説明

アトルバスタチンヘミカルシウム溶媒和物の脱溶媒和法及び有機溶媒を本質的に含まないアトルバスタチンヘミカルシウム

【課題】本発明は、有機溶媒を含むアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶から有機溶媒を除去する方法を提供する。
【解決手段】1つの方法において、有機溶媒は、高い湿度で維持された容器内の水蒸気拡散によって置換される。第二の方法において、有機溶媒は、流動床乾燥によって除去される。本発明は、1%以下の有機溶媒しか含まないアトルバスタチンヘミカルシウムを更に提供し、これは、本発明の方法の実施によって有機溶媒含有溶液から結晶化されたアトルバスタチンヘミカルシウムから得られうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対するクロスリファレンス]
本願は、2002年2月19日に出願された米国仮特許出願第60/358,497号に対する利益を主張するものであり、これは引用によってその全体が組み入れられる。
【0002】
[本発明の分野]
本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウム、そして更に具体的には、アトルバスタチンヘミカルシウム、特にその結晶型の製造において有機溶媒の混合物と任意に水とを使用する既知の手順から得られるアトルバスタチンヘミカルシウム溶媒和物及び混合溶媒和物からの有機溶媒の除去、に関する。
【背景技術】
【0003】
結晶化は、有機化合物を精製するのに簡便で有効な技術である。結晶化による精製は、通常、不純物質を溶媒に溶解し、当該溶液のろ過によって不溶性不純物を除去し、そして当該溶液から所望の化合物を沈殿させること、を包含する。最も可溶性の不純物は、当該化合物が結晶化するにつれて成長する結晶から排除される。理想的には、可溶性の不純物は溶液中に残り、そして前記溶媒を分離し、そして前記結晶を洗浄することによって当該結晶から分離される。
【0004】
医薬のような小有機分子の大量生産では、最適な結晶化技術を開発し、そしてそれによってクロマトグラフィーのようなあまり簡便でない精製技術を回避する試みがなされる。
【0005】
通常少量で小分子量種である、結晶化において使用する溶媒の分子は、時々、結晶化の間に結晶内に取り込まれるようになる。大きな高度に枝分かれしている分子が特にこの現象を起こしやすい。ある化合物(以後「ホスト」化合物と称する)分子が溶媒(又は「ゲスト」)と共結晶化するときに得られる固体の材料は、「溶媒和物」と称される。溶媒和物によっては、ホスト化合物の分子とゲストは、一定の化学量論的比率で結晶内に取り込まれる。固体化学と材料科学の分野の研究者は、ホストとゲストの比率が変化しない結晶のために「溶媒和物」の用語を用意している。この開示において、当該用語は、これらの分野において、それが溶媒を結晶格子内に取り込んでいる任意の結晶物質を言及すると解する点でより広い意味で使用される。溶媒和物によっては、ホスト化合物対ゲストの比率は変化する。そのような溶媒和物において、当該結晶内に取り込まれた溶媒の量は、その材料を得るために使用する特定の結晶化手順及びその材料が維持される条件、例えば温度及び圧力、に依存し得る。溶媒和物は混合されることがある。言い換えると、結晶は、結晶格子内に1以上のタイプのゲスト分子を含むことがある。結晶が水の溶媒和物(水和物として知られている)及び有機溶媒の溶媒和物であってもよいということは、特に本発明に関連する。
【0006】
本発明に関連する他の関連背景情報に目を向けると、アトルバスタチンは、〔R(R* ,R* )〕−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−〔(フェニルアミノ)カルボニル〕−1H−ピロール−1−ヘプタン酸の慣用名である。アトルバスタチンは、心疾患の危険性のある患者に対し、彼等の低密度リポタンパク質レベルを低下させるために投与される。アトルバスタチンは、ヘミカルシウム塩として経口から安全に投与されうる。米国食品医薬品局に承認されたアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶型は、三水和物である。
【0007】
化学品製造業者の間では、環境的な理由で、水中で化学合成を行うことについての一般的な興味が存在しているが、今までのところアトルバスタチンは、水中で実施される反応のみを用いて合成されておらず、そして結晶化もされていない。純水溶媒中で合成を行うことが実現不可能である場合、低級アルコール溶媒が代わりとして好ましく、それは、それらが水に溶解しない低極性の物質を溶解することができ、それらの毒性が多くの他の有機溶媒と比較して低く、それらのコストが低く、そしてそれらの水溶性が高く、このことが、アルコールと水の比率を変えることによって溶媒系の特性の連続変化を可能にし、このことが広範にわたって起きうるためである。
【0008】
特許文献1は、アトルバスタチンラクトンをメタノールと水の混合物に溶解する、アトルバスタチンヘミカルシウムの調製を記載している。ほぼ1等量の水酸化ナトリウムが、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定した際にラクトンが開くまで、上記溶液に添加される。続いて、1等量又は若干過剰の塩化カルシウム二水和物(CaCl2・2H2O)を高温で添加する。当該添加が完了した後、当該溶液を冷却することによって、沈殿としてアトルバスタチンヘミカルシウムが得られる。
【0009】
特許文献2は、アトルバスタチンヘミカルシウムの別の調製方法を開示している。最初に、アトルバスタチンナトリウムを、アトルバスタチンのN,N−ジフェニルアミド類似体から、当該ラクトンの中間体の単離無しに、当該アミドをメタノールと水の混合物中で水酸化ナトリウムを用いて処理することによって製造する。ワークアップに続いて、メタノール及びアトルバスタチンナトリウムを含む水層が得られる。酢酸カルシウム(Ca(OAc)2)の水溶液が続いてこの水層に室温で添加され、そしてそのヘミカルシウム塩が続いて冷却することによって沈殿する。
