アナログデジタル変換器
【課題】書面に垂直方向に対して傾斜した光路で受光することで、書面の走査位置またはその直前(直後)を常に目視可能とする。
【解決手段】レンズ系を介して書面2からの反射散乱光を1次元イメージセンサに受光することで主走査を行い、書面2を被覆したハウジング1を手送り移動することで副走査を行う図面イメージの入力手段において、該ハウジング1内の上部に装着され、その受光面が図面と平行になるように設定された1次元イメージセンサと、書面2に垂直でセンサ列方向軸を含む平面に対して傾斜し、かつ該センサ列方向軸と直交した光路面を構成するレンズ系とを備え、該ハウジング1の被覆側端部で主走査する。
【解決手段】レンズ系を介して書面2からの反射散乱光を1次元イメージセンサに受光することで主走査を行い、書面2を被覆したハウジング1を手送り移動することで副走査を行う図面イメージの入力手段において、該ハウジング1内の上部に装着され、その受光面が図面と平行になるように設定された1次元イメージセンサと、書面2に垂直でセンサ列方向軸を含む平面に対して傾斜し、かつ該センサ列方向軸と直交した光路面を構成するレンズ系とを備え、該ハウジング1の被覆側端部で主走査する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD(アナログ・デジタル)変換器に関連し、特に差動逐次比較型AD変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、比較的簡単な回路構成で実現され、比較的安価に製造できるCMOSプロセスとの整合性が高く、かつ中庸の変換時間と中庸の変換精度を実現できる、製品用途の広いAD変換器として、逐次比較型AD変換器が知られている。これら逐次比較型AD変換器の従来回路として、例えば、特許文献1−5および非特許文献1、2に示される回路が知られている。
【0003】
《電荷再分配型AD変換器の例1》
図19は、これらの中で代表的な、電荷再分配型AD変換器の差動容量DAC(デジタルアナログコンバータ)を示している。なお、非特許文献1に同様の回路が示されている。
【0004】
図19のSW1からSW18はスイッチを、C1からC12は容量(容量のみ組合わせを容量アレイともいう)を、VINPは+側(正、正相ともいう)のアナログ入力を、VINNは−側(負、逆相ともいう)のアナログ入力を、COMP1はコンパレータを、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(5V)を、Vrefnは−側の基準電位(0V)を、R1、R2は抵抗を、BUF1はバッファアンプを、CINP、CINNはコンパレータ入力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位を、COUT1はコンパレータの出力を、VIC、VICBは説明のために与えた内部のノード名を、(+)側容量DACはC1からC6の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12の容量アレイで構成されるDACを、示す。
【0005】
C1からC12に併記されたnC(nは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C、に示されるように2進に重み付けがされている。図19のC1からC12が4ビットDACを構成している。
【0006】
図19に図示されるスイッチの状態は、サンプリング時の状態を示しており、サンプリング時には、容量C1からC6に+側アナログ入力VINPの電位が充電され、容量C7からC12に−側アナログ入力VINNの電位が充電される。
【0007】
サンプリング時には、電圧ホロワであるバッファアンプBUF1の出力は、SW17およびSW18を通じてトッププレートTOP+およびTOP−に接続される。すなわち、SW17、SW18は閉じている。また、R1、R2により、ノードVICの電位は、VINPの電位とVINNの電位の中間の電位となる。ノードVICBの電位も電圧ホロワ(BUF1)によりVICの電位と等しくなる。VINPの電位とVINNの電位を、それぞれ、VINP、VINNで表わすと、VICBの電位は(VINP+VINN)/2となる。
【0008】
サンプリング時に、スイッチSW17、SW18が閉じているので、+側トッププレートTOP+と−側トッププレートTOP−の電位は、ともに(VINP+VINN)/2となる。
【0009】
このとき、コンパレータCOMP1の差動入力端子は、スイッチSW13、SW14によりともにバイアス電位VCMを供給される。すなわち、サンプリング時には、SW13、SW14はクローズ(導通)されている。また、トッププレートTOP+およびTOP−は、コンパレータCOMP1の差動入力端子とは、スイッチSW15およびSW16により遮断されている。すなわち、サンプリング時には、SW15、SW16はオープン(開放)されている。
【0010】
C1からC6で構成される(+)側容量DACのトッププレートTOP+に蓄えられる電荷QSAMPPは、式(1)で表わされる(C1からC6の合計容量を32Cで、表わす)。
【0011】
QSAMPP=−32C(VINP−(VINP+VINN)/2);
QSAMPP=−32C(VINP−VINN)/2; 式(1)
C7からC12で構成される(−)側容量DACのトッププレートTOP−に蓄えられる電荷QSAMPNは、式(2)で表わされる。
【0012】
QSAMPN=−32C(−VINP+VINN)/2; 式(2)
つまり、サンプリング時のトッププレートTOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2としておくことで、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。
【0013】
サンプリング終了後、SW13、SW14、SW17、SW18を開放し、SW15、SW16を閉じる。SW1からSW12を切り替えることで、C1からC12のボトムプレート(SW1からSW12につながる電極側)の電位を、Vrefp、Vrefn、のいずれかに変化させて、サンプリングしたアナログ電位差(VINPマイナスVINN)に対応したデジタルコードを、COUT1を利用しながら比較、検索する。以下、検索の手順の例について簡単に説明する。
【0014】
<符号ビットの決定>
まず、SW6をVrefpに、SW1からSW5をVrefnにつなぐ。C1からC5の合計容量16Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C6の容量16Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。式(1)の(+)側トッププレート(TOP+)に蓄えられる電荷QSAMPPが保存されるので、このときの(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpは、式(3)、式(4)で与えられる。
【0015】
−16C(Vrefp−Vtp)+16C(Vtp−Vrefn)
=−32C(VINP−VINN)/2; 式(3)
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2; 式(4)
【0016】
(−)側容量DACのスイッチは、(+)側容量DACのスイッチと対称に操作する。SW12をVrefnに、SW7からSW11をVrefpにつなぐ。C7からC11の合計容量16Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C12の容量16Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。式(2)の(−)側トッププレート(TOP−)に蓄えられる電荷QSAMPNが保存されるので、このときの(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnは、式(5)、式(6)で与えられる。
【0017】
−16C(Vrefp−Vtp)+16C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(5)
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2; 式(6
)
【0018】
つまり、VINP−VINN>0の場合、Vtp<Vtnとなり、VINPとVINNのどちらが高い電位かを判定することができる。図19の回路は、符号を含めた差動信号を扱える回路なので、この最初の比較で符号ビットを決定することができる。
【0019】
また、このとき、(+)側トッププレートTOP+の電位Vtpと、(−)側トッププレートTOP−の電位Vtnのコモン電位は、(Vrefp+Vrefn)/2となり、リファレンス電位の中心の電位とでき、コンパレータにとって最も動作余裕を大きく設定できる。ここで、コモン電位とは、差動入力の中心電位という意味である。
【0020】
<MSB(最上位ビット)の決定>
以下、説明を簡単にするために、VINP−VINN>0の場合(符号が+の場合)を考える。
【0021】
VINP−VINN>0の場合、SW6をVrefpに、SW12をVrefnにつなぐ。(+)側容量DACのスイッチSW1からSW5は、対応するデジタルコードが1ならVrefpに、対応するデジタルコードが0ならVrefnにつながれる。(−)側容量DACのスイッチSW7からSW11は、対応するデジタルコードが1ならVrefnに、対応するデジタルコードが0ならVrefpにつながれる(VINP−VINN>0の場合、SW1はVrefnにつながれ、SW7はVrefpにつながれる)。したがって、(+)側容量DACと、(−)側容量DACとは、同一のデジタルコードに対して対称に+側基準電位Vrefpまたは−側基準電位Vrefnにそれぞれ接続されることになる。
【0022】
以下、(符号ビットを除く)最上位ビットの決定について説明する。SW6をVrefpに、SW1からSW4をVrefnに、SW5をVrefpにつなぐ。C1からC4の合計容量8Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C5、C6の合計容量24Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。式(1)の(+)側トッププレートTOP+に蓄えられる電荷QSAMPPが保存されるので、このときの(+)側トッププレートTOP+の電位Vtpは、式(7)、式(8)で与えられる。
【0023】
−24C(Vrefp−Vtp)+8C(Vtp−Vrefn)=−32C(VINP−VINN)/2; 式(7)
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2+(Vrefp−Vrefn)/(2×2); 式(8)
【0024】
SW12をVrefnに、SW7からSW10をVrefpに、SW11をVrefnにつなぐ(なお、SW7は、2の補数を生成する場合に、−側基準電位Vrefnに接続される)。C7からC10の合計容量8Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C11、C12の合計容量24Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。式(2)の(−)側トッププレートTOP−に蓄えられる電荷QSAMPNが保存されるので、このときの(−)側トッププレートTOP−の電位Vtnは、式(9)、式(10)で与えられる。
【0025】
−8C(Vrefp−Vtp)+24C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(9)
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2−(Vrefp−Vrefn)/(2×2); 式(10)
【0026】
このトッププレートの電位がコンパレータの差動入力CINP、CINNになる。その差電位Vtp−Vtnを考えると、式(11)が得られる。
【0027】
Vtp−Vtn=−(VINP−VINN)+(Vrefp−Vrefn)/2;
式(11)
つまり、入力電位差VINP−VINNと、リファレンス電位差(Vrefp−Vrefn)を1/2倍した値との大小関係をコンパレータCOMP1により判定することができる。
【0028】
<MSBの次のビット以降の処理>
以上により、MSB(Most Significant Bit)に相当するSW5、SW11に対応するデジタルコードが決定できる。次に、スイッチSW4、SW10に対応するコード(符号ビットを除いて、2番目の上位ビット)の決定について説明する。
【0029】
仮にSW5、SW11に対応するデジタルコードが0に決定し、(VINP−VINN)は(Vrefp−Vrefn)/2より小さかったとする。この場合、(VINP−VINN)と(Vrefp−Vrefn)/4とを比較し、その大小関係を調べて、(VINP−VINN)の値の範囲を狭めていく。
【0030】
具体的には、(+)側容量DACにおいて符号ビットに対応するSW6をVrefpに、SW1からSW3、およびMSBに対応するSW5をVrefnに、SW4をVrefpにつなぐ。C1からC3、C5の合計容量12Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C4、C6の合計容量20Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。このときの(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpは、式(12)、式(13)で与えられる。
【0031】
−20C(Vrefp−Vtp)+12C(Vtp−Vrefn)=−32C(VINP−VINN)/2 式(12)
【0032】
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2+(Vrefp−Vrefn)/(2×4) 式(13)
【0033】
また、(−)側容量DACにおいては、(+)側容量DACと対称な接続をする。すなわち、符号ビットに対応するSW12をVrefnに、SW7からSW9、SW11をVrefpに、MSBに相当するSW10をVrefnにつなぐ。C7からC9、およびC11の合計容量12Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C10、C12の合計容量20Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。このときの(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnは、式(14)、式(15)で与えられる。
【0034】
−12C(Vrefp−Vtp)+20C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(14)
【0035】
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2−(Vrefp−Vrefn)/(2×4); 式(15)
【0036】
このトッププレートの電位がコンパレータの差動入力CINP、CINNになる。その差電位Vtp−Vtnを考えると、式(16)が得られる。
【0037】
Vtp−Vtn=−(VINP−VINN)+(Vrefp−Vrefn)/4;
式(16)
【0038】
このような接続により、MSB(SW5,SW11)をそれぞれデジタルコード0、MSBの次のビット(SW4,SW10)をそれぞれデジタルコード1、MSBの次のビットより下位のビットをそれぞれデジタルコード0、に対応するアナログデータを(+)側容量DAC、(−)側容量DACで生成する。これにより、入力電位差VINP−VINNと、リファレンス電位(Vrefp−Vrefn)を1/4倍した値との大小関係をコンパレータCOMP1により判定することができる。このように、SW1からSW12を操作し、C1からC12のボトムプレート電位をVrefpあるいは、Vrefnとする。これにより、VINP−VINNの電位差と、Vrefp−Vrefnを分割した電位の大小関係を判定することができ、それにより、サンプリングしたVINP−VINNの電位差の値の範囲を順次狭めていき、最終的なデジタル値を決定することができる。
【0039】
サンプリング時のトッププレートTOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2としておくことで、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。したがって、(+)側容量DACと(−)側容量DACのスイッチを対称に操作することで、それぞれの容量DAC出力を対称に動作させることができる。また、(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpと、(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnのコモン電位は、(Vrefp+Vrefn)/2となる(式(4)+式(6)、式(8)+式(10)、式(13)+式(15)参照)。すなわち、このコモン電位をリファレンス電位の中心の電位とできるので、動作余裕を最大にできる。このような回路と、その制御方法により、差動アナログ入力信号をデジタル値に変換する動作が実現されていた。
【0040】
《他の逐次比較型AD変換器の例2》
図20Aは、他の逐次比較型AD変換器の回路の概略を示している。なお、非特許文献2に同様の回路が示されている)。
【0041】
図20のSW13からSW16、S1、S2P、S2N、S3P、S3Nはスイッチを、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、COMP1はコンパレータを、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CDACPは(+)側の容量DACを、CDACNは(−)側の容量DACを、CINP、CINNはコンパレータ入力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位を、COUT1はコンパレータの出力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、示す。
【0042】
図19の従来回路では、バッファアンプBUF1と、抵抗R1、R2により、サンプリング時のトッププレート電位TOP+、TOP−の電位を、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)としていた。
【0043】
図20の従来回路では、スイッチS1、S2P、S2N、S3P、S3Nの操作により、サンプリング時のトッププレートTOP+、TOP−の電位を、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)とする。
【0044】
ここで、図20の従来回路で、サンプリング時のトッププレート電位TOP+、TOP−の電位を、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)とする仕組みについて説明する。
【0045】
まず、アナログ入力信号VINP、VINNのサンプリングに先立って、スイッチS3P、S3NをONする(図20B参照)。このときスイッチS2P、S2Nはオープンと
する。S3P、S3NをONすることで、CDACP、CDACNの容量の電荷が0となる。この後、S3P、S3NをOFFし、S1、S2P、S2NをONする(図20B参照)。S2P、S2NをONすることで、NODE1の電位はVINPに、NODE2の電位はVINNになる。CDACPの電荷が0、CDACNの電荷が0なので、CDACPのサンプリング容量とCDACNのサンプリング容量の値を等しくしておくと、S1をONしておくことで、TOP+、TOP−の電位は、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)となる。
【0046】
これにより、図19の従来回路同様、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。したがって、(+)側容量DACと(−)側容量DACのスイッチを対称に操作することで、それぞれの容量DAC出力を対称に動作させることができる。また、図19の場合と同様、容量DACを操作することで(+)側トッププレートTOP+の電位Vtpと、(−)側トッププレートTOP−の電位Vtnのコモン電位は、(Vrefp+Vrefn)/2となる。したがって、このコモン電位をリファレンス電位の中心の電位とできるので、動作余裕を最大にできる。このような回路と、その制御方法により、差動アナログ入力信号をデジタル値に変換する動作が実現されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開平6-164399号公報
【特許文献2】米国特許第5581252号明細書
【特許文献3】米国特許第4989002号明細書
【特許文献4】米国特許第4831381号明細書
【特許文献5】米国特許第4803462号明細書
【特許文献6】特開2000−201077号公報
【特許文献7】特開平11−17543号公報
【非特許文献】
【0048】
【非特許文献1】アール ケイ ヘスター他(R. K. Hester et al.)著," Fully Differential ADC with Rail-to-Rail Common-Mode Range and Nonlinear Capacitor Compensation", IEEE Journal of Solid-State Circuits,(米国), Feb. 1990、Vol. 25, No. 1, p.173-183
【非特許文献2】ジー プロミッツアー(G. Promitzer)著," 12-bit Low-Power Fully Differential Switched Capacitor Noncalibrating Successive Approximation ADC with 1 MS/s", IEEE Journal of Solid-State Circuits, (米国), July 2001,Vol. 36, No. 7, p.1138-1143
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
従来から、システムLSIあるいはMixed-Signal LSIと称されるLSIに代表されるように、微細化の進展とともに、CMOSデジタル回路とCMOSアナログ回路の同一チップ上への集積化の要求は増している。微細CMOSデジタル回路の高速性に見合った性能を確保したCMOSアナログ回路をできるだけ低コスト、低消費電力で集積することが求められている。
【0050】
このため、上述のように、従来技術により、小面積かつ中庸の変換時間と中庸の変換精度を実現する差動逐次比較型AD変換器が実現されているが、差動逐次比較型AD変換器の一層の低コスト化、低消費電力化、高速化が求められている。
【0051】
しかし、図19に示される従来技術(例えば、非特許文献1)では、サンプリング時のトッププレート電位TOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2とするために、VINPとVINNのコモン電位を発生する抵抗R1、R2とR1、R2で発生したコモン電位をトッププレートに供給するためのバッファアンプBUF1が必要となっていた。R1、R2の値を大きくして入力回路中の電流を小さくする(感度を高くする)一方、トッププレートに供給する電流を大きくする必要があるからである。
【0052】
このため、バッファアンプBUF1での消費電力が必要となり、低電力化が困難となる問題があった。
【0053】
一方、図20に示される従来技術(非特許文献2)では、図19のようにバッファアンプを使用しないので、消費電力の増大の問題はない。しかしながら、電源電圧範囲の限界十分に近い範囲でのアナログ入力信号を変換する性能(入力範囲特性)は達成されていなかった。
【0054】
本発明の目的は、小面積低電力で動作し、かつ、電源電圧範囲(rail-to-rail範囲)の限界に十分に近いアナログ入力信号を変換できるAD変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0055】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、
第1アナログ信号が入力される第1アナログ端子と、第1アナログ端子に第1アナログ信号を入力する第1入力スイッチと、第2アナログ信号が入力される第2アナログ端子と、第2アナログ端子に第2アナログ信号を入力する第2入力スイッチと、第1基準電圧の供給を受ける第1基準電圧接続端子と、第2基準電圧の供給を受ける第2基準電圧接続端子と、第1アナログ端子から第1アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに第1アナログ信号の比較の対象となる第1比較信号を生成する第1デジタルアナログ変換器と、第2アナログ端子から第2アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに第2アナログ信号の比較の対象となる第2比較信号を生成する第2デジタルアナログ変換器と、第1デジタルアナログ変換器の出力側と第2デジタルアナログ変換器の出力側を開放または導通する第1スイッチと、第1アナログ信号および第2アナログ信号の差分値と第1デジタルアナログ変換器の出力信号および第2デジタルアナログ変換器の出力信号の差分値とを比較する比較器と、を備えるアナログデジタル変換回路である。
【0056】
さらに、第1デジタルアナログ変換器は、第1の複数の容量素子と第1の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を第1アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第1スイッチ群と第1の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第1共通端子と、を有する。
【0057】
また、第2デジタルアナログ変換器は、第2の複数の容量素子と第2の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を第2アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第2スイッチ群と第2の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第2共通端子と、を有する。
【0058】
そして、第1の複数の容量素子は、第1の複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第1容量素子を含み、第1アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、第1容量素子以外の容量素子の入力側端子には比較器の比較の結果に基づいて第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかが接続され、第1容量素子の入力側端子には比較器の比較の結果に拘わらず第1基準電圧端子が接続され、
第2の複数の容量素子は、第2の複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第2容量素子を含み、第2アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、
第2容量素子以外の容量素子の入力側端子には比較器の比較の結果に基づいて第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかが接続され、第2容量素子の入力側端子には比較器の比較の結果に拘わらず第2基準電圧端子が接続される。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、小面積低電力で動作し、かつ、電源電圧範囲の限界に十分に近いアナログ入力信号を変換できるアナログデジタル変換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図2】図1のAD変換器の制御タイミングを示す図である。
【図3】スイッチの構成を例示する図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図6】AD変換器に含まれる抵抗DACの構成を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図8】AD変換器に含まれる抵抗DACの構成を示す図である。
【図9】本発明の各実施形態に係るAD変換器に適用可能なコンパレータを示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る逐次比較型AD変換回路のブロック図である。
【図11】動作タイミング例を示す図である。
【図12A】回路シミュレーション結果例(その1)である。
【図12B】回路シミュレーション結果例(その1)である。
【図12C】回路シミュレーション結果例(その1)である。
【図12D】図12Aにおいてサンプリングからコンペアに移行する時点の時間を拡大した拡大図である。
【図13A】回路シミュレーション結果例(その2)である。
【図13B】回路シミュレーション結果例(その2)である。
【図13C】回路シミュレーション結果例(その2)である。
【図14A】回路シミュレーション結果例(その3)である。
【図14B】回路シミュレーション結果例(その3)である。
【図14C】回路シミュレーション結果例(その3)である。
【図15】本発明の第6実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図16】本発明の第7実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図17】本発明の第8実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図18】本発明の第8実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図19】従来の電荷再分配型AD変換器を示す図である。
【図20A】従来の逐次比較型AD変換器の回路を示す図である。
【図20B】従来の逐次比較型AD変換器の制御タイミング示す図である。
【図21】AD変換器の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、図面を参照して、一実施の形態(以下、実施形態という)に係るAD(アナログデジタル)変換器について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0062】
図21は、図20のAD変換器の問題点を説明するための図である。図21のSW13からSW16、S1はスイッチを、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、COMP1はコンパレータを、TOP+は容量アレイの+側トップ
プレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CDACPは(+)側の容量DACを、CDACNは(−)側の容量DACを、CINP、CINNはコンパレータ入力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位を、COUT1はコンパレータの出力を、PM1からPM4はPMOSトランジスタを、NM1からNM4はNMOSトランジスタを、CS2P、CS3PはPMOSトランジスタの制御信号を、CS2N、CS3NはNMOSトランジスタの制御信号を、NODE1、NODE2は内部のノードを、示す。
【0063】
図21は、図20の回路の問題を説明しやすいように、図20のスイッチ、S2P、S2N、S3P、S3Nをトランジスタレベルの回路図として示している。
【0064】
まず、アナログ入力信号VINP、VINNのサンプリングに先立って、PM2、NM2、PM3、NM3をONする(例えば、CS3Pを0V、CS3Nを5Vとする)。このとき、PM1、NM1、PM4、NM4はOFFとする(CS2Pは5V、CS2Nは0Vとする。)。この後、PM2、NM2、PM3、NM3をOFFする(例えば、CS3Pを5V、CS3Nを0とする)。また、PM1、NM1、PM4、NM4、S1をONする(例えば、CS2Pは0V、CS2Nは5Vとする)。これにより、TOP+、TOP−の電位は、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)となり、(+)側容量DACのボトムプレートNODE1の電位はVINPに、(−)側容量DACのボトムプレートNODE2の電位はVINNとなり、図19の従来回路と同じ電荷が、(+)側容量DACのサンプリング容量、(−)側容量DACのサンプリング容量に蓄えられる。
【0065】
このサンプリングの終了後、スイッチS1をOFFし、また、PM1、NM1、PM4、NM4をOFFして、(+)側容量DACのそれぞれのボトムプレートの電位、(−)側容量DACのそれぞれのボトムプレートの電位を操作して、コンパレータによる比較動作に移る。
【0066】
PM1、NM1、PM4、NM4をOFFするために、制御信号、CS2PはLからHに(0Vから5Vに)変化する。また、制御信号CS2NはHからLに(5Vから0Vに)変化する。
【0067】
このとき、例えば、電源電圧、リファレンス電圧がともに5Vであったと仮定し、VINPの電位が5V、VINNの電位が0Vの場合を考える。つまり、電源電圧、リファレンス電圧と、変換しようとしているアナログ入力信号が略等しい場合を考える。
【0068】
VINPの電位が5V、NODE1の電位が5V、CS2Pの電位が0V、CS2Nの電位が5Vのとき、NM1は反転していないので、そのゲートとドレイン、ソース間の容量はオーバーラップ容量程度の小さな値となっている。NMOSトランジスタNM1の場合、ゲート電位は5Vとなるが、同時にソース、ドレインの電位も5Vとなる。MOSトランジスタが反転するためには、ゲート、ソース間電圧がしきい電圧Vth(例えば0.7V)を超える必要があるので、ソース、ドレインの電位が5VとなっているNM1では、反転層は形成されない。このため、ゲート酸化膜容量は、ゲートとソース(あるいはドレイン)との間には実効的に接続されないことになる。
