アミド類、アミド−イミド類、およびこれらのポリマー類合成の新規な逐次的、自己反復的反応(SSRR)中間体として使用するためのアリールN−アシル尿素の、アリールイソシアナート類またはアリールカルボジイミド類からの合成
【課題】高選択的かつ高収率でアリールN−アシル尿素を合成する方法、およびその結果物の熱反応、アリールアミド類およびポリアミド類の段階的合成への適用を提供する。
【解決手段】アリールカルボジイミド(CDI)をカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させて、アリールN−アシル尿素を得る。アリールCDIは、相当するイソシアナートをCDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより製造する。
【解決手段】アリールカルボジイミド(CDI)をカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させて、アリールN−アシル尿素を得る。アリールCDIは、相当するイソシアナートをCDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アシル尿素の温和な条件下での高選択的かつ高収率な合成に関し、アミド類、アミド−イミド類、および、これらのポリマー類(ポリアミド、ポリアミド−イミド、およびポリアミド−イミドエラストマーなど)合成の、逐次的、自己反復的な反応(以下、略して「SSRR」反応または「SSRR」プロセスと称する)中間体としての、得られたアリールN−アシル尿素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボジイミド類(CDI)は、イソシアナート類から容易に合成でき(非特許文献1参照)、カルボン酸類と反応して酸無水物類(無水物類)、N,N’−置換尿素類(尿素類)、およびN−アシル−N,N’−二置換尿素類(N−アシル尿素類)の混合物を生成することが知られている。Khorana(非特許文献2および3参照)、およびSilverstein(非特許文献4および5参照)による初期の機構的な研究により、2種の併発反応経路が、観察される生成物の多様性の要因となっている可能性が示された。すなわち、O−アシルイソ尿素中間体が最初に形成され、この中間体は、N−アシル尿素に転位するか、別の酸分子とさらに置換反応して対応する尿素類および無水物類を最終生成物として生成するか、のいずれも可能である。
【0003】
以前の文献は、芳香族CDI類はカルボン酸類で処理するとN−アシル尿素類を生成しやすいようであるが、脂肪族CDI類は無水物類とN,N’−二置換尿素類の混合物を生成する結果となることが多いことを示唆していた(非特許文献6および7参照)。近年の事実からは、フェロセンカルボン酸を芳香族CDIに選択的に付加させて、N−アシル尿素を主生成物として生じさせることができることが分かった(非特許文献8参照)。Lauによる別の報告では(非特許文献9参照)、固相担体上での二置換または三置換N−アシル尿素類の合成でも高い収率が得られた。
【非特許文献1】Monagle, J. J.; Campbell, T. W.; Mcshane, H. F. J. Am. Chem. Soc., 1962, 84, 4288
【非特許文献2】Khorana, H. G. Chem. Rev., 1953, 53, 145
【非特許文献3】Smith, M.; Moffatt, J. G.; Khorana, H. G. J. Am. Chem. Soc., 1958, 80, 6204
【非特許文献4】Detar, D. F.; Silverstein, R. J. Am. Chem. Soc., 1966, 88, 1013
【非特許文献5】Detar, D. F.; Silverstein, R. J. Am. Chem. Soc., 1966, 88, 1020
【非特許文献6】Mikolajczyk, M.; Kielbasinski, P. Tetrahedron, 1980, 37, 233
【非特許文献7】Volonterio, A.; Arellano, C. R.; Zanda, M. J. Org. Chem., 2005, 70, 2161
【非特許文献8】Schetter, B.; Speiser, B. J. Organomet. Chem., 2004, 689, 1472
【非特許文献9】Rave, J.; Ankersen, M.; Begtrup, M.; Lau, J. F. Tetrahedron Lett., 2003, 44, 6931
【非特許文献10】Schotman, A. H. M. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 1991, 110, 319
【非特許文献11】Schotman, A. H. M.; Mijs, W. J. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 1992, 111, 88
【非特許文献12】Schotman, A. H. M.; Weber, T. M. J.; Mijs, W. J. Macromol. Chem. Phys., 1999, 200, 635
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イソシアナートおよびアミドへの、N−アシル尿素の加熱による変換については多くの文献があるが(非特許文献10〜12参照)、N−アシル尿素の加熱分解による、イソシアナートからCDI、さらにその後のCDIからアミドへのオーバーオールの変換については、合成中間体としても、潜在的なイソシアナート源としても、まだ十分には活用されていない。副生成物である尿素および無水物による不純物の混入は、N−アシル尿素の不純物のない単離を妨げるおそれがある。これまでのところ、イソシアナート前駆体または単離可能なポリアミド合成の中間体としてのN−アシル尿素の高収率の合成方法は、まだ開発されていない。したがって、本発明は、アリールN−アシル尿素類の、高選択的かつ高収率な合成方法、その結果物の熱反応、およびアリールアミド類およびポリアミド類の段階的合成への適用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の目的は、アリールCDIとカルボン酸を約120℃未満の温度で反応させてアリールN−アシル尿素を得る工程を含む、前記アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、アリールポリ−CDIを、カルボン酸、ジ−カルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させて、アリールポリ−N−アシル尿素を得る工程を含む、前記アリールポリ−N−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を経由して、約120℃から約280℃の温度でCDI触媒およびカルボン酸の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールN−アシル尿素を生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、中間生成物であるアリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
b)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
c)前記アリールCDIと前記カルボン酸とを反応させて前記アリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程c)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を経由して、約120℃から約280℃の温度およびCDI触媒の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIとカルボン酸とを反応させてアリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、
b)前記アリールN−アシル尿素を、生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、アリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
c)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程a)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の目的は、下記式:
【化1】
を有するアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIと無水トリメリット酸とを反応させて下記式:
【化2】
を有する無水物官能性N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記無水物官能性N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して下記式:
【化3】
を有する酸官能化エステル−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記酸官能化エステル−アシル尿素を、CDI触媒の存在下で約120℃から約280℃の温度に加熱して、アリールイソシアナートと下記式:
【化4】
を有する酸−アミド誘導体とを生成させ、同時に、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を起こさせて前記アミド−イミドを生成させる工程と、
を含み、
前記逐次的、自己反復的な反応が3種の逐次的な工程の反復を含み、前記3種の逐次的な工程が、
i)前記アリールイソシアナートを、前記CDI触媒の存在下でアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
ii)前記アリールCDIと前記酸−アミド誘導体とを反応させて、下記式:
【化5】
を有するアシル尿素を生成させる工程と、
iii)工程ii)で得た前記アシル尿素を、生産物である前記アミド−イミドと、前記アリールイソシアナートとに加熱分解させる工程と、
を含む、方法を提供することである。
【0010】
本発明の最後の目的は、下記規則的な構造式
【化6】
(式中、nは1から24の整数である)を有するポリ(アミド−イミド)を合成する方法であって、
a)下記式:
【化7】
を有するポリ−CDIと無水トリメリット酸とを反応させて、下記式:
【化8】
を有する対応するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記ポリ−N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して、開環した無水物官能基を有する下記式:
【化9】
のポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記反応混合物を約120℃から約280℃の温度に加熱して、上述した逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を起こさせて、前記ポリ(アミド−イミド)を生成させる工程と、
を含む方法を提供することである。
【0011】
本発明の多様な利点および目的が、以下の記述および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
最初に、本発明は、温和な条件下で、アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供する。
【0013】
スキーム1は、CDI(1)およびカルボン酸(2)からのN−アシル尿素(5)の合成と、可能性のある副生成物を示している。2種の併発反応経路が存在する。O−アシルイソ尿素中間体が最初に形成され、この中間体は、N−アシル尿素(5)に転位するか、別の酸分子とさらに置換反応して対応する尿素(4)および無水物(3)を最終生成物として生成するか、のいずれも可能である
【0014】
【化10】
【0015】
CDI反応の選択性の研究に基づいて、カルボン酸類を2種のCDIモデル化合物と別々に反応させた。すなわち、カルボン酸類を、脂肪族CDIとしてのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、および、フェニルイソシアナートと1,3−ジメチル−3−ホスホレンオキシド(DMPO)などのCDI触媒とから合成した芳香族CDIとしてのジフェニルカルボジイミド(DPCDI)と反応させた。
【0016】
この反応において、本発明者らは、CDI反応における異なる経路の存在を示唆する、特徴のある2種の生成物タイプを見出した。DCCを出発物質として用いて、安息香酸および酢酸などのカルボン酸と反応させると、この反応は、無水物(3)および尿素(4)を主生成物として与えた。反応混合物中には、N−アシル尿素(5)が低い収率で観察された。その他のカルボン酸類も、DCCで処理した場合はN−アシル尿素類の収率がわずかであった。
【0017】
言うまでもなく、N−アシル尿素(5)の選択性は、DCCの代わりにDPCDIを使うと格段に高まった。初期のイソウレアのO原子からN原子へのアシル基の転位が優勢となるようであった。例えば、DPCDIを安息香酸および酢酸などのカルボン酸で処理すると、室温でN−アシル尿素(5)がかなり高収率で得られ、副生成物の生成(無水物およびジフェニル尿素)はごく少量であった。さらに、DPCDIと、電子吸引性または電子供与性の置換基を有する芳香族カルボン酸類との反応は、対応するN−アシル尿素類を非常に高い選択性で生成した。
