説明

アバランシェ・フォト・ダイオード調整システムおよびアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法

【課題】有効な電流増倍率に最適化することが容易にかつ確実に可能なアバランシェ・フォト・ダイオード調整システムを提供する。
【解決手段】APD電源電圧発生器1にて電源電圧を生成し、自己バイアス抵抗2を介してAPD3のAPDバイアス電圧を設定した状態で、入力した光信号をAPD3により変換した電流信号をTIA/CDR回路4にて電圧信号に変換増幅して主電気信号として出力する。TIA/CDR回路4からの主電気信号に関する誤り率を誤り検出器5にて検出してMPU6に出力すると、MPU6の誤り情報比較部61は、該誤り率をあらかじめ設定登録した基準値と比較し、基準値と不一致であった場合、MPU6のAPD制御部62にて、APD3に設定すべきAPDバイアス電圧を生成するための電源電圧を算出して、電圧設定指示として、APD電源電圧発生器1に対してフィードバックすることにより、APD3のAPDバイアス電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アバランシェ・フォト・ダイオード調整システムおよびアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法に関し、特に、アバランシェ・フォト・ダイオード(Avalanche Photo−Diode、以下、'APD'と略称する)の電流増倍率を最適化することが容易にかつ確実に可能なアバランシェ・フォト・ダイオード調整システムおよびアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法に関する。APDを用いるXFP(10Gigabit Small Form Factor Pluggable)、CFP(10Gigabit Form Factor Pluggable)、300PIN、SFP+(Small Form Factor Pluggable Plus)、QSFP(Quad Small Form Factor Pluggable)等の光トランシーバや光通信システム全般に好適に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
アバランシェ・フォト・ダイオード(Avalanche Photo‐Diode、以下、'APD'と略称する)を受光系に用いた光トランシーバにおいては、最適な受光特性を得るために、個体ごとに、APDバイアス電圧(VAPD)の調整を実施し、電流増倍率(M)の最適化を行っている。
【0003】
APDの電流増倍率(M)は、以下の式(1)により決定される。
電流増倍率:M = 1/(1−VAPD/Vbr) …(1)
ここで、VAPD:APDバイアス電圧、Vbr:APDブレイクダウン電圧
n:APD素子の固有の値
【0004】
式(1)より、APDの電流増倍率(M)は、APDバイアス電圧(VAPD)とAPDのブレイクダウン電圧(Vbr)とによって決まることが分かる。
【0005】
しかし、APDのブレイクダウン電圧(Vbr)は、APD素子によってバラつきがあり、各APD素子の個体ごとの電流増倍率(M)を最適化するためには、APDバイアス電圧(VAPD)を調整することが必要である。さらに、APDのブレイクダウン電圧(Vbr)は、温度によっても変動するため、APD素子温度に応じてAPDバイアス電圧(VAPD)の制御を行い、如何なる温度であっても安定した特性が得られるように電流増倍率(M)の制御を行うことが必要である。
【0006】
これらの変動する要因を補正するために、現状においては、特許文献1の特開2009−105489号公報「光トランシーバおよび光トランシーバの制御方法」等にも記載されているように、光トランシーバ内部にAPDバイアス電圧(VAPD)のルックアップテーブルを備え、動作温度範囲内にてフォトカレントが一定となるように、フィードフォワード制御を逐一実施するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−105489号公報(第4−6頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現状の技術においては、前述したように、フィードフォワード制御を適用するような特性試験を実施しながら、フォトカレントが一定となるようなAPDバイアス電圧(VAPD)に調整することが必要であり、APDの出荷前の出荷調整・試験に多くの時間がかかってしまうという問題点があった。
【0009】
また、APD変換効率の個体差により、同じフォトカレントであっても、電流増倍率が異なることになり、誤り率(ビットエラーレート)特性にバラつきを生じ、製品特性が安定しないという問題点があった。
【0010】
