説明

アミノピラゾロメチン色素、感熱転写記録用インクシート、インクカートリッジおよび感熱転写記録方法

【課題】吸収がシャープで優れた分光特性を有し、分子吸光係数が高く、溶解度が高く、転写濃度が高く、さらに高い光堅牢性を有する色素を含む感熱転写記録用インクシートを提供すること。
【解決手段】下記式で表されるモノメチン色素を含有する感熱転写記録用インクシート。


(R1は1価の置換基を表し、R2、R3、R6およびR7は水素原子または1価の置換基を表す。R4は置換または無置換のアルキル基を表す。R5は炭素数2以上の置換または無置換のアルキル基を表す。R2とR3、R4とR5、R6とR7はそれぞれ環を形成していてもよい。ただし、R1〜R7の各々は、イオン性親水性基を置換基として持つことはない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の新規な色素、特に感熱転写記録用インクシートおよびそれを用いたインクカートリッジ、感熱転写記録方法に関する。
【技術背景】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレイではLCDやPDPにおいて、カラー画像を記録、再現するためにカラーフィルターが使用されている。
【0003】
カラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の着色剤(色素や顔料)が使用されている。しかしながら、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件に耐えうる堅牢な着色剤がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0004】
感熱転写記録には、支持体(ベースフィルム)上に熱溶融性インク層を形成させた感熱転写材料をサーマルヘッドにより加熱し該インクを溶融して受像材料上に記録する方式と、支持体上に熱移行性色素を含有する色素供与層を形成させた感熱転写材料をサーマルヘッドにより加熱して色素を受像材料上に熱拡散転写させる方式とがある。後者の感熱転写方式は、サーマルヘッドに加えるエネルギーを変えることにより色素の転写量を変化させることができるために階調記録が容易であり、高画質のフルカラー記録には特に有利である。しかしこの方式に用いる熱移行性色素には種々の制約があり、必要とされる性能を全て満たすものは極めて少ない。
【0005】
必要とされる性能としては、例えば、色再現上好ましい分光特性を有すること、熱記録ヘッドによって昇華および/または転写すること、分子吸光係数が大きいこと、光や熱に堅牢であること、種々の化学薬品に堅牢であること、合成が容易であること、感熱転写用記録材料を作りやすいこと、安全であることなどがある。特に、感熱転写用インクとして用いる際には、色再現上優れた分光特性と、感熱転写性能、光および熱への堅牢性が求められる。
【0006】
従来、このような感熱転写記録に用いられる色素の中で、イエロー色素としては、キノフタロン色素が特許文献1に、ジシアノスチリル色素が特許文献2に、そしてピラゾロモノメチン色素およびその併用系の使用法が特許文献3〜8に記載されている。
また、特許文献9や非特許文献1、2では、感熱転写記録用インクシートを開示するものではない。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−189289公報
【特許文献2】特開昭60−53564公報
【特許文献3】特開平2−3450号公報
【特許文献4】特開平4−265792号公報
【特許文献5】特開平4−275184号公報
【特許文献6】特開平10−329428号公報
【特許文献7】特開2003−205686号公報
【特許文献8】特開2004−230878号公報
【特許文献9】特開平5−113621号公報
【非特許文献1】Journal fuer Praktische Chmie,327(2),209−219頁(1985)
【非特許文献2】Journal of Photographic Science,34(1),15−18頁(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の色素を含め、従来の色素または色素併用系技術では、いずれも感熱転写記録用インクシートに求められる諸性能を同時に満たすことができない。
【0009】
従って、本発明の目的は、吸収がシャープで優れた分光特性を有し、分子吸光係数が高く、溶解度が高く、転写濃度が高く、さらに高い光堅牢性を有する新規なモノメチン色素を提供することにある。さらに、該モノメチン色素を含有する感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することにある。さらには、印画サンプルにおける優れた色再現性、画像保存性および感熱転写濃度の全てを満足する感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の構成によって上記課題が達成されることを見出した。
【0011】
(1)
下記一般式(1)で表されるモノメチン色素を含有することを特徴とする感熱転写記録用インクシート。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(1)中、R1は1価の置換基を表し、R2、R3、R6およびR7は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。R4は置換または無置換のアルキル基を表す。R5は炭素数2以上の置換または無置換のアルキル基を表す。R2とR3、R4とR5、R6とR7はそれぞれ環を形成していてもよい。ただし、R1〜R7の各々は、イオン性親水性基を置換基として持つことはない。)
(2)一般式(1)において、R1が炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または無置換のヘテロ環基、R2、R3、R6およびR7が各々独立に水素原子、炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のアシルオキシ基、置換または無置換のカルバモイルオキシ基、置換または無置換のアミノ基、あるいは置換または無置換のアシル基、R4が炭素数1〜8の置換または無置換のアルキル基、R5が炭素数2〜8の置換または無置換のアルキル基であることを特徴とする(1)に記載の感熱転写記録用インクシート。
(3)前記(1)または(2)に記載の感熱転写記録用インクシートが装填されていることを特徴とするインクカートリッジ。
(4)支持体上にポリマーを含有するインク受容層を有する受像材料上に(1)または(2)に記載の感熱転写記録用インクシートを用いて画像を形成することを特徴とする感熱転写記録方法。
(5)下記一般式(1’)で表されるモノメチン色素。
【0014】
【化2】

