説明

アミド結合を形成し得る芳香族部分を含む異方性の溶融体を形成することができる溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)

【目的】異方性の溶融相を形成することができ、約300℃から約400℃という比較的低温で溶融加工が可能なポリ(エステル−アミド)を得る。
【構成】本発明のポリ(エステル−アミド)は、分子内に夫れぞれ指定した割合で下記の繰り返し単位を有する:(a) 4−ヒドロキシ安息香酸の部分(b) 6−オキシ−2−ナフトイルの部分(c) 4,4′−ビフェノールの部分(d) テレフタロイルの部分、及び(e) アミド結合を形成できる芳香族の部分。好ましくは、アミド結合を形成できる部分は、p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、N−アセチル−p−アミノフェノール等から誘導される。得られるポリ(エステル−アミド)は、溶融状態で異方性の液晶的性質を示すことからも予想されるように高度に配向した分子構造を有する為に、ポリマーは化学的ならびに物理的性質に優れ、更には驚くべきことに約300℃から約400℃と言うような低い温度で溶融加工を行なうことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に高性能の液晶ポリエステル樹脂に関し、更に詳しく言えば、4−オキシベンゾイル、6−オキシ−2−ナフトイル、テレフタロイル、ビフェノールとアミド結合を形成し得る芳香族部分(moiety)から誘導される異方性の溶融体を形成することができる溶融−加工可能なポリエステル−アミドに関する。
【背景技術】
【0002】
異方性の溶融体を形成することができる液晶の、又は熱互変性の(サーモトロピック)ポリエステルは、フイルム、繊維、成型品などの製造に有用な高性能の物質である。これらの物質は、商業レジンと比較して典型的に優れた耐熱性と機械的性質を示すけれども、若しも組成を慎重にコントロールしなければ物質は手に負えない、扱いにくい代物になり勝ちである為に屡、合成することも溶融加工することも困難になるか、それとも又は、若しも成分の比率および/または選択が臨界的範囲内に入っていなければ、前述したような望ましい性質が失われることがある。
【0003】
従来からも、液晶のポリエステルの加工性および/または機械的性質を改善する為に種々の試みが為されてきたが、その試みの一つにこれらのポリマーにアミド結合を組み入れる方法がある。
【0004】
米国特許第4,282,842号は、芳香族ジカルボン酸、エチレングリコール、及び p−アシルアミノ安息香酸から調製されたポリ(エステル−アミド)を開示している。同じような開示は日本国特許公開54−125271号にも見える。ヨーロッパ特許出願No.79301276(公開No.0 007715)は、p−アミノフェノールと p−N−メチルアミノフェノールから選ばれる一つ又は一つ以上のアミノフェノールの残基と一つ又は一つ以上のジカルボン酸の残基から成る溶融加工できる繊維−形成性のポリ(エステル−アミド)を開示する。開示されたポリ(エステル−アミド)の残りを占めるのは、アミノフェノール又はその酸のいずれかから誘導される二官能価の残基と不斉性の二官能価の残基である。線状の二官能価の残基と不斉性の二官能価の残基は、分解温度以下で溶融し、溶融体の中に光学的異方性を示す生成物を与えるような物が選ばれる。
【0005】
米国特許第3,859,251号は、非環式の脂肪族ジカルボン酸から誘導される部分が50〜100モルパーセントから成るポリ(エステル−アミド)を開示している。
【0006】
米国特許第3,809,679号は、ジカルボン酸二ハロゲン化物と特定の式のジヒドロキシ化合物から誘導される反復構造単位10〜90モルパーセントと、ジカルボン酸二ハロゲン化物と特定の式のジアミノ化合物から誘導される反復構造単位10〜90モルパーセントから構成されるポリ(エステル−アミド)を開示する。そこに記述されたポリ(エステル−アミド)は、詳しく言えば、本発明のポリ(エステル−アミド)に含まれる6−オキシ−2−ナフトイル部分のように芳香族ヒドロキシ酸から誘導される部分を含んでいない。
【0007】
ここに参考として引用する本願と共に譲渡された米国特許第4,330,457号は、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ジカルボン酸、及びアミド結合を形成できる芳香族モノマーから誘導される異方性の溶融相を形成することのできる溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)を開示している。得られるポリ(エステル−アミド)は大凡そ400℃よりも低い溶融温度を示す。
【0008】
その他のポリ(エステル−アミド)が、米国特許第4,966,956号、同4,355,132号、同4,339,375号に開示され、特許請求されている。米国特許第4,966,956号は、4−オキシベンゾイル、ビフェノール、アミド−形成モノマー及びテレフタロイルかイソフタロイル部分のいずれか一つから成る四成分ポリ(エステル−アミド)を教示している。
【0009】
ここに参考として引用する共に譲渡された米国特許第4,473,682号は、比較的低濃度の6−オキシ−2−ナフトイル部分、4−オキシベンゾイル部分、4,4′−ジオキシビフェニル部分、及びテレフタロイル部分から成る異方性の溶融体を形成することができる溶融加工可能なポリエステルを開示する。このポリエステルは例外的に非常に取り扱い易い異方性の溶融相を形成する。
【0010】
ここに参考として引用する共に譲渡された米国特許第4,351,917号は、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、アミド結合を形成し得る芳香族部分、及び随意的には芳香族ヒドロキシ酸から誘導される他の芳香族部分から誘導される異方性の溶融相を形成することのできる溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)を開示する。
【0011】
ここに参考として引用する共に譲渡された米国特許第4,351,918号は、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、他の芳香族ヒドロキシ酸、炭素環式ジカルボン酸、及びアミド結合を形成することのできる芳香族モノマーから誘導される異方性の溶融相を形成し得る溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)を示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による組成物は、耐熱性、機械的性質および比較的低温度での加工性のユニークな組み合わせを有する。
【0013】
大凡そ400℃以下の温度において異方性の溶融相を形成することのできる溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)が提供される。
【0014】
本発明のポリ(エステル−アミド)は、式I、II、III、IV、V但し、式Iは、
【化1】