(本発明の目的)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、誤り検出機能を利用することにより、有効な電流増倍率に最適化することが容易にかつ確実に可能なアバランシェ・フォト・ダイオード調整システムおよびアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明によるアバランシェ・フォト・ダイオード(APD)調整システムおよびアバランシェ・フォト・ダイオード(APD)調整方法は、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0012】
(1)本発明によるアバランシェ・フォト・ダイオード(APD)調整システムは、光トランシーバに実装したアバランシェ・フォト・ダイオード(Avalanche Photo-Diode:以下'APD'と略称)の電流増倍率を最適な状態に調整するアバランシェ・フォト・ダイオード調整システムであって、前記APDのAPDバイアス電圧を設定するための電源電圧を生成するAPD電源電圧発生器と、該APD電源電圧発生器により生成した電源電圧を供給することにより前記APDに設定されたAPDバイアス電圧下において、入力した光信号を前記APDにより変換した電流信号を、電圧信号に変換増幅して主電気信号として出力するトランスインピーダンス増幅器と、該トランスインピーダンス増幅器から出力される前記主電気信号に関する誤り率を検出する誤り検出器と、該誤り検出器によって検出された前記誤り率をあらかじめ設定登録した基準値と比較して得られる比較結果を誤り情報比較判定結果として出力する誤り情報比較部と、前記誤り検出器によって検出された前記誤り率が前記基準値と不一致であった場合、該誤り情報比較部が出力する前記誤り情報比較判定結果に基づいて、前記APDに設定すべきAPDバイアス電圧を生成するための電源電圧を算出して、電圧設定指示として前記APD電源電圧発生器に対してフィードバックすることにより、前記APDのAPDバイアス電圧を制御するAPD制御部とを、少なくとも備えていることを特徴とする。
【0013】
(2)本発明によるアバランシェ・フォト・ダイオード(APD)調整方法は、光トランシーバに実装したアバランシェ・フォト・ダイオード(Avalanche Photo-Diode:以下'APD'と略称)の電流増倍率を最適な状態に調整するアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法であって、APD電源電圧発生器によって生成した電源電圧を供給することにより前記APDのAPDバイアス電圧を設定して、入力した光信号を前記APDにより電流信号に変換し、変換した該電流信号を電圧信号に変換増幅して得られる主電気信号に関する誤り率を検出した結果をあらかじめ設定登録した基準値と比較した際に、該基準値と不一致であった場合、該比較結果に基づいて、前記APDに設定すべきAPDバイアス電圧を生成するための電源電圧を算出して、電圧設定指示として前記APD電源電圧発生器に対してフィードバックすることにより、前記APDのAPDバイアス電圧を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアバランシェ・フォト・ダイオード(APD)調整システムおよびアバランシェ・フォト・ダイオード(APD)調整方法によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、光トランシーバ内の誤り検出器またはホスト装置内の誤り検出器の誤り率の検出結果に基づいて、APDの電流増倍率の最適値を光トランシーバ内のMPUまたはホスト装置内のCPUにおいて自動的に判定することができるようになることから、APDの調整時間を大幅に短縮することができるようになる。
【0016】
また、光トランシーバすべてについてAPDの誤り率が同一の基準値と等しくなるように調整することによって、APDの誤り率特性の個体差がなくなることから、通信特性のバラつきを最小限に抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるAPD調整システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】図1に示すAPD調整システムの概略を説明するための説明図である。
【図3】APDの電流増倍率を最適化するAPD調整システムの図1とは異なる構成例を示す説明図である。
【図4】図1に示したAPD調整システムの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるアバランシェ・フォト・ダイオード調整システムおよびアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。