【0018】
N−アシル尿素が、約120℃未満では安定であるが、より高い温度では分解してイソシアナート類とアミド類を含むフラグメントに分解されることも知られている。
【0019】
したがって、本発明は、アリールCDIとカルボン酸を約120℃未満の温度で反応させてアリールN−アシル尿素を得る工程を含む、アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供する。
【0020】
本発明の方法は、好ましくは、アリールN−アシル尿素を75%を超える選択性、より好ましくは85%を超える選択性で、かつ、70%を超える収率、より好ましくは80%を超える収率で合成することができる。安息香酸をDPDCIで処理した場合、N−アシル尿素の収率および選択性は、それぞれ80%および93%であった。これらの結果は、本発明が、アリールイソシアナート類を出発物質として使って、温和な条件下、高収率かつ高選択的にアリールN−アシル尿素類を合成することができることを示している。
【0021】
より一般的な観点では、どのようなアリールCDIでも本発明を実施するために使うことができる。好適なアリールCDIとして、これだけには限られないが、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲンでいずれか一方または双方のフェニル基が置換されていてもよい、ジフェニルCDIが挙げられる。アリールCDIの例として、o−トルエンイソシアナート、p−トルエンイソシアナート、o−ニトロイソシアナート、p−クロロイソシアナート、p−メトキシイソシアナート、p−ビフェニルイソシアナート、およびデカヒドロナフチルイソシアナートが挙げられる。
【0022】
アミノ酸またはヒドロキシ酸を除いて、その他の官能化された酸は、所望の本発明のアシル尿素類を合成するカルボン酸として問題なく使用することができる。使用するカルボン酸の種類には特に制限は無い。脂肪族カルボン酸類も芳香族カルボン酸類も本発明の実施のために使用でき、芳香族カルボン酸類は電子吸引性または電子供与性の置換基を有していてもよい。好適なカルボン酸として、これだけには限られないが、酢酸および安息香酸などのモノ−カルボン酸類、アジピン酸およびアゼライン酸などのジ−カルボン酸類、その他の長鎖脂肪族二価酸類、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族二価酸類、無水トリメリット酸などの二価酸類または酸無水物、無水物類に由来する多価酸類、酸無水物類、および多価酸無水物類、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
本発明の例として、酸または無水物をその分子構造に有するトリメリット酸(または無水トリメリット酸)は、酸の側でのみCDIと反応し、無水物の側は維持される。この状況は、その付加体の無水物部分を、以下に論じる更なる反応のために操作することを可能にする。このようにして、本発明は、より高い熱安定性および特性を有すると思われる、規則的な構造の反復を有するポリマーを段階的に調製する重合反応を提供する。
【0024】
当業者に周知であるように、本発明で使用するこのアリールCDIは、CDI触媒の存在下でアリールイソシアナートを触媒的に変換することによりあらかじめ合成することができる。好ましくは、この反応は無水テトラメチレンスルホン(TMS)中で行う。しかし、その他の適切な溶媒を使うこともできる。好適な溶媒として、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる。
【0025】
アリールイソシアナートの種類には特に制限が無い。好ましいアリールイソシアナートとして、これだけに限られないが、アリールモノ−イソシアナート、アリールジ−イソシアナート、アリールポリイソシアナート、およびこれらの混合物が挙げられる。好適なアリールイソシアナートとして、フェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)、p−フェニレンジイソシアナート(PPDI)、ポリマー状MDI、または上述のうち1種または複数種から合成されるイソシアナートプレポリマー類が挙げられる。CDI触媒の種類についても多数の文献があり、当業者に周知である。好ましいCDI触媒として、これだけに限られないが、3−メチル−3−ホスホレンオキシド(MPO)、1,3−ジメチル−3−ホスホレンオキシド(DMPO)、1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホリジン、トリフェニルアルシンオキシド、および、共に本発明で参照により取り込まれている文献である、Tetrahedron Report R101 in Tetrahedron Vol. 37, pages 233~284, (1981)の235ページ、およびAngew.Chem. Int. Ed. Vol. 1, 621 (1962)に記載されている化合物などの、リン化合物および環状リン化合物の種々の有機誘導体が挙げられる。
【0026】
本発明はまた、アリールポリ−CDIを、カルボン酸、ジ−カルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させて、アリールポリ−N−アシル尿素を得る工程を含む、前記アリールポリ−N−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供する。上述したアリールCDI類と同様に、アリールポリ−CDIは、アリールジイソシアナート類、アリールポリ−イソシアナート類、またはこれらのイソシアナート類を混合して調製される混合物から、従来技術を用いて調製することができる。
【0027】
上述したように、アリールN−アシル尿素は、約120℃までは熱的に安定であること、および、より高い温度ではイソシアナート類とアミド類に急速に変換されることが知られている。したがって、本発明はさらに、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を経由して、約120℃から約280℃、好ましくは約120℃から約270℃、さらに好ましくは約140℃から約250℃の温度で、CDI触媒およびカルボン酸の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する、新規かつ効果的な方法であって、
a)アリールN−アシル尿素を生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、中間生成物であるアリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
b)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
c)前記アリールCDIと前記カルボン酸とを反応させて前記アリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程c)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法を提供する。
【0028】
スキーム2に示すように、SSRRプロセスは、3種の自己反復的な段階からなる。第一段階は、アリールN−アシル尿素1モルの加熱分解であり、生産物としてのアミドまたはアミド−イミド1モルが生成し、同時にアリールイソシアナート1モルが生じる。第二段階は、アリールイソシアナート1モルのアリールCDI0.5モルへの触媒的変換である。最後に、第三段階は、アリールCDI0.5モルとカルボン酸とが新たなアリールN−アシル尿素0.5モルを単離可能な中間体として生成する反応である。したがって、このことは、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)により、1回の完全なサイクルで、アリールイソシアナート類50%が消費されてアミドまたはアミド−イミド50%が生じることを示す。十分なカルボン酸が供給された場合、同様の3段階反応が反復すると、結果的に、アリールN−アシル尿素類、アリールイソシアナート類、およびアリールCDI類が全て消費される。本発明者らは、反応性が非常に高いアリールイソシアナートまたはアリールCDI化合物を、可溶性のアリールN−アシル尿素中間体に一時的に変換できることを実証した。このアリールN−アシル尿素は、単離することができ、高融点のアミドまたはアミド−イミドに直接変換することができる。アリールイソシアナートとカルボン酸の直接反応と比較して、この自己反復的な反応は、利点として、より低い温度条件と、アミドまたはアミド−イミド合成におけるより高い選択性とを提供するようである。
【0029】
【化11】
【0030】
アリールN−アシル尿素、CDI触媒、およびカルボン酸は、無水テトラヒドロフラン(THF)中に溶解して、このSSRRプロセスを実施することが好ましい。しかし、その他の好適な溶剤として、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を使用することもできる。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる。
【0031】
本発明の別の実施態様では、上述したSSRRプロセスを、ワンポットの方法として、アリールCDIから直接出発させることができる。したがって、本発明はさらに、SSRRプロセスを経由して、約120℃から約280℃、好ましくは約120℃から約270℃、さらに好ましくは約140℃から約250℃の温度で、CDI触媒の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIとカルボン酸とを反応させてアリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、
b)前記アリールN−アシル尿素を、生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、アリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
c)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程a)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法を提供する。
【0032】
同様に、アリールCDIをCDI触媒の存在下でアリールイソシアナートを触媒的に変換することにより合成することができ、あるいは、上述した逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を直接アリールイソシアナートから出発させることもできる。どちらの方法でも、所望のアミドまたはアミド−イミドが生成するようにSSRRプロセスを起こさせるために、出発物質をいずれも、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラメチレンスルホン(TMS)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの適切な無水溶媒に溶解することが好ましい。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる
【0033】
本発明の一実施態様によれば、カルボン酸はR2の位置にイミド基を有していて、得られた生産物はアミド−イミドである。例えば、カルボン酸として5−イソインドリンカルボン酸を使い、アリールCDIがジフェニルCDIであると、得られる生産物は、下記式:
【化12】
を有するアミド−イミドである。
【0034】
本発明の別の実施態様によれば、アミド−イミドは、無水トリメリット酸などの、その分子構造中に酸または無水物を有する特定のカルボン酸から合成することもできる。この場合は、アリールN−アシル尿素、アリールイソシアナート、およびアリールCDIを含む全てのアリール化合物を消費するためにSSRRプロセス中で使われるカルボン酸は、無水トリメリット酸である。
【0035】
したがって、本発明はさらに、下記式:
【化13】
を有するアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIと無水トリメリット酸とを反応させて下記式:
【化14】
を有する無水物官能性N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記無水物官能性N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して下記式:
【化15】
を有する酸官能化エステル−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記酸官能化エステル−アシル尿素を、CDI触媒の存在下で約120℃から約280℃、好ましくは約120℃から約270℃、さらに好ましくは約140℃から約250℃の温度に加熱して、アリールイソシアナートと下記式:
【化16】
を有する酸−アミド誘導体とを生成させ、同時にSSRRプロセスを起こさせて前記アミド−イミドを生成させる工程と、
を含み、
前記逐次的、自己反復的な反応が3種の逐次的な工程の反復を含み、前記3種の逐次的な工程が、
i)前記アリールイソシアナートを、前記CDI触媒の存在下でアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
ii)前記アリールCDIと前記酸−アミド誘導体とを反応させて、下記式:
【化17】
を有するアシル尿素を生成させる工程と、