【0015】
(一般式(1’)中、R11は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基、あるいは置換または無置換のアリール基を表し、R12、R13、R16およびR17は各々独立に水素原子、炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基、あるいは炭素数1〜6の置換または無置換のアルコキシ基を表し、R14は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基を表し、R15は炭素数2〜6の置換または無置換のアルキル基を表す。ただし、R11〜R17の各々は、イオン性親水性基を置換基として持つことはない。)
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、吸収がシャープで優れた分光特性を有し、分子吸光係数が高く、溶解度が高く、転写濃度が高く、さらに高い光堅牢性を有する新規なモノメチン色素を提供することができる。さらに、該モノメチン色素を含有する感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することができる。さらには、印画サンプルにおける優れた色再現性、画像保存性および感熱転写濃度の全てを満足する感熱転写記録用インクシートおよび感熱転写記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の感熱転写用インクシート、感熱転写記録方法およびそれに用いるモノメチン色素について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0018】
まず、本発明の一般式(1)で表されるモノメチン色素について詳細に説明する。
【0019】
一般式(1)で表されるモノメチン色素は、ピラゾロン骨格の5位に無置換アミノ基を有することを特徴とする。この特定構造を有する色素は、感熱転写用色素として使用されたことはなく、その優れた特性も知られていない。
【0020】
本発明の色素は、例えば、特開昭63−189289号公報に記載のキノフタロン色素と比較すると、分子吸光係数が高く、転写濃度が高い。
また、特開昭60−53564号公報に記載のジシアノスチリル色素と比較すると、分子吸光係数が高く、光堅牢性が高い。
一方、特開平2−3450号公報に記載の化合物No.1のピラゾロン骨格の5位にジアルキルアミノ基を有するピラゾロモノメチン色素と比較すると、吸収スペクトルがシャープになり、分光特性が勝る。その結果、赤味の少ない黄色の色調を得ることができる。
このような分子吸光係数、感熱転写濃度、分光特性を有する色素は、感熱転写記録用インクシート、感熱転写記録の用途に好適に使用可能である。
また、Journal fuer Praktische Chmie,327(2),209−219頁(1985)に記載の3−アミノ−4−〔2−(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)エチリデン〕−1−フェニル−5−ピラゾロン(以降、既存化合物(A)と称す)や、Journal of Photographic Science,34(1),15−18頁(1986)に記載の3−アミノ−1−(p−カルボキシフェニル)−4−〔2−(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)エチリデン〕−5−ピラゾロン(以降、既存化合物(B)と称す)は溶解性が低く、感熱転写記録の用途への使用は不適である。
【0021】
一般式(1)において、R1は1価の置換基を表す。ここで表す置換基に関しては特に制限はないが、代表例として、アルキル基(本願では、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む飽和脂肪族基を意味する)、アルケニル基(本願では、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む二重結合を有する不飽和脂肪族基を意味する)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基を有していてもよい。
一般式(1)において、R2、R3、R6、R7は水素原子または1価の置換基を表す。ここで表す置換基に関しては特に制限はないが、代表例として、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基およびヘテロ環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基を有していてもよい。
一般式(1)において、R4は置換または無置換のアルキル基を表し、該置換基としては下記の1価の置換基が挙げられる。R5は炭素数2以上の置換または無置換のアルキル基を表し、該置換基としては下記の1価の置換基が挙げられる。
【0022】
以下に1価の置換基をさらに詳しく説明する。
【0023】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
【0024】
アルキル基には、シクロアルキル基、およびビシクロアルキル基が含まれる。アルキル基には、直鎖、分岐の置換もしくは無置換のアルキル基が含まれる。直鎖、分岐の置換もしくは無置換のアルキル基は炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、および2−エチルヘキシル基を挙げることができる。シクロアルキル基としては置換もしくは無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換もしくは無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基を挙げることができる。ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基を挙げることができる。さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中の「アルキル」(例えばアルキルチオ基の「アルキル」)もこのような概念の「アルキル」を表す。
【0025】
アルケニル基にはシクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基としては、炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基が好ましい。例としてはビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基を挙げることができる。シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられる。ビシクロアルケニル基としては、置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基が含まれる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基を挙げることができる。
【0026】
アルキニル基は、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、およびプロパルギル基が挙げられる。
【0027】
アリール基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基が挙げられる。
【0028】
ヘテロ環基は、置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらはさらに縮環していてもよい。これらのヘテロ環基としては、好ましくは5または6員のヘテロ環基であり、また環構成のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基を構成する環を置換位置を限定しないで例示すると、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、ピロール環、インドール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、ベンズイソチアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、チアゾリン環が挙げられる。
【0029】
アルコキシ基は、置換もしくは無置換のアルコキシ基が含まれる。置換もしくは無置換のアルコキシ基としては、炭素原子数が1〜30のアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基などを挙げることができる。
【0030】
アリールオキシ基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基などを挙げることができる。
【0031】
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0032】
カルバモイルオキシ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基などを挙げることができる。
【0033】