であり;式IIは、
【化2】

であり;式IIIは、
【化3】

であり;式IVは、
【化4】

であり、この場合、上の式において、Arは少なくとも一つの芳香族環を含む二価の部分であり、YとZは二価の有機または無機のラジカルであり、互いに同一であっても異なっても良く、NH又はNR(但し、Rは1〜6個の炭素原子を含むアルキル部分又はアリール部分である)から構成される群から選ばれる少なくとも一員であり;式Vは芳香族のジ−オイル(di−oyl)先駆体の残基である;以上の式I、II、III、IV、Vの繰り返し部分を含む。
【0015】
一般的に言えば、本発明のポリ(エステル−アミド)は、部分Iを約1〜約15モルパーセント、部分IIを約20〜約70モルパーセント、部分IIIを約5〜約70モルパーセント、部分IVを約1〜約20モルパーセント、そして部分Vを約5〜約40モルパーセント含む。
【0016】
典型的には、部分Iを約2.5〜約10モルパーセント、部分IIを20〜70モルパーセント、部分IIIを5〜25モルパーセント、部分IVを2.5〜15モルパーセント、そして部分Vを2.5〜15モルパーセント含む。好ましい組成物は、部分Iを約2.5〜7.5モルパーセント、部分IIを少なくとも50モルパーセント、部分IIIを約5〜約20モルパーセント、部分IVを約2.5〜10モルパーセント、そして部分Vを約15〜25モルパーセント含む。
【0017】
好ましい部分IVは、p−アミノフェノール又はN−アセチル−p−アミノフェノールから誘導される
【化5】