iii)工程ii)で得た前記アシル尿素を、生産物である前記アミド−イミドと、前記アリールイソシアナートとに加熱分解させる工程と、
を含む、方法を提供することである。
【0036】
同様に、アリールCDIをCDI触媒の存在下でアリールイソシアナートを触媒的に変換することにより合成することができ、あるいは、上述した逐次的、自己反復的な反応を、直接アリールイソシアナートから出発させることもできる。どちらの方法でも、所望のアミドまたはアミド−イミドが生成するようにSSRRプロセスを起こさせるために、出発物質をいずれも、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラメチレンスルホン(TMS)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの適切な無水溶媒に溶解することが好ましい。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる。さらに、当技術分野で知られているように、無水物/R−OHの反応は、トリエチルアミン(TEA)などの触媒の存在下で行うことができる。
【0037】
本発明では特に、N−アシル尿素は、約120℃から約180℃の温度でアミドおよびイソシアナートに分解した。したがって、反応温度を、約180℃から約280℃の温度範囲に上げ、例えば、約15分から約120分などの十分な時間加熱して、閉環反応を進行させ、かつ、アミド−イミドを生成させた。
【0038】
本発明によるSSRRプロセスは、ポリアミドの合成にもうまく適用することができた。例えば、本発明のポリアミドは、アリールポリ−CDIを、カルボン酸、ジ−カルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させてアリールポリ−N−アシル尿素を得て、さらに、前記アリールポリ−N−アシル尿素を、120℃を超える温度、好ましくは約140℃を超える温度に加熱して、ポリアミドおよびイソシアナートを生成させることにより合成することができる。したがって、本発明はさらに、下記規則的な構造式:
【化18】
(式中、nは1から24の整数である)を有するポリ(アミド−イミド)を合成する方法であって、
a)下記式:
【化19】
を有するポリ−CDIと無水トリメリット酸とを反応させて、下記式:
【化20】
を有する対応するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記ポリ−N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して、開環した無水物官能基を有する下記式:
【化21】
のポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記反応混合物を約120℃から約280℃、好ましくは約120℃から約270℃、さらに好ましくは約140℃から約250℃の温度に加熱して、上述したSSRRプロセスを起こさせて、前記ポリ(アミド−イミド)を生成させる工程と、
を含む方法を提供する。
【0039】
ポリ(アミド−イミド)の化学式中に示したnは、1から24の整数であることが好ましい。nが24より大きい場合、得られるポリ(アミド−イミド)は、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN−メチルピロリドン(NMP)などのいくつかの溶媒に可溶である。
【0040】
本発明のSSRRプロセスは、エーテル部分などの長鎖ソフトフラグメント(long chain soft fragment)を、1種または複数種の酸の少なくとも二価酸の部分に含有させることにより、ポリアミド−イミド(PAI)エラストマーの合成にも使用することができる。この態様において、全ての酸成分およびイソシアナート成分が、ワンポットの方法で互いに反応して、結果としてポリアミド−イミドエラストマーを得ることができる。あるいは、この態様において、1種の酸成分が最初にイソシアナート成分と反応し、その後の他の酸成分の添加により結果としてポリアミド−イミドエラストマーが得られる。例えば、本発明のポリアミド−イミド−エーテルエラストマーは、ジイソシアナート、ポリエーテル二価酸、およびアゼライン酸を共にワンポットの方法で反応させること、あるいは、最初にジイソシアナートをポリエーテル二価酸に反応させてイソシアナートを末端に有するプレポリマーを生成させ、その後にCDI触媒(例えばDMPO)およびアゼライン酸を添加すること、により合成することができる。その他の態様においては、長鎖ソフトフラグメントがイソシアナート成分中に含有されている場合、SSRRプロセスがポリウレタンエラストマーの合成に使うこともできることが理解できる。
【0041】
カルボジイミド触媒の存在下で、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)と一官能性フェニルイソシアナートとを16:1のモル比で反応させることにより、ポリ−CDIを合成することができることについては、当技術分野でこれまで多くの文献がある。例えば、Alberino,L.M.とFarrissey,W.J.の米国特許第3,929,733号(1975年)を参照されたい。したがって、この特許の全内容を、本明細書に参照として取り込む。
【0042】
同様に、前記合成方法は、所望する生産物を生成させるため、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラメチレンスルホン(TMS)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの適切な無水溶媒中で行うことが好ましい。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる。さらに、当技術分野で知られているように、無水物/R−OHの反応は、トリエチルアミン(TEA)などの触媒の存在下で行うことができる。
【0043】
本発明に従って、アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法、および、SSRRプロセスにおいてアリールN−アシル尿素を中間体として使用することにより、アミド、アミド−イミド、またはこれらのポリマー(例えば、ポリアミド類、ポリアミド−イミド類、およびポリアミド−イミドエラストマー類など)を合成する方法を、ワンポットの方法として行うことができる。これは、工業的な用途のために便利であり好都合である。
【0044】
さらに過度の工夫をすることなしに、上述の開示および以下に記述する実施例に基づいて、当業者が本発明を十分に利用することができると推定される。以下の実施例は、当業者が特許請求の範囲に記載されている方法をどのように実施することができるかの説明に役立つ実例として単に解釈されるべきであり、決して開示による権利を制限するものではない。
【実施例】
【0045】
〔概要〕
1HNMRおよび13CNMRスペクトルは、Varian Inova(200MHzまたは600MHz)で記録した。ケミカルシフトはδで示し、カップリング定数(J)はHzで示した。スペクトルは、アセトン−d6またはDMSO−d6などの溶媒中、室温で記録し、ケミカルシフトは溶媒シグナルとの相対で定めた。FT−IRは、Perkin Elmer spectrum one FT−IR spectrometerを使用して測定した。HPLCは、5μm球状粒子/100Åポアサイズカラム(Hypersil−100 C18)を使用して、MeCN/H2O=50/50を溶離液とし、流速0.5ml/分の条件および254nmのUV検出で測定した。示差走査熱量計(DSC)は、PerkinElmer Pyris 6装置を使用し、10℃/分の加熱速度および冷却速度で測定した。熱重量分析(TGA)は、PerkinElmer Pyris 1を使用し、窒素下、10℃/分の加熱速度で850℃まで行った。数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Jasco GPC、RI検出器)により測定し、ポリスチレン標準品により較正した。溶離液として、脱気したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を溶離液として使用し、流速1.0ml/分で測定した。
【0046】
〔実施例1〕
下記式:
【化22】
を有するアリールN−アシル尿素の合成。
フェニルイソシアナート(5g、42mmol)と1,3−ジメチル−3−ホスホレンオキシド(DMPO;0.15g)とを無水THF50mlに溶解し、窒素下、60℃で3時間加熱した。その後、無水トリメリット酸とブチルアミンとから合成した5−イソインドリンカルボン酸(2f)(5.19g、21mmol)を反応混合物に添加し、25℃で3時間攪拌した。表題の生成物は、1Lのヘキサンにより沈殿し(88%)、選択性は99%を超えた(表1に示した)。
1H−NMR(600 MHz, acetone) (ppm): 0.90 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.29 (sxt, J = 7.2 Hz, 2H), 1.58-1.63 (m, 2H), 3.59 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.12 (dt, J = 7.2, Hz, 1H), 7.25-7.37 (m, 5H), 7.45 (dd, J = 8.4, 0.6 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.75 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.91 (dd, J = 6.6, 1.8 Hz, 2H), 10.80 (bs, 1H);
13C−NMR(150 MHz, acetone) (ppm): 13.8, 20.6, 31.1, 38.3, 120.5, 120.6, 122.7, 123.3, 124.9, 129.1, 129.7, 129.8, 130.8, 132.7, 133.8, 134.1, 138.9, 139.5, 142.9, 152.5, 167.9, 172.4.
元素分析:計算値(C26H23N3O4)N, 9.52%; C, 70.73 %; H, 5.25 %
測定値 N, 9.76 %, C, 71.59 %, H, 5.65 %
融点:105.1〜105.8℃
【0047】
〔実施例2〜8〕
実施例1に記載した操作手順を繰り返すことにより、フェニルイソシアナートとDMPOとを使用して、表1に示した多様なカルボン酸と反応させて、対応するアリールN−アシル尿素を合成した。得られたアリールN−アシル尿素の選択性および収率を表1に示した。図1〜7は、得られたアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルを示す。
【0048】
【化23】
【0049】
【表1】
【0050】
〔実施例9〕
SSRRプロセスを経由する、無水物官能性N−アシル尿素からのアミド−イミドの合成
【0051】
【化24】
【0052】
スキーム3に示したように、実施例2により得た無水物官能性N−アシル尿素(5g)(0.5g、1.3mmol)とDMPO(75mg、0.57mmol)とを、無水テトラメチレンスルホン30mlに室温で溶解した。メタノール(42mg、1.3mmol)および触媒として使用するトリエチルアミン(0.13g、1当量)をこの反応混合物に添加すると、新規な酸官能化エステル−アシル尿素(6)が得られた。このエステル−アシル尿素(6)を、その後140℃で45分間加熱して、酸−アミド誘導体(7)を得た。この酸−アミド誘導体(7)はDPCDIと反応して、新規なアシル尿素(8)を中間体として生成した。この反応温度を、最終的に210℃まで上げ、閉環反応を進行させるために30分間保ってアミド−イミド(9)を生成させた。その後、最終的な溶液を水500mlに添加すると、アミド−イミド(9)の茶褐色の沈殿が生じた。この沈殿を濾取し、熱キシレン25mlから再結晶し、減圧下で乾燥した。このワンポットの方法により、高収率のアミド−イミド(9)が単離でき(93%)、以下の分析により、単一生成物であることを確認した。
1H−NMR(600 MHz, DMSO) (ppm): 7.14 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.38 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.46-7.50 (m, 3H), 7.54 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.82 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 8.12 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.45 (dd, J = 7.8, 1.8 Hz, 1H), 8.54 (s, 1H), 10.64 (s, 1H).
13C−NMR(150 MHz, DMSO) (ppm): 120.6, 122.2, 123.6, 124.2, 127.4, 128.2, 128.7, 128.9, 131.8, 131.9, 133.9, 134.4, 138.7, 140.3, 163.6, 166.5, 166.6.
元素分析:計算値(C21H14N2O3)N, 8.20 %; C, 73.70 %; H, 4.10 %.
測定値 N, 8.21 %; C, 73.59 %; H, 4.42 %.