【0069】
一方、PM1は反転層が形成されているので、ゲートと、ドレイン、ソースの間には、ゲート酸化膜の容量が存在する。すなわち、PMOSトランジスタPM1の場合には、ゲート電位が0Vとなり、また、ソースおよびドレインはともに5Vであるため、ゲート、ソース間電圧はしきい電圧Vthより大きく、チャネルが形成される。したがって、ゲート酸化膜による容量がゲートとソース(あるいはドレイン)の間に接続されることになる
。
【0070】
この状態で、CS2Pの電位が0Vから5Vに、CS2Nの電位が5Vから0Vに変化すると、PM1のゲート容量を介して、NODE1の電位が上昇する(図21の波形図にその様子を示した)。このとき、PM1およびNM1がともにオフになるので、上昇したNODE1の電位は維持されることになる。
【0071】
同様に、VINNの電位が0V、NODE2の電位が0V、CS2Pの電位が0V、CS2Nの電位が5Vのとき、PM4は反転していないので、そのゲートとドレイン、ソース間の容量はオーバーラップ容量程度の小さな値となっている。一方、NM4は反転層が形成されているので、ゲートと、ドレイン、ソースの間には、ゲート酸化膜の容量が存在する。
【0072】
CS2Pの電位が0Vから5Vに、CS2Nの電位が5Vから0Vに変化すると、NM4のゲート容量を介して、NODE2の電位は低くなる(図21の波形図にその様子を示した)。このとき、PM4およびNM4がともにオフになるので、低下したNODE2の電位は維持されることになる。
【0073】
つまり、サンプリングの終了時に、PM1、NM4のゲート容量を介して、NODE1の電位は電源電圧5Vを超えて上昇し、NODE2の電位は、電源電圧0Vより低い電位となって維持される場合がある。
【0074】
サンプリングの終了後、スイッチS1をOFFし、(+)側容量DACのそれぞれのボトムプレートの電位、(−)側容量DACのそれぞれのボトムプレートの電位を操作して、コンパレータによる比較動作に移る。このとき、NODE1の電位が電源電圧5Vより高い電位となっていると、PM2のゲート電位を5Vとして、PM2をOFFさせようとしても、PM2のソース電位はすなわちNODE1の電位なので、NODE1の電位が電源電圧5Vを超えて上昇した電位分、PM2のゲート、ソース間に電圧が加わる。このため、PM2を介して、NODE1から、TOP+にわずかに電流が流れる。これは、TOP+に蓄えた電荷を変化させることになり、正しい変換結果を得られない原因となる。
【0075】
同様に、NODE2の電位が電源電圧0Vより低い電位となっていると、NM3のゲート電位を0VとしてNM3をOFFさせようとしても、NM3のソース電位はNODE2の電位なので、NODE2の電位が0Vより低い電位となった分、NM3のゲート、ソース間に電圧が加わり、NM3を介して、TOP−からNODE2にわずかに電流が流れる。これはTOP−に蓄えた電荷を変化させることになり、正しい変換結果が得られなくなる。
【0076】
図21の回路ではこの問題を回避するためには、アナログ入力電位VINPの最大値を電源電圧より低い電位とし、VINNの最低の電位を0Vより高い電位とし、NODE1、NODE2の電位が、カップリングにより変化しても、電源電圧範囲を超えないようにする必要があった。このため、図21の回路構成では、電源電圧範囲(rail-to-rail範囲)のアナログ入力信号を変換する性能を実現できなかった。
【0077】
本実施形態では、第1の特徴として、図19の従来回路で必要となるバッファアンプを必要としない低消費電力化が可能な差動逐次比較AD変換器を例示する。また、図21の回路では、達成されていない電源電圧範囲(rail-to-rail範囲)のアナログ入力信号を変換できる差動逐次比較型AD変換器を例示する。つまり、バッファアンプを必要としない低消費電力特性と、電源電圧範囲(rail-to-rail範囲)のアナログ入力信を変換する特性を両立する回路を例示する。
【0078】
また、図19の従来回路では、アナログ入力信号を変換したデジタル値は、2の補数表現となるが、符号判定のサイクル分変換時間が大きくなる問題がある。本実施形態では、第2の特徴として、(+)側のアナログ入力信号と(−)側のアナログ入力信号の大小関係が予測できるような場合に、あらかじめ、符号を仮定して、アナログ信号をデジタル値に変換する回路を例示する。
【0079】
さらに本実施形態では、上記、第2の特徴を達成する、符号を仮定しアナログ信号をデジタル値に変換する回路を使用するため、必要な場合には、符号も含めてアナログ信号をデジタル値に変換する回路を例示する。
【0080】
上記の第1の特徴を達成するために、本実施形態(図1)では、差動容量DACの(+)側容量DACのトッププレートTOP+とボトムプレート(C1からC6のスイッチにつながる端子)の電位を等しくし、(+)側容量DACのサンプリング容量を放電するスイッチ(図1、S3P)を設ける。また、(−)側容量DACのトッププレートTOP−とボトムプレート(C7からC12のスイッチにつながる端子)の電位を等しくし、(−)側容量DACのサンプリング容量を放電するスイッチ(図1、S3N)を設ける。
【0081】
さらに、本実施形態では、サンプリング容量の放電用のスイッチS3P、S3NがONしているときに、(+)側アナログ入力信号VINP、(−)側アナログ入力信号VINNと容量DACのボトムプレートを切り離すスイッチS2P、S2Nを設ける。さらに、アナログ入力信号のサンプリング時に(+)側トッププレートTOP+の電位と、(−)側トッププレートTOP−の電位を等しくするためのスイッチS1を設ける。
【0082】
そして、サンプリング終了時に、ボトムプレートに、アナログ入力信号VINP、VINNを供給するスイッチS2P、S2NをOFFする。このとき、内部のノードNODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないように、NODE1、NODE2の電位をイコライズするスイッチS4を設ける。
【0083】
また、上記の第2の特徴を達成するために、本実施形態(図1)では、(+)側容量DACの合計のサンプリング容量の1/2の大きさを持つ容量C6のボトムプレートの電位を、コンパレータでの比較開始と同時に、+の基準電圧Vrefpとする。残りの2進に重み付けされた容量のボトムプレートは、対応するDAC入力が1なら+の基準電圧Vrefpに、対応するDAC入力が0なら−の基準電圧Vrefnにつなぐ。また、比較期間にわたって、コンパレータCOMP1での比較結果によらず、符号ビットに相当する容量C6のボトムプレートの電位は、+の基準電圧Vrefpとする。
【0084】
さらに、(−)側容量DACの合計のサンプリング容量の1/2の大きさを持つ容量C12(符号ビットに対応)のボトムプレートの電位を、コンパレータでの比較開始と同時に、−の基準電圧Vrefnとする。残りの2進に重み付けされた容量のボトムプレートは、対応するDAC入力が1なら−の基準電圧Vrefnに、対応するDAC入力が0なら+の基準電圧Vrefpにつなぐ。また、比較期間にわたって、コンパレータCOMP1での比較結果によらず、符号ビットに相当する容量C12のボトムプレートの電位は、−の基準電圧Vrefnとする。
【0085】
アナログ入力信号のサンプリング終了時に、ボトムプレートに、アナログ入力信号VINP、VINNを供給するスイッチS2P、S2NをOFFしても、スイッチS4(図1)によりノードNODE1、NODE2の電位をイコライズするので、S2P、S2NがボトムプレートにつながるノードNODE1、NODE2の電位は電源電圧範囲を超えない。ノードNODE1、NODE2の電位を電源電圧範囲に収めることで、スイッチS3
P、S3Nを通して、トッププレートTOP+、TOP−に電流が流れないようにすることができる。これにより、トッププレートTOP+、TOP−の電荷が失われることが防げ、正しい変換結果が得られる。
【0086】
また、上記操作により、(+)側容量DACのボトムプレートに供給されるアナログ入力VINPが、(−)側容量DACのボトムプレートに供給されるアナログ入力VINNより、大きいか、あるいは等しいことを仮定して、アナログ入力電位差(VINP−VINN)をデジタル値に変換することができる。
【0087】
つまり、あらかじめ、VINP−VINN>=0が予想される場合には、従来回路(図19)では、必要だった符号決定のためのサイクルを省略して、AD変換を行なうことができる。これにより、符号決定に要する時間分、変換時間を短縮することができる。
【0088】
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。図2は、図1のスイッチS1、S2P、S2N、S3P、S3N、およびS4の制御タイミングを示す図である。
【0089】
図1のSW2からSW5、SW8からSW11、SW13からSW16、SW19からSW22、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC12は容量を、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、COMP1はコンパレータを、CINP、CINNはコンパレータの入力を、COUT1はコンパレータ出力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位(例えば2.5V)を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12の容量アレイで構成されるDACを、示す。図19、図20の従来回路の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ素子名、端子名を与えて示している。
【0090】
コンパレータCOMP1が本発明の比較器に相当し、(+)側容量DACが第1デジタルアナログ変換器に相当し、(−)側容量DACが第2デジタルアナログ変換器に相当し、+側の基準電位Vrefpの接続される端子が第1基準電圧接続端子に相当し、−側の基準電位Vrefnの接続される端子が第2基準電圧接続端子に相当する。
【0091】
ここで、トッププレートTOP+とは、容量DACのうち、+側のアナログ信号が入力するNODE1にスイッチSW19、SW2−SW5、SW21を介して接続される端子(ボトムプレート)に対向する端子をいう。また、トッププレートTOP−とは、容量DACのうち、−側のアナログ信号が入力するNODE2にスイッチSW20、SW8−SW11、SW22を介して接続される端子(ボトムプレート)に対向する端子をいう。
【0092】
容量Ca(aは整数)に併記されたbC(bは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C(等)、に示されるように重み付けがされている。図1のC1からC12が4ビットDACを構成している。
【0093】
図1に図示されるスイッチの状態は、容量DACのサンプリング状態を示している。サンプリング時には、C1からC6にVINPの電位が充電され、C7からC12にVINNの電位が充電される。
【0094】
まず、アナログ入力信号VINP、VINNのサンプリングに先立って、ディスチャージ用のスイッチS3P、S3NをONする(図2参照)。このときアナログ信号入力用のスイッチS2P、S2Nはオープンとする(より正確には、両方OFFにすることは必須ではなく、いずれか一方、例えばS2NはONとしておいてもよい)。
【0095】
また、例えば、S1をON、SW2からSW5、SW19、SW21をNODE1につないでおく。また、例えば、SW8からSW11、SW20、SW22をNODE2につないでおく。S3P、S3NをONすることで、C1からC12のトッププレート(TOP+、TOP−)の電位とC1からC12のボトムプレートの電位が等しくなり、(+)側容量DAC、(−)側容量DACのサンプリング容量C1からC12に蓄えられる電荷が0となる。
【0096】
この後、S3P、S3NをOFFし、S1、S2P、S2NをONする(図2参照)。このとき、NODE1(本発明の第1アナログ端子に相当)には、スイッチS2P(本発明の第1入力スイッチに相当)を通じて、+側のアナログ信号(第1アナログ信号に相当)が入力される。また、NODE2(本発明の第2アナログ端子に相当)には、スイッチS2N(本発明の第2入力スイッチに相当)を通じて、−側のアナログ信号(第2アナログ信号に相当)が入力される。
【0097】
ただし、S1については、S3P、S3NをONの状態で、S1をONとしておいて、ONの状態を保っていてもよい)。S2P、S2NをONすることで、NODE1の電位はVINPに、NODE2の電位はVINNになる。SW2からSW5、SW19、SW21をNODE1につないでおき、また、SW8からSW11、SW20、SW22をNODE2につないでおくものとする。(+)側容量DACの合計のサンプリング容量(C1からC6の合計容量32C)と、(−)側容量DACの合計のサンプリング容量(C7からC12の合計容量32C)を等しくしているので、また、S1がONとなっており、トッププレートTOP+と、TOP−の電位が等しいので、トッププレートTOP+と、TOP−の電位は、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)となる。(VINP、VINNは、それぞれ、(+)のアナログ入力VINPの電位、(−)のアナログ入力VINNの電位を表わすものとする。)
C1からC6で構成される(+)側容量DACのトッププレート(TOP+)に蓄えられる電荷QSAMPPは、式(17)で表わされる。(C1からC6の合計容量を32Cで、表わす。)
【0098】
QSAMPP=−32C(VINP−(VINP+VINN)/2);
QSAMPP=−32C(VINP−VINN)/2; 式(17)
C7からC12で構成される(−)側容量DACのトッププレート(TOP−)に蓄えられる電荷QSAMPNは、式(18)で表わされる。
【0099】
QSAMPN=−32C(−VINP+VINN)/2; 式(18)
つまり、サンプリング時のトッププレートTOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2としておくことで、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。
【0100】
サンプリング終了後、S1をオープン(開放)とする。また、S2P、S2Nも、オープン(開放)とする。S1を最初に開放とすることで、トッププレートTOP+、TOP−がフローティングとなるので、C1からC12のトッププレートの電荷が保存される。
【0101】
後の説明に都合がいいので、ここで、SW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22のトランジスタレベルの回路例を、SW2を例として、図3に示しておく
。
【0102】
図3のPM5、PM6はPMOSトランジスタを、NM5、NM6はNMOSトランジスタを、C2は容量を、NODE1、TOP+はノード名を、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、示す。図3において図1に対応するノード等は、図1と同じ名称を与えて示した。図3のように、トランジスタを接続することで、例えば、図1のSW2の機能を実現できる。
【0103】
図1の説明にもどる。S1をオープン(開放)とした後、SW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22を操作して、容量C1からC12のボトムプレートの電位を、Vrefp、あるいは、Vrefnとする。このとき、図3のような回路でスイッチ(例えばSW2)を構成すると、C2のボトムプレートの電位を、Vrefp、あるいは、Vrefnとする前に、PM5、NM5をOFFし、その後C2のボトムプレートの電位を、Vrefp、あるいは、Vrefnとする。
【0104】
このようなスイッチのタイミングで、スイッチSW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22を操作すると、S2PがOFFした前後に、SW2からSW5、SW19、SW21も、NODE1から見て、フローティングとなる。このため、図21の説明で述べたように、VINPの電位が正の電源電圧に近い電位の場合、NODE1の電位は、スイッチS2Pのオフに伴いS2Pを構成するPMOSトランジスタのゲート容量により、正の電源電圧を超えて上昇する可能性がある。
【0105】
同様に、S2NがOFFした前後に、SW8からSW11、SW20、SW22も、NODE2から見て、フローティングとなる。このため、VINNの電位が負の電源電圧に近い電位の場合、NODE2の電位は、スイッチS2Nのオフに伴いS2Nを構成するNMOSトランジスタのゲート容量により、負の電源電圧を超えて低下する可能性がある。
【0106】
これを防ぐために、S2P、S2NをOFFした後、NODE1とNODE2の電位を等しくするスイッチS4(本発明の電位制御回路、および第2スイッチに相当)をONする(図2参照)。これにより、NODE1とNODE2の電位が等しくなり、中間の電位となる。このため、S2P、S2NをOFFする直前のNODE1、NODE2のどちらか一方が、正の電源電圧に近い電位、あるいは、負の電源電圧に近い電位となっていても、NODE1、NODE2の電位差がある程度大きければ、S2PのオフまたはS2Nのオフの際に、NODE1、NODE2の電位は電源電圧範囲を超えることがないようにできる。
【0107】
仮に、NODE1、NODE2の電位が、電源電圧範囲を超えると、たとえ、S3P、S3NをOFFしても、それらを構成するMOSトランジスタのゲート、ソース間に(順方向の、電流が流れやすくなる方向の)電位差が発生するので、S3P、S3Nを通して、NODE1からTOP+へ、あるいは、TOP−からNODE2へ、わずかな電流が流れ、トッププレートTOP+、TOP−に蓄えた電荷を変化させてしまう問題がある(このことは、図21の回路の問題の説明で述べた通りである。)。
【0108】
そこで、図1の回路のように、S4を設けて、サンプリング終了後、S4によりNODE1、NODE2の電位が、電源電圧範囲を超えないようにすることで、電源電圧範囲のアナログ入力信号をサンプリングしても、内部ノード、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないようにできる。そのため、サンプリングした電荷の破壊を防ぐことができ、正しい変換結果を得られるようになる。
【0109】
サンプリングの終了時に、S1をOFFし、また、S2P、S2NをOFFし、SW2
からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22をフローティングとし(S3P、S3N、はサンプリングの開始時からOFFしている)、S4をONする。さらに、SW13、SW14をOFFし、SW15、SW16をONする。これにより、コンパレータによる逐次比較の準備が整う。
【0110】
SW13、SW14はサンプリング中にコンパレータCOMP1の入力CINP、CINNにバイアスVCMを与えるためのスイッチとして働く。例えば、VCMを、コンパレータによる比較の最終的なコモン電位((Vrefp+Vrefn)/2)と等しくしておけば、サンプリング期間中に、コンパレータCOMP1のオフセット電圧を、例えば容量に記憶しておき、auto−zeroによりオフセットの影響を小さくできる。
【0111】
また、SW15、SW16は、TOP+、TOP−の電位をアナログ入力コモン電位とするために、TOP+、TOP−と、コンパレータ入力端子(CINP、CINN)とを切り離しておくためのスイッチとして働く。
【0112】
サンプリング後は、SW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22を操作して、容量C1からC12のボトムプレートの電位を、Vrefp、あるいは、Vrefnとすることで、基準電圧を分圧した電圧と、サンプリングした電位差の大小関係を(COUT1を利用して)判定し、アナログ入力電位差に対応するデジタル値を検索する。
【0113】
本実施形態では、VINP−VINN>=0を仮定しているので、SW21はVrefpに、SW22はVrefnに接続される。(+)側容量DACのスイッチSW2からSW5は、対応するデジタルコードが1なら、Vrefpに、対応するデジタルコードが0ならVrefnにつながれる。2の補数を生成するために1ビット加算値を生成するSW19はVrefn(デジタルコード0に対応)につながれる。2の補数データを生成する必要がないからである。
【0114】
(−)側容量DACのスイッチSW8からSW11は、対応するデジタルコードが1なら、Vrefnに、対応するデジタルコードが0ならVrefpにつながれる。本実施形態では、VINP−VINN>=0を仮定しているので、SW20はVrefp(デジタルコード0に対応)につながれる。常時、2の補数データを生成するためである。
【0115】
SW19に対応するSW1は、図19では、VINP<VINNの場合には、Vrefpにつなぐ必要があった。これは、VINP<VINNの場合に、2の補数で表されるデジタル値を変換結果として得る目的のためである。一方図1の発明の回路では、VINP>VINNだけを想定しているので、+側電位として常時正数を想定すればよい。したがって、SW19はVrefnにつなぐだけでよい。同様に、−側電位として常時負数を想定すればよく、SW20はVrefpにつなげばよい。
【0116】
<検索手順>
図19の従来回路では、SW6をVrefpに、SW1からSW5をVrefnに、SW12をVrefnに、SW7からSW11をVrefpにつなぐことで、VINPとVINNの大小関係を判定し、符号を決定していた。しかしながら、実際の応用では、VINPとVINNの大小関係をあらかじめ予想できるような場合もある。符号が予想できる場合には、符号決定のための比較サイクルは冗長であるといえる。
【0117】
そこで、本実施形態のAD変換回路では、VINPがVINNより大きいことを前提に(符号を仮定して)、デジタル値を決定する検索方法、回路を提供する。VINP>VINNを前提にするので、符号決定が必要ない分だけより高速な変換が可能となる(VIN
P>VINNが満たされない場合の回路については、第7実施形態で述べる)
本実施形態の回路、図1でSW21は、従来の回路である図19のSW6に対応し、図1のSW22は図19のSW12に対応する。
【0118】
VINP>VINNを前提としているので、コンパレータでの比較は、例えば、VINP>VINNかつ、基準電圧/2との比較から始め、基準電圧/2より(VINP−VINN)が大きければ、基準電圧×3/4と(VINP−VINN)を比較する。基準電圧/2より(VINP−VINN)が小さければ、基準電圧×1/4と(VINP−VINN)を比較する。さらに、仮に、基準電圧×1/4より(VINP−VINN)が大きければ、基準電圧×3/8と(VINP−VINN)を比較する。あるいは、基準電圧×1/4より(VINP−VINN)が小さければ、基準電圧×1/8と(VINP−VINN)を比較する。つまり、(VINP−VINN)の電位差と、基準電圧(Vrefp−Vrefn)を分割した電位の大小関係を判定し、サンプリングした(VINP−VINN)の電位差の値の範囲を順次狭めていき、最終的なデジタル値を決定する。
【0119】
<MSB(最上位ビット)の決定>
SW21をVrefpに、SW2からSW4、SW19をVrefnに、SW5をVrefpにつなぐ。C1からC4、の合計容量8Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C5、C6の合計容量24Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。式(17)の(+)側トッププレート(TOP+)に蓄えられる電荷QSAMPPが保存されるので、このときの(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpは、式(19)、式(20)で与えられる。
【0120】
−24C(Vrefp−Vtp)+8C(Vtp−Vrefn)=−32C(VINP−VINN)/2; 式(19)
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2+(Vrefp−Vrefn)/(2×2); 式(20)
SW22をVrefnに、SW8からSW10、SW20をVrefpに、SW11をVrefnにつなぐ。C7からC10の合計容量8Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C11、C12の合計容量24Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。式(18)の(−)側トッププレート(TOP−)に蓄えられる電荷QSAMPPが保存されるので、このときの(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnは、式(21)、式(22)で与えられる。
【0121】
−8C(Vrefp−Vtp)+24C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(21)
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2−(Vrefp−Vrefn)/(2×2); 式(22)
このトッププレートの電位がコンパレータの差動入力CINP、CINNになる。その差電位Vtp−Vtnを考えると、式(23)が得られる。
【0122】
Vtp−Vtn=−(VINP−VINN)+(Vrefp−Vrefn)/2;
式(23)
つまり、入力電位差VINP−VINNと、リファレンス電位(Vrefp−Vrefn)を1/2倍した値との大小関係をコンパレータCOMP1により判定することができる。
【0123】
<MSBの次のビット以降の決定>
これにより、SW5、SW11に対応するデジタルコードが決定できるので、SW4、SW10に対応するコード(2番目の上位ビット)の決定について説明する。
【0124】
仮にSW5、SW11に対応するデジタルコードが1に決定し、(VINP−VINN)は(Vrefp−Vrefn)/2より大きかったとする。この場合、(VINP−VINN)と(Vrefp−Vrefn)×3/4を比較し、その大小関係を調べて、(VINP−VINN)の値の範囲を狭めていく。
【0125】
具体的には、SW21をVrefpに、SW19、SW2、SW3をVrefnに、SW4、SW5をVrefpにつなぐ。C1からC3の合計容量4Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C4、C5、C6の合計容量28Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。このときの(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpは、式(24)、式(25)で与えられる。
【0126】
−28C(Vrefp−Vtp)+4C(Vtp−Vrefn)=−32C(VINP−VINN)/2; 式(24)
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2+3×(Vrefp−Vrefn)/(2×4); 式(25)
【0127】
SW22をVrefnに、SW20、SW8、SW9をVrefpに、SW10、SW11をVrefnにつなぐ。C7からC9の合計容量4Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C10、C11、C12の合計容量28Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。このときの(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnは、式(26)、式(27)で与えられる。
【0128】
−4C(Vrefp−Vtp)+28C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(26)
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2−3×(Vrefp−Vrefn)/(2×4) 式(27)
【0129】
このトッププレートの電位がコンパレータの差動入力CINP、CINNになる。その差電位Vtp−Vtnを考えると、式(28)が得られる。
【0130】
Vtp−Vtn=−(VINP−VINN)+3×(Vrefp−Vrefn)/4;
式(28)
つまり、入力電位差VINP−VINNと、リファレンス電位(Vrefp−Vrefn)を3/4倍した値との大小関係をコンパレータCOMP1により判定することができる。このように、SW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22を操作し、C1からC12のボトムプレート電位をVrefpあるいは、Vrefnとすることで、VINP−VINNの電位差と、Vrefp−Vrefnを分割した電位の大小関係を判定することができ、それにより、サンプリングしたVINP−VINNの電位差の値の範囲を順次狭めていき、最終的なデジタル値を決定することができる。
【0131】
<効果>
以上述べたように、サンプリング時のトッププレート電位TOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2としておくことで、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。このため、(+)側容量DACと(−)側容量DACのスイッチを対称に操作することで、それぞれの容量DAC出力を対称に動作させることができる。また、(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpと、(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnのコモン電位は、(Vrefp+Vrefn)/2となり、リファレンス電位の中心の電位とできるので(式(20)+式(22)、式(25)+式(27)参照)、動作余裕を最大
にできる。
【0132】
以上説明したように、図1の回路構成により、差動アナログ入力信号を、符号を仮定して(VINP>VINNを前提として)、デジタル値に変換する動作が実現できる。
【0133】
また、S4を設けて、サンプリング終了後S4をONすることで、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えることを防げるので、S3P、S3Nを通した、トッププレートTOP+、TOP−の電荷の破壊を避けることができ、電源電圧範囲におよぶ大振幅のアナログ入力信号を変換する場合でも、正しい変換結果が得られるようになる。
【0134】
さらに、符号を仮定して(VINP>VINNを前提として)、アナログ入力電位差をデジタル値に変換するので、符号判定のための比較サイクルを省略することができ、その分、変換時間を高速化できる。
【0135】
図1では、一例として4ビットの容量DACで、逐次比較AD変換器を構成し、それに、本発明の考え方を適用した例を示したが、DACのビット数は一般の場合(3ビット以下、または、5ビット以上)で構わないことはいうまでもない。
【0136】
《第2実施形態》
図4を参照して本発明の第2実施形態に係るAD変換器を説明する。上記第1実施形態では、(+)側のアナログ入力をNODE1に接続するスイッチS2P、および(−)側のアナログ入力VINNをNODE2に接続するスイッチS2NをOFFした後、NODE1とNODE2の電位を等しくするスイッチS4をONすることにより、NODE1とNODE2の電位変動を抑制した。
【0137】
本実施形態では、このスイッチS4の作用に加えて、さらに、NODE1とNODE2の電位変動を抑制する電位変動抑制手段を例示する。あるいは、このスイッチS4の作用に代わる本実施形態の電位変動抑制手段を例示する。本実施形態でも、サンプリング終了時に、ボトムプレートに、アナログ入力信号VINP、VINNを供給するスイッチS2P、S2NをOFFする。本実施形態では、そのとき、内部のノードNODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないように、スイッチS2P、S2Nのゲート容量から注入される電荷と逆の電荷をNODE1、NODE2に供給するカップリング容量NM7、PM7、NM8、PM8を設ける。
【0138】
本実施形態の他の構成および作用は、第1実施形態の場合と同様である。すなわち、図4でも、差動容量DACのうち(+)側容量DACのトッププレートTOP+とボトムプレート(C1からC6のスイッチにつながる端子)の電位を等しくし、(+)側容量DACのサンプリング容量を放電するスイッチ(図1、S3P)と、(−)側容量DACのトッププレートTOP−とボトムプレート(C7からC12のスイッチにつながる端子)の電位を等しくし、(−)側容量DACのサンプリング容量を放電するスイッチ(図1、S3N)を設ける。サンプリング容量の放電用のスイッチS3P、S3NがONしているときに、(+)側アナログ入力信号VINP、(−)側アナログ入力信号VINNと容量DACのボトムプレートを切り離すスイッチS2P、S2Nを設ける。アナログ入力信号のサンプリング時に(+)側トッププレートTOP+の電位と、(−)側側トッププレートTOP−の電位を等しくするためのスイッチS1を設ける。
【0139】
そして、本実施形態では、スイッチS2P、S2Nのゲート容量から注入される電荷と逆の電荷をNODE1、NODE2に供給するカップリング容量NM7、PM7、NM8、PM8(図4)を設け、スイッチS2P、S2Nの制御信号と逆相の信号(NG7、PG7、NG8、PG8)で、容量NM7、PM7、NM8、PM8を駆動することで、ス
イッチS2P、S2Nから注入される電荷を打ち消して、内部のノードNODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないように制御できる。これにより、スイッチS3P、S3Nを通して、トッププレートTOP+、TOP−に電流が流れないようにすることができ、トッププレートTOP+、TOP−の電荷が失われることがないので、正しい変換結果が得られる。
【0140】
<構成>
