説明

アボカド果肉加工品と、その製造及び保存方法

【課題】 美しい緑色を有し且つその色が保持されるアボカド果肉加工品と、その製造及び保存方法を提供すること。また、どのような料理にも使用できる、換言すれば、強い酸味等の味が付されていないアボカド果肉加工品と、その製造及び保存方法を提供すること。
【解決手段】 酵素が失活されており、アボカドの果肉を実質的に酸素を含有しない雰囲気下で炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと接触させる工程を経て製造され且つ実質的に酸素の供給がない状態で保存されており、そして、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版におけるN−829(若草色)又はN−834(草色)であるアボカド果肉加工品。酵素失活工程(A)、酸素不含有雰囲気下での炭酸ガス及び/又はアンモニアガスとの接触工程(B)、及び工程(A)及び(B)を経て製造されたアボカド果肉加工品の酸素非供給下での保存工程(C)を含む製造及び保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の色味を有するアボカド果肉加工品と、その製造及び保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アボカドの果肉は、皮に近い表面側は濃い緑色、種に近い内側はクリーム乃至ベージュ色であり、この色味の美しさが、市場において重視されている。しかし、皮をむいたり果肉を切り分けると、果肉は短時間の中に褐変するため、様々な褐変を防ぐ方法が提案されている。
【0003】
家庭でもよく行なわれる方法としては、レモン汁をかけることや、ポリ塩化ビニリデン製フィルムを果肉に密着させて、果肉を包装すること等がある。
【0004】
特許文献1には、フルーツを含む食品の品質劣化(例えば、褐色化、暗色化、かびの発生、及び/又は風味の喪失)を防止するために、従来は、低温殺菌、酸素を除去するための高真空処理、食品製造前の亜硫酸処理剤でのフルーツの化学処理等がなされていたが、これらの方法は褐色化及び暗色化には効果がなかったと記載されている。そして、特許文献1に記載の発明においては、フルーツ果肉を約30乃至90℃の温度に加熱して実質的に活性な酵素を含有しない安定化されたフルーツ果肉を製造している。また、特許文献1には、この方法を実施するに際し、加熱前にフルーツ果肉にクエン酸やアスコルビン酸等の酸味料を添加することが好ましいことも記載されている。
【0005】
特許文献2には、新鮮なアボカドを加工及び包装する方法であって、加工を行なうための容器内を高真空状態とする工程が含まれる方法が開示されている。特許文献2には、高真空状態での処理後に容器内の圧力を上昇させる際に、窒素や二酸化炭素等の不活性ガスを導入することが好ましいことも記載されている。不活性ガスは、アボカドが酸素に接触することを防ぐために使用されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、アボカドの変色を防止する方法として、トレハロース等の糖類、アミノ酸酵素及びアミエキスの中の少なくとも一つを適量含有する水溶液をアボカドに浸透させる工程、加熱工程、冷凍工程、及び二酸化炭素をアボカド片の表面に浸透させる工程等を含む方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特表2006−503566(段落番号[0004]、[0005]、[0018]、[0019]等)
【特許文献2】米国特許第5,384,147号(請求項3等)
【特許文献3】特開2003−210103(特許請求の範囲、段落番号[0035]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、美しい緑色を有し且つその色が保持されるアボカド果肉加工品と、その製造及び保存方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、どのような料理にも使用できる、換言すれば、強い酸味等の味が付されていないアボカド果肉加工品と、その製造及び保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、下記の本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、アボカド果肉加工品であって、酵素が失活されており、アボカドの果肉を実質的に酸素を含有しない雰囲気下で炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと接触させる工程を経て製造され且つ実質的に酸素の供給がない状態で保存されており、そして、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版におけるN−829(若草色)又はN−834(草色)であることを特徴とするアボカド果肉加工品に関する。