融点:271.4〜273.1℃
【0053】
〔実施例10〕
SSRRプロセスを経由する、ポリN−アシル尿素からのポリ(アミド−イミド)の合成
【0054】
【化25】
【0055】
4,4’−メチレン−ビス(フェニルイソシアナート)(MDI;15g、59.9mmol)を、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、オイルバス、磁性スターラーを備えた250mlの三口丸底フラスコに入れ、無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)200mlに溶解した。反応混合液を90℃に加熱し、フェニルイソシアナート(0.89g、7.47mmol)を添加した。混合物を攪拌し、溶液が均一になるまで90℃に2〜3分保った後、DMPO(70mg)を添加した。二酸化炭素の発生がほとんど直後に始まった。溶液を90℃で3時間加熱すると対応するポリ(カルボジイミド)(P−CDI)が生成した。混合物を室温まで冷却した後、無水トリメリット酸(12.2g、63.5mmol)を添加し、1時間攪拌すると、スキーム4に示すように、対応するポリ−N−アシル尿素が生成した。その後、この混合物に、メタノール(2.04g、63.7mmol)およびトリエチルアミン(6.4g、63.7mmol)を添加し、30分攪拌した。反応混合物を、さらに202℃で1時間加熱し、2Lの水中に注いだ。生じた生成物を濾取し、乾燥して、238℃という高いTgと457℃のTdを有することによりキャラクタライズされる、ポリ(アミド−イミド)23.3g(92%)を得た(茶褐色固体)。得られたポリ(アミド−イミド)の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量(Mn)は、20,600g/molであった。図8〜10に、得られたポリ(アミド−イミド)の1HNMRスペクトル、DSC分析、およびTGA分析を示す。
【0056】
〔実施例11〕
2種の酸の混合物を使用することによる、ポリアミド−イミド−エーテルエラストマーの合成
【0057】
【化26】
【0058】
ポリエーテル二価酸(Wei, K.L.; Hung, F.Y.; Lin, J. J. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 2006, 44, 646参照。)(4.53g、1.87mmol)およびアゼライン酸(1.53g、8.13mmol)をTMS100mlに溶解し、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、オイルバス、磁性スターラーを備えた250mlの三口丸底フラスコに入れた。この溶液を180℃に加熱し、その後DMPO(0.25g)およびMDI(3.0g、12mmol)を添加し、30分攪拌した。その後、この溶液を200℃に加熱し、2時間攪拌した。結果として得られた溶液を水1.5Lに注いだ。濾取し、真空オーブンで乾燥して水を除去した後の生成物は、ポリアミド−イミド−エーテルエラストマーであり、−33℃という高いTg(ポリエーテル)と378℃のTdを有することによりキャラクタライズした。
【0059】
〔実施例12〕PAIのワンポット合成
【0060】
【化27】
【0061】
NMP(15ml)を、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、オイルバス、磁性スターラーを備えた250mlの三口丸底フラスコに入れた。NMPを180℃まで加熱し、その後続けてDMPO40mgおよびトリメリット酸−1−メチルエステル(1g、4.47mmol)を添加した。この混合物に、MDI(1.12g、4.47mmol)を添加し、その後続けて200℃に加熱し、2時間攪拌した。結果として得られた溶液を水500mlに注ぐと、PAIの茶褐色の沈殿が生じた。この沈殿を濾取し、真空乾燥した。このワンポットの方法により、高い収率のPAIを単離した(90%)。1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルを、それぞれ図11および図12に示した。PAIは、289℃という高いTg(ポリエーテル)と479℃のTdを有することによりキャラクタライズした。
【0062】
〔比較例1および2〕
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を出発物質として使用して、安息香酸(比較例1)または酢酸(比較例2)と、実施例1に記載したものと同様の操作条件で反応させた。表2に示したように、この反応は、無水物と尿素を主生成物として生じた。反応混合物中では、N−アシル尿素の低い選択性(比較例1および比較例2でそれぞれ38%および25%)が観察された。
【0063】
【表2】
【0064】
本発明の多様な変形が可能であり、当業者が容易に示唆を得てこれを完成するであろうことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、実施例2で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例3で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例4で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図4】図4は、実施例5で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例6で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例7で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例8で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例10で説明した、本発明の方法により得たポリ(アミド−イミド)の1H−NMRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例10で説明した、本発明の方法により得たポリ(アミド−イミド)のDSC分析である。
【図10】図10は、実施例10で説明した、本発明の方法により得たポリ(アミド−イミド)のTGA分析である。
【図11】図11は、実施例12で説明した、本発明のワンポットの方法により得たポリ(アミド−イミド)の1H−NMRスペクトルである。
【図12】図12は、実施例12で説明した、本発明のワンポットの方法により得たポリ(アミド−イミド)の13C−NMRスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アシル尿素の温和な条件下での高選択的かつ高収率な合成に関し、アミド類、アミド−イミド類、および、これらのポリマー類(ポリアミド、ポリアミド−イミド、およびポリアミド−イミドエラストマーなど)合成の、逐次的、自己反復的な反応(以下、略して「SSRR」反応または「SSRR」プロセスと称する)中間体としての、得られたアリールN−アシル尿素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボジイミド類(CDI)は、イソシアナート類から容易に合成でき(非特許文献1参照)、カルボン酸類と反応して酸無水物類(無水物類)、N,N’−置換尿素類(尿素類)、およびN−アシル−N,N’−二置換尿素類(N−アシル尿素類)の混合物を生成することが知られている。Khorana(非特許文献2および3参照)、およびSilverstein(非特許文献4および5参照)による初期の機構的な研究により、2種の併発反応経路が、観察される生成物の多様性の要因となっている可能性が示された。すなわち、O−アシルイソ尿素中間体が最初に形成され、この中間体は、N−アシル尿素に転位するか、別の酸分子とさらに置換反応して対応する尿素類および無水物類を最終生成物として生成するか、のいずれも可能である。
【0003】
以前の文献は、芳香族CDI類はカルボン酸類で処理するとN−アシル尿素類を生成しやすいようであるが、脂肪族CDI類は無水物類とN,N’−二置換尿素類の混合物を生成する結果となることが多いことを示唆していた(非特許文献6および7参照)。近年の事実からは、フェロセンカルボン酸を芳香族CDIに選択的に付加させて、N−アシル尿素を主生成物として生じさせることができることが分かった(非特許文献8参照)。Lauによる別の報告では(非特許文献9参照)、固相担体上での二置換または三置換N−アシル尿素類の合成でも高い収率が得られた。
【非特許文献1】Monagle, J. J.; Campbell, T. W.; Mcshane, H. F. J. Am. Chem. Soc., 1962, 84, 4288
【非特許文献2】Khorana, H. G. Chem. Rev., 1953, 53, 145
【非特許文献3】Smith, M.; Moffatt, J. G.; Khorana, H. G. J. Am. Chem. Soc., 1958, 80, 6204
【非特許文献4】Detar, D. F.; Silverstein, R. J. Am. Chem. Soc., 1966, 88, 1013
【非特許文献5】Detar, D. F.; Silverstein, R. J. Am. Chem. Soc., 1966, 88, 1020
【非特許文献6】Mikolajczyk, M.; Kielbasinski, P. Tetrahedron, 1980, 37, 233
【非特許文献7】Volonterio, A.; Arellano, C. R.; Zanda, M. J. Org. Chem., 2005, 70, 2161
【非特許文献8】Schetter, B.; Speiser, B. J. Organomet. Chem., 2004, 689, 1472
【非特許文献9】Rave, J.; Ankersen, M.; Begtrup, M.; Lau, J. F. Tetrahedron Lett., 2003, 44, 6931
【非特許文献10】Schotman, A. H. M. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 1991, 110, 319
【非特許文献11】Schotman, A. H. M.; Mijs, W. J. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 1992, 111, 88
【非特許文献12】Schotman, A. H. M.; Weber, T. M. J.; Mijs, W. J. Macromol. Chem. Phys., 1999, 200, 635
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イソシアナートおよびアミドへの、N−アシル尿素の加熱による変換については多くの文献があるが(非特許文献10〜12参照)、N−アシル尿素の加熱分解による、イソシアナートからCDI、さらにその後のCDIからアミドへのオーバーオールの変換については、合成中間体としても、潜在的なイソシアナート源としても、まだ十分には活用されていない。副生成物である尿素および無水物による不純物の混入は、N−アシル尿素の不純物のない単離を妨げるおそれがある。これまでのところ、イソシアナート前駆体または単離可能なポリアミド合成の中間体としてのN−アシル尿素の高収率の合成方法は、まだ開発されていない。したがって、本発明は、アリールN−アシル尿素類の、高選択的かつ高収率な合成方法、その結果物の熱反応、およびアリールアミド類およびポリアミド類の段階的合成への適用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の目的は、アリールCDIとカルボン酸を約120℃未満の温度で反応させてアリールN−アシル尿素を得る工程を含む、前記アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、アリールポリ−CDIを、カルボン酸、ジ−カルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させて、アリールポリ−N−アシル尿素を得る工程を含む、前記アリールポリ−N−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を経由して、約120℃から約280℃の温度でCDI触媒およびカルボン酸の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールN−アシル尿素を生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、中間生成物であるアリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
b)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
c)前記アリールCDIと前記カルボン酸とを反応させて前記アリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程c)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を経由して、約120℃から約280℃の温度およびCDI触媒の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIとカルボン酸とを反応させてアリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、
b)前記アリールN−アシル尿素を、生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、アリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
c)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程a)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の目的は、下記式:
【化1】
を有するアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIと無水トリメリット酸とを反応させて下記式:
【化2】
を有する無水物官能性N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記無水物官能性N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して下記式:
【化3】
を有する酸官能化エステル−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記酸官能化エステル−アシル尿素を、CDI触媒の存在下で約120℃から約280℃の温度に加熱して、アリールイソシアナートと下記式:
【化4】
を有する酸−アミド誘導体とを生成させ、同時に、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を起こさせて前記アミド−イミドを生成させる工程と、
を含み、