図4のSW2からSW5、SW8からSW11、SW15、SW16、SW19からSW22、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC12は容量を、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CINP、CINNはコンパレータの入力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12の容量アレイで構成されるDACを、NM7、NM8はNMOSトランジスタを、PM7、PM8はPMOSトランジスタを、NG7、PG7、NG8、PG8はそれぞれNM7、PM7、NM8、PM8の制御のためのゲート信号を、示す。図4でも、図19、図20、図1の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ素子名等を与えて示している。
【0141】
容量Ca(aは整数)に併記されたbC(bは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C(等)、に示されるように重み付けがされている。図4のC1からC12が4ビットDACを構成している。
【0142】
図4に図示されるスイッチの状態は、容量DACのサンプリング状態を示している。サンプリング時には、C1からC6にVINPの電位が充電され、C7からC12にVINNの電位が充電される。
【0143】
図4の回路は、主要な部分は図1の回路と同じで、図4の回路が図1の回路と異なる点は、NMOSトランジスタNM7、NM8、PMOSトランジスタPM7、PM8が付加されている点にある。そこで、本実施形態では、NMOSトランジスタNM7、NM8、PMOSトランジスタPM7、PM8の働きを中心に説明する。特に説明しない部分は、図1の回路と同様に動作するものとする。
【0144】
NM7、PM7、NM8、PM8は、サンプリング終了後に、スイッチS2P、S2NをOFFする際、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないように制御するための容量として働く。図4の回路例では、NM7、PM7、NM8、PM8とスイッチS4を併用する回路例を示したが、NM7、PM7、NM8、およびPM8だけを適用してもよい。また、第1実施形態で説明したように、S4単独で用いてもよい。
【0145】
サンプリングの終了時点で、スイッチS1をオープン(開放)とし、スイッチSW2からSW5、SW19、SW21を、NODE1から見て、フローティングとする。また、スイッチSW8からSW11、SW20、SW22も、NODE2から見て、フローティングとする。さらに、スイッチS2P、S2NをOFFする。
【0146】
図1の説明で述べたように、+側のアナログ入力VINPの電位が正の電源電圧に近い電位の場合、NODE1の電位は、スイッチS2Pを構成するPMOSトランジスタのゲート容量により、正の電源電圧を超えて上昇する可能性がある。VINPおよびNODE1が正の電源電圧(5V)に近く、かつ、スイッチS2Pがクローズ(導通、ゲートが負の電源電圧0V)の場合に、PMOSトランジスタのゲート直下に反転層が形成され、ゲ
ート酸化膜による容量がゲートとドレイン(およびソース)間に挿入されるからである。
【0147】
また、−側のアナログ入力VINNの電位が負の電源電圧に近い電位の場合、NODE2の電位は、S2Nを構成するNMOSトランジスタのゲート容量により、負の電源電圧を超えて低下する可能性がある。VINNおよびNODE2が負の電源電圧(0V)に近く、かつ、スイッチS2Nがクローズ(導通、ゲートが正の電源電圧5V)の場合に、NMOSトランジスタのゲート直下に反転層が形成され、ゲート酸化膜による容量がゲートとドレイン(およびソース)間に挿入されるからである。
【0148】
これを防ぐために、図1の回路では、S2P、S2NをOFFした後、NODE1とNODE2の電位を等しくするスイッチS4をONした。図4の回路では、スイッチS4に加えて、NMOSトランジスタNM7、NM8、PMOSトランジスタPM7、PM8を設けている。そして、スイッチS2P、S2NをOFFする際、NM7のゲート電位NG7をLからH(オン)とする。また、PM7のゲート電位PG7をHからL(オン)とする。同様に、NM8のゲート電位NG8をLからH(オン)とする。また、PM8のゲート電位PG8をHからL(オン)とする。
【0149】
PM7、NM7が本発明の第1調整MOSトランジスタに相当する。また、PM8、NM8が本発明の第2調整MOSトランジスタに相当する。また、PM7、PM8が本発明の第3MOSトランジスタに相当する。また、NM7、NM8が本発明の第4MOSトランジスタに相当する。
【0150】
スイッチS2Pを構成するPMOSのゲート容量と、PM7の容量をほぼ等しくしておけば、S2Pを構成するPMOSをOFFする際に、NODE1の電位を上昇させようとする電荷を、PG7をHからLとすることで相殺できる。同様に、スイッチS2Pを構成するNMOSのゲート容量と、NM7の容量をほぼ等しくしておけば、スイッチS2Pを構成するNMOSをOFFする際にNODE1に、S2Pから注入される電荷を、NG7をLからHとすることで相殺できる。
【0151】
スイッチS2Nを構成するPMOSのゲート容量と、PM8の容量をほぼ等しくしておけば、S2Nを構成するPMOSをOFFする際に、NODE2の電位を下降させようとする電荷を、PG8をHからLとすることで相殺できる。同様に、スイッチS2Nを構成するNMOSのゲート容量と、NM8の容量をほぼ等しくしておけば、S2Nを構成するNMOSをOFFする際にNODE2に、S2Nから注入される電荷を、NG8をLからHとすることで相殺できる。
【0152】
このように、図4のNM7、PM7、NM8、PM8によっても、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えることがないようにできる。
【0153】
図1の説明では、一例として、S2P、S2Nを同時にOFFするものとして説明したが、S1をOFFし、SW2からSW5、SW19、SW21を、フローティングとし、SW8からSW11、SW20、SW22をフローティングとすることで、トッププレートTOP+、TOP−の電荷は保存される。したがって、S2P、S2Nの両方を必ずしもOFFとしなくても変換は可能である。また、S2P、S2NをOFFするタイミングは、サンプリングの終了時点以降であれば必要に応じて、遅い時刻とすることが可能である。さらに、S2P、S2NをOFFするタイミングは同時であることも必須ではない。
【0154】
S2P、S2NがOFFする時刻が異なる時刻の場合には、S2PがOFFする時刻に、NM7のゲート電位NG7をLからHとする。また、そのとき、PM7のゲート電位PG7をHからLとする。S2NがOFFする時刻に、NM8のゲート電位NG8をLから
Hとする。また、そのとき、PM8のゲート電位PG8をHからLとする。
【0155】
図1のS4をONすることで、S2P、S2NをOFFする直前のNODE1、NODE2の電位(すなわちアナログ入力電位VINP、VINN)のどちらか一方が、正の電源電圧に近い電位、あるいは、負の電源電圧に近い電位となっていても、NODE1、NODE2の電位差がある程度大きければ、NODE1、NODE2の電位は電源電圧範囲を超えないようにできる。
【0156】
しかし、例えば、VINP、VINNの電位がともに、負の電源電圧に近い電位で、かつ、その電位差が小さい場合には、S4の効果は小さい。図6の回路のように、S2P、S2Nから注入される電荷を相殺する容量NM7、PM7、NM8、PM8を用いることで、VINP、VINNがともに、例えば、0Vの場合でも、NODE1、NODE2の電位を電源電圧範囲内に制御することができるようになる。NM7、PM7、NM8、PM8とS4を併用すれば、より設計がしやすくなることはいうまでもない。
【0157】
同様に、例えば、VINP、VINNの電位がともに、正の電源電圧に近い電位で、かつ、その電位差が小さい場合に、S2P、S2Nから注入される電荷を相殺する容量NM7、PM7、NM8、PM8を用いることで、NODE1、NODE2の電位を電源電圧範囲内に制御することができる。
【0158】
以上説明したように、図4の回路構成によっても、図1の回路同様、S4、NM7、PM7、NM8、PM8により、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えることが抑制される。そのため、S3P、S3Nを通した、トッププレートTOP+、TOP−の電荷の破壊を避けることができ、電源電圧範囲のアナログ入力信号を変換する場合でも、正しい変換結果が得られるようになる。
【0159】
NM7、PM7、NM8、PM8以外は図1の回路と同じ回路なので、図1の回路同様、差動アナログ入力信号を、符号を仮定して(VINP>VINNを前提として)、デジタル値に変換する動作が実現でき、符号判定のための比較サイクルを省略することができ、その分、変換時間を高速化できる。
【0160】
《第3実施形態》
図5および図6は、本発明の第3実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。図5のSW2からSW5、SW8からSW11、SW13からSW16、SW19からSW22、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC12は容量を、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、COMP1はコンパレータを、CINP、CINNはコンパレータの入力を、COUT1はコンパレータ出力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12の容量アレイで構成されるDACを、示す。また、図6のRDACP、RDACNは抵抗DAC出力を、RDAC1は抵抗DACを、RD0からRD7は抵抗を、NRD1からNRD7は抵抗DACの内部のノードを、SEL1、SEL2はセレクタを、示す。図5において、図1、図4等の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ素子名等を与えて示している。
【0161】
抵抗DACとは、デジタルデータに対応する抵抗で分圧された電圧を取り出すことによりアナログデータを生成する回路をいう。
【0162】
容量Ca(aは整数)に併記されたbC(bは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C(等)、に示されるように重み付けがされている。図5のC1からC12が4ビットDACを構成している。また、図5の回路では、図1の回路と同様スイッチS4だけを図示しているが、第2実施形態(図4)で説明したNMOSトランジスタNM7、NM8、および、PMOSトランジスタPM7、PM8を用いることもできる。NM7、PM7、NM8、PM8を、図5から省略しているのは、図を簡単にする目的のためである。したがって、図5も含め以下の図においてもスイッチS4を使用する部分には、S4の代わりに、NMOSトランジスタNM7、NM8、および、PMOSトランジスタPM7、PM8を用いてもよい。また、S4とNM7、PM7、NM8、PM8とを併用してもよい。
【0163】
本実施形態(図5および図6)の回路が、図1、図4の回路と異なる点は、図1、図4の回路では、(例として4ビット)容量DACのみでAD変換回路が構成されていたのに対して、本実施形態の回路では、上位ビットを容量DACで決定し、下位ビットを抵抗DACで決定するCRダブルステージDACでAD変換を行なうよう回路が構成されている点である。図5および図6に示すように、容量と抵抗の複合DACに対しても、本発明の考え方を適用できる。
【0164】
図5および図6の回路の動作で、図1の回路、図4の回路の動作と同じ部分は説明を省略し、構成の異なる部分を中心に説明する。図1の回路では、アナログ入力に相当するデジタルコードを検索する場合に、C1のボトムプレートはVrefnに、C6のボトムプレートはVrefpに固定して、C2からC5のボトムプレートを、対応するデジタル値が1ならVrefpに、対応するデジタル値が0ならVrefnに接続していた(−側の容量DACは+側容量DACと対称に、対応するデジタル値が1ならVrefnに、対応するデジタル値が0ならVrefpに接続し、C7についても、C1と対称にボトムプレートをVrefpに固定し、C12についてもC6と対称にボトムプレートをVrefnに固定していた)。
【0165】
図1の回路のように1段の容量DACだけで、AD変換回路を構成しようとすると、例えば10ビットの分解能が必要な場合には、片側だけで2048個の単位容量が必要となり、占有面積が大きくなる問題があった。この占有面積の問題はDACをダブルステージDACとすることで解決できる。ダブルステージDACと、本発明の考え方を組み合わせる例を、図5に示す。
【0166】
図5のように、C1のボトムプレートに抵抗DAC出力RDACPを接続することで、CRダブルステージDACを構成することができる。また、−側容量DACのC7のボトムプレートに抵抗DAC出力RDACNを接続することで、−側容量DACについても、CRダブルステージDACを構成することができる。
【0167】
図6のRDAC1は下位3ビットを変換するための抵抗DACの一例を示し、単位抵抗RD0からRD7により基準電圧(VrefpとVrefnの電位差)を8等分する(低い電位から順番にNRD1からNRD7まで符号を与えた)。SEL1はVrefnと、抵抗DACの内部ノードNRD1からNRD7のうちの1つの電位を入力デジタル値により選択し、RDACPに出力する(最も素直に構成すると、入力デジタル値が000のときに、Vrefnを出力し、デジタル値が大きくなるにしたがって、NRD7までの値を出力する)。
【0168】
SEL2はVrefpとNRD7からNRD1までの電位のうちの1つの電位を入力デジタル値により選択し、RDACNに出力する(RDACPと対称に、入力デジタル値が
000のときに、Vrefpを出力し、デジタル値が大きくなるにしたがって、しだいに低い電位、NRD1までの値を出力する)。
【0169】
C1のボトムプレートに抵抗DAC出力RDACPを接続し、−側容量DACのC7のボトムプレートに抵抗DAC出力RDACNを接続することで、抵抗DAC出力RDACP、RDACNが、トッププレート電位に与える影響を、容量DACのビット数相当分、小さくでき、図5、図6の場合は4ビット容量DACと3ビット抵抗DACで、合計7ビットのDACとして動作させることができる。これは、例えば、(+)側容量DACの合計サンプリング容量に対して、1/32の大きさを持つ単位容量1Cを介して、抵抗DAC出力をトッププレート電位TOP+に加算するためである。
【0170】
ところで、図1の説明で用いた式(19)から式(23)から分かるように、入力したアナログ電位は、片側のDACだけを考えたときには、1/2になっている。すなわち、片側の容量DACに着目すれば、入力電位差VINP−VINNの1/2の振幅の信号と、基準電位差Vrefp−Vrefnの1/2の振幅の信号とを比較する式となっている。これを両側の容量DACの出力信号の差(+側TOP+と、−側TOP−の電位差)を考慮すると、入力電位差VINP−VINNの信号と、基準電位差Vrefp−Vrefnの信号とを比較する式となっている。
【0171】
したがって、1/32の大きさに減衰させられた、抵抗DAC出力(RDACP、RDACN)は、TOP+、TOP−にとって1/16に減衰していることに相当し、4ビット容量DACのビット数分重みが小さくなっている。これにより、図5のDACは合計7ビットのDACとして働くことになる。
【0172】
図5および図6のように、DACを容量と抵抗で構成されるダブルステージDACとしても、図1の回路で示した、スイッチS2P、S2N、S1、S3P、S3N、S4で構成される回路部分とその動作に変更は必要ないので、図1、図4の回路と同様の効果が図5の回路においても得られる。
【0173】
以上説明したように、CRダブルステージDACを用いた場合でも、本発明が適用できる。すなわち、スイッチS4(あるいはNMOSトランジスタNM7、NM8、およびPMOSトランジスタPM7、PM8)とスイッチS1、S2P、S2N、S3P、S3Nの組み合わせによるNODE1およびNODE2の電位変動抑制技術がそのまま適用できる。したがって、占有面積を小さく抑えられるダブルステージDACの利点と、電源電圧範囲のアナログ入力信号を変換する場合でも、正しい変換結果が得られる特性と、符号判定のための比較サイクルを省略することによる変換時間の高速化とを両立できる。
【0174】
《第4実施形態》
図7および図8は、本発明の第4実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。図7のSW2からSW5、SW8からSW11、SW15、SW16、SW19からSW24、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC14は容量を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CINP、CINNはコンパレータの入力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6、C13の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12、C14の容量アレイで構成されるDACを、示す。また、図8のRDACLP、RDACUP、RDACLN、RDACUNは抵抗DAC出力を、VOFFP、VOFFNは変換結果にオフセットを与えるためのバイアス電位を、RDAC2は抵抗DACを、RU1からRU14、RH1からRH8は抵抗を、NRU1からNRU4、NRU8、NRU12からNRU15は抵抗DAC
の内部のノードを、SEL3、SEL4、SEL5、SEL6はセレクタを、示す。
【0175】
図1、図4、図5等の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ名称を与えて示している。また、図を簡単にするために、VINP、VINN、S2P、S2N、コンパレートCOMP1等、一部図から省略している部分があるが、省略した部分は、特に断らない場合は、図1、図4、図6等と同じ構成になっているものとする。
【0176】
容量Ca(aは整数)に併記されたbC(bは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C(等)、に示されるように重み付けがされている。
【0177】
図5および図6の回路では、C1、C7のボトムプレートに抵抗DAC出力を供給する回路例を示したが、図7および図8の回路では、C1、C7に加えて、C13、C14を設けて、C1、C13、C7、C14のボトムプレートに抵抗DAC出力を供給し、C1、C7あるいは、C13、C14によりそれぞれの抵抗DAC出力を容量により加算する回路例を示した。本実施形態では、図7および図8のような回路構成においても、スイッチS1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4(およびNM7、PM7、NM8、PM8)の構成に変更を加えることなく、本発明を同様に適用できることを示す。
【0178】
図7の回路が、図5等の回路と異なる点は、図5等の回路では、上位ビットを容量DACで決定し、下位ビットを単独の抵抗DACで決定する構成だったのに対して、図7では、さらに別の抵抗DAC出力を加算するための容量C13、C14が設けられている点である。
【0179】
図7および図8の回路の動作で、図5および図6の回路の動作と同じ部分は説明を省略し、構成の異なる部分を中心に説明する。
【0180】
まず、図8により、抵抗DACの構成について説明する。図8のRDAC2は下位4ビットを変換するための抵抗DACとして働く。RU1からRU14、RH1からRH8は同じ抵抗値を持つ単位抵抗を表わしている。RH1からRH4は単位抵抗を2つ並列接続したものを直列接続しているので、結局4つの抵抗で1つの単位抵抗と等価となる。RH5からRH8についても同様に4つの抵抗で合成抵抗は、単位抵抗と等価となる。したがって、RU1からRU14とRH1からRH8で、基準電圧(VrefpとVrefnの電位差)は16等分される。抵抗DACの内部ノードには、電位の低い順にNRUe(eは整数)という符号を与えた。ここで、NRUeのeは、16等分した基準電位のe/16の電位に対応している。
【0181】
RH5からRH8でNRU15とVrefpの電位差をさらに2分割したVOFFNは、Vrefpから、(Vrefp−Vrefn)/32低い電位となる。同様に、RH1からRH4で、NRU1とVrefnの電位差をさらに2分割したVOFFPは、Vrefnから、(Vrefp−Vrefn)/32高い電位となる。
【0182】
RDAC2は4ビットのデジタル信号を入力して、上位2ビットに相当する電位をRDACUNとRDACUPに出力し、また下位2ビットに相当する電位をRDACLNと、RDACLPに出力する4ビット入力4出力DAC回路として動作する。
【0183】
Vrefn、NRU1、NRU2、NRU3の電位から1つがSEL5により選択されて、RDACLPに出力される。RDAC2の入力下位2ビットが00のときには、Vrefnが出力され、01、10、11に対応してそれぞれ、より高い電位NRU1、NRU2、NRU3が選択される。
【0184】
RDACLNはRDACLPと対称な電位を出力する。Vrefp、NRU15、NRU14、NRU13の電位から1つがSEL4により選択されて、RDACLNに出力される。RDAC2の入力下位2ビットが00のときには、Vrefpが出力され、01、10、11に対応してそれぞれ、より低い電位NRU15、NRU14、NRU13が選択される。
【0185】
次に、RDACUPの電位について説明する。Vrefn、NRU4、NRU8、NRU12の電位から1つがSEL6により選択されて、RDACUPに出力される。RDAC2の入力上位2ビットが00のときには、Vrefnが出力され、01、10、11に対応してそれぞれ、より高い電位NRU4、NRU8、NRU12が選択される。
【0186】
次に、RDACUNの電位について説明する。RDACUNはRDACUPと対称な電位を出力する。Vrefp、NRU12、NRU8、NRU4の電位から1つがSEL3により選択されて、RDACUNに出力される。RDAC2の入力上位2ビットが00のときには、Vrefpが出力され、01、10、11に対応してそれぞれ、より低い電位NRU12、NRU8、NRU4が選択される。
【0187】
このような特性を持った、RDACUP、RDACLP、RDACUN、RDACLNを図7のように容量DACの最小の容量C1、C13、C7、C14のボトムプレートに供給することで、抵抗DAC出力を容量加算するCRダブルステージDACを構成することができる。
【0188】
図7のC1、C7は、図5の回路のC1、図1の回路のC1、C7同様、サンプリング容量としても働く。これと並列にC13、C14を設ける。このC13、C14はVINP、VINNをサンプリングする容量ではないので、容量DACの動作自体は、C1からC12を考えると図5の回路と等価となる。
【0189】
図7の回路は、これらの回路部分にC13、C14が付加されて、トッププレート電位TOP+とTOP−の電位にC13、C14でRDACLPの電位とRDACLNの電位を加算していると考えることができる。
【0190】
図1あるいは、図5において、トッププレートと所定の電位との間に寄生容量があったとしても、TOP+とTOP−で、その寄生容量が等しければ、結果に影響を与えない。つまり、容量DACの動作は、図7において、C13、C14がある場合とない場合で、大筋で一致する。これらのことから、C13、C14を別途設けて、そのボトムプレートに抵抗DAC出力を加えて、トッププレートTOP+とTOP−に、RDACLPの電位とRDACLNの電位を(全体の容量と1Cの容量とで決まる重みで)加算することの妥当性が理解されよう。
【0191】
ここで、VOFFPとVOFFNの目的を説明しておく。AD変換回路においては、アナログ入力電位とデジタル変換結果の入出力特性において、デジタルコード(変換結果)の遷移点を、図1、図5などの回路で実現される特性から1/2×LSBずらすことが望まれる場合がある。図7のC13、C14、とサンプリング時にこれらのボトムプレートに供給されるVOFFPとVOFFNは、そのためのものである。
【0192】
既に述べたように、VOFFNの電位は、Vrefpから、(Vrefp−Vrefn)/32低い電位となる。VOFFPは、Vrefnから、(Vrefp−Vrefn)/32高い電位となる。RDAC2で16分割されたそれぞれの電圧NRUe(eは整数)が、図8のAD変換回路のLSBに相当するので、VOFFP、VOFFNは正負の基
準電圧から1/2×LSB相当の電圧を、サンプリング時に、C13、C14のボトムプレートに供給している。
【0193】
+側の信号で考えた場合、サンプリング時には、+側容量DACの全体の1/32の容量を持つC13に1/2×LSB相当の電圧が供給される。そして、検索時には、C13には、0Vを基準にして、0/16、1/16、2/16、または3/16の電圧(0〜3LSB相当の電圧)が抵抗DAC出力VOFFPとして、入力されることになる。−側容量DACおよび抵抗DAC出力VOFFNについても、同様である。
【0194】
これにより、サンプリング結果を、変換開始とともに、1/2×LSB相当の電位ずらす働きをする。
【0195】
図7および図8では容量DACの分解能が4ビット、抵抗DACの分解能が4ビット(2ビット+2ビット)の場合を例として示したが、図7および図8の場合に限らず、図1、図5の回路も含めて、(容量DAC、抵抗DACともに)一般の分解能の場合に容易に、本発明の考え方を適用できる。
【0196】
図7および図8のような構成をとることで、本実施形態の効果に加えて、面積の削減の効果を得られる。
【0197】
図7および図8のように容量DACを、複雑なCRダブルステージDACに変更しても、図1あるいは、図4で説明した、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4に必要な制御とその働きに影響はない。このように、図7および図8のような構成のCRダブルステージDAC(サンプリング結果を1/2×LSB相当だけシフトしてデジタルデータを生成する回路)により構成される逐次比較型AD変換回路にも、本発明の考え方を適用できる。
【0198】
《コンパレータの構成》
ここで、図9を参照して、本発明の各実施形態に係るAD変換器に適用可能なコンパレータを説明する。図1、図4−図8では、主に容量DACまでの回路の構成例と、スイッチS4などの操作の考え方を説明してきた。図9では、容量DAC出力、TOP+とTOP−の電位差を検出するコンパレータの回路例を示す。
【0199】
図9のSW13からSW16、SW25からSW29、S1はスイッチを、CC1からCC5は結合容量を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、CINP、CINNはコンパレータ入力を、VCMはサンプリング時のコンパレータのバイアス電位(2.5V)を、early、late、convは図中に示すタイミング信号を、AMP1からAMP4は増幅回路を、NC1からNC10は内部のノードを、COUT2はコンパレータの比較結果を、示す。図1、図5−図8等と対応するノード名等には同じ素子名、ノード名等を与えて示している。
【0200】
スイッチに併記されたタイミング信号名は、スイッチが閉じられているタイミングを示す。図9のスイッチの状態は、VINP、VINNの電位を容量DACにサンプリングする状態のスイッチの制御を示している。
【0201】
まず、図9のVINP、VINNの電位を容量DACにサンプリングする状態について、説明する。
【0202】
既に説明したように、容量DACのトッププレートTOP+と、TOP−はS1によって同電位、ほぼ入力アナログ電位のコモン電位になるように制御される。
【0203】
容量DACのスイッチを操作し、コンパレータでビットを決定していく比較期間の最終時点では、TOP+と、TOP−、および、コンパレータ入力CINP、CINNの最終的な電位はほぼVCM(基準電位の1/2)になる。なぜなら、第1実施形態〜第4実施形態で説明したコンパレータCOMP1は、(+)側容量DACの出力信号(+側トッププレートTOP+の電位)および−側容量DACの出力信号(−側トッププレートTOP−の電位)を比較し、その電位差がなくなるように(+)側容量DACおよび(+)側容量DACが制御されるからである。すなわち、比較期間の最終時点では、TOP+と、TOP−、および、コンパレータ入力CINP、CINNの最終的な電位は、コンパレータCOMP1のオフセットを無視すれば、基準電位の1/2になる。
【0204】
この場合、基準電位の1/2のコモン電位を加えた状態でコンパレータのオフセット電圧をなんらかの手段で記憶し、オートゼロを実行することが望ましい。
【0205】
ところが、サンプリング中のTOP+と、TOP−の電位はアナログ入力VINPとVINNのコモン電位となる。一般には、このアナログ入力VINPとVINNのコモン電位と、基準電位の1/2((Vrefp+Vrefn)/2)が一致することは期待できない。そこで、サンプリング中は、SW15とSW16によりCINPとCINNを、TOP+と、TOP−から切り離しておき、別途、CINPとCINNに、基準電位の1/2((Vrefp+Vrefn)/2)つまりVCMを与えて、オフセット電圧を記憶し、オートゼロを実行する。
【0206】
例えば、図9のAMP1にオフセットがあると、CINP、CINNに同じVCM((Vrefp+Vrefn)/2)の電位を与えても、その出力NC1、NC2は同電位とはならない。これをCC1、CC2に記憶しておくことで、オフセット電圧を相殺することができる。
【0207】
CINP、CINNに、例えば、等しい電位VCMを与える。このとき、NC1とNC2の電位は、AMP1のオフセット電圧により、等しい電位とはならない。仮に、NC1の電位が電源電圧の1/2+100mV、NC2の電位が電源電圧の1/2−100mVとなったとする。SW25、SW26は閉じておく。NC3、NC4の電位は、AMP2のオフセット電圧相当の電位となっている。
【0208】
仮にAMP2のオフセット電圧が10mV(NC4がNC3より10mV大きいときに、AMP2の出力電位が電源電圧の1/2程度の電圧となるとする)とすると、NC4の電位は電源電圧の1/2+5mV、NC3の電位は、電源電圧の1/2−5mVとなる。NC1の電位は、電源電圧の1/2+100mV、NC2の電位は電源電圧の1/2−100mVとなる。つまり、CC1の両端の電位は、電源電圧の1/2+100mVと電源電圧の1/2−5mVとなり、CC2の両端の電位は、電源電圧の1/2−100mVと電源電圧の1/2+5mVとなる。
【0209】
AMP1、AMP2にオフセット電圧があっても、サンプリング中に、CC1、CC2に電荷を蓄えることで、NC5、NC6の電位をほぼ等しい電位とできる。これにより、CINP、CINNの電位差が生じると、NC5、NC6の電位がそれぞれ変化し、CINP、CINNの大小関係を、オフセット電圧に影響されずに判定することができるようになる。
【0210】
既に説明したように、VINP、VINNを容量DACにサンプリングする期間には、SW25、SW26、SW27、SW28、SW29を閉じておく。SW25、SW26を閉じておくことで、NC3とNC4の電位差は、AMP2のオフセット電圧程度の値と
なる。
【0211】
AMP3についても、同様に結合容量CC3、CC4にオフセット電圧が記憶される。NC7とNC9の電位が等しくなるので、増幅率が非常に大きい場合、NC8とNC7の電位差はオフセット電圧に等しくなる。なぜなら、NC8とNC7の電位差がオフセット電圧に等しくない場合、出力電圧は+あるいは−の電源電圧程度の値となるからである。(増幅率が非常に大きい極限を考えれば、理解が容易となる。)CC3、CC4に、このNC7、NC8の電位差がAMP3のオフセット電圧に等しいという情報が記憶されているので、NC5、NC6の電位が、サンプリング時の状態から変化し、どちらかが高くあるいは低く変化すると、AMP3のオフセット電圧に影響されずに、その大小関係をAMP3により判定することができる。
【0212】
さらに、AMP4についても、結合容量CC5にオフセット電圧が記憶される。
例えば、NC9が、理想的な値電源電圧の1/2にあったとする。AMP4の論理しきい値が電源電圧の1/2であれば、AMP4のオフセットは0となるが、実際には、AMP4の論理しきい値は製造条件により、電源電圧の1/2からずれる。このような場合でも、SW29によりNC10とCOUT2の電位を等しくすることで、サンプリング中のNC10の電位をAMP4の論理しきい値とできる。これにより、NC9の電位がサンプリング中の電位より上昇したか、あるいは低くなったかを、AMP4とCC5により検出することができる。
【0213】
VINP、VINNを容量DACにサンプリングした後、earlyが併記されたスイッチが開放される。次に、lateが併記されたスイッチが開放され、convが併記されたスイッチが閉じられる。
【0214】
図9に例として、示すような回路で、容量DACの出力TOP+と、TOP−の電位差を検出し、その大小関係を判定することができる。
【0215】
《第5実施形態》
図10は、本発明の第5実施形態に係る逐次比較型AD変換回路のブロック図の一例を、また図11はその動作タイミング例を、示している。ここでは、容量DACとして、図4に示したスイッチS1およびPMOSトランジスタPM7、PM8、MNOSトランジスタNM7、NM8を含む回路を使用する。
【0216】
図10のVINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、COUTはコンパレータ回路出力を、RDOは抵抗DAC出力を、CNTRは抵抗DACの制御信号を、CNTCは容量DACの制御信号を、CLKはAD変換回路のタイミング全般を規定するクロック入力を、SPCはサンプリング期間、S3P、S3NをONするディスチャージ期間(サンプリング容量の電荷を0に初期設定する期間)を規定する信号を、D[11:0]は(例えば)12ビットのAD変換結果を、CDAC1は容量DACを、COMPはコンパレータを、RDAC3は抵抗DACを、CNTは逐次比較を制御する制御回路を、示す。図10において、図1−図9の回路と対応する部分には、同じ素子名、端子名を与えて示した。
