説明

アミジンおよびジエン配位子を含むボラン活性化Ti触媒系

本発明は、式CyLMDの金属錯体と活性化共触媒とを含むオレフィン類の重合用触媒系に関連し、前記式中、Mはチタンであり;Cyはシクロペンタジエニルタイプの配位子であり;Dはジエンであり;Lが、式(1)のアミジネート含有配位子であって、ここでアミジネート含有配位子はそのイミン窒素原子を介してチタンに共有結合されており、Subが14族原子を含む置換基であり、この14族原子を通してSubはそのイミン炭素原子に結合されており、Subは窒素原子を含む置換基であり、この窒素原子を通してSubはそのイミン炭素原子に結合されており;かつその活性化共触媒が一般式BRによって表わされるホウ素化合物であり、Bが三価の原子価状態のホウ素原子であり、R、RおよびRが、ハロゲン原子、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、置換シリル、アルコキシ、または二置換アミノ残基からなる群から個別に選択される。本発明はさらに、少なくとも1種の脂肪族または芳香族ヒドロカルビルC2−20オレフィンからなるポリマーの調製のための方法に関連し、この方法においては少なくとも1種の脂肪族または芳香族オレフィンを、本発明の触媒系と接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CyLMDという式の金属錯体および活性化共触媒を含むオレフィン類の重合用の新しい触媒系に関し、前記式中、
Mはチタンであり、
Cyはシクロペンタジエニルタイプの配位子であり、
Lはイミン配位子であり、
Dはジエンである。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1種の脂肪族または芳香族ヒドロカルビルC2−20オレフィンからなるポリマーの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
このような金属錯体および方法は、(特許文献1)により公知である。この特許は、付加重合触媒として適している遷移金属化合物、および4族金属の有機金属錯体である触媒を含む方法に関するものであり、この有機金属錯体はホスフィンイミド配位子を含んでいる。
【0004】
(特許文献1)に記載された方法の欠点は、ホスフィンイミド配位子を含む有機金属錯体の活性が比較的低いという点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,528,671B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、オレフィン類の重合のための極めて活性の高い触媒系を提供するイミンタイプの配位子を含む新しい種類の触媒系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、式CyLMDの金属錯体を含む触媒系によって達成され、前記式中、
Lは、下記式1:
【化1】

のアミジネート含有配位子であって、ここでアミジネート含有配位子はそのイミン窒素原子を介してチタンに共有結合されており、Subは14族原子を含む置換基であり、この原子を通してSubはイミン炭素原子に結合されており、Subは窒素原子を含む置換基であって、この窒素原子を通してSubはイミン炭素原子に結合されており、且つ
活性化共触媒が一般式BRによって表わされるホウ素化合物であり、式中、Bは三価の原子価状態のホウ素原子であり、R、RおよびRは、ハロゲン原子、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、置換シリル、アルコキシ、または二置換(ジ置換)アミノ残基からなる群から個別に選択される。
【0008】
意外にも、本発明に係る触媒系を用いると、オレフィン類の重合のための極めて活性の高い触媒系が得られる。本発明に係る触媒系の別の利点は、活性化共触媒を組合せた時のその即座の触媒活性にある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Cp*Ti{NC(Ph)NPr}(η−1,4−CPh)のX線構造を示す。
【図2】Cp*Ti{NC(Ph)NPr}(η−2,3−CMe)のX線構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、式CyLMDの金属錯体と活性化触媒とを含むオレフィン類の重合用触媒系に関し、前記の式中、
Mはチタンであり、
Cyはシクロペンタジエニルタイプの配位子であり、
Dは共役ジエンであり、
Lは、下記式1
【化2】

のアミジネート含有配位子であり、ここでアミジネート含有配位子はそのイミン窒素原子を介してチタンに共有結合されており、Subは14族原子を含む置換基であり、この原子を通してSubはイミン炭素原子に結合されており、Subは窒素原子を含む置換基であり、この窒素原子を通してSubはイミン炭素原子に結合されており、かつ
上記活性化共触媒は一般式BRによって表わされるホウ素化合物であり、Bが三価の原子価状態のホウ素原子であり、R、RおよびRが、ハロゲン原子、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、置換シリル、アルコキシ、または二置換アミノ残基からなる群から個別に選択される。
【0011】
好ましい一実施形態において、Cyは、一置換または多置換シクロペンタジエニルタイプの配位子であり、ここでCyの1つ以上の置換基は、ハロゲン、ヒドロカルビル、シリル、およびゲルミル残基からなる群から個別に選択され、これらの置換基は任意選択により場合によっては1つ以上のハロゲン、アミド、ホスフィド、アルコキシ、またはアリールオキシ残基で置換されていてもよい。