【0012】
本発明のアボカド果肉加工品には、実質的に酸味料及び/又は亜硫酸系変色防止剤を含有しないものが包含される。
【0013】
また、本発明は、アボカド果肉中の酵素を失活させる工程(A)、アボカド果肉を実質的に酸素を含有しない雰囲気下で炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと接触させる工程(B)、及び工程(A)及び(B)を経て製造されたアボカド果肉加工品を実質的に酸素の供給がない条件下に保存する工程(C)を含むことを特徴とするアボカド果肉加工品の製造及び保存方法に関する。
【0014】
工程(B)で使用するガスは、炭酸ガス及びアンモニアガスであるか、アンモニアガスであることが好ましい。
【0015】
工程(C)が、実質的に酸素と接触しない条件下で保存する工程であることが好ましい。
【0016】
工程(B)よりも後であって、工程(C)よりも前に、アボカド果肉加工品が酸素と接触する工程を含まないことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、美しい緑色を有し且つその色が保持されるアボカド果肉加工品、例えばパルプ、ピューレ、ペースト、スプレッド、ディップ、ジュース、ドレッシング、ケチャップ、ジャム等が提供される。
【0018】
本発明のアボカド果肉加工品は、長期に保存しても美しい緑色が保持されるのみならず、調理材料として使用された後、食されるまでの間も、褐変が生じ難い。従って、本発明のアボカド果肉加工品を使用すれば、料理の美しさが損なわれない。
【0019】
本発明のアボカド果肉加工品の中、実質的に酸味料を含有しない態様では、酸味が加えられていないので、あらゆる料理に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を、その実施のための最良の形態に基づいて説明する。
【0021】
本発明のアボカド果肉加工品とは、アボカドの皮及び種を除いた果肉部分のみからなるものと、その果肉に他の成分を添加してなるものの両者を包含する。
【0022】
アボカドの果肉は、皮に近い表面側は濃い緑色、種に近い内側はクリーム乃至ベージュ色であり、これらを均一になるまですりつぶして混合すると、黄緑色、より具体的には、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版におけるN−831(ひわ萌葱色)又はN−835(柳葉色)となる。しかし、本発明のアボカド果肉加工品は、アボカドの果肉を単に均一になるまですりつぶして混合したものとは、若干異なる色調を有するものである。具体的には、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版におけるN−829(若草色)又はN−834(草色)の色調のものである。
【0023】
なお、色調について、「N−831(ひわ萌葱色)又はN−835(柳葉色)」とは、N−831の色調、N−835の色調、及びそれらの中間の色調を含む。同様に、「N−829(若草色)又はN−834(草色)」とは、N−829の色調、N−834の色調、及びそれらの中間の色調を含む。
【0024】
本発明のアボカド果肉加工品は、アボカドの果肉を実質的に酸素を含有しない雰囲気下で炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと接触させる工程、即ち、後記する本発明の製造及び保存方法における工程(B)、を経て製造されるために、上記のような色調を有する。また、酵素を失活させる工程を経て製造され且つ実質的に酸素の供給がない状態で保存されているために、上記のような色調が保持されているのである。
【0025】
本発明のアボカド果肉加工品の中で、アボカドの果肉部分のみからなるものとは、アボカドの果肉に何らの添加物を加えることなく加工処理されて製造されたものをいう。なお、添加物が加えられていない限りにおいて、アボカドの果肉から水分を蒸発させて濃縮する等の処理がなされたものも、アボカドの果肉部分のみからなるアボカド果肉加工品である。
【0026】
本発明のアボカド果肉加工品の中で、アボカドの果肉に何らかの添加物が加えられてなるものに使用されている添加物の種類は、食品に使用することが許されているものである限り、特に限定されない。その例を挙げると、塩、酵母エキス、アミノ酸類等の調味料;各種香辛料;ビタミン類;ショ糖、トレハロース等の二糖類;アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、プルラン、カードラン、グルコマンナン、ペクチン等の多糖類;レシチン、ショ糖脂肪酸エステル類、脂肪酸モノグリセリド類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の乳化剤;乳酸、クエン酸、酢酸(食酢)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ソルビン酸、酒石酸、リンゴ酸等の酸味料等がある。
