説明

アミノアルコール誘導体およびそれらの治療活性

本発明は、一般式Iのアミノアルコール誘導体に関する。これらの誘導体は、脂質酸化ストレスの二次生成物を阻害するという点で興味深い活性を有し、反応性カルボニル化合物の存在に関連する全ての障害における治療的使用に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボニル化合物に対する代謝性消失活性(metabolic quenching activity)を有する窒素複素環基を含むアミノアルコール誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
酸化損傷が、老化、炎症性障害、糖尿病、心血管系疾患および神経変性過程を含む、多様な生理病理過程の誘発に影響を与えることは、異論なく認識されている。酸化損傷、例えば、ラジカル反応性酸素種によってもたらされるタンパク質、脂質および核酸の構造損傷、および変化させられた細胞の酸化還元状態に関与する主要な分子メカニズムもまた、よく知られている[Halliwell B、Gutteridge JM.、Free Radicals in Biology and Medicine(2001)Oxford Science Publications、第3編]。
【0003】
ケト/アルデヒド官能基を特徴とする脂質酸化のいくつかの生成物が、重要な細胞毒性酸化メディエーターとして作用し、生体分子の不可逆的な構造的改変を誘発し、その結果、細胞機能の変化をもたらすことも明らかにされた[Uchida K.Free Radic.Biol.Med.2000、28:1685〜96頁、Poli G.ら、IUBMB Life.2000、50:315〜21頁]。
【0004】
研究されたカルボニル化合物は、4−ヒドロキシ−トランス−2−ノネナール(HNE)およびアクロレイン(ACR)などのα、β−不飽和アルデヒドを含む、多価不飽和脂肪酸の酸化の生成物を含む[Esterbauer H.ら、Free Radic.Biol.Med.1991、11:81〜128頁]。
【0005】
酸化に基づく多様な病理過程への不飽和アルデヒドの関与は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の使用によって実証された[Uchida K. Prog. Lipid Res. 2003、42:318〜43頁]。特に、タンパク質とHNEおよびアクロレインとの付加物(adducts between HNE and acrolein with proteins)が、糖尿病、アテローム性動脈硬化、筋ジストロフィー、関節リウマチ、脳虚血、並びにアルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患に罹患している患者の生検および剖検組織において確認された[Uchida K. Prog.Lipid Res.2003、42:318〜43頁、Zarkovic N.Mol.Aspects Med.2003、24:281〜91頁.、Zarkovic N. Mol. Aspects Med. 2003、24:293〜303頁、M.Cariniら「Redox Proteomics:from Protein Modifications to Cellular Dysfunction and Diseases」において(Ed.I.Dalle−Donne、A.ScaloniおよびA.Butterfield)、Wiley InterScience Books、John Wiley & Sonsより(2005)。
【0006】
病原性因子としてのHNEの役割は、例えば、線維症[Chiarpotto AND.ら、Biofactors.2005、24(1〜4):229〜36頁]、糖尿病性腎症[Furfaro AL.らBiofactors.2005、24(1〜4):291〜8頁]、アテローム動脈硬化過程[Leonarduzzi G.ら、Mol Nutr Food Res. 2005 11月、49(11):1044〜9頁]、および神経変性障害[Zarkovic K. Mol Aspects Med. 2003 8月〜10月、24(4〜5):293〜303頁]を含む、多様な障害について分子レベルで実証された。
【0007】
したがって、カルボニル生成物、特に、HNEなどの反応性カルボニル化合物が、カルボニル消失活性(carbonyl-quenching activity)を有する、新しい種類の生物活性分子の開発のための重要な対象であることは、明らかである。
【0008】
この重要性は、カルボニル消失活性を有する化合物、特に、カルノシンと相関する特定のジペプチド化合物を記載する、かなりの数の論文および特許によって明らかに実証されている[Hipkisss A.R.、J.Alzheimer's Dis.2007、11、229〜240頁(非特許文献1)、Guiotto A.らCurr.Med.Chem.2005、12、2293〜2315頁、Vistoli G.ら、Chem.Med.Chem.2009、4、1〜10頁]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hipkisss A.R.、J.Alzheimer's Dis.2007、11、229〜240頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の説明
本発明は、窒素複素環残基を含むアミノアルコール誘導体に関し、このようなアミノアルコール誘導体は、神経変性障害、慢性炎症性障害、心血管系疾患、および糖尿病と白内障との合併症などのかなりの数の慢性障害の発症への寄与が知られている、酸化脂質ストレスの二次生成物、特にマロンジアルデヒドおよびヒドロキシノネナールなどの不飽和アルデヒドの二次生成物を阻害する興味深い活性を示した。ある種のヒト体組織の中に存在して、インビトロでの不飽和カルボニル化合物を消失させるその活性がよく知られている、内在性のジペプチドL−カルノシンの構造に由来するものとして研究された、本発明による化合物は、モデルカルボニル化合物の消失においてジペプチドより驚くほど大きな活性を示し、モデル化合物と比較した場合に極めて高い代謝の安定性を示し、そのため、本発明による化合物は、反応性カルボニル化合物の存在に相関する全ての障害における治療的使用に適切である。
