説明

アトマイザ

【課題】流体に高圧を発生させるための装置を含むアトマイザを、設計が簡単で、製造が安価であり、その機能に適するようにする。
【解決手段】本発明のアトマイザは、シリンダ(1)内で移動できるピストン(2)と高圧室(4)と弁部材(3)を含む弁とを備え、弁部材(3)は中空ピストンで案内され補助的な力なしで軸線方向に移動でき、弁部材の軸線方向移動を制限する第1止め手段(8)が中空ピストンに設けられ、密封面が弁部材の入口端部に設けられ、弁部材が第1止め手段に当接すると弁は開き弁部材が密封面と当接すると弁は閉じ、中空ピストンが出口端領域外側に第1止め手段を有し、弁部材は中空ピストンの出口端部で軸線方向に移動できるよう取付けられ、弁部材は複数のフック(6,10)を有し、密封面が弁部材の入口端部に設けられる装置を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体に高圧を発生させるための装置に関する。この装置は、シリンダ内で動くピストンと弁とを備え、これらは共に、好ましくは、小型化された構造である。本発明は、さらに、この装置を含む高圧アトマイザに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィー(HPLC)において、例えば、一般に比較的少量の液体は分離用カラムを通して高圧で運ばれる。更に、医学的なエアロゾル(aerosol)療法において、エアロゾルは、人間の呼吸系の疾病を治療したり、喘息状態を治療したりするため薬液を霧化あるいは噴霧することによって得られる。ここで再び、エアロゾルのために必要とされる小さい液滴サイズを発生させるには、一般に比較的少量の液体に高圧が必要である。米国特許第5497944号(この特許の全内容をここに援用する)に記載の計量式投与吸入器において、所定体積の流体が5〜40MPa(約50〜400バール)の圧力の下に小さい開口を持つノズルを通して噴霧されてエアロゾルを発生する。本発明はこのような計量式投与吸入器および同様の装置に特に適用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、この種類の装置およびこの装置を含んでいるアトマイザを、設計が簡単で、製造が安価であるようにして、その機能に適するようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの観点によれば、流体に高圧を発生させるための、好ましくは、小型化された構造の装置を提供する。この装置は、シリンダ内で移動可能なピストンと、シリンダ内でピストンの前方に位置した高圧室と、弁とを備え、さらに、この装置は、円筒形の中空ピストンと、中空ピストンによって案内され、中空ピストンに対して軸線方向に移動できる弁部材と、弁部材を中空ピストンに対して保持するように中空ピストン上に設けた止め手段と、弁部材の入口端部にある定められた(所定の)シール面とを備え、弁部材が全体的にピストン軸線に対する任意の横方向軸線のまわりに回転しないようになっている。
【0005】
本発明のもう一つの観点によれば、シリンダと、シリンダ内で移動でき、流体の経路が貫通する中空の円筒形ピストンと、シリンダ内でピストンの前方に位置し、前記経路を通して流体の供給を受ける高圧室と、ピストンと共に移動するように前記流体経路内に設けてある入口弁とを備え、この入口弁は、ピストンによって与えられる弁座と接触する閉鎖位置と弁座から離れた開放位置との間をピストン軸線に沿って案内されながら限られた移動することができ、弁部材がピストン軸線に対して横方向の任意軸線のまわりに回転できず、所定の表面が弁座と係合するような形状であり、案内されるようになっている、流体に高圧を発生させるための装置、好ましくは、小型化された構造の装置を得ることができる。
【0006】
米国特許第5497944号に、逆止弁部材がボールである類似した装置が記載され、図示されている。この装置の場合、ボールは複数の作業の間、回転することができる。高圧下での摩耗とひずみがボールを永久変形させるため、その表面の異なる部分が連続して起こる閉鎖と密封の動作の間に使用された場合(ボールが横方向軸線まわりに自由に回転するため)、漏洩が生じる傾向があることがわかっている。これを避けるには、いつでも弁部材の同じ表面を用いて所望のシールを確実にしなければならない。本発明の好ましい構成においては、少なくとも弁部材の主要部分が円筒形であり、室(この室は、たとえば、ポンプ室自体であってもよいし、ピストンの内部の一部であってもよい)の中で案内され、弁部材シリンダがピストンによって与えられる弁シールと協働する端面を有する。本発明を用いて避けることができるボール弁の他の不利益は、弁の横断面積が必然的にボールの直径よりもかなり小さく、したがって、ボールが移動するガイド・シリンダよりかなり小さいということである。これにより、ピストンの圧力ストローク(前進運動)中に発生し、弁部材によって弁座に加えられる力をかなり減少させる原因となる。弁部材の高い付与力は弁部材や弁座をわずかに弾力的に変形させ、弁部材と弁座の間のギャップを閉じるのが望ましい。
【0007】
本明細書において、入口側、出口側あるいは入口端、出口端と言う用語は、装置内部の流体の流れの主な方向に関して使われる。流体という用語は気体、液体両方を含むが、本発明は主に液体に関係する。
弁部材は中空ピストンに対していくぶん変位できるが、実質的には中空ピストンと一緒に動く。
【0008】
弁部材は、好ましくは、単一の軸線方向に回転可能な左右対称形である。たとえば、円形のシリンダか切頭体である。その横断面は弁部材が可動状態で取付けられた室の横断面よりいくぶん小さい。これは、好ましくは、円筒形の弁部材の外面に延びている1以上の流路、あるいは、弁部材が可動状態で取付けられた室の直径に関していくぶんか小さい直径の弁部材によって達成される。
弁部材はそれが可動状態で取付けられた室で案内され、円筒形の弁部材が必要に応じてその軸線まわりに回転することができるが、その軸線は中空ピストンの軸線に対して常に平行にとどまる。これは、密封面を弁部材の入口端部に作り出す。
弁部材が中空ピストンに対して移動できる距離は、可動弁部材を中空ピストンと一緒に保持する止めあるいは止め手段によって制限される。
【0009】
止めが弁部材の出口端を越えて設けてある本発明のいくつかの実施の形態において、弁部材の出口端部の領域に少なくとも1つの凹部を設け、弁が開いているときに止めと弁部材の間を通って流体が流れることができるようにする必要があるかもしれない。各凹部を、弁部材の出口端部に設けてもよいし、或いは、各凹部を、中空ピストンの止めに設けてもよい。
弁部材が中空ピストンの止めと当接する位置で、弁は開く。弁部材が、密封面と当接する位置で、弁は閉じる。
