説明

アナログユニット

【課題】コストアップを抑制しつつ、温度ドリフトに対する出力値を補正することが可能なアナログユニットを提供する。
【解決手段】入力値を出力値に変換する変換回路12と、前記変換回路の温度が初期状態から定常状態に至る間の2つの時点における前記入力値と出力値との関係を示す設定値を記憶する記憶部14と、前記記憶部に記憶された設定値に基づいて、前記変換回路の出力値を校正する校正部13とを備え、時間経過に基づいて設定値を補間する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアナログユニットに関し、特に、アナログユニットの出力値の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログユニットでは、チャンネルごとの変換特性のバラツキを補正するため、アナログユニットの出力値の校正が行われている。このアナログユニットの出力値の校正では、オフセット値およびゲイン値の2点分の計測を行い、この2点間を直線で近似することが一般的に行われている。
【0003】
また、特許文献1には、A/D変換時の非直線性を補償するために、A/D変換装置への入力電圧範囲Vmin〜Vmaxを、中心電圧Vcを境界にして領域1と領域2に2等分割し、領域1においては近似直線L11に、領域2においては近似直線L12にそれぞれ近似する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、A/D変換ユニットのそのチャンネルにあったユーザオフセット値を、継承元の工場オフセット値、工場ゲイン値およびユーザオフセット値、不揮発性メモリに格納されている工場オフセット値および工場ゲイン値から補正算出することで、オフセット値およびゲイン値の計測を行うことなく、アナログユニットの出力値を校正する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、基準アナログ信号をA/D変換部により変換された基準ディジタル値を用いて、出力すべきディジタル値に対応したA/D変換値をディジタル値毎に予め算出し、このA/D変換値と、A/D変換部によりアナログ信号から変換された生ディジタル信号と比較する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4074823号公報
【特許文献2】特許第3969391号公報
【特許文献3】特許第3403127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、オフセット値およびゲイン値の2点間を直線で近似する方法では、オフセット値およびゲイン値の2点分を計測する必要があり、工数がかかるという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に開示された方法では、領域1においては近似直線L11に、領域2においては近似直線L12にそれぞれ近似するため、オフセット値およびゲイン値の3点分を計測する必要があり、工数がかかるだけでなく、校正精度のバラツキが大きいという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された方法では、アナログ信号とADCコードとの関係が直線で表される場合には、高い校正精度が得られるが、アナログ信号とADCコードとの関係が直線で表わすことができない場合には、校正精度が低下するという問題があった。
【0010】
また、特許文献3に開示された方法では、温度ドリフトなどに対する出力値の補正方法として有効であるが、A/D変換値をアドレスがディジタル値に相当する形式で格納したデータテーブルや、A/D変換部によりアナログ信号から変換された生ディジタル信号とデータテーブルにおけるA/D変換値とを比較する比較回路が必要となり、コストアップを招くという問題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アナログ信号とADCコードとの関係が非直線性を示す場合においても、測定にかかる工数の増大を抑制しつつ、出力値を校正することが可能なアナログユニットを得ることを第1の目的とする。
【0012】
本発明は、アナログ信号とADCコードとの関係が非直線性を示す場合においても、校正精度のバラツキを低減することが可能なアナログユニットを得ることを第2の目的とする。
【0013】
本発明は、コストアップを抑制しつつ、温度ドリフトに対する出力値を補正することが可能なアナログユニットを得ることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のアナログユニットは、入力値を出力値に変換する変換回路と、前記変換回路の温度が初期状態から定常状態に至る間の2つの時点における前記入力値と出力値との関係を示す設定値を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された設定値に基づいて、前記変換回路の出力値を校正する校正部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、コストアップを抑制しつつ、温度ドリフトに対する出力値を補正することが可能なアナログユニットを得ることが可能という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1のアナログユニットの校正方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態2の校正方法を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態3の校正方法を示す図である。
【図5】図5は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態4の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態5の校正方法を示す図である。
【図7】図7は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態6の校正方法を示す図である。
【図8】図8は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態7の概略構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態8の概略構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、図9のアナログユニットの温度ドリフト補正方法を示す図である。
【図11】図11は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態9の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態10の概略構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、図12のアナログユニットの温度ドリフト補正方法を示す図である。