【0027】
これらの添加物の中、酸味料は、多量に使用すると、アボカド果肉加工品の変色を防止する効果が得られる。しかし、酸味料を多量に使用すると、強い酸味が付与されるのみならず、色調が変化する。例えば、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版におけるN−827(若苗色)、N−828(若葉色)又はN−830(ひわ色)の色調となる。このように、本発明で規定する色調とは異なる色調を示すものは、本発明のアボカド果肉加工品に包含されない。何らかの添加物が加えられてなるアボカド果肉加工品の中で、本発明のアボカド果肉加工品に包含されるものは、添加剤が使用されていないか、使用されている場合には、食品に使用することが許されている添加剤が、本発明のアボカド果肉加工品の色調と実質的に異ならない量で添加されているもののみである。
【0028】
なお、各種添加物の添加量の例を挙げると、アボカドの果肉の重量を基準として、ビタミンEの添加量は0.01乃至3.0重量%、好ましくは0.05乃至2.0重量%であり、多糖類の添加量は0.02乃至5.0重量%、好ましくは0.05乃至3.0重量%であり、乳化剤の添加量は0.01乃至2.0重量%、好ましくは0.03乃至1.5重量%であり、酸味料の添加量は0.01乃至3.0重量%、好ましくは0.05乃至2.0重量%である。
【0029】
本発明のアボカド果肉加工品は、実質的に酸味料及び/又は亜硫酸系の変色防止剤を含有しないものであることが好ましい。酸味料は、その味のために、本発明のアボカド果肉加工品の用途を限定する可能性があるからである。また、本発明のアボカド果肉加工品は、亜硫酸系の変色防止剤を使用しなくても、保存時の変色が抑制されているからである。ここで、「実質的に含有しない」とは、酸味料や変色防止剤が、それらの添加に起因して味や色調が変わるような量では含有されていないことを意味する。具体的には、例えば、アボカド果肉の重量を基準として、酸味料は0.01重量%未満、亜硫酸系変色防止剤は0.01重量%未満(SOとして)であれば、これらは実質的に含有されていないといえる。
【0030】
次に、工程(A)乃至(C)を含む、本発明に係るアボカド果肉加工品の製造及び保存方法について説明する。
【0031】
工程(A)は、アボカドの果肉中に含まれている酵素、例えばポリフェノール酸化酵素を失活させる工程である。アボカドの果肉中に含まれているポリフェノールは、酸素の存在下でポリフェノール酸化酵素によってメラニンとなる。従って、美しい緑色を保持するために、ポリフェノール酸化酵素を失活させる。
【0032】
工程(A)は、アボカドの果肉を酵素が失活する温度以上の温度に保持することにより達成される。工程(A)の温度は、通常は45℃以上、好ましくは60℃以上である。また、温度及び加熱時間の上限は、アボカド果肉に含有されている成分や、アボカド果肉に添加されている成分の分解等が生じないような温度及び加熱時間であればよい。果肉の量と加熱の際の熱の伝達効率によるが、通常は45乃至90℃、好ましくは60乃至85℃にて、通常は1乃至20分間、好ましくは3乃至10分間の加熱処理を行なう。
【0033】
なお、工程(A)は、不活性雰囲気下に行なうことが好ましい。
【0034】
工程(B)は、アボカド果肉を、実質的に酸素を含有しない雰囲気下で炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと接触させる工程である。
【0035】
「実質的に酸素を含有しない雰囲気」とは、気体中の酸素の含有量が100ppm以下、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、最も好ましくは1ppm以下であるような気体をいう。
【0036】
工程(B)は、アボカドの果肉を加工処理する容器内の空気を炭酸ガス及び/又はアンモニアガスで置換し、容器内を実質的に酸素を含有しない雰囲気とし、次いで、アボカドの果肉が炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと十分に接触するように、アボカドの果肉を混合する工程である。アボカドの果肉は、工程(B)の終了までに、均一になるまですりつぶされる。
【0037】
工程(B)は、例えば次のようにして行なう。工程(A)が終了したアボカド果肉を真空置換型のグローブボックス等の容器に入れ、容器内の空気を炭酸ガス及び/又はアンモニアガスで置換し、次いで、アボカドの果肉が炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと十分に接触するように、アボカドの果肉を混合する。
【0038】