中空ピストンの内側に配置された弁部材は、実質的に、中空ピストンの内壁面との摩擦がない。中空ピストンの端部の前に直接配置された弁部材は、装置の主ポンプ・シリンダの壁面とこすれ合う可能性がある。この場合、弁部材とシリンダ壁面との摩擦のため、中空ピストンが動くにつれて弁は積極的に開閉される。
【0010】
シリンダは、好ましくは、プラスチックで構成され、中空ピストンは金属又はプラスチックで形成される。弁部材のための材料は、その硬さに関して、中空ピストンの材料の硬さを補足するように選び、金属、セラミックス、ガラス、宝石、プラスチックあるいはエラストマーであってよい。弁部材は、一体片として作るのが好ましい。
流体が吸い込まれるとき、高圧室は中空ピストンによって流体の供給源に連結される。中空ピストンの吸入ストロークの間、流体は中空ピストンを通して、そして、弁部材を過ぎてシリンダの高圧室に流れる。中空ピストンの排出ストロークの間、弁座は、高圧の緊密な方法で弁部材の密封面に対して密閉される。
【0011】
流体に高圧を発生させるための本発明による装置は、その入口端部で流体の供給源に接続される。高圧室が、流体が高圧の下に運ばれる別の装置に連結される。中空ピストン又はシリンダは、中空ピストンとシリンダとの間の相対的な動きを引き起こし、高圧を生成するのに必要な力を加える駆動装置に取り付けられる。
【0012】
第1の実施の形態において、円筒形の弁部材は、中空ピストンの端部の直前で軸線方向に移動できるように案内されかつ取付けられ、弁部材の直径は実質的にシリンダの内径と等しい。中空ピストンの出口端部近くの外面には、止め部材として周方向の、好ましくは、曲がって形成された溝が設けてあり、この溝内に弁部材に設けた複数のスナップ・フックが係合する。溝の代わりに、中空ピストンが、その出口端部に、周方向の外向きロート形の縁を有する形成されたテーパを持っていてもよい。出口端部での中空ピストンの外径は、溝のベース直径より大きく、シリンダの直径より小さい。周方向の溝の代わりに、中空ピストンの出口端部で外面に、いくつかの、好ましくは、2つの直径方向に対向した位置において、平坦な領域を設けてもよい。これらの領域は止め手段として作用する段部を構成する。中空ピストンの平らな端面は、弁部材の入口側の密封面と協働する弁座となる。中空ピストン端の外縁を面取りをしてもよい。
【0013】
第2の実施の形態において、円筒形の弁部材は、中空ピストンの端部の直前で案内され、可動状態で取付けられ、弁部材の直径は、実質的にシリンダの内径と等しい。中空ピストンの端部は、内向きに形成され、内曲がりのリップとなっており、止め手段として作用する。弁部材上には、同軸のアンダカットのマッシュルーム形ペグが取付けられ、そのスナップ・フックが中空ピストンの形成縁の後に係合する。ペグのまわりに延びる密封面は、リップの端でピストンの出口端部に乗る。
【0014】
本発明に関連する第1の構造を有するポンプにおいて、好ましくは円筒形の弁部材は、中空ピストンの内側で充分に動くことができるように取付けられてもよい。中空ピストンの出口端部は中空ピストンの残部の内径より大きな内径を有する。中空ピストンのこの広くなった部分の長さは弁部材の長さよりいくぶん大きい。弁部材の直径は、中空ピストンの広くなった端部での内径にほぼ等しい。中空ピストンの出口端部は内方へ形成され、その全周囲あるいは周囲の一部にわたってリップを形成してあり、中空ピストン内部に弁部材を保持する止めとして作用する。弁座を形成する広くなった部分のベースは平坦でも円錐形でもよい。たとえば、弁部材の出口側の流体流れ凹部は段付きのチャネルの形状となっていてもよい。たとえば、止めにおける流体流れ凹部は、リップ縁におけるくぼみとして構成してもよい。
【0015】
この第1の構造の変形例において、弁部材は、その入口端部で、中空ピストンの内側に完全に配置してもよい。その場合、止めは広くなった部分の出口端部に位置することになり、密封面は中空ピストンの入口端部で形成縁上に位置することになる。
【0016】
本発明に関連する第2の構造を有するポンプにおいて、中空ピストンは、薄肉管で構成されている。この薄肉管は、その端部で、シリンダ内に突出するように形づくられ、弁部材に許されたスペースの端で周囲方向のくびれを備えている。円筒形の弁部材は、形成縁と周方向くびれとの間でスペース内に案内され、かつ、可動状態で取付けられる。別の厚肉管を中空ピストンの入口端部に押し込み、その外径が中空ピストンの内径と等しく、この厚肉管を中空ピストンに固着し、中空ピストンにおける周方向のくびれまでほぼ延びるようにしてもよい。厚肉管は、変位部材として作用し、高圧室に実質的に圧力を付与することなく流体が高圧室内へ容易に吸い込まれるようにする。厚肉管は、好ましくは、プラスチックで作られる。
【0017】
この第2の構造の変形例において、弁部材は、その入口端部で、中空ピストン内に完全に取付けられる。したがって、止めは周囲方向のくびれのところに位置し、密封面は中空ピストンの入口端部で形成縁のところに位置する。
【0018】
本発明に関連する第3の構造を有するポンプにおいて、中空ピストンは、厚肉管を含む薄肉管を備え、その外径は中空ピストンの内径に等しく、中空ピストンに固定して連結される。厚肉管は変位体として作用し、実質的に圧力を加えることなく、流体が容易に吸い込まれるようにする。
【0019】
中空ピストンの入口端部は広くなっている。この広くなった端部のところで、中空ピストンは閉鎖部材に固定して連結され、閉鎖部材の外径は中空ピストンの広くなった入口端部の外径より大きい。閉鎖部材は、中空ピストンの広くなった端部に面している側に開く凹部を有する。凹部のベースには、流体のための入口として作用する開口穴がある。凹部のベースは、円錐形でもよいし、或いは、平らでもよい。凹部のベースは、密封面を形成する。
【0020】
弁部材は、開鎖部材における凹部内に配置される。弁部材は、凹部内で軸線方向に移動できるように案内される。弁部材の外径は、凹部の内径より小さいが、好ましくは、シリンダの中へ突き出る部分において中空ピストンの内径より大きい。弁部材は、その出口端部に、流体が中空ピストンの吸入ストローク中に高圧室に流入する少なくとも1つの凹部を有していてもよい。
【0021】
弁部材のための止めは、好ましくは、変位体の端部であり、これが中空ピストンの広くなった部分内に突出する。あるいは、変位体の端部が中空ピストンの広くない部分に位置する場合には、中空ピストンの広くない部分から広くなった入口端部への移行部に突出する。
広くなった入口端部を持つ中空ピストンは、好ましくは、金属で構成される。
【0022】
変位体と閉鎖部材は、好ましくは、プラスチックで作られる。弁部材を、プラスチック又は金属で作ってもよい。特に重要なのは、アトマイザ(噴霧器)内の流体に高圧を発生させて、高圧ガスなしに、流体を噴霧できる本発明による装置の用途である。
【0023】