アルコキシカルボニルオキシ基は、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基の例には、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0034】
アリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0035】
アミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基およびヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、カルボキシエチルアミノ基、スルフォエチルアミノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ基、4−キノリルアミノ基などを挙げることができる。
【0036】
アシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0037】
アミノカルボニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基などを挙げることができる。なお、この基における「アミノ」の用語は、前述のアミノ基における「アミノ」と同じ意味である。
【0038】
アルコキシカルボニルアミノ基は、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0039】
アリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0040】
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0041】
アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基が好ましい。アルキルスルホニルアミノ基およびアリールスルホニルアミノ基の例には、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0042】
アルキルチオ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基などを挙げることができる。
【0043】
スルファモイル基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基の例には、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)基などを挙げることができる。
【0044】
アルキルもしくはアリールスルフィニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基が好ましい。アルキルもしくはアリールスルフィニル基の例には、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基などを挙げることができる。
【0045】
アルキルもしくはアリールスルホニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基が好ましい。アルキルもしくはアリールスルホニル基の例には、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル基などを挙げることができる。
【0046】
アシル基は、ホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。アシル基の例には、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル基などを挙げることができる。
【0047】
アリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0048】
アルコキシカルボニル基は、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0049】
カルバモイル基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基などを挙げることができる。
【0050】
アリールもしくはヘテロ環アゾ基として、例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基などを挙げることができる。
【0051】
イミド基として、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基などを挙げることができる。
【0052】
ここで、R1〜R7はイオン性親水性基を置換基として持つことはない。該イオン性親水性基として、例えば、カルボキシル基、スルホ基および4級アンモニウム基を挙げることができる。
【0053】
1は、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、さらに好ましくは置換または無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、最も好ましくは置換もしくは無置換のアリール基である。
【0054】
2、R3、R6およびR7は各々、好ましくは水素原子、炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換または無置換のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のアシルオキシ基、置換または無置換のカルバモイルオキシ基、置換または無置換のアミノ基であり、さらに好ましくは、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子、置換または無置換の炭素数1〜3のアルキル基、無置換の炭素数1〜3のアルコキシ基である。
【0055】
4およびR5は各々、好ましくは置換または無置換の炭素数2〜8のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数2〜5のアルキル基である。
【0056】
本発明の一般式(1)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
好ましい組み合わせは、R1が置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、R2、R3、R6、R7が各々、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、R4およびR5が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせである。
より好ましい組み合わせは、R1が置換もしくは無置換のアリール基、R2、R3、R6、R7が各々、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、R4およびR5が各々、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせである。
最も好ましい組み合わせは、R1が置換もしくは無置換のアリール基、R2、R3、R6、R7が各々、置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基、R4およびR5が各々、置換もしくは無置換の炭素数2〜4のアルキル基である組み合わせである。
【0057】
ここで、本発明において好ましいモノメチン色素は、前記一般式(1’)として表すことができる。
一般式(1’)中、R11は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基、もしくは置換または無置換のアリール基を表し、R12、R13、R16およびR17は各々独立に水素原子、炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基、もしくは炭素数1〜6の置換または無置換のアルコキシ基を表し、R14は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基を表し、R15は炭素数2〜6の置換または無置換のアルキル基を表す。ただし、R11〜R17の各々は、イオン性親水性基を置換基として持つことはない。
11〜R17の好ましい基は、一般式(1)におけるR1〜R7と同じである。
【0058】
一般式(1’)で表される5−アミノピラゾロモノメチン色素はこれまでに全く知られていなかった。これらの色素は、親水性基を持たず、好ましい態様としては、長鎖アルキルアミノ基を有するために疎水的であり、溶解性に優れている。このため、感熱転写インクシートの用途に好適に使用することができる。さらにインク液などの他用途にも好適に使用可能であると考えられる。
【0059】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、熱拡散性の観点から、500以下であることが好ましく、450以下であることがより好ましい。
【0060】
以下に、本発明の一般式(1)で表されるアゾ色素の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。なお、以下の具体例においてPhはフェニル基(−C65)を表す。
【0061】
【化3】