である。
【0018】
部分Vは、最も好ましくはテレフタロイル部分であるが、しかし、イソフタロイル、テレフタロイル又はその混合物から選ぶこともできる。
【0019】
発明による溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)は約350℃以下で異方性の溶融相を形成することができ、約300℃〜約400℃の温度範囲で溶融−加工を受けることができる。発明による溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)は、ペンタフルオロフェノールの中に60℃で濃度0.1重量パーセントに溶解した時に、約1.0〜12.0dl/gの範囲にある内部粘度を示し、毛細管レオメーターの中で365℃の温度で剪断速度103/秒に於いて測定して約50〜1500ポワズの範囲の溶融粘度を示すだろう。
【0020】
発明による組成物は、後述する実施例から明らかになるように繊維および成型品などの造形品を製造するのに有用である。
【好ましい実施態様の説明】
【0021】
本発明のポリ(エステル−アミド)は5つの反復部分を含み、それらがポリ(エステル−アミド)の中で組み合わせられた時に、大凡そ400℃以下、好ましくは大凡そ370℃以下の温度で例外的に非常に扱い易い異方性の溶融相を形成することが見出だされた。(例えば、特に好ましい具体例では、大凡そ350℃で)。ポリ(エステル−アミド)溶融体の吸熱量(Tm)は、20℃/分の昇温速度に於いて反復走査を用いた示差走査型熱量計(DSC)の使用と、DSCの溶融体転移のピークを観測することによって確かめられた。本発明のポリ(エステル−アミド)は、それから溶融押出された繊維がNi(ニッケル)フイルターを通したCuKα帯のX線照射とフラットな平板カメラを用いてポリマーの結晶物質に特有のX線回折パターンを示すという意味で結晶と考えられるかも知れない。同じくまた、溶融体の中で異方性の性質(即ち、液晶の性質)を現わす能力があるから、ポリ(エステル−アミド)は溶融加工すると高度に配向した分子構造を持つ製品を容易に形成することができる。そのような製品は異常に高い靭性と弾性率を示すことが見出だされた。好ましいポリ(エステル−アミド)は、大凡そ320℃〜390℃の範囲の温度で(例えば、大凡そ345℃〜390℃において)溶融加工を行なうことができる。
【0022】
当該技術に熟練した人々なら容易に分かるであろうように、本発明は決して下記の実施例によって限定されるものではない。発明は、特にアミド結合を与えるN−アセチル−p−アミノフェノールを例に説明されるけれども、そのような結合は、p−アミノフェノール、p−N−メチルアミノフェノール、p−フェニレンジアミン、N−メチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジメチル−p−フェニレンジアミン、m−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニルエーテル、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニル メタン、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニル エタン、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニル スルホン、4−アミノ−4′−ヒドロキシジフェニル スル フィッド、4,4′−ジアミノフェニル スルフィッド (チオジアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4′−エチレンジアニリン、又は4,4′−ジアミノジフェノキシエタン、並びに3,4′−ジアミノフェニルX、3−アミノ−4′−ヒドロキシフェニルX、3−ヒドロキシ−4′−アミノジフェニルX(但し、Xはスルフィッド、スルホン、エーテル及びメタンから構成される群から選ばれる)からも誘導することができる。
【0023】
本発明のポリ(エステル−アミド)には、成型品を造る時には随意的ながら、ポリマーの全重量を基準として大凡そ1〜50重量パーセント(好ましくは、大凡そ10〜30重量パーセント)の固体の充填剤(材)および/または強化剤(材)を配合することができる。代表的な充填剤物質には、珪酸カルシウム、シリカ、クレー、タルク、雲母、ポリテトラフルオロエチレン、黒鉛、アルミナ・三水和物、炭酸アルミニウムナトリウム、バリウムフェライト、ウァラストナイト(珪灰石)等がある。代表的な強化用繊維には、ガラス繊維、グラファイトカーボン繊維、無定形炭素繊維、合成ポリマーの繊維、アルミナ繊維、珪酸アルミニウム繊維、酸化アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、岩綿繊維、スチール繊維、タングステン繊維、又は縦横比が3:1以上の珪灰石繊維などがある。
【0024】
[実施例I]
この実施例は、60.5:5.0:12.5:17.5:5.0の割合の4−ヒドロキシ安息香酸(“HBA")、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(“HNA")、4,4′−ビフェノール(“BP")、テレフタル酸(“TA")およびN−アセチル−p−アミノフェノール(“APAP")の6モル反応混合物(5.0モル%HNAと5.0モル%APAP)からのポリ(エステル−アミド)の調製を例示する。
【0025】
C字型の316ステンレス鋼のガス導入管、熱電対、凝縮器に接続したVigreuxカラム及び受け器を備えた2リットル容の“Slim Jim"フラスコに下記の化合物を装入した:(a) 496.8gの4−ヒドロキシ安息香酸(3.6モル)(b) 56.4gの6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(0.3モル)(c) 139.5gの4,4′−ビフェノール(0.75モル)(d) 174.3gのテレフタル酸(1.05モル)(e) 45.3gのN−アセチル−p−アミノフェノール(0.3モル)フラスコを砂浴の中に浸け、精確に温度を制御する為の手段を備え付けた。フラスコを減圧しながら酸素を完全に一掃し、窒素で三回フラッシュし砂浴の中でゆっくりと加熱し、次いで(f) 酢酸中に酢酸カリウムを1.2%(重量/容積)含む溶液(60ppmのカリウムイオン)の10mlを触媒として598.8gの無水酢酸と一緒に添加した。酢酸が蒸留し始めたら、それを目盛りの付いたシリンダーの中に集めた。
【0026】
フラスコの内容物を75rpmの回転速度で攪拌(トルク=13mV)しながら温度152℃に加熱した。111分間に亙る加熱が終わった時点で、110mlの酢酸が捕集された。次いで、重合温度を215分間に亙って徐々に350℃まで上げた。その時点では、合計660mlの酢酸が捕集されていた。攪拌しながら350℃でフラスコ内の圧力を1.0mm水銀柱以下に真空減圧した。ポリマーは、希望するΔトルクに達する迄(即ち、この実施例では、Δトルク=50mV)350℃で攪拌した。この期間中に、ポリマー溶融体は粘度が増加し続け、残りの酢酸がフラスコから回収された。
【0027】
得られたポリ(エステルアミド)は、ペンタフルオロフェノールに溶かした濃度0.1重量パーセントの溶液中で60℃で測定した内部粘度(I.V.)が9.1dl/gであり、直径が0.015吋、長さが1.0吋のオリフィスを使用して毛細管レオメーターの中で345℃で測定した剪断速度103/秒に於ける溶融粘度(M.V.)が581ポアズであった。
【0028】
I.V.=ln(ηrel)/c (但し、ln=自然対数)上の式で、c=溶液の濃度(0.1重量パーセント)で、ηrel=相対粘度である。相対粘度は毛細管粘度計の中のポリマー溶液の流れ時間を純溶媒の流れ時間で割り算することによって測定した。ポリマーを示差走査型熱量測定(昇温速度:20℃/分)に掛けた時、343℃に溶融吸熱(Tm)を示した。ポリマーの溶融体は光学的に異方性であった。
【0029】
[実施例II〜X]
前述の実施例Iに従って、上記の5つの成分の比率を変えて9つの追加の組成物を調製した。発明組成物に対する組成、融点、I.V.(内部粘度)、M.V.(溶融粘度)は下の表Iに示す。特に指示しない限り、ポリマーの性質は実施例Iの場合と同様にして測定した。
【0030】
【表1】