本発明のもう一つの観点によれば、上方ハウジング部分と、ポンプ・ハウジングと、ノズルと、阻止機構と、ばねハウジングと、ばねと、供給源容器とからなる流体を噴霧するためのアトマイザであって、一端にノズル付きのを持つノズル部材を有する、上方ハウジング部分に固定したポンプ・ハウジングと、弁部材を持つ中空ピストンと、中空ピストンを固着し、上方ハウジング部分内に位置する駆動フランジと、上方ハウジング部分内に位置した阻止機構と、ばねが中に設置してあり、上方ハウジング部分上に回転軸受によって回転自在に取付けられたばねハウジングと、ばねハウジング上へ軸線方向にはめ込まれた下方ハウジング部分とを備えることを特徴とするアトマイザを得ることができる。
【0024】
本発明の他の観点は独立請求項に記載してあるが、発明の範囲から逸脱することなしに、特別な特徴の変更および組合せをすることができる。或る種の好ましい特徴は従属請求項に定義されている。
以下、アトマイザのさらに好ましい特徴を説明する。このアトマイザは、好ましくは、計量式投与吸入器である。
【0025】
弁部材を持つ中空ピストンは、好ましくは、本明細書で前述した発明による装置のうちの1つに対応する。この装置は、ポンプ・ハウジングのシリンダ内に部分的に突出し、シリンダ内で軸線方向に移動できるように取付けられる。弁部材を持つ中空ピストンは、ばねの解放の瞬間に高圧端部のところで、5〜60MPa(約50〜600バール)、好ましくは、10〜60MPa(約100〜600バール)の圧力を流体に加える。
ノズル部材におけるノズルは、好ましくは、ミクロ構造で作られる。すなわち、マイクロ技術によって製造される。ミクロ構造に作られたノズル部材は、たとえば、米国特許第5472143号(これの全内容をここに援用する)に開示されている。
【0026】
たとえば、ノズル部材は、相互にしっかりと結合したガラスやシリコンの2つのプレートからなり、少なくとも1つのプレートは、1つまたはそれ以上のミクロ構造チャネルを有する。これらのチャネルは、ノズル入口端部をノズル出口端部に接続している。ノズル出口端部には、10μm以下のサイズの少なくとも1つの円形あるいは非円形の開口がある。この接続部でのサイズは液圧直径と呼ぶ。この種類の装置における液圧直径は、一般に、100マイクロメートル末満、好ましくは1〜20マイクロメートルである。
【0027】
ノズル部材におけるノズルの噴霧方向は、互いに平行であってもよいし、互いに対して傾斜していてもよい。出口端部のところで少なくとも2つのノズル開口を有するノズル部材においては、噴霧方向は、20から160度の角度、好ましくは60〜150度の角度で互いに対して傾いていてもよい。噴霧方向は、ノズル開口の近くで合流する。
【0028】
ポンプ・ハウジングにおいて、ばねバイアスの有無にかかわらず、逆止弁をノズル開口とシリンダの高圧室との間に設けてもよい。この逆止弁は、アトマイザの静止状態で高圧室を閉じ、流体への空気の流入を防ぎ、必要に応じて流体の揮発性成分がポンプ・ハウジングから蒸発するのを防ぐことができる。高圧室内の流体の圧力が最小値を上回り、流体の流れが生じるとすぐに逆止弁は自動的に開く。流体の流れが排出されるとすぐに逆止弁は自動的に閉まる。たとえば、逆止弁はボール弁であってもよい。この逆止弁は、片側を止められ、フラップのように高圧室の出口端部上に乗る可撓性のあるプレートで構成されていてもよい。別の実施の形態において、逆止弁は、全周を止められ、ピンの挿通した、好ましくは可撓性材料のディスクからなる。挿通孔により、流体における圧力が最小値を上回るとすぐに流体の流れがノズル通り抜けることができる。流体の流れが排出された後、ピン孔は再び閉じる。
【0029】
弁部材は、ノズル部材に面するシリンダの端部に取付けられると好ましい。阻止機構あるいはラッチ機構は、機械的エネルギの貯蔵部として、ばね、好ましくは、円筒螺旋形の圧縮ばねを有する。このばねは、ジャンピング部材として従動フランジに作用する。その動きは阻止部材の位置で決定まる。従動フランジの移動経路は、上下の止めによって正確に定められる。ばねは、力増強装置、たとえば螺旋状ののこ歯スラスト・カムを介して外部トルクによって張力を加えられるのが好ましい。この力は、上方ハウジング部分が下方ハウジング部分のばねハウジングと反対に回転するときに生成される。この場合、上方ハウジング部分と従動フランジは単一あるいは複数ののこ歯状くさび装置を備えている。
【0030】
この一般的タイプの機構は、米国特許第4260082号および英国出願第2291135号に開示されおり、これらの刊行物の全内容をここに援用する。係合する阻止面を持つ阻止部材は従動フランジのまわりに環状形態で配置される。たとえば、この阻止部材は、プラスチック製あるいは金属製のリングからなり、1つの形態において、このリングは本質的に半径方向に弾性変形可能である。
このリングは、アトマイザの軸線に対して直角に配置される。ばねのバイアス作用後、阻止部材の阻止面は、従動フランジの経路内へ動き、ばねが解放されるのを防ぐ。阻止部材はボタンによって作動させられる。作動ボタンは阻止部材に連結される。阻止機構を作動させるためには、作動ボタンをリングの平面に対して平行に、好ましくはアトマイザ内へ押し込む。それによって、変形可能なリングはリングの平面内で変形し、フランジを解放してばねによって動けるようにする。
【0031】
好ましい阻止部材とばねが、ミクロパーツ(Microparts)によって出願され、ボーリンゲル・インゲルハイム・インターナショナル(Boehringer Ingelheim International)社に譲渡されたドイツ特許出願第195452267号に記載されている。これの出願の全内容をここに援用する。
【0032】
アトマイザは、選択的には、ばねハウジング上に取付けられたねじスピンドルを備える機械的なカウンタを含む。スピンドルの軸線は、外面の領域で、アトマイザの軸線と平行に延びる。スピンドルは、その両端の領域で、ばねハウジング上に回転軸受によって取付けられる。スピンドルは、上方ハウジング部分に最も近い端部に歯を有する。上方ハウジングの縁には、少なくとも1つのカムがあり、このカムは、2つのハウジング部分が互いに対して回転するときに、スピンドル端部のところで歯に係合する。回転阻止手段を持つスライダがスピンドルに取付けられ、スピンドルのねじ山と係合する。
【0033】
好ましいカウンタが、ミクロパーツ(Microparts)によって1995年12月28日に出願され、ベーリンゲル・インゲルハイム・インターナショナル(Boehringer Ingelheim International)社に譲渡されたドイツ国特許出願第195 49 033.9号に記載されている。この出願の全内容をここに援用する。
下方ハウジング部分は、ばねハウジング上を軸線方向に押され、取り付け部、スピンドルの駆動装置および流体のための貯蔵容器を覆う。スライダの位置は下方ハウジング部分の凹部を通して見ることができ、たとえば下方ハウジング部分にあるスケール上で読み取ることができる。