【0217】
図10の回路の動作を、図11を用いながら説明する。図11に示すようにクロック信号CLKが入力されているものとする。制御信号SPCがHに変化した後、例えば、2.5クロック(CLKのサイクル時間の)期間、S3P、S3NがONして、容量DACのサンプリング容量の電荷を0に初期化する。次に、SPCがHからLに変化してから1クロック期間後まで、VINP、VINNがサンプリングされる(S3P、S3NがONし
ている期間を図11では“discharge期間“、その後のアナログ入力信号をサンプリングするサンプリング期間を“sampling期間”として示した)。
【0218】
サンプリング期間終了後に、容量DAC(CDAC1)、抵抗DAC(RDAC3)の入力信号を制御してMSBから順番にLSBまで決定していく(図11にはcompare期間として示した)。LSBの決定が終了した後、変換結果D[11:0]が有効となる。
【0219】
図10の発明の回路を、図11のタイミングで動作させるように設計し、各部の波形を回路シミュレーションにより求めた例を図12A−図12D、図13A−図13C、図14A−図14Cに示す。ここで、図10に示す容量DACであるCDAC1の回路としては、図4に示した回路を使用した。スイッチS1、S2P、S2N、S3N、S3P、S4は、それぞれ、図3のPM5とNM5のように、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタを組み合わせて構成した。
【0220】
これらのNMOSトランジスタ、PMOSトランジスタ、および図4に示すPM7、NM7、PM8、NM8等、各トランジスタはチャネル長約0.7umの5V耐圧のMOSトランジスタを仮定したMOSモデルを使用し、SPICEシミュレータにより動作波形を求めた。
【0221】
図12A−図12Dは、電源電圧5V、Vrefp=5V、Vrefn=0V、VINP=1.2mV、VINN=0Vの場合の各部の波形を(VINPに5Vを4096分割した1/4096を入力した場合を)示す。ただし、図12Dは、図12Aの波形で、サンプリングからコンパレータでの比較に移行する時点を拡大した結果である。
【0222】
また、図13A−図13Cは、電源電圧5V、Vrefp=5V、Vrefn=0V、VINP=4.998V、VINN=0Vの場合の各部の波形を(VINPに5Vを4096分割した4094/4096を入力した場合を)示す。
【0223】
また、図14A−図14Cは、電源電圧5V、Vrefp=5V、Vrefn=0V、VINP=1.666V、VINN=0Vの場合の各部の波形を(VINPに5Vを4096分割した1365/4096を入力した場合を)、示す。
【0224】
12ビットのAD変換の例なので、期待される変換結果は、図12A−図12Cの場合が000000000001、図13A−図13Cの場合が111111111110、図14A−図14Cの場合が010101010101、となる。
【0225】
図12Aの波形は、図1、図4あるいは図7のNODE1、NODE2に相当する部分の波形を示している。図12A−図12Cを求めたシミュレーション回路では、ディスチャージ期間(サンプリング容量の電荷を0に初期設定する期間)にNODE2の電位を、VINN、トッププレートTOP+、TOP−の電位、NODE1の電位もVINNの電位に等しくなるように、スイッチを制御している。入力は、VINP=1.2mV、VINN=0Vと非常に小さいので、図12Aでは、NODE1とNODE2の電位は、ほとんど0Vに見える。
【0226】
また、図12Aのグラフでは、コンパレータでの比較期間に、NODE1、NODE2の電位は、電源電圧範囲を超えていないように見える。しかし、図12Dのように、サンプリングからコンパレータでの比較に移行する時点を拡大すると、さらに細かい現象が明示される。図12Dによれば、サンプリングからコンパレータでの比較に移行する時点で、NODE2の電位が−0.08V程度に低下していることが分かる。これは、すでに述
べたように、図4において、VINNの電位がほぼ0V、かつ、NODE2の電位がほぼ0VでスイッチS2Nを遮断する場合に、S2Nを構成するNMOSトランジスタに反転層が形成されているので、その反転層を通じてゲート容量がゲートと、ドレイン、ソースの間に接続され、S2Nを構成するNMOSトランジスタのゲート電位が5Vから0Vに変化することにより、ゲート容量を介してNODE2の電位が低くなるためである。
【0227】
しかし、図12Dのシミュレーション結果では、図4で説明したように、S2PおよびS2N遮断時、S4によってNODE1とNODE2がイコライズされる。さらに、S2PおよびS2Nを構成するトランジスタのゲート電位と逆方向に、NODE1とNODE2に接続されたトランジスタNM7、NM8、PM7、PM8のゲート電位を変化させる(これらのトランジスタをオンにする)。その結果、一旦、−0.08V程度に低下したNODE2の電位が上昇し、電源電圧範囲内に収まっていることが分かる。さらに、イコライズにより、NODE1とNODE2の電位は等しい電位となっていることも分かる。
【0228】
このように、可能な限りノードNODE1、NODE2の電位を電源電圧範囲に収めるように制御することで、スイッチS3P、S3Nを通して、トッププレートTOP+、TOP−に流れる電流を低減することができる。これにより、トッププレートTOP+、TOP−の電荷が失われることが抑制され、より正確な変換結果が得られる。
【0229】
サンプリング終了後、コンパレータでの比較を始める(12A図では、コンパレータでの比較、として示した)。コンパレータ出力が000000000001と変化していることが分かる(図12Cの波形図)。これは、上で述べた期待値に一致する。
【0230】
図12B(容量DAC出力の波形として示される図)は、TOP+、TOP−の波形を示している。サンプリング期間中、TOP+、TOP−の電位は入力コモン電位となるので、ほぼ0Vとなっている。比較が始まると、コモン電位は、約2.5Vとなり、電位差が大きい状態からしだいに電位差が小さい状態に変化していき、最終的には、TOP+、TOP−の電位がほぼ一致する。
【0231】
図13A−図13Cでは、NODE1とNODE2の電位は、ディスチャージ期間には、VINNによって与えられる0Vとなっている。図13Aよりサンプリング期間には、VINPとVINNの電位がそれぞれ約5Vと0Vなので、NODE1とNODE2の電位はそれぞれ約5Vと0Vとなることが分かる。図13BのTOP+、TOP−の波形より、サンプリング期間中に、TOP+、TOP−の電位が入力コモン電位約2.5Vとなっていることが分かる。また、コンパレータでの比較期間に、NODE1、NODE2の電位は、電源電圧範囲を超えていないことも分かる。
【0232】
図13Cより、コンパレータ出力は、期待値111111111110に一致していることも分かる。TOP+、TOP−は電位差が大きい状態からしだいに電位差が小さい状態に変化していき、最終的には、やはり、TOP+、TOP−の電位がほぼ一致する。符号は図12の場合と逆となる。
【0233】
図14A−図14Cでは、NODE1とNODE2の電位は、ディスチャージ期間には、VINNによって与えられる0Vとなっている。図14Aより、サンプリング期間には、VINP、VINNの電位が約1.6Vと0Vなので、NODE1とNODE2の電位はそれぞれ、約1.6Vと0Vとなることが分かる。図14BのTOP+、TOP−の波形より、サンプリング期間中に、TOP+、TOP−の電位が入力コモン電位約0.8Vとなっていることが分かる。また、コンパレータでの比較期間に、NODE1、NODE2の電位は、電源電圧範囲を超えていないことも分かる。
【0234】
図14Cより、コンパレータ出力は010101010101と変化し、コンパレータ出力が010101010101変化するのに対応して、その電位差の符号が交互に変化する。図14Bより、比較の終了時点では、TOP+、TOP−の電位がほぼ一致する。
【0235】
以上、図10、図11他に示される回路がそれぞれの図の説明で述べたように動作することが、波形図によっても理解されよう。
【0236】
《第6実施形態》
<概要>
図15を参照して、本発明の第6実施形態に係るAD変換器を説明する。本実施形態では、符号を仮定して差動アナログ入力をデジタル値に変換するAD変換器の入力部分にスイッチ(SW30、SW31、SW32、SW33)を設ける。また、(+)側アナログ入力信号VINPと(−)側アナログ入力信号VINNの大小関係を判定するコンパレータCOMP2を設ける。符号を仮定して差動アナログ入力をデジタル値に変換するAD変換器は、その入力ICDACPがICDACNより大きいか等しいことを仮定してアナログ差電位(ICDACP−ICDACN)をデジタル値に変換する場合、VINPがVINNより大きい場合には、VINPをICDACPに、VINNをICDACNに供給する。逆にVINPがVINNより小さい場合には、VINPをICDACNに、VINNをICDACPに供給するようスイッチ(SW30、SW31、SW32、SW33)を操作すればよい。
【0237】
これらの工夫により、符号を仮定しアナログ信号をデジタル値に変換するAD回路を使用して、必要な場合には、符号も含めてアナログ信号をデジタル値に変換する回路を実現できる。
【0238】
<実施例>
図15は本実施形態の逐次比較型AD変換回路のブロック図の一例を、示している。図15のVINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、COUTはコンパレータ回路出力を、RDOは抵抗DAC出力を、CNTRは抵抗DACの制御信号を、CNTCは容量DACの制御信号を、CLKはAD変換回路のタイミング全般を規定するクロック入力を、SPCはサンプリング期間、S3P、S3NをONするディスチャージ期間(サンプリング容量の電荷を0に初期設定する期間)を規定する信号を、D[11:0]は(例えば)12ビットのAD変換結果を、CDAC1は容量DACを、COMPはコンパレータを、RDAC3は抵抗DACを、ICDACP、ICDACNは容量DACの入力を、CNTは逐次比較を制御する制御回路を、SW30からSW33はスイッチを、COMP2は、入力の符号を判定するコンパレータを、SIGNはコンパレータにより判定された符号を、示す。図15の回路で、図10の回路に対応する部分には、同じ素子名、端子名を与えて示した。
【0239】
図1、図4−図10の回路では、VINPがVINNより大きい(VINP>VINN)ことを前提に、符号を仮定して、AD変換を行なうことで、変換サイクルを節約でき、高速化できることを説明した。応用上、VINPがVINNより大きいことが保証される場合には、図1、図4−図10の回路をそのまま適用すればよい。
【0240】
常に、VINPがVINNより大きいことが、保証されない場合には、例えば、図15に示す回路構成とすることで、本実施形態の利点を損なわずに、符号も含めてアナログ信号電位差をデジタル変換する回路を実現できる。
【0241】
図15の回路は、図10の回路とほとんど同じ構成となっており、その違いは、COM
P2、SW30からSW33なので、重複する部分の説明は省略し、図10の回路と異なる部分を中心に説明をすすめる。
【0242】
図10の回路の入力部分に、SW30からSW33を設けて、コンパレータCOMP2により、VINPとVINNの大小関係を調べる。VINP>VINNの場合には、SW31、SW32をONし、VINPをCDAC1の+側入力に、VINNをCDAC1の−側入力に供給する(COMP2出力SIGNによりSW30からSW33を制御する)。逆にVINP<VINNの場合には、SW30、SW33をONし、VINPをCDAC1の−側入力に、VINNをCDAC1の+側入力に供給する。
【0243】
このように制御することにより、CDAC以降のAD変換器にとっては、常に、+側入力が−側入力より大きくなるようにできるので、図1、図6、図7、図8、図10で説明した回路で常に正しい結果が得られる。このように回路を構成しておけば、応用上、信号の符号が、あまり変化せず、その符号が予測しやすい場合には、符号判定サイクルを省略でき、高速化できる。
【0244】
《第7実施形態》
図16は、本発明の第7実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。図16のSW2からSW5、SW8からSW11、SW15、SW16、SW19からSW22、S1、S2PA、S2PB、S2NA、S2NB、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC12は容量を、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、COMP1はコンパレータを、CINP、CINNはコンパレータの入力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6で構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12で構成されるDACを、示す。図1、図4の回路等の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ素子名、ノード名等を与えて示している。
【0245】
図16の回路は、図1の回路とほとんど同じ構成となっており、その違いは、S2PA、S2PB、S2NA、S2NBなので、重複する部分の説明は省略し、図1の回路と異なる部分を中心に説明をすすめる。
【0246】
図15で、VINP<VINNの場合に、本発明の考え方を適用する回路例を示した。図15では、例えば図1の回路の容量DACの入力部分に新たにスイッチを設ける回路例を示したが、図16のような方法も可能である。
【0247】
図16では、図1のS2P、S2Nの代わりに、S2PA、S2PB、S2NA、S2NBを設ける。VINP>VINNの場合には、S2PA、S2NAをONし、VINPをNODE1に、VINNをNODE2に供給する(例えば、COMP2出力SIGNによりスイッチを制御する)。逆にVINP<VINNの場合には、S2PB、S2NBをONし、VINPをNODE2に、VINNをNODE1に供給する。
【0248】
図16のような構成とすることで、図15のような構成で、スイッチの増加が問題となる場合には、スイッチの数を削減できる効果が得られる。
【0249】
図16のように回路を、構成することで、図16の回路は図15の回路と同様に動作させることができる。
【0250】
《第8実施形態》
図17、図18は、本発明の第8実施形態を示す回路図である。図17のSW2からSW5、SW8からSW11、SW15、SW16、SW19からSW24、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC14は容量を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CINP、CINNはコンパレータの入力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6、C13で構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12、C14で構成されるDACを、RDACLP、RDACUP、RDACLN、RDACUNは抵抗DAC出力を、VOFFP、VOFFNは変換結果にオフセットを与えるためのバイアス電位を、示す。
【0251】
図18の素子、ノード等は図9と同じなので、説明は省略する。図17、図18で、図8、図9等の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ名称を与えて示している。また、図を簡単にするために、VINP、VINN、S2P、S2N、RDAC2、等、一部図から省略している部分があるが、省略した部分は、特に断らない場合は、図1、図6、図7、図8、図9等と同じ構成になっているものとする。
【0252】
図17の回路は、図8の回路とほぼ同じ回路構成となっており、違いは、C13とC14の接続にある。図18の回路は図9と同じ回路となっており、C13、C14の接続先が記入されている点だけが異なる。説明が図8、図9と重複する部分については、省略し、図17に特有の部分について、図18を用いながら、説明する。
【0253】
図8の回路では、C13とC14のトッププレートはTOP+、TOP−としていた。C13、C14はアナログ入力信号VINP、VINNをサンプリングするサンプリング容量ではないので、TOP+とTOP−にとっては寄生容量と同じ働きをする。つまり、コンパレータでの比較時の最終的なコモン電位を、理想値から多少ずらす原因となる。図8の回路構成でも実際上問題がない場合が多いが、このコモン電位のずれをできるだけすくなくしたい場合には、図17のような構成が可能である。
【0254】
図17では、C13、C14のトッププレートは、容量DACのトッププレートTOP+、TOP−とは別のノードとする。C1からC6、C7からC12がそれぞれTOP+、TOP−につながれるので、その容量DACの動作は図7の回路と、同様となる。
【0255】
C13、C14はサンプリング容量ではないので、そのトッププレートの電位は、コンパレータ入力のコモン電位VCMとなっていれば都合がよい。このため、C13、C14のトッププレートは図18のコンパレータ入力CINP、CINNに接続される。
【0256】
サンプリング中は、CINP、CINNはVCMの電位になるので、C13、C14のトッププレートの電位もVCMとなる。サンプリング期間中に、TOP+、TOP−の電位は、入力アナログ電位のコモン電位となるが、SW15、SW16により、TOP+、TOP−とCINP、CINNは切り離されているので、問題はない。コンパレータでの比較が始まると、SW15、SW16がONし、CINP、CINNとTOP+、TOP−は同電位となり、そのコモン電位は基準電圧/2となる。CINP、CINNとTOP+、TOP−が同じ電位となるので、図17のように、C13、C14のトッププレートをTOP+、TOP−と別ノードとしていても、比較動作が始まると、図8の回路と同様に動作させることができる。
【0257】
この図17、図18のような構成とすることで、図8と同様の動作を実現しながら、サンプリングに寄与しないC13、C14をTOP+、TOP−から切り離すことができ、これにより、TOP+、TOP−の最終的なコモン電位の理想値からのずれを低減できる
効果が得られる。
【0258】
図17、図18の構成においても、図8の構成同様、複雑なCRダブルステージDACを使用しながら、本発明の考え方を適用できる。
【0259】
《実施形態の効果》
以上説明したように、第1実施形態〜第8実施形態に係るAD変換器では、スイッチS4、あるいはNMOSトランジスタNM7、NM8、PMOSトランジスタPM7、PM8を設けることにより、内部ノードNODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えた状態で維持されることがないよう制御できる。これにより、S3P、S3Nを通してトッププレートの電荷が失われることを低減できるので、電源電圧範囲のアナログ入力信号をデジタル値に変換する場合でも、より正確な変換結果が得られるようになる。
【0260】
また、第1実施形態〜第8実施形態に係るAD変換器によれば、(+)側容量DACのボトムプレートに供給されるアナログ入力VINPが、(−)側容量DACのボトムプレートに供給されるアナログ入力VINNより、大きいか、あるいは等しいことを仮定して、アナログ入力電位差(VINP−VINN)をデジタル値に変換することで、あらかじめ、VINP−VINN>=0が予想される場合には、従来回路(図2)では、必要だった符号決定のためのサイクルを省略して、AD変換を行なうことができる。これにより、符号決定に要する時間分、変換時間を短縮することができる。
【0261】
符号を仮定して差動アナログ入力をデジタル値に変換するAD変換器の入力部分にスイッチを設け、VINPがVINNより低い電位の場合には、スイッチにより入力信号を入れ替えることにより、符号を仮定しアナログ信号をデジタル値に変換するAD回路を使用して、必要な場合には、符号も含めてアナログ信号をデジタル値に変換する回路を実現できる。
【0262】
《その他》
(付記1)
第1アナログ信号が入力される第1アナログ端子と、
前記第1アナログ端子に第1アナログ信号を入力する第1入力スイッチと、
第2アナログ信号が入力される第2アナログ端子と、
前記第2アナログ端子に第2アナログ信号を入力する第2入力スイッチと、
第1基準電圧の供給を受ける第1基準電圧接続端子と、
第2基準電圧の供給を受ける第2基準電圧接続端子と、
前記第1アナログ端子から前記第1アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第1アナログ信号の比較の対象となる比較信号を生成する第1デジタルアナログ変換器と、
前記第2アナログ端子から前記第2アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第2アナログ信号の比較の対象となる比較信号を生成する第2デジタルアナログ変換器と、
前記第1デジタルアナログ変換器と第2デジタル変換器の出力側を相互に開閉可能に接続する第1スイッチと、
前記第1スイッチが開放されたときに、前記第1アナログ信号および第2アナログ信号の差分値と前記第1デジタルアナログ変換器の出力信号および第2デジタルアナログ変換器の出力信号の差分値とを比較する比較器と、
前記第1アナログ端子および第2アナログ端子の電位変動を制御する電位制御回路と、を備え、
前記第1デジタルアナログ変換器は、複数の容量素子と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第1アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいず
れかに接続する複数の第1スイッチ群と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する複数の出力側端子を共通に接続する第1共通端子と、を有し、
前記第2デジタルアナログ変換器は、複数の容量素子と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第2アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第2スイッチ群と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する複数の出力側端子を共通に接続する第2共通端子とを有し、
第1入力スイッチおよび第2入力スイッチが前記第1アナログ信号および第2アナログ信号を前記第1アナログ端子および第2アナログ端子に入力することにより前記第1デジタルアナログ変換器および前記第2デジタルアナログ変換器が第1アナログ信号および第2アナログ信号のサンプルデータを取り込む時点では、第1スイッチにより前記第1共通端子と第2共通端子とが相互に接続され、前記取り込みが完了したときには前記第1共通端子と第2共通端子との接続が開放され、
前記電位制御回路は、前記第1アナログ信号および第2アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後第1入力スイッチおよび第2入力スイッチが開放されるときに、前記第1アナログ端子の電位および第2アナログ端子の電位の変動を抑制する、アナログデジタル変換回路。
【0263】
(付記2)
前記電位制御回路は、前記第1アナログ端子と第2アナログ端子を相互に開閉可能に接続する第2スイッチを有し、
前記第1デジタル信号および第2デジタル信号のサンプルデータの取り込みが完了した後第1入力スイッチおよび第2入力スイッチが開放されるときに、第1スイッチによる接続が開放され、第2スイッチにより前記第1アナログ端子と第2アナログ端子とが相互に接続される、付記1に記載のアナログデジタル変換器。
【0264】
(付記3)
前記第1入力スイッチおよび第2入力スイッチのそれぞれは、ゲート電圧が前記第1基準電圧から第2基準電圧の間で制御されることにより開閉動作するMOSトランジスタをそれぞれ有し、
前記電位制御回路は、
ソースおよびドレインが前記第1アナログ端子に接続されるとともにゲートが前記第1基準電圧から第2基準電圧の間で制御される第1調整MOSトランジスタと、
ソースおよびドレインが前記第2アナログ端子に接続されるとともにゲートが前記第1基準電圧から第2基準電圧の間で制御される第2調整MOSトランジスタと、
前記第1デジタル信号および第2デジタル信号のサンプルデータの取り込みが完了した後、前記第1入力スイッチのMOSトランジスタのゲート電圧を第1基準電圧と第2基準電圧との間で制御することにより第1入力スイッチが開放されるときに、前記第1調整MOSトランジスタのゲート電圧を前記第1入力スイッチのMOSトランジスタのゲート電圧とは逆方向に制御し、前記第2入力スイッチのMOSトランジスタのゲート電圧を第1基準電圧と第2基準電圧との間で制御することにより第2入力スイッチが開放されるときに、前記第2調整MOSトランジスタのゲート電圧を前記第2入力スイッチのMOSトランジスタのゲート電圧とは逆方向に制御するゲート制御回路と、を有する付記1に記載のアナログデジタル変換器。
【0265】
(付記4)
前記第1スイッチおよび第2スイッチは、それぞれ、第1導電型の第1MOSトランジスタと第2導電型の第2MOSトランジスタを有し、第1MOSトランジスタのゲート電圧を第1基準電圧とするとともに第2MOSトランジスタのゲート電圧を第2基準電圧とすることにより導通され、第1MOSトランジスタのゲート電圧を第2基準電圧とするとともに第2MOSトランジスタのゲート電圧を第1基準電圧とすることにより遮断され、
前記第1調整MOSトランジスタおよび第2調整MOSトランジスタは、それぞれ、第1導電型の第3MOSトランジスタと第2導電型の第4MOSトランジスタとを有し、前記第1MOSトランジスタのゲート電圧が第2基準電圧とされるとともに第2MOSトランジスタのゲート電圧が第1基準電圧とされるときに、前記第3MOSトランジスタのゲート電圧が第1基準電圧とされ、前記第4MOSトランジスタのゲート電圧が第2基準電圧とされる付記3に記載のアナログデジタル変換器。
【0266】
(付記5)
第1アナログ信号が入力される第1アナログ端子と、
第1アナログ端子に第1アナログ信号を入力する第1入力スイッチと、
第2アナログ信号が入力される第2アナログ端子と、
第2アナログ端子に第2アナログ信号を入力する第2入力スイッチと、
第1基準電圧の供給を受ける第1基準電圧接続端子と、
第2基準電圧の供給を受ける第2基準電圧接続端子と、
前記第1アナログ端子から前記第1アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第1アナログ信号の比較の対象となる比較信号を生成する第1デジタルアナログ変換器と、
前記第2アナログ端子から前記第2アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第2アナログ信号の比較の対象となる比較信号を生成する第2デジタルアナログ変換器と、
前記第1デジタルアナログ変換器と第2デジタル変換器の出力側を相互に開閉可能に接続する第1スイッチと、
前記第1アナログ信号および第2アナログ信号の差分値と前記第1デジタルアナログ変換器の出力信号および第2デジタルアナログ変換器の出力信号の差分値とを比較する比較器と、を備え、
前記第1デジタルアナログ変換器は、複数の容量素子と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第1アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第1スイッチ群と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第1共通端子と、を有し、
前記第2デジタルアナログ変換器は、複数の容量素子と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第2アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のい
ずれかに接続する複数の第2スイッチ群と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第2共通端子と、を有し、
前記第1デジタルアナログ変換器の前記複数の容量素子は、その複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第1容量素子を含み、前記第1デジタル信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、その第1容量素子以外の容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に基づいて前記第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかが接続され、前記第1容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に拘わらず前記第1基準電圧端子が接続され、
前記第2デジタルアナログ変換器の前記複数の容量素子は、その複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第2容量素子を含み、前記第2デジタル信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、その第2容量素子以外の容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に基づいて前記第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかが接続され、前記第2容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に拘わらず前記第2基準電圧端子が接続されるアナログデジタル変換回路。
【0267】
(付記6)
前記第1アナログ信号の信号レベルと第2アナログ信号の信号レベルを比較する比較器と、
前記比較の結果により、第1アナログ信号と第2アナログ信号と入れ替え、第1アナログ
端子に入力される信号レベルが第2アナログ端子に入力される信号レベルよりも高くなるようにするスイッチとさらに備える付記5に記載のアナログデジタル変換器。
【符号の説明】
【0268】
COMP1 コンパレータ
NODE1
NODE2
S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4、SW2−SW5、SW8−SW11、SW13、SW14、SW15、SW16、SW19、SW20、SW21、SW22
スイッチ
Vrefp +側基準電位
Vrefn −側基準電位
TOP+ +側トッププレート
TOP− −側トッププレート
NM7、NM8 NMOSトランジスタ
PM7、PM8 PMOSトランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD(アナログ・デジタル)変換器に関連し、特に差動逐次比較型AD変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、比較的簡単な回路構成で実現され、比較的安価に製造できるCMOSプロセスとの整合性が高く、かつ中庸の変換時間と中庸の変換精度を実現できる、製品用途の広いAD変換器として、逐次比較型AD変換器が知られている。これら逐次比較型AD変換器の従来回路として、例えば、特許文献1−5および非特許文献1、2に示される回路が知られている。
【0003】
《電荷再分配型AD変換器の例1》
図19は、これらの中で代表的な、電荷再分配型AD変換器の差動容量DAC(デジタルアナログコンバータ)を示している。なお、非特許文献1に同様の回路が示されている。
【0004】
図19のSW1からSW18はスイッチを、C1からC12は容量(容量のみ組合わせを容量アレイともいう)を、VINPは+側(正、正相ともいう)のアナログ入力を、VINNは−側(負、逆相ともいう)のアナログ入力を、COMP1はコンパレータを、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(5V)を、Vrefnは−側の基準電位(0V)を、R1、R2は抵抗を、BUF1はバッファアンプを、CINP、CINNはコンパレータ入力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位を、COUT1はコンパレータの出力を、VIC、VICBは説明のために与えた内部のノード名を、(+)側容量DACはC1からC6の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12の容量アレイで構成されるDACを、示す。
【0005】
C1からC12に併記されたnC(nは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C、に示されるように2進に重み付けがされている。図19のC1からC12が4ビットDACを構成している。
【0006】
図19に図示されるスイッチの状態は、サンプリング時の状態を示しており、サンプリング時には、容量C1からC6に+側アナログ入力VINPの電位が充電され、容量C7からC12に−側アナログ入力VINNの電位が充電される。
【0007】
サンプリング時には、電圧ホロワであるバッファアンプBUF1の出力は、SW17およびSW18を通じてトッププレートTOP+およびTOP−に接続される。すなわち、SW17、SW18は閉じている。また、R1、R2により、ノードVICの電位は、VINPの電位とVINNの電位の中間の電位となる。ノードVICBの電位も電圧ホロワ(BUF1)によりVICの電位と等しくなる。VINPの電位とVINNの電位を、それぞれ、VINP、VINNで表わすと、VICBの電位は(VINP+VINN)/2となる。
【0008】
サンプリング時に、スイッチSW17、SW18が閉じているので、+側トッププレートTOP+と−側トッププレートTOP−の電位は、ともに(VINP+VINN)/2となる。
【0009】
このとき、コンパレータCOMP1の差動入力端子は、スイッチSW13、SW14によりともにバイアス電位VCMを供給される。すなわち、サンプリング時には、SW13、SW14はクローズ(導通)されている。また、トッププレートTOP+およびTOP−は、コンパレータCOMP1の差動入力端子とは、スイッチSW15およびSW16により遮断されている。すなわち、サンプリング時には、SW15、SW16はオープン(開放)されている。
