPCR(Higuchiら、1992年および1993年)が挙げられるが、それらに限定されない。核酸増幅技術が、核酸被検体を検出するために使用される一方で、核酸アッセイと異種(different)リガンド結合アッセイとを組み合わせた技術が存在する。このような組合せ方法では、核酸増幅は、タンパク質または他の非核酸分子などの分子の検出に使用される。核酸増幅工程を含む組合せ方法の例としては、免疫−ポリメラーゼ連鎖反応(Niemeyerら、2005年)および近接ライゲーションアッセイ(Fredrikssonら、2002年)が挙げられる。
【0004】
分析的アッセイは、一般に、異質(アッセイ成分の少なくとも1つが固体支持体に結合され、アッセイ成分の少なくとも1つが溶液中にあることを意味する)、または同質(全てのアッセイ成分が、溶液中にあることを意味する)であり得る。このような分析的技術は、しばしば、サンプルと検出試薬の組とを合わせるためのいくつかのピペット採取段階を必要とする。手動で行われる場合、これらのピペット採取段階は、特に、アッセイ成分濃度における少しの変動が大きな誤差を引き起こすアッセイ(たとえば競合免疫アッセイ)の場合、分析的誤差の主要な原因となり、そして相当量の実施時間を必要とする。ピペット採取が、しばしば行われるように自動化される場合、人間の動作による誤差、並びに手動の作業の量を最小にすることができるが、その一方で、液体の取扱いのために高価な装置が必要とされる。サンプルを検出試薬の組と合わせる段階を有する分析的技術を、簡素で、迅速で、さらに信頼性が高く、そして専用の実験室環境以外でも利用可能にするために、検出試薬を容器に予め分配した後、過剰の水を除去し、乾燥形態で該試薬を保存することが可能である。乾燥試薬容器は、続いて、反応容器としての機能をも果たす。したがって、アッセイの実施に必要な液体取扱い段階は最小限となる:適切な量の適切な液体中でのサンプルのみが、乾燥した検出試薬をすでに含有する容器に加えられる必要がある。サンプル添加により、乾燥した試薬は再び溶解し、分析を開始できる。このようなオールインワン(一体型)乾燥アッセイ試薬は、たとえば、免疫アッセイ(Loevgrenら、1996年)およびPCRアッセイ(Nurmiら、2001年)に使用されてきた。
【0005】
多くの生物学的および化学的試薬は、乾燥形態で安定である。しかし、混合物として乾燥される場合は、検出試薬の組成物は、全ての成分が個々に乾燥される場合に安定である場合でさえ、不安定であるという問題にしばしば直面する。この不安定性は、たとえば、試薬の安定性に悪影響を与える手段で乾燥または保存されるあいだに、1つ以上の他の試薬に作用する1つ以上の試薬によって引き起こされ得る。この問題を克服する1つの方法は、異なる試薬のあいだに遮断層を設置し、それにより、異なるアッセイ成分間のあらゆる不都合な反応を防止することである。この種の方法は、先行文献に示されている(国際公開第9738311号パンフレット、Loevgrenら、1996年)。望まない反応の一因となる少なくとも1つの試薬を分離することによって、試薬混合物を安定化させうる。しかし、この方法は、遮断層の追加を必要とし、それによって、製造工程においていくぶんかの問題が生じる。第一に、遮断層の後に添加される試薬は、遮断層を溶解することを避けるために、できる限り少量を分配しなくてはならない。分配量が少ない場合、量が変動する傾向が強いため、アッセイ分析の誤りが、結果として増大しうる。さらに、ある種の用途では、遮断層として適切な組成物を見出すことが、不可能な場合もある。これは、遮断層それ自身の成分のいくつかが、検出アッセイに不都合な影響を与える可能性があるからである。したがって、乾燥試薬の製造は、遮断層が必要とされない場合、より簡便で、誤差が生じにくく、可能である場合が多い。アッセイ試薬を乾燥させるときに直面する別の問題は、乾燥方法そのものである:通常、凍結乾燥が使用される。しかし、凍結乾燥は、空気乾燥より技術的にいっそう難しい工程であるため、凍結乾燥の代わりに空気乾燥を使用して、反応混合物から過剰の水を除去しうるように、アッセイ試薬を安定化させる方法を有することが有益である。
【0006】
核酸ポリメラーゼを利用する核酸増幅工程を包含するいくつかのアッセイでは、なんら望まない副反応なしに、混合物として試薬を乾燥させることが可能である。全ての試薬が混合物として乾燥される、非常に機能的なアッセイの例は、たとえば、Nurmiら(2001年)によって公表された。しかし、他の場合には、いくつかの核酸ポリメラーゼが、望まない副反応を示したり、他のアッセイ試薬と一緒に乾燥されるときに不安定であったりする。この問題を解決するために、このような試薬混合物の安定化を可能にする方法が必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