【0034】
アトマイザが作動するとき、上方ハウジング部分は下方ハウジングに相対的に回転する。下方ハウジング部分はそれと一緒にばねハウジングを支える。その間に、ばねは螺旋形のスラスト・カムによって圧縮されかつ片寄せられ、阻止機構が自動的に係合する。回転角度は、好ましくは、360度の整数分数であり、たとえば180度である。ばねが片寄せられると同時に、上方ハウジング部分の従動部分が或る距離動かされ、中空ピストンがポンプ・ハウジングのシリンダ内に引っ込められる。その結果、若干量の流体がノズルの前方で貯蔵容器から高圧室へ吸い込まれる。
【0035】
スピンドルの一端にあるピストンと上方ハウジング部分の縁にあるラック(単数または複数)とからなるギアによって、2つのハウジング部分の相対的な動きがピックアップされ、スピンドルの回転運動およびスピンドル上でスライダの変位に変換される。アトマイザの作動毎に、スライダはスピンドルに沿って、或る距離を動かされる。
スライダの位置は、霧化すべき流体のどのくらいの割合が貯蔵容器から既に吸い出されているか、ならびに、どのくらいをまだ利用できるかを示す。スピンドル上のスライダは、必要に応じて、リセット用突起によってリセットすることができる。
【0036】
所望ならば、霧化すべき流体を保持する複数の(好ましくは折り畳み可能な)交換可能の貯蔵容器を前後方向にアトマイザに挿入し、使用してもよい。貯蔵容器は加圧しないか、あるいは実質的に加圧しない。貯蔵容器内の流体の圧力は、いずれにせよ、機械的に作動するアトマイザによって高圧室内に生成される圧力よりもかなり低くてもよい。たとえば、貯蔵容器は薬を含む流体を収容する。
寸法的に安定した外側の部分と液体を取り出したときに折り畳むことができる内側部分とを備えた適当な容器が米国特許第5316135号に開示されている。この米国特許の全内容をここに援用する。
【0037】
霧化プロセスは作動ボタンを穏やかに押すことによって開始する。次いで、阻止機構が経路を開けて、従動部分が動けるようにする。片寄せられたばねがピストンをポンプ・ハウジングのシリンダに押し込む。流体は噴霧形態でアトマイザのノズルから出る。
アトマイザの構成要素は、この作用にふさわしい材料で作る。アトマイザのハウジング、そして、機能的に許す限り、他の部分はプラスチックで、たとえば射出成形によって作ると好ましい。医薬の目的のために、生理学的に許容可能な材料が使われる。
【0038】
たとえば、本発明によるアトマイザは、医薬エアロゾルの高圧ガスなし生成のために使われる。それによって、約5μmの大量の平均粒子(小滴)サイズを持つ吸入可能なエアロゾルを生成することができる。これらの小さい粒子(平均のサイズ12μm未満)は、肺に真っ直ぐに進入するのに必要である。放出量は、好ましくは、約15のマイクロリットルである。
【0039】
活性物質の可溶性に応じて水溶液あるいはエタノール溶液の形をした製薬組成物の例として以下の活性物質がある。すなわち、ベロテック(berotec)、ベロデュアル(berodual)、フルニソライド(flunisolide)、アトロベント(atrovent)、サルビュタモール(salbutamol)、ビュデソナイド(budesonide)、コンビベント(combivent)、ティオトロピウム(tiotropium)、オキシベント(oxivent)、その他の適当なペプチドである。
溶液は薬学的に受け入れ可能な補形薬を含んでいてもよい。
【0040】
流体に高圧を発生させるため本発明による好ましい装置およびこの装置を含む好ましいアトマイザは以下の利点を有する:
− この装置は、いかなる補助力(ばねによって生成される)もなしに作動し、弁部材に加わる流体の流れ抵抗あるいはシリンダ壁面に対する摩擦の結果として閉まる弁を包含する。
− 弁が、一般に3MPa(30バール)よりかなり上の圧力に対して緊密である。
− 弁部材は一体片として作られ、製造、組み立てが簡単である。
− 弁は、弁部材が密封面に到着するために移動する距離が短いために、かなり急速に閉じる。
− 弁は高い密閉作用を有する。
− 短軸方向に回転対称である弁部材を案内する結果として、密封面が作り出され、これは非常に多い回数の中空ピストンの移動サイクルを通じて高圧に対して気密である。
【0041】
− 高圧室のデッドスペースをとても小さく保つことができる。
− アトマイザは、ばねを片寄せ、霧化プロセスを開始させるのに技術的に未熟な人によっても安全かつ容易に操作することができる。
− アトマイザはスプレー用のガスなしで作動し、したがって、環境に優しい。
− 流体貯蔵容器を、加圧しないか、実質的に加圧しない。
− 阻止部材の動きが、単純な方法によって、ばねに片寄せる回転運動に自動的に連結される。
− 好ましい実施の形態において、アトマイザは低摩耗性の純粋に機械的な構成要素からなり、長期間にわたって信頼性をもって動作する。
− 従動部分のための定まった当接により、流体の計量は非常に正確である。
− アトマイザを、安価に製作し、簡単に組み立てることができる。
− アトマイザが作動したとき機械的なカウンタが自動的に進められる。このカウンタは、公差に厳しくなく、組み立て容易であり、安全かつ確実に動作する。
− アトマイザが正しく使われているとき、カウンタにはアクセスできず、偶発的に故障することがあり得ない。
− カウンタは貯蔵容器から流体を何回も放出させることができ、1つのアトマイザで異なった数の貯蔵容器を使用できる。
− カウンタはアトマイザに組み込まれ、なんら追加のスペースも必要としない。
− 物質がカウンタから霧化すべき物質に通過することができない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1a】図1aは、本発明の第1の実施の形態において、ポンプの構造を示す縦断面斜視図である。
【図1b】図1bは、本発明の第1の実施の形態において、ポンプの中空ピストンの構造を示す斜視図である。
【図1c】図1cは、本発明の第1の実施の形態において、ポンプの弁部材の構造を示す斜視図である。
【図2a】図2aは、本発明の第2の実施の形態において、ポンプの他の構造を示す縦断面斜視図である。
【図2b】図2bは、本発明の第1の実施の形態において、ポンプの中空ピストンの他の構造を示す斜視図である。
【図2c】図2cは、本発明の第1の実施の形態において、ポンプの弁部材の他の構造を示す斜視図である。
【図3a】図3aは、本発明に関連する第1の構造を有するポンプにおいて、流体に高圧を発生させるポンプの構造を示す縦断面斜視図である。
【図3b】図3bは、本発明に関連する第1の構造を有するポンプにおいて、流体に高圧を発生させるポンプの中空ピストンの構造を示す斜視図である。