【0019】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、アバランシェ・フォト・ダイオード(Avalanche Photo‐Diode、以下、'APD'と略称する)を利用した光トランシーバに関して、受光特性のバラつき要因となる電流増倍率を、誤り検出機能を用いて、容易にかつ確実に最適化するAPDの電流増倍率最適化の仕組みを備えていることを、主要な特徴としている。
【0020】
より具体的には、本発明は、誤り検出機能として例えば前方誤り訂正機能(Forward Error Correction、以下、必要に応じて'FEC'と略称する)を利用して、例えばDCコンバータ回路等からなるAPD用の電源電圧発生器が生成するAPD用電源電圧の値を調整して、APDバイアス電圧(VAPD)のフィードバック制御を行うことにより、APDの電流増倍率を最適化することを特徴としている。
【0021】
(実施形態の構成例)
次に、本発明によるAPD調整システムのシステム構成の一例について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本発明によるAPD調整システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図であり、図2は、図1に示すAPD調整システムの概略を説明するための説明図である。ここで、図1および図2に示すAPD調整システムは、調整対象のAPDを実装した光トランシーバ内にAPD電流増倍率最適化機能として必要とするすべての機能が搭載されている例を示している。
【0022】
図1に示すAPD調整システム10は、APD3の電流増倍率調整用として、APD電源電圧発生器1、自己バイアス抵抗2、TIA/CDR回路4、誤り検出器5、および、MPU6、を少なくとも備えて構成されている。
【0023】
APD電源電圧発生器1は、例えば、DCコンバータ回路等から構成されていて、MPU6からの電圧設定指示に基づいて、調整対象のAPD3に供給すべき電源電圧を生成する。自己バイアス抵抗2は、調整対象のAPD3のバイアス電圧(VAPD)設定用として挿入されている抵抗である。
【0024】
また、TIA/CDR回路4は、入力した光信号に応じてAPD3から出力される電流信号を電圧信号に変換増幅するトランスインピーダンス増幅器(Trans-Impedance Amplifier)の機能を実施する。また、TIA/CDR回路4は、3R(波形整形-reshaping、タイミング再生-retiming、識別再生-regenerating)用のバースト光受信機能を有する光トランシーバの場合については、さらに、3Rバースト光受信用のCDR(Clock Data Recovery)機能も実施することができる。
【0025】
また、誤り検出器5は、例えば、前方誤り訂正回路すなわちFEC回路として構成されていて、TIA/CDR回路4からの電圧信号(主電気信号)に含まれている前方誤り訂正符号により誤り率の検出を行う。MPU6は、誤り検出器5によって検出された誤り率をあらかじめ設定登録した基準値と比較して得られる比較結果を誤り情報比較判定結果として出力する誤り情報比較部61と、誤り検出器5によって検出された誤り率が前記基準値と不一致であった場合、該誤り情報比較部61が出力する誤り情報比較判定結果に基づいて、APD3に設定すべきAPDバイアス電圧を生成するための電源電圧を算出して、電圧設定指示としてAPD電源電圧発生器1に対してフィードバックすることにより、APD3のAPDバイアス電圧を制御するAPD制御部62と、を少なくとも備えており、誤り検出器5が出力する誤り率検出結果をあらかじめ定めた基準値と比較した結果に基づいて、調整対象のAPD3に設定すべきAPDバイアス電圧の電圧値をフィードバック制御することを可能にするために、発生した誤り率と基準値との差分を勘案して、APD3に供給すべき電源電圧の電圧値を算出し、電圧設定指示として、APD電源電圧発生器1に対して指示するようにしている。
【0026】
すなわち、図2の説明図に示すように、図1に示すAPD調整システム10は、次のように動作する。図2の説明図において、まず、光トランシーバ内に例えばDCコンバータ回路として実装されているAPD電源電圧発生器1において、MPU6からの電圧設定指示に基づいて、APD3に供給すべきバイアス電源電圧を生成する。APD電源電圧発生器1にて生成されたバイアス電源電圧は、APD3自身のフォトカレントおよび自己バイアス抵抗2によって電圧降下し、実際に供給されるAPD3のバイアス電圧(VAPD)が決定される。APD3においては、供給されたバイアス電源電圧の条件下において、入力されてくる光信号を電流信号に変換して出力する。
【0027】
しかる後、APD3にて出力された電流信号は、TIA/CDR回路4におけるTIA(トランスインピーダンスアンプ)機能により、電圧信号に変換増幅されて、主電気信号として出力される。さらに、3R機能を実装する光トランシーバの場合には、TIA/CDR回路4におけるCDR(クロックデータリカバリ)機能によって、3R機能を実施するために、クロックとデータとを分離する機能を備えている。