工程(B)で使用するガスは、炭酸ガス及びアンモニアガスであるか、アンモニアガスであることが好ましい。アンモニアガスも使用したほうが、色調の安定性に優れる。また、炭酸ガスとアンモニアガスとの混合比は特に限定されないが、アンモニアガス1容量に対し、炭酸ガスが0乃至10容量が好ましく、1乃至6容量がより好ましく、2乃至4容量が更により好ましい。
【0039】
なお、工程(A)と工程(B)とを同時に行なうことも可能であり、その場合には、容器内の空気を炭酸ガス及び/又はアンモニアガスで置換した後、加温しながら、アボカドの果肉が炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと十分に接触するように、アボカドの果肉を混合する。また、工程(B)を先に行ない、その後に工程(A)を行なってもよい。
【0040】
本発明に係るアボカド果肉加工品の製造及び保存方法において、必須の製造工程は、上記工程(A)及び(B)であるが、任意に、濃縮工程、添加物の添加及び混合工程、殺菌工程を実施してもよい。
【0041】
アボカド果肉の水分含有量は、約80重量%である。従って、濃縮工程は、アボカドの水分含有量を低下させるような処理を行なうことによって実施される。濃縮工程は、常圧且つ高温で行なってもよいが、低温で、即ち、真空濃縮機を使用して行なうことが好ましい。濃縮工程は、常圧、高温で行なう場合には、工程(A)及び(B)の終了後に行なう。濃縮工程を真空濃縮機を使用して行なう場合にも、工程(A)及び(B)の終了後に行なうことが好ましいが、工程(A)、工程(B)のいずれか又は両者の実施前に行なうことも可能である。
【0042】
上記したように、本発明のアボカド果肉加工品には、アボカドの果肉に何らかの添加物が加えられてなるものも包含される。そのようなアボカド果肉加工品の製造に用いられる添加物は、製造工程の何れの時期にアボカド果肉に添加されまた混合されてもよい。具体的には、添加物は、第一の工程(皮と種を除去してアボカドの果肉が提供された際)に添加されてもよいし、工程(A)の前や後に添加されてもよいし、また、工程(B)の前や後に添加されてもよい。また、アボカドの果肉と添加物との混合は、例えば工程(A)及び(B)が終了した後に添加物が添加された場合には、独立の工程として実施されるが、工程(A)や(B)の実施により添加物がアボカド果肉と混合される場合には、添加物の混合工程が独立の工程として存在しなくてもよい。
【0043】
アボカド果肉加工品の製造工程中、工程(A)及び(B)の終了時以降の工程は、酸素と接触する条件下に実施してもかまわないが、実質的に酸素と接触しない条件下で実施されることが好ましい。例えば、工程(A)及び(B)の終了後に調味料等の添加物を添加、混合する工程を実施する場合、このような工程は酸素と接触する条件下に実施され得るが、アボカド果肉に調味料を添加した状態で工程(A)及び(B)を実施すれば、工程(A)及び(B)の終了時以降の工程も、実質的に酸素と接触しない条件下で実施され得る。
【0044】
工程(A)及び(B)を経て製造されたアボカド果肉加工品は、缶、瓶、ポリマー製包装容器、アルミ製包装容器その他の容器に充填され、保存される。本発明においては、アボカド果肉加工品は実質的に酸素の供給がない条件下に保存されなければならない(工程(C))。容器内にアボカド果肉加工品が充填された後、容器は密閉され、これにより、酸素の供給が実質的に阻止される。
【0045】
工程(C)は、アボカド果肉加工品が実質的に酸素と接触しない条件下に実施されることが好ましい。例えば、容器内にアボカド果肉加工品を充填した後、容器内の空間に窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスを導入して酸素を追い出すか、又は、袋容器内の酸素を吸引除去すれば、アボカド果肉加工品が実質的に酸素と接触しない。また、実質的に酸素不透過性のポリマーフィルムを、アボカド果肉加工品の周囲に密着させて包装してもよい。
【0046】
保存時の温度は、包装の形態や殺菌の有無による。例えば、缶詰、瓶詰、レトルトパウチ包装品では、常温保存が可能である。また、冷蔵や冷凍保存であってもよい。
【0047】
以下に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0048】
実施例1: 添加物を含むアボカドパルプ(I)の製造とその利用
メキシコ産HASS種の完熟したアボカドを、皮剥きし且つ種取をして、果肉を得た。この果肉20kgを、チョッパー、パルパー及びフィニッシャーに通し、アボカドパルプを得た。
【0049】
このアボカドパルプを、容量40リットルの二重釜に移し、添加物(ビタミンC120g、レシチン40g、キサンタンガム20g、寒天100g)を加え、全体が均一となるまで混合した。次いで、釜内の温度が85乃至90℃になるように加熱し、更に3分間混合を続けた。この工程により、酵素を失活させた。
【0050】
得られた混合物を、容量30リットルの真空置換型グローブボックスに移し、容器内の空気を炭酸ガスで置換した。このときの酸素濃度は、1ppm以下であった。更に30分間混合し、炭酸ガスを混合物と十分に接触させた。