【図3c】図3cは、本発明に関連する第1の構造を有するポンプにおいて、流体に高圧を発生させるポンプの弁部材の構造を示す斜視図である。
【図4a】図4aは、本発明に関連する第2の構造を有するポンプにおいて、流体に高圧を発生させるポンプの構造を示す縦断面斜視図である。
【図4b】図4bは、本発明に関連する第2の構造を有するポンプにおいて、流体に高圧を発生させるポンプの中空ピストンの構造を示す斜視図である。
【図4c】図4cは、本発明に関連する第2の構造を有するポンプにおいて、流体に高圧を発生させるポンプの弁部材の構造を示す斜視図である。
【図4d】図4dは、本発明に関連する第2の構造を有するポンプの変形例において、流体に高圧を発生させるポンプの構造を示す縦断面斜視図である。
【図4e】図4eは、本発明に関連する第2の構造を有するポンプの変形例において、流体に高圧を発生させるポンプの中空ピストンの構造を示す斜視図である。
【図4f】図4fは、本発明に関連する第2の構造を有するポンプの変形例において、流体に高圧を発生させるポンプの弁部材の構造を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明に関連する第3の構造を有するポンプにおいて、流体に高圧を発生させるポンプの構造を示す縦断面斜視図である。
【図6a】図6aは、異なる作動条件における本発明による計量式投与吸入器の長手方向横断面である。
【図6b】図6bは、異なる作動条件における本発明による計量式投与吸入器の長手方向横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
ポンプ装置のいろいろな実施の形態を既に一般的な用語で説明してきたが、これらの説明を、以下、図面を参照した更なる説明で補うことにする。
図1aは、流体に高圧を発生させるための本発明による装置の第1の実施の形態の縦断面斜視図を示す。同軸のボア(7)を持つ中空ピストン(2)と、弁の部分的に開いた位置における弁部材(3)が、シリンダ(1)内にある。高圧室(4)が、弁部材(3)の底とシリンダ端部との間にある。高圧室は、別の構成要素(図示せず)によって閉じられている。中空ピストンをシリンダ内で変位させることができる装置(図示せず)が、中空ピストン上でシリンダの外側に取付けられている。
【0044】
図1bは、斜めに見た中空ピストン(2)を示す。弁部材に面している中空ピストンの端部は溝(5)を備えている。この溝は、弁部材に面しているその端部のところで、段部(8)を形成している矩形断面の環状ランド部によって境界が定まっている。段部(8)の直径は、中空ピストン(2)の外径より小さく、溝のベース直径より大きい。中空ピストンの端部のところの前縁を面取りしてもよい。
【0045】
図1cは斜めに見た弁部材(3)を示す。たとえば、弁が開いているときに流体を容易に流すための3つのチャネル(9)をその外面に有する。弁部材(3)上の中空ピストンに面しているその側には、たとえば、3つのスナップ・フック(6)が取付けられている。スナップ・フックの幅は、弁部材の円周の方向において、この円周の3分の1より小さい。スナップ・フック(6)は、軸線方向において、中空ピストンの、たとえば溝付き端部の長さよりも短い。
組み立て中、弁部材(3)は中空ピストン(2)の端部上に置かれ、フック(10)が溝の中に摺動する。次に、弁部材と一緒に中空ピストンをシリンダ内に押し込む。
【0046】
弁が開くと、フック(10)の内縁が段部(8)に当接する。弁が閉じると、中空ピストンに面している弁部材(3)のベースが、密封面として作用する中空ピストン(2)の端部上に緊密に嵌合する。
流体を取り入れるために、中空ピストンはシリンダから部分的に持ち上げられる。このとき、弁は自動的に開く。流体は、中空ピストンのボア(7)を通って、そして、弁部材を過ぎて高圧室(4)内に流れる。流体を追い出すために、中空ピストン(2)をシリンダ(1)に押し込み、このとき弁がほぼ瞬時に自動的に閉まり、高圧が流体に生じる。
【0047】
図2aは、流体に高圧を発生させるための本発明による装置の第2の実施の形態を縦断面斜視図で示す。シリンダ(1)内には、弁の部分的に開いた位置に中空ピストン(11)と弁部材(13)がある。
図2bは、中空ピストン(11)の形成出口端部(12)をもった中空ピストン(11)の縦断面図を示す。変位体(26)を中空ピストン内に固定して設置するのがよい。
【0048】
図2cは、斜めに見た縦断面図で弁部材(13)を示す。同軸のアンダカット・ペグ(14)が弁部材上に取付けられ、弁部材の突出端部が中空ピストンの成形縁(12)の後に係合する。中空ピストンに面しているペグの端部(15)は面取りしてあってもよい。ペグは、軸線方向に延びるくぼみあるいはボア(16)と、端部(15)から上方へ延びる長手方向のスロットとを有し、スナップ・フックを形成し、ペグを中空ピストンの形成端に押し込み、成形縁の後に係合させることができるようにしてもよい。
【0049】
図3aは、流体に高圧を発生させるための本発明に関連する装置の第1の例を斜めに見た縦断面で示す。弁の閉じた位置において、中空ピストン(17)と弁部材(18)がシリンダ(1)内にある。
図3bは、形成端部(19)を持つ中空ピストン(17)の斜めに見た縦断面図を示す。中空ピストンの出口端部のところには広くなった部分(20)があり、ここにおいて、弁部材(18)は軸線方向に移動できる方法で案内され、取付けられている。広くなった部分(20)の入口端部は面取りしてあってもよいし、あるいは、平らであってもよい。
【0050】
図3cは、斜めに見た縦断面で円筒形の弁部材(18)を示す。弁部材の両端部は、平らであり、弁部材の軸線に対して直角に位置する。弁部材(18)は、たとえば、その外面に4つの段付きチャネルまたは平坦部(21)を有し、弁が開いたとき、形成端部(19)、すなわち、内曲がりのリップを過ぎて流体が流れるのを容易にする。チャネル(21)の端部はリップの半径方向内方にある。中空の室(20)の傾斜したベースに当接する弁部材(18)の縁は面取りしてあってもよい。
【0051】
弁部材(18)の直径は広くなった部分(20)の直径よりも小さく、弁部材(18)が広くなった部分(20)においてほぼ摩擦なしに動くことができる。組み立てのために、中空ピストンの出口端部(19)が形づくられる前に弁部材(18)を広くなった部分(20)に押し込む。
【0052】
図4aは、流体に高圧を発生させるための本発明に関連する装置の第2の例を斜めに見た縦断面で示す。弁の閉じた位置において、中空ピストン(22)と弁部材(23)がシリンダ(1)内にある。弁部材の直径は中空ピストンの内径よりも小さい。
図4bは、内曲がりのリップを形成する形成出口端部(24)を持つ中空ピストン(22)および周方向のくびれ(25)の縦断面斜視図を示す。変位体として作用する厚肉管(26)を中空ピストン(22)内に押し込み、そこに固着してもよい。