【0028】
さらに、例えばFEC回路等からなる誤り検出器5によって、TIA/CDR回路4から出力された主電気信号に関する誤り率の検出を行い、検出結果である誤り情報は、光トランシーバ内部の制御を行うために実装されているMPU6に供給される。MPU6は、まず、誤り情報比較部61において、誤り検出器5からGPIO(General Purpose Input/Output:汎用入出力)インタフェースを介して入力されてくる誤り情報をあらかじめ定めた基準値と比較して、比較結果を、誤り情報比較判定結果として出力し、次いで、APD制御部62において、出力された誤り情報比較判定結果に基づいて、APD3に供給すべきバイアス電源電圧を算出して、電圧設定指示として、GPIOインタフェースを介して、APD電源電圧発生器1に対して出力する。APD制御部62においては、誤り情報比較判定結果として、誤り情報が基準値と一致したという結果が得られない限り、APD電源電圧発生器1に対して、APD3に供給するバイアス電源電圧の電圧値の調整を行うフィードバック制御を繰り返す。
【0029】
かくのごとく、APD調整システム10においては、APD3の出力を変換した主電気信号の誤り率の検出結果を利用して、APD3のバイアス電圧(VAPD)のフィードバック制御を行うことによって、APD3の電流増倍率を容易にかつ確実に最適化することができる仕組みを採用している。
【0030】
なお、誤り検出器5としては、例えばFEC回路として前方誤り訂正機能(FEC機能)による誤り率検出機能を用いる場合について示しているが、本発明は、同様の誤り率検出機能を有する構成であれば、かかるFEC回路のみに限るものではない。
【0031】
また、誤り検出器5の誤り率検出結果を、光トランシーバ内のMPU6に通知する代わりに、当該光トランシーバのホストとして外部に接続したホスト装置側に通知するようにしても良い。かかる場合には、外部に接続したホスト装置において、誤り率に関してあらかじめ定めた基準値と比較を行い、誤り情報比較判定結果として、光トランシーバ内のMPU6に通知するようにし、光トランシーバ内のMPU6は、ホスト装置からの誤り率比較判定結果を受け取ることによって、調整対象のAPD3に対して供給すべき電源電圧を算出して、電圧設定指示として、APD電源電圧発生器1に対して出力するようにすれば良い。なお、ホスト装置側における誤り情報比較判定結果として、調整対象のAPD3に対して供給すべき電源電圧そのものを算出して、光トランシーバ内のMPU6に通知するようにし、MPU6は、受け取った電源電圧そのものを、電圧設定指示として、APD電源電圧発生器1に出力するようにしても良い。
【0032】
さらには、誤り検出器5を光トランシーバ内に搭載していない構成とし、当該光トランシーバのホストとして外部に接続したホスト装置側に誤り検出器を備えるようにしても良い。かかる場合には、光トランシーバ内のTIA/CDR回路4から出力される主電気信号を、当該光トランシーバのホストとして外部に接続したホスト装置側に送信するようにし、ホスト装置内に備えられている誤り検出器において、主電気信号の誤り率を検出して、誤り率に関する基準値と比較を行い、誤り情報比較判定結果として、光トランシーバ内のMPU6に通知するようにすれば良い。
【0033】
図3は、APD3の電流増倍率を最適化するAPD調整システムの図1とは異なる構成例を示す説明図であり、APD電流増倍率最適化機能として必要とする機能のうち、一部の機能が、調整対象のAPDを実装した光トランシーバのホストとして外部に接続されたホスト装置側に搭載されている例を示している。つまり、図3に示すAPD調整システム10Aは、調整対象のAPD3を実装した光トランシーバ20と、該光トランシーバ20を外部接続したホスト装置30とから構成されており、APD電流増倍率最適化機能として必要とする機能のうち、主電気信号の誤り率を検出する誤り検出機能、検出した誤り率をあらかじめ定めた基準値と比較する誤り情報比較判定機能を、誤り検出器35、CPU36内の誤り情報比較部361として、ホスト装置30側にも搭載している場合を示している。
【0034】
図3に示すAPD調整システム10Aにおいては、調整対象のAPD3を実装した光トランシーバ20側には、図1の場合と同様、APD電源電圧発生器1、自己バイアス抵抗2、TIA/CDR回路4、誤り検出器5、MPU6が搭載されているとともに、TIA/CDR回路4から出力される主電気信号の誤り率を検出するための誤り検出器5が、当該光トランシーバ20内に実装されているか否かを判定する誤り率検出機能判定部5a、および、誤り検出器5が検出した誤り情報を、当該光トランシーバ20内のMPU6に対して直接送信するか否かを判定するMPU直接通信判定部6a、をさらに備えている。
【0035】