本発明の1つの目的は、試薬として核酸ポリメラーゼを使用するアッセイのための安定化された試薬を収容する試薬容器を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、試薬として核酸ポリメラーゼを使用するアッセイのための生物学的または化学的被検体の検出および/または定量に用いられる化学的または生物学的試薬を安定化させる方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、試薬として核酸ポリメラーゼを使用するアッセイにおける安定化試薬を収容する試薬容器の使用を提供することである。
【0010】
本発明は、サンプルからの少なくとも1つの生物学的または化学的被検体の検出および/または定量のための試薬容器であって、該試薬容器は、体積を囲む内側表面を含み、少なくとも1つの被検体の検出および/または定量のための少なくとも1つの分析の体積分析反応が起こり、そして被検体の分析の少なくとも2つの試薬は、該内側表面上で乾燥され、そして少なくとも第一の該試薬は、少なくとも第二の該試薬が乾燥された内側表面の第二の領域からはっきりと隔たった、すなわち、なんらの重複もない内側表面の第一の領域上で乾燥された試薬容器を提供する。試薬容器の特徴は、第一の試薬と第二の試薬が対を形成することであり、ここで、第一の試薬は酵素であり、第二の試薬は該酵素の基質であり、該対は核酸ポリメラーゼおよびその基質より構成されるものである。
【0011】
本発明は、試薬容器の内側表面上に、サンプルから得られる生物学的および化学的被検体の検出および/または定量のための乾燥アッセイ試薬を安定化させる方法であって、
a)試薬容器の内側表面上に、被検体の検出に必要となる少なくとも2つの試薬、第一の試薬および第二の試薬を分配させる工程、および
b)該試薬から過剰の水を除去する工程
を包含し、
工程a)において、第一の試薬は、第二の試薬がその上に分配される内側表面の第二の領域からはっきりと隔たった、すなわち、なんらの重複もない内側表面の第一の領域上に分配される方法も提供する。該方法の特徴は、第一の試薬と第二の試薬が対を形成することであり、ここで、第一の試薬は酵素であり、第二の試薬は該酵素の基質であり、該対は核酸ポリメラーゼおよびその基質より構成されるものである。
【0012】
本発明は、さらに、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、逆転写酵素を利用するアッセイ、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応、免疫PCRアッセイ、核酸配列に基礎をおいたアッセイ(NASBA)、近接ライゲーションアッセイ、リガーゼ連鎖反応(LCR)アッセイ、ローリングサークル増幅(RCA)アッセイ、および鎖置換増幅(SDA)アッセイからなる群より選択されるアッセイを行うための、本発明による試薬容器の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書において、用語「試薬容器」は、試薬が保存される容器を意味する。本発明において、試薬容器は、反応チャンバーとして機能できる体積を含有する。典型的には、試薬は、後に分析反応が起こる容器として機能し得る試薬容器に分配され、乾燥され、保存される。
【0014】
本明細書において、用語「被検体」は、あらゆる物質または生体、または死亡した生物もしくは生体の一部、またはウイルスまたはウイルスの一部を意味し、その存在または量が、あらゆる種類のサンプルで測定されるものである。
【0015】
本明細書において、用語「サンプル」は、分析されるべきものから採取されたあらゆる部分を意味する。それは、希釈剤、特に緩衝剤または水のような溶媒に既知の比率ですでに希釈されたような部分も意味する。
【0016】
本明細書において、用語「試薬」は、サンプル中の被検体の存在および/または量を測定するために必要とされるあらゆる個々の物質、または様々な物質の組成物を意味する。
【0017】
本明細書において、用語「酵素」は、化学反応を触媒する能力のあるあらゆる化学的部分を意味する。酵素は、一般に、触媒として作用する、生体で形成されるかまたは合成のタンパク質である。
【0018】
本明細書において、用語「酵素の基質」は、適切な条件で、酵素によって触媒される化学反応の反応体であり得る物質を意味する。アッセイでは、基質は、被検体および/または試薬であり得る。
【0019】
本明細書において、用語「核酸ポリメラーゼ」は、核酸または核酸誘導体の合成または分解を触媒する能力のあるあらゆる化学的部分を意味する。このような核酸ポリメラーゼの例としては、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、RNAポリメラーゼ、DNAリガーゼおよびRNAリガーゼが挙げられるが、それらに限定されない。
【0020】
本明細書において、用語「結合剤」は、第二の分子と、少なくとも1つの共有結合または非共有結合を形成する能力のあるあらゆる分子を意味する。結合剤の例としては、組換え抗体、FabフラグメントおよびscFvフラグメントのような免疫グロブリンおよびその誘導体;核酸および核酸誘導体およびアプタマーおよびDNAザイム、およびリボザイムのような核酸結合剤;および特異的リガンドを結合する能力のあるタンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