【0010】
C1からC6で構成される(+)側容量DACのトッププレートTOP+に蓄えられる電荷QSAMPPは、式(1)で表わされる(C1からC6の合計容量を32Cで、表わす)。
【0011】
QSAMPP=−32C(VINP−(VINP+VINN)/2);
QSAMPP=−32C(VINP−VINN)/2; 式(1)
C7からC12で構成される(−)側容量DACのトッププレートTOP−に蓄えられる電荷QSAMPNは、式(2)で表わされる。
【0012】
QSAMPN=−32C(−VINP+VINN)/2; 式(2)
つまり、サンプリング時のトッププレートTOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2としておくことで、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。
【0013】
サンプリング終了後、SW13、SW14、SW17、SW18を開放し、SW15、SW16を閉じる。SW1からSW12を切り替えることで、C1からC12のボトムプレート(SW1からSW12につながる電極側)の電位を、Vrefp、Vrefn、のいずれかに変化させて、サンプリングしたアナログ電位差(VINPマイナスVINN)に対応したデジタルコードを、COUT1を利用しながら比較、検索する。以下、検索の手順の例について簡単に説明する。
【0014】
<符号ビットの決定>
まず、SW6をVrefpに、SW1からSW5をVrefnにつなぐ。C1からC5の合計容量16Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C6の容量16Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。式(1)の(+)側トッププレート(TOP+)に蓄えられる電荷QSAMPPが保存されるので、このときの(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpは、式(3)、式(4)で与えられる。
【0015】
−16C(Vrefp−Vtp)+16C(Vtp−Vrefn)
=−32C(VINP−VINN)/2; 式(3)
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2; 式(4)
【0016】
(−)側容量DACのスイッチは、(+)側容量DACのスイッチと対称に操作する。SW12をVrefnに、SW7からSW11をVrefpにつなぐ。C7からC11の合計容量16Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C12の容量16Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。式(2)の(−)側トッププレート(TOP−)に蓄えられる電荷QSAMPNが保存されるので、このときの(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnは、式(5)、式(6)で与えられる。
【0017】
−16C(Vrefp−Vtp)+16C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(5)
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2; 式(6
)
【0018】
つまり、VINP−VINN>0の場合、Vtp<Vtnとなり、VINPとVINNのどちらが高い電位かを判定することができる。図19の回路は、符号を含めた差動信号を扱える回路なので、この最初の比較で符号ビットを決定することができる。
【0019】
また、このとき、(+)側トッププレートTOP+の電位Vtpと、(−)側トッププレートTOP−の電位Vtnのコモン電位は、(Vrefp+Vrefn)/2となり、リファレンス電位の中心の電位とでき、コンパレータにとって最も動作余裕を大きく設定できる。ここで、コモン電位とは、差動入力の中心電位という意味である。
【0020】
<MSB(最上位ビット)の決定>
以下、説明を簡単にするために、VINP−VINN>0の場合(符号が+の場合)を考える。
【0021】
VINP−VINN>0の場合、SW6をVrefpに、SW12をVrefnにつなぐ。(+)側容量DACのスイッチSW1からSW5は、対応するデジタルコードが1ならVrefpに、対応するデジタルコードが0ならVrefnにつながれる。(−)側容量DACのスイッチSW7からSW11は、対応するデジタルコードが1ならVrefnに、対応するデジタルコードが0ならVrefpにつながれる(VINP−VINN>0の場合、SW1はVrefnにつながれ、SW7はVrefpにつながれる)。したがって、(+)側容量DACと、(−)側容量DACとは、同一のデジタルコードに対して対称に+側基準電位Vrefpまたは−側基準電位Vrefnにそれぞれ接続されることになる。
【0022】
以下、(符号ビットを除く)最上位ビットの決定について説明する。SW6をVrefpに、SW1からSW4をVrefnに、SW5をVrefpにつなぐ。C1からC4の合計容量8Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C5、C6の合計容量24Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。式(1)の(+)側トッププレートTOP+に蓄えられる電荷QSAMPPが保存されるので、このときの(+)側トッププレートTOP+の電位Vtpは、式(7)、式(8)で与えられる。
【0023】
−24C(Vrefp−Vtp)+8C(Vtp−Vrefn)=−32C(VINP−VINN)/2; 式(7)
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2+(Vrefp−Vrefn)/(2×2); 式(8)
【0024】
SW12をVrefnに、SW7からSW10をVrefpに、SW11をVrefnにつなぐ(なお、SW7は、2の補数を生成する場合に、−側基準電位Vrefnに接続される)。C7からC10の合計容量8Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C11、C12の合計容量24Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。式(2)の(−)側トッププレートTOP−に蓄えられる電荷QSAMPNが保存されるので、このときの(−)側トッププレートTOP−の電位Vtnは、式(9)、式(10)で与えられる。
【0025】
−8C(Vrefp−Vtp)+24C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(9)
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2−(Vrefp−Vrefn)/(2×2); 式(10)
【0026】
このトッププレートの電位がコンパレータの差動入力CINP、CINNになる。その差電位Vtp−Vtnを考えると、式(11)が得られる。
【0027】
Vtp−Vtn=−(VINP−VINN)+(Vrefp−Vrefn)/2;
式(11)
つまり、入力電位差VINP−VINNと、リファレンス電位差(Vrefp−Vrefn)を1/2倍した値との大小関係をコンパレータCOMP1により判定することができる。
【0028】
<MSBの次のビット以降の処理>
以上により、MSB(Most Significant Bit)に相当するSW5、SW11に対応するデジタルコードが決定できる。次に、スイッチSW4、SW10に対応するコード(符号ビットを除いて、2番目の上位ビット)の決定について説明する。
【0029】
仮にSW5、SW11に対応するデジタルコードが0に決定し、(VINP−VINN)は(Vrefp−Vrefn)/2より小さかったとする。この場合、(VINP−VINN)と(Vrefp−Vrefn)/4とを比較し、その大小関係を調べて、(VINP−VINN)の値の範囲を狭めていく。
【0030】
具体的には、(+)側容量DACにおいて符号ビットに対応するSW6をVrefpに、SW1からSW3、およびMSBに対応するSW5をVrefnに、SW4をVrefpにつなぐ。C1からC3、C5の合計容量12Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C4、C6の合計容量20Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。このときの(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpは、式(12)、式(13)で与えられる。
【0031】
−20C(Vrefp−Vtp)+12C(Vtp−Vrefn)=−32C(VINP−VINN)/2 式(12)
【0032】
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2+(Vrefp−Vrefn)/(2×4) 式(13)
【0033】
また、(−)側容量DACにおいては、(+)側容量DACと対称な接続をする。すなわち、符号ビットに対応するSW12をVrefnに、SW7からSW9、SW11をVrefpに、MSBに相当するSW10をVrefnにつなぐ。C7からC9、およびC11の合計容量12Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C10、C12の合計容量20Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。このときの(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnは、式(14)、式(15)で与えられる。
【0034】
−12C(Vrefp−Vtp)+20C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(14)
【0035】
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2−(Vrefp−Vrefn)/(2×4); 式(15)
【0036】
このトッププレートの電位がコンパレータの差動入力CINP、CINNになる。その差電位Vtp−Vtnを考えると、式(16)が得られる。
【0037】
Vtp−Vtn=−(VINP−VINN)+(Vrefp−Vrefn)/4;
式(16)
【0038】
このような接続により、MSB(SW5,SW11)をそれぞれデジタルコード0、MSBの次のビット(SW4,SW10)をそれぞれデジタルコード1、MSBの次のビットより下位のビットをそれぞれデジタルコード0、に対応するアナログデータを(+)側容量DAC、(−)側容量DACで生成する。これにより、入力電位差VINP−VINNと、リファレンス電位(Vrefp−Vrefn)を1/4倍した値との大小関係をコンパレータCOMP1により判定することができる。このように、SW1からSW12を操作し、C1からC12のボトムプレート電位をVrefpあるいは、Vrefnとする。これにより、VINP−VINNの電位差と、Vrefp−Vrefnを分割した電位の大小関係を判定することができ、それにより、サンプリングしたVINP−VINNの電位差の値の範囲を順次狭めていき、最終的なデジタル値を決定することができる。
【0039】
サンプリング時のトッププレートTOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2としておくことで、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。したがって、(+)側容量DACと(−)側容量DACのスイッチを対称に操作することで、それぞれの容量DAC出力を対称に動作させることができる。また、(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpと、(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnのコモン電位は、(Vrefp+Vrefn)/2となる(式(4)+式(6)、式(8)+式(10)、式(13)+式(15)参照)。すなわち、このコモン電位をリファレンス電位の中心の電位とできるので、動作余裕を最大にできる。このような回路と、その制御方法により、差動アナログ入力信号をデジタル値に変換する動作が実現されていた。
【0040】
《他の逐次比較型AD変換器の例2》
図20Aは、他の逐次比較型AD変換器の回路の概略を示している。なお、非特許文献2に同様の回路が示されている)。
【0041】
図20のSW13からSW16、S1、S2P、S2N、S3P、S3Nはスイッチを、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、COMP1はコンパレータを、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CDACPは(+)側の容量DACを、CDACNは(−)側の容量DACを、CINP、CINNはコンパレータ入力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位を、COUT1はコンパレータの出力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、示す。
【0042】
図19の従来回路では、バッファアンプBUF1と、抵抗R1、R2により、サンプリング時のトッププレート電位TOP+、TOP−の電位を、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)としていた。
【0043】
図20の従来回路では、スイッチS1、S2P、S2N、S3P、S3Nの操作により、サンプリング時のトッププレートTOP+、TOP−の電位を、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)とする。
【0044】
ここで、図20の従来回路で、サンプリング時のトッププレート電位TOP+、TOP−の電位を、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)とする仕組みについて説明する。
【0045】
まず、アナログ入力信号VINP、VINNのサンプリングに先立って、スイッチS3P、S3NをONする(図20B参照)。このときスイッチS2P、S2Nはオープンと
する。S3P、S3NをONすることで、CDACP、CDACNの容量の電荷が0となる。この後、S3P、S3NをOFFし、S1、S2P、S2NをONする(図20B参照)。S2P、S2NをONすることで、NODE1の電位はVINPに、NODE2の電位はVINNになる。CDACPの電荷が0、CDACNの電荷が0なので、CDACPのサンプリング容量とCDACNのサンプリング容量の値を等しくしておくと、S1をONしておくことで、TOP+、TOP−の電位は、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)となる。
【0046】
これにより、図19の従来回路同様、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。したがって、(+)側容量DACと(−)側容量DACのスイッチを対称に操作することで、それぞれの容量DAC出力を対称に動作させることができる。また、図19の場合と同様、容量DACを操作することで(+)側トッププレートTOP+の電位Vtpと、(−)側トッププレートTOP−の電位Vtnのコモン電位は、(Vrefp+Vrefn)/2となる。したがって、このコモン電位をリファレンス電位の中心の電位とできるので、動作余裕を最大にできる。このような回路と、その制御方法により、差動アナログ入力信号をデジタル値に変換する動作が実現されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開平6-164399号公報
【特許文献2】米国特許第5581252号明細書
【特許文献3】米国特許第4989002号明細書
【特許文献4】米国特許第4831381号明細書
【特許文献5】米国特許第4803462号明細書
【特許文献6】特開2000−201077号公報
【特許文献7】特開平11−17543号公報
【非特許文献】
【0048】
【非特許文献1】アール ケイ ヘスター他(R. K. Hester et al.)著," Fully Differential ADC with Rail-to-Rail Common-Mode Range and Nonlinear Capacitor Compensation", IEEE Journal of Solid-State Circuits,(米国), Feb. 1990、Vol. 25, No. 1, p.173-183
【非特許文献2】ジー プロミッツアー(G. Promitzer)著," 12-bit Low-Power Fully Differential Switched Capacitor Noncalibrating Successive Approximation ADC with 1 MS/s", IEEE Journal of Solid-State Circuits, (米国), July 2001,Vol. 36, No. 7, p.1138-1143
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
従来から、システムLSIあるいはMixed-Signal LSIと称されるLSIに代表されるように、微細化の進展とともに、CMOSデジタル回路とCMOSアナログ回路の同一チップ上への集積化の要求は増している。微細CMOSデジタル回路の高速性に見合った性能を確保したCMOSアナログ回路をできるだけ低コスト、低消費電力で集積することが求められている。
【0050】
このため、上述のように、従来技術により、小面積かつ中庸の変換時間と中庸の変換精度を実現する差動逐次比較型AD変換器が実現されているが、差動逐次比較型AD変換器の一層の低コスト化、低消費電力化、高速化が求められている。
【0051】
しかし、図19に示される従来技術(例えば、非特許文献1)では、サンプリング時のトッププレート電位TOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2とするために、VINPとVINNのコモン電位を発生する抵抗R1、R2とR1、R2で発生したコモン電位をトッププレートに供給するためのバッファアンプBUF1が必要となっていた。R1、R2の値を大きくして入力回路中の電流を小さくする(感度を高くする)一方、トッププレートに供給する電流を大きくする必要があるからである。
【0052】
このため、バッファアンプBUF1での消費電力が必要となり、低電力化が困難となる問題があった。
【0053】
一方、図20に示される従来技術(非特許文献2)では、図19のようにバッファアンプを使用しないので、消費電力の増大の問題はない。しかしながら、電源電圧範囲の限界十分に近い範囲でのアナログ入力信号を変換する性能(入力範囲特性)は達成されていなかった。
【0054】
本発明の目的は、小面積低電力で動作し、かつ、電源電圧範囲(rail-to-rail範囲)の限界に十分に近いアナログ入力信号を変換できるAD変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0055】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、
第1アナログ信号が入力される第1アナログ端子と、第1アナログ端子に第1アナログ信号を入力する第1入力スイッチと、第2アナログ信号が入力される第2アナログ端子と、第2アナログ端子に第2アナログ信号を入力する第2入力スイッチと、第1基準電圧の供給を受ける第1基準電圧接続端子と、第2基準電圧の供給を受ける第2基準電圧接続端子と、第1アナログ端子から第1アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに第1アナログ信号の比較の対象となる第1比較信号を生成する第1デジタルアナログ変換器と、第2アナログ端子から第2アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに第2アナログ信号の比較の対象となる第2比較信号を生成する第2デジタルアナログ変換器と、第1デジタルアナログ変換器の出力側と第2デジタルアナログ変換器の出力側を開放または導通する第1スイッチと、第1アナログ信号および第2アナログ信号の差分値と第1デジタルアナログ変換器の出力信号および第2デジタルアナログ変換器の出力信号の差分値とを比較する比較器と、を備えるアナログデジタル変換回路である。
【0056】
さらに、第1デジタルアナログ変換器は、第1の複数の容量素子と第1の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を第1アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第1スイッチ群と第1の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第1共通端子と、を有する。
【0057】
また、第2デジタルアナログ変換器は、第2の複数の容量素子と第2の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を第2アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第2スイッチ群と第2の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第2共通端子と、を有する。
【0058】
そして、第1の複数の容量素子は、第1の複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第1容量素子を含み、第1アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、第1容量素子以外の容量素子の入力側端子には比較器の比較の結果に基づいて第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかが接続され、第1容量素子の入力側端子には比較器の比較の結果に拘わらず第1基準電圧端子が接続され、
第2の複数の容量素子は、第2の複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第2容量素子を含み、第2アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、
第2容量素子以外の容量素子の入力側端子には比較器の比較の結果に基づいて第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかが接続され、第2容量素子の入力側端子には比較器の比較の結果に拘わらず第2基準電圧端子が接続される。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、小面積低電力で動作し、かつ、電源電圧範囲の限界に十分に近いアナログ入力信号を変換できるアナログデジタル変換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図2】図1のAD変換器の制御タイミングを示す図である。
【図3】スイッチの構成を例示する図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図6】AD変換器に含まれる抵抗DACの構成を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図8】AD変換器に含まれる抵抗DACの構成を示す図である。
【図9】本発明の各実施形態に係るAD変換器に適用可能なコンパレータを示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る逐次比較型AD変換回路のブロック図である。
【図11】動作タイミング例を示す図である。
【図12A】回路シミュレーション結果例(その1)である。
【図12B】回路シミュレーション結果例(その1)である。
【図12C】回路シミュレーション結果例(その1)である。
【図12D】図12Aにおいてサンプリングからコンペアに移行する時点の時間を拡大した拡大図である。
【図13A】回路シミュレーション結果例(その2)である。
【図13B】回路シミュレーション結果例(その2)である。
【図13C】回路シミュレーション結果例(その2)である。
【図14A】回路シミュレーション結果例(その3)である。
【図14B】回路シミュレーション結果例(その3)である。
【図14C】回路シミュレーション結果例(その3)である。
【図15】本発明の第6実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図16】本発明の第7実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図17】本発明の第8実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図18】本発明の第8実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。
【図19】従来の電荷再分配型AD変換器を示す図である。
【図20A】従来の逐次比較型AD変換器の回路を示す図である。
【図20B】従来の逐次比較型AD変換器の制御タイミング示す図である。
【図21】AD変換器の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、図面を参照して、一実施の形態(以下、実施形態という)に係るAD(アナログデジタル)変換器について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0062】
図21は、図20のAD変換器の問題点を説明するための図である。図21のSW13からSW16、S1はスイッチを、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、COMP1はコンパレータを、TOP+は容量アレイの+側トップ
プレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CDACPは(+)側の容量DACを、CDACNは(−)側の容量DACを、CINP、CINNはコンパレータ入力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位を、COUT1はコンパレータの出力を、PM1からPM4はPMOSトランジスタを、NM1からNM4はNMOSトランジスタを、CS2P、CS3PはPMOSトランジスタの制御信号を、CS2N、CS3NはNMOSトランジスタの制御信号を、NODE1、NODE2は内部のノードを、示す。
【0063】
図21は、図20の回路の問題を説明しやすいように、図20のスイッチ、S2P、S2N、S3P、S3Nをトランジスタレベルの回路図として示している。
【0064】
まず、アナログ入力信号VINP、VINNのサンプリングに先立って、PM2、NM2、PM3、NM3をONする(例えば、CS3Pを0V、CS3Nを5Vとする)。このとき、PM1、NM1、PM4、NM4はOFFとする(CS2Pは5V、CS2Nは0Vとする。)。この後、PM2、NM2、PM3、NM3をOFFする(例えば、CS3Pを5V、CS3Nを0とする)。また、PM1、NM1、PM4、NM4、S1をONする(例えば、CS2Pは0V、CS2Nは5Vとする)。これにより、TOP+、TOP−の電位は、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)となり、(+)側容量DACのボトムプレートNODE1の電位はVINPに、(−)側容量DACのボトムプレートNODE2の電位はVINNとなり、図19の従来回路と同じ電荷が、(+)側容量DACのサンプリング容量、(−)側容量DACのサンプリング容量に蓄えられる。
【0065】
このサンプリングの終了後、スイッチS1をOFFし、また、PM1、NM1、PM4、NM4をOFFして、(+)側容量DACのそれぞれのボトムプレートの電位、(−)側容量DACのそれぞれのボトムプレートの電位を操作して、コンパレータによる比較動作に移る。
【0066】
PM1、NM1、PM4、NM4をOFFするために、制御信号、CS2PはLからHに(0Vから5Vに)変化する。また、制御信号CS2NはHからLに(5Vから0Vに)変化する。
【0067】
このとき、例えば、電源電圧、リファレンス電圧がともに5Vであったと仮定し、VINPの電位が5V、VINNの電位が0Vの場合を考える。つまり、電源電圧、リファレンス電圧と、変換しようとしているアナログ入力信号が略等しい場合を考える。
【0068】
VINPの電位が5V、NODE1の電位が5V、CS2Pの電位が0V、CS2Nの電位が5Vのとき、NM1は反転していないので、そのゲートとドレイン、ソース間の容量はオーバーラップ容量程度の小さな値となっている。NMOSトランジスタNM1の場合、ゲート電位は5Vとなるが、同時にソース、ドレインの電位も5Vとなる。MOSトランジスタが反転するためには、ゲート、ソース間電圧がしきい電圧Vth(例えば0.7V)を超える必要があるので、ソース、ドレインの電位が5VとなっているNM1では、反転層は形成されない。このため、ゲート酸化膜容量は、ゲートとソース(あるいはドレイン)との間には実効的に接続されないことになる。
【0069】
一方、PM1は反転層が形成されているので、ゲートと、ドレイン、ソースの間には、ゲート酸化膜の容量が存在する。すなわち、PMOSトランジスタPM1の場合には、ゲート電位が0Vとなり、また、ソースおよびドレインはともに5Vであるため、ゲート、ソース間電圧はしきい電圧Vthより大きく、チャネルが形成される。したがって、ゲート酸化膜による容量がゲートとソース(あるいはドレイン)の間に接続されることになる
。
【0070】
この状態で、CS2Pの電位が0Vから5Vに、CS2Nの電位が5Vから0Vに変化すると、PM1のゲート容量を介して、NODE1の電位が上昇する(図21の波形図にその様子を示した)。このとき、PM1およびNM1がともにオフになるので、上昇したNODE1の電位は維持されることになる。
【0071】
同様に、VINNの電位が0V、NODE2の電位が0V、CS2Pの電位が0V、CS2Nの電位が5Vのとき、PM4は反転していないので、そのゲートとドレイン、ソース間の容量はオーバーラップ容量程度の小さな値となっている。一方、NM4は反転層が形成されているので、ゲートと、ドレイン、ソースの間には、ゲート酸化膜の容量が存在する。
【0072】
CS2Pの電位が0Vから5Vに、CS2Nの電位が5Vから0Vに変化すると、NM4のゲート容量を介して、NODE2の電位は低くなる(図21の波形図にその様子を示した)。このとき、PM4およびNM4がともにオフになるので、低下したNODE2の電位は維持されることになる。
【0073】
つまり、サンプリングの終了時に、PM1、NM4のゲート容量を介して、NODE1の電位は電源電圧5Vを超えて上昇し、NODE2の電位は、電源電圧0Vより低い電位となって維持される場合がある。
【0074】
サンプリングの終了後、スイッチS1をOFFし、(+)側容量DACのそれぞれのボトムプレートの電位、(−)側容量DACのそれぞれのボトムプレートの電位を操作して、コンパレータによる比較動作に移る。このとき、NODE1の電位が電源電圧5Vより高い電位となっていると、PM2のゲート電位を5Vとして、PM2をOFFさせようとしても、PM2のソース電位はすなわちNODE1の電位なので、NODE1の電位が電源電圧5Vを超えて上昇した電位分、PM2のゲート、ソース間に電圧が加わる。このため、PM2を介して、NODE1から、TOP+にわずかに電流が流れる。これは、TOP+に蓄えた電荷を変化させることになり、正しい変換結果を得られない原因となる。
【0075】
同様に、NODE2の電位が電源電圧0Vより低い電位となっていると、NM3のゲート電位を0VとしてNM3をOFFさせようとしても、NM3のソース電位はNODE2の電位なので、NODE2の電位が0Vより低い電位となった分、NM3のゲート、ソース間に電圧が加わり、NM3を介して、TOP−からNODE2にわずかに電流が流れる。これはTOP−に蓄えた電荷を変化させることになり、正しい変換結果が得られなくなる。
【0076】
図21の回路ではこの問題を回避するためには、アナログ入力電位VINPの最大値を電源電圧より低い電位とし、VINNの最低の電位を0Vより高い電位とし、NODE1、NODE2の電位が、カップリングにより変化しても、電源電圧範囲を超えないようにする必要があった。このため、図21の回路構成では、電源電圧範囲(rail-to-rail範囲)のアナログ入力信号を変換する性能を実現できなかった。
【0077】
本実施形態では、第1の特徴として、図19の従来回路で必要となるバッファアンプを必要としない低消費電力化が可能な差動逐次比較AD変換器を例示する。また、図21の回路では、達成されていない電源電圧範囲(rail-to-rail範囲)のアナログ入力信号を変換できる差動逐次比較型AD変換器を例示する。つまり、バッファアンプを必要としない低消費電力特性と、電源電圧範囲(rail-to-rail範囲)のアナログ入力信を変換する特性を両立する回路を例示する。
【0078】
また、図19の従来回路では、アナログ入力信号を変換したデジタル値は、2の補数表現となるが、符号判定のサイクル分変換時間が大きくなる問題がある。本実施形態では、第2の特徴として、(+)側のアナログ入力信号と(−)側のアナログ入力信号の大小関係が予測できるような場合に、あらかじめ、符号を仮定して、アナログ信号をデジタル値に変換する回路を例示する。
【0079】
さらに本実施形態では、上記、第2の特徴を達成する、符号を仮定しアナログ信号をデジタル値に変換する回路を使用するため、必要な場合には、符号も含めてアナログ信号をデジタル値に変換する回路を例示する。
【0080】