【0011】
本発明はまた、前記障害の治療または予防のための医薬の調製に前記化合物を使用することに関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の化合物は、一般式I
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、
は、1または複数の窒素原子を含み、その窒素原子の少なくとも1つが−NH−基である、任意選択で縮合され、任意選択で置換されている窒素複素環であり、
は、水素、直鎖状、分枝状若しくは環状のC〜C10アルキル基、直鎖状、分枝状若しくは環状のC〜Cアルキルカルボニル基、任意選択で置換されているアリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基であり、
は、式II
【0015】
【化2】

【0016】
[式中、
およびRは、同一でもまたは異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分枝状のC〜Cアルキルまたは環状のC〜Cアルキル基、アリール−C〜Cアルキルまたはヘテロアリール−C〜C−アルキル基、アリールまたはヘテロアリール基であり、
およびRは、同一でもまたは異なっていてもよく、水素、直鎖状、分枝状若しくは環状C〜Cアルキル基、1または複数の二重結合を任意選択で含む直鎖状若しくは分枝状C〜C20アルキルカルボニルまたは環状C〜Cアルキルカルボニル基、アリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基、1または複数の二重結合を任意選択で含む直鎖状若しくは分枝状C〜C10アルキルオキシカルボニルまたは環状C〜Cアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルまたはアリールアルキルオキシカルボニル基、アミノ基、または一般式III
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Mは、窒素、酸素または硫黄であり、Aは、水素またはアミノ基である)
の基である]の基である]を有する。
【0019】
式Iの多くの化合物は、少なくとも1つのキラル中心を有し、したがって、本発明は、本発明の生成物の全ての光学異性体および任意の割合でのそれらの混合物、並びに個別に得られる全ての可能なジアステレオマーまたは任意の割合でのそれらの混合物を含む。
【0020】
は、好ましくは、任意選択で置換されているイミダゾール、ピロール、ピラゾール、インドール、イソインドール、インダゾール、ベンズイミダゾールであり、より好ましくは、Rは2位または4位で、直鎖状、分枝状若しくは環状C〜Cアルキル基またはハロゲン原子によって任意選択で置換されているイミダゾール環である。
【0021】
は、好ましくは、水素、直鎖状、分枝状若しくは環状C〜Cアルキルカルボニル、アリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基である。
【0022】
より好ましくは、Rは水素である。
【0023】
は、好ましくは、式II
【0024】
【化4】

【0025】
[式中、
およびRは、同一または異なることもあり、水素、直鎖状若しくは分枝状C〜Cアルキルまたは環状C〜Cアルキル、アリール−C〜Cアルキルまたはヘテロアリール−C〜C−アルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり、
およびRは、同一でもまたは異なっていてもよく、水素、1または複数の二重結合を任意選択で含む直鎖状若しくは分枝状C〜C10アルキルカルボニルまたは環状C〜Cアルキルカルボニル基、アリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基、1または複数の二重結合を任意選択で含む直鎖状若しくは分枝状C〜C10アルキルオキシカルボニルまたは環状C〜Cアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルまたはアリールアルキルオキシカルボニル基、またはアミノ基である]
の基である。
およびRは、好ましくは水素である。
およびRは、好ましくは、互いに独立して、水素、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールアルコキシカルボニル基である。
より好ましくは、R、R、R、Rは水素である。
【0026】
アリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基は、好ましくはフェニルカルボニルまたはベンジルカルボニル基であって、フェニル部分は、フッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素などのハロゲン原子および/またはメチル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノカルボニル基から選択される、1から3つの置換基によって置換されていてもよい。
【0027】
ヘテロアリール−C〜C−アルキル基は、例えば、ピリジルアルキル、フラニルアルキル、チエニルアルキル基であり、アリール基は、例えば、フェニル基または上記のように置換されているフェニルである。ヘテロアリール基は、例えば、ピリジル、フリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル基である。
【0028】
アリールオキシカルボニルまたはアリールアルキルオキシカルボニル基は、好ましくは、フェノキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニル基である。