【図14】図14は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態11の概略構成を示すブロック図である。
【図15】図15は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態12の校正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るアナログユニットの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、アナログユニットには、A/D変換ユニットとD/A変換ユニットとがあり、以下の説明では、主にA/D変換ユニットを例にとって説明するが、A/D変換ユニットに限定されるものではない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。図1において、A/D変換ユニット11には、A/D変換回路12、スケーリング部13、不揮発性メモリ14、ユーザ設定値計算部15および一時記憶メモリ16が設けられている。
【0019】
ここで、A/D変換回路12は、アナログ入力値SaをADCコード(ディジタル変換値)Cdに変換することができる。なお、1つのA/D変換ユニット11には、例えば、4〜8チャンネル分のA/D変換回路12を搭載することができる。チャンネルとは、1つのA/D変換ユニット11中にある複数のA/D変換回路12のうちの1機能単位のことを言う。
【0020】
スケーリング部13は、ADCコードCdをユーザレンジに対応したディジタル出力値Doに圧縮伸長することができる。また、スケーリング部13では、チャンネルごとにA/D変換特性のバラツキを補償するため、A/D変換ユニット11の校正を行うことができる。なお、A/D変換ユニット11の校正とは、電圧または電流などのアナログ入力値Saが入力された時に、所望のディジタル出力値Doが出力されるように調整することを言う。また、スケーリング部13は、A/D変換ユニット11の校正を行う場合、不揮発性メモリ14に記憶されているユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを参照することができる。
【0021】
不揮発性メモリ14は、2点分の工場設定値および2点分のユーザ設定値をユーザレンジR1〜Rmごとに記憶することができる。なお、工場設定値は、アナログ入力値SaとADCコードCd(すなわち、校正前のディジタル出力値Do)との関係を示すことができる。また、2点分の工場設定値としては、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgを与えることができる。
【0022】
また、ユーザ設定値は、アナログ入力値Saとディジタル出力値Doとの関係を示すことができる。また、2点分のユーザ設定値としては、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを与えることができる。
【0023】
ここで、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgは、A/D変換ユニット11の生産時に工場で設定することができる。この工場オフセット値Foは、スケーリングする際に用いる仕様上最も低いオフセット電圧を生産工場で印加した際に出力するADCコードである。また、工場ゲイン値Fgは、スケーリングする際に用いる仕様上最も高いゲイン電圧を生産工場で印加した際に出力するADCコードである。
【0024】
また、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugは、A/D変換ユニット11をユーザが使用する現場で設定することができる。このユーザオフセット値Uoは、スケーリングする際に用いる仕様上最も低いオフセット電圧を使用現場で印加した際に出力するADCコードである。ユーザゲイン値Ugは、スケーリングする際に用いる仕様上最も高いゲイン電圧を使用現場で印加した際に出力するADCコードである。
【0025】
また、オフセット電圧とは、A/D変換ユニット11の特定のチャンネルにおいて、アナログ入力値Saとして入力される電圧の一番低い値で、その入力電圧値に対応してディジタル出力値Doとして最低の値、例えば0〜4000にスケーリングされる場合にディジタル出力値Doとして0が出力される入力電圧のことである。ゲイン電圧とは、A/D変換ユニット11の特定のチャンネルにおいて、アナログ入力値Saとして入力される一番高い電圧の値で、その入力電圧値に対応してディジタル出力値Doとして最高の値、例えば0〜4000にスケーリングされる場合にディジタル出力値Doとして4000が出力される入力電圧のことである。すなわち、アナログ入力値Saとして入力される電圧の範囲が0〜5Vの場合、オフセット電圧は0V、ゲイン電圧は5Vとなる。
【0026】
ユーザ設定値計算部15は、1点分のユーザ計測値uP1、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgに基づいて、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを計算し、不揮発性メモリ14に記憶させることができる。なお、ユーザ計測値uP1は、A/D変換ユニット11をユーザが使用する現場で計測することができる。また、ユーザ計測値uP1は、アナログ入力値SaとADCコードCd(すなわち、校正前のディジタル出力値Do)との関係を示すことができる。
【0027】
一時記憶メモリ16は、A/D変換ユニット11をユーザが使用する現場で計測された1点分のユーザ計測値uP1を記憶することができる。なお、スケーリング部13、不揮発性メモリ14、ユーザ設定値計算部15および一時記憶メモリ16は、マイクロコンピュータにて実現することができる。
【0028】
そして、A/D変換ユニット11の生産工場において、アナログ入力値SaをA/D変換回路12に入力した時のADCコードCdを計測することで、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgが測定され、不揮発性メモリ14に記憶される。例えば、A/D変換ユニット11に0V〜10Vの電圧がアナログ入力値Saとして入力されるものとすると、0Vの電圧がアナログ入力値Saとして入力された時のADCコードCdが工場オフセット値Foとして不揮発性メモリ14に記憶されるとともに、10Vの電圧がアナログ入力値Saとして入力された時のADCコードCdが工場ゲイン値Fgとして不揮発性メモリ14に記憶される。
【0029】
次に、A/D変換ユニット11の使用現場において、アナログ入力値SaをA/D変換回路12に入力した時のADCコードCdを計測することで、ユーザ計測値uP1が測定され、一時記憶メモリ16に記憶される。例えば、5Vの電圧がアナログ入力値Saとして入力された時のADCコードCdがユーザ計測値uP1として一時記憶メモリ16に記憶される。