上記の第1の特徴を達成するために、本実施形態(図1)では、差動容量DACの(+)側容量DACのトッププレートTOP+とボトムプレート(C1からC6のスイッチにつながる端子)の電位を等しくし、(+)側容量DACのサンプリング容量を放電するスイッチ(図1、S3P)を設ける。また、(−)側容量DACのトッププレートTOP−とボトムプレート(C7からC12のスイッチにつながる端子)の電位を等しくし、(−)側容量DACのサンプリング容量を放電するスイッチ(図1、S3N)を設ける。
【0081】
さらに、本実施形態では、サンプリング容量の放電用のスイッチS3P、S3NがONしているときに、(+)側アナログ入力信号VINP、(−)側アナログ入力信号VINNと容量DACのボトムプレートを切り離すスイッチS2P、S2Nを設ける。さらに、アナログ入力信号のサンプリング時に(+)側トッププレートTOP+の電位と、(−)側トッププレートTOP−の電位を等しくするためのスイッチS1を設ける。
【0082】
そして、サンプリング終了時に、ボトムプレートに、アナログ入力信号VINP、VINNを供給するスイッチS2P、S2NをOFFする。このとき、内部のノードNODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないように、NODE1、NODE2の電位をイコライズするスイッチS4を設ける。
【0083】
また、上記の第2の特徴を達成するために、本実施形態(図1)では、(+)側容量DACの合計のサンプリング容量の1/2の大きさを持つ容量C6のボトムプレートの電位を、コンパレータでの比較開始と同時に、+の基準電圧Vrefpとする。残りの2進に重み付けされた容量のボトムプレートは、対応するDAC入力が1なら+の基準電圧Vrefpに、対応するDAC入力が0なら−の基準電圧Vrefnにつなぐ。また、比較期間にわたって、コンパレータCOMP1での比較結果によらず、符号ビットに相当する容量C6のボトムプレートの電位は、+の基準電圧Vrefpとする。
【0084】
さらに、(−)側容量DACの合計のサンプリング容量の1/2の大きさを持つ容量C12(符号ビットに対応)のボトムプレートの電位を、コンパレータでの比較開始と同時に、−の基準電圧Vrefnとする。残りの2進に重み付けされた容量のボトムプレートは、対応するDAC入力が1なら−の基準電圧Vrefnに、対応するDAC入力が0なら+の基準電圧Vrefpにつなぐ。また、比較期間にわたって、コンパレータCOMP1での比較結果によらず、符号ビットに相当する容量C12のボトムプレートの電位は、−の基準電圧Vrefnとする。
【0085】
アナログ入力信号のサンプリング終了時に、ボトムプレートに、アナログ入力信号VINP、VINNを供給するスイッチS2P、S2NをOFFしても、スイッチS4(図1)によりノードNODE1、NODE2の電位をイコライズするので、S2P、S2NがボトムプレートにつながるノードNODE1、NODE2の電位は電源電圧範囲を超えない。ノードNODE1、NODE2の電位を電源電圧範囲に収めることで、スイッチS3
P、S3Nを通して、トッププレートTOP+、TOP−に電流が流れないようにすることができる。これにより、トッププレートTOP+、TOP−の電荷が失われることが防げ、正しい変換結果が得られる。
【0086】
また、上記操作により、(+)側容量DACのボトムプレートに供給されるアナログ入力VINPが、(−)側容量DACのボトムプレートに供給されるアナログ入力VINNより、大きいか、あるいは等しいことを仮定して、アナログ入力電位差(VINP−VINN)をデジタル値に変換することができる。
【0087】
つまり、あらかじめ、VINP−VINN>=0が予想される場合には、従来回路(図19)では、必要だった符号決定のためのサイクルを省略して、AD変換を行なうことができる。これにより、符号決定に要する時間分、変換時間を短縮することができる。
【0088】
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。図2は、図1のスイッチS1、S2P、S2N、S3P、S3N、およびS4の制御タイミングを示す図である。
【0089】
図1のSW2からSW5、SW8からSW11、SW13からSW16、SW19からSW22、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC12は容量を、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、COMP1はコンパレータを、CINP、CINNはコンパレータの入力を、COUT1はコンパレータ出力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位(例えば2.5V)を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12の容量アレイで構成されるDACを、示す。図19、図20の従来回路の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ素子名、端子名を与えて示している。
【0090】
コンパレータCOMP1が本発明の比較器に相当し、(+)側容量DACが第1デジタルアナログ変換器に相当し、(−)側容量DACが第2デジタルアナログ変換器に相当し、+側の基準電位Vrefpの接続される端子が第1基準電圧接続端子に相当し、−側の基準電位Vrefnの接続される端子が第2基準電圧接続端子に相当する。
【0091】
ここで、トッププレートTOP+とは、容量DACのうち、+側のアナログ信号が入力するNODE1にスイッチSW19、SW2−SW5、SW21を介して接続される端子(ボトムプレート)に対向する端子をいう。また、トッププレートTOP−とは、容量DACのうち、−側のアナログ信号が入力するNODE2にスイッチSW20、SW8−SW11、SW22を介して接続される端子(ボトムプレート)に対向する端子をいう。
【0092】
容量Ca(aは整数)に併記されたbC(bは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C(等)、に示されるように重み付けがされている。図1のC1からC12が4ビットDACを構成している。
【0093】
図1に図示されるスイッチの状態は、容量DACのサンプリング状態を示している。サンプリング時には、C1からC6にVINPの電位が充電され、C7からC12にVINNの電位が充電される。
【0094】
まず、アナログ入力信号VINP、VINNのサンプリングに先立って、ディスチャージ用のスイッチS3P、S3NをONする(図2参照)。このときアナログ信号入力用のスイッチS2P、S2Nはオープンとする(より正確には、両方OFFにすることは必須ではなく、いずれか一方、例えばS2NはONとしておいてもよい)。
【0095】
また、例えば、S1をON、SW2からSW5、SW19、SW21をNODE1につないでおく。また、例えば、SW8からSW11、SW20、SW22をNODE2につないでおく。S3P、S3NをONすることで、C1からC12のトッププレート(TOP+、TOP−)の電位とC1からC12のボトムプレートの電位が等しくなり、(+)側容量DAC、(−)側容量DACのサンプリング容量C1からC12に蓄えられる電荷が0となる。
【0096】
この後、S3P、S3NをOFFし、S1、S2P、S2NをONする(図2参照)。このとき、NODE1(本発明の第1アナログ端子に相当)には、スイッチS2P(本発明の第1入力スイッチに相当)を通じて、+側のアナログ信号(第1アナログ信号に相当)が入力される。また、NODE2(本発明の第2アナログ端子に相当)には、スイッチS2N(本発明の第2入力スイッチに相当)を通じて、−側のアナログ信号(第2アナログ信号に相当)が入力される。
【0097】
ただし、S1については、S3P、S3NをONの状態で、S1をONとしておいて、ONの状態を保っていてもよい)。S2P、S2NをONすることで、NODE1の電位はVINPに、NODE2の電位はVINNになる。SW2からSW5、SW19、SW21をNODE1につないでおき、また、SW8からSW11、SW20、SW22をNODE2につないでおくものとする。(+)側容量DACの合計のサンプリング容量(C1からC6の合計容量32C)と、(−)側容量DACの合計のサンプリング容量(C7からC12の合計容量32C)を等しくしているので、また、S1がONとなっており、トッププレートTOP+と、TOP−の電位が等しいので、トッププレートTOP+と、TOP−の電位は、入力コモン電位((VINP+VINN)/2)となる。(VINP、VINNは、それぞれ、(+)のアナログ入力VINPの電位、(−)のアナログ入力VINNの電位を表わすものとする。)
C1からC6で構成される(+)側容量DACのトッププレート(TOP+)に蓄えられる電荷QSAMPPは、式(17)で表わされる。(C1からC6の合計容量を32Cで、表わす。)
【0098】
QSAMPP=−32C(VINP−(VINP+VINN)/2);
QSAMPP=−32C(VINP−VINN)/2; 式(17)
C7からC12で構成される(−)側容量DACのトッププレート(TOP−)に蓄えられる電荷QSAMPNは、式(18)で表わされる。
【0099】
QSAMPN=−32C(−VINP+VINN)/2; 式(18)
つまり、サンプリング時のトッププレートTOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2としておくことで、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。
【0100】
サンプリング終了後、S1をオープン(開放)とする。また、S2P、S2Nも、オープン(開放)とする。S1を最初に開放とすることで、トッププレートTOP+、TOP−がフローティングとなるので、C1からC12のトッププレートの電荷が保存される。
【0101】
後の説明に都合がいいので、ここで、SW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22のトランジスタレベルの回路例を、SW2を例として、図3に示しておく
。
【0102】
図3のPM5、PM6はPMOSトランジスタを、NM5、NM6はNMOSトランジスタを、C2は容量を、NODE1、TOP+はノード名を、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、示す。図3において図1に対応するノード等は、図1と同じ名称を与えて示した。図3のように、トランジスタを接続することで、例えば、図1のSW2の機能を実現できる。
【0103】
図1の説明にもどる。S1をオープン(開放)とした後、SW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22を操作して、容量C1からC12のボトムプレートの電位を、Vrefp、あるいは、Vrefnとする。このとき、図3のような回路でスイッチ(例えばSW2)を構成すると、C2のボトムプレートの電位を、Vrefp、あるいは、Vrefnとする前に、PM5、NM5をOFFし、その後C2のボトムプレートの電位を、Vrefp、あるいは、Vrefnとする。
【0104】
このようなスイッチのタイミングで、スイッチSW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22を操作すると、S2PがOFFした前後に、SW2からSW5、SW19、SW21も、NODE1から見て、フローティングとなる。このため、図21の説明で述べたように、VINPの電位が正の電源電圧に近い電位の場合、NODE1の電位は、スイッチS2Pのオフに伴いS2Pを構成するPMOSトランジスタのゲート容量により、正の電源電圧を超えて上昇する可能性がある。
【0105】
同様に、S2NがOFFした前後に、SW8からSW11、SW20、SW22も、NODE2から見て、フローティングとなる。このため、VINNの電位が負の電源電圧に近い電位の場合、NODE2の電位は、スイッチS2Nのオフに伴いS2Nを構成するNMOSトランジスタのゲート容量により、負の電源電圧を超えて低下する可能性がある。
【0106】
これを防ぐために、S2P、S2NをOFFした後、NODE1とNODE2の電位を等しくするスイッチS4(本発明の電位制御回路、および第2スイッチに相当)をONする(図2参照)。これにより、NODE1とNODE2の電位が等しくなり、中間の電位となる。このため、S2P、S2NをOFFする直前のNODE1、NODE2のどちらか一方が、正の電源電圧に近い電位、あるいは、負の電源電圧に近い電位となっていても、NODE1、NODE2の電位差がある程度大きければ、S2PのオフまたはS2Nのオフの際に、NODE1、NODE2の電位は電源電圧範囲を超えることがないようにできる。
【0107】
仮に、NODE1、NODE2の電位が、電源電圧範囲を超えると、たとえ、S3P、S3NをOFFしても、それらを構成するMOSトランジスタのゲート、ソース間に(順方向の、電流が流れやすくなる方向の)電位差が発生するので、S3P、S3Nを通して、NODE1からTOP+へ、あるいは、TOP−からNODE2へ、わずかな電流が流れ、トッププレートTOP+、TOP−に蓄えた電荷を変化させてしまう問題がある(このことは、図21の回路の問題の説明で述べた通りである。)。
【0108】
そこで、図1の回路のように、S4を設けて、サンプリング終了後、S4によりNODE1、NODE2の電位が、電源電圧範囲を超えないようにすることで、電源電圧範囲のアナログ入力信号をサンプリングしても、内部ノード、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないようにできる。そのため、サンプリングした電荷の破壊を防ぐことができ、正しい変換結果を得られるようになる。
【0109】
サンプリングの終了時に、S1をOFFし、また、S2P、S2NをOFFし、SW2
からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22をフローティングとし(S3P、S3N、はサンプリングの開始時からOFFしている)、S4をONする。さらに、SW13、SW14をOFFし、SW15、SW16をONする。これにより、コンパレータによる逐次比較の準備が整う。
【0110】
SW13、SW14はサンプリング中にコンパレータCOMP1の入力CINP、CINNにバイアスVCMを与えるためのスイッチとして働く。例えば、VCMを、コンパレータによる比較の最終的なコモン電位((Vrefp+Vrefn)/2)と等しくしておけば、サンプリング期間中に、コンパレータCOMP1のオフセット電圧を、例えば容量に記憶しておき、auto−zeroによりオフセットの影響を小さくできる。
【0111】
また、SW15、SW16は、TOP+、TOP−の電位をアナログ入力コモン電位とするために、TOP+、TOP−と、コンパレータ入力端子(CINP、CINN)とを切り離しておくためのスイッチとして働く。
【0112】
サンプリング後は、SW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22を操作して、容量C1からC12のボトムプレートの電位を、Vrefp、あるいは、Vrefnとすることで、基準電圧を分圧した電圧と、サンプリングした電位差の大小関係を(COUT1を利用して)判定し、アナログ入力電位差に対応するデジタル値を検索する。
【0113】
本実施形態では、VINP−VINN>=0を仮定しているので、SW21はVrefpに、SW22はVrefnに接続される。(+)側容量DACのスイッチSW2からSW5は、対応するデジタルコードが1なら、Vrefpに、対応するデジタルコードが0ならVrefnにつながれる。2の補数を生成するために1ビット加算値を生成するSW19はVrefn(デジタルコード0に対応)につながれる。2の補数データを生成する必要がないからである。
【0114】
(−)側容量DACのスイッチSW8からSW11は、対応するデジタルコードが1なら、Vrefnに、対応するデジタルコードが0ならVrefpにつながれる。本実施形態では、VINP−VINN>=0を仮定しているので、SW20はVrefp(デジタルコード0に対応)につながれる。常時、2の補数データを生成するためである。
【0115】
SW19に対応するSW1は、図19では、VINP<VINNの場合には、Vrefpにつなぐ必要があった。これは、VINP<VINNの場合に、2の補数で表されるデジタル値を変換結果として得る目的のためである。一方図1の発明の回路では、VINP>VINNだけを想定しているので、+側電位として常時正数を想定すればよい。したがって、SW19はVrefnにつなぐだけでよい。同様に、−側電位として常時負数を想定すればよく、SW20はVrefpにつなげばよい。
【0116】
<検索手順>
図19の従来回路では、SW6をVrefpに、SW1からSW5をVrefnに、SW12をVrefnに、SW7からSW11をVrefpにつなぐことで、VINPとVINNの大小関係を判定し、符号を決定していた。しかしながら、実際の応用では、VINPとVINNの大小関係をあらかじめ予想できるような場合もある。符号が予想できる場合には、符号決定のための比較サイクルは冗長であるといえる。
【0117】
そこで、本実施形態のAD変換回路では、VINPがVINNより大きいことを前提に(符号を仮定して)、デジタル値を決定する検索方法、回路を提供する。VINP>VINNを前提にするので、符号決定が必要ない分だけより高速な変換が可能となる(VIN
P>VINNが満たされない場合の回路については、第7実施形態で述べる)
本実施形態の回路、図1でSW21は、従来の回路である図19のSW6に対応し、図1のSW22は図19のSW12に対応する。
【0118】
VINP>VINNを前提としているので、コンパレータでの比較は、例えば、VINP>VINNかつ、基準電圧/2との比較から始め、基準電圧/2より(VINP−VINN)が大きければ、基準電圧×3/4と(VINP−VINN)を比較する。基準電圧/2より(VINP−VINN)が小さければ、基準電圧×1/4と(VINP−VINN)を比較する。さらに、仮に、基準電圧×1/4より(VINP−VINN)が大きければ、基準電圧×3/8と(VINP−VINN)を比較する。あるいは、基準電圧×1/4より(VINP−VINN)が小さければ、基準電圧×1/8と(VINP−VINN)を比較する。つまり、(VINP−VINN)の電位差と、基準電圧(Vrefp−Vrefn)を分割した電位の大小関係を判定し、サンプリングした(VINP−VINN)の電位差の値の範囲を順次狭めていき、最終的なデジタル値を決定する。
【0119】
<MSB(最上位ビット)の決定>
SW21をVrefpに、SW2からSW4、SW19をVrefnに、SW5をVrefpにつなぐ。C1からC4、の合計容量8Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C5、C6の合計容量24Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。式(17)の(+)側トッププレート(TOP+)に蓄えられる電荷QSAMPPが保存されるので、このときの(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpは、式(19)、式(20)で与えられる。
【0120】
−24C(Vrefp−Vtp)+8C(Vtp−Vrefn)=−32C(VINP−VINN)/2; 式(19)
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2+(Vrefp−Vrefn)/(2×2); 式(20)
SW22をVrefnに、SW8からSW10、SW20をVrefpに、SW11をVrefnにつなぐ。C7からC10の合計容量8Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C11、C12の合計容量24Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。式(18)の(−)側トッププレート(TOP−)に蓄えられる電荷QSAMPPが保存されるので、このときの(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnは、式(21)、式(22)で与えられる。
【0121】
−8C(Vrefp−Vtp)+24C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(21)
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2−(Vrefp−Vrefn)/(2×2); 式(22)
このトッププレートの電位がコンパレータの差動入力CINP、CINNになる。その差電位Vtp−Vtnを考えると、式(23)が得られる。
【0122】
Vtp−Vtn=−(VINP−VINN)+(Vrefp−Vrefn)/2;
式(23)
つまり、入力電位差VINP−VINNと、リファレンス電位(Vrefp−Vrefn)を1/2倍した値との大小関係をコンパレータCOMP1により判定することができる。
【0123】
<MSBの次のビット以降の決定>
これにより、SW5、SW11に対応するデジタルコードが決定できるので、SW4、SW10に対応するコード(2番目の上位ビット)の決定について説明する。
【0124】
仮にSW5、SW11に対応するデジタルコードが1に決定し、(VINP−VINN)は(Vrefp−Vrefn)/2より大きかったとする。この場合、(VINP−VINN)と(Vrefp−Vrefn)×3/4を比較し、その大小関係を調べて、(VINP−VINN)の値の範囲を狭めていく。
【0125】
具体的には、SW21をVrefpに、SW19、SW2、SW3をVrefnに、SW4、SW5をVrefpにつなぐ。C1からC3の合計容量4Cのボトムプレート電位がVrefnとなり、C4、C5、C6の合計容量28Cのボトムプレート電位がVrefpとなる。このときの(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpは、式(24)、式(25)で与えられる。
【0126】
−28C(Vrefp−Vtp)+4C(Vtp−Vrefn)=−32C(VINP−VINN)/2; 式(24)
Vtp=−(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2+3×(Vrefp−Vrefn)/(2×4); 式(25)
【0127】
SW22をVrefnに、SW20、SW8、SW9をVrefpに、SW10、SW11をVrefnにつなぐ。C7からC9の合計容量4Cのボトムプレート電位がVrefpとなり、C10、C11、C12の合計容量28Cのボトムプレート電位がVrefnとなる。このときの(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnは、式(26)、式(27)で与えられる。
【0128】
−4C(Vrefp−Vtp)+28C(Vtp−Vrefn)=32C(VINP−VINN)/2; 式(26)
Vtn=(VINP−VINN)/2+(Vrefp+Vrefn)/2−3×(Vrefp−Vrefn)/(2×4) 式(27)
【0129】
このトッププレートの電位がコンパレータの差動入力CINP、CINNになる。その差電位Vtp−Vtnを考えると、式(28)が得られる。
【0130】
Vtp−Vtn=−(VINP−VINN)+3×(Vrefp−Vrefn)/4;
式(28)
つまり、入力電位差VINP−VINNと、リファレンス電位(Vrefp−Vrefn)を3/4倍した値との大小関係をコンパレータCOMP1により判定することができる。このように、SW2からSW5、SW8からSW11、SW19からSW22を操作し、C1からC12のボトムプレート電位をVrefpあるいは、Vrefnとすることで、VINP−VINNの電位差と、Vrefp−Vrefnを分割した電位の大小関係を判定することができ、それにより、サンプリングしたVINP−VINNの電位差の値の範囲を順次狭めていき、最終的なデジタル値を決定することができる。
【0131】
<効果>
以上述べたように、サンプリング時のトッププレート電位TOP+、TOP−の電位を入力コモン電位(VINP+VINN)/2としておくことで、(+)側容量DAC、(−)側容量DACにサンプリングされる電荷は、その絶対値は等しく、極性は逆となる。このため、(+)側容量DACと(−)側容量DACのスイッチを対称に操作することで、それぞれの容量DAC出力を対称に動作させることができる。また、(+)側トッププレート(TOP+)電位Vtpと、(−)側トッププレート(TOP−)電位Vtnのコモン電位は、(Vrefp+Vrefn)/2となり、リファレンス電位の中心の電位とできるので(式(20)+式(22)、式(25)+式(27)参照)、動作余裕を最大
にできる。
【0132】
以上説明したように、図1の回路構成により、差動アナログ入力信号を、符号を仮定して(VINP>VINNを前提として)、デジタル値に変換する動作が実現できる。
【0133】
また、S4を設けて、サンプリング終了後S4をONすることで、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えることを防げるので、S3P、S3Nを通した、トッププレートTOP+、TOP−の電荷の破壊を避けることができ、電源電圧範囲におよぶ大振幅のアナログ入力信号を変換する場合でも、正しい変換結果が得られるようになる。
【0134】
さらに、符号を仮定して(VINP>VINNを前提として)、アナログ入力電位差をデジタル値に変換するので、符号判定のための比較サイクルを省略することができ、その分、変換時間を高速化できる。
【0135】
図1では、一例として4ビットの容量DACで、逐次比較AD変換器を構成し、それに、本発明の考え方を適用した例を示したが、DACのビット数は一般の場合(3ビット以下、または、5ビット以上)で構わないことはいうまでもない。
【0136】
《第2実施形態》
図4を参照して本発明の第2実施形態に係るAD変換器を説明する。上記第1実施形態では、(+)側のアナログ入力をNODE1に接続するスイッチS2P、および(−)側のアナログ入力VINNをNODE2に接続するスイッチS2NをOFFした後、NODE1とNODE2の電位を等しくするスイッチS4をONすることにより、NODE1とNODE2の電位変動を抑制した。
【0137】
本実施形態では、このスイッチS4の作用に加えて、さらに、NODE1とNODE2の電位変動を抑制する電位変動抑制手段を例示する。あるいは、このスイッチS4の作用に代わる本実施形態の電位変動抑制手段を例示する。本実施形態でも、サンプリング終了時に、ボトムプレートに、アナログ入力信号VINP、VINNを供給するスイッチS2P、S2NをOFFする。本実施形態では、そのとき、内部のノードNODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないように、スイッチS2P、S2Nのゲート容量から注入される電荷と逆の電荷をNODE1、NODE2に供給するカップリング容量NM7、PM7、NM8、PM8を設ける。
【0138】
本実施形態の他の構成および作用は、第1実施形態の場合と同様である。すなわち、図4でも、差動容量DACのうち(+)側容量DACのトッププレートTOP+とボトムプレート(C1からC6のスイッチにつながる端子)の電位を等しくし、(+)側容量DACのサンプリング容量を放電するスイッチ(図1、S3P)と、(−)側容量DACのトッププレートTOP−とボトムプレート(C7からC12のスイッチにつながる端子)の電位を等しくし、(−)側容量DACのサンプリング容量を放電するスイッチ(図1、S3N)を設ける。サンプリング容量の放電用のスイッチS3P、S3NがONしているときに、(+)側アナログ入力信号VINP、(−)側アナログ入力信号VINNと容量DACのボトムプレートを切り離すスイッチS2P、S2Nを設ける。アナログ入力信号のサンプリング時に(+)側トッププレートTOP+の電位と、(−)側側トッププレートTOP−の電位を等しくするためのスイッチS1を設ける。
【0139】
そして、本実施形態では、スイッチS2P、S2Nのゲート容量から注入される電荷と逆の電荷をNODE1、NODE2に供給するカップリング容量NM7、PM7、NM8、PM8(図4)を設け、スイッチS2P、S2Nの制御信号と逆相の信号(NG7、PG7、NG8、PG8)で、容量NM7、PM7、NM8、PM8を駆動することで、ス
イッチS2P、S2Nから注入される電荷を打ち消して、内部のノードNODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないように制御できる。これにより、スイッチS3P、S3Nを通して、トッププレートTOP+、TOP−に電流が流れないようにすることができ、トッププレートTOP+、TOP−の電荷が失われることがないので、正しい変換結果が得られる。
【0140】
<構成>
図4のSW2からSW5、SW8からSW11、SW15、SW16、SW19からSW22、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC12は容量を、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CINP、CINNはコンパレータの入力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12の容量アレイで構成されるDACを、NM7、NM8はNMOSトランジスタを、PM7、PM8はPMOSトランジスタを、NG7、PG7、NG8、PG8はそれぞれNM7、PM7、NM8、PM8の制御のためのゲート信号を、示す。図4でも、図19、図20、図1の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ素子名等を与えて示している。
【0141】
容量Ca(aは整数)に併記されたbC(bは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C(等)、に示されるように重み付けがされている。図4のC1からC12が4ビットDACを構成している。
【0142】
図4に図示されるスイッチの状態は、容量DACのサンプリング状態を示している。サンプリング時には、C1からC6にVINPの電位が充電され、C7からC12にVINNの電位が充電される。
【0143】
図4の回路は、主要な部分は図1の回路と同じで、図4の回路が図1の回路と異なる点は、NMOSトランジスタNM7、NM8、PMOSトランジスタPM7、PM8が付加されている点にある。そこで、本実施形態では、NMOSトランジスタNM7、NM8、PMOSトランジスタPM7、PM8の働きを中心に説明する。特に説明しない部分は、図1の回路と同様に動作するものとする。
【0144】
NM7、PM7、NM8、PM8は、サンプリング終了後に、スイッチS2P、S2NをOFFする際、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えないように制御するための容量として働く。図4の回路例では、NM7、PM7、NM8、PM8とスイッチS4を併用する回路例を示したが、NM7、PM7、NM8、およびPM8だけを適用してもよい。また、第1実施形態で説明したように、S4単独で用いてもよい。
【0145】
サンプリングの終了時点で、スイッチS1をオープン(開放)とし、スイッチSW2からSW5、SW19、SW21を、NODE1から見て、フローティングとする。また、スイッチSW8からSW11、SW20、SW22も、NODE2から見て、フローティングとする。さらに、スイッチS2P、S2NをOFFする。
【0146】
図1の説明で述べたように、+側のアナログ入力VINPの電位が正の電源電圧に近い電位の場合、NODE1の電位は、スイッチS2Pを構成するPMOSトランジスタのゲート容量により、正の電源電圧を超えて上昇する可能性がある。VINPおよびNODE1が正の電源電圧(5V)に近く、かつ、スイッチS2Pがクローズ(導通、ゲートが負の電源電圧0V)の場合に、PMOSトランジスタのゲート直下に反転層が形成され、ゲ
ート酸化膜による容量がゲートとドレイン(およびソース)間に挿入されるからである。
【0147】
また、−側のアナログ入力VINNの電位が負の電源電圧に近い電位の場合、NODE2の電位は、S2Nを構成するNMOSトランジスタのゲート容量により、負の電源電圧を超えて低下する可能性がある。VINNおよびNODE2が負の電源電圧(0V)に近く、かつ、スイッチS2Nがクローズ(導通、ゲートが正の電源電圧5V)の場合に、NMOSトランジスタのゲート直下に反転層が形成され、ゲート酸化膜による容量がゲートとドレイン(およびソース)間に挿入されるからである。
【0148】
これを防ぐために、図1の回路では、S2P、S2NをOFFした後、NODE1とNODE2の電位を等しくするスイッチS4をONした。図4の回路では、スイッチS4に加えて、NMOSトランジスタNM7、NM8、PMOSトランジスタPM7、PM8を設けている。そして、スイッチS2P、S2NをOFFする際、NM7のゲート電位NG7をLからH(オン)とする。また、PM7のゲート電位PG7をHからL(オン)とする。同様に、NM8のゲート電位NG8をLからH(オン)とする。また、PM8のゲート電位PG8をHからL(オン)とする。
【0149】
PM7、NM7が本発明の第1調整MOSトランジスタに相当する。また、PM8、NM8が本発明の第2調整MOSトランジスタに相当する。また、PM7、PM8が本発明の第3MOSトランジスタに相当する。また、NM7、NM8が本発明の第4MOSトランジスタに相当する。
【0150】
スイッチS2Pを構成するPMOSのゲート容量と、PM7の容量をほぼ等しくしておけば、S2Pを構成するPMOSをOFFする際に、NODE1の電位を上昇させようとする電荷を、PG7をHからLとすることで相殺できる。同様に、スイッチS2Pを構成するNMOSのゲート容量と、NM7の容量をほぼ等しくしておけば、スイッチS2Pを構成するNMOSをOFFする際にNODE1に、S2Pから注入される電荷を、NG7をLからHとすることで相殺できる。
【0151】
スイッチS2Nを構成するPMOSのゲート容量と、PM8の容量をほぼ等しくしておけば、S2Nを構成するPMOSをOFFする際に、NODE2の電位を下降させようとする電荷を、PG8をHからLとすることで相殺できる。同様に、スイッチS2Nを構成するNMOSのゲート容量と、NM8の容量をほぼ等しくしておけば、S2Nを構成するNMOSをOFFする際にNODE2に、S2Nから注入される電荷を、NG8をLからHとすることで相殺できる。