【0012】
本明細書中で使用される、置換されたシクロペンタジエニルタイプの配位子という用語は、その従来の意味、すなわちπ型の結合を介して金属に結合された5員炭素環を有する置換された配位子という意味を広く伝えるように意図されている。したがって、シクロペンタジエニルタイプという用語には、シクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニルが含まれる。一置換または多置換という用語は、シクロペンタジエニル構造の1つ以上の芳香族水素原子が1つ以上の他の残基によって置換されているという事実を意味する。置換基の数は、シクロペンタジエニル配位子については1〜5個、インデニル配位子については1〜7個、そしてフルオレニル配位子については1〜9個である。シクロペンタジエニル配位子のための置換基の例示的リストには、C1−10ヒドロカルビルラジカル(このヒドロカルビル置換基は非置換であるかまたはさらに置換されている)、ハロゲン原子、C1−8アルコキシラジカル、C6−10アリールまたはアリールオキシラジカル;非置換であるかまたは2個以下のC1−8アルキルラジカルによって置換されているアミドラジカル、非置換であるかまたは2個以下のC1−8アルキルラジカルにより置換されているホスフィドラジカル、式−Si(Rのシリルラジカル(式中、各Rは、水素、C1−8アルキルまたはアルコキシラジカル、C6−10アリールまたはアリールオキシラジカルからなる群から選択される)、および式−Ge(Rのゲルマニルラジカル(式中、Rは水素、C1−8アルキルまたはアルコキシラジカル、C6−10アリールまたはアリールオキシラジカルからなる群から選択される)が含まれる。
【0013】
本発明に係るこのようなシクロペンタジエニルタイプの配位子は、芳香族π電子を介してチタン原子に結合されているモノアニオン性配位子系である。一部の場合において、そのモノアニオン性シクロペンタジエニル配位は、η−結合として記述されている。
【0014】
好ましい実施形態において、シクロペンタジエニル配位子はメチル基によって五置換されており、その結果、Cyは、一般にCp*とよばれる1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル、CMeである。
【0015】
イミン配位子の特性は、2重結合の窒素原子を含む基として定義される。イミン配位子の非網羅的例としては、ケチミン、グアニジン、ホスフィンイミン、イミノイミダゾリジン、(ヘテロ)アリールオキシイミン類、ピロールイミン類、インドールイミン類、イミダゾールイミン類または(ヘテロ)アリールオキシド類、(置換)ピリジン−2−イル−メトキシ、(置換)キノリン−2−イル−メトキシ、8−ヒドロキシキノリン、8−アミノキノリン、8−ホスフィノキノリン、8−チオキノリン、8−ヒドロキシキナルジン、8−アミノキナルジン、8−ホスフィノキナルジン、8−チオキナルジン、および7−アザインドールまたはインダゾールなどがある。イミン配位子のさらなる例は、14族原子を含むSubをもつ式1で表わされるアミジン配位子であり、その14族原子を介してSubがイミン炭素原子に結合されているものである。Subは、イミン炭素原子にSubを結合する窒素原子を含んでいる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、アミジネート含有配位子Lを含む触媒系であって、イミン炭素原子にSubを結合している14族原子が芳香族炭素原子である触媒系に関する。換言すると、Subはアリール残基である。このような好ましいアミジネート含有配位子の典型的例は、式1で表わされ、Subはフェニルまたは置換フェニル残基、例えば、ナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジクロロフェニル、および2,6−ジフルオロフェニルである。
【0017】
本発明のさらなる実施形態は、アミジネート含有配位子Lを含み、Lにおいてイミン炭素原子にSubを結合している14族原子が脂肪族炭素原子である触媒系に関する。換言するとSubはアルキル残基である。このような好ましいアミジネート含有配位子の典型的な例は、式1で表わされ、式1においてSubは、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖、分岐、または環状のアルキル残基であり、これらは任意選択により場合によってはハロゲン、アミド、シリル、またはアリールラジカルで置換されていてもよい。Subの例は、メチル、ヘキシル、シクロヘキシル、イソプロピル、tert−ブチル、ベンジル、トリフルオロメチル、2,6−ジメチルベンジル、2,6−ジフルオロベンジル、および2,6−ジフルオロフェニルである。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態は、式1のアミジネート含有配位子を含む触媒系に関するものであって、式1中、Subが一般式−NRを有し、RおよびRは、脂肪族ヒドロカルビル、ハロゲン化脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビル、ハロゲン化芳香族ヒドロカルボニル残基の群から個別に選択され、Rが任意選択により場合によってはRまたはSubと共に複素環構造を形成してもよい。Subの例は、ジメチルアミド、ジイソプロピルアミド、ビスシクロヘキシルアミド、およびN−ジメチルフェニルN−エチルアミドである。
【0019】