【0010】
特許文献3は、アトルバスタチンヘミカルシウム結晶I型、II型及びIII型を開示している。特許文献3の3つの実施例によると、3つの各結晶型は、メタノールと水の溶液から得られる。実施例1において、アトルバスタチンナトリウムのメタノールと水の混合物の溶液が、酢酸カルシウム半水和物の水溶液を用いて処理される。I型の結晶で播種し、続いて少なくとも10分間51〜57℃に加熱し、そしてすぐ15〜40℃に冷却した後、沈殿が濾過され、エタノールと水で洗浄され、そして60〜70℃で、減圧下で4日間乾燥され、「I型アトルバスタチン」(おそらくヘミカルシウム塩)が生成する。実施例2においては、II型が、I型をメタノールと水の混合物中で懸濁することによって生成すると言われている。実施例3においては、IV型が、いくつかの変更はあるが、大体I型を製造する手順に従うことによって生成すると言われている。IV型はまた、メタノールと水の混合物からの沈殿によって得られる。
【0011】
特許文献4は、アトルバスタチンヘミカルシウムIII型を記載しており、これは、特許文献4の実施例3によると、アトルバスタチンヘミカルシウムII型を95%の相対湿度に11日間曝露することによって調製されうる。
【0012】
同一出願人による、同時継続出願の特許文献5は、アトルバスタチンヘミカルシウム結晶のVI、VIII〜XII型を開示している。当該型の幾つかは、水と低級アルコールの混合物とアトルバスタチンヘミカルシウムを接触させることによって達成されうるが、他のものは他の方法によって達成される。特に、アトルバスタチンヘミカルシウムVI型は、アセトンと水の混合物から得られる。アトルバスタチンヘミカルシウムVII型は、あるアトルバスタチンヘミカルシウムの多形相を、エタノール、好ましくは低水含量の無水エタノールで処理することによって得られる。
【0013】
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型は、様々な手順によって調節された条件のもとで調製され、上記手順の幾つかは、アトルバスタチンヘミカルシウムを低級アルコールと水の混合物と接触させることを包含する。我々の腕と計器により、VIII型は、6.9, 9.3, 9.6, 16.3, 17.1, 19.2, 20.0, 21.6, 22.4, 23,9, 24.7, 25.6,及び 26. 5±0. 2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンを作り出した。VIII型は、単斜晶の単位胞を有し、これはa= 18. 55-18.7 Å, b = 5.52-5. 53 Å, c = 31.0-31.2 Åの格子の次元及びa軸とc軸の間に97.5-99.5°の角度βを有する。VIII型は、約17.8, 20.0, 24.8, 25.2, 26.1, 40.3, 40.8, 41.5, 43.4, 44.1, 46.1, 70.8, 73.3, 114.1, 116.0, 119.5, 120.1, 121.8, 122.8, 126.6, 128.8, 129.2, 134.2, 135.1, 137.0, 138.3, 139.8, 159.8, 166.4, 178.8, 186.5ppmのシフト位置で共鳴する固体交差分極/マジック角回転(「CP/MAS」)の13C核磁気共鳴スペクトルを作り出した。再現性のある化学シフト位置を有するCP/MAS13C NMRスペクトルを得ることは、外部標準の必要性により、困難なことがある。化学シフトの差異はこの問題に苛まれない。アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の場合、最低のppmの共鳴とその他の共鳴との間のシフトの差異は、2.2, 7.0, 7.4, 8.3, 22.5, 23.0, 23.7, 25.6, 26.3, 28.3, 53.0, 55.5, 96.3, 98.2, 101. 7,102. 3,104.0, 105.0, 108.8, 111.0, 111.4, 116.4, 117.3, 119.2, 120.5, 122.0, 142.0, 148.6, 161.0及び168.7ppmである。
【0014】
更に、特許文献5によると、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型は、アトルバスタチンヘミカルシウムと、低級アルコールと水を含む希釈液との不均一な混合物から得られうる。アトルバスタチンヘミカルシウムX型は、エタノールと水の混合物から、アトルバスタチンヘミカルシウムのある結晶型を再沈殿させることによって調製されうる。アトルバスタチンヘミカルシウムXI型は、アトルバスタチンヘミカルシウムとイソプロピルアルコールから形成されるゲルから得られる。アトルバスタチンヘミカルシウムXII型は、水性溶媒中でアトルバスタチン前駆対の官能基の脱保護を行った後に得られる。
【0015】
このように、当然ながら、水と有機溶媒、特に低級アルコールとの混合物が、アトルバスタチンの調製及びヘミカルシウム塩としてのその単離において広く使用される。アトルバスタチンヘミカルシウムが、特許文献1〜3及び5において教示されているように、水と低級アルコールとの混合から結晶化される場合、水と低級アルコールとによる混合溶媒和物を形成しやすい。本発明者は、低級アルコール、例えばメタノール、エタノール及びブタン−1−オールを含む溶媒系からの結晶化によって得られるアトルバスタチンヘミカルシウムが、それらの結晶構造内に重量当たり約1%〜約5%の当該アルコールを含み得ることを発見した。
【0016】