前記逐次的、自己反復的な反応が3種の逐次的な工程の反復を含み、前記3種の逐次的な工程が、
i)前記アリールイソシアナートを、前記CDI触媒の存在下でアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
ii)前記アリールCDIと前記酸−アミド誘導体とを反応させて、下記式:
【化5】
を有するアシル尿素を生成させる工程と、
iii)工程ii)で得た前記アシル尿素を、生産物である前記アミド−イミドと、前記アリールイソシアナートとに加熱分解させる工程と、
を含む、方法を提供することである。
【0010】
本発明の最後の目的は、下記規則的な構造式
【化6】
(式中、nは1から24の整数である)を有するポリ(アミド−イミド)を合成する方法であって、
a)下記式:
【化7】
を有するポリ−CDIと無水トリメリット酸とを反応させて、下記式:
【化8】
を有する対応するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記ポリ−N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して、開環した無水物官能基を有する下記式:
【化9】
のポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記反応混合物を約120℃から約280℃の温度に加熱して、上述した逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を起こさせて、前記ポリ(アミド−イミド)を生成させる工程と、
を含む方法を提供することである。
【0011】
本発明の多様な利点および目的が、以下の記述および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
最初に、本発明は、温和な条件下で、アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供する。
【0013】
スキーム1は、CDI(1)およびカルボン酸(2)からのN−アシル尿素(5)の合成と、可能性のある副生成物を示している。2種の併発反応経路が存在する。O−アシルイソ尿素中間体が最初に形成され、この中間体は、N−アシル尿素(5)に転位するか、別の酸分子とさらに置換反応して対応する尿素(4)および無水物(3)を最終生成物として生成するか、のいずれも可能である
【0014】
【化10】
【0015】
CDI反応の選択性の研究に基づいて、カルボン酸類を2種のCDIモデル化合物と別々に反応させた。すなわち、カルボン酸類を、脂肪族CDIとしてのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、および、フェニルイソシアナートと1,3−ジメチル−3−ホスホレンオキシド(DMPO)などのCDI触媒とから合成した芳香族CDIとしてのジフェニルカルボジイミド(DPCDI)と反応させた。
【0016】
この反応において、本発明者らは、CDI反応における異なる経路の存在を示唆する、特徴のある2種の生成物タイプを見出した。DCCを出発物質として用いて、安息香酸および酢酸などのカルボン酸と反応させると、この反応は、無水物(3)および尿素(4)を主生成物として与えた。反応混合物中には、N−アシル尿素(5)が低い収率で観察された。その他のカルボン酸類も、DCCで処理した場合はN−アシル尿素類の収率がわずかであった。
【0017】
言うまでもなく、N−アシル尿素(5)の選択性は、DCCの代わりにDPCDIを使うと格段に高まった。初期のイソウレアのO原子からN原子へのアシル基の転位が優勢となるようであった。例えば、DPCDIを安息香酸および酢酸などのカルボン酸で処理すると、室温でN−アシル尿素(5)がかなり高収率で得られ、副生成物の生成(無水物およびジフェニル尿素)はごく少量であった。さらに、DPCDIと、電子吸引性または電子供与性の置換基を有する芳香族カルボン酸類との反応は、対応するN−アシル尿素類を非常に高い選択性で生成した。
【0018】
N−アシル尿素が、約120℃未満では安定であるが、より高い温度では分解してイソシアナート類とアミド類を含むフラグメントに分解されることも知られている。
【0019】
したがって、本発明は、アリールCDIとカルボン酸を約120℃未満の温度で反応させてアリールN−アシル尿素を得る工程を含む、アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供する。
【0020】
本発明の方法は、好ましくは、アリールN−アシル尿素を75%を超える選択性、より好ましくは85%を超える選択性で、かつ、70%を超える収率、より好ましくは80%を超える収率で合成することができる。安息香酸をDPDCIで処理した場合、N−アシル尿素の収率および選択性は、それぞれ80%および93%であった。これらの結果は、本発明が、アリールイソシアナート類を出発物質として使って、温和な条件下、高収率かつ高選択的にアリールN−アシル尿素類を合成することができることを示している。
【0021】
より一般的な観点では、どのようなアリールCDIでも本発明を実施するために使うことができる。好適なアリールCDIとして、これだけには限られないが、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲンでいずれか一方または双方のフェニル基が置換されていてもよい、ジフェニルCDIが挙げられる。アリールCDIの例として、o−トルエンイソシアナート、p−トルエンイソシアナート、o−ニトロイソシアナート、p−クロロイソシアナート、p−メトキシイソシアナート、p−ビフェニルイソシアナート、およびデカヒドロナフチルイソシアナートが挙げられる。
【0022】
アミノ酸またはヒドロキシ酸を除いて、その他の官能化された酸は、所望の本発明のアシル尿素類を合成するカルボン酸として問題なく使用することができる。使用するカルボン酸の種類には特に制限は無い。脂肪族カルボン酸類も芳香族カルボン酸類も本発明の実施のために使用でき、芳香族カルボン酸類は電子吸引性または電子供与性の置換基を有していてもよい。好適なカルボン酸として、これだけには限られないが、酢酸および安息香酸などのモノ−カルボン酸類、アジピン酸およびアゼライン酸などのジ−カルボン酸類、その他の長鎖脂肪族二価酸類、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族二価酸類、無水トリメリット酸などの二価酸類または酸無水物、無水物類に由来する多価酸類、酸無水物類、および多価酸無水物類、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
本発明の例として、酸または無水物をその分子構造に有するトリメリット酸(または無水トリメリット酸)は、酸の側でのみCDIと反応し、無水物の側は維持される。この状況は、その付加体の無水物部分を、以下に論じる更なる反応のために操作することを可能にする。このようにして、本発明は、より高い熱安定性および特性を有すると思われる、規則的な構造の反復を有するポリマーを段階的に調製する重合反応を提供する。
【0024】
当業者に周知であるように、本発明で使用するこのアリールCDIは、CDI触媒の存在下でアリールイソシアナートを触媒的に変換することによりあらかじめ合成することができる。好ましくは、この反応は無水テトラメチレンスルホン(TMS)中で行う。しかし、その他の適切な溶媒を使うこともできる。好適な溶媒として、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる。
【0025】
アリールイソシアナートの種類には特に制限が無い。好ましいアリールイソシアナートとして、これだけに限られないが、アリールモノ−イソシアナート、アリールジ−イソシアナート、アリールポリイソシアナート、およびこれらの混合物が挙げられる。好適なアリールイソシアナートとして、フェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)、p−フェニレンジイソシアナート(PPDI)、ポリマー状MDI、または上述のうち1種または複数種から合成されるイソシアナートプレポリマー類が挙げられる。CDI触媒の種類についても多数の文献があり、当業者に周知である。好ましいCDI触媒として、これだけに限られないが、3−メチル−3−ホスホレンオキシド(MPO)、1,3−ジメチル−3−ホスホレンオキシド(DMPO)、1,3−ジメチル−1,3,2−ジアザホスホリジン、トリフェニルアルシンオキシド、および、共に本発明で参照により取り込まれている文献である、Tetrahedron Report R101 in Tetrahedron Vol. 37, pages 233~284, (1981)の235ページ、およびAngew.Chem. Int. Ed. Vol. 1, 621 (1962)に記載されている化合物などの、リン化合物および環状リン化合物の種々の有機誘導体が挙げられる。
【0026】
本発明はまた、アリールポリ−CDIを、カルボン酸、ジ−カルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させて、アリールポリ−N−アシル尿素を得る工程を含む、前記アリールポリ−N−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法を提供する。上述したアリールCDI類と同様に、アリールポリ−CDIは、アリールジイソシアナート類、アリールポリ−イソシアナート類、またはこれらのイソシアナート類を混合して調製される混合物から、従来技術を用いて調製することができる。
【0027】
上述したように、アリールN−アシル尿素は、約120℃までは熱的に安定であること、および、より高い温度ではイソシアナート類とアミド類に急速に変換されることが知られている。したがって、本発明はさらに、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を経由して、約120℃から約280℃、好ましくは約120℃から約270℃、さらに好ましくは約140℃から約250℃の温度で、CDI触媒およびカルボン酸の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する、新規かつ効果的な方法であって、
a)アリールN−アシル尿素を生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、中間生成物であるアリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
b)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
c)前記アリールCDIと前記カルボン酸とを反応させて前記アリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程c)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法を提供する。
【0028】
スキーム2に示すように、SSRRプロセスは、3種の自己反復的な段階からなる。第一段階は、アリールN−アシル尿素1モルの加熱分解であり、生産物としてのアミドまたはアミド−イミド1モルが生成し、同時にアリールイソシアナート1モルが生じる。第二段階は、アリールイソシアナート1モルのアリールCDI0.5モルへの触媒的変換である。最後に、第三段階は、アリールCDI0.5モルとカルボン酸とが新たなアリールN−アシル尿素0.5モルを単離可能な中間体として生成する反応である。したがって、このことは、逐次的、自己反復的な反応(SSRR)により、1回の完全なサイクルで、アリールイソシアナート類50%が消費されてアミドまたはアミド−イミド50%が生じることを示す。十分なカルボン酸が供給された場合、同様の3段階反応が反復すると、結果的に、アリールN−アシル尿素類、アリールイソシアナート類、およびアリールCDI類が全て消費される。本発明者らは、反応性が非常に高いアリールイソシアナートまたはアリールCDI化合物を、可溶性のアリールN−アシル尿素中間体に一時的に変換できることを実証した。このアリールN−アシル尿素は、単離することができ、高融点のアミドまたはアミド−イミドに直接変換することができる。アリールイソシアナートとカルボン酸の直接反応と比較して、この自己反復的な反応は、利点として、より低い温度条件と、アミドまたはアミド−イミド合成におけるより高い選択性とを提供するようである。
【0029】
【化11】
【0030】
アリールN−アシル尿素、CDI触媒、およびカルボン酸は、無水テトラヒドロフラン(THF)中に溶解して、このSSRRプロセスを実施することが好ましい。しかし、その他の好適な溶剤として、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を使用することもできる。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる。
【0031】
本発明の別の実施態様では、上述したSSRRプロセスを、ワンポットの方法として、アリールCDIから直接出発させることができる。したがって、本発明はさらに、SSRRプロセスを経由して、約120℃から約280℃、好ましくは約120℃から約270℃、さらに好ましくは約140℃から約250℃の温度で、CDI触媒の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIとカルボン酸とを反応させてアリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、
b)前記アリールN−アシル尿素を、生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、アリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
c)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程a)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法を提供する。
【0032】
同様に、アリールCDIをCDI触媒の存在下でアリールイソシアナートを触媒的に変換することにより合成することができ、あるいは、上述した逐次的、自己反復的な反応(SSRR)を直接アリールイソシアナートから出発させることもできる。どちらの方法でも、所望のアミドまたはアミド−イミドが生成するようにSSRRプロセスを起こさせるために、出発物質をいずれも、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラメチレンスルホン(TMS)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの適切な無水溶媒に溶解することが好ましい。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる
【0033】
本発明の一実施態様によれば、カルボン酸はR2の位置にイミド基を有していて、得られた生産物はアミド−イミドである。例えば、カルボン酸として5−イソインドリンカルボン酸を使い、アリールCDIがジフェニルCDIであると、得られる生産物は、下記式:
【化12】
を有するアミド−イミドである。