【0030】
そして、ユーザ計測値uP1が一時記憶メモリ16に記憶されると、ユーザ設定値計算部15において、ユーザ計測値uP1、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgに基づいて、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが計算され、不揮発性メモリ14に記憶される。
【0031】
そして、アナログ入力値SaがA/D変換回路12に入力されると、ADCコードCdに変換され、スケーリング部13に入力される。そして、ADCコードCdがスケーリング部13に入力されると、不揮発性メモリ14に記憶されたユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが参照されることにより、ADCコードCdがディジタル出力値Doにスケーリングされる。
【0032】
例えば、アナログ入力値Saが1〜5Vの電圧でディジタル出力値Doを0〜4000の範囲で出力させるものとすると、オフセット電圧が1Vの時のADCコードCdと、ゲイン電圧が5Vの時のADCコードCdと、現在入力されている電圧のADCコードCdとから、現在入力されている電圧に相当するディジタル出力値Doを出力させることができる。
【0033】
ここで、ADCコードCdをスケーリングして出力されるディジタル出力値Doの最低値をSo、最大値をSgとすると、ディジタル出力値Doは、以下の(1)式で求めることができる。
Do=(Cd−Uo)/(Ug−Uo)*Sg+So ・・・(1)
【0034】
このスケーリング部13によるスケーリン処理によって、個々のA/D変換回路12が持つ特性上のバラツキを吸収させることができる。例えば、0Vの電圧がA/D変換回路12に入力された時にADCコードCd=100が出力され、10Vの電圧がA/D変換回路12に入力された時にADCコードCd=8000が出力されるチャンネルAと、0Vの電圧がA/D変換回路12に入力された時にADCコードCd=105が出力され、10Vの電圧がA/D変換回路12に入力された時にADCコードCd=8020が出力されるチャンネルBがあるものとする。この場合、チャンネルAのユーザオフセット値Uoを100、ユーザゲイン値Ugを8000とし、チャンネルBのユーザオフセット値Uoを105、ユーザゲイン値Ugを8020として、0〜4000のスケーリングを施すことにより、どちらのチャンネルA、Bでも、0Vの電圧がA/D変換回路12に入力されると、ディジタル出力値Do=0を出力させ、10Vの電圧がA/D変換回路12に入力されると、ディジタル出力値Do=4000を出力させることができる。
【0035】
これにより、A/D変換ユニット11の使用現場において、1点分のユーザ計測値uP1を計測することで、A/D変換ユニット11を校正することができ、アナログ入力値SaとADCコードCdとの関係が非直線性を示す場合においても、測定にかかる工数の増大を抑制しつつ、A/D変換ユニット11の変換精度を向上させることが可能となる。
【0036】
図2は、図1のアナログユニットの校正方法を示すフローチャートである。図2において、アナログユニット(図1の例では、A/D変換ユニット11)の使用現場において、ユーザは、アナログユニットの1点校正モード移行を指示する(ステップS1)。
【0037】
次に、ユーザは、アナログユニットのアナログ入力値Saに対応するディジタル出力値Doを設定する(ステップS2)。例えば、ディジタル出力値Doを0〜4000のスケールのうち2000に設定することができる。
【0038】
次に、ユーザは、アナログユニットのアナログ入力値Saを設定する(ステップS3)。なお、アナログ入力値Saは、温度センサなどの各種センサから出力される値を用いることができ、電圧または電流のいずれでもよい。
【0039】
次に、ユーザは、1点校正の設定が完了したことをアナログユニットに指示する(ステップS4)。
【0040】
次に、ユーザ設定値計算部15は、不揮発性メモリ14に記憶された工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgを参照しつつ、ユーザにて設定されたアナログ入力値Sa、ディジタル出力値Doに基づいて、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを計算する(ステップS5)。
【0041】
次に、ユーザ設定値計算部15は、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを不揮発性メモリ14に記憶させる(ステップS6)。
【0042】
次に、アナログユニットは、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugの設定が完了したことをユーザに知らせる(ステップS7)。
【0043】
次に、ユーザは、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugの設定の完了を確認し、別のチャンネルの設定の実施をアナログユニットに指示する(ステップS8)。
【0044】
実施の形態2.
図3は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態2の校正方法を示す図である。図3において、ADCコードCdの出力特性が曲線であるものとする。
【0045】
そして、A/D変換ユニット11の生産工場において、オフセット電圧VminをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDminが工場オフセット値Foとして計測され、ゲイン電圧VmaxをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDmaxが工場ゲイン値Fgとして計測される。
【0046】
また、A/D変換ユニット11の使用現場において、入力電圧VcをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDcがユーザ計測値uP1として計測され、図1の一時記憶メモリ16に記憶される。
【0047】
そして、ユーザ計測値uP1が一時記憶メモリ16に記憶されると、工場オフセット値Fo、工場ゲイン値Fgおよびユーザ計測値uP1との残差の2乗和が最小になる直線L2がユーザ設定値計算部15にて算出される。そして、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが直線L2上に設定され、不揮発性メモリ14に記憶される。
【0048】
これにより、A/D変換ユニット11の使用現場において、1点分のユーザ計測値uP1を計測することで、レンジ範囲内の全体に対して誤差幅を均等化することができ、測定にかかる工数の増大を抑制しつつ、A/D変換ユニット11の直線性の基準を緩和させることが可能となる。
【0049】
実施の形態3.