本明細書において、用語「リガンド」は、結合剤と共に、少なくとも1つの共有結合または非共有結合を形成する能力のあるあらゆる分子を意味する。リガンドは、天然に存在するか、または合成であり得る。アッセイでは、リガンドは、被検体および/または被検体の検出のために必要とされる試薬であり得る。
【0022】
本明細書において、用語「逆転写酵素」は、テンプレートとしてリボ核酸またはデオキシリボ核酸を使用してデオキシリボ核酸の合成を触媒する能力のあるあらゆる化学的部分を意味する。
【0023】
本明細書において、語句「過剰の水を除去する」は、試薬容器の内側の水の量を減少させるあらゆる方法を意味する。当業者に予測されるとおり、多数の方法が、水の量を減らすために存在する。好ましくは、過剰の水は、空気乾燥によって除去される。他の適切な方法の例としては、真空乾燥、加熱乾燥および凍結乾燥が挙げられるが、それらに限定されない。
【0024】
本発明は、試薬を乾燥させる前に、同じ反応容器空間の内側で、少なくとも2つの空間的に隔てられたスポットに試薬を分配し、すなわち、スポットのあいだに遮断層を使用することなく、1つ以上の試薬を残りの試薬から物理的に分離することによって、乾燥形態で生物学的および化学的検出試薬を安定化する方法に関する。
【0025】
本発明による試薬容器は、その上で試薬が乾燥される3つ以上のはっきりと分離した領域を含みうることに注意するべきである。このために、試薬容器は、たとえば、その上で試薬が乾燥される第三、第四または第二十一番目のはっきりと分離した領域をも包含しうる。その上で試薬が乾燥された2つ以上の領域を含むこのような実施態様は、3つ以上の試薬が、試薬が乾燥および/または保存のあいだに安定であることを保証するために、互いから隔てられたままでなければならない場合、好ましい。
【0026】
本発明の典型的な実施態様によって、アッセイ試薬は、少なくとも1つの酵素、すなわち、核酸ポリメラーゼを含む。含まれうる適切な酵素の例は、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、リガーゼであるが、それらに限定されない。たとえば、アッセイ試薬の組成物は、被検体を含有するサンプルを、アッセイ試薬の組成物と合わせることによって起こる化学反応
a)中の反応体、
b)の阻害剤、
c)のアクチベーター、または
d)タンパク質、または
e)触媒する能力のある酵素
である被検体についての定性または定量アッセイを実行するのに適切でありうる。乾燥形態にあるこのようなアッセイ試薬の組成物を安定化させるために、酵素を、少なくとも1つの他のアッセイ試薬から分離でき、好ましい実施態様では、少なくとも1つの他のアッセイ試薬は酵素の基質であり得る。
【0027】
本発明の別の典型的な実施態様によれば、アッセイ試薬は、酵素、すなわち、核酸ポリメラーゼに対する少なくとも1つの基質を含む。好ましい基質としては、核酸およびその誘導体、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、脂質、イオン、有機分子、無機分子、蛍光発光性基質、色原体基質が挙げられるが、それらに限定されない。たとえば、アッセイ試薬の組成物は、被検体を含有するサンプルを、アッセイ試薬の組成物と合わせた結果として起こる化学反応
a)中の反応体、または
b)の阻害剤、または
c)のアクチベーター、または
d)タンパク質、または
e)触媒する能力のある酵素
である被検体についての定性または定量アッセイを実行するのに適切でありうる。乾燥形態でこのようなアッセイ試薬の組成物を安定化するために、酵素に対する基質を、少なくとも1つの他のアッセイ試薬から分離でき、好ましい実施態様では、少なくとも1つの他のアッセイ試薬は、該基質に作用する能力のある酵素であり得る。
【0028】
本発明の全ての実施態様では、少なくとも1つの第一の試薬および1つの第二の試薬は、その第一の試薬が酵素であり、第二の試薬が該酵素の基質である対を形成し、そしてその対は、核酸ポリメラーゼおよびその基質から形成される。典型的な基質は、核酸またはその誘導体、すなわち、デオキシリボ核酸またはリボ核酸のような核酸を含有するあらゆる分子、並びに核酸に構造的に関連しているあらゆる合成または天然に存在する物質である。合成核酸誘導体の例としては、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート核酸、少なくとも1つの有機または無機分子に共有結合で、または非共有結合で結合した核酸、並びに天然に存在する核酸モノマーおよび核酸誘導体のモノマーを包含するキメラ分子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