【0062】
これらのモノメチン色素は、一般的に行われているピラゾロン誘導体とアミノベンズアルデヒド誘導体を、脱水縮合させることにより合成することができる。
具体的には、下記一般式(3)で表されるピラゾロン誘導体と、下記一般式(4)で表されるアミノベンズアルデヒド誘導体を、例えば下記反応スキーム1に従って、メタノール等の溶媒中で加熱して脱水縮合反応させることにより容易に合成することができる。具体的には、実施例で例示する。
【0063】
【化4】

【0064】
【化5】

【0065】
【化6】

【0066】
(式中、R1〜R7は、前記一般式(1)中のR1〜R7と同義である。)
【0067】
一般式(3)で表される化合物は、市販品として入手可能である(例えば、東京化成工業株式会社、カタログ番号A1034、3−アミノ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン)。または、下記一般式(5)で表されるシアノ酢酸エステルと下記一般式(6)で表されるヒドラジン誘導体から、例えば下記反応スキーム2に従って、容易に合成することができる。具体的には、実施例で例示する。
【0068】
【化7】

(式中、R21は、置換または無置換のアルキル基、もしくは置換または無置換のアリール基を示す。)
【0069】
【化8】

(式中、R1は前記一般式(1)中のR1と同義である。)
【0070】
【化9】

(式中、R1は、前記一般式(1)中のR1と同義である。R21は、置換または無置換のアルキル基、もしくは置換または無置換のアリール基を示す。)
【0071】
一般式(4)で表される化合物は、市販品として入手可能である(例えば、東京化成工業株式会社、カタログ番号D0463、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド)。または、アニリンもしくはアルキルアニリンから、文献(第4版実験化学講座20巻284−288頁、第4版実験化学講座21巻113−118頁)に記載の方法に従い、例えば下記反応スキーム3に従って、容易に合成することができる。具体的には、実施例で例示する。
【0072】
【化10】