式1により表わされるアミジネート含有配位子の最も好ましい例は、欧州特許第1730205号明細書に記載された合成によって都合よく調製可能であるアミジン類に基づく。第2級アルキルアミン(RNH)に対する臭化メチルマグネシウム(MeMgBr)及び芳香族ニトリル(Ar−CN)の順次の付加というこの特許に記載の反応は、市販されている成分に基づいて高収率のアミジン配位子をもたらす。このようなアミジン類は、一般式1によって表わされ、式中Subはアリール残基であり且つSubは一般式−NRで表され、各Rは、ヒドロカルビル残基の群から個別に選択され、このヒドロカルビル残基は任意選択により場合によっては互いにまたはSubと共に複素環構造を形成していてもよい。
【0020】
共役ジエン配位子Dは、s−トランス型立体配置(π結合)またはs−シス型立体配置(π結合またはσ結合のいずれか)で金属と結合されていてよい。本発明において使用される金属錯体において、ジエン配位子基Dは、好ましくはπ結合されている。このような結合タイプは、Yasudaら,Organometallics,1,388(1982)、Yasudaら,Acc.Chem.Res.,18,120(1985)、およびErkerら,Adv.Organomet.Chem.,24,1(1985)、ならびにそれらの中で引用されている参考文献の技術にしたがって、X線結晶法またはNMRスペクトル分析によって、容易に決定される。「π錯体」という用語は、配位子のπ軌道を用いて達成される、配位子による電子密度の供与と逆受容の両方を意味する。
【0021】
ジエン含有金属錯体中のπ錯体の存在を決定する適切な方法は、一般的なX線結晶分析技術を用いての、ジエンの炭素についての金属−炭素原子間隔の測定である。金属Mと、C1、C2、C3、C4との間の原子間隔(それぞれ、M−C1、M−C2、M−C3、M−C4)(ここでC1とC4は四炭素共役ジエン基の端末炭素であり、C2とC3は四炭素共役ジエン基の内部炭素である)の測定を行なうことができる。
Δd=[(M−C1 + M−C4)−(M−C2 + M−C3)]/2
という式を用いたこれらの結合距離間の差Δdが−0.15Å以上である場合、そのジエンは、Mとπ錯体を形成していると考えられる。このようなπ結合したジエンは、電子的に中性の配位子と考えられ、それに関与するチタン原子は形式的酸化状態+2にある。
【0022】
Δdが−0.15Å未満である場合、そのジエンはMとσ錯体を形成すると考えられ、形式上は、チタン原子が+4の形式的酸化状態にあるメタロシクロペンテン構造によってこれを表わすことができる。
【0023】
本発明に係る錯体は、π結合したジエン錯体とσ結合したジエン錯体の混合物として形成され利用されてもよいということが理解されるべきである。
【0024】
錯体は多くとも1つのシクロペンタジエニルタイプの配位子(Cy)しか含むことができないため、ジエン配位子Dはシクロペンタジエニル基または他のアニオン性の芳香族π結合基を含むことができないということになる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、共役ジエンが、任意選択によりヒドロカルビル、シリルおよびハロゲン化カルビルからなる群から独立して選択される1つ以上の基で置換されていてもよいC4−40ジエンである触媒系から構成される。
【0026】
適切なD部分の例には、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン;2,3−ジフェニル−1,3−ブタジエン;3−メチル−1,3−ペンタジエン;1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン;2,4−ヘキサジエン;2,4,5,7−テトラメチル−3,5−オクタジエン;2,2,7,7−テトラメチル−3,5−オクタジエン;1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン;1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン;2,3−ジメチルブタジエンが含まれる。
【0027】
配位しているジエンの好ましいπ結合の結果は、一般式CyLMDを有する本発明の錯体のチタン原子が形式的原子価2+を有することであり、なぜなら、配位子CyとLが両方共モノアニオン性配位子だからである。
【0028】
本発明の好ましい実施形態は、活性化共触媒が一般式BRにより表わされるボランである触媒系であり、式中Bは三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、R、R、およびRは、ハロゲン原子、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、置換シリル、アルコキシまたは二置換アミノ残基からなる群から個別に選択される。最も好ましい活性化共触媒は、トリスペンタフルオロフェニルボランである。
【0029】
記載したチタン錯体を活性化することのできる商業的に容易に入手可能であるホウ酸塩およびボラン化合物には、N,N−ジメチルアニリウムテトラキスペンタフルオロフェニルホウ酸塩、トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルホウ酸塩、およびトリスペンタフルオロフェニルホウ素が含まれる。
【0030】
上述したチタン金属錯体および活性化共触媒は、本発明によって記述されているような活性の高い重合反応のために必要とされる必須化合物である。当業者であれば、さらなる添加剤も重合プロセスから排除されないということを理解するものである。このような添加剤の非限定的なリストは、スカベンジャー、安定剤、および担体材料からなる。
【0031】