図3に示すAPD調整システム10Aの光トランシーバ20内の誤り率検出機能判定部5aにおいて、光トランシーバ20内に誤り検出器5が搭載されていると判定した場合には(誤り率検出機能判定部5aのYes側)、TIA/CDR回路4から出力される主電気信号を、図1の場合と同様、光トランシーバ20内の誤り検出器5に出力するが、誤り検出器5が搭載されていないと判定した場合には(誤り率検出機能判定部5aのNo側)、TIA/CDR回路4から出力される主電気信号を、外部に接続したホスト装置30内の誤り検出器35に対して出力する。
【0036】
かかる場合には、ホスト装置30内において、主電気信号の誤り率を検出した結果を、誤り情報として、ホスト装置30側のCPU36に対して出力する。ホスト装置30側のCPU36は、誤り情報として入力されてくる誤り率をあらかじめ定めた基準値と比較して得られる比較結果を誤り情報比較判定結果として出力する誤り情報比較機能として誤り情報比較部361を備えている。なお、かかる場合には、光トランシーバ20内に、誤り検出器5のみならず、MPU6内の誤り情報比較部61も搭載する必要はない。
【0037】
また、図3に示すAPD調整システム10Aの光トランシーバ20内のMPU直接通信判定部6aにおいて、誤り検出器5が検出した誤り情報をMPU6に対して直接送信すると判定した場合には(MPU直接通信判定部6aのYes側)、誤り情報を、図1の場合と同様、光トランシーバ20内のMPU6に出力するが、誤り検出器5が検出した誤り情報をMPU6には送信しないと判定した場合には(MPU直接通信判定部6aのNo側)、誤り検出器5が検出した誤り情報を、外部に接続したホスト装置30内のCPU36に対して出力する。ホスト装置30側のCPU36は、前述のように、誤り情報として入力されてくる誤り率をあらかじめ定めた基準値と比較して得られる比較結果を誤り情報比較判定結果として出力する誤り情報比較機能として誤り情報比較部361を備えている。なお、かかる場合には、光トランシーバ20内に、MPU6内の誤り情報比較部61を搭載する必要はない。
【0038】
ホスト装置30側のCPU36は、誤り情報比較部361において作成した誤り情報比較判定結果を、光トランシーバ20側のMPU6に対して出力する。光トランシーバ内のMPU6は、APD制御部62において、ホスト装置30からの誤り率比較判定結果を受け取ると、調整対象のAPD3に対して供給すべき電源電圧を算出して、電圧設定指示として、APD電源電圧発生器1に対して出力する。かくのごとく、図3に示すAPD調整システム10Aにおいても、APD3の出力を変換した主電気信号の誤り率の検出結果を利用して、APD3のバイアス電圧(VAPD)のフィードバック制御を行うことによって、APD3の電流増倍率を容易にかつ確実に最適化することができる。
【0039】
(実施形態の動作の説明)
次に、図1に示したAPD調整システム10の動作の一例について、図4に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。図4は、図1に示したAPD調整システム10の動作の一例を説明するためのフローチャートであるが、図3に示したAPD調整システム10Aの場合も全く同様であるので、図3のAPD調整システム10Aに関するここでの重複する説明は省略する。
【0040】
図4のフローチャートにおいて、まず、光トランシーバに実装されているAPD3の電流増倍率の調整前の値として、任意のAPDバイアス電圧(VAPD)に設定された状態で、該APD3を実装した光トランシーバに対して試験用の光信号を入力する(ステップS1)。APD3においては、入力された光信号を電流信号に変換して、TIA/CDR回路4に対して出力する。TIA/CDR回路4は、入力されてくる電流信号を電圧信号に変換して、主電気信号として、誤り検出器5に対して出力する。
【0041】
誤り検出器5は、主電気信号として入力されてくる電圧信号の誤り率を検出して誤り情報として光トランシーバ内のMPU6に対して通知する(ステップS2)。
【0042】
誤り検出器5からの誤り情報を受け取ったMPU6は、誤り情報比較部61において、該誤り情報に含まれている誤り率を、当該MPU6内にあらかじめ設定登録している誤り率に関する基準値と比較する(ステップS3)。なお、このとき、光トランシーバの特性のバラつきを無くすため、MPU6内にあらかじめ設定登録する誤り率に関する基準値はすべての光トランシーバに対して同じ値を設定するようにしている。
【0043】
MPU6のAPD制御部62においては、誤り情報比較部61における比較結果として、誤り率が該基準値と異なる場合には(ステップS3の'≠'の場合)、該比較結果に基づいて、変更すべきAPDバイアス電圧(VAPD)を供給するための電源電圧を算出して、電圧設定指示として、APD電源電圧発生器1に対して出力する(ステップS5)。
【0044】
この結果、APD電源電圧発生器1は、MPU6のAPD制御部62からの電圧設定指示に該当する電源電圧を出力することになる。該電源電圧を自己バイアス抵抗2を介してAPDバイアス電圧(VAPD)として供給されたAPD3においては、該APDバイアス電圧(VAPD)下において、入力された光信号を電流信号に変換して、TIA/CDR回路4に対して出力することになる。