幾つかの溶媒和物は、それらを加熱し、且つ/或いはそれらを陽圧下で維持されている容器内に据えることによって脱溶媒和することができる。ホスト分子及び材料の粒径に依存して、加熱及び/又は真空の適用による溶媒の放出し易さは、容易であることもあれば、無駄なこともあり、又はそれらの間であることもある。多くの場合、脱溶媒和は、生成物の品質に対し、化学的及び物理的の両面で、有害な作用をもたらす温度に加熱することを必要とする(これはアトルバスタチンヘミカルシウムの場合である)。尚、出発材料が混合溶媒和物であり、且つ所望の生成物が最初に存在する溶媒分子のうちの1つの溶媒和物である場合、加熱及び/又は真空への曝露は、成功するためには不所望な溶媒のみを選択的に除去しなければならない。
【0017】
加熱及び減圧が失敗する場合、ときにはより新しい技術が、混合溶媒から不所望な溶媒分子を除去するのに成功をもたらすであろう。特許文献6は、水との置換により、(−)−trans−4−(4’−フルオロフェニル)−3−(3',4‘−メテンジオキシフェノキシメチル)−ピペリジン(塩酸パロキセチン)から有機溶媒を除去するための方法を記載している。特許文献6の実施例において、様々な有機溶媒のうちのいずれかを含む塩酸パロキセチンは、有機溶媒の量を減らすために、液体の水の中で攪拌された。例えば、実施例1において、13%のプロパン−2−オールを含む塩酸パロキセチンは、水を含むビーカー内で20分間攪拌され、そして次に分離され、そして乾燥された。これにより、無水A型の塩酸パロキセチンの再結晶化が起こった。特許文献6の液体の水による置換の技術は、通常塩酸パロキセチンに適用可能なようであり、何故なら、その実施例は、パロキセチンがその技術によって広範な有機溶媒から脱溶媒和されうることを証明しているためである。しかしながら、ホスト化合物の結晶から様々な溶媒を除去するために使用されうるという意味で普通の技術は、必ずしもそれが異なるホスト化合物に適用可能であることを意味するものではない。事実、結晶の研究において、材料を操作することによって得られる結果は、しばしば直感に反する。例えば、特許文献7は、ベンズイミダゾールアルコール溶媒和物を脱溶媒和する方法であって、当該溶媒和物の懸濁液を水中で形成することを含んで成る方法を開示する。その最終生成物は、実質的にアルコールを含まないだけでなく、実質的に水も含まない。別の例として、水和物として、1%未満の水しか含まない極性溶媒から沈殿する酢酸コルチゾンがある。しかしながら、水分量を1%超に増やすことは、無水酢酸コルチゾンの形成に好ましい。非特許文献1を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5,273,995号明細書
【特許文献2】米国特許第5,298,627号明細書
【特許文献3】米国特許第5,969,156号明細書
【特許文献4】米国特許第6,121,461号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0183378号明細書
【特許文献6】米国特許第6,080,759号明細書
【特許文献7】米国特許第6,002,011号明細書
【特許文献8】米国特許第4,444,129号明細書
【特許文献9】米国特許第4,624,058号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Carless, J. E. et. al J. Pharm. & Pharmacol. 1966, 18, 190S-197S
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
アトルバスタチンヘミカルシウム溶媒和物及び有機溶媒と当該有機成分の水との混合溶媒和物を遊離させる方法をここに開示する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第一の側面において、本発明は、有機溶媒を含むアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶から有機溶媒を除去する方法を提供する。本発明の1つの方法において、有機溶媒は、結晶を水蒸気に曝露することによって水と置換される。この置換方法の特に好ましい態様において、有機溶媒を含むアトルバスタチンヘミカルシウムは、約50ppm以下の有機溶媒含量が得られるまで、周囲温度の水で飽和した雰囲気に曝露される。本発明はまた、ガス流のもと結晶を流動化することによってアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶から有機溶媒を除去するための穏やかな熱処理方法を提供する。
【0022】
第二の側面において、本発明は、本質的に有機溶媒を含まないアトルバスタチンヘミカルシウムを提供する。本明細書に開示する方法を実施することによって、アトルバスタチンヘミカルシウム及びその水和物は、本発明の好ましい態様に従う場合、1%以下、そして約0.5%以下、更には約50ppm以下の有機溶媒含量で得ることができる。
【0023】
尚、本発明は、本質的に有機溶媒を含まないアトルバスタチンヘミカルシウムを含む医薬組成物及び剤形並びに、当該組成物及び剤形を投与することによって患者の低密度リポタンパク質レベルを低下させる方法、を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、溶媒和エタノールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の固体CP/MAS13C NMRスペクトルの0〜60ppm両域を示す。
【図2】図2は、図1のスペクトルが得られた試料と同一の製造ロットから採ったアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の試料の固体CP/MAS13C NMRスペクトルの0〜60ppm両域を示す。当該試料は、このスペクトルをとる前に、18日間100%の湿度の雰囲気に曝露された。このスペクトルと図1の15.9ppmと57.4ppmの比較は、エタノールの効率的な除去を証明している。