本明細書中で使用されるスカベンジャーという用語は、反応溶媒から極性不純物を除去するために有効な化合物を含むことを意図している。このような不純物は、重合反応構成成分のいずれかと共に、特に溶媒、モノマー、および触媒と共に偶発的に入り込み、触媒の活性および安定性に不利な影響を及ぼすおそれがある。それは、特に、チタン金属錯体をイオン化することのできる活性剤もまた存在する場合には、触媒活性の低下さらには除去さえも結果としてもたらすおそれがある。アルミニウムアルキル類およびアルミノオキサン類が好適なスカベンジャーである。典型的な例は、トリエチルアルミニウム(EtAl)、トリオクチルアルミニウム(OctAl)、トリイソブチルアルミニウム(i−BuAl)、(EtAl)O、(OctAl)O、(i−BuAl)O、およびそれらのオリゴマー、例えば[(EtAl)O][(OctAl)O]、および[(i−BuAl)O](ここでn>1)である。任意選択により場合によっては、トリアルキルアルミニウムスカベンジャーをフェノール化合物またはその他のプロトン性ヘテロ原子含有化合物によって変性することができる。
【0032】
担体(担体材料または担持材料ともよばれる)の例示的リストには、金属酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、シリカーアルミナ、チタニア、およびジルコニア);金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム);粘土、ポリマー、またはタルクが含まれる。
【0033】
好ましい担持材料はシリカである。特に好ましい実施形態において、シリカはチタン金属錯体の担持に先立ちアルミノキサン(特にメチルアルミノキサンまたはMAO)で処理されている。シリカは、粒径、細孔体積、および残留シラノール濃度などのパラメータによって特徴づけることができることが当業者によって認識されるであろう。細孔サイズおよびシラノール濃度は、熱処理またはか焼によって改変されるかもしれない。残留シラノール基は、アルミノキサンとシリカとの間の潜在的反応部位を提供する。この反応は、アルミノキサンをシリカに「固定(アンカー)」させるのを助けることができる。
【0034】
一般的指針として、市販のシリカ、例えば、W.R.Grace社がDavidson948またはDavidson955の商標で販売しているものを使用することが適している。
【0035】
本発明はさらに、少なくとも1種の脂肪族または芳香族ヒドロカルビルC2−20オレフィンからなるポリマーの製造方法に関連し、その方法では、少なくとも1種の脂肪族または芳香族オレフィンを本発明の触媒系と接触させる。
【0036】
本発明に係る重合方法は、「気相」、「スラリー」、「高圧」、および「溶液」法として公知のものを含めた周知のオレフィン重合法のいずれかにおいて行うことができる。
【0037】
担持触媒の使用は、気相およびスラリー法のために好適であり、一方、溶液法のためには非担持触媒が好適である。
【0038】
本発明に係る重合方法は、オレフィン、例えば、エチレンまたはプロピレンを使用し、且つそれと共重合可能な他のモノマー(例えば、他のオレフィン類、好ましくは、プロピレン、ブテン、ヘキセン、またはオクテン、および任意選択で場合によってはジエン類、例えば、ヘキサジエン異性体類、ビニル芳香族モノマー類、例えば、スチレンまたは環式オレフィンモノマー、例えば、ノルボルネン)を含んでいることができる。
【0039】
本発明にしたがって調製できるポリエチレンポリマーは、典型的には、60重量%以上、好ましくは70重量%以上のエチレンを含み、残部は1つ以上のC4−10アルファオレフィン類、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテンからなる群から選択される1つ以上のC4−10アルファオレフィン類である。本発明にしたがって調製されるポリエチレンは、約0.910〜0.935g/mLの密度を有する線状低密度ポリエチレンであってよい。本発明の方法は好ましくは、0.910g/mL未満の密度を有するポリエチレンすなわちいわゆる極低密度および超低密度ポリエチレンを調製するために用いられる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、調製されるポリマーがEPDMである方法である。EPDMは、エチレン、プロピレン、そして任意選択で場合により1つ以上のジオレフィンモノマー(ジエン)からなるエラストマー系コおよびターポリマーを記述するための一般的専門用語である。一般に、このようなエラストマー系ポリマーは、約40〜約80重量%のエチレン、好ましくは約50〜75重量%のエチレン、それに対応して60〜20重量%、好ましくは50〜25重量%のプロピレンをそれぞれ含む。モノマーの一部分、典型的にはプロピレンモノマーを、非共役ジオレフィンによって置換してもよい。ジオレフィンは、ポリマーの10重量%以下の量で存在してもよいが、典型的には約3〜5重量%の量で存在する。結果として得られたポリマーは、ポリマーの40〜80重量%のエチレン、60〜20重量%のプロピレン、そして最高でも10重量%の1種以上のジエンモノマーからなり、全体で100%になる組成を有していてよい。ジエンの非限定的な好ましい例は、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)である。特に好ましいジエンはENBおよびVNBである。
【0041】
本発明の方法にしたがって調製されるポリマーは、10,000〜50,000,000g/モルの重量平均分子量を有していてよい。好ましくは、このポリマーは、20,000〜1,000,000g/モル;より好ましくは50,000〜300,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0042】