本発明の全ての実施態様によって、アッセイ試薬としては、核酸ポリメラーゼ、好適に熱安定性DNAポリメラーゼ、または熱安定性RNAポリメラーゼが挙げられる。たとえば、アッセイ試薬の組成物は、核酸増幅反応、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うために使用されうるようなものであることが可能である。このような場合には、核酸増幅反応を行うために必要とされる他の試薬の少なくともいくつかから隔てられたスポット上にDNAポリメラーゼを分配することによって、アッセイ試薬組成物を安定化させ得る(実験のセクションを参照)。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によって、アッセイ試薬は、核酸またはその誘導体、好適にはオリゴヌクレオチドを含む。たとえば、アッセイ試薬の組成物は、酵素からの物理的分離により、アッセイ試薬の組成物中にも存在する酵素による分解から安定化される標識および/または未標識オリゴヌクレオチドを含むことが可能である。試薬組成物が、PCRを行うために適切である場合、たとえば、そのときのアッセイ試薬は、本発明に示されるとおり、核酸アッセイ試薬を、残りのアッセイ試薬から物理的に分離することによって安定化し得る。この方法は、他の核酸増幅反応を行うために必要とされる試薬を安定化するためにも使用でき、他の核酸増幅反応には、逆転写酵素PCR、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)またはローリングサークル増幅(RCA)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0031】
本発明の1つの好ましい実施態様では、第一の試薬は逆転写酵素である。たとえば、アッセイ試薬組成物は、cDNA合成反応または逆転写PCR(RT−PCR)反応を行うのに適し得る。このような場合には、他のアッセイ試薬の少なくとも1つから逆転写酵素を物理的に分離することによって、アッセイ試薬組成物は、乾燥形態で安定化され得る。
【0032】
試薬容器は、2つ以上の試薬の対を包含でき、各対は、生物学的および/または化学的被検体の検出に使用される第一および第二の試薬より構成され、各対の第一の試薬は、その上でその対の第二の試薬が乾燥される内側表面の該対についての第二の領域から明らかに隔てられた、すなわち、なんらの重複もない内側表面の、該対についての第一の領域上で乾燥される。
【0033】
試薬の任意の対の第一の領域および/または第二の領域は、試薬のほかの任意の対の第一の領域および/または第二の領域であっても構わないが、そうである必要はない点に注意すべきである。対の任意の第一または第二の領域は、別の対の第一または第二の領域でありうる。しかし、本発明において重要なことは、相容れない試薬、すなわち、試薬が同じ領域中に存在する場合、乾燥および/または保存のあいだに必然的にその安定性が低下する試薬が、同じ領域内にないことである。
【0034】
試薬容器は、2つ以上の生物学的および/または化学的被検体の検出ためのものであり得て、試薬容器は、1つ以上の試薬の対を包含できる。各対は、検出されるおよび/または定量されるべき、各対について同じであるかまたは異なっている、生物学的および/または化学的被検体の第一および第二の試薬より構成され、各対の第一の試薬は、その上で同じ対の第二の試薬が乾燥されうる内側表面の、各対についての第二の領域から明らかに隔てられた、すなわちなんらの重複もない内側表面の、該対についての第一の領域上で乾燥され得る。
【0035】
本発明のいくつかの実施態様によれば、別の第一の試薬は結合剤であり、そして別の第二の試薬は該結合剤のリガンドである。
【0036】
試薬のいくつかの対を用いた本発明の他の実施態様では、別の第一の試薬は抗体であり得る。たとえば、アッセイ試薬組成物は、免疫アッセイ反応、適切には競合的免疫アッセイまたは非競合的免疫アッセイを行うのに好適であり得る。このような場合には、アッセイ試薬組成物は、残りのアッセイ成分からアッセイ成分の少なくとも1つを物理的に分離することによって、乾燥形態で安定化され得る。たとえば、アッセイを行うために必要とされる少なくとも1つの他のアッセイ試薬から標識抗体または抗体の標識リガンドを分離できる。たとえば、標識リガンドから抗体を分離することは、サンプルの添加前に、競合的免疫アッセイの性能を弱める抗体−リガンド複合体の形成を防止する。さらに、競合的または非競合的免疫アッセイにおいて、残りの試薬から標識または非標識抗体を分離することは、アッセイで測定されるバックグランドシグナルを減少させ、したがって、アッセイ感度を改善し得る。
【0037】
好ましい実施態様では、サンプルおよび場合により緩衝液を除いて、各被検体の分析の全ての試薬は、試薬容器の内側表面上で乾燥される。
【0038】
試薬がその上に乾燥される、明らかに隔てられた領域は、特に、1μmから2cmまで、好ましくは0.1mmから5mmまでの直径を示すドットである。
【0039】
本発明の方法の典型的な実施態様の多くは、前述の試薬容器のものに対応する。