[比較実施例A]
この実施例は、60.0:3.5:18.25:18.25の割合の4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4′−ビフェノール、及びテレフタル酸の7モル反応混合物(3.5モル%のHNAと0.0モル%のAPAP)からのポリエステルの調製を例示する。下記の成分をフラスコに装入した以外は実施例Iと事実上、同じ手順を繰り返した:(a) 579.6gの4−ヒドロキシ安息香酸(4.2モル)(b) 46.1gの6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(0.24モル)(c) 237.6gの4,4′−ビフェノール(1.28モル)(d) 212.1gのテレフタル酸(1.28モル)(e) 酢酸に溶解した酢酸カリウムの1.2%(重量/容積)濃度の溶液10ml(カリウムイオン60ppm)を触媒として598.8gの無水酢酸(2.5%過剰)と一緒に添加した。希望するΔトルクが50mVに達する迄攪拌を続け、反応温度は355℃であった。
【0031】
得られた100%芳香族のポリマーは、ペンタフルオロフェノールの中で60℃で測定したI.V.(内部粘度)が9.2dl/gであり、毛細管レオメーターの中で365℃で測定した剪断速度103/秒に於けるM.V.(溶融粘度)は492ポアズであった。ポリマーをDSCに掛けた処、376℃のTmを示した。
【0032】
[比較実施例B]
この実施例は、50.0:12.5:12.5:20.0:5.0の比率の4−ヒドロキシ安息香酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4′−ビフェノール、及びN−アセチル−p−アミノフェノールの6モルの反応混合物からのポリ(エステル−アミド)の調製を例示する。
【0033】
下記の成分をフラスコに装入した:(a) 3.0モル(414.0g)の4−ヒドロキシ安息香酸(b) 0.75モル(124.5g)のイソフタル酸(c) 0.75モル(124.5g)のテレフタル酸(d) 1.2モル(223.2g)の4,4′−ビフェノール(e) 0.3モル(45.3g)のN−アセチル−p−アミノフェノール、及び(f) 酢酸に溶解した酢酸カリウムを1.2%(重量/容積)濃度で含む溶液10ml(カリウムイオン60ppm)を触媒として600mlの無水酢酸(2.5%過剰)と一緒に添加し、350℃に加熱した。
【0034】
得られた100%芳香族のポリマーは、ペンタフルオロフェノールの中で60℃で測定したI.V.(内部粘度)が3.6dl/gであり、毛細管レオメーターの中で340℃で測定した剪断速度103/秒に於けるM.V.(溶融粘度)は500〜700ポアズであった。ポリマーをDSCに掛けた時に、281℃のTmを示した。
【0035】
(繊維の性質)
実施例IV、V、及び比較実施例Aの組成物から繊維を調製した。繊維をオーブンの中で窒素雰囲気下に300℃で8時間熱処理した。靭性、伸び及び弾性率は、ASTM(アメリカ材料試験協会)の標準試験法D 3822−90に従って定義され、下の表IIに比較実施例Bの対応するデータと一緒に報告された。比較実施例Bでは、熱処理を230℃で2時間、その後に270℃で16時間というように段階的に行なった。実施例IV、V、Aで造られた繊維の繊度は大凡そ5デニールである。実施例Bのポリマーは紡糸するのが困難で、5デニールの繊維を得ることは出来なかったが、代わりに8.5デニールの繊維が造られた。
【0036】
【表2】