【0053】
図4cは、弁部材(23)を斜視図で示す。弁部材の出口端部のところには、弁が開いたときに流体の流れを容易にするように横方向スロットの形をした半径方向に延びるくぼみ(27)がある。
図4dは、本発明に関連する装置の第2の例の変形例を縦断面斜視図で示す。選択的には、変位体(26)を有する中空ピストン(28)がシリンダ(1)内にあり、弁は閉じた位置にある。弁部材(29)の直径は中空ピストンの内径撚りも小さい。
【0054】
図4eは、形成出口端部(24)と周方向のくびれ(25)と共に中空ピストン(28)を示す縦断面斜視図である。凹部あるいは切り欠きの形をした少なくとも1つのくぼみ(30)が形成された出口端部(24)上に設けてあり、弁が開いたときの流体の流れを容易にする。くぼみの代わりに、凸面があってもよい。
図4fは、弁部材(29)を斜視図で示す。この場合、弁部材は凹部のない真っ直ぐなシリンダである。
【0055】
図5は、流体に高圧を発生させるおける本発明に関連する装置の第3の例を縦断面斜視図で示している。変位体(32)を含む中空ピストン(31)がシリンダ(1)内にある。中空ピストンの円筒状に広くなった入口端部(33)上には、くぼみ(35)とボア(36)を持つ閉鎖部材(34)が取付けられている。案内される軸線方向に移動できる弁部材(37)がくぼみ内にあり、これはくぼみとしてスロット(38)をその出口端部のところに設けられてもよい。
【0056】
図2a〜図2cに示す流体に高圧を発生させる本発明による装置の実施の形態は、図1aを参照して既に説明したと同じ方法で作動する。図3a〜図5に示す流体に高圧を発生させる本発明に関連する装置の例は、図1aを参照して既に説明したと同じ方法で作動する。
【0057】
図6aは、ばねが片寄せられた場合に詳細に先に説明した好ましいアトマイザを通る縦断面図を示し、図6bは、解放されたばねと共にアトマイザを示す縦断面図を示す。
【0058】
上方ハウジング部分(51)はアトマイザ・ノズルのためのホルダ(53)を端部に取付けられたポンプ・ハウジング(52)を包含する。このホルダは、1995年10月4日に出願されたドイツ国特許出願P19536303.3−5に記載されたものであると好ましい(同時に、この出願に対応するPCT出願が、ベーリンゲル・インゲルハイム・インターナショナル(Boehringer Ingelheim International)社と、本発明の発明者の共同名で出願されている)。このドイツ国特許出願の全内容をここに援用する。ホルダ内には、ノズル部材(54)とフィルタ(55)がある。阻止機構(57)のカップ状駆動フランジ(56)内に固定された中空ピストン(57)は、ポンプ・ハウジングのシリンダ内に部分的に突出している。その端部のところで、中空ピストンは弁部材(58)を支持している。中空ピストンは、シール(59)によって密封される。環状当接部(フランジ上の環状のうね(60)に対向している)が上方ハウジング部分内にあり、ばねが解放されたときこの当接部上にフランジが乗る。当接部(61)がカップ状の従動フランジの軸線方向端部上にあり、ばねが片寄せられたとき従動フランジがこの当接部によって保持される。
【0059】
ばねの片寄せ作用後、全体的に環状の阻止部材(62)は当接部(61)と上方ハウジング部分の支持部(63)の間で移動する。これは、それ自体の弾性か、あるいは、(その剛性が高い場合)外部のばね(図示せず)のためである。作動ボタン(64)は阻止部材に連結してあり、阻止部材を全体的に動かしたり、それを変形させることができ、そのため、阻止部材が当接部(61)を解放することができる。上方ハウジング部分は、マウス片(65)で終わっており、そこに嵌合することができる保護キャップ(66)で閉鎖されている。
【0060】
圧縮ばね(68)を持つばねハウジング(67)が、上方ハウジング部分上にスナップ作用突起(69)と回転軸受によって回転自在に取付けられている。下方ハウジング部分(70)が、ばねハウジング上に押されて、アトマイザを発射準備させる螺旋形のこ歯カム式駆動装置(図示せず)を作動させるようにばねハウジングと一緒に回転する(図6b位置から図6a位置へ動かす)。霧化すべき流体(72)のための交換可能な貯蔵容器(71)が、ばねハウジングの内側にある。貯蔵容器はストッパ(73)を備え、このストッパを通して中空ピストンが貯蔵容器内に突出し、その端部を流体に浸す。
【0061】
機械的なカウンタのためのスピンドル(74)が、ばねハウジングの外面に取付けられている。上方ハウジング部分に面するスピンドルの端部のところには、駆動ピニオン(75)がある。スライダ(76)がスピンドル上に着座している。
図面に示した実施の形態はさらに変更可能である。構成要素は図面に示す方法以外の方法で一緒に使用してもよい。
【実施例】
【0062】
(1)実施例1:医薬用アトマイザのための高圧を発生する小型化装置
図1aに示す医薬アトマイザの弁領域は、1.6mmの内径と5mmの外径を持つポリブチレン−テレフタレートで作ったシリンダからなる。高圧室は、ノズル・キャリヤ・プレートで閉じてある。このプレートにおいて、ノズル直径は20μmであり、ノズル・チャネルは長さ2mmである。
【0063】
1.59mmの外径と0.35mm直径のボアを有する金属製中空ピストンをシリンダに押し込む。中空ピストンはシリンダ内へ50mm押し込むことができ、そのストロークは長さ12mmである。中空ピストンは、4mm幅で、0.75mmのベース直径を持つ周方向の湾曲溝を有する。溝は、直径1.15mmで4.0mm長の段部によって境界を定められている。中空ピストンの湾曲した端部の外縁は面取りしてある。
【0064】
ポリブチレン−テレフタレートで作った弁部材は、2mm厚で1.59mm直径のディスクと3つのスナップ・フックとからなる。0.4mm直径の3つの半円筒形のチャネルがディスクの外面にくぼみとして設けてある。スナップ・フックはディスクから6mm突出し、フックの内縁はディスクから4.2mm離れている。こうして、弁部材が、中空ピストンに相対的に軸線方向に0.2mm移動することができる。
【0065】
投与体積は23.4mm3である。流体の圧力は約32MPa(320バール)である。このアトマイザは、医薬エアロゾル療法のための薬液を霧化あるいは噴霧するために使われる。このアトマイザは、作動毎に必要な投与量の薬を投与する。
【0066】
(2)実施例2:化粧用アトマイザのための高圧を発生する小型化された装置
図3aに対応する化粧用アトマイザの弁領域は、2.5mm内径と8mm外径を持つポリエーテルエーテル−ケトン(polyetherether-ketone)のシリンダからなる。高圧室は、ノズル・キャリヤ・プレートで閉じられている。このプレートには、2mm長のノズル