本発明の好ましい重合法は、中圧溶液法における上記の新規な触媒系の使用を包含する。本明細書中で使用されている「中圧溶液方法」という用語は、20〜150℃(特に40〜120℃)の操作温度と3〜35バールの全圧でポリマー用の溶媒中において実施される重合を意味する。この方法では、分子量を制御するために水素を使用することができる。最適な触媒構成成分濃度は、温度およびモノマー濃度などの変数により影響を受けるが、当業者が通常行う試験によって速やかに最適化することができる。
【0043】
本発明の最も好ましい方法は、エチレンプロピレンジエンエラストマー(EPDM)を重合するための溶液法である。これらの方法は、不活性炭化水素溶媒、例えば、非置換であるかまたはC1−4アルキル基で置換されていてもよいC5−12炭化水素、例えば、ペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、および水素化ナフサの存在下で行なわれる。
【0044】
ポリマーの調製のために本発明の方法で用いられるモノマーは、反応装置に供給される前に溶媒中に溶解/分散されていることができる。気体モノマーについては、このモノマーを反応器に供給して、反応混合物中に溶解させることができる。混合に先立ち、溶媒およびモノマーは好ましくは、潜在的触媒毒、例えば、水または酸素を除去するために精製される。原料精製は、当技術分野における標準的実務にしたがい、例えば、モノマー精製のためには、分子ふるい、アルミナ床、および酸素除去触媒が使用される。溶媒自体(例えば、メチルペンタン、シクロヘキサン、ヘキサン、またはトルエン)は、好ましくは同様の方法で処理される。
【0045】
原料は、重合反応器への供給の前に加熱または冷却されてもよい。第2の反応器に追加のモノマーおよび溶媒を添加してもよく、反応装置(1つまたは複数)は加熱または冷却されてもよい。
【0046】
一般に、触媒の構成成分、並びにスカベンジャーおよび活性化剤などの成分は、反応器に別個の溶液として添加されるかまたは反応器への添加の前に予備混合されてもよい。
【0047】
重合反応器内の滞留時間は、反応器の設計および容積により左右される。一般に反応器は、反応原料の完全な混合を達成する条件下で操作されなくてはならない。2基の反応器を直列で使用する場合には、第1の反応器内で最終的ポリマーの50〜95重量%を重合させ、残部を第2の反応器内で重合させることが好ましい。同様に、2重並列反応器の配置を用いることも可能である。反応器を離れる時点で、溶媒は除去され、結果として得られたポリマーは従来の方法で仕上げられる。
【0048】
3基以上の重合反応器を使用することも、本発明の範囲内に入る。
【0049】
本発明は同様に、本発明の方法によって得ることのできるポリマーにも関する。
【0050】
本発明の重合系のさらなる利点は、活性化共触媒を添加したときのチタンジエン錯体の活性化速度である。先行技術による触媒系のほとんどが触媒−共触媒系の予備混合を必要とする一方で、本発明の触媒系は、触媒系の活性を実質的に喪失することなく反応装置にチタン錯体と共触媒を直ちに投入することを可能にする。
【0051】
本発明を以下の実施例および比較実験に基づいて説明するが、これらに限定されるわけではない。
【実施例】
【0052】
[試験方法]
屈折率(RI)および示差粘度測定(DV)検出器に連結されたサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)。(SEC−DV)
装置:PL220DRI濃度検出器とVisotek220R粘度測定検出器を備えたPL220(Polymer Laboratories社)SEC。
検出器は並列構成で作動させる。
Erma溶媒脱気装置ERC−3522
データ処理:Viscotekデータ処理ソフトウェア、TriSEC2.7またはそれ以上のバージョン
カラム:ToyoSoda(TSK)GMHHR−H(S)HT混合床(4X)
較正:線状ポリエチレン(PE)標準品(分子量0.4〜4000kg/モル)を用いた汎用較正
温度:145℃
流量:1.0ml/分
注入体積:0.300ml
溶媒/溶離液:約1g/lのイオノール安定剤を伴う、蒸留した1,2,4−トリクロロベンゼン
試料の調製:約150℃で4時間の溶解。
1.2ミクロンのAgフィルタを通した濾過。
約1.0mg/mlの試料濃度
SEC−MALLSは、Wyatt DAWN EOS;2PL20u混合型Aカラム;ソフトウェア:Wyatt Astra 4.90を備えたPL−GPC210を用いて測定した。
溶離液:160℃の1、2、4−トリクロロベンベン。
【0053】
固有粘度(intrinsic viscosicy, IV)は、溶媒としてのデカヒドロナフテン中において135℃で測定した。
【0054】
NMR(H、300MHz、13C、75.7MHz、および19F、282MHz)スペクトルを、Bruker Avance300分光計で記録した。
【0055】
当技術分野において公知の方法にしたがって、ポリマーの組成を決定するために、フーリエ変換赤外線分光法(FT−IR)を使用した。FT−IR測定は、全組成に対する百分率としてさまざまなモノマーの組成を与える。
【0056】
ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)およびムーニー応力緩和(MSR)は、Monsato Mooney MV2000Eで、ISO289に準拠して測定した。
【0057】
第I部:配位子と化合物の合成
[概論]
全ての試験を、Schelenkライン技術を用いて窒素下で実施した。ジエチルエーテルとn−ヘキサンを、ベンゾフェノンケチルを指標として用いてナトリウムカリウム合金からの蒸留により乾燥させた。トルエンを、ベンゾフェノンケチルを指標として用いてナトリウムからの蒸留により乾燥させた。