表IIから見られるように、本発明による組成物は、弾性率、靭性とも他の液晶ポリマーよりも優れた値を示している。この驚くべき、そして非常に有用な特性は、それらの組成物を高性能が求められる用途に特に適したものにする。
【0037】
以上、本発明を数々の実施例に関連して記述して来たが、当該技術に熟練した人々なら多くの色々な修飾が為し得るであろうことは明白である。そのような修飾は、総て付属する「特許請求の範囲」によってのみ限定され定義される本発明の精神と権利範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、II、III、IV及びV但し、式Iは
【化1】

であり、式IIは
【化2】

であり、式IIIは
【化3】

であり、式IVは
【化4】

であり、この場合、上の式において、Arは少なくとも一つの芳香族環を含む二価の部分(moiety)であり、YとZは二価の有機または無機のラジカルであって、互いに同一または異なっても良く、NH又はNR(但し、Rは炭素原子を1〜6個含むアルキル部分又はアリール部分である)から構成される群から選ばれる少なくとも一員を含み;そしてVは芳香族ジオイル(dioyl)先駆体の残基である;以上の式I、II、III、IV、Vの繰り返し部分を有し、約400℃以下の温度で異方性の溶融相を形成することができる溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)であって、該ポリ(エステル−アミド)が部分Iの約1モルパーセントから約15モルパーセント、部分IIの約20モルパーセントから約70モルパーセント、部分IIIの約5モルパーセントから約40モルパーセント、部分IVの約1モルパーセントから約20モルパーセント、及び部分Vの約5モルパーセントから約40モルパーセントを含むことを特徴とする前記の溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項2】
部分IVが
【化5】