【図3】図3は、本発明の方法に従いエタノールの脱溶媒和をする前後に最初に含まれたアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の1つの目的は、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムから有機溶媒を除去する方法を提供することである。本発明の別の目的は、水と有機溶媒とを含む結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムの混合溶媒和物から選択的に有機溶媒を除去する方法であって、その過程でアトルバスタチンの深刻な分解を引き起こさない方法を提供することである。そのような混合溶媒和物は、有機溶媒と水の混合物からのアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶化によって製造される。本発明の目的は、十分に湿度のある雰囲気のもとでのアトルバスタチンヘミカルシウムの溶媒和物及び混合溶媒和物と水蒸気との接触が、アトルバスタチンヘミカルシウムの本質的に純粋な水和物を残して、実質的に有機溶媒を除去するという本発明者の発見によって実現した。
【0026】
したがって、本発明は、有機溶媒を含む結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムを脱溶媒和する方法を提供する。本発明はまた、水と有機溶媒とを含むアトルバスタチンヘミカルシウムの混合溶媒和物から選択的に有機溶媒を脱溶媒和する方法を提供する。そのような溶媒和物は、本明細書でこれまで論じたようなアトルバスタチンヘミカルシウム、特にその結晶型を製造するための既知の方法の生成物である。アトルバスタチン及びアトルバスタチンヘミカルシウムの調製方法を開示している特許文献1及び2は、引用によってそれらの全体が組み入れられる。アトルバスタチンヘミカルシウムの特定の結晶型及びそれらの生成方法を記載している特許文献2及び3並びに特許文献5も、引用によってそれらの全体が組み入れられる。
【0027】
有機溶媒は、25℃で液体の、少なくとも1つの炭素原子を含む分子である。本発明の脱溶媒和法によって混合溶媒和物から除去されうる有機溶媒の例には、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール及び2−メチルプロパン−1−オール;エーテル、例えばジエチルエーテル及びメチルt−ブチルエーテル;N,N−ジアルキルアミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド;ケトン、例えばアセトン及びブタノン;ジアルキルスルホキシド、例えばジメチルスルホキシド;等が含まれる。
【0028】
本発明の方法によると、既知の又はまだ発見されてない、任意の結晶性多形相のアトルバスタチンヘミカルシウムの溶媒和物又は混合溶媒和物である出発材料が提供される。好ましい出発材料は、アトルバスタチンヘミカルシウムIII〜VII型であり、VIII型及びIX型が特に好ましい。当該出発材料は、容器の内部空間が容器の外側の局所的雰囲気の相対湿度よりも高い相対湿度の水蒸気を含む容器内で、水蒸気と接触させられる。接触は、当該出発材料から実質的に全ての有機溶媒を除去を達成するのに十分な期間維持される。そのようにして形成した生成物は、本質的に有機溶媒を含まないアトルバスタチンヘミカルシウム又はその水和物であり、これは続いて当該容器から回収される。アトルバスタチンヘミカルシウムは、本発明の好ましい態様に従う場合、約1%以下、そして約0.5%以下、更には約50ppm以下(ppm=105(重量%))の有機溶媒を含むものが回収され得る。当該生成物は、医薬生成物を調製するために直接的に使用されることがあり、あるいは、それを更なる処理、例えば顆粒化、ミル粉砕等にかけてもよい。
【0029】
当該方法の好ましい態様において、アトルバスタチンヘミカルシウムの混合溶媒和物は、内部空間が約60%〜約90%の相対湿度で維持されている容器内で、水蒸気と接触される。大気の水分含量の尺度としての相対湿度は温度に依存する。本発明の方法は、好ましくは約20℃〜約100℃、更に好ましくは約40℃〜約60℃の温度で実施される。好ましい湿度及び温度範囲内で本発明を実施することによって、数ppmまで低下した有機溶媒のレベルが、少なくて6時間から最大で数日の期間で達成されうる。有機溶媒の最終レベルは、除去しなければならない有機溶媒、そして選択した相対湿度、温度及び接触時間に依存するであろう。
【0030】
置換方法の特に好ましい態様において、混合溶媒和物は、25±3℃で、水で飽和した雰囲気(100%の相対湿度)のもと、約4〜約18日間水蒸気と接触される。当初2.5%のエタノール不純物の含量は、これらの条件下で50ppm未満に低下されうる。
【0031】
当該方法の有効性は、複数の解析技術によって徹底的に評価された。実施例1では、アトルバスタチンヘミカルシウムのVIII型を使用した。図1は、出発材料の固体13C CP/MASスペクトルの関連領域を示す。エタノールのCH3CH2OH及びCH3CH2OHの炭素についての共鳴は、それぞれ15.9及び57.4ppmの化学シフトで観察される。出発材料を100%の相対湿度の雰囲気のもと周囲温度で18時間維持した後、当該結晶のエタノール含量は、図2に見られるように、検出限界を超えて減少した。
【0032】
実施例1〜3においては、当該脱溶媒和法にかけた後に結晶中に残る有機溶媒の量は、ヘッドスペース技術(後述)を用いるガスクロマトグラフィーによって測定された。実施例2及び4においては、エタノールはガスクロマトグラフィーによって生成物中で検出不可能であった。この技術の検出限界は、約50ppmであることが判明している。
【0033】