【0051】
このようにして、添加物を含むアボカドパルプ(I)18.4kgを得た。アボカドパルプ(I)の色調は、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版におけるN−829(若草色)とN−834(草色)との中間の色調であった。
【0052】
(発明例1) アボカドパルプ(I)の密封、冷凍保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(I)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを−25℃にて急速冷凍し、その後、−20℃に保存した。
【0053】
(発明例2) アボカドピューレ(I)の製造及び密封、冷凍保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(I)6kgを、容量10リットルの真空濃縮機に移し、60℃にて濃縮を行ない、アボカドピューレ(I)5kgを得た。
【0054】
得られたアボカドピューレ(I)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを−25℃にて急速冷凍し、その後、−20℃に保存した。
【0055】
(発明例3) アボカドピューレ(I)のレトルトパウチ包装品の常温保存
発明例2で製造したアボカドピューレ(I)250gを、レトルト食品包装用アルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを110℃にて20分間加熱し、その後常温に保存した。
【0056】
(発明例4) マヨネーズ様食品(I)の製造及び冷蔵保存
発明例2で製造したアボカドピューレ(I)350gを、容量2リットルの減圧式ミキサーに移し、次いで、このミキサーに、卵黄250g、砂糖75g、食塩1g、グルタミン酸ナトリウム2g、食酢420g、白胡椒2gを加えた。常温、13.3Pa(0.1Torr)の減圧下、1,000rpmで5分間撹拌を行ない、全体を均一化させた。通常のマヨネーズは食用油脂を65%以上含有しているが、アボカドの果肉は15乃至20%の油脂を含有しているので、食用油脂は添加しなかった。
【0057】
得られたマヨネーズ様食品(I)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0058】
(発明例5) アボカドドレッシング(I)の製造及び冷蔵保存
発明例2で製造したアボカドピューレ(I)350gを、容量2リットルの減圧式ミキサーに移し、次いで、このミキサーに、卵黄100g、砂糖100g、食塩1g、グルタミン酸ナトリウム2g、食酢420g、白胡椒2gを加えた。常温、13.3Pa(0.1Torr)の減圧下、1,000rpmで1分間撹拌を行ない、全体を均一化させた。その後、撹拌を続けながら、食用油脂545gを少量ずつ約5分間かけて添加し、全体が均一なアボカドドレッシング(I)を得た。
【0059】
得られたアボカドドレッシング(I)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0060】
(発明例6) アボカドケチャップ(I)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(I)1kgを、容量3リットルのスチームジャケット付き二重釜に移し、撹拌しながら加熱した。アボカドパルプ(I)が沸騰し始めたら砂糖150gを加え、その後濃縮を行なった。加熱終了間際にオニオンパウダー4gを加え、混合し、加熱を終了させた。このようにして、アボカドケチャップ(I)約800gを得た。
【0061】
得られたアボカドケチャップ(I)200gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0062】
(発明例7) アボカドジャム(I)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(I)1kgを、容量2リットルの連続式低温濃縮器に移し、砂糖540gを加え、約60℃に保持しつつ撹拌した。このようにして、糖度65%のアボカドジャム(I)1kgを得た。
【0063】
得られたアボカドジャム(I)200gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0064】
実施例2: 添加物を含まないアボカドパルプ(II)の製造とその利用
メキシコ産HASS種の完熟したアボカドを、皮剥きし且つ種取をして、果肉を得た。この果肉20kgを、チョッパー、パルパー及びフィニッシャーに通し、アボカドパルプ(II)を得た。アボカドパルプ(II)の色調は、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版におけるN−831(ひわ萌葱色)とN−835(柳葉色)との中間の色調であった。