(式中、R2〜R7は各々、前記一般式(1)中のR2〜R7と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
【0073】
[感熱転写記録用インクシート]
本発明のモノメチン色素は3原色のうち、イエロー色として使用されることが好ましい。
本発明のモノメチン色素の最大吸収波長の好ましい範囲としては好ましくは400〜480nmであり、より好ましくは420〜460nmである。
【0074】
本発明の感熱転写記録用インクシートは、一般式(1)で表されるモノメチン色素を含有することを特徴とする。感熱転写記録用インクシートは、一般に支持体上に色素供与層が形成された構造を有しており、その色素供与層中に一般式(1)で表されるモノメチン色素を含有させる。本発明の感熱転写記録用インクシートは、一般式(1)で表されるモノメチン色素をバインダーとともに溶剤中に溶解するか、あるいは溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インク液を支持体上に塗設し、適宜乾燥して色素供与層を形成することにより製造することができる。
【0075】
本発明の感熱転写記録用インクシートの支持体には、インクシート用支持体として従来から用いられているものを適宜選択して用いることができる。例えば特開平7−137466号公報の段落番号0050に記載される材料を好ましく用いることができる。支持体の厚みは、2〜30μmが好ましい。
【0076】
本発明の感熱転写記録用インクシートの色素供与層に用いることができるバインダー樹脂は、耐熱性が高く、加熱されたときに色素が受像シートへ移行するのを妨げないものであれば特にその種類は制限されない。例えば、特開平7−137466号公報の段落番号0049に記載されるものを好ましい例として挙げることができる。また、色素供与層形成用の溶剤についても、従来公知の溶剤を適宜選択して用いることができ、特開平7−137466号公報の実施例に記載されるものを好ましく用いることができる。
【0077】
色素供与層中における一般式(1)で表されるモノメチン色素の含有量は、0.03〜1.0g/m2が好ましく、0.1〜0.6g/m2がより好ましい。また、色素供与層の厚みは、0.2〜5μmが好ましく、0.4〜2μmがより好ましい。
【0078】
本発明の感熱転写記録用インクシートは、本発明の効果を過度に阻害しない範囲内であれば、色素供与層以外の層を有するものであってもよい。例えば、支持体と色素供与層との間に中間層を有するものであってもよいし、色素供与層とは反対側の支持体面(以下において「背面」ともいう)にバック層を有するものであってもよい。中間層としては、例えば下塗り層や、色素の支持体方向への拡散を防止するための拡散防止層(親水性バリアー層)を挙げることができる。また、バック層としては、例えば耐熱スリップ層を挙げることができ、サーマルヘッドのインクシートへの粘着防止を図ることができる
【0079】
本発明をフルカラー画像記録が可能な感熱転写記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成することが好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されていてもよい。
【0080】
シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシートとしては、例えば、特開平3−103477号公報や特開平3−150194号公報などに記載されたものを好ましく用いることができる。
【0081】
マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシートとしては、例えば、特許第2542921号公報、特許第2747848号公報などに記載されたものを好ましく用いることができる。
【0082】
〔感熱転写記録〕
本発明の感熱転写記録用インクシートを用いて感熱転写記録を行う際には、サーマルヘッド等の加熱手段と受像シートを組み合わせて用いる。すなわち、画像記録信号に従ってサーマルヘッドから熱エネルギーがインクシートに加えられ、該熱エネルギーが加えられた部分の色素が受像シートに移行し固定されることによって画像記録がなされる。受像シートの構成や使用材料については、例えば特開平7−137466号公報の段落番号0056〜0074に記載されたものを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下に合成例と実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0084】
実施例1
合成例1(例示化合物(1)の調整)
【0085】
【化11】