図4は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態3の校正方法を示す図である。図4において、ADCコードCdの出力特性が曲線であるものとする。
【0050】
そして、A/D変換ユニット11の生産工場において、オフセット電圧VminをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDminが工場オフセット値Foとして計測され、ゲイン電圧VmaxをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDmaxが工場ゲイン値Fgとして計測される。
【0051】
また、A/D変換ユニット11の使用現場において、入力電圧VcをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDcがユーザ計測値uP1として計測され、図1の一時記憶メモリ16に記憶される。
【0052】
そして、ユーザ計測値uP1が一時記憶メモリ16に記憶されると、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgを通る直線L1がユーザ設定値計算部15にて算出される。
【0053】
そして、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgを通る直線L1が算出されると、直線L1に平行でユーザ計測値uP1を通る直線L3がユーザ設定値計算部15にて算出される。そして、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが直線L3上に設定され、不揮発性メモリ14に記憶される。
【0054】
これにより、A/D変換ユニット11の使用現場において、1点分のユーザ計測値uP1を計測することで、ユーザ計測値uP1をディジタル出力値Doと一致させることができ、測定にかかる工数の増大を抑制しつつ、ユーザにて指定されたエリア付近の変換精度を高めることが可能となる。
【0055】
実施の形態4.
図5は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態4の概略構成を示すブロック図である。図5において、A/D変換ユニット21には、図1の不揮発性メモリ14、ユーザ設定値計算部15および一時記憶メモリ16の代わりに不揮発性メモリ24、ユーザ設定値計算部25および一時記憶メモリ26が設けられている。
【0056】
ここで、不揮発性メモリ24は、2点分の工場設定値および2点分のユーザ設定値をユーザレンジR1〜Rmごとに記憶することができる。なお、2点分の工場設定値としては、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgを与えることができる。また、2点分のユーザ設定値としては、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを与えることができる。
【0057】
ユーザ設定値計算部25は、3点以上のユーザ計測値uP1〜uPn、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgに基づいて、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを計算し、不揮発性メモリ24に記憶させることができる。なお、ユーザ計測値uP1〜uPnは、A/D変換ユニット21をユーザが使用する現場で計測することができる。また、ユーザ計測値uP1〜uPnは、アナログ入力値SaとADCコードCd(すなわち、校正前のディジタル出力値Do)との関係を示すことができる。
【0058】
一時記憶メモリ26は、A/D変換ユニット21をユーザが使用する現場で計測された3点以上のユーザ計測値uP1〜uPnを記憶することができる。
【0059】
そして、A/D変換ユニット21の使用現場において、アナログ入力値SaをA/D変換回路12に入力した時のADCコードCdを計測することで、ユーザ計測値uP1〜uPnが測定され、一時記憶メモリ26に記憶される。
【0060】
そして、ユーザ計測値uP1〜uPnが一時記憶メモリ26に記憶されると、ユーザ設定値計算部25において、ユーザ計測値uP1〜uPn、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgに基づいて、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが計算され、不揮発性メモリ24に記憶される。
【0061】
そして、アナログ入力値SaがA/D変換回路12に入力されると、ADCコードCdに変換され、スケーリング部13に入力される。そして、ADCコードCdがスケーリング部13に入力されると、不揮発性メモリ24に記憶されたユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが参照されることにより、ADCコードCdがディジタル出力値Doにスケーリングされる。
【0062】
これにより、A/D変換ユニット21の使用現場において、3点以上のユーザ計測値uP1〜uPnを計測することで、A/D変換ユニット21を校正することができ、アナログ入力値SaとADCコードCdとの関係が非直線性を示す場合においても、校正精度のバラツキを低減することが可能となる。
【0063】
実施の形態5.
図6は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態5の校正方法を示す図である。図6において、ADCコードCdの出力特性が曲線であるものとする。
【0064】
そして、A/D変換ユニット21の生産工場において、オフセット電圧VminをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDminが工場オフセット値Foとして計測され、ゲイン電圧VmaxをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDmaxが工場ゲイン値Fgとして計測される。
【0065】
また、A/D変換ユニット21の使用現場において、入力電圧Vc1をA/D変換回路12に入力した時のADCコードDc1がユーザ計測値uP3として計測され、図5の一時記憶メモリ26に記憶される。また、A/D変換ユニット21の使用現場において、入力電圧Vc2をA/D変換回路12に入力した時のADCコードDc2がユーザ計測値uP4として計測され、図5の一時記憶メモリ26に記憶される。さらに、A/D変換ユニット21の使用現場において、入力電圧Vc3をA/D変換回路12に入力した時のADCコードDc3がユーザ計測値uP5として計測され、図5の一時記憶メモリ26に記憶される。
【0066】
そして、ユーザ計測値uP3〜uP5が一時記憶メモリ26に記憶されると、工場オフセット値Fo、工場ゲイン値Fgおよびユーザ計測値uP3〜uP5との残差の2乗和が最小になる直線L4がユーザ設定値計算部25にて算出される。そして、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが直線L4上に設定され、不揮発性メモリ24に記憶される。
【0067】
これにより、A/D変換ユニット21の使用現場において、3点以上のユーザ計測値uP3〜uP5を計測することで、レンジ範囲全体に対して誤差幅を小さくすることができ、アナログ入力値SaとADCコードCdとの関係が非直線性を示す場合においても、A/D変換ユニット21のレンジ範囲全体の変換精度を一定の基準に保つことができる。
【0068】
なお、図6の例では、工場オフセット値Fo、工場ゲイン値Fgおよび3点分のユーザ計測値uP3〜uP5との残差の2乗和が最小になる直線L4を求める方法について説明したが、工場オフセット値Fo、工場ゲイン値Fgおよび4点以上のユーザ計測値との残差の2乗和が最小になる直線を求めるようにしてもよい。
【0069】
実施の形態6.