【0034】
本発明の別の実施態様によれば、アミド−イミドは、無水トリメリット酸などの、その分子構造中に酸または無水物を有する特定のカルボン酸から合成することもできる。この場合は、アリールN−アシル尿素、アリールイソシアナート、およびアリールCDIを含む全てのアリール化合物を消費するためにSSRRプロセス中で使われるカルボン酸は、無水トリメリット酸である。
【0035】
したがって、本発明はさらに、下記式:
【化13】
を有するアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIと無水トリメリット酸とを反応させて下記式:
【化14】
を有する無水物官能性N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記無水物官能性N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して下記式:
【化15】
を有する酸官能化エステル−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記酸官能化エステル−アシル尿素を、CDI触媒の存在下で約120℃から約280℃、好ましくは約120℃から約270℃、さらに好ましくは約140℃から約250℃の温度に加熱して、アリールイソシアナートと下記式:
【化16】
を有する酸−アミド誘導体とを生成させ、同時にSSRRプロセスを起こさせて前記アミド−イミドを生成させる工程と、
を含み、
前記逐次的、自己反復的な反応が3種の逐次的な工程の反復を含み、前記3種の逐次的な工程が、
i)前記アリールイソシアナートを、前記CDI触媒の存在下でアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
ii)前記アリールCDIと前記酸−アミド誘導体とを反応させて、下記式:
【化17】
を有するアシル尿素を生成させる工程と、
iii)工程ii)で得た前記アシル尿素を、生産物である前記アミド−イミドと、前記アリールイソシアナートとに加熱分解させる工程と、
を含む、方法を提供することである。
【0036】
同様に、アリールCDIをCDI触媒の存在下でアリールイソシアナートを触媒的に変換することにより合成することができ、あるいは、上述した逐次的、自己反復的な反応を、直接アリールイソシアナートから出発させることもできる。どちらの方法でも、所望のアミドまたはアミド−イミドが生成するようにSSRRプロセスを起こさせるために、出発物質をいずれも、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラメチレンスルホン(TMS)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの適切な無水溶媒に溶解することが好ましい。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる。さらに、当技術分野で知られているように、無水物/R−OHの反応は、トリエチルアミン(TEA)などの触媒の存在下で行うことができる。
【0037】
本発明では特に、N−アシル尿素は、約120℃から約180℃の温度でアミドおよびイソシアナートに分解した。したがって、反応温度を、約180℃から約280℃の温度範囲に上げ、例えば、約15分から約120分などの十分な時間加熱して、閉環反応を進行させ、かつ、アミド−イミドを生成させた。
【0038】
本発明によるSSRRプロセスは、ポリアミドの合成にもうまく適用することができた。例えば、本発明のポリアミドは、アリールポリ−CDIを、カルボン酸、ジ−カルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させてアリールポリ−N−アシル尿素を得て、さらに、前記アリールポリ−N−アシル尿素を、120℃を超える温度、好ましくは約140℃を超える温度に加熱して、ポリアミドおよびイソシアナートを生成させることにより合成することができる。したがって、本発明はさらに、下記規則的な構造式:
【化18】
(式中、nは1から24の整数である)を有するポリ(アミド−イミド)を合成する方法であって、
a)下記式:
【化19】
を有するポリ−CDIと無水トリメリット酸とを反応させて、下記式:
【化20】
を有する対応するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記ポリ−N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して、開環した無水物官能基を有する下記式:
【化21】
のポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記反応混合物を約120℃から約280℃、好ましくは約120℃から約270℃、さらに好ましくは約140℃から約250℃の温度に加熱して、上述したSSRRプロセスを起こさせて、前記ポリ(アミド−イミド)を生成させる工程と、
を含む方法を提供する。
【0039】
ポリ(アミド−イミド)の化学式中に示したnは、1から24の整数であることが好ましい。nが24より大きい場合、得られるポリ(アミド−イミド)は、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN−メチルピロリドン(NMP)などのいくつかの溶媒に可溶である。
【0040】
本発明のSSRRプロセスは、エーテル部分などの長鎖ソフトフラグメント(long chain soft fragment)を、1種または複数種の酸の少なくとも二価酸の部分に含有させることにより、ポリアミド−イミド(PAI)エラストマーの合成にも使用することができる。この態様において、全ての酸成分およびイソシアナート成分が、ワンポットの方法で互いに反応して、結果としてポリアミド−イミドエラストマーを得ることができる。あるいは、この態様において、1種の酸成分が最初にイソシアナート成分と反応し、その後の他の酸成分の添加により結果としてポリアミド−イミドエラストマーが得られる。例えば、本発明のポリアミド−イミド−エーテルエラストマーは、ジイソシアナート、ポリエーテル二価酸、およびアゼライン酸を共にワンポットの方法で反応させること、あるいは、最初にジイソシアナートをポリエーテル二価酸に反応させてイソシアナートを末端に有するプレポリマーを生成させ、その後にCDI触媒(例えばDMPO)およびアゼライン酸を添加すること、により合成することができる。その他の態様においては、長鎖ソフトフラグメントがイソシアナート成分中に含有されている場合、SSRRプロセスがポリウレタンエラストマーの合成に使うこともできることが理解できる。
【0041】
カルボジイミド触媒の存在下で、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)と一官能性フェニルイソシアナートとを16:1のモル比で反応させることにより、ポリ−CDIを合成することができることについては、当技術分野でこれまで多くの文献がある。例えば、Alberino,L.M.とFarrissey,W.J.の米国特許第3,929,733号(1975年)を参照されたい。したがって、この特許の全内容を、本明細書に参照として取り込む。
【0042】
同様に、前記合成方法は、所望する生産物を生成させるため、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラメチレンスルホン(TMS)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの適切な無水溶媒中で行うことが好ましい。当業者であれば、どの溶媒がこの反応を行うのに好適かを容易に判断することができる。さらに、当技術分野で知られているように、無水物/R−OHの反応は、トリエチルアミン(TEA)などの触媒の存在下で行うことができる。
【0043】
本発明に従って、アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法、および、SSRRプロセスにおいてアリールN−アシル尿素を中間体として使用することにより、アミド、アミド−イミド、またはこれらのポリマー(例えば、ポリアミド類、ポリアミド−イミド類、およびポリアミド−イミドエラストマー類など)を合成する方法を、ワンポットの方法として行うことができる。これは、工業的な用途のために便利であり好都合である。
【0044】
さらに過度の工夫をすることなしに、上述の開示および以下に記述する実施例に基づいて、当業者が本発明を十分に利用することができると推定される。以下の実施例は、当業者が特許請求の範囲に記載されている方法をどのように実施することができるかの説明に役立つ実例として単に解釈されるべきであり、決して開示による権利を制限するものではない。
【実施例】
【0045】
〔概要〕
1HNMRおよび13CNMRスペクトルは、Varian Inova(200MHzまたは600MHz)で記録した。ケミカルシフトはδで示し、カップリング定数(J)はHzで示した。スペクトルは、アセトン−d6またはDMSO−d6などの溶媒中、室温で記録し、ケミカルシフトは溶媒シグナルとの相対で定めた。FT−IRは、Perkin Elmer spectrum one FT−IR spectrometerを使用して測定した。HPLCは、5μm球状粒子/100Åポアサイズカラム(Hypersil−100 C18)を使用して、MeCN/H2O=50/50を溶離液とし、流速0.5ml/分の条件および254nmのUV検出で測定した。示差走査熱量計(DSC)は、PerkinElmer Pyris 6装置を使用し、10℃/分の加熱速度および冷却速度で測定した。熱重量分析(TGA)は、PerkinElmer Pyris 1を使用し、窒素下、10℃/分の加熱速度で850℃まで行った。数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Jasco GPC、RI検出器)により測定し、ポリスチレン標準品により較正した。溶離液として、脱気したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を溶離液として使用し、流速1.0ml/分で測定した。
【0046】
〔実施例1〕
下記式:
【化22】
を有するアリールN−アシル尿素の合成。
フェニルイソシアナート(5g、42mmol)と1,3−ジメチル−3−ホスホレンオキシド(DMPO;0.15g)とを無水THF50mlに溶解し、窒素下、60℃で3時間加熱した。その後、無水トリメリット酸とブチルアミンとから合成した5−イソインドリンカルボン酸(2f)(5.19g、21mmol)を反応混合物に添加し、25℃で3時間攪拌した。表題の生成物は、1Lのヘキサンにより沈殿し(88%)、選択性は99%を超えた(表1に示した)。
1H−NMR(600 MHz, acetone) (ppm): 0.90 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.29 (sxt, J = 7.2 Hz, 2H), 1.58-1.63 (m, 2H), 3.59 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.12 (dt, J = 7.2, Hz, 1H), 7.25-7.37 (m, 5H), 7.45 (dd, J = 8.4, 0.6 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.75 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.91 (dd, J = 6.6, 1.8 Hz, 2H), 10.80 (bs, 1H);
13C−NMR(150 MHz, acetone) (ppm): 13.8, 20.6, 31.1, 38.3, 120.5, 120.6, 122.7, 123.3, 124.9, 129.1, 129.7, 129.8, 130.8, 132.7, 133.8, 134.1, 138.9, 139.5, 142.9, 152.5, 167.9, 172.4.
元素分析:計算値(C26H23N3O4)N, 9.52%; C, 70.73 %; H, 5.25 %
測定値 N, 9.76 %, C, 71.59 %, H, 5.65 %
融点:105.1〜105.8℃
【0047】
〔実施例2〜8〕
実施例1に記載した操作手順を繰り返すことにより、フェニルイソシアナートとDMPOとを使用して、表1に示した多様なカルボン酸と反応させて、対応するアリールN−アシル尿素を合成した。得られたアリールN−アシル尿素の選択性および収率を表1に示した。図1〜7は、得られたアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルを示す。
【0048】
【化23】
【0049】
【表1】
【0050】
〔実施例9〕
SSRRプロセスを経由する、無水物官能性N−アシル尿素からのアミド−イミドの合成
【0051】
【化24】
【0052】
スキーム3に示したように、実施例2により得た無水物官能性N−アシル尿素(5g)(0.5g、1.3mmol)とDMPO(75mg、0.57mmol)とを、無水テトラメチレンスルホン30mlに室温で溶解した。メタノール(42mg、1.3mmol)および触媒として使用するトリエチルアミン(0.13g、1当量)をこの反応混合物に添加すると、新規な酸官能化エステル−アシル尿素(6)が得られた。このエステル−アシル尿素(6)を、その後140℃で45分間加熱して、酸−アミド誘導体(7)を得た。この酸−アミド誘導体(7)はDPCDIと反応して、新規なアシル尿素(8)を中間体として生成した。この反応温度を、最終的に210℃まで上げ、閉環反応を進行させるために30分間保ってアミド−イミド(9)を生成させた。その後、最終的な溶液を水500mlに添加すると、アミド−イミド(9)の茶褐色の沈殿が生じた。この沈殿を濾取し、熱キシレン25mlから再結晶し、減圧下で乾燥した。このワンポットの方法により、高収率のアミド−イミド(9)が単離でき(93%)、以下の分析により、単一生成物であることを確認した。
1H−NMR(600 MHz, DMSO) (ppm): 7.14 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.38 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.46-7.50 (m, 3H), 7.54 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.82 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 8.12 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.45 (dd, J = 7.8, 1.8 Hz, 1H), 8.54 (s, 1H), 10.64 (s, 1H).
13C−NMR(150 MHz, DMSO) (ppm): 120.6, 122.2, 123.6, 124.2, 127.4, 128.2, 128.7, 128.9, 131.8, 131.9, 133.9, 134.4, 138.7, 140.3, 163.6, 166.5, 166.6.