2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンおよび1,4−ジメチル−1,3−ブタジエンをCaH上で乾燥させ、減圧下で蒸留し、J.Young Teflon(登録商標)バルブアンプル(valve ampoule)中にN下で保管した。他の全ての試薬は市販のものを入手し、受け取ったままの状態で使用し、J.Young Teflon(登録商標)バルブアンプル中にアルゴン下で、またはドライボックス内にN下で保管した。他の試薬は全て、さらに精製することなく、受領したままで使用した。
【0058】
Cp*Ti{NC(Ph)(NPr}Cl
トルエン(50mL)中のCp*TiCl(1.45g、5.0mmol)およびN,N−ジイソプロピルベンズアミジン(1.00g、4.9mmol)の懸濁液にEtN(2.5mL、1.83g、18.1mmol)を添加した。その混合物を16時間撹拌した。H−NMRは、検出可能な量の副産物が全くない状態で、所望の錯体への100%の転化を示した。混合物を濾過し、残渣をn−ヘキサンで濯ぎ、生成物をこの溶液から−20℃で結晶化させて、1.20g(54%)の結晶を得た。生成物をH NMR(300MHz)(CDCl)δ(ppm):7.3(m、5H)、3.7(bs、2H)、1.8(s、15H)、1.5(bs、6H)、1.1(bs、6H)、および13C−NMR(75.5MHz)(CDCl)δ(ppm)165.5、138.1、129.0、128.7、127.2、52.5(bs)、48.3(bs)、21.1(bs)、12.9、により分析した。
【0059】
Cp*Ti{NC(Ph)NPr}(η−2,3−CMe)(化合物1)
0℃にてトルエン(30mL)中のCp*Ti{NC(Ph)NPr}Cl(0.50g、1.09mmol)と2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(0.27g、3.28mmol)の撹拌溶液に、滴下により2当量のBuLi(1.4mL、ヘキサン中1.6M、2.18mmol)を添加し、この結果、溶液は橙/赤色から緑色に変色した。反応混合物の温度をゆっくりと室温まで上昇させ、20時間撹拌した。真空下での揮発性物質の除去により緑/青色の固体が得られ、これをペンタン(3×20mL)中に抽出した。濾過の後、ペンタン溶液を20mLに濃縮し、−80℃まで冷却して、その結果として結晶化した。その物質を単離し、極低温のペンタン(5mL)で洗浄し、緑色の固体(0.27g、53%)として表題化合物を得た。H NMR(C、299.9MHz、293K):7.06−6.95(5H、一連の重複多重項、C)、3.96(2H、m、CMeJ=9Hz)、2.45(1H、d、η−2,3−CMeJ=6Hz)、2.33(1H、d、η−2,3−CMeJ=9Hz)、2.19(3H、s、η−2,3−CMe)、2.02(3H、s、η−2,3−CMe)、1.87(15H、s、CMe)、1.05(6H、d、CHMeJ=6Hz)、1.00(6H、d、CHMeJ=6Hz)、0.70(1H、d、η−2,3−CMeJ=6Hz)、0.58(1H、d、η−2,3−CMeJ=9Hz)ppm。13C−NMR(C、293K):164.6(N(Ph)NPr)、142.6(i−C)、128.9(o−またはm−C)、127.9(p−C)、127.6(m−またはo−C)、126.6(η−2,3−Me(Tiに隣接))、117.6(Me)、69.6(HMe)、67.7(HMe)、46.8(η−2,3−ΗΜe(ビニル))、25.2(η−2,3−CMe)、24.8(η−2,3−CΗΜe)、24.4(CHMe)、22.8(CHMe)、12.4(CMe)ppm。IR(NaCl板、ヌジョールマル、cm−1):1653(m)、1589(s)、1541(w)、1272(s)、1026(w)、1157(m)、800(w)、783(m)、702(s)、653(w)。分析測定値(C2944Tiについての計算値):C、74.3(74.3);H、9.4(9.5);N、6.0(6.0)%。El−MS m/z:468(5%、[M])、386(35%、[M−2,3−CMe)、223(10%、[M−2,3−CMe−Ph−2Pr])、100(80%、[NPr)。X線回折分析に適した単結晶を室温でペンタン溶液から成長させた。
【0060】
Cp*Ti{NC(Ph)NPr}(η−1,4−CPh)(化合物2)
0℃にてトルエン(30mL)中のCp*Ti{NC(Ph)NPr}Cl(1.00g、2.19mmol)と1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン(0.45g、2.19mmol)の撹拌溶液に、滴下により2当量のBuLi(2.7mL、ヘキサン中1.6M、4.37mmol)を添加し、この結果、溶液は橙/赤色から暗褐色に変色した。反応混合物の温度をゆっくりと室温まで上昇させ、20時間撹拌し、その後、不透明な溶液は暗緑色の色合いを帯びた。真空下での揮発性物質の除去により暗緑/褐色の固体が得られ、これをペンタン(3×20mL)中に抽出した。濾過の後、溶媒を真空化で除去し、結果として得た暗緑色の固体を単離した。錯化しなかったジエンを昇華によりその所望の錯体から除去し(100℃、10−1mBar、ドライアイス/アセトン低温フィンガー、8時間)、暗緑色の固体として4を得た。収量=0.41g(39%)。H NMR(トルエン−d、299.9MHz、253K):7.54−6.85(15H、一連の重複多重項、C)、6.28(1H、m、η−1,4−CPh(ビニル))、5.90(1H、m、η−1,4−CPh(ビニル))、3.70(2H、br s、CMe)、2.20(1H、m、η−1,4−CPh(Tiに隣接))、1.98(1H、m、η−1,4−CPh(Tiに隣接))、1.68(15H、s、CMe)、0.93(12H、br s、CHMe)ppm。