図7は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態6の校正方法を示す図である。図7において、ADCコードCdの出力特性が曲線であるものとする。
【0070】
そして、A/D変換ユニット21の生産工場において、オフセット電圧VminをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDminが工場オフセット値Foとして計測され、ゲイン電圧VmaxをA/D変換回路12に入力した時のADCコードDmaxが工場ゲイン値Fgとして計測される。
【0071】
また、A/D変換ユニット21の使用現場において、入力電圧Vc6をA/D変換回路12に入力した時のADCコードDc6がユーザ計測値uP6として計測され、図5の一時記憶メモリ26に記憶される。また、A/D変換ユニット21の使用現場において、入力電圧Vc7をA/D変換回路12に入力した時のADCコードDc7がユーザ計測値uP7として計測され、図5の一時記憶メモリ26に記憶される。
【0072】
そして、ユーザ計測値uP6、uP7が一時記憶メモリ26に記憶されると、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgを通る直線L1がユーザ設定値計算部25にて算出される。そして、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgを通る直線L1が算出されると、直線L1に平行でユーザ計測値uP6を通る直線L6がユーザ設定値計算部25にて算出されるとともに、直線L1に平行でユーザ計測値uP7を通る直線L7がユーザ設定値計算部25にて算出される。そして、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが直線L6、L7上に設定され、不揮発性メモリ24に記憶される。
【0073】
そして、図5のスケーリング部13は、アナログ入力値Saに応じてユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが設定された直線L6、L7を切り替えて校正に用いることができる。
【0074】
これにより、ユーザ計測値uP6、uP7をディジタル出力値Doと一致させることができ、ユーザにて指定されたエリア付近の変換精度を高めることが可能となる。
【0075】
なお、図7の例では、2点分のユーザ計測値uP6、uP7をそれぞれ通る直線L6、L7を求め、アナログ入力値Saに応じて直線L6、L7を切り替えて校正に用いる方法について説明したが、3点以上のユーザ計測値をそれぞれ通る直線を求め、アナログ入力値Saに応じてこれらの直線を切り替えて校正に用いるようにしてもよい。
【0076】
実施の形態7.
図8は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態7の概略構成を示すブロック図である。図8において、A/D変換ユニット31には、図5のユーザ設定値計算部25の代わりに複数のユーザ設定値計算部25a〜25cが設けられるとともに、不揮発性メモリ24にはパラメータPaが別途記憶されている。
【0077】
ここで、ユーザ設定値計算部25a〜25cは、1点以上のユーザ計測値uP1〜uPn、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgに基づいて、互いに異なる計算方法を用いることでユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを計算することができる。例えば、ユーザ設定値計算部25aは、図3の方法でユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを計算し、ユーザ設定値計算部25bは、図6の方法でユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを計算し、図7の方法でユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを計算することができる。
【0078】
パラメータPaは、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを計算するユーザ設定値計算部25a〜25cを指定することができる。
【0079】
そして、パラメータPaにてユーザ設定値計算部25a〜25cが指定されると、ユーザ設定値計算部25a〜25cにてユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが計算され、不揮発性メモリ24に記憶される。
【0080】
これにより、パラメータPaを設定することで、測定にかかる工数を減らしたり、レンジ範囲内の全体に対して誤差幅を均等化したり、ユーザにて指定されたエリア付近の変換精度を高めたりすることができ、使用現場の状況に応じた多様な使用方法を実現することができる。
【0081】
実施の形態8.
図9は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態8の概略構成を示すブロック図である。図9において、A/D変換ユニット31には、図1の不揮発性メモリ14、ユーザ設定値計算部15および一時記憶メモリ16の代わりに不揮発性メモリ34、設定値線形補間部35およびタイマ36が設けられている。
【0082】
ここで、不揮発性メモリ34は、2点分の工場設定値および2点分のユーザ設定値をメモリ領域R11に記憶することができる。なお、メモリ領域R11に記憶される2点分の工場設定値としては、工場オフセット値Foおよび工場ゲイン値Fgを与えることができる。また、メモリ領域R11に記憶される2点分のユーザ設定値としては、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugを与えることができる。ここで、ユーザオフセット値Uoは、A/D変換回路12の温度が定常状態にある時にオフセット電圧を使用現場でA/D変換回路12に印加した際に出力されるADCコードを用いることができる。ユーザゲイン値Ugは、A/D変換回路12の温度が定常状態にある時にゲイン電圧を使用現場でA/D変換回路12に印加した際に出力されるADCコードを用いることができる。
【0083】