【0040】
本発明の方法の1つの好ましい実施態様では、過剰の水は、該方法の工程b)での空気乾燥または凍結乾燥によって除去される。
【実施例】
【0041】
実施例1
乾燥リアルタイムPCR試薬の安定化
材料および方法
閉鎖管PCRアッセイを、バチルス ズブチルス(Bacillus subtilis)に関して準備した。表1は、全てのプライマー(配列番号:1ja2)およびプローブ(配列番号:3ja4)オリゴヌクレオチドの配列および修飾を示す。ランタニド標識プローブの使用に基づいているPCRアッセイ化学は、Nurmiら(2002年)によって記述された。全てのPCR増幅は、1×HotMaster Taq緩衝液(エッペンドルフ(Eppendorf)、ドイツ);2.5mM MgCl2;0.2mM dNTPs;0.3μMフォアワードプライマーおよびリバーズプライマー;28nMランタニド標識プローブ;280nMクエンチャープローブおよび1.25単位のHotMaster Taqポリメラーゼ(エッペンドルフ、ドイツ)を含有する30μlの容量で行われた。
【0042】
【表1】

【0043】
乾燥PCRウエルを作成するために、テンプレートDNAを除く全ての他のPCR試薬を含有するPCR混合物を調製し、プラスチック製反応ウエルに分配した。他のアッセイ成分からDNAポリメラーゼを分離することの安定化効果を調査するために、DNAポリメラーゼおよびDNAテンプレートを除く全ての他のアッセイ成分を含有する反応混合物も調製した。DNAポリメラーゼをなんら含まない混合物を、プラスチック製反応ウエルに分配し、そして同じウエル中の異なる位置上に、ポリメラーゼ含有液が、残りの試薬と接触しないように、DNAポリメラーゼを0.3μlの体積で分配した。室温での空気乾燥により、全てのウエルから過剰の水を除去した。
【0044】
乾燥PCR試薬の安定性を示すために、30μlの容量の滅菌水中にDNAテンプレートを添加することによって、それらの性能を試験した。サンプル添加により、乾燥アッセイ試薬は溶解された。試薬ウエルを封鎖した後、それらを、95℃で15秒;60℃で1分;および55℃で15秒の43サイクルより構成される熱サイクリングプロトコールにかけた。Nurmiら(2002年)によって記述されるとおり、選択されたPCRサイクルでの低温(55℃)での時間分解ユーロピウム蛍光を測定することによって、増幅を監視した。各ユーロピウムシグナルを3つの第一測定値での同じPCRウエルから得られる平均のユーロピウムシグナルで割ることによって、シグナル−対−ノイズ比を、全てのユーロピウム蛍光測定値について計算した。
【0045】
結果および検討
図1は、混合物として乾燥されたPCR試薬の不安定性を示す。図は、DNAポリメラーゼを含む全てのPCR成分を含有する混合物として乾燥された、前乾燥PCR試薬を使用して作成されたPCR反応から測定されるPCRサイクル21−43(x軸で)で得られるユーロピウムシグナル−対−ノイズ比(y軸で)を示す。PTC1(塗潰し三角形)およびPTC2(塗潰しひし形)は、バチルス・ズブチルスDNAがテンプレートとして添加された陽性対照反応を表す。NTC1(白抜き三角形)およびNTC2(白抜きひし形)は、テンプレートDNAの代わりに純水が添加された陰性対照反応を表す。陽性対照反応は、陰性対照反応について得られたプロットとなんら異ならない増幅プロットを示す。増幅シグナルはなく、DNAポリメラーゼを含む全PCR成分を含有する混合物として乾燥されたPCR試薬が安定でなかったことを示す。
【0046】
図2は、DNAポリメラーゼを残りのアッセイ試薬から分離して乾燥されたPCR試薬の安定性を示す。図は、2つの別個のドット(DNAポリメラーゼを含有する第一のドットおよびヌクレオチド、緩衝液、プライマーおよびプローブオリゴヌクレオチドを含有する第二のドット)で乾燥された前乾燥PCR試薬を使用して調製された、PCR反応から測定されたPCRサイクル23−43(x軸で)で得られたユーロピウムシグナル−対−ノイズ比(y軸で)を示す。PCT3(塗潰し四角形)およびPTC4(塗潰し円形)は、バチルス・ズブチルスDNAがテンプレートとして添加された陽性対照反応を示す。NTC3(白抜き円形)およびNTC4(白抜き四角形)は、テンプレートDNAの代わりに純水が添加された陰性対照反応を示す。陽性対照反応は、陰性対照反応について得られたプロットと明らかに異なる増幅プロットを付与する:明確な増幅シグナルが存在し、2つの別個のドットとして乾燥された場合、PCR試薬が安定であったことを示す。
【0047】