である請求項1記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項3】
部分IVが、p−アミノフェノール又はN−アセチル−p−アミノフェノールから誘導される請求項2記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項4】
部分IVがN−アセチル−p−アミノフェノールから誘導される請求項3記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項5】
部分Vがテレフタロイル部分(moiety)である請求項1記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項6】
部分Vがイソフタロイル、テレフタロイル又はその混合物から構成される群から選ばれる請求項1記載のポリ(エステル−アミド)。
【請求項7】
約350℃の温度で異方性の溶融相を形成することができる請求項1記載の溶融−加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項8】
約300℃から約400℃の温度範囲において溶融−加工を受けることができる請求項1記載の溶融−加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項9】
部分I、II、III、IV及びVの芳香族環が事実上、環上で置換されていない請求項1記載の溶融−加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項10】
請求項1記載のポリ(エステル−アミド)から溶融紡糸された繊維。
【請求項11】
請求項1記載の溶融−加工可能なポリ(エステル−アミド)から成る射出成型品。
【請求項12】
請求項1記載のポリ(エステル−アミド)から本質的に構成される造形品。
【請求項13】
60℃でペンタフルオロフェノールに0.1重量パーセントの濃度で溶解した時に約1.0dl/gから約12.0dl/gの内部粘度を現わす請求項1記載の溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項14】
毛細管レオメーターの中で365℃で測定して103/秒の剪断速度において約50ポアズから1500ポアズの範囲にある溶融粘度を現わす請求項1記載の溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項15】
式I、II、III、IV、V但し、式Iは
【化6】

であり;式IIは
【化7】

であり;式IIIは
【化8】

であり;式IVは
【化9】

であり;この場合、上の式において、Arは少なくとも一つの芳香族環を含む二価の部分、YとZは二価の有機または無機のラジカルでって、それらは互いに同一でも異なっても良く、NHまたはNR(但し、Rは炭素原子を1〜6個を含むアルキル部分またはアリール部分である)から構成される群から選ばれる少なくとも一員を含み;Vは芳香族ジ−オイル先駆体またはテレフタロイルと他の芳香族ジ−オイルの混合物の残基である;以上の式I、II、III、IV、Vの繰り返し部分から本質的に構成され、大凡そ400℃以下の温度において異方性の溶融相を形成することができる溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)であって、該ポリ(エステル−アミド)の中で、部分Iは約2.5モルパーセントから約10モルパーセントの量で存在し、部分IIは約20モルパーセントから約70モルパーセントの量で存在し、部分IIIは約5モルパーセントから約25モルパーセントの量で存在し、部分IVは約2.5モルパーセントから約15モルパーセントの量で存在し、部分Vは約10モルパーセントから約25モルパーセントの量で存在することを特徴とする前記の溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項16】
部分Vがテレフタロイルから構成される請求項15記載の溶融−加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項17】
部分IVがN−アセチル−p−アミノフェノールから誘導される請求項15記載の溶融−加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項18】
部分Iが約2.5モルパーセントから約7.5モルパーセントの量存在し、部分IIが少なくとも約50モルパーセントの量存在し、部分IIIが約5モルパーセントから約20モルパーセントの量存在し、部分IVが約2.5モルパーセントから約10モルパーセントの量存在し、そして部分V該約15モルパーセントから約25モルパーセントの量存在する請求項15記載の溶融加工可能なポリ(エステル−アミド)。
【請求項19】
請求項15記載の組成物から紡糸された繊維。
【請求項20】
請求項15記載の組成物から形成された造形品。

【公開番号】特開2006−176797(P2006−176797A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77069(P2006−77069)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【分割の表示】特願平4−97795の分割
【原出願日】平成4年4月17日(1992.4.17)
【出願人】(590000330)エイチエヌエイ・ホールディングス・インコーポレーテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】HNA Holdings,Inc.
【Fターム(参考)】