元素分析:計算値(C21H14N2O3)N, 8.20 %; C, 73.70 %; H, 4.10 %.
測定値 N, 8.21 %; C, 73.59 %; H, 4.42 %.
融点:271.4〜273.1℃
【0053】
〔実施例10〕
SSRRプロセスを経由する、ポリN−アシル尿素からのポリ(アミド−イミド)の合成
【0054】
【化25】
【0055】
4,4’−メチレン−ビス(フェニルイソシアナート)(MDI;15g、59.9mmol)を、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、オイルバス、磁性スターラーを備えた250mlの三口丸底フラスコに入れ、無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)200mlに溶解した。反応混合液を90℃に加熱し、フェニルイソシアナート(0.89g、7.47mmol)を添加した。混合物を攪拌し、溶液が均一になるまで90℃に2〜3分保った後、DMPO(70mg)を添加した。二酸化炭素の発生がほとんど直後に始まった。溶液を90℃で3時間加熱すると対応するポリ(カルボジイミド)(P−CDI)が生成した。混合物を室温まで冷却した後、無水トリメリット酸(12.2g、63.5mmol)を添加し、1時間攪拌すると、スキーム4に示すように、対応するポリ−N−アシル尿素が生成した。その後、この混合物に、メタノール(2.04g、63.7mmol)およびトリエチルアミン(6.4g、63.7mmol)を添加し、30分攪拌した。反応混合物を、さらに202℃で1時間加熱し、2Lの水中に注いだ。生じた生成物を濾取し、乾燥して、238℃という高いTgと457℃のTdを有することによりキャラクタライズされる、ポリ(アミド−イミド)23.3g(92%)を得た(茶褐色固体)。得られたポリ(アミド−イミド)の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量(Mn)は、20,600g/molであった。図8〜10に、得られたポリ(アミド−イミド)の1HNMRスペクトル、DSC分析、およびTGA分析を示す。
【0056】
〔実施例11〕
2種の酸の混合物を使用することによる、ポリアミド−イミド−エーテルエラストマーの合成
【0057】
【化26】
【0058】
ポリエーテル二価酸(Wei, K.L.; Hung, F.Y.; Lin, J. J. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 2006, 44, 646参照。)(4.53g、1.87mmol)およびアゼライン酸(1.53g、8.13mmol)をTMS100mlに溶解し、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、オイルバス、磁性スターラーを備えた250mlの三口丸底フラスコに入れた。この溶液を180℃に加熱し、その後DMPO(0.25g)およびMDI(3.0g、12mmol)を添加し、30分攪拌した。その後、この溶液を200℃に加熱し、2時間攪拌した。結果として得られた溶液を水1.5Lに注いだ。濾取し、真空オーブンで乾燥して水を除去した後の生成物は、ポリアミド−イミド−エーテルエラストマーであり、−33℃という高いTg(ポリエーテル)と378℃のTdを有することによりキャラクタライズした。
【0059】
〔実施例12〕PAIのワンポット合成
【0060】
【化27】
【0061】
NMP(15ml)を、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、オイルバス、磁性スターラーを備えた250mlの三口丸底フラスコに入れた。NMPを180℃まで加熱し、その後続けてDMPO40mgおよびトリメリット酸−1−メチルエステル(1g、4.47mmol)を添加した。この混合物に、MDI(1.12g、4.47mmol)を添加し、その後続けて200℃に加熱し、2時間攪拌した。結果として得られた溶液を水500mlに注ぐと、PAIの茶褐色の沈殿が生じた。この沈殿を濾取し、真空乾燥した。このワンポットの方法により、高い収率のPAIを単離した(90%)。1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルを、それぞれ図11および図12に示した。PAIは、289℃という高いTg(ポリエーテル)と479℃のTdを有することによりキャラクタライズした。
【0062】
〔比較例1および2〕
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を出発物質として使用して、安息香酸(比較例1)または酢酸(比較例2)と、実施例1に記載したものと同様の操作条件で反応させた。表2に示したように、この反応は、無水物と尿素を主生成物として生じた。反応混合物中では、N−アシル尿素の低い選択性(比較例1および比較例2でそれぞれ38%および25%)が観察された。
【0063】
【表2】
【0064】
本発明の多様な変形が可能であり、当業者が容易に示唆を得てこれを完成するであろうことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、実施例2で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例3で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例4で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図4】図4は、実施例5で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例6で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例7で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例8で説明した、本発明の方法により得たアリールN−アシル尿素の1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例10で説明した、本発明の方法により得たポリ(アミド−イミド)の1H−NMRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例10で説明した、本発明の方法により得たポリ(アミド−イミド)のDSC分析である。
【図10】図10は、実施例10で説明した、本発明の方法により得たポリ(アミド−イミド)のTGA分析である。
【図11】図11は、実施例12で説明した、本発明のワンポットの方法により得たポリ(アミド−イミド)の1H−NMRスペクトルである。
【図12】図12は、実施例12で説明した、本発明のワンポットの方法により得たポリ(アミド−イミド)の13C−NMRスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法であって、アリールカルボジイミド(CDI)をカルボン酸と約120℃未満の温度で反応させて前記アリールN−アシル尿素を得る工程を含む方法。
【請求項2】
前記アリールCDIが、アリールモノ−イソシアナート、アリールジ−イソシアナート、アリールポリイソシアナート、またはこれらの混合物をCDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アリールCDIが、フェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)、p−フェニレンジイソシアナート(PPDI)、ポリマー状MDI、または上述のうち1種または複数種から合成されるイソシアナートプレポリマー類を、CDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アリールCDIが、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲンでいずれか一方または双方のフェニル基が置換されていてもよい、ジフェニルCDIからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸が、モノ−カルボン酸類、ジ−カルボン酸類、その他の長鎖脂肪族二価酸類、芳香族二価酸類、および二価酸類もしくは酸無水物類、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カルボン酸が、酢酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、無水物類に由来する多価酸類、酸無水物類、および多価酸無水物類、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択性が75%を超え、かつ、前記収率が70%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記選択性が約85%を超え、かつ、前記収率が80%を超える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アリールポリ−N−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法であって、アリールポリ−CDIをカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させて前記アリールポリ−N−アシル尿素を得る工程を含む方法。
【請求項10】
前記アリールポリ−CDIが、アリールジイソシアナート類、アリールポリ−イソシアナート類、または上記イソシアナート類を混合することにより調製される混合物から調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
逐次的、自己反復的な反応を経由して、約120℃から約280℃の温度でCDI触媒およびカルボン酸の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールN−アシル尿素を、生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、アリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
b)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
c)前記アリールCDIと前記カルボン酸とを反応させて前記アリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程c)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法。
【請求項12】
前記アリールN−アシル尿素が、請求項1に記載の方法により得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カルボン酸が、モノ−カルボン酸類、ジ−カルボン酸類、その他の長鎖脂肪族二価酸類、芳香族二価酸類、および二価酸類もしくは酸無水物、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記カルボン酸が、酢酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、無水物類に由来する多価酸類、酸無水物類、および多価酸無水物類、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記温度が、約120℃から約270℃である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記温度が、約140℃から約250℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボン酸がイミド基を有し、かつ、前記生産物がアミド−イミドである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボン酸が5−イソインドリンカルボン酸であり、かつ、前記生産物が下記式:
【化1】
を有するアミド−イミドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
逐次的、自己反復的な反応を経由して、約120℃から約280℃の温度およびCDI触媒の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIとカルボン酸とを反応させてアリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、
b)前記アリールN−アシル尿素を、生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、アリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
c)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程a)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法。
【請求項20】
前記アリールCDIが、アリールモノ−イソシアナート、アリールジ−イソシアナート、アリールポリイソシアナート、またはこれらの混合物をCDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アリールCDIが、フェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)、p−フェニレンジイソシアナート(PPDI)、ポリマー状MDI、または上述のうち1種または複数種から合成されるイソシアナートプレポリマー類を、CDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記アリールCDIが、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲンでいずれか一方または双方のフェニル基が置換されていてもよい、ジフェニルCDIからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボン酸が、モノ−カルボン酸類、ジ−カルボン酸類、その他の長鎖脂肪族二価酸類、芳香族二価酸類、および二価酸類もしくは酸無水物、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記カルボン酸が、酢酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、無水物に由来する多価酸、酸無水物、および多価酸無水物、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記温度が、約120℃から約270℃である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記温度が、約140℃から約250℃である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記カルボン酸がイミド基を有し、かつ、前記生産物がアミド−イミドである、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記カルボン酸が5−イソインドリンカルボン酸であり、かつ、前記生産物が下記式:
【化2】
を有するアミド−イミドである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
下記式:
【化3】
を有するアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIと無水トリメリット酸とを反応させて下記式:
【化4】
を有する無水物官能性N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記無水物官能性N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して下記式:
【化5】
を有する酸官能化エステル−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記酸官能化エステル−アシル尿素を、CDI触媒の存在下で約120℃から約280℃の温度に加熱して、アリールイソシアナートと下記式:
【化6】
を有する酸−アミド誘導体とを生成させ、同時に、逐次的、自己反復的な反応を起こさせて前記アミド−イミドを生成させる工程と、
を含み、
前記逐次的、自己反復的な反応が3種の逐次的な工程の反復を含み、前記3種の逐次的な工程が、
i)前記アリールイソシアナートを、前記CDI触媒の存在下でアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
ii)前記アリールCDIと前記酸−アミド誘導体とを反応させて、下記式:
【化7】
を有するアシル尿素を生成させる工程と、
iii)工程ii)で得た前記アシル尿素を、生産物である前記アミド−イミドと、前記アリールイソシアナートとに加熱分解させる工程と、
を含む、方法。
【請求項30】
前記アリールCDIが、アリールモノ−イソシアナート、アリールジ−イソシアナート、アリールポリイソシアナート、またはこれらの混合物をCDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記アリールCDIが、フェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)、p−フェニレンジイソシアナート(PPDI)、ポリマー状MDI、または上述のうち1種または複数種から合成されるイソシアナートプレポリマー類を、CDI触媒の存在下で触媒的に変換させことにより生成する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程c)の前記温度が、約120℃から約270℃である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
工程c)の前記温度が、約140℃から約250℃である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
下記の規則的な構造式:
【化8】
(式中、nは1から24の整数である)を有するポリ(アミド−イミド)を合成する方法であって、
a)下記式:
【化9】
を有するポリ−CDIと無水トリメリット酸とを反応させて、下記式:
【化10】
を有する対応するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記ポリ−N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して、開環した無水物官能基を有する下記式:
【化11】
のポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記反応混合物を約120℃から約280℃の温度に加熱して、請求項29に規定される前記逐次的、自己反復的な反応を起こさせて、前記ポリ(アミド−イミド)を生成させる工程と、
を含む方法。
【請求項35】
前記ポリ−CDIが、メチレンジフェニレンジ−イソシアナートと、フェニルイソシアナートとをCDI触媒の存在下で反応させることにより生成する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程c)の前記温度が、約120℃から約270℃である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
工程c)の前記温度が、約140℃から約250℃である、請求項37に記載の方法。
【請求項38】
ワンポットの方法である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
請求項9に記載の方法により得た前記アリールポリ−N−アシル尿素を、約120℃を超える温度まで加熱して、前記ポリアミドおよびイソシアナートを生成させる工程を含む、ポリアミドを合成する方法。
【請求項40】
前記温度が約140℃である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
ポリ(アミド−イミド)を合成する方法であって、
a)ポリ−CDIを無水物と反応させて対応するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記ポリ−N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して開環した無水物官能基を有するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記反応混合物を約120℃から約280℃の温度に加熱して、請求項29に規定される前記逐次的、自己反復的な反応を起こさせて、前記ポリ(アミド−イミド)を生成させる工程と、
を含む方法。
【請求項42】
工程a)の前記無水物が1種または複数種以上の酸または無水物の混合物である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
工程a)の前記酸が長鎖ソフトフラグメントを含み、前記生産物がポリアミド−イミドエラストマーである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
工程a)の前記酸がエーテル部分を含む二価酸であり、前記生産物がポリアミド−イミド−エーテルエラストマーである、請求項43に記載の方法。
【請求項1】
アリールN−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法であって、アリールカルボジイミド(CDI)をカルボン酸と約120℃未満の温度で反応させて前記アリールN−アシル尿素を得る工程を含む方法。
【請求項2】
前記アリールCDIが、アリールモノ−イソシアナート、アリールジ−イソシアナート、アリールポリイソシアナート、またはこれらの混合物をCDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アリールCDIが、フェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)、p−フェニレンジイソシアナート(PPDI)、ポリマー状MDI、または上述のうち1種または複数種から合成されるイソシアナートプレポリマー類を、CDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アリールCDIが、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲンでいずれか一方または双方のフェニル基が置換されていてもよい、ジフェニルCDIからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸が、モノ−カルボン酸類、ジ−カルボン酸類、その他の長鎖脂肪族二価酸類、芳香族二価酸類、および二価酸類もしくは酸無水物類、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カルボン酸が、酢酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、無水物類に由来する多価酸類、酸無水物類、および多価酸無水物類、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択性が75%を超え、かつ、前記収率が70%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記選択性が約85%を超え、かつ、前記収率が80%を超える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アリールポリ−N−アシル尿素を高選択的かつ高収率で合成する方法であって、アリールポリ−CDIをカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と約120℃未満の温度で反応させて前記アリールポリ−N−アシル尿素を得る工程を含む方法。
【請求項10】
前記アリールポリ−CDIが、アリールジイソシアナート類、アリールポリ−イソシアナート類、または上記イソシアナート類を混合することにより調製される混合物から調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
逐次的、自己反復的な反応を経由して、約120℃から約280℃の温度でCDI触媒およびカルボン酸の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールN−アシル尿素を、生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、アリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
b)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
c)前記アリールCDIと前記カルボン酸とを反応させて前記アリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程c)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法。
【請求項12】
前記アリールN−アシル尿素が、請求項1に記載の方法により得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カルボン酸が、モノ−カルボン酸類、ジ−カルボン酸類、その他の長鎖脂肪族二価酸類、芳香族二価酸類、および二価酸類もしくは酸無水物、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記カルボン酸が、酢酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、無水物類に由来する多価酸類、酸無水物類、および多価酸無水物類、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記温度が、約120℃から約270℃である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記温度が、約140℃から約250℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボン酸がイミド基を有し、かつ、前記生産物がアミド−イミドである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボン酸が5−イソインドリンカルボン酸であり、かつ、前記生産物が下記式:
【化1】
を有するアミド−イミドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
逐次的、自己反復的な反応を経由して、約120℃から約280℃の温度およびCDI触媒の存在下でアミドまたはアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIとカルボン酸とを反応させてアリールN−アシル尿素を単離可能な中間体として生成させる工程と、
b)前記アリールN−アシル尿素を、生産物であるアミドまたはアミド−イミドと、アリールイソシアナートとに加熱分解する工程と、
c)前記CDI触媒の存在下で前記アリールイソシアナートをアリールCDIに触媒的に変換する工程と、を含み、
工程a)、b)、およびc)が自己反復的に起こり、かつ、工程a)で使われる前記カルボン酸が前記アリールイソシアナート、前記アリールCDI、および前記アリールN−アシル尿素を実質的に全て消費するのに十分な量である、方法。
【請求項20】
前記アリールCDIが、アリールモノ−イソシアナート、アリールジ−イソシアナート、アリールポリイソシアナート、またはこれらの混合物をCDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アリールCDIが、フェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)、p−フェニレンジイソシアナート(PPDI)、ポリマー状MDI、または上述のうち1種または複数種から合成されるイソシアナートプレポリマー類を、CDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記アリールCDIが、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲンでいずれか一方または双方のフェニル基が置換されていてもよい、ジフェニルCDIからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボン酸が、モノ−カルボン酸類、ジ−カルボン酸類、その他の長鎖脂肪族二価酸類、芳香族二価酸類、および二価酸類もしくは酸無水物、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記カルボン酸が、酢酸、安息香酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、無水物に由来する多価酸、酸無水物、および多価酸無水物、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記温度が、約120℃から約270℃である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記温度が、約140℃から約250℃である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記カルボン酸がイミド基を有し、かつ、前記生産物がアミド−イミドである、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記カルボン酸が5−イソインドリンカルボン酸であり、かつ、前記生産物が下記式:
【化2】
を有するアミド−イミドである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
下記式:
【化3】
を有するアミド−イミドを合成する方法であって、
a)アリールCDIと無水トリメリット酸とを反応させて下記式:
【化4】
を有する無水物官能性N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記無水物官能性N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して下記式:
【化5】
を有する酸官能化エステル−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記酸官能化エステル−アシル尿素を、CDI触媒の存在下で約120℃から約280℃の温度に加熱して、アリールイソシアナートと下記式:
【化6】
を有する酸−アミド誘導体とを生成させ、同時に、逐次的、自己反復的な反応を起こさせて前記アミド−イミドを生成させる工程と、
を含み、
前記逐次的、自己反復的な反応が3種の逐次的な工程の反復を含み、前記3種の逐次的な工程が、
i)前記アリールイソシアナートを、前記CDI触媒の存在下でアリールCDIに触媒的に変換する工程と、
ii)前記アリールCDIと前記酸−アミド誘導体とを反応させて、下記式:
【化7】
を有するアシル尿素を生成させる工程と、
iii)工程ii)で得た前記アシル尿素を、生産物である前記アミド−イミドと、前記アリールイソシアナートとに加熱分解させる工程と、
を含む、方法。
【請求項30】
前記アリールCDIが、アリールモノ−イソシアナート、アリールジ−イソシアナート、アリールポリイソシアナート、またはこれらの混合物をCDI触媒の存在下で触媒的に変換させることにより生成する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記アリールCDIが、フェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアナート(MDI)、p−フェニレンジイソシアナート(PPDI)、ポリマー状MDI、または上述のうち1種または複数種から合成されるイソシアナートプレポリマー類を、CDI触媒の存在下で触媒的に変換させことにより生成する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程c)の前記温度が、約120℃から約270℃である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
工程c)の前記温度が、約140℃から約250℃である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
下記の規則的な構造式:
【化8】
(式中、nは1から24の整数である)を有するポリ(アミド−イミド)を合成する方法であって、
a)下記式:
【化9】
を有するポリ−CDIと無水トリメリット酸とを反応させて、下記式:
【化10】
を有する対応するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記ポリ−N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して、開環した無水物官能基を有する下記式:
【化11】
のポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記反応混合物を約120℃から約280℃の温度に加熱して、請求項29に規定される前記逐次的、自己反復的な反応を起こさせて、前記ポリ(アミド−イミド)を生成させる工程と、
を含む方法。
【請求項35】
前記ポリ−CDIが、メチレンジフェニレンジ−イソシアナートと、フェニルイソシアナートとをCDI触媒の存在下で反応させることにより生成する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程c)の前記温度が、約120℃から約270℃である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
工程c)の前記温度が、約140℃から約250℃である、請求項37に記載の方法。
【請求項38】
ワンポットの方法である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
請求項9に記載の方法により得た前記アリールポリ−N−アシル尿素を、約120℃を超える温度まで加熱して、前記ポリアミドおよびイソシアナートを生成させる工程を含む、ポリアミドを合成する方法。
【請求項40】
前記温度が約140℃である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
ポリ(アミド−イミド)を合成する方法であって、
a)ポリ−CDIを無水物と反応させて対応するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
b)前記ポリ−N−アシル尿素を、水またはR−OH(ここでRはC1−8アルキル基)で処理して開環した無水物官能基を有するポリ−N−アシル尿素を生成させる工程と、
c)前記反応混合物を約120℃から約280℃の温度に加熱して、請求項29に規定される前記逐次的、自己反復的な反応を起こさせて、前記ポリ(アミド−イミド)を生成させる工程と、
を含む方法。
【請求項42】
工程a)の前記無水物が1種または複数種以上の酸または無水物の混合物である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
工程a)の前記酸が長鎖ソフトフラグメントを含み、前記生産物がポリアミド−イミドエラストマーである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
工程a)の前記酸がエーテル部分を含む二価酸であり、前記生産物がポリアミド−イミド−エーテルエラストマーである、請求項43に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−320912(P2007−320912A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−153612(P2006−153612)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(506187511)國立中興大學 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153612(P2006−153612)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(506187511)國立中興大學 (12)
【Fターム(参考)】
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