【0045】
しかる後、TIA/CDR回路4は、入力されてくる電流信号を電圧信号に変換して、主電気信号として、誤り検出器5に対して出力する。誤り検出器5は、主電気信号の誤り率を検出して、誤り情報として、MPU6の誤り情報比較部61に対して通知するというステップS2の動作を実施する。かくのごときステップS2→S3→S5→S2→・・・というAPD3のバイアス電圧(VAPD)の調整に関するフィードバック動作は、ステップS3において、MPU6の誤り情報比較部61にて、主電気信号の誤り率が前記基準値と相等しいという結果が得られるまで繰り返される。
【0046】
ステップS3において、主電気信号の誤り率が前記基準値と相等しいという結果が得られた場合には(ステップS3の'='の場合)、APD3は、最適の電流増倍率に調整することができたものと看做して、該APDバイアス電圧(VAPD)の設定値をMPU6内部に保存する(ステップS4)。ここで、かくのごとき主電気信号の誤り率とあらかじめ定めた基準値との比較動作を、常に実施し、誤り率が基準値と常に等しくなるように、APDバイアス電圧(VAPD)をフィードバック制御することによって、APD3の電流増倍率の温度変動による特性変動を容易にかつ確実に補償することができる。
【0047】
なお、本発明は、APD3素子および誤り検出機能を有する光トランシーバや該光トランシーバと外部接続するホスト装置のみならず、APD3素子を搭載した光受信器を構成要素とする光通信システム全体に対しても、全く同様に適用することができる。
【0048】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本発明の実施形態においては、次のような効果を得ることができる。
【0049】
すなわち、光トランシーバ内の誤り検出器5またはホスト装置内の誤り検出器35の誤り率の検出結果に基づいて、APD3の電流増倍率の最適値を光トランシーバ内のMPU6またはホスト装置内のCPU36において自動的に判定することができるようになることから、APD3の調整時間を大幅に短縮することができるようになる。
【0050】
また、光トランシーバすべてについてAPD3の誤り率が同一の基準値と等しくなるように調整することによって、APD3の誤り率特性の個体差がなくなることから、通信特性のバラつきを最小限に抑えることができるようになる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0052】
1 APD電源電圧発生器(DCコンバータ回路)
2 自己バイアス抵抗
3 APD
4 TIA/CDR回路
5 誤り検出器(FEC回路)
5a 誤り率検出機能判定部
6 MPU
6a MPU直接通信判定部
10 APD調整システム
10A APD調整システム
20 光トランシーバ
30 ホスト装置
35 誤り検出器
36 CPU
61 誤り情報比較部
62 APD制御部
361 誤り情報比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光トランシーバに実装したアバランシェ・フォト・ダイオード(Avalanche Photo-Diode:以下'APD'と略称)の電流増倍率を最適な状態に調整するアバランシェ・フォト・ダイオード調整システムであって、前記APDのAPDバイアス電圧を設定するための電源電圧を生成するAPD電源電圧発生器と、該APD電源電圧発生器により生成した電源電圧を供給することにより前記APDに設定されたAPDバイアス電圧下において、入力した光信号を前記APDにより変換した電流信号を、電圧信号に変換増幅して主電気信号として出力するトランスインピーダンス増幅器と、該トランスインピーダンス増幅器から出力される前記主電気信号に関する誤り率を検出する誤り検出器と、該誤り検出器によって検出された前記誤り率をあらかじめ設定登録した基準値と比較して得られる比較結果を誤り情報比較判定結果として出力する誤り情報比較部と、前記誤り検出器によって検出された前記誤り率が前記基準値と不一致であった場合、該誤り情報比較部が出力する前記誤り情報比較判定結果に基づいて、前記APDに設定すべきAPDバイアス電圧を生成するための電源電圧を算出して、電圧設定指示として前記APD電源電圧発生器に対してフィードバックすることにより、前記APDのAPDバイアス電圧を制御するAPD制御部とを、少なくとも備えていることを特徴とするアバランシェ・フォト・ダイオード調整システム。
【請求項2】
前記誤り情報比較判定結果として、前記誤り検出器によって検出された前記誤り率が前記基準値と相等しい結果が得られた場合、前記APD制御部は、現在の前記APDのAPDバイアス電圧が当該APDの電流増倍率を最適な状態に設定するための電圧値であるものとして、該APDバイアス電圧を保存することを特徴とする請求項1に記載のアバランシェ・フォト・ダイオード調整システム。