また、不揮発性メモリ34は、2点分のユーザ設定値をメモリ領域R12に記憶することができる。なお、メモリ領域R12に記憶される2点分のユーザ設定値としては、ユーザオフセット値Uo´およびユーザゲイン値Ug´を与えることができる。ここで、ユーザオフセット値Uo´は、A/D変換回路12の温度が初期状態にある時にオフセット電圧を使用現場でA/D変換回路12に印加した際に出力されるADCコードを用いることができる。ユーザゲイン値Ug´は、A/D変換回路12の温度が初期状態にある時にゲイン電圧を使用現場でA/D変換回路12に印加した際に出力されるADCコードを用いることができる。
【0084】
なお、A/D変換回路12の温度が初期状態にある時としては、例えば、A/D変換ユニット31の電源をオンした直後を挙げることができる。
【0085】
設定値線形補間部35は、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、A/D変換回路12の温度が初期状態から定常状態に至る間のユーザ設定値を補間することができる。ここで、設定値線形補間部35には、オフセット値線形補間値計算部35aおよびゲイン値線形補間値計算部35bが設けられている。そして、オフセット値線形補間値計算部35aは、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、ユーザオフセット値Uoとユーザオフセット値Uo´との間のユーザオフセット値Uo´´を線形補間することができる。ゲイン値線形補間値計算部35bは、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、ユーザゲイン値Ugとユーザゲイン値Ug´との間のユーザゲイン値Ug´´を線形補間することができる。
【0086】
タイマ36は、A/D変換ユニット31の電源がオンされた後の時間の経過を計時することができる。なお、スケーリング部13、不揮発性メモリ34、設定値線形補間部35およびタイマ36は、マイクロコンピュータにて実現することができる。
【0087】
そして、時刻T1において、A/D変換ユニット31の電源がオンされると、アナログ入力値SaがA/D変換回路12にてADCコードCdに変換され、スケーリング部13に入力されるとともに、タイマ36にて計時動作が開始される。そして、時刻T1においては、オフセット値線形補間値計算部35aを介してユーザオフセット値Uo´がスケーリング部13に入力されるとともに、ゲイン値線形補間値計算部35bを介してユーザゲイン値Ug´がスケーリング部13に入力される。
【0088】
そして、時刻T1において、ADCコードCdがスケーリング部13に入力されると、ユーザオフセット値Uo´およびユーザゲイン値Ug´が参照されることにより、ADCコードCdがディジタル出力値Doにスケーリングされる。
【0089】
そして、時刻T2において、タイマ36により計時動作が進むと、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、ユーザオフセット値Uoとユーザオフセット値Uo´との間のユーザオフセット値Uo´´がオフセット値線形補間値計算部35aにて線形補間されるとともに、ユーザゲイン値Ugとユーザゲイン値Ug´との間のユーザゲイン値Ug´´がゲイン値線形補間値計算部35bにて線形補間され、スケーリング部13に入力される。
【0090】
そして、時刻T2において、ADCコードCdがスケーリング部13に入力されると、ユーザオフセット値Uo´´およびユーザゲイン値Ug´´が参照されることにより、ADCコードCdがディジタル出力値Doにスケーリングされる。
【0091】
そして、時刻T3において、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、A/D変換回路12の温度が定常状態に達したと判断されると、オフセット値線形補間値計算部35aを介してユーザオフセット値Uoがスケーリング部13に入力されるとともに、ゲイン値線形補間値計算部35bを介してユーザゲイン値Ugがスケーリング部13に入力される。
【0092】
そして、時刻T3において、ADCコードCdがスケーリング部13に入力されると、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが参照されることにより、ADCコードCdがディジタル出力値Doにスケーリングされる。
【0093】
これにより、スケーリング部13、不揮発性メモリ34、設定値線形補間部35およびタイマ36をマイクロコンピュータにて実現した場合、部品を追加することなく、温度ドリフトに対するディジタル出力値Doを補正することが可能となり、A/D変換ユニット31のコストアップを抑制しつつ、A/D変換ユニット31のA/D変換精度を向上させることができる。
【0094】
図10は、図9のアナログユニットの温度ドリフト補正方法を示す図である。図10において、直線L11は、ユーザオフセット値Uoとユーザゲイン値Ugを通り、直線L12は、ユーザオフセット値Uo´とユーザゲイン値Ug´を通るものとする。そして、A/D変換ユニット31の電源が時刻T1にオンされたものとする。そして、時刻T1において、入力電圧Vcに対してADCコードUc´がスケーリング部13に入力されると、ユーザオフセット値Uo´およびユーザゲイン値Ug´が参照されることにより、ADCコードUc´がスケーリングされる。
【0095】
また、時刻T2において、入力電圧Vcに対してADCコードUc´´がスケーリング部13に入力されると、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、ユーザオフセット値Uoとユーザオフセット値Uo´との間のユーザオフセット値Uo´´が線形補間されるとともに、ユーザゲイン値Ugとユーザゲイン値Ug´との間のユーザゲイン値Ug´´が線形補間されることで、直線L11、L12の間の直線L13が求まる。
【0096】
そして、スケーリング部13において、ユーザオフセット値Uo´´およびユーザゲイン値Ug´´が参照されることにより、ADCコードUc´´がスケーリングされる。
【0097】
また、時刻T3において、入力電圧Vcに対してADCコードUcがスケーリング部13に入力されると、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが参照されることにより、ADCコードUcがスケーリングされる。
【0098】
実施の形態9.