【0065】
(比較例1) アボカドパルプ(II)の密封、冷凍保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを−25℃にて急速冷凍し、その後、−20℃に保存した。
【0066】
(比較例2) 熱処理したアボカドパルプ(II)の冷凍保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを、袋ごと沸騰水中に入れ、95乃至98℃にて30分間加熱した。袋を沸騰水から取り出し、放冷し、−25℃にて急速冷凍し、その後、−20℃に保存した。
【0067】
(比較例3) アボカドパルプ(II)のレトルトパウチ包装品の常温保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)250gを、レトルト食品包装用アルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを110℃にて20分間加熱し、その後常温に保存した。
【0068】
(比較例4) マヨネーズ様食品(II)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)350gを、容量2リットルの減圧式ミキサーに移し、次いで、このミキサーに、卵黄250g、砂糖75g、食塩1g、グルタミン酸ナトリウム2g、食酢420g、白胡椒2gを加えた。常温、13.3Pa(0.1Torr)の減圧下、1,000rpmで5分間撹拌を行ない、全体を均一化させた。通常のマヨネーズは食用油脂を65%以上含有しているが、アボカドの果肉は15乃至20%の油脂を含有しているので、食用油脂は添加しなかった。
【0069】
得られたマヨネーズ様食品(II)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0070】
(比較例5)アボカドドレッシング(II)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)350gを、容量2リットルの減圧式ミキサーに移し、次いで、このミキサーに、卵黄100g、砂糖100g、食塩1g、グルタミン酸ナトリウム2g、食酢420g、白胡椒2gを加えた。常温、13.3Pa(0.1Torr)の減圧下、1,000rpmで1分間撹拌を行ない、全体を均一化させた。その後、撹拌を続けながら、食用油脂545gを少量ずつ約5分間かけて添加し、全体が均一なアボカドドレッシング(II)を得た。
【0071】
得られたアボカドドレッシング(II)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0072】
(比較例6) アボカドケチャップ(II)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)1kgを、容量3リットルのスチームジャケット付き二重釜に移し、撹拌しながら加熱した。アボカドパルプ(I)が沸騰し始めたら砂糖150gを加え、その後濃縮を行なった。加熱終了間際にオニオンパウダー4gを加え、混合し、加熱を終了させた。このようにして、アボカドケチャップ(I)約800gを得た。
【0073】
得られたアボカドケチャップ(I)200gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0074】
(比較例7) アボカドジャム(II)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)1kgを、容量2リットルの連続式低温濃縮器に移し、砂糖540gを加え、約60℃に保持しつつ撹拌した。このようにして、糖度65%のアボカドジャム(II)1kgを得た。
【0075】
得られたアボカドジャム(II)200gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0076】
実施例3: 保存後のアボカド果肉加工品の評価
実施例1及び2で製造し、保存したアボカド果肉加工品(発明例1乃至7、比較例1乃至7)を、保存開始から1週間後に、その性状を評価した。冷凍したものは、流水で解凍し、その後常温に放置した。また、冷蔵したものは、常温に放置した。常温となったら、袋からアボカド果肉加工品を取り出し、色調と分離の有無を観察した。結果を表1に示す。
【0077】
表1から明らかなように、発明例は、何れも当初とほぼ同様の色調であったが、比較例は退色又は変色(褐変等)が生じていた。また、発明例は分離していなかったが、比較例は分離していた。
【0078】
【表1】

注)表中の色調は、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版によるものであり、次のとおりである。
N−815: ひわ茶色(オリーブ)
N−822: 山鳩色(グレイッシュ オリーブグリーン)
N−829: 若草色(ビビッド イエローグリーン)