【0152】
このように、図4のNM7、PM7、NM8、PM8によっても、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えることがないようにできる。
【0153】
図1の説明では、一例として、S2P、S2Nを同時にOFFするものとして説明したが、S1をOFFし、SW2からSW5、SW19、SW21を、フローティングとし、SW8からSW11、SW20、SW22をフローティングとすることで、トッププレートTOP+、TOP−の電荷は保存される。したがって、S2P、S2Nの両方を必ずしもOFFとしなくても変換は可能である。また、S2P、S2NをOFFするタイミングは、サンプリングの終了時点以降であれば必要に応じて、遅い時刻とすることが可能である。さらに、S2P、S2NをOFFするタイミングは同時であることも必須ではない。
【0154】
S2P、S2NがOFFする時刻が異なる時刻の場合には、S2PがOFFする時刻に、NM7のゲート電位NG7をLからHとする。また、そのとき、PM7のゲート電位PG7をHからLとする。S2NがOFFする時刻に、NM8のゲート電位NG8をLから
Hとする。また、そのとき、PM8のゲート電位PG8をHからLとする。
【0155】
図1のS4をONすることで、S2P、S2NをOFFする直前のNODE1、NODE2の電位(すなわちアナログ入力電位VINP、VINN)のどちらか一方が、正の電源電圧に近い電位、あるいは、負の電源電圧に近い電位となっていても、NODE1、NODE2の電位差がある程度大きければ、NODE1、NODE2の電位は電源電圧範囲を超えないようにできる。
【0156】
しかし、例えば、VINP、VINNの電位がともに、負の電源電圧に近い電位で、かつ、その電位差が小さい場合には、S4の効果は小さい。図6の回路のように、S2P、S2Nから注入される電荷を相殺する容量NM7、PM7、NM8、PM8を用いることで、VINP、VINNがともに、例えば、0Vの場合でも、NODE1、NODE2の電位を電源電圧範囲内に制御することができるようになる。NM7、PM7、NM8、PM8とS4を併用すれば、より設計がしやすくなることはいうまでもない。
【0157】
同様に、例えば、VINP、VINNの電位がともに、正の電源電圧に近い電位で、かつ、その電位差が小さい場合に、S2P、S2Nから注入される電荷を相殺する容量NM7、PM7、NM8、PM8を用いることで、NODE1、NODE2の電位を電源電圧範囲内に制御することができる。
【0158】
以上説明したように、図4の回路構成によっても、図1の回路同様、S4、NM7、PM7、NM8、PM8により、NODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えることが抑制される。そのため、S3P、S3Nを通した、トッププレートTOP+、TOP−の電荷の破壊を避けることができ、電源電圧範囲のアナログ入力信号を変換する場合でも、正しい変換結果が得られるようになる。
【0159】
NM7、PM7、NM8、PM8以外は図1の回路と同じ回路なので、図1の回路同様、差動アナログ入力信号を、符号を仮定して(VINP>VINNを前提として)、デジタル値に変換する動作が実現でき、符号判定のための比較サイクルを省略することができ、その分、変換時間を高速化できる。
【0160】
《第3実施形態》
図5および図6は、本発明の第3実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。図5のSW2からSW5、SW8からSW11、SW13からSW16、SW19からSW22、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC12は容量を、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、COMP1はコンパレータを、CINP、CINNはコンパレータの入力を、COUT1はコンパレータ出力を、VCMはサンプリング時のコンパレータ入力のバイアス電位を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12の容量アレイで構成されるDACを、示す。また、図6のRDACP、RDACNは抵抗DAC出力を、RDAC1は抵抗DACを、RD0からRD7は抵抗を、NRD1からNRD7は抵抗DACの内部のノードを、SEL1、SEL2はセレクタを、示す。図5において、図1、図4等の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ素子名等を与えて示している。
【0161】
抵抗DACとは、デジタルデータに対応する抵抗で分圧された電圧を取り出すことによりアナログデータを生成する回路をいう。
【0162】
容量Ca(aは整数)に併記されたbC(bは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C(等)、に示されるように重み付けがされている。図5のC1からC12が4ビットDACを構成している。また、図5の回路では、図1の回路と同様スイッチS4だけを図示しているが、第2実施形態(図4)で説明したNMOSトランジスタNM7、NM8、および、PMOSトランジスタPM7、PM8を用いることもできる。NM7、PM7、NM8、PM8を、図5から省略しているのは、図を簡単にする目的のためである。したがって、図5も含め以下の図においてもスイッチS4を使用する部分には、S4の代わりに、NMOSトランジスタNM7、NM8、および、PMOSトランジスタPM7、PM8を用いてもよい。また、S4とNM7、PM7、NM8、PM8とを併用してもよい。
【0163】
本実施形態(図5および図6)の回路が、図1、図4の回路と異なる点は、図1、図4の回路では、(例として4ビット)容量DACのみでAD変換回路が構成されていたのに対して、本実施形態の回路では、上位ビットを容量DACで決定し、下位ビットを抵抗DACで決定するCRダブルステージDACでAD変換を行なうよう回路が構成されている点である。図5および図6に示すように、容量と抵抗の複合DACに対しても、本発明の考え方を適用できる。
【0164】
図5および図6の回路の動作で、図1の回路、図4の回路の動作と同じ部分は説明を省略し、構成の異なる部分を中心に説明する。図1の回路では、アナログ入力に相当するデジタルコードを検索する場合に、C1のボトムプレートはVrefnに、C6のボトムプレートはVrefpに固定して、C2からC5のボトムプレートを、対応するデジタル値が1ならVrefpに、対応するデジタル値が0ならVrefnに接続していた(−側の容量DACは+側容量DACと対称に、対応するデジタル値が1ならVrefnに、対応するデジタル値が0ならVrefpに接続し、C7についても、C1と対称にボトムプレートをVrefpに固定し、C12についてもC6と対称にボトムプレートをVrefnに固定していた)。
【0165】
図1の回路のように1段の容量DACだけで、AD変換回路を構成しようとすると、例えば10ビットの分解能が必要な場合には、片側だけで2048個の単位容量が必要となり、占有面積が大きくなる問題があった。この占有面積の問題はDACをダブルステージDACとすることで解決できる。ダブルステージDACと、本発明の考え方を組み合わせる例を、図5に示す。
【0166】
図5のように、C1のボトムプレートに抵抗DAC出力RDACPを接続することで、CRダブルステージDACを構成することができる。また、−側容量DACのC7のボトムプレートに抵抗DAC出力RDACNを接続することで、−側容量DACについても、CRダブルステージDACを構成することができる。
【0167】
図6のRDAC1は下位3ビットを変換するための抵抗DACの一例を示し、単位抵抗RD0からRD7により基準電圧(VrefpとVrefnの電位差)を8等分する(低い電位から順番にNRD1からNRD7まで符号を与えた)。SEL1はVrefnと、抵抗DACの内部ノードNRD1からNRD7のうちの1つの電位を入力デジタル値により選択し、RDACPに出力する(最も素直に構成すると、入力デジタル値が000のときに、Vrefnを出力し、デジタル値が大きくなるにしたがって、NRD7までの値を出力する)。
【0168】
SEL2はVrefpとNRD7からNRD1までの電位のうちの1つの電位を入力デジタル値により選択し、RDACNに出力する(RDACPと対称に、入力デジタル値が
000のときに、Vrefpを出力し、デジタル値が大きくなるにしたがって、しだいに低い電位、NRD1までの値を出力する)。
【0169】
C1のボトムプレートに抵抗DAC出力RDACPを接続し、−側容量DACのC7のボトムプレートに抵抗DAC出力RDACNを接続することで、抵抗DAC出力RDACP、RDACNが、トッププレート電位に与える影響を、容量DACのビット数相当分、小さくでき、図5、図6の場合は4ビット容量DACと3ビット抵抗DACで、合計7ビットのDACとして動作させることができる。これは、例えば、(+)側容量DACの合計サンプリング容量に対して、1/32の大きさを持つ単位容量1Cを介して、抵抗DAC出力をトッププレート電位TOP+に加算するためである。
【0170】
ところで、図1の説明で用いた式(19)から式(23)から分かるように、入力したアナログ電位は、片側のDACだけを考えたときには、1/2になっている。すなわち、片側の容量DACに着目すれば、入力電位差VINP−VINNの1/2の振幅の信号と、基準電位差Vrefp−Vrefnの1/2の振幅の信号とを比較する式となっている。これを両側の容量DACの出力信号の差(+側TOP+と、−側TOP−の電位差)を考慮すると、入力電位差VINP−VINNの信号と、基準電位差Vrefp−Vrefnの信号とを比較する式となっている。
【0171】
したがって、1/32の大きさに減衰させられた、抵抗DAC出力(RDACP、RDACN)は、TOP+、TOP−にとって1/16に減衰していることに相当し、4ビット容量DACのビット数分重みが小さくなっている。これにより、図5のDACは合計7ビットのDACとして働くことになる。
【0172】
図5および図6のように、DACを容量と抵抗で構成されるダブルステージDACとしても、図1の回路で示した、スイッチS2P、S2N、S1、S3P、S3N、S4で構成される回路部分とその動作に変更は必要ないので、図1、図4の回路と同様の効果が図5の回路においても得られる。
【0173】
以上説明したように、CRダブルステージDACを用いた場合でも、本発明が適用できる。すなわち、スイッチS4(あるいはNMOSトランジスタNM7、NM8、およびPMOSトランジスタPM7、PM8)とスイッチS1、S2P、S2N、S3P、S3Nの組み合わせによるNODE1およびNODE2の電位変動抑制技術がそのまま適用できる。したがって、占有面積を小さく抑えられるダブルステージDACの利点と、電源電圧範囲のアナログ入力信号を変換する場合でも、正しい変換結果が得られる特性と、符号判定のための比較サイクルを省略することによる変換時間の高速化とを両立できる。
【0174】
《第4実施形態》
図7および図8は、本発明の第4実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。図7のSW2からSW5、SW8からSW11、SW15、SW16、SW19からSW24、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC14は容量を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CINP、CINNはコンパレータの入力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6、C13の容量アレイで構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12、C14の容量アレイで構成されるDACを、示す。また、図8のRDACLP、RDACUP、RDACLN、RDACUNは抵抗DAC出力を、VOFFP、VOFFNは変換結果にオフセットを与えるためのバイアス電位を、RDAC2は抵抗DACを、RU1からRU14、RH1からRH8は抵抗を、NRU1からNRU4、NRU8、NRU12からNRU15は抵抗DAC
の内部のノードを、SEL3、SEL4、SEL5、SEL6はセレクタを、示す。
【0175】
図1、図4、図5等の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ名称を与えて示している。また、図を簡単にするために、VINP、VINN、S2P、S2N、コンパレートCOMP1等、一部図から省略している部分があるが、省略した部分は、特に断らない場合は、図1、図4、図6等と同じ構成になっているものとする。
【0176】
容量Ca(aは整数)に併記されたbC(bは整数)の値はそれぞれの容量の大きさの相対関係を示し、1C、2C、4C、8C、16C(等)、に示されるように重み付けがされている。
【0177】
図5および図6の回路では、C1、C7のボトムプレートに抵抗DAC出力を供給する回路例を示したが、図7および図8の回路では、C1、C7に加えて、C13、C14を設けて、C1、C13、C7、C14のボトムプレートに抵抗DAC出力を供給し、C1、C7あるいは、C13、C14によりそれぞれの抵抗DAC出力を容量により加算する回路例を示した。本実施形態では、図7および図8のような回路構成においても、スイッチS1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4(およびNM7、PM7、NM8、PM8)の構成に変更を加えることなく、本発明を同様に適用できることを示す。
【0178】
図7の回路が、図5等の回路と異なる点は、図5等の回路では、上位ビットを容量DACで決定し、下位ビットを単独の抵抗DACで決定する構成だったのに対して、図7では、さらに別の抵抗DAC出力を加算するための容量C13、C14が設けられている点である。
【0179】
図7および図8の回路の動作で、図5および図6の回路の動作と同じ部分は説明を省略し、構成の異なる部分を中心に説明する。
【0180】
まず、図8により、抵抗DACの構成について説明する。図8のRDAC2は下位4ビットを変換するための抵抗DACとして働く。RU1からRU14、RH1からRH8は同じ抵抗値を持つ単位抵抗を表わしている。RH1からRH4は単位抵抗を2つ並列接続したものを直列接続しているので、結局4つの抵抗で1つの単位抵抗と等価となる。RH5からRH8についても同様に4つの抵抗で合成抵抗は、単位抵抗と等価となる。したがって、RU1からRU14とRH1からRH8で、基準電圧(VrefpとVrefnの電位差)は16等分される。抵抗DACの内部ノードには、電位の低い順にNRUe(eは整数)という符号を与えた。ここで、NRUeのeは、16等分した基準電位のe/16の電位に対応している。
【0181】
RH5からRH8でNRU15とVrefpの電位差をさらに2分割したVOFFNは、Vrefpから、(Vrefp−Vrefn)/32低い電位となる。同様に、RH1からRH4で、NRU1とVrefnの電位差をさらに2分割したVOFFPは、Vrefnから、(Vrefp−Vrefn)/32高い電位となる。
【0182】
RDAC2は4ビットのデジタル信号を入力して、上位2ビットに相当する電位をRDACUNとRDACUPに出力し、また下位2ビットに相当する電位をRDACLNと、RDACLPに出力する4ビット入力4出力DAC回路として動作する。
【0183】
Vrefn、NRU1、NRU2、NRU3の電位から1つがSEL5により選択されて、RDACLPに出力される。RDAC2の入力下位2ビットが00のときには、Vrefnが出力され、01、10、11に対応してそれぞれ、より高い電位NRU1、NRU2、NRU3が選択される。
【0184】
RDACLNはRDACLPと対称な電位を出力する。Vrefp、NRU15、NRU14、NRU13の電位から1つがSEL4により選択されて、RDACLNに出力される。RDAC2の入力下位2ビットが00のときには、Vrefpが出力され、01、10、11に対応してそれぞれ、より低い電位NRU15、NRU14、NRU13が選択される。
【0185】
次に、RDACUPの電位について説明する。Vrefn、NRU4、NRU8、NRU12の電位から1つがSEL6により選択されて、RDACUPに出力される。RDAC2の入力上位2ビットが00のときには、Vrefnが出力され、01、10、11に対応してそれぞれ、より高い電位NRU4、NRU8、NRU12が選択される。
【0186】
次に、RDACUNの電位について説明する。RDACUNはRDACUPと対称な電位を出力する。Vrefp、NRU12、NRU8、NRU4の電位から1つがSEL3により選択されて、RDACUNに出力される。RDAC2の入力上位2ビットが00のときには、Vrefpが出力され、01、10、11に対応してそれぞれ、より低い電位NRU12、NRU8、NRU4が選択される。
【0187】
このような特性を持った、RDACUP、RDACLP、RDACUN、RDACLNを図7のように容量DACの最小の容量C1、C13、C7、C14のボトムプレートに供給することで、抵抗DAC出力を容量加算するCRダブルステージDACを構成することができる。
【0188】
図7のC1、C7は、図5の回路のC1、図1の回路のC1、C7同様、サンプリング容量としても働く。これと並列にC13、C14を設ける。このC13、C14はVINP、VINNをサンプリングする容量ではないので、容量DACの動作自体は、C1からC12を考えると図5の回路と等価となる。
【0189】
図7の回路は、これらの回路部分にC13、C14が付加されて、トッププレート電位TOP+とTOP−の電位にC13、C14でRDACLPの電位とRDACLNの電位を加算していると考えることができる。
【0190】
図1あるいは、図5において、トッププレートと所定の電位との間に寄生容量があったとしても、TOP+とTOP−で、その寄生容量が等しければ、結果に影響を与えない。つまり、容量DACの動作は、図7において、C13、C14がある場合とない場合で、大筋で一致する。これらのことから、C13、C14を別途設けて、そのボトムプレートに抵抗DAC出力を加えて、トッププレートTOP+とTOP−に、RDACLPの電位とRDACLNの電位を(全体の容量と1Cの容量とで決まる重みで)加算することの妥当性が理解されよう。
【0191】
ここで、VOFFPとVOFFNの目的を説明しておく。AD変換回路においては、アナログ入力電位とデジタル変換結果の入出力特性において、デジタルコード(変換結果)の遷移点を、図1、図5などの回路で実現される特性から1/2×LSBずらすことが望まれる場合がある。図7のC13、C14、とサンプリング時にこれらのボトムプレートに供給されるVOFFPとVOFFNは、そのためのものである。
【0192】
既に述べたように、VOFFNの電位は、Vrefpから、(Vrefp−Vrefn)/32低い電位となる。VOFFPは、Vrefnから、(Vrefp−Vrefn)/32高い電位となる。RDAC2で16分割されたそれぞれの電圧NRUe(eは整数)が、図8のAD変換回路のLSBに相当するので、VOFFP、VOFFNは正負の基
準電圧から1/2×LSB相当の電圧を、サンプリング時に、C13、C14のボトムプレートに供給している。
【0193】
+側の信号で考えた場合、サンプリング時には、+側容量DACの全体の1/32の容量を持つC13に1/2×LSB相当の電圧が供給される。そして、検索時には、C13には、0Vを基準にして、0/16、1/16、2/16、または3/16の電圧(0〜3LSB相当の電圧)が抵抗DAC出力VOFFPとして、入力されることになる。−側容量DACおよび抵抗DAC出力VOFFNについても、同様である。
【0194】
これにより、サンプリング結果を、変換開始とともに、1/2×LSB相当の電位ずらす働きをする。
【0195】
図7および図8では容量DACの分解能が4ビット、抵抗DACの分解能が4ビット(2ビット+2ビット)の場合を例として示したが、図7および図8の場合に限らず、図1、図5の回路も含めて、(容量DAC、抵抗DACともに)一般の分解能の場合に容易に、本発明の考え方を適用できる。
【0196】
図7および図8のような構成をとることで、本実施形態の効果に加えて、面積の削減の効果を得られる。
【0197】
図7および図8のように容量DACを、複雑なCRダブルステージDACに変更しても、図1あるいは、図4で説明した、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4に必要な制御とその働きに影響はない。このように、図7および図8のような構成のCRダブルステージDAC(サンプリング結果を1/2×LSB相当だけシフトしてデジタルデータを生成する回路)により構成される逐次比較型AD変換回路にも、本発明の考え方を適用できる。
【0198】
《コンパレータの構成》
ここで、図9を参照して、本発明の各実施形態に係るAD変換器に適用可能なコンパレータを説明する。図1、図4−図8では、主に容量DACまでの回路の構成例と、スイッチS4などの操作の考え方を説明してきた。図9では、容量DAC出力、TOP+とTOP−の電位差を検出するコンパレータの回路例を示す。
【0199】
図9のSW13からSW16、SW25からSW29、S1はスイッチを、CC1からCC5は結合容量を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、CINP、CINNはコンパレータ入力を、VCMはサンプリング時のコンパレータのバイアス電位(2.5V)を、early、late、convは図中に示すタイミング信号を、AMP1からAMP4は増幅回路を、NC1からNC10は内部のノードを、COUT2はコンパレータの比較結果を、示す。図1、図5−図8等と対応するノード名等には同じ素子名、ノード名等を与えて示している。
【0200】
スイッチに併記されたタイミング信号名は、スイッチが閉じられているタイミングを示す。図9のスイッチの状態は、VINP、VINNの電位を容量DACにサンプリングする状態のスイッチの制御を示している。
【0201】
まず、図9のVINP、VINNの電位を容量DACにサンプリングする状態について、説明する。
【0202】
既に説明したように、容量DACのトッププレートTOP+と、TOP−はS1によって同電位、ほぼ入力アナログ電位のコモン電位になるように制御される。
【0203】
容量DACのスイッチを操作し、コンパレータでビットを決定していく比較期間の最終時点では、TOP+と、TOP−、および、コンパレータ入力CINP、CINNの最終的な電位はほぼVCM(基準電位の1/2)になる。なぜなら、第1実施形態〜第4実施形態で説明したコンパレータCOMP1は、(+)側容量DACの出力信号(+側トッププレートTOP+の電位)および−側容量DACの出力信号(−側トッププレートTOP−の電位)を比較し、その電位差がなくなるように(+)側容量DACおよび(+)側容量DACが制御されるからである。すなわち、比較期間の最終時点では、TOP+と、TOP−、および、コンパレータ入力CINP、CINNの最終的な電位は、コンパレータCOMP1のオフセットを無視すれば、基準電位の1/2になる。
【0204】
この場合、基準電位の1/2のコモン電位を加えた状態でコンパレータのオフセット電圧をなんらかの手段で記憶し、オートゼロを実行することが望ましい。
【0205】
ところが、サンプリング中のTOP+と、TOP−の電位はアナログ入力VINPとVINNのコモン電位となる。一般には、このアナログ入力VINPとVINNのコモン電位と、基準電位の1/2((Vrefp+Vrefn)/2)が一致することは期待できない。そこで、サンプリング中は、SW15とSW16によりCINPとCINNを、TOP+と、TOP−から切り離しておき、別途、CINPとCINNに、基準電位の1/2((Vrefp+Vrefn)/2)つまりVCMを与えて、オフセット電圧を記憶し、オートゼロを実行する。
【0206】
例えば、図9のAMP1にオフセットがあると、CINP、CINNに同じVCM((Vrefp+Vrefn)/2)の電位を与えても、その出力NC1、NC2は同電位とはならない。これをCC1、CC2に記憶しておくことで、オフセット電圧を相殺することができる。
【0207】
CINP、CINNに、例えば、等しい電位VCMを与える。このとき、NC1とNC2の電位は、AMP1のオフセット電圧により、等しい電位とはならない。仮に、NC1の電位が電源電圧の1/2+100mV、NC2の電位が電源電圧の1/2−100mVとなったとする。SW25、SW26は閉じておく。NC3、NC4の電位は、AMP2のオフセット電圧相当の電位となっている。
【0208】
仮にAMP2のオフセット電圧が10mV(NC4がNC3より10mV大きいときに、AMP2の出力電位が電源電圧の1/2程度の電圧となるとする)とすると、NC4の電位は電源電圧の1/2+5mV、NC3の電位は、電源電圧の1/2−5mVとなる。NC1の電位は、電源電圧の1/2+100mV、NC2の電位は電源電圧の1/2−100mVとなる。つまり、CC1の両端の電位は、電源電圧の1/2+100mVと電源電圧の1/2−5mVとなり、CC2の両端の電位は、電源電圧の1/2−100mVと電源電圧の1/2+5mVとなる。
【0209】
AMP1、AMP2にオフセット電圧があっても、サンプリング中に、CC1、CC2に電荷を蓄えることで、NC5、NC6の電位をほぼ等しい電位とできる。これにより、CINP、CINNの電位差が生じると、NC5、NC6の電位がそれぞれ変化し、CINP、CINNの大小関係を、オフセット電圧に影響されずに判定することができるようになる。
【0210】
既に説明したように、VINP、VINNを容量DACにサンプリングする期間には、SW25、SW26、SW27、SW28、SW29を閉じておく。SW25、SW26を閉じておくことで、NC3とNC4の電位差は、AMP2のオフセット電圧程度の値と
なる。
【0211】
AMP3についても、同様に結合容量CC3、CC4にオフセット電圧が記憶される。NC7とNC9の電位が等しくなるので、増幅率が非常に大きい場合、NC8とNC7の電位差はオフセット電圧に等しくなる。なぜなら、NC8とNC7の電位差がオフセット電圧に等しくない場合、出力電圧は+あるいは−の電源電圧程度の値となるからである。(増幅率が非常に大きい極限を考えれば、理解が容易となる。)CC3、CC4に、このNC7、NC8の電位差がAMP3のオフセット電圧に等しいという情報が記憶されているので、NC5、NC6の電位が、サンプリング時の状態から変化し、どちらかが高くあるいは低く変化すると、AMP3のオフセット電圧に影響されずに、その大小関係をAMP3により判定することができる。
【0212】
さらに、AMP4についても、結合容量CC5にオフセット電圧が記憶される。
例えば、NC9が、理想的な値電源電圧の1/2にあったとする。AMP4の論理しきい値が電源電圧の1/2であれば、AMP4のオフセットは0となるが、実際には、AMP4の論理しきい値は製造条件により、電源電圧の1/2からずれる。このような場合でも、SW29によりNC10とCOUT2の電位を等しくすることで、サンプリング中のNC10の電位をAMP4の論理しきい値とできる。これにより、NC9の電位がサンプリング中の電位より上昇したか、あるいは低くなったかを、AMP4とCC5により検出することができる。
【0213】
VINP、VINNを容量DACにサンプリングした後、earlyが併記されたスイッチが開放される。次に、lateが併記されたスイッチが開放され、convが併記されたスイッチが閉じられる。
【0214】
図9に例として、示すような回路で、容量DACの出力TOP+と、TOP−の電位差を検出し、その大小関係を判定することができる。
【0215】
《第5実施形態》
図10は、本発明の第5実施形態に係る逐次比較型AD変換回路のブロック図の一例を、また図11はその動作タイミング例を、示している。ここでは、容量DACとして、図4に示したスイッチS1およびPMOSトランジスタPM7、PM8、MNOSトランジスタNM7、NM8を含む回路を使用する。
【0216】
図10のVINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、COUTはコンパレータ回路出力を、RDOは抵抗DAC出力を、CNTRは抵抗DACの制御信号を、CNTCは容量DACの制御信号を、CLKはAD変換回路のタイミング全般を規定するクロック入力を、SPCはサンプリング期間、S3P、S3NをONするディスチャージ期間(サンプリング容量の電荷を0に初期設定する期間)を規定する信号を、D[11:0]は(例えば)12ビットのAD変換結果を、CDAC1は容量DACを、COMPはコンパレータを、RDAC3は抵抗DACを、CNTは逐次比較を制御する制御回路を、示す。図10において、図1−図9の回路と対応する部分には、同じ素子名、端子名を与えて示した。
【0217】
図10の回路の動作を、図11を用いながら説明する。図11に示すようにクロック信号CLKが入力されているものとする。制御信号SPCがHに変化した後、例えば、2.5クロック(CLKのサイクル時間の)期間、S3P、S3NがONして、容量DACのサンプリング容量の電荷を0に初期化する。次に、SPCがHからLに変化してから1クロック期間後まで、VINP、VINNがサンプリングされる(S3P、S3NがONし
ている期間を図11では“discharge期間“、その後のアナログ入力信号をサンプリングするサンプリング期間を“sampling期間”として示した)。
【0218】
サンプリング期間終了後に、容量DAC(CDAC1)、抵抗DAC(RDAC3)の入力信号を制御してMSBから順番にLSBまで決定していく(図11にはcompare期間として示した)。LSBの決定が終了した後、変換結果D[11:0]が有効となる。
【0219】
図10の発明の回路を、図11のタイミングで動作させるように設計し、各部の波形を回路シミュレーションにより求めた例を図12A−図12D、図13A−図13C、図14A−図14Cに示す。ここで、図10に示す容量DACであるCDAC1の回路としては、図4に示した回路を使用した。スイッチS1、S2P、S2N、S3N、S3P、S4は、それぞれ、図3のPM5とNM5のように、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタを組み合わせて構成した。
【0220】
これらのNMOSトランジスタ、PMOSトランジスタ、および図4に示すPM7、NM7、PM8、NM8等、各トランジスタはチャネル長約0.7umの5V耐圧のMOSトランジスタを仮定したMOSモデルを使用し、SPICEシミュレータにより動作波形を求めた。
【0221】
図12A−図12Dは、電源電圧5V、Vrefp=5V、Vrefn=0V、VINP=1.2mV、VINN=0Vの場合の各部の波形を(VINPに5Vを4096分割した1/4096を入力した場合を)示す。ただし、図12Dは、図12Aの波形で、サンプリングからコンパレータでの比較に移行する時点を拡大した結果である。
【0222】
また、図13A−図13Cは、電源電圧5V、Vrefp=5V、Vrefn=0V、VINP=4.998V、VINN=0Vの場合の各部の波形を(VINPに5Vを4096分割した4094/4096を入力した場合を)示す。
【0223】
また、図14A−図14Cは、電源電圧5V、Vrefp=5V、Vrefn=0V、VINP=1.666V、VINN=0Vの場合の各部の波形を(VINPに5Vを4096分割した1365/4096を入力した場合を)、示す。
【0224】
12ビットのAD変換の例なので、期待される変換結果は、図12A−図12Cの場合が000000000001、図13A−図13Cの場合が111111111110、図14A−図14Cの場合が010101010101、となる。
【0225】
図12Aの波形は、図1、図4あるいは図7のNODE1、NODE2に相当する部分の波形を示している。図12A−図12Cを求めたシミュレーション回路では、ディスチャージ期間(サンプリング容量の電荷を0に初期設定する期間)にNODE2の電位を、VINN、トッププレートTOP+、TOP−の電位、NODE1の電位もVINNの電位に等しくなるように、スイッチを制御している。入力は、VINP=1.2mV、VINN=0Vと非常に小さいので、図12Aでは、NODE1とNODE2の電位は、ほとんど0Vに見える。
【0226】
また、図12Aのグラフでは、コンパレータでの比較期間に、NODE1、NODE2の電位は、電源電圧範囲を超えていないように見える。しかし、図12Dのように、サンプリングからコンパレータでの比較に移行する時点を拡大すると、さらに細かい現象が明示される。図12Dによれば、サンプリングからコンパレータでの比較に移行する時点で、NODE2の電位が−0.08V程度に低下していることが分かる。これは、すでに述
べたように、図4において、VINNの電位がほぼ0V、かつ、NODE2の電位がほぼ0VでスイッチS2Nを遮断する場合に、S2Nを構成するNMOSトランジスタに反転層が形成されているので、その反転層を通じてゲート容量がゲートと、ドレイン、ソースの間に接続され、S2Nを構成するNMOSトランジスタのゲート電位が5Vから0Vに変化することにより、ゲート容量を介してNODE2の電位が低くなるためである。
【0227】
しかし、図12Dのシミュレーション結果では、図4で説明したように、S2PおよびS2N遮断時、S4によってNODE1とNODE2がイコライズされる。さらに、S2PおよびS2Nを構成するトランジスタのゲート電位と逆方向に、NODE1とNODE2に接続されたトランジスタNM7、NM8、PM7、PM8のゲート電位を変化させる(これらのトランジスタをオンにする)。その結果、一旦、−0.08V程度に低下したNODE2の電位が上昇し、電源電圧範囲内に収まっていることが分かる。さらに、イコライズにより、NODE1とNODE2の電位は等しい電位となっていることも分かる。
【0228】
このように、可能な限りノードNODE1、NODE2の電位を電源電圧範囲に収めるように制御することで、スイッチS3P、S3Nを通して、トッププレートTOP+、TOP−に流れる電流を低減することができる。これにより、トッププレートTOP+、TOP−の電荷が失われることが抑制され、より正確な変換結果が得られる。