13C NMR(トルエン−d、253K):156.8(N(Ph)NPr)、145.6(i−C(η−1,4−CPh))、145.3(i−C(η−1,4−CΗPh))、140.6(i−C(NC(Ph)NPr))、127.8(o−またはm−C(η−1,4−CPh))、127.7(o−またはm−C(NC(Ph)NPr))、127.1(p−C(η−1,4−CΗΡh))、126.7(p−C(NC(Ph)NPr))、125.9(m−またはo−C(η−1,4−CPh))、124.8(m−またはo−C(NC(Ph)NPr))、122.6(η−1,4−Ph(Tiに隣接))、122.3(η−1,4−Ph(Tiに隣接))、118.2(Me)、81.6(η−1,4−Ph(ビニル))、80.3(η−1,4−Ph(ビニル))、45.1(HMe)、22.3(CHMe)、11.1(CMe)ppm。IR(NaCl板、ヌジョールマル、cm−1):3583(w)、1568(s)、1297(m)、1087(m)、790(s)、741(w)、698(m)。分析測定値(C3948Tiについての計算値):C、79.1(79.0);H、8.1(8.2);N、4.8(4.7)%。EI−MS m/z:592(5%、[M])、386(20%、[M−1,4−CPh)、223(65%、[M−1,4−CPh−Ph−2Pr])、100(30%、[NPr)。X線回析分析に適した単結晶を−30℃でペンタン溶液から成長させた。
【0061】
Cp*Ti{NC(Ph)NPr}(η−1,4−CMe)(化合物3)
0℃にてトルエン(30mL)中のCp*Ti{NC(Ph)NPr}Cl(0.80g、1.75mmol)と1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン(0.57g、7.00mmol)の撹拌溶液に、滴下により2当量のBuLi(2.2mL、ヘキサン中1.6M、3.50mmol)を添加し、この結果、溶液は赤色から暗紫色に変色した。反応混合物の温度をゆっくりと室温まで上昇させ、90℃で8時間還流させ、その時間の後、反応混合物は暗緑色になった。真空下での揮発性物質の除去により緑色の固体が得られ、これをペンタン(3×20mL)中に抽出した。濾過の後、ペンタン溶液を20mLに濃縮し、−80℃まで冷却して、緑色の結晶を得、これを単離し、極低温のペンタン(5mL)で洗浄し、6(0.31g、38%)を得た。H NMR(トルエン−d、299.9MHz、253K):7.18−6.85(5H、一連の重複多重項、C)、5.84(1H、m、η−1,4−CMe(ビニル))、5.55(1H、m、η−1,4−CMe(ビニル))、3.42(2H、br s、CMe)、1.99(3H、d、η−1,4−CMe)、1.68(15H、s、CMe)、1.70(3H、d、η−1,4−CMe)、0.97(12H、br s、CHMe)、0.60(1H、m、η−1,4−CMe(Tiに隣接))、0.38(1H、m、η−1,4−CMe(Tiに隣接))ppm。(少量の異性体に対応するピーク:1.78(s、CMe)、1.26(br s、CHMe)ppm) 13C−NMR(トルエン−d、233K):161.2(N(Ph)NPr)、143.6(i−C)、130.0(o−またはm−C)、129.4(p−C)、127.2(m−またはo−C)、125.8(η−1,4−Me(Tiに隣接))、117.0(Me)、51.8(HMe)、46.3(HMe)、35.6(η−1,4−Me(ビニル))、23.1(η−1,4−CMe)、19.7(CHMe)、11.1(CMe)ppm。IR(NaCl板、ヌジョールマル、cm−1):3583(w)、1593(s)、1302(m)、1282(m)、1208(w)、1158(m)、1084(w)、917(w)、881(w)、814(m)、841(w)、783(m)、701(m)、657(w)。分析測定値(C2944Tiについての計算値):C、74.4(74.3);H、9.3(9.5);N、5.8(6.0)%。EI−MSm/z:468(5%、[M])、386(20%、[M−1,4−CMe)、223(35%、[M−1,4−CMe−Ph−2Pr])、100(60%、[NPr)。
【0062】
第II部:重合反応
[一般的重合手順]
イソブチルアルミノキサン(IBAO−65、13重量%のヘキサン類溶液)を、Akzo Nokel社から購入し、トルエン中の0.1Mのアルミニウム溶液として反応器に投入した。4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(BHT、+99.0%)をSigma−Aldrich社から購入し、ヘキサン中の0.2Mの溶液として投入した。触媒前躯体溶液は、トルエン中の1.0mM溶液として投入した。BF15(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)をトルエン中の2.0mM溶液として投入した。フィード流(エチレン、プロピレン、ヘキサン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン(PMH)、水素)を、さまざまな吸収媒体と接触させることで、精製して、水、酸素および極性化合物などの触媒を失活させる不純物を除去した。(Molsieves 4Å(Merck社、窒素、エチレン、水素)、Molsieves 13−X(Merck社、プロペン、PMH)、Cu−触媒BTS R311(BASF社、窒素、エチレン、プロピレン))。さらに、溶媒を窒素でストリッピングした。5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)は、Ineos社から購入し、窒素でのストリッピングした後、反応器に投入した。反応器中の合計アルミニウム濃度を450μmol/L前後に保って、効率よいスカベンジングを確実にした。