特に、我々の方法による結晶の脱溶媒和は、必ずしも結晶の多形転移を引き起こさない。例えば、実施例3において、3重量%のエタノールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型が脱溶媒和された。VIII型のPXRDスペクトルを脱溶媒和の前後にとった。PXRDは、特定の結晶型のフィンガープリントのようなものである。本質的に、2つと同じものはなく、それ故にPXRDは他の技術、例えば赤外分光光度法と比較して、多形の同一性を高度に立証する。図3を参照すると、脱溶媒和前後のアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型のPXRDパターンの比較は、出発材料と生成物とが同一の結晶構造を有することをはっきりと示している。この結果は、アトルバスタチンヘミカルシウムII型が95%の相対湿度への曝露によってIII型に変態したという特許文献4の実施例3で達成された結果と対比されるべきである。特許文献4の図1の、特許文献3の図2との比較は、II型とIII型とが同一でないことを示している。その結果、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型、IX型、又は他の型と水蒸気との、本発明者の条件下での接触が、IV型への変態を誘導しないことは予想されていない。本発明の方法が、多形変態を引き起こさずに、アトルバスタチンヘミカルシウム多形の代表的な選択を用いて有効であることが証明されたので、当該方法は、アトルバスタチンヘミカルシウムの全ての結晶型に広く適用可能であると考えられ、但し、II型は、出発材料が湿度のある雰囲気のもとで多形転移を受けるという独特の例である。
【0034】
この蒸気交換法は、例えば、濾過によるような、過剰な置換溶媒のその後の除去を必要としないので都合がよい。重大なことに、有機溶媒の水との交換は、有機溶媒を含むアトルバスタチンヘミカルシウムが液体の水と接触される場合には起こらない。たとえそれが起こっても、水中で当該結晶をスラリー化することにより、濾過及び乾燥のようなその後の操作が必要とされ、これらの幾つかは、材料のある程度の損失を常に伴う。尚、患者の体内に摂取されることになっている化合物をスラリー化するために使用される水は、徹底的に純粋でなければならないが、蒸発が水を浄化する役割を果たすので、普通の水道水が水蒸気を生成するために使用されてもよい。
【0035】
アトルバスタチンヘミカルシウムの溶媒和物及び混合溶媒和物から有機溶媒を除去する目的は、本発明者が発見した、より穏やかな条件を使用し、従来の熱処理技術よりも時間を必要としない熱処理法によって実現した。本発明の熱処理法によると、アトルバスタチンヘミカルシウムの水性/有機性混合溶媒和物は、当該有機溶媒を遊離するのに有効な条件のもと、ガス流下で流動化される。流動床法は、アトルバスタチンヘミカルシウムの任意の水性/有機性混合溶媒和物を選択的に脱溶媒和するのに有効である。結晶性アトルバスタチンヘミカルシウム、例えばVIII型及びIX型は、特にこの好ましい出発材料であるが、任意の結晶型の水性/有機性混合溶媒和物も適当な出発材料である。
【0036】
顆粒材料を乾燥させる流動床の装置は市販されており、そして説明されている。例えば、特許文献8及び特許文献9の記載を参照のこと。これらは、引用によってそれらの全体が本明細書に組み入れられる。流動床乾燥機は、一般的な原理で作動する。乾燥される材料は、チャンバーの内部の、穴のあいた、月並みに平らの、又はボール形の支持体上に載せられる。高温ガスが穴のあいた支持体の下のチャンバーないに導入され、そして穴を介して乾燥される材料を通過される。材料の流動床を通過して流れる高温ガスは、それを「流動化」し、あるいは、換言すると、重力と高温ガスの上方への動きとの間で平衡がとれた連続的な動きの中で粒子を維持する。高温ガスは、最終的にチャンバーから最高位で放出される。流動床乾燥機は、本発明の方法に関連する以下の操作パラメーターを共有する:ガスインレット温度及び流動床を通過するガスの流れ。
【0037】
アトルバスタチンヘミカルシウムの熱処理乾燥のためのインレットガス流は、好ましくは結晶を流動化するのに十分な速度で、結晶の床の下に流され、前記流速は、装置ごとに変化するが、当業者によって直ちに決定可能なものである。好ましくは、インレットガス温度は、約30℃〜約70℃であり、更に好ましくは、約40℃〜約60℃である。有効な流動化及び好ましい範囲内でのガス流温度により、約3〜5%のエタノールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムが、約6〜8時間のうちに約0.2%以下に脱溶媒和されうる。ブタン−1−オールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムは、更に時間を必要とし、24時間以上であれば通常十分である。
【0038】
本発明の第二の目的は、I型以外の、有機溶媒を本質的に含まないアトルバスタチンヘミカルシウム又はその水和物を提供することにある。好ましい水和物は、4.5±1重量%の水及び約2重量%未満の有機溶媒、更に好ましくは約1重量%未満の有機溶媒、そして更に好ましくは約50ppm未満の有機溶媒を含む三水和物である。本発明の第二の目的は、そのような低有機溶媒含量のアトルバスタチンヘミカルシウムを生成する本発明の脱溶媒和法の発見によって実現された。
【0039】
本発明の本質的に純粋なアトルバスタチンヘミカルシウム水和物は、HMG−CoA還元酵素を阻害し、且つ哺乳類患者、特にヒトの低密度リポタンパク質レベルを低下させるのに有用である。これらの目的のために、それらは、ヒト及び動物への投与のために、種々の組成物へと調製されうる。
【0040】
本発明の医薬組成物は、本質的に純粋なアトルバスタチンヘミカルシウム水和物又はその混合物を含む。その活性成分に加え、本発明の医薬組成物は、1又は複数の賦形剤を含むことがある。賦形剤は、様々な目的のために前記組成物に添加される。