【0229】
サンプリング終了後、コンパレータでの比較を始める(12A図では、コンパレータでの比較、として示した)。コンパレータ出力が000000000001と変化していることが分かる(図12Cの波形図)。これは、上で述べた期待値に一致する。
【0230】
図12B(容量DAC出力の波形として示される図)は、TOP+、TOP−の波形を示している。サンプリング期間中、TOP+、TOP−の電位は入力コモン電位となるので、ほぼ0Vとなっている。比較が始まると、コモン電位は、約2.5Vとなり、電位差が大きい状態からしだいに電位差が小さい状態に変化していき、最終的には、TOP+、TOP−の電位がほぼ一致する。
【0231】
図13A−図13Cでは、NODE1とNODE2の電位は、ディスチャージ期間には、VINNによって与えられる0Vとなっている。図13Aよりサンプリング期間には、VINPとVINNの電位がそれぞれ約5Vと0Vなので、NODE1とNODE2の電位はそれぞれ約5Vと0Vとなることが分かる。図13BのTOP+、TOP−の波形より、サンプリング期間中に、TOP+、TOP−の電位が入力コモン電位約2.5Vとなっていることが分かる。また、コンパレータでの比較期間に、NODE1、NODE2の電位は、電源電圧範囲を超えていないことも分かる。
【0232】
図13Cより、コンパレータ出力は、期待値111111111110に一致していることも分かる。TOP+、TOP−は電位差が大きい状態からしだいに電位差が小さい状態に変化していき、最終的には、やはり、TOP+、TOP−の電位がほぼ一致する。符号は図12の場合と逆となる。
【0233】
図14A−図14Cでは、NODE1とNODE2の電位は、ディスチャージ期間には、VINNによって与えられる0Vとなっている。図14Aより、サンプリング期間には、VINP、VINNの電位が約1.6Vと0Vなので、NODE1とNODE2の電位はそれぞれ、約1.6Vと0Vとなることが分かる。図14BのTOP+、TOP−の波形より、サンプリング期間中に、TOP+、TOP−の電位が入力コモン電位約0.8Vとなっていることが分かる。また、コンパレータでの比較期間に、NODE1、NODE2の電位は、電源電圧範囲を超えていないことも分かる。
【0234】
図14Cより、コンパレータ出力は010101010101と変化し、コンパレータ出力が010101010101変化するのに対応して、その電位差の符号が交互に変化する。図14Bより、比較の終了時点では、TOP+、TOP−の電位がほぼ一致する。
【0235】
以上、図10、図11他に示される回路がそれぞれの図の説明で述べたように動作することが、波形図によっても理解されよう。
【0236】
《第6実施形態》
<概要>
図15を参照して、本発明の第6実施形態に係るAD変換器を説明する。本実施形態では、符号を仮定して差動アナログ入力をデジタル値に変換するAD変換器の入力部分にスイッチ(SW30、SW31、SW32、SW33)を設ける。また、(+)側アナログ入力信号VINPと(−)側アナログ入力信号VINNの大小関係を判定するコンパレータCOMP2を設ける。符号を仮定して差動アナログ入力をデジタル値に変換するAD変換器は、その入力ICDACPがICDACNより大きいか等しいことを仮定してアナログ差電位(ICDACP−ICDACN)をデジタル値に変換する場合、VINPがVINNより大きい場合には、VINPをICDACPに、VINNをICDACNに供給する。逆にVINPがVINNより小さい場合には、VINPをICDACNに、VINNをICDACPに供給するようスイッチ(SW30、SW31、SW32、SW33)を操作すればよい。
【0237】
これらの工夫により、符号を仮定しアナログ信号をデジタル値に変換するAD回路を使用して、必要な場合には、符号も含めてアナログ信号をデジタル値に変換する回路を実現できる。
【0238】
<実施例>
図15は本実施形態の逐次比較型AD変換回路のブロック図の一例を、示している。図15のVINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、COUTはコンパレータ回路出力を、RDOは抵抗DAC出力を、CNTRは抵抗DACの制御信号を、CNTCは容量DACの制御信号を、CLKはAD変換回路のタイミング全般を規定するクロック入力を、SPCはサンプリング期間、S3P、S3NをONするディスチャージ期間(サンプリング容量の電荷を0に初期設定する期間)を規定する信号を、D[11:0]は(例えば)12ビットのAD変換結果を、CDAC1は容量DACを、COMPはコンパレータを、RDAC3は抵抗DACを、ICDACP、ICDACNは容量DACの入力を、CNTは逐次比較を制御する制御回路を、SW30からSW33はスイッチを、COMP2は、入力の符号を判定するコンパレータを、SIGNはコンパレータにより判定された符号を、示す。図15の回路で、図10の回路に対応する部分には、同じ素子名、端子名を与えて示した。
【0239】
図1、図4−図10の回路では、VINPがVINNより大きい(VINP>VINN)ことを前提に、符号を仮定して、AD変換を行なうことで、変換サイクルを節約でき、高速化できることを説明した。応用上、VINPがVINNより大きいことが保証される場合には、図1、図4−図10の回路をそのまま適用すればよい。
【0240】
常に、VINPがVINNより大きいことが、保証されない場合には、例えば、図15に示す回路構成とすることで、本実施形態の利点を損なわずに、符号も含めてアナログ信号電位差をデジタル変換する回路を実現できる。
【0241】
図15の回路は、図10の回路とほとんど同じ構成となっており、その違いは、COM
P2、SW30からSW33なので、重複する部分の説明は省略し、図10の回路と異なる部分を中心に説明をすすめる。
【0242】
図10の回路の入力部分に、SW30からSW33を設けて、コンパレータCOMP2により、VINPとVINNの大小関係を調べる。VINP>VINNの場合には、SW31、SW32をONし、VINPをCDAC1の+側入力に、VINNをCDAC1の−側入力に供給する(COMP2出力SIGNによりSW30からSW33を制御する)。逆にVINP<VINNの場合には、SW30、SW33をONし、VINPをCDAC1の−側入力に、VINNをCDAC1の+側入力に供給する。
【0243】
このように制御することにより、CDAC以降のAD変換器にとっては、常に、+側入力が−側入力より大きくなるようにできるので、図1、図6、図7、図8、図10で説明した回路で常に正しい結果が得られる。このように回路を構成しておけば、応用上、信号の符号が、あまり変化せず、その符号が予測しやすい場合には、符号判定サイクルを省略でき、高速化できる。
【0244】
《第7実施形態》
図16は、本発明の第7実施形態に係るAD変換器を示す回路図である。図16のSW2からSW5、SW8からSW11、SW15、SW16、SW19からSW22、S1、S2PA、S2PB、S2NA、S2NB、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC12は容量を、VINPは(+)のアナログ入力を、VINNは(−)のアナログ入力を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、COMP1はコンパレータを、CINP、CINNはコンパレータの入力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6で構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12で構成されるDACを、示す。図1、図4の回路等の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ素子名、ノード名等を与えて示している。
【0245】
図16の回路は、図1の回路とほとんど同じ構成となっており、その違いは、S2PA、S2PB、S2NA、S2NBなので、重複する部分の説明は省略し、図1の回路と異なる部分を中心に説明をすすめる。
【0246】
図15で、VINP<VINNの場合に、本発明の考え方を適用する回路例を示した。図15では、例えば図1の回路の容量DACの入力部分に新たにスイッチを設ける回路例を示したが、図16のような方法も可能である。
【0247】
図16では、図1のS2P、S2Nの代わりに、S2PA、S2PB、S2NA、S2NBを設ける。VINP>VINNの場合には、S2PA、S2NAをONし、VINPをNODE1に、VINNをNODE2に供給する(例えば、COMP2出力SIGNによりスイッチを制御する)。逆にVINP<VINNの場合には、S2PB、S2NBをONし、VINPをNODE2に、VINNをNODE1に供給する。
【0248】
図16のような構成とすることで、図15のような構成で、スイッチの増加が問題となる場合には、スイッチの数を削減できる効果が得られる。
【0249】
図16のように回路を、構成することで、図16の回路は図15の回路と同様に動作させることができる。
【0250】
《第8実施形態》
図17、図18は、本発明の第8実施形態を示す回路図である。図17のSW2からSW5、SW8からSW11、SW15、SW16、SW19からSW24、S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4はスイッチを、C1からC14は容量を、TOP+は容量アレイの+側トッププレートを、TOP−は容量アレイの−側トッププレートを、Vrefpは+側の基準電位(例えば、5V)を、Vrefnは−側の基準電位(例えば、0V)を、CINP、CINNはコンパレータの入力を、NODE1、NODE2は内部のノードを、(+)側容量DACはC1からC6、C13で構成されるDACを、(−)側容量DACはC7からC12、C14で構成されるDACを、RDACLP、RDACUP、RDACLN、RDACUNは抵抗DAC出力を、VOFFP、VOFFNは変換結果にオフセットを与えるためのバイアス電位を、示す。
【0251】
図18の素子、ノード等は図9と同じなので、説明は省略する。図17、図18で、図8、図9等の回路要素に対応する部分、同じ働きをする素子には同じ名称を与えて示している。また、図を簡単にするために、VINP、VINN、S2P、S2N、RDAC2、等、一部図から省略している部分があるが、省略した部分は、特に断らない場合は、図1、図6、図7、図8、図9等と同じ構成になっているものとする。
【0252】
図17の回路は、図8の回路とほぼ同じ回路構成となっており、違いは、C13とC14の接続にある。図18の回路は図9と同じ回路となっており、C13、C14の接続先が記入されている点だけが異なる。説明が図8、図9と重複する部分については、省略し、図17に特有の部分について、図18を用いながら、説明する。
【0253】
図8の回路では、C13とC14のトッププレートはTOP+、TOP−としていた。C13、C14はアナログ入力信号VINP、VINNをサンプリングするサンプリング容量ではないので、TOP+とTOP−にとっては寄生容量と同じ働きをする。つまり、コンパレータでの比較時の最終的なコモン電位を、理想値から多少ずらす原因となる。図8の回路構成でも実際上問題がない場合が多いが、このコモン電位のずれをできるだけすくなくしたい場合には、図17のような構成が可能である。
【0254】
図17では、C13、C14のトッププレートは、容量DACのトッププレートTOP+、TOP−とは別のノードとする。C1からC6、C7からC12がそれぞれTOP+、TOP−につながれるので、その容量DACの動作は図7の回路と、同様となる。
【0255】
C13、C14はサンプリング容量ではないので、そのトッププレートの電位は、コンパレータ入力のコモン電位VCMとなっていれば都合がよい。このため、C13、C14のトッププレートは図18のコンパレータ入力CINP、CINNに接続される。
【0256】
サンプリング中は、CINP、CINNはVCMの電位になるので、C13、C14のトッププレートの電位もVCMとなる。サンプリング期間中に、TOP+、TOP−の電位は、入力アナログ電位のコモン電位となるが、SW15、SW16により、TOP+、TOP−とCINP、CINNは切り離されているので、問題はない。コンパレータでの比較が始まると、SW15、SW16がONし、CINP、CINNとTOP+、TOP−は同電位となり、そのコモン電位は基準電圧/2となる。CINP、CINNとTOP+、TOP−が同じ電位となるので、図17のように、C13、C14のトッププレートをTOP+、TOP−と別ノードとしていても、比較動作が始まると、図8の回路と同様に動作させることができる。
【0257】
この図17、図18のような構成とすることで、図8と同様の動作を実現しながら、サンプリングに寄与しないC13、C14をTOP+、TOP−から切り離すことができ、これにより、TOP+、TOP−の最終的なコモン電位の理想値からのずれを低減できる
効果が得られる。
【0258】
図17、図18の構成においても、図8の構成同様、複雑なCRダブルステージDACを使用しながら、本発明の考え方を適用できる。
【0259】
《実施形態の効果》
以上説明したように、第1実施形態〜第8実施形態に係るAD変換器では、スイッチS4、あるいはNMOSトランジスタNM7、NM8、PMOSトランジスタPM7、PM8を設けることにより、内部ノードNODE1、NODE2の電位が電源電圧範囲を超えた状態で維持されることがないよう制御できる。これにより、S3P、S3Nを通してトッププレートの電荷が失われることを低減できるので、電源電圧範囲のアナログ入力信号をデジタル値に変換する場合でも、より正確な変換結果が得られるようになる。
【0260】
また、第1実施形態〜第8実施形態に係るAD変換器によれば、(+)側容量DACのボトムプレートに供給されるアナログ入力VINPが、(−)側容量DACのボトムプレートに供給されるアナログ入力VINNより、大きいか、あるいは等しいことを仮定して、アナログ入力電位差(VINP−VINN)をデジタル値に変換することで、あらかじめ、VINP−VINN>=0が予想される場合には、従来回路(図2)では、必要だった符号決定のためのサイクルを省略して、AD変換を行なうことができる。これにより、符号決定に要する時間分、変換時間を短縮することができる。
【0261】
符号を仮定して差動アナログ入力をデジタル値に変換するAD変換器の入力部分にスイッチを設け、VINPがVINNより低い電位の場合には、スイッチにより入力信号を入れ替えることにより、符号を仮定しアナログ信号をデジタル値に変換するAD回路を使用して、必要な場合には、符号も含めてアナログ信号をデジタル値に変換する回路を実現できる。
【0262】
《その他》
(付記1)
第1アナログ信号が入力される第1アナログ端子と、
前記第1アナログ端子に第1アナログ信号を入力する第1入力スイッチと、
第2アナログ信号が入力される第2アナログ端子と、
前記第2アナログ端子に第2アナログ信号を入力する第2入力スイッチと、
第1基準電圧の供給を受ける第1基準電圧接続端子と、
第2基準電圧の供給を受ける第2基準電圧接続端子と、
前記第1アナログ端子から前記第1アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第1アナログ信号の比較の対象となる比較信号を生成する第1デジタルアナログ変換器と、
前記第2アナログ端子から前記第2アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第2アナログ信号の比較の対象となる比較信号を生成する第2デジタルアナログ変換器と、
前記第1デジタルアナログ変換器と第2デジタル変換器の出力側を相互に開閉可能に接続する第1スイッチと、
前記第1スイッチが開放されたときに、前記第1アナログ信号および第2アナログ信号の差分値と前記第1デジタルアナログ変換器の出力信号および第2デジタルアナログ変換器の出力信号の差分値とを比較する比較器と、
前記第1アナログ端子および第2アナログ端子の電位変動を制御する電位制御回路と、を備え、
前記第1デジタルアナログ変換器は、複数の容量素子と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第1アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいず
れかに接続する複数の第1スイッチ群と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する複数の出力側端子を共通に接続する第1共通端子と、を有し、
前記第2デジタルアナログ変換器は、複数の容量素子と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第2アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第2スイッチ群と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する複数の出力側端子を共通に接続する第2共通端子とを有し、
第1入力スイッチおよび第2入力スイッチが前記第1アナログ信号および第2アナログ信号を前記第1アナログ端子および第2アナログ端子に入力することにより前記第1デジタルアナログ変換器および前記第2デジタルアナログ変換器が第1アナログ信号および第2アナログ信号のサンプルデータを取り込む時点では、第1スイッチにより前記第1共通端子と第2共通端子とが相互に接続され、前記取り込みが完了したときには前記第1共通端子と第2共通端子との接続が開放され、
前記電位制御回路は、前記第1アナログ信号および第2アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後第1入力スイッチおよび第2入力スイッチが開放されるときに、前記第1アナログ端子の電位および第2アナログ端子の電位の変動を抑制する、アナログデジタル変換回路。
【0263】
(付記2)
前記電位制御回路は、前記第1アナログ端子と第2アナログ端子を相互に開閉可能に接続する第2スイッチを有し、
前記第1デジタル信号および第2デジタル信号のサンプルデータの取り込みが完了した後第1入力スイッチおよび第2入力スイッチが開放されるときに、第1スイッチによる接続が開放され、第2スイッチにより前記第1アナログ端子と第2アナログ端子とが相互に接続される、付記1に記載のアナログデジタル変換器。
【0264】
(付記3)
前記第1入力スイッチおよび第2入力スイッチのそれぞれは、ゲート電圧が前記第1基準電圧から第2基準電圧の間で制御されることにより開閉動作するMOSトランジスタをそれぞれ有し、
前記電位制御回路は、
ソースおよびドレインが前記第1アナログ端子に接続されるとともにゲートが前記第1基準電圧から第2基準電圧の間で制御される第1調整MOSトランジスタと、
ソースおよびドレインが前記第2アナログ端子に接続されるとともにゲートが前記第1基準電圧から第2基準電圧の間で制御される第2調整MOSトランジスタと、
前記第1デジタル信号および第2デジタル信号のサンプルデータの取り込みが完了した後、前記第1入力スイッチのMOSトランジスタのゲート電圧を第1基準電圧と第2基準電圧との間で制御することにより第1入力スイッチが開放されるときに、前記第1調整MOSトランジスタのゲート電圧を前記第1入力スイッチのMOSトランジスタのゲート電圧とは逆方向に制御し、前記第2入力スイッチのMOSトランジスタのゲート電圧を第1基準電圧と第2基準電圧との間で制御することにより第2入力スイッチが開放されるときに、前記第2調整MOSトランジスタのゲート電圧を前記第2入力スイッチのMOSトランジスタのゲート電圧とは逆方向に制御するゲート制御回路と、を有する付記1に記載のアナログデジタル変換器。
【0265】
(付記4)
前記第1スイッチおよび第2スイッチは、それぞれ、第1導電型の第1MOSトランジスタと第2導電型の第2MOSトランジスタを有し、第1MOSトランジスタのゲート電圧を第1基準電圧とするとともに第2MOSトランジスタのゲート電圧を第2基準電圧とすることにより導通され、第1MOSトランジスタのゲート電圧を第2基準電圧とするとともに第2MOSトランジスタのゲート電圧を第1基準電圧とすることにより遮断され、
前記第1調整MOSトランジスタおよび第2調整MOSトランジスタは、それぞれ、第1導電型の第3MOSトランジスタと第2導電型の第4MOSトランジスタとを有し、前記第1MOSトランジスタのゲート電圧が第2基準電圧とされるとともに第2MOSトランジスタのゲート電圧が第1基準電圧とされるときに、前記第3MOSトランジスタのゲート電圧が第1基準電圧とされ、前記第4MOSトランジスタのゲート電圧が第2基準電圧とされる付記3に記載のアナログデジタル変換器。
【0266】
(付記5)
第1アナログ信号が入力される第1アナログ端子と、
第1アナログ端子に第1アナログ信号を入力する第1入力スイッチと、
第2アナログ信号が入力される第2アナログ端子と、
第2アナログ端子に第2アナログ信号を入力する第2入力スイッチと、
第1基準電圧の供給を受ける第1基準電圧接続端子と、
第2基準電圧の供給を受ける第2基準電圧接続端子と、
前記第1アナログ端子から前記第1アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第1アナログ信号の比較の対象となる比較信号を生成する第1デジタルアナログ変換器と、
前記第2アナログ端子から前記第2アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第2アナログ信号の比較の対象となる比較信号を生成する第2デジタルアナログ変換器と、
前記第1デジタルアナログ変換器と第2デジタル変換器の出力側を相互に開閉可能に接続する第1スイッチと、
前記第1アナログ信号および第2アナログ信号の差分値と前記第1デジタルアナログ変換器の出力信号および第2デジタルアナログ変換器の出力信号の差分値とを比較する比較器と、を備え、
前記第1デジタルアナログ変換器は、複数の容量素子と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第1アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第1スイッチ群と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第1共通端子と、を有し、
前記第2デジタルアナログ変換器は、複数の容量素子と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第2アナログ端子、第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のい
ずれかに接続する複数の第2スイッチ群と前記複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第2共通端子と、を有し、
前記第1デジタルアナログ変換器の前記複数の容量素子は、その複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第1容量素子を含み、前記第1デジタル信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、その第1容量素子以外の容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に基づいて前記第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかが接続され、前記第1容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に拘わらず前記第1基準電圧端子が接続され、
前記第2デジタルアナログ変換器の前記複数の容量素子は、その複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第2容量素子を含み、前記第2デジタル信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、その第2容量素子以外の容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に基づいて前記第1基準電圧端子、および第2基準電圧端子のいずれかが接続され、前記第2容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に拘わらず前記第2基準電圧端子が接続されるアナログデジタル変換回路。
【0267】
(付記6)
前記第1アナログ信号の信号レベルと第2アナログ信号の信号レベルを比較する比較器と、
前記比較の結果により、第1アナログ信号と第2アナログ信号と入れ替え、第1アナログ
端子に入力される信号レベルが第2アナログ端子に入力される信号レベルよりも高くなるようにするスイッチとさらに備える付記5に記載のアナログデジタル変換器。
【符号の説明】
【0268】
COMP1 コンパレータ
NODE1
NODE2
S1、S2P、S2N、S3P、S3N、S4、SW2−SW5、SW8−SW11、SW13、SW14、SW15、SW16、SW19、SW20、SW21、SW22
スイッチ
Vrefp +側基準電位
Vrefn −側基準電位
TOP+ +側トッププレート
TOP− −側トッププレート
NM7、NM8 NMOSトランジスタ
PM7、PM8 PMOSトランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アナログ信号が入力される第1アナログ端子と、
前記第1アナログ端子に前記第1アナログ信号を入力する第1入力スイッチと、
第2アナログ信号が入力される第2アナログ端子と、
前記第2アナログ端子に前記第2アナログ信号を入力する第2入力スイッチと、
第1基準電圧の供給を受ける第1基準電圧接続端子と、
第2基準電圧の供給を受ける第2基準電圧接続端子と、
前記第1アナログ端子から前記第1アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第1アナログ信号の比較の対象となる第1比較信号を生成する第1デジタルアナログ変換器と、
前記第2アナログ端子から前記第2アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第2アナログ信号の比較の対象となる第2比較信号を生成する第2デジタルアナログ変換器と、
前記第1デジタルアナログ変換器の出力側と前記第2デジタルアナログ変換器の出力側を開放または導通する第1スイッチと、
前記第1アナログ信号および前記第2アナログ信号の差分値と前記第1デジタルアナログ変換器の出力信号および前記第2デジタルアナログ変換器の出力信号の差分値とを比較する比較器と、を備え、
前記第1デジタルアナログ変換器は、第1の複数の容量素子と前記第1の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第1アナログ端子、前記第1基準電圧端子、および前記第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第1スイッチ群と前記第1の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第1共通端子と、を有し、
前記第2デジタルアナログ変換器は、第2の複数の容量素子と前記第2の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第2アナログ端子、前記第1基準電圧端子、および前記第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第2スイッチ群と前記第2の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第2共通端子と、を有し、
前記第1の複数の容量素子は、前記第1の複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第1容量素子を含み、前記第1アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、前記第1容量素子以外の容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に基づいて前記第1基準電圧端子、および前記第2基準電圧端子のいずれかが接続され、前記第1容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に拘わらず前記第1基準電圧端子が接続され、
前記第2の複数の容量素子は、前記第2の複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第2容量素子を含み、前記第2アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、前記第2容量素子以外の容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に基づいて前記第1基準電圧端子、および前記第2基準電圧端子のいずれかが接続され、前記第2容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に拘わらず前記第2基準電圧端子が接続されるアナログデジタル変換器。
【請求項2】
前記第1アナログ信号の信号レベルと前記第2アナログ信号の信号レベルを比較する比較器と、
前記比較器の結果により、前記第1アナログ信号と前記第2アナログ信号と入れ替え、前記第1アナログ端子に入力される信号レベルが第2アナログ端子に入力される信号レベルよりも高くなるようにする第2スイッチとさらに備える請求項1に記載のアナログデジタル変換器。
【請求項1】
第1アナログ信号が入力される第1アナログ端子と、
前記第1アナログ端子に前記第1アナログ信号を入力する第1入力スイッチと、
第2アナログ信号が入力される第2アナログ端子と、
前記第2アナログ端子に前記第2アナログ信号を入力する第2入力スイッチと、
第1基準電圧の供給を受ける第1基準電圧接続端子と、
第2基準電圧の供給を受ける第2基準電圧接続端子と、
前記第1アナログ端子から前記第1アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第1アナログ信号の比較の対象となる第1比較信号を生成する第1デジタルアナログ変換器と、
前記第2アナログ端子から前記第2アナログ信号のサンプルデータを取り込んで保持するとともに前記第2アナログ信号の比較の対象となる第2比較信号を生成する第2デジタルアナログ変換器と、
前記第1デジタルアナログ変換器の出力側と前記第2デジタルアナログ変換器の出力側を開放または導通する第1スイッチと、
前記第1アナログ信号および前記第2アナログ信号の差分値と前記第1デジタルアナログ変換器の出力信号および前記第2デジタルアナログ変換器の出力信号の差分値とを比較する比較器と、を備え、
前記第1デジタルアナログ変換器は、第1の複数の容量素子と前記第1の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第1アナログ端子、前記第1基準電圧端子、および前記第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第1スイッチ群と前記第1の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第1共通端子と、を有し、
前記第2デジタルアナログ変換器は、第2の複数の容量素子と前記第2の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子を前記第2アナログ端子、前記第1基準電圧端子、および前記第2基準電圧端子のいずれかに接続する複数の第2スイッチ群と前記第2の複数の容量素子のそれぞれの入力側端子に対向する出力側端子を接続する第2共通端子と、を有し、
前記第1の複数の容量素子は、前記第1の複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第1容量素子を含み、前記第1アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、前記第1容量素子以外の容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に基づいて前記第1基準電圧端子、および前記第2基準電圧端子のいずれかが接続され、前記第1容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に拘わらず前記第1基準電圧端子が接続され、
前記第2の複数の容量素子は、前記第2の複数の容量素子全体の容量の1/2に相当する容量の第2容量素子を含み、前記第2アナログ信号のサンプルデータの取り込みが完了した後には、前記第2容量素子以外の容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に基づいて前記第1基準電圧端子、および前記第2基準電圧端子のいずれかが接続され、前記第2容量素子の入力側端子には前記比較器の比較の結果に拘わらず前記第2基準電圧端子が接続されるアナログデジタル変換器。
【請求項2】
前記第1アナログ信号の信号レベルと前記第2アナログ信号の信号レベルを比較する比較器と、
前記比較器の結果により、前記第1アナログ信号と前記第2アナログ信号と入れ替え、前記第1アナログ端子に入力される信号レベルが第2アナログ端子に入力される信号レベルよりも高くなるようにする第2スイッチとさらに備える請求項1に記載のアナログデジタル変換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【公開番号】特開2011−35944(P2011−35944A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255418(P2010−255418)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2005−334563(P2005−334563)の分割
【原出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2005−334563(P2005−334563)の分割
【原出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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