図1および2は、DNAポリメラーゼを残りのPCR試薬から分離することの効果を示す。アッセイ試薬が、混合物として乾燥される場合、混合物は安定でなく、そして標的DNA増幅は検出されなかった(図1)。明確な増幅シグナルは、DNAポリメラーゼが残りの試薬から分離された反応ウエルからのみ得られた(図2)。これはおそらく、乾燥のあいだにDNAポリメラーゼによって触媒される不都合な反応によって説明される。増幅の開始時にすでに、DNAポリメラーゼの分離なしに調製された反応から得られる完全ユーロピウム蛍光シグナルは、DNAポリメラーゼが乾燥されて残りの試薬から分離された反応におけるより明らかに高かった。したがって、乾燥のあいだに、DNAポリメラーゼは、試薬混合物中に存在するオリゴヌクレオチドの1つまたは全てに対して、不都合な機能、おそらく核分解性(nucleolytic)攻撃を発揮したようである。この種の作用は、乾燥のあいだに、全ての試薬の濃度が、過剰な水が全て除去される前に、非常に高いレベルまで増大するという事実によって説明されうる。このような高濃度の酵素、ヌクレオチド、電解質およびオリゴヌクレオチドでは、予測できない反応が起こり得る。
【0048】
実施例2
乾燥cDNA合成試薬の安定化
材料および方法
インビトロ合成されたRNA種(Nurmiら、2002年)である定量(10000分子)のmmPSAを逆転写するために高容量cDNAアーカイブキット(アプライド・バイオシステムズ、米国)を使用して、逆転写反応を行った。陰性対照として、テンプレートRNAの代わりに水を含有する反応も行われた。3つの型の反応(a−c)を調製および比較した。
a.製造業者によって提供される指示にしたがって調製および作業された標準のcDNA合成反応(10μl体積)。
b.テンプレートRNAを除く全ての反応成分(緩衝液、dNTP、ランダム配列オリゴヌクレオチド・プライマーおよび逆転写酵素)が、反応容器の底に予め分配され、過剰の水が空気乾燥により除去された乾燥化学反応。サンプルRNAは、容量10μlの水で添加した。
c.逆転写酵素が反応容器の底の個別のスポット上に分配、乾燥され、そして逆転写酵素と残りのcDNA合成試薬(すなわち、緩衝液、ヌクレオチドおよびランダム配列オリゴヌクレオチド・プライマー)に占められた領域のあいだに重複がないことを除いて、前記(b)のように調製および作業した乾燥化学反応。
【0049】
種々の場合におけるcDNA合成効率を解析するために、前述の3つの異なる手段で得られた2.5μl cDNAサンプルを、リアルタイムPCR反応で分析した。10μl増幅反応は、1×HotMaster緩衝液(エッペンドルフ、ドイツ);0.15mM dNTPs;0.075μMフォアワードプライマーおよびリバーズプライマー;0.12μMテルビウムプローブ;1.2μMクエンチャープローブおよび0.25UのHotMaster DNAポリメラーゼ(エッペンドルフ)より構成された。全てのプライマーおよびプローブオリゴヌクレオチドの配列および修飾は、表1に示される(Nurmiら、2002年)。MicroAmp光学キャップで密封されたMicroAmp光学プレート(アプライド・バイオシステムズ)上での単一実験で全PCR反応を行った。熱サイクル(PTC 200 DNA Engine、エムジェイ・リサーチ(MJ Research)、米国)は、以下のセグメントより構成された:15秒間、95℃での変性、続いて1分間、63.5℃でのプライマーアニーリングおよび伸長およびプローブ消化の10サイクル;15秒間、95℃での変性、続いて1分間、61.5℃でのプライマーアニーリングおよび伸長およびプローブ消化の8サイクル;15秒間、95℃での変性、続いて1分間、61.5℃でのプライマーアニーリングおよび伸長およびプローブ消化の23サイクル。サイクル19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39および41(すなわち、最後のセグメントのサイクル1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21および23)では、温度を、アニーリング/伸長/プローブ消化工程の後、15秒間、35℃に低下した。この低温で、全反応の時間分解テルビウム蛍光強度を、ビクター1420多重標識カウンター(パーキンエルマー ライフ アンド アナリティカル サイエンシズ(PerkinElmer Life and Analytical Sciences)、米国)を使用して記録した。各テルビウムシグナルを、2つの最初の測定値で(PCRサイクル19および21で)同じPCRウエルから得られる平均テルビウムシグナルで割ることによって、シグナル−対−ノイズ比を、全テルビウム蛍光測定値について計算した。
【0050】
結果および検討
図3および表2は、残りの試薬から隔てられているスポット上で逆転写酵素を乾燥させることによって、いかにcDNA合成試薬が、乾燥形態で安定化されるかを示す。
【0051】