【0041】
希釈剤は、固体の医薬組成物のかさを増し、そして患者及び介護者にとってより取り扱いやすい当該組成物含有医薬剤形を作ることができる。固体組成物のための希釈剤には、例えば微結晶セルロース(例えばAvicel(商標))、マイクロファインセルロース、ラクトース、デンプン、あらかじめゼラチン化したデンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリラート(例えば、Eudragit(商標))、塩化カリウム、粉末セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール及びタルクが含まれる。
【0042】
錠剤のような剤形に圧縮される固体の医薬組成物は賦形剤を含むことがあり、この機能は、圧縮後に活性成分と他の賦形剤とを一緒に結合させるのを助ける。固体の医薬組成物のための結合剤には、例えば、アカシア、アルギン酸、カルボマー(例えばカルボポール)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアールガム、硬化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocel(商標))、液体グルコース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリラート、ポビドン(例えば、Kollidon(商標))、Plasdone(商標))、あらかじめゼラチン化したデンプン、アルギン酸ナトリウム及びデンプン、が含まれる。
【0043】
圧縮した固体医薬組成物の患者の胃の中での溶解速度は、当該組成物への崩壊剤の添加によって増大しうる。崩壊剤は、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、Ac−Di−Sol(商標)、Polyplasdone(商標))、グアールガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポラクリリン(polacrilin)カリウム、粉末セルロース、あらかじめゼラチン化したデンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、Explotab(商標))及びデンプンが含まれる。
【0044】
流動促進剤は、非圧縮型固体組成物の流動性を改善し、且つ投与の正確性を改善するために添加され得る。流動促進剤として機能し得る賦形剤には、例えばコロイド状ニ酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルク及び第三リン酸カルシウムが含まれる。
【0045】
剤形、例えば錠剤が、粉末の組成物の圧縮によって作られる場合、当該組成物は、打ち抜き鏨と鋳型からの圧力にかけられる。いくつかの賦形剤及び活性成分は、打ち抜き鏨と鋳型の表面に付着しやすく、これは生成物に穴をあけ、そして他の表面を不規則にしうる。滑剤が当該組成物に添加されることもあり、その結果生成物の接着及び鋳型からの放出し易さが低下する。滑剤には、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、硬化ヒマシ油、硬化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ナトリウムステアリル、ステアリン酸、タルク及びステアリン酸亜鉛、が含まれる。
【0046】
香味剤及び香味増強剤は、当該剤形を患者にとってより口当たりよくする。本発明の組成物内に含められ得る医薬製品とって一般的な香味剤及び香味増強剤には、例えばマルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール、及び酒石酸が含まれる。
【0047】
固体及び液体の組成物は更に、それらの外観を改善し、且つ/或いは当該製品と単位投与量の患者の識別を容易にするために、任意の医薬として許容される着色剤を用いて着色され得る。
【0048】
本発明の液体の医薬組成物において、本質的に純粋なアトルバスタチンヘミカルシウム水和物、及び任意な他の固体の賦形剤が、液体担体、例えば水、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセリン中で溶解又は懸濁される。
【0049】
液体の医薬組成物は、当該組成物全体に、液体担体中で不溶性の活性成分又は賦形剤を均一に分散させるために、乳化剤を含むことがある。本発明の液体組成物中で有用であり得る乳化剤には、例えばゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アカシア、トラガカント、コンドラス、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコール及びセチルアルコール、が含まれる。
【0050】
本発明の液体医薬組成物は更に、当該製品の食感を改善し、且つ/或いは胃腸管の内膜をコーティングするために、増粘剤を含んでもよい。当該増粘剤は、例えば、アカシア、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム又はナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチングアールガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、プロピレンカーボネート、アルギン酸プロピレングリコール、デンプングリコール酸ナトリウム、スターチトラガカント(starch tragacanth)及びキサンタンガム、が含まれる。
【0051】
甘味剤、例えばソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール及び転化糖が、風味を改善するために添加されることもある。