図11は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態9の概略構成を示すブロック図である。図11において、A/D変換ユニット41には、図9の不揮発性メモリ34の代わりに不揮発性メモリ44が設けられるとともに、不揮発性メモリ44にはタイマ設定値Pbが別途記憶されている。
【0099】
ここで、タイマ設定値Pbは、A/D変換ユニット41の電源がオンされてからA/D変換回路12の温度が定常状態になるまでの時間を指定することができる。
【0100】
そして、タイマ設定値PbにてA/D変換回路12の温度が定常状態になるまでの時間が指定されると、タイマ36にて計時された時間がタイマ設定値Pbに達したかどうかが判断される。そして、タイマ36にて計時された時間がタイマ設定値Pbに達するまでは、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、ユーザオフセット値Uoとユーザオフセット値Uo´との間のユーザオフセット値Uo´´がオフセット値線形補間値計算部35aにて線形補間されるとともに、ユーザゲイン値Ugとユーザゲイン値Ug´との間のユーザゲイン値Ug´´がゲイン値線形補間値計算部35bにて線形補間され、スケーリング部13に入力される。
【0101】
そして、タイマ36にて計時された時間がタイマ設定値Pbに達すると、オフセット値線形補間値計算部35aを介してユーザオフセット値Uoがスケーリング部13に入力されるとともに、ゲイン値線形補間値計算部35bを介してユーザゲイン値Ugがスケーリング部13に入力される。
【0102】
これにより、A/D変換ユニット41の電源がオンされてからA/D変換回路12の温度が定常状態になるまでの時間が使用環境に応じて異なる場合においても、A/D変換回路12の温度が定常状態になったかどうかの判断を精度よく行わせることができ、温度ドリフトに対する補正精度を向上させることができる。
【0103】
実施の形態10.
図12は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態10の概略構成を示すブロック図である。図12において、A/D変換ユニット51には、図9の設定値線形補間部35の代わりに設定値選択部55が設けられている。
【0104】
この設定値選択部55は、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、A/D変換回路12の温度が定常状態にある時のユーザ設定値またはA/D変換回路12の温度が初期状態にある時のユーザ設定値を選択することができる。ここで、設定値選択部55には、オフセット値選択部55aおよびゲイン値選択部55bが設けられている。そして、オフセット値選択部55aは、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、A/D変換回路12の温度が定常状態にある時のユーザオフセット値UoまたはA/D変換回路12の温度が初期状態にある時のユーザオフセット値Uo´を選択することができる。また、ゲイン値選択部55bは、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、A/D変換回路12の温度が定常状態にある時のユーザゲイン値UgまたはA/D変換回路12の温度が初期状態にある時のユーザゲイン値Ug´を選択することができる。
【0105】
そして、時刻T11において、A/D変換ユニット51の電源がオンされると、アナログ入力値SaがA/D変換回路12にてADCコードCdに変換され、スケーリング部13に入力されるとともに、タイマ36にて計時動作が開始される。そして、A/D変換回路12の温度が定常状態に達したと判断されるまでは、オフセット値選択部55aにてユーザオフセット値Uo´が選択され、スケーリング部13に入力されるとともに、ゲイン値選択部55bにてユーザゲイン値Ug´が選択され、スケーリング部13に入力される。
【0106】
そして、ADCコードCdがスケーリング部13に入力されると、A/D変換回路12の温度が定常状態に達したと判断されるまでは、ユーザオフセット値Uo´およびユーザゲイン値Ug´が参照されることにより、ADCコードCdがディジタル出力値Doにスケーリングされる。
【0107】
そして、時刻T12において、タイマ36にて計時された時間の経過に基づいて、A/D変換回路12の温度が定常状態に達したと判断されると、オフセット値選択部55aにてユーザオフセット値Uoが選択され、スケーリング部13に入力されるとともに、ゲイン値選択部55bにてユーザゲイン値Ugが選択され、スケーリング部13に入力される。
【0108】
そして、ADCコードCdがスケーリング部13に入力されると、A/D変換回路12の温度が定常状態に達したと判断された後は、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが参照されることにより、ADCコードCdがディジタル出力値Doにスケーリングされる。
【0109】
これにより、スケーリング部13、不揮発性メモリ34、設定値選択部55およびタイマ36をマイクロコンピュータにて実現した場合、部品を追加することなく、温度ドリフトに対するディジタル出力値Doを補正することが可能となり、A/D変換ユニット51のコストアップを抑制しつつ、A/D変換ユニット51のA/D変換精度を向上させることができる。
【0110】
図13は、図12のアナログユニットの温度ドリフト補正方法を示す図である。図13において、直線L21は、ユーザオフセット値Uoとユーザゲイン値Ugを通り、直線L22は、ユーザオフセット値Uo´とユーザゲイン値Ug´を通るものとする。そして、A/D変換ユニット51の電源が時刻T11にオンされたものとする。そして、時刻T11において、入力電圧Vcに対してADCコードUc´がスケーリング部13に入力されると、ユーザオフセット値Uo´およびユーザゲイン値Ug´が参照されることにより、ADCコードUc´がスケーリングされる。
【0111】
また、時刻T12において、入力電圧Vcに対してADCコードUcがスケーリング部13に入力されると、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugが参照されることにより、ADCコードUcがスケーリングされる。
【0112】
なお、図12のA/D変換ユニット51においても、図11の実施の形態と同様にタイマ設定値Pbを不揮発性メモリリ44に記憶させ、A/D変換ユニット51の電源がオンされてからA/D変換回路12の温度が定常状態になるまでの時間を指定できるようにしてもよい。
【0113】
実施の形態11.