【0063】
二重intermig撹拌機とバッフルを備えた2リットルのオートクレーブ中で、エチレン、プロピレン、ENB、VNBのバッチ四元共重合反応を実施した。反応温度を90℃に設定し、Lauda Thermostatで調節した。重合中、エチレンとプロピレンモノマーおよび0.35NL/hの水素を連続的に反応器のガスキャップに供給した。反応器の圧力は背圧弁により一定に保った。
【0064】
窒素の不活性雰囲気(1.8バール)中で、反応器に950mlのPMH溶媒そして任意選択により場合によっては0.7mLのENBおよび0.7mLのVNBを充填した。メチルアルミノキサンおよびBHT、またはイソブチルアルミノキサンのいずれかをスカベンジャー構成成分として添加した。1350rpmで撹拌しながら、反応装置を90℃まで加熱した。エチレン、プロピレンを供給することにより、反応装置を8バールまで加圧した。固定比のエチレンとプロピレンを15分間適用して反応装置をコンディショニングした。その後、触媒化合物を反応器に添加し、触媒容器を追加の50mLのPMHで濯いだ。TBF20またはBF15を使用する場合には、触媒前躯体の直後にそれを添加した。10分間の重合時間後、モノマー流を停止させ、その溶液を、イソプロパノール中のIrganox−1076の溶液が入った2Lの三角フラスコ内に注意深く注ぎ、減圧(20mbar未満)下100℃で一晩乾燥させた。そのポリマーを、固有粘度(IV)、分子重量分布(SEC−DV)、および組成(FT−IR)について分析した。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式CyLMDの金属錯体
(式中、
Mはチタンであり、
Cyはシクロペンタジエニルタイプの配位子であり、
Lはイミン配位子であり、
Dはジエンである)と、
(b)活性化共触媒と、
を含む、オレフィン類の重合用触媒系であって、
Lが、式1:
【化1】

のアミジネート含有配位子であって、式中、前記アミジネート含有配位子は前記イミン窒素原子を介して前記チタンに共有結合されており、Subは14族原子を含む置換基であって、前記14族原子を通してSubは前記イミン炭素原子に結合されており、Subは窒素原子を含む置換基であって、前記窒素原子を通してSubは前記イミン炭素原子に結合されており、且つ、
前記活性化共触媒が一般式BRによって表わされるホウ素化合物であり、Bが三価の原子価状態のホウ素原子であり、R、R、およびRが、ハロゲン原子、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、置換シリル、アルコキシ、または二置換アミノ残基からなる群から個別に選択されることを特徴とする触媒系。
【請求項2】
Cyが、一置換または多置換シクロペンタジエニルタイプの配位子であり、ここでCyの前記1つ以上の置換基は、ハロゲン、ヒドロカルビル、シリル、およびゲルミル残基からなる群から個別に選択され、前記基は任意選択により場合によっては1つ以上のハロゲン、アミド、ホスフィド、アルコキシ、またはアリールオキシ残基で置換されていてもよい、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
前記ジエンが、独立してヒドロカルビル、シリル、およびハロゲン化カルビルからなる群から選択される1つ以上の基で任意選択により場合によっては置換されていてもよいC4−40ジエンである、請求項1または2に記載の触媒系。
【請求項4】
前記イミン炭素原子にSubを結合している前記14族原子が、芳香族炭素原子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項5】
前記イミン炭素原子にSubを結合している前記14族原子が、脂肪族炭素原子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項6】
Subが−NRという一般式で表され、RおよびRは、脂肪族ヒドロカルビル、ハロゲン化脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビル、およびハロゲン化芳香族ヒドロカルビル残基からなる群から個別に選択されており、Rが任意選択により場合によってはRまたはSubと共に複素環構造を形成していてもよい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項7】
少なくとも1種の脂肪族または芳香族ヒドロカルビルC2−20オレフィンからなるポリマーの製造方法であって、前記少なくとも1種の脂肪族または芳香族オレフィンを、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒系と接触させることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記ポリマーがEPDMである、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−515120(P2013−515120A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545286(P2012−545286)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070331
【国際公開番号】WO2011/076772
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511242409)
【Fターム(参考)】