【0086】
<中間体(A)の調整>
3−アミノ−3−エトキシアクリル酸エチル塩酸塩36.15g(250mmol)、フェニルヒドラジン塩酸塩36.15g(275mmol)および酢酸ナトリウム71.8g(875mmol)にメタノール400mLを加え、5℃以下へ冷却した。5時間攪拌後、ナトリウムメトキシド32.5g(600mmol)を加え、室温で攪拌した。酢酸エチルで抽出、水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、有機層をエバポレーターにより濃縮した。メタノールで再結晶し、中間体(A)を得た。収量31.5g。収率72%。
【0087】
<中間体(B)の調整>
アニリン 20. 0g(215mmol)、炭酸カリウム 62.2g(450mmol)、ヨードプロパン62.9mL(645mmol)およびDMAc200mLを50℃で攪拌した。6時間後、反応液を酢酸エチルで抽出、水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過後、エバポレーターにより濃縮し、乾燥させた。収量 36.85g。収率 97%。
【0088】
<中間体(C)の調整>
DMF 50mLを氷冷し、オキシ塩化リン12.6mL(135.4mmol)を5℃以下で滴下して加えた。2時間攪拌後、中間体(B)20.0g(112.8mmol)を加え、100℃で攪拌した。6時間後、反応液を酢酸エチルで抽出、水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過後、エバポレーターにより濃縮し、乾燥させた。収量 18.8g。収率 81%。
【0089】
<例示化合物(1)の調整>
中間体A 5.4g(30.7mmol)および中間体B 6.3 g(30.7mmol)にメタノール60mL、酢酸 1mLを加え、50℃で攪拌した。3時間後、反応液を酢酸エチルで抽出、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、例示化合物1を青色結晶として得た。収量4.4g。収率 40%。例示化合物Aの融点、最大吸収波長(酢酸エチル溶液)、1H‐NMRは下記表1に記す。
【0090】
実施例2〜7
例示化合物(2)〜(8)は、上記合成例に準じた方法で調整することができた。得られた例示化合物(2)〜(8)および上記で合成した例示化合物(1)の酢酸エチル溶液中(濃度1×10−6mol/L、光路長10mm)における極大吸収波長、融点および1H‐NMRスペクトル(300MHz、重クロロホルム溶媒)の化学シフト値を下記表1に示す。
また、(9)〜(12)の例示化合物に関しても化学的な見地から、上記合成例に準じた方法で調整することができると考えられる。
【0091】
【表1】

【0092】
実施例8
使用例1(感熱転写記録用インクシートの作成)
支持体として裏面に熱硬化アクリル樹脂(厚み1μm)により耐熱滑性処理が施された厚み6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、商品名、(株)東レ製)を使用し、フィルムの表面側に書きの色素供与層用塗料組成物をワイヤーバーコーティングにより乾燥時の厚みが1μmとなるように塗布形成し、インクシート1を作成した。
【0093】
(色素供与層用塗料組成物)
例示化合物(1) 5.0質量部
ポリビニルブチラール樹脂 5.0質量部
(エスレックBH−6、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(1/1) 90質量部
【0094】
次に、上記例示化合物(1)を下記表2記載の色素にそれぞれ変更したこと以外はインクシート1の作製と同様にして、本発明のインクシート2〜4および比較用インクシート5〜7をそれぞれ作製した。
【0095】
実施例7
使用例2(感熱転写記録)
<受像材料の作製>
支持体として合成紙(ユポFPG200、商品名、ユポコーポレーション社製、厚み200μm)を用い、この一方の面に下記組成の白色中間層用塗料組成物、受容層用塗料組成物の順にバーコーターにより塗布を行った。それぞれの塗布量は、乾燥時に白色中間層1.0g/m2、受容層4.0g/m2となる量とし、乾燥は各層110℃で30秒間行った。
【0096】
(白色中間層用塗料組成物)
ポリエステル樹脂(バイロン200、商品名、東洋紡積(株)製) 10質量部
蛍光増白剤(Uvitex OB、商品名、チバガイギー社製) 1質量部
酸化チタン 30質量部
メチルエチルケトン/トルエン(1/1) 90質量部
【0097】
(受容層用塗料組成物)
塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂 100質量部
(ソルバインA、商品名、日信化学工業(株)製)
アミノ変性シリコーン 5質量部
(X22−3050C、商品名、信越化学工業(株)製)
エポキシ変性シリコーン 5質量部
(X22−300E、商品名、信越化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(=1/1) 400質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 5質量部
(Tinuvin900、商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
【0098】
<画像記録および評価>
上記のようにして得られたインクシート1と受像材料とを、色素供与層と受像層とが接するようにして重ね合わせ、色素供与材料の背面側からサーマルヘッドを使用し、サーマルヘッドの出力0.25W/ドット、パルス巾0.15〜15ミリ秒、ドット密度6ドット/mmの条件で印字を行い、受像材料の受像層にマゼンタ色の色素を像状に染着させたところ、転写むらのない鮮明な画像記録が得られた。インクシート1をインクシート2〜8にそれぞれ変更したこと以外は同様にして画像記録を行った。
得られた各画像のベタ濃度(100%網点濃度)におけるステータスA反射濃度を測定し、反射濃度が1.7以上をA(非常に良い)、1.5以上1.7未満をB(良い)、1.5未満をC(一応許容できる)の3段階で評価した。
次に、得られた記録済の各熱転写受像材料を3日間、Xeライト(17000ルクス)で照射し、色像の光安定性(光堅牢性)を調べた。ステータスA反射濃度1.0を示す部分の照射後のステータスA反射濃度を測定し、照射前の反射濃度1.0に対する残存率(百分率)でその安定度をA(95%以上)、B(80%以上95%未満)、C(80%未満)の3段階で評価した。
次に、色素転写後の受像紙の色相をSpectro Eyeで測定し、L*,a*,b*で記した。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
【化12】