【0029】
本発明の特に好ましい化合物の例は、
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−ベンゾイミダゾール−4−イル−メチル)−エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−ピロール−2−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−メトキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−(アセチルアミノ)−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)−エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−(アセチルオキシ)−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1R)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−(プロピオニルアミノ)−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−メチルアミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)−エチル]プロパンアミド
・ 3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)−エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(4−メチル−1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(4−クロロ−1H−イミダゾール−5−イル−メチル)−エチル]−プロパンアミド
である。
【0030】
さらに、本発明は、本発明の1つまたは複数の化合物の有効量を、適切な賦形剤と組み合わせて含む組成物に関する。
【0031】
本発明による化合物は、文献、例えば、Houben−Weil「Synthesis of peptides and peptidomimetics」、E22 a〜d、およびJ.Jones「Amino acid and peptide synthesis」において報告された、固相または溶液中における既知のペプチド合成法によって合成した。合成において使用したアミノ酸は、すでに保護された形態において入手できない場合には、T.W.Greene、P.G.M.Wuts「Protective group in Organic Synthesis」およびP.J.Kocienski「Protecting Groups」において報告されている方法などの既知の方法を使用して、必要な保護基によって適切に官能化した。合成において使用したアミノアルコールは、不活性溶媒中で適切な金属または有機金属水素化物を使用して対応するアミノ酸の誘導体を還元することによって調製し、アミノアシルアミノアルコール誘導体へのジペプチドの還元において、同様の手順を使用した。
【0032】
得られた最終生成物は、必要に応じて、既知の方法の1つによって、例えば、結晶化、クロマトグラフィー精製、または必要な純度を有する化合物を得るのに必要な任意のその他の技術を使用して精製した。
【0033】
本発明による化合物の薬理活性を、多数の障害への関与が知られている、4−ヒドロキシノネナール(HNE)に対する化合物のカルボニル消失活性を評価することによって、インビトロで判定した。
【0034】
考えられる使用のために、本発明による化合物が、経口、非経口、局所または経皮投与に適切な、従来の医薬用、化粧用または栄養組成物として好都合に製剤化される。これらの組成物の例としては、カプセル剤、錠剤、シロップ剤、注射剤または懸濁剤、軟膏剤、坐剤、放出制御製剤等、および水溶性顆粒化物(granulates)が挙げられる。従来の担体および賦形剤と一緒に、これらの組成物はまた、相補的な活性を有するかまたはさもなければ当該障害の治療/予防に有用である、その他の活性成分も含むことができる。
【実施例】
【0035】
本発明は、以下の例によって詳細に例証される。
【0036】
例1:3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオニル−L−ヒスチジン
0.5L丸底フラスコに、3−アミノプロピオニル−ヒスチジン22.6g、水150mlおよびアセトン30mlを入れる。30%水酸化ナトリウムによって溶液をpH13.00に調整し、次に0〜5℃に冷却し、その温度で、水酸化ナトリウムによってpHを12〜13の維持しながら、クロロギ酸ベンジル18.7gを、約1時間で滴加する。その後、混合物を20〜25℃で15時間攪拌し、37%塩酸によってpH2.0〜2.5に酸性化し、次に、白色固体残留物となるまでイソプロパノールによって繰り返し蒸発を実施しながら、最高50℃で真空濃縮する。残留物40gを得る。
1H−NMR(300MHz,D2O)ppm:8.38(s 1H);7.32(m 5H);7.08(s 1H);5.05(m 2H);4.40(m 1H);3.30(m 2H);3.10(dd 1H);2.95(dd 1H);2.41(m 2H)。
【0037】
例2:3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオニル−L−ヒスチジンエチルエステル
1L丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオニル−L−ヒスチジン40g、無水エタノール200gおよび8M HClエタノール溶液80gを入れる。
【0038】