N−830: ひわ色(ストロング イエローグリーン)
N−833: 香櫞色(シトロン グリーン;ディープ イエローグリーン)
N−834: 草色(ディープ イエローグリーン)
N−835: 柳葉色(ソフト イエローグリーン)
【0079】
実施例4: アボカドパルプの製造
メキシコ産HASS種の完熟した完熟したアボカドを、皮剥きし且つ種取をして、果肉を得た。この果肉4kgを、チョッパー、パルパー及びフィニッシャーに通し、アボカドパルプを得た。
【0080】
(比較例8)
上記のアボカドパルプ1kgを、ポリ塩化ビニリデンフィルムで隙間なく覆い、冷蔵保存した。
【0081】
(発明例8)
上記のアボカドパルプ1kgを真空置換型グローブボックスに入れ、容器内の空気を炭酸ガスで置換した。このときの酸素濃度は、1ppm以下であった。この容器内で、60℃にて30分間混合し、アボカドパルプを炭酸ガスと十分に接触させると共に、酵素を失活させた。
【0082】
このようにして製造されたアボカドパルプを、ポリ塩化ビニリデンフィルムで隙間なく覆い、冷蔵保存した。
【0083】
(発明例9)
炭酸ガスの代わりに、炭酸ガスとアンモニアガスとの混合ガス(3:1(容量比))を使用した以外は発明例8と同様の処理を行なった。得られたアボカドパルプを、ポリ塩化ビニリデンフィルムで隙間なく覆い、冷蔵保存した。
【0084】
(発明例10)
炭酸ガスの代わりにアンモニアガスを使用した以外は発明例8と同様の処理を行なった。得られたアボカドパルプを、ポリ塩化ビニリデンフィルムで隙間なく覆い、冷蔵保存した。
【0085】
実施例5: 保存後のアボカド果肉加工品の評価
実施例4で製造したアボカドパルプ(比較例8、発明例8乃至10)を、冷蔵室から取り出し、各々約100gをバットに厚さが約1乃至2cmとなるように塗り広げた。その直後の色調を評価した。その後、室温で空気に接触する状態における色調の変化を、8時間にわたって観察した。結果を表2に示す。
【0086】
表2から明らかなように、発明例は、緑色の退色はあったが褐変の程度は小さかった。これに対し、比較例は、著しく褐変した。なお、発明例の中では、アンモニアガスを使用したほうが、炭酸ガス単独よりも優れていた。
【0087】
【表2】

注) 表中の色調は、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版によるものであり、次のとおりである。
N−815: ひわ茶色(オリーブ)
N−829: 若草色(ビビッド イエローグリーン)
N−831: ひわ萌葱色(ストロング イエローグリーン)
N−834: 草色(ディープ イエローグリーン)
N−835: 柳葉色(ソフト イエローグリーン)
N−838: 抹茶色(グレイッシュ イエローグリーン)
N−983: 璃寛茶色(グレイッシュ オリーブ)
N−985: 路考茶色(ブラウニッシュ オリーブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アボカド果肉加工品であって、酵素が失活されており、アボカドの果肉を実質的に酸素を含有しない雰囲気下で炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと接触させる工程を経て製造され且つ実質的に酸素の供給がない状態で保存されており、そして、大日本インキ化学株式会社製日本の伝統色第7版におけるN−829(若草色)又はN−834(草色)であることを特徴とするアボカド果肉加工品。
【請求項2】
実質的に酸味料及び/又は亜硫酸系変色防止剤を含有しない、請求項1に記載のアボカド果肉加工品。
【請求項3】
アボカド果肉中の酵素を失活させる工程(A)、アボカド果肉を実質的に酸素を含有しない雰囲気下で炭酸ガス及び/又はアンモニアガスと接触させる工程(B)、及び工程(A)及び(B)を経て製造されたアボカド果肉加工品を実質的に酸素の供給がない条件下に保存する工程(C)を含むことを特徴とするアボカド果肉加工品の製造及び保存方法。
【請求項4】
工程(B)で使用するガスが、炭酸ガス及びアンモニアガスであるか、アンモニアガスである、請求項3に記載のアボカド果肉加工品の製造及び保存方法。
【請求項5】
工程(C)が、実質的に酸素と接触しない条件下で保存する工程である、請求項3又は4に記載のアボカド果肉加工品の製造及び保存方法。
【請求項6】
工程(B)よりも後であって、工程(C)よりも前に、アボカド果肉加工品が酸素と接触する工程を含まない、請求項3乃至5のいずれか一項に記載のアボカド果肉加工品の製造及び保存方法。

【公開番号】特開2008−212126(P2008−212126A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58125(P2007−58125)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(591035195)ユニコロイド株式会社 (5)
【Fターム(参考)】