図3は、乾燥cDNA合成試薬の安定化を示す。10000分子のmmPSA RNA(白抜き記号)または陰性対照反応ではまったくRNAテンプレートなし(塗潰し記号)から出発して、PCRテンプレートとしてcDNAを使用して、増幅プロットを作成した。3つの異なる種類のcDNA合成反応を行った:a)では、製造業者が提供する指示にしたがって標準cDNA合成を行った(丸);b)では、混合物として全cDNA合成試薬を乾燥させた(四角形)、そしてc)では、逆転写酵素と残りのcDNA合成試薬とを、別個のスポット上で乾燥させた(ひし形)。3つのレプリケート管中で、各cDNA合成反応を行い、各cDNAサンプルを、2つのレプリケートPCR増幅反応で分析した;図中の各曲線は、得られた6つのレプリケートPCR増幅から得られる平均テルビウムシグナル−対−ノイズ比を表す。PCRブランク(三角形)は、テンプレートとして水のみを含有する陰性PCR対照であって、2つのレプリケート反応の平均を表す。図に示されているとおり、逆転写酵素の残りの試薬からの分離(c)は、液体試薬を用いた通常のcDNA合成手段(a)に匹敵する結果を示すのに対して、試薬が混合物として乾燥される場合(b)、cDNA合成効率は非常に低い。
【0052】
テンプレートとして材料および方法の下に示される3つの異なる方法(a〜c)を用いて得られたcDNAを含有するPCR反応から得られる増幅プロットを、図3に示す。示されているとおり、乾燥試薬の性能は、逆転写酵素を別個のスポット上に分配することによって安定化される場合、乾燥されなかった標準の試薬に等しいか、またはほぼ等しい。一方、反応混合物を、残りの試薬から逆転写酵素を分離することなく乾燥する場合、アッセイ性能は、劇的に下降する。図3では、これは、y軸上にテルビウム蛍光シグナル−対−ノイズ比、x軸上にPCRサイクル数を示す増幅曲線として見ることができ、試薬が安定化されている場合、または新たな試薬が使用される場合、よりいっそう後のPCRサイクルで1.3の閾値を横切る。
【0053】
表2は、3つの異なる方法で調製されたcDNA試薬混合物を用いて得られたサイクル閾値を示す。3つのレプリケート管中で各cDNA合成反応を行い、各cDNAサンプルを、2つのレプリケートPCR増幅反応で分析した;6つのレプリケート逆転写酵素−PCR増幅から得られる平均サイクル閾値を、各場合について示す。サイクル閾値(Ct)、蛍光シグナル−対−ノイズ比が閾値を横切るPCRサイクル数を、様々な反応について示す。Ct値は、PCRにおける初期テンプレートコピー数の10進対数に反比例で関連し、したがって、サイクル閾値が高ければ高いほど、増幅の開始時にPCR容器に存在するcDNAは少ない。したがって、cDNA合成がより有効であればあるほど、Ct値は低い。表2から、逆転写の効率は、新鮮な試薬を使用したときに最高であり、試薬が、残りの試薬から別個のスポット上に逆転写酵素を乾燥させることによって安定化されたときにほぼ同程度に高かったが、しかし、cDNA合成効率は、全試薬が混合物として乾燥された場合には明らかに劣っていることがわかる。これは、たとえば、他のcDNA合成試薬と一緒に乾燥されるときの逆転写酵素の部分的不活性化により、または乾燥時に逆転写酵素によって触媒される不都合な反応により説明されうる。したがって、本発明による方法は、乾燥形態にあるcDNA合成試薬の保存を可能にすることは明らかである。
【0054】
【表2】

【0055】
本発明の方法が、多様な実施態様の形態で組み込まれ得て、そのうちのいくつかのみがここに開示されることが理解される。他の実施態様も存在するが、それらが本発明の概念から逸脱しないことは、この分野での専門家にとって明らかである。したがって、記述される実施態様は、例示的であり、限定的とみなされるべきでない。
【0056】

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】混合物として乾燥されたPCR試薬の不安定性を示す。
【図2】DNAポリメラーゼを残りのアッセイ試薬から分離して乾燥されたPCR試薬の安定性を示す。
【図3】全体で乾燥された乾燥cDNA合成試薬または逆転写酵素を分離して乾燥された乾燥cDNA合成試薬の安定性を液体試薬と比較して示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルからの少なくとも1つの生物学的または化学的被検体の検出および/または定量のための試薬容器であって、該試薬容器が、体積を囲む内側表面を含み、少なくとも1つの被検体の検出および/または定量のための少なくとも1つの分析の体積分析的反応が起こり、被検体の分析の少なくとも2つの試薬は、該内側表面上で乾燥され、少なくとも第一の該試薬は、少なくとも第二の該試薬が乾燥されている内側表面の第二の領域から明らかに隔たった、すなわち、なんらの重複もない内側表面の第一の領域で乾燥されているものであって、第一の試薬および第二の試薬は、第一の試薬が酵素であり、第二の試薬が該酵素の基質である対を形成し、該対は、核酸ポリメラーゼおよびその基質より構成されることを特徴とする試薬容器。
【請求項2】
第一の試薬が、逆転写酵素であることを特徴とする請求項1記載の試薬容器。
【請求項3】
試薬容器が、2つ以上の試薬の対を包含し、各対が、検出されるべき生物学的および/または化学的被検体の第一および第二の試薬より構成され、各対の第一の試薬は、その対の第二の試薬が乾燥された内側表面の該対についての第二の領域から明らかに隔たった、すなわち、なんらの重複もない内側表面の該対についての第一の領域上で乾燥されたことを特徴とする請求項1または2記載の試薬容器。