TLCによって反応をモニターしながら、混合物を20〜30℃で15時間攪拌し、次に最高40℃で真空濃縮し、そのようにして出発重量を80%減少させる。次に濃縮を中断し、次に混合物を10〜15℃に冷却し、温度を15℃未満に維持しながら、イソブタノール100g、メチルtert−ブチルエーテル100gおよび重炭酸ナトリウム飽和水溶液100gを、そこに加える。混合物を0〜5℃にさらに冷却し、その温度で、30%水酸化ナトリウムによって系をpH7.0〜7.5に調整する。混合物を30分間攪拌し、その間に温度が20〜25℃に戻り、次に攪拌を中断し、相を20分間分離させる。水相を捨てる一方で、有機相を最高50℃で真空濃縮して、粘稠な油性残留物を約80g得る。これは、その後の反応においてそのままで使用する。
【0039】
例3:3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−N−[(1S)2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]プロパンアミド
1L丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、例2からの油性残留物80g、メタノール100gおよび水300gを入れる。混合物を20〜30℃で15分間攪拌して、溶解を完了させる。次に塩化リチウム4.24gおよび引き続きNaBH413gを、30分間の間に少しずつ入れる。その後、混合物を20〜25℃で15時間攪拌し、40℃で真空濃縮して、出発重量の80%まで還元し、最終的にイソブタノール(4×50g)によって取り除く。残留物をメタノール100gおよびMTBE200gに溶解する。混合物を20〜25℃で2時間攪拌する。塩をセライトで濾過して、メタノール/MTBE(1:2v/v)で洗浄する。濾過物を最高50℃で一定重量まで真空濃縮する。油性残留物52gを得る。試料を、シリカカラムクロマトグラフィー(溶出剤、CH2Cl280:MeOH20)によって精製する。
1H−NMR:(300MHz,DMSO D6)ppm:7.78(d,1H);7.60(s 1H);7.35(m 5H);6.78(s 1H);5.02(s 2H);3.92(m 1H);3.35(m 2H);3.15(m 2H);2.75(dd 1H);2.60(dd 1H);2.24(m 2H)。
【0040】
例4:3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)−エチル]プロパンアミド
丸底フラスコに、不活性雰囲気下で、例3からの油性生成物26gおよび1:1のメタノール/水混合物100gを入れる。混合物を攪拌して、溶解を完了し、次に10%のPd/C2.6gを加える。洗浄サイクルを窒素−真空下で実施し、次に混合物を40℃まで加熱し、出発生成物の完全な消滅まで、水素をそこでゆっくり泡立てる。混合物を30℃まで冷却し、触媒をセライトパッドで濾過し、メタノール−水混合物によって2回洗浄する。溶媒を蒸発させて除去し、残留物をイソブタノールによって繰り返し溶解し、蒸発させて、白い固体9gを得る。
1H−NMR:(300MHz,D2O)ppm:7.55(s 1H);6.80(s 1H);4.05(m 1H);3.55(dd 1H);3.45(dd 1H);2.80〜2.50(mm 4H);2.24(m 2H)。
【0041】
薬理試験
本特許が関係する選択した一連の化合物のカルボニル消失活性を、37℃においてリン酸塩緩衝液(pH7.4)(10mM)中でHNE(50μM)を研究対象の分子(1mM)とともにインキュベートすることによって、インビトロで実証した。インキュベーションの1、2および3時間後に、Aldini G.ら[Biochem Biophys Res Commun. 2002 11月15日、298(5):699〜706頁]によって以前に記載されたような逆相クロマトグラフィーによって残留HNE含有量を測定して、活性を評価した。カルボニル消失活性は、被験分子の非在下でのHNE含有量と比較して、反応させたHNEのパーセンテージに基づいて評価する。一例として、化合物3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]プロパンアミドの活性は、標準物質としたβ−アラニルヒスチジンの活性より1.66倍高いことがわかった。
【0042】
ヒト血清、ラット血漿、ラット肝分画S9000およびヒト肝分画S9000における化合物の安定性をまた、37℃でのインキュベーション並びに0.15および30分、1時間および2時間後の連続的なサンプリングによって評価した。適切に処理された各マトリックスから採取した試料を、HPLC−MSによって分析したところ、2時間後に初期値の85〜93%を回復した。腹腔内投与によるラットにおける予備毒性研究をまた、同一の化合物(単一投与量100mg/kg)、IV(3連続投与量、3、10および30mg/kg)および経口(経管栄養、100mg/kg/日を7日間)について実施し、毒性効果は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、
は、1または複数の窒素原子を含み、その窒素原子の少なくとも1つが−NH−基である、任意選択で縮合され、任意選択で置換されている窒素複素環であり、
は、水素、直鎖状、分枝状若しくは環状のC〜C10アルキル基、直鎖状、分枝状若しくは環状のC〜Cアルキルカルボニル基、任意選択で置換されているアリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基であり、
は、式II
【化2】

[式中、
およびRは、同一でもまたは異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分枝状のC〜Cアルキルまたは環状のC〜Cアルキル基、アリール−C〜Cアルキルまたはヘテロアリール−C〜C−アルキル基、アリールまたはヘテロアリール基であり、
およびRは、同一でもまたは異なっていてもよく、水素、直鎖状、分枝状若しくはの環状C〜Cアルキル基、1または複数の二重結合を任意選択で含む直鎖状若しくは分枝状のC〜C20アルキルカルボニルまたは環状C〜Cアルキルカルボニル基、アリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基、1または複数の二重結合を任意選択で含む直鎖状若しくは分枝状のC〜C10アルキルオキシカルボニルまたは環状C〜Cアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルまたはアリールアルキルオキシカルボニル基、アミノ基、または一般式III