【0101】
上記の画像記録試験の結果、一般式(1)で表されるモノメチン色素を用いたインクシートから受像層に転写された画像は、比較用の色素1を用いた場合と比較して、意外にも高い転写濃度、高いモル吸光係数を有することがわかった。また、比較用の色素2を用いた場合と比較して、意外にも高い光堅牢性、高いモル吸光係数を有することがわかった。さらに、比較用の色素3を用いた場合と比較して、意外にもa*が−5〜12程度にあたる赤みの少ない鮮やかな黄色を呈し、高いモル吸光係数を有することがわかった。また、アルキル鎖が炭素数1である既知色素(A)、およびイオン性親水性基を有する既知色素(B)を用いたインクシートを作成し感熱転写させた場合には、受像紙上で析出が起こり、使用に適さないことが分かった。
これらの結果より、本発明のモノメチン色素は、比較用の色素らと比較して、モル吸光係数が高く、赤みが少ない鮮やかな黄色を有し、転写濃度が高く、光堅牢性が高く、インクシートに求められる諸性能を同時に満たすことができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるモノメチン色素を含有することを特徴とする感熱転写記録用インクシート。
【化1】

(一般式(1)中、R1は1価の置換基を表し、R2、R3、R6およびR7は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。R4は置換または無置換のアルキル基を表す。R5は炭素数2以上の置換または無置換のアルキル基を表す。R2とR3、R4とR5、R6とR7はそれぞれ環を形成していてもよい。ただし、R1〜R7の各々は、イオン性親水性基を置換基として持つことはない。)
【請求項2】
一般式(1)において、R1が炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または無置換のヘテロ環基、R2、R3、R6およびR7が各々独立に水素原子、炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のアシルオキシ基、置換または無置換のカルバモイルオキシ基、置換または無置換のアミノ基、あるいは置換または無置換のアシル基、R4が炭素数1〜8の置換または無置換のアルキル基、R5が炭素数2〜8の置換または無置換のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写記録用インクシート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感熱転写記録用インクシートが装填されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
支持体上にポリマーを含有するインク受容層を有する受像材料上に請求項1または2に記載の感熱転写記録用インクシートを用いて画像を形成することを特徴とする感熱転写記録方法。
【請求項5】
下記一般式(1’)で表されるモノメチン色素。
【化2】

(一般式(1’)中、R11は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基、あるいは置換または無置換のアリール基を表し、R12、R13、R16およびR17は各々独立に水素原子、炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基、あるいは炭素数1〜6の置換または無置換のアルコキシ基を表し、R14は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基を表し、R15は炭素数2〜6の置換または無置換のアルキル基を表す。ただし、R11〜R17の各々は、イオン性親水性基を置換基として持つことはない。)

【公開番号】特開2008−246906(P2008−246906A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92234(P2007−92234)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】