【0052】
保存剤及び錯化剤、例えばアルコール、安息香酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール及びエチレンジアミン四酢酸が、保存性を改善するために、摂取しても安全なレベルで添加されることもある。
【0053】
本発明に従う液体組成物はまた、緩衝液、例えばグコン酸(guconic acid)、クエン酸又は酢酸、グコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム又は酢酸ナトリウム、を含んでもよい。
【0054】
賦形剤及び使用量の選択は、製剤学者によって、経験及び標準的な技術の考慮及びこの分野の参考資料をもとに容易に決定されうる。
【0055】
本発明の固体組成物には、粉末、顆粒、凝集物及び圧縮組成物が含まれる。投与量には、経口、頬側、非経口(皮下、筋肉内、及び血管内を含む)、吸入及び経眼の投与に適した投与量が含まれる。最も適した経路は、いかなる場合においても、処置される症状の性質及び重症度に依存するが、本発明の最も好ましい経路は経口である。投与量は、簡便的に単位剤形で提示され、そして医薬業界で周知の方法のいずれかによって調製されうる。
【0056】
剤形には、固体剤形、例えば錠剤、粉末、カプセル、座薬、サチェット、トローチ及びロゼンジ、並びに液体シロップ、懸濁液及びエリキシルが含まれる。
【0057】
本発明の剤形は、本発明の組成物、好ましくは本発明の粉末化又は顆粒化固体を硬い又は柔らかい覆いの中に含むカプセルである。当該覆いはゼラチンから作られることもあり、そして任意に可塑剤、例えばグリセリン及びソルビトールと、不透明剤及び着色剤を含む。
【0058】
活性成分及び賦形剤は、当業界で知られている方法に従い、組成物及び剤形へと調製されうる。
【0059】
錠剤化又はカプセルの充填のための組成物は、湿式顆粒化によって調製されうる。湿式顆粒化において、幾つか又は全ての粉末状の活性成分及び賦形剤が配合され、続いて更に液体、典型的には水の存在下で混合され、これにより粉末が顆粒へと凝集する。顆粒はスクリーニングされ、且つ/或いはミル粉砕され、乾燥され、続いてスクリーニングされ、且つ/或いは所望の粒径にミル粉砕される。顆粒は続いて錠剤化されることもあり、あるいは他の賦形剤が錠剤化の前に添加されることもあり、これは例えば流動促進剤及び/又は滑剤である。
【0060】
錠剤化組成物は、通常の乾式配合によって調製されうる。例えば、活性成分と賦形剤を配合した組成物は、スラッグ又はシートに圧縮され、続いて圧縮顆粒に微粉砕されうる。圧縮顆粒は、その後錠剤に圧縮されうる。
【0061】
乾式顆粒化の代わりとして、配合した配合物が、直接的な圧縮技術を用いて圧縮剤形へと直接圧縮されてもよい。直接圧縮は、顆粒の無いより均一な錠剤を作る。直接圧縮の錠剤化に特に適している賦形剤には、微結晶セルロース、スプレー乾燥化ラクトース、リン酸二カルシウム二水和物及びコロイド状シリカが含まれる。直接圧縮の錠剤化における、これらと他の賦形剤の適切な使用は、直接圧縮の錠剤化の経験と技術を備えた、特に製剤化に挑戦している当業者に知られている。
【0062】
本発明のカプセル充填は、錠剤化に関して記載した前述の配合及び顆粒のいずれかを含んで成ることもあるが、但し、それらは最終の錠剤化段階にはかけられない。
【0063】
カプセル、錠剤及びロゼンジ及び他の単位剤形には、好ましくは約10〜約80mgの
投与量レベルの本質的に純粋なアトルバスタチンヘミカルシウム水和物が含まれる。他の投与量も必要に応じて投与されうる。
【0064】
このように幾つかの好ましい態様に関して本発明を説明してきたが、本発明は、以下の実施例によって更に例示される。これらの実施例は、単に例示目的で提示されるのであり、当該実施例に続く特許請求の範囲によって定義される本発明を何ら限定するものではない。
【0065】
[方法論]
以下の実施例において、本発明の脱溶媒和法にかけられたアトルバスタチンヘミカルシウム結晶の有機溶媒含量は、ヘッドスペース技術を用いるガスクロマトグラフィーによって解析した。試料は、ジメチルスルホキシド中で溶解して100mg/mlの溶液にした。Hewlett Packard HP-5890及びHP-6890ガスクロマトグラフを使用した。当該クロマトグラフは、極性のUSP G43固定相、又はその等価物、及び高極性のPEG固定相の媒体を含むメガボアカラムを備えていた。それぞれ、FID検出器及び、Combi Pal-CTC Analyticsガスシリンジ系又はHewlett Packard 7694圧力/ループ系のいずれかを有していた。
【0066】
固体13C CP/MAS NMRスペクトルは、BL−4 CP/MASプローブヘッド及び固体用高分解能/高性能1Hプレアンプを備えたBruker DMX-500デジタルFT NMR分析計上で、125.76MHzで、周囲温度で得られた。試料は、4mmのジルコニアローター内に据え、そして5.0kHzで回転させ、そしてスピンサイドバンドが、SELTICSパルス配列を用いてスペクトルから除かれた。
【0067】
PXRD解析は、常用の銅照射を用いて、当業界で知られている方法により、固体検出器を備えたSCINTAG粉末X線回折装置X’TRA型上で実施された。銅放射(λ)=1.4518Åを使用した。測定範囲は、2〜40°2θであった。スキャン速度は3°/分であった。
【実施例1】
【0068】
エタノールと水の混合物からの再結晶化によって得られた結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(500mg)は、出発材料として使用した。出発材料は、2.5重量%のエタノールを含んでいた。出発材料は、4cmの直径のディッシュの平らな上面全体に広げられた。ディッシュは、周囲温度で維持された100%の相対湿度のチャンバー内に18日間据えられた。アトルバスタチンヘミカルシウムが集められ、そしてそのエタノール含量が、ヘッドスペース技術を用いたガスクロマトグラフィーによって測定された。エタノール含量は、50ppm未満であることが明らかとなった。