図14は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態11の概略構成を示すブロック図である。図14において、A/D変換ユニット61には、図12のタイマ36の代わりに切り替え部62が設けられている。
【0114】
この切り替え部62は、外部トリガに基づいて、ユーザオフセット値Uoまたはユーザオフセット値Uo´をオフセット値選択部55aに選択させるとともに、ユーザゲイン値Ugまたはユーザゲイン値Ug´をゲイン値選択部55bに選択させることができる。
【0115】
そして、時刻T21において、A/D変換ユニット61の電源がオンされると、アナログ入力値SaがA/D変換回路12にてADCコードCdに変換され、スケーリング部13に入力される。そして、オフセット値選択部55aにてユーザオフセット値Uo´が選択され、スケーリング部13に入力されるとともに、ゲイン値選択部55bにてユーザゲイン値Ug´が選択され、スケーリング部13に入力される。
【0116】
そして、時刻T22において、外部トリガが切り替え部62に入力されると、オフセット値選択部55aにてユーザオフセット値Uoが選択され、スケーリング部13に入力されるとともに、ゲイン値選択部55bにてユーザゲイン値Ugが選択され、スケーリング部13に入力される。
【0117】
これにより、A/D変換ユニット61の温度が定常状態にある時にA/D変換ユニット61の再起動が行われた場合においても、A/D変換ユニット61の電源がオンされてから時間の経過を待つことなく、ユーザオフセット値Uoおよびユーザゲイン値Ugをスケーリング部13に入力させることができ、温度ドリフトに対する補正精度を向上させることができる。
【0118】
実施の形態12.
図15は、本発明に係るアナログユニットの実施の形態12の校正方法を示すフローチャートである。図15において、アナログユニット(この例では、D/A変換ユニット)の使用現場において、ユーザは、アナログユニットの1点校正モード移行を指示する(ステップS11)。
【0119】
次に、ユーザは、アナログユニットのアナログ出力値に対応するディジタル入力値を設定する(ステップS12)。例えば、ディジタル入力値を0〜4000のスケールのうち2000に設定することができる。
【0120】
次に、ユーザは、アナログユニットのアナログ出力値を設定する(ステップS13)。なお、アナログ出力値は、温度センサなどの各種センサから出力される値を用いることができ、電圧または電流のいずれでもよい。
【0121】
次に、ユーザは、1点校正の設定が完了したことをアナログユニットに指示する(ステップS14)。
【0122】
次に、アナログユニットは、不揮発性メモリに記憶された工場オフセット値および工場ゲイン値を参照しつつ、ユーザにて設定されたアナログ出力値、ディジタル入力値に基づいて、ユーザオフセット値およびユーザゲイン値を計算する(ステップS15)。
【0123】
次に、アナログユニットは、ユーザオフセット値およびユーザゲイン値を不揮発性メモリに記憶させる(ステップS16)。
【0124】
次に、アナログユニットは、ユーザオフセット値およびユーザゲイン値の設定が完了したことをユーザに知らせる(ステップS17)。
【0125】
次に、ユーザは、ユーザオフセット値およびユーザゲイン値の設定の完了を確認し、別のチャンネルの設定の実施をアナログユニットに指示する(ステップS18)。
【0126】
これにより、アナログユニットとしてD/A変換ユニットを用いた場合においても、測定にかかる工数の増大を抑制しつつ、D/A変換ユニットの変換精度を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように本発明に係るアナログユニットは、コストアップを抑制しつつ、温度ドリフトに対する出力値を補正することが可能なアナログユニットの出力値を校正する方法に適している。
【符号の説明】
【0128】
11,21,31,41,51,61 A/D変換ユニット、12 A/D変換回路、13 スケーリング部、14,24,44 不揮発性メモリ、15,25,25a〜25c ユーザ設定値計算部、16,26 一時記憶メモリ、35 設定値線形補間部、35a オフセット値線形補間値計算部、35b ゲイン値線形補間値計算部、36 タイマ、55 設定値選択部、55a オフセット値選択部、55b ゲイン値選択部、62 切り替え部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力値を出力値に変換する変換回路と、
前記変換回路の温度が初期状態から定常状態に至る間の2つの時点における前記入力値と出力値との関係を示す設定値を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された設定値に基づいて、前記変換回路の出力値を校正する校正部とを備えることを特徴とするアナログユニット。
【請求項2】
電源がオンされた後の時間の経過を計時するタイマと、
前記タイマにて計時された時間の経過に基づいて、前記記憶部に記憶された2つの時点における設定値を補間する設定値線形補間部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のアナログユニット。
【請求項3】
電源がオンされた後の時間の経過を計時するタイマと、
前記タイマにて計時された時間の経過に基づいて、前記記憶部に記憶された2つの時点における設定値の中から、前記校正に使用される設定値を選択する設定値選択部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のアナログユニット。
【請求項4】
前記変換回路の温度が定常状態になるまでの時間に対応したタイマ設定値を切り替えて前記タイマに出力することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアナログユニット。
【請求項5】
外部からのトリガー入力に基づいて、前記校正に使用される設定値を前記変換回路の温度が定常状態になった時の設定値に切り替える切り替え部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアナログユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−48471(P2013−48471A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235063(P2012−235063)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2011−515823(P2011−515823)の分割
【原出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】