【請求項3】
前記APD電源電圧発生器は、DCコンバータ回路からなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のアバランシェ・フォト・ダイオード調整システム。
【請求項4】
前記誤り検出器は、前方誤り訂正機能を用いて誤り率を検出する前方誤り訂正回路からなっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアバランシェ・フォト・ダイオード調整システム。
【請求項5】
前記APD電源電圧発生器、前記トランスインピーダンス増幅器、前記誤り検出器、前記誤り情報比較部、および、前記APD制御部、のいずれも、前記APDを実装した前記光トランシーバ内に搭載されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のアバランシェ・フォト・ダイオード調整システム。
【請求項6】
前記光トランシーバにホストとして外部接続されたホスト装置が備えられている場合、前記APD電源電圧発生器、前記トランスインピーダンス増幅器、前記誤り検出器、および、前記APD制御部は、前記APDを実装した前記光トランシーバ内に搭載される一方、前記誤り情報比較部は、前記ホスト装置側に搭載され、前記光トランシーバ内に搭載した前記誤り検出器によって検出された前記誤り率は、前記ホスト装置側の前記誤り情報比較部に送信され、該ホスト装置側の前記誤り情報比較部から出力される前記誤り情報比較判定結果は、前記光トランシーバ内に搭載した前記APD制御部に送信されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のアバランシェ・フォト・ダイオード調整システム。
【請求項7】
前記光トランシーバにホストとして外部接続されたホスト装置が備えられている場合、前記APD電源電圧発生器、前記トランスインピーダンス増幅器、および、前記APD制御部は、前記APDを実装した前記光トランシーバ内に搭載される一方、前記誤り検出器および前記誤り情報比較部は、前記ホスト装置側に搭載され、前記光トランシーバ内に搭載した前記トランスインピーダンス増幅器から出力された前記主電気信号は、前記ホスト装置側の前記誤り検出器に送信され、前記ホスト装置側の前記誤り検出器によって検出された前記誤り率は、前記ホスト装置側の前記誤り情報比較部に入力され、該ホスト装置側の前記誤り情報比較部から出力される前記誤り情報比較判定結果は、前記光トランシーバ内に搭載した前記APD制御部に送信されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のアバランシェ・フォト・ダイオード調整システム。
【請求項8】
光トランシーバに実装したアバランシェ・フォト・ダイオード(Avalanche Photo-Diode:以下'APD'と略称)の電流増倍率を最適な状態に調整するアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法であって、APD電源電圧発生器によって生成した電源電圧を供給することにより前記APDのAPDバイアス電圧を設定して、入力した光信号を前記APDにより電流信号に変換し、変換した該電流信号を電圧信号に変換増幅して得られる主電気信号に関する誤り率を検出した結果をあらかじめ設定登録した基準値と比較した際に、該基準値と不一致であった場合、該比較結果に基づいて、前記APDに設定すべきAPDバイアス電圧を生成するための電源電圧を算出して、電圧設定指示として前記APD電源電圧発生器に対してフィードバックすることにより、前記APDのAPDバイアス電圧を制御することを特徴とするアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法。
【請求項9】
前記主電気信号に関する誤り率を検出した結果が前記基準値と相等しい場合、現在の前記APDのAPDバイアス電圧が当該APDの電流増倍率を最適な状態に設定するための電圧値であるものとして、該APDバイアス電圧を保存することを特徴とする請求項8に記載のアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法。
【請求項10】
前記主電気信号に関する誤り率を検出する際に、前方誤り訂正機能を用いて誤り率を検出することを特徴とする請求項8または9に記載のアバランシェ・フォト・ダイオード調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−42365(P2013−42365A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177926(P2011−177926)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】