・チャネルを持つ直径25μmのノズルがある。
2.48mm外径を持ち、0.5mm直径のボアを有する強化プラスチックの中空ピストンをシリンダに押し込む。中空ピストンはシリンダ内へ45mm押し込むことができ、そのストロークは24mmである。中空ピストンは、その出口端部で5.0mmの長さにわたって1.85mmの内径まで穿孔してある。中空ピストンにおける穿孔形成した室のベースは面取りしてある。中空ピストンの出口端部は熱的に変形させる。
【0067】
弁部材は、高さ3.0mm、直径1.6mmであるポリプロピレンのシリンダである。
4つの段付きチャネルが外面にくぼみとして設けられている。弁部材は、中空ピストン内で軸線方向に約0.5mm変位させることができる。
投与体積は約116mm3である。流体の圧力は約3MPa(30バール)である。
このアトマイザはヘアスプレーを霧化するのに使用される。
【符号の説明】
【0068】
1 シリンダ
2 中空ピストン
3 弁部材
4 高圧室
5 溝
6 スナップ・フック
7 ボア
8 段部
9 チャネル
10 フック
11 中空ピストン
13 弁部材
12 縁
14 アンダカット・ペグ
15 ペグの端部
16 ボア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を霧化するためのアトマイザであって、上方ハウジング部分(51)と、下方ハウジング部分(70)と、ばねハウジングと、ばね(68)と、ポンプ・ハウジング(52)と、ノズル(54)と、係止応力機構(62)と、貯蔵容器(71)とを備え、
前記ポンプ・ハウジング(52)は、上方ハウジング部分(51)に固定され、かつ、一端にノズル(54)を備えたノズル部材を有し、
前記アトマイザは、
流体を加圧するための小型化された構造の装置であって、
該装置は、シリンダ(1)内で移動できるピストン(2)と、前記シリンダ内でピストンの前方に位置した高圧室(4)と、弁部材(3)を含む弁とを備え、
前記ピストン(2)は円筒形の中空ピストンであり、
前記弁部材(3)は、前記中空ピストンによって案内され、ばねにより生じるいかなる補助的な力もなしに前記中空ピストンに抗して軸線方向に移動でき、
前記弁部材の軸線方向の移動を制限する第1止め手段(8)が、前記中空ピストンに設けられ、
密封面が、前記弁部材の入口端部に設けられ、
前記弁部材が前記第1止め手段に当接すると前記弁は開き、
前記弁部材が前記密封面と当接すると前記弁は閉じるように構成され、
前記中空ピストン(2)が、その出口端部の領域の外側に前記第1止め手段(8)を有し、
前記弁部材は、前記中空ピストンの出口端部のところで軸線方向に移動できるように案内されかつ取り付けられ、
前記弁部材は、第2止め手段として作用する複数のアンダカット・スナップ・フック(6,10)を有し、
前記密封面が、前記弁部材の入口端部のところで、前記中空ピストンの平らな出口端部に設けられている装置を備え、
前記中空ピストンが固着された駆動フランジ(56)が、前記上方ハウジング部分(51)に配置され、
前記係止応力機構又はラッチ機構(62)が、前記上方ハウジング部分に配置され、
ばね(68)を備えたばねハウジングが、前記下方ハウジング部分に配置され、前記下方ハウジング部分は、回転軸受によって前記上方ハウジング部分に回転自在に取付けられ、
前記下方ハウジング部分(70)は、軸線方向に前記ばねハウジングに嵌合できるように構成されている、
ことを特徴とするアトマイザ。
【請求項2】
前記中空ピストン(2)の出口端部のところの前記第1止め手段(8)が、周方向の溝、又は、周方向の外向きのロート形の縁を有して形成されたテーパとして形成され、前記中空ピストンの出口端部のところでの外径は、前記溝のベース直径、又は、前記テーパの外径より大きく、かつ、前記シリンダの直径よりも小さく、或いは、
平らな表面をもつ前記中空ピストンの出口端部のところの直径方向に対向したいくつかのポイントと、段部とが前記第1止め手段として作用する、
請求項1に記載のアトマイザ。
【請求項3】
流体を霧化するためのアトマイザであって、上方ハウジング部分(51)と、下方ハウジング部分(70)と、ばねハウジングと、ばね(68)と、ポンプ・ハウジング(52)と、ノズル(54)と、係止応力機構(62)と、貯蔵容器(71)とを備え、
前記ポンプ・ハウジング(52)は、上方ハウジング部分(51)に固定され、かつ、一端にノズル(54)を備えたノズル部材を有し、
前記アトマイザは、
流体を加圧するための小型化された構造の装置であって、該装置は、シリンダ(1)内で移動できるピストン(11)と、前記シリンダ内でピストンの前方に位置した高圧室(4)と、弁部材(13)を含む弁とを備え、
前記ピストン(2)は円筒形の中空ピストンであり、
前記弁部材(13)は、前記中空ピストンによって案内され、ばねにより生じるいかなる補助的な力もなしに前記中空ピストンに当接して軸線方向に移動でき、
前記弁部材の軸線方向の移動を制限するための第1止め手段(12)が、前記中空ピストンに設けられ、
密封面が、前記弁部材の入口端部に設けられ、
前記弁部材が前記第1止め手段に当接すると前記弁は開き、
前記弁部材が前記密封面と当接すると前記弁は閉じるように構成され、
前記中空ピストンは、その出口端部のところに、前記第1止め手段として作用するように内向きに形成された縁(12)を有し、
前記円筒形の弁部材(13)は、前記中空ピストンの出口端部の直前で、軸線方向に移動できるように案内されかつ取り付けられており、
前記弁部材は、第2止め手段として作用する同軸のアンダカット・ペグ(14)を有し、
前記密封面は、前記中空ピストンの出口端部のところに形成された縁に当接する、装置を備え、
前記中空ピストンが固着された駆動フランジ(56)が、前記上方ハウジング部分(51)に配置され、
前記係止応力機構又はラッチ機構(62)が、前記上方ハウジング部分に配置され、
ばね(68)を備えたばねハウジングが、前記下方ハウジング部分に配置され、前記下方ハウジング部分は、回転軸受によって前記上方ハウジング部分に回転自在に取付けられ、
前記下方ハウジング部分(70)は、軸線方向に前記ばねハウジングに嵌合できるように構成されている、
ことを特徴とするアトマイザ。
【請求項4】
前記円筒形の弁部材(3、13)は、前記シリンダの内径よりも小さい直径を有し、或いは、
前記円筒形の弁部材(3、13)は、前記シリンダの内径と等しい直径を有し、
少なくとも1つのチャンネル(9)が、前記弁部材の軸線方向に延びている、
請求項1ないし3のいずれか1項にアトマイザ。
【請求項5】
前記弁部材(58)を持つ前記中空ピストン(57)は、前記ポンプ・ハウジングのシリンダ内へ部分的に突出し、かつ、前記シリンダ内で軸線方向に移動できるように取付けられている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項6】