【請求項4】
試薬容器が、2つ以上の生物学的および/または化学的被検体の検出のためのものであり、該試薬容器は、1つ以上の試薬の対を包含し、各対は、検出されるべき、各対について同じであるかまたは異なっている、生物学的および/または化学的被検体に関する第一および第二の試薬より構成され、各対の第一の試薬は、その上に同じ対の第二の試薬が乾燥された内側表面の、各対について第二の領域から明らかに隔てられた、すなわちなんらの重複もない内側表面の、上記対についての第一の領域上で乾燥されたことを特徴とする請求項1または2記載の試薬容器。
【請求項5】
サンプルおよび場合により緩衝液を除き、各被検体の分析の全試薬が、試薬容器の内側表面上で乾燥されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の試薬容器。
【請求項6】
試薬がその上で乾燥された、明らかに隔てられた領域が、1μmから2cmまで、好ましくは0.1mmから5mmまでの直径を有するドットであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の試薬容器。
【請求項7】
サンプルからの生物学的または化学的被検体の検出および/または定量のための乾燥アッセイ試薬を、試薬容器の内側表面上で安定化させる方法であって、
a)試薬容器の内側表面の上に被検体の検出に必要とされる少なくとも2つの試薬、第一の試薬および第二の試薬を分配させる工程、および
b)試薬から過剰の水を除去する工程
を包含し、
工程a)で、第一の試薬は、第二の試薬がその上に分配される内側表面の第二の領域からはっきりと隔たった、すなわち、なんらの重複もない内側表面の第一の領域の上に分配され、第一の試薬と第二の試薬が、第一の試薬が酵素であり、第二の試薬が該酵素の基質である対を形成し、該対が核酸ポリメラーゼおよびその基質より構成されるものであることを特徴とする方法。
【請求項8】
第一の試薬が、逆転写酵素であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
試薬容器が、2つ以上の試薬の対を包含し、各対は、検出されるべき生物学的および/または化学的被検体の少なくとも第一および第二の試薬より構成され、工程a)において、各対の第一の試薬は、同じ対の第二の試薬がその上に分配される内側表面の各対の第二の領域からはっきりと隔たった、すなわち、なんらの重複もない内側表面の各対についての第一の領域の上に分配されることを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
試薬容器が、2つ以上の生物学的および/または化学的被検体の検出および/または定量ためのものであり、試薬の対を含む該試薬容器は、各対について同じであるかまたは異なっている、検出されるべき生物学的および/または化学的被検体についての少なくとも第一および第二の試薬より構成され、工程a)において、各対の第一の試薬は、その上に同じ対の第二の試薬が分配される内側表面の、各対についての第二の領域から明らかに隔たった、すなわちなんらの重複もない内側表面の、各対についての第一の領域上に分配されることを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項11】
工程a)において、サンプルおよび場合により緩衝液を除き、被検体の分析、または各被検体の分析の全試薬が、試薬容器の内側表面上に分配されることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)において、過剰の水が、空気乾燥または凍結乾燥によって除去されることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、逆転写酵素を利用するアッセイ、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応、免疫PCRアッセイ、核酸配列に基づくアッセイ(NASBA)、近接ライゲーションアッセイ、リガーゼ連鎖反応(LCR)アッセイ、ローリングサークル増幅(RCA)アッセイ、および鎖置換増幅(SDA)アッセイより構成される群から選択されるアッセイを行うための請求項1〜6のいずれか1項に記載の試薬容器の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−501331(P2008−501331A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513990(P2007−513990)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050194
【国際公開番号】WO2005/118849
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506401543)
【Fターム(参考)】