【化3】


(式中、Mは、窒素、酸素または硫黄であり、Aは、水素またはアミノ基である)
の基である]
の基である]の化合物、エナンチオマー、ジアステレオマーまたはそれらの混合物。
【請求項2】
が、任意選択で置換されているイミダゾール、ピロール、ピラゾール、インドール、イソインドール、インダゾール、およびベンズイミダゾールから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRが、それぞれ請求項2および請求項1において定義された通りであるが、Rが一般式II
【化4】

[式中、
、Rは、請求項1に定義された通りであり、
およびRは、同一でもまたは異なっていてもよく、水素、1または複数の二重結合を任意選択で含む直鎖状若しくは分枝状のC〜C10アルキルカルボニルまたは環状C〜Cアルキルカルボニル基、アリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基、1または複数の二重結合を任意選択で含む直鎖状若しくは分枝状のC〜C10アルキルオキシカルボニルまたは環状C〜Cアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルまたはアリールアルキルオキシカルボニル基、またはアミノ基である]
の基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
およびRが水素である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が2位または4位で、直鎖状、分枝状若しくは環状のC〜Cアルキル基またはハロゲン原子によって任意選択で置換されているイミダゾール環である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、水素、直鎖状、分枝状若しくは環状のC〜Cアルキルカルボニル、アリールカルボニルまたはアリールアルキルカルボニル基であり、
が、式II[式中、RおよびRは、水素であり、RおよびRは、独立して水素、またはアルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アリールアルキルオキシカルボニル基である]の基である、
請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が水素である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、式II[式中、R、R、R、Rは水素である]の基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−ベンゾイミダゾール−4−イル−メチル)−エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−ピロール−2−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−メトキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−(アセチルアミノ)−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)−エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−(アセチルオキシ)−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1R)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−(プロピオニルアミノ)−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]−プロパンアミド
・ 3−メチルアミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)−エチル]プロパンアミド
・ 3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(4−メチル−1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]プロパンアミド
・ 3−アミノ−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(4−クロロ−1H−イミダゾール−5−イル−メチル)エチル]プロパンアミド
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から9に記載の1つまたは複数の化合物の有効量を、適切な賦形剤と組み合わせて含む組成物。

【公表番号】特表2013−515753(P2013−515753A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546410(P2012−546410)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070238
【国際公開番号】WO2011/080139
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(508375332)フラマ ソシエタ ペル アチオニ (3)
【氏名又は名称原語表記】FLAMMA S.P.A.
【出願人】(503047641)ウニヴェルシタ’ デリ ストゥディ ディ ミラノ (6)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA’ DEGLI STUDI DI MILANO
【Fターム(参考)】