前記係止応力機構は、前記従動フランジのまわりに環状に配置された係止面と係合する阻止面を有する阻止部材を備え、該阻止部材はこれに接続された作動ボタンによって作動させられる、
請求項1ないし5の何れか1項に記載のアトマイザ。
【請求項7】
スピンドル(74)およびスライダ(76)を有する機械的なカウンタが、外面の領域で前記ばねハウジング(67)に取付けられ、前記スピンドルの軸線が、前記ばねハウジングの軸線に対して平行に延びている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項8】
ノズル部材(54)が、相互にしっかりと結合された2つのガラス及び/又はシリコンのプレートを備え、
少なくとも1つのプレートは、ノズル入口端部とノズル出口端部を接続する1つ以上のミクロ構造のチャネルを有し、ノズル出口端部は、少なくとも1つの開口を有し、前記開口の液圧の直径は、サイズが10μm以下である、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項9】
前記ノズル部材(54)は、出口端部に少なくとも2つのノズル開口を有し、噴霧の方向は互いに対して傾き、ノズル開口の近くで合流している、
請求項8に記載のアトマイザ。
【請求項10】
逆止弁が、ノズル開口とシリンダの高圧室との間でポンプ・ハウジング内に取付けられている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項11】
前記中空ピストン(57)は、前記阻止部材に作用して前記フランジが前記ばねによって移動できるようにするボタンを作動させたとき、ノズルに面している中空ピストン(57)の端部で、すなわちノズルの高圧端部で、5〜60MPa(約50〜600バール)の圧力を流体に加える、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項12】
前記中空ピストン(57)は、前記阻止部材に作用して前記フランジが前記ばねによって移動できるようにするボタンを作動させたとき、ノズルに面している中空ピストン(57)の端部で、すなわちノズルの高圧端部で、10〜60MPa(約100〜600バール)の圧力を流体に加える、
請求項11に記載のアトマイザ。
【請求項13】
交換可能な流体用貯蔵容器(71)が、下方ハウジング部分(70)に配置される、
請求項1ないし12のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項14】
流体用貯蔵容器(71)が設けられ、前記貯蔵容器は製薬組成物を収容する、
請求項1ないし13のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項15】
前記貯蔵容器(71)は、ベロテック(berotec)、ベロデュアル(berodual)、フルニソライド(flunisolide)、アトロベント(atrovent)、サルビュタモール(salbutamol)、ビュデソナイド(budesonide)、コンビベント(combivent)、ティオトロピウム(tiotropium)、オキシベント(oxivent)、及び、適当なペプチドからなる群から選ばれた薬学的に受入れ可能な薬液を収容する、
請求項1ないし14のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項16】
スプレー用ガスなしに、医薬エアロゾルを発生させる、
請求項1ないし15のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項17】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の高圧で液体を噴霧するアトマイザであって、
所定体積の液体を加圧し、霧化ノズルを通して液体を放出するポンプを備え、該ポンプはシリンダ(52)と、該シリンダ内で往復動可能である管状のピストン(57)とを備え、該ピストン(57)は管状であり、このピストンの第1端部を越える入口流れ経路をシリンダへ与え、前記ピストンは逆止弁を備えており、弾性材料の頂面、膜、ストッパ又はキャップを有する液体リザーバ(71)を備え、前記頂面、膜、ストッパ又はキャップを通して前記ピストンの第2端部が突出することにより、前記吸入ストローク時に、液体を、前記液体リザーバ(71)から前記ピストンを通してシリンダに流すことができ、前記ピストンと前記液体リザーバは、ポンプが作動する時に互いに固定され、さらに、前記ピストンおよび前記シリンダを互いに対して移動させるためのポンプ往復動手段を備えている、
ことを特徴とするアトマイザ。
【請求項18】
前記ポンプ往復動手段は、ピストンに設けられたばね負荷フランジ(56)を備え、前記ばね(68)は圧縮方向にポンプを作動させ、ポンプが吸入方向に作動するときに前記ばねに張力を付与するための手段を更に備えている、
請求項17に記載のアトマイザ。
【請求項19】
前記ばね(68)に張力を付与するための手段が、アトマイザの一部分(51)を他の部分(70)に対して回転させることによって作動させられる螺旋形の、のこ歯式カムを備えている、
請求項18に記載のアトマイザ。
【請求項20】
前記ポンプ往復動手段が、加圧流体の放出前に、前記ばねを前記張力をかけられた状態に一時的に保持する手段を備え、放出は手動で操作可能なラッチによって行われる、
請求項18または19に記載のアトマイザ。
【請求項21】
少なくとも5MPa(約50バール)の圧力まで液体を加圧するようになっていることを特徴とする、
請求項17ないし20のいずれか1項に記載のアトマイザ。
【請求項22】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載のアトマイザであって、
肺の中に吸入のための薬液の霧を発生するための計量式投与吸入器であり、液滴が12マイクロメートル以下の質量平均サイズを有する、
ことを特徴とするアトマイザ。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公開番号】特開2010−138913(P2010−138913A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53741(P2010−53741)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【分割の表示】特願2007−6590(P2007−6590)の分割
【原出願日】平成8年10月4日(1996.10.4)
【出願人】(500402612)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【Fターム(参考)】