【実施例2】
【0069】
エタノールと水の混合物からの再結晶化によって得られた結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(500mg)は、出発材料として使用した。出発材料は、2.5重量%のエタノールを含んでいた。出発材料は、4cmの直径のディッシュの平らな上面全体に広げられた。ディッシュは、周囲温度で維持された100%の相対湿度のチャンバー内に4日間据えられた。アトルバスタチンヘミカルシウムが集められ、そしてそのエタノール含量が、ヘッドスペース技術を用いたガスクロマトグラフィーによって測定された。エタノールは検出されなかった。
【実施例3】
【0070】
3%エタノールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(30g)は、スターラーを備えた真空容器内で、湿度のある雰囲気で、40℃で5時間混合された。当該雰囲気を湿らせるために、水蒸気がアトルバスタチンヘミカルシウムを含む容器から流された。得られたアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型は、0.7%のエタノールを含んでいた。
【実施例4】
【0071】
約50重量%の水を含むアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(18g)を、流動床乾燥機内で7時間60℃で懸濁した結果、ヘッドスペース技術を用いたガスクロマトグラフィーによって測定した場合に検出不可能なレベルの残留エタノールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムが得られた。
【実施例5】
【0072】
3%エタノールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(50g)を、流動床乾燥機内で7時間60℃で懸濁した結果、0.2%の残留エタノール含量及び3.1%の水分含量を有する化学的に純粋なアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型が得られた。
【実施例6】
【0073】
約4.5重量%のブタン−1−オールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムIX型(12g)を、流動床乾燥機内で24時間55℃で乾燥した結果、約1.5重量%のブタン−1−オールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムIX型が得られた。
【実施例7】
【0074】
約5.5重量%のブタン−1−オールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムIX型(12g)を、流動床乾燥機内で6時間50℃で乾燥した結果、約3.8重量%のブタン−1−オールを含むアトルバスタチンヘミカルシウムIX型が得られた。
【0075】
このように幾つかの好ましい態様に関して本発明を説明し、そしてこれを実施例により更に例示してきたが、当業者であれば、十分に記載されていなくても本発明によって教示され、そして着想される置換物及び等価物を理解するであろう。一方、そのような置換物及び等価物は本発明の精神を逸脱しないが、それらは以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と有機溶媒とを含むアトルバスタチンヘミカルシウムの混合溶媒和物から選択的に有機溶媒を脱溶媒和する方法であって、
a)結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムがアトルバスタチンヘミカルシウムII型以外であり、且つ混合溶媒和物が水と有機溶媒とを含む、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムの混合溶媒和物を準備し、
b)内側が、40%〜100%の相対湿度に維持されている容器内で、混合溶媒和物と水蒸気とを接触させ、そして
c)1重量%以下の有機溶媒を含む結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムの水和物を回収すること、
を含んで成る方法によって調製される、1%以下の有機溶媒を含むIII型以外のアトルバスタチンヘミカルシウム。
【請求項2】
50ppm以下の有機溶媒を含む、請求項1に記載のアトルバスタチンヘミカルシウム。
【請求項3】
1%以下の有機溶媒を含む、III型以外の結晶性アトルバスタチンヘミカルシウム水和物。
【請求項4】
50ppm以下の有機溶媒を含む、請求項3に記載の結晶性アトルバスタチンヘミカルシウム水和物。
【請求項5】
請求項3に記載の結晶性アトルバスタチンヘミカルシウム水和物と、医薬として許容される担体とを含んで成る医薬組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の医薬組成物を含んで成る剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−235100(P2009−235100A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169170(P2009−169170)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【分割の表示】特願2003−569575(P2003−569575)の分割
【原出願日】平成15年2月19日(2003.2.19)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】